図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことが可能となっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である記録用紙としての被記録材である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。以下、転写紙Sは普通紙であるとする。
同図において、矢印Yは同図における左右方向であって、とくに左方向に対応しており、矢印Zは同図における上下方向であって画像形成装置100の上下方向、とくに上方に対応している。同図における紙面に垂直なX方向は、矢印Yで示されたY方向に垂直であるとともに矢印Zで示されたZ方向に垂直であり、主走査方向に一致する。X方向、Y方向、Z方向は、これらが図示されている図において、とくに説明しない限り、同じ方向を示している。
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての導電性記録液である記録液を吐出するヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、かかる液体である記録液を吐出する記録液吐出体としての記録ヘッドとして機能するインクジェットヘッドである。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設された中間転写ドラムである中間転写ローラとしての中間転写体37の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、中間転写体37の移動方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための画像形成手段としての記録液吐出装置であるインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。なお、図2に示して後述するように、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1の紙面に垂直なX方向に延びる態様で、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
中間転写体37は、A1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向する領域で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与される。このように記録液を受容することにより、中間転写体37は、その表面上に画像が形成される。このように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37上の同じ位置に重なるように行われる。そのため、ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の付与は、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKを有している。
画像形成装置100はまた、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10を有している。
画像形成装置100はまた、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する紙搬送装置としての給紙ユニット20を有している。
画像形成装置100はまた、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25を有している。
画像形成装置100はまた、記録液等が転写紙Sに転写された後の中間転写体37から、中間転写体37上に残留している残インクである記録液等を除去してクリーニングするためのクリーニング手段としてのクリーニング装置である清掃手段34を有している。
画像形成装置100はまた、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ50を有している。
画像形成装置100はまた、キャリッジ50を同図に示されている位置とこの位置から中間転写体37に近づけた位置との間で変位させることでヘッド61Y、61M、61C、61BKを移動させるヘッド移動機構としての駆動部35を有している。
画像形成装置100はまた、ヘッド61Y、61M、61C、61BKの記録液の吐出精度についての検査を行う検査手段である検査装置70を有している。
画像形成装置100はまた、画像形成装置100に対する各種入力が可能である入力装置として機能するとともに、画像形成装置100の状態を表示することが可能な表示装置として機能する液晶パネル41を有している。
画像形成装置100はまた、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段としての制御装置である制御部40を有している。
搬送ユニット10は、中間転写体37の他に、中間転写体37に対向して配置され中間転写体37との間の領域である転写部31を転写紙Sが通過するときに中間転写体37上に担持された記録液による画像をその転写紙Sに転写する転写手段64を有している。
搬送ユニット10はまた、給紙ユニット20から給送されてきた転写紙Sを転写部31に案内するとともに、転写部31を通過した転写紙Sを排紙台25に案内するガイド板39を有している。
搬送ユニット10はまた、中間転写体37をA1方向に回転駆動する駆動手段としての中間転写体回転駆動モータであるモータ32を有している。
搬送ユニット10はまた、中間転写体37の回転位置すなわち位相を検知する位相検知手段としての図示しないエンコーダ等を有している。
このように、画像形成装置100は、転写紙Sへの画像形成を中間転写体37を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
転写手段64は、中間転写体37に従動回転する転写ローラ38と、転写ローラ38を中間転写体37に圧接し転写ローラ38を加圧ローラとして機能させる加圧手段としての図示しないばねとを有している。
転写手段64はまた、このばねの付勢力に抗して転写ローラ38を中間転写体37から離間させる離間手段としての離間部36を有している。
転写ローラ38は、図示を省略するが、金属製の芯金と、芯金上に設けられ転写ローラ38の表層を形成した、転写紙Sの搬送力を確保するための5mm厚のゴム層とを有している。
このように、転写手段64は、中間転写体37と転写ローラ38との間において転写紙Sを加圧搬送し、中間転写体37に付与された記録液を転写紙Sの紙面上に押圧転写して、かかる紙面上に画像を形成するようになっている。
中間転写体37は、図示を省略するが、アルミニウム製の円筒状の基材である支持体と、支持体上に形成された、記録液が非浸透である非浸透層としての表面層とを有している。中間転写体37の、記録液を付与され担持する部分すなわち表面、具体的には表面層の表面は、光学的に平坦となるように、滑らかに形成されている。
中間転写体37の表面エネルギーについて述べる。この表面エネルギーが低すぎると、通常の画像形成時、あるいは後述する、検査装置70による検査時の所定の周期パターンの形成時においてライン画像を形成することが困難になる。また、中間転写体37表面に着弾した記録液の液滴が中間転写体37表面上で移動しやすくなる。これらは、画質の低下をもたらす他、検査装置70による検査精度を低下させる。よって中間転写体37の表面エネルギーは高いほうが好ましい。
より具体的には、中間転写体37の表面は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKの、中間転写体37に対向する表面である、後述するノズル面61dよりも後退接触角が小さいことが望ましい。後退接触角は、濡れ性を示す特性である。一般的に濡れ性というと、静的接触角や表面張力など、基材、ここでは中間転写体37又はノズル面61dと、液、ここでは記録液の親和性をみるが、動的接触角のうち後退接触角はかかる親和性の他に液の粘性による影響が加わった値として測定されるものである。
これを画像形成装置100にあてはめてみると、後退接触角が大きい部材からは記録液が良く離型され、後退接触角が小さい部材へは記録液がより吸着する事が確認された。離型性がとくによい条件としては、ノズル面61dの後退接触角が純水に対して60°以上、望ましくは75°以上、中間転写体37表面の後退接触角が70°未満、更に望ましくは60°以下であるときであった。中間転写体37表面の材質を、ノズル面61dよりも後退接触角の小さい材質として濡れ性を高くすることにより、ノズル面61d上に付着したインクミストに代表される液体成分である記録液を効率的に除去することが可能となる。
また、中間転写体37の表面は、ノズル面61dよりもタック性が高いことが望ましい。タック性は、べたつき感を示す特性であり、その値であるタック値が大きいほどべたつき感が高い。ノズル面61d上の記録液の乾燥物すなわちインク乾燥体等の高粘度成分や埃、紙粉といった固形物を、中間転写体37上の記録液によりノズル面61dから効率よく除去するためには、後退接触角よりもタック性が重要となる。中間転写体37表面の材質を、ノズル面61dよりもタック性の高い材質とすることにより、効率的に固形物をノズル面61dから中間転写体37へ移動させることが可能となり、より安定性の高い画像形成が可能となる。
なお、後退接触角は、自動接触角計DM500(協和界面科学社製)及び解析ソフトウェアFAMAS(協和界面科学社製)を用いて、23℃で測定した。また、タック値は、引っ張り試験機(レスカ社製)を用いて、直径が5mmの円柱形状のステンレスプローブを圧縮荷重200gfで1秒間押し付けた後、120mm/分で引き抜き、引き抜き時にかかる応力である。さらに、硬度は、JIS−A硬度計を用いて測定された値である。
表面層の材質としては、以上の条件を満たすプラスチック、金属、ゴム、あるいはこれらの複合材料など様々なものを使用可能であるが、本形態では、白色散乱性を有するプラスチック材料を用いている。
中間転写体37はかかる条件を満たすのであれば、その他、ゴムローラであっても良い。中間転写体37を構成するゴム材料としては、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴムなどが挙げられる。よって、たとえば、中間転写体37が、表面層として、シリコーンゴム製の0.2mm厚の層を有する構成としても良い。なお、中間転写体37は、ドラム状でなく、後述するような無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
モータ32は、中間転写体37の駆動速度すなわち回転速度を可変である。モータ32による中間転写体37の回転速度は、制御部40によって制御され、設定される。この点、モータ32は、駆動制御機構として機能し、制御部40は、駆動速度制御手段として機能する。
図1に示すように、給紙ユニット20は、転写紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ22とを有している。
給紙ユニット20はまた、給紙トレイ21及び給紙ローラ22を支持した筐体23を有している。
給紙ユニット20はまた、給紙ローラ22を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等を有している。
清掃手段34は、図示を省略するが、中間転写体37上に形成された画像を構成する記録液のうち転写紙Sに転写されなかった記録液を残インクとして中間転写体37表面から掻き落とす、清掃部材としてのクリーニングブレードを有している。
清掃手段34はまた、クリーニングブレードを中間転写体37に押し当てる押し当て手段と、クリーニングブレードによって中間転写体37表面から掻き落とされた記録液や埃等の異物を収集するための廃液回収タンクとしての廃液ボトルとを有している。
クリーニングブレードは、中間転写体37に対していわゆるカウンター当接の態様で当接している。クリーニングブレードは、弾性体としてのゴムによって形成されたゴムブレードである。クリーニングブレードの材質は、フッ素ゴム製であるが、シリコーンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、EPDM、エラストマーなどの弾性材料のほか、プラスチック、あるいは、ステンレス、アルミなど金属、非鉄材料としても良い。
クリーニングブレードと押し当て手段とはクリーニング機構を構成している。クリーニング機構はクリーニングブレードとともに、あるいはクリーニングブレードに代えて、清掃部材としてのクリーニングローラ及び/又は不織布からなるウェブを備えていてもよい。
清掃手段34は中間転写体37をクリーニングする点において実質的にクリーニング機構として機能する。清掃手段34は、このような構成により中間転写体37をクリーニングして初期化する初期化手段としての中間転写体クリーニング手段である。
キャリッジ50は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。キャリッジ50は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、後述する吐出曲がりを含む劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。
これらによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
