JP5967169B2 - 電気化学セル用包装材 - Google Patents

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Description

本発明は外部から認識可能で偽造が困難な識別標識を有する電気化学セル用包装材に関するものである。
近年、特許文献1に示すように、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、燃料電池等や、または、液体、固体セラミック、有機物等の誘電体を含む液体コンデンサ、固体コンデンサ、二重層コンデンサ等の電気化学セルは、多層フィルムで構成される電気化学セル用包装材が外装体として用いられている。
図3は従来の電気化学セル用包装材の層構成を示す断面図であり、図3に示すように、従来の電気化学セル用包装材110は、少なくとも基材層111、金属箔層112、熱接着性樹脂層115で構成され、基材層111と金属箔層112とは接着剤層113を介して接着され、熱接着性樹脂層115と金属箔層112とは酸変性ポリオレフィン層114を介して接着されている。
また、図4(a)は従来のエンボスタイプの外装体を用いたリチウムイオン電池の分解斜視図であり、図4(b)は従来のエンボスタイプの外装体を用いたリチウムイオン電池の斜視図である。図4(a)、図4(b)に示すように、冷間プレス成形工程において、リチウムイオン電池121は図3で示した電気化学セル用包装材110を冷間プレス加工して形成された凹部を有するトレイ120a内部にリチウムイオン電池本体122を収納し、シート120bでトレイ120aの開口部を閉蓋し、シール工程において、トレイ120aとシート120bの熱接着性樹脂層115同士を重ね合わせ、その周縁をヒートシールして作製される。
このように作製されたリチウムイオン電池121は電池製造の最終工程において、外装体120表面に商品情報等が記載されたラベルが貼り付けられたり、ラベルの代わりに、外装体120表面に直接インクジェットで商品情報等が印字される。
しかし、正規の製造元とは異なる偽造されたリチウムイオン電池又は電気化学セル用包装材に正規の製造元と同一の識別標識が付された場合、正規品と偽造品の判別を行うことが困難となっていた。
特開2007−273398号公報
従来、この問題を解決するために、識別標識にホログラムラベルを用いて正規品と偽造品の判別を行なう方法が提案されていた。しかし、ホログラムラベルは製品のコストアップにつながるとともに、ホログラムラベルが偽造されてしまうおそれがあった。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、外部から認識可能で偽造が困難な識別標識を有する電気化学セル用包装材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、電気化学セル用包装材であって、正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、正極及び負極間に充填される電解質と、を含む電気化学セル本体を収納し、周縁部をヒートシールすることにより電気化学セル本体を密封する電気化学セル用包装材であって、少なくとも、基材層、接着剤層、金属箔層、熱接着性樹脂層がこの順に積層された構造を有する多層フィルムであり、基材層が延伸ポリエステルフィルムと延伸ナイロンフィルムとを有し、延伸ポリエステルフィルムと延伸ナイロンフィルムとの間に識別標識が含まれることを特徴とする。
この構成によると、識別標識が延伸ポリエステルフィルムにより保護され、電気化学セル用包装材外部から印刷層を偽造又は加工することができない。また、識別標識を延伸ポリエステルフィルムと延伸ナイロンフィルムとの間に形成することにより、延伸ナイロンフィルム層と金属箔層との接着強度が低下しない。このため、電気化学セル用包装材をプレス成形等する場合において、基材層と金属箔層間が剥離して浮きや皺が発生することを防止することができる。また、延伸ポリエステルフィルムを最外層に形成することにより、電解液や溶剤が電気化学セル用包装材表面に付着した場合でも、延伸ポリエステルフィルムが延伸ナイロンフィルムを保護して、電気化学セル用包装材の傷付きや白化を防ぐことができる。
本発明の第2の構成は、上記第1の構成の電気化学セル用包装材において、識別標識が、延伸ポリエステルフィルムの延伸ナイロンフィルム側表面に設けられた印刷層により構成されていることを特徴とする
この構成によると、延伸ポリエステルフィルム表面に識別標識を印刷して、延伸ポリエステルフィルムと延伸ナイロンフィルムとを貼り合わせることにより、延伸ポリエステルフィルムと延伸ナイロンフィルムとの間に識別標識を容易に形成することができる。また、印刷により複雑な意匠を延伸ポリエステルフィルム表面に形成することが可能となり、偽造し難い識別標識を形成することができる。
本発明の第3の構成は、上記第1の構成の電気化学セル用包装材において、識別標識が、延伸ポリエステルフィルムと延伸ナイロンフィルムとの間に介在する着色された接着層により構成されていることを特徴とする。
