JP5944114B2 - 熱可塑等方性プリプレグ - Google Patents

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Description

本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成される複合材料に関するものである。本発明は、熱可塑性樹脂をマトリクスにした従来の複合材料では得られなかった機械物性と成形性に優れ等方性を維持したまま型内で流動させ成形することのできるプリプレグ、およびそれを成形して得られる成形体に関するものである。
強化繊維、なかでも炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化熱可塑性樹脂成形体は、比強度、比剛性に優れているため、電気・電子用途、土木・建築用途、自動車用途、航空機用途等に広く用いられている。しかしながら、熱可塑性樹脂は、一般的に熱硬化性樹脂と比較して粘度が高く、そのため、繊維基材に樹脂を含浸させる時間が長く、結果として成形までのタクトが長くなるという問題があった。
これらの問題を解決する手法として、熱可塑スタンピング成形(TP−SMC)と呼ばれる手法が提案されている(例えば特許文献1)。これは、予め熱可塑性樹脂を含浸させたチョップドファイバーを融点以上に加熱し、これを金型内の一部に投入した後、直ちに型を閉め、型内にて繊維と樹脂を流動させる事により製品形状を得、冷却・脱型するという成形方法である。この手法では、予め樹脂を含浸させた繊維を用いる事により、約1分程度という短い時間で成形が可能である。これらはSMCやスタンパブルシートと呼ばれるような成形材料とする方法であって、かかる熱可塑スタンピング成形では、型内で繊維と樹脂を流動させるために、繊維が流動方向に配向し、等方性を維持した成形品を得るのが困難であるという問題があった。
また熱可塑性樹脂をマトリクスとする複合材料について、強化繊維含む長繊維ペレットを射出成形する技術も提案されているが(特許文献2)、長繊維ペレットとはいえペレットの長さに制限があり、さらに混練により熱可塑性樹脂中で強化繊維が切断されてしまい強化繊維の長さを保てないなどの課題があった。またこのような射出成形による成形方法では、バリや端材の発生は低減できるが、スプルーやランナーといった不要な部位が生まれ、また金型内に充填する際に強化繊維が配向してしまい等方性のものが得られない等の課題があった。
特許第4161409号公報 特開平9−286036号公報
本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成される複合材料に関するものである。本発明は、熱可塑性樹脂をマトリクスにした従来の複合材料では得られなかった機械物性に優れた複合材料を提供しようとするものである。またさらに本発明は、金型への基材のチャージ率を100%以下とし成形時に金型内部で基材を流動させても、等方性を維持することが可能な複合材料を提供しようとするものである。
本発明者らは強化繊維の面配向性が高い複合材料基材を成形することで標記課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は、繊維長10mm超100mm以下の強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、強化繊維が炭素繊維であり、下記式(1)で定義される面配向度σが90%以上となり、強化繊維として下記式(3)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)と、それ以外の単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される強化繊維束を含むことを特徴とする厚み1.0〜100.0mmの板状の熱可塑等方性プリプレグ、およびそれを成形して得られる成形体である。
面配向度 σ=100×(1−(面配向角γが10°以上の繊維本数)/(全繊維本数)) (1)
面配向角γは下記式(2)で定義される。
(φ:強化繊維の平均繊維径 R:強化繊維断面の長径 α:強化繊維断面の長径と成形板表面が成す角)
臨界単糸数=600/D (3)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
本発明のプリプレグは、等方性を維持したまま型内で流動させ成形することができ、等方性に優れた成形体が提供できる。本発明のプリプレグを用いて、機械物性を落とすことなく成形時のバリや端材を低減し、トリミングなどの工程を省いて成形することが可能である。
本発明のプリプレグを成形して得られる成形体は高い機械強度を発現し、また薄肉化や等方化が可能であるので、各種構成部材、例えば自動車の内板、外板、構造部材、また各種電気製品、機械のフレームや筐体等に用いることができる。
プリプレグの断面の模式図 プリプレグの断面の顕微鏡観察例 面配向度σの算出法の説明 面配向度σの算出法の説明
以下に、本発明の実施の形態について順次説明する。
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、繊維長10mm超100mm以下の強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、下記式(1)で定義される面配向度σが90%以上となることを特徴とする厚み1.0〜100.0mmの板状の熱可塑等方性プリプレグである。
面配向度 σ=100×(1−(面配向角γが10°以上の繊維本数)/(全繊維本数)) (1)
