(第1実施形態)
以下、図1〜図5を参照して、この発明を腕時計の指針に適用した第1実施形態について説明する。
この指針1は、図1〜図3に示すように、針本体2を備えている。この針本体2は、細長い板状をなし、その一端(図1では右端)に矢印部2aが形成され、この矢印部2aから他端側(図1では左側)に向けて幅狭部2bが細長く形成され、この細長い幅狭部2bから他端部に向けて幅広部2cが形成され、この幅広部2cにおける幅狭部2b側に位置する部分に取付孔2dが上下に貫通して形成された構成になっている。
また、この指針1は、図1〜図3に示すように、針本体2を指針軸3に取り付けるための取付片4を備えている。この取付片4は、針本体2の取付孔2dに挿入して指針軸3に嵌合する筒状部4aと、この筒状部4aの上端部に設けられて針本体2の上面を押える押え部4bと、筒状部4aの下端部に挿入されて針本体2の下面に配置されるワッシャー部4cと、筒状部4aの下端部に設けられてワッシャー部4cを針本体2の下面に押し付けるカシメ部4dとを有している。
この場合、カシメ部4dは、図3(a)に示すように、カシメ加工された際にワッシャー部4cの下面を押し上げるように構成されている。また、このカシメ部4dは、図3(b)に示すように、カシメ加工される前の状態のときに、針本体2の取付孔2dの孔径内において、下側に垂下された構成になっている。これにより、カシメ部4dは、取付片4を針本体2に取り付ける際に、針本体2の取付孔2dに取付片4の筒状部4aを上方から挿入すると、針本体2の取付孔2dを通過して針本体2の下側に突出すように構成されている。
また、このカシメ部4dは、図3(b)に示すように、針本体2の取付孔2dに取付片4の筒状部4aを上方から挿入して針本体2の下側に突出した際に、この突出した筒状部4aの下部にワッシャー部4cが下側から装着し、この状態でカシメ加工されることにより、図3(a)に示すように、ワッシャー部4cを針本体2の下面に押し付けるように構成されている。
これにより、指針1は、図1〜図3に示すように、取付片4の筒状部4aが針本体2の取付孔2dに挿入されて押え部4bが針本体2の上面に当接した状態で、カシメ部4dがカシメ加工されてワッシャー部4cが針本体2の下面を押し上げると、このワッシャー部4cと押え部4bとが針本体2を厚み方向に挟み付けて、針本体2に取付片4が取り付けられるように構成されている。
また、この指針1は、図1〜図3に示すように、針本体2に取付片4が取り付けられた際に、取付片4の筒状部4aを指針軸3の上端部に嵌着させることにより、指針軸3の上端部に取り付けられ、この状態で指針軸3が時計ムーブメント(図示せず)によって回転すると、この指針軸3の回転に伴って運針して時刻を指示するように構成されている。
ところで、この指針1の針本体2は、図4および図5に示すように、素材シート5によって形成されている。この素材シート5は、図4(b)に示すように、炭素繊維を一方向に配列させた繊維シート6〜8が、その各炭素繊維6a〜8aの配列方向を異ならせた状態で、複数(この第1実施形態では3層)積層されたものである。この素材シート5は、図2に示すように、その全体の厚みT1が約0.1mmに形成されている。
すなわち、第1〜第3の各繊維シート6〜8は、図4(b)に示すように、それぞれ炭素繊維(6a〜8a)を一方向に引き揃えて合成樹脂を含浸させたUDプリプレグ(Uni−Directional Prepreg)シートであり、各繊維シート6〜8の厚みT2は、図2に示すように、それぞれ約0.03mmに形成されている。
この場合、UDプリプレグシートは、炭素繊維強化合成樹脂(CFRP:CarbonFiber Reinforced Plastics)のシートである。炭素繊維(6a〜8a)としては、アクリル繊維を用いたPAN(Polyacrylonitrile)系の炭素繊維、またはピッチを用いたピッチ(PITCH)系の炭素繊維である。
また、この素材シート5は、図4(b)に示すように、第1〜第3の各繊維シート6〜8を積層した3層構造である。この素材シート5における上層の第1繊維シート6と下層の第3繊維シート8とは、その各炭素繊維6a、8aの配列方向が同じ方向に配列されている。また、中間層の第2繊維シート7は、その炭素繊維7aの配列方向が上層の第1繊維シート6と下層の第3繊維シート8とにおける各炭素繊維6a、8aの配列方向に対して直交する方向に配列されている。
この場合、上層の第1繊維シート6と下層の第3繊維シート8とは、図4(b)に示すように、その炭素繊維6a、8aの配列方向が針本体2の長手方向と平行に配列されている。また、中間層の第2繊維シート7は、その炭素繊維7aの配列方向が針本体2の長手方向と直交する方向に配列されている。
これにより、素材シート5は、図4(b)に示すように、第1〜第3の各繊維シート6〜8をその積層方向において上下に2分した際に、上層部側(第1、第2の各繊維シート6、7)の各炭素繊維6a、7aの配列状態と、下層部側(第2、第3の各繊維シート7、8)の各炭素繊維7a、8aの配列状態とが、同じ配列状態になるように形成されている。
また、この素材シート5は、図2に示すように、第1〜第3の各繊維シート6〜8を積層した状態で、熱圧着により上下に接合され、その上下方向の厚みT1が約0.1mmに形成されている。また、このような素材シート5によって形成された針本体2は、図2および図3に示すように、その全表面がコーティング膜10によって被覆されている。このコーティング膜10は、合成樹脂製の被膜であり、針本体2の表面、裏面および周囲の各側面である全表面を覆って保護するように構成されている。
次に、この指針1の針本体2を製造する方法について説明する。
