JP5970737B2 - 熱音響機関 - Google Patents
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Description
ここで、一般的に試みられている熱音響機関の動作温度は500℃程度であり(非特許文献3参照)、現実の自動車や工場からの廃熱温度(100℃〜300℃程度)と比較して格段に高温である。そこで、熱音響機関の動作温度を低下させる試みとしては、近年、蓄熱器を多段直列配置することで、各蓄熱器で仕事流Wの累乗増幅を実現する「多段熱音響機関」が提案されている(非特許文献4参照)。
進行波型の熱音響エンジンは、等温可逆的な熱交換によってエネルギ変換を行うために、理想的にはカルノー効率が期待できる。しかしながら、これを実現するためには外部入力、又は音波のフィードバックが必須である。1998年に矢崎らはトーラス型のループ内に蓄熱器を設置することで音波のフィードバックを行い、初めて実用的な進行波型エンジンを実証した(T.Yazaki et.al., Phys. Rev. Lett. 81, pp.3128-3131, 1988.)。しかし、スタック位置が低音響インピーダンス(圧力と流速の比)であるために、粘性散逸とドリームパイプ効果が大きいという面が存在した。ドリームパイプ効果とは以下の事項をいう。温度勾配のある容器内の流体を外部ピストン等で強制振動させると、高温部から低温部へと非常に大きな熱流が発生する。その有効的熱輸送量は振動がない場合の1000倍以上に達する。結果的に流体を振動させただけで金属の熱伝導度を上回る熱輸送が可能となる。しかしながら、エンジンとして熱音響機関を用いる場合には、低温側への熱輸送は効率の低下につながるため、ドリームパイプ効果は熱音響エンジンの効率を低下させる大きな要因となる。
そして、加熱器に連結する共鳴管の流路断面積を、冷却器に連結する共鳴管の流路断面積に対し、自励振動による仕事流Wの増幅率と同じ、あるいはそれの±30%の範囲内にある増幅率で拡大することで、蓄熱器以外の位置では音響インピーダンスの値がρc程度の進行波とすることができる。また、蓄熱器の流路断面積を、冷却器に連結する共鳴管の流路断面積の4〜36倍とすることで、蓄熱器位置全てで高音響インピーダンスの進行波とすることができる。
このような構成によれば、作動気体に発生した自励振動による音響エネルギが、発電機によって電気エネルギに変換される。そして、熱音響発電機として、低温かつ高効率で駆動することができる。
また、熱音響発電機として用いた場合、従来の熱音響機関と比較して発電量の向上が可能であり、熱音響冷凍機として用いた場合、従来の熱音響機関と比較して低温で高熱効率の駆動を実現することが可能である。
図1に示すように、熱音響機関1は、作動気体が封入され、全体として環状に形成された複数の共鳴管10a〜10fと、前記複数の共鳴管10a〜10fを連結する複数の原動機20(20a〜20d)と、前記複数の共鳴管10a〜10fのうち、環状を形成するループの始点と終点との交点から、共鳴管10に連通して一端が接続された枝管(枝管共鳴管)11とを有する。
以下、各構成について説明する。
共鳴管10a〜10fは、作動気体が満たされる管であり、全体として環状に形成されている。ここでは、6本の共鳴管10a〜10fからなり、原動機20を介して接続されて環を構成し、環状の共鳴管10を構成している。すなわち、共鳴管10bは、図1における紙面上、右側に配置されてその上下が湾曲し、共鳴管10dは、図1における紙面上、左側に配置されてその上下が湾曲している。また、共鳴管10a、10c、10e、10fは、直線状の管である。ここで、図1の破線(符号A1)を基準として図1における紙面上、右側の管部が共鳴管10aであり、左側の管部が共鳴管10fである。共鳴管10aと共鳴管10fの境界は厳密に規定されるものではなく、例えば、符号A1の破線が、紙面上、やや右側、あるいは左側に位置するものであってもよい。そして、これら共鳴管10a〜10fにより、全体としての共鳴管10a〜10fからなる管路は角丸の四角形に形成され、環状を構成している。
