したがって、滅菌剤が十分に浸透したか否かを検出するように作動する、滅菌器内の滅菌サイクルの効果を決定するための装置及び方法が必要とされている。
多孔質負荷物滅菌サイクルの空気除去局面中の空気除去の有効性を評価するために通常使用されている手順の1つは、Bowie−Dick試験として既知である。典型的なBowie−Dick試験パックは、特定のサイズに折り畳まれた洗濯したてのタオルのスタックから本質的になる。次いで、化学的インジケーターのシートをパックの中心部内に配置する。滅菌器内の空気除去が不十分な場合、パックの中心部内に空気ポケットが形成されることにより、蒸気に感受性の化学的インジケーターシートに対する蒸気の接触が阻止される。空気ポケットの存在は、インジケーターが、十分な空気除去を示す完全な又は均一の色変化を有さないことにより記録されるであろう。Bowie−Dickタイプの試験は、一般に、予備真空滅菌器の空気除去段階の効果を決定するのに十分な手順であるとして認められているが、尚多数の欠点が存在する。試験パックは予め組み立てられていないため、手順が滅菌器の性能の監視に用いられる度に構成する必要がある。試験手順は、例えば、洗濯、予備加湿、タオルの厚さ及び摩耗、並びに使用するタオルの数等の様々な因子が試験結果を変化させるため、一貫性が不十分であり得る。更に、タオルパックの準備、組み立て及び使用は、時間がかかり、煩わしい。したがって、これらの限界を克服するために代替的なBowie Dick試験パックが開発された。
代替的なBowie−Dick試験パックの一例は、欧州特許第0 419 282号(Marvin及びKirckof)に記載されており、その特許は、蒸気又はガス滅菌器用の使い捨て試験パックについて記載している。試験パックは、頂壁及び底壁を有する容器を含み、容器内に多孔質包装材料が配置されている。包装材料は、試験パックを通した滅菌剤の流れを妨げるように作用する制限経路を提供することにより、滅菌剤の浸透を確認(challenge)する。
パラメトリック監視を用いて、滅菌サイクルが監視又は制御されている。例えば、米国特許第4,865,814号(Childress)では、マイクロプロセッサを含む自動滅菌器が開示されており、マイクロプロセッサは、滅菌チャンバ内部の温度レベルと圧力レベルの両方を監視し、ヒーターを制御して、タイマーの開始前に圧力及び温度の両方を所定のレベルに到達させる。タイマーの開始後、圧力又は温度レベルが所定の最小値の下方に低下した場合、ヒーターが停止される。
蒸気滅菌器の滅菌基準は、多くの場合、滅菌される品目が、所定の温度で所定の時間中、高品質の蒸気に供されることを必要とすることにより規定される。飽和蒸気が密閉チャンバ内に封じ込まれている場合、飽和蒸気の圧力及び温度変数は独立変数であることが既知であるため、これら2つの変数を監視することは、滅菌サイクル中に適切な条件が維持されていることを確実にし得る。
滅菌チャンバ自体内の環境条件を監視することが望ましいが、滅菌される実際の負荷物(試験パックではなく)の中心部内又は中心部で、環境条件を監視し、滅菌サイクルの効果を決定できることが更により望ましい。
外部監視を使用し得る一方、滅菌チャンバ内に配線を引く必要性と、それによるチャンバの完全性の潜在的な侵害を回避する、自己充足型の監視ユニットを有することが更に望ましい。
米国特許第3,982,893号(Joslyn)は、滅菌される負荷物内に配置することができるハウジングと、ハウジングの壁の外側に配置されて、少なくとも湿度及び温度を含む、負荷物の環境条件を連続的に監視するセンサ手段とを含む、滅菌器の制御装置を開示している。装置は、ハウジング内にRF発生器を含み、その発生器は信号を生成し、その信号を滅菌チャンバ内に配置されたアンテナに伝送し、そのアンテナは、滅菌器の作動を制御する外部の制御手段に配線されている。それ故、米国特許第3,982,893号の装置は、負荷物の中心部の湿度及び温度を監視することにより滅菌サイクルの効果を試験するのではなく、滅菌器の作動を制御するための手段を提供する。
今日使用されている、滅菌器の効果を試験する装置は、典型的には、生物学的及び/又は化学的インジケーターを使用する。Bowie−Dick試験は、サイクルの空気除去段階の効果を決定するために、各作業日に試験の開始時に典型的に行われる化学的インジケーター試験の一例である。この試験は、漏洩、機能しなくなったガスケット若しくは弁による滅菌チャンバ内の残留空気の存在、又は供給蒸気中に存在する非凝縮性ガスの進入を検知するよう設計され、これらは全て、試験パックを構成する多孔質塊内への十分な蒸気の浸透を阻止する。化学的インジケーター試験シートは、滅菌プロセスに対する暴露後、1つの明瞭な色から別の色、例えば初期の白色から最終的な黒色への可視変化を経る。不十分な蒸気浸透の結果、化学的インジケーター試験シートの表面全域で非均一な色の発生が起こる。しかしながら、化学的インジケーターは、色変化の状態に応じて、解釈が困難な場合がある。
生物学的インジケーターシステムは、サイクルの滅菌段階の十分さに関する情報を提供する。生物学的インジケーター試験システムは、滅菌サイクルに供される生きた胞子を使用する。サイクル後、胞子がインキュベートされ、システムは増殖が少しでも存在するか否かを検出する。増殖が存在しない場合、システムは滅菌プロセスが有効であることを示す。それ故、生物学的インジケーターは、滅菌用の条件が存在するか否かを決定することができるが、インキュベーション期間を原因とする、結果を得るための時間長は、多くの場合、少なくとも24時間である。したがって、生物学的インジケーターシステムは、化学的インジケーターの色変化が即時の結果を提供するため、化学的インジケーターと共に使用されることが多い。更に、化学的及び生物学的インジケーターの両方を使用することにより、空気除去段階及び滅菌段階の両方の十分さに関する情報が提供される。
パラメトリック監視は、即時に結果を得ることができ、その結果を使用して明確な合格/不合格決定を提供することができるため、化学的又は生物学的インジケーターを越える利点を有する。加えて、パラメトリック監視から、滅菌器の性能を更に分析することが可能な詳細なデータを得ることができる。
欧州特許第1 230 936号(van Doornmalen及びVerschueren)は、滅菌空間と連通した参照表面に隣接する滅菌剤を用いた、表面滅菌のための滅菌条件を決定する方法及び装置について記載し、滅菌剤は、参照表面にごく僅かなアクセス有する。前記方法は、電子信号を生成する工程を含み、その信号から参照表面に隣接する滅菌条件を誘導することができる参照表面は、参照空間内に配置されていてもよい。