面配向角γは下記式(2)で定義される。本発明のプリプレグのプリプレグの断面模式図を図1、ならびにプリプレグの断面を研磨し顕微鏡にて観察した顕微鏡観察例を図2に示す。式(2)のφはプリプレグの製造に使用した強化繊維単糸の平均繊維径であり、Rは楕円形に見える強化繊維単糸断面の長径である。角αは平板状のプリプレグの表面を基準面としたときの基準面と長径Rとの成す角である。この式(2)から、平板状のプリプレグ内の繊維が厚み方向に持っている角度である面配向角を求めることができる(図3、4参照)。
(φ:強化繊維の平均繊維径、R:強化繊維断面の長径、α:強化繊維断面の長径と成形板表面が成す角)
面配向度σが高いほど、プリプレグ内の繊維の面内配向割合が高いことを表す。好ましくは面配向度σが93%以上であり、面配向度σの上限値は100%である。面配向度σが90%以上であることで成形時に金型内部で基材を流動させた場合に流動抵抗を少なくすることができる。また、流動抵抗が小さいことで、流動時に繊維配向が乱れにくくなり、等方性が維持されやすくなる。
このような面配向度を満たす熱可塑等方性プリプレグは、後述する好ましい製造方法のうち、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットの開繊工程および塗布工程、および含浸プレス工程で適宜制御することができる。特に塗布工程で制御できる。
プリプレグの厚みに特に限定は無いが、好ましくは0.25〜30mmであり、より好ましくは0.5〜20mmである。プリプレグの厚みは1〜10mmが最も好ましい。プリプレグの厚みが0.25mm未満となると、例えばコールドプレス成形法で成形する際の基材セット時に、予備加熱したプリプレグが冷えやすく十分に成形できない虞がある。また、プリプレグの厚みが30mmを超えると生産が難しいだけでなく、成形工程に時間を要して量産も困難になる場合がある。
本発明のプリプレグは、等方性を維持したまま型内で流動させ成形することができ、等方性に優れた成形体が提供できることを特徴とする。成形体の等方性は、例えば任意の方向、及びこれと直交する方向についてそれぞれ引張り試験を行って引張弾性率を測定することで評価でき、弾性率の比が1に近いほど、等方性に優れる材料である。
[強化繊維]
本発明のプリプレグを構成する強化繊維としては特に制限はないが、炭素繊維、アラミド繊維、およびガラス繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種が強度・剛性が求められる用途において好ましく、炭素繊維がより好ましい。
プリプレグを構成する強化繊維は不連続であり、繊維長10mm超100mm以下である。本発明のプリプレグは、ある程度長い強化繊維を含んで強化機能が発現できることを特徴とし、好ましくは強化繊維の繊維長が15mm以上100mm以下であり、より好ましくは15mm以上80mm以下であり、さらには20mm以上60mm以下が好ましい。マトリクス樹脂が熱可塑性樹脂であって、熱プレス等で成形できることから、後述する好ましい製造方法により混練せずに複合材料を得ることができる。そのため、用いた強化繊維の長さを成形体中で保つことが可能であり、優れた物性を有する複合材料が好ましく提供できる。
炭素繊維の場合、好ましくは平均繊維径が3〜12μmであり、より好ましくは5〜7μmである。
強化繊維はサイジング剤が付着されたものを用いることが好ましく、サイジング剤は強化繊維100重量部に対し、0〜10重量部であることが好ましい。
[熱可塑性樹脂]
本発明のプリプレグにおける熱可塑性樹脂の存在割合は、強化繊維100重量部に対し、50〜1000重量部であることが好ましい。より好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜500重量部、さらに好ましくは強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜100重量部である。
熱可塑性樹脂の種類としては例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などが挙げられる。
[ランダムマット]
本発明のプリプレグは、好ましくは繊維長10〜100mmの強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、強化繊維が25〜3000g/mの目付けにて実質的に2次元ランダムに配向しているランダムマットに樹脂を含浸して得られる。
本発明のプリプレグを得るためのランダムマットは、式(3)
臨界単糸数=600/D (3)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
で定義する臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合が体積分率で30%以上から90%未満であることが好ましい。この場合、具体的にはマット中には、強化繊維束(A)以外の強化繊維として、単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される繊維束が存在する。
すなわち、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットには、平均繊維径に基づき定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束の割合を体積分率30%以上から90%未満の強化繊維の開繊程度をコントロールし、特定本数以上の強化繊維からなる強化繊維束と、それ以外の開繊された強化繊維を特定の比率で含むことが好ましい。
繊維全量に対する強化繊維束(A)の割合が体積分率で30%未満になると、本発明のプリプレグを成形した際に、機械物性に優れた繊維強化複合材料が得にくくなる。強化繊維束(A)の割合が体積分率で90%以上になると、繊維の交絡部が局部的に厚くなり、厚みムラや繊維の局所的な偏りが生まれる。強化繊維束(A)の割合はより好ましくは体積分率で30%以上から80%未満である。
