JP5958960B2 - 白紋羽病防除剤 - Google Patents

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Description

本発明は、白紋羽病菌の病原力低下作用の必須因子となる新規マイコウイルスに関する。
また、本発明は、当該マイコウイルスを感染させることにより得られた植物に対する病原力が低下した白紋羽病菌に関する。
さらに本発明は、当該白紋羽病菌を含有することを特徴とする白紋羽病防除剤に関する。
果樹類における白紋羽病は、子嚢菌類に属する白紋羽病菌(Rosellinia属に属する100種類以上の種のうち、R.necatrix、R.compacta)よって引き起こされる。
白紋羽病菌は土壌伝染性があり、果樹の根の表面に白色の菌叢と樹皮下に菌糸束を形成する。特に、根を腐敗させる病徴を示す。そのため、白紋羽病の罹病部の観察は容易でなく、地上部に症状が確認された時には、果樹そのものが枯死する場合が多い。当該特徴により、白紋羽病は果樹生産に甚大な被害を与えている。
従来、植物病原性を示す糸状菌類の病害を防除する方法としては、農薬等の化学物質によって行われてきたが、農薬等の使用による化学物質による環境汚染を引き起こす問題から、近年生物を利用する防除方法が注目されてきた。
特に、植物病原性を示す糸状菌類に感染するマイコウイルス(菌類寄生ウイルスや菌類ウイルスともいう)を利用する方法は、その宿主となる病原菌の病原力を低下させることによって植物病害を防除する生物防除法であり、難防除性の病害にも対応できる方法として期待される。
しかし、マイコウイルスは、菌糸融合によって伝搬する増殖形態を有するため、純化ウイルス粒子を用いて任意の糸状菌に導入することが困難であるという問題があった。
また、白紋羽病の防除にマイコウイルスを利用する方法の先駆的研究が進められてきたが(非特許文献1 参照)、現在までに白紋羽病菌から分離されたマイコウイルスのほとんどのものが、宿主である白紋羽病菌になんら影響を及ぼさない潜在感染性のウイルスであった。
具体的には、白紋羽病菌の病原力を低下させる機能を有するマイコウイルスとして、(i)白紋羽病菌W370菌株の保有するマイコレオウイルス(非特許文献2,3,4 参照)、(ii)白紋羽病菌W779菌株の保有するメガビルナウイルス(非特許文献5参照)、が挙げられる。
しかし、(i)のマイコレオウイルスは、菌体内での分布が不均一で、菌体から脱落しやすく、菌体間での移行が遅いという欠点があった(非特許文献6, 7 参照)。
また、(ii)のメガビルナウイルスは、白紋羽病菌に病原力低下効果をもたらすが(非特許文献5参照)、病原力低下効果を持たない変異ウイルスが発生しやすい問題が懸念される(非特許文献8参照)。
Matsumoto, N. (1998) Japan Agricultural Research Quarterly (JARQ), 32: p31-35. Osaki H, Wei CZ, Arakawa M, Iwanami T, Nomura K, Matsumoto N, Ohtsu Y. (2002) Virus Genes, 25: p101-7. Wei CZ, Osaki H, Iwanami T, Matsumoto N, Ohtsu Y.(2003) Journal of General Virology, 84: p2431-7. Wei CZ, Osaki H, Iwanami T, Matsumoto N, Ohtsu Y.(2004) Archives of Virology, 149: p773-7. Chiba S, Salaipeth L, Lin YH, Sasaki A, Kanematsu S, Suzuki N. (2009) Journal of Virology (2009) 83: p12801-12. Sasaki A, Kanematsu S, Onoue M, Oikawa Y, Nakamura H, Yoshida K. (2007) Phytopathology, 97: p278-86. Yaegashi H, Sawahata T, Ito T, Kanematsu S. (2011) Virology, 409: p280-9. 兼松聡子、八重樫元、佐々木厚子、鈴木信弘、伊藤伝(2010)日本植物病理学会報, 76(3): 195.
本発明では、上記課題を解決し、白紋羽病菌に対する顕著な病原力低下効果を有し、安定した感染能を有するマイコウイルスを提供することを目的とする。
これにより本発明では、白紋羽病の防除を可能とする生物防除剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、白紋羽病菌W563株(ウイルスフリー株)を野外のリンゴ樹に接種し、W563株由来の菌株を再分離したところ、マイコウイルスが感染した菌株が多数得られることを見出した。
そこで、本発明者らは、それらの菌株中からスクリーニングしたところ、植物に対する病原力が顕著に低下した菌株を見出した。そして、当該菌株からRNAをゲノムに持つ新規のマイコウイルスを得た。
当該マイコウイルスは、宿主白紋羽病菌の病原力低下作用についての必須因子であった。
また、当該マイコウイルスは、細胞質和合性と関係なく、純化粒子の感染により任意の白紋羽病菌に対しても安定して感染させることが可能なウイルスであった。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
・〔請求項1〕に係る本発明は、以下(1)〜(5)に記載の特徴を有するマイコウイルス、に関する。
(1) ウイルスゲノムが以下(1-1)及び(1-2)に記載の性質を有する特徴。
(1-1) ウイルスゲノムが、5〜8kbのRNAで構成されている性質。
(1-2) 配列番号2に記載の塩基配列に対して、95%以上の同一性を有する塩基配列からなるRNA領域、を含む性質。
(2) 宿主となった白紋羽病菌菌叢の生育力を低下させる作用、の必須因子となる特徴。
(3) 宿主となった白紋羽病菌の植物に対する病原力を低下させる作用、の必須因子となる特徴。
(4) ウイルス粒子の形状が直径30〜45nmの球状である特徴。
(5) 以下(5-1)及び(5-2)に記載の感染能を有する特徴。
(5-1) 宿主である白紋羽病菌の菌糸融合により感染する能力。
(5-2) 宿主である白紋羽病菌の細胞に対して、粒子感染する能力。
