以下、本発明のアンテナ装置を適用した実施の形態について説明する。本実施の形態は、例えば、互いに異なる複数の偏波面を持つ無線電波を選択的に利用可能となる、折り返しダイポールアンテナとスロットアンテナを組み合わせた、無線センサネットワーク用のアンテナ装置に関する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1のアンテナ装置100を示す図である。
実施の形態1のアンテナ装置100は、基板1、アンテナエレメント10、20、及びグランドエレメント30を含む。ここでは、基板1の表面(図1における手前側にある面)の中心を原点とする直交座標系としてXYZ座標系を定義する。X軸は中心Oから図1中下方向に延伸し、Y軸は中心Oから右方向に延伸し、Z軸は中心Oから鉛直上方に延伸する。
アンテナエレメント10、20は、ダイバーシティアンテナを構築する。実施の形態1のアンテナ装置100は、ダイバーシティアンテナを用いて通信を行う装置であり、例えば、アンテナエレメント10、20で通信可能な領域を利用して無線センサネットワークを構築し、ノード(無線端末機)で検出される情報を受信する。
基板1は、平面視で矩形状の板状の基板であり、X軸方向に短手方向を有するとともに、Y軸方向に長手方向を有する。基板1の厚さはZ軸方向の長さである。基板1は、例えば、FR−4(Flame Retardant type 4)規格に準じた絶縁基板である。
基板1の表面には、アンテナエレメント10、20、及びグランドエレメント30が形成されている。アンテナエレメント10、20、及びグランドエレメント30は、例えば、基板1の表面に形成される銅箔をエッチング処理等でパターニングすることによって形成される。
アンテナエレメント10は、エレメント10A及び10Bを有するダイポールアンテナであり、エレメント10Aの一端10A1と、エレメント10Bの一端10B1とで給電を受ける。給電は、例えば、バランを用いて、同軸ケーブルからエレメント10Aと10Bに互いに逆位相の高周波信号を供給することによって行われる。
エレメント10A及び10Bは、互いに長さの等しい直線状の導体であり、基板1のX軸方向負方向側でY軸方向に延伸する端辺1Aに沿って、端辺1Aの近傍で、ともにY軸に沿って配設されている。
すなわち、エレメント10Aは、一端10A1から他端10A2までY軸負方向に延伸している。エレメント10Bは、一端10B1から他端10B2までY軸正方向に延伸している。他端10A2と他端10B2との間の長さは、アンテナエレメント10の使用周波数における波長(λ)の1/2の長さ(λ/2)に設定されている。
このようなアンテナエレメント10の偏波方向はY軸方向である。アンテナエレメント10を用いる無線通信は、アンテナエレメント20による無線通信が行われていないときに行われる。すなわち、アンテナエレメント10への給電は、アンテナエレメント20に給電が行われていないときに行われる。
アンテナエレメント20は、ミアンダ状に折り曲げられたダイポールアンテナであり、エレメント20Aと20Bを有する。アンテナエレメント20は、エレメント20Aの一端20A1と、エレメント20Bの一端20B1とで給電を受ける。給電は、例えば、バランを用いて、同軸ケーブルからエレメント20Aと20Bに互いに逆位相の高周波信号を供給することによって行われる。
エレメント20Aと20Bは、互いに長さの等しいミアンダ状の導体であり、基板1のY軸負方向側においてX軸方向に延伸する端辺1Bに沿って、端辺1Bの近傍で、ともにX軸方向にミアンダ状に形成されている。
エレメント20Aの一端20A1は、端辺1Bの中間点の近傍に位置している。エレメント20Aの他端20A2は、エレメント10Aの近傍に位置しており、一端20A1から他端20A2にかけてミアンダ状に折り曲げられる最後の区間は、エレメント10Aの近傍に並列に形成されている。
エレメント20Bの一端20B1は、端辺1Bの中間点の近傍で、エレメント20Bの一端20A1に隣接するように位置している。エレメント20Bは、一端20A1から他端20A2にかけてミアンダ状に折り曲げられており、エレメント20AとY軸に対して略線対称な形状を有する。
一端20A1から他端20A2までミアンダ状に折り曲げられるエレメント20Bの最後の区間は、基板1の端辺1Cに沿って、端辺1Cの近傍に形成されている。端辺1Cは、基板1の端辺1AのX軸方向における反対側の端辺である。
このようなアンテナエレメント20の偏波方向は、X軸方向であり、アンテナエレメント10の偏波方向(Y軸方向)とは90度異なる。このようにアンテナエレメント10と20の偏波方向が90度異なるようにしているのは、アンテナエレメント10と20の相関を低下させて、アンテナエレメント10と20によるダイバーシティ効果を向上させるためである。
アンテナエレメント20を用いる無線通信は、アンテナエレメント10による無線通信が行われていないときに行われる。すなわち、アンテナエレメント20への給電は、アンテナエレメント10への給電が行われていないときに行われる。
グランドエレメント30は、基板1の表面のうち、アンテナエレメント10と20が形成されていない領域に形成されている。グランドエレメント30は、アンテナエレメント10と20の地板として機能するとともに、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)チップ、又は、メモリチップ等の様々な電子部品を実装する領域として用いられる。グランドエレメント30は、基板1の表面の大部分を占める大きさを有する。
このように、基板1の表面の大部分の領域にグランドエレメント30を形成し、残りの領域にアンテナエレメント10と20を形成しているのは、アンテナ装置100を小型化するためである。
例えば、無線センサネットワークを構築するために実施の形態1のアンテナ装置100を用いる場合に、アンテナ装置100を含む受信装置の小型化を行うためには、アンテナ装置100自体の小型化が必要になる。
このような利用に適した装置にするために、実施の形態1ではアンテナ装置100を小型化している。また、無線センサネットワークに含まれるノード(無線端末機)との間の無線通信における送受信感度を向上させるために、アンテナ装置100は、アンテナエレメント10と20によるダイバーシティ方式を採用している。
ここで、図2を用いて、アンテナエレメント10と20の指向性パターンについて説明する。
図2は、実施の形態1のアンテナ装置100の指向性パターンを示す図である。図2(A)は、アンテナエレメント10に給電を行っているときのYZ平面における指向性パターンを示し、図2(B)は、アンテナエレメント20に給電を行っているときのYZ平面における指向性パターンを示す。
図2(A)、(B)には、アンテナ装置100の使用周波数を1GHzとして行った電磁界シミュレーションによって得られた結果を示す。図2(A)、(B)には、φ成分のゲインを実線で示し、θ成分のゲインを破線で示す。
図2(A)に示すように、アンテナエレメント10に給電を行っているときのYZ平面における指向性パターンでは、破線で示すθ成分に加えて、実線で示すφ成分が確認できる。