駆動部35は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを図1に示されているように中間転写体37から離間させた位置と中間転写体37に当接させた位置との間で変位させる。よって、ヘッド移動機構である駆動部35は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とを接離、すなわち互いに近接あるいは離間させる接離手段として機能する。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60Y、60M、60C、60BK、画像形成装置100はヘッド固定式のフルライン型となっている。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、複数のヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKを有している。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するポンプ82Y、82M、82C、82BKを有している。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプを有している。
ポンプ82Y、82M、82C、82BKは、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を圧送することで各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて送液する。
このように、ポンプ82Y、82M、82C、82BKは、ヘッド61Y、61M、61C、61BK内に記録液を送り込むタイプであって、チュービングポンプである。ただし、ポンプ82Y、82M、82C、82BKは、ピストンポンプであってもよいし、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから記録液を吸引するタイプであっても良い。
ポンプ82Y、82M、82C、82BKは、制御部40によって作動を制御される。この点、制御部40は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部40は、画像形成装置100において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されるにつれてしぼむことが可能なように比較的やわらかいプラスチック素材で形成された袋状のインクパックとなっている。ただし、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、比較適剛性の高いプラスチック素材で形成されていてもよい。
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
パイプは、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路をポンプ82Y、82M、82C、82BKとともに形成している。
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。溶媒は安全性の観点から水を含んでいる。
図2に、ヘッド61Y、61M、61C、61BKの構成態様を例示する。
同図(a)、同図(b)に示すヘッド61Y、61M、61C、61BKは、共通する構成として、次の構成を有しているとともに、同様に制御され、駆動されて記録液を吐出する。
すなわち、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、Z方向のうち記録液吐出側に配設され中間転写体37に対向した導電性のノズル部材であるノズルプレートとしてのノズル板61aを有している。
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKはまた、ノズル板61aに形成され、記録液が通過し、記録液を滴状にして液滴として吐出するノズル61bを有している。
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKはまた、ポンプ82Y、82M、82C、82BKによってインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKから記録液を供給され記録液を充填される液室である図示しないインク室を有している。
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKはまた、インク室内の記録液をノズル61bから吐出させる図示しないインク吐出手段を有している。
ノズル板61a、ノズル61b、インク室、インク吐出手段はこれらが1組となって、X方向に沿って、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられているが、同図においてはそのうちの1組のみを図示している。
ノズル板61aは、多数のノズル61bをX方向に沿ってライン状に有するとともにこのライン状に配列された多数のノズル61bを副走査方向すなわちX方向に直交する同図上下方向に対応するY方向に沿って2列備えている。かかるライン状に配列された多数のノズル61bによって形成されたノズル列のうち、Y方向下流側の列を第1のノズル列といい、Y方向上流側の列を第2のノズル列というものとする。
ノズル板61aは、詳細な図示を省略するが、基板と、この基板の、中間転写体37に対向する側の面に形成された撥水膜とを有している。ノズル板61aの下面がノズル面61dになっている。撥水膜は、フッ素系撥水剤やシリコン系撥水剤などを塗布して形成しても良いし、フッ素系高分子やフッ素―金属化合物共析などをメッキして形成しても良く、撥水性がある膜なら特に限定されない。ノズル板61aは、インク室側の面をインク室内の記録液との界面を形成する界面形成部として備えている。
ノズル板61aは、画像形成時において中間転写体37とのギャップが20〜500μmの間で設定される。かかるギャップが20μm未満であると、回転体である中間転写体37とノズル板61aとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが500μmを超えると、中間転写体37表面への記録液の着弾精度が低下する場合があるためである。ギャップは、中間転写体37表面への記録液の着弾精度の観点からは短いほどよく、ギャップの維持さえ可能なら20μm未満でも特に問題はない。
ノズル板61aは、ノズル61bを備えたノズル部となっており、とくに、中間転写体37に対向した表面であるノズル面61dがノズル部となっている。
インク吐出手段は、各ノズル61bから記録液を液滴化して吐出させ中間転写体37に着弾させるための液体吐出手段として、インク室内の記録液に圧力印加を行う圧力印加手段であるアクチュエータとしての圧電素子を有している。
圧電素子は、制御部40によって実現されたヘッド駆動手段としてのヘッド駆動回路によって駆動される。ヘッド駆動回路は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから記録液を吐出させるための吐出信号である駆動信号を生成する駆動信号生成手段として機能するものである。駆動信号は、形成すべき画像などに応じた所定の駆動波形であるヘッド駆動波形言い換えると信号波形の電圧パルスとして生成される。このように、ヘッド駆動回路として機能する制御部40は、必要に応じて、随意に記録液の吐出のオン・オフを制御する駆動信号を生成可能となっている。生成された駆動信号は圧電素子に入力される。
よって、制御部40による制御によって圧電素子に印加される電圧パルスに応じて、ノズル61bから記録液が所望の画像パターンに対応して中間転写体37上に吐出されるようになっている。したがって制御部40は、複数のノズル61bのうちの自由な組み合わせで記録液を吐出させるように、記録液を吐出させるべきノズル61bに対応した圧電素子を駆動し、記録液の吐出を制御することが可能である。この点、ヘッド駆動手段として機能する制御部40は、ヘッド駆動装置であるインク吐出制御手段として機能する。
インク吐出制御手段として機能する制御部40は、すでに述べたように、かかる圧電素子を駆動するための電圧パルスを所定の信号波形でかかる圧電素子のそれぞれに入力し、かかる圧電素子を駆動する駆動回路となっている。インク吐出制御手段として機能する制御部40は、各ノズル61bから吐出された記録液により、任意のパターンすなわち画像を形成するように、各圧電素子を時系列に駆動する。この点、制御部40は、画像制御装置として機能する。インク室内の圧力はノズル61bから記録液が吐出、排出されるとき以外は負圧に保たれるようになっている。
インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよい。またかかるアクチュエータは、サーマル方式等の加熱ヒータ方式を採用した加熱手段による記録液の膜沸騰によってノズル61bから記録液を吐出させるものであっても良いし、電圧印加手段による静電引力によって記録液吐出するものであっても良い。このように、かかるアクチュエータは、あらゆる方法で記録液を吐出するものを採用可能である。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKの、主走査方向における幅は、A3縦サイズに対応している。言い換えると、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおいて、ノズル61bによって形成されているノズル列の主走査方向における全幅が、A3縦サイズの画像形成領域幅に対応している。
以上が、図2(a)、図2(b)に示す、フルライン型のインクジェットヘッドであるヘッド61Y、61M、61C、61BKの共通点である。以下、図2(a)、図2(b)に示すヘッド61Y、61M、61C、61BKの相違点について説明する。
図2(a)に示すヘッド61Y、61M、61C、61BKは、複数のノズル61bを備えたノズル板61aを備えたヘッド構成単位であるヘッドモジュール61Xを1つ有している。言い換えると、1つのノズル板61aが全てのノズル61bを備えている。ノズル板61aの、主走査方向における幅は、A3縦サイズに対応している。
これに対し、同図(b)に示すヘッド61Y、61M、61C、61BKは、同図(a)に示したヘッドモジュール61Xよりも小さなヘッドモジュール61Xを千鳥状に複数アッセンブリした、具体的には10個有するラインエンジンとなっている。よって、同図(b)に示す場合のヘッドモジュール61Xは、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに備えられた複数のノズル61bの一部を構成する複数のノズル61bを備えたものとなっている。
以上のように、図2(a)、図2(b)に示して説明したヘッド61Y、61M、61C、61BKが、画像形成装置100に搭載可能なインクジェットヘッドの例である。
本形態では、とくに説明する場合を除き、図2(a)に示して説明したヘッド61Y、61M、61C、61BKを用いるものとする。
なお、同図(a)、(b)のいずれにおいても、ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、ノズル61bを2次元状に備えたライン型ヘッドとなっている。しかし、ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、ノズル61bを主走査方向に複数備えた1次元状のライン型ヘッドであっても良い。同図(b)に示したヘッド61Y、61M、61C、61BKにおいて、ヘッドモジュール61Xの数は10個に限られるものではない。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、シリアルスキャン型のインクジェットヘッドであっても良い。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、本形態のように固定式、言い換えると主走査方向に駆動されないタイプでなく、図17に示して後述するように、画像形成領域幅に対して往復運動を行うことで画像形成を行うシャトル方式に対応した構成でも良い。この場合にはヘッド61Y、61M、61C、61BKが小型のヘッド構成となる。
画像形成装置100のように中間転写体を備えたインクジェット方式の画像形成装置は、特に高速の画像形成を行うタイプの画像形成装置である。具体的には、画像形成装置100は、60枚/分以上の高速機である。ヘッド61Y、61M、61C、61BKがラインヘッドであると、画像形成装置100における画像形成の高速化に適している。中間転写体37は、ノズル61bから吐出され付与された記録液によって形成される像を担持する被記録体としてのメディアである像担持体として機能する。
検査装置70は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出され中間転写体37上に着弾した記録液の液滴によって後述するように中間転写体37上に形成される所定の周期パターンを撮像する撮像部71を有している。
検査装置70はまた、かかる所定の周期パターンを形成されるとともに形成された所定の周期パターンを撮像部71による撮像位置に搬送する中間転写体37を有している。
検査装置70はまた、撮像部71による撮像位置を通過した所定の周期パターンを中間転写体37から除去して中間転写体37をクリーニングする清掃手段34を有している。
検査装置70はまた、中間転写体37にかかる所定の周期パターンを形成するためにヘッド61Y、61M、61C、61BKを駆動して記録液を吐出させる、インク吐出制御手段として機能する制御部40を有している。
検査装置70はまた、撮像部71において所定の周期パターンを撮像することによって得られた、当該所定の周期パターンに対応した電気信号を処理する処理手段として機能する演算装置である制御部40を有している。処理手段として機能する制御部40は、かかる電気信号を後述のように処理して、記録液の吐出精度についてのヘッド61Y、61M、61C、61BKの状態を取得する。
検査装置70は、その他、画像形成装置100に備えられている構成であって、後述するその機能を発揮し、また後述するその動作を行うために要する構成を、適宜、その構成要素とする。