まず、素材シート5を製作する場合には、炭素繊維6a〜8aを一方向に引き揃えて合成樹脂を含浸させることにより、第1〜第3の各繊維シート6〜8をそれぞれ形成する。そして、この第1〜第3の各繊維シート6〜8をその各炭素繊維6a〜8aの配列方向が異なる状態で積層させて熱圧着により接合する。
この場合、上層の第1繊維シート6と下層の第3繊維シート8とは、その各炭素繊維6a、8aの配列方向が、針本体2の長手方向と平行に配列されており、中間層の第2繊維シート7は、その炭素繊維7aの配列方向が、針本体2の長手方向と直交する方向に配列されている。この状態で、第1〜第3の各繊維シート6〜8を積層して熱圧着により接合することにより、全体の厚みT1が約0.1mmの素材シート5が形成される。
また、この素材シート5は、図5に示すように、針本体2の長手方向の長さよりも少し長い長さの短辺W(図5では上下方向の長さ)と、この短辺Wと直交する方向の長辺L(図5では左右方向の長さ)とを有し、この長辺Lが短辺Wよりも十分に長い長さの帯状に形成されている。これにより、素材シート5は、その長手方向の長辺Lに沿って多数の針本体2が並列に配列されるように形成されている。
この場合、素材シート5は、図5に示すように、上層の第1繊維シート6と下層の第3繊維シート8とにおける各炭素繊維6a、8aの配列方向が短辺Wに沿う方向、つまり針本体2の長手方向に沿って配列され、中間層の第2繊維シート7における炭素繊維7aの配列方向が長辺Lに沿う方向、つまり針本体2の長手方向に対して直交する方向に沿って配列されている。
そして、図5に示すように、この素材シート5をレーザー光線によって切断して針本体2を順次形成する。このときには、帯状の素材シート5の長手方向(図5では左右方向)に沿って多数の針本体2が並列に配列されるように、レーザー光線によって針本体2の外形に沿って順次切断する。
この場合、切断された針本体2は、その矢印部2aの先端を除いて切断されることにより、矢印部2aの先端が細長い接続部5aによって素材シート5の連結部5bに連結された状態で形成される。すなわち、この素材シート5には、図5に示すように、多数の針本体2が、接続部5aによって素材シート5の連結部5bに順次連結された状態で、短冊状に並列に配列されて形成される。
そして、多数の針本体2の全表面にコーティング膜10を形成する。このときには、素材シート5の連結部5bに接続された多数の針本体2をコーティング液に一度に漬けて、多数の針本体2の全表面にコーティング液を塗布する。この塗布されたコーティング液を乾燥させると、コーティング膜10が多数の針本体2の全表面に形成される。
この後、コーティング膜10が形成された多数の針本体2を素材シート5の連結部5bから切り離す。このときには、レーザー光線によって針本体2の一端部における矢印部2aの先端を切断して接続部5aから切り離する。これにより、多数の針本体2がそれぞれ個別に分離される。この分離された各針本体2の切断部分のみを再びコーティング液に漬けて、この切断部分のみにコーティング膜10を追加形成する。
このように形成された針本体2は、図4(b)に示すように、上層の第1繊維シート6と下層の第3繊維シート8とにおける各炭素繊維6a、8aの配列方向が、針本体2の長手方向と平行に配列されていることにより、針本体2の長手方向における撓み強度が強く、針本体2の長手方向における撓み変形が抑制されている。
また、この針本体2は、図4(b)に示すように、中間層の第2繊維シート7における炭素繊維7aの配列方向が、針本体2の長手方向と直交する方向に配列されていることにより、針本体2の反りや捩れなどの変形に対する強度が強く、針本体2の反りや捩れなどの変形が抑制されている。このため、この針本体2は、反りや撓み、あるいは捩れなどの各種の変形に対する強度が高く、かつ耐衝撃性も高められている。
次に、針本体2に取付片4を取り付け、この取付片4によって針本体2を指針軸3に取り付ける場合について説明する。
このときには、図3(b)に示すように、取付片4の筒状部4aを針本体2の取付孔2dに上方から挿入して、押え部4bを針本体2の上面に当接させると共に、カシメ部4dを針本体2の下側に突出させる。この状態で、突出した筒状部4aの下部にワッシャー部4cを下側から装着して、カシメ部4dをカシメ加工する。
これにより、図3(a)に示すように、カシメ加工されたカシメ部4dによって、ワッシャー部4cが針本体2の下面に押し付けられる。このため、カシメ部4dがワッシャー部4cを針本体2の下面に押し付けるので、図3(a)に示すように、ワッシャー部4cと押え部4bとによって針本体2がその厚みT1方向に挟み付けられる。これにより、取付片4が針本体2に取り付けられ、指針1が構成される。
そして、針本体2を指針軸3に取り付ける際には、図2および図3(a)に示すように、指針1の取付片4の筒状部4aを指針軸3の上端部に嵌着させると、針本体2が取付片4によって指針軸3の上端部に取り付けられる。この状態では、指針軸3が時計ムーブメント(図示せず)によって回転すると、この指針軸3の回転に伴って指針1が運針し、時刻を指示する。
このように、この指針1によれば、炭素繊維6a〜8aを一方向に配列した繊維シート6〜8が、その各炭素繊維6a〜8aの配列方向を異ならせた状態で、複数積層されることにより、素材シート5が形成され、この素材シート5によって針本体2が形成されているので、針本体2の軽量化を図ることができると共に、針本体2の強度を十分に確保することができる。
すなわち、この指針1では、炭素繊維6a〜8aが一方向に配列された第1〜第3の各繊維シート6〜8を積層させて素材シート5を形成する際に、炭素繊維6a〜8aの配列方向を異ならせることできるので、針本体2を1枚の繊維シートで構成する場合よりも、針本体2の強度を十分に高めることができると共に、耐衝撃性をも高めることができる。
