しかし、上述の特許文献1,2では、圧電体の振動方向、特に屈曲振動に対して振動を制限するように圧電体を保持する弾性部材を配置することにより、圧電体の振動が弾性部材を通じて保持ケースに漏れ、被駆動体の駆動エネルギーを多く損失してしまう虞があった。また、特許文献3であっても、圧電体を保持ケースの案内部からの振動漏れを生じ、被駆動体の駆動エネルギーを多く損失してしまう虞があった。
そこで、圧電体を保持ケースに保持しながらも、保持ケースへの圧電体の振動漏れを抑制し、圧電体の振動を確実に被駆動体の駆動に変換するアクチュエーター、およびそのアクチュエーターを駆動部に備えるロボットハンド、ロボット、電子部品搬送装置、電子部品検査装置、送液ポンプ、印刷装置、電子時計、投影装置および搬送装置を提供する。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
〔適用例1〕本適用例のアクチュエーターは、屈曲振動モードが励振されて振動し、または前記屈曲振動モードと縦振動モードとが同時に励振されて振動する圧電素子と、前記圧電素子に備えられる接触部が当接し、前記接触部の振動によって駆動される被駆動体と、前記圧電素子を保持する第1保持部および第2保持部と、前記第1保持部および前記第2保持部を介して前記圧電素子の前記接触部を前記被駆動体へ付勢する付勢手段を有する基台と、を備え、前記第1保持部は、前記圧電素子の前記振動面に交差する方向に配置され、前記圧電素子の一方に配置される第1支持部および第2支持部と、前記第1支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の他方に配置される第3支持部と、前記第2支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の前記他方に配置される第4支持部と、を有し、前記第2保持部は、前記圧電素子の前記振動面に交差する方向に配置され、前記圧電素子の一方に配置される第5支持部および第6支持部と、前記第5支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の他方に配置される第7支持部と、前記第6支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の前記他方に配置される第8支持部と、を有することを特徴とする。
圧電素子の屈曲振動によって被駆動体を駆動させるアクチュエーターにおいて、圧電素子の振動面内において屈曲振動が励振される、または屈曲振動と縦振動とが同時に励振されるが、その場合、意図しない振動としてのあおり振動が励振される。発生したあおり振動は、圧電素子の屈曲振動による被駆動体の駆動効率を低下させてしまう。本適用例のアクチュエーターによれば、振動面の一方の面側に配置される4個の支持部と、一方の面側に配置された4個の支持部に対向配置される他方の面側の4個の支持部と、によって構成される4箇所の圧電素子の支持領域が、あおり振動を抑制し、圧電素子の屈曲振動による被駆動体の駆動効率の低下を抑制することができる。したがって、高い駆動効率を備えるアクチュエーターを得ることができる。
〔適用例2〕上述の適用例において、前記圧電素子は、前記屈曲振動モードの屈曲振動方向に直交する方向に沿った長さをL、前記屈曲振動方向に沿った長さをW、とする矩形基板であり、前記圧電素子は、前記第1支持部と前記第3支持部と、が前記圧電素子を支持する第1支持領域と、前記第2支持部と前記第4支持部と、が前記圧電素子を支持する第2支持領域と、前記第5支持部と前記第7支持部と、が前記圧電素子を支持する第3支持領域と、前記第6支持部と前記第8支持部と、が前記圧電素子を支持する第4支持領域と、を有し、前記第1支持領域の第1図心Q1および前記第2支持領域の第2図心Q2と、前記圧電素子の前記長さL方向の一方の端部からの前記長さL方向の距離を距離DL1およびDL2とし、前記第3支持領域の第3図心Q3および前記第4支持領域の第4図心Q4と、前記圧電素子の前記長さL方向の他方の端部からの前記長さL方向の距離を距離DL3およびDL4とした場合の、前記距離DL1,DL2,DL3,DL4が、
0.065L≦DL1≦0.315L
0.065L≦DL2≦0.315L
0.065L≦DL3≦0.315L
0.065L≦DL4≦0.315L
であり、前記圧電素子の前記第1〜第4支持領域が形成される面の投影面積を面積S、前記第1支持領域の面積を面積S1、前記第2支持領域の面積を面積S2、前記第3支持領域の面積を面積S3、前記第4支持領域の面積を面積S4、とした場合、
1/60<S1/S<1/8
1/60<S2/S<1/8
1/60<S3/S<1/8
1/60<S4/S<1/8
であることを特徴とする。
上述の適用例によれば、圧電素子の突起部側にある振動面内での振幅の小さい位置となる節の近傍に、第1支持領域と第2支持領域との2箇所の支持領域によって圧電素子を支持することにより、圧電素子の屈曲振動を阻害することなく駆動させながら、あおり振動を抑制することができる。また、突起部への被駆動体からの反力による圧電素子の移動を突起部近傍領域で抑制することができる。また、突起部に最も遠い位置にある振動面内での振幅の小さい位置となる節の近傍において、第1支持領域と第2支持領域との2箇所の支持領域によって圧電素子を支持することにより、圧電素子の屈曲振動を阻害することなく駆動させながら、あおり振動を抑制することができる。また、第1支持領域および第2支持領域の支持領域近傍の節を中心として、被駆動体からの突起部への反力によって圧電素子に生じるモーメントを効果的に抑制することができる。これにより、保持部に圧電素子を安定して保持させることができ、被駆動体の確実な駆動を得ることができるアクチュエーターが実現できる。
さらに、支持領域の領域面積を圧電素子の振動面の投影面積の1/60より大きくすることよって、圧電素子と支持部との保持力不足によるすべりを回避し、圧電素子の屈曲振動を確実に被駆動体の駆動力にすることができる。また、支持領域の領域面積を圧電素子の振動面の投影面積の1/8より小さくすることによって、圧電素子と支持部との保持力が過剰とならないようにすることができ、圧電素子に所望の屈曲振動を励振させることができる。
〔適用例3〕上述の適用例において、前記第1図心Q1および前記第3図心Q3と、前記圧電素子の前記長さW方向の一方の端部からの前記長さW方向の距離を距離DW1およびDW3とし、前記第2図心Q2および前記第4図心Q4と、前記圧電素子の前記長さW方向の他方の端部からの前記長さW方向の距離を距離DW2およびDW4とした場合の、
前記距離DW1,DW2,DW3,DW4が、
0.07W≦DW1≦0.43W
0.07W≦DW2≦0.43W
0.07W≦DW3≦0.43W
0.07W≦DW4≦0.43W
であり、且つ前記第1支持領域と前記第2支持領域とは重ならず、前記第3支持領域と前記第4支持領域とは重ならないことを特徴とする。
上述の適用例によれば、あおり振動の抑制がより確実におこなわれ、高い駆動効率を備えるアクチュエーターを得ることができる。
〔適用例4〕上述の適用例において、前記第1、第2、第3および第4支持領域の外縁部は、前記圧電素子の前記振動面の外縁部の内側であることを特徴とする。
上述の適用例によれば、このように第1、第2、第3および第4支持領域を形成することにより、第1〜第8支持部によって圧電素子が挟持、保持されても、圧電素子の屈曲振動の妨げになることが回避でき、保持部材への振動の漏れを抑制することができる。
〔適用例5〕上述の適用例において、前記第1支持部と前記第3支持部の少なくとも一方、前記第2支持部と前記第4支持部の少なくとも一方、前記第5支持部と前記第7支持部の少なくとも一方、および前記第6支持部と前記第8支持部の少なくとも一方、には緩衝部を含むことを特徴とする。
上述の適用例によれば、圧電素子を振動面に交差する方向に挟持するように緩衝材料による緩衝部を含む第1支持部と第3支持部の少なくとも一方、第2支持部と第4支持部の少なくとも一方、第5支持部と第7支持部の少なくとも一方、および第6支持部と第8支持部の少なくとも一方、を備えることにより、圧電素子の振動が保持材へ漏れることを抑制することができる。これによって、圧電素子の振動が無駄なく接触部の揺動を発生させ、接触部に当接される被駆動体の回転もしくは直線運動へ変換することができる。すなわち、駆動効率の高いアクチュエーターを得ることができる。また、緩衝部は、振動面方向の振動を振動変位として許容することにより、被駆動体の駆動に必要な振動を維持することができる。更に、節近傍の支持領域では振動変位が分布するが、その変位を緩衝部を形成する緩衝材料によって許容することにより、被駆動体の駆動に必要な振動を維持することができる。すなわち、駆動効率の高いアクチュエーターを得ることができる。
〔適用例6〕上述の適用例において、前記第1支持部と前記第3支持部の少なくとも一方、前記第2支持部と前記第4支持部の少なくとも一方、前記第5支持部と前記第7支持部の少なくとも一方、および前記第6支持部と前記第8支持部の少なくとも一方、には弾性部を含むことを特徴とする。
上述の適用例によれば、第1支持部と第3支持部の少なくとも一方、第2支持部と第4支持部の少なくとも一方、第5支持部と第7支持部の少なくとも一方、および第6支持部と第8支持部の少なくとも一方に弾性部材を配置することにより、弾性部材の弾性力に対する保持部と圧電素子との間の摩擦力によって、振動による保持部と圧電素子との相対的な位置ずれを抑制することができる。
