本発明は、先行技術において示される必要性に対処し、ひいては、解決策として、フィルタユニット内/上で、前記宿主細胞(好ましくは前記発現産物を発現する懸濁培養において成長させた、好ましくは真核宿主細胞)を収集することと、フィルタユニット内/上で前記宿主細胞を破壊することと、前記宿主細胞から前記発現産物を分離することと、によって、適切な宿主細胞によって発現される、細胞内または本質的に細胞関連の発現産物を回収するための手段および方法を提供する。
一般的に、フィルタユニットは、前記発現産物を発現する宿主細胞から細胞培養培地を分離するのに好適である。それにより、宿主細胞は、細胞培養培地から回収され(富化され)、細胞培養培地に含有される潜在的な不純物が除去される。細胞培養培地からの宿主細胞の分離は、好ましくは閉鎖プロセスにおいて行われ、このため、分離された宿主細胞は、閉鎖プロセスにおいてさらに処理することができ、これは、開放プロセスステップによる汚染を回避することができるため、極めて有利であることに留意されたい。
加えて、フィルタユニットはまた、前記フィルタユニット内/上での前記宿主細胞の破壊を可能にするのに一般的に好適である。
一部の好ましい実施形態において、フィルタユニットは、フィルタユニット内/上での宿主細胞の破壊後、前記発現産物が前記宿主細胞から解放された後に、前記宿主細胞から前記発現産物を分離するのに好適である。特に、フィルタユニットは、フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造が、前記フィルタユニットから溶出されている時、発現産物は通過することができるが、破壊された宿主細胞(細胞残屑、細胞フラグメント等を含む)はフィルタを通過することができないようになっている場合、破壊された細胞から発現産物を分離することが可能である。従って、その実施形態において、破壊および分離ステップは、同時に行われる、即ち、破壊ステップは、分離ステップを含む。当業者は、その実施形態において適用することができる好適なフィルタ媒体を容易に選択することができる。本実施形態は、発現産物が、小さいタンパク質またはヌクレオチド配列といった、小さいサイズを有する分子である場合、適用可能であることが企図される。
他の好ましい実施形態において、フィルタは、細胞培養培地から前記宿主細胞を分離するのに好適であることを別として、前記発現産物が、前記フィルタユニット内/上で前記宿主細胞を破壊することによって(好ましくは溶解によって)、前記宿主細胞から解放された後に、発現産物の溶出を可能にする。特に、フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造は、それが、発現産物のサイズおよび/または構造により、前記発現産物の通過を可能にするように選択されなければならないため、前記フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造は、破壊された宿主細胞(細胞残屑、細胞フラグメント等を含む)が、本質的に、前記フィルタユニット内/上に保持されないようになっている。したがって、発現産物とは別として、細胞残屑、細胞フラグメント、または同等のものもまた、少なくとも、発現産物が、好ましくは前記フィルタユニットから溶出される時、フィルタを通過することが不可避である。そうは言っても、一部の宿主細胞が、それでもなお、前記フィルタユニット内/上で保持されることもまた想定される。例えば、それらは、完全には破壊されない可能性があり、このため、それらのサイズは、フィルタユニットを通過するには依然として大きいか、または細胞残屑が、フィルタユニットを通過することができない凝集体を形成する。
フィルタユニットを通過し、このため、発現産物とともに溶出される、細胞残屑、細胞フラグメント、または同等のものは、例えば、本明細書において以下で説明されるようにさらなる精製ステップによって、発現産物から分離される。本実施形態は、発現産物が、ウイルス、好ましくは、鶏痘、ワクシニア、および改変ウイルスAnkara(MVA)から成る群より選択されるウイルスである場合、好ましくは適用可能であることが企図される。
言い換えれば、本発明は、発現産物を発現する宿主細胞を培養することと、フィルタユニット内/上で前記宿主細胞を収集することと、前記宿主細胞を破壊することによって、前記フィルタユニット内/上で前記発現産物を解放し、それによって、前記発現産物を取得することと、を含む、いわば一体化プロセスを提供し、前記プロセスは、好ましくは閉鎖無菌プロセスである。
したがって、本発明者が行った決定的な修正は、フィルタユニット内/上で収集される宿主細胞の発現産物が、前記フィルタユニット内/上で前記宿主細胞を破壊すること(好ましくは溶解すること)によって、前記フィルタユニット内/上で解放されるということである。結果として、発現産物を直接取得することができる。実際、宿主細胞、特に脊椎動物細胞、より好ましくは哺乳類または鳥類細胞は、それらが、フィルタユニット内/上で「積み重なる」および/または段々に配設される可能性があり、このため、遮蔽効果および/またはアクセス可能性の問題により、十分には細胞破壊が可能ではない場合があるが、先行技術方法によって達成することができるのと同じように、十分に破壊、好ましくは溶解することができるということが驚くべきことに観察された(実施例3を参照されたい)。このため、本発明者は、発現産物を回収するための速く、コスト効率が高く、かつ拡張可能な代替的な方法だけでなく、先行技術が想定しなかったものである、閉鎖プロセスとして/において実施することができる方法もまた見出した。
本発明の方法を実施することによって、最初に、バッチまたはフロースルー遠心分離といった開放ステップおよび/または非効率的なプロセスによって、宿主細胞を濃縮し、次いで、前記宿主細胞を溶解する必要性が存在する。むしろ、本発明の手段および方法は、最適な無菌処理を、宿主細胞の培養からそれらの下流処理まで保持し、それによって、好ましくは最小限の量の不純物を伴って、宿主細胞の発現産物の満足のいく収率を取得することができるため、有利であると見なされる1つのステップ手順を可能にする。
本発明を特徴付ける実施形態は、本明細書において説明され、図面において示され、実施例において例解され、請求項において反映される。
本明細書において使用される際、「a」、「an」、および「the」という単数形は、別途文脈が明らかに示さない限り、複数の言及を含むことに留意しなければならない。このため、例えば、「a reagent(試薬)」への言及は、かかる異なる試薬のうちの1つ以上を含み、「the method(方法)」への言及は、本明細書において説明される方法に関して修正および置換され得る、当業者に既知の同等のステップおよび方法への言及を含む。
別途示されない限り、一連の要素に先行する「at least(少なくとも)」という用語は、その一連におけるあらゆる要素を指すと理解されるものとする。当業者は、単なる日常的な実験を使用して、本明細書において説明される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または解明することができるであろう。かかる同等物は、本発明によって網羅されることが意図される。
「and/or(および/または)」という用語は、本明細書において使用される場合は常に、「および」、「または」、および「前記用語によってつなげられる要素の全てもしくは任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
本明細書において使用される際、「about(約)」または「approximately(およそ)」という用語は、与えられる値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、およびより好ましくは5%以内を意味する。
本明細書および続く請求項を通して、別途文脈が必要としない限り、「comprise(含む/備える)」という言葉、ならびに「comprises」および「comprising」といった変形が、記述される整数もしくはステップ、または整数もしくはステップ群の包含を示唆するが、任意の他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップ群の除外を示唆しないことを理解されよう。本明細書において使用される時、「comprising(含む/備える)」という用語は、「containing(含有する)」もしくは「including(含む)」という用語で置換することができるか、または、本明細書において使用される時、「having(有する)」という用語で置換することができることもある。
本明細書において使用される時、「consisting of(〜から成る)」は、請求項要素において指定されていない、いかなる要素、ステップ、または成分も除外する。本明細書において使用される時、「consisting essentially of(本質的に〜から成る)」は、請求項の基本的および新規特性に物質的に影響しない材料またはステップを除外しない。
本明細書における各例において、「comprising(含む/備える)」、「consisting essentially of(本質的に〜から成る)」、および「consisting of(〜から成る)」という用語のうちのいずれも、他の2つの用語のいずれかで置き換えられてもよい。
本発明は、本明細書において説明される特定の方法論、プロトコル、および試薬等に限定されず、そのようなものとして変更することができることを理解されたい。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のために過ぎず、請求項によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。
本明細書の本文を通して引用される全ての出版物および特許(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造元の仕様、取扱説明書等を含む)は、上記または下記にかかわらず、それらの全体として参照により、本明細書に組み込まれる。本明細書において、本発明が、先行発明によって、かかる開示に先行する権利がないという承認として解釈されるべきものはない。参照により組み込まれる資料が矛盾するか、または本明細書と相反する限りにおいて、本明細書が、いかなるかかる資料にも優先する。
本発明者は、細胞成長、ひいては産生の費用および効率の両方を最適化するために、宿主細胞による所望の発現産物の産生のためのプロセスを、接着またはさらには懸濁細胞培養(例えば、ローラフラスコにおける)から懸濁培養(例えば、細胞バッグにおける)に移すことを目的として、無菌処理のGMP原理を保持し、低レベルの不純物を達成することによって、宿主細胞を採取し、その後、破壊する問題を解決しなければならない。
上で説明されるように、宿主細胞が接着培養で(例えば、ローラフラスコにおいて)培養される時に適用されるプロセスの使用によって、宿主細胞を採取および破壊し、それによって、無菌処理のGMP原理を保持し、発現産物の満足のいく収率および純度を達成することはほぼ不可能である。したがって、本発明者は、培養(接着および懸濁培養を含み、懸濁培養が好ましい)において成長させた宿主細胞を採取および破壊する時に、無菌処理のGMP原理を保持し、発現産物の良好な収率を取得することをさらに目的として、それらの予想にもかかわらず、懸濁培養(例えば、細胞バッグ)から宿主細胞を収集するためにも使用されるフィルタユニット上/内で収集される宿主細胞を効率的に破壊すること、即ち、多くのステップを必要としない一体化プロセスが可能であり、このため、汚染および/または不純物の影響をほとんど受けにくいということを見出した。本明細書において使用される際、「不純物」または「汚染物質」は、発現産物の発現、例えば、ウイルス成長(例えば、宿主細胞DNAもしくはタンパク質)のために使用される宿主細胞、または上流および下流を含む製造プロセスの間に使用される任意の添加剤(例えば、細胞培養培地または補給物)に起源し得る、いかなる望ましくない物質も網羅する。
この発見は、宿主細胞、特に真核細胞、好ましくは哺乳類または鳥類細胞の細胞内もしくは細胞関連の発現産物を解放し、ひいては採取するために、前記宿主細胞を採取し、それらの破壊する時、好ましくは無菌処理のGMP原理を保持しつつ、それらを、好ましくは懸濁液において培養するための道を開く。
そこで、本発明の手段および方法は、概して、所望の発現産物、好ましくは細胞内もしくは細胞関連の発現産物を、好ましくは懸濁培養で成長させた宿主細胞から、フィルタユニット上/内で前記宿主細胞を収集し、前記フィルタユニット内/上で前記宿主細胞を破壊することによって、回収するために適用可能であり、それによって、前記フィルタユニットは、好ましくは(i)前記宿主細胞を保持するのに好適であり、(ii)前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、前記発現産物を分離するのに好適であり、それによって、前記発現産物を回収し、前記宿主細胞から前記発現産物を分離する。
言い換えれば、真核宿主細胞が好ましく、脊椎動物および昆虫細胞がより好ましく、哺乳類または鳥類宿主が特に好ましいが、異なる細胞タイプ(細菌、真菌、または真核細胞)が使用され得るため、ある宿主細胞に対しての制限が無い。さらに、細胞内および/または細胞関連の発現産物が好ましいが、発現産物に対しての制限もない。特に好ましいのはウイルスであり、より好ましくはポックスウイルスであり、特に好ましいのはMVAである。