アンテナエレメント10に給電を行っているときには、アンテナエレメント20には給電を行っていないため、理想的にはアンテナエレメント20からの放射は生じず、θ成分のみになるはずである。
しかしながら、図2(A)に示すように実線で示すφ成分が確認できているため、アンテナ装置100では、アンテナエレメント10に給電を行っているときには、アンテナエレメント20でも放射が行われることが分かる。
また、図2(B)に示すように、アンテナエレメント20に給電を行っているときのYZ平面における指向性パターンでは、実線で示すφ成分に加えて、破線で示すθ成分が確認できる。
アンテナエレメント20に給電を行っているときには、アンテナエレメント10には給電を行っていないため、理想的にはアンテナエレメント10からの放射は生じず、φ成分のみになるはずである。
しかしながら、図2(B)に示すように実線で示すθ成分が確認できているため、アンテナ装置100では、アンテナエレメント20に給電を行っているときには、アンテナエレメント10でも放射が行われることが分かる。
以上より、実施の形態1のアンテナ装置100では、アンテナエレメント10と20の相関はあまり低くなく、アンテナエレメント10と20の相互結合が生じていると考えられる。
図3は、電磁界シミュレーションで得られたアンテナエレメント10と20における電流分布を示す図である。図3に示す電流分布は、実施の形態1のアンテナ装置100において、アンテナエレメント10に給電を行った状態下で行ったシミュレーションで得られたものである。
図3に示すように、アンテナエレメント10のみに給電を行っているのに、アンテナエレメント20にも電流分布が生じていることが分かる。特に、アンテナエレメント10に近いエレメント20Aは、エレメント20Bよりも電流分布が多いことが分かる。
以上のように、実施の形態1のアンテナ装置100は、小型化を達成することができる。
<実施の形態2>
図4は、実施の形態2のアンテナ装置200を示す斜視図である。図5は、実施の形態2のアンテナ装置200を示す平面図である。図6は、実施の形態2のアンテナ装置200を示す底面図である。
実施の形態2のアンテナ装置200は、基板201、アンテナエレメント210、220、及びグランドエレメント230を含む。
実施の形態2のアンテナ装置200は、実施の形態1のアンテナ装置100と同様に、ダイバーシティアンテナを用いて通信を行う装置であり、例えば、無線センサネットワークを構築し、ノード(無線端末機)で検出される情報を受信する。
ここで、実施の形態2では実施の形態1とXYZ座標の取り方が異なる。実施の形態2では、基板201の表面(図4及び図5における手前側にある面)のある点を原点とする直交座標系としてXYZ座標系を定義する。
X軸は中心Oからアンテナ装置200の長手方向に延伸し、Y軸は中心Oから基板201の裏面側に延伸し、Z軸は中心Oから鉛直上方に延伸する。実施の形態2では、原点は、アンテナエレメント210とアンテナエレメント220との間の領域の中心に位置する。
アンテナエレメント210、220、及びグランドエレメント230は、Z軸に対して線対称な形状(パターン)を有する。
また、説明の便宜上、図4では基板201の裏面(底面)側にある構成要素を図示しないが、図5では基板201の裏面(底面)側にある構成要素を破線で示す。基板201の裏面(底面)側にある構成要素は、図6に示される。
基板201は、平面視で矩形状の板状の基板であり、X軸方向に長手方向を有するとともに、Z軸方向に短手方向を有する。基板201の厚さはY軸方向の長さである。基板201は、例えば、FR−4(Flame Retardant type 4)規格に準じた絶縁基板である。
基板201の表面には、アンテナエレメント210、220、及びグランドエレメント230が形成されている。アンテナエレメント210、220、及びグランドエレメント230は、例えば、基板201の表面に貼り付けた銅箔等の金属をエッチング処理等でパターニングすることによって形成される。
アンテナエレメント210は、エレメント211〜215を有する。
グランドエレメント230は、基板201の表面のうち、Z軸負方向側の領域内において、X軸方向に基板201の一方の端辺201A(X軸方向負方向側でZ軸方向に延伸する端辺)と、他方側の端辺201B(X軸方向正方向側でZ軸方向に延伸する端辺)との間に延在する。グランドエレメント230は、地板の一例である。
なお、グランドエレメント230の4つの端辺のうち、アンテナエレメント210の近傍で、アンテナエレメント210に沿ってX軸方向に延伸する端辺を端辺231と称す。
アンテナエレメント210(エレメント211〜215)と、アンテナエレメント220は、後述するスイッチによる接続を切り替えることにより、スロットアンテナと折返しダイポールアンテナとを構築する。
スロットアンテナは、アンテナエレメント210のエレメント211〜215と、グランドエレメント230によって構築される。また、折返しダイポールアンテナは、アンテナエレメント210のエレメント212及び214と、アンテナエレメント220とによって構築される。スロットアンテナと折返しダイポールアンテナを構築するためのスイッチによる接続の切り替えについては図7を用いて後述する。
ここで、アンテナエレメント210の構成について説明する。上述のように、アンテナエレメント210は、エレメント211〜215を有する。アンテナエレメント210は、第1エレメントの一例である。
エレメント211は、平面視でL字型の導体であり、一端211Aがグランドエレメント230の角部230Aに接続され、他端211Bは、エレメント212の一端212AのX軸負方向側の近傍に配設される。エレメント211は、一端211Aと他端211Bとの間の折り曲げ部211Cで折り曲げられている。
また、エレメント211の他端211BよりもX軸負方向側(一端211Aに近い側)には、アンテナエレメント210に給電を行うためのビア250が接続される。ビア250は、基板201の表面から裏面まで貫通する貫通孔の内部に銅めっき膜等を形成することによって作製される。ビア250は、エレメント211と、基板201の裏面側に配設されるRF(Radio Frequency)モジュール260を接続するために形成される。エレメント211にビア250が接続される点は第2給電部の一例である。
エレメント212の一端212Aは、エレメント211の他端211BのX軸正方向側の近傍に配設され、他端212Bは、エレメント213の一端213Aの近傍に配設される。エレメント212は、X軸に沿って延伸する直線状の導体である。エレメント212の他端212Bは、X軸方向において、原点OよりもX軸負方向側に位置する。なお、エレメント212の他端212BのZ軸負方向側には、パッド241が配設される。
エレメント213の一端213Aは、エレメント212の他端212BのX軸正方向側の近傍に配設され、他端213Bは、エレメント214の一端214AのX軸負方向側の近傍に配設される。
エレメント213は、X軸方向に延伸するごく短い直線状の導体である。エレメント213のX軸方向の中点のX軸方向における位置は、原点Oと一致する。すなわち、エレメント213の中点のX軸座標は、X=0である。