〔適用例7〕本適用例のロボットハンドは、複数本の指部を用いて対象物を把持するロボットハンドであって、前記複数本の指部が移動可能に立設された基台と、前記基台に設けられて前記指部の基端を駆動することによって、前記複数本の指部の間隔を変更する駆動部と、を備え、前記駆動部は、上述のアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例のロボットハンドによれば、動作の自由度を多くするためにモーターを多数備えても、電磁式のモーターなどを用いるロボットハンドに比べて小型、軽量にすることができる。
〔適用例8〕本適用例のロボットは、回動可能な関節部が設けられた腕部と、前記腕部に設けられたハンド部と、前記腕部が設けられた本体部と、を備えたロボットであって、前記関節部に設けられて前記関節部を屈曲あるいは回転駆動させる駆動部を有しており、前記駆動部は、上述のアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例のロボットによれば、駆動分解能が細かく、且つ高速振動のアクチュエーターによる駆動であるため、作業対象物を正確に保持し、目的位置まで正確に高速搬送することができ、ロボットの動作時間の短縮を可能とすることができ、高い生産性が実現できる。また複雑な電子機器の組立作業などを可能にすることができる。また、関節部を多く備える、いわゆる多関節型ロボットであっても、電磁式のモーターなどを用いるロボットに比べて小型、軽量にすることができる。
〔適用例9〕本適用例の電子部品搬送装置は、電子部品を把持する把持部と、前記把持部を駆動する駆動部と、を備える電子部品搬送装置であって、前記駆動部は、上述のアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例の電子部品搬送装置によれば、駆動分解能が細かく、且つ高速振動であるため電子部品などを正確な位置に高速で搬送することができ、電子部品の検査時間、組立時間の短縮を可能とすることができる。また複雑な電子機器の組立作業などを可能にすることができる。
〔適用例10〕本適用例の電子部品検査装置は、電子部品を把持する把持部と、前記把持部を駆動する駆動部と、前記電子部品を検査する検査部と、を備える電子部品検査装置であって、前記駆動部は、上述のアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例の電子部品検査装置によれば、駆動分解能が細かく、且つ高速振動なアクチュエーターまたは電子部品搬送装置を備えることにより、検査対象の電子部品などを正確な位置に高速で搬送することができ、電子部品の検査時間、組立時間の短縮を可能とすることができる。
〔適用例11〕本適用例の送液ポンプは、液体が流れる液体チューブと、前記液体チューブの一部に側方から当接して前記液体チューブを閉塞する閉塞部と、前記閉塞部を保持した状態で移動することによって、前記液体チューブの閉塞位置を移動させる移動部と、前記移動部を駆動する駆動部と、を備える送液ポンプであって、前記駆動部は、上述のアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例の送液ポンプによれば、駆動分解能が高いアクチュエーターを駆動部として用いることにより、わずかな液体量であっても高い精度で送液可能となり、しかも小型の送液ポンプを得ることができる。
〔適用例12〕本適用例の印刷装置は、被記録媒体上に画像を印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを移動させる駆動部と、を備える印刷装置であって、前記駆動部は、上述のアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例の印刷装置によれば、駆動装置部位に駆動分解能が細かく、且つ高速振動のアクチュエーターを備えることで、駆動対象物を目的位置まで正確に高速移動させることができ、印刷装置の動作時間の短縮を可能とすることができ、高い生産性が実現できる。また、高速に駆動させることができることから、長い直線駆動を行わせる印刷媒体を切断するカッターの駆動をスムーズに行うことができる。
〔適用例13〕本適用例の電子時計は、同軸状に歯車が設けられた回動可能な回転円板と、複数の歯車を含んで構成された歯車列と、前記歯車列に接続され、時刻を指し示す指針と、前記回転円板を駆動する駆動部と、前記駆動部に電力を供給する電力供給部と、を備える電子時計であって、前記駆動部は、上述のアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例の電子時計によれば、高い駆動分解能のアクチュエーターを駆動部として備えることにより、正確な水晶チップの基準時間信号に基づいて生成された駆動信号により、高い分解能を備えるアクチュエーターを駆動し正確な時刻表示が可能となる電子時計を得ることができる。
〔適用例14〕本適用例の投影装置は、光学レンズを含み、光源からの光を投影する投影部と、前記光学レンズによる前記光の投影状態を調整する調整部と、前記調整部を駆動する駆動部とを備える投影装置であって、前記駆動部は、上述のアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例の投影装置によれば、光学レンズの焦点を合わせる調整機構に駆動分解能の高いアクチュエーターを用いることにより、極わずかな駆動量によって微妙な焦点合わせを可能にすることができる。
〔適用例15〕本適用例の搬送装置は、対象物を搬送する搬送装置であって、上述のアクチュエーターを有する駆動部を備えることを特徴とする。
本適用例の搬送装置によれば、駆動分解能が高いアクチュエーターを駆動部に備えることにより、指定された搬送目標位置に、正確に搬送対象物を搬送することができる。
〔適用例16〕本適用例のロボットは、回動可能な関節部が設けられた腕部と、前記腕部に設けられたハンド部と、前記腕部が設けられた本体部と、を備えたロボットであって、前記関節部に設けられて前記関節部を屈曲あるいは回転駆動させる駆動部を有しており、前記駆動部は、屈曲振動モードが励振されて振動し、または前記屈曲振動モードと縦振動モードとが同時に励振されて振動する圧電素子と、前記圧電素子に備えられる接触部が当接し、前記接触部の振動によって駆動される被駆動体と、前記圧電素子を保持する第1保持部および第2保持部と、前記第1保持部および前記第2保持部を介して前記圧電素子の前記接触部を前記被駆動体へ付勢する付勢手段を有する基台と、を備え、前記第1保持部は、前記圧電素子の前記振動面に交差する方向に配置され、前記圧電素子の一方に配置される第1支持部および第2支持部と、前記第1支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の他方に配置される第3支持部と、前記第2支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の前記他方に配置される第4支持部と、を有し、前記第2保持部は、前記圧電素子の前記振動面に交差する方向に配置され、前記圧電素子の一方に配置される第5支持部および第6支持部と、前記第5支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の他方に配置される第7支持部と、前記第6支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の前記他方に配置される第8支持部と、を有するアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例のロボットによれば、駆動分解能が細かく、且つ高速振動のアクチュエーターによる駆動であるため、作業対象物を正確に保持し、目的位置まで正確に高速搬送することができ、ロボットの動作時間の短縮を可能とすることができ、高い生産性が実現できる。また複雑な電子機器の組立作業などを可能にすることができる。また、関節部を多く備える、いわゆる多関節型ロボットであっても、電磁式のモーターなどを用いるロボットに比べて小型、軽量にすることができる。また、圧電素子のあおり振動が抑制され、圧電素子の屈曲振動による被駆動体の駆動効率の低下が抑制された、高い駆動効率を備えるアクチュエーターが備えられることで、高効率のロボットを得ることができる。
〔適用例17〕上述の適用例のロボットにおいて、前記圧電素子は、前記屈曲振動モードの屈曲振動方向に直交する方向に沿った長さをL、前記屈曲振動方向に沿った長さをW、とする矩形基板であり、前記圧電素子は、前記第1支持部と前記第3支持部と、が前記圧電素子を支持する第1支持領域と、前記第2支持部と前記第4支持部と、が前記圧電素子を支持する第2支持領域と、前記第5支持部と前記第7支持部と、が前記圧電素子を支持する第3支持領域と、前記第6支持部と前記第8支持部と、が前記圧電素子を支持する第4支持領域と、を有し、前記第1支持領域の第1図心Q1および前記第2支持領域の第2図心Q2と、前記圧電素子の前記長さL方向の一方の端部からの前記長さL方向の距離を距離DL1およびDL2とし、前記第3支持領域の第3図心Q3および前記第4支持領域の第4図心Q4と、前記圧電素子の前記長さL方向の他方の端部からの前記長さL方向の距離を距離DL3およびDL4とした場合の、前記距離DL1,DL2,DL3,DL4が、
0.065L≦DL1≦0.315L
