以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
{1. 第1実施形態}
{1.1. 基板検査装置100の構成および機能}
図1は、第1実施形態に係る基板検査装置100の構成を示す図である。基板検査装置100は、シリコン基板などの半導体ウエハ(以下、基板)Wに三次元回路を構成するために、基板Wの表面に垂直方向に積層された二次元集積回路に設けられている凹部状の貫通ビアWH(図3参照)の深さ(深度)を検査するように構成されている。なお、基板検査装置100において、検査対象となる基板Wは、半導体ウエハに限定されるものではない。例えば、液晶表示装置などの表示装置用パネル向けの基板や、太陽電池パネル向けの基板などのその他の基板の検査にも、基板検査装置100は適用可能である。
基板検査装置100は、テラヘルツ波パルス(以下、単にテラヘルツ波とも称する。)を利用した、テラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS)により、基板Wを検査する。テラヘルツ波は、0.01THz以上100THz以下(特に0.1THz以上30THz以下)の範囲の任意の周波数帯の成分を有する電磁波である。一般に、電磁波は、その波長よりも小さい凹凸であっても、透過した際に、近似的な屈折率差に位相のずれが生じる。テラヘルツ波(周波数が1THzの場合、波長は0.3mm。)の場合も、透過する基板Wの領域における貫通ビアWHの有り無しによって、透過波に位相のずれが生じる。基板検査装置100では、この位相のずれを検出することで、基板Wに形成されている貫通ビアWHの深度を検査する。なお、位相のずれの具体的な検出方法については、後述する。
図1に示したように、基板検査装置100は、レーザ光源11、照射部12、検出部13、遅延部14、移動機構15、深度測定装置16および制御部17を備えている。
レーザ光源11は、パルス光(パルス光LP1)を放射する。レーザ光源11としては、例えば、フェムト秒パルスレーザが用いられる。パルス光は、例えば、中心波長が近赤外領域のうちの780〜830nm程度、周期が数kHzから数百MHz、パルス幅が10〜150fs程度の直線偏光のパルス光とされる。フェムト秒ファイバレーザが用いられる場合、1〜1.5μm程度の波長とされる。
パルス光LP1は、ビームスプリッタB1により2つに分割される。分割されたパルス光LP1のうちの一方は、ミラーM1を経由してポンプ光(ポンプ光LP11)として照射部12に入射する。照射部12は、光スイッチ素子を備えている。該光スイッチ素子にポンプ光が照射されることにより、テラヘルツ波(テラヘルツ波LT1)が発生する。発生したテラヘルツ波は曲面鏡M2,M3で集光され、基板Wに照射される。つまり、照射部12は、ポンプ光LP11の照射に応じて、基板Wに向けてテラヘルツ波を照射する。基板Wを透過したテラヘルツ波は、曲面鏡M4,M5で集光され、検出部13に入射する。
ビームスプリッタB1により2つに分割されたパルス光のうち他方のパルス光は、プローブ光(プローブ光LP12)として遅延部14およびミラー6,7を経由し、検出部13に入射する。検出部13は、光スイッチ素子を備えている。光スイッチ素子に基板Wを透過したテラヘルツ波が照射された状態で、プローブ光LP12が光スイッチ素子に照射されると、光スイッチ素子に瞬間的にテラヘルツ波の電場強度に応じた電流が生じる。この電場強度に応じた電流は、I/V変換回路、A/D変換回路などを介してデジタル量に変換される。このようにして、検出部13は、プローブ光の照射に応じて、基板Wを透過したテラヘルツ波の電場強度を検出する。なお、本実施形態では、照射部12または検出部13において光スイッチ素子を利用しているが、その他の素子、例えば非線形光学結晶を利用してもよい。
遅延部14は、ビームスプリッタB1から検出部13までのプローブ光LP12の到達時間を連続的に変更するための光学素子である。遅延部14は、プローブ光LP12の入射方向に移動する移動ステージ(図示せず)に固定されている。遅延部14は、プローブ光LP12を入射方向に沿って折り返させる折り返しミラー14Mを備えている。遅延部14は、制御部17の制御に基づいて移動ステージを駆動して折り返しミラー14Mを移動させることにより、プローブ光の光路長を精密に変更する。これにより、遅延部14は、テラヘルツ波が検出部13に到達する時間と、プローブ光LP12が検出部13へ到達する時間との時間差を変更する。したがって、遅延部14により、プローブ光LP12の光路長を変化させることによって、検出部13がテラヘルツ波を検出するタイミング(検出タイミング)を遅延させることができる。
なお、遅延部14は、その他の方法でテラヘルツ波とプローブ光の検出部13への到達時間を変更するようにしてもよい。例えば、電気光学効果を利用してもよい。すなわち、印加する電圧を変化させることで屈折率が変化する電気光学素子を、遅延素子として用いてもよい。具体的には、特開2009-175127号公報に開示されている電気光学素子を利用してもよい。