欧州特許第1 230 936号の図1に示される装置は、欧州特許第1 230 936号に、以下のように記載されている。装置は、細いルーメンの形態の参照チャンバを含む。ルーメンは、蒸気等の滅菌剤が導入される滅菌空間内に配置されてもよい。ルーメンの一端は閉鎖され、末端内側壁に変換器が設けられ、変換器の補助によって、変換器に隣接した温度と滅菌剤の飽和度とを決定することができる。ルーメンは、滅菌剤が、滅菌空間の他の部分と比較して、変換器にアクセスすることが比較的困難な形状を有する。ルーメンは、外径3mm及び内径2mmを有する約1.5mのチューブから形成されている。変換器は温度センサを含み、温度センサは電子信号を生成することができ、その信号の補助により、壁に隣接した滅菌条件を決定することができる。更に、ルーメンには、その閉鎖端に隣接して、部分的に断熱された壁が設けられている。センサからの信号は、信号ラインを経由して処理ユニットに結合される。処理ユニットは圧力センサとも通信し、圧力センサは、滅菌空間内の圧力を測定することができる。処理ユニットは、測定温度を測定圧力と関連付けることにより、温度センサに隣接した滅菌剤の飽和度を決定することができる。
欧州特許第1 230 936号の図2に示される装置は、欧州特許第1 230 936号に、以下のように記載されている。実施形態は、滅菌空間内に一体のもの(one whole)として配置されてもよく、試験器具として機能し、試験器具の補助により、滅菌中のプロセス条件を評価することができる。これを目的として、試験器具はチャンバを含み、チャンバの内部には電子温度センサが配置されている。チャンバは例えばねじ連結具の形態を有する連結要素を含み、それにより、例えば中空ルーメンの形態で示される滅菌対象に対応する形状を有する本体と接続されることができる。温度センサは断熱壁により滅菌空間から断熱され、かつ電子処理ユニットと接続されている。ユニットは耐熱性であり、また滅菌空間内の温度を測定するための更なる温度センサと、滅菌空間内の圧力を測定するための圧力センサとを更に含む。処理ユニットは、チャンバ内のセンサにより測定された温度を、圧力センサにより測定された圧力と、滅菌空間内の温度センサにより測定された温度とを関連付け、それらからチャンバ内の滅菌剤の飽和度を誘導する。また、滅菌空間内の滅菌剤の飽和度は、センサにより測定された温度を測定圧力と関連付けることにより決定される。滅菌空間内で決定された条件に関連して、滅菌条件の所定の逸脱がチャンバ内で決定された場合、インジケーターランプ、例えばLEDが赤色の点滅を開始して、滅菌が適切に進行していないか、又は適切に進行されていなかったことを示すことができる。そのような逸脱が生じない場合、LEDは緑色の信号光を示し、滅菌が正しく行われたことを示す。
しかしながら、本発明者らは、欧州特許第1 230 936号に記載されているタイプの方法及び装置は、適切な結果を導かない場合があることを見出した。所定の環境内で滅菌条件が満たされたか否かを適切に決定する仕事は、比較的複雑である。本発明者らは、滅菌対象に、又は滅菌対象上に、特定の温度が達成されたことは十分ではないことを見出した。むしろ、全ての、又は実質的に全ての微生物を排除するのに有効な蒸気滅菌のためには、最少の熱移動が起こる必要がある。蒸気の飽和が増大する程、蒸気から滅菌対象表面への熱移動が良好となる。したがって、欧州特許第1 230 936号に提案されている、「細いルーメンの形態の参照チャンバ」内での温度測定でさえも、必ずしも所望の滅菌条件が満たされていることを保証するものではない。更に、本発明者らは、欧州特許第1 230 936号に記載されているタイプの市販の器具は、場合により、試験器具内の実際よりも高い温度読み取りの結果、誤った合格を与えることを見出しており、これは、特定の理論に束縛されるものではないが、器具の内壁と接触して配置された内部センサと、全材料がある程度の熱伝導率を所有し及び/又は加熱されるという事実とによるものと考えられる。
したがって、先行技術にて既知の装置及び方法よりも信頼性が高く、正確な結果を提供する、滅菌チャンバ内の滅菌条件を決定するための装置及び方法を提供することが望ましい。
本開示の一態様において、滅菌チャンバ内の滅菌条件を決定するための改良された装置が提供される。装置は、前記滅菌チャンバ内に配置される細長いチューブを含み、前記チューブは、チューブ壁と内部の空洞とを有し、かつその一端が開放し、他端が閉鎖されている。装置は更に、細長いチューブの空洞内に少なくとも2つの温度センサを含み、少なくとも2つの温度センサは、細長いチューブの長さに沿って所定の距離、互いに離間され、かつ細長いチューブの内壁から離間されている。
細長いチューブの空洞内に、その長さに沿って、細長いチューブの内壁から離間して、少なくとも2つの温度センサを提供する本開示による装置は、滅菌チャンバ内で滅菌条件が満たされているか否かを決定することの正確さ及び信頼性を改善する。少なくとも2つの温度センサを細長いチューブの内壁から離間させることにより、壁における熱移動が有利に最小限にされ、それ故、正確な温度測定の提供を容易にする。細長いチューブの長さに沿って離間された2つ以上の位置で温度を測定することにより、温度移動、温度輸送、及び細長いチューブ内の温度勾配に関する情報を収集することができる。細長いチューブ内の単一の温度センサは、細長いチューブ内の特定の位置で所定の温度に達したか否かの情報を提供する一方、互いに離間された2つ以上の温度センサは、細長いチューブ内での温度上昇の速度又は率に関する更なる情報を提供する。この情報を使用して、滅菌条件が滅菌チャンバ内で満たされたか否かを、より確実に決定することができる。更に、本発明者らは、細長いチューブの長さに沿った温度勾配の決定は、空気/蒸気混合物中に存在する蒸気の量が増大するにつれて温度がより高くなるため、細長いチューブ内及びそのチューブに沿った空気/蒸気混合物、並びに細長いチューブ内及びそのチューブに沿って存在する蒸気の量/細長いチューブ内及びそのチューブに沿って残留する空気の量の望ましい評価を可能にすることを見出した。細長いチューブの長さに沿って所定の距離、互いに離間され、かつ細長いチューブの内壁から離間された少なくとも2つの温度センサ(例えば、熱電対)を使用する、本明細書に記載する装置は、空気/蒸気勾配の望ましい正確な評価と、ひいては滅菌条件の望ましい確実な決定とを行うこと可能にする、滅菌サイクル効果の改善された評価を可能にする。
いくつかの実施形態によれば、少なくとも2つの温度センサは、細長いチューブの開放端の開口部を介したもの以外は、細長いチューブの外部から実質的に熱的に断絶されるよう配置される。それ故、細長いチューブ内の少なくとも2つの温度センサにより測定される温度上昇が、本質的に、細長いチューブの通路を介した熱移動のみにより生じることと、通路を介さない熱移動、細長いチューブの外部からの側方熱移動、例えば細長いチューブの壁を介した温度センサへの熱移動が更に最小限にされる可能性とが更に促進される。この文脈において、用語「熱的に断絶される」は、細長いチューブの外部から温度センサへの熱橋が存在しないものとして理解されるべきである。「実質的に熱的に断絶される」は、標準的な滅菌手順中、側方熱移動が、シグナル対ノイズ比の百分率の観点から50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、最も好ましくは25%未満の量であることを意味する((QPMax+QL)/(QPMin+QL))×100%、式中、QPは、細長いチューブの通路を介した温度センサへの熱移動であり、QLは、温度センサへの側方熱移動(即ち、通路を介さない、例えば壁を介した、ワイヤを介した熱移動等)である。
