JP5944114B2 - 熱可塑等方性プリプレグ - Google Patents
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Description
面配向角γは下記式(2)で定義される。
臨界単糸数=600/D (3)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、繊維長10mm超100mm以下の強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、下記式(1)で定義される面配向度σが90%以上となることを特徴とする厚み1.0〜100.0mmの板状の熱可塑等方性プリプレグである。
面配向度 σ=100×(1−(面配向角γが10°以上の繊維本数)/(全繊維本数)) (1)
このような面配向度を満たす熱可塑等方性プリプレグは、後述する好ましい製造方法のうち、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットの開繊工程および塗布工程、および含浸プレス工程で適宜制御することができる。特に塗布工程で制御できる。
本発明のプリプレグを構成する強化繊維としては特に制限はないが、炭素繊維、アラミド繊維、およびガラス繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種が強度・剛性が求められる用途において好ましく、炭素繊維がより好ましい。
強化繊維はサイジング剤が付着されたものを用いることが好ましく、サイジング剤は強化繊維100重量部に対し、0〜10重量部であることが好ましい。
本発明のプリプレグにおける熱可塑性樹脂の存在割合は、強化繊維100重量部に対し、50〜1000重量部であることが好ましい。より好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜500重量部、さらに好ましくは強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜100重量部である。
本発明のプリプレグは、好ましくは繊維長10〜100mmの強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、強化繊維が25〜3000g/m2の目付けにて実質的に2次元ランダムに配向しているランダムマットに樹脂を含浸して得られる。
臨界単糸数=600/D (3)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
で定義する臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合が体積分率で30%以上から90%未満であることが好ましい。この場合、具体的にはマット中には、強化繊維束(A)以外の強化繊維として、単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される繊維束が存在する。
0.7×104/D2<N<6×104/D2 (4)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
を満たすことが好ましい。
この強化繊維束(A)中の平均繊維数は後述するような好ましい製造方法のカット工程、並びに開繊工程にて制御できる。
熱可塑性樹脂が繊維状の場合、繊度100〜5000dtexのもの、より好ましくは繊度1000〜2000dtexのものがより好ましく、平均繊維長としては0.5〜50mmが好ましく、より好ましくは平均繊維長1〜10mmである。
本発明のプリプレグ中には、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス繊維や有機繊維等の各種繊維状または非繊維状フィラー、難燃剤、耐UV剤、顔料、離型剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤の添加剤を含んでいてもよい。
以下本発明のプリプレグを好ましく得る方法について述べる。本発明のプリプレグは以下の工程1〜5より、好ましく製造することができる。
1.強化繊維をカットする工程、
2.カットされた強化繊維を管内に導入し、空気を強化繊維に吹き付ける事により、繊維束をある程度バラバラに開繊させる工程、
3.開繊させた強化繊維を拡散させると同時に、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とともに吸引し、強化繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程、
4.塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を定着させ、ランダムマットを得る工程。
5.ランダムマットを熱プレスしてプリプレグを得る工程。
[1.カット工程]
強化繊維のカット工程は、ロータリーカッター等のナイフを用いて強化繊維をカットする工程である。ロータリーカッターとしては、繊維束を1/2〜1/20程度に分繊してカットする、分繊カッターを用いる事が好ましい。ロータリー分繊カッターは本体に沿って複数の刃が等間隔かつ螺旋状に配置されているものである。従来のカッターのように、繊維束をそのままカットし、塗布する手法では、薄く、物性に優れる複合材料を得る事が難しい。繊維束をより細い束に分けながらカットする事により、工程4で得られるランダムマットの均質性が向上し、薄いランダムマットを得る事が可能となり、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを好適に得ることができる。強化繊維を連続的にカットするためのナイフ角度は特に限定されるものではなく、一般的な、繊維に対し、90度の刃を用いても、角度を持たせたものでも構わない。
