JP5957137B2 - 支援ラウドスピーカの可変セットを用いた、オーディオ事前補償コントローラの設計 - Google Patents
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Description
は、元々のオーディオ信号ソースとオーディオ装置の間に置かれている。音発生システムの動的特性は、室内の一個又は複数個の測定位置での既知テスト信号に対する該システムの応答を記録することにより、測定してモデル化し得る。該フィルタ
は、次に、計算し実装されて、(図1の
で表示されている)該音発生システムの測定された応答特性を事前に補償する。特に、該事前補償されたシステムの位相及び振幅応答は、全ての測定位置において、(図1の
で表示されている)事前に指定された理想的応答に近似していることが望ましい。換言すれば、事前補償された音再生
は、理想的音再生
にある程度の精度で一致することが必要である。該補償結果の音再生が理想的応答
の音特性を有するように、該事前補償器
により生成された事前歪みは、該システム
による歪みを打ち消す。堅牢で実用性のある事前補償器を構成するためには、該モデル
は実際のシステムの完全な記述でなくてもよく、且つ、該システム応答の記録は例えば背景ノイズによる擾乱を含み得る、という認識が重要である。このような測定及びモデル化誤差は、例えば(図1の
で表示されている)ノイズ信号を該システムに付加することにより表示されて、測定されたシステム出力
を生成する。以下に述べるように、モデル化誤差とシステムの不確実性は、該モデル
内に含まれ得る。その時、該モデル
は、指定された確率分布を有するランダム変数により部分的にパラメータ化される。
一つの特定の目的は、連係する音発生システム用のオーディオ事前補償コントローラを決定する為の方法、を提供することである。
他の特定の目的は、連係する音発生システム用のオーディオ事前補償コントローラを決定する為のシステム、を提供することである。
更に他の特定の目的は、連係する音発生システム用のオーディオ事前補償コントローラを決定する為のコンピュータプログラム製品、を提供することである。
又、一つの特定の目的は、改善されたオーディオ事前補償コントローラはもちろん、そのようなオーディオ事前補償コントローラとそのようなオーディオ事前補償コントローラによって生成されたデジタルオーディオ信号を備えるオーディオシステム、を提供することである。
本発明のこれらと他の目的は、添付された特許請求の範囲での定義により明白になるであろう。
・オーディオ事前補償コントローラの改善された設計方式
・二個以上のラウドスピーカ上でのステレオ又は多重チャンネルオーディオ素材の改善された再生
・ラウドスピーカのインパルス応答が空間位置で変化する室内又はリスニング環境におけるより高い性能
・性能改善が低周波数領域に限定されない高度の柔軟性
・因果律及びプレベルアーチファクトのような問題の制御
本発明によって提供される他の利点と特徴は、本発明の実施例に関する以下の記述を読めば理解されるであろう。
本発明は、添付図面と関連して与えられる以下の記述を参照すれば、その更なる目的と利点と共に、より良く理解されるであろう。
提案された技術は、以下の認識に基づく。即ち、動的システムの数学的モデルとデジタル事前補償フィルタのモデルベース最適化は、様々な種類のオーディオ装置への入力信号を補正することによってそれらの性能を改善するフィルタ、を設計する為の強力な道具を提供する。更に、適切なモデルは、あるリスニング環境の関心領域内に分布する複数個の測定位置における複数個の測定により得られる、ことに注意せよ。
該オーディオ事前補償コントローラは一般に、フィルタの設計方式で決定されるべき、調整可能な複数個のフィルタパラメータを有する。従って、該オーディオ事前補償コントローラは、設計時にN個のコントローラ出力信号を該音発生システムに対して生成すべきである。この出力信号生成の目的は、あるリスニング環境の関心領域内に分布する、M≧2個の複数個の測定位置において測定された、事前補償された該システムの動的応答、を補正することである。
二個以上の入力信号が存在すれば、即ち、L≧2であれば、該方法は又選択的段階S5を含み得て、該選択的段階S5では、該L個の入力信号に対して決定された全ての該複数個のフィルタパラメータを、該オーディオ事前補償コントローラ用のフィルタパラメータの一個の合成セットに合成する。該フィルタパラメータの該合成セットを有する該オーディオ事前補償コントローラは、該L個の入力信号に作用するように構成されて、該N個のコントローラ出力信号を該ラウドスピーカに対して生成して該目標インパルス応答を形成する。
好適には、該目標インパルス応答は非ゼロであり、且つ所定の限界内で補正され得る調整可能な複数個のパラメータを含む。例えば、該目標インパルス応答の該調整可能な複数個のパラメータは、該オーディオ事前補償コントローラの該調整可能な複数個のパラメータと同様に、該基準関数を最適化するという目的の為に協同的に調整され得る。
該ペナルティ項は、異なった形態で複数回選択され得る。更に、該オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを決定する該段階は、該ペナルティ項の各選択毎に反復されて、該オーディオ事前補償コントローラの複数個の事例をもたらす。該事例の各々は、個別に制限されたマグニチュードの信号レベルを、特定周波数帯域用の該S個の支援ラウドスピーカに対して生成する。
特定例において、該オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを決定する該段階は又、該オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを調整することに基づく。該フィルタパラメータの該調整は、該M個の測定位置の少なくとも一個の部分セットにおいて、該オーディオ事前補償コントローラを含む該音発生システムの目標マグニチュード周波数応答に到達するように遂行される。
好適には、該N個のラウドスピーカ入力の少なくともその部分セットの各々一個のラウドスピーカ入力に対して、M個の複数個の測定位置の各々において各々一個のインパルス応答を見積る該段階は、該M個の測定位置における該音発生システムの動的応答を記述するモデルに基づく。
提案された上記技術は、多くのオーディオ応用において利用し得る。例えば、該音発生システムは自動車オーディオシステム又は移動スタジオオーディオシステムであり得て、該リスニング環境は自動車又は移動スタジオの一部であり得る。該音発生システムの他の例は、映画館オーディオシステム、コンサートホールオーディオシステム、家庭オーディオシステム、又は専門家用オーディオシステムを含む。該専門家用オーディオシステムにおいては、その対応するリスニング環境は、映画館、コンサートホール、家庭、スタジオ、公会堂、又は他の任意の施設の一部である。
提案された上記技術は、限定されない様々な例示実施例に関連して、以下により詳細に説明される。
(線形動的な事前補償による音場制御)
又は単に
と、太字筆記体により表記される。伝達関数行列の特別な場合は、その要素としてFIRフィルタのみを含む行列である。そのような行列は多項式行列と呼ばれ、例えば
又は単に
と、太字イタリック体の大文字により表記される。ここで、q−1は後退シフト作用素であり、信号
に作用した際に
を生成する、即ち、
である。同様に、
である。関係する周波数領域で多項式行列又は有理行列を評価する際には、
を複素変数
即ち
と交換する。FIRフィルタ(多項式行列)
の因果律行列は、時間変数
に関して現在又は過去である入力信号にのみ作用する。従って、該因果律行列は、後退シフト作用素
においてのみ多項式である行列要素を有することになる。同様に、多項式行列
