JP5948749B2 - 重合体、有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機el表示装置及び有機el照明 - Google Patents
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湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層及びその形成用の塗布液に様々な機能をもった複数の材料を混合することが容易である等の利点がある。しかし、湿式成膜法は積層化が困難である。このため、真空蒸着法により製造した素子に比べて湿式成膜法で製造した素子は駆動安定性に劣り、一部を除いて実用レベルに至っていない。特に、湿式成膜法では、有機溶剤及び水系溶剤を使用するなどして二層の積層は可能であるが、三層以上の積層化は困難であった。 このような積層化における課題を解決するために、特許文献1には、下記のようなフルオレン環及び架橋性基を含む重合体(Q−1)が提案され、これらの架橋性基が反応した場合に得られる網目状重合体が有機溶剤に不溶となることを利用して積層化を行うことが開示されている。しかしながら、これらの材料は正孔輸送能が低く、これらの材料を用いて素子を作製した場合、駆動電圧が高く発光効率が低い上、素子寿命が低いといった問題があり、素子の特性としては不十分であった。
また特許文献2〜4では、主鎖にメチレン基を有するトリアリールアミン化合物が例示されているが、塗布後に不溶とするための架橋性基などの記載はなく、特許文献2〜4に記載の技術では、塗布法による積層化は困難であった。更に、駆動電圧が高く、また発光効率が低いという課題があった。
本発明はまた、低い電圧で駆動可能で、且つ発光効率が高く有機電界発光素子、並びに、高品質の有機EL表示装置及び有機EL照明を提供することを目的とする。
さらに、検討を行った結果、重合体中における特定の部分構造の、最大のイオン化ポテンシャルと、最小のイオン化ポテンシャルの差が大きいことが、重合体の正孔輸送能が低い一因であることを見出して、本発明に到達した。
Xは、−O−、−S−、及び−CR1R2−のいずれか一つを表し、
R1及びR2は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基又は該芳香族環を2〜4個連結した基を表す。
IPmax−IPmin≦0.1eV (1)
(上記式(1)中、
IPmaxは、前記重合体中に2種以上含まれる下記式(I−1)で表される部分構造のうちの、最大のイオン化ポテンシャルを表し、
IPminは、前記重合体中に2種以上含まれる下記式(I−1)で表される部分構造のうちの、最小のイオン化ポテンシャルを表す。)
また、本発明の有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、発光効率が高く、また駆動安定性に優れる。更に、本発明の有機EL表示装置及び有機EL照明は、高品質である。
本発明において「芳香族環」とは、「芳香族炭化水素環」及び「芳香族複素環」の双方を示す。
<重合体>
先ず、本発明の重合体の構造について説明する。
[重合体の構造]
本発明の重合体は、下記式(I)で表される繰り返し単位からなる重合体であって、該重合体は、架橋性基を含み、且つ、式(I)で表される繰り返し単位を2種以上含む。
Xは、−O−、−S−、及び−CR1R2−のいずれか一つを表し、
R1及びR2は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基又は該芳香族環を2〜4個連結した基を表す。
(構造上の特徴)
前記式(I)で表される繰り返し単位は、主鎖にsp3原子(−O−、−S−、及び−CR1R2−)を主鎖中に有することで、重合体を架橋させた後でも、π共役系の広がりを抑制しうるため、一重項励起準位及び三重項励起準位を高く維持しうる。
( Ar1〜Ar3について)
Ar1〜Ar3は、置換基を有していてもよい芳香族環基又は該芳香族環を2〜5個連結した基を表す。
芳香族複素環基としては、例えば、1又は2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環などの基が挙げられる。
式(I)中のAr1〜Ar3は、芳香族環を2〜5個連結した基であってもよい。
以下である。
このような基としては、例えば、ビフェニレン基、ターフェニレン基などが挙げられ、4,4’−ビフェニレン基が好ましいものとして挙げられる。 前記式(I)中のAr1〜Ar3における芳香族環基が有していてもよい置換基としては、下記(置換基群Z)の項で記載のものが挙げられる。
例えばメチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは、12以下であるアルキル基;
例えばビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基;
例えばエチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基;
例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基;
例えばフェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24であるアリールオキシ基;
例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基;
例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基;
例えばジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上であり、通常36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
例えばフェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常7であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基;
例えばアセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2であり、通常24以下、好ましくは12であるアシル基;
例えばフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
例えばトリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基;
例えばメチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基;
例えばフェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基;
例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基;
例えばトリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基;
シアノ基;
例えばフェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素環基;
例えばチエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。
Ar1〜Ar3の置換基の式量としては、さらに置換した置換基を含めて、500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
さらに式量に関していえば、Ar1〜Ar3の式量は、通常65以上、好ましくは75以上であり、通常500以下、好ましくは300以下、より好ましくは200以下である。
上記範囲内であると、重合体の有機溶剤に対する溶解性が良好である点で好ましい。 尚、n1が2以上である場合、一つの繰り返し単位中に含まれる複数のAr2及びAr3は、各々独立に、同じでもよく異なっていてもよい。
n1は、1〜5の整数を表す。
重合体の、有機溶剤に対する溶解性が良好である点で、n1は、1〜3が好ましく、特に1〜2が好ましい。
(Xについて)
Xは、−O−、−S−、及び−CR1R2−のいずれか一つを表す。R1及びR2は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基を表す。
また、R1及びR2における芳香族環基は、前記(Ar1〜Ar3について)の項で記載した芳香環に対応する1個の遊離原子価を有する基が挙げられる。
更に、R1及びR2は、芳香族環を2以上直接連結した基であってもよく、これらは前記(Ar1〜Ar3について)の項で記載したものと同様である。
(架橋性基について)
本発明の重合体は、架橋性基を含むことで、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(難溶化反応)の前後で、有機溶剤に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。
架橋性基としては、架橋がしやすいという点で、例えば、架橋性基群Tに表す基が挙げられる。
[架橋性基群T]
R21〜R23は、各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Ar21は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。)
エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重
合によって不溶化反応する基が、反応性が高く不溶化が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねく場合があるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
具体的には、下記式(III)で表される基であることが好ましい。
架橋性基は、分子内の芳香族環基に直接結合してもよいが、2価の基を介して結合してもよい。この2価の基としては、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH2−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を
介して、芳香族環基に結合することが好ましい。
本発明の重合体は、1つのポリマー鎖の中に有する架橋性基は、好ましくは平均1以上、より好ましくは平均2以上、また好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。
また、本発明の重合体が有する架橋性基の数は、分子量1000あたりの数で表すことができる。
上記範囲内であると、クラックなどが起き難く、平坦な膜が得られ易かったり、架橋密度が適度であるため、架橋反応後の層中に残る未反応の架橋性基が少ないため、得られる素子の寿命に影響し難かったりする。
例えば、後述の合成例1で合成した目的ポリマー1の場合で説明する。
(架橋性基を有する位置について)
本発明の重合体が架橋性基を含む場合、架橋性基を有する位置は、本発明の効果を損な
わない限り特に制限はないが、架橋がし易い点で、前記式(I)のAr3における芳香族環に置換基として有することが特に好ましい。
つまり、架橋性基を置換基として有するAr3と、架橋性基を有さないAr3が、一つの繰り返し単位中にあってもよい。
(繰り返し単位の種類について)
尚、本発明の重合体は、前記式(I)で表される繰り返し単位を2種以上含む。
[式(II)で表される繰り返し単位について]
式(I)で表される繰り返し単位は、重合体の有機溶剤に対する溶解性が良好である点で、更に下記式(II)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
尚、上記式(II)における、IPmax及びIPminは、各々重合体中に2種以上含まれる下記式(II−1)で表される部分構造の最大のイオン化ポテンシャル及び最小のイオン化ポテンシャルを表す。)
R11及びR12は、各々、前記式(I)におけるR1及びR2と同義である。具体例及び好ましい態様も同様である。
(Ar11〜Ar13について)
Ar11〜Ar13は、前記Ar1〜Ar3と同義である。具体例及び好ましい態様も
同様である。
本発明の重合体は、下記式(1)を満たす。
IPmax−IPmin≦0.1eV (1)
(上記式(1)中、
IPmaxは、前記重合体中に2種以上含まれる下記式(I−1)で表される部分構造のうちの、最大のイオン化ポテンシャルを表し、
IPminは、前記重合体中に2種以上含まれる下記式(I−1)で表される部分構造のうちの、最小のイオン化ポテンシャルを表す。)
IPminとは、前記重合体中に2種以上含まれる前記式(I−1)で表される部分構造のうち、最も小さいイオン化ポテンシャルを表すものであり、この場合における「前記式(I−1)で表される部分構造のうち」も前記と同様である。
上記の通り決定したIPmax及びIPminを用いて算出される、IPmax−IPmin(以下、「式(1)の右辺値」と称する場合がある)は、通常0.1eV以下、好ましくは0.05eV以下、更に好ましくは0.03eV以下である。
本発明の重合体は、下記式(2)を満たすことが更に好ましい。
EAmax−EAmin≦0.1eV (2)
(上記式(2)中、
EAmaxは、前記重合体中に2種以上含まれる前記式(I−1)で表される部分構造のうちの、最大の電子親和力を表し、
EAminは、前記重合体中に2種以上含まれる前記式(I−1)で表される部分構造のうちの、最小の電子親和力を表す。)
EAmax−EAmin(以下、「式(2)の右辺値」と称する場合がある)は、好ましくは0.1eV以下、より好ましくは、0.05eV以下さらに好ましくは0.03eVである。
以下に、本発明におけるIP及びEAの計算方法を示す。
[IPの計算方法]
本発明におけるIPは、下記の方法により計算を行う。
該立体分子構造に対し、Stochastic Monte Carlo法を用いて初期分子構造をサンプリングする。Stochastic Monte Carlo法はランダム分子構造発生することとエネルギーポテンシャルを計算することで統計的に分子構造をサンプリングする有効な手法である(Allen, M.P.; Tildesley, D. J. Computer Simulation of Liquids; Clarendon Press: Oxford, U.K., 1987) 。