また、本実施形態では、プローブ光LP12の光路長を変更させているが、ポンプ光LP11の光路長を変更するように遅延部14を設けてもよい。このような場合においても、検出部13が照射部12から出射されたテラヘルツ波を検出するタイミングを任意に遅延させることができる。
移動機構15は、図示を省略するX−Yテーブルを備えている。移動機構15は、このX−Yテーブルにより、基板Wを保持した状態で、照射部12に対して基板Wを相対移動させることができる。基板検査装置100は、移動機構15により、基板Wを2次元平面内で任意の位置に移動させることができる。基板検査装置100は、移動機構15により、基板Wの広い範囲にテラヘルツ波を照射することができる。
なお、移動機構15の駆動機構は、X−Yテーブルに限定されるものではなく、基板Wを2次元平面上において移動させることができるのであれば、どのように構成されていてもよい。また、移動機構15は、オペレータが手動で操作することにより、基板WHを移動させることができるように構成されていてもよい。また、基板Wを移動させる代わりに、または、基板Wを移動させるとともに、照射部12、曲面鏡M2〜M5および検出部13などを2次元平面内で移動できるようにしてもよい。これらの場合においても、基板Wの広い範囲について、テラヘルツ波を照射する検査を行うことが可能となる。
深度測定装置16は、例えばマイケルソン干渉計の原理に基づき、白色光または2以上の単色光を用いた干渉法によって貫通ビアWHの深度を測定する。より具体的には、深度測定装置16においては、同一光源から出射される光がハーフミラーによって参照光と測定光とに分割される。測定光は、試料(基板W)に照射され、その反射光が光検出器(CCDなど)にて検出される。また、参照光は、別の光路を辿って、測定光を検出する光検出器にて検出される。参照光の光路長(光源から光検出器までの光路長)については一定とされているが、測定光の光路長は、基板Wの表面の凹凸状況に応じて変化する。したがって、凹凸を有する基板Wの様々な位置に測定光を照射すると、光検出器において参照光と測定光とが強めあったり弱めあったりする干渉が起こる。深度測定装置16は、この参照光と測定光との干渉を光検出器にて検出することによって、基板Wの凹部(ここでは、貫通ビアWH)の深度を測定する。深度測定装置16によって測定された貫通ビアWHの深度の測定結果は、適宜制御部17に送られる。
また、レーザ変位計を用いても、基板Wの凹部の深度を測定することができる。レーザ変位計においては、半導体レーザの光が投光レンズで集光され、測定対象物(ここでは基板W)に照射される。そして測定対象物で拡散反射した光線の一部が受光レンズを通して光位置検出素子上にスポットを結ぶ。測定対象物の表面形状に応じて、このスポットが移動するため、スポットの位置を検出することにより、凹部の深度が測定される。なお、一般的には、レーザ変位計を用いた測定よりも、上述した干渉法の測定の方が、高精度に深度を測定することができる。もちろん、その他の方法で凹部の深度を実測するようにしてもよい。つまり、後述するテラヘルツ波を用いて測定する以外の方法であれば、どのような測定方法で凹部の深度が実測されてもよい。ただし、非破壊的に測定である方法であることが望ましい。
深度測定装置16は、図示を省略する移動機構に接続されており、使用しないときは,所要の位置へ退避させておくことが可能に構成されている。
なお、基板検査装置100が必ずしも深度測定装置16を備えている必要はない。例えば基板検査装置100以外の装置において、基板に形成された貫通ビアWHの深度を測定するような場合、深度測定装置16を基板検査装置100から省略することができる。
制御部17は、CPUおよびRAMなど備えた一般的なコンピュータとして構成されている。制御部17は、レーザ光源11、照射部12、検出部13、遅延部14、移動機構15および深度測定装置16に接続されており、これらの要素の動作を制御したり、これらの要素からデータを受け取ったりする。具体的に、制御部17は、検出部13からテラヘルツ波の電場強度に関するデータを受け取る。また、制御部17は、遅延部14の移動ステージに対して移動を指示したり、移動ステージに設けられたリニアスケールなどから移動距離などの遅延部14の位置に関するデータを受け取ったりする。
また、制御部17は、時間波形構築部21、屈折率取得部22、時間差取得部24、開口率取得部25、ビア深度算出部26、形状指標取得部27および画像生成部28に接続されており、これら処理部に各種演算処理を行わせる。
時間波形構築部21は、基板Wを透過したテラヘルツ波について、検出部13において検出される電場強度から、テラヘルツ波の時間波形を構築する。詳細には、遅延部14の制御に基づいて、相互に異なる複数の検出タイミングで電場強度が検出されることにより、時間波形が構築される。