装置は、前記チューブ内の少なくとも2つの温度センサにより測定された温度と、参照温度とに基づいて、所定の滅菌条件が前記滅菌チャンバ内で満たされているか否かを決定するように適合されたプロセッサを含むことが望ましい場合がある。参照温度は、一般に、滅菌チャンバ内の、問題とされていない(unchallenged)温度として理解される。したがって、参照温度は、前記滅菌チャンバ内であるが細長いチューブの外部の位置で有利に決定される。装置は、細長いチューブの外部の温度センサ、及び/又は細長いチューブの外部の圧力センサを更に含むことが好ましい。参照温度は、チューブの外部の前記温度センサにより直接測定され、又はチューブの外部の前記圧力センサにより測定された圧力に基づいて計算され得る。
細長いチューブ内の少なくとも2つの温度センサは、それぞれ、熱電対、好ましくはタイプT又はタイプR又はタイプS又はタイプBの熱電対を含むことが好ましい。勿論、細長いチューブ内の温度を測定するための他のセンサ手段も使用することができる。しかしながら、前述した熱電対は、小さい熱容量を有し、確実な結果を提供するため有利である。
細長いチューブの壁は、内部を通る少なくとも2つの通路を含み、各熱電対は2つのワイヤを含み、各ワイヤは、チューブ壁内の通路内を延びることが望ましい。細長いチューブは円筒形であり、ワイヤはチューブ内を径方向に延び、ワイヤの末端部は、本質的にチューブの中心軸線上の(長さに沿った)位置で、互いに接続されて熱電対を形成することが好ましい。そのような対称的配置は、チューブの壁から熱電対への熱移動を更に最小限にし、それ故、確実かつ正確な結果の提供を更に高める。各通路の内部は、そこを通過する各ワイヤと共に密封材料で密封され、熱電対と細長いチューブの外部との熱的接触を最小限にすることが更に好ましい。好適な密封材料は、例えばシロキサン、詳細にはポリシロキサン、より詳細にはビニルポリシロキサン、及び良好な断熱特性を有することが既知の他の材料である。断熱を更に最適化するために、各通路の外側開口部を、そこを通過する各ワイヤと共に密封カラーで覆うことが好ましい。密封カラー用の好適な材料は、とりわけ、上述した密封材料である。0.4mm以下、好ましくは0.35mm以下、より好ましくは0.2mm以下の直径を有するワイヤを使用することが有利である。熱電対のワイヤの直径が小さくなる程、一般に、細長いチューブの外部からの、ワイヤを介したチューブ内の測定位置に向かった任意の熱移動の可能性が小さくなる。
好ましい実施形態では、装置は、細長いチューブ内に3、4、5、6個又はそれより多くの温度センサを含んでもよい。好ましくは、これらの温度センサは全て、細長いチューブの長さに沿って所定の距離、互いに離間され、より好ましくは互いに等間隔に配置されている。
細長いチューブ内の温度センサは、好ましくは5mm〜40mmまで(40mmを含む)、より好ましくは10mm〜30mmまで(30mmを含む)の距離、離間されていることが望ましい可能性がある。
細長いチューブの全長は、使用される温度センサの数と、センサ間の選択された間隔とに依存する。一般に、2つのセンサを含む細長いチューブの場合、少なくとも40mmの全長が望ましいであろう。
一般に、細長いチューブ内での空気/蒸気勾配の評価において、温度センサの少なくとも1つを、細長いチューブの閉鎖端の近辺に配置することが好ましい。温度センサの少なくとも1つは、閉鎖端の内壁から、細長いチューブの内径の半径の0.5〜6倍の範囲内の距離に配置されていることが望ましく、細長いチューブの内径の半径の1〜4倍の距離に配置されていることがより望ましい場合がある。
本開示による装置の好ましい実施形態では、少なくとも2つの温度センサを含む細長いチューブは、細長いルーメンに結合でき、より好ましくは解放可能に結合できるように構成されている。
本開示による装置の別の好ましい実施形態では、細長いチューブは、細長いルーメンに結合している。
そのような細長いルーメンは、約1m〜3mまで、詳細には約1m〜2mまで、より詳細には約1.5mの長さを有してもよい。
細長いチューブ、及び、使用される場合、細長いルーメンは、10mm以下、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、又は更により好ましくは4mm以下、最も好ましくは約2mmの内径を有することが望ましい場合がある。
細長いチューブ、及び、使用される場合、細長いルーメン内での蒸気凝縮の可能性を回避し又は最小限にするために、その長さに沿った壁の厚さは、厚すぎないことが望ましい。例えば、厚い壁の使用により、内壁が(外壁と比較して)冷たくなる場合があり、これは蒸気を凝縮し得る。認識されるように、このことは不都合なほど不正確な温度測定、ひいては不正確な滅菌条件の評価をもたらし得る。したがって、細長いチューブ、及び、使用される場合、細長いルーメンは、好ましくは、細長いチューブ又は細長いルーメンの長さに沿って、それぞれ、4mm以下、より好ましくは3mm以下、更により好ましくは2mm以下、最も好ましくは2mm〜0.35mmまで(0.35mmを含む)の壁厚を有し得る。
別の態様において、本開示は更に、滅菌チャンバ内の滅菌条件を決定するための方法を提供する。本開示のこの態様による方法は、本明細書に記載した装置を使用することが好ましい。本方法によれば、所定の滅菌プロトコルが行われる。前記プロトコル中、滅菌チャンバ内に位置付けられた細長いチューブ内の第1及び第2の位置において、少なくとも第1及び第2の温度を測定する。更に、前記プロトコル中、滅菌チャンバ内の、細長いチューブの外部の位置における参照温度を決定する。最終的に、少なくとも第1及び第2の温度と参照温度とに基づいて、前記滅菌チャンバ内で所定の滅菌条件が満たされているか否かを決定する。
細長いチューブは、滅菌チャンバ内に固定的に配置され、又は滅菌チャンバ内に非固定的に(即ち、細長いチューブは、チャンバ内に置き及びチャンバから取り出すことができる)配置されてもよく、非固定的に配置されることが好ましい。細長いチューブは、滅菌プロトコルの遂行の開始前に、滅菌チャンバ内に配置されることが望ましい。
当技術分野にて既知の任意の滅菌プロトコルを用いることができる。原則として、滅菌チャンバ内の滅菌条件の決定のための本明細書に記載する方法は、明確に定義され及び既定のものである限り、任意の滅菌プロトコルに適合することができる。
