JP2015054930A - 炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い強度、弾性率を有し、これらの力学物性が面内等方で、さらに表面品位が良好である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を提供する。
【解決手段】 平均繊維長10mm以上の炭素繊維40〜85質量%と熱可塑性樹脂15〜60質量%からなり、炭素繊維の残留応力が負であり、炭素繊維が面内方向に選択的にかつ面内方向においてランダムに配向していることを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
【選択図】 なし
【解決手段】 平均繊維長10mm以上の炭素繊維40〜85質量%と熱可塑性樹脂15〜60質量%からなり、炭素繊維の残留応力が負であり、炭素繊維が面内方向に選択的にかつ面内方向においてランダムに配向していることを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
【選択図】 なし
Description
本発明は、炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料に関する。詳しくは、高い強度、弾性率を有し、これらの力学物性が面内等方で、さらに表面品位が良好である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料に関する。
炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、その優れた比強度、比剛性を活かして自動車や航空機などの様々な用途で広く用いられている。炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、炭素繊維の向き(繊維配向)を制御することにより、特定の方向の力学物性を向上させる、すなわち、力学物性に異方性を持たせることが可能であり、力学物性の異方性を活かした材料設計ができるという長所があるが、一方で、異方性がなく、面内で等方な力学物性を有する炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料も市場で強く要求されている。また、製品として使用する上で外観は重要であり、表面品位が良好であることも同時に望まれている。
等方性に優れた機械物性(強度、剛性)を有する繊維強化熱可塑性樹脂複合材料として、熱可塑性樹脂中に強化繊維を単繊維状に分散させ、強化繊維の配向状態を制御することが有用であることが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示されている技術は、抄紙プロセスなどを用いて10mm以下の長さの強化繊維を単繊維状に均一に分散させることにより、高い等方性を有する成形体が得られている。しかしながら、使用している強化繊維の長さは10mm以下と短い場合の技術であり、10mm以上の強化繊維を用いた技術に関しては開示されていない。
一方、10mm以上の強化繊維を用いた熱可塑性樹脂複合材料も開発されている(例えば、特許文献2、特許文献3)。特許文献2に開示されている技術は、強化繊維が実質的に2次元ランダムに配向していると記載されているものの、実際に繊維がどのように2次元ランダムに配向しているかについては必ずしも明示されておらず、また、板の任意の方向、及びこれと直交する方向の引張弾性率の比を用いて、面内方向の物性の等方性を謳っているが、引張強度や引張弾性率がどれほど優れているかについて必ずしも明示されていない。一方、特許文献3に開示されている技術は、曲げ強度や曲げ弾性率の相対的な散らばりを表す指標(変動係数、CV%)が小さいと謳っているが、曲げ特性の均一性に優れるとは言えるものの、必ずしも曲げ特性が面内等方であると言うことはできない。また、表面品位については必ずしも明示されていない。
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、高い強度、弾性率を有し、これらの力学物性が面内等方で、さらに表面品位が良好である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.平均繊維長10mm以上の炭素繊維40〜85質量%と熱可塑性樹脂15〜60質量%を含有する成形材料であって、下記の条件(A)、(B)を満たすことを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
(A)成形材料中の炭素繊維の残留応力σrが0未満である