エレメント214の一端214Aは、エレメント213の他端213BのX軸正方向側の近傍に配設され、他端214Bは、エレメント215の一端215AのX軸負方向側の近傍に配設される。エレメント214は、X軸方向に延伸する直線状の導体である。エレメント214は、Z軸に対して、エレメント212と線対称に配設される。なお、エレメント214の一端214AのZ軸負方向側には、パッド242が配設される。
エレメント215の一端215Aは、エレメント214の他端214BのX軸正方向側の近傍に配設され、他端215Bは、グランドエレメント230の角部230Bに接続される。エレメント215は、L字型の導体であり、Z軸に対して、エレメント211と線対称に配設される。エレメント215は、一端215Aと他端215Bとの間の折り曲げ部215Cで折り曲げられている。なお、エレメント211と異なり、エレメント215には給電部は配設されない。
以上のようなアンテナエレメント210では、エレメント211の折り曲げ部211Cと、エレメント215の折り曲げ部215Cとの間のX軸方向の長さは、実施の形態2のアンテナ装置200の使用周波数における波長(λ)の約1/2の長さ(約λ/2)に設定されている。
アンテナエレメント220は、一端220A、折り曲げ部220B、直線部220C、折り曲げ部220D、及び他端220Eを有する。アンテナエレメント220は、アンテナエレメント210に対して、平面視でグランドエレメント230とは反対側で、アンテナエレメント210に沿って配設される第2エレメントの一例である。
アンテナエレメント220は、一端220AからZ軸正方向側に延伸し、折り曲げ部220BでX軸正方向側に90度折り曲げられ、直線部220Cを経て、折り曲げ部220DでZ軸負方向側に90度折り曲げられ、X軸負方向側に延伸して他端220Eに至る形状を有する。
一端220Aは、エレメント212の一端212AのZ軸正方向側の近傍に配設され、他端は、エレメント214の他端214BのZ軸正方向側の近傍に配設される。なお、直線部220Cの中点のX軸方向における位置は、原点Oと一致する。すなわち、直線部220Cの中点のX軸座標は、X=0である。
以上のようなアンテナエレメント220では、折り曲げ部220Bと、折り曲げ部220Dとの間のX軸方向の長さは、実施の形態2のアンテナ装置200の使用周波数における波長(λ)の約1/2の長さ(約λ/2)に設定されている。
なお、実施の形態2では、エレメント211の折り曲げ部211Cと、エレメント215の折り曲げ部215Cとの間のX軸方向の長さよりも、折り曲げ部220Bと、折り曲げ部220Dとの間のX軸方向の長さの方が長いが、両者の長さはともに約λ/2に設定される。両者の長さは、後述する折返しダイポールアンテナとスロットアンテナとの特性等に応じて、λ/2を基準として適切な長さに設定すればよい。
パッド241、242は、それぞれ、エレメント212の他端212BのZ軸負方向側、エレメント214の一端214AのZ軸負方向側に配設される。パッド241、242は、Z軸に対して線対称な形状及び位置を有する。
パッド241、242には、ビア251、252が接続される。ビア251、252は、基板201の表面から裏面まで貫通する貫通孔の内部に銅めっき膜等を形成することによって作製される。ビア251、252は、パッド241、242と、基板201の裏面側に配設されるバラン261を介してRFモジュール260を接続するために形成される。
なお、パッド241、242は、それぞれ、別々のスイッチを介して、エレメント212の他端212B、エレメント214の一端214Aに接続される。エレメント212の他端212Bと、エレメント214の一端214Aとには、それぞれ、パッド241と242とを介して、RFモジュール260から給電が行われる。
図6に示すように、基板201の裏面には、RFモジュール260、バラン261、パッド262、同軸ケーブル263、パッド264、265、及び同軸ケーブル266が形成される。
RFモジュール260は、アンテナエレメント210、220に給電を行う装置であり、図示しない電源に接続される。RFモジュール260は、ノイズ抑制等の観点から、平面視でグランドエレメント230と重複する領域に配設されることが望ましい。
RFモジュール260は、同軸ケーブル263を介してパッド262に接続されるとともに、同軸ケーブル266を介してバラン261に接続されている。より具体的には、パッド262には、同軸ケーブル263の芯線が接続され、同軸ケーブル263のシールド線は、パッド262の近傍で、例えば、ビア等を形成することにより、同軸ケーブル263のシールド線をパッド262の近傍でグランドエレメント230に接続されている。また、同軸ケーブル266の芯線及びシールド線は、バラン261に接続される。
なお、バラン261は、アンテナエレメント210のエレメント211〜215(又は212と214)と、RFモジュール260との間に設けられ、アンテナエレメント210側の平衡状態と、RFモジュール260側の不平衡状態とを変換する変換器の一種である。
パッド262、264、265は、例えば、基板201の裏面に貼り付けた銅箔等をエッチング処理等でパターニングすることによって形成すればよい。
パッド262は、ビア250を介してエレメント211に接続される。パッド264は、ビア251を介して、パッド241(図5参照)に接続される。パッド265は、ビア252を介して、パッド242(図5参照)に接続される。
次に、図7及び図8を用いて、アンテナエレメント210、220、及びグランドエレメント230に接続するスイッチと、アンテナエレメント210、220、及びグランドエレメント230で構築するスロットアンテナと折返しダイポールアンテナについて説明する。
図7は、実施の形態2のアンテナ装置200でスロットアンテナと折返しダイポールアンテナを構築するために用いるスイッチを示す図である。
図8は、実施の形態2のアンテナ装置200のスイッチを切り替えた状態を示す図である。図8(A)には折返しダイポールアンテナが構築されている状態を示し、図8(B)にはスロットアンテナが構築されている状態を示す。
図7に示すように、実施の形態2のアンテナ装置200は、スイッチ271、272、273、274と、CPUチップ275とを含む。スイッチ271、272、273、274は、それぞれ、3端子型のスイッチである。スイッチ271、272、273、274としては、例えば、SPDT(Single Pole Double Throw)スイッチを用いることができるが、PIN(p-intrinsic-n Diode)ダイオード、又は、機械式のスイッチを用いてもよい。
スイッチ271は、エレメント212の一端212Aを、エレメント211の他端211B、又は、アンテナエレメント220の一端220Aのいずれかに接続する。
スイッチ272は、エレメント212の他端212Bを、エレメント213の一端213A、又は、パッド241のいずれかに接続する。
スイッチ273は、エレメント214の一端214Aを、エレメント213の他端213B、又は、パッド242のいずれかに接続する。
スイッチ274は、エレメント214の他端214Bを、エレメント215の一端215A、又は、アンテナエレメント220の他端220Eのいずれかに接続する。
なお、スイッチ271〜274は、接続部の一例である。これらのうち、スイッチ272と273は第1接続部の一例であり、スイッチ271と274は第2接続部の一例である。