・〔請求項2〕に係る本発明は、前記(1-2)に記載のRNA領域が、配列番号2に記載の塩基配列からなるRNA領域である、請求項1に記載のマイコウイルス、に関する。
・〔請求項3〕に係る本発明は、独立行政法人農業生物資源ジーンバンクに登録番号MAFF 645024として寄託したW1032株が含む約7kbpのdsRNAからなるウイルスゲノムを有するマイコウイルス、に関する。
・〔請求項4〕に係る本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のマイコウイルスが感染した、以下(a)〜(c)に記載の特徴を有する白紋羽病菌、に関する。
(a) 配列番号2に記載の塩基配列に対して、95%以上の同一性を有する塩基配列からなるRNA領域を含むマイコウイルスゲノムRNAを、細胞内に保持する特徴。
(b) 感染前に比べて菌叢生育力が低下した特徴。
(c) 感染前に比べて植物に対する病原力が低下した特徴。
・〔請求項5〕に係る本発明は、前記(b)に記載の菌叢生育力が低下した特徴が、ウイルス感染有無以外は同じ遺伝的背景を有する菌株を同条件で培養した場合に比べて、70%以下のコロニー直径になる特徴である、請求項4に記載の白紋羽病菌、に関する。
・〔請求項6〕に係る本発明は、前記(c)に記載の植物に対する病原力が低下した特徴が、ウイルス感染有無以外は同じ遺伝的背景を有する菌株を同条件で植物苗に感染させた場合に比べて、植物体苗の枯死率が50%以下になる特徴である、請求項4又は5に記載の白紋羽病菌、に関する。
・〔請求項7〕に係る本発明は、前記(a)に記載のRNA領域が、配列番号2に記載の塩基配列からなるRNA領域である、請求項4〜6のいずれかに記載の白紋羽病菌、に関する。
・〔請求項8〕に係る本発明は、さらに、以下(d)に記載の特徴を有する、請求項4〜7のいずれかに記載の白紋羽病菌、に関する。
(d) 前記(a)に記載のマイコウイルスゲノムRNAを別途に、配列番号1に記載のそれぞれの塩基配列に対して、95%以上の同一性を有する塩基配列からなるRNA領域を含むマイコウイルスゲノムRNAを、さらに細胞内に保持する特徴。
・〔請求項9〕に係る本発明は、前記(d)に記載のRNA領域が、配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA領域である、請求項8に記載の白紋羽病菌、に関する。
・〔請求項10〕に係る本発明は、独立行政法人農業生物資源ジーンバンクに登録番号MAFF 645024として寄託したW1032株が含む約9.5kbpのdsRNAからなるウイルスゲノムを有するマイコウイルス、に関する。
・〔請求項11〕に係る本発明は、請求項3に記載のマイコウイルスを含む白紋羽病菌、に関する。
・〔請求項12〕に係る本発明は、請求項3及び10に記載のマイコウイルスを含む白紋羽病菌、に関する。
・〔請求項13〕に係る本発明は、独立行政法人農業生物資源ジーンバンクに登録番号MAFF 645024として寄託した白紋羽病菌 W1032株、に関する。
・〔請求項14〕に係る本発明は、請求項4〜9、11〜13のいずれかに記載の白紋羽病菌を含有することを特徴とする、白紋羽病防除剤、に関する。
・〔請求項15〕に係る本発明は、請求項4〜9、11〜13のいずれかに記載の白紋羽病菌を用いることを特徴とする、白紋羽病の防除方法、に関する。
本発明により、白紋羽病菌に対する顕著な病原力低下効果の必須因子であり, 且つ, 安定した感染能を有するマイコウイルスを提供することが可能となる。
これにより本発明は、難防除性の糸状菌病害である白紋羽病を劇的に防除できる生物防除剤、を提供することを可能とする。
なお、本発明の防除剤は、天然のマイコウイルスを利用した生物防除剤であるため、農薬等のように環境汚染を引き起こさないものである。
また、本発明におけるマイコウイルスの純化粒子は、細胞質和合性の異なる他の白紋羽病菌への感染(導入)が可能であることから、任意の白紋羽病菌に対するオーダーメードの防除剤を作出することを可能とする。
実施例1(1)において、再分離したW563株由来菌株(全34株)から抽出したRNAの電気泳動像を示す図である。レーンM:DNAサイズマーカーλ/HindIII。 実施例1(2)において、菌叢生育状態をコロニー直径として対比した結果を示す図である。 実施例1(2)において、(A)W563株(ウイルスフリー株:対照)と(B)W1032株(ウイルス感染株)の菌叢生育状態の対比を撮影した写真像図である。 実施例1(4)において、各菌株から抽出したRNAの電気泳動像を示す図である。 レーン1:W563株(ウイルスフリー株:対照)からのRNA、レーン2:W1032株(ウイルス感染株)からのRNA、レーンM1:DNAサイズマーカーλ/HindIII、レーンM2:RnMBV1ゲノムRNA。(なお、RnMBV1ゲノムRNAは、dsRNAのサイズマーカーとして泳動した。) 実施例2(2)において、配列番号1,2の塩基配列について、NCBI(GenBank)でのblastXサーチを行った結果を示す図である。 実施例2(3)において、W1032ウイルス(W1032 dsRNA1 virus, W1032 dsRNA2 virus)の純化粒子を、電子顕微鏡で撮影した写真像図である。図中のBarの長さは100nmを示す。 実施例3(1)において、各菌株から抽出したRNAの電気泳動像を示す図である。 レーン1:W97株(ウイルスフリー株:対照)からのRNA、レーン2:W97(1032V)株(ウイルス感染株)からのRNA、レーンP:W1032株(ウイルス感染株)からのRNA、レーンM1:DNAサイズマーカーλ/HindIII、レーンM2:RnMBV1ゲノムRNA。(なお、RnMBV1ゲノムRNAは、dsRNAのサイズマーカーとして泳動した。) 実施例3(2)において、(A)W97株(ウイルスフリー株:対照)と(B)W97(W1032V+)株(ウイルス感染株)の菌叢生育状態の対比を撮影した写真像図である。 実施例4において、菌叢生育状態をコロニー直径として対比した結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、白紋羽病菌の病原力低下作用の必須因子となる新規マイコウイルスに関する。
また、本発明は、当該マイコウイルスが感染することで得られた、植物に対する病原力が低下した白紋羽病菌に関する。さらに、本発明は、当該白紋羽病菌を含有することを特徴とする白紋羽病防除剤に関する。
