JP5966590B2 - インパルス発生装置及び送信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インパルス発生装置及び送信装置に関する。
インターネットなどの通信ネットワークの利用者の増大や高精細画像などコンテンツの大容量化・多様化にともない、無線通信においても伝送容量の増大が望まれている。大容量の無線伝送方法としては、商用無線局による利用が少なく広い周波数帯域を確保しやすいミリ波帯の利用が考えられる。そこで、パルス幅の極小さい信号(瞬間的に電圧が上下する信号)であるインパルスを用いたインパルス無線通信が注目されている。
インパルス無線通信における無線通信装置は、連続搬送波方式による狭帯域通信装置と比較して、高精度の局部発振器やミキサが必ずしも必要なく、無線部の構成が簡素・低コストにできる特徴を有しながら広い帯域幅を利用して毎秒10ギガビット(10Gbps)を超える大容量無線伝送の実現手段として期待されている。
インパルス通信に用いる無線信号は、中心周波数に関して広い帯域を持つバンドパス信号であり、このインパルス被変調波を発生する基礎的な原理を次の2つで例示することができる。
1.一般の連続波通信と同様にローカル信号を短いRZ(Return to Zero)データ信号で変調してインパルス被変調信号を得る。
2.ローカル発振器をRZデータ信号の高レベルの期間にだけ動作させる。
従来の無線通信装置では、発振出力レベルが立ち上がるまでに時間が掛かる。そのため、単一のインパルスを発生させる場合であっても長時間の給電が必要となり、消費電力を効果的に削減することは困難である。
また、1番目の原理を用いた場合、高い精度のインパルス被変調波を発生することができるが、全ての回路がインパルスを送信しないときにも動作している必要がある。また、2番目の原理を用いた場合、インパルスを送信しないときには発振器を停止させるが、次にインパルスを送信するまでには発振の立ち上がりに長い時間を要する。このため高速通信をまかなうことができない。
そこで、より現実的なインパルス無線通信の技術として以下のような技術が提案されている。例えば、ベースバンド部から入力された10Gbpsのデータ信号を基にインパルスを生成し、生成したインパルスがもつ広帯域周波数成分の中から、帯域制限フィルタを用いて通信に使用する周波数成分を抽出する従来技術がある。
また、その他にも、DLL(Delay Locked Loop)のバイアスを調整して基準信号にロックすることで、所望のキャリア周波数の倍のサンプリングクロックを生成し、このサンプリングクロックで逐次反転した送信信号を標本化してインパルス被変調波を生成する従来技術がある。
特開2008−205733号公報 特開2008−288888号公報
しかしながら、帯域制限フィルタを用いる従来技術では、帯域制限フィルタを通過することでインパルスの時間的幅が広がり、大量の高速データを通信するための変調速度が制限されてしまう。
また、基準信号により外部からキャリア周波数を調整し、生成したサンプリングクロックを用いて逐次反転した送信データを標本化してインパルス被変調波を生成する従来技術では、サンプリング回路が動作する周波数、例えば2GHz程度を上限とするインパルス被変調波しか生成できず、変調速度はこの数分の1以下にとどまる。
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、広帯域且つ時間の短いインパルスを低い消費電力で生成するインパルス発生装置及び送信装置を提供することを目的とする。
本願の開示するインパルス発生装置及び送信装置は、一つの態様において、源信号発生部は、源信号を生成する。第一の発振部は、1段又は複数段の増幅器を含む1つの発振部であり、活性化されると前記源信号発生部により生成された源信号の中から所望の周波数成分を抽出し、抽出した信号の振幅を成長させる。第二の発振部は、前記第一の発振部の後段に配置され、1段又は複数段の増幅器を含む1つの発振部であり、前記第一の発振部が成長させた信号の入力を受け、活性化されると入力された信号の振幅を前記第一の発振部と一体となって成長させ、インパルス被変調波を出力する。活性化部は、前記源信号発生部により生成された信号が前記第一の発振部に入力された後に前記第一の発振部を活性化させ、所定期間が経過して発振振幅が成長した後、前記第二の発振部を活性化させる。
本願の開示するインパルス発生装置及び送信装置の一つの態様によれば、広帯域且つ時間の短いインパルスを低い消費電力で生成することができるという効果を奏する。
図1は、実施例1に係る送信装置のブロック図である。 図2は、実施例1に係るインパルス発生回路の回路図である。 図3は、制御信号と出力信号を表すタイミングチャートである。 図4は、実施例1での振幅成長期間における1段目発振部と2段目発振部との間の中間設定を外部から見た場合の反射係数を表す図である。 図5は、出力期間の発振器300の出力端子における反射信号の反射係数を表す図である。 図6は、実施例1に係るインパルス発生回路1が出力した単一インパルスのスペクトルを表す図である。 図7は、信号d0を入力してから次の信号d1を入力する場合の制御信号の遷移を表す図である。 図8は、インパルス発生までのタイミングダイヤグラムである。 図9は、ベースバンド処理部におけるタイミング発生部の回路図である。
