JP5948481B1 - スラッジ分散剤、それを含有する液体燃料及びスラッジの形成を防止又は形成されているスラッジを減少させる方法 - Google Patents
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従って、本発明の目的は、超重質油やビチューメン等に含まれるアスファルテン等のスラッジを形成し得る成分を溶解・分散させることのできるスラッジ分散剤を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記スラッジ分散剤を超重質油やビチューメン等に添加することにより、貯蔵安定性に優れ、発熱量が高く且つ廉価である液体燃料を提供することにある。
また、本発明は、スラッジ含有油と、上記スラッジ分散剤0.1質量%〜30質量%とを含有することを特徴とする液体燃料である。
まず、本発明のスラッジ分散剤について説明する。
本発明者は、超重質油やビチューメン中に含まれるアスファルテン、レジン、残留炭素分等のスラッジ成分が非常に多い点に着目し、これらを完全燃焼させることができれば省エネルギーに大きく貢献できると考えた。本発明者は、先に出願した特願2012−520328号(特許第5523565号)において、廃動植物油脂が、キセロゲル状非晶質樹脂をストレートアスファルトへ分散させるのに優れていることを見出した。発明者は、その知見に基づき、廃食用油及び非食用油の物性値とスラッジの溶解性・分散性との関係について種々検討した結果、3以上の酸価及び0.3容量%以下の水分量を有する、廃食用油、非食用油又はこれらの混合物が、アスファルテン等を溶解・分散させるのに優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のスラッジ分散剤は、廃食用油、非食用油又はこれらの混合物からなり、酸価が3以上であり且つ水分量が0.3容量%以下であることを特徴とするものである。スラッジ分散剤の酸価が3未満であると、アスファルテン等のスラッジを形成し得る成分を溶解・分散させることができない。スラッジ分散剤の水分量が0.3容量%超であると、アスファルテン等のスラッジを形成し得る成分を溶解・分散させることができなかったり、スラッジ分散剤が添加された液体燃料の燃焼が不安定化する恐れがある。スラッジ分散剤の酸価は好ましくは3.5〜4.5である。
なお、本発明における酸価は、測定対象の油1g中に含まれる遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数であって、JIS K0070(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)に準じて測定される値である。また、本発明における水分量は、JIS K2275(原油及び石油製品−水分の求め方)に準じて測定される値である。
また、酸価が3未満であり且つ水分量が3容量%〜6容量%の範囲にある非食用油としては、ジャトロファ(Jatropha)、カランジュ又はポンガミア(Karanj又はPongamia)、メスワック(Meswak)、マフア(Mahua)、ポランガ(Polanga)、グアユール(Guayule)等を用いることができる。
廃食用油、非食用油又はこれらの混合物の水分量が3容量%未満である場合には、水分量が3容量%〜6容量%の範囲となるように水を添加してもよい。また、廃食用油、非食用油又はこれらの混合物中に異物が含まれる場合には、ストレーナー等の濾過装置で異物を予め除去することが好ましい。
本発明の液体燃料は、スラッジ含有油と、上記したスラッジ分散剤0.1質量%〜30質量%とを含有することを特徴とするものである。液体燃料に対してスラッジ分散剤の含有量が0.1質量%未満であると、スラッジ含有油中に含まれるアスファルテン等のスラッジを形成し得る成分を溶解・分散させるという効果が得られない。一方、液体燃料に対するスラッジ分散剤の含有量を30質量%超としても、含有量に見合った効果が得られない。
なお、キセロゲル状非晶質樹脂とは、特許第5523565号に記載されるような公知の方法で得られるものである。具体的には、キセロゲル状非晶質樹脂は、非晶質樹脂を溶解することのできる適当な有機溶剤(例えば、シンナー、トルエン、ベンゼン、アセトン、エチルアセテート、シクロヘキサノン、2−ブタノン、白灯油又はこれらの混合物)に対して、非晶質樹脂を100質量%〜250質量%の範囲で除々に添加して溶解させ、飽和状態にしたものを、アルコール類(例えば、メチルアルコール、オクタノール又はこれらの混合物)に浸漬して飽和状態の非晶質樹脂中に残存する有機溶剤を除去した後、乾燥させて得られるものである。非晶質樹脂としては、燃焼性が良好で且つ発熱量が高いという観点から、ポリスチレン、ABS樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択されるものが好ましい。