、新しい構造はより安定な構造として採用する。また乱数が遷移確率より大きい場合には、新たな構造がエネルギー的に安定ではないため、古い構造の方を安定な構造として採用する。このような手続きを繰り返すことによりエネルギーポテンシャル面でのエネルギー的な安定な局所構造(ローカルミニマム構造)を複数求める。その際ローカルミニマム構造の数は十分にBoltzman分布の構造平均を再現できるように発生する必要がある。本発明では最終的に全部で10個のローカルミニマム構造を発生することとした。
(STEP2:量子化学計算による立体分子構造の最適化)
前記(STEP1)で求めた10個のローカルミニマム分子構造に対して、さらにより信頼性のおけるローカルミニマム分子構造を得るために、量子化学計算での構造最適化を行う必要がある。この際最初から精度の高い非経験的量子化学計算を実施するより、まず一度比較的計算負荷の低い半経験的量子化学計算により構造最適化計算を経由した上で、更に精度の高い非経験的量子化学計算を実施した方がトータルの計算時間の短縮化が出来る。
高い非経験的分子軌道計算として密度汎関数法(Density Functional Theory、略してDFT)を用いた。その時汎関数としてはハイブリッド型のB3LYP(Becke, A.D. J. Chem. Phys.
1993, 98, 5648)を用い、基底関数は6-31G**を使って最終的に10個の基底状態のローカ
ルミニマムの立体構造を計算した。このようにして求めた10個の精度の高いローカルミニマムの最適化構造をIPを見積もるための分子構造とする。
ma, Y. Honda, O. Kitao, H. Nakai, T. Vreven, J. A. Montgomery, Jr., J. E. Peralta, F. Ogliaro, M. Bearpark, J. J. Heyd, E. Brothers, K. N. Kudin, V. N. Staroverov, R. Kobayashi, J. Normand, K. Raghavachari, A. Rendell, J. C. Burant, S. S. Iyengar, J. Tomasi, M. Cossi, N. Rega, J. M. Millam, M. Klene, J. E. Knox, J. B. Cross, V. Bakken, C. Adamo, J. Jaramillo, R. Gomperts, R. E. Stratmann, O. Yazyev, A. J. Austin, R. Cammi, C. Pomelli, J. W. Ochterski, R. L. Martin, K. Morokuma, V. G. Zakrzewski, G. A. Voth, P. Salvador, J. J. Dannenberg, S. Dapprich, A. D. Daniels, O. Farkas, J. B. Foresman, J. V. Ortiz, J. Cioslowski, and D. J. Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2009.)を用いて実行する。
上記(STEP2:量子化学計算による立体分子構造の最適化)で非経験的量子化学計算により最終的に得られた10個のローカルミニマム構造でのHOMOの軌道エネルギーの値を利用して、それぞれのローカルミニマムにおいてIP値をヤナックの定理 (i.e. DFT計算で得られた分子のエネルギーは占有軌道に対しての微分値はその分子の軌道エネルギーに相同する。(Janak, J.F. Phys. Rev. B.1978, 12, 7165)) に基づいてIP=−(HOMOの軌道エネルギー値)の式により算出する(同様にEA=-(LUMOの軌道エネルギー)で算出す
る)。さらに10個のローカルミニマムに対するIPの値から平均値(IPの平均値)を求めた。本発明における目的の重合体の単位ユニットのIP値とは、該IPの平均値を意味する(同様に目的の重合体の単位ユニットのEAは、EAの平均値を意味する)。
本発明におけるEAは、前記(STEP1:分子構造の発生)〜(STEP2:構造の最適化)と同様にして行う。
更に、前記(STEP3:IPの算出)において、同様に(STEP2:構造の最適化)で最終的に得られた10個の最適化構造LUMOエネルギー値を利用して、それぞれEA値がヤナックの定理に基づき軌道エネルギーからEA=−(LUMOの軌道エネルギー値)で算出する。それらEAの平均値は目的の重合体の単位ユニットのEA値とする。
本発明において、式(1)を満たす方法としては、例えば下記が挙げられる。
(a)2以上の異なる繰り返し単位を含む重合体において、異なる繰り返し単位間での、Ar1〜Ar3における複素環又は芳香族環を、各々同じとする。
(b)架橋性基は、sp3原子を介して芳香族環基と連結する。更に、架橋性基を含まない繰り返し単位ユニットにおいても、同様のsp3原子が芳香族環基に結合するのが好ましい。
また、例えば、後述する本願実施例2では、ビフェニル基の4位にアルキル基を介して
架橋性基が導入されている。架橋性基を含まないユニットに関しては、ビフェニル基の4位に−(CH2)6−CH3を含む。
5で処理し、アミノ基を有する末端は、化合物10と反応させる。)
[具体例]
本発明の重合体の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。
また、本発明の重合体における数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常
500以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上である。
本発明においては、重量平均分子量が20,000以上で、且つ分散度が2.5以下であることが、重合体の特性上特に好ましい。
本発明の重合体のガラス転移温度は、通常50℃以上、80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常300℃以下である。
上記範囲内であると、重合体の耐熱性が優れ、得られる素子の駆動寿命が向上する点で好ましい。
上記範囲内であると、重合体の正孔輸送能が優れ、得られる素子の駆動電圧が低下するため好ましい。
[重合体の製造方法]
本発明の重合体の製造方法は特には制限されず、本発明の重合体が得られる限り任意である。例えば、Suzuki反応による重合方法、Grignard反応による重合方法、Yamamoto反応による重合方法、Ullmann反応による重合方法、Buchwald−Hartwig反応による重合方法等などによって製造できる。
なお、前記の重合方法において、通常、N−アリール結合を形成する反応は、例えば炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。