参照温度は、プロトコル中、前記滅菌チャンバ内であるが細長いチューブの外部の位置の温度を直接測定することにより、又はプロトコル中、前記滅菌チャンバ内であるが細長いチューブの外部の位置で測定された圧力に基づいて、前記参照温度を計算することにより決定されることが好ましい。参照温度を直接測定する場合、第1及び第2の温度の測定に使用されるものと同一のタイプの温度センサを使用してもよい。参照温度が、前記滅菌チャンバ内で測定された圧力に基づいて計算される場合、任意の既知の圧力センサを使用して圧力を決定してもよい。好ましいタイプの圧力センサは、例えばピエゾ抵抗タイプの圧力センサである。
本明細書に記載する方法の好ましい実施形態では、前記プロトコル中、前記細長いチューブ内の少なくとも1つの更なる位置における少なくとも1つの更なる温度を測定する工程を更に含む。
測定された第1及び第2の温度、並びに該当する場合、更なる温度と、決定された参照温度とを異なる方法で使用して、所定の滅菌条件が前記滅菌チャンバ内で満たされているか否かを決定することができる。好ましい実施形態によれば、第1及び第2の温度、並びに該当する場合、前記更なる温度の間の差に基づいて、所定の滅菌条件が前記滅菌チャンバ内で満たされているか否かが決定される。加えて、又は代替的に、所定の滅菌条件が前記滅菌チャンバ内で満たされているか否かは、プロトコル中の1つ以上の時点における前記細長いチューブ内の温度勾配に基づいて決定されてもよい。この決定には、既定のプロトコル中、ある時間間隔の間に、第1及び/若しくは第2の、並びに/又は、該当する場合、前記更なる温度の上昇を測定及び使用してもよい。最適化された分析のために、数個の(空間的)差異及び/又は(時間的)勾配を計算して、所定の滅菌条件が満たされているか否かを決定してもよい。
温度は、温度の測定に関する任意の好適な技術により細長いチューブ内で測定することができる。上記に概略したように、第1及び第2の温度を測定するのに熱電対を使用することが特に有利である。更に、所望及び/又は必要に応じて十分に精密な結果を提供する、細長いチューブ内の温度を測定する任意の他の技術を用いることができる。
上記に示したように、細長いチューブ内の温度測定は、測定される温度が、例えば細長いチューブの壁を介した熱移動に実質的に影響されないように行われることが好ましい。
温度は、細長いチューブの内壁から離間された位置、例えばチューブの中心軸線に沿った位置で感知及び測定されることが望ましい。
細長いチューブ内の位置への熱移動は(細長いチューブは一般に、その一端が開放し、他端が閉鎖されていることが好ましい)、本質的に、細長いチューブの中空空洞を介してのみ起こることが好ましい。細長いチューブ内の前記第1、第2、及び該当する場合、更なる位置は、細長いチューブの開放端における開口部を介したもの以外は、細長いチューブの外部から実質的に熱的に断絶されていることが望ましい。これらの位置の少なくとも1つは、チューブの閉鎖端の近辺に位置することが好ましい。細長いチューブ内の位置の少なくとも1つは、閉鎖端の内壁から、細長いチューブの内径の半径の0.5〜6倍の範囲内、詳細には細長いチューブの内径の半径の1〜4倍の範囲内の距離に位置することが好ましい。
細長いチューブ内で温度が測定される位置は、細長いチューブの長さに沿って、所定の距離、互いに離間されることが望ましい。間隔距離は、望ましくは5mm〜40mm、より望ましくは10mm〜30mmであってもよい。温度が細長いチューブ内の3、4、5、6個又はそれより多くの位置で測定される場合、これらの位置は、互いに等間隔に配置されることが好ましい。
本開示による装置及び方法は、詳細には中空の負荷物に関して、所定の滅菌条件が満たされているか否かを、有利に、正確かつ確実に決定することを可能にする。本明細書に記載した装置及び方法は、任意の既知の滅菌プロトコルと共に容易に使用することができる。本明細書に記載した装置は、殆どあらゆる種類の滅菌チャンバ、及び/又は滅菌負荷物を収容しているチャンバ内にも配置できるため多用途である。更に、本明細書に記載した装置は、異なるタイプの細長いルーメンに解放可能に結合できるモジュールとして有利に構成及び配置されることができ、特定の細長いルーメンの選択は、滅菌される特定の負荷物、及び/又は滅菌条件に依存する。
(類似する部分、要素等は、同一の参照番号により参照される)。
成功する滅菌の重要な局面は、滅菌される物品の全表面に到達し、その物品を十分な時間量の間、良質の蒸気(100%乾燥し、飽和した)に暴露する滅菌器及びプロセスの能力である。滅菌条件を監視し、次にこれによって滅菌の効果を評価することを可能にする方法は、多くの場合、例えば多孔質又は中空の性質を有する「確認物(challenge)」を使用することによって、アクセスが困難な表面に蒸気が到達することの確認を提示することを含む。
確認物として多孔質負荷物を使用する試験方法、Bowie Dick試験及び代替的なBowie Dick試験は、様々な地域規格及び国際規格(例えば、ISO 11140第3部、第4部及び第5部)に記載されている。小型滅菌器(<70リットル)内の中空の負荷物のための装置及び試験方法は、EN−13060:2004及びEN 867−5:2001に記載されている。大型滅菌器(≧70リットル)内の中空の負荷物のための試験方法は、未だ国際規格に定められていない。
小型滅菌器内の中空の負荷物のためのプロセス確認装置及び化学的インジケーターシステムの例は、EN−13060:2004に記載され、そのような装置の概略図は、図1に示されている。装置はカプセル(2)を含み、そのカプセル内に化学的インジケーターシステムである化学的インジケーター(3)が、カプセル内のスリット様開口部(見えない、2a)を介して負荷される。コイル状の細いホース又は管類(6)がナット(1)によりカプセル(2)に接続され、そのナットは、カプセルの外側上に設けられたねじ切り上にねじ入れられる。堅い密封は概してO−リング(4)を用いて促進され、コイル状管類は、概してコネクター(5)によりナット(1)に取り付けられる。カプセル、ナット及びコイル状チューブは、概してPTFEから形成され、コネクターは概してシリコーンから形成され、O−リングは概して耐熱性エラストマーから形成されている。
導入部で述べたように、化学的インジケーターの使用は困難な場合があり、誤った結果をもたらし得る不明瞭な色変化を提供し、それ故、ユーザー及び患者に安全性の誤った判断を導入する可能性がある。この観点から、本明細書に記載するパラメトリックプロセス確認装置を使用するパラメトリック監視は、結果を迅速に得ることができ、その結果は滅菌条件が得られたか否かを遙かに明確に決定することを可能にし得るため、化学的(又は生物学的)インジケーターを越える利点を有する。本明細書に記載するパラメトリックプロセス確認装置は、比較的使いやすく、また同時に、望ましくは正確かつ確実である。これらは、大型又は小型の滅菌器内で同等に良好に使用することができる。