この始点および終点では、共鳴管10eおよび10fの流路断面積並びに長さを変更し、調整することで、共鳴管10aと圧力振幅を同等とする。
そして、この共鳴管10における始点および終点の位置(すなわち交点)に連通して枝管11が分岐状に接続されている。
枝管11は、作動気体が封入される直線状の管であり、その一端11aが共鳴管10の一部、ここでは、共鳴管10aと共鳴管10fの連結部に連通して、すなわち作動気体が共鳴管10と枝管11とを流通可能な状態で接続されている。つまり枝管11は、前記複数の共鳴管10a〜10fのうち、環状を形成するループの始点と終点との位置(交点)から、共鳴管10に連通して分岐している。なお、「始点および終点の位置から分岐している」とは、枝管11と共鳴管10の連結部分における、枝管11の延長線上がこの始点および終点を含むことを意味する。ここで、図1の破線(符号A2)を基準として図1における紙面上、上側の管部が枝管11であり、下側の管部が共鳴管10(10f,10a)である。枝管11と共鳴管10の境界は厳密に規定されるものではなく、例えば、符号A2の破線が、紙面上、やや上側に位置するものであってもよい。
なお、作動気体としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、ヘリウムとアルゴンとの混合物や空気等がよく用いられる。
原動機20は、複数の共鳴管10a〜10fを連結している。「原動機が共鳴管を連結している」とは、封入した作動気体が流通可能なように、原動機を介して共鳴管が接続されている状態をいう。ここでは、4つの原動機20a〜20dが共鳴管10a〜10eに連結され、共鳴管10fが共鳴管10eおよび10aに連結することで、共鳴管10a〜10fが一体の環状の共鳴管10として原動機20a〜20dにより連結されている。
原動機20の構成について、ここでは、原動機20aを取り上げて説明するが、原動機20b〜20dについても原理は同様である。
蓄熱器(原動機用蓄熱器)21は、共鳴管10の管路に設けられ、作動気体を加熱および冷却するものである。
蓄熱器21は、加熱器22および冷却器23によって蓄熱器21の両端部間に温度勾配を形成して作動気体の自励振動を発生させる。すなわち蓄熱器21は、その一端部(以下、適宜、高温部21bと称する)と、その他端部(以下、適宜、常温部(原動機側常温部)21aと称する)との間に生じる温度差を保つことによって、主として作動気体の自励振動(圧力振動)による仕事流Wを発生する機能を有している。蓄熱器21は、例えば共鳴管10の延在方向(管路方向)に多数の平行通路を有するセラミックス製のハニカム構造体や、多数枚のステンレス鋼メッシュ薄板を微小ピッチで積層した構造体とすることができる。あるいは金属繊維よりなる不織布状物等を用いることも可能である。
加熱器22は、蓄熱器21の一端側に隣接して共鳴管10の管路に設けられ、蓄熱器21の一端部(高温部21b)を加熱するものである。すなわち加熱器22は、外部熱源に接続して蓄熱器21の一端を加熱する熱入力部として機能する。加熱器22は、例えば、加熱用の熱交換器から構成される。具体的には、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成とされる。この加熱器22には図示しない加熱装置が接続されており、その外周に設けられた環状部材22aを介して加熱処理される構成になっている。なお、図面では便宜上、蓄熱器21と加熱器22の間に環状部材22aの左壁が示されているが、加熱器22は、この左壁を通して蓄熱器21の一端側と隣接、すなわち密着している。