0.065L≦DL2≦0.315L
0.065L≦DL3≦0.315L
0.065L≦DL4≦0.315L
であり、前記圧電素子の前記第1〜第4支持領域が形成される面の投影面積を面積S、前記第1支持領域の面積を面積S1、前記第2支持領域の面積を面積S2、前記第3支持領域の面積を面積S3、前記第4支持領域の面積を面積S4、とした場合、
1/60<S1/S<1/8
1/60<S2/S<1/8
1/60<S3/S<1/8
1/60<S4/S<1/8
であることを特徴とする。
上述の適用例によれば、アクチュエーターに備える圧電素子が確実に保持部へ保持されることにより屈曲振動を確実に被駆動体の駆動力とすることができる。従って、関節部の駆動制御が正確に行われることにより、作業対象物を正確に保持し、目的位置まで正確に高速搬送することができ、ロボットの動作時間の短縮を可能とすることができ、高い生産性が実現できる。また複雑な電子機器の組立作業などを可能にするロボットを得ることができる。
〔適用例18〕上述の適用例のロボットにおいて、前記第1図心Q1および前記第3図心Q3と、前記圧電素子の前記長さW方向の一方の端部からの前記長さW方向の距離を距離DW1およびDW3とし、前記第2図心Q2および前記第4図心Q4と、前記圧電素子の前記長さW方向の他方の端部からの前記長さW方向の距離を距離DW2およびDW4とした場合の、前記距離DW1,DW2,DW3,DW4が、
0.07W≦DW1≦0.43W
0.07W≦DW2≦0.43W
0.07W≦DW3≦0.43W
0.07W≦DW4≦0.43W
であり、且つ前記第1支持領域と前記第2支持領域とは重ならず、前記第3支持領域と前記第4支持領域とは重ならないことを特徴とする。
上述の適用例によれば、圧電素子の意図しないあおり振動の抑制がより確実におこなわれる、高い駆動効率を備えるアクチュエーターを用いることにより、高効率のロボットを得ることができる。
〔適用例19〕本適用例の電子部品搬送装置は、電子部品を把持する把持部と、前記把持部を駆動する駆動部と、を備える電子部品搬送装置であって、前記駆動部は、屈曲振動モードが励振されて振動し、または前記屈曲振動モードと縦振動モードとが同時に励振されて振動する圧電素子と、前記圧電素子に備えられる接触部が当接し、前記接触部の振動によって駆動される被駆動体と、前記圧電素子を保持する第1保持部および第2保持部と、前記第1保持部および前記第2保持部を介して前記圧電素子の前記接触部を前記被駆動体へ付勢する付勢手段を有する基台と、を備え、前記第1保持部は、前記圧電素子の前記振動面に交差する方向に配置され、前記圧電素子の一方に配置される第1支持部および第2支持部と、前記第1支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の他方に配置される第3支持部と、前記第2支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の前記他方に配置される第4支持部と、を有し、前記第2保持部は、前記圧電素子の前記振動面に交差する方向に配置され、前記圧電素子の一方に配置される第5支持部および第6支持部と、前記第5支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の他方に配置される第7支持部と、前記第6支持部に前記圧電素子を介して対向して前記圧電素子の前記他方に配置される第8支持部と、を有するアクチュエーターを備えることを特徴とする。
本適用例の電子部品搬送装置によれば、駆動分解能が細かく、且つ高速振動のアクチュエーターによる駆動であるため、作業対象物を正確に保持し、目的位置まで正確に高速搬送することができ、電子部品搬送装置の動作時間の短縮を可能とすることができ、高い生産性が実現できる。また、圧電素子のあおり振動が抑制され、圧電素子の屈曲振動による被駆動体の駆動効率の低下が抑制された、高い駆動効率を備えるアクチュエーターが備えられることで、高効率の電子部品搬送装置を得ることができる。
〔適用例20〕上述の電子部品搬送装置において、前記圧電素子は、前記屈曲振動モードの屈曲振動方向に直交する方向に沿った長さをL、前記屈曲振動方向に沿った長さをW、とする矩形基板であり、前記圧電素子は、前記第1支持部と前記第3支持部と、が前記圧電素子を支持する第1支持領域と、前記第2支持部と前記第4支持部と、が前記圧電素子を支持する第2支持領域と、前記第5支持部と前記第7支持部と、が前記圧電素子を支持する第3支持領域と、前記第6支持部と前記第8支持部と、が前記圧電素子を支持する第4支持領域と、を有し、前記第1支持領域の第1図心Q1および前記第2支持領域の第2図心Q2と、前記圧電素子の前記長さL方向の一方の端部からの前記長さL方向の距離を距離DL1およびDL2とし、前記第3支持領域の第3図心Q3および前記第4支持領域の第4図心Q4と、前記圧電素子の前記長さL方向の他方の端部からの前記長さL方向の距離を距離DL3およびDL4とした場合の、前記距離DL1,DL2,DL3,DL4が、
0.065L≦DL1≦0.315L
0.065L≦DL2≦0.315L
0.065L≦DL3≦0.315L
0.065L≦DL4≦0.315L
であり、前記圧電素子の前記第1〜第4支持領域が形成される面の投影面積を面積S、前記第1支持領域の面積を面積S1、前記第2支持領域の面積を面積S2、前記第3支持領域の面積を面積S3、前記第4支持領域の面積を面積S4、とした場合、
1/60<S1/S<1/8
1/60<S2/S<1/8
1/60<S3/S<1/8
1/60<S4/S<1/8
であることを特徴とする。
上述の適用例によれば、アクチュエーターに備える圧電素子が確実に保持部へ保持されることにより屈曲振動を確実に被駆動体の駆動力とすることができる。従って、関節部の駆動制御が正確に行われることにより、作業対象物を正確に保持し、目的位置まで正確に高速搬送することができ、電子部品搬送装置の動作時間の短縮を可能とすることができ、高い生産性が実現できる。
〔適用例21〕上述の電子部品搬送装置において、前記第1図心Q1および前記第3図心Q3と、前記圧電素子の前記長さW方向の一方の端部からの前記長さW方向の距離を距離DW1およびDW3とし、前記第2図心Q2および前記第4図心Q4と、前記圧電素子の前記長さW方向の他方の端部からの前記長さW方向の距離を距離DW2およびDW4とした場合の、前記距離DW1,DW2,DW3,DW4が、
0.07W≦DW1≦0.43W
0.07W≦DW2≦0.43W
0.07W≦DW3≦0.43W
0.07W≦DW4≦0.43W
であり、且つ前記第1支持領域と前記第2支持領域とは重ならず、前記第3支持領域と前記第4支持領域とは重ならないアクチュエーターを備えることを特徴とする。
上述の適用例によれば、圧電素子の意図しないあおり振動の抑制がより確実におこなわれる、高い駆動効率を備えるアクチュエーターを用いることにより、高効率の電子部品搬送装置を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のアクチュエーターを示し、(a)は平面図、(b)は(a)に示すA−A´部の断面図、(c)は(a)に示すB−B´部の断面図、(d)は(a)に示すC−C´部の断面図、である。図1(a)に示すように、アクチュエーター100は、保持部材としての保持ケース21と、保持ケース21にねじ23によって装着される押え板22aとによって構成される第1保持部20aと、保持ケース21にねじ23によって装着される押え板22bとによって構成される第2保持部20bと、が構成されている。第1保持部20aおよび第2保持部20bには圧電素子10が保持され、保持ケース21の付勢手段としてのばね60が装着されるばね固定部50aを備える基台50と、被駆動体71もしくは被駆動体72と、を備えている。
被駆動体71は図示するR方向に回転駆動され、被駆動体72は図示するH方向に直線駆動される。本実施形態に係るアクチュエーター100では、被駆動体72で示されるH方向の直線駆動によって説明するが、回転駆動される被駆動体71であっても良い。被駆動体72へは、基台50に備えるばね固定部50aに対してばね60によって保持ケース21の付勢部21aが付勢され、付勢された保持ケース21を介して第1保持部20aおよび第2保持部20bによって保持された圧電素子10が付勢される。圧電素子10には被駆動体72と接触する接触部を有する突起部10aが設けられ、詳細は後述するが、圧電素子10の振動によって突起部10aが楕円軌道を描いて揺動し、この楕円運動によって被駆動体72がH方向に直線駆動される。
図1(c),(d)に示すように、第1保持部20aと第2保持部20bは、保持ケース21と、保持ケース21にねじ23によって固定される押え板22a,22bと、を備えている。保持ケース21の支持面21bと押え板22a,22bとの間に圧電素子10が配置される。第1保持部20aは、圧電素子10と、保持ケース21の支持面21bと、の間に配置される第3支持部33および第4支持部34と、圧電素子10と押え板22aとの間に配置され、圧電素子10を介して第3支持部33と対向配置される第1支持部31と、圧電素子10を介して第4支持部34と対向配置される第2支持部32と、によって圧電素子10を挟持する。第2保持部20bは、圧電素子10と、保持ケース21の支持面21bと、の間に配置される第7支持部43および第8支持部44と、圧電素子10と押え板22bとの間に配置され、圧電素子10を介して第7支持部43と対向配置される第5支持部41と、圧電素子10を介して第8支持部44と対向配置される第6支持部42と、によって圧電素子10を挟持する。