以下に、本願の開示するインパルス発生装置及び送信装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示するインパルス発生装置及び送信装置が限定されるものではない。本実施例では、24GHzを中心周波数とするインパルス被変調波を発生する回路を例として説明する。ただし、インパルスの中心周波数はこれに限らず、2−10GHz、60GHz、77GHz、80GHzなど、ここで示した例とは異なる周波数でも用いることができる。
図1は、実施例1に係る送信装置のブロック図である。図1に示すように、本実施例に係る送信装置は、インパルス発生回路1、ベースバンド処理部2及びアンテナ3を有している。
ベースバンド処理部2は、送信信号の符号化処理を行う。さらに、ベースバンド処理部2は、送信信号に対してA/D(Analog to Digital)変換を行う。そして、ベースバンド処理部2は、デジタル化した送信信号をインパルス発生回路1に送る。また、ベースバンド処理部2は、タイミング制御部21を有している。タイミング制御部21は、後述するように、インパルス発生回路1に対してプリチャージ信号を入力するとともに、インパルス発生回路1が有する発振部を活性化させる信号の入力などを行うことで、インパルス発生回路1の動作やそのタイミングを制御する。
インパルス発生回路1は、ベースバンド処理部2からデジタル化された送信信号の入力を受ける。そして、インパルス発生回路1は、受信したデジタル信号を表すインパルスを生成する。この、インパルスの生成処理は次に詳細に説明する。その後、インパルス発生回路1は、アンテナ3を介して生成したインパルスを送信先の装置へ送信する。
(インパルス発生回路の回路構成)
図2は、実施例1に係るインパルス発生回路の回路図である。図2に示すように、本実施例に係るインパルス発生回路1は、源信号発生部10を有している。さらに、インパルス発生回路1は、源信号発生部10の後段に、発振器100を有している。また、インパルス発生回路1は、発振器100の後段に、発振器200を有している。発振器200は、発振器100と直列に接続されている。さらに、インパルス発生回路1は、発振器200の後段に発振器300を有している。発振器300は、発振器200に直列に接続されている。
源信号発生部10は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)11、12、13及び14を有している。
MOSFET11及び12は、Pチャネル型のMOSFETである。MOSFET11及び12には、プリチャージ信号が入力される。プリチャージ信号は、LowでMOSFET11及び12に入力され、MOSFET11及び12のゲートにマイナス電圧をかけ、Pチャネル型のMOSFET11及び12をONにする。
MOSFET13及び14は、Nチャネル型のMOSFETである。MOSFET13及び14には、データが入力される。具体的には、データは、1の場合にはMOSFET13に入力され、0の場合にはMOSFET14に入力される。データは、HighでMOSFET13に入力され、MOSFET13のゲートにプラス電圧をかけ、Nチャネル型のMOSFET13をONにする。データの入力によるMOSFET14の動作は、MOSFET14と同様である。
発振器100は、キャパシター101及び102、インダクタ103及び104、MOSFET105及び106、インダクタ107、インダクタ108及び109、MOSFET110、並びに、抵抗111を有している。
キャパシター101は、MOSFET11及び13と接続されている。さらに、キャパシター101には、MOSFET11及び13とは逆側にインダクタ107が直列に接続されている。また、キャパシター101とインダクタ107との間の経路上の接続点と外部からの入力端子との間にインダクタ103が設けられている。さらに、インダクタ103の接続点とインダクタ107との間の点を接続点としてMOSFET105がキャパシター101に直列に接続されている。すなわち、MOSFET105は、インダクタ107と並列に接続されている。また、インダクタ103には、第1活性化信号がベースバンド処理部2から入力される。MOSFET105の電源電圧側には、インダクタ108が直列に接続されている。またMOSFET105のグランド側には、抵抗111が直列に接続されている。MOSFET105とインダクタ108との間の点を接続点として発振器100に経路が延びている。