冷却器23は、蓄熱器21の他端側に隣接して共鳴管10の管路に設けられ、蓄熱器21の他端部(常温部21a)の熱を外部に放出するものである。すなわち冷却器23は、冷却水や空気等を用いて蓄熱器21の他端の熱を外部に放出して冷却する機能を有している。冷却器23は、例えば、冷却用の熱交換器から構成される。冷却器23としては、基本的には加熱器22と同一構成で、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成になっている。この冷却器23は、その周囲に冷却ブラケット23aが配設されている。この冷却ブラケット23aには図示しない冷却水路が接続されており、冷却水路を流れる冷却水により、冷却器23は冷却ブラケット23aを介して一定の冷却温度を維持しうる構成になっている。なお、図面では便宜上、蓄熱器21と冷却器23の間に冷却ブラケット23aの右壁が示されているが、冷却器23は、この右壁を通して蓄熱器21の他端側と隣接、すなわち密着している。
ここで、ρは作動気体の密度,cは音速であり、ρcは物理値として一定になる。例えば0.1MPaの空気(300K)の場合ρcは約403.3Ns/m3,3.0MPaの空気(300K)の場合ρcは約12098.1Ns/m3,0.1MPaのヘリウム(300K)の場合ρcは約163.6Ns/m3,0.1MPaのアルゴン(300K)の場合ρcは約517.0Ns/m3である。「ρc程度」とは、音響インピーダンスの値がρcと同一の場合の他、例えば、±30%程度の範囲内であってもよいことを意味する。すなわち、前記のρcの値に対する±30%の範囲内であり、±15%であることがより好ましい。
気体の圧力振幅を、P=|P|exp(iωt)
音波の流速振幅を、U=|U|exp{i(ωt+φ)}
とするとき、
Ζ=P/U={|P|exp(iωt)}/{|U|exp{i(ωt+φ)}}
例えば、原動機20aでは、この原動機20aの加熱器22に連結する共鳴管10bの流路断面積は、この蓄熱器21を備える原動機20aの冷却器23に連結する共鳴管10aの流路断面積に対し、自励振動による仕事流Wの増幅率と同じ、あるいはそれの±30%の範囲内にある増幅率で拡大している。原動機20b〜20dに連結する共鳴管10b〜10eについても同様である。
ここで、「共鳴管の流路断面積」とは、長手方向(流路方向)に対して垂直に切断した場合の流路の断面積であり、管の内径の面積、すなわち、仕事流Wが流通する部位の面積である。「仕事流W」とは、作動気体の振動に基づく仕事、エネルギの移動を意味し、音波によって運ばれる力学的エネルギであり、後記する実施例での式(6)で定義される。具体的には、圧力振幅と断面平均体積流速振幅を乗じ、2で除したものが仕事流Wの値になる。
共鳴管10bの流路断面積を、仕事流Wの増幅率と同じ、あるいはそれの±30%の範囲内にある増幅率で共鳴管10aの流路断面積に対して拡大することで、共鳴管10bにおいても、音響インピーダンスの値がρc程度の進行波を実現することができる。共鳴管10c〜10eについても同様である。
すなわち仕事流Wは、ZR(音響インピーダンス実数部)と次式で関係づけられる。
W=(A/2)(ZR)|U|2
このときZR:音響インピーダンス実数部,A:管内流路断面積,U:流速振幅である。
上式で与えられる仕事流Wの符号は音響パワーの流れの向きを表す。正ならば座標軸の向きに流れ、負ならば逆方向への流れを表す。
例えば、原動機20aの蓄熱器21の流路断面積は、原動機20aに連結する共鳴管10aの流路断面積の4〜36倍とする。原動機20b〜20dについても同様である。
ここで、「蓄熱器の流路断面積」とは、共鳴管の流路断面積に対向する面の断面積であり、仕事流Wが流通する部位の面積である。
蓄熱器の流路断面積を、冷却器に連結する共鳴管の流路断面積の4〜36倍とすることで、蓄熱器位置全てで高音響インピーダンスの進行波とすることができる。なお、4倍未満、あるいは36倍を超えても、蓄熱器の流路断面積が、冷却器に連結する共鳴管の流路断面積よりも大きければ、音響インピーダンスはある程度高くはなるが、4〜36倍の範囲内に比べると高くはなく、熱効率が低下し、実用的ではない。また、36倍を超えると、熱音響機関のサイズが大きくなり、生産性に劣るという問題や、取り扱いが不便になるという問題が生じる。よって、本発明においては、熱効率が比較的高く、かつ生産性や取り扱い等を考慮して、4〜36倍の範囲に規定することとした。