支持部31,32,33,34,41,42,43,44は緩衝材料により形成され、圧電素子10の振動が保持ケース21に漏れることを抑制している。支持部31,32,33,34,41,42,43,44を形成する緩衝材料としては、圧電素子10に励起された振動を保持ケース21に漏れさせない性能として、動的粘弾性(tanδ)が0.05以下であることが好ましい。動的粘弾性(tanδ)とは、材料を引っ張りモードにおいて正弦波ひずみεを与えると、材料に生じる応力σの発生には、入力されたひずみに対して遅れの位相δが生じる。この位相δを用いて材料の動的な粘性を定量化しているのが、動的粘弾性(tanδ)である。動的粘弾性が大きい、すなわち位相δが大きい、ということは与えられたひずみを材料の内部での伝達遅れを生じることとなる。言い換えると、振動の伝達を、より遅くさせ、保持ケース21への振動漏れを抑制することができる。支持部31,32,33,34,41,42,43,44を形成する緩衝材料としては、例えばゴム、エラストマー、ポリイミド、ポリエーテルサルフォンなどが好適に用いられるが、アクチュエーター100の駆動によって熱が生じやすいため、耐熱性に優れるポリイミドがより好適に用いることができる。
緩衝材料によって支持部31,32,33,34,41,42,43,44を構成することが好ましいが、これに限定はされない。例えば、図1に示す支持部32,34,42,44が、図2に示す形態であっても良い。図2は図1(a)に示すB−B´部もしくはC−C´部のその他の形態の断面部を示す断面図である。図2に示すように、第1保持部20aでは、保持ケース21の支持面21bに支持突起21c,21dを形成し、支持突起21cと緩衝材料により形成される第1支持部31とにより圧電素子10を挟持し、支持突起21dと緩衝材料により形成される第2支持部32とにより圧電素子10を挟持し、第2保持部20bでは、保持ケース21の支持面21bに支持突起21e,21fを形成し、支持突起21eと緩衝材料により形成される第5支持部41とにより圧電素子10を挟持し、支持突起21fと緩衝材料により形成される第6支持部42とにより圧電素子10を挟持する構成であってもよい。
図3は圧電素子10の形態を示す、(a)は表平面図、(b)は側面図、(c)は裏平面図、である。図3(a)に示すように圧電素子10は、圧電体10bの一方の面10cには屈曲振動を励振させる電極11,12,13,14が形成されている。更に、他方の面10dには共通電極15が形成されている。圧電体10bとしては、圧電性を有する材料であれば限定されないが、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が好適に用いられる。電極としては、導電金属であれば限定されないが、例えばAl,Au,Ag,W,Cuなどの金属を、スパッタリング法、蒸着法などの方法により電極に形成する。また、突起部10aは、被駆動体72と接触し、その摩擦によって被駆動体72を駆動させることから被駆動体72との摩擦係数は高く、且つ耐摩耗性の優れた材料により突起部10aを形成し、図示しない方法で固着することで形成される。もしくは、被駆動体72との摩擦係数は高く、且つ耐摩耗性の優れた材料を圧電体10bと一体的に形成した突起部10aの表面にコーティングすることで形成することができる。突起部10aに用いる耐摩耗性に優れた材料として、セラミックス、例えばアルミナなど、が好適に用いられる。
図4は圧電素子10の動作を模式図的に説明する平面図である。図4(a)に示すように、電極11,13と図3に示す共通電極15との間に電荷を掛け、電極12,14には電荷を掛けないことにより、圧電素子10における電極11,13に対応する部位で図示矢印の縦振動が励起される。しかし、電極12,14には電荷を掛けられていないため縦振動は励起されず、その結果、電極11,13による縦振動と、電極12,14の無振動によって圧電素子10は屈曲振動が生じ圧電素子10Aのように振動し、突起部10aが図示する楕円軌道SRの矢印方向に揺動する。突起部10aの楕円軌道によるSR方向の揺動が、当接される被駆動体72を図示HR方向に駆動させる。
図4(b)により説明する圧電素子10の動作は、上述の図4(a)により説明したHR方向への被駆動体72の駆動方向が、逆のHL方向に駆動される状態である。図4(b)に示すように、電極12,14と図3に示す共通電極15との間に電荷を掛け、電極11,13には電荷を掛けないことにより、圧電素子10における電極12,14に対応する部位で図示矢印の縦振動が励起される。しかし、電極11,13には電荷を掛けられていないため縦振動は励起されず、その結果、電極12,14による縦振動と、電極11,13の無振動によって圧電素子10は屈曲振動が生じ圧電素子10Bのように振動し、突起部10aが図示する楕円軌道SLの矢印方向に揺動する。突起部10aの楕円軌道によるSL方向の揺動が、当接される被駆動体72を図示HL方向に駆動させる。
このように電極11,12,13,14への電荷の付加を切り換えることにより、圧電素子10の屈曲振動の方向を変え、被駆動体72の駆動方向を容易に切り換えることができる。上述の圧電素子10の屈曲振動および縦振動の2つの振動モードにおける振動の節について図4(c)を用いて説明する。図4(c)は圧電素子10の振動モードの概念を示す図である。図4(c)に示すように、圧電素子10は、図4(a),(b)を用いて説明した振動状態の屈曲振動モードによって圧電素子10A,10Bに示す振動状態となる。この時、振動停止状態の圧電素子10の被駆動体72への付勢方向に沿った、本実施形態に係る圧電素子10では中心線となる線Mは、振動状態における圧電素子10Aでは線MA,圧電素子10Bでは線MBのように屈曲した軌跡となる。この屈曲振動に対応する線MAおよび線MBと、縦振動モードに対応する線Mと、が互いに交差する位置が、振動の節P1,P2,P3(以下、節P1,P2,P3という)と呼ばれている。
図4(a),(b)により、突起部10aの楕円軌道SR,SLによって被駆動体72を駆動させることは説明したが、例えば図4(a)に示すように被駆動体72をHR方向に駆動させる場合における突起部10aと被駆動体72との接触部での詳細を図4(d)に示す。図4(d)に示すように、圧電素子10の突起部10aにおける被駆動体72との接触部においては、突起部10aの振動による楕円軌道SRによって被駆動体72に対して接触部の摩擦によって駆動力Fを生じる。この駆動力Fによって被駆動体72がHR方向に駆動される。この時、接触部には突起部10aに対して駆動力Fの反力としてF´が働き、突起部10aをHR方向とは逆の方向に移動させようとするが、この反力F´による突起部10a、すなわち圧電素子10の移動を規制、抑制することにより駆動力Fが被駆動体72へ伝えられ、圧電素子10の屈曲振動を効率よく被駆動体72の駆動に変換させることができる。
上述した節P1,P2,P3では、圧電素子10の振動において振動面内での移動が少ない位置、すなわち振幅の小さい位置となることから、節P1,P2,P3のいずれか近傍に支持部を配置することが好ましく、突起部10aの近傍にある振動面内での振幅の小さい位置である節P1の近傍に支持部を配置することにより圧電素子10の屈曲振動を阻害することなく駆動させながら、突起部10aへの反力F´による移動を突起部10a近傍領域で抑制することができる。また、突起部10aに最も遠い位置にあり、振動面内での振幅の小さい位置である節P2の近傍に支持部を配置することにより、圧電素子10の屈曲振動を阻害することなく駆動させながら、節P1の近傍に配置される支持部を中心として、反力F´によって圧電素子10に生じるモーメントを効果的に抑制することができ、突起部10aの反力F´による移動を規制することができる。すなわち、線Mに沿って圧電素子10の外形部に最も近い節P1,P2の近傍領域に支持部を配置することが好ましい。
なお、図4(b)に示すように被駆動体72がHL方向に駆動される場合においても、節P1の近傍に配置される支持部によって支持し、節P2の近傍に配置される支持部によって支持することにより、上述の図4(d)での説明と同じように、突起部10aの近傍にある振動面内での振幅の小さい位置である節P1に配置した支持部により保持ケース21に圧電素子10を保持することにより、圧電素子10の屈曲振動を阻害することなく駆動させながら、突起部10aへの被駆動体72からの反力による移動を近傍領域で抑制することができる。また、突起部10aに最も遠い位置にあり、振動面内での振幅の小さい位置である節P2の近傍に配置される支持部により保持ケース21に圧電素子10を保持することにより、圧電素子10の屈曲振動を阻害することなく駆動させながら、節P1の近傍に配置される支持部を中心として、被駆動体72からの反力によって圧電素子10に生じるモーメントを効果的に抑制することができ、突起部10aの反力F´による移動を規制することができる。
圧電素子10の振動の理論的な形態は、図4に示すような振動面内での屈曲振動が励振される状態である。しかし、実際の振動の形態としては、図5に示すように振動面外の振動も起こしている。図5(a)は図4(c)に示す圧電素子10の中心線となる線Mにおける断面を示す断面図である。圧電素子10に図4に示す屈曲振動を励振させると、同時に図5(a)に示すような振動面に交差する方向の振動状態10C,10D、いわゆる「あおり振動」が発生する。このあおり振動10C,10Dに対して図5(b),(c)に示すように、圧電素子10の中心線の線Mに沿った支持点G0によって、圧電素子10が支持されることにより、線Mに交差する方向の断面方向においてもあおり振動10C,10Dが発生する。