〔W1032 dsRNA2 virus及びその近縁種である新規マイコウイルス〕
・ウイルスゲノム
本発明のマイコウイルスのウイルスゲノムは、5〜8kb, 好ましくは5.5〜7.5kb, さらには6〜7kb, さらには約6.5 kb, のRNAから構成されるものである。
当該ウイルスゲノムは、ウイルス粒子の状態では、一本鎖RNA(ssRNA), 二本鎖RNA(dsRNA)のいずれの状態で存在するかは不明であるが、宿主である白紋羽病菌に感染した場合、複製中間体である二本鎖RNA(dsRNA)として宿主細胞中に存在する場合がある。
本発明のマイコウイルスのウイルスゲノムには、後述するウイルス機能(菌叢生育力低下能, 病原性低下能等)や、ORFが指定するアミノ酸配列が完全に保存されている場合でも、ゲノム上の機能的制約が低い又は皆無の領域に、変異を有するものも含まれる。
当該ウイルスゲノムとして具体的には、配列番号2に記載の塩基配列に対して95%以上, 好ましくは97%以上, さらには98%以上, さらには99%以上, さらには99.5%以上, の同一性を有するRNA領域を、ゲノムRNA中に含むものである。
なお、さらに好ましくは、配列番号2に記載の塩基配列からなるRNA領域を、ゲノムRNA中に有するものである。
具体的には、W1032 dsRNA2 virusのゲノムRNAを挙げることができる。
本発明のマイコウイルスは、そのゲノム中にRdRP(RNA依存型RNAポリメラーゼ)をコードする遺伝子(ORF)を一つだけ有する。
ここで、RdRP遺伝子は、ほぼ全てのウイルスゲノム中において、単一遺伝子として存在する。なお、RdRPタンパク質は、ウイルスゲノム自身の複製に必要な酵素であることから、アミノ酸配列の保存性が比較的高く、広い分類群間の分子系統解析等に用いることが可能な配列である。
また、本発明のマイコウイルスのRdRPアミノ酸配列として具体的には、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して、99%以上, 好ましくは99.5%以上, さらには99.7%以上の相同性を有する配列を含むものである。
最も好ましくは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むものである。
・分類
本発明のマイコウイルスのRdRP領域のアミノ酸配列は、カリシウイルス科, ピコルナウイルス科, セコウイルス科のウイルスのものと相同性(28〜32%)を有するものである。
なお、本願出願時点において、これより高い相同性を示すRdRPアミノ酸配列は知られていない。
本発明における新規マイコウイルスは、RdRPのアミノ酸配列解析によると、カリシウイルス科, ピコルナウイルス科, セコウイルス科の3科のウイルスと比較的近い関係にはあるウイルスであるが、これらのいずれかに属するものか、あるいは新科とすべきかは不明である新規ウイルスである。
ここで、カリシウイルス科, ピコルナウイルス科に属するウイルスは、動物細胞のみに感染するウイルスであり、また、セコウイルス科に属するウイルスは、植物細胞のみに感染するウイルスである。
現在までに、これらの科の分類群には、マイコウイルス(糸状菌に感染するウイルスの総称)は見つかっていない。
即ち、本発明における新規マイコウイルスは、少なくとも属レベルでは、既知の分類群が存在しない全くの新規のマイコウイルスである。
・形態
本発明のマイコウイルス粒子の具体的な形状としては、直径30〜45nm, 好ましくは35〜40nm, の球状のウイルスである。
・宿主への感染
本発明の新規マイコウイルスは、白紋羽病菌を宿主とするマイコウイルスであり、白紋羽病菌に対して強い感染力を有するウイルスである。
ここで、白紋羽病菌とは、Rosellinia属に属する100種類以上の種のうち、R. necatrix及びR. compactを指すものである。即ち、これら2種に属する全ての菌株を挙げることができ、特には、R. necatrixに属する菌株を挙げることができる。
本発明の新規マイコウイルスは、宿主の白紋羽病菌の体細胞和合性が同じ菌株(MCG: Mycelial Compatibility Group)どうしの菌糸融合によって、ウイルス伝搬(感染)する性質を有する。
また、本発明の新規マイコウイルスは、安定した感染能を有し、一度感染した宿主細胞からの脱落が少ないウイルスである。
また、本発明の新規マイコウイルスは、純化粒子を用いた粒子感染によって、白紋羽病菌の宿主細胞に対して、導入(感染)させることが可能なウイルスである。
当該性質により、本発明では、宿主間のMCG等に制限されずに、任意の白紋羽病菌の菌株に対して、ウイルス導入(感染)をさせることが可能となる。
具体的には、当該粒子感染は、宿主細胞をプロトプラスト化して導入する方法、パーティクルガンを用いた方法、細胞質不和合性阻害によるウイルス導入法(特願2011-181140)、等によって行うことが可能である。
なお、当該粒子感染能は、マイコウイルスの中には喪失している場合がある性質である。
・菌叢生育力の低下
本発明の新規マイコウイルスは、宿主の白紋羽病菌に対して、宿主自体の菌叢生育力を顕著に低下させるための必須因子となる性質を有する。
ここで、菌叢生育力の低下の例としては、ウイルスフリーの白紋羽病菌(ウイルス感染有無以外は同じ遺伝的背景を有する菌株)の菌叢を、同条件で培養した場合に比べて、70%以下, 好ましくは60%以下, さらには50%以下, さらには40%以下, のコロニー直径となる作用を挙げることができる。
また、菌叢生育力の低下は、具体的には、細胞の増殖阻害, 菌糸伸張の阻害, 致死作用等によって生じる現象であると推測される。
・植物体に対する病原力低下
通常、白紋羽病菌が植物に対して感染(寄生)した場合、根の表面に白色の菌叢と樹皮下に菌糸束を形成する。特に、根を腐敗させる病徴を示す。
このような病徴に対して、本発明の新規マイコウイルスは、ウイルス感染後の宿主の白紋羽病菌に対して、植物に対する病原力低下作用の必須因子となる性質を有する。
即ち、当該新規マイコウイルスは、宿主の白紋羽病菌が植物に寄生した際に、その植物体に与える病徴を、顕著に軽減させ、枯死する植物体が大幅に減少させる作用を発揮するために必須の因子である。
ここで、病原力の低下の例としては、ウイルスフリーの白紋羽病菌(ウイルス感染有無以外は同じ遺伝的背景を有する菌株)を、同条件で植物の苗に感染させた場合に比べて、植物体苗の枯死率が50%以下, 好ましくは40%以下, さらには30%以下, さらには25%以下, の枯死率となる作用を挙げることができる。