したがって、第1の態様において、本発明は、宿主細胞から本質的に細胞関連の発現産物を回収するための方法を提供し、
(a)前記発現産物の発現を可能にする条件下で、前記宿主(複数を含む)細胞を培養することと、
(b)フィルタユニット内/上で前記宿主細胞(複数を含む)を収集することと、
(c)フィルタユニット内/上で前記宿主細胞(複数を含む)を破壊することと、
(d)前記破壊された宿主細胞(複数を含む)から、前記発現産物を分離することと、を含む。
好ましくは、上の方法において回収される前記発現産物は、ウイルスであり、好ましくはポックスウイルスであり、より好ましくは、鶏痘ウイルス、ワクシニアウイルス、および改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)から成る群より選択されるウイルスである。
このように回収された(取得された)発現産物は、好ましくは、前記発現産物を薬学的に許容可能な担体と混合することを含む、薬学的組成物の調製のための方法に供することができる。
あまり好ましくはないが、前記発現産物は、細胞残屑、タンパク質、またはDNAといった、宿主細胞の残余物を含有する可能性がある。かかる残余物は、5、4、3、2、または1%(v/v)といった微量で、前記発現産物を含む調製物において存在する可能性がある。また、前記調製物は、本明細書において説明されるように、ウイルスの構成要素をさらに含む可能性がある。好ましい構成要素は、引き離されたエンベロープ、ウイルスエンベロープの開裂産物、またはウイルスの異常形態の前記エンベロープである。
フィルタユニットは、好ましくは、前記フィルタユニットが前記宿主細胞を保持するのに好適であり、それによって、細胞培養培地から前記宿主細胞を分離する(「濾液1」または「溶出液1」を生じる)ことを特徴とする。フィルタユニットは、好ましくは、前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、前記宿主細胞から前記発現産物を分離するのに好適であり、それによって、破壊された宿主細胞を保持し、前記フィルタユニットを通過することが可能である、前記本質的に細胞関連の発現産物を回収し、それによって、前記発現産物がフロースルーにおいて回収される(即ち、次いで、それは、「濾液2」または「溶出液2」に存在する)。
このため、前記フィルタユニットは、好ましくは、破壊された宿主細胞を保持するが、前記発現産物の通過を可能にするのに十分に小さい孔サイズおよび/または構造を有する。
代替的に、フィルタユニットは、好ましくは、前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、前記発現産物の通過および/または前記宿主細胞からのその溶出を可能にするのに好適であり、それによって、前記フィルタユニットを通過することが可能である、前記本質的に細胞関連の発現産物を回収する(即ち、次いで、それは、「濾液2」または「溶出液2」に存在する)。
発現産物が、宿主細胞の破壊後、フィルタユニットを通過することを達成するために、溶液(好ましくは、本明細書において説明されるような溶解緩衝剤)が適用される、即ち、発現産物が、前記フィルタユニットから溶出されることが好ましい。当然のことながら、宿主細胞の破壊が、溶解によって達成される場合、前記溶解のために適用される溶液は、破壊された宿主細胞から発現産物をすでに溶出してもよい。したがって、破壊ステップは、いわば、溶出ステップと連結される。それでもなお、追加の溶出が適用されてもよい。
回収された発現産物は、次いで、前記フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造により、同様に前記フィルタユニットを通過する破壊された宿主細胞(細胞残屑、細胞フラグメント、細胞小器官、宿主細胞タンパク質など)から、さらに分離することができる。前記フィルタユニットは、このため、好ましくは、前記発現産物を通過させるが、破壊された宿主細胞を選択的に保持する孔サイズおよび/または構造である。しかしながら、前記フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造が発現産物のサイズによって決定されることを考慮すると、細胞残屑や細胞フラグメントなども前記フィルタユニットを通過することは避けられない。それでもなお、上述のように、発現産物の前記破壊された宿主細胞からの分離は、本明細書において下記で説明されるように、さらなる精製ステップによって容易に達成することができる。
上記を踏まえ、フィルタユニットが、前記宿主細胞を保持し、それにより前記宿主細胞を細胞培養培地から分離するのに好適であることは、本発明の方法の好ましい実施形態である。
フィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での前記宿主細胞の破壊を可能にするのに好適であることも本発明の方法の好ましい実施形態である。
また、フィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後に、前記宿主細胞から発現産物を通過および/または溶出させるのに好適であることも本発明の方法の好ましい実施形態である。
また、フィルタユニットが、さらに、破壊された宿主細胞の通過を可能にするのに好適であることも好ましい。
また、フィルタユニットが、発現産物を前記宿主細胞から分離し、それによって前記破壊された宿主細胞を保持し、前記発現産物を通過および/または溶出させるのに好適であることも本発明の方法の好ましい実施形態である。
また、フィルタユニットが、発現産物を前記宿主細胞から分離し、それによって前記発現産物を保持し、破壊された宿主細胞を通過および/または溶出させるのに好適であることも本発明の方法の好ましい実施形態である。
フィルタユニットが、発現産物を前記宿主細胞から分離し、それによって前記破壊された宿主細胞および前記発現産物を保持し、発現産物を通過および/または溶出させるのに好適であることは、本発明の方法の代替的な好ましい実施形態である。
フィルタユニットが、発現産物を前記宿主細胞から分離し、それによって、前記破壊された宿主細胞および前記発現産物を保持し、発現産物および/または破壊された宿主細胞を通過および/または溶出させるのに好適であることは、本発明の方法の別の代替的な好ましい実施形態である。
宿主細胞が本明細書において説明されるように破壊されると、それらは必然的に「破壊された宿主細胞」である。「破壊された宿主細胞」は、もはや無傷ではなく、即ち、少なくともそれらの細胞膜(または細胞壁のそれぞれ)が破裂して宿主細胞が漏出している。したがって、本明細書において使用される時、「破壊された宿主細胞」は、細胞残屑、細胞フラグメント、細胞小器官、宿主細胞タンパク質、DNA、RNAなどを包含する。
細胞関連の発現産物は、好ましくは、本明細書においてさらに説明および記載されるように、宿主細胞内にあるかまたは宿主細胞に付着する。上述のように、本発明において適用されるように、無菌閉鎖プロセスステップにおいて、GMPの下で、宿主細胞から発現産物が回収できることは望ましい。したがって、本発明の方法が、GMP/最適な無菌処理の原理の下で発現産物を宿主細胞から回収するために使用されることは、好ましい実施形態である。
「無菌処理」または「無菌方法/プロセス」は、滅菌条件下で実施される手順を意味し、即ち、本発明の方法は、対象、特に哺乳動物、例えばヒトに対する、細菌もしくはウイルスまたは他の有害物質による汚染などのような汚染および/または二次汚染から、適切な手段および/または方法によって保護される。例えば、本発明の方法は、ラミナーフローフードあるいは汚染および/または二次汚染から方法を保護するための任意の他の好適な手段の下で実施してもよい。滅菌条件下で本発明の方法を実施することには、本発明の方法において適用される植菌、培養、収集、採取、および/または宿主細胞の破壊が含まれる。より好ましくは、本発明の方法は、FDA Guidance for Industry−Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing-Current Good Manufacturing Practice(2004年9月)および/またはEU−GMP−GuideのAnnex 1に従って実施される。本発明の方法(本明細書において使用されるとき、用語「方法」は、用語「プロセス」に置き換えてもよく、このためこれら両用語は同様に使用することができる)は、このため、好ましくは無菌製造方法またはプロセスのためのものであり、具体的には薬剤、特にワクチンのためのものである。
このため、好ましくは、本発明の方法の全てのステップは、無菌で実施されることが想定される。より好ましくは、本明細書において使用される時、用語「無菌」は、本明細書において説明されるように発現産物を回収するための本発明の方法が、閉鎖プロセスとして実施されることを意味する。「閉鎖プロセス」または「閉鎖」は、本発明の方法/プロセスが、外部要因が方法のステップに本質的に影響を与えないか、または最低限の影響を与える形で、即ち、外部要因が本発明の方法(培養、収集、宿主細胞の破壊、発現産物の分離および/または回収を含む)を汚染しない、あるいは方法を無菌状態にする形で実施可能であることを意味する。「外部要因」とは、全ての汚染原因および/または本発明の方法に対して潜在的な汚染の影響を有する原因、例えば汚染された空気、汚染された容器、弁、可撓管など、即ち、本発明の方法を実施するために使用される技術的機器である。また、「外部要因」は、本発明の方法を同様に汚染し得る(技術)スタッフなどの組織的措置も含む。したがって、「閉鎖プロセス」は、好ましくは、本発明の方法が、宿主細胞の培養から発現産物の分離(および、回収、任意でさらなる精製)まで(即ち、方法の全ステップにわたり)、全ステップが閉鎖条件下で実施されるため、外部要因が方法に影響を与えることができないように実施される、即ち、方法が、好ましくはEG−GMP−Guide 5.19に記載されているように(二次汚染は、例えば、f)「閉鎖システム」の使用、のような適切な技術的または組織的措置により回避されること)、(適切な)技術的および/または組織的手段および/または措置によって、汚染および/または二次汚染から保護される形で実施される。したがって、本発明の方法は、特に好ましい実施形態において、閉鎖システムの形態で実施可能である。したがって、閉鎖システムの形態で本発明の方法を実施するために必要とされる技術的機器は、このため好ましくは事前滅菌され、また、実行する場合には、手段および/または措置を講じて、閉鎖システムが汚染および/または二次汚染されるのを防止する。
さらに、発現産物が満足な量で回収されることは極めて望ましい。したがって、本発明の方法は、好ましくは測定可能である。特に、本発明の方法は、好ましくは、発現産物がウイルス、好ましくはポックスウイルス、例えばMVAである場合に測定可能である(好ましくは、同時に無菌処理のGMP原理を保持する)。測定可能には、実験室規模、パイロット規模、および工業規模が含まれる。
本明細書において使用される際、「実験室規模」は、バッチ(産生工程)当り、5,000量未満の1.0×108ウイルス粒子(pfu)(合計5.0×1011未満のウイルス粒子)を提供するウイルス調製方法を含む。
本明細書において使用される際、「パイロット規模」は、バッチ(産生工程)当り、5,000量を上回る1.0×108ウイルス粒子(pfu)(合計5.0×1011を上回るウイルス粒子(pfu))であるが、50,000量未満の1.0×108ウイルス粒子(pfu)(合計最低5.0×1012ウイルス粒子(pfu))を提供するウイルス調製方法を含む。
本明細書において使用される際、ワクシニアウイルスまたは組み換えワクシニアウイルスベースのワクチンの製造の場合の「工業規模」または大規模は、バッチ(産生工程)当り、最低50,000量の1.0×108ウイルス粒子(pfu)(合計最低5.0×1012ウイルス粒子(pfu))を提供可能な方法を含む。好ましくは、バッチ(産生工程)当り、100,000量を上回る1.0×108ウイルス粒子(pfu)(合計最低1.0×1013ウイルス粒子(pfu))が提供される。
用語「回収する」は、その全ての文法形態で、発現産物が、前記発現産物を発現する宿主細胞から取得、採取、獲得、入手、または収得されることを含む。前記用語は、あまり好ましくはないが、発現産物が単離されること、および/またはさらに処理されることも包含してよく、例えば、発現産物は、例えば当技術分野において公知である、および/または本明細書の他の部分に記載されている手段および方法によって精製してもよい。さらに、前記用語は、宿主細胞が破壊されて、好ましくはポックスウイルスのさらなる精製が実行可能になる程度まで発現産物を解放することも含む。
用語「発現する」は、発現産物を発現する宿主細胞に関連して使用される場合、宿主細胞が発現産物を産生することを含む。宿主細胞が発現産物を産生するためには、宿主細胞内で転写および/または翻訳が生じなければならない。したがって、用語「発現」は転写および/または翻訳も含む。宿主細胞における所望の発現産物の発現レベルは、その細胞中に存在する対応するmRNAの量、または選択された配列によってコードされる所望の産物の量のいずれかに基づいて決定することができる。例えば、選択された配列から転写されるmRNAは、PCRまたはノーザンハイブリダイゼーションによって定量化することができる。選択された配列によってコードされるタンパク質は、種々の方法、例えば、ELISA法によって、タンパク質の生物活性をアッセイすることによって、あるいはそのタンパク質を認識して結合する抗体を用いたウエスタンブロット法またはラジオイムノアッセイなど、かかる活性とは無関係のアッセイを使用して、定量化することができる。