(B)成形材料中の炭素繊維の配向パラメーター(cos2θx、cos2θz、cos2θy)が(式1)、(式2)を満たす
cos2θz<0.01 (式1)
0.67<cos2θy/cos2θx<1.5 (式2)
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.平均繊維長10mm以上の炭素繊維40〜85質量%と熱可塑性樹脂15〜60質量%を含有する成形材料であって、下記の条件(A)、(B)を満たすことを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
(A)成形材料中の炭素繊維の残留応力σrが0未満である
(B)成形材料中の炭素繊維の配向パラメーター(cos2θx、cos2θz、cos2θy)が(式1)、(式2)を満たす
cos2θz<0.01 (式1)
0.67<cos2θy/cos2θx<1.5 (式2)
本発明により、高い強度、弾性率を有し、これらの力学物性が面内等方で、さらに表面品位が良好である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を提供することができる。本発明により得られる成形材料は、自動車や機械器具の構造部材、電気・電子機器、スポーツ器具など、広く使用することが可能である。
以下、本発明を詳述する。
本発明には、平均繊維長が10mm以上、好ましくは15mm以上の炭素繊維や連続繊維が使用される。平均繊維長が10mm未満では、強度が低くなり、好ましくない。力学物性上は連続繊維が好ましいが、成形時の金型内における流動性が必要なことからプリプレグとしてより短く切断されたものが使用される。したがって、炭素繊維の平均繊維長の上限をあえて設定するなら、プリプレグの長さに相当するものであり、100mm程度であることが好ましい。
炭素繊維としては、製造法に特に制限されないが、ポリアクリロニトル繊維やセルロース繊維などの繊維を空気中で200〜300℃にて処理した後、不活性ガス中で1000〜3000℃以上で焼成され炭化製造された引っ張り強度20t/cm2以上、引っ張り弾性率200GPa以上の炭素繊維が好ましい。本発明に使用される炭素繊維の単繊維直径は、特に制限されないが、複合化の製造ライン工程から3〜25μmが好ましく、特に4〜15μm好ましい。3μm未満では、含浸や脱泡が難しく、25μmを超えると、比表面積が小さくなり、複合化の効果が小さくなり好ましくない。本発明に使用される炭素繊維は、空気や硝酸による湿式酸化、乾式酸化、ヒートクリーニング、ウイスカライジングなどによる接着性改良のための処理されたものが好ましい。また本発明の複合材料製造に使用される炭素繊維は、作業工程の取り扱い性から、100℃以下で軟化する集束剤により集束されていることが好ましい。集束フィラメント数には特に制限ないが、1000〜30000フィラメント、好ましくは、3000〜25000フィラメントが好ましい。本発明に使用される炭素繊維の集束剤は特に限定されないが、炭素繊維と熱可塑性樹脂に高い接着力を有する集束剤が好ましい。
本発明には、平均繊維長が10mm以上、好ましくは15mm以上の炭素繊維や連続繊維が使用される。平均繊維長が10mm未満では、強度が低くなり、好ましくない。力学物性上は連続繊維が好ましいが、成形時の金型内における流動性が必要なことからプリプレグとしてより短く切断されたものが使用される。したがって、炭素繊維の平均繊維長の上限をあえて設定するなら、プリプレグの長さに相当するものであり、100mm程度であることが好ましい。
炭素繊維としては、製造法に特に制限されないが、ポリアクリロニトル繊維やセルロース繊維などの繊維を空気中で200〜300℃にて処理した後、不活性ガス中で1000〜3000℃以上で焼成され炭化製造された引っ張り強度20t/cm2以上、引っ張り弾性率200GPa以上の炭素繊維が好ましい。本発明に使用される炭素繊維の単繊維直径は、特に制限されないが、複合化の製造ライン工程から3〜25μmが好ましく、特に4〜15μm好ましい。3μm未満では、含浸や脱泡が難しく、25μmを超えると、比表面積が小さくなり、複合化の効果が小さくなり好ましくない。本発明に使用される炭素繊維は、空気や硝酸による湿式酸化、乾式酸化、ヒートクリーニング、ウイスカライジングなどによる接着性改良のための処理されたものが好ましい。また本発明の複合材料製造に使用される炭素繊維は、作業工程の取り扱い性から、100℃以下で軟化する集束剤により集束されていることが好ましい。集束フィラメント数には特に制限ないが、1000〜30000フィラメント、好ましくは、3000〜25000フィラメントが好ましい。本発明に使用される炭素繊維の集束剤は特に限定されないが、炭素繊維と熱可塑性樹脂に高い接着力を有する集束剤が好ましい。