は未来信号と過去信号の双方に作用し、一方、
は未来信号にのみ作用する。例えば
のような上付き添え字(・)Tは、転置操作を意味する。該転置操作の意味するところは、それがベクトル、有理行列、又は多項式行列に対して使用された際には、転置された行ベクトルが列ベクトルになり、有理行列又は多項式行列のj行が同一行列のj列になる、ということである。同様に、下付き添え字(・)*は、複素共役転置操作を意味する。該複素共役転置操作が意味するところは、ベクトル、有理行列、又は多項式行列はまず上述のように転置され、更に、それらの要素の複素共役が取られる、ということである。例えば、複素共役転置された有理行列
は、
と表記される。単位行列は、対角線上に1が複数個並んだ定数行列である。単位行列は
、又は、その次元がN×Nなら
と表記される。例えば
のような他の定数行列は、次元がN×Nのゼロ行列を表す。更に、diag([F1...FN]T)は、対角線上にF1...FNが並んだ対角行列である。一方、
は、行列
のトレース、即ち、行列
の対角要素の和、を表す。
、により表される。該モデル
は、N個の入力信号の一個のセット
とモデル化されたM個の出力信号の一個のセット
間の、離散時間における関係、を記述するものである:
ここで、
は、離散時間変数(単位標本化時間が仮定されている、例えば
は、時間
から一標本化時間だけ未来を意味する)を表す整数である。該信号
は、該M個の測定位置におけるモデル化された音圧時系列、を表すM次元の出力列ベクトル、である。該作用素
は、伝達関数行列の形態における該音響的な動的応答の一つのモデル、を表している。該作用素
は、その行列要素が例えばFIRフィルタ又はIIRフィルタとして表されている安定、線形、動的な作用素又は変換である、M×N次元の行列である。これらのフィルタは、N次元で時間依存の入力列ベクトル
に対する応答
を決定する。該M×Nモデル
がその要素としてIIRフィルタを含む場合、
は、いわゆる右マトリックス分数記述(右MFD)形式で書くことが可能である。
ここで、
は、それぞれ、M×NとN×N次元の多項式行列である[15]。該右MFD形式は以下の説明において非常に有用であり、該分母行列を該単位行列に設定、即ち、
と置けば、該FIRフィルタ行列を特別な場合として含む。
は、該音発生又は音再生システムの全体又は一部による効果を表している。この効果とは、任意のデジタル補償器、デジタル-アナログ変換器、アナログアンプ、ラウドスピーカ、ケーブル、及び室内音響機器の応答である。換言すれば、該伝達関数行列
は、ある音発生システムの関係部品の動的応答を表している。該音発生システムに対する(N次元の列ベクトルである)該入力信号
は、該音発生システムのN個のアンプ-ラウドスピーカの連鎖の各々に対する入力信号を表している。(「測定」を表す下付き添え字mを有する)該信号
は、該M個の測定位置における真の(即ち、測定された)音時系列を表すM次元の列ベクトルである。該信号
は、背景ノイズ、モデル化され得ない室内反響、不正確なモデル構造の効果、非線形歪み、及び他のモデル化され得ない寄与を表している。該
のM次元の列の各々は、該N個のラウドスピーカ入力の一つと該M個の測定位置間の該M個の伝達関数の各々、を表している。
は又、有理行列
で表される、加法的又は乗法的なモデル不確定性、を含む。例えば、このモデル不確定性
がランダム係数を有する多項式行列によりパラメータ化される場合には、適切なモデルは
となるであろう。ここで、
は基本モデルであり、又、ランダム係数により部分的にパラメータ化されている
が該不確定性モデルを構成している。
に対する該マトリックス分数記述を書き下すと、
の分解(3)は、
と展開される。ここで、
である。行列
はM×N次元であるが、行列
はN×N次元である。行列
は該基本モデル
を構成し、
の要素は確率変数を係数とした多項式である。単純化の為に、これらの係数はゼロ平均と単位分散を持つと仮定する。該フィルタ
は、該確率的不確定性モデルのスペクトル分布を整形する為に使用される。該フィルタ
は又、単位元とは異なる該ランダム係数の分散を吸収する為にも使用される。単純化の為に、分母行列
は、結局対角行列だと仮定する。該システムが(3)のように表される場合には、
は複数個のモデルの一個のセットと見なし得て、該システムの測定された応答における存在し得る誤差の範囲を記述する。上記の確率的モデル化の枠組みに関する一般的な入門の為に、読者は[27]とそこの参考文献を参照されたい。不確定性
のモデル化は多くの方法で成し得るものであり、上記の定式化は、該モデル化が系統的にどのように達成され使用されるかに関する単なる一例に過ぎない。
を導入する:
ここで、
は、現在の又は記録された音源を表す、又は、該フィルタの設計に使用されるテスト信号を含んだ、人工的に生成されたデジタルオーディオ信号さえも表す、信号である。該信号
は、例えば、デジタル的に記録された音、又は標本化されデジタル化されたアナログ音源を表し得る。(5)において、該行列
は、既知と仮定されている、M×1次元の安定的な伝達関数列ベクトルである。この線形で離散時間の動的システム
は、設計者により指定されるべきものである。該動的システム
は、(1)における該列ベクトル
の基準となる動的挙動(即ち、願望目標の動的挙動)を表す。該事前補償されたシステムにおいて、該信号
は、合計でL個の入力ソース信号の内の一個を表す。該M個の測定位置におけるその望ましい効果は、(5)における
の要素D1,...,DMで表される。該システム
は、調整可能な複数個のパラメータの一個のセットを含み得る。代替的に、該システム
は、その仕様を介してそのようなセットによって間接的に影響を及ぼされ得る。
で表される、多重可変で動的な離散時間の事前補償フィルタとして実現されると仮定されている。この事前補償フィルタ
は、該信号
の線形動的処理に基づき、該音再生システム(1)に対して該入力信号ベクトル
を生成する:
このオーディオ事前補償コントローラは、調整可能な複数個のパラメータの一個のセットを含む。これらのパラメータは、コントローラの入力-出力の動的特性を補正するに充分な柔軟性を可能にするものである。例えばこれらのパラメータは、適当なパラメータ設定に対して
の幾つかの成分又は全体がゼロになることを可能にする。しかしながら、
の最適化は、
を入力-出力の安定動的システムに構成するパラメータ設定に限定されるべきである。
が指定された基準に従い該基準ベクトル
に充分に近似するように、該入力信号ベクトル
を該音再生システム(1)に対して生成する。この目的は、
であれば達成されるであろう。
該M個の測定位置における対応するモデルベースの近似誤差は、
と表される。
すると、図2と(1)により、真の測定された誤差ベクトルは、
となる。該近似(7)は、
における限定されたN個のラウドスピーカ、比較的多数のM個の測定位置、及び複雑で広帯域の音響的な動的モデルという条件下では、実際には決して正確にはなり得ない。達成可能な近似特性は、一般には、設定された問題の条件に依存するのである。固定された任意の音響環境においては、ラウドスピーカチャンネルの個数Nを増やせば、近似特性は一般には改善される。又、リスニング領域内での測定位置の数Mを増やせば、近似特性は改善され得る。その理由は、空間の関数としての音場のより高密度でより正確な標本化を与えるからである。反対に、固定されたNに対するリスニング領域の拡大や追加は、一般にはより大きな近似誤差をもたらすであろう。
事前補償器を設計する際に考えるべき重要なポイントは、補償されるべき該システムの初期伝播遅延と該願望目標の動的挙動の初期伝播遅延の間の関係である。ある動的システムの初期伝播遅延とは、該システムの入力から出力へある信号が伝播するのに要する時間である。換言すれば、該初期伝播遅延は、該システムのインパルス応答の最初の非ゼロ係数の時間的瞬間によって与えられる。従って、d個の標本分のある初期伝播遅延を有するあるシステム