「発現産物」は、宿主細胞によって生成される産物である。本発明の好ましい実施形態において、発現産物はタンパク性産物である。「タンパク性」とは、本明細書において使用される時、炭素、水素、酸素、窒素、および通常は硫黄を含み、1つ以上のアミノ酸鎖から成る有機巨大分子複合体の群のうち任意のものを指す。好ましいタンパク性発現産物は、(関心)ポリペプチドである。したがって、用語「タンパク性」は、タンパク質に関連する、タンパク質から成る、タンパク質に類似する、またはタンパク質に付随することも意味する。
本発明のより好ましい実施形態において、発現産物は、発現され、ひいては産生される当該ポリペプチドであってもよい。
発現産物が生物学的に活性であることは好ましい。
発現産物は、ヌクレオチド配列、好ましくは宿主細胞の遺伝子操作に関して当技術分野において一般に知られている手段および方法によって宿主細胞に外因的に付加されたヌクレオチド配列の転写および/または翻訳の産物であってもよい。発現産物は、このため、例えば、ssDNAもしくはdsDNA配列またはRNA配列(リボザイム、アンチセンスRNA、siRNA、iRNA、miRNAなど)を含む、ヌクレオチド配列(それ自体)であってもよく、これら全ては宿主細胞内で発現が可能であり、あるいは発現産物は、宿主細胞における転写されたRNAの翻訳によって生成されたポリペプチドであってもよい。
「ポリペプチド」は、タンパク質、ポリペプチド、およびそれらのフラグメントを含み、前記フラグメントは、好ましくは生物学的に活性である。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さの、一般には約10個を上回る、約20個を上回る、または約30個を上回るアミノ酸を有するアミノ酸のポリマーを指して互換的に使用される。また、これらの用語は、グリコシル化、アセチル化、およびリン酸化を含む反応により翻訳後に修飾されたタンパク質も含む。用語「ペプチド」は、より短いアミノ酸、一般に約30個未満のアミノ酸を指す。
ポリペプチドは、作動薬もしくは拮抗薬の機能を果たす、および/または治療用途もしくは診断用途を有する。
さらに、本発明の宿主細胞中で発現されるポリペプチドは、哺乳類由来であってもよいが、微生物産物および酵母産物も生成することができる。
哺乳類ポリペプチドまたはタンパク質の例には、ホルモン、サイトカインおよびリンフォカイン、抗体、受容体、接着分子、および酵素、ならびにそれらのフラグメントがある。所望の産物の限定的なリストには、例えば、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン成長、黄体形成ホルモン;ホルモン放出因子;リポタンパク質;α−1−抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;カルシトニン;グルカゴン;レニンなどの分子;因子VIIIC、因子IX、組織因子、およびヴォン・ヴィレブランド因子などの凝固因子;Cタンパク質、心房性ナトリウム利尿因子、肺表面活性剤などの抗凝固因子;ウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−αおよび−β;エンケファリナーゼ;ランテス(正常T−細胞発現および分泌され、活性を調節);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;レラキシンA鎖またはB鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;デオキシリボヌクレアーゼ;インヒビン;アクチビン;ホルモンまたは成長因子の受容体;インテグリン;AまたはDタンパク質;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5、もしくはNT−6)などの神経栄養因子、血管内皮成長因子(VEGF)、NGF−などの神経成長因子を含む成長因子;血小板由来成長因子(PDGF);aFGF、bFGF、FGF−4、FGF−5、FGF−6などの線維芽成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF−p1、TGF−p2、TGF−p3、TGF−p4、またはTGF−p5を含む、TGF−αおよび−βなどの形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−11);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CD−3、CD−4、CD−8、およびCD−19などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン−α、−β、および−γなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF、およびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1〜IL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;エリスロポエチン;T−細胞受容体;表面膜タンパク質、例えば、HER2;分解促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部分;輸送タンパク;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;抗体;イムノアドヘシンなどのキメラタンパク質ならびに上記に挙げたポリペプチドのうち任意のもののフラグメントが含まれる。
細菌ポリペプチドまたはタンパク質の例には、例えば、アルカリホスファターゼおよびβ−ラクタマーゼがある。
本明細書における好ましいポリペプチドおよびタンパク質は、治療用タンパク質、例えばTGF−β、TGF−α、PDGF、EGF、FGF、IGF−I、デオキシリボヌクレアーゼ、プラスミノーゲン活性化因子、例えばt−PA、凝固因子、例えば組織因子および因子VIII、ホルモン、例えばレラキシンおよびインスリン、サイトカイン、例えばIFN−y、キメラタンパク質、例えばTNF受容体IgGイムノアドヘシン(TNFr−IgG)、または抗体、例えば抗IgEである。好ましい治療用タンパク質は、ヒト由来のもの、または「ヒト化」タンパク質、例えばヒト化抗体である。
発現産物がポリペプチドである場合、前記ポリペプチドが標識されている、即ち、好ましくはポリペプチドである前記発現産物の単離および/または精製を可能にする、異種ポリペプチドと融合されていることが好ましい。異種ポリペプチドは、例えば、ヒスチジン標識、ストレプトアビジン標識、インテイン、マルトース結合タンパク質、IgAもしくはIgG Fcタンパク質、Aタンパク質、またはGタンパク質であってよい。
発現産物がヌクレオチド配列である場合、ヌクレオチド配列である前記発現産物の単離および/または精製を可能にする、異種ヌクレオチド配列と融合されることが好ましい。例えば、異種ヌクレオチド配列は、相補的ヌクレオチド配列に結合され、それによってヌクレオチド配列である前記発現産物の単離および/または精製を可能にすることができる。「異種」とは、異種ポリペプチドまたはヌクレオチド配列に関して使用される時、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列が、所望の発現産物のポリペプチドまたはヌクレオチド配列と異なることを意味する。しかしながら、それは異なってはいるが、それでもなお同じ生物に由来してもよく、または異なる生物に由来してもよい。発現産物は、好ましくは、濾液2(溶出液2)から単離および/または精製される。
一方、宿主細胞はウイルスを発現してもよく、即ち、宿主細胞は、いわばウイルスが複製および/または増殖される適当な環境を提供する産生細胞株として機能する。したがって、発現産物がウイルスであることは、本発明の好ましい実施形態である。
事実上、本発明の方法によって、dsDNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス)、ssDNAウイルス(例えば、パルボウイルス)、dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス)(+)ssRNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス、トガウイルス)、(−)ssRNA(例えば、オルトミクソウイルス、ラブドウイルス)、ssRNA−RTウイルス(例えば、レトロウイルス)、およびdsDNA−Rウイルス(例えば、肝炎ウイルス)などのいかなるウイルスを回収してもよい。
ウイルス複製とは、標的宿主細胞での感染および増殖プロセスにおけるウイルスの形成を説明するために使用される用語である。ウイルスの観点から、ウイルス複製の目的は、その種類の産生および存続を可能にすることである。大量の複製を生成し、これらの複製をウイルスにパッケージングすることによって、ウイルスは新しい宿主に感染し続けることができる。本発明に関して、適当な宿主細胞から産生されたウイルスが、例えば溶解または出芽によって、宿主細胞から出ることができない、または本質的にできないことが好ましい。
発現産物、特にウイルスが生物学的に活性であることは好ましい。発現産物がウイルス、特にワクシニアウイルスである場合、「生物活性」は、1)少なくとも1つの細胞タイプ、例えば、CEFにおいて感染性、2)ヒトにおいて免疫原性、または3)感染性かつ免疫原性のいずれかのワクシニアウイルスビリオンとして定義される。「生物学的に活性な」ワクシニアウイルスは、少なくとも1つの細胞タイプ、例えばCEFにおいて感染性である、またはヒトにおいて免疫原性である、またはその両方であるものである。好ましい実施形態において、ワクシニアウイルスは、CEFにおいて感染性であり、ヒトにおいて免疫原性である。
前述のように、発現産物は、好ましくはウイルスであってもよい。「ウイルス」は、「天然」ウイルスおよび「組み換え」ウイルスを含み、「天然」は、自然から単離され、遺伝子操作されていないウイルス(臨床分離株など)、あるいは自然界に見られる(即ち、自然発生の)、または例えば免疫付与目的で使用される、典型的な確立されたウイルス株(弱毒化ウイルスなど)を意味する。
用語「組み換えウイルス」は、ウイルスゲノムに自然にはそのウイルスゲノムの一部ではない異種遺伝子が挿入された、あらゆるウイルスを包含する。異種遺伝子は、治療用遺伝子、免疫応答を誘発する少なくとも1つのエピトープを含む抗原もしくはペプチドをコードする遺伝子、アンチセンス発現カセット、またはリボザイム遺伝子であってもよい。組み換えウイルスを取得するための方法は、当業者に公知である。異種遺伝子は、好ましくは、ウイルスゲノムの非必須領域に挿入される。本発明の他の好ましい実施形態において、異種核酸配列は、MVAゲノムの自然欠失部位に挿入され(PCT/EP96/02926において開示される)、より好ましくは、ウイルスゲノムの遺伝子間領域に挿入される(PCT/EP03/05045)。代替的に、異種核酸配列は、特に2つ以上の核酸配列が挿入される場合には、ポックスウイルス内、好ましくはMVAゲノム内の異なる遺伝子座に挿入してもよい(欧州特許第1 506 301号において開示される)。上述のように、用語「ウイルス」は、天然ウイルスまたは組み換えウイルスの他に、弱毒化ウイルスも包含する。また、用語「ウイルス」は、ウイルスの「構成要素」も含む。かかる構成要素は、例えば、生存(即ち、増殖可能な)または不活性化新鮮分離ウイルス、新鮮分離ウイルスから誘導された生存または不活性化再結合ウイルス、生存または不活性化弱毒化ウイルス、弱毒化ウイルスから誘導された生存または不活性化再結合ウイルス、分離エンベロープ、ならびに本明細書に記載するウイルスの前記エンベロープの開裂産物および異常型、生化学的方法または免疫化学的方法によって、本明細書に記載するウイルスに感染させた培養物から取得される個々のウイルスポリペプチド、さらに原核発現または真核発現によって取得され、少なくともその一部が、本明細書に記載のウイルスのウイルスポリペプチドのうちの1つ以上から誘導される組み換えウイルスポリペプチドを包含する。かかる構成要素は、対象に投与されると、好ましくは免疫応答を誘発し、即ち、これらは免疫原性である。免疫応答には、体液性および/または細胞性免疫応答が含まれる。
「弱毒化ウイルス」は、宿主生物の感染時に、非弱毒化親ウイルスと比較して、死亡率および/または罹患率をより低くする、またはゼロにするウイルスである。弱毒化ワクシニアウイルスの一例は、MVA株、特にMVA−575およびMVA−BNである。
好ましい実施形態において、ウイルスは、ポックスウイルス科のウイルス、好ましくはポックスウイルス、より好ましくは鶏痘ウイルスまたはワクシニアウイルス、最も好ましくはMVAである。本明細書において説明するように、ポックスウイルス科のウイルスのサイズにより、破壊された宿主細胞がウイルスのサイズと等しいサイズを有し得ることから、本発明の方法において適用されるフィルタユニットは、破壊された宿主細胞(本明細書において特徴付けるようなもの)の通過を排除することができないサイズおよび/または構造を有し、このため、破壊された宿主細胞は前記フィルタユニットを通過することができる。しかしながら、本明細書において下記で説明されるさらなる精製方法/ステップのうちの1つ以上を適用することで、前記ウイルスの破壊された宿主細胞からの分離が可能になる。