このあおり振動10C,10Dに対して、本実施形態に係るアクチュエーター100では、図1(c),(d)に示すように支持部31,32,33,34,41,42,43,44を形成することで上述のあおり振動を抑制することができる。すなわち、図5(b),(c)に示す支持点G1,G2によってあおり振動10C,10Dの挙動を抑制することができる。
上述のあおり振動を抑制し、且つ圧電素子10の屈曲振動によって描かれる突起部10aの楕円軌道をより大きくするための支持部31,32,33,34,41,42,43,44の態様について説明する。図6は支持部31,32,33,34,41,42,43,44の圧電素子10との接地部、いわゆる支持領域の形状の形態を示す平面概念図である。図6(a)に示すように、圧電素子10の振動面における第1支持領域F1は、第1支持部31および第3支持部33により圧電素子10が支持される領域を示し、第2支持領域F2は、第2支持部32および第4支持部34により圧電素子10が支持される領域を示し、圧電素子10の振動面における第3支持領域F3は、第5支持部41および第7支持部43により圧電素子10が支持される領域を示し、圧電素子10の振動面における第4支持領域F4は、第6支持部42および第8支持部44により圧電素子10が支持される領域を示す。支持領域F1,F2,F3,F4は、本実施形態においては円形に形成され、その円形状の図心が第1支持領域F1はQ1、第2支持領域F2はQ2、第3支持領域F3はQ3、第4支持領域F4はQ4である。なお、支持領域F1,F2,F3,F4は円形状に限定されず、例えば楕円形状、あるいは矩形形状であってもよく、また、支持領域F1,F2,F3,F4の各々が異なる形状であってもよい。
圧電素子10は屈曲振動方向に略直交する方向において、突起部10aを除く長さL、屈曲振動方向の幅W、に形成されている。このように形成された圧電素子10のL方向の突起部10a側の端部から節P1はLP1の距離に、節P2は他方の端部からLP2の距離に存在している。節P1の位置LP1および節P2の位置LP2は、理論シミュレーションから、
LP1≒0.13L
LP2≒0.13L
であることが得られた。
また、図6(b)に示す、支持領域F1,F2,F3,F4のL方向の配置は、次の範囲に形成されることが好ましい。まず第1支持領域F1を例に説明する。第1支持領域F1の外形と、圧電素子10のL方向の突起部10a側の端部との距離δ21は、
0≦δ21≦LP1
として、圧電素子10の外形からはみ出さず、尚且つ節P1の位置を越えないように配置される。また、圧電素子10のL方向の突起部10a側の端部に最も離れた第1支持領域F1の外形までの距離LF1は、
LP1≦LF1<L/2
となるように配置される。すなわち、第1支持領域F1の領域内に節P1のL方向位置であるLP1が含まれるように配置されている。
次に、第2支持領域F2の場合にも同様に、第2支持領域F2の外形と、圧電素子10のL方向の突起部10a側の端部との距離δ22は、
0≦δ22≦LP1
として、圧電素子10の外形からはみ出さず、尚且つ節P1の位置を越えないように配置される。また、圧電素子10のL方向の突起部10a側の端部に最も離れた第2支持領域F2の外形までの距離LF2は、
LP1≦LF2<L/2
となるように配置される。すなわち、第2支持領域F2の領域内に節P1のL方向位置であるLP1が含まれるように配置されている。
また、第3支持領域F3の場合には節P2との関係において、第3支持領域F3の外形と、圧電素子10のL方向の突起部10a側と反対側の端部との距離δ23は、
0≦δ23≦LP2
として、圧電素子10の外形からはみ出さず、尚且つ節P2の位置を越えないように配置される。また、圧電素子10のL方向の突起部10aと反対側の端部に最も離れた第3支持領域F3の外形までの距離LF3は、
LP2≦LF3<L/2
となるように配置される。すなわち、第3支持領域F3の領域内に節P2のL方向位置であるLP2が含まれるように配置されている。
そして、第4支持領域F4の場合には節P2との関係において、第4支持領域F4の外形と、圧電素子10のL方向の突起部10a側と反対側の端部との距離δ24は、
0≦δ24≦LP2
として、圧電素子10の外形からはみ出さず、尚且つ節P2の位置を越えないように配置される。また、圧電素子10のL方向の突起部10aと反対側の端部に最も離れた第4支持領域F4の外形までの距離LF4は、
LP2≦LF4<L/2
となるように配置される。すなわち、第4支持領域F4の領域内に節P2のL方向位置であるLP2が含まれるように配置されている。
このように、支持領域F1,F2,F3,F4の圧電素子10のL方向の配置が設定される。上述の、
LP1≒0.13L
LP2≒0.13L
の条件から、図6(a)に示す支持領域F1,F2,F3,F4の図心Q1,Q2,Q3,Q4の圧電素子10のL方向端部からの位置DL1,DL2,DL3,DL4は、
0.065L≦DL1≦0.315L
0.065L≦DL2≦0.315L
0.065L≦DL3≦0.315L
0.065L≦DL4≦0.315L
となるように設定することが好ましい。なお好ましくは、
DL1≒0.13L
DL2≒0.13L
DL3≒0.13L
DL4≒0.13L
として、支持領域F1,F2,F3,F4の図心Q1,Q2,Q3,Q4位置を節P1,P2の位置に近づける。
また、図6(b)に示す、支持領域F1,F2,F3,F4のW方向の配置は、次の範囲に形成されることが好ましい。まず第1支持領域F1を例に説明する。第1支持領域F1の外形と、圧電素子10のW方向の一方の端部との距離δ11は、
δ11≧0
として、圧電素子10の外形からはみ出さずに配置される。また、圧電素子10のW方向の一方の端部に最も離れた第1支持領域F1の外形までの距離WF1は、
WF1<W/2
となるように配置される。すなわち、第1支持領域F1の領域内にW方向位置で節P1が含まれないように配置されている。
次に、第2支持領域F2の場合にも同様に、第2支持領域F2の外形と、圧電素子10のW方向の他方の端部との距離δ12は、
δ12≧0
として、圧電素子10の外形からはみ出さずに配置される。また、圧電素子10のW方向の他方の端部に最も離れた第2支持領域F2の外形までの距離WF2は、
WF2<W/2
となるように配置される。すなわち、第2支持領域F2の領域内にW方向位置で節P1が含まれないように配置されている。
また、第3支持領域F3の場合には、第3支持領域F3の外形と、圧電素子10のW方向の一方の端部との距離δ13は、
δ13≧0
として、圧電素子10の外形からはみ出さずに配置される。また、圧電素子10のW方向の一方の端部に最も離れた第3支持領域F3の外形までの距離WF3は、
WF3<W/2
となるように配置される。すなわち、第3支持領域F3の領域内にW方向位置で節P2が含まれないように配置されている。
そして、第4支持領域F4の場合には、第4支持領域F4の外形と、圧電素子10のW方向の他方の端部との距離δ14は、
δ14≧0
として、圧電素子10の外形からはみ出さずに配置される。また、圧電素子10のW方向の他方の端部に最も離れた第4支持領域F4の外形までの距離WF4は、
WF4<W/2
となるように配置される。すなわち、第4支持領域F4の領域内にW方向位置で節P2が含まれないように配置されている。
また、第1支持領域F1の領域面積を面積S1、第2支持領域F2の領域面積を面積S2、第3支持領域F3の領域面積を面積S3、第4支持領域F4の領域面積を面積S4、圧電素子10の振動面の投影面積をS(S=L×W)、とした場合、
1/60≦S1/S≦1/8
1/60≦S2/S≦1/8
1/60≦S3/S≦1/8
1/60≦S4/S≦1/8
とすることが好ましい。支持領域の領域面積S1,S2,S3,S4がS/60より狭くなると、圧電素子10を保持する保持力が小さくなり意図しない振動、例えばあおり振動の抑制が困難となる。また支持領域の領域面積S1,S2,S3,S4がS/8より広くなると、圧電素子10の保持力が強くなり、突起部10aが描く楕円軌道が小さくなり、アクチュエーター100の出力および効率などが低下し、アクチュエーター100の性能低下となってしまう。
支持領域の領域面積S1,S2,S3,S4を確保し、圧電素子10のW方向の支持領域F1,F2,F3,F4の領域を上述した条件を満足させるために、図6(b)に示す支持領域F1,F2,F3,F4の図心Q1,Q2,Q3,Q4の圧電素子10の外形からの位置DW1,DW2,DW3,DW4は、
0.07W≦DW1≦0.43W
0.07W≦DW2≦0.43W
0.07W≦DW3≦0.43W
0.07W≦DW4≦0.43W
であることが好ましい。
図7は、支持部31,32,33,34,41,42,43,44のその他の形態を示す断面図である。図7(a)に示す断面図は、図1(a)に示すB−B´部、もしくはC−C´部における断面を示している。図7に示すように、第1支持部31および第2支持部32は第1支持部材30aに形成され一体化されている。同様に、第3支持部33および第4支持部34は第2支持部材30bに形成され、第5支持部41および第6支持部42は第3支持部材40aに形成され、第7支持部43および第8支持部44は第4支持部材40bに形成され、それぞれ一体化されている。このように形成することで、部品点数を削減することができ、アクチュエーターのコストダウンを可能とすることができる。