屈折率取得部22は、テラヘルツ波の時間波形に基づいて、検査対象物である基板Wに関する屈折率を取得する。詳細には、屈折率取得部22は、基板Wが存在しない状態で検出されるテラヘルツ波(つまり、照射部12から出射されるテラヘルツ波LT1自体)の時間波形と、基板Wを透過したテラヘルツ波の時間波形とをそれぞれフーリエ変換することにより、周波数に関する振幅強度スペクトル、および、位相スペクトルを取得する。屈折率取得部22は、これらのスペクトル解析結果から、複素屈折率を算出し、その実部を基板Wの屈折率として取得する。なお、屈折率を算出する詳細な演算手法については、従来技術やそれに類似する技術を適宜利用することができる。なお、基板Wの屈折率が既に分かっているなど、屈折率を改めて取得する必要がない場合には、屈折率取得部22を省略してもよい。
時間差取得部24は、テラヘルツ波が基板Wの平坦領域を透過する透過時間と、貫通ビアWHが形成されているビア形成領域を透過する透過時間との時間差を取得する。時間差取得部24による時間差の具体的な算出方法については後述する。なお、ここでいう時間差とは、2つの周期的なテラヘルツ波パルスの位相のずれ(位相差)に相当する。なお、位相は、一般的に、角度(単位は「度」または「ラジアン」)で表現される。しかしながら、2つの波の周期が同じである場合、位相のずれは、時間差(単位は「秒」など)として扱うことができる。
開口率取得部25は、基板Wに形成されている貫通ビアの開口部の面積(開口面積)に基づいて、単位面積当たりの開口面積比(以下、開口率と称する。)を取得する。開口率は、例えば図示しない可視光顕微鏡を用いて、実際の基板Wの観察像から画像解析により算出することができる。また、開口率は、CADデータなどの設計図から得られる設計値に基づいて取得するようにしてもよい。
ビア深度算出部26は、時間差、開口率および屈折率から、基板Wに形成されている真空ビアの深さを算出する。貫通ビアの深度の具体的な算出方法については後述する。なお、以下の説明において、ビア深度算出部26により算出される貫通ビアWHの深さを、算出深度と称する。また、深度測定装置16により取得される貫通ビアWHの深さを実測深度と称する。
形状指標取得部27は、ビア深度算出部26による演算により取得される貫通ビアWHの算出深度と、深度測定装置16により取得される貫通ビアWHの実測深度とに基づいて、貫通ビアWHの形状の形状を示す形状指標を取得する。具体的には、形状指標取得部27は、算出深度を実測深度で除算した商を形状指標値として取得する。
なお、実測深度を算出深度で除算したときの商の値を、形状指標値と定義してもよい。また、実測深度と算出深度との差分値を形状指標値と定義することも可能である。つまり、算出深度と実測深度との相対的な関係を形状指標とすればよい。
画像生成部28は、基板Wの一部分または全体における、貫通ビアWHの形状の分布を視覚的に表現した画像を生成する。画像生成部28により生成された画像は、表示部33に適宜表示される。
また、図1に示したように、制御部17には、記憶部31、入力部32、および、各種画像を表示する表示部33が接続されている。記憶部31は、ハードディスクなどの記憶媒体で構成されており、各種データを保存することができる。入力部32は、操作者が各種データをテラヘルツ波測定装置100に対して入力するために操作するマウス、キーボード等の入力デバイスで構成されている。表示部33をタッチパネルで構成することによって、表示部33が入力部32の機能を備えていてもよい。
以上が、基板検査装置100の構成についての説明である。次に、基板Wを検査するときの基板検査装置100の動作について説明する。
{1.2. 基板検査装置100の動作}
図2は、基板検査装置100による基板Wの検査工程を示す流れ図である。また、図3は、検査対象物である基板Wを概念的に示す概略斜視図である。なお、以下に説明する基板検査装置100の動作は、特に断らない限り、制御部17により制御されるものとする。また、図2に示した流れ図は基板検査工程の一例である。したがって、動作内容によっては、複数の工程を並列に実行するようにしたり、もしくは、複数の工程の実行順序を適宜変更したりすることも可能である。
図3に示したように、検査対象物である基板Wの表面には、貫通ビアWHが形成されていない平坦領域91R(参照領域)と、貫通ビアWHが形成されているビア形成領域92R(凹部形成領域)とが含まれている。貫通ビアWHは、基板Wの主面に対して垂直な方向(厚さ方向)に凹んだ凹部となっている。
テラヘルツ波は、波長が比較的長いため、分解能はそれほど高くない。しかしながら、本実施形態では、単一の貫通ビアWHを検査するのではなく、ある程度の広さを持つ範囲にテラヘルツ波を照射し、その範囲に含まれる貫通ビアWHの影響を、テラヘルツ波の位相速度の変化(換言すると、近似的な屈折率の変化)として検出する。
より具体的には、ビア形成領域92Rは、貫通ビアWHが形成されている分、その厚さの平均が平坦領域91Rも薄くなっている。基板検査装置100では、この薄くなっている分を、テラヘルツ波の検出部13への到達時間の差(時間差)として検出することにより、平坦領域91Rとビア形成領域92Rとの厚みの違いを検出する。つまり、基板検査装置100は、平坦領域91Rの厚みを基準として、ビア形成領域92Rの厚み(貫通ビアWHの深度を除いたときの厚みの平均値)の相違を検出する。さらに、基板検査装置100は、貫通ビアWHの開口部の大きさ(後述する開口率)から、貫通ビアWHの深さを算出する。