また、この指針1では、炭素繊維6a〜8aを一方向に配列させて第1〜第3の各繊維シート6〜8をそれぞれ形成しているので、第1〜第3の各繊維シート6〜8の各厚みT2をそれぞれ薄くすることができ、これにより針本体2全体の薄型化および軽量化を図ることができる。このため、針本体2を運針させる際における消費電力を軽減して、電池の寿命を延ばすことがきるほか、針本体2の大型化を図ることができると共に、針本体2を自由な形状に形成することができる。
この場合、素材シート5は、第1〜第3の各繊維シート6〜8をその積層方向において上下に2分した際に、上層部側に位置する炭素繊維6a、7aの配列状態と、下層部側に位置する炭素繊維7a、8aの配列状態とが、同じ配列状態に形成されているので、炭素繊維6a〜8aの配列方向を異ならせた状態で、第1〜第3の各繊維シート6〜8を積層させて針本体2を形成しても、針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を抑制することができ、これにより針本体2を均一な形状に保つことができる。
すなわち、この素材シート5は、第1〜第3の各繊維シート6〜8を積層させて針本体2を形成した際に、炭素繊維6a〜8aの配列方向が異なっていても、積層方向における上下に2分された上層部側に位置する第1、第2の各繊維シート6、7の炭素繊維6a、7aの配列状態と、下層部側に位置する第2、第3の各繊維シート7、8の炭素繊維7a、8aの配列状態とが、同じ配列状態であることにより、炭素繊維6a〜8aの配列方向が異なることによる強度のアンバランスを上層部と下層部とで相殺することができ、これにより炭素繊維6a〜8aの配列方向が異なることによる針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を確実に抑制することができる。
また、この素材シート5は、第1〜第3の各繊維シート6〜8を3層に積層して形成されており、上層の第1繊維シート6と下層の第3繊維シート8とは、その各炭素繊維6a〜8aの配列方向が同じ方向に配列されており、中間層の第2繊維シート7は、その炭素繊維7aの配列方向が第1繊維シート6と第3繊維シート8とにおける各炭素繊維6a、8aの配列方向に対して直交する方向に配列されていることにより、上層部側と下層部側とにおける各炭素繊維6a〜8aの配列状態を同じ配列状態にすることができ、これにより針本体2の強度を高めることができると共に、針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を抑制することができる。
この場合、上層の第1繊維シート6と下層の第3繊維シート8とは、その各炭素繊維6a、8aの配列方向が針本体2の長手方向と平行に配列されていることにより、針本体2の長手方向における強度を高めることができ、これにより針本体2の長手方向における撓み変形を確実にかつ良好に抑制することができる。
また、中間層の第2繊維シート7は、その炭素繊維7aの配列方向が針本体2の長手方向と直交する方向に配列されていることにより、針本体2の捩れ方向の強度を高めることができ、これにより針本体2の捩れ方向における変形を抑制することができる。このため、この指針1では、針本体2の反りや撓み、あるいは捩れなど各種の変形に対する強度を十分に高めることができる。
また、この指針1によれば、針本体2がコーティング膜10で被覆されているので、このコーティング膜10によって針本体2の全表面を保護することができる。この場合、第1〜第3の各繊維シート6〜8を積層した素材シート5を切断して針本体2を形成した際に、切断された各炭素繊維6a〜8aの各端面が細かい破片として針本体2の外周からこぼれ落ちるのをコーティング膜10によって確実に防ぐことができ、これにより針本体2を良好に保護することができる。
さらに、この指針1によれば、針本体2を指針軸3に取り付けるための取付片4を備えており、この取付片4が、針本体2の取付孔2dに挿入して指針軸3に嵌合する筒状部4aと、この筒状部4aの上端部に設けられて針本体2の上面を押える押え部4bと、筒状部4aの下端部に挿入されて針本体2の下面に配置されるワッシャー部4cと、筒状部4aの下端部に設けられてワッシャー部4cを針本体2の下面に押し付けるカシメ部4dとを有しているので、針本体2を取付片4によって確実にかつ良好に指針軸3に取り付けることができる。
この場合、カシメ部4dは、カシメ加工される前の状態のときに、針本体2の取付孔2dの孔径内において、下側に垂下された構成であることにより、取付片4を針本体2に取り付ける際に、針本体2の取付孔2dに取付片4の筒状部4aを上方から挿入すると、針本体2の取付孔2dを通過してカシメ部4dを針本体2の下側に突出させることができる。
また、このカシメ部4dは、針本体2の取付孔2dに取付片4の筒状部4aを上方から挿入して針本体2の下側に突出した際に、この突出した筒状部4aの下部にワッシャー部4cが下側から装着し、この状態でカシメ加工される構成であることにより、カシメ部4dがカシメ加工されると、そのカシメ部4dによってワッシャー部4cを針本体2の下面に確実にかつ良好に押し付けることができる。
このため、この指針1は、取付片4の筒状部4aが針本体2の取付孔2aに挿入されて押え部4bが針本体2の上面に当接した状態で、カシメ部4dがカシメ加工されてワッシャー部4cが針本体2の下面を押し上げることにより、ワッシャー部4cと押え部4bとによって、針本体2をその厚み方向に挟み付けることができ、これにより針本体2を破損することなく、取付片4を針本体2に確実に取り付けることができ、この取付片4によって針本体2を指針軸3に良好に取り付けることができる。