CPUチップ275は、基板201の裏面に配設されており、矢印の破線で示す信号線を介してスイッチ271〜274に接続されるとともに、RFモジュール260に接続されている。CPUチップ275は、通信状況に応じて、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナのうちのいずれか一方を選択するように、スイッチ271〜274の開閉制御を行う。CPUチップ275は、スイッチ271〜274の接続状態を制御する制御部の一例である。
なお、CPUチップ275とスイッチ271〜274とを接続する信号線は、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナのインピーダンスに影響を与えないように、配線すればよい。また、ここでは、CPU275がスイッチ271〜274を制御する形態について説明するが、CPUチップ275がRFモジュール260経由でスイッチ271〜274を制御御してもよいし、RFモジュール260がスイッチ271〜274を制御してもよい。
次に、図8を用いて、スイッチ271〜274の切り替えについて説明する。図8(A)、(B)には、スペースの都合上、グランドエレメント230のうち、端辺231の近傍の部分のみを示す。
折返しダイポールアンテナを構築する際には、図8(A)に示すように、スイッチ271はエレメント212の一端212Aをアンテナエレメント220の一端220Aに接続する。スイッチ272はエレメント212の他端212Bをパッド241に接続する。スイッチ273はエレメント214の一端214Aをパッド242に接続する。また、スイッチ274はエレメント214の他端214Bをアンテナエレメント220の他端220Eに接続する。
これにより、アンテナエレメント210のエレメント212及び214と、アンテナエレメント220とを含み、エレメント212の他端212Bと、エレメント214の一端214Aとを給電部(第1給電部)とする折返しダイポールアンテナが構築される。他端212Bと一端214Aには、それぞれ、パッド241と242を介して給電が行われる。
この折返しダイポールアンテナは、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント210の第1端部(エレメント212の一端212A)及び第2端部(エレメント214の他端214B)と、第2エレメントの一例としてのアンテナエレメント220の第1端部(一端220A)及び第2端部(他端220E)とをそれぞれ接続することによって構築される。
また、この折返しダイポールアンテナへの給電は、スイッチ272、273、パッド241、242、ビア251、252、バラン261、及び同軸ケーブル266(図5及び図6参照)を介して、RFモジュール260からエレメント212と214に互いに逆位相の高周波信号を供給することによって行われる。
折返しダイポールアンテナは、偏波方向が水平偏波(X軸方向)であり、折返しダイポールアンテナの長手方向に平行な方向の偏波が得られる。折返しダイポールアンテナの長手方向は、X軸方向である。換言すれば、折返しダイポールアンテナの長手方向は、エレメント212の一端212Aから、エレメント214の他端214Bに向かう方向、又は、この逆方向である。また、折返しダイポールアンテナの長手方向は、アンテナエレメント220の直線部220Cの延伸方向である。
また、スロットアンテナを構築する際には、図8(B)に示すように、スイッチ271はエレメント212の一端212Aをエレメント211の他端211Bに接続する。スイッチ272はエレメント212の他端212Bをエレメント213の一端213Aに接続する。スイッチ273はエレメント214の一端214Aをエレメント213の他端213Bに接続する。また、スイッチ274はエレメント214の他端214Bをエレメント215の一端215Aに接続する。
これにより、アンテナエレメント210のエレメント211〜215と、グランドエレメント230の端辺231側の部分とを含み、ビア250を介して給電されるスロットアンテナが構築される。
このスロットアンテナは、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント210の第1端部(エレメント211の一端211A)及び第2端部(エレメント215の他端215B)と、地板の一例としてのグランドエレメント230とを接続することによって構築される。
また、このスロットアンテナへの給電は、ビア250、パッド262、同軸ケーブル263を介して、RFモジュール260からアンテナエレメント210に高周波信号を供給することによって行われる。同軸ケーブル263のシールド線はグランドエレメント230に接続されているため、スロットアンテナのアンテナエレメント210と、グランドエレメント230の端辺231側の部分とには、RFモジュール260から互いに逆位相の高周波信号を供給されることになる。
スロットアンテナは、偏波方向が垂直偏波(Z軸方向)であり、スロットアンテナの長手方向に直交する方向に偏波が得られる。換言すれば、スロットアンテナは、アンテナエレメント210の主にエレメント212、213、214の部分(X軸方向に延伸する部分)と、グランドエレメント230の端辺231との間の方向に偏波が生じる。
このように、実施の形態2のアンテナ装置200では、アンテナエレメント210及び220と、グランドエレメント230とによって構築される折返しダイポールアンテナで得られる偏波方向(水平偏波)と、スロットアンテナで得られる偏波方向(垂直偏波)は90度異なる。
なお、ここでは、折返しダイポールアンテナを構築する際には、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント210の第1端部は、エレメント212の一端212Aであり、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント210の第2端部は、エレメント214の他端214Bである。
また、スロットアンテナを構築する際には、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント210の第1端部は、エレメント211の一端211Aであり、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント210の第2端部は、エレメント215の他端215Bである。
このように、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント210の第1端部は、アンテナエレメント210のX軸負方向の端にある一端211Aには限られず、エレメント212の一端212Aも含む。
これは、エレメント211の長さは、アンテナエレメント210の全体の長さに比べると微少であるため、エレメント212の一端212Aを第1端部として取り扱っても、折返しダイポールアンテナの特性には影響が殆ど生じないからである。
また、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント210の第2端部は、エレメント215のX軸方向の端にある他端215Bには限られず、エレメント214の他端214Bも含む。