は、
と書かれ得る。ここで、
の少なくとも一個の要素が、非ゼロ係数で始まるインパルス応答を有する。
はある初期伝播遅延d1を有し、
はある初期伝播遅延d0を有する、とする。ここでもしd1>d0であれば、該信号
の現在及び過去の値のみしか使用しない因果律補償器
は、充分に機能するとは期待できない。その理由は、時間tで、該基準信号
はk≧0で信号値
に依存するが、一方、該事前補償されたシステムの該出力
はk≧0で信号値
にのみ依存する(即ち、該基準信号は、該システム出力で生成し得るものよりも、より最近のデータに依存する)、からである。該補償器は、該出力
を該基準
に向けて操舵、誘導しようとする。しかしながら、
間の該時間遅延の差の為に、
の出力における該制御信号
は、必要とされるよりも少なくとも(d1−d0)個の標本分だけ常に遅れてしまう。該補償器
がそのような場合に充分に機能する為には、
は非因果的である必要があろう、即ち、
は該信号
の少なくとも(d1−d0)個の標本分だけ未来の値を予測できる必要があろう。一方、双方の初期伝播遅延の間の関係が逆である場合、即ち、d1<d0である場合には、該補償器は、相当により良好に機能するであろう。その理由は、
に関する知識により、該補償器は該基準信号の未来値を予測する可能性を有するからである。従って、該補償器は、該出力
が該基準
に向けてより効率的に操舵、誘導されるように、(d0−d1)個の標本分だけ先行して
の動的挙動にその作用を開始して良い。
従って一般的に、該目標の動的挙動
の初期伝播遅延d0が該システム
の初期伝播遅延d1と比較して充分に大きいという条件を確保することにより、補償器の性能を改善することが可能である。この確保は例えば、該目標の動的挙動
に総合的なバルク遅延
を追加するという操作によって得られる。その結果、
となり、ここで、
は元の指定された目標の動的挙動であり、d0は
の該初期伝播遅延d1より大きいかそれに等しい。
を該目標の動的挙動において可能にさせるという操作は、問題を引き起こし得る。一つには、目標の動的挙動における大きなバルク遅延が平均的な再生誤差(例えば、
)を減少させる助けになることは、一般的には確かに真実である。しかしながら他方、目標の動的挙動における大きなバルク遅延は、上記のように該補償器が予測的な仕方で該システムに作用することを可能にさせる。即ち、該出力
は、該基準信号
を構成するデータと比較して「未来における」該データ
に依存し得る。該再生誤差
は必ずしもゼロではないので、該出力のこの予測的挙動は、該事前補償されたシステムにおいてプレベル(pre−ringings)又はプレエコー(pre−echoes)として聴覚される誤差を引き起こし得る。技術的には、これは、該事前補償されたシステムのインパルス応答が該指定されたバルク遅延d0以前に到着する音響エネルギーを含む、ことを意味する。特にインパルス的過渡的な形態の音に関しては、このようなプレベル誤差は人間にとり非常に不自然で且つ苛立つ音と聴覚されるので、可能な限り回避されるべきである。上記の例では、該プレベル誤差が起こりえる時間間隔の長さは、
の初期伝播遅延間の差によって決定される。従って、該補償器が適切に機能することを可能にするほど充分に大きいが、しかしながら該補償器が該可聴のプレベル誤差を生じ得るほどには大きくないバルク遅延を使用することには、興味がある。換言すれば、該プレベル効果を最小限にする為には、上記の例で、d1がd0に可能な限り近い関係d1≦d0を採用すべきである。
を非因果的な全域通過フィルタ
と結合させた形態で用いる。ここで、該全域通過フィルタ
は、全ての空間位置に共通した該非最小位相歪みを補償するフィルタである。該遅延d0が充分に大きい場合には、結合結果の非因果的フィルタ
は、該補償器の固定部品として含まれている因果的FIRフィルタと共に見積もられる。該フィルタ
が設計された後、最適、因果、安定的な補償器
が、(その初期伝播遅延がd0である)拡大されたシステム
の為に設計される。該因果的補償器
が設計される時、d0のバルク遅延は依然として該目標の動的挙動
において用いられている。この事は、該拡大システム
と該目標の動的挙動
の双方の初期伝播遅延が完全に同一である、ことを意味する。従って、該因果的補償器
は、該システムに如何なるプレベル効果も生じさせることは不可能である。
j=1,...,Nを、該システムの該N個のラウドスピーカの各々毎に設計する。又、複数個のフィルタの一個のNチャンネル対角ブロックは、該Nチャンネルシステム
と設計されるべき該最適、因果的Nチャンネル補償器の間に配置される。即ち、補償されるべき該システムは、
となり、ここで、
は、
で与えられるN×N次元の対角行列である。
上記の追加遅延値d1,...,dNは、該目標システム
の初期伝播遅延と該N個のラウドスピーカチャンネルの初期伝播遅延(即ち、
の列の初期伝播遅延)の間の関係を、最適に調整する為に使用し得る。
(音響モデル化)
を帰結する。該多重入力多重出力(MIMO)モデルは代替的に、状態空間による記述で表現され得る。
これは、以下で使用されるタイプのMFDである。該分母行列
が完全多項式行列であり得る場合には、更に一般的なモデルが構築できる。又、そのような構造の使用を禁ずる理由は、原理的には存在しない。しかしながら、(11)で定義される構造は該最適なコントローラのより明快な数学的導出を可能にするので、我々は以下でこの構造に固執することとする。(11)で定義されている
は、例えば(4)で与えられているモデル誤差と不確定性を記述するパラメータ方式を含んで良い、ことに注意せよ。
(基幹及び支援ラウドスピーカの選定)
現存の単一チャンネル補償器より更に一般的な補償器を構成する為には、そのフィルタ構造と複数個のラウドスピーカの使用法に関して何であれ限定を可能な限り少なくするという条件下で、現存の設計を実行する必要がある。この一般的な補償器に課される唯一の限定は、その線形性、因果性、及び安定性のみである。該単一チャンネル補償器における該限定は、該L個のソース入力信号の各々は唯一個の単一チャンネルフィルタにより処理され、唯一個のラウドスピーカ入力に伝達される、という限定であった。この限定は、従って、この一般的な補償器においては緩和されることになる。従って、該L個のソース入力信号の各々に連動するこの一般的な補償器は、一個以上のフィルタから構成され得て、少なくとも一個のしかしおそらく数個のラウドスピーカに伝達されるべき、少なくとも一個のしかしおそらく数個の処理された該ソース入力信号を生成する。
L個のソース入力信号と、合計でN個のラウドスピーカの一個の音再生システムを考える。すると、該L個のソース入力信号の各々毎に、それに対応する一個の基幹ラウドスピーカが存在せねばならない。次に、残りの(N−1)個のラウドスピーカの中から、該基幹ラウドスピーカの性能を改善する為に該補償器により使用されるべきS個の支援ラウドスピーカ(ここで、1≦S≦N−1)の一個のセットを選定する。
の各列は、M個の測定位置における一個のラウドスピーカの音響応答を表す、ことを思いだそう。従って、
の複数個の列の一つは該基幹ラウドスピーカの応答を含み、残りの複数個の列は該S個の支援ラウドスピーカの応答を含む。従って、該L個のソース入力の一つに対する補償器の特定設計において、何個の支援ラウドスピーカが上記の特定のソース入力信号に対して選択されたかに応じて、該音響モデル
は(1+S)個の列を含み、設計結果の該補償器は一個の入力と(1+S)個の出力を有する。ここで、(1+S)はN以下でも良い。該補償器が残りの(L−1)個のソース入力に対して設計されている場合、ラウドスピーカの同一のセットを繰り返して使用する必要はないことにも注意せよ。従って、該補償器により使用される該支援ラウドスピーカの個数Sは、該L個のソース入力の全てに対して同一でなくても良い。