尚、前記の重合方法において、通常、ホウ素誘導体とジハロゲン化物との反応工程は例えば炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、必要に応じて、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。さらにホウ素誘導体との反応工程では、例えば、炭酸カリウム、りん酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基、及び、パラジウム錯体等の遷移金属触媒の存在下で行うことができる。
アリールアミンとを、トリフルオロメタンスルホン酸や硫酸などの酸触媒下で重合することによっても、本発明の重合体を合成することができる。<有機電界発光素子材料>
本発明の重合体は、有機電界発光素子材料として用いられることが好ましい。つまり、本発明の重合体からなる有機電界発光素子材料であることが好ましい。
また、有機電界発光素子を簡便に製造できることから、本発明の重合体は、湿式成膜法で形成される有機層に用いることが好ましい。
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の重合体を少なくとも1種含有する。なお、本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の重合体を1種類含有するものであってもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含有するものであってもよい。
上記範囲内であると、形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、通常、溶剤を含有する。この溶剤は、本発明の重合体を溶解するものが好ましい。具体的には、本発明の重合体を、通常0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶剤が好適である。
本発明の有機電界発光素子用組成物を塗布後、重合体を架橋して層を形成する場合、下地との親和性が高いことが好ましい。膜質の均一性は有機電界発光素子の発光の均一性及び安定性に大きく影響するためである。したがって、湿式成膜法に用いる有機電界発光素子用組成物には、よりレベリング性が高く均一な塗膜を形成しうるように表面張力が低いことが求められる。そこで前記のような低い表面張力を有する溶剤を使用することにより、本発明の重合体を含有する均一な層を形成することができ、ひいては均一な架橋層を形成できるようにすることが好ましいのである。
ところで、水分は有機電界発光素子の性能劣化を引き起こす可能性があり、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性がある。そこで、湿式成膜中に残留する水分をできる限り低減するために、前記の溶剤の中でも、25℃における水の溶解度が1重量%以下であるものが好ましく、0.1重量%以下である溶剤がより好ましい。
さらに、本発明の有機電界発光素子用組成物は、形成しようとする有機層の種類等に応じて、本発明の重合体以外のポリマー、発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、電子受容性化合物などを含有していてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、正孔注入層を形成するために用いる場合、低抵抗化する点で、さらに電子受容性化合物を含有することが好ましい。
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、本発明の重合体から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
置換基を表わす。R11及びR12は、互いに結合して環を形成していてもよい。
R11としては、A1との結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の趣旨に
反しない限り、その種類は特に制限されない。R11の分子量は、置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
芳香族炭化水素基としては、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
R12は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されない。R12の分子量は、置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
R12の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。
る有機基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。特に、電子受容性が大きいとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基としては、R11について先に説明したものと同様のものが挙げられる。
アルキルアミノ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、メ
チルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が挙げられる。具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。具体例としては、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基が挙げられる。具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
スルホニルオキシ基の具体例としては、メシルオキシ基、トシルオキシ基等が挙げられる。
シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など挙げられる。
ては、上記R11及びR12、としてそれぞれ例示した基の他、ハロゲン原子、シアノ基、チオシアノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、イオン化合物(電子受容性化合物)の耐熱性及び電子受容性の妨げにならない観点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。
く、電子受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前(第3〜第5周期)の元素が好ましい。即ち、A1としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れかが好
ましい。
特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(I−1)におけるA1が臭素原子又
はヨウ素原子であるイオン化合物、特に好ましくは、ヨウ素原子であるイオン化合物が最も好ましい。
n1は、各々独立に、対アニオンZ1 n1-のイオン価に相当する任意の正の整数である。n1の値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
す。中でもホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点から、ホウ素原子が好ましい。