なお、ビア形成領域92Rは、貫通ビアWHが形成されている点以外は、形状(貫通ビアWH以外の平坦部分の厚さなど)および構成素材などの点で、平坦領域91Rと略一致していることが望ましい。このような平坦領域91Rを選択することによって、貫通ビアWHに起因するテラヘルツ波の時間差を良好に抽出することができる。ただし、ビア形成領域92Rの貫通ビアWH以外の部分における基板Wの厚みは、必ずしも平坦領域91Rの基板Wの厚みと完全に一致していなくてもよい。
基板検査装置100は、基板Wの検査を開始すると、まずは、基板Wがセットされていない状態で、照射部12からテラヘルツ波を照射し、検出部13にて該テラヘルツ波が検出される(ステップS11)。つまり、この状態では、空気中(もしくは真空中)を通過したテラヘルツ波が検出部13によって検出されることとなる。そして、基板Wがない状態でのテラヘルツ波の時間波形が時間波形構築部21により構築される。この時間波形は、基板Wの屈折率を算出するために取得される。
次に、基板Wが図示しない基板搬送装置やオペレータによって搬送されて基板検査装置100に設置される(ステップS12)。なお、ステップS11の時点で基板検査装置100に設置しておき、移動機構15により所定の退避位置に基板Wを退避させておいてもよい。この場合、ステップS12の時点で、基板Wを移動機構15により所定位置に移動させるようにしてもよい。ステップS12における基板Wの配置位置は、照射部12から照射されるテラヘルツ波が、貫通ビアWHが形成されていない平坦領域91Rを透過する位置とされる。平坦領域91Rの位置については、例えば、入力部32などを介してあらかじめ指定される。
基板Wが所要位置に設置されると、照射部12からテラヘルツ波が基板Wに照射される。基板Wの平坦領域91Rを透過したテラヘルツ波が検出部13にて検出される(ステップS13)。
図4は、時間波形構築部21により構築されたテラヘルツ波の時間波形41を示す図である。図4中、横軸は時間で、縦軸は電場強度を示している。また、下段には、遅延部14によって、検出部13に到達するタイミング(検出タイミングt1〜t8)の異なる複数のプローブ光LP1が概念的に示されている。検出部13には、図4に示したようなテラヘルツ波パルスが、所定の周期で繰り返し到来する。例えば、検出部13に対して、検出タイミングt1でプローブ光が到達するように遅延部14の位置を調整すると、検出部13では、値E1の電場強度が検出される。また、遅延部14を調整することによって、検出タイミングをt2〜t8にそれぞれ遅延させると、それぞれ値E2〜E8の電場強度が検出部13において検出される。このように、検出タイミングを細かく変更しながらテラヘルツ波の電場強度を測定し、これらの電場強度の値を時間軸に沿ってプロットしていくことによって、テラヘルツ波の時間波形41が構築される。なお、以降の説明においては、図4に示した時間波形41が、平坦領域91Rを透過したテラヘルツ波に相当するものとして説明する。
図2に戻って、基板検査装置100は、ステップS13において基板Wを透過したテラヘルツ波を検出すると、屈折率取得部22により屈折率を取得する(ステップS14)。具体的には、ステップS11,S13のテラヘルツ波の検出結果から構築された時間波形に基づき、屈折率取得部22によってスペクトル解析が行われる。また、基板Wの厚みも適宜設定される。これにより、基板Wの屈折率n1が取得される。
基板検査装置100は、ステップS14において屈折率n1を取得すると、移動機構15を駆動することによって、基板Wを検査位置に移動させる(ステップS15)。この検査位置は、照射部12が検査すべき基板W上の領域(検査領域)にテラヘルツ波を照射することのできる基板Wの位置に相当する。なお、あらかじめオペレータによって特定の位置(例えば、貫通ビア形成領域92Rが形成されている位置)が検査領域として指定されてもよいし、基板Wの任意の位置が検査領域とされてもよい。
基板検査装置100は、基板Wを上記検査位置に移動させると、テラヘルツ波が照射されるビア形成領域92Rの単位面積当たりの開口率(以下、単に「開口率」という。)ORが取得される(ステップS16)。ここで、ビア形成領域92Rの開口率ORは、ビア形成領域92Rの面積に対する、開口部の大きさ(ビア形成領域92Rに含まれる貫通ビアWHの開口面積)の割合である。開口率ORは、可視光顕微鏡11を介して取得される観察像から、画像解析等に基づいて取得される。開口率ORの具体的な算出例について、図5〜図7を参照しつつ説明する。
図5は、貫通ビアWHが形成された基板W表面の一部分を示す概略上面図である。図5に示した例では、辺の長さがLの正方形領域であるビア形成領域92Rに、真円状(半径r)の開口部93rを有する貫通ビアWHが形成されている。この開口部93rの開口面積はπr2である。したがって、図3に示したビア形成領域92Rについての開口率ORは、次式(1)で表される。
また図6は、基板W表面のその他の部分を示す概略上面図である。図6に示した例では、辺の長さLの正方形領域であるビア形成領域92Rに、真円状(半径a,b)の開口部93a,93bを有する貫通ビアWH,9Hが形成されている。このビア形成領域92Rにおける開口率ORは、開口面積が(πa2+πb2)であることから、次式(2)で表される。
