JP5971911B2 - X線ct装置 - Google Patents

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Description

本発明はX線CT(Computed Tomography)装置に係り、特に測定系の測定上限を超えた場合に測定データを補正する技術に関する。
医用画像診断装置の一つであるX線CT(Computed Tomography)装置とは、被検体にX線を照射するX線管装置と、被検体を透過したX線量を投影データとして検出するX線検出器と、を被検体の周囲で回転させることにより得られる複数角度からの投影データを用いて被検体の断層画像を再構成し、再構成された断層画像を表示するものである。X線CT装置で表示される画像は、被検体の中の臓器の形状を描写するものであり、画像診断に使用される。
X線CT装置では、X線吸収係数の大きく異なる空気と骨を同時に計測するとともに、被検体内のX線吸収係数のわずかな差異を描写するために、ダイナミックレンジの広い測定系を備えている。しかしながら、撮影条件によっては、測定系の測定上限を超えたX線が検出される場合がある。測定系に検出されるX線が測定上限を超えた場合、いわゆるオーバーフローの状態の場合、測定系は真の値を出力することができず、測定上限値を出力し続けることになる。測定系の出力が真の値と異なる状態で再構成される断層画像には、いわゆるアーチファクトと呼ばれる偽像が含まれることになる。特許文献1では、オーバーフローが発生した場合でも、断層像中のアーチファクトを低減するために、オーバーフローしていない範囲のデータを用い、線形補間や多項式補間を組み合わせて、オーバーフローしている範囲のデータを補正することを開示している。
特開2006-26410号公報
しかしながら、特許文献1で用いられるような補間処理では、オーバーフローしている範囲が広い場合に、補間処理の結果と真のデータとの差異が大きくなり、断層像中にアーチファクトが発生してしまうことがある。
そこで本発明の目的は、計測データの中にオーバーフローデータが含まれ、オーバーフローしている範囲が広い場合であっても断層像中のアーチファクトを低減可能なX線CT装置を提供する。
上記目的を達成するために本発明は、本撮影時に取得されたデータの中から計測系の計測上限を超えたデータ範囲を特定し、特定されたデータ範囲のデータを所定のデータで置換してから画像再構成をするX線CT装置である。
具体的には、X線を照射するX線照射部と、X線を検出して検出したX線量に応じた電気信号を出力するX線検出素子を有するX線検出部と、前記X線検出部から出力されるアナログデータをデジタルデータに変換する信号変換部と、前記デジタルデータに基づき断層像を再構成する再構成部と、を備えるX線CT装置であって、前記デジタルデータの中にオーバーフローデータが含まれているか否かを判定するオーバーフロー判定部と、前記オーバーフロー判定部が前記デジタルデータの中にオーバーフローデータが含まれていると判定したときに、オーバーフローしているデータ範囲をオーバーフローデータ範囲として特定するデータ範囲特定部と、前記デジタルデータの中のオーバーフローデータ範囲のデータ、若しくは前記デジタルデータに基づいて算出されたデータの中のオーバーフローデータ範囲のデータを所定のデータに置換処理する置換処理部と、をさらに備え、前記再構成部は、置換処理されたデータに基づき断層像を再構成することを特徴とする。
本発明によれば、計測データの中にオーバーフローデータが含まれ、オーバーフローしている範囲が広い場合であっても断層像中のアーチファクトを低減可能なX線CT装置を提供することができる。
本発明のX線CT装置の全体構成を示すブロック図 X線CT装置におけるデータ処理の流れを示す図 スキャナの回転角度に対応する計測データにオーバーフローデータがない場合を説明する図 オーバーフローデータがない場合のエア補正処理を説明する図 スキャナの回転角度に対応する計測データにオーバーフローデータがある場合を説明する図 オーバーフローデータがある場合のエア補正処理を説明する図 実施形態1のオーバーフロー補正処理の流れを示す図 実施形態1のオーバーフロー補正処理を補足する図 実施形態2のオーバーフロー補正処理の流れを示す図 実施形態2のオーバーフロー補正処理を補足する図
以下、添付図面に従って本発明に係るX線CT装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
(第一の実施形態)
図1は本実施形態のX線CT装置の全体構成を示すブロック図である。以降の説明と対応付けるため、図1にはX/Y/Z方向を示している。図1に示すようにX線CT装置1は、スキャンガントリ部100と操作ユニット120とを備える。
