JP5955605B2 - ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents
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また、この発明に係るステンレス鋼の製造方法は、ステンレス鋼の原料を溶解して生成されたステンレス鋼溶銑を精錬炉でステンレス溶鋼に精錬処理した後、精錬炉から溶鋼鍋にステンレス溶鋼を出鋼するステンレス鋼の製造方法において、上記出鋼前に、溶鋼鍋に予め加熱した炭酸カルシウムを投入するものである。
溶鋼鍋への炭酸カルシウムの投入量が、溶鋼鍋に出鋼されるステンレス溶鋼1トンあたりにつき1.0〜5.0kgであってもよい。
溶鋼鍋へ投入される炭酸カルシウムは、10〜50mmの粒度範囲であってもよい。
ステンレス溶鋼を出鋼する前の精錬炉に炭酸カルシウムを投入し、ステンレス溶鋼に発生するスラグを固化させてもよい。
溶鋼鍋に出鋼したステンレス溶鋼を、真空精錬炉でさらに精錬処理してもよい。
以下、この発明の実施の形態に係るステンレス鋼の製造方法について添付図面に基づいて説明する。
まず、ステンレス鋼の製造は、溶解工程、一次精錬工程、二次精錬工程、及び鋳造工程がこの順で実施されて行われる。
溶解工程では、ステンレス製鋼用の原料となるスクラップや合金を電気炉で溶解してステンレス鋼溶銑を生成し、生成したステンレス鋼溶銑が精錬炉である転炉に注銑される。さらに、一次精錬工程では、転炉内のステンレス鋼溶銑に酸素を吹精することによって含有されている炭素を除去する粗脱炭処理が行われ、それによりステンレス溶鋼と炭素酸化物及び不純物を含むスラグとが生成する。さらに、一次精錬工程で生成したステンレス溶鋼は、溶鋼鍋に出鋼されて二次精錬工程に移され、その際にスラグが除去される。
まず、注銑工程(S1)にて、電気炉で生成されたステンレス鋼溶銑1が転炉2に注入される。次いで、酸素吹精工程(S2)にて、転炉2内のステンレス鋼溶銑1の表面にノズル2aから酸素が吹き付けられ、それによって、ステンレス鋼溶銑1は、含有する炭素が酸化・除去される脱炭処理されてステンレス溶鋼1aとステンレス鋼の品質に悪影響を与えるスラグ1bとを生成する。
なお、転炉2内に添加される固化用炭酸カルシウム5aは、10mm以上50mm以下の粒度範囲を有する塊状のものが用いられるのが好ましい。そして、粒度が10mm以上50mm以下の固化用炭酸カルシウム5aを使用した場合、転炉2内における質量1トンあたりのステンレス鋼溶銑1から生じるスラグ1bの固化に必要な量が約10kg〜約20kgとなる。
固化用炭酸カルシウム5aの粒度が50mmを超えると、スラグ1bの表面積に対する固化用炭酸カルシウム5aの表面積の比である表面積比(炭酸カルシウムの表面積/スラグの表面積)が小さくなるため、互いの接触面積が小さくなり、固化用炭酸カルシウム5aがスラグ1bから熱を吸収しにくくなる。これにより、固化用炭酸カルシウム5aとスラグ1bとの反応時間、つまりスラグ1bの固化に要する時間が長くなり、ステンレス鋼の生産性が低下する。
なお、スラグ1bの固化材として、酸化カルシウム(生石灰)を使用してもよい。
一方、出鋼工程(S4)におけるステンレス溶鋼1aの出鋼後の転炉2は、続く傾動復帰工程(S5)にて、傾動されていた状態から元の状態に戻され、次いで、排滓工程(S6)にて再び傾けられ、上部の開口2cを介して内部の固化したスラグ1bが容器4に排出される、つまり排滓される。
酸素吹精工程(S2)において、転炉2内への酸素の吹き付け操業の実施中に、鋳造工程完了後の整備が完了し台車6に載せられた溶鋼鍋3が、転炉2の炉下のピットに移送される。溶鋼鍋3を載せた台車6がピット内の所定の位置に配置されると、図示しない固化材タンクに接続された固化材供給管7から溶鋼鍋3内に、炭酸カルシウム5bが投入される。そして、投入された炭酸カルシウム5bは、溶鋼鍋3の底部3aに堆積する。このとき、図2の状態Saに示す状態となる。
