JP5968197B2 - 植栽容器 - Google Patents

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Description

本発明は、吸水性の植栽床材を収納可能な内箱と、内箱に収納された植栽床材を露出可能な状態で内箱に外嵌される外箱とを有する植栽容器に関する。
この種の植栽容器に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された植栽容器では、矩形筒状の内箱(ベースユニット)に植栽床材(植生ユニット)を入れ、その内箱の正面から額縁状の外箱(嵌め込み式フレーム)を外嵌させることで、内箱または植栽床材に植え付けた植物が外箱の正面に設けられた窓状の開口部から露出した状態で植物を飾ることができる。
特開2012−115226号公報(0044段落、図2、図3)
しかし、特許文献1に記された植栽容器では、縦置きと横置きという具合に角度の異なる複数の姿勢で設置することは可能であるが、既に植物を植え付けた状態で外部から植栽床材に潅水しようとすると、植栽用水が内箱と外箱の間などから漏水する虞があった。
尚、特許文献1では、別の実施形態として、植栽用水を貯留可能な貯水部を備えた矩形の箱(フレーム)を用いる構成も記されているが、この形態では箱を縦置きから横置きに変更した場合には貯水部が存続しない構成であった。
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術が与える課題に鑑み、例えば縦置きと横置きという具合に角度の異なる複数の姿勢で設置することが可能で、しかも、複数の姿勢のいずれで設置しても、植栽床材に潅水された植栽用水が外部に漏水する虞のない植栽容器を提供することにある。
本発明による植栽容器の特徴構成は、
吸水性の植栽床材を収納可能な内箱と、前記内箱に外嵌される外箱とを備え、
前記外箱は、前記内箱に収納された前記植栽床材を露出させる開口部を有する正面部と、前記内箱を受け入れるべく前記正面部から後方に延びた筒状部とを備え、
前記内箱は、植栽用水を貯留可能な貯水部として、前記筒状部の内周面に沿って互いに連通するように隣接配置された複数の前記貯水部を備えている点にある。
上記の特徴構成を備えた植栽容器では、外箱の正面部には植栽床材を露出させる開口部が設けられているので、植栽床材を収納した内箱に外箱を外嵌させ、植栽床材に植物を植え付ければ、植物を外箱のフレーム状の正面部によって額縁状に縁取られた状態で展示することができる。また、内箱は、筒状部の内周面に沿って隣接配置された複数の貯水部を備えているので、植栽容器を展示する際の設置角度を、一方の貯水部が下方に配置される設置角度と、他方の貯水部が下方に配置される設置角度との間で変更することができ、しかも、いずれの設置角度で展示する場合も、対応する側の貯水部が貯水部として本来の機能を果たすので、既に植物を植え付けた状態で外部から植栽床材に潅水しても植栽用水が植栽容器の一部から漏れ出たりすることもなく、植物の健全な育成、栽培が可能となる。
本発明の他の特徴構成は、前記貯水部または前記植栽床材に植栽用水を注水するための潅水孔が前記筒状部に貫通形成されている点にある。
本発明による植栽容器の植栽床材に植え付けられた植物に日常的に潅水する方法としては、植物の種類によっては正面部の開口部に露出された植栽床材の部位に霧吹きなどで直接潅水することでも植物を栽培または健全な状態に維持することが可能であるが、本構成であれば、細口のジョーロなどを用いて潅水孔から内箱の内部または植栽床材に十分な量の植栽用水を注水することができるので、特に植物の水分管理を行い易い。
本発明の他の特徴構成は、前記潅水孔から注水された植栽用水が前記外箱の内面を伝って移動することを規制する水流制御片が前記筒状部の内周面に設けられている点にある。