次に、図面を参照して、熱音響機関を用いた熱音響機関の一例として、前記の熱音響機関1を用いた場合の熱音響発電機および熱音響冷凍機について説明する。
図2に示すように、熱音響発電機50は、前記した熱音響機関1に加え、さらに、枝管11の他端11bに接続され、枝管11に連通して、作動気体に発生する自励振動に応動して発電を行なう発電機(リニア発電機)30を備えるものである。発電機30を備える以外については、前記の熱音響機関1で説明したとおりであるので、ここでは発電機30について説明する。
発電機30は、枝管11の他端11bに接続され、枝管11に連通して、さらに共鳴管10の一部(共鳴管10f,10a)に連通するかたちで設けられており、作動気体に発生する自励振動に応動して発電を行なうリニア発電機として機能する。すなわち、音響エネルギEである自励振動に基づき内側ヨーク33を往復振動させて、音響エネルギEを電気エネルギに変換するものである。これにより、枝管11を通って伝達した音響エネルギEを、内側ヨーク33の往復運動を介して電気エネルギに変換する、いわゆる熱音響発電機50を形成することができる。ここで、図2の破線(符号A3)を基準として図2における紙面上、上側が発電機30であり、下側の管部が枝管11である。枝管11と発電機30の境界は厳密に規定されるものではなく、符号A3の破線が、紙面上、やや下側に位置するものであってもよい。
図3に示すように、熱音響冷凍機60は、前記した熱音響機関1に加え、さらに、枝管11の他端11bに連通して接続された環状の冷凍用ループ管12を有する。そして、冷凍用ループ管12の管路に、冷凍機40として、冷凍用蓄熱器41と、冷凍用冷却器43と、冷気放出器42と、を備える。冷凍機40および冷凍用ループ管12を備える以外については、前記の熱音響機関1で説明したとおりであるので、ここでは冷凍機40およびこれを管路に備える冷凍用ループ管12について説明する。
冷凍用ループ管12は、作動気体が封入される環状の管であり、その管路は角丸の四角形に形成され、四辺に該当する直線部を形成する直管部12a〜12dからなる。すなわち、四辺に該当する直線部を形成する縦方向に略平行に並んだ2つの直管部12a、12bと、横方向に略平行に並んだ2つの直管部12c、12dと、を有している。そして、直管部12aの一端と直管部12cの一端、直管部12bの一端と直管部12cの他端、直管部12bの他端と直管部12dの一端が接続されて湾曲している。また、直管部12aの他端と直管部12dの他端が接続されるとともに、この部位において、冷凍用ループ管12に連通して枝管11の他端11bが接続されている。ここで、図3の破線(符号A4)を基準として図3における紙面上、上側の管部が冷凍用ループ管12であり、下側の管部が枝管11である。ここでは、枝管11における冷凍用ループ管12との接続部は、右側が湾曲しているが、直角に形成しているものであってもよい。また、枝管11と冷凍用ループ管12の境界は厳密に規定されるものではなく、符号A4の破線が、紙面上、やや下側(例えば、前記湾曲していない部分)に位置するものであってもよい。
冷凍機40は、原動機20によって発生する作動気体の自励振動による仕事流Wを冷気(冷熱)に変換するヒートポンプ手段として機能するものである。冷凍機40は、冷凍用ループ管12内に設けられた冷凍用蓄熱器41と、冷凍用蓄熱器41の両端を挟むように設けられた冷凍用冷却器43および冷気放出器42とを有している。より具体的には、冷凍機40は、本実施形態において、冷凍用ループ管12における枝管11が接続されている側、すなわち冷凍用ループ管12の直管部12aの管路に設けられている。そして、冷凍用冷却器43は冷凍用蓄熱器41の直管部12c側に配置され、冷気放出器42はその反対側、すなわち冷凍用蓄熱器41の直管部12d側に配置されている。