本発明に関して、用語「ポックスウイルス」は、ポックスウイルス科に属するあらゆるウイルスを指す。ポックスウイルス科は、コードポックスウイルス亜科(脊椎動物ポックスウイルス)とエントモポックスウイルス亜科(昆虫ポックスウイルス)とに分割することができる。
コードポックスウイルス亜科は、ラクダ痘ウイルス、羊痘ウイルス、山羊痘ウイルス、またはアビポックスウイルス、特に鶏痘ウイルスなど、著しい経済的重要性を有するいくつかの動物ポックスウイルス(異なる属に分類される)を含む。
ウイルスは、好ましくは、コードポックスウイルス亜科のポックスウイルス科、より好ましくはオルトポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、およびスイポックスウイルス属のものである。より好ましくは、ウイルスは、ワクシニアウイルス、山羊痘ウイルス、羊痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、および鶏痘ウイルスから成る群より選択される。
前述のように、より好ましいものはワクシニアウイルスである。本発明による方法において使用されるワクシニアウイルス株の例は、Elstree株、Wyeth株、Copenhagen株、Temple of Heaven株、NYCBH株、Western Reserve株である。本発明は、具体的に挙げたワクシニアウイルス株のものに制限されず、代わりに任意のワクシニアウイルス株を用いて使用することができる。ワクシニアウイルス株の好ましい例は、改変ワクシニアウイルス株Ankara(MVA)である。典型的なMVA株は、European Collection of Animal Cell Culturesに寄託番号ECACC V00120707として寄託されているMVA575である。最も好ましいものは、MVA−BNまたは誘導体/変異体、特に、寄託されているMVA−BN株と同じ特性、具体的には同じ安全性を有するMVA−BN誘導体/変異体である。MVA−BNは、国際公開第02/42480号(PCT/EP01/13628)に記載されている。前記国際出願は、MVA株がMVA−BNであるか、誘導体/変異体であるかを評価することができる生物学的アッセイを開示する。この出願の内容は、参照により本明細書に含まれる。MVA−BNは、European Collection of Animal Cell Culturesに寄託番号ECACC V00083008で寄託されている。
MVA−BNに関して本明細書において使用される時、「誘導体」は、好ましくは、MVA−BNと同じ特性、即ち、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)において増殖的に複製する能力を有するが、ヒトケラチノサイト細胞株HaCat、ヒト骨肉腫細胞株143B、およびヒト頸部腺癌細胞株HeLaにおいて増殖的に複製する能力を有さない。MVAのこれらの特性に関する試験およびアッセイは、国際公開第02/42480号および国際公開第03/048184号(参照により組み込まれる)に説明されている。
好ましくは宿主細胞によって発現(産生)されるウイルスから成る、特に好ましいポリペプチドは、炭疽菌防御抗原(PA)、Her2−neu、PSA、PAP(また、それらの組み合わせ)、Nefを含むHIV抗原、麻疹ウイルス抗原である。これらのポリペプチドは、好ましくは、組み換えポックスウイルスによって、好ましくはMVAによって発現される。したがって、この特に好ましい実施形態において、ワクチンとして使用されるポックスウイルスが産生される:PROSTVAC(商標)、MVA−BN(登録商標) PRO、MVA−BN(登録商標) HER2、MVA−BN(登録商標) HIV multiantigen、MVA−BN(登録商標) Measles。
本発明の方法によって回収される発現産物は、本質的に細胞関連の発現産物である。「細胞関連」とは、本明細書において使用される時、発現産物が、好ましくは宿主細胞内にある、または宿主細胞に付着していることを意味し、これは細胞内に存在する/発現される/産生される発現産物を含み、すなわち細胞質中に可溶性の形態で、または封入体の形態で存在する。したがって、本発明の方法は、発現産物を発現する宿主細胞を収集することにより、細胞内に存在するポリペプチドなどの発現産物の解放を可能にする。
用語「細胞関連」は、本明細書において使用される時、ウイルスなどの発現産物が、宿主細胞の細胞質中の細胞膜に付着していることも意味する。例えば、ワクシニアウイルスなどのポックスウイルスは、異なる型(ワクシニアウイルス型)で存在することが知られている。本明細書において使用される際、「ワクシニアウイルス型」とは、感染標的細胞によって産生される3つの異なるタイプのビリオン、成熟ビリオン(MV)、包膜ビリオン(WV)、および細胞外ビリオン(EV)(Moss,B.2006,Virology,344:48−54)を指す。EV型は、細胞関連エンベロープウイルス(CEV)および細胞外エンベロープウイルス(EEV)として以前は知られていた2つの型を含む(Smith,G.L.2002,J.Gen.Virol.83:2915−2931)。MV型およびEV型は、EV型が追加のリポタンパク質エンベロープを含むため、形態的に異なる。さらに、これら2つの型は、異なる表面タンパク質を含み(国際公開第2008/138533号の表1を参照)、これらはグリコサミノグリカン(GAG)などの標的細胞上の表面分子との相互作用により、標的細胞の感染に関与する(Carter,G.C. et al.2005,J.Gen.Virol.86:12791290)。本発明は、好ましくは、ワクシニアウイルスのMV型およびWV型を含み、EV型を除く、全てのワクシニアウイルス型の回収の使用を含む。MV型は、例えば、MV型をグルコサミングリカン(GAG)またはヘパラン硫酸もしくはヘパリンなどのGAG様分子に結合させることによって、選択的に単離することができる.
「本質的に」とは、発現産物および細胞関連に関して使用される時、発現産物が、発現プロセスの性質上、100%細胞関連ではないことを意味する。ある割合の発現産物は細胞関連であってよいが、別のある割合は細胞関連でなくてもよい。例えば、ある割合のポリペプチドなどの発現産物は、細胞内で、一方別の割合は細胞外で、即ち分泌される。したがって、用語「本質的に」は、好ましくは発現産物が少なくとも50%細胞関連である、より好ましくは少なくとも60%細胞関連である、さらに好ましくは少なくとも70%細胞関連である、特に好ましくは少なくとも80%細胞関連である、より特に好ましくは少なくとも90%細胞関連である、特に最も好ましくは少なくとも95%細胞関連であることを意味する。宿主細胞を「培養すること」は、発現産物の発現を可能にする条件下で、適当な宿主細胞を成長させることを意味する。
本発明の方法において適用される宿主細胞の培養が、懸濁培養または接着培養として、あるいは両者の組み合わせとして実施されることは、好ましい実施形態である。
培地(血清含有または無血清)中での「細胞の培養(cultivation)」または「細胞の培養(culturing)」という用語は、本発明の宿主細胞に関して、培養容器中への細胞播種、対数期から、接着培養の場合には単層が形成されるまで、もしくは懸濁培養の場合には十分な細胞密度が確立されるまでの、倍地中での細胞成長、および/または単層が形成された直後の培地中での細胞維持、もしくは懸濁液中での細胞維持をそれぞれ指す。培地中での「細胞の培養(cultivation)」または「細胞の培養(culturing)」という用語は、上記のステップ全てが無血清培地で実施され、そのため細胞の全培養プロセスにおいて、動物血清産物が存在しない、または本質的に存在しないことも含む。しかし、代替的に、上述のステップは、血清含有培地で実施してもよい。
好ましくは、上記の全てのステップで使用される培地は、成長因子および/または接合因子から選択される因子を含んでもよい。しかしながら、細胞播種および/または対数条件下での細胞成長のために使用される培地にのみこのような因子が付加されるだけで十分であろう。
下記により詳細に説明するように、通常は付着細胞として成長する細胞を、適当なインキュベーション条件が選択された場合(例えば、「ウェーブ」インキュベーションを適用することにより)、懸濁培養細胞としても培養することも可能であろう。本発明による方法は、特に好ましい実施形態として、このタイプのインキュベーションにも適合する。
用語「無血清」培地は、動物またはヒト由来の血清を含まないあらゆる細胞培養培地を指す。好適な細胞培養培地は、当業者に公知である。これらの培地は、塩、ビタミン、緩衝剤、エネルギー源、アミノ酸、および他の物質を含む。CEF細胞の無血清培養に好適な培地の一例は培地199(Morgan,Morton and Parker;Proc.Soc.Exp.Bioi.Med.1950,73,1、とりわけLifeTechnologies社から取得可能)または好ましくはVP−SFM(Invitrogen Ltd社)である。
培養は、細胞培養に好適な任意の容器内、例えばディッシュ内、ローラボトル内、またはWAVE(商標)生物反応器システムなどの生物反応器内で、バッチ、流加、連続システム、中空糸などを用いて実施することができる。細胞培養によってウイルスの大規模(連続)産生を達成するためには、当技術分野において、懸濁液中で成長できる細胞を有することが好ましく、また動物もしくはヒト由来の血清または動物もしくはヒト由来の血清構成要素の不在下で培養することができる細胞を有することが好ましい。細胞の培養に好適な条件は公知である(例えば、Tissue Culture,Academic Press,Kruse and Paterson,editors(1973)、およびR.I.Freshney,Culture of animal cells:A manual of basic technique,fourth edition,Wiley−Liss Inc.,2000,ISBN 0−471−34889−9を参照)。
本明細書において説明されるような発現産物を発現する宿主細胞を、使い捨てでない、または使い捨ての生物反応器、例えば好ましくはWAVE(商標)生物反応器システムにおいて、懸濁液中で培養する(懸濁培養)ことは、本発明の特に好ましい実施形態である。
WAVE Bioreactor(商標)システムは、2つの構成要素、使い捨て細胞バッグおよびロッカーから成る。培養培地および細胞は、特別なロッキングプラットフォーム上に配置された細胞バッグと称される事前滅菌された使い捨てチャンバにのみ接触する。このプラットフォームのロッキング運動は、培養液に波を誘発する。これらの波は、混合および酸素移動を提供し、10×106細胞/mL超を容易に支持する、細胞成長に最高の環境をもたらす。細胞バッグは、培養液量0.1〜500リットルを利用可能である。WAVE Bioreactor(商標)システムは、無菌処理のGMP原理下で本発明の宿主細胞を培養する環境を提供する。使い捨て生物反応器、例えばWAVE Bioreactor(商標)システムは、調製時間の短縮、清浄時間および滅菌時間の排除、ならびに使用の簡易化を含む多数の利点を有する。さらに、生物反応器は、清浄または滅菌を必要とせず、操作の簡易性および二次汚染からの保護を提供する。
感染細胞がある程度無傷の接着細胞である場合、均質化に供する前に、それらを培養容器から採取、即ち除去すべきである。かかる方法は、当業者に公知である。有用な技法は、機械的方法(例えば、ゴム製セルスクレーパーを使用することによる)、物理的方法(例えば、−15℃未満で凍結させ、その培養器を+15℃超で解答する)、または生化学的方法(細胞を培養器から分離するための酵素、例えばトリプシンによる処理)である。酵素がこの目的で使用される場合、これらの酵素はインキュベーション中にウイルスを損傷する可能性もあるため、インキュベーション時間を制御すべきである。
好ましくは、発現産物の発現のための宿主細胞として、連続細胞培養が用いられることが想定される。本明細書において使用される際、「連続細胞培養(または不死化細胞培養)」とは、初代培養の確立以来、培養で増殖させられた細胞を説明し、これらは自然の老化の限界を超えて成長および生存することができる。かかる生存細胞は、不死と考えられる。不死化細胞という用語は、最初に、テロメア延長酵素を発現することによってアポトーシスを回避することができる癌細胞に使用された。連続もしくは死化細胞株は、例えば、癌遺伝子の誘導によって、または腫瘍抑制遺伝子の喪失によって作製することができる。
例えば、ウイルスの産生のための宿主細胞を培養して、細胞およびウイルスの数および/またはウイルス力価を増加させることができる。宿主細胞の培養は、それが本発明による関心ウイルスを代謝および/または成長および/または分裂および/または産生させることを可能にするために実施される。これは当業者に公知であるような方法によって達成することができる。これには、例えば適当な培養培地において、細胞に栄養素を提供することが含まれるが、これに限定されない。
宿主細胞を「収集する」には、分離もしくはフィルタユニット内/上で本発明の発現産物を発現(産生)する宿主細胞を濃縮、捕捉、採取、および/または富化させるための任意の手段が含まれる。例えば、本発明において適用される宿主細胞を収集する前に富化してもよい、および/または収集する前に濃縮してもよい、および/または収集する前に補足してもよいことが想定される。富化は、例えば、バッチ遠心分離、フロースルー遠心分離、および/または接線流濾過によって達成することができる。