式(I−2)中、Ar31〜Ar34は、各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の例示としては、R11について先に
例示したものと同様の、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基が挙げられる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環由来の1価の基が好ましい。
Ar31〜Ar34が有してもよい置換基として好ましい電子吸引性の基を例示するならば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアルキルスルホニル基;トシル基等のアリールスルホニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは6以下のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシカルボニル基;アミノカルボニル基;アミノスルホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基にフッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が置換したハロアルキル基、などが挙げられる。
上記範囲内であると、正電荷及び負電荷が十分に非局在化し、電子受容能が良好で、また電荷輸送の妨げになり難い点で好ましい。
以下に、本発明における電子受容性化合物の具体例を示すが、本発明はこられに限定されるものではない。
<有機電界発光素子の構成>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層が前記有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成された層を含む。
また、本発明の有機電界発光素子においては、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を含有し、該正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成されたものであるのが好ましい。
図1は本発明にかかる有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
[基板]
基板は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
陽極は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
[正孔注入層]
正孔注入層は、陽極から発光層へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極上に形成される。本発明の有機電界発光素子においては、正孔注入層は、本発明の有機電界発光素子用組成物を湿式成膜法にて形成した層であることが好ましい。
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
湿式成膜により正孔注入層を形成する場合、通常は、正孔注入層を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
本発明においては、この高分子化合物として前記本発明の重合体を用いるのが好ましい。また、他の正孔輸送性化合物も用いることができる。
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
Arb5は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基
を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Zbは、下記の連結基群の中から選ばれる
連結基を表わす。また、Arb1〜Arb5のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。)
1及びRb2は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表わす。)
Arb1〜Arb16としては、任意の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環の1価以上の基が適用可能である。これらの基は各々同一であっても、互いに異なって いてもよい。
また、これらの基は、更に任意の置換基を有していてもよい。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4−ethylenedioxythiophene(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。 塗布工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
塗布後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
真空蒸着により正孔注入層を形成する場合には、正孔注入層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼ
に入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
本発明に係る正孔輸送層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層は、正孔注入層がある場合には正孔注入層の上に、正孔注入層が無い場合には陽極の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II−1)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II−1)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ara又
はArbが異なっているものであってもよい。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基としては、例えば、1又は2個の遊離原子価を有するベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
Ara及びArbにおける芳香族環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族環基などが挙げられる。
示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)及び/又は下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
、Rb、Rc又はRdと同義である。u及びvは、各々独立に、0〜3の整数を表す。u又
はvが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRe及びRfは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRe又はRf同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