本構成であれば、潅水孔から潅水した植栽用水がもしも外箱の内面を伝って移動しようとしても、同移動は少なくとも水流制御片の設置された箇所で抑制されるため、そのような移動に基づいて植栽用水が植栽容器の外に流れ出るなどの事態が生じ難くなり、使い易い植栽容器が得られる。
本発明の他の特徴構成は、前記水流制御片は前記筒状部の内周面から前記筒状部の径方向内側に向かって延びた案内面を備える点にある。
本構成であれば、潅水孔から注入された植栽用水が仮に潅水孔下の空中を下方に落下せず、潅水孔の縁部に流れても、同植栽用水は自重により水流制御片の案内面に沿って筒状部の径方向内側に向かって伝い流れることで、外箱の内面から遠ざかるため、外箱の内面を伝って長く移動することが更に確実に防止される。
本発明の他の特徴構成は、前記案内面が前記植栽床材の外周面と当接する部位を有する点にある。
本構成であれば、もしも潅水孔から注入された植栽用水が潅水孔の縁部に流れて、外箱の内面を伝い始めても、同植栽用水は水流制御片の案内面に沿って最終的に植栽床材の上面付近に移動するので、植栽用水が外箱の内面を伝って移動することなく、植栽床材への潅水が円滑に行われる。
本発明の他の特徴構成は、前記潅水孔として、複数の前記貯水部の各々と対向するように前記筒状部の周方向に沿って隣接配置された少なくとも2つの潅水孔を含み、前記水流制御片が前記2つの潅水孔の間で前記2つの潅水孔の各軸芯の双方に対して傾斜して延びた板状部位を有する点にある。
本構成であれば、水流制御片が単一の水流制御片でありながら、2つの潅水孔のいずれから植栽用水が潅水された場合でも、板状部位によって筒状部の径方向内側に向かって案内されるので、植栽用水が植栽容器の外に流れ出るなどの事態が更に確実に抑制される。
本発明の他の特徴構成は、前記開口部の上縁となる部位の少なくとも一部に沿って後方に突出形成されたリブ状の水流制御片が設けられている点にある。
本構成であれば、万一潅水孔から注入された植栽用水が正面部の裏面を伝って流下した場合でも、同植栽用水が開口部から正面部の外側に流れ出ることをリブ状の水流制御片によって阻止できる。
本発明の他の特徴構成は、前記外箱の前記貯水部に対応する部位に前記貯水部における水位を確認するための水位確認窓が設けられており、前記内箱の少なくとも前記水位確認窓に対応する箇所が透明状または半透明状に形成されている点にある。
本構成であれば、内箱の透明状または半透明状の壁面と水位確認窓を通して、貯水部にある植栽用水の水面が見えるので、貯水部における植栽用水の水位を植栽容器の外部から簡単に確認でき、植物が潅水不足となる、或いは、内箱の縁から植栽用水がオーバーフローするなどの事態となり難い。
本発明の他の特徴構成は、前記正面部が矩形の外形を備えており、複数の前記貯水部が互いに直交する2つの貯水部で構成されている点にある。
本発明に係る植栽容器は、正面部の外形が五角形以上の多角形や円形、楕円形などを呈する形態でも実施可能であるが、特に本構成であれば、複数の植栽容器どうしを上下に積み重ねて展示するなどの使用法が簡単にできる。
本発明の他の特徴構成は、前記2つの貯水部を構成すべく互いに連続した前記内箱の2つの底面における前記筒状部の周方向に沿った両端から径方向内側に延びた側壁部が、前記正面部の各辺に対して径方向外向きに傾斜して設けられている点にある。
仮に、2つの貯水部を構成すべく互いに連続した内箱の2つの底面における筒状部の周方向に沿った両端から径方向内側に延びた側壁部が正面部の各辺に対して直角に延びている構成であれば、植栽床材を同側壁部と緩衝することなく内箱に対して出し入れできるように、植栽床材の寸法を内箱の内径よりも十分に小さくしておく必要が生じ、植栽床材に蓄積可能な植栽用水の量も少なくなるため、植物を栽培する上で不利となり易い。しかし、本構成のように、側壁部が正面部の各辺に対して径方向外向きに傾斜して設けられていれば、内箱の内径と比較的近似した大きめの植栽床材でも、側壁部と緩衝する懸念なく内箱に対して出し入れし易いので、結果的に、植栽床材に十分な量の植栽用水を蓄積可能となり一般の植物を栽培する上で有利となる。