この構成によると、延伸ポリエステルフィルムと延伸ナイロンフィルムとの間に着色された層を形成することができ、着色された色により電気化学セル用包装材を識別することができる。このため、電気化学セル用包装材に偽造の識別標識となるラベルが貼り付けられたり、印字が付された場合でも、電気化学セル用包装材の外観から認識できる色の相違により製品の真偽の判別を容易に行うことができる。
本発明の第4の構成は、上記第1の構成の電気化学セル用包装材において、延伸ポリエステルフィルムは延伸ナイロンフィルムと対向する面と反対側の面にマットニス層が形成されていることを特徴とする。
この構成によると、延伸ポリエステルフィルム表面にマットニス層を形成することにより、基材層表面に艶消し効果を発揮させることできる。これにより、延伸ポリエステルフィルムのもう一方の面に形成された識別標識と併せて、基材層全体で意匠を形成することができる。また、マットニス層により基材層表面の滑り性が増し、エンボス成形工程における成型不良を減らすことができる。このとき、マットニスに添加する滑剤の添加量を調整することにより、滑り性を調整することができ、マット材の粒径及び添加量を調整することにより、艶消し効果を調整することができる。
本発明の第5の構成は、上記第1の構成の電気化学セル用包装材において、前記延伸ポリエステルフィルムは前記延伸ナイロンフィルムと対向する面と反対側の面にマット処理が施され、表面が所定の表面粗さに加工されていることを特徴とする。
この構成によると、延伸ポリエステルフィルム表面を所定の表面粗さに加工してマット処理を施すことにより、基材層表面に艶消し効果を発揮させることできる。これにより、延伸ポリエステルフィルムのもう一方の面に形成された識別標識と併せて、基材層全体で意匠を形成することができる。また、表面を加工してマット処理を施されたマットフィルムは、プレス成形時に基材層表面が磨耗または押圧されて艶消し効果が低下し難い。また、電気化学セルの溶剤が付着した場合でも、艶消し効果が低下し難い。
本発明の第6の構成は、上記第1の構成の電気化学セル用包装材において、前記延伸ポリエステルフィルムの平面視において、前記識別標識が部分的に形成されていることを特徴とする。
この構成によると、偽造困難で複雑な識別標識を形成することができる。
は、本発明の電気化学セル用包装材の層構成を示す断面図である。 は、本発明の電気化学セル用包装材の変形例の層構成を示す断面図である。 は、従来の電気化学セル用包装材の層構成を示す断面図である。 は、従来のエンボスタイプの外装体を用いたリチウムイオン電池の分解斜視図である。 は、従来のエンボスタイプの外装体を用いたリチウムイオン電池の斜視図である。
本発明は、外部から認識可能で偽造が困難な識別標識を有し、成形後のシール工程にかかる熱により層間剥離して浮きや皺が発生することのない電気化学セル用包装材であって、以下に図を利用してさらに詳細に説明する。なお、従来例の図3〜図4と共通する部分は説明を省略する。
図1は本発明の電気化学セル用包装材の層構成を示す断面図であり、図1に示すように、本発明の電気化学セル用包装材10は最外層に基材層11、最内層に熱接着性樹脂層15、その間に金属箔層12が配されたものであり、熱接着性樹脂層15と金属箔層12は酸変性ポリオレフィン層14を介して接着している。また、基材層11と金属箔層12とは接着剤層13を介して接着している。このとき、金属箔層12の酸変性ポリオレフィン層14側表面には化成処理層12aが設けられている。また、基材層11はマットニス層11a、延伸ポリエステルフィルム11b、印刷層11c、接着層11d、延伸ナイロンフィルム11eとで構成されている。なお、本発明の電気化学セル用包装材10は上記各層を含むとともに各層間に異なる層を介在させた場合も本発明の技術範囲に含むものとする。
ここで、印刷層11c及びマットニス層11aはインキ材又はマットニス材を延伸ポリエステルフィルム11bの両面にそれぞれ印刷塗布して形成される。この構成により、電気化学セル用包装材10を基材層11側から見た場合、印刷層11cがマットニス層11aによりマット調に装飾されて視認される。また、マットニス層11aにより基材層11表面の滑り性が増し、エンボス成形工程における成型不良を減らすことができる。なお、マットニス材に含有される滑剤の添加量を調整することにより、基材層11表面の滑り性を調整することができ、マットニス材に含有されるマット剤の粒径や添加量を調整することにより、マットニス層11aのマット感(艶消し効果)を調整することができる。
また、印刷層11cが延伸ポリエステルフィルム11bの延伸ナイロンフィルム11e側表面に形成されているため、印刷層11cは延伸ポリエステルフィルム11bにより外部から保護され、電気化学セル用包装材10外部から印刷層11cを偽造又は書き換えることができない。また、電気化学セル用包装材10表面が磨耗しても、印刷層11cは磨耗しない。また、印刷層11cが延伸ポリエステルフィルム11bと延伸ナイロンフィルム11eとの間に形成されるため、延伸ナイロンフィルム11eと金属箔層12との接着強度が低下することはない。このため、電気化学セル用包装材10をプレス成形する際、基材層11と金属箔層12とが剥離して浮きや皺が発生するのを防ぐことができる。また、延伸ポリエステルフィルム11bを最外層に形成することにより、電解液や溶剤が電気化学セル用包装材10表面に付着した場合でも、延伸ポリエステルフィルム11bが延伸ナイロンフィルム11eを保護して、電気化学セル用包装材10の傷付きや白化を防ぐことができる。