キャパシター102は、MOSFET12及び14と接続されている。さらに、キャパシター102には、MOSFET12及び14とは逆側にインダクタ107が直列に接続されている。すなわち、キャパシター101とキャパシター102との間にインダクタ107が直列に接続されている。また、キャパシター102とインダクタ107との間の経路上の接続点と外部からの入力端子との間にインダクタ104が設けられている。さらに、インダクタ104の接続点とインダクタ107との間の点を接続点としてMOSFET106がキャパシター102に直列に接続されている。すなわち、MOSFET106は、インダクタ107と並列に接続されている。また、インダクタ104には、第1活性化信号がベースバンド処理部2から入力される。MOSFET106の電源電圧側には、インダクタ109が直列に接続されている。また、MOSFET106のグランド側は、抵抗111が直列に接続されている。また、MOSFET106のグランド側と、MOSFET105のグランド側とは接続されている。そして、抵抗111のMOSFET105、106とは逆側がMOSFET110の電源電圧側に接続されている。そして、MOSFET110には、第1活性化信号が入力される。MOSFET106とインダクタ109との間の点を接続点として発振器200に経路が延びている。
発振器200及び発振器300は、発振器100と同様の構成を有する発振器である。ただし、発振器200のインダクタ203及び204、並びに発振器300のインダクタ303及び304は、第2活性化信号がベースバンド処理部2から入力される。また、発振器200のMOSFET210及び発振器300のMOSFET310にも、第2活性化信号がベースバンド処理部2から入力される。そして、発振器300の発振器200の逆側の接続端子はアンテナに接続されている。
後で詳細に説明するが、本実施例に係るインパルス発生回路1では、源信号発生部10により生成された源信号を用いて24GHzの周波数を有する信号のパワーを発振器100で増幅し振幅を成長させる。その後、発振器100で振幅が成長させられた信号を発振器200及び300に入力し、発振器200及び300で24GHzの周波数を有する信号の振幅を成長させることで、短いインパルスを出力し、さらに良好なアイソレーションを得る。本実施例では、源信号の振幅を成長させる発振部の一群を「1段目発振部」という。また、1段目発振部から入力された信号の振幅を成長させインパルスを出力する発振部の一群を「2段目発振部」という。本実施例では、1段目発振部には発振器100が含まれ、2段目発振部には発振器200及び300が含まれる。
ここで、源信号発生部10と発振器100とは、第1活性化信号が発振器100に入力されず、発振器100が不活性の状態でインピーダンスが整合するように構成されている。言い換えれば、発振器100が活性化した状態では、源信号発生部10と発振器100との間では整合が取れていない状態となる。
また、発振器100と発振器200及び300は、第1活性化信号が発振器100に入力され、且つ第2活性化信号が発振器200及び300に入力されて、発振器100〜300が活性化した状態でインピーダンスが整合するように構成されている。言い換えれば、発振器100が活性化し、発振器200及び300が不活性の状態では、発振器100と発振器200及び300との間では整合が取れていない状態となる。
発振器100で振幅を成長させている場合、発振器100と発振器200との間からの反射波を、振幅の成長に寄与させることができる。そこで、発振器100と発振器200との間のインピーダンスの整合が取れていない状態で、発振器100が出力した24GHzの周波数を有する信号が発振器200によってなるべく多く反射されるように1段目発振部に含まれる発振部の段数を決定している。そして、1段目発振部に含まれる発振部の段数は時間内に要求されるゲインを得ることができるように決定される。
さらに、2段目発振部は、含まれる発振部の段数が多くなるほどアイソレーションが良くなる。しかし、発振部の段数を多くすると、回路の消費電力が増加してしまう。また、発振器200及び300で振幅を成長させている場合、発振器300とアンテナとの間からの反射波を、振幅の成長に寄与させることができる。そこで、2段目発振部に含まれる発振部の段数は、アイソレーションを良好にし、消費電力をなるべく抑え、且つアンテナからの反射波が24GHzの周波数成分が多くするといった条件を考慮して決定されることが好ましい。
例えば、本実施例のように1段目発振部が1つの発振部を含み、2段目発振部が2つの発振部を含む構成は、24GHzの周波数を有する信号を増幅する場合に、好適な反射波となり、信号を所要のゲインを有するように時間内に生成できる一例である。さらに、本実施例の構成は、アイソレーションが良好で、消費電力をなるべく抑えることができる一例である。
(インパルス発生回路の動作)
次に、本実施例に係るインパルス発生回路1の動作について説明する。以下の説明では、1のデータが入力された場合、すなわち、MOSFET13に電圧がかけられた場合で説明する。0のデータが入力された場合、すなわち、MOSFET14に信号が入力された場合については、以下の説明と同様の動作を行うので説明を省略する。