また、この指針1の製造方法によれば、炭素繊維6a〜8aが配列された第1〜第3の各繊維シート6〜8を、その炭素繊維6a〜8aの配列方向が異なる状態で、積層させることにより、素材シート5を形成する第1工程と、素材シート5をレーザー光線によって切断して針本体2を形成する第2工程とを有していることにより、炭素繊維6a〜8aの配列方向を異ならせて第1〜第3の各繊維シート6〜8を積層させて素材シート5を形成しても、この素材シート5をレーザー光線によって切断することにより、針本体2を正確な形状で切断して形成することができる。
この場合、第1工程では、素材シート5が、針本体2の長手方向の長さよりも少し長い長さの短辺Wと、針本体2が並列に多数配列される長さの長辺Lとを有する帯状に形成されていることにより、多数の針本体2を素材シート5の長手方向に沿って並列に配列するように連続させて形成することができる。
また、第2工程では、帯状の素材シート5をレーザー光線によって針本体2の外形に沿って切断する際に、針本体2の長手方向における一端部、つまり矢印部2aの先端を残して連続して切断することにより、素材シート5に針本体2を多数連結させた状態で形成することができる。
このため、針本体2にコーティング膜10を形成する際に、多数の針本体2をコーティング液に一度に漬けて、多数の針本体2の全表面にコーティング膜10を一度に形成することができるので、生産性が良く、大量生産を図ることができ、生産コストを下げることができる。
(第2実施形態)
次に、図6および図7を参照して、この発明を腕時計の指針15に適用した第2実施形態について説明する。なお、図1〜図5に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この指針15は、炭素繊維16a〜19aを一方向に配列した第1〜第4の各繊維シート16〜19が、その各炭素繊維16a〜19aの配列方向を異ならせた状態で、積層されることにより、素材シート20を形成した構成であり、これ以外は第1実施形態と同じ構成になっている。
すなわち、第1〜第4の各繊維シート16〜19は、第1実施形態と同様、それぞれ炭素繊維16a〜19aを一方向に引き揃えて合成樹脂を含浸させたUDプリプレグシート(炭素繊維強化合成樹脂シート)であり、各繊維シート16〜19の各厚みT2がそれぞれ約0.03mmに形成されている。この素材シート20は、図7(b)に示すように、第1〜第4の各繊維シート16〜19を積層した4層構造である。
この素材シート20における最上層の第1繊維シート16と最下層の第4繊維シート19とは、図7(b)に示すように、その各炭素繊維16a、19aの配列方向が、同じ方向に配列されている。また、中間に位置する2層の第2繊維シート17と第3繊維シート18とは、その各炭素繊維17a、18aの配列方向が、第1繊維シート16と第4繊維シート19との各炭素繊維16a、19aの配列方向に対して直交する方向に配列されている。
この場合、最上層の第1繊維シート16と最下層の第4繊維シート19とは、図7(b)に示すように、その各炭素繊維16a、19aの配列方向が、針本体2の長手方向と平行に配列されている。また、中間に位置する2層の第2繊維シート17と第3繊維シート18とは、その各炭素繊維17a、18aの配列方向が、針本体2の長手方向と直交する方向に配列されている。
これにより、素材シート20は、図7(b)に示すように、第1〜第4の各繊維シート16〜19をその積層方向において上下に2分した際に、上層部側に位置する第1繊維シート16と第2繊維シート17とにおける各炭素繊維16a、17aの配列状態と、下層部側に位置する第3繊維シート18と第4繊維シート19とにおける各炭素繊維18a、19aの配列状態とが、同じ配列状態になるように形成されている。
また、この素材シート20は、図6に示すように、第1〜第4の各繊維シート16〜19を積層した状態で、熱圧着により上下に接合され、その上下方向の厚みT1が0.12mm〜0.13mm程度に形成されている。また、このような素材シート20によって形成された針本体2は、第1実施形態と同様、その全表面がコーティング膜10によって被覆されている。
このような素材シート20によって針本体2を製造する方法は、第1実施形態と同様、炭素繊維16a〜19aが一方向に配列された第1〜第4の各繊維シート16〜19を、その炭素繊維16a〜19aの配列方向が異なる状態で、積層させることにより、素材シート20を形成する第1工程と、この素材シート20をレーザー光線によって切断して針本体2を形成する第2工程と、を有している。
この場合にも、第1工程では、第1実施形態と同様、素材シート20を、針本体2の長手方向の長さよりも少し長い長さの短辺Wと、針本体2が並列に多数配列される長さの長辺Lとを有する帯状に形成する。また、第2工程でも、第1実施形態と同様、帯状の素材シート20をレーザー光線によって針本体2の長手方向における一端部、つまり矢印部2aの先端を残して連続して切断することにより、素材シート20に針本体2を多数連結させた状態で形成する。
このように、この指針15によれば、炭素繊維16a〜19aを一方向に配列した繊維シート16〜19が、その各炭素繊維16a〜19aの配列方向を異ならせた状態で、複数積層されることにより、素材シート20が形成され、この素材シート20によって針本体2が形成されているので、第1実施形態と同様、針本体2の軽量化を図ることができると共に、針本体2の強度を十分に確保することができる。
すなわち、この指針15では、炭素繊維16a〜19aが一方向に配列された第1〜第4の各繊維シート16〜19を積層させて素材シート20を形成する際に、炭素繊維16a〜19aの配列方向を異ならせることできるので、第1実施形態と同様、針本体2を1枚の繊維シートで構成する場合よりも、針本体2の強度を十分に高めることができると共に、耐衝撃性をも高めることができる。