また、延伸ポリエステルフィルム11bの平面視において、印刷層11を全体に形成すれば、電気化学セル用包装材10全体が着色され、印刷層11を部分的に形成すれば、印刷層11に偽造困難な識別標識又は意匠を付すことができる。なお、印刷層11cはグラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の従来公知の印刷方法によりインキ材を用いて形成することができる。
ここで、延伸ポリエステルフィルム11bのフィルム表面が予め所定の表面粗さを有する延伸ポリエステルフィルムを用いることにより、マットニス層11aを形成しなくても基材層11表面をマット調に装飾することができる。このとき、マットニス層11aと比較して、プレス成形時の磨耗または押圧によりマット感(艶消し効果)が低下し難い。また、電気化学セルの溶剤が付着した場合でも、マット感(艶消し効果)が低下し難い。
次に、図1に示した本発明に係る電気化学セル用包装材10を構成する各層について具体的に説明する。
マットニス層11aは、例えばセルローズ系、ポリアミド系、塩酢ビ系、変性ポリオレフィン系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系などのオレフィン系、あるいはアルキッド系合成樹脂に、シリカ系、カオリン系などの無機材料系のマット剤を適量添加したマットニスを用いることができる。或いは前記オレフィン系、あるいはアルキッド系合成樹脂に、シリカ系、カオリン系などの無機材料系のマット剤とワックスとを適量添加したマットニスを用いることができる。なお、前記マットニス層を形成する方法は、特に限定されることはなく、例えば、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、ロールコーティング方式、リバースコーティング方式などを適宜使用することができる。
延伸ポリエステルフィルム11bは、プレス加工に耐え得る展延性を有するポリエステル樹脂を用いることができ、具体的なポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。
印刷層11cに用いられるインキ材は、一般的なインキ同様に、バインダー、及び顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤により構成することができる。着色剤として、有彩色着色顔料または無機系の着色顔料を使用することができ、有彩色着色顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、縮合多環系顔料などがあり、アゾ系顔料としてはウッチングレッド、カーミン6C等の溶性顔料、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、レッド、パーマネントレッド等の不溶性アゾ顔料、フタロシアニン系顔料としては銅フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料として青、緑系顔料、縮合多環系顔料としてはジオキサジンバイオレット、キナクリドンバイオレット等を挙げることができ、また、無機系の着色顔料としては、例えば、例えば酸化チタンやカーボンブラックなどを用いることができる。
接着層11dは、接着剤又はポリオレフィン樹脂を用いることができ、接着剤の具体例として、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、或いは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂は溶融した状態で延伸ポリエステルフィルム11bと延伸ナイロンフィルム11eとの間に押し出すことにより、両フィルムを接着することができ、ポリオレフィン樹脂の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱接着性樹脂が挙げられる。
延伸ナイロンフィルム11eは、ポリアミド樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
接着剤層13はドライラミネート法により延伸ナイロンフィルム11eと金属箔層13とを接着する層であり、上述した接着層11dと同じ接着剤を用いることができる。