撮像部71は、A1方向において、中間転写体37がヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向している位置よりも下流側の位置であって、転写部31よりも上流側の位置で、中間転写体37に対向している。図3(a)に示すように、撮像部71は、中間転写体37上に形成された所定の周期パターンを撮像する撮像系たる撮像手段としてのラインセンサである撮像装置72を有している。
撮像部71はまた、撮像装置72によってかかる所定の周期パターンを撮像するために中間転写体37に向けて光を照射し、かかる所定の周期パターンを構成した記録液の液滴Lを照明する照明手段としての照明装置73を有している。
撮像部71はまた、照明装置73の照明による光の、液滴Lにおける反射光を、撮像装置72に案内するとともに撮像装置72において結像させるための結像レンズである結像手段としての撮像光学系たる結像光学系74とを有している。
なお、同図(a)、同図(b)において、中間転写体37の表面が平面状に示されているが、実際には中間転写体37の表面は撮像部71側に向けて凸の曲面をなしている。しかし、このことが撮像部71の性能に与える影響は無視できる程度である。
撮像装置72は、画素が1列に配列された構成を有する受光素子アレイであり、CCDが用いられているが、CMOS等を用いた別の受光素子アレイであっても良い。撮像装置72は、その他、2次元的に画素が配列されたエリア型センサを用いたものであっても良い。ただし、かかるエリア型センサよりも、本形態のようなラインセンサであることが望ましい。これは、所定の周期パターンを形成された中間転写体37の連続的な回転による当該所定の周期パターンの搬送動作に対して連続的な撮像を行うのにはラインセンサが適しているためである。撮像装置72はエンコーダによって検知された中間転写体37の位相に関する信号言い換えるとエンコーダ信号に同期して、所定の周期パターンを撮像した画像を取得するようになっている。
結像光学系74は、等倍結像素子をレンズアレイとした等倍アレイ結像素子である。結像光学系74に等倍結像素子を用いた理由は次のとおりである。
一般的に、撮像装置72のようなラインセンサに用いられる結像レンズは、たとえば縮小光学系であり、撮像する像の歪みを生み出す倍率収差、歪曲収差を有している。特に歪曲収差の存在は、検査装置70において後述する着弾位置ずれ量、あるいはヘッド配置誤差量の算出時に誤差の原因となる。
これらの収差は、予め特定しておいた収差量を用いた補正処理を行う手法で除去することも可能である。収差量の特定は、たとえば、等間隔に形成された周期パターンを撮像することで行うことが可能である。また、特定された収差量による補正については、かかる収差量を処理手段として機能する制御部40に記憶させておくことで、処理フロー中に補正することが可能である。
しかしながら、この手法では、装置出荷時に結像レンズの収差量を特定しておく必要があり、また処理時に処理フローが増える。よって、結像レンズは、収差補正の必要無い光学系とすることが望ましい。
このような事情から、簡便な光学系でありながら、倍率収差、歪曲収差が存在しない系として、等倍結像素子、すなわちレンズアレイや屈折率分布型レンズアレイを結像光学系として用いることが最も好ましい。
本形態の結像光学系74は、セルフォック(登録商標)を用いたロッドレンズアレイであり、撮像装置72上に所定の周期パターンの像を形成する。一般的な結像光学系と異なり、セルフォック(登録商標)を用いたレンズアレイを用いると、結像時に像が縮小されない。よって、結像光学系74は長尺なラインセンサとなる。そのため、結像光学系74は複数のラインセンサが並列に実装された長尺ラインセンサであることが好ましい。等倍結像素子は作動距離が短いことから、これを用いることによる付加的な利点として小型な検査装置とすることが可能となることが挙げられる。なお、本形態において、結像光学系74は、撮像装置72と一体で設けられているが、別体であっても良い。
照明装置73は、LEDを用いた光源75と、光源75から照射された光を反射して液滴Lに導く、内面が鏡面加工されたドーム型、言い換えると中空のかまぼこ型の拡散反射板76とを有している。
光源75は、多数のLEDをX方向に並設されたアレイ状の光源であり、拡散反射板76の内部で光を照射するようになっている。
拡散反射板76は、X方向に延在するように配設されており、アレイ状の光源75を支持している。拡散反射板76は、A1方向の中央部に、中間転写体37に対向する位置に設けられた切り欠きであるスリット76aと、結像光学系74に対向する位置に設けられた切り欠きであるスリット76bとを有している。
スリット76a、スリット76bはともに、撮像装置72と中間転写体37の撮影対象箇所である撮像位置とを結ぶ結像光学系74の光路上の位置にX方向に、延在した態様で形成されている。よって、スリット76a、スリット76bはともに、拡散反射板76内の光をX方向に長い線状の光として外部に照射可能になっている。同図に示されている液滴Lは、かかる光路言い換えると光軸上に位置している。
光源75は、スリット76aの両側に設けられており、発した光の大部分が拡散反射板76の内面に照射されて拡散反射光となり、角度均質な照明が行われる。この拡散反射光はスリット76aを経て中間転写体37に向けて照射され、A1方向に移動する中間転写体37表面をスキャンする。中間転写体37のA1方向への移動に伴い、所定の周期パターンを構成している液滴Lがスリット76aに対向する位置である撮像位置を通過すると、中間転写体37表面をスキャンしている拡散反射光がかかる液滴Lで反射されて再度スリット76aを通過する。このスリット76aを通過して拡散反射板76内に進入した拡散反射光は、さらにスリット76bを通過すると、拡散反射板76外に出て、結像光学系74で結像されたうえで撮像装置72によって検知される。
このように、照明装置73において、拡散反射光は、スリット76a、スリット76b以外の部分で遮られるため、拡散反射光のうち液滴Lに照射される照明光は、結像光学系74の光軸と同軸上に存在することがない。
ここで、同図(b)に示すように、液滴Lが接触角αで中間転写体37表面に付着している場合、結像光学系74で取り込み可能な、液滴Lの縁言い換えると中間転写体37に触れていない輪郭部分からの反射光の角度をβとする。このとき、中間転写体37に入射する光の角度θが満たすべき条件は次のとおりである。
β<θ<2α・・・(1)
照明装置73はこの式(1)の条件を満たしている。照明装置73は、液滴Lがどのような接触角を有していても、中間転写体37表面による正反射光を撮像装置72に入射させることなしに、中間転写体37表面上の液滴Lの表面による正反射光の一部を撮像装置72に入射させる条件を満たしている。すなわち、照明装置73は、拡散反射板76で反射された光源75からの光が所定の周期パターンを形成した記録液の表面を照射する拡散照明である。
そのため、撮像装置72で撮像される画像が、記録液によって光が吸収されることに由来するコントラスト画像となることがない。よって、液滴Lを構成している記録液の色に応じた中間転写体37とのコントラストの影響を受けることがない。言い換えると、記録液の色に応じた実質的なコントラストの相違による検査精度への影響がキャンセルされる。
また、後述するように、位置ずれの検出を、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BK相互間について行う場合などに生じ得る、周期パターンを形成する記録液に複数色が混色した状態であっても、かかるコントラストの影響を受けることがない。
近年では、画像形成装置100においては用いられていないが、ライトシアン、ライトマゼンタといった淡い色の記録液が用いられることが多くなってきている。かりに画像形成装置100でこのような淡い色の記録液を用いても、上述のように液滴Lの表面による正反射光を撮像するため、液滴Lの色に関係なく高いコントラストで撮像されることとなり、安定して高い検査精度が得られる。
さらに、上述のように、中間転写体37の表面が白色散乱性を有するプラスチック材料であり、光学的に平坦であるため、被記録体として紙を用いた場合と同様の画像が撮像される。
本形態においては、被記録体として中間転写体37を用い、その表面を光学的に平坦にしているため、被記録体として紙を用いる後述の形態と同様に上述のコントラストの影響が低減されていることに加えて、液滴Lが非浸透性としていることにより次の利点がある。すなわち、被記録体として紙を用いる場合に一般に生じる、被記録体への記録液の浸透が生じることがないため、かかる浸透によって生じる滲み、液滴Lの位置ずれに起因する、検査装置70による検査精度の低下が防止される。なお、中間転写体37を非浸透性とする場合、少なくともその表面が非浸透性の材質で形成されればよい。
また、被記録体として中間転写体37を用いることで、検査装置70による検査のための紙の消費を生じることなく、繰り返し検査を行うことが可能となっている。ただし、繰り返し検査を行うために、清掃手段34による中間転写体37のクリーニングを行う。
さらに、中間転写体37の表面エネルギーが上述のように高いため、中間転写体37に着弾した記録液の液滴が移動しにくいことから、後述する着弾位置ずれ量、ヘッド配置誤差量が正確に算出され、検査装置70による検査精度が高精度となるという利点が得られる。またかかる液滴が移動しにくいことにより、通常の画像形成においても高画質の画像形成が行われる。
照明装置73は、本形態の構成となっているのが好ましいが、式(1)を満たす構成であれば好ましい構成である。そのため、中間転写体37の斜方から照明を行い、液滴Lによる正反射光が撮像装置72に受光される構成が好ましい。この構成としては、具体的に、拡散反射板76を省略し、光源75からの光が直接的に液滴Lに入射する構成が挙げられる。
光源75は、中間転写体37の片側斜方から中間転写体37に向けて光を照射する構成であっても良いが、中間転写体37の両側斜方から中間転写体37に向けて光を照射する構成であるのが好ましい。さらには中間転写体37の両側斜方から対称的に中間転写体37に向けて光を照射する構成であるのが好ましい。また、光源75からの光を液滴Lに導くレンズ等の光学部材を有していてもよい。本形態の照明装置73における光源75は1つのみ備えられていてもよい。結像光学系74は撮像装置72と別体であってもよい。
検査装置70による検査は、中間転写体37上に後述する所定の周期パターンを形成して行うため、次に述べる通常の画像形成時すなわちユーザー指定の画像形成時において中間転写体37上に画像が形成されるタイミングと異なるタイミングで行われる。具体的にどのようなタイミングで行われるかについては後述する。
以上述べた構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転する。中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が吐出される。
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからの各色の記録液の吐出は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37の同位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で行われる。これにより、中間転写体37上に一時的に画像が担持される。
中間転写体37上に担持された画像の先端が転写部31に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット20から給送された一枚の転写紙Sが転写部31に供給される。そうすると、転写ローラ38が連れ回りしながら、転写部31を通過する転写紙Sに、中間転写体37上に担持されている画像が転写され、転写紙Sの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Sは、排紙台25に案内され排紙台25上に積載される。
転写部31における転写により、転写部31を通過した中間転写体37上には、記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、中間転写体37は清掃手段34によるクリーニングを受けることで、記録液のオフセットが高度に防止ないし抑制される。よって、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れが防止ないし抑制され、画像劣化、中間転写体37の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
以上のような画像形成動作を行う際あるいは非画像形成時である待機時には、記録液の飛散等によるインクミスト等により、図14(a)に示すように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKの、ノズル板61aのノズル面61dに、記録液が付着することがある。ノズル面61dに付着した記録液は、雰囲気中の埃、紙粉等の異物を吸着する場合がある。その他、ノズル面61dには埃、紙粉等の異物が直接付着し得る。ノズル面61dに付着した記録液、異物による汚れが、とくにノズル61bの周辺において、進行すると、ノズル61bから吐出される記録液の吐出曲がりを生じる。この吐出曲がりは精密な画像形成に悪影響を及ぼすことがある。
また、記録液中の水分の蒸発等によって、ノズル61b内あるいはインク室内のノズル61bの周辺の記録液が増粘した場合にも、記録液の吐出曲がりにより、同様の現象が生じ得る。増粘が進んで凝集物が生じた場合や、ノズル61b内に気泡が生じた場合、ノズル61b内に異物が混入した場合にも、記録液の吐出曲がりにより、同様の現象が生じ得る。その他、製造時の不具合により出荷当初から吐出曲がりを生じるヘッドも存在し得る。
そこで、画像形成装置100では、検査装置70によって後述するようにして吐出曲がりが検知されたときに、検知された吐出曲がりの程度に応じて回復動作を行う。この回復動作を行う回復手段として、画像形成装置100は、モータ32、中間転写体37、ポンプ82Y、82M、82C、82BK、ヘッド駆動手段として機能する制御部40を有している。これら複数の回復手段は、後述するように、行うべき回復動作に応じて、単独で、あるいは適宜の組み合わせで用いられる。