また、この指針15では、炭素繊維16a〜19aを一方向に配列して第1〜第4の各繊維シート16〜19をそれぞれ形成しているので、第1〜第4の各繊維シート16〜19の各厚みT2をそれぞれ薄くすることができ、これにより第1実施形態と同様、針本体2全体の薄型化および軽量化を図ることができる。このため、針本体2を運針させる際における消費電力を軽減して、電池の寿命を延ばすことがきるほか、針本体2の大型化を図ることができると共に、針本体2を自由な形状に形成することができる。
この場合、素材シート20は、第1〜第4の各繊維シート16〜19をその積層方向において上下に2分した際に、上層側に位置する第1、第2の各繊維シート16、17の各炭素繊維16a、17aの配列状態と、下層側に位置する第3、第4の各繊維シート18、19の各炭素繊維18a、19aの配列状態とが、同じ配列状態に形成されているので、各炭素繊維16a〜19aの配列方向を異ならせた状態で、第1〜第4の各繊維シート16〜19を積層させて針本体2を形成しても、針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を抑制することができ、これにより針本体2を均一な形状に保つことができる。
すなわち、この素材シート20は、第1〜第4の各繊維シート16〜19を積層させて針本体2を形成した際に、炭素繊維16a〜19aの配列方向が異なっていても、積層方向において上下に2分された上層部側に位置する第1、第2の各繊維シート16、17の各炭素繊維16a、17aの配列状態と、下層部側に位置する第3、第4の各繊維シート18、19の各炭素繊維18a、19aの配列状態とが、同じ配列状態であることにより、炭素繊維16a〜19aの配列方向が異なることによる強度のアンバランスを上層部と下層部とで相殺することができ、これにより炭素繊維16a〜19aの配列方向が異なることによる針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を確実に抑制することができる。
また、素材シート20は、繊維シート16〜19が4層に積層されて形成されており、最上層の第1繊維シート16と最下層の第4繊維シート19とは、その各炭素繊維16a、19aの配列方向が同じ方向に配列されており、中間に位置する2層の第2繊維シート17と第3繊維シート18とは、その各炭素繊維17a、18aの配列方向が最上層の第1繊維シート16と最下層の第4繊維シート19とにおける各炭素繊維16a、19aの配列方向に対して直交する方向に配列されているので、上層部側と下層部側とにおける各炭素繊維16a〜19aの配列状態を同じ配列状態にすることができ、これにより針本体2の強度を高めることができるので、針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を抑制することができる。
この場合、最上層の第1繊維シート16と最下層の第4繊維シート19とは、その各炭素繊維16a、19aの配列方向が、針本体2の長手方向と平行に配列されていることにより、針本体2の長手方向における強度を高めることができ、これにより針本体2の長手方向における撓み変形を確実にかつ良好に抑制することができる。
また、中間層の第2繊維シート17と第3繊維シート18とは、その各炭素繊維17a、18aの配列方向が、針本体2の長手方向と直交する方向に配列されていることにより、針本体2の捩れ方向における強度を高めることができ、これにより針本体2の捩れ方向における変形を抑制することができる。このため、この指針15においても、針本体2の反りや撓み、あるいは捩れなど各種の変形に対する強度を十分に高めることができる。
さらに、この指針15においても、第1実施形態と同様、針本体2がコーティング膜10で被覆されているので、このコーティング膜10によって針本体2の全表面を保護することができる。この場合、第1〜第4の各繊維シート16〜19を積層した素材シート20を切断して針本体2を形成した際に、切断された各炭素繊維16a〜19aの各端面が細かい破片として針本体2の外周からこぼれ落ちるのをコーティング膜10によって確実に防ぐことができ、これにより針本体2を良好に保護することができる。
(第3実施形態)
次に、図8および図9を参照して、この発明を腕時計の指針24に適用した第3実施形態について説明する。この場合にも、図1〜図5に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この指針24は、図9(a)および図9(b)に示すように、炭素繊維25a〜29aを一方向に配列した第1〜第5の各繊維シート25〜29が、その各炭素繊維25a〜29aの配列方向を異ならせた状態で、積層されることにより、素材シート30を形成した構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、第1〜第5の各繊維シート25〜29は、第1実施形態と同様、それぞれ炭素繊維25a〜29aを一方向に引き揃えて合成樹脂を含浸させたUDプリプレグシート(炭素繊維強化合成樹脂シート)であり、各繊維シート25〜29の各厚みT2がそれぞれ約0.03mmに形成されている。この素材シート30は、図8(b)および図9(b)に示すように、第1〜第5の各繊維シート25〜29を積層した5層構造である。
この素材シート30における上層側の第1、第2の各繊維シート25、26と下層側の第4、第5の各繊維シート28、29とは、図9(b)に示すように、その各炭素繊維25a、26a、28a、29aの配列方向が、同じ方向に配列されている。また、中間に位置する第3繊維シート27は、その炭素繊維27aの配列方向が、第1、第2の各繊維シート25、26と第4、第5の各繊維シート28、29との各炭素繊維25a、26a、28a、29aの配列方向に対して直交する方向に配列されている。