これは、第1端部と同様に、エレメント215の長さは、アンテナエレメント210の全体の長さに比べると微少であるため、エレメント214の他端214Bを第2端部として取り扱っても、折返しダイポールアンテナの特性には影響が殆ど生じないからである。
次に、図9を用いて、実施の形態2のアンテナ装置200の折返しダイポールアンテナとスロットアンテナにおける電流分布について説明する。
図9は、実施の形態2のアンテナ装置200の折返しダイポールアンテナとスロットアンテナにおける電流分布を示す図である。
図9では、電流分布を見易くするために、アンテナエレメント210(エレメント211〜215)、アンテナエレメント220、及びグランドエレメント230の形状のみを示す。また、符号については、主な符号(アンテナエレメント210、アンテナエレメント220、及びグランドエレメント230)のみを示し、その他の符号を省略する。その他の符号については図5、図6、図7を参照されたい。
図9(A)は、実施の形態2のアンテナ装置200を折返しダイポールアンテナとして動作させた場合に得られる電流分布を示す図である。この電流分布は、電磁界シミュレーションによって得られた電流分布である。
この電流分布は、スイッチ272、273、パッド241、242、ビア251、252、バラン261、及び同軸ケーブル266(図5及び図6参照)を介して、RFモジュール260からエレメント212と214に互いに逆位相の高周波信号を供給することにより、折返しダイポールアンテナに給電を行うことによって得た電流分布である。
図9(A)において、濃く示す部分は電流密度が高い部分であり、薄く示す部分は電流密度が低い部分である。図9(A)に示すように、アンテナエレメント210のエレメント212の長手方向中央よりも他端212B側、及びエレメント214の長手方向中央よりも一端214A側と、アンテナエレメント220の直線部220Cの長手方向における中央部とにおいて、電流密度が高くなっている。
また、アンテナエレメント210のエレメント212の長手方向中央よりも一端212A側、及びエレメント214の長手方向中央よりも他端214B側と、アンテナエレメント220の直線部220Cの長手方向における両端側とにおいて、電流密度が低くなっている。
以上より、実施の形態2のアンテナ装置200を折返しダイポールアンテナとして動作させた場合には、折返しダイポールアンテナのX軸方向(長手方向)の中央部において、電流密度が高くなり、両端部において電流密度が低くなることが分かる。
従って、折返しダイポールアンテナにおいて、水平偏波(X軸方向)の偏波が得られていることが確認できた。
また、図9(B)は、実施の形態2のアンテナ装置200をスロットアンテナとして動作させた場合に得られる電流分布を示す図である。この電流分布は、電磁界シミュレーションによって得られた電流分布である。
この電流分布は、ビア250、パッド262、同軸ケーブル263(図5及び図6参照)を介して、RFモジュール260からエレメント211とグランドエレメント230に互いに逆位相の高周波信号を供給することにより、スロットアンテナに給電を行うことによって得た電流分布である。
図9(B)において、濃く示す部分は電流密度が高い部分であり、薄く示す部分は電流密度が低い部分である。図9(B)に示すように、アンテナエレメント210のエレメント211、エレメント212の長手方向中央よりも一端212A側、エレメント214の長手方向中央よりも他端214B側、及びエレメント215と、グランドエレメント230の端辺231の両端側とにおいて、電流密度が高くなっている。
また、アンテナエレメント210のエレメント212の長手方向中央よりも他端212B側、エレメント213、及びエレメント214の長手方向中央よりも一端214A側と、グランドエレメント230の端辺231の中央部とにおいて、電流密度が低くなっている。
以上より、実施の形態2のアンテナ装置200をスロットアンテナとして動作させた場合には、スロットアンテナのX軸方向(長手方向)の中央部において電流密度が低くなり、両端部において電流密度が高くなることが分かる。
従って、スロットアンテナにおいて、垂直偏波(Z軸方向)の偏波が得られていることが確認できた。
次に、図10及び図11を用いて、実施の形態2のアンテナ装置200で得られる指向性パターンとVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)特性について説明する。
図10は、実施の形態2のアンテナ装置200を折返しダイポールアンテナとして動作させた場合に得られるXY平面における指向性パターンとVSWR特性を示す図である。
図10は、アンテナ装置200の折返しダイポールアンテナの使用周波数を1GHzとして行った電磁界シミュレーションによって得られた結果を示す。図10(A)には、φ成分のゲインを実線で示し、θ成分のゲインを破線で示す。
図10(A)に示すように、折返しダイポールアンテナのXY平面における指向性パターンは、実線で示すφ成分のゲインが高く、約0dBiの値が得られている。また、破線で示すθ成分のゲインは低く、約−20dBiである。
このため、アンテナ装置200を折返しダイポールアンテナとして動作させているときには、折返しダイポールアンテナのみを動作させることができ、スロットアンテナからは殆ど放射が生じていないことが確認できる。
また、図10(B)に示すVSWR特性については、使用周波数である1GHzで極小値として約1.2程度の非常に良好な値が得られている。
以上より、実施の形態2のアンテナ装置200を折返しダイポールアンテナとして動作させているときには、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナの相関は非常に低いことが分かる。
図11は、実施の形態2のアンテナ装置200をスロットアンテナとして動作させた場合に得られるXY平面における指向性パターンとVSWR特性を示す図である。
図11は、アンテナ装置200のスロットアンテナの使用周波数を1GHzとして行った電磁界シミュレーションによって得られた結果を示す。図11(A)には、φ成分のゲインを実線で示し、θ成分のゲインを破線で示す。
図11(A)に示すように、スロットアンテナのXY平面における指向性パターンは、破線で示すθ成分のゲインが高く、約0dBiから約+5dBiの値が得られている。また、実線で示すφ成分のゲインは低く、約−23dBiである。
このため、アンテナ装置200をスロットアンテナとして動作させているときには、スロットアンテナのみを動作させることができ、折返しダイポールアンテナからは殆ど放射が生じていないことが確認できる。
また、図11(B)に示すVSWR特性については、使用周波数である1GHzで極小値として約1.2程度の非常に良好な値が得られている。
以上より、実施の形態2のアンテナ装置200をスロットアンテナとして動作させているときには、スロットアンテナと折返しダイポールアンテナの相関は非常に低いことが分かる。
以上のような実施の形態2のアンテナ装置200では、スイッチ271〜274を切り替えることにより、互いに相関の低い折返しダイポールアンテナとスロットアンテナを構築することができる。