次いでカットされた強化繊維を管内に導入し、空気を繊維に吹き付ける事により、繊維束をバラバラに開繊させる。より具体的にはカットされた強化繊維を連続的に管内に導入し、圧力空気を直接繊維に吹き付ける事により、繊維束をバラバラに開繊させる工程である。開繊の度合いについては、空気の圧力等により適宜コントロールする事が出来る。
好ましい強化繊維の開繊方法は、圧縮空気を直接強化繊維に吹き付ける方法である。具体的には圧縮空気吹き付け孔より、好ましくは風速5〜500m/secにて空気を吹き付ける事により、強化繊維を開繊させる事ができる。好ましくは強化繊維の通る管内にΦ1mm程度の孔を数箇所あけ、外側より0.01〜0.8MPa程度の圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより、繊維束を任意の開繊度まで開繊する事ができる。
次いで開繊させた強化繊維を拡散させると同時に、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とともに吸引し、強化繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程を行う。開繊させた強化繊維と、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とを同時に、シート上に塗布することで、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを好適に得ることができる。
塗布工程において、熱可塑性樹脂の供給量は、強化繊維100重量部に対し、50〜1000重量部であることが好ましい。より好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜400重量部、更に好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜100重量部である。
ここで、強化繊維と、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂は2次元配向する様に散布することが好ましい。開繊した強化繊維を2次元配向させながら塗布するためには、塗布方法及び下記の定着方法が重要となる。強化繊維の塗布方法には、円錐形等のテーパ管を用いることが好ましい。円錐等の管内では、空気が拡散し、管内の流速が減速し、このとき強化繊維には回転力が与えられる。このベンチュリ効果を利用して開繊させた強化繊維を好ましく拡散させ散布することができる。
次いで塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を定着させ、本発明のプリプレグを得るためのランダムマットを得る。具体的には、塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を通気性シート下部よりエアを吸引して強化繊維を定着させ、ランダムマットを得る。強化繊維と同時に散布された熱可塑性樹脂は混合されつつ、繊維状であればエア吸引により、パウダー状であっても強化繊維に伴って定着される。
次いで、得られたランダムマットを熱プレスすることにより、本発明のプリプレグを得ることができる。
熱プレスの方法および条件にはとくに制限はないが、熱可塑性樹脂マトリックスが結晶性樹脂の場合は融点+80℃以下または分解温度以下の条件、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度+200℃以下または分解温度以下の条件にて熱プレスすることが好ましい。
本発明のプリプレグを用いて、等方性に優れた成形体が提供できる。得られた成形体は、任意の方向、及びこれと直交する方向についての引張弾性率の比(Eδ)が1.3を超えないことが好ましい。すなわち本発明は、任意の方向、及びこれと直交する方向についての引張弾性率の大きい方の値を小さい方の値で割った比(Eδ)が1.0から1.3となる、上記のプリプレグを成形して得られる成形体を包含する。
チャージ率(%)=100×基材面積(mm2)/金型キャビティ総面積(mm2) (5)
で定義されるチャージ率で20〜80%、好ましくは40〜80%、さらに好ましくは60〜80%となるように、マトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合は融点+80℃以内または分解温度以下、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度+200℃以内または分解温度以下に予備加熱した熱可塑等方性プリプレグを型内に設置し、加圧することで所望した形状の成形体を得ることができる。
コールドプレスの条件については特に制限はない。プレス圧力およびプレス時間も適宜選択できるが、圧力は1.0MPa以上40MPa以下、プレス時間は10秒以上90秒以下とすることが好ましい。
[熱可塑等方性プリプレグ中の面配向度の分析]
本発明の熱可塑等方性プリプレグの一部を切断し、その断面部を鏡面研磨した。
研磨した断面部を100倍から500倍程度のレンズで顕微鏡にて観察し、
楕円形状に見える強化繊維断面の長径Rと、その長径と基準面である平面部とのなす角α(°)を測定し、
単糸まで開繊された強化繊維はそのまま長径Rと角αを測定し、束になっている部分を測定する場合は、束の代表値として1点だけ取り、無作為に100点以上測定し、式(2)からそれぞれの繊維の面配向角γを算出し、配向度σ(%)を求めた。
配向度 σ=100×(1−(面配向角γが10°以上の繊維本数)/(全繊維本数)) (1)
強化繊維束(A)のマットの繊維全量に対する割合の分析は、以下の通りに行った。
ランダムマットを100mm×100mmに切り出し、厚み(Ta)と重量を測定した(Wa)。