図2a〜dは、本開示による装置の代表的な実施形態の概略図と、一部の部分図とを示す。図2に示す代表的なプロセス確認装置において、少なくとも2つの温度センサ7及び8は、キャップ又は細長いチューブ2(例えば、図2a参照)の空洞内に配置されている。図2から明らかであり得るように、細長いチューブ2は、典型的にはチューブ壁を有し、開放端と、細長いチューブの他端に閉鎖端とを含む。細長いチューブは、PTFE等の断熱材料から形成されていることが望ましい。少なくとも2つの温度センサ7及び8は、細長いチューブ2の長さに沿って互いに離間され、また細長いチューブの内壁から離間されている。温度センサ7及び8は熱電対であることが好ましく、この熱電対はそれぞれ、図2aに示すように、細長いチューブ2の中心軸線において一緒にはんだ付け又は溶接されている、異なる材料からなる2つのワイヤ7a、7b及び8a、8bを含む。例えば、タイプTの0.005インチ(0.127mm)の熱電対を形成するのに好適な2つのワイヤを、細長いチューブ2の壁内に設けられた通路を通して、互いに反対側の末端部から挿入してもよい。次に、ワイヤを、それらの溶接点が細長いチューブ2に関連して中心部に配置されるように、一緒に溶接してもよい。ワイヤは、熱電対を形成するのに必要な部分を勿論除いて、断熱ジャケット内に密封されることが望ましい(図2a参照)。第1の熱電対8は細長いチューブ2の閉鎖端10の近辺に配置されている一方、第2の熱電対7は、細長いチューブの長さに沿って、第1の熱電対8から所定の距離、離間されている。熱電対は、データ取得ユニット(図示せず)に接続され、参照熱電対に対して較正される。壁を通る熱電対ワイヤの通路(図2dで2つを見ることができ、14a及び14bと標識されている)は、シロキサン、詳細にはポリシロキサン、より詳細にはビニルポリシロキサン等の断熱材料で密封されることが望ましい。(視認を容易にするために、ワイヤは一般に、図2b及びcには示されていない。)各通路の外側開口部は、例えば、シロキサン、詳細にはポリシロキサン、より詳細にはビニルポリシロキサン等の断熱材料から形成されたカラー(13a及びb)で覆われていることが好ましい。
図2b及びcから認識し得るように、代表的な実施形態の細長いチューブ2に、伸張した部分2cを含む伸張部2bを設けて、細長いチューブが細長いルーメンに結合でき、詳細には解放可能に結合できるように、細長いチューブに所望の構成及び配置を提供することが好ましい。外部結合−伸張部2cは、例えば、例えばシリコーンから形成されている密封カプラー5を使用して、細長いルーメンに結合されることが好ましい場合がある。図2b及びcにおいて、細長いルーメンは、細管類6の形態で提供され得ることが理解され得る。詳細には、図2b及びcを参照すると、2つの熱電対7及び8がプレート間の開口部内に挿入された後、2つの部分2a及び2bが、ナット1と、第1の部分2aの開放端の近辺の外側上に提供されているねじ切りとにより接続されるように、元の部分2aが伸張支持部3の2つのプレート上を摺動する。図2cに示すように2つの部分が接続及び密封されると、代表的な実施形態は完了し、前述したように、その部分は更に細長いルーメンに結合されてもよい。細長いチューブの2つの部分間の密封は、O−リング4の使用により促進されることが望ましい。細長いチューブの第1の部分(2a)と同様、伸張部は、O−リングを除いてPTFE等の断熱材料から形成されていることが望ましく、O−リングは、概して耐熱性エラストマーから形成されている。図2dは、図2cに示したA−A’線における断面図を提供し、図2dの図は、90°回転されている。断面図において、熱電対(7)は細長いチューブの中心軸線上にて「空間内」に配置されることが好ましく、ワイヤ(7a及び7b)自体に覆いが付けられ、通路(14a及びb)は二重に密封されていることを認めることができる。
図2b〜cに表すように、代表的な実施形態には、細長いチューブの外部に取り付けられた温度センサ、例えば熱電対12が設けられ、このことは、滅菌チャンバ内の問題とされていない温度(即ち、参照温度)を測定するのに好適である。
本明細書に記載した装置が滅菌チャンバ内に最初に導入された際、外部から細長いチューブの閉鎖端までの細長いチューブ内の通路(細長いルーメンを含む好ましい実施形態では、細長いルーメン及び細長いチューブの長さ内の通路)は、空気で満たされる。典型的な蒸気滅菌プロセスは、滅菌チャンバの内部に作用する数個の圧力パルス(排気及び蒸気導入)を含む。プロセスは、パルスの数、圧力変化速度、並びに例えば亜大気圧、過大気圧(transatmospheric)及び亜超大気圧等のパルスの性質により互いに異なる。明らかに、滅菌チャンバが所定の圧力で良質の蒸気により満たされるとき、細長いチューブの通路(又は、該当する場合、細長いルーメン及び細長いチューブの通路)は、蒸気で瞬時に満たされるわけではない。むしろ、伸張された通路内に空気/蒸気勾配が形成され、閉鎖端の近辺の部分は、より高い割合の空気を有する一方、開放端の近辺の部分は、より高い割合の蒸気を有するであろう。また、滅菌プロトコルが継続し、その最終的な上昇(come-up)パルスを経過するとき−理想的には−通路内の蒸気の量は増大し、そのため通路の閉鎖端の近辺の空気の量はほぼ排除される筈である(即ち、ほぼ排除され、完全な排除は不可能である)。そのような理想的な状況において、細長いチューブに沿った温度勾配の傾きは、ゼロに接近する筈であり、細長いチューブの閉鎖端の近辺の/その閉鎖端に最も近い測定温度は、その滅菌プラトー(134℃前後)において参照温度に接近する筈である。
以下に報告する実験と、図3〜8に示す結果の場合、シリコーンカプラー(長さ30mm)により細いコイル状の管類(PTFE、長さ1.5m、内径2mm、外径3mm)に結合した細長いチューブを含む、図2cに示したタイプの実施例装置を使用した。細長いチューブはPTFEから形成され、第1の部分は41mm前後の長さを有し、内径6.6mm、外径10.2mm、及び閉鎖端における壁厚は2mmであった。2つの熱電対(タイプT、ワイヤ直径0.127mm)を細長いチューブ内に配置し、23mmの距離、離間させ、細長いチューブの中心部の長手方向軸線上に位置付けた。閉鎖端の近辺の熱電対は、閉鎖端までの距離が10mmであった。熱電対ワイヤを作製するのに必要な部分を除いて、ワイヤはそれらの標準的な断熱ジャケット内に存在した。ワイヤが通る通路をビニル−ポリシロキサンで満たし、外側開口部をビニル−ポリシロキサンカラーで覆った。細長いチューブの第2の伸張部分を挿入した後、2つの熱電対を、幅0.8mmに開放する中心スリット(図2dに示したものと同様)内に配置した。シリコーンから形成されているOリングを使用した。また、外部のタイプTの参照熱電対(ワイヤ直径0.127mm)を、細長いチューブの外部上に取り付けた。
結果が図3〜5及び7及び8に示される以下の実験において、それぞれの場合、実施例装置を使用した実験の開始前に、使用される滅菌器(342リットル)による実験に用いられる関連した滅菌プロトコルを予備評価し、Bowie Dick試験に合格することを予め証明した。これに加えて、図3、7及び8の実験は、それぞれISO 11140−4 Annex B、B1又はB2又はB3に記載されている標準化された「合格」プロトコルを用いた一方、図4及び5の実験は、B1よりも更に良好なプロトコルを用いた。したがって、通常、これらの滅菌プロトコルは全て、適切な滅菌を提供するものと考えられる。結果が図6に示される実験は、B1に記載されている標準化された「不合格」プロトコルであり、実施例装置を使用した実験前に、このプロトコルを用いた滅菌器がBowie Dick試験に合格しないことを予め証明した。