(目標音場の定義)
当該音システムがM個の位置で測定され、且つ(1)のような伝達関数行列
で表されるとする。更に、
のj列は該考えている基幹ラウドスピーカのインパルス応答を表すとする。すると、目標音場は、(5)のようなM×1次元の伝達関数列ベクトル
で指定され得る。典型例として、該目標音場
は、該基幹ラウドスピーカの測定されたインパルス応答の理想化版として指定されるべきである。該インパルス応答のそのような理想化セットがどのように設計され得るかの一例は、該目標音場
の要素としての遅延した単位パルスを用いることである。該目標音場
の要素としての該遅延した単位パルスとは、
で定義される、以下に与える
である(ここで、
は、
の該初期伝播遅延である)。
のj列における各インパルス応答の無視し得ないマグニチュードの最初の係数に対応する時間遅延を検出することによってなされる。該追加の共通バルク遅延d0は選択的である。しかしながら、(9)、(10)に示唆されているように、該遅延d0を有する対角位相補償器が使用される場合には、d0は好適には含まれるべきである。
該初期伝播遅延Δ1,...,ΔMが何らかの理由により適切に検出されず、曖昧で、又とにかく定義困難な場合には、ある制御された可変性が該目標音場
に導入される。例えば、該遅延Δ1,...,ΔMは、所定の限界内で調整可能にできる。該目標音場
のこのような柔軟性は、選択された目標音場に対するより良き近似、より良き基準値、及びより良き聴覚オーディオ品質を達成する際の助けになる。このタイプの柔軟性は、該目標音場
のパラメータと該事前補償のパラメータを反復的に調整する形で利用され得る。
(最適化基準の定義)
と該事前補償された応答信号
間のパワー差の総和又は重み付けされた総和、から構成される。これらの差は、近似誤差又は単に誤差、及び重み付け誤差とそれぞれ呼ばれて、
と表される。
は、M×M次元の多項式行列
によって支配される。ここで、該多項式行列
は、該重み付け誤差がどの周波数範囲において強調されるべきかに応じて、完全行列、対角行列、又は単に定数行列になり得る。
、即ち
が単位行列(対角線上に1が複数個並んだ対角行列)ならば、重み付けは該重み付け誤差に適用されない。選択的に、該N個のオーディオ事前補償器出力信号
((6)参照)の重み付けされたパワーを、該基準に付け加え得る。該重み付けされた事前補償器出力信号は、以後ペナルティ項と呼ばれて、
によって表される。ここで、
はあるN×N次元の多項式行列である。この多項式行列
は、該重み付けされた事前補償器出力信号がどのような仕方で且つどの周波数範囲において該ペナルティを課されるべきかに応じて、完全行列、FIRフィルタを対角線上に有する対角行列、又は単に単位行列になり得る。該ペナルティの重み付けが必要ないならば、
は単に単位行列である。
がそれぞれ、
によって表される対角要素を有する対角行列ならば、充分に適切な該基準の一例は、上記のように定義された該重み付け項
を有して、
となるであろう。
に対して取り、一方、統計期待値
は
における不確定性モデルパラメータに対して取る。該不確定性モデルパラメータとは、このような不確定性モデル記述が選択されているとして、例えば(4)における
を指す。該基準(15)の最後の式は、ランダム過程の該二乗2ノルム((15)では、該二乗2ノルムは
と表示されている)の、
における不確定性モデルパラメータに対する期待値、を表す。これらの表現は、
が対角行列である限り、全て等価である。該基準(15)の三番目の式は、FIRフィルタを全ての要素に有する行列に一般化できる。
を含む該基準(15)を考える
の全ての対角要素が低域通過フィルタならば、それは、低周波数において高精度(小誤差)を優先することを意味する。一方、
の全ての対角要素が高域通過フィルタならば、該オーディオ事前補償フィルタ出力の高周波数内容は低周波数内容よりペナルティを課されるであろう(即ち、該基準値により寄与するであろう)。従って、該基準値を最小化せんと努力を払うオーディオ事前補償フィルタは、低周波数においてその努力を払うことになる。異なる誤差と異なる事前補償信号に対して異なるフィルタを選択することにより、設計者は異なるラウドスピーカ出力間の相互のバランスを取り得る。全ての該FIRフィルタがゼロである特別な場合には、重み付けは遂行されない。従って、同時に事前補償信号パワーを賢明に使用しながら周波数関心範囲において可能な限り誤差を少なくせんとする該設計において、該重み付け多項式行列
は相当の柔軟性を発揮する。
が対角行列ならば、該基準(15)の最初の右辺の総和は、以下の量を表すことは明白である。即ち、
の要素で表される該補償され見積られたインパルス応答と、
の要素で表される該目標インパルス応答間のパワー差の該M個の測定位置上での重み付けされた総和、である。ここで、この重み付けは、該多項式行列
と該信号
のスペクトル特性によって遂行される。該誤差ベクトルε(t)の全ての要素の均等重み付けは、単位行列
が使われて且つ該信号
が白ノイズであれば、得られるであろう。
(最適なコントローラの設計)
の該調整可能パラメータに関して幾つかの方法で最適化され得る。又、例えばある固定オーダーのFIRフィルタをその要素として要求するといったような構造的な拘束を該事前補償器に課して、これらの拘束の下で該調整可能パラメータの最適化を遂行することも可能である。このようなタイプの最適化は、適応的手法又はFIRウイーナーフィルタ設計法で遂行され得る。しかしながら、全ての構造的拘束は拘束された解空間をもたらすので、これらの拘束の下で達成可能な性能は、そのような拘束が存在しない場合の定式化による性能と比較して劣ることになる。従って、該事前補償器の因果性と該補償されたシステムの安定性を除いて、好適には該最適化は該事前補償器に対する構造的拘束無しで遂行すべきである。この最適化の問題を上記のように考慮すると、解決すべき問題は、該多重可変フィードフォーワードコントローラ
に対する線形二次ガウシアン(LQG)設計問題となる。
の因果性と該補償されたシステム
の安定性という該拘束の下で、該基準(15)を
の該調整可能パラメータに関して最適化することは非常に一般的な操作である。
を安定と見なすと、該補償されたシステム
の安定性、又は誤差伝達演算子
の安定性、は該コントローラ
の安定性と等価である。
方程式(1)-(14)及び該基準(15)によって定義された該問題に対する解として、我々は該最適LQG-事前補償器
を提供する。この解は、多項式行列を用いた伝達演算子又は伝達関数によって与えられる。このような解を導出する手法は、例えば[31]において与えられている。代替的に、このような解は状態空間手法とリッカチ方程式の解によって導出され得る(例えば、[1,20]参照)。
(事前補償器最適化用の多項式行列の設計方程式)
を有する該モデル(1)によって記述されるとする。ここで、該不確定性モデルを使用しないとすると
と設定できて、
を得る。更に、該M個の測定位置における該目標音場が、以下のように
で表せるとする。
ここで、E(q−1)は、1に等しいか又はスカラー最小位相多項式である。
を、該システム
と該コントローラ
間の該N個の信号経路の各々に設置するべきである。すると該目標音場
は、以下のようにd0個の標本分の初期伝播遅延を含むべきである。
ここで、多項式行列
の少なくとも一個は、非ゼロの主係数を有する。我々はここで、該全域通過フィルタ
を、該システムの一個の固定部品とみなす選択をなすこととする。
と該全域通過有理行列
を、各々、以下のように導入する。
ここで、diag(・)は、あるベクトルの要素を対角線上に有する対角行列を表す。(・)Tは、このベクトルの転置を意味する。一方、
は、
の逆多項式である。即ち、