さらに図7は、基板W表面のその他の部分を示す概略上面図である。図6に示した例では、辺の長さLの正方形領域であるビア形成領域92Rに、真円状(半径c)の開口部93cを有する貫通ビアWHの一部(真円の1/4サイズの扇型)が4つ分形成されている。このビア形成領域92Rにおける開口率ORは、開口面積がπc2であることから、次式(3)で表すことができる。
なお、開口率ORは、可視光観察部11を用いて得られる実際の観察像から算出されることが望ましい。しかしながら、CADデータ等の設計図から設計値を取得して、開口率ORを算出するようにしてもよい。また、観察像やCADデータに基づいて、オペレータがマニュアルで計算し、該計算結果を入力することで、開口率ORが取得されるようにしてもよい。また、複数の貫通ビアが、所定の周期性(規則性)をもって形成されている(例えば、図7に示すように格子点状に等間隔で貫通ビアWHが形成されている)等の場合、貫通ビアWH同士の間隔等から、開口率ORが算出されてもよい。
図2に戻って、開口率ORを取得すると、基板検査装置100は、深度測定装置16によって、検査領域に形成されている貫通ビアWHの深度を測定する(ステップS17)。取得された貫通ビアWHの深度に関するデータは制御部17に送られ、記憶部31などに保存される。
なお、本実施形態では、基板Wにテラヘルツ波を照射する度に深度測定装置16によって貫通ビアWHの深度を測定している。しかしながら、深度測定装置16による深度測定は、テラヘルツ波を用いる検査の前、もしくは後に行われてもよい。この場合、深度測定とテラヘルツ波の照射を交互に行うのではなく、深度測定またはテラヘルツ波の照射を連続して行うことができる。したがって、基板W上の広い範囲について効率よく検査することができる。
基板検査装置100は、ステップS16において貫通ビアWHの深度を取得すると、照射部12からテラヘルツ波を基板Wの検査領域に向けて照射する。そして基板検査装置100は、基板Wを透過したテラヘルツ波を検出部13にて検出する(ステップS18)。さらに基板検査装置100は、ステップS13で取得されたテラヘルツ波と、ステップS18で検出された電場強度とから、平坦領域91Rを透過したテラヘルツ波と、検査領域(例えば、ビア形成領域92R)を透過したテラヘルツ波についての時間差ΔTを取得する(ステップS19)。この時間差ΔTの取得方法について図8を参照しつつ説明する。
図8は、時間差ΔTを取得する方法について説明するための図である。図8においては、横軸を時間、縦軸をテラヘルツ波の電場強度として、テラヘルツ波の時間波形41,43を図示している。時間波形41は、ステップS13にて検出されたテラヘルツ波の時間波形に相当しており、時間波形43は、ステップS18にて検出されたテラヘルツ波に相当する。
テラヘルツ波がビア形成領域92Rを透過する場合、テラヘルツ波は、貫通ビアWHが形成されていない場合よりも、貫通ビアWHの空洞空間の分、基板Wを早く透過することができる。このため、図8に示したように、平坦領域91Rを透過するテラヘルツ波(時間波形41)の透過時間は、ビア形成領域92Rを透過するテラヘルツ波(時間波形43)の透過時間に比べて、時間差ΔT分短くなる。この時間差ΔTは、例えば時間波形41,43のピーク値(矢印A1参照)付近、または、時間波形41,43の電場強度の半値(時間波形41または時間波形43の電場強度の最大値と最小値の間の中間値、矢印A2参照)付近等において、良好に取得することができる。以上のようにして、基板検査装置100は、時間波形41,43から時間差ΔTを取得する。
図2に戻って、時間差ΔTを取得すると、基板検査装置100は、基板Wの予め設定された全範囲について検査が完了したかどうかを判定する(ステップS20)。なお、この判定は、あらかじめ入力部32などを介して指定された基板Wの検査範囲の全てについて、時間差ΔTのデータが収集されているかどうかに基づき判断される。
未検査の領域がある場合(ステップS20においてNO)、基板検査装置100は、ステップS15に戻る。そして基板検査装置100は、移動機構15を駆動して、基板Wを所要の位置に移動させて、次の検査領域について検査を行う。なお、基板Wの全面を走査して検査するような場合、所定の距離(例えば、5mm)ずつ主走査方向および副走査方向に基板Wを移動させて検査を行うようにしてもよい。
なお、本実施形態では、基板検査装置100が基板W上の予め設定された検査範囲について検査を行うようにしているが、例えば1か所のみをピンポイントで検査するようにしてもよい。この場合、基板検査装置100は、ステップS15〜ステップS19を実行した後、ステップS20を省略してステップS21に進むようにすればよい。