スキャンガントリ部100は、X線管装置101と、回転円盤102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集装置107と、寝台装置105と、ガントリ制御装置108と、寝台制御装置109と、X線制御装置110と、を備えている。X線管装置101は寝台装置105上に載置された被検体にX線を照射する装置である。
コリメータ103はX線管装置101から照射されるX線の強度分布を調整するとともに、X線の照射範囲を制限する装置である。回転円盤102は、寝台装置105上に載置された被検体が入る開口部104を備えるとともに、X線管装置101とX線検出器106を搭載し、被検体の周囲を回転するものである。X線検出器106は、X線管装置101と対向配置され被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置であり、多数の検出素子を回転円盤102の回転方向(チャネル方向ともいう)に1次元に配列したもの、あるいは多数の検出素子を回転円盤102の回転方向と回転軸方向(スライス方向ともいう)との2次元に配列したものである。
データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置108は回転円盤102の回転及び傾斜を制御する装置である。寝台制御装置109は、寝台装置105の上下前後左右動を制御する装置である。X線制御装置110はX線管装置101に入力される電力を制御する装置である。
操作ユニット120は、入力装置121と、画像処理装置122と、表示装置125と、記憶装置123と、システム制御装置124とを備えている。入力装置121は、被検体氏名、検査日時、撮影条件等を入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイス等である。画像処理装置122は、データ収集装置107から送出される計測データを演算処理してCT画像の再構成を行う装置である。表示装置125は、画像処理装置122で作成されたCT画像を表示する装置であり、具体的にはCRT(Cathode-Ray Tube)や液晶ディスプレイ等である。
記憶装置123は、データ収集装置107で収集したデータ及び画像処理装置122で作成されたCT画像の画像データ等を記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御装置124は、これらの装置及びガントリ制御装置108と寝台制御装置109とX線制御装置110を制御する装置である。
入力装置121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流等に基づきX線制御装置110がX線管装置101に入力される電力を制御することにより、X線管装置101は撮影条件に応じたX線を被検体に照射する。X線検出器106は、X線管装置101から照射され被検体を透過したX線を多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特に回転速度等に基づいて回転する。寝台装置105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特にらせんピッチ等に基づいて動作する。
図2は、以上説明したX線CT装置1を用いてCT撮影を行う際の処理の流れを示す図である。本実施形態において、図2に示す処理の流れを実行するのはシステム制御装置124であるが、画像処理装置122やそれ以外のプロセッサ、専用の処理装置が図2の処理の流れを実行しても良い。以下、図2の各ステップについて図3乃至図8を参照しながら説明する。
(ステップ201)
X線管装置101からのX線照射とX線検出器106による透過X線分布の計測が回転円盤102の回転とともに繰り返される。なお、各々のX線管装置101の位置におけるデータ計測の取得単位を以降では「ビュー」と呼ぶ。
図3は透過X線分布の計測結果の一例で、回転円盤102の回転角度θが0degのビューのときの透過X線分布304と、θが90degのビューのときの透過X線分布306を示す図である。透過X線分布は横軸がX線検出器106のチャネル(ch)方向であり、縦軸が検出された透過X線量のデジタルデータである。なお、回転角度θが0deg及び90deg以外のビューにおいても透過X線分布が計測される。