冷凍用蓄熱器41は、冷凍用ループ管12の管路に設けられ、作動気体を冷却するものである。
冷凍用蓄熱器41は、原動機20から、枝管11、冷凍用ループ管12の直管部12d,12b,12c,12aの順にこれらの管を通じて冷凍用蓄熱器41の一端部(以下、適宜、常温部(冷凍機側常温部)41aと称する)に伝達された自励振動を、冷凍用蓄熱器41の一端部(常温部41a)と冷凍用蓄熱器41の他端部(以下、適宜、低温部41bと称する)との間における温度差に変換する機能を有している。冷凍用蓄熱器41の常温部41aは冷凍用冷却器43によって冷却されているため、伝達された自励振動によって、冷凍用蓄熱器41の低温部41bは、常温部41aよりも低い温度まで冷却されて冷気が発生する。この冷気は、冷気放出器42によって外部に取り出される。冷凍用蓄熱器41は、熱容量の大きい蓄冷材からなる。蓄冷材としては、例えば、ステンレス鋼、銅、鉛等を用いることができ、またその形状は多様な形状を適用することが可能である。
冷凍用冷却器43は、冷凍用蓄熱器41の自励振動が伝わる一端側に隣接して冷凍用ループ管12の管路に設けられ、冷凍用蓄熱器41の一端部(常温部41a)の熱を外部に放出するものである。すなわち冷凍用冷却器43は、冷却水や空気等を用いて冷凍用蓄熱器41の一端の熱を外部に放出して冷却する機能を有している。冷凍用冷却器43は、例えば、冷却用の熱交換器から構成される。具体的には、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成になっている。この冷凍用冷却器43は、その周囲に冷却ブラケット43aが配設されている。この冷却ブラケット43aには図示しない冷却水路が接続されており、冷却水路を流れる冷却水により、冷凍用冷却器43は冷却ブラケット43aを介して一定の冷却温度を維持しうる構成になっている。なお、図面では便宜上、冷凍用蓄熱器41と冷凍用冷却器43の間に冷却ブラケット43aの左壁が示されているが、冷凍用冷却器43は、この左壁を通して冷凍用蓄熱器41の一端側と隣接、すなわち密着している。
冷気放出器42は、冷凍用蓄熱器41の他端側に隣接して冷凍用ループ管12の管路に設けられ、冷凍用蓄熱器41の他端部(低温部41b)に発生する冷気を外部に放出するものである。すなわち冷気放出器42は、冷凍用蓄熱器41の他端において発生する冷気を外部に取り出す冷気出力部として機能する。冷気放出器42は、例えば、冷凍用の熱交換器から構成される。冷気放出器42としては、基本的には冷凍用冷却器43と同一構成とされており、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成とされている。この冷気放出器42の外周位置には、冷気(冷熱)を取り出す高熱伝導率材料(例えば、銅)よりなる環状部材42aが配設されている。なお、図面では便宜上、冷凍用蓄熱器41と冷気放出器42の間に環状部材42aの右壁が示されているが、冷気放出器42は、この右壁を通して冷凍用蓄熱器41の他端側と隣接、すなわち密着している。
次に熱音響機関の動作について、前記説明した熱音響発電機および熱音響冷凍機を例にして図2および図3を参照して説明する。
図2に示すように、まず、原動機20において、加熱器22によって蓄熱器21の高温部21bを加熱し、かつ、冷却器23によって蓄熱器21の常温部21aを冷却すると、蓄熱器21の両端に、すなわち、高温部21bと常温部21aとの間に温度差が生じる。この温度差により、原動機20(具体的には、蓄熱器21)には、主として作動気体の自励振動による仕事流Wが生じる。そして、原動機20において発生した自励振動による仕事流Wは、音響エネルギEとして、例えば原動機20aでは、共鳴管10b,10c,10d、10e、10f、枝管11の順にこれらの管を通じて発電機30へと伝達される。原動機20b〜20dおいても同様に、発生した自励振動による仕事流Wは、音響エネルギEとして、共鳴管10、枝管11を通じて発電機30へと伝達される。そして発電機30に伝達された自励振動に基づき内側ヨーク33を往復振動させることで、音響エネルギEが電気エネルギに変換されて発電が行なわれる。