宿主細胞がバルク(または集団)で収集される、即ち、バルク収集(集団収集)が実施されることは好ましい。これは、膜上の酵母コロニーまたは細菌コロニーなどのコロニー全体として、それらを収集することによる宿主細胞の収集との違いである。
例えば、懸濁宿主細胞を含有する培養培地は、収集時に、容器からフィルタユニットに、好ましくは無菌の状態で移動させる。好ましくは、宿主細胞を含有する培養培地は、容器からフィルタユニットにポンプで送られ、次いで好ましくは無菌の状態でフィルタユニットを通過させ、それによって培養培地がフィルタユニットを通過し、宿主細胞は保持される。実際に、本明細書において説明されるように培養される宿主細胞を含有する培養培地が、ポンプでフィルタユニットに/を通して送られ、それによって宿主細胞が、バルクとしてフィルタユニット内/上に保持され、このため同時に培養培地から分離されることは、前記宿主細胞が前記フィルタユニット上/内に保持され、培養培地がフィルタユニットを通過できるという点において、本発明の好ましい実施形態である。宿主細胞をフィルタユニットに移動させるために、宿主細胞は懸濁状態にあるが、宿主細胞はそのまま懸濁状態にあるか、または接着的に成長させた場合は、本明細書に記載するように懸濁状態にさせる。フィルタユニットは、好ましくは、培養培地中に懸濁している宿主細胞を得る前に(好ましくは好適な溶液で、好ましくは緩衝剤で)すすぐ。
発現産物を発現する宿主細胞を収集するために使用されるフィルタユニット内/上での細胞破壊は、本発明の方法を本質的に細胞関連の発現産物であって、特にウイルスである発現産物を宿主細胞から回収するためにこれまでに使用されてきた方法と区別する決定的な特色である。具体的には、先行技術は、出願者の知る限りでは、宿主細胞をフィルタユニット内/上で破壊(好ましくは溶解)することができることは認識しておらず、示唆もしていない。これまで、宿主細胞は、例えば、音波処理、凍結融解、高圧均質化、機械的粉砕等によって破壊されていたが、フィルタユニット内/上ではなかった。むしろ、先行技術における細胞破壊は、前記宿主細胞の培養中または細胞の採取後に、例えば、フロースルー超音波処理または高圧均質化によって実施される。
さらに、フィルタユニットは、ホモジネート/溶解物を清澄化する目的で、細胞破壊後にさらなる下流処理においてのみ共通して使用された。しかしながら、本発明者らにとってさえ、前記宿主細胞を収集するために使用するフィルタユニット内/上で所望の発現産物を発現する宿主細胞を破壊することに成功したことは意外であった。本発明の教示に従った宿主細胞の破壊の質は、先行技術方法の質と同様に良好であると考えられ、おそらくは改善されてさえいる可能性すらある。例えば、ポックスウイルスの回収は、細胞培養においてポックスウイルスを発現する宿主細胞を均質化のために超音波処理を使用する代替的な製造プロセスと比較した時、著しく減少した不純物プロファイルと相まって、同等の力価を示した。先行技術の教示に基づいて、フィルタユニット内/上での宿主細胞の破壊が有効に行われないあろうことは合理的に仮定されるであろう。これは細胞が、堆積されるおよび/または層状に配置され、それにより少なくともバルク中で他の細胞に覆われる/包囲される細胞を細胞破壊(好ましくは溶解による)できないようにする可能性があり、例えば、収集される宿主細胞の表面における物理的遮蔽および/または保護作用が発生した可能性がある。しかしながら、宿主細胞を破壊(好ましくは溶解)する際に有したであろうこれらの限定にもかかわらず、本発明者らは、驚くべきことに、バルク中での宿主細胞の破壊が、それらの発現産物を回収する目的で宿主細胞を破壊するための公知かつ通常使用されている方法と同様に効率的であることを発見した(実施例3を参照)。
いかなるフィルタユニットもその構造および/または孔サイズが、好ましくは、(i)本発明の方法で使用される(無傷の)宿主細胞を保持ことができ、(ii)前記発現産物を発現する宿主細胞の破壊後、フィルタユニットからの発現産物の溶出を可能にする限り、使用することができる。上述のように、一部の好ましい実施形態において、破壊された宿主細胞は、本質的に前記フィルタユニットを通過することができないが、発現産物は通過することができる。このフィルタユニットの特性は、発現産物のサイズに関して、前記フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造に依存する。
しかしながら、上述のように、他の好ましい実施形態において、発現産物に加えて、破壊された宿主細胞も前記フィルタユニットを通過する。このフィルタユニットの特性は、前記フィルタユニットの孔サイズが、発現産物を通過させるサイズを有する可能性があることから、やはり前記フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造に依存する。しかしながら、そのサイズは、破壊された宿主細胞も前記フィルタユニットを通過させ得る。
このため、要するに、フィルタユニットは、一部の好ましい実施形態において、その(小さい)孔サイズおよび/または構造により、破壊された宿主細胞のそれらの発現産物からの分離をすでに可能にするが、他の好ましい実施形態においては、フィルタユニットは、その(大きい)孔サイズおよび/または構造によって、破壊された宿主細胞を効率的に保持することができず、このため通過してしまう。その場合、破壊された宿主細胞およびそれらの発現産物の分離は、本発明によって提供されるさらなる精製ステップ(本明細書において下記で説明される)のうちの1つ以上によって達成される。
本発明の方法において使用されるフィルタユニットは、特に好ましくは、深層濾過に使用可能なフィルタユニット、即ち、これはデプスフィルタユニットである。
発現産物に関しては、全ての発現産物がフィルタユニットを通過できることが想定される。しかしながら、発現された発現産物全体の1%、2%、3%、4%、5%、10%、または20%であるがそれを超えないものは、フィルタユニットを通過しなくてもよい。
しかしながら、本明細書において説明されるように、前記フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造を発現産物のサイズに合わせなければならない場合、破壊された宿主細胞の通過が生じ得る。基本的に、フィルタユニットの選択は、宿主細胞の「サイズ」および構造、ならびに前記宿主細胞の発現産物のサイズおよび構造によって決定される。
本発明の方法において使用されるフィルタユニットは、好ましくは、宿主細胞(保持液)を保持することができ、それによって細胞培養培地からの宿主細胞の分離を可能にする(本明細書において「濾液1」または「溶出液1」と称することもある)。そのステップにおいて、潜在的な不純物は、フィルタユニットが、前記フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造により、例えば、培地構成要素、サプリメント、成長因子、エネルギー源、ビタミン、不純物、または分泌された発現産物もしくは解放された発現物質を含有する培養培地のフロースルーを許すことから、潜在的な不純物は前記宿主細胞から分離されるとみなされる。その後、宿主細胞は、前記フィルタユニット内/上で破壊され、それによって発現産物が解放され、回収することができる(本明細書において「濾液2」または「溶出液2」と称することもある)。
一部の好ましい実施形態において、前記濾液2(溶出液2)は、フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造により、破壊された宿主細胞を本質的に含まず、特に細胞膜や細胞フラグメントなどを本質的に含まない。
他の好ましい実施形態において、前記濾液2(溶出液2)は、フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造により、破壊された宿主細胞を含有してもよい。
特に好ましい実施形態において、本発明の発現産物を発現する培養された宿主細胞は、懸濁状態の宿主細胞を含む培養培地をポンプでフィルタユニットに通すことによって収集される。その特定の好ましい実施形態の場合、無菌処理の原理に合うように、フィルタユニットとの無菌接触が適用される。
上述のように、100%が細胞関連でなくてもよいが、ある程度分泌されてもよい一部の発現産物が、宿主細胞から分離された細胞培養培地(即ち、濾液1)に存在したとしても、前記発現産物は、第1のフィルタユニットに直列に連結されるさらなるフィルタユニット(または前記第1のフィルタユニットに直列に連結されるその後のフィルタユニット)に保持することができるが、ただし前記さらなるフィルタユニットは、前記発現産物を保持するのに好適な孔サイズおよび/または構造を有する。したがって、本実施形態によって、潜在的に分泌される、または本質的に分泌される発現産物(または、いわば、上述のように、100%が細胞関連ではない細胞関連の発現産物の量)も前記発現産物を発現する宿主細胞から回収することができる。
フィルタユニットは、一般に「分離」ユニットとして理解され、即ち、「分離」および「フィルタ」(ユニット)は互換的に使用される。特に、フィルタユニットは、細胞培養培地から宿主細胞を分離する。好ましくは本発明の方法において使用されるフィルタ/分離ユニットは、フリース、ホロファイバー(ガラス繊維など)、または膜である。特に好ましい実施形態において、フィルタユニットはポリプロピレンから構成される。
中空糸モジュールは、膜に選択透過性を与える緻密なスキン層を有する自己支持繊維の配列から成る。繊維径範囲は0.5mm〜3mmである。中空糸モジュールの利点は、小さい膜面積(およそ16cm2)から極めて大きい膜面積(およそ28m2)までのフィルタが利用可能であり、線形の単純なスケールアップを可能にすることである。
一部の実施形態では1つのフィルタユニットが存在してもよいが、他の実施形態では、直列に連結された2つ以上のフィルタユニットが存在してもよく、それによって細胞破壊が第1のフィルタおよびその後の各フィルタの内/上で生じる代替的におよび/または付加的に、フィルタユニットは、並列で使用してもよい。
フィルタユニットに関して、細胞破壊は、前記フィルタユニット「内/上」で生じると考えられている。これは、一部のフィルタユニットは、細胞が前記フィルタユニットの膜に接着して、前記フィルタユニットの膜表面上で破壊が生じるが、他のフィルタユニットは、細胞が前記フィルタユニットの膜に接着せず、細胞破壊が前記フィルタユニット内で生じるように構築されている、即ち、宿主細胞が、例えば3次元構造体(分子篩など)、つまりは前記フィルタユニット「内」に保持されるが、前記フィルタユニットを本質的に通過することができず、このため一般に溶出液1中に認められないためである。前記フィルタユニット内/上でのそれらの破壊後、破壊された宿主細胞は、前記フィルタを通過してもよく、または前記フィルタユニット内/上に保持されてもよい(前記フィルタユニットの孔サイズおよび/または構造による)。
しかしながら、本発明の方法は、好ましくはウイルス、好ましくは、鶏痘ウイルス、ワクシニアウイルス、および改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)から成る群より選択されるウイルスである発現産物の回収のためであるため、フィルタユニットは、前記ウイルスの通過を可能にする孔サイズおよび/または構造を有することが要求される。その孔サイズおよび/または構造により、かかるフィルタユニットは、破壊された宿主細胞の通過も許し得る、即ち、これは破壊された宿主細胞の通過を排除することができない。しかし、破壊された宿主細胞は、本明細書において説明される精製ステップ/方法のうちの1つ以上によって、所望の発現産物から容易に分離することができる。その実施形態において、フィルタユニットは、いわば宿主細胞収集器であり、これは閉鎖プロセスにおいてバルクでの宿主細胞の破壊を可能にし、それによって解放された発現産物が濾液中(即ち、濾液2または溶出液2中)で濃縮され、宿主細胞を破壊(即ち、溶解)するための好ましい方法の場合、濾液2の容積は、宿主細胞を溶解するために使用する、および/または前記フィルタユニットから発現産物を溶出するために使用する溶液の量に依存する。
一般的に、宿主細胞が前記フィルタユニット内/上に存在する時、本明細書において説明される細胞破壊が生じる。
好ましくは、細胞破壊は、好ましくは低張溶液、好ましくは低張溶解緩衝剤による溶解によって行われる。したがって、特に好ましい実施形態において、前記フィルタユニット内/上で収集された宿主細胞は、低張溶液(好ましくは緩衝剤)によって溶解され、解放された発現産物は、低張溶液のフロースルーによって溶出される。発現産物を通過させる前記フィルタユニットのサイズおよび/または構造により溶出が行われ(溶出液または濾液2)、即ち、溶出液はフィルタユニットを通過することができ、このため回収することが可能である。回収された発現産物は、次いで、本明細書において下記で説明されるさらなる下流処理に供されてもよい。
本発明の方法において使用されるフィルタユニットは、好ましくは、孔サイズ約10μm未満(ポリプロピレンフリースフィルタなど)、より好ましくは、孔サイズ約1.2μm〜約5μmを有し、さらに好ましくは、これは孔サイズ約3μmを有する。
特に好ましい実施形態において、フィルタユニット内/上で収集された宿主細胞は、低張緩衝剤による溶解によって、好ましくは1mM Tris緩衝剤(pH9.0)による溶解によって破壊される。本実施形態は、好ましくは、好適な宿主細胞、好ましくはCEF細胞におけるポックスウイルスの発現に適用される。