その後、滅菌プロトコルを用いて、実施例装置を滅菌器内で試験した。図3〜8は、これらの試験の結果を示し、以下の4つのパラメータがプロットされている。滅菌チャンバ内部の圧力(「P.チャンバ」)、滅菌チャンバ内部の問題とされていない温度(「外部センサ」)、細長いチューブの閉鎖端の近辺のセンサにより測定された温度(「末端部近辺のセンサ」)及びコイル状管類の近辺の細長いチューブ内のセンサにより測定された温度(「チューブ近辺のセンサ」)。
図3〜8のタイトル行は、滅菌プロトコルと、該当する場合、ISO 11140−4における試験IDとを列挙する。これは、例えば「B1 4×50−970」と記載された図3に示すグラフに示される。結果が図3に示された実験の土台となる滅菌プロトコルは、970mbar(97kPa)での4回の圧力パルスと、続く50mbar(5kPa)での排気局面と、その後の最終的な上昇パルス(即ち、滅菌プラトーまで繋がる長い蒸気導入パルス)とを含む。付与された圧力は、図3の曲線18に示されている。プロセス中、3つの異なる地点で温度を測定した。即ち、細長いチューブ2の開放端に近接した熱電対(図2の7)を用いて、図3で15と標識された曲線;細長いチューブ2の閉鎖端に近接した熱電対(図2の8)を用いて、図3で16と標識された曲線;及び細長いチューブの外部上に取り付けられ、それ故、滅菌チャンバ内部であるが確認物の外部である外部参照熱電対(図2の12)を用いて、図3で17と標識された曲線。
図3に明確に示すように、細長いチューブ内の測定温度の両方が、おおよそ装置外部の温度に追従するまで、4回のパルスを必要とする。滅菌温度に向かった最終的なパルス中、細長いチューブの閉鎖端の近辺の熱電対の温度上昇の低減を、マークした領域内で見ることができ(図3bに示す拡大図参照)、参照温度が134℃に達する際の時点において、2つの確認温度間に差が存在する。これは、確認装置内に、詳細には細長いチューブの閉鎖端の近辺に、幾分かの空気が尚存在することを示す。この残留空気の決定は、この滅菌プロトコルが、中空の負荷物のための適切な滅菌をもたらさない可能性があることを示唆する。
より良好な滅菌プロトコルが図4の実験で用いられた。図に示すように、対応するプロセスは、970mbar(97kPa)での8回のパルスと、その後の40mbar(4kPa)での排気局面と、その後の上昇パルスとからなる。参照温度が134℃に丁度達した際、細長いチューブの閉鎖端の近辺の、比較的少ない温度上昇の低減と、確認温度におけるより小さい差とが、図4に示すグラフで見ることができる。したがって、図3に示した以前の試験と比較すると、細長いチューブ内に存在する空気は少ないと結論付けることができる。更により良好な滅菌プロトコルを用いた場合、即ち、上昇パルス(図5参照)前のパルスの数が40〜970mbar(4〜97kPa)での16回パルスに更に増大された場合、細長いチューブの末端部の近辺の温度における温度上昇の低減と、問題とされていない温度が134℃の外部温度に達した際の時点における確認温度との任意の差は、殆ど認めることができなかった。したがって、存在する空気は、更に少ないと結論付けることができる。
結果が図3〜5に提供される実験は、本明細書に記載した装置の有利な感度を示す。加えて、実験は、中空の負荷物の場合、図5の実験で使用したものに従った滅菌プロトコルが、「B1 4×50−970」の滅菌プロトコルよりも、中空の負荷物にとってより良好であり得ることを示唆する。
上述したように、図6の実験で使用した滅菌プロトコルである970mbar(97kPa)での4回パルスと、その後の120mbar(12kPa)での排気局面は、ISO 11140−4 B1に従った意図的な不合格である。いずれの拡大図も有さない図6から容易に明らかとなり得るように、この実施例装置を用いた滅菌プロトコルを監視することによって、細長いチューブの閉鎖端近辺のセンサにおける温度上昇の大きな低減が示される。参照温度が134℃に達した際の時点で、細長いチューブの閉鎖端から遠方のものであっても、参照温度と、各確認温度との間のかなりの温度差が存在する。これらの観察は、細長いチューブ内に相当の量の空気が尚存在することを示している。
図7及び8に結果が報告された実験から収集された観察は、これらの実験、ISOのB2及びB3に使用されている滅菌プロトコルが、中空の負荷物に適切な滅菌をもたらさない場合があることを示唆している。詳細には、図7は、実施例装置を使用した標準化B2合格サイクルの監視結果を示す。図7bに詳細に示す、図7aの取り囲んだ領域から明らかなように、細長いチューブ内の両方の熱電対における測定温度を表す温度曲線は、互いに対する僅かな相違を示す一方で、測定された外部参照温度曲線(134℃に達する時間での)と比較して温度上昇の大きな低下を示している。このことは、B2がこの試験サイクルに「合格」を付与した場合であっても、細長いチューブ内に細長いチューブの長さに沿って(即ち、細長いチューブの閉鎖端の近辺、及びコイル状管類に取り付けられたその開放端の近辺に)大きい気泡が存在することを示唆している。図8は、超大気圧パルシングを用いた、標準化試験サイクルB3の監視結果を示す。この場合、再び、参照温度が134℃に達した際の時点で、他の確認温度及び参照温度の両方に対する細長いチューブの閉鎖端の近辺の温度は、温度上昇の低減を示している(例えば、図8b参照)。したがって、細長いチューブ内に幾分かの空気が尚存在し、このプロトコルが中空負荷物の滅菌のための適切な滅菌を提供しないことを示唆している。
上記の実施例から明らかなように、本開示による装置は、滅菌条件に対して極めて感受性であることによって、収集データを様々な方法で加工及び分析して、サイクルの効果又は滅菌サイクルにおける任意の不完全性に関する情報を提供することができる。
上記に既に示したように、実施例装置内の確認温度、例えば閉鎖端から遠方の確認温度と、細長いチューブの閉鎖端の近辺の確認温度との間のゼロを超える差は、細長いチューブ内の空気を示している。温度差がより高くなるにつれて、存在する空気の量がより多くなる。差がゼロに接近する際、空気/蒸気勾配の傾きが平坦となり、測定される確認位置の蒸気の量が等しくなる。参照温度と確認温度との間のゼロを超える差はまた、滅菌チャンバ内部に対する、細長いチューブ内の空気を示している。したがって、例えば、参照温度が134℃に達し、確認温度のうちのいずれか1つ又は全部が遅れを取っている(例えば、図6参照)、例えば125℃の値にある際の時点で、細長いチューブ内に空気が存在すると結論付けることができる。