切り出したマットより、繊維束をピンセットで全て取り出し、繊維束を太さ毎に分類した。本実施例では分類は、太さ0.2mm程度単位で分類した。
分類毎に、全ての繊維束の長さ(Li)と重量(Wi)、繊維束数(I)を測定し、記録した。ピンセットにて取り出す事ができない程度に繊維束が小さいものについては、まとめて最後に重量を測定した(Wk)。このとき、1/1000gまで測定可能な天秤を用いた。なお、特に強化繊維を炭素繊維とした場合や、繊維長が短い場合には、繊維束の重量が小さく、測定が困難であったので、こういった場合には、分類した繊維束を複数本まとめて重量を測定した。
Ni=Wi/(Li×F)。
強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は以下の式により求めた。
N=ΣNi/I
また、個々の繊維束の体積(Vi)及び、強化繊維束(A)の繊維全体に対する割合(VR)は、使用した強化繊維の繊維比重(ρ)を用いて次式により求めた。
Vi=Wi/ρ
VR=ΣVi/Va×100
ここで、Vaは切り出したマットの体積であり、Va=100×100×Ta
本発明のプリプレグおよび本発明のプリプレグを成形することで得られた成形体については、500℃×1時間程度、炉内にて樹脂を分解除去した後、上記のランダムマットにおける方法と同様にして測定した。
300mm×300mmの正方形にカットした熱可塑性プリプレグを熱風循環式加熱炉を用いて、マトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合は融点+80℃以内または分解温度以下、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度+200℃以内または分解温度以下に加熱し、結晶性樹脂の場合は融点、非晶性樹脂の場合は軟化点より低い温度の平板状の型内に設置して型を閉じ、130Tonの荷重を与えて型内で流動させた。この時、流動により広がった面積から、実際の成形に利用できる適用可能チャージ率を式(6)で算出した。
(適用可能チャージ率)=(成形前のプリプレグの面積)/(成形後の成形体の面積)×100 (6)
適用可能チャージ率は実際の成形時にそのプリプレグがどの程度の低さのチャージ率まで良好な成形品が得られるかの指標となる。例えば、適用可能チャージ率が50%であれば、良好な成形体を得るために成形時に下記式(5)
チャージ率(%)=100×基材面積(mm2)/金型キャビティ総面積(mm2) (5)
で求められるチャージ率が50%以上必要であり、それ未満のチャージ率では、流動不足となり、金型の端まで樹脂と強化繊維が充填された良好な成形体が得られない。適用可能チャージ率は、値が小さいほど流動性が大きく、低チャージ率でも良好な成形体が得られる。
本発明のプリプレグから得られた成形体の繊維の等方性を測定する方法としては、成形板の任意の方向、及びこれと直交する方向についてそれぞれ引張り試験を行って引張弾性率を測定し、その値のうち大きいものを小さいもので割った比(Eδ)を算出する事で確認した。弾性率の比が1に近いほど、等方性に優れる材料である。本実施例および比較例では、Eδが1.3を超えないものを、等方性であるとした。
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を使用した。カット装置には、超硬合金を用いて螺旋状ナイフを表面に配置したロータリーカッターを用いた。このとき、下記式(7)
強化繊維の繊維長(刃のピッチ)=強化繊維ストランド幅×tan(90−θ) (7)
(ここで、θは周方向とナイフのなす角である。)
におけるθは17度、刃のピッチを20mmとし、強化繊維を繊維長20mmにカットした。開繊装置として、径の異なるSUS304製のニップルを溶接し、二重管を製作した。内側の管に小孔を設け、外側の管との間にコンプレッサーを用いて圧縮空気を送気した。この時、小孔からの風速は、450m/secであった。この管をロータリーカッターの直下に配置し、さらに、その下部にはテーパ管を溶接した。テーパ管の側面より、マトリックス樹脂を供給し、このマトリックス樹脂として、帝人化成社製のポリカーボネート“パンライト”(登録商標)L−1225Lペレットを冷凍粉砕し、更に、20メッシュ、及び100メッシュにて分級した粒子を用いた。ポリカーボネートパウダーの平均粒径は約710μmであった。次に、テーパ管出口の下部に、XY方向に移動可能なテーブルを設置し、テーブル下部よりブロワにてテーパ管からの塗布風量より大きい風量になるよう吸引を行った。そして、強化繊維の供給量を900g/min、マトリックス樹脂の供給量を2700g/min、にセットし、装置を稼動したところ、強化繊維と熱可塑性樹脂が混合された、厚み6mm程度のランダムマットを得た。得られたランダムマットの強化繊維の目付け量は、1000g/m2であった。
得られたランダムマットを3層積層し、300℃に加熱したプレス装置にて、1MPaにて3分間加熱し、厚さ6.1mmの熱可塑等方性プリプレグを得た。得られたプリプレグ中の繊維の体積含有率は30%であった。得られたプリプレグについて超音波探傷試験を行ったところ、未含浸部やボイドは確認されなかった。
得られた熱可塑等方性プリプレグの面配向度を断面観察により測定したところ、面配向度σは97%となり、非常に面配向性の高いプリプレグが得られた。
得られたプリプレグの0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.03であり、繊維配向は殆ど無く、等方性の材料を得る事ができた。