・W1032 dsRNA2 ウイルス
本発明のマイコウイルスとして、具体的には、W1032 dsRNA2 virusを挙げることができる。
なお、本発明のマイコウイルスは「ウイルス」であるため、独立行政法人製品評価技術基盤機構(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託申請できない対象である。
そのため、本願発明者らは、本発明のマイコウイルスに含まれるW1032 dsRNA2 virusの純化粒子を、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所リンゴ研究拠点内(岩手県盛岡市下厨川字鍋屋敷92番地24)に保管し、第三者分与を可能としている。
〔ウイルス感染により弱毒化した白紋羽病菌〕
上記弱毒化作用により、本発明のマイコウイルスが感染した白紋羽病菌は、菌叢の生育力及び植物体への病原力が大幅に低減された性質を有する白紋羽病菌となる。
即ち、上記新規マイコウイルスの感染により、通常の病原性を有する白紋羽病菌を、低病原性化又は非病原性化した白紋羽病菌とすることができる。
また、当該非病原性化又は低病原性化した菌の細胞内には、細胞内に上記新規マイコウイルスのゲノムRNAが保持されたものとなる。
・混合感染
本発明における弱毒化した白紋羽病菌としては、上記マイコウイルスとは別のマイコウイルスを混合感染したものであってもよい。即ち、別のマイコウイルスゲノムRNAを細胞内に保持したものであってもよい。
(i) ここで、混合感染として具体的には、「白紋羽病菌病原力低下作用を有する別種のマイコウイルス」との混合感染を挙げることができる。
例えば、Rosellinia necatrix megabirnavirus 1(RnMBV1), Rosellinia necatrix mycoreovirus 3(RnMYRV3)等との混合感染を挙げることができる。
(ii) また、本発明においては、「単独では病原力低下作用を発揮しないが本発明のマイコウイルスの病原力低下作用を補う因子となるマイコウイルス」、を混合感染させることもできる。
(iii) さらには、「本発明のマイコウイルスの病原力低下作用を積極的に阻害しないマイコウイルス」を混合感染させることもできる。
このようなウイルスとして具体的には、W1032 dsRNA1 virus及びその近縁種のマイコウイルスを挙げることができる。また、W8 virus, W287 virus等を挙げることもできる。
・W1032 dsRNA1 virus及びその近縁種
ここで、W1032 dsRNA1 virus及びその近縁種のウイルスは、分類的には既知の科のどれにも属さない全く新規のマイコウイルスである。
当該マイコウイルスは、単独では白紋羽病菌病原力低下作用を発揮しないことが明らかであるが、上記本発明のW1032 dsRNA2 virus及びその近縁種による白紋羽病菌病原力低下作用を補う因子(相補因子)、となる可能性があるウイルスである。
当該ウイルスゲノムは、ウイルス粒子の状態で、一本鎖RNA(ssRNA), 二本鎖RNA(dsRNA)のいずれの状態で存在するかは不明であるが、宿主である白紋羽病菌に感染した場合、複製中間体である二本鎖RNA(dsRNA)として宿主細胞中に存在する場合がある。
また、ウイルスゲノムは、8〜10kb, 好ましくは8.5〜9.5kb, 特には約9kb, のRNAから構成されるものである。
当該マイコウイルスゲノムには、ウイルス機能や、ORFが指定するアミノ酸配列が完全に保存されている場合でも、ゲノム上の機能的制約が低い又は皆無の領域に、変異を有するものも含まれる。
当該マイコウイルスゲノムとして具体的には、配列番号1に記載のそれぞれの塩基配列に対して、95%以上, 好ましくは97%以上, さらには98%以上, さらには99%以上, さらには99.5%以上, の同一性を有する塩基配列からなるRNA領域を、ゲノムRNA中に含むものである。
なお、さらに好ましくは、配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA領域を、ゲノムRNA中に有するものである。
具体的には、W1032 dsRNA1 virusのゲノムRNAを挙げることができる。
また、当該マイコウイルスが有するRdRPアミノ酸配列としては、配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して、99%以上, 好ましくは99.5%以上, さらには99.7%以上の相同性を有する配列を含むものである。
最も好ましくは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むものである。
当該マイコウイルスの形状としては、直径30〜45nm, 好ましくは35〜40nm, の球状形態を有する。また、白紋羽病菌に対して強い感染力を有し、粒子感染性を有する。
当該マイコウイルスとして、具体的には、W1032 dsRNA1 virusを挙げることができる。
なお、本発明のマイコウイルスは「ウイルス」であるため、独立行政法人製品評価技術基盤機構(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託申請できない対象である。
そのため、本願発明者らは、本発明のマイコウイルスに含まれるW1032 dsRNA1 virusの純化粒子を、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所リンゴ研究拠点内(岩手県盛岡市下厨川字鍋屋敷92番地24)に保管し、第三者分与を可能としている。
・非病原性化又は低病原性化した白紋羽病菌
本発明における弱毒化した白紋羽病菌の具的的なものとしては、Rosellinia necatrixに属するW1032株, W1050株, W1051株, W1052株等を挙げることができる。
特には、病原力低下作用が顕著に優れている点で、W1032株を挙げることができる。
なお、W1032株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託申請されたが、「ウイルスが内在する」との理由により、2012年2月3日付で、受託拒否された菌株である。