X線管装置101から照射されるX線は、コリメータ103の一部であるX線補償フィルタ103aを透過する。X線補償フィルタ103aは図3に示すような中央部が最も薄く周辺に向かうにしたがい厚くなる形状を有している。このような形状のX線補償フィルタ103aを透過したX線の強度分布は、中央ch付近が最も大きく、周辺chに向かうにしたがい減少するような山型の強度分布となる。
X線補償フィルタ103aを透過したX線は被検体301に照射される。図3では、撮影部位が頚部であって、回転円盤102の回転中心302よりも下側に被検体301が位置しているので、θが0degのビューのときには中央ch周辺の透過X線量が小さくなっており、θが90degのビューのときには中央chよりも右側の透過X線量が小さくなっている。なお、どちらの場合も透過X線量の計測データは測定上限値305には達していない。すなわち、図3ではオーバーフローは発生していない。
(ステップ202)
本ステップでは、ステップ201で取得された計測データに対して前処理と呼ばれる様々な処理が施される。前処理には、オフセット補正処理、Log変換処理、リファレンス補正処理、エア補正処理等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
ここでエア補正処理について図4を用いて説明する。エア補正処理とは、被検体301がある状態の透過X線量と、被検体301がない状態、すなわち空気のみを透過した場合の透過X線量とを用いて、空気に対する被検体301のX線減弱率を求める処理である。図4には、エア補正処理を施す前のデータとして、図4(a)に回転角度θが0degのときのデータ304、図4(b)に回転角度θが90degのときのデータ306がそれぞれ示されている。また、図4(a)と図4(b)には、空気のみを透過した場合の透過X線分布、いわゆるエアデータが点線307と点線309でそれぞれ示されている。エアデータは、オーバーフローしない程度のX線量を照射することにより、ステップ201の計測とは別に取得される。
透過X線分布304、306に対して、エアデータ307、309を用いてエア補正処理を施した後のデータとして、図4(c)に回転角度θが0degのときのデータ308を、図4(d)に回転角度θが90degのときのデータ310をそれぞれ示す。エア補正処理を施した後のデータ308、310は、空気のみを透過した部分は約“0”に、被検体301を透過した部分は正の値となる。この正の値は、正の値を示した部分にX線を減弱させる物体が存在していたことを示している。
次に、オーバーフローが発生した場合について図5、6を用いて説明する。図5は、図3と同様な透過X線分布の計測結果の例であるが、図3の場合よりも照射されるX線量が大きく、回転角度θが90degのときに透過X線量の計測データが測定上限値305に達し、オーバーフローが発生したことを示している。なお、図5では回転角度θが0degのときにはオーバーフローは発生していない
照射されるX線量が大きすぎる場合以外にも、X線検出器106の後段に接続されるアンプに設定されたゲインが高すぎる場合にオーバーフローが生じる。例えば、X線減弱率の大きい腹部や骨盤部の画質を重視してアンプのゲインを高く設定した状態で全身撮影をした場合、頸部や脚部では回転中心付近に空気が存在するだけでありX線を減弱させる物体がないため、オーバーフローが生じることとなる。

図6は、図5に示したデータに対してエア補正処理を施した状態を、図4と同様に示した図である。すなわち、図6(a)と図6(b)はエア補正処理前、図6(c)と図6(d)はエア補正処理後のデータであり、図6(a)と図6(c)は回転角度θが0deg(オーバーフローなし)、図6(b)と図6(d)は回転角度θが90deg(オーバーフローあり)のときである。また、図6(a)と図6(b)には、点線313と点線315により、測定上限値305を超えるエアデータが示されている。しかし、エアデータ313、315は、オーバーフローしない程度のX線量を照射することにより取得された計測値に対し、図5の透過X線分布の計測時に照射されたX線量と、エアデータ計測時に照射されたX線量との比を乗じて得られた計算機上の値であるので、オーバーフローはしていない。なお、計測値に対して乗じられる比の値は、図5の透過X線分布の計測時に設定されたX線管電流の値と、エアデータ計測時に設定されたX線管電流の値との比であっても良い。
オーバーフローのないデータに対しエア補正処理を施した結果である図6(c)中のデータ314は、図4(c)のデータ308と同様に、空気のみを透過した部分は約“0”に、被検体301を透過した部分は正の値となる。これに対し、オーバーフローのあるデータに対しエア補正処理を施した結果である図6(d)中のデータ316には、本来、約“0”を示すべき空気のみを透過した範囲317において正の値を示している。このようなデータを使って、本ステップ以降で画像再構成を実行することにより作成された画像には、偽像(アーチファクト)が発生することになる。