この場合、上層側の第1、第2の各繊維シート25、26と下層側の第4、第5の各繊維シート28、29とは、図9(b)に示すように、その各炭素繊維25a、26a、28a、29aの配列方向が、針本体2の長手方向と平行に配列されている。また、中間に位置する第3繊維シート27は、その各炭素繊維27aの配列方向が、針本体2の長手方向と直交する方向に配列されている。
これにより、素材シート30は、図9(b)に示すように、第1〜第5の各繊維シート25〜29をその積層方向において上下に2分した際に、上層側に位置する第1、第2の各繊維シート25、26と中間に位置する第3繊維シート27とにおける各炭素繊維25a、26a、27aの配列状態と、中間に位置する第3繊維シート27と下層側の第4、第5の各繊維シート28、29とにおける各炭素繊維27a、28a、29aの配列状態とが、同じ配列状態になるように形成されている。
また、この素材シート30は、図8(b)に示すように、第1〜第5の各繊維シート25〜29を積層した状態で、熱圧着により上下に接合され、その上下方向の厚みT1が約0.165mmに形成されている。また、このような素材シート30によって形成された針本体2は、第1実施形態と同様、その全表面がコーティング膜10によって被覆されている。
この場合、針本体2は、図8(b)に示すように、その上面と下面とに印刷層31がシルク印刷またはタコ印刷によって設けられている。この印刷層31は、針本体2の上面と下面とでインクの収縮率を同等にするために、針本体2の上面と下面とで同じインクを使用し、厚みも同じ厚みで形成されている。また、この印刷層31の色については、透明なものが望ましいが、針本体2の上面と下面とを識別するために、上面と下面とで色が異なっていても良い。
このような素材シート30によって針本体2を製造する方法は、第1実施形態と同様、炭素繊維25a〜29aが一方向に配列された第1〜第5の各繊維シート25〜29を積層させることにより、素材シート30を形成する第1工程と、この素材シート30をレーザー光線によって切断して針本体2を形成する第2工程と、を有している。
この場合、第1工程で、第1〜第5の各繊維シート25〜29を積層させる際には、その各炭素繊維25a〜29aのうち、中間に位置する第3繊維シート27の炭素繊維27aの配列方向を、これ以外の繊維シート25、26、28、29の各炭素繊維25a、26a、28a、29aの配列方向に対して異ならせた状態で、積層する。
また、第1工程では、第1実施形態と同様、素材シート30を、針本体2の長手方向の長さよりも少し長い長さの短辺Wと、針本体2が並列に多数配列される長さの長辺Lとを有する帯状に形成する。また、第2工程でも、第1実施形態と同様、帯状の素材シート30をレーザー光線によって針本体2の長手方向における一端部、つまり矢印部2aの先端を残して連続して切断することにより、素材シート30に針本体2を多数連結させた状態で形成する。
このように、この指針24によれば、炭素繊維25a〜29aを一方向に配列した第1〜第5の各繊維シート25〜29が、その各炭素繊維25a〜29aのうち、中間に位置する第3繊維シート27の炭素繊維27aの配列方向を異ならせた状態で、積層されることにより、素材シート30が形成され、この素材シート30によって針本体2が形成されているので、第1実施形態と同様、針本体2の軽量化を図ることができると共に、針本体2の強度を十分に確保することができる。
すなわち、この指針24では、炭素繊維25a〜29aが一方向に配列された第1〜第5の各繊維シート25〜29を積層させて素材シート30を形成する際に、炭素繊維25a〜29aのうち、中間に位置する第3繊維シート27の炭素繊維27aの配列方向を、これ以外の繊維シート25、26、28、29の各炭素繊維25a、26a、28a、29aの配列方向に対して異ならせることにより、第1実施形態と同様、針本体2を1枚の繊維シートで構成する場合よりも、針本体2の強度を確実に高めることができると共に、耐衝撃性をも高めることができる。
また、この指針24では、炭素繊維25a〜29aを一方向に配列して第1〜第5の各繊維シート25〜29をそれぞれ形成しているので、第1〜第5の各繊維シート25〜29の各厚みT2をそれぞれ薄くすることができ、これにより第1実施形態と同様、針本体2全体の薄型化および軽量化を図ることができる。このため、針本体2を運針させる際における消費電力を軽減して、電池の寿命を延ばすことがきるほか、針本体2の大型化を図ることができると共に、針本体2を自由な形状に形成することができる。
この場合、素材シート30は、第1〜第5の各繊維シート25〜29をその積層方向において上下に2分した際に、上層側に位置する第1〜第3の各繊維シート25〜27の各炭素繊維25a〜27aの配列状態と、下層側に位置する第3〜第5の各繊維シート27〜29の各炭素繊維27a〜29aの配列状態とが、同じ配列状態に形成されているので、各炭素繊維25a〜29aのうち、中間に位置する第3繊維シート27の炭素繊維27aの配列方向を異ならせた状態で、第1〜第5の各繊維シート25〜29を積層させて針本体2を形成しても、針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を抑制することができ、これにより針本体2を均一な形状に保つことができる。
すなわち、この素材シート30は、第1〜第5の各繊維シート25〜29を積層させて針本体2を形成した際に、炭素繊維25a〜29aの配列方向が異なっていても、積層方向において上下に2分された上層側に位置する第1〜第3の各繊維シート25〜27の各炭素繊維25a〜27aの配列状態と、下層側に位置する第3〜第5の各繊維シート27〜29の各炭素繊維27a〜29aの配列状態とが、同じ配列状態であることにより、炭素繊維25a〜29aの配列方向が異なることによる強度のアンバランスを上層側と下層側とで相殺することができ、これにより炭素繊維25a〜29aの配列方向が異なることによる針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を確実に抑制することができる。