吐出曲がりの検査を行うタイミングは、次のとおりである。
A.画像形成装置100の電源投入時、もしくは待機時から復帰するとき
B.所定枚数の転写紙Sに画像形成を行ったとき
C.画像形成動作中の紙間位置に所定の周期パターンが形成可能であるとき
D.ヘッド61Y、61M、61C、61BKが新規のものに交換されたとき
なお、これらのタイミングと異なる適宜のタイミング、たとえばユーザーによる液晶パネル41の操作で吐出曲がりの検知動作の実行指示の入力が行われたタイミングで吐出曲がりの検査を行ってもよい。
これらのタイミングで吐出曲がりの検査が行われ、吐出曲がりが検知されると、検知された吐出曲がりの程度に応じた回復動作が選択され、実行される。
検査装置70によって行われるヘッド61Y、61M、61C、61BKの検査について説明する。
まず、図4(a)に示されているように、離間部36を駆動して転写ローラ38を中間転写体37から離間させ、離間状態を形成するとともに、モータ32を駆動して中間転写体37をA1方向に回転させる。
次いで、インク吐出制御手段として機能する制御部40によりヘッド61Y、61M、61C、61BKを駆動して、図5に示す周期パターンPを形成する。なお、検査装置70によるヘッド61Y、61M、61C、61BKの検査は、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKの順で個別に行う。ただし、この順番はどのような順番であっても良い。
同図に示す周期パターンPのうち、周期パターンP1は、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの第1のノズル列によって形成される周期パターンである。また、同図に示す周期パターンPのうち、周期パターンP2は、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの第2のノズル列によって形成される周期パターンである。同図においては、周期パターンP1が形成された後に、周期パターンP2が形成されている。
周期パターンP1、周期パターンP2のそれぞれにおいて、X方向における周期は一定である。このような周期パターンP1、周期パターンP2が形成されるように、インク吐出制御手段として機能する制御部40は、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの第1のノズル列、第2のノズル列を繰り返し駆動する。なお、中間転写体37のA1方向への回転は等速で継続されている。
周期パターンP1、周期パターンP2が形成されるのであれば、第1のノズル列、第2のノズル列を形成したノズル61bの全てを駆動する必要はなく、X方向において等間隔で選択された複数のノズル61bを駆動しても良い。この点については図9に沿った後述の説明で補足する。
ただし、ノズル61bをX方向において等間隔で選択して駆動するときは、周期パターンP1、周期パターンP2を複数形成し、結果として全てのノズル61bから記録液が吐出されるようにする。
周期パターンP1、周期パターンP2が中間転写体37の表面に形成されることで、中間転写体37表面にX方向に略等周期の明暗構造を持つライン・アンド・スペースパターン(以下「L&S」と記載する。)が記録液によって形成される。たとえば、第1のノズル列、第2のノズル列において、1インチあたり300個のノズル61bがX方向に形成されているとして、全てのノズル61bから記録液を吐出したとする。この場合、周期パターンP1、周期パターンP2によるL&Sのピッチは約169μmとなる。
撮像装置72は、後述する位相を正確に求めるためには、L&Sパターンのピッチに対して1/4以下の解像度を持っていることが必要であり、好ましくは1/8以下の解像度を有していることが好ましい。この条件によると、前述したようにL&Sのピッチが169μmであるときは、1200dpiすなわち約21μmピッチで撮像することが望ましい。たとえばピッチ約169μmのノズル61bが192個並んだノズル列の場合、2048画素のライン型CCD素子で撮像装置72を構成することによってかかる条件が満たされる。
撮像装置72はこのような条件に合致したものとなっている。なお、上述のように、周期パターンPを、X方向において等間隔で選択された複数のノズル61bを駆動して形成するようにすれば、撮像装置72の解像度は低くても良く、検査時間はかかることとなるものの、撮像装置72、結像光学系74を低廉化することが可能となる。
中間転写体37表面上の周期パターンPは、中間転写体37のA1方向の回転に伴って撮像位置に至ると、エンコーダによって検知された中間転写体37の位相に基づいて駆動された撮像装置72によって撮像される。撮像装置72は、撮像によって、周期パターンPに対応した電気信号を生成し、処理手段として機能する制御部40に入力する。
中間転写体37表面上の周期パターンPは、中間転写体37のA1方向の回転に伴って、撮像位置で撮像されながらさらにA1方向に搬送され、転写部31において中間転写体37と離間した転写ローラ38との間を通過する。よって、周期パターンPを形成した記録液が転写ローラ38に付着することが防止される。そして、中間転写体37表面上の周期パターンPは、清掃手段34が配設されているクリーニング領域に至ると、清掃手段34によって中間転写体37から除去される。
処理手段として機能する制御部40は、図6に示された各処理言い換えると各工程を実行することにより、記録液の吐出精度に関するヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの状態を取得する。図6に示されている処理過程は、フーリエ変換法として知られる3次元形状測定手法(たとえば、〔非特許文献1〕参照)を応用したものである。なお、処理手段として機能する制御部40がかかる状態を取得するために実行する処理は、図6に示されるものに限定されない。この点については後に詳しく述べるが、たとえば、ステップS17は適宜省略しても良い。
以下、図6に示されている各工程について、図7を参照しながら説明する。
図7は、図6に示されている処理フローによる処理過程における信号パターンの例を示している。
図7(a)は、撮像装置72によって撮像されたL&S信号のX方向における信号強度分布f(x)の一例を示したものである。f(x)はピッチに相当する周波数λoにおける正弦波信号が主たる成分であり、この成分は次式(2)で近似的に表される。同式において、a、bはそれぞれL&Sのバイアス成分、振幅を表しており、φは周期の位相を表している。
周期パターンPが完全に等周期で並んでいるとき、位相φは、周期パターンPを構成している全てのラインに対して同値となるが、吐出曲がりが存在しているときはその場所における位相φが周囲とは異なった値をとることになる。
よって、撮像して得られた信号であるf(x)から、周期パターンPにおけるずれ量を表す位相のX方向における分布φ(x)を求めることによって、全てのラインに対してX方向に関する吐出曲がり量を算出することが可能である。
図6に示した処理フローの一部は、かかる位相分布φ(x)を求めるために実行されるものである。
具体的には、まず、図7(a)に示したようなL&Sの信号が撮像装置72からの出力パターンとして処理手段として機能する制御部40に取得される(図6:ステップS11)。処理手段として機能する制御部40は、取得した出力パターンである電気信号を用いて周期パターンPをフーリエ変換する変換工程を行い、複素振幅信号を算出する(図6:ステップS12)。
図7(b)は、変換工程によって算出された複素振幅信号の振幅成分の一例を示している。同図(b)から分かるように、かかる複素振幅信号によって表される複素振幅パターンの振幅分布は、バイアス成分である0次ピークの他に、周期パターンPの周期λoに相当する箇所に大きなピークである1次ピークを有している。また、かかる振幅分布において、1次ピークよりさらに高周波側には2次ピークが現れる。これら1次ピーク、2次ピークはそれぞれ、変換工程によって得られた複素振幅パターンの振幅における1次ピーク、2次ピークを意味する。この複素振幅パターンの振幅は複素振幅パターンの強度と同義である。
次に、処理手段として機能する制御部40は、1次ピークを周波数方向にシフトさせるシフト工程を実行する(図6:ステップS13)。より具体的には、1次ピークの値を信号の中心位置、言い換えるとゼロ周波数の位置になるように、複素振幅信号を周波数領域上でシフトさせる。ここで、シフトする1次ピーク量としては、吐出したノズル61bの周期から換算したλoの値を用いても良いし、図7(b)で示した振幅成分からピーク値すなわち1次ピークを示す周波数を算出して用いても良い。
続いて、処理手段として機能する制御部40は、シフトした信号に対して、所定周波数λc以上の周波数成分を除去するローパスフィルタ処理を行うことでローパスフィルタ工程を実行する(図6:ステップS14)。
ローパスフィルタをかける方法としては、後述するようなある周波数λc以上の成分を全てカットする手法をとるのが簡便であるが、後述する位相信号φ(x)を算出した際に、カットした周波数領域でリンギングが発生してしまう場合がある。よって、より正確に吐出曲がりの量である後述する着弾誤差を求めたいときには、正弦波窓、ハミング窓、ハニング窓など、よく知られた窓関数を適用して所定周波数λc以上の成分をカットすることが好ましい。
この所定周波数である遮断周波数λcは、低すぎると全てのノズル61bに対する吐出曲がり量を算出することが困難となり、高すぎると、0次ピークや、2次ピーク成分からの影響を受けるようになる。よって、遮断周波数λcは、λoの0.4倍〜0.9倍が適当な値である。
シフト工程を実行するとともにローパスフィルタ工程を実行することにより、1次ピークが周波数方向で中心位置を占める新たなパターンを形成するフィルタリング工程が実行される。
図7(c)は、フィルタリング工程によって得られた複素振幅信号の振幅成分の一例を示している。
続いて、処理手段として機能する制御部40は、フィルタリング工程によって得られた信号によって表された新たなパターンに逆フーリエ変換を行って複素振幅信号を得る逆変換工程を実行する(図6:ステップS15)。
逆変換工程の実行によって得られた複素振幅信号g(x)は次式(3)で表される。この複素振幅信号g(x)の振幅成分、すなわち式(3)中の1/2bは、L&S信号の振幅成分を表し、位相成分、すなわち式(3)中のφ(x)は、吐出曲がりに由来するずれ量である着弾位置誤差を表している。
位相成分φ(x)はλoの周期パターンに対する位相ずれを表しているので、次式(4)によって着弾位置ずれ量m(x)が得られる。
処理手段として機能する制御部40は、逆変換工程によって得られた複素振幅信号g(x)で表される複素振幅パターンの位相成分φ(x)からこの着弾位置ずれ量m(x)である着弾位置誤差を算出する(図6:ステップS16)。この算出により、処理手段として機能する制御部40は、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの状態を取得する状態取得工程を実行する。
この状態取得工程の実行により取得されるヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの状態とは、具体的には、着弾位置誤差である。状態取得工程の実行は、実質的に、次のノズル特定工程及び液滴ずれ量算出工程の実行として行われる。
ノズル特定工程は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKそれぞれに備えられている複数のノズル61bのうち中間転写体37上で記録液の液滴の着弾位置ずれが生ずることで記録液の吐出精度を低下させるノズル61bを特定する工程である。液滴ずれ量算出工程は、中間転写体37上での記録液の液滴の着弾位置ずれ量を算出する工程である。
図7(d)は、状態取得工程によって最終的に得られた着弾位置ずれ量のX方向分布の一例を示している。同図(d)に示されているとおり、一括の処理によって多数のラインについて周期構造からの位置ずれ量が求められる。よって、処理手段として機能する制御部40を搭載した検査装置70を用いることによって、多数のノズル列に対して吐出曲がりに由来する着弾位置ずれ量が高速かつ少ない処理によって算出される。
このように、状態取得工程の実行によってノズル特定工程及び液滴ずれ量算出工程が実行されることで、全てのノズル61bについて着弾位置ずれが生じているか否か、着弾位置ずれが生じている場合にはその量がどれくらいかが検知される。
ただし、状態取得工程では、ノズル特定工程と液滴ずれ量算出工程との何れか一方のみを行うようにしてもよい。
着弾位置ずれ量は、式(4)によって、理想的には算出されるものの、実際にはローパスフィルタ処理をした影響により、実際の着弾位置ずれ量よりも小さい値が算出される。よって、より高い精度で着弾位置ずれ量を算出するために、次のような位置ずれ量の補正を行う補正工程を実行する(図6:ステップS17)。すなわち、予め位置ずれ量が既知のL&S画像に対して同様の処理を行い、実際の着弾位置ずれ量を算出するための、補正係数を求めておき、もしくはルックアップテーブルを作成しておき、算出した着弾位置ずれ量についての補正処理を行えるようにしておく。
図6に示した処理フローは基本となる処理の例であり、実際にはフーリエ変換前のL&S信号では、高いコントラストでL&Sが形成されていることが望ましい。よって、コントラストの調整やアンシャープマスク処理を行うなど、一般的な画像処理を適宜追加することが可能である。
また、ステップS13に示して上述したシフト工程における周波数領域のシフト処理において、離散的な信号を扱っている関係で最終的に得られた着弾位置ずれ量に傾き成分が残る可能性がある。傾き成分が残ると、たとえば図7(d)に示したような着弾位置ずれ量のX方向分布が全体的に傾斜した結果となる。そのため、このような場合には、ステップS17に示した補正工程において、傾き成分を除去する傾き除去処理を加えることが必要である。