また、本構成であれば、内箱の傾斜した側壁部と外箱との間に、使用者が手指などを差し込むことの可能な2つの凹部が対角線状に形成されるので、これらの凹部を手懸りとして内箱を外箱に対して出し入れし易くなる。
本発明の他の特徴構成は、前記内箱が、前記植栽床材を挟んで前記外箱の前記正面部と後方から対向することで、前記植栽床材を前記筒状部の内側に閉じ込める閉鎖板部を備えている点にある。
もしも、内箱に収納された植栽床材が外箱の筒状部の後端付近で外部に露出していると、植栽床材に含まれる水分が植栽床材の背面部から蒸発することで、植栽床材が乾燥し易くなるため、特に常時水分を必要とする植物を栽培する場合には頻繁に潅水を行う必要が生じる。しかし、本構成であれば、植栽床材を包囲する空間が閉鎖板部によって背面側から閉じられているので、植栽床材に含まれる水分が筒状部に露出した植栽床材の背面部から蒸発する現象が抑制される。その結果、植栽床材が長期に亘って適切な湿度に保持され易くなるため、特に常時水分を必要とする植物を栽培する場合でも植物の管理を行い易くなる。
本発明に係る植栽容器を正面側から見た外観斜視図である。 横置き姿勢における植栽容器を裏面側から見た斜視図である。 縦置き姿勢における植栽容器を裏面側から見た斜視図である。 植栽装置を構成する植栽容器と植栽床材との分解斜視図である。 植栽容器を構成する内箱の主に外観を示す斜視図である。 横置き姿勢における植栽容器の破断側面図である。 横置き姿勢における水流制御片の作用を示す正面図である。 縦置き姿勢における水流制御片の作用を示す正面図である。 縦置き姿勢における別実施形態による水流制御片の作用を示す正面図である。
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す植栽装置1は、本発明に係る植栽容器2と、植栽容器2に収納された吸水性の植栽床材30とで構成されており、植栽容器2は、植栽床材30を収納可能な内箱3と、内箱3に外嵌される外箱10とを備え、外箱10は外形が長方形の正面部11を有する。
この植栽装置1は、筒状部12が備える平面状の外周面を利用することで、外箱10を構成する正面部11の長辺が底辺となる横置き姿勢(図1の左下に示す)と、正面部11の短辺が底辺となる縦置き姿勢(図2の右上に示す)とのいずれでも、机上などの面に安定した状態で設置することができる。
(外箱の構成)
外箱10は、長方形(矩形の一例)の外形を備えた正面部11と、正面部11の外周から後方に延びた筒状部12とを備える。
ここで、植栽装置1を裏面側から見た図2に示すように、筒状部12を構成する4つの矩形の板状要素の全てと平行に延びる線分を植栽容器2の軸芯Xとしておく。
筒状部12の後方端部は内箱3を後方側から概して軸芯X方向に沿って受け入れるべく開放されており、正面部11には、内箱3に収納された植栽床材30の一部を正面側に露出させるための長方形の開口部11Aが形成されている。
外箱10と内箱3と植栽床材30を分解した状態を示す図3に示すように、外箱10の筒状部12を構成する4つの矩形の板状要素のうち、横置き姿勢に際して下方に配置されるものを第1壁部12A、横置き姿勢に際して上方に配置されるものを第2壁部12B、縦置き姿勢に際して下方に配置されるものを第3壁部12C、及び、縦置き姿勢に際して上方に配置されるものを第4壁部12Dとしておく。
(潅水孔の構成)
内箱3に収納されている植栽床材30に対して外部から潅水するための手段として、横置き姿勢において上方に配置される第2壁部12Bの右端付近には、横置き姿勢に際して用いる第1潅水孔13Aが貫通形成され、縦置き姿勢において上方に配置される第4壁部12Dの左端付近には、縦置き姿勢に際して用いる第2潅水孔13Bが貫通形成されている。第1潅水孔13Aと第2潅水孔13Bとは、筒状部12の周方向に沿って、筒状部12が有する4つの角部のうちの1つを挟むように互いに隣接配置されている。
(内箱の構成)