のゼロは、
のゼロに対して単位円上で鏡像の位置にある。該有理行列
は、該M個の全ての測定位置に対する該N個のラウドスピーカの各々の伝達関数間に共通した余分な位相ゼロから、ここでは構築する。即ち、(4)における
B1j,...,BMjは、共通の余分な位相因子
を共有しているとする。
(又はこれと等価であるが、ここで
と記される
の複素共役転置行列
)は、固定され且つ既知である。従って、
は、以下のように表される一個の拡大システム
の因子とみなし得る。
ここで、
は、
間の因子の打ち消し合いにより依然として多項式行列である(即ち、有理行列ではない)。(19)の二番目の式は、
が対角行列なので、成立を許されている((4)、(11)、及び(18)を参照せよ)。
と全域通過有理行列
を有する該拡大システム
において、該信号
がゼロ平均単位分散白ノイズシークエンスであるとする。すると、該プレベル現象を生じさせず、因果性と安定性という該拘束の下で該基準(15)を最小化する該最適LQG-事前補償器
は、
と与えられる。
ここで、該N│N次元の多項式行列
は、
によって定義される一意的で安定な右スペクトル因子1である。又、該多項式行列
は、ある多項式行列
(両方共、N│1次元)と相俟って、包括的次数2
を有する以下の相互ディオファントス方程式
の一意解を構成する。
1 このような右スペクトル因子は、本問題に対しては緩い条件下で存在する。[31]の3.3.節を参照せよ。該右スペクトル因子は、直交行列でも一意的である。
2 より低次数は、特殊な場合には生じても良い。
で記述される
を説明する為にも、容易に拡張され得る。
ここで、
はゼロ平均単位分散白ノイズシークエンスである。例えば、PとSを安定多項式として、
ならば、(22)の最右項において
に
を代入する。
を動的モデルによって記述するのは、
が白ノイズであるという仮定が不適切なある種の応用においては、時として有用であり得る。ここで得られた解は非常に一般的なものであり、該事前補償器の設計において相当の柔軟性を提供するものである。
の選定された適切な一個のセットに対して、p個のフィルタ
の一個のセットを設計する為にも使用し得る。そのようにして得られた該p個のフィルタ
の一個のセットは、該S個の支援ラウドスピーカの選定された一個のセットから得られる支援の度合いを、徐々に変化させる為に使用し得る。このようにしてユーザーはほとんどゼロの支援と完全支援の間を切り替えることが出来て、可能な限り最良の聴覚オーディオ特性を得る。
該事前補償器信号
を得る為には、該フィルタリングを異なる段階において遂行しなければならない、ことに注意せよ。従って、最初に再帰フィルタリング
、二番目にFIRフィルタリング
、三番目に再帰フィルタリング
、最後にFIRフィルタリング
、を遂行する。ここで、
がN×1次元なので、該太字信号
はN×1次元である。しかしながら、このようなフィルタリングの手続きは、
の唯一可能な実装ではない。例えば、
の要素の高次FIR近似も使えるであろう。このようなFIR近似は、入力信号として単位パルスδ(t)を用いることにより得られ、該フィルタの該N個の出力における一連の標本を記録する。記録された該N個の出力信号は、
の要素の該インパルス応答を構成し、該FIRフィルタ係数は適切な長さに該出力信号の先端を切り捨てることにより得られる。
となる、ことに注意すべきである。他方、該設計において該不確定性モデルを使用しないならば、(21)の右辺第三項は消えて、
となる。最後に、該不確定性モデルも、該N個のラウドスピーカに対する如何なる該個別の位相補償も使用しないならば、
となる。
実用的なコントローラ設計においては、(21)の右辺第三項は、以下の
を見積もることによって容易に得られる([26,27,32]参照)。
の個々の多項式要素のランダム係数は、ゼロ平均単位分散白ノイズシークエンスとして指定されることを思い起こそう。このことは、
を含意するものである。更に、これらのランダム係数は、
の異なる列間において互いに非相関である、即ち、j≠nに対して
である。この理由は、離れたソースに属する残響場は、一般に空間的に互いに非相関であるからである。従って、第一に、該M│M次元の多項式行列
はその対角線に沿って1を複数個有すること、第二に、i≠jならば
であること、が分かる。更に、該多項式行列
が対角的であれば、以下の
を得る。従って、(21)中の
に対する表現は、以下の
となる。
と該トレース作用素の対角構造の為に、
の非対角要素は該フィルタ設計には寄与しない。これらの非対角要素は、「空間的共分散」
、を構成する。従って、該不確定性モデルにおける空間的共分散は、本件で研究したタイプのフィルタ設計に対しては不必要で余分なものである、と結論する。しかしながら、ゼロとは異なる
の非対角要素を選択することにより、
の非対角要素は、本件のタイプのフィルタ設計に使用し得る。例えば、これらの非対角要素は、該設計における中心測定点に比較した周辺測定点の重要性の評価の格下げを行う為に使用し得る。
(均衡されたマグニチュードスペクトルに対する事後処理)
を完全に達成するならば、該被事前補償システムの平均マグニチュード応答は該目標
の平均マグニチュード応答と等しくなるであろう。しかしながら、該設計されたコントローラ
は、全ての周波数において該目標応答
に完全に到達するとは期待され得ない。例えば、完全には補償され得ない非常に複雑な室内残響の為に、該被事前補償システムにおいては何かしらの残余の近似誤差が常に存在してしまう。これらの近似誤差は、異なる周波数において異なるマグニチュードを有し、再生音質に影響を与える。こうしたマグニチュード応答の不完全性は、一般には望ましくない。従って、該コントローラ行列は、全目標マグニチュード応答が全てのリスニング領域内で平均して到達されるように、好適に調整されるべきである。
を含んだ該システム)のマグニチュード応答が、該設計モデル又は新規の測定に基づき、様々なリスニング位置において見積られ得る。最小位相フィルタが、該目標マグニチュード応答が全てのリスニング領域内で(該RMSの意味において)平均して到達されるように、設計され得る。一例として、空間的な応答変動に基づく可変分数オクターブ円滑化が、特定の周波数領域において該システムが補償され過ぎることを防止する為に、採用されても良い。その結果採用される機器は、
の全ての要素をある等量分だけ調整する、スカラー等化フィルタである。
(図解例)
・図6と図9は、室内の64個の測定位置において測定された、ATC SCM16スタジオモニターラウドスピーカの周波数応答とその平均累積スペクトル減衰(「瀑状プロット」)を、各々示す。
・図7と図10は、従来の単一チャンネル事前補償器がその入力に適用された後の、図6と図9と同一のラウドスピーカの周波数応答とその平均瀑状プロットを、各々示す。
・図8と図11は、上記新規の多重チャンネル事前補償器の設計方法が適用された場合の、該周波数応答と該平均瀑状プロットを、各々示す。ここでの該多重チャンネル事前補償器の設計目的は、図7と図10の該単一チャンネル事前補償器の設計目的と同一である。即ち、従来の図面における該単一のラウドスピーカを、基幹ラウドスピーカとして使用する。目的は、この基幹ラウドスピーカの応答を可能な限り理想的な目標応答にすることである。該目標応答により良く到達する為に、15個の追加ラウドスピーカを支援ラウドスピーカとして使用する。該支援ラウドスピーカは、該64個の測定位置が取られたリスニング領域を囲んでおり、且つ、様々な高さと該リスニング領域からの様々な距離に配置されている。
(フィルタの実装)
は、状態空間形式又は伝達関数形式において、幾つかの方法で実現され得る。特に、該フィルタ設計が依拠しているモデルにおいて完全オーディオ範囲標本化率が用いられたり、室内音響の動的挙動が考慮される場合には、要求される該フィルタは一般に非常に高次のフィルタである。計算的に実現可能な設計を得る為に、該事前補償器