さらに臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が下記式(4)
0.7×10/D<N<6×10/D (4)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
を満たすことが好ましい。
具体的には、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを構成する炭素繊維の平均繊維径が5〜7μmの場合、臨界単糸数は86〜120本となり、炭素繊維の平均繊維径が5μmの場合、繊維束中の平均繊維数は280〜2000本の範囲となるが、なかでも600〜1600本であることが好ましい。炭素繊維の平均繊維径が7μmの場合、繊維束中の平均繊維数は142〜1020本の範囲となるが、なかでも300〜800本であることが好ましい。
強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が0.7×10/D以下の場合、高い繊維体積含有率(Vf)を得る事が困難となる。また強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が6.0×10/D以上の場合、局部的に厚い部分が生じ、ボイドの原因となりやすい。1mm以下の薄肉な複合材料を得ようとした場合、単純に分繊しただけの繊維を用いたのでは、疎密が大きく、良好な物性が得られない。又、全ての繊維を開繊した場合には、より薄いものを得る事は容易になるが、繊維の交絡が多くなり、繊維体積含有率の高いものが得られない。式(1)で定義される臨界単糸以上の強化繊維束(A)と、単糸の状態又は臨界単糸数未満の強化繊維(B)が同時に存在するランダムマットにより、面配向性が高く、嵩の小さい本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを得る事が可能である。このランダムマットを用いて熱プレスすることで1.0mm〜100.0mmの本発明の熱可塑等方性プリプレグを得ることが出来る。
この強化繊維束(A)中の平均繊維数は後述するような好ましい製造方法のカット工程、並びに開繊工程にて制御できる。
本発明のプリプレグを得るためのランダムマットは固体の熱可塑性樹脂を含む。このランダムマットにおいては、熱可塑性樹脂が、繊維状および/または粒子状で存在することが好ましい。強化繊維と繊維状および/または粒子状の熱可塑性樹脂が混合して存在していることにより、型内で繊維と樹脂を流動させる必要がなく、成形時に熱可塑性樹脂を容易に含浸できることを特徴とする。相溶するものであれば、熱可塑性樹脂の種類を2種以上とすることもでき、また繊維状と粒子状のものを併用してもよい。
熱可塑性樹脂が繊維状の場合、繊度100〜5000dtexのもの、より好ましくは繊度1000〜2000dtexのものがより好ましく、平均繊維長としては0.5〜50mmが好ましく、より好ましくは平均繊維長1〜10mmである。
熱可塑性樹脂が粒子状の場合、球状、細片状、あるいはペレットのような円柱状が好ましく挙げられる。球状の場合は、真円または楕円の回転体、あるいは卵状ような形状が好ましく挙げられる。球とした場合の好ましい平均粒子径は0.01〜1000μmである。より好ましくは平均粒子径0.1〜900μmものがより好ましく、更に好ましくは平均粒子径1〜800μmものがより好ましい。粒子径分布についてはとくに制限はないが、分布シャープなものがより薄い成形体を得る目的としてはより好ましいが、分級等の操作により所望の粒度分布として用いる事が出来る。
熱可塑性樹脂が細片状の場合、ペレットのような円柱状や、角柱状、リン片状が好ましい形状として挙げられる。この場合ある程度のアスペクト比を有しても良いが、好ましい長さは上記の繊維状の場合と同程度とする。
本発明のプリプレグ中には、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス繊維や有機繊維等の各種繊維状または非繊維状フィラー、難燃剤、耐UV剤、顔料、離型剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤の添加剤を含んでいてもよい。
[製造方法]
以下本発明のプリプレグを好ましく得る方法について述べる。本発明のプリプレグは以下の工程1〜5より、好ましく製造することができる。
1.強化繊維をカットする工程、
2.カットされた強化繊維を管内に導入し、空気を強化繊維に吹き付ける事により、繊維束をある程度バラバラに開繊させる工程、
3.開繊させた強化繊維を拡散させると同時に、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とともに吸引し、強化繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程、
4.塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を定着させ、ランダムマットを得る工程。
5.ランダムマットを熱プレスしてプリプレグを得る工程。
以下それぞれの工程について詳述する。
[1.カット工程]
強化繊維のカット工程は、ロータリーカッター等のナイフを用いて強化繊維をカットする工程である。ロータリーカッターとしては、繊維束を1/2〜1/20程度に分繊してカットする、分繊カッターを用いる事が好ましい。ロータリー分繊カッターは本体に沿って複数の刃が等間隔かつ螺旋状に配置されているものである。従来のカッターのように、繊維束をそのままカットし、塗布する手法では、薄く、物性に優れる複合材料を得る事が難しい。繊維束をより細い束に分けながらカットする事により、工程4で得られるランダムマットの均質性が向上し、薄いランダムマットを得る事が可能となり、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを好適に得ることができる。強化繊維を連続的にカットするためのナイフ角度は特に限定されるものではなく、一般的な、繊維に対し、90度の刃を用いても、角度を持たせたものでも構わない。