細胞破壊は、細胞膜または細胞壁の破裂、および細胞からの細胞質の解放を含む。
溶解は、高張溶解または低張溶解のいずれでもよいが、低張溶解が好ましく、より好ましくは低張溶解溶液によって行う。前記溶液は、好ましくは緩衝剤(低張溶解緩衝剤または高張溶解緩衝剤であり、低張溶解緩衝剤が好ましい)である。あまり好ましくはないが、高張溶解は、任意の溶解溶液、好ましくは溶解される宿主細胞の内部よりも塩濃度が高い緩衝剤、即ち、溶解される宿主細胞よりも容量オスモル濃度が高い高張溶解緩衝剤によって達成することができる。
溶解される宿主細胞の内部よりも塩濃度が低い限り、即ち、低張溶解緩衝剤が溶解される宿主細胞よりも低い容量オスモル濃度を有する限り、いかなる低張溶解緩衝剤を使用してもよい。
特に好ましくは、溶解は、1mM Tris(pH9.0)から成る群より選択される低張溶解緩衝剤によって達成される。同様に、1〜10mM PBS緩衝剤を種々のpH値で使用することもできる。
あまり好ましくはないが、溶解は、界面活性剤溶解によっても達成することができる。
界面活性剤は、本明細書において使用される際、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、および非イオン界面活性剤を含んでもよい。例となる界面活性剤には、タウロコール酸、デオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ZWITTERGENT−3−14(登録商標)、CHAPS(3−[3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオール]−1−プロパンスルホン酸水和物、Aldrich社)、Big CHAP、Deoxy Big CHAP、Triton X−100(登録商標)、Triton X−114(登録商標)、C12E8、オクチル−B−D−グルコピラノシド、PLURONIC−F68(登録商標)、TWEEN−20(登録商標)、TWEEN−80(登録商標)(CALBIOCHEM(登録商標) Biochemicals社)、デオキシコール酸、Triton X−100、Thesit(登録商標)、NP−40(登録商標)、Brij−58(登録商標)、オクチルグルコシドなどが含まれるが、これらに限定されない。当業者には、界面活性剤の濃度が、例えば約0.1%〜5%(w/w)の範囲内などで、異なってよいことは明らかである。特定の実施形態において、界面活性剤は、濃度約1%(w/w)で溶解溶液中に存在する。
溶解は、酵素処理、音波処理(超音波)、高圧均質化、高圧押出、フレンチプレス、凍結融解、固体せん断、酵素的に、または溶解によって、これらの技法の組み合わせによっても達成することができるが、溶解が好ましい。
宿主細胞がウイルスを発現(産生)する場合、細胞破壊(好ましくは溶解)の成功は、好ましくは、上記に定義する出発材料および細胞破壊後に得られる材料のウイルス力価(組織培養感染量(TCID50)として、またはプラーク形成単位(pfu)として測定される感染性ウイルス粒子の数と等しい)の測定によって確認される。言い換えると、細胞破壊の前後にウイルス力価を測定する。出発材料は、ある程度無傷の細胞、およびやや高い割合の細胞膜に結合したウイルス粒子を含む大きい凝集体を含む。ウイルス力価の測定にかかる材料を使用する場合、得られる力価は、感染性粒子の実際の数よりも低い。これは、ウイルス力価の測定に使用する試験システムが、通常は、感染細胞の数またはプラークの数が数えられる細胞培養システムであることによる。かかるシステムは、陽性の結果を1つのみのウイルス粒子による細胞の感染のよるものと、例えば細胞膜に結合したウイルスの大きい凝集体による細胞の感染のよるものとに区別することができない。細胞破壊後、ウイルスは、細胞膜から引き離される、および/または細胞膜−ウイルス凝集体のサイズが著しく減少し、より多数の小さい凝集体もたらすと考えられている。力価の測定にこの材料を使用する場合、たとえ感染性ウイルス粒子の実際の量が変化していなくても、得られる結果はより高くなる。このため、細胞破壊の成功は、好ましくは、少なくとも同等以上のTCID50/mLによって示される。「TCID」は、破壊された細胞(好ましくはその溶解物)の「tissue culture infectious dose(組織培養感染量)」の略語、または出発材料と比較したPFU/mLである。代替的に、細胞破壊の質および成功は、電子顕微鏡法によって測定することもできる。
宿主細胞がポリペプチドを発現する場合、細胞破壊の成功は、好ましくは、当技術分野において公知の手段および方法、例えばELISA法などによって、宿主細胞から解放される発現産物の量を定量化することによって測定することができる。
本発明の方法の分離ステップは、一部の実施形態において、破壊された宿主細胞の前記宿主細胞により発現された発現産物からの分離を可能にする。したがって、分離ステップは、溶出ステップに相当する。それでもなお、追加の溶出ステップを使用してもよい。しかしながら、破壊された宿主細胞の発現産物からの分離を可能にするためには、本発明の方法において使用されるフィルタユニットの孔サイズおよび/または構造を本明細書において説明されるように、適宜選択しなければならない。
他の好ましい実施形態において、本発明の方法の分離ステップは、特に発現産物、および破壊された宿主細胞がフィルタユニットを通過した後に実施する。好ましくは、発現産物は、宿主細胞が破壊されたあとに溶出される。溶出は、例えば、好ましくは溶液による溶解によって宿主細胞が破壊される間に同時に達成される、および/またはフィルタユニットから前記発現産物を溶出する時に達成される。これらの他の好ましい実施形態において、破壊された宿主細胞が同様にフィルタユニットを通過することを排除するできない孔サイズおよび/または構造を有するフィルタユニットが使用されることを考慮すると、分離ステップは、前記フィルタユニット内/上では本質的に行われず、濾液2(溶出液2)中で行われる。「本質的に〜ない」とは、破壊された宿主細胞が、前記フィルタユニット内/上に保持され得ることが排除されないことを意味する。
あまり好ましくはないが、それでもなお、発現産物および宿主細胞が、フィルタユニット内/上に保持され、または発現産物がフィルタユニット内/上に保持されて、宿主細胞が除去されたあと、発現産物を回収できることが想定される。例えば、発現産物は、例えば、受容体−リガンド相互作用によって、または親和性結合によって、例えば、洗流ステップもしくは洗浄ステップによって、フィルタユニットに(可逆的に)結合してもよい。当然のことながら、フィルタユニットは、適宜調製しなければならない。親和性結合は、好ましくは、好ましくは鶏痘ウイルス、ワクシニア、より好ましくはMVAを含むポックスウイルスを保持するために使用することができる。ポックスウイルスは、グルコサミングリカン(GAG)、または例えば負に帯電した硫酸基を有する炭水化物、ヘパラン硫酸、またはヘパリンを含むGAG様リガンドに結合できることが知られている(国際公開第2008/138533を参照)。結合したポックスウイルスの溶出は、過剰のGAGまたはGAG様リガンドあるいはその一部によって達成することができる。
また、あまり好ましくはないが、分離ステップは、宿主細胞が、それらの破壊後、フィルタユニットを通過することを可能にしてもよく、この時発現産物は前記フィルタユニット内/上に保持される。上述のように、このあまり好ましくない分離は、発現産物のフィルタユニットへの親和性結合または偽親和性結合によって達成することができ、この時破壊された宿主細胞は通過することになる。
本発明の方法の好ましい実施形態において、汚染物質、即ち、主に宿主細胞、核酸を除去するために、ヌクレアーゼが添加される。本発明における使用に好適なヌクレアーゼの例には、Benzonase(登録商標)、Pulmozyme(登録商標)、または任意の他のデオキシリボヌクレアーゼ、および/または当技術分野において一般に使用されるRNaseがある。本発明の好ましい実施形態において、ヌクレアーゼは、特定のヌクレオチド間の内部ホスホジエステル結合を加水分解することによって核酸を迅速に加水分解し、それによって細胞溶解物の粘度を減少させる、Benzonase(登録商標)である。Benzonase(登録商標)は、Merck KGaA社から市販のものを入手することができる(コードW214950)。
ヌクレアーゼが使用される濃度は、好ましくは1〜100単位/mLの範囲内である。
本発明によると、ヌクレアーゼは、細胞を溶解する前または後に使用する。これは、溶解ステップの数秒前もしくは後(または事実上同時に)に添加してもよいが、好ましくは、ヌクレアーゼは溶解ステップ後に添加する。
本発明の方法に使用される宿主細胞が、本明細書においてさらに明確に述べるように、哺乳類細胞および非哺乳類細胞を含む真核細胞であることは好ましい。より好ましくは、宿主細胞は、脊椎動物細胞または昆虫細胞、好ましくは鳥細胞である。
「宿主細胞」は、発現産物を発現(産生)することができる細胞を指す。前記宿主細胞は、本発明の方法において適用される。その目的で、宿主細胞がポリヌクレオチドまたはポリペプチドを発現すべきである場合、発現産物を発現する外来ヌクレオチド配列が、宿主細胞に導入される。
「外来」とは、ヌクレオチド配列および/またはコードされたポリペプチドが、宿主に対して異種であるか(これは、異なるゲノム背景を有する細胞または生物に由来することを意味する)、または宿主に対して同種であるが、自然に存在する前記ヌクレオチド配列に対応するものとは異なるゲノム環境に位置することを意味する。これは、ヌクレオチド配列が宿主に対して同種である場合、その自然位置で前記宿主のゲノムに位置しないこと、特にこれが異なる遺伝子に囲まれていることを意味する。この場合、ヌクレオチド配列は、それ自体のプロモータの制御下にあっても、または異種プロモータの制御下にあってもよい。
しかし、宿主細胞がウイルスを発現(産生)すべきである場合、ウイルスを増殖および/または複製させるために、宿主細胞を前記ウイルスに感染させることが好ましい。宿主細胞の感染は、例えば、ウイルスの取り込みを可能にする生理学的条件下で、ウイルスを適当な宿主細胞に暴露することにより簡単に達成することができる。特定のウイルスの場合、核酸配列を用いて培養細胞中にウイルスを再構成することができるため、ウイルス自体から出発する必要さえない。
発現産物の回収のための出発材料を定義するために使用される用語「感染細胞」は、それぞれのウイルスに感染した無傷細胞、それぞれのウイルスが付着する感染細胞の一部およびフラグメント、または無傷細胞と溶解/破壊された細胞との混合物を指す。感染細胞の一部またはフラグメントの例は、それぞれのウイルスが付着する破壊/溶解された細胞の細胞膜である。また、出発材料は、細胞膜に付着しておらず、かつ細胞内に位置しない遊離ウイルス粒子も含有していてよい。
好ましくは、宿主細胞は、プラスミドストックを調製するための構築物の増殖に使用される原核細胞および発現産物の発現のための真核細胞の両者を含む。より好ましくは、本発明の方法において適用される宿主細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞、両生類細胞、および魚細胞を含む脊椎動物細胞、ならびに昆虫細胞である。また、用語「宿主細胞」には、真核細胞も含まれる。典型的に、真核細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞、または昆虫細胞である。さらに、酵母細胞および真菌細胞も用語「宿主細胞」に含まれる。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF細胞)などの鳥類細胞は、ポックスウイルスの発現に最も好ましく、哺乳類細胞、昆虫細胞、および酵母細胞は、好ましくは、本明細書において説明されるようなタンパク質の発現に使用される。
ウイルスの発現には、任意の好適な宿主細胞を使用することができるが、アデノウイルスおよびレトロウイルスの発現にはパッケージング細胞株である宿主細胞が好ましい。パッケージング細胞株は、ウイルスが複製し生活環を終えるために必要な、ウイルス複製に必要な因子および外殻タンパク質等の要素を提供する。
好ましくは、発現産物としてのウイルス、特にアデノウイルスおよびレトロウイルスの発現について、用語「細胞」または「パッケージング細胞」は、発現(産生)されるウイルス、好ましくはアデノウイルスおよびレトロウイルスに感染させることができる細胞を指す。細胞またはパッケージング細胞は、初代細胞、組み換え細胞、および/または細胞株であってよい。例えば、組み換えウイルスベクタを有さない、組み換えウイルスの産生に必要な要素を含む組み換え細胞を使用することができる。
用語「感染」は、ウイルス性核酸の細胞への移動を指し、このときウイルス性核酸が複製される、ウイルス性タンパク質が合成される、または新しいウイルス性粒子が集合する。本発明の好ましい一実施形態において、細胞は不死鳥類細胞である。本発明の他の好ましい実施形態において、細胞はDF1細胞(米国特許第5,879,924号)であるが、これは10日齢のEast Lansing Line(ELL−0)の卵に由来する自然に不死化したニワトリ細胞株である。
不死鳥類細胞は、成長因子および支持細胞層からの段階的分離によって、胚幹細胞から誘導することができ、このため未分化幹の成長特性および無限の寿命の特徴を維持する。例えば、Ebxニワトリ細胞株(国際公開第2005/007840号)は、このプロセスで取得されている。他の例は、AGE1.CRまたはEB66細胞株である。