また、上記ステップS18の説明では、検査領域に照射された検出タイミングを遅延させることによって、基板Wを透過したテラヘルツ波の時間波形43を逐一構築する。この場合、時間波形41と時間波形43との時間差ΔTが、精度良く取得される。しかしながら、基板Wの複数箇所を検査する場合、時間波形の構築に時間がかかるため、検査時間が長くなる虞がある。そこで、ステップS18においては、遅延部14の位置を固定することによって、特定の検出タイミングでテラヘルツ波の電場強度を検出するようにしてもよい。このとき、ステップS13において構築した時間波形41(図4、図8参照)を、検出された電場強度値を通るように時間軸方向に沿ってずらすことにより、時間波形43を模擬的に構築することができる。そして、この時間波形41をずらした分を時間差ΔTとして取得すれば、時間波形43の構築するためのデータ収集を省略できるため、短時間で基板Wの複数箇所を検査することができる。
検査対象範囲の全てについて、検査が終了した場合(ステップS20においてYES)、基板検査装置100は、検査領域毎に取得した時間差ΔTに基づいて、各検査領域における貫通ビアWHの深度を算出する(ステップS21)。この深度の算出方法については、図9および図10を参照しつつ説明する。
図9は、貫通ビアWHが形成されたビア形成領域92Rを示す概略斜視図である。図9に示した貫通ビアWHは、半径がr、深さがxである略円柱状の空洞空間となっている。またここでは、貫通ビアWHが形成されている基板Wの厚みをyとしている。
図9に示したビア形成領域92Rの体積は、L2・yで表され、貫通ビアWHの体積(空洞体積)は、π・r2・xで表される。したがって、ビア形成領域92Rにおける単位体積当たりの空洞率HR(以下、空洞率と称する。)は、次式(4)で表される。
図10は、平坦領域91Rおよびビア形成領域92Rのそれぞれを透過するテラヘルツ波を示す概念図である。ここで、平坦領域91Rにおける基板Wの屈折率をn1とし、ビア形成領域92Rの屈折率n2とすると、平坦領域91Rを透過するテラヘルツ波の速度(位相速度)V1は、c/n1と表され、ビア形成領域92Rを透過するテラヘルツ波の速度V2はc/n2と表される(ここで、cは光速)。ここで、ステップS19で取得される時間差ΔTは、屈折率n1,n2を用いて、次式(5)のように表される。
ビア形成領域92Rの近似的な屈折率n2が、平坦領域91Rの屈折率n1と異なるのは、貫通ビアWHにより空洞空間が形成されていることに起因する。ここで、空洞空間が、屈折率nhの物質で充填されているとすると、屈折率n2は、次式(6−1)で表される。特に、貫通ビアWH内の空洞空間が、ほぼ空気で充填されている場合、基板Wの屈折率が空気の屈折率に比べて十分に大きいとすると、この空洞空間の屈折率は真空の屈折率(=1)に近似される。この場合の屈折率n2は、次式(6−2)で表される。
また、式(6−1)または式(6−2)で表される屈折率n2を式(5)に代入すると、時間差ΔTは、次式(7−1)または式(7−2)で表される。
さらに式(7−1)または式(7−2)を変形することによって、貫通ビアWHの深さxは、それぞれ次式(8−1)または式(8−2)で表される。
ここで式(8−1)または式(8−2)に、ステップS14にて取得された屈折率n1とステップS16にて取得された開口率ORとを代入することによって、貫通ビアWHの深さxを定量的に算出することができる。以上のような演算式に基づいて、基板検査装置100は、貫通ビアWHの深さxを算出する。算出された貫通ビアWHの深度(算出深度)は、それぞれ制御部17に送られ、記憶部31に保存される。
なお、本実施形態では、ビア形成領域92Rに形成されている貫通ビアWHの数に関わらず、開口率ORに基づいて貫通ビアWHの深度が算出される。したがって、図9に示したように、ビア形成領域92Rに1つの貫通ビアWHのみが形成されている場合には、式(8−1)または式(8−2)から導かれるxの値は、この1つの貫通ビアWH自体の深度を示すこととなる。しかしながら、ビア形成領域92Rに複数の貫通ビアWHが含まれる場合(図5,6参照)、式(8−1)または式(8−2)から算出される深さxは、これら複数の貫通ビアWHの深度を平均した値となる。
以上のように、本実施形態の基板検査装置100によると、テラヘルツ波を用いて深度を算出するため、貫通ビアWH形成の加工方法に依存することなく、かつ、基板9のプロセス途中などの任意の時間に、基板9に形成された貫通ビアWHの深度を非接触および非破壊にて測定することができる。
また、テラヘルツ波は、波長が比較的長いため、分解能はそれほど高くない。これに対して、本実施形態では、単一の貫通ビアWHを検査対象とするのではなく、所定範囲(ビア形成領域92R)に検査用のテラヘルツ波を照射し、開口率ORを使って、貫通ビアWHの深度を測定する。このため、貫通ビアWHのようなテラヘルツ波の波長よりも小さい凹部であっても、その深度を良好に測定することができる。
図2に戻って、全ての検査位置に関して貫通ビアWHの深度を算出すると、基板検査装置100は、形状指標取得部27により、貫通ビアWHの形状を示す形状指標値を算出する(ステップS22)。具体的には、ステップS21において算出した貫通ビアWHの深度(算出深度)を、ステップS17において取得した貫通ビアWHの実測深度で割ったときの商が、形状指標値として取得される。