そこで、本実施形態では、オフセット補正処理、Log変換処理、リファレンス補正処理、エア補正処理等の処理に加えて、オーバーフロー補正処理が実施される。オーバーフロー補正処理とは、オーバーフローをしているデータを抽出し、抽出されたオーバーフローデータを所定のデータに置換する処理である。
図7を用いて、オーバーフロー補正処理を含む前処理の流れについて処理ステップ毎に説明する。なお各処理ステップを説明する際、必要に応じて図8を参照する。
(ステップ701)
本ステップでは、ステップ201で計測されたデータの中にオーバーフローしているデータがあるかどうかを判定する。オーバーフローしているデータがある場合にはステップ702へ進み、無い場合にはステップ705へ進む。
オーバーフローしているデータの有無の判定は、例えば計測されたデータの値が測定上限値305と等しいか否かに基づいても行われる。すなわち、計測値が測定上限値305と等しければオーバーフローしていると判定し、等しくなければオーバーフローしていないと判定する。
また、当該計測値の比較だけでなく、当該計測値の周辺の計測値も含めてオーバーフローしているか否かを判定しても良い。すなわち、測定上限値305と等しい計測値を示すチャネルに隣接するチャネルの計測値も測定上限値305に等しければオーバーフローしていると判定する。オーバーフローが発生した場合、あるチャネルのみがオーバーフローすることは稀であるので、隣接するチャネルでの計測値も含めてオーバーフローを判定することにより判定精度を向上できる。
なお、計測されたデータは、X線検出器106のチャネル(i)、データ計測の取得単位であるビュー(j)、X線検出器106のスライス方向の列(k)のパラメータの配列構造となっているので、以降では計測されたデータをD(i,j,k)と記すこととする。
(ステップ702)
本ステップでは、オーバーフローしているデータ範囲を特定し、記憶装置123へ記憶する。例えば、オーバーフローしている計測データの配列が(i0,j0,k0)である場合には当該配列(i0,j0,k0)を記憶装置123に記憶する。
本ステップの処理内容について図8を参照しながら説明する。図8(a)には、計測されたデータD(i,j,k)の一例として、計測データ312が示されている。計測データ312は範囲401において測定上限値305に達しており、範囲401においてオーバーフローしている。範囲401は、is≦i≦ie、j=j0、k=k0、であるので、オーバーフローしているデータ範囲として、(is,j0,k0)から(ie,j0,k0)までのデータ範囲が記憶される。
(ステップ703)
本ステップでは、ステップ702で特定されたデータ範囲に対応するデータ範囲のエアデータが読み出される。エアデータは、ステップ201の計測に先立って、被検体がない状態で計測される。計測結果は配列(i,j,k)と対応付けられ、エアデータAD(i,j,k)として記憶装置123に記憶されている。なお、エアデータの計測は、ステップ201の計測の後に実行されても良い。
本ステップの処理内容について図8を参照しながら説明する。図8(b)には、エアデータAD(i,j,k)の一例として、データ315が点線で示されている。ステップ702で特定されたデータ範囲が(is,j0,k0)から(ie,j0,k0)であれば、エアデータAD(i,j,k)のうちAD(is,j0,k0)からAD(ie,j0,k0)までが読み出される。すなわち、図8(b)のデータ315のうち図8(d)に示したデータ402が読み出される。なお、データ315はオーバーフローしない程度のX線量を照射することにより取得されたエアデータの計測値に、図8(a)のデータ312の計測時に設定されたX線管電流の値と、エアデータ計測時に設定されたX線管電流の値との比を乗じて得られた計算器上の値であるので、測定上限値305を超える値であっても取り扱うことが可能である。
(ステップ704)
本ステップでは、ステップ702でオーバーフローしていると特定されたデータ範囲のデータが、ステップ703で読み出されたエアデータと置換される。このような置換処理により、データ312のうちオーバーフローしているデータ範囲401のデータが補正され、オーバーフローが解消されることとなる。