さらに、ステップ15に示して上述した逆変換工程において複素振幅信号g(x)を求めた際の位相分布φ(x)は−πから+πまでの値で折り返された分布をするため、傾き成分が残っている際などには位相の折り返し現象が発生する可能性がある。このような場合には、−πの位相から+πへ位相が急激に変化する場所において、たとえば図7(d)に示したような着弾位置ずれ量のX方向分布が、位置ずれ量方向において不連続となることとなる。そのため、ステップS17で示した補正工程において、−πの位相から+πへ位相が急激に変化する場所において、位相を繋ぐ位相アンラッピング処理言い換えるとトビ補正を行うことが必要となる。
処理手段として機能する制御部40は、これら従来知られている演算処理を備えており、適宜使用可能となっていることが好ましい。なお、ステップS16とステップS17とは、順番が逆であってもよいし、正確な位置ずれ量を算出するために繰り返し行っても良い。よって補正工程も状態取得工程に含まれるものと把握され得る。
以上の説明では説明の便宜上、周期パターンを1次元パターンとして処理を行う例を示したが、上述の処理は全て2次元パターンに対して行うことも可能である。2次元パターンの取得は撮像装置72からの複数回の出力を蓄積し、エンコーダ信号からの入力と整合させることで2次元パターンを合成することが可能である。
図8(a)に2次元のL&S画像の一例を、同図(b)にこの一例に対する着弾位置ずれ量算出結果の一例を示す。
2次元パターンを取得して処理を行うのに適した場合としては、L&SのラインがA1方向あるいは転写紙Sの搬送方向に対して非平行に形成されているときや、L&Sでは無く2次元の周期パターンを形成するときが考えられる。
周期パターン言い換えると記録液の吐出パターンとしては、前述のL&Sパターンあるいは2次元周期パターンの他に、図9に示すように、周期の異なる複数のパターンパッチが形成され、所定の周期パターンが、周期が互いに異なる複数の周期パターンを含むことが好ましい。同図は、周期を変えながら複数のL&Sパッチを形成した例を示したものである。このように複数のピッチでL&Sを作成し、その結果の平均値を着弾位置ずれ量とすることで、測定精度が向上する。
これは、周期パターンの周期が大きくなりすぎるとパターンのコントラストが低下することから測定精度が落ちるためである。また、逆にパターンの周期が狭くなりすぎると一部でラインの合一が発生することから正しい測定がなされなくなるためである。したがって、一般的には2ノズル〜5ノズルおきに1つのラインを形成するパターンとすることが適している。
中間転写体37の回転に偏心があるとき、中間転写体37の厚みに誤差があるとき、あるいは後述する構成例のように被記録体として用紙Sを用いる場合に紙の搬送によるばたつきや紙の凹凸があるときには、撮像装置72の撮像におけるデフォーカス誤差が生じ得る。
結像光学系74がデフォーカスしている際には、L&Sに代表される周期パターンはエッジ部がぼけることにより、正弦波に近いパターンとなり、図7(b)で示したようなフーリエ変換時の振幅分布において、高周波成分である2次ピークの絶対値が低下する。
このことを利用し、処理手段として機能する制御部40は、撮像装置72による所定の周期パターンの撮像におけるフォーカス状態を検知するフォーカス検知工程を実行する。フォーカス検知工程では、フーリエ変換処理を行う変換工程によって得られた複素振幅パターンの振幅における2次ピークの振幅の大きさすなわち2次ピークの絶対値を算出してデフォーカス状態を検知する。
このとき、処理手段として機能する制御部40は、2次ピークが所定閾値以下となっている場合には、結像性能が十分ではなくデフォーカスしていると判断し、そのデータを破棄しデータの再取得を行う。また、2次ピークが閾値以下である状態が多数発生する際には、処理手段として機能する制御部40は、液晶パネル41においてデフォーカスが生じていることについての情報を報知する。
液晶パネル41は、処理手段として機能する制御部40によってデフォーカスが発生しやすいと判断されたときデフォーカスについての情報を報知する報知手段として機能する。報知手段として機能する液晶パネル41は、たとえば、ユーザーあるいはサービスマンによるフォーカス位置の調整を要する旨を表示する。
撮像部71は、デフォーカス位置の調整を行うフォーカス調整機構を有していてもよい。この場合、処理手段として機能する制御部40によって算出された2次ピークの振幅の大きさに応じてデフォーカス位置の調整を自動的に行う。フォーカス調整機構は、たとえばレンズとレンズの駆動機構等によって構成される。デフォーカス位置の調整を行う条件として、2次ピークが閾値以下であると処理手段として機能する制御部40によって判断されたこと、あるいは2次ピークが閾値以下である状態が多数発生すると判断されたことなどを用いることが可能である。
以上、ヘッド61Y、61M、61C、61BKが、図2(a)に示した、ヘッドモジュール61Xを1つ有する場合について説明した。一方、ヘッド61Y、61M、61C、61BKが、同図(b)に示したラインエンジンとなっている場合は、記録液の吐出精度についてのヘッド61Y、61M、61C、61BKの状態を左右する要因として、上述した吐出曲がりに加え、他の要因が生ずる。他の要因とは、複数のヘッドモジュール61Xの相互間の位置決め誤差言い換えると位置合わせ誤差すなわち位置ずれである。
位置ずれは、たとえば、複数のヘッドモジュール61Xのうちのあるヘッドモジュール61XのX方向における配置誤差によって生じることがある。また、位置ずれは、複数のヘッドモジュール61Xのうちのあるヘッドモジュール61XのXY平面内における回転誤差によって生じることがある。このような位置ずれがある場合、形成される画像には、位置ずれに由来するスジムラが生じる。
そこで、画像形成装置100が、同図(b)に示したラインエンジンをヘッド61Y、61M、61C、61BKに用いている場合であって、処理手段として機能する制御部40により、ヘッドモジュール61Xの位置ずれを検知する場合の例を説明する。この説明において、とくに説明しない限り、画像形成装置100、検査装置70の構成や動作、処理は上述したのと同様に行われるものとする。また、この説明において、論理的に矛盾しない限り、既に説明した構成や動作、処理との組み合わせが適宜行われるものとする。なお、この位置ずれの検出は、同図(a)に示したヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKのそれぞれに備えられたヘッドモジュール61X相互間の位置ずれの検出にもそのまま適用可能である。
ヘッドモジュール61Xの位置ずれを検知する場合、処理手段として機能する制御部40は、図10に示された各処理言い換えると各工程を実行する。これにより、記録液の吐出精度に関するヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの状態が取得される。図10に示された各工程のうち、ステップS21〜ステップS25はそれぞれ、図6に示して説明したステップS11〜ステップS15とそれぞれ同様であるため、ここでの説明は省略する。
処理手段として機能する制御部40は、ステップS25の逆変換工程によって得られた複素振幅信号g(x)で表される複素振幅パターンの位相成分φ(x)から各ヘッドモジュール61Xの位置分布を算出する(図10:ステップS26)。この位置分布の算出は、かかる位相成分φ(x)から各ヘッドモジュール61Xの位置を算出することで行われる。このステップS26を、位置分布算出工程とする。
そして、かかる位置分布に基づいて、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKの位置合わせ誤差、具体的にはヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKを構成する各ヘッドモジュール61Xの位置合わせ誤差が算出される。ここで、位置合わせ誤差とは、上述のように、ヘッドモジュール61XのX方向の位置誤差や、ヘッドモジュール61XのXY平面内での回転誤差、すなわち、X方向とノズル配列方向とが平行でなく傾いている誤差を意味するヘッドモジュール61Xの位置ずれである。
位置合わせ誤差の算出により、処理手段として機能する制御部40は、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの状態を取得する状態取得工程を実行する。この状態取得工程において位相成分φ(x)から各ヘッドモジュール61Xの位置ずれが算出される理由は次のとおりである。
位置ずれがX方向の位置誤差である場合について説明すると、隣接するヘッドモジュール61X間において、X方向の配置誤差が存在するとき、図11(a)に示すように位相にトビが発生する。よって、位相トビの量から、隣り合うヘッドモジュール61Xの位置合わせ誤差の量である位置合わせ誤差量としての位置誤差量が、ヘッド配置誤差量として算出される。
位置ずれがXY平面内での回転誤差である場合について説明すると、あるヘッドモジュール61XにXY平面内で回転誤差が存在するとき、X方向のノズルピッチが実質的に変化するために、同図(b)に示すように位相分布に傾きが発生する。よって、処理手段として機能する制御部40により、次のようにして回転誤差が算出される。すなわち、位相分布を算出後に、あるヘッドモジュール61Xからの吐出画像における位相分布と、他のヘッドモジュール61Xからの吐出画像における位相分布とのそれぞれを用い、最小二乗法などでフィッティングすることによって傾きを算出する。そして、傾きから、理想とする周期に対してどれくらいの角度でノズル配列が傾いているかを算出することで、ヘッド配置誤差量としての回転誤差量が算出される。
なお、位置ずれとしてX方向の位置誤差とXY平面内での回転誤差が同じヘッドモジュール61Xで発生しているとすれば、図11(a)の線形と図11(b)の線形とを合計した線形となる。
処理手段として機能する制御部40が図10に示す各工程を実行する場合、状態取得工程の実行により取得されるヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKそれぞれの状態とは、具体的には、上述したヘッドモジュール61Xの位置ずれである。よって、状態取得工程の実行は、実質的に、次のヘッド特定工程及びヘッドずれ量算出工程の実行として行われる。
ヘッド特定工程は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKそれぞれに備えられている複数のヘッドモジュール61Xのうち他のヘッドモジュール61Xに対する位置ずれが生ずることで記録液の吐出精度を低下させるヘッドモジュール61Xを特定する。ヘッドずれ量算出工程は、他のヘッドモジュール61Xに対する位置ずれが生ずることで記録液の吐出精度を低下させるヘッドモジュール61Xの位置ずれ量を算出する。そして、この位置ずれ量に、上述したX方向の位置誤差とXY平面内での回転誤差が含まれる。
X方向の位置誤差を算出する場合に位相トビの量をより厳密に算出するためには、隣り合う一方のヘッドモジュール61Xからの吐出液滴によって形成されたL&S領域の位相平均値と、隣り合う他方のヘッドモジュール61Xからの吐出液滴によって形成されたL&S領域の位相平均値とを比べることが好ましい。
XY平面内での回転誤差が存在する場合、言い換えると位相分布に傾きが存在する場合は、上述のように傾きから回転誤差量を算出した後に、傾き補正を行ってから位相トビ量を算出することが好ましい。
したがって、処理手段として機能する制御部40は、ステップS26に示した位置分布算出工程の実行によって得られた各ヘッドモジュール61Xの位置分布について、トビ補正及び傾き補正を行う補正工程を実行する(図10:ステップS27)。この補正工程においては、上述のように傾き補正を行ってからトビ補正を行うことが望ましいがこれに限られるものではない。
次いで、処理手段として機能する制御部40は、補正工程の実行によって補正された各ヘッドモジュール61Xの位置分布に基づいて、ヘッドモジュール61Xの位置ずれ量の算出を行う。具体的には、X方向の位置誤差量の算出を行う位置誤差量算出工程(図10:ステップS28)と、XY平面内での回転誤差量の算出を行う回転誤差量算出工程(図10:ステップS29)とを実行する。
このように、処理手段として機能する制御部40は、ステップS26の位置分布算出工程、ステップS27の補正工程、ステップS28の位置誤差量算出工程、ステップS29の回転誤差量算出工程を実行することで状態取得工程を実行する。そしてこの状態取得工程は、上述のように、ヘッド特定工程及びヘッドずれ量算出工程を含んでいる。
このように、状態取得工程の実行によってヘッド特定工程及びヘッドずれ量算出工程が実行されることで、全てのヘッドモジュール61Xについて位置ずれが生じているか否か、位置ずれが生じている場合にはその量がどれくらいかが検知される。そして、この量には、X方向の位置誤差量、XY平面内での回転誤差量の少なくとも一方が含まれる。
したがって、一括の処理によって位置ずれ量が求められる。このため、処理手段として機能する制御部40を搭載した検査装置70を用いることによって、位置ずれ量が高速かつ少ない処理によって算出される。
なお、状態取得工程では、ヘッド特定工程とヘッドずれ量算出工程との何れか一方のみを行うようにしてもよい。また、状態取得工程において、ステップS27の補正工程は、ステップS28の位置誤差量算出工程、ステップS29の回転誤差量算出工程の実行後に行ってもよいし、省略も可能である。これらの場合、ステップS27の補正工程は、状態取得工程に必ずしも含まれない。また、ステップS27の補正工程と、ステップS28の位置誤差量算出工程、ステップS29の回転誤差量算出工程とは、正確な位置ずれ量を算出するために繰り返し行ってもよい。
処理手段として機能する制御部40は、図6に沿って説明した状態取得工程と図10に沿って説明した状態取得工程とをともに実行するようにしても良い。すなわち、処理手段として機能する制御部40は、状態取得工程において、図6に沿って説明したノズル特定工程、液滴ずれ量算出工程と、図10に沿って説明したヘッド特定工程、ヘッドずれ量算出工程とを、適宜の組み合わせで実行するようにしても良い。