図11は、貫通ビアWHの形状と形状指標値の相関関係を説明するための図である。図11においては、相互に凹部の形状が異なる貫通ビアWH1,WH2,WH3を図示している。具体的に、貫通ビアWH1は、基板Wの厚さ方向に沿ってまっすぐに延びる円柱状に凹んだ凹部を形成している。また、貫通ビアWH2は、底部に向かうに連れて次第に開口断面積が小さくなる(ここでは、内径が小さくなる)円錐台状の凹部を形成している。さらに貫通ビアWH3は、凹部の内壁が外側(基板Wの主面が広がる方向)に膨らむことで開口断面積が大きくなる(ここでは、内径が大きくなっている)フラスコ状の凹部を形成している。また、説明の便宜上、貫通ビアWH1,WH2,WH3の基板Wの表面における開口部の半径(=r1)、および、それらの深度(=MH1)はそれぞれ一致しているものとする。
上述の式(8−1)または式(8−2)から算出される貫通ビアWHの深さxは、図9において示したように、貫通ビアWHが基板Wの厚さ方向(ここでは、テラヘルツ波の透過方向に一致する。)に沿ってまっすぐに掘り下げられた凹部であるとの仮定に基づいている。つまり、図11に示した貫通ビアWH1は、基板Wの厚さ方向に沿って掘り下げられた円柱状の場合、図9に示したモデルに一致する。したがって、式(8−1)または式(8−2)に基づいて、図11に示した貫通ビアWH1の深度を算出した場合、実際の深度である実測深度MH1とほぼ一致する算出深度CH1を取得することができる。よって、貫通ビアWH1の場合、形状指標値(=CH1/MH1)は1.0または1.0に極めて近い値となる。
これに対して、貫通ビアWH2の場合、底に向かうにつれて開口断面積が細くなる形状であるため、空洞率HRが貫通ビアWH1に比べて小さくなっている。このため、テラヘルツ波が貫通ビアWH2を含む部分を透過する時間(透過時間)は、貫通ビアWH1を含む部分を透過する場合に比べて長くなる。すなわち、貫通ビアWH2を含む部分を検査したときの時間差ΔTの値が、貫通ビアWH1を含む部分を検査したときに比べて小さくなる。つまり、貫通ビアWH2の算出深度CH2は、算出深度CH1と比べて小さい値となる。よって、貫通ビアWH2に関する形状指標値(=CH2/WH1)は、貫通ビアWH1の形状指標値よりも小さい値(図示の例では、0.7)となる。
また、貫通ビアWH3の場合、底に向かうにつれて開口断面積が大きくなる部分を有しているため、空洞率HRが貫通ビアWH1に比べて大きくなっている。このため、テラヘルツ波が貫通ビアWH3を含む部分を透過する時間は、貫通ビアWH1を含む部分を透過する場合に比べて短くなる。すなわち、貫通ビアWH3を含む部分を検査したときの時間差ΔTの値が、貫通ビアWH1を含む部分を検査したときに比べて大きくなる。つまり、貫通ビアWH3の算出深度CH3は、算出深度CH1(実測深度MH1)に比べて大きい値となる。よって、貫通ビアWH3に関する形状指標値(=CH3/WH1)は、貫通ビアWH1の形状指標値よりも大きい値(図示の例では、1.2)となる。
以上のように、貫通ビアWHの形状が円柱状の凹部でない場合、テラヘルツ波を用いた測定によって算出される貫通ビアWHの算出深度と、干渉法によって実測される貫通ビアWHの実測深度との間に相違が生じる。具体的には、円柱形の体積を基準として、円柱形よりも体積が大きくなるほど、形状指標値は大きくなり、円柱形よりも体積が小さくなるほど形状指標値が小さくなる。本実施形態では、この相違を、形状指標値として検出することによって、貫通ビアWHの形状に関する情報を取得することができる。
なお、あらかじめ、貫通ビアWHの形状と形状指標値とを一対一に対応付けて定義することにより、ステップS22にて取得された形状指標値から貫通ビアWHの形状を一義的に特定するようにしてもよい。この場合、例えば入力部32を介して貫通ビアWHの形状と形状指標値との対応関係を示すデータを入力し、凹部形状のデータベースとして記憶部31等に格納しておけばよい。そして、形状指標取得部27が取得した形状指標値を該データベースにおいて照合することによって、貫通ビアWHの形状を決定することができる。これによれば、各検査領域に形成されている形状を迅速に特定することが可能となる。
図2に戻って、検査領域毎に貫通ビアWHの形状指標値が取得されると、基板検査装置100は、画像生成部28によって、基板Wにおける貫通ビアWHの形状指標値の分布を表現した画像を生成して、表示部33に表示する(ステップS23)。
図12は、表示部33に表示される検査結果の表示画像33Iの一例を示す図である。図12では、所定の間隔(例えば、5mm間隔)で基板Wを走査して、基板Wの複数の検査領域における貫通ビアWHの形状指標値の分布を表現した表示画像33Iを図示している。
図12に示した表示画像33Iは、基板Wの各検査領域に相当する部分を、ステップS22にて取得された形状指標値の大きさに応じて複数の色で塗り分けたものであり、形状指標値分布を視覚的に表現した画像となっている。なお、形状指標値の違いは、グレースケールカラー、フルカラー、または網点による疑似カラーなどで表現することができる。なお、基板Wの各検査領域に対応する部分毎に、アルファベットなどの文字、記号または図形などでラベル付けされることにより識別可能に表現されていてもよい。また形状指標値の数値自体を表示したり、形状指標値の大きさに応じた長さの棒等を表示したりするようにしてもよい。このような表示画像33Iを表示部33に表示することによって、基板Wの広い範囲について、形成されている貫通ビアWHの形状分布を視覚的に把握することができる。したがって、貫通ビアWHの形成不良の特定などを容易に行うことができる。