そこで、本発明者らは、W1032株を独立行政法人農業生物資源研究所の農業生物資源ジーンバンク(茨城県つくば市観音台2-1-2)に登録番号「MAFF 645024」として寄託することによって、第三者分与を可能としている。
〔白紋羽病防除への応用〕
・白紋羽病防除方法
本発明で作出した弱毒化した白紋羽病菌は、野外の土壌や植物に放菌(散布, 接種等)することによって、野外に蔓延する白紋羽病を、劇的に防除することが可能となる。
具体的には、本発明において白紋羽病の防除を効率的に行うためには、(i)実際に防除対象となる土壌に生息する白紋羽病菌を採取して、(ii)当該白紋羽病菌に対して本発明のマイコウイルスの感染を行って非病原性化又は低病原性化させ、(iii)当該弱毒化した白紋羽病菌を放菌する態様、で行なうことが望ましい。
これにより、放菌した弱毒化白紋羽病菌から、野生型の白紋羽病菌(強毒菌)と菌糸融合(MGCが同一であるため)によりマイコウイルスの伝搬(感染)がおこり、野生型を弱毒化させることが可能となる。
なお、本発明のマイコウイルスは、MCGが異なる白紋羽病菌の菌株間においても、線虫等の媒介生物を介してウイルス導入(特願2011-151451明細書 参照)により、ウイルス伝搬(感染)させることが可能である。
そのため、本発明のマイコウイルスが対象土壌に生息する白紋羽病菌のMCGと異なる菌株に保持されている場合であっても、当該菌株と線虫を放菌する態様で行うことが可能である。
本発明の方法で作出した弱毒化した白紋羽病菌によって、白紋羽病防除が可能となる植物としては、果樹、農作物、花卉、園芸植物全般を挙げることができる。
特には、リンゴ、ナシ、ブドウ、ビワ、イチジク、キウイフルーツ、モモ、ウメ、オウトウ、アンズ、スモモ、カキ、カンキツ、クリ、クワ、チャ、サクラ、カシ、ナラ、ポプラ、カエデ、ツバキ、ツツジ、バラ、キク、オモト、シャクヤク、などに対して、有効に用いることができる。
・白紋羽病防除剤
本発明で作出した弱毒化した白紋羽病菌は、当該菌を有効成分として含有させてなる白紋羽病防除剤とすることができる。
白紋羽病防除剤の形態として、具体的には、菌が生菌の状態であり、土壌や植物体への散布, 接種等による放菌が可能な形態であればよい。
例えば、‘固形の剤’の形態とする場合、木片(例えばチップ状に加工したもの, 0.5〜10cmに細断した長軸状のもの), おがくず, 寒天培地, スポンジ(例えば0.5〜5cm角に細断したもの), ロックウール等の支持体において、本発明で作出した弱毒化白紋羽病菌を接種して培養したものを挙げることができる。好ましくは、支持体全体に菌叢を培養したものであることが望ましい。
これらの支持体は、さらに粉末、顆粒、シート状、ボード状、キューブ状等に加工して用いることも可能である。
調製した固形の剤形態のものは、土壌に散布したり、埋土することで、用いることができる。
なお、当該支持体が木片である場合、弱毒化白紋羽病菌を接種して、室温(具体的には10〜30℃)にて、4〜40日間、放置(培養)し、必要に応じて破砕, 粉末化, 接着, 固形化等の加工を行うことで、調製することができる。
なお、木片を用いる場合、木材の材質としては如何なるものでも良いが、例えば果樹の剪定枝、カバノキ、アスペン等を挙げることができる。また、おが屑を用いることもできる。
なお、抗菌性物質が多く含まれているものなどは適さないので、使用する前に培養可能かを確認することが望ましい。
また、支持体が寒天培地等のスポンジやロックウール用いた場合、これらの支持体に培地成分を染み込ませ、弱毒化白紋羽病菌を接種して上記と同様に培養し、必要に応じて細断等の加工を行うことで、調製することができる。
また、支持体が寒天培地等のゲルを用いた場合、例えば、PDA寒天培地上に弱毒化白紋羽病菌を接種して、上記と同様に培養し、必要に応じてゲルの破砕等の加工することで、調製することができる。
白紋羽病防除剤を‘液体の剤’の形態とする場合、上記のように培養した弱毒化白紋羽病菌の菌叢を水や10%グリセロール等の溶液に懸濁して、液体アンプル, 濃縮液, 増粘剤により粘性を付与した液体, 液体を封入したカプセル等の形態とすることができる。
このように調製した液体の剤形態のものは、土壌に散布したり、植物体に直接塗布することによって、用いることができる。
また、上記のように培養した弱毒化白紋羽病菌の菌叢をアルギニン酸溶液等の溶液に懸濁することで、アルギニンペレットの形態とすることもできる。
なお、本発明の防除剤は、天然のマイコウイルスと弱毒化した白紋羽病菌を利用した生物防除剤であるため、農薬等のように環境汚染を引き起こさないものである。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
〔実施例1〕『W1032株の単離』
(1) 「マイコウイルス感染株の再分離」
白紋羽病菌Rosellinia necatrix W563株(ウイルスフリー株)を、長野県須坂市の圃場内のリンゴ樹に接種し、2年半後に当該接種樹からW563株に由来する菌株を再分離した。
当該菌株から、フェノール・クロロホルム抽出法により全核酸を抽出後、DNaseおよびS1ヌクレアーゼ処理を行い、dsRNAを抽出した。
得られたdsRNAを、アガロースゲルでの電気泳動解析に供し、ウイルス感染の有無を調べた。電気泳動の結果を図1に示した。
その結果、再分離したW563株由来の菌株34株から、W563株(ウイルスフリー株)には存在しないRNAを有する菌株を合計19株見出した。
これらのRNAは、電気泳動の移動度が異なる6種類のRNA(dsRNA1〜6)であり、感染したマイコウイルスのゲノムRNAであることが示唆された。
このことから、白紋羽病菌には、多くの種類のマイコウイルスが野外で自然感染することが示された。また、感染ウイルスの多様性から、ユニバーサルなウイルス感染を媒介する生物が存在することが示唆された。
(2) 「菌叢生育力が低下した菌株の選抜」
上記再分離した各ウイルス感染菌株について、ジャガイモブトウ糖寒天培地上に接種し、25℃で5日間培養した。また、対照として、W563株(ウイルスフリー株)について同様に培養した。そして、各ウイルス感染菌株と対照の菌叢の生育状態を比較することで、生育能が低下した菌株を選抜した。
その結果、得られたウイルス感染株の中から、対照であるW563株(コロニー直径約59mm)と比べて、菌叢の生育力が有意に低下したW1032株(約22mm), W1050株(約35mm), W1051株(約34mm), W1052株(約33mm),を見出した。