次に金属箔層12について説明する。金属箔層12は、外部からリチウムイオン電池の内部に水蒸気が浸入することを防止するための層で、金属箔層単体のピンホール、及び加工適性(パウチ化、冷間プレス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホール性をもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、又は、無機化合物、例えば、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルムなども挙げられるが、金属箔層12を構成する金属箔として好ましくは厚さが20〜100μmのアルミニウムとする。
また、ピンホールの発生を改善し、リチウムイオン電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする場合、冷間プレス成形におけるクラックなどの発生のないものとするために、金属箔層12として用いるアルミニウムの材質を、鉄含有量が0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%とすることが望ましい。
これによって、鉄を含有していないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、外装体として折り曲げによるピンホールの発生が少なくなり、包装材を冷間プレス成形する時に側壁を容易に形成することができる。なお、鉄含有量が、0.3重量%未満の場合は、ピンホールの発生の防止、冷間プレス成形性の改善等の効果が認められず、アルミニウムの鉄含有量が9.0重量%を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、包装材として製袋性が悪くなる。
また、冷間圧延で製造されるアルミニウムは焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化するが、本発明において用いるアルミニウムは焼きなましをしていない硬質処理品より、多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウムがよい。
すなわち焼きなましの条件は、加工適性(パウチ化、冷間プレス成形)に合わせ適宜選定すればよい。たとえば、冷間プレス成形時のしわやピンホールを防止するためには、成形の程度に応じて焼きなましされた軟質アルミニウムを用いることができる。
また、金属箔層12であるアルミニウムの表、裏面に化成処理を施し化成処理層12aを形成すことによって、接着剤との接着強度を向上させることができる。
次にこの化成処理層12aについて説明する。図1に示すように、化成処理層12aは少なくとも金属箔層12の熱接着性樹脂層15側の面に形成するものである。化成処理層12aは酸変性ポリオレフィン層14と金属箔層12とを安定的に接着し、金属箔層12と熱接着性樹脂層15のデラミネーションを防止することができる。また、化成処理層12aは金属箔層12の腐食を防止する働きも有る。
具体的には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成することによってエンボス成形時の金属箔層12と熱接着性樹脂層15との間のデラミネーション防止と、リチウムイオン電池の電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性を向上させることができる。
化成処理層12aは、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、塗布型クロメート処理等のクロム系化成処理、あるいは、ジルコニウム、チタン、リン酸亜鉛等の非クロム系(塗布型)化成処理等により金属箔層12面に形成されるものであるが、フッ素系樹脂と強固に接着するという点、また、連続処理が可能であると共に水洗工程が不要で処理コストを安価にすることができるという点などから塗布型化成処理、特にアミノ化フェノール重合体、3価クロム化合物、リン化合物、を含有する処理液で処理するのが最も好ましい。
次に熱接着性樹脂層15について説明する。最内層の熱接着性樹脂層15は、リチウム電池本体122の金属端子を外側に突出した状態で挟持して熱接着する。このとき、熱接着性樹脂層15と金属端子との間に金属接着性を有する金属端子密封用接着性フィルムを介在させるか否かで熱接着性樹脂層15を構成するプロピレンの種類が異なる。金属端子密封用接着性フィルムを介在させる場合には、プロピレン系樹脂の単体ないし混合物などからなるフィルムを用いればよいが、金属端子密封用接着性フィルムを介在させない場合、不飽和カルボン酸でグラフト変性した酸変性オレフィン樹脂からなるフィルムを用いる必要がある。
なお、熱接着性樹脂層15としてはポリプロピレンが好適に用いられるが、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンの単層または多層、または、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンのブレンド樹脂からなる単層または多層からなるフィルムも使用できる。また、ポリプロピレンには、ランダムプロピレン、ホモプロピレン、ブロックプロピレン等各タイプに分けることができる。