Xの具体例としては、―O―、―BR―、―NR―、―SiR2―、―PR―、―SR
―、―CR2―又はこれらが結合してなる基である。尚、Rは、水素原子又は任意の有機
基を表す。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
Arc〜Arjの具体例としては、前記式(II)における、Ara及びArbと同様である。
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008−98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層の形成の場合と同様である。
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を含む化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖又は側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を含む繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III−1)〜(III−3)に架橋性基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
このようにして形成される正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
[発光層]
正孔注入層の上、又は正孔輸送層を設けた場合には正孔輸送層の上には発光層が設けられる。発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入された正孔と、陰極か
ら注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
発光層は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。さらに、発光層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
以下、発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
ス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層における(低分子量の正孔輸送性化合物)として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72−74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
発光層における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPyS
PyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る湿式成膜法により発光層を形成する場合は、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。
発光層を本発明に係る湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。発光層用溶剤の好適な例は、上記正孔注入層形成用組成物で説明した溶剤と同様である。
また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
チル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。さらに、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
発光層と後述の電子注入層の間に、電子輸送層を設けてもよい。
電子輸送層は、素子の発光効率をさらに向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
ルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
[陰極]
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たすものである。
び比率で併用してもよい。
陰極の膜厚は、通常、陽極と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
[電子阻止層]
他の任意の層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
さらに陰極と発光層又は電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(C
sCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters,1997年,Vol.70,pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,Vol.44,pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
さらには、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
[モノマーの合成]
(化合物1の合成)
(化合物2の合成)
(化合物3の合成)
4mL)溶液に、室温でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.56g,1.35mmol)、2M三りん酸カリウム水溶液(67mL)を加え、8時間半還流させた。室温まで放冷後、反応混合物をトルエンで抽出、有機層を水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン=8/1)にて精製、濃縮後ヘキサンを少量入れて結晶を析出させることでモノマー3(8.3g)を得た。
(化合物4の合成)
(化合物5の合成)
(化合物6の合成)
(化合物7の合成)
(化合物8の合成)
)で精製することにより、化合物8(5.0g)を得た。
(化合物9の合成)
(化合物10の合成)
時間半、攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出を行った。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン)により精製した。40℃で減圧乾燥することにより、化合物10(25.58g、収率91.3%)を得た。
化合物3のHPLC純度は99.6面積%であった。
(化合物11の合成)
ん酸三カリウム(80ml)を加え、2.5時間還流下撹拌した。室温まで冷却したのち、反応液を水、飽和食塩水で洗浄し、油層に塩化メチレン(500ml)およびテトラヒドロフラン(1.2L)を加え溶解させ、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過し、有機層
を濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグフィー(ヘキサン:塩化メチレン=3:1〜塩化メチレンのみ)で精製することにより、化合物11(11.5g)を得た。
(化合物13の合成)
(化合物15の合成)
(化合物16の合成)
(化合物17の合成)
(化合物18の合成)
ン溶液(24.6ml)を滴下し、―20℃まで昇温しそのまま20分反応した。化合物17(6.60g)を滴下し、室温まで徐々に昇温した。2時間攪拌した後、反応液に水と飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、ヘキサン、酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗し、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、化合物18(11.0g)を得た。
(合成例1:目的ポリマー1の合成)
ナトリウム(2.383g、24.8mmol)、トルエン(20ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.0755g、0.0729mmol)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.118g、0.584mmol)を加え、65℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.5時間、加熱還流反応した。化合物3、14及び18が消失したことを確認し、化合物3(1.841g)を追添加した。1.5時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール500ml中に滴下し、粗ポリマー1を晶出させた。
℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.038g)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.059g)を加え、65℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、4時間、加熱還流反応した。この反応液に、化合物10(0.694g)、再調液した溶液Dを添加し、さらに、2時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール50
0mlに滴下し、エンドキャップした粗ポリマー1を得た。
重量平均分子量(Mw)=7.5万
数平均分子量(Mn)=4.9万
分散度(Mw/Mn)=1.52
(合成例2:目的ポリマー2の合成)
℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.038g)のトルエン3ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.059g)を加え、65℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、化合物11(1.275g)、再調液した溶液Dを添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール500mlに滴下し、エンドキャップした粗ポリマー2を得た。
重量平均分子量(Mw)=7.8万
数平均分子量(Mn)=5.1万
分散度(Mw/Mn)=1.54
<重合体の部分構造のIP及びEaの計算値の算出>
(参考例1:目的ポリマー1に関する計算)
本発明の式(I)に倣って表記した目的ポリマー1を下記に示す。
該測定対象ユニットに関して、下記[IPの計算方法]および [EAの計算方法]によりIP、EA計算値を算出した。結果を表1に示す。
IPmax=IPmin=4.79(eV)
EAmax=EAmin=0.94(eV)
である。これより、式(1)及び(2)の右辺値は、各々下記の通りである。
式(1):IPmax−IPmin=0
式(2):EAmax― EAmin=0
[IPの計算方法]
(STEP1:恣意性をなくすため統計物理に満たす十分な数のサンプリング初期分子構造の発生)重合体に含まれる各計算対象ユニットに関し、分子モデリングにて立体分子構造を作成した。
Stochastic Monte Carlo法で構造をサンプリングする手法では、まずモデリングにて作成された仮の立体分子構造に対して、ランダムにその構造を変化させ、新しい構造を発生させた。そしてその新旧二つ構造のエネルギー値を用い、構造間の遷移確率を計算した。さらに[0,1]の範囲で一つ乱数を発生し、その乱数が遷移確率より小さいか等しい場合
に、新しい構造はより安定な構造として採用した。また乱数が遷移確率より大きい場合には、新たな構造がエネルギー的に安定ではないため、古い構造の方を安定な構造として採用した。該手続きを繰り返し、エネルギーポテンシャル面でのエネルギー的な安定な局所構造(ローカルミニマム構造)を複数求めた。その際ローカルミニマム構造の数は十分にBoltzman分布の構造平均を再現できるように発生させた。最終的に全部で10個のローカルミニマム構造を発生させた。
(STEP2:量子化学計算による立体分子構造の最適化)
前記(STEP1)で求めた10個のローカルミニマム分子構造に対して、量子化学計算での構造最適化を行った。
の高い非経験的分子軌道計算として密度汎関数法を用いた。その時汎関数としてはハイブリッド型のB3LYP(Becke, A.D. J. Chem. Phys. 1993, 98, 5648)を用い、基底関数は6-31G**を使って最終的に10個の基底状態のローカルミニマムの立体構造を計算した。このよ
うにして求めた10個の精度の高いローカルミニマムの最適化構造をIPを見積もるための分子構造とした。
eman, G. Scalmani, V. Barone, B. Mennucci, G. A. Petersson, H. Nakatsuji, M. Caricato, X. Li, H. P. Hratchian, A. F. Izmaylov, J. Bloino, G. Zheng, J. L. Sonnenberg, M. Hada, M. Ehara, K. Toyota, R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao, H. Nakai, T. Vreven, J. A. Montgomery, Jr., J. E. Peralta, F. Ogliaro, M. Bearpark, J. J. Heyd, E. Brothers, K. N. Kudin, V. N. Staroverov, R. Kobayashi, J. Normand, K. Raghavachari, A. Rendell, J. C. Burant, S. S. Iyengar, J. Tomasi, M. Cossi, N. Rega, J. M. Millam, M. Klene, J. E. Knox, J. B. Cross, V. Bakken, C. Adamo, J. Jaramillo, R. Gomperts, R. E. Stratmann, O. Yazyev, A. J. Austin, R. Cammi, C. Pomelli, J. W. Ochterski, R. L. Martin, K. Morokuma, V. G. Zakrzewski, G. A. Voth, P. Salvador, J. J. Dannenberg, S. Dapprich, A. D. Daniels, O. Farkas, J. B. Foresman, J. V. Ortiz, J. Cioslowski, and D. J. Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2009.)を用いて実行した。