これらの菌株では、マイコウイルス由来のdsRNA1とdsRNA2の両方を有するという点で、共通した菌株であった。
これらの菌株のコロニー直径を比較したグラフを図2に示した。
また、特に生育低下が著しかった‘W1032株’について、W563株(対照)の生育状態を対比して観察した。対比した写真像図を図3に示した。
(3) 「植物に対する病原力の低下」
上記選抜したW1032株(ウイルス感染株)について、リンゴマルバ苗に対する病原力を調査した。
オートクレーブしたリンゴ切枝上(2.5cm×8mm)でW1032株を14日間培養し、W1032株の菌叢を生育させ、接種源とした。
当該接種源(W1032株菌叢培養後の切枝)を、リンゴマルバ苗(プランターで1ヶ月育成)の主根の地下部7cmの位置に接するように配置し、埋め戻した。なお、当該接種源は各苗に対して2個ずつ配置した(接種処理)。当該接種処理後は、ガラス室内で3週間栽培した(試験区1-3)。
また、対照区として、W563株(ウイルスフリー株)を同様に接種した苗の群を栽培した。
そして、両群における枯死した苗の数を比較した。結果を表1に示した。
その結果、W1032株を接種した苗の群(試験区1-3)では、W563株を接種した苗の群(対照区)と比べて枯死する苗の数が大幅に少なかった。このことから、W1032株はW563株に比べて、病原力が大幅に低下した菌株であることが示された。
(4) 「W1032株が有するウイルスゲノムRNA」
上記(1)において抽出したW1032株(ウイルス感染株)のRNAについて、既にサイズが判明しているRnMBV1ゲノムRNAをdsRNAのサイズマーカーとして用いて、再度アガロースゲルにて電気泳動を行なうことにより、詳細なRNAサイズを調べた。
また、対照して、W563株(ウイルスフリー株)のRNAも同様に電気泳動を行った。電気泳動像を図4に示した。
その結果、W1032株(レーン2 参照)から抽出したRNAは、W563株(レーン1 参照)には存在しない約9kbpと約6.5kbpの2本のdsRNAが存在することが示された。
W1032株の遺伝的背景は、当該RNAを有すること以外はW563株と同一であることから、W1032株は、W563株がマイコウイルスの感染によって2種類のRNA(dsRNA1:約9.5kb, dsRNA2:約7kb)を獲得した菌株であることが示唆された。
なお、W1032株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託申請されたが、「ウイルスが内在する」との理由により、2012年2月3日付で、受託拒否された菌株である。
そこで、本発明者らは、W1032株を独立行政法人農業生物資源研究所の農業生物資源ジーンバンク(茨城県つくば市観音台2-1-2)に登録番号「MAFF 645024」として寄託することによって、第三者分与を可能としている。
〔実施例2〕『新規マイコウイルス単離』
(1) 「ウイルスゲノムRNA配列の決定」
実施例1(1)の方法に従い、W1032株の培養菌体からdsRNAを抽出し、アガロースゲルにて電気泳動を行った。
dsRNA1 (約9.5kbp)とdsRNA2 (約7kbp)をそれぞれゲルから切り出し、MagExtractor (TOYOBO, Osaka, Japan)を用いて抽出した。
得られたdsRNA断片を鋳型に、random 9 mers を用いてM-MLV cDNA synthesis Kit (TAKARA, Ohtsu, Japan)によりcDNAを合成した。
得られたcDNAをアガロースゲル電気泳動し、約1,000〜1,500 bpのcDNAをゲルから切り出して、MagExtractorで抽出後、SmaIで切断したpBluescript II SK(-) vector (Stratagene)にサブクローニングした。
これを、大腸菌 DH5α株に形質転換し、Luria-Bertani培地で培養した。培養液からIllustra plasmidPrep Mini Spin Kit (GE Healthcare)を用いてプラスミドを抽出し、インサートが1000 bp以上のものを選抜した。
選抜クローンをABI BigDye(TM) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kitsでシークエンス反応を行い、ABI 3730xl Analyzer によって、dsRNA1及びdsRNA2の部分配列を決定した。得られた配列をdsRNA断片ごとにアッセンブルし、コンティグ配列を作成した。
その結果、dsRNA1(約9.5kb)の塩基配列の一部である配列番号1に示す塩基配列(3,926b)、; dsRNA2(約7kb)の塩基配列の一部である配列番号2に示す塩基配列(3,185b)、を決定できた。これらは、お互いに重複する領域を含まないことから、お互いに別の領域の配列であることが示された。
(2) 「ウイルスの同定」
上記決定した配列番号1,2の塩基配列について、NCBI(GenBank)でのblastXサーチを行った。結果を図5に示した。
その結果、‘dsRNA1’と‘dsRNA2’のそれぞれに、RdRP遺伝子(RNA依存型RNAポリメラーゼ遺伝子)が存在することが明らかになった。
また、dsRNA1のRdRPアミノ酸配列(配列番号3)と、dsRNA2のRdRPアミノ酸配列(配列番号4)は、お互いの相同性が低く、全く異なる配列であった。
1つのウイルスに、複数個の異なる由来のRdRP遺伝子を有することはないことから、dsRNA1とdsRNA2は、それぞれ異なるウイルスのゲノムであることが明らかになった。
そこでそれぞれを、「W1032 dsRNA1 virus」, 「W1032 dsRNA2 virus」と名付けた。
・W1032 dsRNA1 virusゲノム
具体的には、W1032 dsRNA1由来のRdRP遺伝子は、配列番号1の塩基配列中にコードされたものであり、そのアミノ酸配列は、昆虫のトティウイルス科ウイルスのものと弱い相同性(21〜24%)を示した。
W1032 dsRNA1 virusのRdRP配列の相同性の数値は、RdRP遺伝子ファミリーに属することを示す値ではあるものの、近縁な分類群を特定できる程の値ではなかった。
このことから、W1032 dsRNA1 virusは、少なくとも‘科レベル又は属レベル’で完全に新規のマイコウイルスであることが示唆された。