本発明に使用される熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などが挙げられる。
本発明の成形材料には、物性改良・成形性改良、耐久性改良を目的として、結晶核剤、滑剤、酸化防止剤、難燃剤、耐光剤、耐候剤などの添加剤が配合できる。これらの添加剤を配合する場合は、その配合量は合計で、成形材料中0.01〜5質量%であることが好ましい。
本発明の複合材料の製造法は特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂の融点以上に温度調節されたスクリュータイプ押出機のホッパーに熱可塑性樹脂と安定剤などを所定割合に予備混合して供給する。溶融樹脂をギアポンプの回転数にて計量して、樹脂の融点以上に温度調節された含浸用押出機の上流に供給する。一方、ロービング状の炭素繊維を拡張開繊し、含浸用押出機の下流に供給する。下流先端に開口部を絞ったスリットダイを備えた含浸用押出機中で樹脂圧により、炭素繊維ロービングに樹脂を含浸・脱泡し、下流開口部から吐出された、所定の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量%からなるテープ状の炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる複合材料を冷却してかせに巻き取り、さらに、このテープ状複合材料を10mm以上の所定の長さにカットする。所定の長さにカットしたテープ状複合材料をばらまき、予め、熱可塑性樹脂の融点以上に温度調節した金型をセットした圧縮成形機を使用して圧縮し、金型を冷却した後、型開きをして、板状のプリプレグシートを得る。ここで、所定の長さにカットしたテープ状複合材料を、1枚ずつ分散させた状態でばらまく、テープ状複合材料を受ける枠に微振動を与えながらばらまく、などにより、面内ランダムにばらまくことが肝要であり、それにより、本発明の炭素繊維強化熱可塑性複合材料の特徴である材料中の炭素繊維の平均的な繊維配向が材料の面内方向に選択的すなわち板厚方向にほとんど配向しておらず、かつ、材料の面内方向にはランダムに配向した状態を達成することができる。
続いて、得られたプリプレグシートを成形する。プリプレグシートを成形するには、スタンピング成形が適当な成形法である。例えば、赤外線加熱や高周波加熱により、プリプレグシートを融点以上に加熱した後、融点以下の温度に調節した金型に供給し、賦形冷却後脱型して、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料が成形される。ここで、金型温度(金型表面温度)を、[(繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の融点)−120℃]以上にすることが肝要である。金型温度が低すぎると、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の特徴である材料中の炭素繊維の残留応力σrが0未満の条件が達成されない。金型温度は、好ましくは、[(繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の融点)−90℃]〜[(繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の融点)−20℃]である。金型温度が高すぎると、樹脂表面が酸化して変色や劣化が起こり、成形材料の取り出しまでの冷却過程で成形材料内部が十分に冷却されない。なお、「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の融点」とは、実質的には該成形材料を構成する熱可塑性樹脂の融点である。さらに、金型温度以外の条件として、圧縮保持する時間、圧力などが挙げられるが、これらの条件は、用いる熱可塑性樹脂により適宜設定すれば良い。