なお、本実施形態に係るアクチュエーター100は、図8に示す圧電素子200を用いても良い。図8(a)は電極配置を示す表平面図、側面図、裏平面図を示し、図8(b),(c)は圧電素子200の屈曲動作を説明する平面概念図、である。圧電素子200は圧電素子10に対して電極の配置が異なる形態であり、圧電素子10と同じ構成には同じ符号を付し、説明は省略する。
図8(a)に示すように、圧電素子200は、圧電体10bの一方の面10cには屈曲振動を励振させる電極11,12,13,14と、縦振動を励振させる電極16と、が形成されている。更に、他方の面10dには共通電極15が形成されている。そして、このように形成された圧電素子200は、図8(b),(c)に示すように動作する。図8(b),(c)は圧電素子200の動作を模式図的に説明する平面図である。図8(b)に示すように、電極11,13,16と図8(a)に示す共通電極15との間に電荷を掛け、電極12,14には電荷を掛けないことにより、圧電素子200における電極11,13,16に対応する部位で図示矢印の縦振動が励起される。しかし、電極12,14には電荷を掛けられていないため縦振動は励起されず、その結果、電極11,13による縦振動と、電極12,14の無振動によって圧電素子200は屈曲振動が生じ圧電素子200Aのように振動する。この屈曲振動と電極16による圧電素子200の縦振動が同時に生じ、突起部10aが図示する楕円軌道SRの矢印方向に揺動する。突起部10aの楕円軌道によるSR方向の揺動が、当接される被駆動体72を図示HRに駆動させる。
図8(c)により説明する圧電素子200の動作は、上述の図8(b)により説明したHR方向への被駆動体72の駆動方向が、逆のHL方向に駆動される状態である。図8(c)に示すように、電極12,14,16と図8(a)に示す共通電極15との間に電荷を掛け、電極11,13には電荷を掛けないことにより、圧電素子200における電極12,14,16に対応する部位で図示矢印の縦振動が励起される。しかし、電極11,13には電荷を掛けられていないため縦振動は励起されず、その結果、電極12,14による縦振動と、電極11,13の無振動によって圧電素子200は屈曲振動が生じ圧電素子200Bのように振動する。この屈曲振動と電極16による圧電素子200の縦振動が同時に生じ、突起部10aが図示する楕円軌道SLの矢印方向に揺動する。突起部10aの楕円軌道によるSL方向の揺動が、当接される被駆動体72を図示HLに駆動させる。
(第2実施形態)
図9に第2実施形態に係るアクチュエーターの支持部である、図1(a)に指示するB−B´部、およびC−C´部の概略断面図を示す。なお、第2実施形態に係るアクチュエーターは第1実施形態に係るアクチュエーター100に対して支持部31,32,33,34,41,42,43,44に弾性部材を含む点が異なり、その他の構成は同じであるため、第1実施形態に係るアクチュエーター100と同じ構成には同じ符号を付し、説明は省略する。
図9(a)に示すアクチュエーター300は、第1支持部31、第2支持部32、第5支持部41および第6支持部42に弾性部材としての皿ばね91a,91bと、緩衝部材81a,81bとを備えている。押え板22a,22bと緩衝部材81a,81bとの間に配置されて撓ませられた皿ばね91a,91bのばね力によって、圧電素子10は緩衝部材81a,81bを介して保持ケース21に保持、固定される。このように支持部に皿ばね91a,91bのような弾性部材を配置することによって、弾性部材のばね弾性が安定した圧電素子10の保持力を支持部に持たせることができるので、圧電素子10の屈曲振動を妨げたり、振動の漏れを生じたりすることを抑制することができ、安定した駆動力を発生するアクチュエーターを得ることができる。
支持部に弾性部材を備える形態は、上述した図9(a)に示す皿ばね91には限定されず、例えば図9(b)に示すようにコイルばね92a,92bを備えるアクチュエーター310であっても良い。また、図9(c)に示すように第1支持部31、第2支持部32、第5支持部41および第6支持部42に弾性部材としての皿ばね91a,91bを備え、更に第3支持部33、第4支持部34、第7支持部43および第8支持部44にも皿ばね93a,93bを備えるアクチュエーター320であっても良い。このように支持部31,32,33,34,41,42,43,44の双方に皿ばね91a,91b,93a,93bを配置することで、圧電素子10への緩衝部材81a,81b,83a,83bを介して付加される押圧力をバランスよく配置させることができる。
上述では、弾性部材として皿ばね91a,91b,93a,93b、コイルばね92a,92bを例示したが、例えば図9(d)に示すように支持部31,32,33,34,41,42,43,44は共に緩衝材料により形成され、押え板24a,24bと保持ケース21の支持面21bとの間で、支持部31,32,33,34,41,42,43,44によって圧電素子10を挟持した際に、押え板24a,24bを弾性部材として図示する押え板24c,24d形状のように撓ませ、撓みの応力によって圧電素子10を保持する構成としたアクチュエーター330であっても良い。このように構成することで、弾性部材としての皿ばね91a,91b,93a,93bやコイルばね92a,92bを必要としないため、低コストのアクチュエーター330を得ることができる。
第1実施形態に係るアクチュエーター100は、圧電素子10を振動面に交差する方向に挟持するように緩衝材料を含む支持部31,32,33,34,41,42,43,44を備えることにより、圧電素子10の振動が保持ケース21へ漏れることを抑制することができる。これによって、圧電素子10の振動が無駄なく突起部10aの揺動を発生させ、突起部10aに当接される被駆動体71,72の回転もしくは直線運動へ変換することができる。すなわち、駆動効率の高いアクチュエーターを得ることができる。更に、支持部31,32,33,34,41,42,43,44を圧電素子10の振動の節の近傍領域に設けることにより、圧電素子10の振動の節を含む領域が圧電素子10の振動により移動の少ない領域、言い換えると振幅の小さい領域であることから、保持ケース21への振動漏れを抑制することができる。また、支持部31,32,33,34,41,42,43,44は、振動の節の内の外側の2箇所の節の近傍に支持領域を形成して配置されことにより、被駆動体からの圧電素子10の突起部10aへの反力に対して、容易に圧電素子10を移動させないようにすることで、なお一層、圧電素子10の振動による突起部10aの揺動を、突起部10aに当接される被駆動体71,72に確実に伝達し、回転もしくは直線運動へ変換することができる。
さらに、第1支持部31と第3支持部33により形成される第1支持領域F1と第2支持部32と第4支持部34により形成される第2支持領域F2とが、圧電素子10の節を含む中心線の両側に形成されることにより、圧電素子10の本来の屈曲振動に対して意図しないで発生する振動、すなわちあおり振動を抑制することができる。また、第5支持部41と第7支持部43により形成される第3支持領域F3と第6支持部42と第8支持部44により形成される第4支持領域F4とも、圧電素子10の節を含む中心線の両側に形成されることにより、なお一層、あおり振動を抑制することができる。
また、アクチュエーター300,310,320,330のように支持部31,32,33,34,41,42,43,44に弾性部材としての皿ばね91a,91b,93a,93b、コイルばね92a,92b、もしくは押え板24a,24bの撓み弾性によって保持ケース21内で緩衝材料により形成される支持部31,32,33,34,41,42,43,44が押圧され、その反発力に対する保持ケース21と圧電素子10との間の摩擦力によって、振動による相対的な位置ずれを抑制することができる。なお緩衝材料により形成される支持部31,32,33,34,41,42,43,44による圧電素子10の支持領域を接着剤などにより固着しても良い。接着剤としては、例えばセメダインY611(商標)などのアクリル系接着剤が適応可能である。この接着剤は高温に優れており、接着剤樹脂の弾性によって良好な伸縮運動を確保することができる。
(第3実施形態)
図10は、第1実施形態に係るアクチュエーター100(図1参照)を備えたロボットハンド1000を示す外観図である。図10に示すロボットハンド1000に備えるアクチュエーター100は、第1実施形態に係るアクチュエーター100であって、回転駆動される被駆動体71を備えている(図1参照)形態をとり、後述するロボットハンド1000の関節部の回転駆動モーターとして用いられる。ロボットハンド1000は、基部1100に接続された指部1200を備えている。基部1100と指部1200との接続部1300と、指部1200の関節部1400とには、回転駆動モーターとしてのアクチュエーター100が組み込まれている。またロボットハンド1000には制御部1500を備え、制御部1500によってアクチュエーター100の駆動により接続部1300および関節部1400を回動させ指部1200を人間の指のように所望の形態に変形させることができる。なお、本実施形態に係るロボットハンド1000は、第2実施形態に係るアクチュエーター300を備えることもできる。