・W1032 dsRNA2 virusゲノム
一方、W1032 dsRNA2由来のRdRP遺伝子は、配列番号2の塩基配列中にコードされたものであり、そのアミノ酸配列は、カリシウイルス科, ピコルナウイルス科, セコウイルス科のウイルスのものとやや高い相同性28〜32%)を示した。
これらのウイルスは、いずれも一本鎖RNA(ssRNA)をゲノムに持つ球状ウイルスである。
ここで、カリシウイルス科やピコルナウイルス科のウイルスは、人間に胃腸炎をおこすノロウイルスなど、動物のみから見出されており、また、セコウイルス科のウイルスは、植物のみから見出されているが、いずれも糸状菌に感染するものは見つかっていない。
このことから、W1032 dsRNA2 virusは、カリシウイルス科, ピコルナウイルス科, セコウイルス科のウイルスと近縁な、全く新規なマイコウイルスであることが示された。
なお、W1032 dsRNA2 virusのゲノムRNAは、宿主感染時には複製中間体のdsRNA型となることが示されたが、他の近縁ウイルスの形質から判断して、ウイルス粒子中ではssRNA型である可能性も示唆された。
(3) 「純化ウイルス粒子」
上記W1032株を、セロファンを敷いたジャガイモ絞汁培地上で25℃, 10日間培養した。
得られた培養菌体を、液体窒素下で乳鉢と乳棒で磨砕し、0.1%2-mercaptoethanolを含む0.1Mリン酸バッファーに懸濁した。
ホモジナイザーで13,000rpm, 10分間撹拌した後に最終濃度15%となるよう、vertrel(R) XFを加え、さらに3,000rpm, 5分間撹拌して清澄化した。
懸濁液を3,000×g, 5分間遠心して上清を回収し、Vertrel(R) XFによる清澄化を繰り返した。
得られた上清をMax 119,000×gで2時間超遠心し、沈殿を0.05Mリン酸バッファーに懸濁した。
懸濁液を20〜50%のショ糖密度勾配に重層し、Max 103,900×g, 2時間、超遠心を行った後にウイルスを含む層を回収し、0.5Mリン酸バッファーで希釈後、Max 130,000×gで超遠心した。得られた沈殿を0.05Mリン酸バッファーに懸濁することで、W1032株に含まれるウイルス粒子を調製した。
調製したウイルス粒子(W1032 dsRNA1 virus, W1032 dsRNA2 virus)の電子顕微鏡写真像図を図6に示した。
観察の結果、得られた純化ウイルス粒子は、直径約30〜45nmの球状ウイルスであることが示された。
また純化粒子から抽出したdsRNAの電気泳動パターンは、菌体から直接抽出したdsRNAの電気泳動パターン(図4, レーン2)と同じであり、dsRNA1とdsRNA2の両方が確認された。
このことから、調製したウイルス粒子には、W1032 dsRNA1 virus粒子と、W1032 dsRNA2 virus粒子の両方が含まれることが示された。
〔実施例3〕『W1032ウイルス機能の実証』
(1) 「他のウイルスフリー株への感染」
上記W1032株から得られたウイルスの純化粒子(W1032 dsRNA1 virus, W1032 dsRNA2 virusの両方の粒子を含む)を、他の白紋羽病菌に人為的に感染させた際に、感染菌株の生育力や病原力が低下する機能が発揮されるかを実証した。
上記W563株やW1032株とは体細胞和合性が一致しない関係(MCGが異なる関係)にある‘白紋羽病菌W97株(ウイルスフリー株)’のプロトプラストを調製した。
次いで、実施例2(3)において調製したW1032 dsRNA1 virusとW1032 dsRNA2 virusの純化粒子の混合粒子を、ポリエチレングリコールとCa2+共存下で混合することで、W97株にW1032 dsRNA1 virus, dsdsRNA2 virusを感染させた‘W97(W1032V+)株’を作出した。
得られたW97(W1032V+)株から、実施例1(1)に記載の方法と同様にしてRNAを抽出して、電気泳動を行った。また、陽性対照としてW1032株から、陰性対照としてW97株からもRNAを抽出し、電気泳動を行った。電気泳動像を図7に示した。
その結果、W97(W1032V+)株の電気泳動パターンは、W1032株が有するdsRNAの電気泳動パターンと同一であり、dsRNA1とdsRNA2の両方が確認された(レーンP, 2 参照)。
また、当該RNAは、W97株(ウイルスフリー株)には存在しないRNAであった(レーン1 参照)。
即ち、W97(W1032V+)株は、W1032 dsRNA1 virus, W1032 dsRNA2 virusの感染によって、両ウイルスゲノムであるdsRNA1及びdsRNA2を有することが確認された。
(2) 「菌叢生育力の低下」
上記W97(W1032V+)株について、実施例1(2)に記載の方法と同様にして、ジャガイモブトウ糖寒天培地上において25℃で5日間培養した。また、対照として、W97株(ウイルスフリー株)について同様に培養した。
そして、両者の菌叢の生育状態を比較した。当該生育状態を対比した写真像図を図8に示した。
その結果、得られたW97(W1032V+)株は、W97株(ウイルスフリー株:対照)と比べて、菌叢の生育力が大幅に低下した菌株であった。
このことから、W1032 dsRNA1 virusと、W1032 dsRNA2 virusの混合感染により、W97株の菌叢生育力を大幅に低下させる機能が発揮されることが実証された。
(3) 「植物に対する病原力の低下」
上記W97(W1032V+)株について、実施例1(3)に記載の方法と同様にして、リンゴマルバ苗の群(9苗)に接種して、3週間栽培した(試験区3-3)。また、対照区として、W97株(ウイルスフリー株)を接種した苗の群を同様にして栽培した。
そして、両者での、枯死した苗の数を比較した。結果を表2に示した。
その結果、W97(W1032V+)株を接種した苗の群(試験区3-3)では、W97株を接種した苗の群(対照区)と比べて枯死する苗の数が大幅に少なかった。
このことから、W1032 dsRNA1 virusと、W1032 dsRNA2 virusの混合感染により、W97株の植物に対する病原力を大幅に低下させる機能が発揮されることが実証された。
〔実施例4〕『単独感染による菌叢生育への影響』
実施例1(1)において再分離したW563株由来マイコウイルス感染株の中には、W1032 dsRNA2 virusには感染していないが、W1032 dsRNA1 virusには感染している菌株(W1041株, W1053株)が存在した。