折返しダイポールアンテナは、図5に示すように、アンテナエレメント210のエレメント212及び214と、アンテナエレメント220とを含み、エレメント212の他端212Bと、エレメント214の一端214Aとを給電部とするアンテナである。
また、スロットアンテナは、図5に示すように、アンテナエレメント210のエレメント211〜215と、グランドエレメント230の端辺231側の部分とを含み、ビア250を介して給電されるアンテナである。
このように、実施の形態2のアンテナ装置200で実現される折返しダイポールアンテナとスロットアンテナは、アンテナエレメント210(の少なくともエレメント212と214)を共有している。
すなわち、実施の形態2のアンテナ装置200は、X軸方向に長手方向を有する折返しダイポールアンテナと、X軸方向に長手方向を有するスロットアンテナとを、その一部を共通(共有)化することにより、Z軸方向に隣接させて配置させることによって得られるものである。
換言すれば、アンテナ装置200は、X軸方向に長手方向を有する折返しダイポールアンテナと、X軸方向に長手方向を有するスロットアンテナとを、その一部を合体(又は一体化)することにより、Z軸方向に隣接させて配置させることによって得られるものである。
従って、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナとを切り替え的に実現可能なアンテナ装置200は、小型化が図られたものである。
このため、実施の形態2によれば、小型化を図ったアンテナ装置200を提供することができる。換言すれば、実施の形態2によれば、小型化を図りつつ、相関の低い折返しダイポールアンテナとスロットアンテナを切り替え的に実現可能なアンテナ装置200を提供することができる。
従って、実施の形態2のアンテナ装置200でスイッチ271〜274を切り替えることにより、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナとでダイバーシティ方式の無線通信を行うことができる。
実施の形態2のアンテナ装置200は、小型で、かつ、ダイバーシティ用の2つのアンテナ(折返しダイポールアンテナとスロットアンテナ)の相関が低いため、省スペース化に貢献できるとともに、非常に良好な通信を行うことができる。
従って、例えば、無線センサネットワークを構築し、ノード(無線端末機)で検出される情報を受信するような用途に適している。ここで、実施の形態2のアンテナ装置200は、実施の形態1のアンテナ装置100よりもダイバーシティ用の2つのアンテナ(折返しダイポールアンテナとスロットアンテナ)の相関が低いため、無線センサネットワークの構築等の用途に非常に適している。
なお、アンテナ装置200の小型化については、折返しダイポールアンテナの長手方向における中心の位置と、スロットアンテナの長手方向における中心の位置とを一致させたことも寄与している。ただし、これらの中心位置は、必ずしも一致している必要はない。
なお、以上では、エレメント212の他端212Bと、エレメント214の一端214Aとを給電部(第1給電部)とする折返しダイポールアンテナを構築する形態について説明した。エレメント212の他端212Bと、エレメント214の一端214Aとは、Z軸に対して線対称な位置にあり、折返しダイポールアンテナの長手方向(X軸方向)の中央に位置する。
しかしながら、折返しダイポールアンテナの給電点は、長手方向の中央からX軸正方向側、又は、X軸負方向側にオフセットした位置に配設されてもよい。これは、例えば、エレメント211〜215の形状を変えずに、ビア251、252の位置をずらすことによって実現してもよいし、エレメント211〜215の形状をX軸に対して非対称にすることによって実現してもよい。
また、折返しダイポールアンテナの給電部(第1給電部)は、アンテナエレメント220に配設されていてもよい。これについては、実施の形態3で説明する。
また、以上では、スロットアンテナの給電部(第2給電部)がアンテナエレメント210のエレメント211に配設される形態について説明したが、スロットアンテナの給電部(第2給電部)は、X軸方向のどの位置にあってもよい。
すなわち、スロットアンテナの給電部(第2給電部)は、エレメント211〜215のいずれの位置に配設されてもよい。これは、例えば、ビア250の位置を変更することによって実現すればよい。
また、スロットアンテナの給電部(第2給電部)は、グランドエレメント230の端辺231又は端辺231の近傍に配設してもよい。
また、以上では、スロットアンテナの給電部(第2給電部)と、RFモジュール260との間にスイッチを設けない形態について説明したが、スロットアンテナの給電部(第2給電部)と、RFモジュール260との間にスイッチを設けてもよい。
また、以上では、エレメント211の折り曲げ部211Cと、エレメント215の折り曲げ部215Cとの間のX軸方向の長さよりも、折り曲げ部220Bと、折り曲げ部220Dとの間のX軸方向の長さの方が長い形態について説明した。
しかしながら、アンテナエレメント210(エレメント211〜215)とアンテナエレメント220の形状を適宜変更することにより、エレメント211の折り曲げ部211Cと、エレメント215の折り曲げ部215Cとの間のX軸方向の長さよりも、折り曲げ部220Bと、折り曲げ部220Dとの間のX軸方向の長さの方が短くてもよい。また、両者の長さが等しくてもよい。
また、以上では、図5に示すような形状(パターン)のアンテナエレメント210、220、及びグランドエレメント230について説明した。
しかしながら、上述のように、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナが互いに等しい長手方向を有し、かつ、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナとがその一部を共有(共通)化した構成であれば、アンテナエレメント210、220、及びグランドエレメント230の形状(パターン)は、上述したものに限られるものではない。
<実施の形態3>
図12は、実施の形態3のアンテナ装置300を示す図である。
実施の形態3のアンテナ装置300は、実施の形態2のアンテナ装置200の折返しダイポールアンテナの給電部(第1給電部)を、アンテナエレメント220側に配設したものである。
以下では、実施の形態2のアンテナ装置200との相違点を中心に説明を行う。また、実施の形態2のアンテナ装置200の構成要素と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
実施の形態3のアンテナ装置300は、基板201、アンテナエレメント310、320、グランドエレメント230、及びスイッチ371、372を含む。
アンテナエレメント310は、エレメント311〜313を有する。
アンテナエレメント310(エレメント311〜313)と、アンテナエレメント320は、後述するスイッチによる接続を切り替えることにより、スロットアンテナと折返しダイポールアンテナとを構築する。
スロットアンテナは、アンテナエレメント310のエレメント311〜313と、グランドエレメント230によって構築される。また、折返しダイポールアンテナは、アンテナエレメント310のエレメント312と、アンテナエレメント320とによって構築される。