たとえば、ヘッドずれ量算出工程を、ノズル特定工程及び/又は液滴ずれ量算出工程と組み合わせる。この場合、ノズル特定工程、液滴ずれ量算出工程を、ヘッドずれ量算出工程によって算出されたずれ量による影響がキャンセルされるように実行することが可能となる。言い換えるとかかるずれ量を用いた補正を行ったうえでノズル特定工程、液滴ずれ量算出工程を実行することが可能となる。このようにすれば、ノズル特定工程、液滴ずれ量算出工程の精度が向上し得る。
以上、処理手段として機能する制御部40によって実行される様々な工程、処理について説明したが、撮像装置72による撮像は、撮像する周期パターンをX方向に複数に分けて、複数回で行った方が良い場合がある。たとえば、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKがX方向において長尺である場合であって、これを全幅に渡って検査する場合である。処理手段として機能する制御部40を構成する演算手段、メモリ手段の処理速度、容量の制約、撮像装置72の画素数に関する制約があるためである。このような制約を重要視すれば、検査装置70は、撮像部71をX方向に移動せしめる駆動装置を有する、いわばシャトル型の検査装置となっていることが好ましい。
状態取得工程においてヘッドずれ量算出工程が実行された場合、算出された位置ずれ量は、閾値と比較される。閾値は、ヘッドずれ量算出工程において位置誤差量算出工程が実行される場合にはこの実行により算出される値と比較されるものが準備され処理手段として機能する制御部40に記憶されている。また、閾値は、ヘッドずれ量算出工程において回転誤差量算出工程が実行される場合にはこの実行により算出される値と比較されるものが準備され処理手段として機能する制御部40に記憶されている。
比較の結果、算出された位置ずれ量が閾値以上あるいは閾値より大きい場合には、液晶パネル41においてヘッドモジュール61Xの位置ずれが生じていることについての情報が報知される。このとき報知する情報の内容としては、次のような内容が挙げられ、適宜選択されて液晶パネル41において表示される。
・ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKのうち位置ずれが生じているヘッドを特定する内容
・どのヘッドモジュール61Xにおいて位置ずれが生じているかを特定する内容
・ヘッドずれ量算出工程において位置誤差量算出工程が実行された場合において算出された位置誤差量
・ヘッドずれ量算出工程において回転誤差量算出工程が実行された場合において算出された回転誤差量
液晶パネル41は、処理手段として機能する制御部40によってヘッドモジュール61Xの位置ずれが発生していると判断されたときこの位置ずれについての情報を報知する報知手段として機能する。報知手段として機能する液晶パネル41により、たとえば、ユーザーあるいはサービスマンによるヘッドモジュール61Xの位置の調整、交換、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKの交換が促される。
報知手段として機能する液晶パネル41は、その他、状態取得工程においてヘッド特定工程が実行され、位置ずれを生じているヘッドモジュール61Xが特定された場合、上述の内容のうち、位置誤差量、回転誤差量を除く内容の表示を行ってもよい。
状態取得工程においてヘッドずれ量算出工程が実行され、位置ずれ量が算出された場合、制御部40は、ユーザー指定の画像形成時において、算出された位置ずれ量を用いて画像処理を行うようにしてもよい。すなわち、ヘッドモジュール61Xの位置ずれをキャンセルした画像形成が行われるように、インク吐出制御手段として機能する制御部40によって圧電素子に入力される電圧パルスを補正する。この点、制御部40は、画像ずれ補正手段として機能する。
位置誤差量についての閾値、回転誤差量についての閾値は複数設定されていても良い。この場合、次のような制御を行うことが可能である。すなわち、位置誤差量が比較的小さい及び/又は回転誤差量が比較的小さいときには制御部40を画像ずれ補正手段として機能させてユーザー指定の画像形成を行う。また位置誤差量が比較的大きい及び/又は回転誤差量が比較的大きいときには報知手段として機能する液晶パネル41により上述した報知を行う。なお、閾値の単数、複数によらず、ユーザー指定の画像形成及び/又は報知手段として機能する液晶パネル41による上述した報知を行うようにしてもよい。
状態取得工程においてノズル特定工程が実行された場合、着弾位置ずれが生じていると特定されたノズル61bの数は、閾値と比較される。状態取得工程において液滴ずれ量算出工程が実行された場合、算出された着弾位置ずれ量は、閾値と比較される。
着弾位置ずれが生じていると特定されたノズル61bの数についての閾値、液滴ずれ量算出工程によって算出された着弾位置ずれ量についての閾値は、複数設定されていても良い。
比較の結果、着弾位置ずれが生じていると特定されたノズル61bの数及び/又は液滴ずれ量算出工程によって算出された着弾位置ずれ量が閾値以上あるいは閾値より大きい場合には、制御部40は、次のように吐出曲がりの程度を判断する。すなわち、制御部40は、各種閾値のうち、どの閾値以上であったかあるいはどの閾値を超えたかの組み合わせにより吐出曲がりの程度を判断する。この点、制御部40は、吐出曲がり度判断手段として機能する。
制御部40は、このようにして閾値との比較により検知された吐出曲がりの程度に基づいて、少なくとも1つの回復手段を選択する。すなわち、複数の回復手段であるモータ32、中間転写体37、ポンプ82Y、82M、82C、82BK、ヘッド駆動手段として機能する制御部40から、少なくとも1つの回復手段を選択する。吐出曲がりの程度に応じて適切な回復動作を行うためである。この点、制御部40は、選択手段として機能する。よって、選択手段として機能する制御部40は、検知された吐出曲がりの程度に基づいて、複数の回復動作言い換えると回復処理から、適切な回復動作を決定する。
本形態においては、吐出曲がりの程度が比較的軽度である場合に選択される第1の回復手段と、吐出曲がりの程度が比較的重度である場合に選択される第2の回復手段とが準備されている。その他、本形態においては、第1の回復手段、第2の回復手段との適宜の組み合わせで用いられる第3の回復手段が準備されている。なお第3の回復手段も吐出曲がりの程度に応じて単独で選択されてもよい。
以下、第1の回復手段、第2の回復手段、第3の回復手段について説明する。
第1の回復手段は、第1の回復処理である第1の回復動作をフラッシング動作として行うヘッド駆動手段として機能する制御部40である。第1の回復手段として選択されたヘッド駆動手段として機能する制御部40は、ノズル61bから記録液を連続的に吐出させるフラッシング動作を行うようにヘッド61Y、61M、61C、61BKを駆動することで、回復手段として機能する。
すでに述べたように、吐出曲がりは、ノズル61b内あるいはインク室内のノズル61bの周辺の記録液の増粘、増粘による凝集、ノズル61b内の気泡、異物の混入等によって生じることがあるが、これら吐出曲がりの原因が、かかるフラッシング動作によって解消されうるためである。また比較的経度の吐出曲がりであれば、フラッシング動作での回復が見込まれるためである。
フラッシング動作による記録液の吐出は、状態取得工程においてノズル特定工程が実行された場合には吐出曲がりが発生していると特定されたノズル61bについて行う。記録液の節減のためである。しかし、全てのノズル61bについてフラッシング動作を行っても良い。これは、吐出曲がりの原因が記録液の増粘に起因する場合には、吐出曲がりが発生していると特定されなかったノズル61bにおいても、吐出曲がりが発生し得るためである。また、状態取得工程においてノズル特定工程が実行されず液滴ずれ量算出工程が実行された場合にも全てのノズル61bにおいてフラッシング動作を行う。
フラッシング動作は、中間転写体37をA1方向に駆動した状態で行う。
フラッシング動作によって中間転写体37に付与された記録液は、転写ローラ38が中間転写体37から離間しているため中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写部31を素通りし、清掃手段34に至ると中間転写体37から除去される。
吐出する記録液の数は一定であってもよいし、吐出曲がりの程度が高いほど多くしても良い。また吐出曲がりの程度に応じて、吐出曲がりが発生していると特定されたノズル61bについて記録液の吐出を行うか、全てのノズル61bについて記録液の吐出を行うかを選択してもよい。
次いで、再度、吐出曲がりの検知動作を行い、吐出曲がりの程度が低下していないと判断された場合には、第1の回復動作による吐出曲がりの解消が不可として、第2の回復動作が行われる。第2の回復動作も、中間転写体37をA1方向に駆動した状態で行う。第2の回復動作は、上述のように吐出曲がりの程度が比較的重度である場合には第1の回復動作を経ることなく行われる。第2の回復動作は、第1の回復動作が所定回繰り返されたことを条件として行われるようにしてもよい。
第2の回復動作では、ポンプ82Y、82M、82C、82BKを駆動してインク室内の記録液を加圧しノズル61bから記録液を強制的に排出する強制排出動作を行う強制排出処理を実行する。フラッシング動作で回復されなかった吐出曲がりも、この強制排出動作であれば回復が見込まれるためである。
よってポンプ82Y、82M、82C、82BKは、第2の回復動作を行う第2の回復手段として選択される。ポンプ82Y、82M、82C、82BKは、ヘッド61Y、61M、61C、61BK内の記録液を加圧状態としてノズル61bから記録液を強制的に排出させる記録液排出機構である加圧機構として機能することで、回復手段として機能する。ポンプ82Y、82M、82C、82BKの駆動時間は一定であってもよいし、吐出曲がりの程度が高いほど長くしても良い。
第2の回復動作を図12、図13に沿って説明する。
図12(a)は、ヘッド61Y、61M、61C、61BK具体的にはノズル面61dと中間転写体37とのギャップが、画像形成が行われるギャップに設定された状態を示している。この状態をホームポジションとする。このホームポジションの状態から、駆動部35を駆動することで、図12(b)に示すように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37から離間させノズル面61dと中間転写体37とが離間した離間位置である記録液排出ポジションとする。
記録液排出ポジションにおいて、ポンプ82Y、82M、82C、82BKを駆動することで、インク室内を負圧から正圧とし、図12(c)に示すように、各ノズル61bからヘッド61Y、61M、61C、61BK内の記録液を強制的に排出させる。排出された記録液はヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向した、A1方向に移動している中間転写体37に付与される。
このとき、ギャップがホームポジションのときより大きく設定されていることにより、ノズル61bから排出された記録液が、中間転写体37側に自重落下で効率的に速やかに移動するとともにA1方向に運ばれる。よって、中間転写体37上に排出された記録液は、中間転写体37との間に充填されることがなく、ノズル面61dに広がることがない。
中間転写体37に付与された記録液等は、中間転写体37によりA1方向に運ばれ、転写部31において中間転写体37と離間した転写ローラ38との間を通過し、清掃手段34によって中間転写体37から除去される。
次いで、駆動部35を駆動することで、図13(a)に示すように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に近接させ、ノズル板61a、ノズル面61dと中間転写体37との間の距離を減量位置である記録液量制御ポジションとする。
記録液量制御ポジションにおいて、ノズル面61dと中間転写体37との間の距離は、ホームポジションにおけるかかる距離よりも長いとともに、記録液排出ポジションにおけるかかる距離よりも短い。
これにより、中間転写体37の回転に伴って、ノズル面61dと中間転写体37との間の記録液が、中間転写体37の表面の移動につられてA1方向に引っ張られて移動し始める。中間転写体37がA1方向にさらに移動すると、図13(b)に示されているように、ノズル面61d側と中間転写体37側とで分断される。この分断は、中間転写体37の表面の濡れ性が上述のようにノズル面61dの濡れ性より高いことによって良好に生ずる。その後、図13(c)に示すように、ホームポジションに復帰するまで駆動部35を駆動する。
強制排出動作においてノズル61bから吐出された記録液は、上述のように、中間転写体37のA1方向への回転により、ノズル板61aと中間転写体37との間から除去される。そして、中間転写体37側に付着した記録液は、転写ローラ38が中間転写体37から離間しているため中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写部31を素通りし、清掃手段34に至ると中間転写体37から除去される。
強制排出動作終了後、後述する第3の回復動作であるワイピング動作を行ってから、再度、吐出曲がりの検知動作を行う。この検知動作において、吐出曲がりの程度が低下していないと判断された場合には、第2の回復動作、第3の回復動作によっても吐出曲がりの解消が不可として、液晶パネル41において吐出曲がりが生じていることについての情報を報知し、回復動作を終了する。なお、吐出曲がり度判断手段として機能する制御部40によって吐出曲がりの程度が極めて重度であると判断された場合には、第1の回復動作、第2の回復動作、第3の回復動作を行うことなくかかる報知を行う。
このように、吐出曲がり度判断手段として機能する制御部40は、回復動作、具体的には第1の回復動作、第2の回復動作、第3の回復動作を行っても吐出曲がりからの回復が困難であるか否かを判断する回復判断手段として機能する。