ベースバンド処理部2は、データ信号を入力していないときに、プリチャージ信号を入力し、MOSFET11及び12にLowのゲート電圧を印加する。Pチャネル型のMOSFETであるMOSFET11及び12は、Lowのゲート電圧が印加されることでONになる。MOSFET11及び12がONになると電源電圧から電力が供給され、キャパシター101及び102に電荷が蓄えられる。
図3は、制御信号と出力信号を表すタイミングチャートである。図3のグラフ401で表される源信号s0は、発振器100に係る電圧を表す。グラフ402で表されるpciは、MOSFET11及び12に入力されるプリチャージ信号を表す。グラフ403で表されるd0は、MOSFET13に入力される信号を表す。グラフ404で表されるp0は、発振器100に入力される第1活性化信号を表す。グラフ405で表されるp1及びp2は、それぞれ発振器200及び発振器300に入力される第2活性化信号を表す。グラフ406は、発振器100の出力信号である。グラフ407は、発振器200の出力信号である。グラフ408は、発振器300の出力信号である。ここで、グラフ406〜408は、シミュレーション結果であり、各タイミングで各発振部の出力を計測した場合の出力を表している。図3の縦軸は、信号s0、d0、pci、p0、p1及びp2では、各信号がHighレベルかLowレベルかを表し、発振器100〜300の出力信号では、振幅を表している。また、横軸は、経過時間を表している。以下の説明では、分かり易いように図3で用いた信号の符号s0、d0、pci、p0、p1及びp2を信号に添付して各信号を表す。
図3の時刻t1で、プリチャージ信号pciは、Highに変わりチャージを停止する。
プリチャージ信号pciがHighに変わると、時刻t2で、ベースバンド処理部2は、MOSFET13に信号d0を入力する。MOSFET13に信号d0が入力されると、MOSFET13がONになる。MOSFET13がONになると、グランドに接続されるため、キャパシター101から電荷が引き抜かれ電圧がHighからLowに変わる。
キャパシター101から電荷が引き抜かれ電圧がHighからLowに変わることで、時刻t3で、発振器100に発振の種となる源信号s0が注入される。源信号は階段状の遷移波形(以下では、「階段波形」という。)を有している。ここで、プリチャージ信号によってキャパシター101はチャージされているため、MOSFET13がONになると、源信号s0は急峻な階段波形となる。これにより、短時間で目的の周波数を発振器100に注入することができる。また、この時、発振器100は第1活性化信号p1が入力されていないので活性化していない、そのため、源信号発生部10と発振器100との間はインピーダンスの整合が取れている。そのため、源信号s0は、ほぼロスなく発振器100に注入される。
源信号s0が発振器100に入力されることで、発振器100は、源信号s0の立ち下がりに含まれる24GHzの周波数を有する信号成分の入力を受ける。その後、ベースバンド処理部2は、時刻t4で発振器100のインダクタ103、104及びMOSFET110に第1活性化信号p0を入力する。ベースバンド処理部2は、時刻t1から時刻t4までの時間を予め記憶しており、信号d0を入力してから記憶している時間が経過した後、第1活性化信号p0を発振器100へ入力する。これにより、MOSFET105、106及び110にゲート電圧がかけられ、それぞれONになる。MOSFET105、106、110がONになることで、24GHzの周波数を有する信号成分は、キャパシター101、インダクタ107及びキャパシター102の共振によって振幅が増幅されていく。この時、発振器100が活性化しているので、源信号発生部10と発振器100との間はインピーダンスの整合が取れていない。そのため、発振器100から源信号発生部10への出力に対して源信号発生部10は反射器となり、出力信号を一部反射する。また、発振器200及び300は不活性の状態であり、発振器100と発振器200及び300との間はインピーダンスの整合が取れていない。そのため、発振器100から発振器200への出力に対して発振器200は反射器となり、出力信号を一部反射する。これらの反射信号は、キャパシター101、インダクタ107及びキャパシター102が増幅している信号に加わり信号の増幅に寄与する。
その後、ベースバンド処理部2は、時刻t5で発振器200のインダクタ203、204及びMOSFET210に第2活性化信号p1を入力する。また、ベースバンド処理部2は、発振器300のインダクタ303、304及びMOSFET310に第2活性化信号p2を入力する。ベースバンド処理部2は、時刻t4から時刻t5までの時間を予め記憶しており、第1活性化信号p0を入力してから記憶している時間が経過した後、第2活性化信号p1及びp2をそれぞれ発振器200及び300へ入力する。ここで、時刻t4から時刻t5までの時間は、図3のグラフ406に示すように発振器100の中で振幅が十分に成長するまでの時間を設定することが好ましい。第2活性化信号が発振器200及び300へ入力されると、発振器200及び300は活性化する。この時、発振器100と発振器200及び300との間のインピーダンスは整合した状態となるので、発振器100から24GHzの周波数を有する出力信号が発振器200に流れ込む。