ここで、アンテナエレメント310の構成について説明する。上述のように、アンテナエレメント310は、エレメント311〜313を有する。アンテナエレメント310は、第1エレメントの一例である。
エレメント311は、平面視でL字型の導体であり、実施の形態2のアンテナ装置200のエレメント211と同様である。アンテナエレメント311は、一端311Aがグランドエレメント230の角部230Aに接続され、他端311Bは、エレメント312の一端312AのX軸負方向側の近傍に配設される。エレメント311は、一端311Aと他端311Bとの間の折り曲げ部311Cで折り曲げられている。
また、エレメント311の他端311BよりもX軸負方向側(一端311Aに近い側)には、アンテナエレメント310に給電を行うためのビア250が接続される。エレメント311にビア250が接続される点は第2給電部の一例である。
エレメント312の一端312Aは、エレメント311の他端311BのX軸正方向側の近傍に配設され、他端312Bは、エレメント313の一端313AのX軸負方向側の近傍に配設される。
エレメント312は、X軸に沿って延伸する直線状の導体である。エレメント312は、実施の形態2のエレメント212、213、214を一体的にした構成を有する。このため、エレメント312の一端312Aの位置は、実施の形態2のエレメント212の一端212A(図5参照)の位置と同一である。また、エレメント312の他端312Bの位置は、実施の形態2のエレメント214の他端214B(図5参照)の位置と同一である。
エレメント313の一端313Aは、エレメント312の他端312BのX軸正方向側の近傍に配設され、他端313Bは、グランドエレメント230の角部230Bに接続される。エレメント313は、L字型の導体であり、Z軸に対して、エレメント311と線対称に配設される。すなわち、エレメント313は、実施の形態2のエレメント215(図5参照)と同様である。
エレメント313は、一端313Aと他端313Bとの間の折り曲げ部313Cで折り曲げられている。なお、エレメント311と異なり、エレメント313には給電部は配設されない。
以上のようなアンテナエレメント310では、エレメント311の折り曲げ部311Cと、エレメント313の折り曲げ部313Cとの間のX軸方向の長さは、実施の形態3のアンテナ装置300の使用周波数における波長(λ)の約1/2の長さ(約λ/2)に設定されている。
アンテナエレメント320は、エレメント321と322を有する。アンテナエレメント320は、実施の形態2のアンテナエレメント220(図5参照)をX軸方向における中央部で2つに(エレメント321と322に)分断した形状を有する。
アンテナエレメント320は、アンテナエレメント310に対して、平面視でグランドエレメント230とは反対側で、アンテナエレメント310に沿って配設される第2エレメントの一例である。
エレメント321は、一端321AからZ軸正方向側に延伸し、折り曲げ部321CでX軸正方向側に90度折り曲げられ、他端321Bに至るL字型の導体である。他端321Bは、Z軸よりもX軸負方向側に位置しており、エレメント322の一端322AのX軸負方向側の近傍に位置している。
エレメント322の一端322Aは、エレメント321の他端321BのX軸正方向側の近傍に位置している。エレメント322は、一端322AからX軸正方向側に延伸し、折り曲げ部322CでZ軸負方向側に90度折り曲げられ、他端322Bに至るL字型の導体である。
エレメント321と322は、Z軸に対して線対称な形状(パターン)を有する。
以上のようなアンテナエレメント320では、折り曲げ部321Cと、折り曲げ部322Cとの間のX軸方向の長さは、実施の形態3のアンテナ装置300の使用周波数における波長(λ)の約1/2の長さ(約λ/2)に設定されている。
実施の形態3のアンテナ装置300では、エレメント321の他端321Bと、エレメント322の一端322Aは、基板201の裏面側に配設される配線部364と365、及び、ビア351と352をそれぞれ介して、バラン261に接続されている。
配線部364と365、及び、ビア351と352は、実施の形態2の配線部264と265、及び、ビア251と252(図5参照)を、それぞれ、アンテナエレメント320のエレメント321、322に接続するためにZ軸正方向側に移動させたものである。
すなわち、実施の形態3のアンテナ装置300では、アンテナエレメント320のエレメント321の他端321Bと、エレメント322の一端322Aとが第1給電部となる。
なお、実施の形態3のアンテナ装置300は、実施の形態2のアンテナ装置200のパッド241、242に対応するパッドは含まない。
実施の形態3のアンテナ装置300は、2つのスイッチ371、372を含む。スイッチ371、372としては、実施の形態2のスイッチ271〜274と同様に、例えば、SPDTスイッチを用いることができる。スイッチ371、372は、接続部の一例である。
スイッチ371は、エレメント312の一端312Aを、エレメント311の他端311B、又は、エレメント321の一端321Aのいずれかに接続する。
スイッチ372は、エレメント312の他端312Bを、エレメント313の一端313A、又は、エレメント322の他端322Bのいずれかに接続する。
折返しダイポールアンテナを構築する際には、スイッチ371はエレメント312の一端312Aをエレメント321の一端321Aに接続する。また、スイッチ372はエレメント312の他端312Bをエレメント322の他端322Bに接続する。
これにより、アンテナエレメント310のエレメント312と、アンテナエレメント320のエレメント321及び322とを含み、エレメント321の他端321Bと、エレメント322の一端322Aとを給電部(第1給電部)とする折返しダイポールアンテナが構築される。他端321Bと一端322Aには、それぞれ、ビア351、352、配線部364、365、バラン261、及び同軸ケーブル266を介してRFモジュール260から給電が行われる。
この折返しダイポールアンテナは、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント310の第1端部(エレメント312の一端312A)及び第2端部(エレメント312の他端312B)と、第2エレメントの一例としてのアンテナエレメント320の第1端部(エレメント321の一端321A)及び第2端部(エレメント322の他端322C)とをそれぞれ接続することによって構築される。
また、この折返しダイポールアンテナへの給電は、ビア351、352、配線部364、465、バラン261、及び同軸ケーブル266を介して、RFモジュール260からエレメント321と322に互いに逆位相の高周波信号を供給することによって行われる。
折返しダイポールアンテナは、偏波方向が水平偏波(X軸方向)であり、折返しダイポールアンテナの長手方向に平行な方向の偏波が得られる。折返しダイポールアンテナの長手方向は、X軸方向である。換言すれば、折返しダイポールアンテナの長手方向は、エレメント321の折り曲げ部321Cから、エレメント322の折り曲げ部322Cに向かう方向、又は、この逆方向である。また、折返しダイポールアンテナの長手方向は、アンテナエレメント310のエレメント312の延伸方向である。