液晶パネル41は、吐出曲がり度判断手段として機能する制御部40によって回復動作を行っても吐出曲がりからの回復が困難であると判断されたとき吐出曲がりについての情報を報知する報知手段として機能する。このとき報知する情報の内容としては、次のような内容が挙げられ、適宜選択されて液晶パネル41において表示される。
・ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKのうち吐出曲がりが生じているヘッドを特定する内容
・どのノズル61bにおいて吐出曲がりが生じているかを特定する内容
・吐出曲がりが生じているノズル61bの数
・ヘッドモジュール61Xが複数ある場合には吐出曲がりが生じているノズル61bを備えたヘッドモジュール61Xを特定する内容
・状態取得工程において液滴ずれ量算出工程が実行された場合において算出された着弾位置ずれ量
報知手段として機能する液晶パネル41は、たとえば、吐出曲がりについてユーザーあるいはサービスマンによるメンテナンスを要する旨を表示する。また、報知手段として機能する液晶パネル41により、たとえば、ユーザーあるいはサービスマンによるヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKの調整、交換が促される。また、ヘッド61Y、ヘッド61M、ヘッド61C、ヘッド61BKが複数のヘッドモジュール61Xを備えている場合には吐出曲がりが生じたノズル61bを備えたヘッドモジュール61Xの調整、交換が促される。
報知手段として機能する液晶パネル41は、その他、状態取得工程においてノズル特定工程が実行され、吐出曲がりを生じているノズル61bが特定された場合、上述の内容のうち、着弾位置ずれ量を除く内容の表示を行ってもよい。報知手段として機能する液晶パネル41による報知は、第2の回復動作が所定回繰り返されたことを条件として行うようにしてもよい。報知手段として機能する液晶パネル41による報知は、第1の回復動作によって吐出曲がりが解消されなかったときに行うようにしてもよい。
状態取得工程において液滴ずれ量算出工程が実行され、着弾位置ずれ量が算出された場合、制御部40は、ユーザー指定の画像形成時において、算出された着弾位置ずれ量を用いて画像処理を行うようにしてもよい。すなわち、吐出曲がりをキャンセルした画像形成が行われるように、インク吐出制御手段として機能する制御部40によって圧電素子に入力される電圧パルスを補正する。この点、制御部40は、画像ずれ補正手段として機能する。
以上のように、吐出曲がりの程度が強いことを条件として、記録液の消費量が第1の回復動作より多い第2の回復動作を行うことで、回復処理に要する記録液の消費量が抑制される。
第3の回復手段は、第3の回復処理である第3の回復動作をワイピング動作として行うモータ32、中間転写体37である。第1の回復手段として選択されたモータ32、中間転写体37は、中間転写体37の表面でノズル面61dを拭うワイピング動作を行うようにモータ32で中間転写体37をA1方向に駆動することで、回復手段として機能する。
すでに述べたように、吐出曲がりは、ノズル61b内あるいはインク室内のノズル61bの周辺の記録液の増粘、増粘による凝集等によって生じることがあるが、これら吐出曲がりの原因が、かかるワイピング動作によって解消されうるためである。
ワイピング動作は次のようにして行う。すなわち、図13(a)に示すようにギャップがホームポジションである状態において、図4(a)に示した状態から同図(b)に示す状態となるように、駆動部35を駆動する。具体的には、図13(b)に示す状態となるように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に近接させ、ノズル板61a、ノズル面61dと中間転写体37との間の距離をワイピング位置であるワイピングポジションとする。
ワイピングポジションにおいて、ノズル面61dと中間転写体37との間の距離は、ノズル面61dと中間転写体37とが僅かに離間した距離か、ノズル面61dと中間転写体37とが当接する距離とされる。
同図(c)に示すように、ワイピングポジションにおいてモータ32の駆動により中間転写体37がA1方向に回転すると、この回転に伴って、次のようにクリーニングが行われる。すなわち、ノズル面61dに付着している記録液、紙粉等の異物が、中間転写体37の表面の移動により中間転写体37の表面で拭われ、A1方向に移動する。このときの中間転写体37の駆動時間は一定であってもよいし、吐出曲がりの程度が高いほど長くしても良い。
中間転写体37がA1方向にさらに移動すると、異物は、転写ローラ38が中間転写体37から離間しているため中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写部31を素通りし、清掃手段34に至ると中間転写体37から除去される。その後、図13(d)に示すように、ホームポジションに復帰するまで駆動部35を駆動する。
このように、モータ32、中間転写体37は、ノズル面61dをクリーニングするクリーニング手段としてのワイピング機構であるクリーニング機構47として機能することで、ワイピング動作を行うワイピング処理を実行する。クリーニング機構47において、中間転写体37は、ノズル面61dを拭ってクリーニングするクリーニング部材として備えられている。クリーニング機構47において、モータ32は、中間転写体37によってノズル面61dを拭うように中間転写体37を駆動するクリーニング駆動機構として備えられている。
ワイピング動作は、本形態では、上述のように、強制排出動作終了後の再度の吐出曲がりの検知動作を行う前に行うが、フラッシング動作後の再度の吐出曲がりの検知動作の前に行なっても良い。
クリーニング機構47は、クリーニング部材として、中間転写体37とは別の、図19に示すような、クリーニングブレードとしてのブレード65を用いた構成であっても良い。この構成のクリーニング機構47は、ブレード65とノズル面61dとを相対的に移動してブレード65によってノズル面61dに付着している異物を払拭するため、この構成は、図17に示して後述するようなシャトル型の画像形成装置に適している。シャトル型の画像形成装置では、図示しないクリーニング駆動機構によりヘッド61Y、61M、61C、61BKを駆動してブレード65とノズル面61dとが当接する所定位置に移動させること、かかる相対的な移動を行うことが容易なためである。これに対し、本形態の構成では、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをかかる所定位置に移動させるための、たとえば主走査方向あるいは副走査方向において画像形成領域から退避させる構成、処理が不要となる点で有利である。
以上、回復手段の構成、動作、回復処理の流れについて説明したが、これは一例であり、かかる構成、動作、処理の流れに限定されるものではない。また、回復手段の選択は、画像形成装置の構成など必要に応じて行われるものであり、異常の程度、異常の種類によって適宜選択されるものであり、上述の回復手段に限られるものではなく、また上述の回復手段の全てを用いなければならないというものでもない。
以上は、中間転写体37がローラ状である場合を説明したが、図15に示すように、中間転写体37は無端のベルト状をなすものであっても良い。
図15に示す形態について、図1等に示した上述の形態と異なる部分について主に説明する。
中間転写体37がベルト状であることに伴って、搬送ユニット10は、中間転写体37を巻き掛けたローラ42、43、44と、ローラ43を付勢した図示しないバネとを有している。モータ32は、ローラ42を回転駆動するようになっており、ローラ42は駆動ローラとなっている。ローラ43は、バネにより、中間転写体37の張力を一体に保つように変位するテンションローラとなっている。ローラ44は、中間転写体37を介して転写ローラ38に対向する定位置に配設されており、転写対向ローラとなっている。
ヘッド61Y、61M、61C、61は、中間転写体37の、ローラ42とローラ43との間に張設されている部分に対向するように平行に並べられる態様で備えられている。中間転写体37をベルト状とすることの利点は、この形態のように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKが並設可能となるなど、ヘッド61Y、61M、61C、61の配置上の自由度が高くなることにある。また、ヘッド61Y、61M、61C、61BKが中間転写体37のかかる部分に平行に並べられている構成ではさらにヘッド61Y、61M、61C、61をノズル面61dに平行に移動させることなくノズル面61dの全面をクリーニング可能となることにある。ただし、中間転写体37は、ドラム状であるほうが、ベルト状の中間転写体37の、端部のない形状に加工することが容易でない、駆動時にばたつきが生じる、巻き掛けるローラを複数要する、といった事情がないという利点がある。よって、中間転写体37をドラム状とするかベルト状とするかは、種々の事項を比較検討して適宜選択される。
その他、図15に示す形態では、画像形成装置100は、中間転写体37の内側の、中間転写体37を挟んで撮像部71と逆側の位置に設けられた平板状の部材であるプラテン77を有している。また、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに対向した位置であって中間転写体37の内側に配設されたガイド部材45を有している。プラテン77、ガイド部材45は、検査装置70による検査時、ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる記録液の吐出時に、A1方向に移動する中間転写体37のばたつき、変位を抑制する。よって、プラテン77、ガイド部材45により、検査装置70による検査精度、ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる記録液の吐出精度が高精度に保たれる。
このような構成の画像形成装置100におけるワイピング動作すなわちヘッド61Y、61M、61C、61BKのクリーニング動作は次のとおりである。
ワイピング動作を行うにあたって、図15(a)に示したホームポジションから、制御部40によって駆動部35を制御することで、図15(b)に示すように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37側に移動させる。このとき、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とのギャップを、図15(b)に示した場合と同様のギャップとしたクリーニングポジションに位置決めする。またこのとき、制御部40によって離間部36を制御することで図15(b)に示した場合と同様に転写ローラ38を中間転写体37から離間させた状態とする。その後の動作等は、上述した図14(b)ないし(d)に示す動作等と同様である。
以上説明した形態では、駆動部35は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを同時に駆動して中間転写体37に接離させる構成であるが、ヘッド61Y、61M、61C、61BKは互いに異なる色の記録液を吐出するものである。そのため、これらを中間転写体37で同時にクリーニングすると、中間転写体37によってノズル面61dから除去されたある色の記録液が、他の色の記録液を吐出するノズル61bに付着し、その後の記録液吐出時に混色を生じる可能性がある。また、またそのノズル61bからこれに連なるインク室内に逆流して混色する可能性もある。混色は、画像形成の色品質を劣化させる要因となる。
そこで、かかる混色の問題を回避するために次のような動作が行われることが好ましい。すなわち、駆動部35を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを独立して中間転写体37に接離可能とし、上述のワイピング動作を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれのノズル面61dについて独立して行うようにすることが望ましい。各色のヘッド61Y、61M、61C、61BKのノズル面61dをそれぞれ独立して順次クリーニングすることで混色が回避可能となる。
なお、この場合、駆動部35により各色のヘッド61Y、61M、61C、61BKについてのクリーニングポジションを順次独立して形成し、これに加えて次のようにする。すなわち、離間部36による中間転写体37に対する転写ローラ38の接離を、全ての各色のヘッド61Y、61M、61C、61BKについてのクリーニング動作の前後に行うこととする。このようにすれば、中間転写体37に対する転写ローラ38の接離の回数を最小限として、クリーニング動作に要する時間が抑制される。
以上述べた各形態では、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37側に移動させることでヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とを互いに近接させることでクリーニングポジションとした。しかし、図16に示すように、中間転写体37をヘッド61Y、61M、61C、61BK側に移動させることでヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とを互いに近接させることでクリーニングポジションとするようにしてもよい。
図16に示す形態について、図15に示した上述の形態と異なる部分について主に説明する。
同図に示す形態では、駆動部35は、ガイド部材45と、各ガイド部材45を下方から支持した支持部材46とを有している。支持部材46は、各ガイド部材45を一体でヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて押し上げることで中間転写体37をヘッド61Y、61M、61C、61BKに近接させクリーニングポジションとすることが可能である。
この形態では、クリーニング動作時に駆動部35により支持部材46を変位させることで中間転写体37をヘッド61Y、61M、61C、61BKに近接させてクリーニングポジションとするが、その余の点は図15に示した上述の形態と同様である。