の計算的複雑性を制限する方法には、興味がある。この制限目的の為の一つの方法を、ここで概観する。この方法は、該コントローラ行列
の要素のコントローラ次数の縮約、特に非常に長いが滑らかな尾部を持つインパルス応答を有する伝達関数の要素のコントローラ次数縮約、に基づく。この方法は、以下のように機能する。
該事前補償器
の関係する事前補償器スカラーインパルス応答要素
は、上記のように、最初に非常に長いFIRフィルタとして表示される。次に、各事前補償器インパルス応答要素
毎に、
は以下のことを遂行する。
1.遅延t1>1を決定する。これ以後、該インパルス応答は近似的に指数関数的に減衰し、滑らかな形を有する。第二の遅延t2>t1を決定する。これ以後、該インパルス応答係数は無視可能である。
2.モデル縮約又はシステム同定手法を用いて、低次再帰IIRフィルタを調整して、遅延間隔[t1,t2]間で該FIRフィルタ尾部を近似する。
3.該近似されたスカラー事前補償器フィルタを、平行連結
として実現する。ここで、
は、遅延ゼロから遅延t1−1の該元のFIRフィルタRj(q−1)の該最初のt1インパルス応答係数に等しいFIRフィルタである。一方、N(q−1)は、該尾部を近似する該IIRフィルタである。
(実装面)
本発明は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせによって実装され得る。しかしながら、本発明により提起されている該フィルタの設計方式は、好適には、プログラムモジュール、機能、又はそれらの等価物の形でソフトウェアとして実装される。このソフトウェアは、C,C++、又はデジタル信号プロセッサ(DSPs)用の特殊言語のような、任意のタイプのコンピュータ言語で書いて良い。実践的には、本発明の該関係する段階、機能、及び動作は、あるコンピュータプログラムに写像される。このコンピュータプログラムは、該コンピュータシステムによって実行されて、該事前補償フィルタの設計に関与する該計算を実行する。PCベースのコンピュータシステムの場合には、該オーディオ事前補償フィルタの設計即ち決定用の該コンピュータプログラムは、通常、コンピュータ読み取り可能な媒体上にコード化される。これらのコンピュータ読み取り可能媒体とは、ユーザ/フィルタ設計者へ配布されるDVD、CD、又はそれらの類似媒体である。次に、該ユーザ/フィルタ設計者は、更なる実行の為に該コンピュータプログラムを彼/又は彼女のコンピュータシステムにロードする。該ソフトウェアは、インターネットを介して遠隔サーバからダウンロードされても良い。
特定例において、該オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを決定する該手段は、任意の目標動的システムと該音発生システムのある動的モデルに基づく安定、線形、因果的多重可変フィードフォーワードコントローラのパラメータの線形二次ガウシアン(LQG)最適化に基づいて動作するように構成される。
該コンピュータプログラム製品は対応するプログラム手段を備え、コンピュー
タシステム上で動作する場合に該オーディオ事前補償コントローラを決定する
ように構成される。
計算された該フィルタパラメータを該インターフェイス70を介して直接該オーディオ事前補償コントローラ200まで転送する代わりに、該オーディオ事前補償コントローラへの以後の配送の為に、該フィルタパラメータを該周辺メモリカード又はメモリディスク40に格納しても良い。ここで、該オーディオ事前補償コントローラは、該フィルタ設計システム100から遠隔な場所に位置していても良いし位置していなくても良い。計算された該フィルタパラメータは、例えばインターネットを介して遠隔場所から好適には暗号化された形態で、ダウンロードされても良い。
更に、該システム100は、通常は、該フィルタ設計者とのユーザ相互作用を可能にするユーザインターフェイス50を備える。幾つかの異なるユーザ相互作用のシナリオが可能である。
例えば、該フィルタ設計者は、該オーディオ事前補償コントローラ200の該フィルタパラメータの計算において、該設計パラメータの特定でカスタマイズされたセットの使用を決定しても良い。該フィルタ設計者は、次に、該ユーザインターフェイス50を介して関係する設計パラメータを定義する。
該フィルタ設計者は又、該ユーザインターフェイス50を用いて一個の基準システムを定義しても良い。又、該マイクロフォン測定に基づき該システムモデルを決定する代わりに、異なる事前構成システムモデルの一個のセットの中から該オーディオシステムの一個のモデルを選択することも、該フィルタ設計者にとり可能である。好適には、そのような選択は、結果の該事前補償フィルタが使用される該特定のオーディオ装置に基づいて遂行される。他の選択肢は、重み付け行列の選定された適切な一個のセットに対して、複数個のフィルタの一個のセットを設計することである。この結果、該支援ラウドスピーカの選定された一個のセットにより提供される支援の度合い、を変化させることができる。
好適には、該オーディオフィルタは、該フィルタによって補償された音の再生を可能にする為に、該音発生システムと一緒に実装される。
該オーディオ事前補償コントローラは、上記のように継続するアンプへのアナログ又はデジタルインターフェイスを有するデジタル信号プロセッサ又はコンピュータ上で、単独型の装置として実現されても良い。代替的には、該オーディオ事前補償コントローラは、音発生を目的とした以下の諸々の装置の構成内に一体化されて組み入れられても良い。即ち、デジタル事前補償器、自動車オーディオシステム、映画館オーディオシステム、コンサートホールオーディオシステム、家庭オーディオシステム、コンピュータゲームコンソール、テレビ、MP3プレーヤ用ドッキングステーション、サウンドバー、及び他の任意の装置又はシステム。又、FPGA又はASICsのようなカスタマイズされた計算ハードウェアを有するよりハードウェア的な形態で、該事前補償フィルタを実現することも可能である。
特定例において、該オーディオ事前補償コントローラは、線形、安定、因果的なフィードフォーワードコントローラとして実装される。
上記の実施例は、本発明の二、三の図解例として理解されるべきである。技術に習熟した人ならば、本発明の範囲から乖離すること無く、様々な変更、組み合わせ、及び変化が該実施例に為し得ることを理解されよう。特に、異なる実施例における異なる部分解は、技術的に可能である限り、他の構成においても組み合わせ得る。しかしながら、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により定義されるものである。
Claims (28)
- 連係する音発生システム用のオーディオ事前補償コントローラを決定する為の方法であって、前記音発生システムは合計でN≧2個のラウドスピーカを備え、各ラウドスピーカは各々一個のラウドスピーカ入力を有し、前記オーディオ事前補償コントローラは、L個のコントローラ入力信号用のL≧1個のコントローラ入力とN個のコントローラ出力信号用のN個のコントローラ出力を有し、一個の前記コントローラ出力が前記音発生システムの各ラウドスピーカに対応し、前記オーディオ事前補償コントローラは調整可能な複数個のフィルタパラメータを有し、
前記方法は、
前記N個のラウドスピーカ入力の少なくともその部分セットの各々一個のラウドスピーカ入力に対して、M≧2個の複数個の測定位置の各々において、前記M個の測定位置の各々における音測定に基づいて、各々一個のインパルス応答を見積る段階から成り、前記M個の測定位置はあるリスニング環境の関心領域内に分布し、更に