なお、表示画像33Iにおいて、上述したように、予め形状指標値毎に具体的な形状を登録したデータベースを利用して、取得された形状指標値に応じて貫通ビアWHの形状を示す画像を表示部33に表示するようにしてもよい。例えば図12に示したように、図の凡例330として、形状指標値に対応する色とともに、形状指標値に対応する凹部の形状が表示部33に表示されるようにしてもよい。以上が、基板検査装置100による、基板Wの検査工程の説明である。
本実施形態では、検査領域に対しては、特定の検出タイミングでテラヘルツ波の電場強度を検出することで、テラヘルツ波が参照領域である平坦領域91Rを透過する透過時間と、ビア形成領域92Rを透過する透過時間との時間差が取得される。そして、この時間差に基づいて算出される貫通ビアWHの算出深度と、実測に基づく貫通ビアWHの実測深度とから、貫通ビアWHの形状を示す形状指標値が取得される。したがって、本実施形態に係る基板検査装置100においては、基板Wに形成された貫通ビアWHの形状を、非破壊および非接触にて検査することが可能となっている。
また、半導体3次元デバイスなどでは、半導体ウエハを利用する。そのため、貫通ビアWHの深さについては、半導体ウエハ全体でおおよその深さの分布を調べる必要がある。ここで、全ての検査領域について、テラヘルツ波の時間波形を構築し、基準となるテラヘルツ波の時間波形との時間差を算出すると、多大な時間が必要となる。これに対して、本実施形態では、検査領域を透過したテラヘルツ波の特定の検出タイミングで電場強度を検出することで時間差を取得することができる。したがって、極めて高速に半導体ウエハの全域を検査することができる。
{2. 変形例}
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、貫通ビアWHの形状のバリエーションとして、円柱状、円錐台状、またはフラスコ状の貫通ビアWH1,WH2,WH3を具体例としている。しかしながら、その他の種々の形状(多角柱、多角錐台、円錐または多角錐など)についても、本願発明は有効である。
また、上記実施形態では、基板Wの表面の貫通ビアWHの深度を測定する例を挙げているが、基板検査装置100の検査対象は、これに限定されるものではない。基板検査装置100においては、微小電気機械素子(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)に形成される凹部の形状を検査することもできる。なお、MEMSの具体例としては、例えば、デジタルミラーデバイスや加速度センサや圧力センサ、インクジェットプリンタなどのヘッドといったものが挙げられる。
図13は、MEMSが形成された基板WA表面の断面を拡大して示す断面斜視図である。図13に示したMEMSの例では、基板WAの表面に、相互に並行に延びる溝状の凹部WH1Aが規則的に複数形成されている。基板検査装置100によると、このような凹部WH1Aが形成された基板WB表面の開口率を取得することによって、凹部WH1Aの深度を取得することができる。なお、基板WAの開口率は、基板WAの観察像から直接取得するようにしてもよいし、凹部WAの形成間隔(ピッチ)を用いた演算に基づいて取得するようにしてもよい。
また、図13に示したようなMEMSの凹部形状に関する情報を得る場合にも、本願発明は有効である。図14は、基板WAに形成された形状の異なる2つの凹部WH1A,WH2Aの断面図である。図14に示したように、基板WAの表面には、厚さ方向に沿ってまっすぐに延びる(つまり、開口断面積が略一定である)凹部WH1Aと、底部に向かうにつれて穴の開口断面積が狭まる凹部WH2Aとが形成されている。このような場合、凹部WH2Aにおいて、テラヘルツ波を使って深度を算出すると、深度測定装置16を用いた実測深度よりも小さい算出深度が取得される。したがって、凹部WH2Aについては、形状指標値が1.0よりも小さい値となる。一方、凹部WH1Aについては、形状指標値は1.0または1.0に近似する値となる。したがって、MEMSが形成された基板WAの場合であっても、凹部WH1A,WH2Aの形状に応じた形状指標値を取得することができる。したがって、凹部WH1A,WH2Aの形状を非破壊、非接触にて検査することができる。
また、制御部17、時間波形構築部21、屈折率取得部22、時間差取得部24、開口率取得部25、ビア深度算出部26、形状指標取得部27、および、画像生成部28の処理部は、専用の回路などでハードウェア的に実現してもよいし、これら処理部の機能の一部または全部を、コンピュータを利用して、ソフトウェア的に実現してもよい。
さらに、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。