測定曲線の傾きはまた、特定の滅菌サイクルの評価に使用することができる。一般に、参照温度がその滅菌温度(例えば134℃)に達した後、確認温度における変化は装置の外部の変化と等しい筈であり、例えば、図3の曲線15、16及び17は同一の傾きを有する筈である。これらの傾き間の差がより大きくなる程、細長いチューブ内により多量の空気が存在する。
加えて、予備真空、即ち空気除去の局面の効率は、上昇局面中の温度曲線の傾きに表示される。理想的には、確認温度曲線(例えば、図3の曲線15及び16)の傾きは、参照温度曲線(図3の曲線17)に重なる必要がある。外部参照温度センサが蒸気に暴露される一方で、予備真空局面中の空気除去が乏しいために内部確認温度センサが空気−蒸気混合物に暴露された場合、内部確認温度曲線の1つ以上が外部参照温度よりも低い勾配の傾斜を示すであろう(例えば、上記の多数の実施例に関連して述べたように)。
図9は、本開示による装置の代表的な更なる実施形態の概略図を提供する。上記に述べた代表的な実施形態と同様、細長いチューブ2の一端は開放している一方、他端は閉鎖されている。ここで閉鎖端は、別個の閉鎖要素によって、例えば断熱プラグ11を用いて閉鎖されている。細長いチューブの閉鎖端が、例えば内部空洞をより容易に完全に乾燥させることを可能にするように、運転の間に開放及び閉鎖できることが有利であり得る。この代表的な実施形態では、例えば熱電対7、8及び9の形態の3つの温度センサが細長いチューブの空洞内に提供され、熱電対は、細長いチューブの長さに沿って所定の距離、互いに離間され、細長いチューブの内壁から離間されている。図9に示す代表的な実施形態では、熱電対は、15mm互いに等間隔に離間されている。しかしながら、この距離は、所望又は必要に応じて5mm〜40mmまでの間で変更されてもよい。同様に、間隔は等しい必要はなく、これらは既定である限り、変更されてもよい。例えば、熱電対7と9との間の距離は、熱電対7と8との間の距離の2倍であってもよい。図示した他の代表的な実施形態と同様、1つの温度センサ、ここでは熱電対8を細長いチューブ2の閉鎖端10に近接して配置することが望ましい。一般に、熱電対は、細長いチューブの開放端における開口部を介したものを以外は、細長いチューブの外部から実質的に熱的に断絶されるよう配置されることが好ましい。細長いチューブの閉鎖端10は、ポリシロキサン等の絶縁材料で閉鎖されることが好ましい。上記に記載した代表的な実施形態と同様、細長いチューブの壁内の、内部を熱電対のワイヤが延びる通路は、シロキサン、詳細にはポリシロキサン、より詳細にはビニルポリシロキサン等の断熱材料で密封されることが好ましい。各通路の外側開口部は、そこを通過する各ワイヤと共に、カラー13a〜c、好ましくはポリシロキサン、詳細にはビニルポリシロキサン等のシロキサンから形成されているカラーで覆われることが好ましい。更に、熱電対を形成しているワイヤ7a、7b、8a、8b、9a及び9bは、図9に提案されるように、断熱ジャケットで密封されることが望ましい。細長いチューブ2は、細長いルーメン、例えば細管類6に結合され、好ましくは解放可能に結合されるように構成されていることが好ましい。細管類、例えば図1に示したものと同様のコイル状管類は、1m〜2m、好ましくは約1.5mの長さを有してもよい。
細長いチューブは、数回再使用できることが有利である。細長いルーメンが細長いチューブ上へ解放可能に結合される場合、必要又は所望に応じて、分離した細長いルーメンが配置されてもよい。使用中、温度移動は実質的に、細長いチューブの開放端(又は、該当する場合、細長いルーメンの開放端)から細長いチューブの閉鎖端へ、細長いチューブの長さに沿った通路(又は、細長いルーメンが細長いチューブ上に結合している場合、細長いルーメン及び細長いチューブの長さに沿った通路)を介してのみ起こることが好ましい。
本開示は、上述した代表的な実施形態及び使用方法に限定されず、本明細書に記載した開示の原理又は概念から逸脱することなく、様々な変更を為し得ることを理解するであろう。例えば、本明細書に示した代表的な装置実施形態の設計は、4つ以上の熱電対の提供を可能にするよう容易に変更できることを認識するであろう。
本開示による装置及び方法は、適宜、本明細書に記載した任意の機構を、個別に、又は任意の他の機構と組み合わせて、含むことができる。
実施形態
実施形態1は、滅菌チャンバ内の滅菌条件を決定するための装置であって、前記装置が、前記滅菌チャンバ内に配置される細長いチューブであって、チューブ壁と内部の空洞とを有し、かつその一端が開放し、他端が閉鎖されている、細長いチューブと、細長いチューブの空洞内の少なくとも2つの温度センサであって、細長いチューブの長さに沿って所定の距離、互いに離間され、かつ細長いチューブの内壁から離間されている、温度センサと、を備える、装置である。
実施形態2は、少なくとも2つの温度センサが、細長いチューブの開放端における開口部を介したもの以外は、細長いチューブの外部から実質的に熱的に断絶されるように配置されている、実施形態1に記載の装置である。
実施形態3は、前記チューブ内の少なくとも2つの温度センサにより測定された温度と、滅菌チャンバ内であるが細長いチューブの外部の位置で決定された参照温度とに基づいて、所定の滅菌条件が前記滅菌チャンバ内で満たされているか否かを決定するように適合されたプロセッサを更に備える、実施形態1又は2に記載の装置である。
実施形態4は、装置が、細長いチューブの外部の温度センサ、及び/又は細長いチューブの外部の圧力センサを更に備える、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態5は、参照温度が、チューブの外部の前記温度センサにより測定されるか、又はチューブの外部の前記圧力センサにより測定された圧力に基づいて計算される、実施形態3、又は実施形態3に従属する実施形態4に記載の装置である。
実施形態6は、細長いチューブ内の少なくとも2つの温度センサがそれぞれ、熱電対、好ましくはタイプT又はタイプR又はタイプS又はタイプBの熱電対を含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態7は、細長いチューブの壁が、内部を通る少なくとも2つの通路を含み、各熱電対が2つのワイヤを含み、各ワイヤが、チューブ壁内の通路内を延びる、実施形態6に記載の装置である。
実施形態8は、細長いチューブが円筒形であり、ワイヤがチューブ内を径方向に延び、熱電対−形成末端部が、本質的にチューブの中心軸線上の位置で互いに接続されている、実施形態7に記載の装置である。
実施形態9は、各通路の内部が、そこを通過する各ワイヤと共に密封材料、例えばシロキサン、詳細にはポリシロキサン、より詳細にはビニルポリシロキサンにより密封されている、実施形態7又は8に記載の装置である。