廃鉱物油としては、ガソリンスタンド等から廃棄される廃潤滑油、廃エンジンオイル等を用いることができる。中でも、液体燃料の粘度を低下させる観点から、50℃で20mm2/s〜100mm2/sの動粘度を有する廃鉱物油を用いることが好ましい。なお、廃鉱物油の動粘度は、JIS K2283に準じて測定される値である。また、廃鉱物油中に異物が含まれる場合には、ストレーナー等の濾過装置で異物を予め除去することが好ましい。
仙台市内の飲食店から入手した廃食用油(酸価:2.52、水分量:3.56容量%)4000kgを反応釜に仕込み、150rpmの回転数で撹拌しながら、140℃で4時間加熱したところ、酸価が3.86であり且つ水分量が0.2容量%である廃食用油を得た。
仙台市内の飲食店から入手した廃食用油(酸価:2.52、水分量:3.56容量%)に水を添加して水分量を6.0容量%に調整したもの4000kgを反応釜に仕込み、150rpmの回転数で撹拌しながら、140℃で5時間加熱したところ、酸価が4.3であり且つ水分量が0.1容量%である廃食用油を得た。
仙台市内の飲食店から入手した廃食用油(酸価:2.52、水分量:3.56容量%)に水を添加して水分量を6.0容量%に調整したもの4000kgを反応釜に仕込み、150rpmの回転数で撹拌しながら、240℃で1時間加熱したところ、酸価が3.89であり且つ水分量が0.56容量%である廃食用油を得た。
仙台市内の飲食店から入手した廃食用油(酸価:2.52、水分量:3.56容量%)に水を添加して水分量を6.0容量%に調整したもの4000kgを反応釜に仕込み、150rpmの回転数で撹拌しながら、180℃で6時間加熱したところ、酸価が2.52であり且つ水分量が0.01容量%である廃食用油を得た。
仙台市内の飲食店から入手した廃食用油(酸価:2.52、水分量:3.56容量%)に水を添加して水分量を6.0容量%に調整したもの4000kgを反応釜に仕込み、150rpmの回転数で撹拌しながら、240℃で6時間加熱したところ、酸価が1.5であり且つ水分量が0.01容量%未満である廃食用油を得た。
スラッジ含有油としてのクレオソート油950質量部(95質量%)に、実施例1〜2及び比較例1〜2のいずれかで得られた廃食用油50質量部(5質量%)を添加した後、140℃で3分間撹拌(300rpmの回転数)して試料を得た。試料の50℃における動粘度、トルエン不溶分、アスファルテン分、キノリン不溶分及びコンラドソン残炭率を測定した。結果を表1及び2に示す。
トルエン不溶分は、JIS K2425(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)に準じて測定する。
アスファルテン分は、石油学会規格「アスファルトのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法」(JPI−5S−22−83)に準じて測定する。
キノリン不溶分は、JIS K2425(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)に準じて測定する。
コンラドソン残炭率は、JIS K2270(石油製品残留炭素分試験方法「コンラドソン法」)に準じて測定する。
スラッジ含有油としてのクレオソート油に、実施例1で得られた廃食用油の添加量を変えて(5質量%、10質量%又は30質量%)添加した後、140℃で3分間撹拌(150rpmの回転数)して液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279(原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法)に準じて測定した。
結果を表3に示す。なお、表3に示した発熱量は、3回の平均値である。
スラッジ含有油としてのクレオソート油90質量%と、実施例1で得られた廃食用油5質量%と、キセロゲル状ポリスチレン5質量%とを、140℃で6分間撹拌(150rpmの回転数)して液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、39,915kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例4で得られた液体燃料は、クレオソート油(発熱量:32,710kJ/kg)よりも発熱量が約22%も高まったことが分かる。
また、図1に、実施例4で得られた液体燃料の顕微鏡観察結果を示す。図1から分かるように、液体燃料中にスラッジは殆ど見られなかった。さらに、実施例4で得られた液体燃料を70℃にて72時間放置したが、相分離は起こらなかった。
スラッジ含有油としてのクレオソート油80質量%と、実施例1で得られた廃食用油10質量%と、キセロゲル状ポリスチレン10質量%とを、140℃で6分間撹拌(150rpmの回転数)して液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、40,053kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例5で得られた液体燃料は、クレオソート油(発熱量:32,710kJ/kg)よりも発熱量が約22.5%も高まったことが分かる。