図4に示すように、内箱3は、内箱3に外箱10を外嵌させた状態で、筒状部12の第1壁部12Aに沿って水平に延びることで、植栽容器2を横置き姿勢にした際に底面として機能する矩形の第1底面部4Aと、筒状部12の第3壁部12Cに沿って水平に延びることで、植栽容器2を縦置き姿勢にした際に底面として機能する矩形の第2底面部4Bとを有する。
また、内箱3は、第1底面部4Aと第2底面部4Bとの前方側の端面から径方向内側に向かって延びた第1側壁部4Cと、第1底面部4Aと第2底面部4Bとの後方側の端面から径方向内側に向かって延びた第2側壁部4Dとを有する。
第1側壁部4Cは外箱10の正面部11の裏面に沿って延びており、第2側壁部4Dは、内箱3に収納された植栽床材30を間に挟むように、第1側壁部4Cと平行に延びている。
第1側壁部4Cは、植栽床材30の正面中央に設けられた植え付け部30Aを迂回するように概してL字状を呈している。
内箱3に外箱10を外嵌した状態では、内箱3のL字状の第1側壁部4Cの径方向内側寄りの部位が、正面部11の開口部11Aから径方向内側寄りに露出した状態となる。
図6に示すように、内箱3の後方の第2側壁部4Dは、植栽床材30を挟んで外箱の正面部11と後方から対向することで、内箱3内の植栽床材30を筒状部12の内側に閉じ込める閉鎖板部の役目を果たしている。
内箱3は、さらに、第1底面部4Aの周方向における端部から径方向内側に延びた矩形の第3側壁部4Eと、第2底面部4Bの周方向における端部から径方向内側に延びた矩形の第4側壁部4Fとを有する。
第3側壁部4Eは、植栽容器2を縦置き姿勢にした際に、第1側壁部4Cの上端となる部位を第2側壁部4Dと接続するように延びており、第4側壁部4Fは、植栽容器2を横置き姿勢にした際に、第1側壁部4Cの上端となる部位を第2側壁部4Dと接続するように延びている。
内箱3の第2側壁部4Dには、壁面に取り付けたフック(不図示)などを係入させるための係止凹部8A,8Bが貫通形成されている。係止凹部8A,8Bは横置き用の係止凹部8Aと縦置き用の係止凹部8Bとからなるので、この場合も、植栽装置1(植栽容器2)を横置きと縦置きとのいずれの姿勢でも展示することができる。
筒状部12の周方向に沿った両端から径方向内側に延びた側壁部、すなわち、第3側壁部4Eと第4側壁部4Fとは、正面部11の各辺に対して径方向外向きに傾斜して設けられている。図では傾斜角度は約45°として示されているが、30°〜60°の範囲から適宜選択できる。
(植栽床材の構成)
植栽床材30はウレタンと粉砕された木屑などの混合物を成形したブロック状を呈しており、そのブロックのほぼ全体に均一に水分と空気をバランスよく保持でき、且つ、根の生育に必要な空気が保たれ易い。図4に例示するように、植栽床材30には植物の苗などを植え付けるための2つの植栽用貫通孔H30Aが横置き姿勢において左右に並ぶように形成されている。
図4に示すように、内箱3に設置された植栽床材30を正面から見たときに、植栽床材30の四隅には円弧状のコーナー部C1,C2,C3,C4が形成されている。各コーナー部C1,C2,C3,C4の曲率半径は、植栽床材30を内箱3の内面形状になるべく合わせ、かつ、植栽床材30が各水流制御片7A,7B,7C,7Dと干渉し難いように設定されている。
すなわち、内箱3の第1貯水部6Hと第2貯水部6Vとの交差する部位(共有部位CS)に配置されるコーナー部C1の曲率半径R1と、コーナー部C1の対角線上にあるコーナー部C2の曲率半径R2と、第1貯水部6Hの第3側壁部4E付近に配置されるコーナー部C3の曲率半径R3と、第2貯水部6Vの第4側壁部4F付近に配置されるコーナー部C4の曲率半径R4との間には概して(R1=R2<R3<R4)という関係が設けられている。
図4に示すように、植栽床材30の正面の一部には、植栽床材30の内箱3への正しい設置向きを示すための矢印状の指標31A,31Bが浅く陥没形成されている。指標31A,31Bは、横置き姿勢に際して下向きとなる第1指標31Aと、縦置き姿勢に際して下向きとなる第2指標31Bとであり、いずれも内箱3の第1貯水部6Hと第2貯水部6Vとの交差する部位(共有部位CS)に対応して設けられている。