溶鋼鍋予熱バーナー8は、溶鋼鍋3の内部に向かって炎を放射することによって、溶鋼鍋3を加熱すると共に、溶鋼鍋3内の炭酸カルシウム5bも加熱する。さらに、溶鋼鍋3内では、底部3aにおける炭酸カルシウム5bの周囲の気体の温度が約800℃〜約1300℃となるように、加熱される。そして、このときの炭酸カルシウム5bの表面温度は約650℃〜約1150℃となる。
なお、炭酸カルシウムの加熱については、上述の溶鋼鍋3の予備加熱時におこなうのが最も効率的であるが、これに限られるものではなく、精錬炉(転炉2)からの出鋼前に、別の加熱装置により予め加熱された炭酸カルシウムを溶鋼鍋3に投入してもよい。
炭酸カルシウムの熱分解温度は825℃であるため、予備加熱によって溶鋼鍋3内の炭酸カルシウム5bの周囲の雰囲気温度(予備加熱温度)を熱分解温度付近に保持しておくと、溶鋼鍋3内にステンレス溶鋼1aが出鋼されたとき、ステンレス溶鋼1aの熱に接触した炭酸カルシウム5bは、直ちに分解反応速度を上昇させ、ステンレス溶鋼1aをガスシールするのに十分な量の二酸化炭素を発生できる状態となる。
炭酸カルシウム5bの溶鋼鍋3への投入量が、溶鋼鍋3に出鋼されるステンレス溶鋼1aの質量1トンあたりで約1.0kgよりも少ない場合、投入量が少な過ぎるため、出鋼開始から出鋼完了までの全体にわたった二酸化炭素によるステンレス溶鋼1aのガスシールが得られない。一方、炭酸カルシウム5bの溶鋼鍋3への投入量が、溶鋼鍋3に出鋼されるステンレス溶鋼1aの質量1トンあたりで約5.0kgよりも多い場合、熱分解反応時の炭酸カルシウム5bによる吸熱量が多くなり、吸熱されるステンレス溶鋼1aの温度が過度に低下するため、後に続く二次精錬工程で要するステンレス溶鋼1aの熱量に不足が生じ、操業に悪影響が及ぶ。さらに、炭酸カルシウム5bを過剰に投入すると、出鋼完了後もステンレス溶鋼1a中に残留して二酸化炭素を発生し続けるため、溶鋼鍋3を次工程へ運搬する際にスプラッシュが飛散するなどの問題が生じる。
炭酸カルシウム5bの粒度が10mm未満の場合、炭酸カルシウム5bは比表面積が大きくなることで吸熱しやすくなり、炭酸カルシウム5bの熱分解速度が高くなるため、出鋼完了までに炭酸カルシウム5bの全てが熱分解して二酸化炭素の発生が終了し、出鋼完了付近の出鋼末期で二酸化炭素によるガスシールが得られない。一方、炭酸カルシウム5bの粒度が50mmを超える場合、炭酸カルシウム5bは比表面積が小さくなることで吸熱しにくくなり、炭酸カルシウム5bの熱分解反応が活発にならずに熱分解の完了までに長時間を要するため、出鋼開始から出鋼完了までの間の出鋼中、ステンレス溶鋼1aのガスシールに十分な量の二酸化炭素の発生量が得られない。
なお、ケースA〜Cはいずれも、電気炉において1チャージに生成される80トンのステンレス鋼溶銑に対して実施したものであり、転炉2から溶鋼鍋3に出鋼する際のステンレス溶鋼の溶鋼温度を1800℃にして実施したものである。また、ケースB及びCでは、溶鋼鍋3内の約80トンのステンレス溶鋼に粒度10mm以上50mm以下の炭酸カルシウムを300kg投入し、さらに、ケースCでは、1020℃の予備加熱温度で20分間の予備加熱を実施している。
ケースBの場合、出鋼開始後、二酸化炭素の発生が開始して濃度が緩やかに増加し、約20質量%の二酸化炭素濃度に達した後、緩やかに減少している。そして、酸素濃度は、二酸化炭素濃度と相反する動きで推移しており、空気の濃度も酸素濃度と同様の動きで推移する。
ケースCの場合、出鋼開始時から二酸化炭素の発生が開始して濃度が急激に増加し、出鋼中の1/3以上の期間にわたって約40〜50質量%の二酸化炭素濃度が維持されている。そして、酸素濃度は、出鋼中の1/3以上の期間にわたって0近傍まで低下しており、このとき、空気の濃度も大幅に低下して約50〜60質量%となる。
以下、実施の形態に係るステンレス鋼の製造方法によって溶鋼鍋3にステンレス溶鋼1aを出鋼する実施例の他、転炉2から溶鋼鍋3に出鋼する際の条件を実施例から変更した比較例における溶鋼鍋3内のステンレス溶鋼1aの状態を説明する。
さらに、実施例1及び2、並びに比較例1−1、1−2、2−1及び2−2はいずれも、電気炉において1チャージに生成される80トンのステンレス鋼溶銑に対して実施したものであり、転炉2から溶鋼鍋3に出鋼する際のステンレス溶鋼の溶鋼温度を1800℃にして実施したものである。