また、図2に、実施例5で得られた液体燃料の顕微鏡観察結果を示す。図2から分かるように、液体燃料中にスラッジは殆ど見られなかった。さらに、実施例5で得られた液体燃料を70℃にて72時間放置したが、相分離は起こらなかった。
スラッジ含有油としてのクレオソート油70質量%と、実施例1で得られた廃食用油15質量%と、キセロゲル状ポリスチレン15質量%とを、140℃で6分間撹拌(150rpmの回転数)して液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、38,965kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例6で得られた液体燃料は、クレオソート油(発熱量:32,710kJ/kg)よりも発熱量が約19%も高まったことが分かる。さらに、実施例6で得られた液体燃料を70℃にて72時間放置したが、相分離は起こらなかった。
日本製ストレートアスファルト(出光興産株式会社製、針入度60〜80)及び外国製ストレートアスファルト(SK社(韓国)製、針入度60〜80)の品質を比較した。針入度は、JIS K2207に準じて25℃にて測定した。成分(アスファルテン分、飽和分、芳香族分及びレジン分)分析は、石油学会規格「アスファルトのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法」(JPI−5S−22−83)に準じて行った。また、発熱量は、JIS K2279(原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法)に準じて測定した。結果を表4に示す。
スラッジ含有油としての日本製ストレートアスファルト(発熱量:25,719kJ/kg)を140℃に加温し、実施例1で得られた廃食用油及び廃鉱物油(ガソリンスタンドから入手、50℃における動粘度:60mm2/s)を添加し、140℃で3分間撹拌(300rpmの回転数)して液体燃料を得た。液体燃料の組成は、90質量%の日本製ストレートアスファルト、5質量%の廃食用油及び5質量%の廃鉱物油である。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、41,794kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例7で得られた液体燃料は、日本製ストレートアスファルトよりも発熱量が約62.5%も高まったことが分かる。さらに、実施例7で得られた液体燃料を70℃にて72時間放置したが、相分離は起こらなかった。
液体燃料の組成を、85質量%の日本製ストレートアスファルト、5質量%の廃食用油及び10質量%の廃鉱物油に変更したこと以外は実施例7と同様にして液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、41,321kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例8で得られた液体燃料は、日本製ストレートアスファルトよりも発熱量が約60.7%も高まったことが分かる。さらに、実施例8で得られた液体燃料を70℃にて72時間放置したが、相分離は起こらなかった。
液体燃料の組成を、80質量%の日本製ストレートアスファルト、5質量%の廃食用油及び15質量%の廃鉱物油に変更したこと以外は実施例7と同様にして液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、38,966kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例9で得られた液体燃料は、日本製ストレートアスファルトよりも発熱量が約51.5%も高まったことが分かる。さらに、実施例9で得られた液体燃料を70℃にて72時間放置したが、相分離は起こらなかった。
液体燃料の組成を、50質量%の日本製ストレートアスファルト、5質量%の廃食用油及び45質量%の廃鉱物油に変更したこと以外は実施例7と同様にして液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、45,149kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例10で得られた液体燃料は、日本製ストレートアスファルトよりも発熱量が約75.5%も高まったことが分かる。さらに、実施例10で得られた液体燃料を70℃にて72時間放置したが、相分離は起こらなかった。また、実施例11で得られた液体燃料の品質を、JIS K2205(重油)に準じて評価したところ、反応:中性、引火点:85℃以上、50℃における動粘度:260mm2/s、流動点:−20℃以下、水分量:0.01容量%未満、灰分:0.01質量%未満及び硫黄分:0.80質量%であった。