また、素材シート30は、繊維シート25〜29が5層に積層されて形成されており、上層側の第1、第2の各繊維シート25、26と下層側の第4、第5の各繊維シート28、29とは、その各炭素繊維25a、26a、28a、29aの配列方向が同じ方向に配列されており、中間に位置する第3繊維シート27は、その炭素繊維27aの配列方向が上層側の第1、第2の各繊維シート25、26と下層側の第4、第5の各繊維シート28、29とにおける各炭素繊維25a、26a、28a、29aの配列方向に対して直交する方向に配列されているので、上層側の各炭素繊維25a〜27aと下層側の各炭素繊維27a〜29aとの配列状態を同じ配列状態にすることができる。
これにより、この指針24では、針本体2の強度を高めることができるので、針本体2の反りや撓み、捩れなどの変形を抑制することができる。すなわち、針本体2の剛性不足による反りや撓みを防ぐことができ、これにより生産性の向上を図ることができるほか、素材シート30のレーザー加工による外形加工時の熱による反りなどの変形を抑制することができると共に、針本体2を指針軸3に取り付けるための取付片4に針本体2をカシメによって取り付ける際のストレスによる反りなどの変形をも確実にかつ良好に抑制することができる。
この場合、上層側の第1、第2の各繊維シート25、26と下層側の第4、第5の各繊維シート28、29とは、その各炭素繊維25a、26a、28a、29aの配列方向が、針本体2の長手方向と平行に配列されていることにより、針本体2の長手方向における強度を高めることができ、これにより針本体2の長手方向における撓み変形を確実にかつ良好に抑制することができる。
また、中間に位置する第3繊維シート27は、その炭素繊維27aの配列方向が、針本体2の長手方向と直交する方向に配列されていることにより、針本体2の捩れ方向における強度を高めることができ、これにより針本体2の捩れ方向における変形を抑制することができる。このため、この指針15においても、針本体2の反りや撓み、あるいは捩れなど各種の変形に対する強度を十分に高めることができる。
この場合にも、指針24は、第1実施形態と同様、針本体2がコーティング膜10で被覆されているので、このコーティング膜10によって針本体2の全表面を保護することができる。この場合、第1〜第5の各繊維シート25〜29を積層した素材シート30を切断して針本体2を形成した際に、切断された各炭素繊維25a〜29aの各端面が細かい破片として針本体2の外周からこぼれ落ちるのをコーティング膜10によって確実に防ぐことができ、これにより針本体2を良好に保護することができる。
さらに、この指針24では、針本体2の上面および下面に印刷層31が設けられているので、針本体2の上面側を印刷層31によって装飾することができ、これによりデザイン性を向上させることができる。この場合、針本体2の上面側に印刷層31を設けると、その印刷層31のインクの収縮によって、針本体2が上側に向けて変形する反りが発生するが、針本体2の下面側に印刷層31を設けることにより、針本体2の反りを相殺することができる。また、針本体2の上面および下面で印刷層31の色を変えることにより、針本体2の上面と下面とを識別することができ、これにより指針軸3に対する針本体2の取付作業性を向上させることができる。
なお、上述した第3実施形態では、印刷層31をコーティング膜10の表面に設けた場合について述べたが、これに限らず、印刷層31を針本体2の上面および下面に直接設け、この印刷層31を透明なコーティング膜10で第1〜第5の各繊維シート25〜29と共に覆うように構成しても良い。この場合には、予め、素材シート30の上面および下面にそれぞれ印刷層31を設けることができるので、生産性の向上を図ることができる。また、上述した第3実施形態と同様に、第1実施形態および第2実施形態でも印刷層31を設けても良い。
また、上述した第1〜第3の各実施形態では、上層側の繊維シート6、16、25、26と下層側の繊維シート8、19、28、29とにおける各炭素繊維6a、8a、16a、19a、25a、26a、28a、29aの配列方向と、中間に位置する繊維シート7、17、18、27の各炭素繊維7a、17a、18a、27aの配列方向とが、互いに直交するように、各繊維シート6〜8、16〜19、25〜29を積層させた場合について述べたが、必ずしも直交させる必要はなく、所定角度で交差するように構成しても良い。
すなわち、上層側の繊維シートと下層側の繊維シートとにおける各炭素繊維の配列方向と、中間層の繊維シートにおける炭素繊維の配列方向とを、所定角度、例えば45度の角度で交差するように、複数の繊維シートを積層させて素材シートを形成した構成でも良い。この場合にも、素材シートは、複数の繊維シートをその積層方向において上下に2分した際に、上層側に位置する炭素繊維の配列状態と、下層側に位置する炭素繊維の配列状態とが、同じ配列状態に形成されていれば良い。
また、上述した第1〜第3の各実施形態では、針本体2が、その一端(図1では右端)に矢印部2aを形成し、この矢印部2aから他端側(図1では左側)に向けて幅狭部2bを細長く形成し、この細長い幅狭部2bから他端部に向けて幅広部2cを形成した形状である場合について述べたが、これに限らず、針本体は自由な形状に形成しても良い。