本ステップの処理内容について図8を参照しながら説明する。図8(a)に示されたデータ312のうち、範囲401のデータが測定上限値305に達しており、オーバーフローしているデータとして、計測値D(is,j0,k0)からD(ie,j0,k0)までがステップ702にて特定された。また範囲401に対応するエアデータとして、図8(d)のデータ402がステップ703にて読み出された。本ステップでは、図8(a)に示されたデータ312のうち、計測値D(is,j0,k0)からD(ie,j0,k0)までをデータ402と置換することで、図8(c)に示すデータ403が得られることとなる。
(ステップ705)
本ステップでは、ステップ704で得られたデータに対し、オーバーフロー補正処理以外の前処理として、オフセット補正処理、Log変換処理、リファレンス補正処理、エア補正処理等が実行される。
本ステップの処理結果、特にエア補正処理の結果について図8を参照しながら説明する。本ステップでは、図8(c)に示すデータ403に対して、図8(b)に示すエアデータ315を用いてエア補正処理が実行され、図8(e)に示されたデータ404が取得される。すなわち、ステップ704においてデータ312のオーバーフローが解消されたデータ403が取得されたので、本ステップにてエア補正処理を実行しても、図6(d)中のデータ316のような誤ったデータ範囲317を含んだデータを算出せずに済む。
なお、図8ではオーバーフローしているデータ範囲がチャネル方向に広がっている場合について例示したが、オーバーフローしているデータ範囲がビュー方向あるいはスライス方向に広がっている場合においても同様に扱うことができる。
ステップ701からステップ705までの処理の流れを実行することにより、オーバーフローが補正されたデータが得られる。図2の説明に戻る。
(ステップ203)
本ステップでは、ステップ202で前処理が施されたデータを用いて、公知の方法により画像再構成が実施され、被検体301の断層像が作成される。ステップ202でオーバーフロー補正処理が施されたデータを用いるので、オーバフローによるアーチファクトを抑制した断層像が作成される。
(ステップ204)
本ステップでは、ステップ203で作成された断層像が表示装置125に表示される。
以上説明した第一の実施形態により、計測データの中にオーバーフローデータが含まれ、オーバーフローしている範囲が広い場合であっても、オーバーフローデータを適切に補正できるので、断層像中のアーチファクトを低減可能となる。特に、アンプのゲインを高く設定した状態で全身撮影をし、頸部や脚部においてオーバーフローが生じたとしても、オーバーフローに起因するアーチファクトを低減することができる。
なお、第一の実施形態では、エアデータの計測値がオーバーフローしていないことが前提条件となる。そこで何らかの原因により、エアデータの計測値がオーバーフローした場合に備えて、エアデータの計測値にオーバーフローしているデータが含まれるか否かを判定し、オーバーフローが含まれていた場合には、エアデータの再計測を警告するようにしても良い。
(第二の実施形態)
以下、本実施形態が第一の実施形態と異なる点についてのみ説明し、第一の実施形態と同じ点については説明を省略する。本実施形態のX線CT装置の全体構成及びCT撮影を行う際の処理の流れは第一の実施形態と同じである。本実施形態と第一の実施形態との違いは、ステップ202の処理、すなわちオーバーフロー補正処理を含む前処理の流れである。
図9を用いて、本実施形態のオーバーフロー補正処理を含む前処理の流れについて処理ステップ毎に説明する。
(ステップ901)
本ステップでは、ステップ701と同様に、ステップ201で計測されたデータの中にオーバーフローしているデータがあるかどうかを判定する。オーバーフローしているデータがある場合にはステップ902へ進み、無い場合にはステップ903へ進む。なお、オーバーフローの有無の判定はステップ701と同じであるので、詳細な説明は省略する。
(ステップ902)
本ステップでは、ステップ702と同様に、オーバーフローしているデータ範囲を特定し、記憶装置123へ記憶する。具体的な処理内容はステップ702と同じであるので、詳細な説明は省略する。
(ステップ903)
本ステップでは、ステップ201で計測されたデータに対し、オーバーフロー補正処理以外の前処理として、オフセット補正処理、Log変換処理、リファレンス補正処理、エア補正処理等が実行される。
本ステップの処理結果、特にエア補正処理の結果について図10を参照しながら説明する。本ステップでは、図10(a)に示すデータ312に対して、図10(b)に示すエアデータ315を用いてエア補正処理が実行され、図10(c)に示されたデータ316が取得される。すなわち、オーバーフロー補正処理が施されていないデータ312に対してエア補正処理が実行されるので、誤ったデータ範囲317を含んだデータ316が取得されることとなる。ただし、ステップ902において、データ316のうち、どの範囲がオーバーフローしているかは特定されている。