前記L個のコントローラ入力信号の各々に対して、前記N個のラウドスピーカのうち選定された一個を基幹ラウドスピーカとして、且つ、前記N個のラウドスピーカのうちの少なくとも一個を含む選定されたラウドスピーカの部分セットSを一個の(又は複数個の)支援ラウドスピーカとして指定する段階から成り、前記基幹ラウドスピーカはこの部分セットSの要素ではなく、更に
前記基幹ラウドスピーカの各々に対して、前記M個の測定位置の各々において、各々一個の目標インパルス応答を指定する段階から成り、前記目標インパルス応答は音響的な伝播遅延を有し、前記音響的伝播遅延は前記基幹ラウドスピーカから前記測定位置の各々までの距離に基づいて決定され、更に
前記L個のコントローラ入力信号の各々に対して、前記選定された一個の基幹ラウドスピーカと前記選定された一個の(又は複数個の)支援ラウドスピーカに基づき、前記オーディオ事前補償コントローラの動的挙動の安定性という拘束条件の下で基準関数が最適化されるように、前記オーディオ事前補償コントローラの前記複数個のフィルタパラメータを決定する段階から成り、前記基準関数は、前記M個の測定位置上での補償された前記見積られたインパルス応答と前記目標インパルス応答間のパワー差の重み付けされた総和を含む、ことを特徴とする方法。 - L≧2であり、且つ、前記L個の入力信号に対して決定された全ての前記複数個のフィルタパラメータを、前記オーディオ事前補償コントローラ用のフィルタパラメータの一個の合成セットに合成する段階を更に含み、且つ、前記フィルタパラメータの前記合成セットを有する前記オーディオ事前補償コントローラは前記L個の入力信号に作用するように構成されて、前記N個のコントローラ出力信号を前記ラウドスピーカに対して生成して前記目標インパルス応答を形成する、ことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記オーディオ事前補償コントローラは、(P≦L且つP≦Nである)P個の基幹ラウドスピーカの音響応答を、前記P個の基幹ラウドスピーカと、各基幹ラウドスピーカ毎の前記N個のラウドスピーカのうちの個数が1≦S≦N−1である追加支援ラウドスピーカの組み合わされた使用、により制御するように構成される、ことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
- 前記オーディオ事前補償コントローラが、その調整可能な複数個のフィルタパラメータのある設定の実現の為に、前記N個のラウドスピーカのうちの幾つかに対して出力ゼロを生成する能力を持つ、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
- 前記オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを決定する前記段階は、任意の目標動的システムと前記音発生システムのある動的モデルに基づく安定、線形、因果的多重可変フィードフォーワードコントローラのパラメータの線形二次ガウシアン(LQG)最適化に基づく、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
- 前記オーディオ事前補償コントローラの前記N個のコントローラ出力信号の各々は、位相補償成分と遅延成分を含む全域通過フィルタを介して各ラウドスピーカに供給されて、フィルタされたN個のコントローラ出力信号が生成される、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
- 前記基準関数はペナルティ項を含み、前記ペナルティ項においては、前記基準関数を最適化して得られた前記オーディオ事前補償コントローラが、制限されたマグニチュードの信号レベルを前記オーディオ事前補償コントローラ出力の選定部分セット上で生成して、更に前記制限信号レベルを選定ラウドスピーカ入力上で特定周波数帯域用の前記N個のラウドスピーカに対して供給する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
- 前記ペナルティ項は異なった形態で複数回選択されて、更に、前記オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを決定する前記段階は、前記ペナルティ項の各選択毎に反復されて前記オーディオ事前補償コントローラの複数個の事例をもたらし、更に、前記事例の各々は、個別に制限されたマグニチュードの信号レベルを特定周波数帯域用の前記S個の支援ラウドスピーカに対して生成する、ことを特徴とする請求項7記載の方法。
- 前記基準関数は、第一に、前記見積られたインパルス応答において存在し得る誤差の範囲を記述する複数個のモデルの一個のセットを含み、前記基準関数は、第二に、前記モデルのセット上での合計、重み付けされた合計、又は統計的期待値である一個の総計操作を含む、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
- 前記オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを決定する前記段階は又、前記オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを調整することに基づき、前記フィルタパラメータの前記調整は、前記M個の測定位置の少なくとも一個の部分セットにおいて、前記オーディオ事前補償コントローラを含む前記音発生システムの目標マグニチュード周波数応答に到達するように遂行される、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
- 前記オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを調整する前記段階は、前記M個の測定位置の少なくとも一個の部分セットにおけるマグニチュード周波数応答を評価し、その後、前記オーディオ事前補償コントローラを含む前記音発生システムの最小位相モデルを決定することに基づく、ことを特徴とする請求項10記載の方法。
- 前記目標インパルス応答は非ゼロであり、且つ所定の限界内で補正され得る調整可能な複数個のパラメータを含む、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
- 前記目標インパルス応答の前記調整可能な複数個のパラメータは、前記オーディオ事前補償コントローラの前記調整可能な複数個のパラメータと同様に、前記基準関数を最適化するという目的の為に協同的に調整される、ことを特徴とする請求項12記載の方法。
- 前記N個のラウドスピーカ入力の少なくともその部分セットの各々一個のラウドスピーカ入力に対して、M個の複数個の測定位置の各々において各々一個のインパルス応答を見積る前記段階は、前記M個の測定位置における前記音発生システムの動的応答を記述するモデルに基づく、ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
- 前記オーディオ事前補償コントローラは、オーディオフィルタ構造における前記フィルタパラメータを実装することによって作製される、ことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記オーディオフィルタ構造は、前記音発生システムと共に実装されて、前記リスニング環境内の前記M個の測定位置における前記目標インパルス応答の生成を可能にする、ことを特徴とする請求項15記載の方法。
- 前記音発生システムは、自動車オーディオシステム又は移動スタジオオーディオシステムであり、前記リスニング環境は、自動車又は移動スタジオの一部である、ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。