(貯水部の構成)
図1から図4に示すように、内箱3には、植栽用水Wを貯留可能な貯水部として、横置き姿勢に際して用いる第1貯水部6Hと、縦置き姿勢に際して用いる第2貯水部6Vという2つの貯水部が設けられている。
内箱3に外箱10を外嵌させると、第1貯水部6Hは横置き姿勢に際して下方に配置される第1壁部12Aに沿って延び、且つ、横置き姿勢に際して下向きとなる第1潅水孔13Aと対向した状態となり、第2貯水部6Vは縦置き姿勢に際して下方に配置される第3壁部12Cに沿って延びて、且つ、縦置き姿勢に際して下向きとなる第2潅水孔13Bと対向した状態となる。
したがって、横置き姿勢において第1潅水孔13Aから潅水された余分な植栽用水Wは第1貯水部6Hに貯留され、縦置き姿勢において第2潅水孔13Bから潅水された余分な植栽用水Wは第2貯水部6Vに貯留される。
図4から理解されるように、横置き姿勢用の第1貯水部6Hでは、第1底面部4Aが底面として機能し、底面の四辺から立設した側面として機能するのは、第3側壁部4E、第3側壁部4Eと横方向で対向する第2底面部4Bの部位、L字状の第1側壁部4Cの長辺側、及び、L字状の第1側壁部4Cの長辺側と前後方向で対向する第2側壁部4Dの部位である。
縦置き姿勢用の第2貯水部6Vでは、第2底面部4Bが底面として機能し、底面の四辺から立設した側面として機能するのは、第4側壁部4F、第4側壁部4Fと横方向で対向する第1底面部4Aの部位、L字状の第1側壁部4Cの短辺側、及び、L字状の第1側壁部4Cの短辺側と前後方向で対向する第2側壁部4Dの部位である。
第1貯水部4Aと第2貯水部4Bとは、互いに内箱3の隅部に直方体状の共有部分CSを有することで、互いに連通するように直交しており、内箱3に外箱10を外嵌させた状態では、筒状部12の内周面に沿って隣接配置されている。
(水流制御片の構成)
図2、図3及び図7、図8に示すように、筒状部12の内周面には、第1潅水孔13Aや第2潅水孔13Bから注入された植栽用水Wが植栽容器2内において流れる方向を制御するための複数の水流制御片7A,7B,7C,7Dが設けられている。
水流制御片は、筒状部12の内周面における第1潅水孔13Aと第2潅水孔13Bとの間の部位から径方向内側に延出された第1水流制御片7Aと、横置き姿勢において上方に配置される第2壁部12Bの内面における、第1潅水孔13Aから第1水流制御片7Aと反対側に離間した位置から径方向内側に延出された第2水流制御片7Bと、縦置き姿勢において上方に配置される第4壁部12Dの内面における、第2潅水孔13Bから第1水流制御片7Aと反対側に離間した位置から径方向内側に延出された第3水流制御片7Cと、外箱10の筒状部12ではなく正面部11の裏面から後方に延出された第4水流制御片7Dと、横置き姿勢及び縦置き姿勢において開口部11Aの上縁となる部位の少なくとも一部に沿って後方に比較的低いリブ状に突出形成された第5水流制御片7Eである。
これらの水流制御片のうちで、第1、第2、第3の水流制御片7A,7B,7Cは、筒状部12の内周面から径方向内側に向かって延びた案内面を備えることで、もしも第1潅水孔13Aまたは第2潅水孔13Bから注入された植栽用水Wが筒状部12の内面を周方向に伝って移動した場合に、この移動を一定の位置で堰き止め、径方向内側に案内する。その結果、移動する植栽用水Wが最終的に正面部11の開口部11Aや筒状部12の後端などから外に漏れ出ることが規制される。
上記の3つの水流制御片7A,7B,7Cの中で、第1水流制御片7Aは最も延出長が短いが、2つの潅水孔13A,13Bの間で潅水孔13A,13Bの各軸芯の双方に対して略同等に傾斜して延びた板状を呈している。その結果、第1水流制御片7Aは単体でありながら、横置き姿勢において第1潅水孔13Aから注入された植栽用水Wが第2壁部12Bの内面を伝って第4壁部12Dに至ることを規制すると同時に、縦置き姿勢において第2潅水孔13Bから注入された植栽用水Wが第4壁部12Dの内面を伝って第2壁部12Bの内面を自由に流れ降りる現象を制御することができる。