[2.開繊工程]
次いでカットされた強化繊維を管内に導入し、空気を繊維に吹き付ける事により、繊維束をバラバラに開繊させる。より具体的にはカットされた強化繊維を連続的に管内に導入し、圧力空気を直接繊維に吹き付ける事により、繊維束をバラバラに開繊させる工程である。開繊の度合いについては、空気の圧力等により適宜コントロールする事が出来る。
好ましい強化繊維の開繊方法は、圧縮空気を直接強化繊維に吹き付ける方法である。具体的には圧縮空気吹き付け孔より、好ましくは風速5〜500m/secにて空気を吹き付ける事により、強化繊維を開繊させる事ができる。好ましくは強化繊維の通る管内にΦ1mm程度の孔を数箇所あけ、外側より0.01〜0.8MPa程度の圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより、繊維束を任意の開繊度まで開繊する事ができる。
[3.塗布工程]
次いで開繊させた強化繊維を拡散させると同時に、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とともに吸引し、強化繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程を行う。開繊させた強化繊維と、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とを同時に、シート上に塗布することで、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを好適に得ることができる。
塗布工程において、熱可塑性樹脂の供給量は、強化繊維100重量部に対し、50〜1000重量部であることが好ましい。より好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜400重量部、更に好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜100重量部である。
塗布工程において、強化繊維および熱可塑性樹脂の供給量を適宜選択することで所望の厚さのものを得ることができる。
ここで、強化繊維と、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂は2次元配向する様に散布することが好ましい。開繊した強化繊維を2次元配向させながら塗布するためには、塗布方法及び下記の定着方法が重要となる。強化繊維の塗布方法には、円錐形等のテーパ管を用いることが好ましい。円錐等の管内では、空気が拡散し、管内の流速が減速し、このとき強化繊維には回転力が与えられる。このベンチュリ効果を利用して開繊させた強化繊維を好ましく拡散させ散布することができる。
開繊装置下部に設けた通気性シート上に塗布することが好ましい。また下記の定着工程のためにも、吸引機構を持つ可動式の通気性シート上に散布することが好ましい。また、通気性シート上の吸引風速を開繊装置直下とその周囲で差をつけることでより繊維を面配向させることがより好ましい。本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを好ましく得るためには、吸引風速を開繊および塗布の風速に比べて大きくする方法が好ましく挙げられる。
[4.定着工程]
次いで塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を定着させ、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを得る。具体的には、塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を通気性シート下部よりエアを吸引して強化繊維を定着させ、ランダムマットを得る。強化繊維と同時に散布された熱可塑性樹脂は混合されつつ、繊維状であればエア吸引により、パウダー状であっても強化繊維に伴って定着される。
具体的には通気性のシートを通して、下部より吸引する事により、2次元配向のランダムマットを得る事ができる。又、発生する負圧を用いてパウダー状、又は短繊維状の熱可塑性樹脂を吸引し、更に、管内で発生する拡散流により、強化繊維と容易に混合する事ができる。得られるランダムマットは、強化繊維の近傍に熱可塑性樹脂が存在する事により、下記の熱プレス工程において、樹脂の移動距離が短く、比較的短時間で樹脂の含浸が可能となる。
ランダムマットの厚みは1〜200mmが好ましく、より好ましくは2〜150mmであり、3〜100mmが最も好ましい。ランダムマットの厚みが1mm未満になると強化繊維の密度がばらつきやすくなり、目隙が生じる虞がある。また、ランダムマットの厚みが200mmを超えると生産が難しくなるだけでなく、取扱い性も極端に悪くなる。
[5.熱プレス]
次いで、得られたランダムマットを熱プレスすることにより、本発明のプリプレグを得ることができる。
熱プレスの方法および条件にはとくに制限はないが、熱可塑性樹脂マトリックスが結晶性樹脂の場合は融点+80℃以下または分解温度以下の条件、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度+200℃以下または分解温度以下の条件にて熱プレスすることが好ましい。