また、上記各タイプのポリプロピレン、すなわち、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレンには、低結晶性のエチレンーブテン共重合体、低結晶性のプロピレンーブテン共重合体、エチレンとブテンとプロピレンの3成分共重合体からなるターポリマー、シリカ、ゼオライト、アクリル樹脂ビーズ等のアンチブロッキング剤(AB剤)、脂肪酸アマイド系のスリップ剤等を添加してもよい。
また、本発明に係る熱接着性樹脂層15は上記各タイプのポリプロピレン層を適時組み合わせて多層化してもよい。
次に酸変性ポリオレフィン層14について説明する。酸変性ポリオレフィン層14は金属箔層12と熱接着性樹脂層15とを接着するために設ける層であり、熱接着性樹脂層15に用いる樹脂種により適宜選択して用いる必要があるが、酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることができ、不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、エチレンないしプロピレンとアクリル酸、または、メタクリル酸との共重合体、あるいは、金属架橋ポリオレフィン樹脂等であり、必要に応じてブテン成分、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、非晶質のエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等を5%以上添加してもよいものである。
また、酸変性ポリオレフィン層14は酸変性ポリプロピレンを用いることで、いっそう耐内容物性、接着強度に優れた電気化学セル用包装材10を提供することができる。
酸変性ポリプロピレンを用いる場合、
(1)ビガット軟化点115℃以上、融点150℃以上のホモタイプ、
(2)ビガット軟化点105℃以上、融点130℃以上のエチレンープロピレンとの共重合体(ランダム共重合タイプ)
(3)融点110℃以上である不飽和カルボン酸を用い酸変性重合した単体又はブレンド物等を用いることができる。
次に、上記実施形態の変形例について説明する。図2は電気化学セル用包装材の変形例を示す断面図であり、上記実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。図2に示すように、印刷層11cの代わりに接着層11dに酸化チタンなどの着色顔料が含有された着色された接着層11dを用いて、識別標識を形成してもよい。この構成によると、酸化チタンにより接着層11dは白色に着色され、電気化学セル用包装材10は透過性を有する基材層11側から見て白色に識別される。このため、電気化学セル用包装材10の基材層11表面に偽造された識別標識となるラベルが貼り付けられたり、印字が付された場合でも、電気化学セル用包装材10の外観から認識できる色の相違により製品の真偽の判別を容易に行うことができる。
また、接着層11dは酸化チタンなどの着色顔料が固形分で含有率5重量%以上30重量%以下、好ましくは10重量%以上25重量%以下添加された接着剤で構成されることが好ましい。なお、着色剤の添加量が5重量%を下回る場合、着色される色が薄くなり識別し難くい。また、着色剤の添加量が30重量%を上回る場合、接着強度が弱くなり好ましくない。また、着色剤の添加量を調整することにより、着色される色の濃淡を表出することができる。これにより、色の濃淡で電気化学セル用包装材10を識別することもできる。なお、接着剤は接着層11dの具体例として上記列挙した接着剤を用いることができる。さらに、着色顔料を樹脂ブレンドしたポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂を溶融状態で押し出して延伸ポリエステルフィルム11bと延伸ナイロンフィルム11eとを積層した実施形態についても本発明の技術範囲に含まれる。
なお、着色顔料としては、有彩色着色顔料または無機系の着色顔料を使用することができ、有彩色着色顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、縮合多環系顔料などがあり、アゾ系顔料としてはウッチングレッド、カーミン6C等の溶性顔料、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、レッド、パーマネントレッド等の不溶性アゾ顔料、フタロシアニン系顔料としては銅フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料として青、緑系顔料、縮合多環系顔料としてはジオキサジンバイオレット、キナクリドンバイオレット等を挙げることができ、また、無機系の着色顔料としては、例えば、例えば酸化チタンやカーボンブラックなどを用いることができる。