得られたプリプレグを、300mm×300mmの正方形にカットしたものを熱風循環式加熱炉を用いて表面温度が270℃になるまで加熱し、加熱したプリプレグの5倍の投影面積をもつ、120℃に設定した平面の金型に配置し、130Tonの荷重を加えて流動させたところ、プレス前の3.1倍の投影面積の成形体が得られた。このとき式(6)より求めた適用可能チャージ率は32%であった。
得られた成形体の流動して出来た部分の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.14であり、繊維配向は殆ど無いことが確認できた。上記から、この基材は良好な流動性と、成形物全体の等方性を併せ持つプリプレグであることが確認できた。
ランダムマット作製時の繊維供給量を1000g/min、マトリックス樹脂供給量を3000g/minとした以外は実施例1と同様の方法でランダムマットを作製した。得られたランダムマットの目付は1100g/m2であった。
得られたランダムマットについて、強化繊維束(A)の割合と、平均繊維数(N)を調べたところ、式(1)で定義される臨界単糸数は86であり、強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合は35%、強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は240であった。また、ポリカーボネートパウダーは、強化繊維中に大きな斑が無い状態で分散されていた。
得られたランダムマットを、300℃に加熱したプレス装置にて、1MPaにて3分間加熱し、厚さ2.1mmの熱可塑等方性プリプレグを得た。得られたプリプレグ中の繊維の体積含有率は30%であった。得られたプリプレグについて超音波探傷試験を行ったところ、未含浸部やボイドは確認されなかった。
得られた熱可塑等方性プリプレグの面配向度を断面観察により測定したところ、面配向度σは98%となり、非常に面配向性の高いプリプレグが得られた。
得られたプリプレグを、300mm×300mmの正方形にカットしたものを熱風循環式加熱炉を用いて表面温度が270℃になるまで加熱し、加熱したプリプレグの5倍の投影面積をもつ、120℃に設定した平面の金型に配置し、130Tonの荷重を加えて流動させたところ、プレス前の1.3倍の投影面積の成形体が得られた。このとき式(6)より求めた適用可能チャージ率は76%であった。
得られた成形体の流動して出来た部分の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.18であり、繊維配向は殆ど無いことが確認できた。上記から、この基材は良好な流動性と、成形物全体の等方性を併せ持つプリプレグであることが確認できた。
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)IMS60−12K(平均繊維径5μm、繊維幅6mm)を使用した。カット装置には、超硬合金を用いて螺旋状ナイフを表面に配置したロータリーカッターを用いた。このロータリーカッターには、繊維束を小型化する目的で、繊維方向に平行な刃を0.5mm間隔で設けた。このとき、上記式(7)中のθは17度、刃のピッチを20mmとし、強化繊維を繊維長20mmにカットした。開繊装置として、小孔を有した管を用意し、コンプレッサーを用いて圧縮空気を送気した。小孔からの風速は、150m/secとした。この管をロータリーカッターの直下に配置し、さらに、その下部にはテーパ管を溶接した。テーパ管の側面より、マトリックス樹脂を供給し、このマトリックス樹脂として、2mmにドライカットしたPA66繊維(旭化成せんい製 T5ナイロン 繊度1400dtex)を用いた。次に、テーパ管出口の下部に、XY方向に移動可能なテーブルを設置し、テーブル下部よりブロワにてテーパ管からの塗布風量より大きい風量になるよう吸引を行った。そして、強化繊維の供給量を1200g/min、マトリックス樹脂の供給量を2500g/min、にセットし、装置を稼動したところ、強化繊維とポリアミドが混合された厚み10mm程度のランダムマットを得た。強化繊維の目付け量1200g/m2であった。
得られたランダムマットを3層積層し、280℃に加熱したプレス装置にて、3.0MPaにて3分間加熱し、厚さ6.2mmの成形板を得た。得られた複合材料について超音波探傷試験を行ったところ、未含浸部やボイドは確認されなかった。
得られた熱可塑等方性プリプレグの面配向度を断面観察により測定したところ、面配向度σは95%となり、非常に面配向性の高いプリプレグが得られた。
得られた成形板の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.07であり、繊維配向は殆ど無く、等方性が維持された材料を得る事ができた。
得られたプリプレグを、300mm×300mmの正方形にカットしたものを熱風循環式加熱炉を用いて表面温度が280℃になるまで加熱し、加熱したプリプレグの5倍の投影面積をもつ、140℃に設定した平面の金型に配置し、130Tonの荷重を加えて流動させたところ、プレス前の2.9倍の投影面積の成形体が得られた。このとき式(6)より求めた適用可能チャージ率は34%であった。
得られた成形体の流動して出来た部分の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.18であり、繊維配向は殆ど無いことが確認できた。上記から、この基材は良好な流動性と、成形物全体の等方性を併せ持つプリプレグであることが確認できた。
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を、マトリックス樹脂として、帝人化成社製のポリカーボネート“パンライト”(登録商標)L−1225Lペレットを使用した。炭素繊維を、300℃に保持された恒温槽中にセットしたポリカーボネート樹脂(幅10cm×長さ30cm)に30cm/分で連続的に浸漬し、樹脂浴の出側で絞りローラー3により余剰の樹脂を絞り取った後、空冷しワインダーで巻き取った。得られた炭素繊維強化帯状プリプレグにおける炭素繊維の体積含有率は30%であった。