図3のグラフ406に示すように時刻t5の時点で発振器100では既に振幅が成長しているため、発振器200は、振幅が大きくなった信号の入力を受ける。そのため図3のグラフ407に示すように、発振器200では、信号の振幅が急速に立ち上がる。そして、発振器200のキャパシター201、インダクタ207及びキャパシター202は、24GHzの周波数を有する信号の振幅を成長させる。さらに、発振器300がアンテナから信号を出力している間は、アンテナと発振器300との間で出力信号の一部が反射し返ってくる。これらの反射信号は、キャパシター201、インダクタ207及びキャパシター202が振幅を成長させている信号に加わり振幅の成長に寄与する。
図4は、実施例1での振幅成長期間における1段目発振部と2段目発振部との間の中間設定を外部から見た場合の反射係数を表す図である。ここで振幅成長期間とは、発振器200及び300が活性化しておらず、発振器100で振幅の成長が行われている期間である。図4は、図2の点aにおける反射波をシミュレートして反射係数を求めたものである。図4の縦軸は反射係数を表し、横軸は周波数を表している。図4に示すように、24GHzの付近で反射係数が最大になっている。すなわち、振幅成長期間では、発振器100と発振器200との間では24GHzの周波数を有する反射波が多いことになり、反射波が24GHzの周波数を有する信号の振幅の成長に大きく寄与することが分かる。
さらに、発振器300は、24GHzの周波数を有する出力信号の入力を発振器200から受ける。ここで、発振器300は、発振器200においてさらに振幅が成長させられた信号の入力を受ける。そのため、発振器300は、発振器200よりもさらに急峻に信号の振幅を立ち上げることができる。そして、発振器300のキャパシター301、インダクタ307及びキャパシター302は、共振により24GHzの周波数を有する信号の振幅を成長させる。発振器300は、振幅を成長させながら信号をアンテナから出力する。すなわち、発振部300は、図3のグラフ408に示すようなインパルスをアンテナから出力する。また、上述したように、発振器300がアンテナから信号を出力している間は、アンテナと発振器300との間で出力信号の一部が反射し返ってくる。これらの反射信号は、キャパシター301、インダクタ307及びキャパシター302が振幅を成長させている信号に加わり振幅の成長に寄与する。
図5は、出力期間の発振器300の出力端子における反射信号の反射係数を表す図である。ここで、出力期間とは発振器300からアンテナを介してインパルスが出力されている期間である。図5は、図2の点bにおける反射波をシミュレートして反射係数を求めたものである。図5の縦軸は反射係数を表し、横軸は周波数を表している。図5に示すように、24GHzの付近で反射係数が最大になっている。すなわち、出力期間では発振器300とアンテナとの間では24GHzの周波数を有する反射波が多いことになり、反射波が24GHzの周波数を有する信号の振幅の成長に大きく寄与することが分かる。
その後、ベースバンド処理部2は、時刻t6で第1活性化信号p0の発振器100への入力を停止する。例えば、ベースバンド処理部2は、時刻t4から時刻t6までの時間を予め記憶しており、第1活性化信号p0を入力してから記憶している時間が経過した後、第1活性化信号p0の入力を停止する。これにより、グラフ406に示すように、発振器100からの出力信号は収束していく。
また、ベースバンド処理部2は、時刻t6とほぼ同時刻である時刻t7で第2活性化信号p1及びp2の発振器200及び300への入力を停止する。例えば、ベースバンド処理部2は、時刻t5から時刻t7までの時間を予め記憶しており、第2活性化信号p1及びp2をそれぞれ発振器200及び300へ入力してから記憶している時間が経過した後、第2活性化信号p1及びp2の入力を停止する。これにより、グラフ407及び408に示すように、発振器200及び300からの信号は収束していく。
図3のグラフ408に示すように、発振器300から出力される24GHzの周波数を有する信号はアイソレーションが良くなっている。また、発振器300から出力される24GHzの周波数を有する信号は、立ち上がりの時間が、例えば、発振器100や発振器200からの出力信号に比べて短くなっている。さらに、発振器300から出力される24GHzの周波数を有する信号は、立ち上がりから終了までの時間が、例えば、発振器100や発振器200からの出力信号に比べて短くなっている。
さらに、図6は、実施例1に係るインパルス発生回路1が出力した単一インパルスのスペクトルを表す図である。具体的には、図6は、本実施例に係るインパルス発生回路1が出力した単一インパルスをフーリエ変換した値を図に表したものである。図6の縦軸は信号強度を表し、横軸は周波数を表している。
図6に示すように、本実施例に係るインパルス発生回路1から出力したインパルスには、24GHzの周波数の信号成分が最も強い成分として含まれている。このように、本実施例に係るインパルス発生回路1を用いた場合、24GHzの周波数のインパルスを送信先の装置に送ることができていることが分かる。