さらに、上述した第1〜第3の各実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。また、必ずしも時計に限らず、メータなどの計器類の指針にも適用することができる。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。 以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、炭素繊維を一方向に配列した繊維シートが、前記炭素繊維の配列方向を異ならせた状態で、複数積層されることにより、素材シートが形成され、この素材シートによって針本体が形成されていることを特徴とする指針である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の指針において、前記素材シートは、複数の前記繊維シートをその積層方向において上下に2分した際に、上層部に位置する前記炭素繊維の配列状態と、下層部に位置する前記炭素繊維の配列状態とが、同じ配列状態に形成されていることを特徴とする指針である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の指針において、前記素材シートは、前記繊維シートが3層に積層されて形成されており、上層の繊維シートと下層の繊維シートとは、その各炭素繊維の配列方向が同じ方向に配列されており、中間層の繊維シートは、その炭素繊維の配列方向が前記上層の繊維シートと前記下層の繊維シートとにおける各炭素繊維の配列方向に対して直交する方向に配列されていることを特徴とする指針である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の指針において、前記上層の繊維シートと前記下層の繊維シートとは、その各炭素繊維の配列方向が前記針本体の長手方向と平行に配列されており、前記中間層の繊維シートは、その炭素繊維の配列方向が前記針本体の長手方向と直交する方向に配列されていることを特徴とする指針である。
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の指針において、前記素材シートは、前記繊維シートが4層に積層されて形成されており、最上層の繊維シートと最下層の繊維シートとは、その各炭素繊維の配列方向が同じ方向に配列されており、中間に位置する2層の各繊維シートは、その各炭素繊維の配列方向が前記最上層の繊維シートと前記最下層の繊維シートとにおける各炭素繊維の配列方向に対して直交する方向に配列されていることを特徴とする指針である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の指針において、前記最上層の繊維シートと前記最下層の繊維シートとは、その各炭素繊維の配列方向が前記針本体の長手方向と平行に配列されており、前記中間に位置する2層の各繊維シートは、その各炭素繊維の配列方向が前記針本体の長手方向と直交する方向に配列されていることを特徴とする指針である。
請求項7に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の指針において、前記素材シートは、前記繊維シートが5層に積層されて形成されており、上層側の2層の各繊維シートと下層側の2層の各繊維シートとは、その各炭素繊維の配列方向が同じ方向に配列されており、中間に位置する繊維シートは、その炭素繊維の配列方向が前記上層側の各繊維シートと前記下層側の各繊維シートとにおける各炭素繊維の配列方向に対して直交する方向に配列されていることを特徴とする指針である。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の指針において、前記上層側の各繊維シートと前記下層側の各繊維シートとは、その各炭素繊維の配列方向が前記針本体の長手方向と平行に配列されており、前記中間に位置する繊維シートは、その炭素繊維の配列方向が前記針本体の長手方向と直交する方向に配列されていることを特徴とする指針である。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の指針において、前記針本体はコーティング膜で被覆されていることを特徴とする指針である。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の指針において、前記針本体の表面および裏面には印刷層が設けられていることを特徴とする指針である。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の指針において、前記針本体を指針軸に取り付けるための取付片を備えており、この取付片は、前記針本体の取付孔に挿入して前記指針軸に嵌合する筒状部と、この筒状部の上端部に設けられて前記針本体の上面を押える押え部と、前記筒状部の下端部に挿入されて前記針本体の下面に配置されるワッシャー部と、前記筒状部の下端部に設けられて前記ワッシャー部を前記針本体の下面に押し付けるカシメ部とを有していることを特徴とする指針である。
請求項12に記載の発明は、炭素繊維が一方向に配列された繊維シートを、前記炭素繊維の配列方向が異なる状態で、複数積層させることにより、素材シートを形成する第1工程と、
前記素材シートをレーザー光線によって切断して針本体を形成する第2工程と、
を有していることを特徴とする指針の製造方法である。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の指針の製造方法において、
前記第1工程では、前記素材シートを、前記針本体の長手方向の長さよりも少し長い長さの短辺と、前記針本体が並列に多数配列される長さの長辺とを有する帯状に形成し、
前記第2工程では、前記帯状の前記素材シートをレーザー光線によって前記針本体の外形に沿って切断する際に、前記針本体の長手方向における一端部を残して連続して切断することにより、前記素材シートに前記針本体を多数連結させた状態で形成する
ことを特徴とする指針の製造方法である。