実施形態10は、各通路の外側開口部が、そこを通過する各ワイヤと共にカラー、好ましくはシロキサン、より好ましくはポリシロキサン、最も好ましくはビニルポリシロキサンから形成されているカラーで覆われている、実施形態7〜9のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態11は、各ワイヤが0.4mm以下、好ましくは0.350mm以下、より好ましくは0.2mm以下の直径を有する、実施形態7〜10のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態12は、装置がチューブ内の3、4、5、6個又はそれより多くの温度センサを備える、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態13は、温度センサが互いに等間隔に配置されている、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態14は、細長いチューブ内の温度センサが、5mm〜40mmまで(40mmを含む)、より好ましくは10mm〜30mmまで(30mmを含む)の距離、互いに離間されている、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態15は、前記温度センサの少なくとも1つが、細長いチューブの閉鎖端の近辺に位置している、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態16は、温度センサの少なくとも1つが、閉鎖端の内壁から、細長いチューブの内径の半径の0.5〜6倍の範囲内、詳細には細長いチューブの内径の半径の1〜4倍の範囲内の距離に位置している、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態17は、細長いチューブが、細長いルーメンに結合できるように構成され、好ましくは、細長いチューブが細長いルーメンに解放可能に結合できるように構成されている、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態18は、細長いチューブが細長いルーメンに結合され、詳細には細長いチューブが細長いルーメンに解放可能に結合されている、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態19は、細長いルーメンが、1m〜2m、好ましくは約1.5mの長さを有する、実施形態17又は18に記載の装置である。
実施形態20は、細長いルーメンが、10mm以下、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、又は更により好ましくは4mm以下、最も好ましくは約2mmの内径を有する、実施形態17〜19のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態21は、細長いルーメンは、その長さに沿って4mm以下、より好ましくは3mm以下、更により好ましくは2mm以下、最も好ましくは2mm〜0.35mmまで(0.35mmを含む)の壁厚を有する、実施形態17〜20のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態22は、細長いチューブが、10mm以下、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、又は更により好ましくは4mm以下、最も好ましくは約2mmの内径を有する、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態23は、細長いチューブが、その長さに沿って4mm以下、より好ましくは3mm以下、更により好ましくは2mm以下、最も好ましくは2mm〜0.35mmまで(0.35mmを含む)の壁厚を有する、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の装置である。
実施形態24は、好ましくは実施形態1〜16のいずれか1つに記載の装置を使用することによる、滅菌チャンバ内の滅菌条件を決定するための方法であって、前記方法が以下の工程、
a)所定の滅菌プロトコルを行う工程と、
b)前記プロトコル中、前記滅菌チャンバ内に位置付けられた細長いチューブ内の第1及び第2の位置において、少なくとも第1及び第2の温度を測定する工程と、
c)前記プロトコル中、前記滅菌チャンバ内の、前記細長いチューブの外部の位置における参照温度を決定する工程と、
d)少なくとも前記第1及び第2の温度と前記参照温度とに基づいて、前記滅菌チャンバ内で所定の滅菌条件が満たされているか否かを決定する工程と、を含む、方法である。
実施形態25は、細長いチューブが、滅菌チャンバ内に非固定的に配置されている、実施形態24に記載の方法である。
実施形態26は、細長いチューブが、プロトコルの開始前に滅菌チャンバ内に配置される、実施形態24又は25に記載の方法である。
実施形態27は、前記参照温度が、プロトコル中、前記滅菌チャンバ内の、細長いチューブの外部の位置における温度を測定することにより、又はプロトコル中、前記滅菌チャンバ内の、細長いチューブの外部の位置で測定された圧力に基づいて、前記参照温度を計算することにより決定される、実施形態24〜26のいずれか1つに記載の方法である。
実施形態28は、前記プロトコル中、前記細長いチューブ内の少なくとも1つの更なる位置における少なくとも1つの更なる温度を測定する工程を更に含む、実施形態24〜27のいずれか1つに記載の方法である。
実施形態29は、工程d)が、第1の温度及び第2の温度、並びに該当する場合、前記更なる温度の間の差に基づいて行われ、並びに/又はプロトコル中の時点における前記細長いチューブ内の温度勾配に基づいて行われる、実施形態24〜28のいずれか1つに記載の方法である。
実施形態30は、工程d)が、プロトコル中、ある時間間隔の間に、第1及び/若しくは第2の温度、並びに/又は該当する場合、前記更なる温度の上昇に基づいて行われる、実施形態24〜29のいずれか1つに記載の方法である。
実施形態31は、前記細長いチューブの一端が開放し、その他端が閉鎖されている、実施形態24〜30のいずれか1つに記載の方法である。
実施形態32は、細長いチューブ内の前記第1、第2、及び該当する場合、更なる位置が、細長いチューブの開放端における開口部を介したもの以外は、細長いチューブの外部から実質的に熱的に断絶されている、実施形態31に記載の方法である。
実施形態33は、細長いチューブ内の前記位置の少なくとも1つが、細長いチューブの閉鎖端の近辺に位置している、実施形態31又は32に記載の方法である。
実施形態34は、細長いチューブ内の位置の少なくとも1つが、閉鎖端の内壁から、細長いチューブの内径の半径の0.5〜6倍の範囲内、詳細には細長いチューブの内径の半径の1〜4倍の範囲内の距離に位置している、実施形態31〜33のいずれか1つに記載の方法である。
実施形態35は、細長いチューブ内の位置が、5mm〜40mmまで(40mmを含む)、より好ましくは10mm〜30mmまで(30mmを含む)の距離、互いに離間されている、実施形態24〜34のいずれか1つに記載の方法である。