プリプレグを得るための熱プレス工程における圧力条件はとくに限定はないが、圧力は0.5MPa以上10.0MPa以下が好ましく、より好ましくは1.0MPa以上5.0MPa以下である。0.5MPa未満の圧力ではランダムマット全体に樹脂が行き渡らず含浸不良となり、圧力を10.0MPaより大きくすると含浸不良はなくなるがランダムマットが型内から溢れ、所定の厚みのプリプレグが得られなくなる虞がある。また、加圧時間は30秒から20分が好ましく、1分から10分がより好ましい。加圧時間が30秒より短いとランダムマット全体に樹脂が行き渡らず含浸不良となり、20分より長く加圧を続けると、樹脂が分解し分解ガスによる気泡などが発生し、ボイドあるいは外観不良となる虞がある。
[成形体]
本発明のプリプレグを用いて、等方性に優れた成形体が提供できる。得られた成形体は、任意の方向、及びこれと直交する方向についての引張弾性率の比(Eδ)が1.3を超えないことが好ましい。すなわち本発明は、任意の方向、及びこれと直交する方向についての引張弾性率の大きい方の値を小さい方の値で割った比(Eδ)が1.0から1.3となる、上記のプリプレグを成形して得られる成形体を包含する。
本発明のプリプレグを用いた成形法としては、好ましくは、プリプレグを、マトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合は融点+80℃以内または分解温度以下、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度+200℃以内または分解温度以下に短時間で予備加熱した後、結晶性樹脂の場合は融点、非晶性樹脂の場合は軟化点より低い温度の型内に設置して加圧することで、所望の厚さの成形体を得る方法(コールドプレス)が挙げられる。このとき、型の形状等を選択することにより、三次元形状等の所望する形状の成形体を得ることも出来る。
また、成形体を得る際に、本発明の熱可塑等方性プリプレグの等方性を維持したまま流動させて型内に充填することも可能である。下記式(5)
チャージ率(%)=100×基材面積(mm)/金型キャビティ総面積(mm) (5)
で定義されるチャージ率で20〜80%、好ましくは40〜80%、さらに好ましくは60〜80%となるように、マトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合は融点+80℃以内または分解温度以下、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度+200℃以内または分解温度以下に予備加熱した熱可塑等方性プリプレグを型内に設置し、加圧することで所望した形状の成形体を得ることができる。
またこのとき、クローズドキャビティの型を用いることで、型内に熱可塑等方性プリプレグが完全に充填され、端材が発生せず、バリの少ない成形物が得られる。また、設置するプリプレグの目付けや、場合によっては積層して調整することで、成形物の厚みも容易に制御できる。
コールドプレスの条件については特に制限はない。プレス圧力およびプレス時間も適宜選択できるが、圧力は1.0MPa以上40MPa以下、プレス時間は10秒以上90秒以下とすることが好ましい。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
[熱可塑等方性プリプレグ中の面配向度の分析]
本発明の熱可塑等方性プリプレグの一部を切断し、その断面部を鏡面研磨した。
研磨した断面部を100倍から500倍程度のレンズで顕微鏡にて観察し、
楕円形状に見える強化繊維断面の長径Rと、その長径と基準面である平面部とのなす角α(°)を測定し、
単糸まで開繊された強化繊維はそのまま長径Rと角αを測定し、束になっている部分を測定する場合は、束の代表値として1点だけ取り、無作為に100点以上測定し、式(2)からそれぞれの繊維の面配向角γを算出し、配向度σ(%)を求めた。
配向度 σ=100×(1−(面配向角γが10°以上の繊維本数)/(全繊維本数)) (1)
(φ:強化繊維の平均繊維径、R:強化繊維断面の長径、α:強化繊維断面の長径と成形板表面が成す角)
[ランダムマットにおける強化繊維束の分析]
強化繊維束(A)のマットの繊維全量に対する割合の分析は、以下の通りに行った。
ランダムマットを100mm×100mmに切り出し、厚み(Ta)と重量を測定した(Wa)。
切り出したマットより、繊維束をピンセットで全て取り出し、繊維束を太さ毎に分類した。本実施例では分類は、太さ0.2mm程度単位で分類した。
分類毎に、全ての繊維束の長さ(Li)と重量(Wi)、繊維束数(I)を測定し、記録した。ピンセットにて取り出す事ができない程度に繊維束が小さいものについては、まとめて最後に重量を測定した(Wk)。このとき、1/1000gまで測定可能な天秤を用いた。なお、特に強化繊維を炭素繊維とした場合や、繊維長が短い場合には、繊維束の重量が小さく、測定が困難であったので、こういった場合には、分類した繊維束を複数本まとめて重量を測定した。
測定後、以下の計算を行う。使用している強化繊維の繊度(F)より、個々の繊維束の繊維本数(Ni)は次式により求めた。
Ni=Wi/(Li×F)。
強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は以下の式により求めた。
N=ΣNi/I
また、個々の繊維束の体積(Vi)及び、強化繊維束(A)の繊維全体に対する割合(VR)は、使用した強化繊維の繊維比重(ρ)を用いて次式により求めた。
Vi=Wi/ρ
VR=ΣVi/Va×100
ここで、Vaは切り出したマットの体積であり、Va=100×100×Ta
[プリプレグおよび成形体における強化繊維束分析]
本発明のプリプレグおよび本発明のプリプレグを成形することで得られた成形体については、500℃×1時間程度、炉内にて樹脂を分解除去した後、上記のランダムマットにおける方法と同様にして測定した。
[流動性の評価方法]