(ステップ904)
本ステップでは、ステップ903にて取得されたデータのうち、ステップ702でオーバーフローしていると特定されたデータ範囲のデータが、ゼロデータと置換される。このような置換処理により、オーバーフローによって誤ったデータとなったデータが補正され、オーバーフローの影響が解消されることとなる。
本ステップの処理内容について図10を参照しながら説明する。ステップ901にてオーバーフローしているデータがあると判定された場合、ステップ902にてオーバーフローしているデータ範囲401として(is,j0,k0)から(ie,j0,k0)までが特定されており、ステップ903にて図10(c)に示されたデータ316が取得されている。本ステップでは図10(c)に示されたデータ316のうち、(is,j0,k0)から(ie,j0,k0)までのデータ範囲に対応するデータ317がゼロデータと置換されることで、図10(d)に示すデータ406が得られることとなる。すなわちオーバーフローの影響が解消されることとなる。
なお、ステップ901においてオーバーフローしているデータが存在しないと判定された場合は、ステップ902が実行されず、特定されたデータ範囲がないので、本ステップでは置換処理が実行されないこととなる。
以上説明した第二の実施形態により、計測データの中にオーバーフローデータが含まれ、オーバーフローしている範囲が広い場合であっても、オーバーフローデータの影響を解消できるので、断層像中のアーチファクトを低減可能となる。特に、本実施形態では置換処理においてエアデータの読み出しを必要としないので、第一の実施形態に比べ処理の高速化が可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、第一の実施形態では、ステップ705をステップ701からステップ704までの処理の後に実行しているが、ステップ701に先立って実行しても良い。また第二の実施形態では、ステップ903をステップ902の後に実行しているがステップ901に先立って実行しても良い。
1 X線CT装置、100 スキャンガントリ部、101 X線管装置、102 回転円盤、103 コリメータ、104 開口部、、105 寝台装置、106 X線検出器、107 データ収集装置、108 ガントリ制御装置、109 寝台制御装置、、110 X線制御装置、120 操作ユニット、121 入力装置、122 画像処理装置、123 記憶装置、、124 システム制御装置、125 表示装置

Claims (3)

  1. X線を被検体に照射するX線照射部と、前記被検体を透過したX線を検出して検出したX線量に応じた電気信号を出力するX線検出素子を有するX線検出部と、前記X線検出部から出力されるアナログデータをデジタルデータに変換する信号変換部と、前記デジタルデータに基づき前記被検体の断層像を再構成する再構成部と、を備えるX線CT装置であって、
    前記デジタルデータの中にオーバーフローデータが含まれているか否かを判定するオーバーフロー判定部と、
    前記オーバーフロー判定部が前記デジタルデータの中にオーバーフローデータが含まれていると判定したときに、オーバーフローしているデータ範囲をオーバーフローデータ範囲として特定するデータ範囲特定部と、
    前記デジタルデータの中のオーバーフローデータ範囲のデータ、若しくは前記デジタルデータに基づいて算出されたデータの中のオーバーフローデータ範囲のデータを所定のデータに置換処理する置換処理部と、をさらに備え、
    前記再構成部は、置換処理されたデータに基づき断層像を再構成し、
    前記置換処理部は前記オーバーフローデータ範囲のデータを置換処理するにあたり、本撮影とは別に前記被検体がない状態で計測されたエアデータを用い
    前記データ範囲特定部は、前記X線検出部の第一チャネルでの計測値とともに前記第一チャネルの周辺のチャネルの計測値も含めて前記第一チャネルのオーバーフローを判定することを特徴とするX線CT装置。
  2. 請求項1に記載のX線CT装置において、
    前記置換処理部は前記本撮影のときのX線管電流の値と前記エアデータを取得したときのX線管電流の値との比を前記エアデータに乗じて得られた値により前記オーバーフローデータ範囲のデータを置換処理することを特徴とするX線CT装置。
  3. 請求項1または2に記載のX線CT装置において、
    前記エアデータの中にはオーバーフローデータが含まれていないことを特徴とするX線CT装置。
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