好ましい実施形態によると、アヒル胚永久細胞系を用いることもできる。例えば、DEC 99として表される細胞株(Ivanov et al.Experimental Pathology And Parasitology,4/2000 Bulgarian Academy of Sciences)は、140代にわたり継代培養されており、これはトリに対して腫瘍原性ではない。DEC 99細胞株は、研究に使用されている標準的細胞培養系であり、バイオ技術の需要に応用することができる。
上述のように、CEF細胞は、好ましくは、発現産物としてのポックスウイルスの発現に使用される。ウイルス産生のためのCEFの調製および使用は、当業者に公知である。簡潔に言うと、CEFは、好ましくは、特定病原体を含まない(SPF)卵から抽出される。SPF卵は、例えばCharles River Laboratories社(米国マサチューセッツ州ウィルミントン)から市販されている。前記卵は、好ましくは、9日齢を超える、より好ましくは10〜14日齢、さらに好ましくは12日齢のものである。
胚の抽出前に、卵は、好ましくは消毒される。卵の消毒を目的とする多くの方法および製品が、先行技術において利用可能である。例えば、ホルモル溶液中でインキュベートし(例えば、2%ホルモル、1分)、その後70%エタノールですすぐことができる。
次いで、胚細胞を解離し、精製する。本発明の好ましい実施形態によると、この細胞を細胞間基質の破壊を可能にする酵素消化ステップに供する。この目的で、細胞間基質を分解することができる酵素の使用は、特に有用である。かかる酵素は、トリプシン、コラゲナーゼ、プロナーゼ、ディスパーゼ、ヒアルロニダーゼ、およびノイラミニダーゼを含むがこれらに限定されない群から選択することができる。酵素は単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。本発明の特に好ましい実施形態では、ディスパーゼおよびトリプシン(例えば、Gibco.TMから選択されるTrypLE)が組み合わせて使用される。当業者は、細胞の十分な分離を可能にする酵素濃度、温度、およびインキュベーション時間を決定することができる。
本発明の方法において適用することができる真核宿主細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞、両生類細胞、魚細胞、昆虫細胞、真菌細胞、植物細胞、または細菌細胞(例えば、大腸菌株HB101、DH5a、XL1 Blue、Y1090、およびJM101)であってよい。真核宿主細胞の例には、酵母、例えば、出芽酵母、分裂酵母、クルイベロミセス・ラクチス、またはピキア・パストリス細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サル、鳥類、げっ歯類由来の細胞株、ならびにヨトウガ昆虫細胞およびショウジョウバエ由来昆虫細胞を含むがこれらに限定されない昆虫細胞、ならびにゼブラフィッシュ細胞が含まれるが、これらに限定されない。使用に好適であり、かつ市販されている哺乳類種由来の細胞株には、L細胞、CV−1細胞、COS−1細胞(ATCC CRL 1650)、COS−7細胞(ATCC CRL 1651)、HeLa細胞(ATCC CCL 2)、C1271(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、MRC−5(ATCC CCL 171)、およびPER−C6が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の好ましい実施形態において、宿主細胞は鳥類細胞である。本明細書において使用される際、用語「鳥類」は、分類学的クラス「ava」の生物の任意の種、亜種、または品種を指すよう意図され、これには例えばニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュー、およびヒクイドリのような生物が含まれるが、これらに限定されない。この用語は、セキショクヤケイ、またはニワトリ(例えば、白色レグホン、褐色レグホン、横斑ロック、サセックス、ニューハンプシャー、ロードアイランド、オーストラロープ、ミノルカ、アムロックス、カリフォルニアグレイ、イタリアンパーティッジカラード)の種々の株、ならびに一般に繁殖されるシチメンチョウ、キジ、ウズラ、アヒル、ダチョウ、および一般に飼育されている他の家禽の株を包む。最も好ましい実施形態では、本発明の鳥類細胞はニワトリ細胞、具体的にはニワトリ胚線維芽細胞(CEF)細胞である。
本発明による方法は、好ましくは本質的に動物産物を含まずに(宿主細胞および培養培地に添加されるサプリメントを除く)実施されることが想定される。したがって、CEFの調製に使用される酵素は、好ましくは組み換え由来のものである。しかしながら、酵素がブタトリプシンであることも好ましい。本明細書において使用される際、「動物産物」とは、生体の動物細胞中で、または生体の動物細胞から産生された任意の化合物または化合物の集合を意味する。しかしながら、本発明による方法が、好ましくは動物産物の存在下で実施されることも本明細書において意図される。
例えば、産生すべきポックスウイルスがMVAである場合、ウイルスは、好ましくは0.001〜0.1、より好ましくは0.03〜0.07、およびさらに好ましくは約0.05が含まれるMOIで細胞培養容器に導入される。
本発明の好ましい実施形態によると、宿主細胞、特に哺乳類および鳥類細胞は、約37℃の温度で、または37℃未満の温度で、好ましくは30℃〜36.5℃または約32℃〜約36℃、より好ましくは33℃〜35℃、最も好ましくは34℃で培養される。
フィルタユニット内/上での細胞破壊によって宿主細胞からいったん解放された発現産物(濾液2または溶出液2)が、任意にさらに精製、即ち清澄化されることは、本発明の好ましい実施形態である。
精製は、好ましくは、アニオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、偽親和性クロマトグラフィ、またはそれらの組み合わせから成る群のうち1つ以上の要素から選択されるクロマトグラフィステップによって達成することができる。
クロマトグラフィによる精製の代替および/または追加として、好ましくは清澄化ステップを実施してもよい。清澄化ステップは、好ましくは、本発明の宿主細胞の発現産物がウイルスである場合に実施される。清澄化は、とりわけあらゆる細胞残屑(存在する場合)の除去を可能にする。清澄化は、細胞残屑および他の不純物を除去するための濾過ステップによって、好ましくは深層濾過ステップによって行うことができる。
好適なフィルタは、セルロースフィルタ、再生セルロース繊維、セルロース繊維と無機濾過助剤(例えば、珪藻土、パーライト、ヒュームドシリカ)の併用、セルロースフィルタと無機濾過助剤および有機樹脂との併用、またはそれらの任意の組み合わせ、ならびに高分子フィルタ(例にはナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホンがあるが、これらに限定されない)を使用して、有効な除去および許容可能な回収を達成してもよい。一般に、多段階プロセスが好ましいが、必ずしも要求されない。最適な組み合わせは、沈殿物サイズ分布ならびに他の変数による。加えて、比較的密なフィルタまたは遠心分離を用いる一段階操作も清澄化に使用することができる。より一般的には、デッドエンド濾過、精密濾過、遠心分離、またはデッドエンド濾過もしくは深層濾過と組み合わせた濾過助剤(例えば、珪藻土)のボディーフィードを含む、その後のステップで膜および/または樹脂を汚さない好適な清澄度の濾液を提供するいかなる清澄化手法も本発明の清澄化ステップにおける使用に許容可能となる。
上述のように、好ましい実施形態において、深層濾過が好ましい。また、精密濾過などの膜濾過も使用可能である。精密濾過は、大きい分子を濃縮および精製する圧力駆動による膜プロセスである。より具体的には、保持液中の大きい粒子(ウイルス)拒否し、小分子(例えば、タンパク質)が膜を通って透過液に入るように孔サイズが選択された半透膜に溶液を通過させる。精密濾過は、抽出溶液の量を減らす。
本発明の好ましい実施形態によると、精密濾過ステップに後に透析濾過ステップを実施する。これら2つのステップは、有利にも、同じ濾過膜を用いて行うことができる。透析濾過は、精密濾過の改良であり、保持液中の不純物の濃度減少を達成するために、保持液を溶液で希釈することを含む。保持液の希釈は、より多くの不純物を保持液から洗い出すことを可能にする。透析濾過がバッチ法、半連続法、または連続法で実施してもよいことは理解される。透析濾過ステップは、有利にも、ウイルスが含まれる緩衝剤を置換するために使用することができる。例えば、Benzonase処理などのさらなる下流処理に使用される緩衝剤に対して、溶解プロセスにおいて使用する緩衝剤を置換することは有用となり得る。
これに関して有用な市販の製品は、例えば、国際公開第03/097797号の第20頁〜第21頁に記載されている。使用可能な膜は、異なる材料から成ってもよく、孔サイズが異なってもよく、また組み合わせて使用してもよい。これらは複数の販売元から市販されている。
本発明の特定の実施形態では、例えばウイルスの濃縮および/または緩衝液置換のため、および/または清澄化された採取物の濃縮および透析濾過のため、プロセス中に少なくとも1度、ウイルス懸濁液を濾過/透析濾過に供する。本発明の方法によってウイルスを濃縮するために使用されるプロセスは、希釈剤がウイルス調製物から除去され、一方ウイルスはフィルタを通過できず、それによってウイルス調製物中に濃縮形態で保持されるような形で、希釈剤をフィルタに強制的に通過させることによってウイルスの濃度を増加させる任意の濾過プロセス(例えば、限外濾過(UF))を含んでもよい。UFは、例えば、Microfiltration and Ultrafiltration:Principles and Applications,L.Zeman and A.Zydney(Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1996)において詳細に説明されている。
限外濾過器を用いる、透析濾過(DF)または緩衝液置換は、塩、糖、非水溶媒の除去および置換、結合していない種の分離、低分子量の材料の除去、またはイオンおよび/またはpH環境の迅速な変更のための理想的な方法である。分子は、UF速度と等しい速度で限外濾過を行う溶液に溶媒を添加することにより、最も効率的に除去することができる。
UF/DFは、精製プロセスの異なる期において、例えば、溶解物および/またはクロマトグラフィを実施したものなどのさらに精製されたウイルス懸濁液において、本発明による発現産物を含有する懸濁液を濃縮および/または緩衝液置換するために使用することができる。
清澄化(精製)のための前述の方法のいずれかの代替として、特にポックスウイルス、特に鶏痘ウイルス、ワクシニアウイルスから成る群より選択されるもの、より好ましくは改変ワクシニアウイルスAnkara、MVAは、国際公開第03/138533号に記載の手段および方法によって精製することができる。簡潔に言うと、ポックスウイルスは、グルコサミングリカン(GAG)、GAG様分子、疎水性分子、および/または硫酸化強化セルロースのような1つ以上の負に帯電した硫酸基を含むリガンドに結合するそれらの能力によって精製することができる。例えば、IMV(ワクシニアウイルス(MVAを含む)の細胞内成熟ウイルス)と称される特定の形態学上の形態は、特にGAGおよび/またはGAG様分子に結合すると仮定されるため、EEVなどのワクシニアウイルスの他の形態学上の形態は、GAGおよび/またはGAG様分子に結合しないと考えられていることから、精製が可能である。
好ましい実施形態によると、本発明によるプロセスは、濃縮ステップをさらに含む。より好ましくは、前記濃縮ステップは、前述のステップから得られる混合物中に存在するタンパク質の排除をさらに可能にする。本発明のより好ましい実施形態によると、前記濃縮ステップは精密濾過ステップである。
第2の態様において、本発明はフィルタユニットの使用に関し、前記フィルタユニットは、(i)宿主細胞を保持するのに好適であり、(ii)無菌プロセスにおいて前記宿主細胞から前記発現産物を回収するための前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、フィルタユニットからの前記発現産物の溶出に好適であることを特徴する。
好ましくは、上記の使用において回収される前記発現産物はウイルス、好ましくはポックスウイルス、より好ましくは鶏痘ウイルス。ワクシニアウイルス、および改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)から成る群より選択されるウイルスである。
本発明の方法に関して説明する全ての実施形態は、必要な変更を加えて、本発明の第2の態様にも同様に適用可能である。
そうではあるが、本発明の使用に関して、好ましい実施形態は以下の通りである。
フィルタユニットが、細胞培養培地から前記宿主細胞を分離するのに好適であることは好ましい。
フィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での前記宿主細胞の破壊を可能にするのに好適であることはさらに好ましい。
前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後にフィルタユニットから前記発現産物を溶出するのに好適なフィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後に前記宿主細胞から発現産物を分離するのに好適であることもまた好ましい。