また、酸化チタンなどの着色顔料の他にパール顔料又は蛍光顔料により接着層11dを着色することも可能である。パール顔料としては、古典的には真珠粉や貝殻の内側部分の粉等を使用したが、現在では、微細なフレーク(薄片)の外側を、金属酸化物もしくは金属酸化物の混合物により被覆したものを使用する。微細なフレークとしては、雲母、タルク、カオリン、オキシ塩化ビスマス、あるいは、ガラスフレーク、SiO2フレーク、もしくは合成セラミックのフレーク等があり、これらの微細なフレークの外側を被覆する金属酸化物の例としては、TiO2、Fe23、SnO2、Cr23、ZnOがある。これらの組合せの中でも、雲母、ガラスフレーク、もしくはSiO2フレークを、TiO2被覆および/またはFe23被覆されたものが好ましい。また、蛍光顔料としては、蛍光体すなわち広義におけるルミネッセンスを発する物質であって、無機蛍光顔料と有機蛍光顔料の双方を含み、無機蛍光顔料としては、Ca、Ba、Mg、Zn、Cdなどの酸化物、硫化物、ケイ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩などの結晶を主成分とし、Mn、Zn、Ag、Cu、Sb、Pbなどの金属元素もしくはランタノイド類などの希土類元素を活性剤として添加して焼成して得られる顔料が用いられ得る。好ましい蛍光体としてZnO:Zn、Br5(PO43Cl:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y23:Eu、Y(P、V)O4:Eu、Y22Si:Eu、Zn2GeO4:Mn等を例示でき、有機蛍光顔料としては、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン等の誘導体、フルオレセイン、エオシン等の色素、アントラセン等ベンゼン環を持つ化合物などが用いられることができる。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、マットニス層11a、印刷層11c、着色した接着層11dを全て組み合わせて識別標識を形成することも可能であり、マットニス層11aを設けず、印刷層11c又は着色した接着層11dのみで識別標識を形成することもできる。
また、本実施形態では、金属箔層12と熱接着性樹脂層15との間に酸変性ポリオレフィン層14を設けたが、酸変性ポリオレフィン層14を設けない実施形態についても本発明の技術範囲に含まれる。具体的には、金属箔層12と熱接着性樹脂層15との間に酸変性ポリオレフィン樹脂以外の接着剤層を介在させて積層したもの、熱接着性樹脂層15に酸変性ポリオレフィン樹脂を用いたもの、化成処理された金属箔層12と熱接着性樹脂層15とを熱ラミネートして積層したもの等、を例示することができる。
10、110 電気化学セル用包装材
11、111 基材層
11a マットニス層
11b 延伸ポリエステルフィルム
11c 印刷層
11d 接着層
11e 延伸ナイロンフィルム
12、112 金属箔層
12a、112a 化成処理層
13,113 接着剤層
14、114 酸変性ポリオレフィン層
15、115 熱接着性樹脂層
120 外装体
120a トレイ
120b シート
121 リチウムイオン電池
122 リチウムイオン電池本体

Claims (5)

  1. 正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、前記正極及び負極間に充填される電解質と、を含む電気化学セル本体を収納する電気化学セル用包装材であって、
    少なくとも、基材層、接着剤層、金属箔層、熱接着性樹脂層がこの順に積層された構造を有する多層フィルムであり、
    前記基材層が延伸ポリエステルフィルムと延伸ナイロンフィルムとを有し、
    前記延伸ポリエステルフィルムと前記延伸ナイロンフィルムとの間に識別標識が含まれ、
    前記識別標識が、前記延伸ポリエステルフィルムと前記延伸ナイロンフィルムとを接着する接着剤に着色顔料が添加されて構成されることを特徴とする電気化学セル用包装材。
  2. 前記接着剤がポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、無機系接着剤のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル用包装材。
  3. 前記延伸ポリエステルフィルムが前記延伸ナイロンフィルムより外面側に配され、
    前記延伸ポリエステルフィルムは前記延伸ナイロンフィルムと対向する面と反対側の面にマットニス層が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気化学セル用包装材。
  4. 前記延伸ポリエステルフィルムが前記延伸ナイロンフィルムより外面側に配され、
    前記延伸ポリエステルフィルムは前記延伸ナイロンフィルムと対向する面と反対側の面にマット処理が施され、表面が所定の表面粗さに加工されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気化学セル用包装材。
  5. 前記延伸ポリエステルフィルムの前記延伸ナイロンフィルム側表面に設けられた印刷層が形成されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電気化学セル用包装材。
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