そこで、当該W1041株, W1053株(dsRNA2を保有せずにdsRNA1を保有する株)について、実施例1(2)に記載の方法と同様にして、ジャガイモブトウ糖寒天培地上において25℃で5日間培養した。
また、陽性対照として、W1032株(dsRNA1, dsRNA2の両方を保有する株)について、また、陰性対照としてW563株(ウイルスフリー株)について、同様に培養した。
そして、これらの菌叢の生育状態を比較した。生育後のコロニー直径を測定した結果を、図9に示した。
その結果、陰性対照であるW563株(コロニー直径約59mm)と比べて、dsRNA1, dsRNA2の両方を保有するW1032株では菌叢生育力の大幅低下(コロニー直径約22mm)が確認された。
それに対して、dsRNA2を保有せずにdsRNA1を保有するW1041株, W1053株では、菌叢の生育力の低下が確認できなかった(それぞれコロニー直径約54mm, 56mm)。
このことから、白紋羽病菌の生育力等の機能低下の発揮には、‘W1032 dsRNA2 virus’の感染が必須であることが示唆された。
〔実施例1〜4からの考察〕
(i) 本実施例における以上の結果から、純化粒子としたW1032 dsRNA1 virus, W1032 dsRNA2 virusは、W563株とは細胞質和合性の異なるW97株に対しても安定した感染(導入)が可能であることが示された。
(ii) W1032 dsRNA2 virusが存在しない場合、W1032 dsRNA1 virusのみでは、白紋羽病菌の生育への影響はみられなかった。
このことから、白紋羽病菌の生育力および植物に対する病原力の低下能の発揮には、‘W1032 dsRNA2 virus’の感染が必須であり、W1032 dsRNA2が当該機能低下に重要な働きをしていることが示唆された。
(iii) ウイルスフリー株であるW97株への導入試験の結果から、W1032 dsRNA2 virusの感染により、白紋羽病菌の生育力および植物に対する病原力を大幅に低下させる機能が発揮されることが実証された。
本発明により、果樹生産に甚大な被害をもたらす白紋羽病を、環境汚染を引き起こすことなく、劇的に防除できる生物防除剤を提供することを可能とする。
また、本発明により、任意の白紋羽病菌に対するオーダーメードの防除剤を作出することを可能とする。
これにより本発明は、農業園芸分野における白紋羽病の防除において貢献することが期待される。

Claims (15)

  1. 以下(1)〜(5)に記載の特徴を有するマイコウイルス。
    (1) ウイルスゲノムが以下(1-1)及び(1-2)に記載の性質を有する特徴。
    (1-1) ウイルスゲノムが、5〜8kbのRNAで構成されている性質。
    (1-2) 配列番号2に記載の塩基配列に対して、95%以上の同一性を有する塩基配列からなるRNA領域、を含む性質。
    (2) 宿主となった白紋羽病菌菌叢の生育力を低下させる作用、の必須因子となる特徴。
    (3) 宿主となった白紋羽病菌の植物に対する病原力を低下させる作用、の必須因子となる特徴。
    (4) ウイルス粒子の形状が直径30〜45nmの球状である特徴。
    (5) 以下(5-1)及び(5-2)に記載の感染能を有する特徴。
    (5-1) 宿主である白紋羽病菌の菌糸融合により感染する能力。
    (5-2) 宿主である白紋羽病菌の細胞に対して、粒子感染する能力。
  2. 前記(1-2)に記載のRNA領域が、配列番号2に記載の塩基配列からなるRNA領域である、請求項1に記載のマイコウイルス。
  3. 独立行政法人農業生物資源ジーンバンクに登録番号MAFF 645024として寄託したW1032株が含む約7kbpのdsRNAからなるウイルスゲノムを有するマイコウイルス。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のマイコウイルスが感染した、以下(a)〜(c)に記載の特徴を有する白紋羽病菌。
    (a) 配列番号2に記載の塩基配列に対して、95%以上の同一性を有する塩基配列からなるRNA領域を含むマイコウイルスゲノムRNAを、細胞内に保持する特徴。
    (b) 感染前に比べて菌叢生育力が低下した特徴。
    (c) 感染前に比べて植物に対する病原力が低下した特徴。
  5. 前記(b)に記載の菌叢生育力が低下した特徴が、ウイルス感染有無以外は同じ遺伝的背景を有する菌株を同条件で培養した場合に比べて、70%以下のコロニー直径になる特徴である、請求項4に記載の白紋羽病菌。
  6. 前記(c)に記載の植物に対する病原力が低下した特徴が、ウイルス感染有無以外は同じ遺伝的背景を有する菌株を同条件で植物苗に感染させた場合に比べて、植物体苗の枯死率が50%以下になる特徴である、請求項4又は5に記載の白紋羽病菌。
  7. 前記(a)に記載のRNA領域が、配列番号2に記載の塩基配列からなるRNA領域である、請求項4〜6のいずれかに記載の白紋羽病菌。
  8. さらに、以下(d)に記載の特徴を有する、請求項4〜7のいずれかに記載の白紋羽病菌。
    (d) 前記(a)に記載のマイコウイルスゲノムRNAを別途に、配列番号1に記載のそれぞれの塩基配列に対して、95%以上の同一性を有する塩基配列からなるRNA領域を含むマイコウイルスゲノムRNAを、さらに細胞内に保持する特徴。
  9. 前記(d)に記載のRNA領域が、配列番号1に記載の塩基配列からなるRNA領域である、請求項8に記載の白紋羽病菌。
  10. 独立行政法人農業生物資源ジーンバンクに登録番号MAFF 645024として寄託したW1032株が含む約9.5kbpのdsRNAからなるウイルスゲノムを有するマイコウイルス。
  11. 請求項3に記載のマイコウイルスを含む白紋羽病菌。
  12. 請求項3及び10に記載のマイコウイルスを含む白紋羽病菌。
  13. 独立行政法人農業生物資源ジーンバンクに登録番号MAFF 645024として寄託した白紋羽病菌 W1032株。
  14. 請求項4〜9、11〜13のいずれかに記載の白紋羽病菌を含有することを特徴とする、白紋羽病防除剤。
  15. 請求項4〜9、11〜13のいずれかに記載の白紋羽病菌を用いることを特徴とする、白紋羽病の防除方法。
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