300mm×300mmの正方形にカットした熱可塑性プリプレグを熱風循環式加熱炉を用いて、マトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合は融点+80℃以内または分解温度以下、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度+200℃以内または分解温度以下に加熱し、結晶性樹脂の場合は融点、非晶性樹脂の場合は軟化点より低い温度の平板状の型内に設置して型を閉じ、130Tonの荷重を与えて型内で流動させた。この時、流動により広がった面積から、実際の成形に利用できる適用可能チャージ率を式(6)で算出した。
(適用可能チャージ率)=(成形前のプリプレグの面積)/(成形後の成形体の面積)×100 (6)
適用可能チャージ率は実際の成形時にそのプリプレグがどの程度の低さのチャージ率まで良好な成形品が得られるかの指標となる。例えば、適用可能チャージ率が50%であれば、良好な成形体を得るために成形時に下記式(5)
チャージ率(%)=100×基材面積(mm)/金型キャビティ総面積(mm) (5)
で求められるチャージ率が50%以上必要であり、それ未満のチャージ率では、流動不足となり、金型の端まで樹脂と強化繊維が充填された良好な成形体が得られない。適用可能チャージ率は、値が小さいほど流動性が大きく、低チャージ率でも良好な成形体が得られる。
[成形体における繊維配向の分析]
本発明のプリプレグから得られた成形体の繊維の等方性を測定する方法としては、成形板の任意の方向、及びこれと直交する方向についてそれぞれ引張り試験を行って引張弾性率を測定し、その値のうち大きいものを小さいもので割った比(Eδ)を算出する事で確認した。弾性率の比が1に近いほど、等方性に優れる材料である。本実施例および比較例では、Eδが1.3を超えないものを、等方性であるとした。
[実施例1]
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を使用した。カット装置には、超硬合金を用いて螺旋状ナイフを表面に配置したロータリーカッターを用いた。このとき、下記式(7)
強化繊維の繊維長(刃のピッチ)=強化繊維ストランド幅×tan(90−θ) (7)
(ここで、θは周方向とナイフのなす角である。)
におけるθは17度、刃のピッチを20mmとし、強化繊維を繊維長20mmにカットした。開繊装置として、径の異なるSUS304製のニップルを溶接し、二重管を製作した。内側の管に小孔を設け、外側の管との間にコンプレッサーを用いて圧縮空気を送気した。この時、小孔からの風速は、450m/secであった。この管をロータリーカッターの直下に配置し、さらに、その下部にはテーパ管を溶接した。テーパ管の側面より、マトリックス樹脂を供給し、このマトリックス樹脂として、帝人化成社製のポリカーボネート“パンライト”(登録商標)L−1225Lペレットを冷凍粉砕し、更に、20メッシュ、及び100メッシュにて分級した粒子を用いた。ポリカーボネートパウダーの平均粒径は約710μmであった。次に、テーパ管出口の下部に、XY方向に移動可能なテーブルを設置し、テーブル下部よりブロワにてテーパ管からの塗布風量より大きい風量になるよう吸引を行った。そして、強化繊維の供給量を900g/min、マトリックス樹脂の供給量を2700g/min、にセットし、装置を稼動したところ、強化繊維と熱可塑性樹脂が混合された、厚み6mm程度のランダムマットを得た。得られたランダムマットの強化繊維の目付け量は、1000g/mであった。
得られたランダムマットについて、強化繊維束(A)の割合と、平均繊維数(N)を調べたところ、式(1)で定義される臨界単糸数は86であり、強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合は35%、強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は240であった。また、ポリカーボネートパウダーは、強化繊維中に大きな斑が無い状態で分散されていた。
得られたランダムマットを3層積層し、300℃に加熱したプレス装置にて、1MPaにて3分間加熱し、厚さ6.1mmの熱可塑等方性プリプレグを得た。得られたプリプレグ中の繊維の体積含有率は30%であった。得られたプリプレグについて超音波探傷試験を行ったところ、未含浸部やボイドは確認されなかった。
得られた熱可塑等方性プリプレグの面配向度を断面観察により測定したところ、面配向度σは97%となり、非常に面配向性の高いプリプレグが得られた。
得られたプリプレグの0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.03であり、繊維配向は殆ど無く、等方性の材料を得る事ができた。
得られたプリプレグを、300mm×300mmの正方形にカットしたものを熱風循環式加熱炉を用いて表面温度が270℃になるまで加熱し、加熱したプリプレグの5倍の投影面積をもつ、120℃に設定した平面の金型に配置し、130Tonの荷重を加えて流動させたところ、プレス前の3.1倍の投影面積の成形体が得られた。このとき式(6)より求めた適用可能チャージ率は32%であった。
得られた成形体の流動して出来た部分の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.14であり、繊維配向は殆ど無いことが確認できた。上記から、この基材は良好な流動性と、成形物全体の等方性を併せ持つプリプレグであることが確認できた。
[実施例2]
ランダムマット作製時の繊維供給量を1000g/min、マトリックス樹脂供給量を3000g/minとした以外は実施例1と同様の方法でランダムマットを作製した。得られたランダムマットの目付は1100g/mであった。