図3に戻り説明を続ける。グラフ403に示すように、ベースバンド処理部2は、第1活性化信号p0及び第2活性化信号p1、p2が停止された後の時刻t8で、データである信号d0を停止する。これにより、源信号s0の発振器100への入力は停止する。さらに、信号d0の入力の停止を受けて、ベースバンド処理部2は、時刻t9で、MOSFET11及び12に入力するプリチャージ信号pciの電圧をLowにする。これにより、MOSFET11及び12がONになる。その後、ベースバンド処理部2は、次の信号を入力するまでプリチャージ信号pciの電圧をLowのまま維持し、キャパシター101及び102に電荷を蓄える。
ここで、ベースバンド処理部2によりMOSFET13へ入力される信号を信号d0としたのに対応させて、以下では、ベースバンド処理部2によりMOSETE14へ入力される信号を信号d1と呼ぶ。ベースバンド処理部2は、1回のデータ入力が終わると、次のデータ入力において、1のデータ入力であれば信号d0をMOSFET13へ入力し、0のデータであれば信号d1をMOSFET14へ入力する。このようにして、本実施例に係るインパルス発生回路1は、ベースバンド処理部2により入力されたデータを表す信号d0又はd1から、入力されたデータを表すインパルスを生成し送信していく。
さらに、図7を参照して、データの入力と制御信号の入力の全体的な流れを説明する。図7は、信号d0を入力してから次の信号d1を入力する場合の制御信号の遷移を表す図である。
プリチャージ信号pciはLowの状態で、キャパシター101及び102をプリチャージしている。そして、タイミングq1でプリチャージ信号がHighに変わり、タイミングq4で信号d0が入力される。これにより、プリチャージされた電荷が引き抜かれ、源信号s0が発振器100へ入力される。その後、矢印q7で示されるように、プリチャージ信号pciがHighに変わったことをトリガとして、第1活性化信号p0が発振器100に入力される。そして、時間T1が経過した後、第2活性化信号p1及びp2が発振器200及び300に入力される。この時間T1の間に源信号発生部10と発振器200とからの反射波及び発振器100自体による振幅の増大により、源信号s0の振幅が成長する。
さらに、第2活性化信号p1及びp2が発振器200及び300に入力された後、発振器200及び300において時間T1より短い時間T2の間に所望のゲインとなるように信号の振幅が成長させられる。そして、発振器200及び300により生成された短い幅のインパルスが、発振器300から出力される。この時、発振器300から出力されるインパルスは、信号d0が表す内容、例えば「0」のデータを表している。
その後、信号d0が、タイミングq5で停止する。その後、矢印q8で示されるように、信号d0の停止をトリガとして、プリチャージ信号pciがタイミングq2でLowに変わる。これにより、プリチャージ信号により、キャパシター101及び102へのプリチャージが再開される。信号d0が入力されている間、信号d1の入力はなされない。
続いて、プリチャージ信号pciはLowの状態で、キャパシター101及び102をプリチャージしつづける。その後、プリチャージ信号pciは、タイミングq3でHighに変わる。その後、矢印q9で示されるように、プリチャージ信号pciがHighに変わったことをトリガとして、信号d1がタイミングq6で入力される。
その後、信号d0の場合と同様に、第1活性化信号p0の入力が行われ、インパルス発生回路1は、源信号の振幅を成長させた後、第2活性化信号p1及びp2を入力する。そして、発振器200及び300により生成された短い幅のインパルスが、発振器300から出力される。この時、発振器300から出力されるインパルスは、信号d1が表す内容、例えば「1」のデータを表している。
さらに、図8を参照して、源信号発生部10及び発振器100〜300の動作のタイミングの概要についてまとめて説明する。図8は、インパルス発生までのタイミングダイヤグラムである。図8は、動作する対象及び各信号の種類を表し、横軸は時間を表している。
まず、波形501で表されるような階段波形を有する源信号s0が1段目発振部に入力される。本実施例では、源信号s0は、発振器100に入力される。
そして、源信号が入力された後、第1活性化信号が1段目発振部に入力され1段目発振部が活性化する。そして、第1活性化信号が停止するまでの間、すなわちグラフ502における期間T3の間、1段目発振部は、活性化している。本実施例では、第1活性化信号p0が発振器100に入力され、期間T3の間、発振器100が活性化している。
その後、第2活性化信号が2段目発振部に入力され2段目発振部が活性化する。そして、第2活性化信号が停止するまでの間、すなわちグラフ503における期間T4の間、2段目発振部は、活性化している。本実施例では、第2活性化信号p1及びp2が発振器200及び300に入力され、期間T3の間、発振器200及び300が活性化している。