前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後にフィルタユニットから前記発現産物を溶出するのに好適なフィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後に前記宿主細胞からの発現産物の通過および/または溶出を可能にするのに好適であることもまた好ましい。
フィルタユニットが、破壊された宿主細胞の通過を可能にするのにさらに好適であることはさらに好ましい。
前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後にフィルタユニットから前記発現産物を溶出するのに好適なフィルタユニットが、前記破壊された宿主細胞を保持し、それによって前記発現産物の通過および/または溶出を可能にするのに好適であることは好ましい。
前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後にフィルタユニットから前記発現産物を溶出するのに好適なフィルタユニットが、前記発現産物を保持し、それによって前記破壊された宿主細胞の通過および/または溶出を可能にするのに好適であることは、別の好ましい実施形態である。
フィルタユニットが、前記宿主細胞から発現産物を分離し、それによって前記破壊された宿主細胞および前記発現産物を保持し、発現産物の通過および/または溶出を可能にするのに好適であることは、代替的に好ましい。
フィルタユニットが、前記宿主細胞から発現産物を分離し、それによって前記破壊された宿主細胞および前記発現産物を保持し、発現産物および/または破壊された宿主細胞の通過および/または溶出を可能にするのに好適であることもまた代替的に好ましい。
第3の態様において、本発明は、無菌製造プロセスにおいて、宿主細胞から発現産物を回収するためのシステムあって、
(a)前記宿主細胞を成長させるのに好適な容器と、
(b)フィルタユニットであって、
(i)前記宿主細胞を保持し、それによってそれらを細胞培養培地から分離するのに好適であり、
(ii)前記フィルタ内/上での細胞破壊後、フィルタユニットからの前記発現産物の溶出に好適であることを特徴とする、フィルタユニットと、
(c)任意に、前記宿主細胞を溶解するための溶解溶液と
(d)任意に、前記宿主細胞を成長させるための培養培地と、
を備えるシステムを提供する。
好ましくは、上記のシステムにおいて回収される前記発現産物は、ウイルス、好ましくはポックスウイルス、より好ましくは鶏痘ウイルス、ワクシニアウイルス、および改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)から成る群より選択されるウイルスである。
本発明の方法および/または使用に関して説明する全ての実施形態は、必要な変更を加えて、本発明の第3の態様に同様に適用可能である。
第4の態様において、本発明は、本発明の方法によって取得可能な発現産物提供する。あまり好ましくはないが、前記発現産物は、細胞残屑、タンパク質、またはDNAといった、宿主細胞の残余物を含有する可能性がある。かかる残余物は、5%、4%、3%、2%、または1%(v/v)といった微量で、前記発現産物を含む調製物中に存在する可能性がある。また、前記調製物は、本明細書において説明されるように、ウイルスの構成要素をさらに含む可能性がある。好ましい構成要素は、引き離されたエンベロープ、ウイルスエンベロープの開裂産物、またはウイルスの前記エンベロープの異常型である。
発現産物がウイルスである場合、このように取得されるウイルスは、任意に凍結乾燥される、凍結乾燥の方法は、当業者に公知である(Day J. and McLellan M.,Methods in Molecular Biology(1995),38,Humana Press,”Cryopreservation and freeze−drying protocols”)。
また、本発明は、本発明の方法によって取得可能な発現産物を含む組成物にも関する。
また、本発明は、本発明の方法によって取得可能な発現産物を含む薬学的組成物にも関する。本明細書において使用される際、「薬学的組成物」とは、薬学的に許容可能な担体を含む組成物を指す。かかる担体は、好ましくは、等張性、低張性、または弱高張性であり、比較的低いイオン強度を有し、例えばスクロース溶液である。さらに、かかる担体は、任意の溶媒、または非発熱性滅菌水などの水性もしくは部分的に水性の液体を含有してもよい。加えて、薬学的組成物のpHを体内での使用の要件に合うように調整および緩衝する。薬学的組成物は、薬学的に許容可能な希釈剤、補助剤、または賦形剤、ならびに可溶化剤、安定剤、および保存剤も含んでよい。注射剤投与の場合、水性溶液、非水性溶液、または等張性溶液中の製剤が好ましい。これは、単回用量または複数回用量で、適当な希釈剤により使用時に再構成可能な液体形態または乾燥形態(粉末、凍結乾燥物など)で提供することができる。
また、上述のように、本発明は、本発明の方法(請求項1のものなど)のステップを含み、前記方法によって回収された発現産物を薬学的に許容可能な担体と混合/製剤化するステップをさらに含む、薬学的組成物の製造のための方法に関する。
本発明は、以下のように次の項目により要約できる。
1.宿主細胞から本質的に細胞関連の発現産物を回収するための方法であって、
(a)前記発現産物の発現を可能にする条件下で、前記宿主細胞を培養することと、
(b)フィルタユニット内/上で前記宿主細胞を収集することと
(c)フィルタユニット内/上で前記宿主細胞を破壊することと、
(d)前記破壊された宿主細胞から、前記発現産物を分離することと、
を含む方法。
2.前記フィルタユニットが、前記宿主細胞を保持するのに好適であり、それによって前記宿主細胞が細胞培養培地から分離される、項目1に記載の方法。
3.前記フィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での前記宿主細胞の破壊を可能にするのに好適である、項目1または2に記載の方法。
4.前記フィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後に、前記宿主細胞からの前記発現産物の通過および/または溶出を可能にするのに好適である、項目1〜3に記載の方法。
5.前記フィルタユニットが、破壊された宿主細胞の通過を可能にするのにさらに好適である、項目4に記載の方法。
6.前記フィルタユニットが、前記宿主細胞から前記発現産物を分離するのに好適であり、それによって前記破壊された宿主細胞を保持し、前記発現産物の通過および/または溶出を可能にする、項目1〜3のいずれか1つに記載の方法。
7.前記フィルタユニットが、前記宿主細胞から発現産物を分離するのに好適であり、それによって前記発現産物を保持し、前記破壊された宿主細胞の通過および/または溶出を可能にする、項目1〜3のいずれか1つに記載の方法。
8.前記フィルタユニットが、前記宿主細胞から発現産物を分離するのに好適であり、それによって前記発現産物および前記破壊された宿主細胞を保持し、前記発現産物および/または前記破壊された宿主細胞の通過および/または溶出を可能にする、項目1〜3のいずれか1つに記載の方法。
9.前記宿主細胞から前記発現産物を回収するためのフィルタユニットの使用であって、
(i)発現産物を発現する宿主細胞を保持するのに好適であり、
(ii)前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、前記フィルタユニットからの前記発現産物の溶出に好適であることを特徴とする、フィルタユニットの使用。
10.宿主細胞から発現産物を回収するためのシステムであって、
(a)前記宿主細胞を成長させるのに好適な容器と、
(b)フィルタユニットであって、
(i)前記宿主細胞を保持するのに好適であり、
(ii)前記フィルタ内/上での細胞破壊後、前記フィルタユニットからの前記発現産物の溶出に好適であることを特徴とする、フィルタユニットと、
(c)任意に、前記宿主細胞を溶解するための溶解溶液と、
(d)任意に、前記宿主細胞を成長させるための培養培地と、
を備えるシステム。
11.前記フィルタユニットが、細胞培養培地から前記宿主細胞を分離するのに好適である、項目9に記載のフィルタユニットのまたは項目10に記載のシステムの使用。
12.前記フィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での前記宿主細胞の破壊を可能にするのに好適である、項目9または11に記載のフィルタユニットのまたは項目10または11に記載のシステムの使用。
13.前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後に前記フィルタユニットから前記発現産物を溶出するのに好適なフィルタユニットが、前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後に前記宿主細胞から発現産物を分離するのに好適である、項目9、11、および12のいずれか1つに記載のフィルタユニットまたは項目10〜12のいずれか1つに記載のシステムの使用。
14.前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、フィルタユニットからの前記発現産物の溶出に好適である、前記フィルタユニットは、前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、発現産物の通過および/または前記宿主細胞からのその溶出を可能にするのに好適である、項目9、11、および12のいずれか1つに記載のフィルタユニットの使用、または項目10〜12のいずれか1つに記載のシステム。
15.フィルタユニットは、破壊された宿主細胞の通過を可能にするのにさらに好適である、項目14のフィルタユニットの使用またはシステム。
16.前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、フィルタユニットからの前記発現産物の溶出に好適である、フィルタユニットは、前記破壊された宿主細胞を保持するのに好適であり、それによって、前記発現産物の通過および/または溶出を可能にする、項目9および11〜13のいずれか1つに記載のフィルタユニットの使用、または項目10〜13のいずれか1つに記載のシステム。
17.前記フィルタユニット内/上での細胞破壊後、フィルタユニットからの前記発現産物の溶出に好適である、フィルタユニットは、前記発現産物を保持するのに好適であり、それによって、前記破壊された宿主細胞の通過および/または溶出を可能にする、項目9および11〜13のいずれか1つに記載のフィルタユニットの使用、または項目10〜13のいずれか1つに記載のシステム。
18.前記フィルタユニットは、前記宿主細胞から発現産物を分離するのに好適であり、それによって、前記発現産物および前記破壊された宿主細胞を保持し、発現産物および/または破壊された宿主細胞の通過および/または溶出を可能にする、項目9および11〜13のいずれか1つに記載のフィルタユニットの使用、または項目10〜13のいずれか1つに記載のシステム。
19.前記発現産物は、ウイルスであり、好ましくは鶏痘ウイルス、ワクシニアウイルス、および改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)から成る群より選択されるウイルスである、項目1〜8のいずれか1つに記載の方法、項目9および11〜18のいずれか1つに記載の使用、または項目10〜18のいずれか1つに記載のシステム。
20.前記細胞関連の発現産物は、宿主細胞内にあるか、またはそれに付着される、先行項目のいずれかに記載の方法、使用、またはシステム。
21.前記宿主細胞は、脊椎動物または昆虫細胞、好ましくは鳥類細胞である、先行項目のいずれかに記載の方法、使用、またはシステム。
22.前記宿主細胞は、懸濁培養において培養される、先行項目のいずれかに記載の方法、使用、またはシステム。
23.前記培養は、使い捨て生物反応器、好ましくはウェーブ生物反応器内である、先行項目のいずれかに記載の方法、使用、またはシステム。
24.前記宿主細胞は、溶解、好ましくは低張溶解によって、前記フィルタユニット内/上で破壊される、先行項目のいずれかに記載の方法、使用、またはシステム。
25.発現産物は、回収のために溶出される、先行項目のいずれかに記載の方法、使用、またはシステム。
26.宿主細胞を収集するためのフィルタユニットは、デプスフィルタである、先行項目のいずれかに記載の方法、使用、またはシステム。
27.前記回収された発現産物を精製するステップをさらに含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
28.前記精製するステップは、疎水性相互作用クロマトグラフィ、偽親和性クロマトグラフィ、アニオン交換クロマトグラフィ、および/またはサイズ排除クロマトグラフィから成る群より選択される、クロマトグラフィステップを含む、項目27に記載の方法。
29.項目1〜8および19〜28のいずれか1つに記載の方法のステップを含む、薬学的組成物の産生のための方法であって、前記方法によって回収される発現産物を、薬学的に許容可能な担体とともに製剤化するステップをさらに含む、方法。
30.項目1〜8または19〜28のいずれかに記載の方法によって取得可能な発現産物。