図7及び図8に示すように、第1水流制御片7Aは、第2壁部12Bの内面における第1潅水孔13Aよりも第4壁部12D寄りの部位から概して第4壁部12Dと平行に延びた基端側部位と、この基端側部位から軸芯X付近に向かって斜めに延びた先端側部位とを備える。
第1、第2、第3の水流制御片7A,7B,7Cの各前方側の端部は正面部11の裏面と一体成形されている。また、第1、第2、第3の水流制御片7A,7B,7Cを構成する湾曲した板状部材の両面は、軸芯Xと平行に延出された二次元形状を有するので、外箱10を樹脂の射出成形によって容易に製造することが可能となる。
第4水流制御片7Dを構成する湾曲した板状部材の両面も軸芯Xと平行に延出された二次元形状を有する。第4水流制御片7Dは、植栽床材30の不用意な移動を規制する働きと、第1潅水孔13Aや第2潅水孔13Bから勢いよく注入された植栽用水Wが植栽床材30によって第1潅水孔13Aや第2潅水孔13Bの側に跳ね返される現象を抑制する働きをする。
第2、第3の水流制御片7B,7Cは、概して外箱10の筒状部12よりも更に外側に中心を持つ円弧状に延びており、その中間部に相当する最も内径寄りの案内面は、少なくとも植栽床材30が植栽用水Wによって膨潤した状態では、植栽床材30の外周面と当接するように構成されている。
第2、第3の水流制御片7B,7Cの径方向内側を向いた面は植栽用水Wを案内面として機能し、植栽用水Wはこの植栽床材30と当接する部位を介して、確実に植栽床材30に供給される。また、この第2、第3の水流制御片7B,7Cの植栽床材30と当接する部位は径方向外側に中心を持つ円弧状を呈しているので、膨潤した植栽床材30が押付けられても植栽床材30が損傷される懸念は少ない。
第2、第3の水流制御片7B,7Cの湾曲部の先端からは、短い直線状の補助延長部7Be,7Ceが近接した筒状部12と概して平行に延びている。すなわち、第2水流制御片7Bに設けられた補助延長部7Beは筒状部12の第2壁部12Bと概して平行に延び、第3水流制御片7Cに設けられた補助延長部7Ceは筒状部12の第3壁部12Cと概して平行に延びている。
第2水流制御片7Bに設けられた補助延長部7Beは、主に縦置き姿勢に際して、第2水流制御片7Bを勢いよく流下してきた植栽用水Wが、第2壁部12Bの内面寄りに移動することを阻止して真下に落下させる役目を果たす。同様に、第3水流制御片7Cに設けられた補助延長部7Ceは、主に横置き姿勢に際して、第3水流制御片7Cを勢いよく流下してきた植栽用水Wが、第3壁部12Cの内面寄りに移動することを阻止して真下に落下させる役目を果たす。
図6、図7及び図8に示すように、第5水流制御片7Eは、開口部11Aのうちで横置き姿勢において上縁となる部位と、縦置き姿勢において上縁となる部位との大半に沿ってL字状に延びており、開口部11Aから後方にリブ状に突出形成されている。
第1潅水孔13Aや第2潅水孔13Bから注入されて正面部11の裏面を伝って下方に流下した植栽用水Wは大半が植栽床材30によって吸水されるが、もしも植栽床材30が吸水し切れない場合でも、植栽用水Wが開口部から正面部の外側に流れ出ることはリブ状の第5水流制御片7Eによって阻止される。
また、図7及び図8に示すように、L字状に延びた第5水流制御片7Eは、内箱3の第1側壁部4Cの手前で途切れて2つの端部を形成しているが、これらの端部には径方向外側に向かって比較的短い補助延長部7Ep,7Eqが一体形成されている。したがって、第5水流制御片7Eと正面部11の裏面の境界付近を伝って流れた植栽用水Wが第5水流制御片7Eの端部から正面部の外側に流れ出ることは補助延長部7Ep,7Eqによって阻止される。
尚、水流制御片7A,7B,7C,7Dの後端面は互いに共同して1つの仮想平面を形成しており、内箱3に外箱10を外嵌した際に、水流制御片7A,7B,7C,7Dの各後端面が同時に内箱3の第2側壁部4Dの内面と当接されることで、第2側壁部4Dが外箱10の内部に入り込み過ぎることを防止する。