上記(STEP2:量子化学計算による立体分子構造の最適化)で非経験的量子化学計算により最終的に得られた10個のローカルミニマム構造でのHOMOの軌道エネルギーの値を利用して、それぞれのローカルミニマムにおいてIP値をヤナックの定理に基づいてIP=−(HOMOの軌道エネルギー値)の式により算出した(同様にEA=-(LUMOの軌道エネルギ
ー)で算出する)。さらに10個のローカルミニマムに対するIPの値から平均値(IPの平
均値)を求めた。
前記(STEP1:分子構造の発生)〜(STEP2:構造の最適化)と同様にして行った。
更に、前記(STEP3:IPの算出)において、同様に(STEP2:構造の最適化)で最終的に得られた10個の最適化構造LUMOエネルギー値を利用して、それぞれEA値がヤナックの定理に基づき軌道エネルギーからEA=−(LUMOの軌道エネルギー値)で算出する。それらEAの平均値は目的の重合体の単位ユニットのEA値とした。 (参考例2:目的ポリマー2に関する計算)
本発明の式(I)に倣って表記した目的ポリマー2を下記に示す。
該測定対象ユニットに関して、実施例1と同様にして、IP及びEAの計算値を算出した。
結果を表2に示す。
IPmax=IPmin=4.84(eV)
EAmax=EAmin=0.89(eV)
である。これより、式(1)及び(2)の右辺値は、各々下記の通りである。
式(1):IPmax−IPmin=0
式(2):EAmax― EAmin=0
(比較例1:比較ポリマー1に関する計算)
該測定対象ユニットに関して、実施例1と同様にして、IP及びEAの計算値を算出した。
結果を表4に示す。
IPmax = 4.92
IPmin = 4.79
EAmax = 0.94
EAmin = 0.76
である。これより、式(1)及び(2)の右辺値は、各々下記の通りである。
式(2):EAmax― EAmin=0.18
(実施例1)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
17.5mm×35mm(厚さ0.7mm)サイズのガラス基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
マー1(重量平均分子量(Mw):7.5万、分散度:1.52)および溶剤としてシクロヘキシルベンゼンを含有する正孔輸送層形成用組成物を調製した。組成物中、目的ポリマー1は、1.4重量%の濃度とした。この組成物を、スピナ回転数1800rpm、スピナ回転時間30秒、大気中にてスピンコート法により、上記正孔注入層上に成膜し、230℃で1時間、大気中にて加熱することにより、該目的ポリマー1を乾燥させることにより、膜厚20nmの均一な薄膜(正孔輸送層)を形成した。
電子注入層として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.1Å/秒、0.5nmの膜厚でC1上に成膜した。蒸着時の真空度は2.6×10−4Paであった。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が
得られた。この素子の発光特性は、1cd/m2時の駆動電圧が2.82V、1000cd/m2時の発光効率が2.61lm/Wであった。
(比較例1)
正孔輸送層を形成するポリマー材料として、下記式に表す構造の比較ポリマー1(重量平均分子量(Mw):7.5万、分散度:1.52)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
Claims (12)
- 下記式(I)で表される繰り返し単位からなる重合体であって、
該重合体は、架橋性基を含み、且つ、式(I)で表される繰り返し単位を2種以上含み、更に、下記式(1)を満たすことを特徴とする、重合体。
Xは、−O−、−S−、及び−CR1R2−のいずれか一つを表し、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基又は該芳香族環を2〜4個連結した基を表す。
n1は、1〜5の整数を表す。)
IPmax−IPmin≦0.1eV (1)
(上記式(1)中、
IPmaxは、前記重合体中に2種以上含まれる下記式(I−1)で表される部分構造のうちの、最大のイオン化ポテンシャルを表し、
IPminは、前記重合体中に2種以上含まれる下記式(I−1)で表される部分構造のうちの、最小のイオン化ポテンシャルを表す。)
- 更に、下記式(2)を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の重合体。
EAmax−EAmin≦0.1eV (2)
(上記式(2)中、
EAmaxは、前記重合体中に2種以上含まれる前記式(I−1)又は(II−1)で表される部分構造のうちの、最大の電子親和力を表し、
EAminは、前記重合体中に2種以上含まれる前記式(I−1)又は(II−1)で表される部分構造のうちの、最小の電子親和力を表す。) - 重量平均分子量(Mw)が20,000以上であり、分散度(Mw/Mn;Mnは数平均分子量を表す。)が2.5以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体からなることを特徴とする、有機電界発光素子用材料。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の重合体及び溶剤を含有することを特徴とする、有機電界発光素子用組成物。
- 基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子において、
該有機層が、請求項7に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成された層を含むことを特徴とする、有機電界発光素子。 - 前記湿式成膜法で形成された層が、正孔注入層及び/又は正孔輸送層であることを特徴とする、請求項8に記載の有機電界発光素子。
- 前記の正孔注入層及び正孔輸送層並びに発光層を有し、
前記の正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成された請求項9に記載の有機電界発光素子。 - 請求項8〜10いずれか一項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする、有機EL表示装置。
- 請求項8〜10のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする、有機EL照明。
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