液体燃料の組成を、30質量%の日本製ストレートアスファルト、5質量%の廃食用油及び65質量%の廃鉱物油に変更したこと以外は実施例7と同様にして液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、44,801kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例11で得られた液体燃料は、日本製ストレートアスファルトよりも発熱量が約74.2%も高まったことが分かる。さらに、実施例11で得られた液体燃料を70℃にて72時間放置したが、相分離は起こらなかった。また、実施例11で得られた液体燃料の品質を、JIS K2205(重油)に準じて評価したところ、反応:中性、引火点:85℃以上、50℃における動粘度:68mm2/s、流動点:−20℃以下、水分量:0.01容量%未満、灰分:0.01質量%未満及び硫黄分:0.37質量%であった。
スラッジ含有油としての日本製ストレートアスファルト(発熱量:25,719kJ/kg)を90℃に加温し、実施例1で得られた廃食用油を添加した後、撹拌混合した。その後、廃鉱物油(ガソリンスタンドから入手、50℃における動粘度:60mm2/s)をさらに添加し、90℃で3分間撹拌(300rpmの回転数)した。最後に、膠水溶液(膠の含有量:0.02質量%)を添加し、90℃で5分間撹拌(300rpmの回転数)して液体燃料を得た。液体燃料の組成は、58.5質量%の日本製ストレートアスファルト、1.5質量%の廃食用油、30質量%の廃鉱物油及び10質量%の膠水溶液である。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、37,012kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例12で得られた液体燃料は、日本製ストレートアスファルトよりも発熱量が約43.9%も高まったことが分かる。さらに、実施例12で得られた液体燃料を70℃にて24時間放置したが、相分離は起こらなかった。
液体燃料の組成を、48.5質量%の日本製ストレートアスファルト、1.5質量%の廃食用油、30質量%の廃鉱物油及び20質量%の膠水溶液に変更したこと以外は実施例12と同様にして液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、35,468kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例13で得られた液体燃料は、日本製ストレートアスファルトよりも発熱量が約37.9%も高まったことが分かる。さらに、実施例13で得られた液体燃料を70℃にて24時間放置したが、相分離は起こらなかった。
液体燃料の組成を、38.5質量%の日本製ストレートアスファルト、1.5質量%の廃食用油、30質量%の廃鉱物油及び30質量%の膠水溶液に変更したこと以外は実施例12と同様にして液体燃料を得た。得られた液体燃料の発熱量を、JIS K2279に準じて測定したところ、28,238kJ/kg(3回の平均値)であった。従って、実施例14で得られた液体燃料は、日本製ストレートアスファルトよりも発熱量が約9.79%も高まったことが分かる。さらに、実施例14で得られた液体燃料を70℃にて24時間放置したが、相分離は起こらなかった。
Claims (8)
- 廃食用油からなり、酸価が3以上であり且つ水分量が0.3容量%以下であることを特徴とするスラッジ分散剤。
- 酸価が3未満であり且つ水分量が3容量%〜6容量%の範囲にある廃食用油を、撹拌下、135℃〜145℃に加熱することにより酸価を3以上且つ水分量を0.3容量%以下にすることを含むことを特徴とするスラッジ分散剤の製造方法。
- スラッジ含有油と、請求項1に記載のスラッジ分散剤0.1質量%〜30質量%とを含有することを特徴とする液体燃料。
- キセロゲル状非晶質樹脂、カーボンブラック又はこれらの混合物を1質量%〜60質量%さらに含有することを特徴とする請求項3に記載の液体燃料。
- 廃鉱物油を1質量%〜80質量%さらに含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の液体燃料。
- 膠(にかわ)水溶液を1質量%〜25質量%さらに含有することを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の液体燃料。
- 前記スラッジ含有油が、クレオソート油、ビチューメン(アスファルト)、軟質ピッチ、C重油、原油、オイルサンド、オイルシェール、オリノコタール、重油の絞りかす及びアスファルトの絞りかすからなる群から選択されることを特徴とする請求項3〜6の何れか一項に記載の液体燃料。
- スラッジ含有油を貯蔵する貯蔵タンク又はスラッジ含有油を輸送する流路においてスラッジの形成を防止するか又は形成されているスラッジを減少させる方法であって、該スラッジ含有油に対して請求項1に記載のスラッジ分散剤を0.1質量%〜30質量%添加することを含むことを特徴とするスラッジの形成を防止又は形成されているスラッジを減少させる方法。
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