図7及び図8から理解されるように、内箱3の第3側壁部4Eと第4側壁部4Fとは、正面部11の各辺に対して径方向外向きに傾斜して設けられているので、植栽床材30の出し入れが行い易く、植栽床材30が損傷され難い。また、外嵌された外箱10の内側2箇所に前後方向に延びた三角柱状の凹部が形成されるので、外箱10から内箱3を抜き取る操作を容易に行うことができる。
(水位確認窓の構成)
この実施形態では、外箱10はその全体が不透明な素材で形成され、内箱3はその全体が透明な素材で形成されている。図1などに示すように、外箱10の一部には内箱3の貯水部6H,6Vにおける水位を外部から確認するための水位確認窓15A,15Bが貫通形成されている。
水位確認窓15A,15Bは、第1貯水部6Hに対応する部位に設けられた第1水位確認窓15Aと、第2貯水部6Vに対応する部位に設けられた第2水位確認窓15Bとであり、いずれも使用する姿勢において上下に延びた長円形を呈している。
少なくとも、横置き姿勢用の第1水位確認窓15Aは、下は第1貯水部6Hの底面の高さ(略ゼロレベル)から、上はL字状の第1側壁部4Cの長辺側の上端(満水レベル)の高さまで上下に延びている。縦置き姿勢用の第2水位確認窓15Bは、下は第2貯水部6Vの底面(ゼロレベル)よりも若干上の高さから、上はL字状の第1側壁部4Cの短辺側の上端(満水レベル)よりも若干上の高さまで上下に延びているが、これも第1水位確認窓15Aと同様の構成としてもよい。
内箱3の外側表面の一部には、水平に延びた直線状の水位指標9A,9Bが、標準的な水位を示す手段として外向きに突出形成されている。水位指標9A,9Bは対応する水位確認窓15A,15Bの上下の中心よりも幾分上方に設けられており、横置き姿勢及び縦置き姿勢において、水位確認窓15A,15Bから見える植栽用水Wの水面が水位指標9A,9B付近にあれば、植栽用水Wが内箱3の第1側壁部4Cから外にオーバーフローする虞はない。
図9に例示するように、縦置き姿勢において第2水流制御片7Bの下端の補助延長部7Beを下向きに離れて移動する植栽用水の流れを制御する手段として、補助延長部7Beと対向するように配置された第6水流制御片7Fを設けてもよい。
第6水流制御片7Fは、縦置き姿勢において、第2壁部12Bの内面の補助延長部7Beよりも下方の部位から、内箱3の第2貯水部6Vの一部に向かって、斜め下向きに延びた矩形の平板状を呈しており、
第6水流制御片7Fも、正面部11の裏面から他の第2水流制御片7Bなどと同等の長さで軸芯Xと平行に延びており、縦置き姿勢における第6水流制御片7Fの下端は、第5水流制御片7Eの補助延長部7Epと、内箱3の傾斜した第4側壁部4Fの上端との中間付近に位置している。
〔別実施形態〕
〈1〉外箱10の正面部11や筒状部12の外形は、必ずしも長方形ではなく正方形でもよいし、五角形などの多角形でもよい。また、同外形を円形や楕円形としてもよい。円形や楕円形の場合には、筒状部の外周に姿勢を安定させるための脚部を設けることで机上などの水平面に安定的に載置することが可能となる。但し、もしも脚部を省略しても、上述の第1の実施形態と同様に、内箱3に2つの係止凹部8A、8Bを設けておくことで、壁面などに吊下げる展示法が可能であり、この場合も、互いに角度の異なる複数の展示方法が可能となる。
〈2〉必ずしも内箱3を透明な素材で形成する必要はなく、例えば、水位確認窓15A,15Bに対応する箇所のみを透明状または半透明状に形成し、残りの大半部位が不透明な素材で形成された内箱3としてもよい。
〈3〉必ずしも2つの潅水孔13A,13Bを互いに独立した状態で設ける必要はなく、例えば、筒状部12の1つの角部に横置き姿勢用と縦置き姿勢用との双方で使用可能な単一の潅水孔を設けてもよい。この場合は、上述の第1の実施形態に記載した横置き姿勢と縦置き姿勢の双方で兼用可能な第1水流制御片7Aの代わりに、単一の潅水孔の両側に横置き姿勢用と縦横置き姿勢用の2つの第1水流制御片を設けるとよい。