そして、2段目発振部が活性化している間、出力信号の振幅は成長し、2段目発振部が不活性化すると振幅が減少していく。これにより、出力信号の包絡線は信号504のようになる。この信号504が一つのインパルスとなる。
図9は、ベースバンド処理部におけるタイミング発生部の回路図である。タイミング制御部21は、sinv(send inverted)をLowにすることで、インパルス発生回路1へ入力するプリチャージ信号pciがLowになる。タイミング制御部21は、プリチャージ信号pciをLowにすることで、インパルス発生回路1におけるインパルス発生シーケンスを開始させる。さらに、ベースバンド処理部2が有するベースバンドプロセッサ(不図示)が、sinvと同時にデータd0及びd1を送信する。そして、タイミング制御部21は、ベースバンドプロセッサが送信したsinv、データd0及びd1を用いて、信号d0又はd1をインパルス発生回路1へ入力する。そして、ベースバンド処理部2は、クロック(clk:clock)及びDFF(Delay Flip Flop)によるゲート遅延で遅延時間を調整して制御信号をインパルス発生回路1へ出力する。
以上に説明したように、本実施例に係るインパルス発生回路は、1段目発振部で源信号のパワーを増幅させて振幅を成長させる。その後に、2段目発振部を活性化させて、2段目発振部において短時間で信号の振幅を成長させて立ち上がりが短いインパルスをつくり、且つ良好なアイソレーションを得ている。これにより、立ち上がりが速く時間の短いインパルスを生成することができる。1つ1つのインパルスが短くなることで、インパルスの密度を上げることができ、多くの情報を短時間で送信することが可能となる。
また、本実施例に係るインパルス発生回路は、信号を送信しない期間には、プリチャージを行うだけで、発振器を動作させないので、休止期間における電力消費を抑えることができ、インパルスあたりの消費電力を小さくすることができる。
ここで、本実施例では、差動回路の2系統のいずれかに電気を流すことで、0及び1のデータを生成したが、これに限らず、2系統のうちのいずれか一方だけ動作させ、例えば信号が送られた場合には1、信号が送られない場合には0などとしてデータを生成しても良い。
また、本実施例では、24GHzの周波数のインパルスを生成するために、1段目発振部の発振器を1段とし配置し、2段目発振部の発振器を2段とした。これは、24GHzの周波数の振幅の成長に合わせて、要求されるゲインを時間内に取得でき、且つ各発振部における反射波の効率を上げ、アイソレーションを良好にし、さらに消費電力をなるべく抑えるように決定したものである。そのため、各段の発振部に配置される発振器の段数は、生成するインパルスの周波数によって変えることが好ましい。例えば、60GHzの周波数のインパルスを生成する場合には、1段目発振部の発振器を4段とし、2段目発振部の発振器を4段とした場合に、適当なインパルスが生成される。
本実施例に係る送信装置は、インパルス発生回路における2段目発振部の活性化時間を調整してインパルスを変調することが実施例1と異なるものである。本実施例に係る送信装置も、図1に示すブロック図で表される。また、本実施例に係るインパルス発生回路1も図2に示す回路構成を有する。以下では、実施例1と同様の機能を有する部分については、説明を省略する。
ベースバンド処理部2は、実施例1と同様に、インパルス発生回路1へ入力するプリチャージ信号pciをLowにすることでインパルス発生回路1のプリチャージを行う。プリチャージ完了後、ベースバンド処理部2は、プリチャージ信号pciをLowにする。そして、ベースバンド処理部2は、信号d0をインパルス発生回路1へ入力する。
その後、ベースバンド処理部2は、第1活性化信号p0をインパルス発生回路1の発振器100へ入力する。これにより、発振器100が活性化し、源信号の振幅の成長が行われる。そして、第1活性化信号p0を入力してから所定時間経過後、ベースバンド処理部2は、第2活性化信号p1及びp2を発振器200及び300へ入力する。これにより、短時間で振幅が成長させられる。ここまでは、実施例1と同様である。
その後、ベースバンド処理部2は、送信したいデータの内容に応じて発振器100〜300の活性化を終了する時間を調整することで、信号を変調する。例えば、実施例1で生成した長さのインパルスをデータが「1」であることを表す信号とする。そして、ベースバンド処理部2は、その倍の長さのインパルスを生成するように発振器100〜300の活性化の終了時間を調整する。そして、ベースバンド処理部2は、データが「2」であることを表す信号として、実施例1で生成した長さのインパルスの倍の長さを有するインパルスを送信する。
また、ここでは、倍の長さのインパルスを生成する場合で説明したが、変調はこれに限らず、ベースバンド処理部2は、発振器100〜300の活性化の終了時間を調整することで、適当な長さのインパルスを生成することができる。また、ベースバンド処理部2は、2段目発振部の活性化を行わずに1段目発振部の活性化を終了することで、インパルスを送らないこともできる。