得られた帯状プリプレグを20mmに連続的にカットしてフレーク状のものを得て、300℃に加熱したプレス装置にて、2.5MPaにて7分間加熱し、厚さ6mmの熱可塑性スタンパブルシートを得た。
このときの平均繊維数Nは、炭素繊維束を開繊していないため24000であった。
得られたスタンパブルシートの面配向度を断面観察により測定したところ、面配向度σは81%となり、厚み方向の配向を持つ繊維が多いことが確認できた。また、断面観察から、樹脂と繊維の分布にムラが散見された。
得られたスタンパブルシートの0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は1.14であり、繊維配向の偏りが少ない材料を得る事ができた。
得られたスタンパブルシートを、300mm×300mmの正方形にカットしたものを熱風循環式加熱炉を用いて表面温度が270℃になるまで加熱し、3枚積層して、120℃に加熱した加熱したプリプレグの5倍の投影面積をもつ平面の金型に配置し、130Tonの荷重を加えて流動させたところ、プレス前の1.8倍の投影面積の成形体が得られた。このとき式(6)から、適用可能チャージ率56%であった。
得られた成形体の流動して出来た部分の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比(Eδ)は2.06となった。上記から、この基材は良好な流動性を示すが、流動させることで繊維配向に偏りが生じ等方性が損なわれる基材であることが確認できた。
2 強化繊維断面
3 長径R
4 角α
Claims (8)
- 繊維長10mm超100mm以下の強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、強化繊維が炭素繊維であり、下記式(1)で定義される面配向度σが90%以上となり、強化繊維として下記式(3)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)と、それ以外の単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される強化繊維束を含むことを特徴とする厚み1.0〜100.0mmの板状の熱可塑等方性プリプレグ。
面配向度 σ=100×(1−(面配向角γが10°以上の繊維本数)/(全繊維本数)) (1)
面配向角γは下記式(2)で定義される。
臨界単糸数=600/D (3)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である) - 強化繊維が25〜3000g/m2の目付けにて2次元ランダムに配向している請求項1に記載のプリプレグ。
- 下記式(3)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、強化繊維全量に対する割合が体積分率で30%以上から90%未満である請求項1または2に記載のプリプレグ。
臨界単糸数=600/D (3)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である) - 強化繊維として、太さ0.2mm単位で分類される、異なった太さの強化繊維束を含む請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
- 強化繊維の繊維体積含有率が17.3%以下のものを除く、請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
- 任意の方向、及びこれと直交する方向についての引張弾性率の大きい方の値を小さい方の値で割った比(Eδ)が1.0から1.3となる、請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
- 以下1〜5の工程を含む請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
1.強化繊維をカットする工程、
2.カットされた強化繊維を、下部に円錐形のテーパ管が溶接された管内に導入し、空気を強化繊維に吹き付ける事により、繊維束をバラバラに開繊させる工程、
3.ベンチュリー効果を利用して開繊され、テーパ管内にて空気の拡散による回転力が与えられた強化繊維を拡散させると同時に、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とともに吸引し、強化繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程、
4.塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を定着させ、ランダムマットを得る工程。
5.ランダムマットを熱プレスしてプリプレグを得る工程。 - 請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグを、マトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合は融点以上、融点+80℃以下または分解温度以下、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上、ガラス転移温度+200℃以下または分解温度以下に加熱し、結晶性樹脂の場合は融点、非晶性樹脂の場合は軟化点より低い温度の型内に、下記式(5)で算出されるチャージ率20〜80%で設置して型を閉じ加圧する成形体の製造方法。
チャージ率(%)=100×基材面積(mm 2 )/金型キャビティ総面積(mm 2 ) (5)
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