図3に示すように、前記した熱音響発電機の動作と同様にして、原動機20(具体的には、蓄熱器21)に主として作動気体の自励振動による仕事流Wが生じる。そして、原動機20において発生した自励振動による仕事流Wは、音響エネルギEとして枝管11を通じて冷凍機40へと伝達される。より具体的には、例えば原動機20aでは、蓄熱器21の高温部21bから、音響エネルギEとして共鳴管10b,10c,10d、10e、10f、枝管11、冷凍用ループ管12の直管部12d,12b,12c,12aを通じて冷凍用蓄熱器41の常温部41aへと伝達される。原動機20b〜20dおいても同様に、発生した自励振動による仕事流Wは、音響エネルギEとして、共鳴管10、枝管11、冷凍用ループ管12を通じて冷凍機40へと伝達される。
ここでは、冷却器、加熱器および蓄熱器からなる原動機(ゼロ点(0の点)から時計回りに原動機20a,20b,20c,20dとする)を、共鳴管10a〜10f、枝管11で構成した枝付きループ管内に四ヶ所設置する多段増幅型熱音響エンジンを計算モデルの一例として用いた。なお、図中、L1〜L6は、それぞれ共鳴管10a〜10fの長さである。
「熱効率η=△W/(QD+Qprog+Qstand)」
また、ここでは、枝管に接続される共鳴管は、共鳴管10fと共鳴管10aとからなるが、これらは直径(内径)が同一の一体とした1つの共鳴管としてもよい。同様に、共鳴管10eと共鳴管10fは、ここでは別の共鳴管としたが、これらを一体とした1つの共鳴管としてもよい。
10,10a〜10f 共鳴管
11 枝管
12 冷凍用ループ管
20,20a〜20d 原動機
21 蓄熱器
22 加熱器
23 冷却器
30 発電機(リニア発電機)
40 冷凍機
41 冷凍用蓄熱器
42 冷気放出器
43 冷凍用冷却器
50 熱音響発電機
60 熱音響冷凍機
Claims (3)
- 作動気体が封入され、全体として環状に形成された複数の共鳴管と、前記複数の共鳴管を連結する複数の原動機と、前記複数の共鳴管のうち、環状を形成するループの始点と終点との交点から、前記共鳴管に連通して一端が接続された枝管とを有し、
前記原動機は、前記作動気体を加熱および冷却する蓄熱器と、前記蓄熱器の一端側に隣接して前記蓄熱器の一端部を加熱する加熱器と、前記蓄熱器の他端側に隣接して前記蓄熱器の他端部の熱を外部に放出する冷却器とを備え、前記蓄熱器の両端部間に温度勾配を形成させて前記作動気体の自励振動を発生させる熱音響機関であって、
前記各加熱器に連結する共鳴管の流路断面積は、当該加熱器を備える原動機の冷却器に連結する共鳴管の流路断面積に対し、前記自励振動による仕事流の増幅率と同じ、あるいはそれの±30%の範囲内にある増幅率で拡大したものであり、
前記蓄熱器の流路断面積は、当該蓄熱器を備える原動機の冷却器に連結する共鳴管の流路断面積の4〜36倍であることを特徴とする熱音響機関。 - さらに、前記枝管の他端に接続され、前記枝管に連通して、前記作動気体に発生する自励振動に応動して発電を行なう発電機を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱音響機関。
- さらに、前記枝管の他端に連通して接続された環状の冷凍用ループ管を有し、前記冷凍用ループ管の管路に設けられ、前記作動気体を冷却する冷凍用蓄熱器と、前記冷凍用蓄熱器の前記自励振動が伝わる一端側に隣接して前記冷凍用ループ管の管路に設けられ、前記冷凍用蓄熱器の一端部の熱を外部に放出する冷凍用冷却器と、前記冷凍用蓄熱器の他端側に隣接して前記冷凍用ループ管の管路に設けられ、前記冷凍用蓄熱器の他端部に発生する冷気を外部に放出する冷気放出器と、備えることを特徴とする請求項1に記載の熱音響機関。
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