比較例1−1は、転炉2でのスラグの固化材として生石灰を使用し、さらに出鋼前の溶鋼鍋3に炭酸カルシウムを投入せず予備加熱も実施せずに、出鋼を開始した例である。
比較例1−2は、転炉2でのスラグの固化材として生石灰を使用し、さらに出鋼前の溶鋼鍋3に粒度10mm以上50mm以下の炭酸カルシウムを300kg投入するがその後に予備加熱を実施せずに、出鋼を開始した例である。
また、実施例1、並びに比較例1−1及び1−2における吸窒量を比較した図が、図4に示されている。なお、図4では、横軸に各例をとり、縦軸に吸窒量をとっている。
比較例2−1は、転炉2でのスラグの固化材として生石灰を使用し、さらに出鋼前の溶鋼鍋3に炭酸カルシウムを投入せず予備加熱も実施せずに、出鋼を開始した例である。
比較例2−2は、転炉2でのスラグの固化材として炭酸カルシウムを使用し、さらに出鋼前の溶鋼鍋3に粒度10mm以上50mm以下の炭酸カルシウムを300kg投入するがその後に予備加熱を実施せずに、出鋼を開始した例である。
また、実施例2、並びに比較例2−1及び2−2における吸窒量を比較した図が、図5に示されている。なお、図5では、横軸に各例をとり、縦軸に吸窒量をとっている。
また、溶鋼鍋3への炭酸カルシウム5bの投入量が、溶鋼鍋3に出鋼されるステンレス溶鋼1aの1トンあたりにつき1.0〜5.0kgである。これによって、炭酸カルシウム5bが二酸化炭素の発生を継続する時間を、出鋼開始から出鋼完了までにわたって継続するように制御することができる。さらに、炭酸カルシウム5bを過度に投入しないことによって、出鋼中に接触して吸熱するステンレス溶鋼1aに対して過度に温度低下させるのを防ぐことができる。
また、ステンレス溶鋼1aを出鋼する前の転炉2に固化用炭酸カルシウム5aを投入し、ステンレス溶鋼1aに発生するスラグを固化させる。これによって、転炉2内でもステンレス溶鋼1aが、固化用炭酸カルシウム5aの発生する二酸化炭素によってガスシールされ、空気との接触に起因する窒素の吸収を抑えることができる。
また、実施の形態に係るステンレス鋼の製造方法は、ステンレス鋼の製造に適用されていたが、他の金属の製造に適用してもよい。
Claims (7)
- ステンレス鋼の原料を溶解して生成されたステンレス鋼溶銑を精錬炉でステンレス溶鋼に精錬処理した後、前記精錬炉から溶鋼鍋に前記ステンレス溶鋼を出鋼するステンレス鋼の製造方法において、前記出鋼前に、前記溶鋼鍋に炭酸カルシウムを投入し且つ前記溶鋼鍋内の前記炭酸カルシウムを加熱するステンレス鋼の製造方法であって、前記ステンレス溶鋼を出鋼する前の前記精錬炉に炭酸カルシウムを投入し、前記ステンレス溶鋼に発生するスラグを固化させるステンレス鋼の製造方法。
- ステンレス鋼の原料を溶解して生成されたステンレス鋼溶銑を精錬炉でステンレス溶鋼に精錬処理した後、前記精錬炉から溶鋼鍋に前記ステンレス溶鋼を出鋼するステンレス鋼の製造方法において、前記出鋼前に、前記溶鋼鍋に予め加熱した炭酸カルシウムを投入するステンレス鋼の製造方法。
- 前記ステンレス溶鋼を出鋼する前の前記精錬炉に炭酸カルシウムを投入し、前記ステンレス溶鋼に発生するスラグを固化させる請求項2に記載のステンレス鋼の製造方法。
- 前記炭酸カルシウムを800℃〜1300℃の雰囲気温度で加熱する請求項1〜3のいずれか一項に記載のステンレス鋼の製造方法。
- 前記溶鋼鍋への前記炭酸カルシウムの投入量が、前記溶鋼鍋に出鋼される前記ステンレス溶鋼1トンあたりにつき1.0〜5.0kgである請求項1〜4のいずれか一項に記載のステンレス鋼の製造方法。
- 前記溶鋼鍋へ投入される前記炭酸カルシウムは、10〜50mmの粒度範囲である請求項1〜5のいずれか一項に記載のステンレス鋼の製造方法。
- 前記溶鋼鍋に出鋼した前記ステンレス溶鋼を、真空精錬炉でさらに精錬処理する請求項1〜6のいずれか一項に記載のステンレス鋼の製造方法。
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