- 前記音発生システムは、映画館オーディオシステム、コンサートホールオーディオシステム、家庭オーディオシステム、又は専門家用オーディオシステムであり、前記リスニング環境は、映画館、コンサートホール、家庭、スタジオ、公会堂、又は他の任意の施設の一部である、ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
- 連係する音発生システム用のオーディオ事前補償コントローラを決定する為のシステムであって、前記音発生システムは合計でN≧2個のラウドスピーカを備え、各ラウドスピーカは各々一個のラウドスピーカ入力を有し、前記オーディオ事前補償コントローラは、L個のコントローラ入力信号用のL≧1個のコントローラ入力とN個のコントローラ出力信号用のN個のコントローラ出力を有し、一個の前記コントローラ出力が前記音発生システムの各ラウドスピーカに対応し、前記オーディオ事前補償コントローラは調整可能な複数個のフィルタパラメータを有し、
前記システムは、
前記N個のラウドスピーカ入力の少なくともその部分セットの各々一個のラウドスピーカ入力に対して、M≧2個の複数個の測定位置の各々において、前記M個の測定位置の各々における音測定に基づいて、各々一個のインパルス応答を見積る手段を備え、前記M個の測定位置はあるリスニング環境の関心領域内に分布し、更に
前記L個のコントローラ入力信号の各々に対して、前記N個のラウドスピーカのうち選定された一個を基幹ラウドスピーカとして、且つ、前記N個のラウドスピーカのうちの少なくとも一個を含む選定されたラウドスピーカの部分セットSを一個の(又は複数個の)支援ラウドスピーカとして指定する手段を備え、前記基幹ラウドスピーカはこの部分セットSの要素ではなく、更に
前記基幹ラウドスピーカの各々に対して、前記M個の測定位置の各々において、各々一個の目標インパルス応答を指定する手段を備え、前記目標インパルス応答は音響的な伝播遅延を有し、前記音響的伝播遅延は前記基幹ラウドスピーカから前記測定位置の各々までの距離に基づいて決定され、更に
前記L個のコントローラ入力信号の各々に対して、前記選定された一個の基幹ラウドスピーカと前記選定された一個の(又は複数個の)支援ラウドスピーカに基づき、前記オーディオ事前補償コントローラの動的挙動の安定性という拘束条件の下で基準関数が最適化されるように、前記オーディオ事前補償コントローラの前記複数個のフィルタパラメータを決定する手段を備え、前記基準関数は、前記M個の測定位置上での補償された前記見積られたインパルス応答と前記目標インパルス応答間のパワー差の重み付けされた総和を含む、ことを特徴とするシステム。 - L≧2であり、且つ、前記L個の入力信号に対して決定された全ての前記複数個のフィルタパラメータを、前記オーディオ事前補償コントローラ用のフィルタパラメータの一個の合成セットに合成する手段を更に備え、且つ、前記フィルタパラメータの前記合成セットを有する前記オーディオ事前補償コントローラは前記L個の入力信号に作用するように構成されて、前記N個のコントローラ出力信号を前記ラウドスピーカに対して生成して前記目標インパルス応答を形成する、ことを特徴とする請求項19記載のシステム。
- 前記オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを決定する前記手段は、任意の目標動的システムと前記音発生システムのある動的モデルに基づく安定、線形、因果的多重可変フィードフォーワードコントローラのパラメータの線形二次ガウシアン(LQG)最適化に基づいて動作するように構成される、ことを特徴とする請求項19又は20記載のシステム。
- 連係する音発生システム用のオーディオ事前補償コントローラをコンピュータシステム上で動作させる場合に決定する為のコンピュータプログラムであって、前記音発生システムは合計でN≧2個のラウドスピーカを備え、各ラウドスピーカは各々一個のラウドスピーカ入力を有し、前記オーディオ事前補償コントローラは、L個のコントローラ入力信号用のL≧1個のコントローラ入力とN個のコントローラ出力信号用のN個のコントローラ出力を有し、一個の前記コントローラ出力が前記音発生システムの各ラウドスピーカに対応し、前記オーディオ事前補償コントローラは調整可能な複数個のフィルタパラメータを有し、
前記コンピュータプログラムは、
前記N個のラウドスピーカ入力の少なくともその部分セットの各々一個のラウドスピーカ入力に対して、M≧2個の複数個の測定位置の各々において、前記M個の測定位置の各々における音測定に基づいて、各々一個のインパルス応答を見積るプログラム手段を備え、前記M個の測定位置はあるリスニング環境の関心領域内に分布し、更に
前記L個のコントローラ入力信号の各々に対して、前記N個のラウドスピーカのうち選定された一個を基幹ラウドスピーカとして、且つ、前記N個のラウドスピーカのうちの少なくとも一個を含む選定されたラウドスピーカの部分セットSを一個の(又は複数個の)支援ラウドスピーカとして指定するプログラム手段を備え、前記基幹ラウドスピーカはこの部分セットSの要素ではなく、更に
前記基幹ラウドスピーカの各々に対して、前記M個の測定位置の各々において、各々一個の目標インパルス応答を指定するプログラム手段を備え、前記目標インパルス応答は音響的な伝播遅延を有し、前記音響的伝播遅延は前記基幹ラウドスピーカから前記測定位置の各々までの距離に基づいて決定され、更に
前記L個のコントローラ入力信号の各々に対して、前記選定された一個の基幹ラウドスピーカと前記選定された一個の(又は複数個の)支援ラウドスピーカに基づき、前記オーディオ事前補償コントローラの動的挙動の安定性という拘束条件の下で基準関数が最適化されるように、前記オーディオ事前補償コントローラの前記複数個のフィルタパラメータを決定するプログラム手段を備え、前記基準関数は、前記M個の測定位置上での補償された前記見積られたインパルス応答と前記目標インパルス応答間のパワー差の重み付けされた総和を含む、ことを特徴とするコンピュータプログラム。 - L≧2であり、且つ、前記L個の入力信号に対して決定された全ての前記複数個のフィルタパラメータを、前記オーディオ事前補償コントローラ用のフィルタパラメータの一個の合成セットに合成するプログラム手段を更に備え、且つ、前記フィルタパラメータの前記合成セットを有する前記オーディオ事前補償コントローラは前記L個の入力信号に作用するように構成されて、前記N個のコントローラ出力信号を前記ラウドスピーカに対して生成して前記目標インパルス応答を形成する、ことを特徴とする請求項22記載のコンピュータプログラム。
- 前記オーディオ事前補償コントローラのフィルタパラメータを決定する前記手段は、任意の目標動的システムと前記音発生システムのある動的モデルに基づく安定、線形、因果的多重可変フィードフォーワードコントローラのパラメータの線形二次ガウシアン(LQG)最適化に基づいて動作するように構成される、ことを特徴とする請求項22又は23記載のコンピュータプログラム。
- 請求項1乃至18のいずれかに記載の方法を用いて決定されるオーディオ事前補償コントローラ。
- 前記オーディオ事前補償コントローラは線形、安定、因果的フィードフォーワードコントローラである、ことを特徴とする請求項25記載のオーディオ事前補償コントローラ。
- 音発生システムと前記音発生システムへの入力経路上に存在するオーディオ事前補償コントローラを備えるオーディオシステムであって、前記オーディオ事前補償コントローラは請求項1乃至18のいずれかに記載の方法を用いて決定される、ことを特徴とするオーディオシステム。
- 前記オーディオ事前補償コントローラがデジタルオーディオ信号を生成するように構成されたことを特徴とする請求項25または26に記載のオーディオ事前補償コントローラ。
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