〈4〉必ずしも2つの水位確認窓15A,15Bを互いに独立した状態で設ける必要はなく、例えば、筒状部12の1つの角部を挟む2面に横置き姿勢用の水位確認窓部と縦置き姿勢用の水位確認窓部とが連続的に延びた単一の水位確認窓としてもよい。尚、外箱10を透明な素材で形成している場合には特に水位確認窓を貫通形成する必要はない。
吸水性の植栽床材を収納可能な内箱と、内箱に収納された植栽床材を露出可能な状態で内箱に外嵌される外箱とを有する植栽容器に従来見られた課題を解決するための技術として利用可能な発明である。
1 植栽装置
2 植栽容器
3 内箱
4D 第2側壁部(閉鎖板部)
4E 第3側壁部(傾斜した側壁部)
4F 第4側壁部(傾斜した側壁部)
6H 第1貯水部(貯水部)
6V 第2貯水部(貯水部)
7A 第1水流制御片(水流制御片)
7B 第2水流制御片(水流制御片)
7C 第3水流制御片(水流制御片)
7E 第5水流制御片(水流制御片)
10 外箱
11 正面部
11A 開口部
12 筒状部
13A 第1潅水孔(潅水孔)
13B 第2潅水孔(潅水孔)
15A 第1水位確認窓(水位確認窓)
15B 第2水位確認窓(水位確認窓)
30 植栽床材
W 植栽用水
X 軸芯

Claims (11)

  1. 吸水性の植栽床材を収納可能な内箱と、前記内箱に外嵌される外箱とを備え、
    前記外箱は、前記内箱に収納された前記植栽床材を露出させる開口部を有する正面部と、前記内箱を受け入れるべく前記正面部から後方に延びた筒状部とを備え、
    前記内箱は、植栽用水を貯留可能な貯水部として、前記筒状部の内周面に沿って互いに連通するように隣接配置された複数の前記貯水部を備えている植栽容器。
  2. 前記貯水部または前記植栽床材に植栽用水を注水するための潅水孔が前記筒状部に貫通形成されている請求項1に記載の植栽容器。
  3. 前記潅水孔から注入された植栽用水が前記外箱の内面を伝って移動することを規制する水流制御片が前記筒状部の内周面に設けられている請求項2に記載の植栽容器。
  4. 前記水流制御片は前記筒状部の内周面から前記筒状部の径方向内側に向かって延びた案内面を備えている請求項3に記載の植栽容器。
  5. 前記案内面が前記植栽床材の外周面と当接する部位を有する請求項4に記載の植栽容器。
  6. 前記潅水孔として、複数の前記貯水部の各々と対向するように前記筒状部の周方向に沿って隣接配置された少なくとも2つの潅水孔を含み、前記水流制御片が前記2つの潅水孔の間で前記2つの潅水孔の各軸芯の双方に対して傾斜して延びた板状部位を有する請求項3から5のいずれか一項に記載の植栽容器。
  7. 前記開口部の上縁となる部位の少なくとも一部に沿って後方に突出形成されたリブ状の水流制御片が設けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の植栽容器。
  8. 前記外箱の前記貯水部に対応する部位に前記貯水部における水位を確認するための水位確認窓が設けられており、前記内箱の少なくとも前記水位確認窓に対応する箇所が透明状または半透明状に形成されている請求項1から7のいずれか一項に記載の植栽容器。
  9. 前記正面部が矩形の外形を備えており、複数の前記貯水部が互いに直交する2つの貯水部で構成されている請求項1から8のいずれか一項に記載の植栽容器。
  10. 前記2つの貯水部を構成すべく互いに連続した前記内箱の2つの底面における前記筒状部の周方向に沿った両端から径方向内側に延びた側壁部が、前記正面部の各辺に対して径方向外向きに傾斜して設けられている請求項9に記載の植栽容器。
  11. 前記内箱が、前記植栽床材を挟んで前記外箱の前記正面部と後方から対向することで、前記植栽床材を前記筒状部の内側に閉じ込める閉鎖板部を備えている請求項1から10のいずれか一項に記載の植栽容器。
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