(第4実施形態)
図11は、第3実施形態に係るロボットハンド1000備えるロボット2000の構成を示す外観図である。ロボット2000は、本体部2100、アーム部2200およびロボットハンド1000を備え、図示するロボット2000は、いわゆる多関節型ロボットに分類される。本体部2100は、例えば床、壁、天井、移動可能な台車の上などに固定される。アーム部2200は、本体部2100に対して可動に設けられており、本体部2100にはアーム部2200を回転させるための動力を発生させる図示しないアクチュエーターや、アクチュエーターを制御する制御部等が内蔵されている。
アーム部2200は、第1フレーム2210、第2フレーム2220、第3フレーム2230、第4フレーム2240および第5フレーム2250から構成されている。第1フレーム2210は、回転屈折軸を介して、本体部2100に回転可能または屈折可能に接続されている。第2フレーム2220は、回転屈折軸を介して、第1フレーム2210および第3フレーム2230に接続されている。第3フレーム2230は、回転屈折軸を介して、第2フレーム2220および第4フレーム2240に接続されている。第4フレーム2240は、回転屈折軸を介して、第3フレーム2230および第5フレーム2250に接続されている。第5フレーム2250は、回転屈折軸を介して、第4フレーム2240に接続されている。アーム部2200は、制御部の制御によって、各フレーム2210〜2250が各回転屈折軸を中心に複合的に回転または屈折し動く。
アーム部2200の第5フレーム2250のうち第4フレーム2240が設けられた他方には、ロボットハンド接続部2300が接続されており、ロボットハンド接続部2300にロボットハンド1000が取り付けられている。ロボットハンド接続部2300にはロボットハンド1000に回転動作を与えるアクチュエーター100が内蔵され、ロボットハンド1000は対象物を把持することができる。小型、軽量のロボットハンド1000を用いることによって、汎用性が高く、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等が可能なロボットを提供することができる。
(第5実施形態)
図12は、第1実施形態に係るアクチュエーター100(図1参照)を備える、直交ロボットの一実施形態としての電子部品搬送装置としての電子部品搬送ロボットを備える電子部品検査装置を示す外観図である。図12に示す電子部品検査装置5000(以下、検査装置5000という)は、電子部品の電気的特性を検査する機能を有する部分3000(以下、検査部3000という)と、電子部品を所定の位置間を搬送する電子部品搬送装置である電子部品搬送ロボットとしての搬送装置部分4000(以下、搬送装置部4000という)と、を備える装置である。
図12に示す検査装置5000は、直方体状の装置基台3010を備えている。装置基台3010の長手方向をY方向とし、水平面においてY方向と直交する方向をX方向とする。そして、鉛直方向をZ(−)方向とする。
装置基台3010上において図中左側には給材装置3020が設置されている。給材装置3020の上面には、Y方向に延びる一対の案内レール3031a,3031bが給材装置3020のY方向全幅にわたり凸設されている。一対の案内レール3031a,3031bの上側には直動機構を備えたステージ3040が取付けられている。そのステージ3040の直動機構は、例えば案内レール3031a,3031bに沿ってY方向に延びるリニアモーターを備えた直動機構である。そして、この直動機構に所定のステップ数に相対する駆動信号がリニアモーターに入力されると、リニアモーターが前進または後退して、ステージ3040が同ステップ数に相当する分だけ、Y方向に沿って往動または復動する。ステージ3040のZ方向を向く面は載置面3040aであり、載置面3040aには電子部品EDが載置される。ステージ3040には吸引式の基板チャック機構が設置されている。そして、基板チャック機構が電子部品EDを載置面3040aに固定するようになっている。
装置基台3010において給材装置3020のY方向側には撮像部としての第2撮像部3052が設置されている。第2撮像部3052は、受光する光を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Devices)素子等を搭載した電気回路基板、ズーム機構を備えた対物レンズ、落射照明装置、自動焦点合わせ機構を備えている。これにより、第2撮像部3052と対向する場所に電子部品EDが位置するとき、第2撮像部3052は電子部品EDを撮影することができる。そして、第2撮像部3052は電子部品EDに光を照射してピント合わせをした後撮影することにより、焦点の合った画像を撮影することができる。
装置基台3010において第2撮像部3052のY方向側には検査台3060が設置されている。検査台3060は電子部品EDを検査するときに電気信号を送受信するための治具である。
装置基台3010上において検査台3060のY方向側には除材装置3070が設置されている。除材装置3070の上面にはY方向に延びる一対の案内レール3032a,3032bが全幅にわたり凸設されている。一対の案内レール3032a,3032bの上側には直動機構を備えたステージ3080が取付けられている。ステージ3080の直動機構は、給材装置3020が備える直動機構と同様の機構を用いることができる。そして、ステージ3080は案内レール3032a,3032bに沿って往動または復動する。ステージ3080のZ方向を向く面は載置面3080aであり、載置面3080aには電子部品EDが載置される。
装置基台3010のX(−)方向には略直方体状の支持台4010が設置されている。装置基台3010に比べて支持台4010はZ(+)方向に高い形状となっている。支持台4010においてX方向を向く面にはY方向に延びる一対の被駆動体としての駆動レール4021a,4021bが支持台4010のY方向全幅にわたり凸設されている。駆動レール4021a,4021bのX方向側には、一対の駆動レール4021a,4021bに沿って移動する直動機構を備えたYステージ4030が取付けられている。駆動レール4021aもしくは駆動レール4021bの少なくともどちらか一方が第1実施形態に係るアクチュエーター100の被駆動体72(図1参照)であり、Yステージ4030の直動機構には駆動レール4021aおよび駆動レール4021bのどちらか一方もしくは両方に当接される圧電素子10が備えられ、Yステージ4030に備える圧電素子10を振動させることにより、固定された駆動レール4021a,4021bに対して相対的にYステージ4030は駆動レール4021a,4021bに沿って往動または復動する。
Yステージ4030においてX方向を向く面にはX方向に延在する角柱状の腕部4040が設置されている。腕部4040において−Y方向を向く面にはX方向に延びる一対の駆動レール4022a,4022bが腕部4040のX方向全幅にわたり凸設されている。一対の駆動レール4022a,4022bの−Y方向側には駆動レール4022a,4022bに沿って移動する直動機構を備えたXステージ4050が取付けられている。駆動レール4022aもしくは駆動レール4022bの少なくともどちらか一方が第1実施形態に係るアクチュエーター100の被駆動体72(図1参照)であり、Xステージ4050の直動機構には駆動レール4022aおよび駆動レール4022bのどちらか一方もしくは両方に当接される圧電素子10が備えられ、Xステージ4050に備える圧電素子10を振動させることにより、固定された駆動レール4022a,4022bに対して相対的にXステージ4050は駆動レール4022a,4022bに沿って往動または復動する。
Xステージ4050には撮像部としての第1撮像部3051およびZ移動装置4060が設置されている。第1撮像部3051は第2撮像部3052と同様な構造と機能を備えている。そして、第1撮像部3051および第2撮像部3052にて撮像部を構成している。Z移動装置4060は内部に直動機構を備え、直動機構はZステージを昇降させる。そして、Zステージには回転装置4070が接続されている。そして、Z移動装置4060は回転装置4070をZ方向に昇降させることができる。Z移動装置4060の直動機構は、駆動レール4021a,4021bに沿って駆動されるYステージ4030、駆動レール4022a,4022bに沿って駆動されるXステージ4050、と同様に第1実施形態に係るアクチュエーター100もしくは第2実施形態に係るアクチュエーター300を備えることができる。
回転装置4070は回転軸4070aを備え、回転軸4070aには把持部3090が接続されている。これにより、回転装置4070はZ方向を軸にして把持部3090を回転させることができる。回転装置4070は第1実施形態に係るアクチュエーター100において被駆動体71(図1参照)を用いた回転駆動機構を本実施形態では用いられ、減速装置と組み合わせて構成され、回転軸4070aを所定の角度に回動させる。なお、回転機構としてはステップモーターまたはサーボモーターを用いることもできる。サーボモーターの場合には、モーターの種類は特に限定されず、ACモーター、DCモーター、コアレスモーター、超音波モーター等を用いることができる。上述の、Yステージ4030、Xステージ4050、Z移動装置4060、回転装置4070等により可動部4080が構成されている。