得られたランダムマットについて、強化繊維束(A)の割合と、平均繊維数(N)を調べたところ、式(1)で定義される臨界単糸数は86であり、強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合は35%、強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は240であった。また、ポリカーボネートパウダーは、強化繊維中に大きな斑が無い状態で分散されていた。
得られたランダムマットを、300℃に加熱したプレス装置にて、1MPaにて3分間加熱し、厚さ2.1mmの熱可塑等方性プリプレグを得た。得られたプリプレグ中の繊維の体積含有率は30%であった。得られたプリプレグについて超音波探傷試験を行ったところ、未含浸部やボイドは確認されなかった。
得られた熱可塑等方性プリプレグの面配向度を断面観察により測定したところ、面配向度σは98%となり、非常に面配向性の高いプリプレグが得られた。
得られたプリプレグを、300mm×300mmの正方形にカットしたものを熱風循環式加熱炉を用いて表面温度が270℃になるまで加熱し、加熱したプリプレグの5倍の投影面積をもつ、120℃に設定した平面の金型に配置し、130Tonの荷重を加えて流動させたところ、プレス前の1.3倍の投影面積の成形体が得られた。このとき式(6)より求めた適用可能チャージ率は76%であった。
得られた成形体の流動して出来た部分の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.18であり、繊維配向は殆ど無いことが確認できた。上記から、この基材は良好な流動性と、成形物全体の等方性を併せ持つプリプレグであることが確認できた。
[実施例3]
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)IMS60−12K(平均繊維径5μm、繊維幅6mm)を使用した。カット装置には、超硬合金を用いて螺旋状ナイフを表面に配置したロータリーカッターを用いた。このロータリーカッターには、繊維束を小型化する目的で、繊維方向に平行な刃を0.5mm間隔で設けた。このとき、上記式(7)中のθは17度、刃のピッチを20mmとし、強化繊維を繊維長20mmにカットした。開繊装置として、小孔を有した管を用意し、コンプレッサーを用いて圧縮空気を送気した。小孔からの風速は、150m/secとした。この管をロータリーカッターの直下に配置し、さらに、その下部にはテーパ管を溶接した。テーパ管の側面より、マトリックス樹脂を供給し、このマトリックス樹脂として、2mmにドライカットしたPA66繊維(旭化成せんい製 T5ナイロン 繊度1400dtex)を用いた。次に、テーパ管出口の下部に、XY方向に移動可能なテーブルを設置し、テーブル下部よりブロワにてテーパ管からの塗布風量より大きい風量になるよう吸引を行った。そして、強化繊維の供給量を1200g/min、マトリックス樹脂の供給量を2500g/min、にセットし、装置を稼動したところ、強化繊維とポリアミドが混合された厚み10mm程度のランダムマットを得た。強化繊維の目付け量1200g/mであった。
得られたランダムマットについて、強化繊維束(A)の割合と、平均繊維数(N)を調べたところ、式(1)で定義される臨界単糸数は120であり、強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合は86%、強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は900であった。また、ナイロン繊維は、強化繊維中に大きな斑が無い状態で分散されていた。
得られたランダムマットを3層積層し、280℃に加熱したプレス装置にて、3.0MPaにて3分間加熱し、厚さ6.2mmの成形板を得た。得られた複合材料について超音波探傷試験を行ったところ、未含浸部やボイドは確認されなかった。
得られた熱可塑等方性プリプレグの面配向度を断面観察により測定したところ、面配向度σは95%となり、非常に面配向性の高いプリプレグが得られた。
得られた成形板の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.07であり、繊維配向は殆ど無く、等方性が維持された材料を得る事ができた。
得られたプリプレグを、300mm×300mmの正方形にカットしたものを熱風循環式加熱炉を用いて表面温度が280℃になるまで加熱し、加熱したプリプレグの5倍の投影面積をもつ、140℃に設定した平面の金型に配置し、130Tonの荷重を加えて流動させたところ、プレス前の2.9倍の投影面積の成形体が得られた。このとき式(6)より求めた適用可能チャージ率は34%であった。
得られた成形体の流動して出来た部分の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.18であり、繊維配向は殆ど無いことが確認できた。上記から、この基材は良好な流動性と、成形物全体の等方性を併せ持つプリプレグであることが確認できた。
[比較例1]
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を、マトリックス樹脂として、帝人化成社製のポリカーボネート“パンライト”(登録商標)L−1225Lペレットを使用した。炭素繊維を、300℃に保持された恒温槽中にセットしたポリカーボネート樹脂(幅10cm×長さ30cm)に30cm/分で連続的に浸漬し、樹脂浴の出側で絞りローラー3により余剰の樹脂を絞り取った後、空冷しワインダーで巻き取った。得られた炭素繊維強化帯状プリプレグにおける炭素繊維の体積含有率は30%であった。
得られた帯状プリプレグを20mmに連続的にカットしてフレーク状のものを得て、300℃に加熱したプレス装置にて、2.5MPaにて7分間加熱し、厚さ6mmの熱可塑性スタンパブルシートを得た。
このときの平均繊維数Nは、炭素繊維束を開繊していないため24000であった。