また、スロットアンテナを構築する際には、スイッチ371はエレメント312の一端312Aをエレメント311の他端211Bに接続する。また、スイッチ372はエレメント312の他端312Bをエレメント313の一端313Aに接続する。
これにより、アンテナエレメント310のエレメント311〜313と、グランドエレメント230の端辺231側の部分とを含み、ビア250を介して給電されるスロットアンテナが構築される。
このスロットアンテナは、第1エレメントの一例としてのアンテナエレメント310の第1端部(エレメント311の一端311A)及び第2端部(エレメント313の他端313B)と、地板の一例としてのグランドエレメント230とを接続することによって構築される。
また、このスロットアンテナへの給電は、ビア250、パッド262、同軸ケーブル263を介して、RFモジュール260からアンテナエレメント310に高周波信号を供給することによって行われる。同軸ケーブル263のシールド線はグランドエレメント230に接続されているため、スロットアンテナのアンテナエレメント310と、グランドエレメント230の端辺231側の部分とには、RFモジュール260から互いに逆位相の高周波信号を供給されることになる。
スロットアンテナは、偏波方向が垂直偏波(Z軸方向)であり、スロットアンテナの長手方向に直交する方向に偏波が得られる。換言すれば、スロットアンテナは、アンテナエレメント310の主にエレメント311、312、313のうちX軸方向に延伸する部分と、グランドエレメント230の端辺231との間の方向に偏波が生じる。
このように、実施の形態3のアンテナ装置300では、アンテナエレメント310及び320と、グランドエレメント230とによって構築される折返しダイポールアンテナで得られる偏波方向(水平偏波)と、スロットアンテナで得られる偏波方向(垂直偏波)は90度異なる。
以上のように、実施の形態3のアンテナ装置300で実現される折返しダイポールアンテナとスロットアンテナは、アンテナエレメント310(の少なくともエレメント312)を共有している。
すなわち、実施の形態3のアンテナ装置300は、X軸方向に長手方向を有する折返しダイポールアンテナと、X軸方向に長手方向を有するスロットアンテナとを、その一部を共通(共有)化することにより、Z軸方向に隣接させて配置させることによって得られるものである。
換言すれば、アンテナ装置300は、X軸方向に長手方向を有する折返しダイポールアンテナと、X軸方向に長手方向を有するスロットアンテナとを、その一部を合体(又は一体化)することにより、Z軸方向に隣接させて配置させることによって得られるものである。
従って、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナとを切り替え的に実現可能なアンテナ装置300は、小型化が図られたものである。
このため、実施の形態3によれば、小型化を図ったアンテナ装置300を提供することができる。換言すれば、実施の形態3によれば、小型化を図りつつ、相関の低い折返しダイポールアンテナとスロットアンテナを切り替え的に実現可能なアンテナ装置300を提供することができる。
従って、実施の形態3のアンテナ装置300でスイッチ371、372を切り替えることにより、折返しダイポールアンテナとスロットアンテナとでダイバーシティ方式の無線通信を行うことができる。
以上のように、実施の形態3のアンテナ装置300で構築される折返しダイポールアンテナとスロットアンテナは、実施の形態2のアンテナ装置200で構築される折返しダイポールアンテナとスロットアンテナと同様である。
このため、実施の形態3のアンテナ装置300で構築される折返しダイポールアンテナとスロットアンテナは、相関が低く、良好な通信特性が得られる。
実施の形態3のアンテナ装置300は、小型で、かつ、ダイバーシティ用の2つのアンテナ(折返しダイポールアンテナとスロットアンテナ)の相関が低いため、省スペース化に貢献できるとともに、非常に良好な通信を行うことができる。
従って、例えば、無線センサネットワークを構築し、ノード(無線端末機)で検出される情報を受信するような用途に適している。ここで、実施の形態3のアンテナ装置300は、実施の形態1のアンテナ装置100よりもダイバーシティ用の2つのアンテナ(折返しダイポールアンテナとスロットアンテナ)の相関が低いため、無線センサネットワークの構築等の用途に非常に適している。
なお、実施の形態3のアンテナ装置300は、実施の形態2のアンテナ装置200と同様に、種々の変形ができるものである。
以上、本発明の例示的な実施の形態のアンテナ装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
地板と、
前記地板の端辺に沿って配設される第1エレメントと、
前記第1エレメントに対して平面視で前記地板とは反対側で、前記第1エレメントに沿って配設される第2エレメントと、
前記第1エレメントの第1端部及び第2端部と前記第2エレメントの第1端部及び第2端部をそれぞれ接続する、又は、前記第1エレメントの第1端部及び第2端部を前記地板に接続する接続部と、
前記接続部によって前記第1エレメントと前記第2エレメントとが接続されているときに、前記第1エレメント又は前記第2エレメントの長手方向における中間点で給電を行う第1給電部と、
前記接続部によって前記第1エレメントと前記地板とが接続されているときに、前記第1エレメント又は地板に給電を行う第2給電部と
を含む、アンテナ装置。
(付記2)
前記接続部によって接続される前記第1エレメントと前記第2エレメントは折返しダイポールアンテナを構築し、前記接続部によって接続される前記第1エレメントと前記地板はスロットアンテナを構築する、付記1記載のアンテナ装置。
(付記3)
前記折返しダイポールアンテナと前記スロットアンテナは、前記第1エレメントを共有する、付記2記載のアンテナ装置。
(付記4)
前記折返しダイポールアンテナの長手方向の中央と、前記スロットアンテナの長手方向の中央とは、一致している、付記2又は3記載のアンテナ装置。
(付記5)
前記接続部は、
前記第1エレメントと前記第2エレメントを接続する第1接続部と、
前記第1エレメントと前記地板を接続する第2接続部と
を有する、付記1乃至4のいずれか一項記載のアンテナ装置。
(付記6)
前記接続部の接続状態を制御する制御部をさらに含む、付記1乃至5のいずれか一項記載のアンテナ装置。
(付記7)
地板と、
前記地板の端辺に沿って配設される第1エレメントと、
前記第1エレメントに対して前記地板とは反対側で、前記第1エレメントに沿って配設される第2エレメントと、
前記第1エレメントの第1端部及び第2端部と前記地板、又は、前記第1エレメントの前記第1端部及び前記第2端部と前記第2エレメントの第1端部及び第2端部を接続する接続部と
を含み、
前記接続部によって接続される前記第1エレメントと前記地板はスロットアンテナを構築し、前記接続部によって接続される前記第1エレメントと前記第2エレメントは折返しダイポールアンテナを構築する、アンテナ装置。