以上に説明したように、本実施例に係る送信装置は、2段目発振部の活性化の時間を調整することで、高度な変調を行うことができる。
以上の各実施例に係るインパルス発生回路は、UWB(Ultra Wide Band)インパルス通信、インパルスレーダ及びUWBイメージングなどに用いることができる。
さらに、以上の各実施例では、スイッチとしてMOSFETを用いたが、電圧や電流によりON/OFFを行えるスイッチであれば、他のスイッチを用いても良い。例えば、ハイポーラ・トラジスタなどの他のトランジスタをスイッチとして用いることも可能である。ハイポーラ・トランジスタなどを用いる場合、ベースバイアスを制御してON/OFFを行う。
1 インパルス発生回路
2 ベースバンド処理部
3 アンテナ
10 源信号発生部
21 タイミング制御部
100 発振器
200 発振器
300 発振器

Claims (9)

  1. 源信号を生成する源信号発生部と、
    1段又は複数段の増幅器を含む1つの発振部であり、活性化されると前記源信号発生部により生成された源信号の中から所望の周波数成分を抽出し、抽出した信号の振幅を成長させる第一の発振部と、
    前記第一の発振部の後段に配置され、1段又は複数段の増幅器を含む1つの発振部であり、前記第一の発振部が成長させた信号の入力を受け、活性化されると入力された信号の振幅を前記第一の発振部と一体となって成長させ、インパルス被変調波を出力する第二の発振部と、
    前記源信号発生部により生成された信号が前記第一の発振部に入力された後に前記第一の発振部を活性化させ、所定期間が経過して発振振幅が成長した後、前記第二の発振部を活性化させる活性化部と
    を備えたことを特徴とするインパルス発生装置。
  2. 前記第一の発振部に及び前記第二の発振部は、LC共振回路を用いた発振部であることを特徴とする請求項1に記載のインパルス発生装置。
  3. 前記活性化部は、グランドと前記第一の発振部又は前記第二の発振部とを接続するトランジスタのゲート又はベースバイアスを制御して導通状態にすることで前記第一の発振部又は前記第二の発振部を活性化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインパルス発生装置。
  4. 前記源信号発生部は、階段状の波形を有する源信号を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のインパルス発生装置。
  5. 前記源信号発生部は、プリチャージコンデンサの充放電を繰り返すことにより動作するダイナミック論理回路を用いて階段状の波形を有する源信号を生成することを特徴とする請求項4に記載のインパルス発生装置。
  6. 前記源信号発生部、前記第一の発振部及び前記第二の発振部は、差動回路であり、
    入力されたデータに合わせて前記源信号発生部の差動入力の一方と他方の選択を切り替えることで前記第一の発振部への信号の入力を切替える差動入力切替部を
    さらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のインパルス発生装置。
  7. 前記活性化部は、前記第一の発振器部及び前記第二の発振部の活性化時間を変調することでインパルス幅を調整することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のインパルス発生装置。
  8. タイミング発生回路をさらに備え、
    前記活性化部は、前記タイミング発生回路が発生する第1タイミングパルスを基に前記第一の発振部を活性化し、前記タイミング発生回路が発生する前記第1タイミングパルスとは異なるタイミングを示す第2タイミングパルスを基に前記第二の発振部を活性化する
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のインパルス発生装置。
  9. ベースバンド信号を生成するベースバンド処理部、インパルス発生回路及びアンテナを有し、
    インパルス発生回路は、
    源信号を生成する源信号発生部と、
    1段又は複数段の増幅器を含む1つの発振部であり、活性化されると前記源信号発生部により生成された源信号の中から所望の周波数成分を抽出し、抽出した信号の振幅を成長させる第一の発振部と、
    前記第一の発振部の後段に配置され、1段又は複数段の増幅器を含む1つの発振部であり、前記第一の発振部が成長させた信号の入力を受け、活性化されると入力された信号の振幅を前記第一の発振部と一体となって成長させ、インパルス被変調波を出力する第二の発振部とを備え、
    前記ベースバンド処理部は、
    前記源信号発生部により生成された信号が前記第一の発振部に入力された後に前記第一の発振部を活性化させ、所定期間が経過して発振振幅が成長した後、前記第二の発振部を活性化させる活性化部を備えた
    ことを特徴とする送信装置。
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