駆動部35は、各ガイド部材45を同時に駆動してヘッド61Y、61M、61C、61BKに接離させる構成である。しかし、すでに述べたのと同じように、混色を回避するために、各ガイド部材45を独立して駆動可能とし、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを順次クリーニングするようにしても良い。
この形態では、クリーニングポジションにおいて中間転写体37のテンションが上昇するため、クリーニング動作中において、中間転写体37のばたつきや、長期放置時などにローラ42、43、44に巻き掛けた部分で発生する中間転写体37の変形が矯正される。そのため、ローラ42とローラ43との間に張設されている部分における中間転写体37の平面度が向上し、安定して良好なクリーニングが行われるという利点がある。
図1等に示した、ローラ状の中間転写体37を有する形態においても、中間転写体37をヘッド61Y、61M、61C、61BKに近接させてクリーニングポジションとする構成を採用してもよい。また、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの両者を互いに近接させてクリーニングポジションとする構成を採用してもよい。
以上は画像形成装置100がフルライン型である構成に検査装置70を適用した構成例を示したが、検査装置70は、図17に示すような、シャトル型の画像形成装置にも適用可能である。以下においてとくに説明しない事項については図1に示した画像形成装置と同様である。
図17に示す画像形成装置はシャトル型であるため、キャリッジ50を画像領域幅に対して往復運動可能に支持した、X方向に延在するロッド78と、キャリッジ50をロッド78に沿ってX方向に往復駆動する図示しない駆動手段とを備えている。また、この画像形成装置は、記録液の乾燥を防止するなどの目的で、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをキャッピングする図示しないキャッピング部材を有している。また、この画像形成装置は、図19に示したような、ブレード65を備えたクリーニング機構を有しており、キャリッジ50がロッド78に沿ってX方向に移動するときに、ノズル面61dをブレード65によって拭うようになっている。
図17に示されている画像形成装置は、図1に示して説明した中間転写体37、転写手段64を備えておらず、転写紙Sと同様に通常の画像形成に用いられる用紙Sに画像形成を行う直接方式の画像形成装置である。検査装置70は、図1に示した中間転写体37と同様の構成で同様に駆動される媒体であるドラム媒体としてのメディア79を有している。メディア79は図15、図16に示したようなベルト状であっても良い。清掃手段34、エンコーダはメディア79に対して設けられている。なお、同図に示されている画像形成装置は、メディア79の他に中間転写体37と同様の中間転写体を有する中間転写方式の画像形成装置であってもよい。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおいて、複数のノズル61bの配列方向は、Y方向である。
用紙Sは、図示しない搬送ユニットによりY方向すなわち図17における紙面の奥側に搬送され、この過程で、画像領域幅においてX方向に往復動する、キャリッジ50に支持されたヘッド61Y、61M、61C、61BKから記録液を吐出され、画像形成される。
キャリッジ50は、かかる画像領域幅よりも外側に移動することが可能なように、ロッド78に支持されている。メディア79は、キャリッジ50がかかる画像領域幅よりも外側に移動したときにヘッド61Y、61M、61C、61BKから記録液を吐出される位置に配設されている。
メディア79は、キャリッジ50がかかる画像領域幅よりも外側の、メディア79に対向する、図17に示されている対向位置を占めたときに、A1方向に回転駆動される。この状態で、メディア79は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された記録液によって所定の周期パターンを形成される。よって、検査装置70は、キャリッジ50がかかる対向位置を占めた状態でヘッド61Y、61M、61C、61BKの検査を行う。
この画像形成装置はシャトル型であることから、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおいて、複数のノズル61bの配列方向における長さが短くなっている。そのため、検査装置70において検査のために処理すべき情報量が少なく、検査完了までの時間が、フルライン型の画像形成装置よりも短い。
この画像形成装置において、キャッピング部材は、メディア79であっても良い。この場合、ヘッド61Y、61M、61C、61BKとメディア79との少なくとも一方を他方に向けて接離するように構成する。また、この画像形成装置において、クリーニング機構は、ノズル面61dを拭うクリーニング部材として、メディア79を用いても良い。この場合も、ヘッド61Y、61M、61C、61BKとメディア79との少なくとも一方を他方に向けて接離するように構成する。
以上説明した構成例では、検査装置が画像形成装置に組み込まれているため、オンマシン上でヘッドの状態を取得することが可能である。よって、ユーザー指定の画像形成を行うとともに、上述したような随意のタイミングで記録液の着弾状態をモニタリングして、ダウンタイムをなくしながらあるいは抑制しながら、ヘッドの検査を行うことが可能である。また、ヘッドあるいはヘッドモジュールの初期的及び経時的に、安定して高画質の画像形成を行うことが可能となる。なお、画像形成装置がスキャナを有する場合であって、この画像形成装置に検査装置を組み込む場合は、スキャナを検査装置の撮像部として用い、周期パターンを画像形成された用紙をスキャナにセットして撮像することでヘッドの状態を検査するようにしてもよい。
図18に示すように、検査装置70は、画像形成装置組み込み型でなく、独立した装置であってもよい。この検査装置70は、以下においてとくに説明しない事項については既に説明した検査装置70と同様である。
検査装置70において検査されるヘッド61は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと同様の構成とする。ヘッド61は、検査装置70に対して着脱自在であり交換自在である。検査装置70に装着された状態のヘッド61において、複数のノズル61bの配列方向は、X方向である。
検査装置70は、被記録体として、転写紙Sと同様に通常の画像形成に用いられる用紙Sを用いる。よって検査装置70は、被記録体をその構成要素として備えていないとともに、上述の清掃手段34が省略されている。
検査装置70は、搬送ユニット10として、搬送ローラ83と、撮像部71に対向する位置に設けられた、図15、図16に示したプラテン77と同様の目的で設けられたプラテン87と、搬送ローラ83を駆動する図示しない駆動源としてのモータとを有している。エンコーダは搬送ローラ83に設けられている。
検査装置70はまた、図示を省略するが、液晶パネル41と同様の液晶パネルを有している。ただし、液晶パネルは必須ではなく、液晶パネルを備えていない場合には、PC等の外部出力装置に接続されるようになっていることが好ましい。
用紙Sは、搬送ローラ83によって搬送される過程で、ヘッド61との対向位置を通過して周期パターンを形成され、形成された周期パターンが撮像部71による撮像位置を通過することで撮像される。この撮像はエンコーダ信号を参照して行われる。
検査装置70は、撮像結果に基づいて、上述の検査装置70と同様に、次のような情報を検査結果として適宜得られるとともに、得られた情報を表示パネルに表示する等して出力する。
・ヘッド61に位置ずれが生じているか否か
・どのヘッドモジュール61Xにおいて位置ずれが生じているかを特定する内容
・ヘッドずれ量算出工程において位置誤差量算出工程が実行された場合において算出された位置誤差量
・ヘッドずれ量算出工程において回転誤差量算出工程が実行された場合において算出された回転誤差量
・ヘッド61に吐出曲がりが生じているか否か
・どのノズル61bにおいて吐出曲がりが生じているかを特定する内容
・吐出曲がりが生じているノズル61bの数
・ヘッドモジュール61Xが複数ある場合には吐出曲がりが生じているノズル61bを備えたヘッドモジュール61Xを特定する内容
・状態取得工程において液滴ずれ量算出工程が実行された場合において算出された着弾位置ずれ量
したがって、たとえばヘッド61が出荷前のものである場合には、検査装置70による検査を出荷前検査として行うことで、検査結果に応じてヘッド61のランク付けや出荷停止等の対応をとることが可能となる。
検査結果の出力は、検査装置70にPCが接続されている場合には、この接続されたPCのモニタに行ってもよいし、用紙Sへの画像形成によって行っても良い。用紙Sへの画像形成によって検査結果を出力する場合には、省資源化のために、周期パターンを形成した用紙Sに検査結果を出力することが好ましい。
用紙Sは複写機やプリンタで一般に使用される普通紙であるため、用紙Sに着弾した記録液の液滴が滲み、検査精度が低下する場合がある。よって、用紙Sは、吸水性を高めたインクジェット専用紙を用いるなど、検査精度が担保される媒体であることが望ましい。ただし、被記録体としてこのような媒体を用いると高コストとなり得る。
この点、検査装置70が独立した装置であっても、中間転写体37のような中間転写体、メディア79のようなメディアを備えていれば、媒体に要するコストを省きながら、検査精度を高めることが可能となる利点がある。よって、独立型の検査装置であっても、かかる中間転写体、メディアを用いて検査を行うようにしてもよい。ただし、この場合には清掃手段34のように中間転写体、メディアをクリーニングする清掃手段を要する。
搬送ユニット10は、これによって搬送される用紙Sに形成された周期パターンの撮像が行われるものであれば、種々の構成を採用可能であり、ベルト状あるいはローラ状の回転体で用紙Sを搬送するようにしても良い。
独立型の検査装置であっても、ヘッド61を複数取り付け可能とし、複数のヘッド61を検査可能としても良い。独立型の検査装置は、回復手段を備えていることは必須ではないが、回復手段を備えていても良い。検査装置が組み込まれた画像形成装置において、回復手段を省略しても良いが、この場合は報知手段を備えていることが望ましい。検査装置が組み込まれた画像形成装置において、報知手段を省略しても良い。
ここで、制御部40は、メモリに、以上述べた、記録液を吐出する複数のノズル61bを有するヘッド61Y、61M、61C、61BKを駆動して記録液を吐出させるヘッド駆動手段として機能する制御部40と、ヘッド駆動手段として機能する制御部40によるヘッド61Y、61M、61C、61BKの駆動によってノズル61bから吐出され被記録体である中間転写体37あるいは用紙S上に着弾した記録液の液滴によってかかる被記録体上に形成された所定の周期パターンを撮像する撮像装置72と、撮像装置72によって得られた、かかる所定の周期パターンに対応した電気信号を処理して、記録液の吐出精度についてのヘッド61Y、61M、61C、61BKの状態を取得する処理手段として機能する制御部40とを用い、処理手段として機能する制御部40により、かかる電気信号を用いてかかる所定の周期パターンをフーリエ変換する変換工程と、この変換工程によって得られた複素振幅パターンの振幅における1次ピークを周波数方向にシフトさせるとともにローパスフィルタ処理を行い同1次ピークが周波数方向で中心位置を占める新たなパターンを形成するフィルタリング工程と、このフィルタリング工程によって形成された前記新たなパターンを逆フーリエ変換する逆変換工程と、この逆変換工程によって得られた複素振幅パターンの位相成分からヘッド61Y、61M、61C、61BKの状態を取得する状態取得工程とを実行する検査方法であるヘッド検査方法を実行するための検査プログラムであるヘッド検査プログラムを記憶している。
この点、制御部40ないしメモリは、検査プログラム記憶手段であるヘッド検査プログラム記憶手段として機能している。かかる検査プログラムは、制御部40に備えられたメモリのみならず、たとえば次のような媒体に記憶可能である。すなわち、半導体媒体(たとえば、ROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)その他の記憶媒体である。かかるメモリ、他の記憶媒体は、かかる検査プログラムを記憶した場合に、かかる検査プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を構成する。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、本発明を適用した検査装置が画像形成装置組み込み型である場合、この画像形成装置はベルト状あるいはローラ状の回転体で搬送される過程の用紙に画像形成行う構成としてもよい。そしてこの構成において、検査装置によって撮像する所定の周期パターンは、かかる回転体で搬送される用紙に形成しても良いし、かかる回転体に形成しても良い。かかる回転体に所定の周期パターンを形成する場合には、たとえば清掃手段34のような、この回転体をクリーニングするクリーニング手段を要する。
本発明は、上述したような60枚/分以上の高速機に好適に適用可能である。また、本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置であってもよい。すなわち、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置であってもよい。また、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、複数であっても、1つであってもよい。ヘッドの数が複数である場合、上述の構成例のように4つに限らず、さらに多種類の記録液、たとえばライトシアン、ライトマゼンタといった淡い色の記録液を吐出するヘッドを備えていて良い。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。