得られたスタンパブルシートについて超音波探傷試験を行ったが、未含浸部やボイドは観測されなかった。
得られたスタンパブルシートの面配向度を断面観察により測定したところ、面配向度σは81%となり、厚み方向の配向を持つ繊維が多いことが確認できた。また、断面観察から、樹脂と繊維の分布にムラが散見された。
得られたスタンパブルシートの0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.14であり、繊維配向の偏りが少ない材料を得る事ができた。
得られたスタンパブルシートを、300mm×300mmの正方形にカットしたものを熱風循環式加熱炉を用いて表面温度が270℃になるまで加熱し、3枚積層して、120℃に加熱した加熱したプリプレグの5倍の投影面積をもつ平面の金型に配置し、130Tonの荷重を加えて流動させたところ、プレス前の1.8倍の投影面積の成形体が得られた。このとき式(6)から、適用可能チャージ率56%であった。
得られた成形体の流動して出来た部分の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は2.06となった。上記から、この基材は良好な流動性を示すが、流動させることで繊維配向に偏りが生じ等方性が損なわれる基材であることが確認できた。
1 マトリックス樹脂
2 強化繊維断面
3 長径R
4 角α

Claims (8)

  1. 繊維長10mm超100mm以下の強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、強化繊維が炭素繊維であり、下記式(1)で定義される面配向度σが90%以上となり、強化繊維として下記式(3)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)と、それ以外の単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される強化繊維束を含むことを特徴とする厚み1.0〜100.0mmの板状の熱可塑等方性プリプレグ。
    面配向度 σ=100×(1−(面配向角γが10°以上の繊維本数)/(全繊維本数)) (1)
    面配向角γは下記式(2)で定義される。
    (φ:強化繊維の平均繊維径 R:強化繊維断面の長径 α:強化繊維断面の長径と成形板表面が成す角)
    臨界単糸数=600/D (3)
    (ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
  2. 化繊維が25〜3000g/mの目付けにて2次元ランダムに配向している請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 下記式(3)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、強化繊維全量に対する割合が体積分率で30%以上から90%未満である請求項1または2に記載のプリプレグ。
    臨界単糸数=600/D (3)
    (ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
  4. 強化繊維として、太さ0.2mm単位で分類される、異なった太さの強化繊維束を含む請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
  5. 強化繊維の繊維体積含有率が17.3%以下のものを除く、請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
  6. 任意の方向、及びこれと直交する方向についての引張弾性率の大きい方の値を小さい方の値で割った比(Eδ)が1.0から1.3となる、請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ
  7. 以下1〜5の工程を含む請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
    1.強化繊維をカットする工程、
    2.カットされた強化繊維を、下部に円錐形のテーパ管が溶接された管内に導入し、空気を強化繊維に吹き付ける事により、繊維束をバラバラに開繊させる工程、
    3.ベンチュリー効果を利用して開繊され、テーパ管内にて空気の拡散による回転力が与えられた強化繊維を拡散させると同時に、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とともに吸引し、強化繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程、
    4.塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を定着させ、ランダムマットを得る工程。
    5.ランダムマットを熱プレスしてプリプレグを得る工程。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグを、マトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合は融点以上、融点+80℃以下または分解温度以下、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上、ガラス転移温度+200℃以下または分解温度以下に加熱し、結晶性樹脂の場合は融点、非晶性樹脂の場合は軟化点より低い温度の型内に、下記式(5)で算出されるチャージ率20〜80%で設置して型を閉じ加圧する成形体の製造方法。
    チャージ率(%)=100×基材面積(mm )/金型キャビティ総面積(mm ) (5)
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