装置基台3010のX方向側には制御部としての制御装置3100が設置されている。制御装置3100は検査装置5000の動作を制御する機能を備えている。更に、制御装置3100は電子部品EDを検査する機能を備えている。各制御装置3100は入力装置3100aおよび出力装置3100bを備えている。入力装置3100aはキーボートや入力コネクター等であり、信号やデータの他に操作者の指示を入力する装置である。出力装置3100bは表示装置や外部装置に出力する出力コネクター等であり、信号やデータを他装置へ出力する。他にも検査装置5000の状況を操作者に伝達する装置である。
上述の構成において、検査部3000の主な構成としては装置基台3010、給材装置3020、ステージ3040、第1撮像部3051、第2撮像部3052、検査台3060、除材装置3070、ステージ3080、などであり、検査対象となる電子部品EDの除給材、画像処理、電気的特性計測、などが行われる。また搬送装置部4000の主な構成としては支持台4010、駆動レール4021a,b、Yステージ4030、腕部4040、駆動レール4022a,b、Xステージ4050、Z移動装置4060、回転装置4070、などであり、電子部品EDを給材装置3020から検査台3060、そして除材装置3070までを搬送する。
電子部品EDを検査する検査装置5000は、一般的にクリーン環境、すなわち防塵環境下に設置される。また、図示しないが、検査台3060には電子部品EDの電気的特性を計測するための複数のプローブが配置され、電子部品EDのプローブが接触すべき位置が全てのプローブに対して正確に配置されるように、給材装置3020から検査台3060に電子部品EDが搬送されなければならない。電子部品EDの位置は、検査台3060に載置される前に、第1撮像部3051、第2撮像部3052によって得られる電子部品EDの画像より、画像処理されて検査台3060に備えるプローブ位置に搬送装置部4000によって正確に位置合わせされ、検査台3060に載置される。
更に、電子部品EDはより小型で精密且つ多機能化が進行していることから、いわゆる全数検査が一般的となっている。従って、電子部品EDの一連の検査時間は、検査すべき電子部品EDの数量が極めて大量であることから、より短時間の検査処理を可能とすることが求められ、特に検査時間に占める電子部品EDの搬送時間の短縮が求められていた。そこで、第1実施形態に係るアクチュエーター100もしくは第2実施形態に係るアクチュエーター300を備えたYステージ4030、Xステージ4050、更にはZ移動装置4060を検査装置5000に備えることにより、所定の移動速度までの加速時間、更には停止までの減速時間、を短く制御することが可能となり、検査時間の短い電子部品検査装置を得ることができる。なお、電子部品EDとして、例えば半導体、LCDなどの表示デバイス、水晶デバイス、各種センサーデバイス、インクジェットヘッド、各種MEMSデバイスなどを検査する電子部品検査装置として適用できる。
(第6実施形態)
図13は、第1実施形態に係るアクチュエーター100を組み込んで構成された第6実施形態に係る送液ポンプ6000を例示した説明図である。図13(a)には送液ポンプ6000を上面視した平面図が示されており、図13(b)には送液ポンプ6000を側面視した断面図が示されている。図13に示すように送液ポンプ6000は、矩形形状のケース6100内に円板形状のローター6200(移動部)が回転可能に設けられており、ケース6100とローター6200との間には、薬液などの液体が内部を流通するチューブ6300(液体チューブ)が挟持されている。また、チューブ6300の一部は、ローター6200に設けられたボール6400(閉塞部)によって押しつぶされて閉塞した状態となっている。このためローター6200が回転すると、ボール6400がチューブ6300を押しつぶす位置が移動するので、チューブ6300の内部に存在している液体が送液される。そして、アクチュエーター100の突起部10aをローター6200の側面に押し付けた状態で設けることにより、ローター6200を駆動する駆動部として用いることができる。このように圧電素子10の突起部10aの微小な楕円軌道を描く動作によって被駆動部を駆動するアクチュエーター100を駆動部として用いることにより、わずかな液体量であっても高い精度で送液可能となり、しかも小型な送液ポンプ6000を実現することができる。なお、本実施形態に係る送液ポンプ6000は、第2実施形態に係るアクチュエーター300を備えることもできる。
(第7実施形態)
図14は第1実施形態に係るアクチュエーター100を組み込んだ第7実施形態に係るプリンターを示し、(a)はプリンターを示す斜視図、(b)は(a)に示すプリンターが備えるカッティングヘッドを示す平面図、である。
図14(a)に示すように、プリンター7000は、被記録媒体としての印刷用紙7020へ印刷する印刷部7010と、印刷部7010との間に印刷用紙7020を保持し且つガイドするステージでもあるプラテン7030と、印刷された印刷用紙7020を切断するためのカッティングヘッド7050と、プリンター7000を制御する制御部7080と、を備えている。この場合、カッティングヘッド7050は、印刷用紙7020の搬送される方向と直交する方向に印刷用紙7020を切断する方式であって、印刷用紙7020切断用のカッター7050aを有している。
そして、印刷用紙7020を切断するための機構は、図14(b)に示すように、カッティングヘッド7050を支持しカッティングヘッド7050の移動をガイドするガイドレール7040と、ガイドレール7040に沿ってカッティングヘッド7050を移動させるリング状ベルト7060と、リング状ベルト7060にカッティングヘッド7050を連結させるためのベルト連結部7050bと、リング状ベルト7060を駆動するために、カッティングヘッド7050が移動する始端側および終端側に設けられた駆動軸7070aおよび従動軸7070bと、を有している。
駆動軸7070aは、アクチュエーター100により回転して、リング状ベルト7060を駆動する。この場合、アクチュエーター100の回転軸の回転は、増速装置7090を介して駆動軸7070aへ伝達されるようになっている。このような構成のプリンター7000は、アクチュエーター100が駆動すると駆動軸7070aが回転し、駆動軸7070aの回転により、駆動軸7070aと従動軸7070bとの間をリング状ベルト7060が回転し、回転するリング状ベルト7060と連結したカッティングヘッド7050がガイドレール7040に沿って移動する。これにより、カッティングヘッド7050のカッター7050aが印刷用紙7020を切断する。
プリンター7000は、駆動軸7070aの駆動にアクチュエーター100を用いることにより、駆動軸7070aまわりをコンパクトな構成にすることができるため、小型化が可能であり、併せて高耐久性も有している。
(第8実施形態)
図15は、第1実施形態に係るアクチュエーター100を組み込んだ第8実施形態に係る電子時計8000の内部構造を例示した説明図である。図15では、電子時計8000の時刻表示側とは反対側(裏蓋側)から見た平面図が示されている。図15に例示した電子時計8000の内部には、円板形状の回転円板8100と、回転円板8100の回転を、時刻を表示する指針(図示省略)に伝達する歯車列8200と、回転円板8100を駆動する駆動部としてのアクチュエーター100と、電力供給部8300と、水晶チップ8400と、IC8500とを備えている。また、電力供給部8300や、水晶チップ8400、IC8500は、図示しない回路基板に搭載されている。歯車列8200は、複数の歯車や図示しないラチェットを含んで構成されている。尚、図示が煩雑となることを避けるために、図15では、歯車の歯先を結んだ線を実線で表し、歯車の歯元を結んだ線を一点鎖線で表している。
回転円板8100には、同軸に小さな歯車8100aが設けられており、この歯車8100aが歯車列8200と噛み合わされている。このため回転円板8100の回転は、所定の比率で減速されながら歯車列8200を伝わる。そして、この歯車の回転が時刻を表す指針に伝達されて時刻を表示する。そして、本実施例のアクチュエーター100の突起部10aを回転円板8100の側面に押し付けた状態で設けることにより、回転円板8100を回転させる駆動部として用いることができる。なお、本実施形態に係る電子時計8000は、第2実施形態に係るアクチュエーター300を備えることもできる。
(第9実施形態)
図16は、第1実施形態に係るアクチュエーター100を組み込んだ第9実施形態に係る投影装置9000を例示した説明図である。図示されるように投影装置9000は、光学レンズを含んだ投影部9100を備えており、内蔵する光源(図示は省略)からの光を投影することによって画像を表示する。そして、投影部9100に含まれる光学レンズの焦点を合わせるための調整機構9200(調整部)を、駆動部としてアクチュエーター100を用いて駆動するようにしても良い。アクチュエーター100は位置決めの分解能が高いので、微妙な焦点合わせを行うことができる。また、光源からの光を投影しない間は、レンズカバー9300で投影部9100の光学レンズを覆うことで、光学レンズに傷が付くことを防ぐことができる。このレンズカバー9300を開閉させる駆動部として、アクチュエーター100を用いることもできる。なお、本実施形態に係る投影装置9000は、第2実施形態に係るアクチュエーター300を備えることもできる。