続いて、得られたプリプレグシートを成形する。プリプレグシートを成形するには、スタンピング成形が適当な成形法である。例えば、赤外線加熱や高周波加熱により、プリプレグシートを融点以上に加熱した後、融点以下の温度に調節した金型に供給し、賦形冷却後脱型して、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料が成形される。ここで、金型温度(金型表面温度)を、[(繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の融点)−120℃]以上にすることが肝要である。金型温度が低すぎると、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の特徴である材料中の炭素繊維の残留応力σrが0未満の条件が達成されない。金型温度は、好ましくは、[(繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の融点)−90℃]〜[(繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の融点)−20℃]である。金型温度が高すぎると、樹脂表面が酸化して変色や劣化が起こり、成形材料の取り出しまでの冷却過程で成形材料内部が十分に冷却されない。なお、「繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の融点」とは、実質的には該成形材料を構成する熱可塑性樹脂の融点である。さらに、金型温度以外の条件として、圧縮保持する時間、圧力などが挙げられるが、これらの条件は、用いる熱可塑性樹脂により適宜設定すれば良い。
本発明の成形材料には、40〜85質量%、好ましくは55〜70質量%の炭素繊維が複合される。40質量%未満では、炭素繊維による補強の効果が不十分となり好ましくない。一方、炭素繊維を含有する上限は特に制限されないが、85質量%を超えると、炭素繊維への熱可塑性樹脂の含浸が困難となるため、好ましくない。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の第一の特徴は、材料中の炭素繊維の残留応力σrが0未満であることである。これは、材料中の炭素繊維に引張と逆向きの応力が加わっている、すなわち、炭素繊維が繊維の長手方向に圧縮された状態になっていることを意味している。炭素繊維は引張破断伸度が最大でも2%程度と低い。そのため、単繊維が引き揃えられていない炭素繊維束に力が加わると、最初に破断伸度に達した単繊維から順々に破断してしまうため、強度の利用率が低下する。本発明の材料は、材料中の炭素繊維の長手方向に圧縮されているため、見かけ破断伸びが大きくなる効果が働き、より効率的に強度を利用することができる。残留応力σrの絶対値は特に限定されないが、破断応力の60%以下が好ましく、さらに好ましくは30%以下である。60%を超えると、時間とともに徐々に応力が緩和し、それに伴って成形材料が変形する場合がある。炭素繊維の一般的な破断応力は、4〜6GPa程度である。したがって、残留応力σrは、−3.6GPa〜0GPaであることが好ましく、−1.8GPa〜0GPaであることがより好ましい。なお、炭素繊維の残留応力σrの単位は、「GPa」であり、実施例の項に記載の「成形材料中の強化繊維の残留応力σrの評価」に基づいて得られる値である。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の第二の特徴は、材料中の炭素繊維の平均的な繊維配向が材料の面内方向に選択的すなわち板厚方向にほとんど配向しておらず、かつ、材料の面内方向にはランダムに配向していること、すなわち、以下の式を満たしていることである。
cos2θz<0.01
0.67<cos2θy/cos2θx<1.5
cos2θx、cos2θy、cos2θzは、図1に示すように、材料の面内方向にX−Yの直交座標を、板厚方向にZ軸座標をそれぞれ取ったときの、材料内部の平均的な繊維配向と、X、Y、Z軸、それぞれとのなす角度の余弦の2乗の平均を示している。cos2θz=0の場合、炭素繊維は完全に面内方向に配向していることを意味し、cos2θz=1の場合、炭素繊維は完全に板厚方向に配向していることを意味する。また、cos2θy/cos2θx=1の場合、炭素繊維は面内方向に完全にランダムに配向していることを意味する。
cos2θy/cos2θxが上記の範囲を外れると、材料の面内方向における繊維配向のランダム性が損なわれ、その結果、材料の面内方向における、任意の方向とそれに直交する方向の強度、弾性率の差が大きくなり、物性の等方性が損なわれてしまう。cos2θy/cos2θxは、0.75〜1.33の範囲であることがより好ましい。
一方、本材料を構成する炭素繊維の長さは10mm以上であるのに対して、本材料の厚みは、通常、10mm以下である。従って、cos2θzが大きくなる、すなわち、炭素繊維が板厚方向に配向している頻度が高くなると、繊維が屈曲している頻度も高くなる。炭素繊維が屈曲して面外方向に向いていると、材料を加熱溶融させたときに、剛直な炭素繊維が真っ直ぐに戻ろうとして、材料表面に飛び出してくる現象(スプリングバック)が発生し、材料を加熱溶融させる際、材料表面に飛び出してきた炭素繊維に付着した樹脂の熱劣化が顕著になるため、得られる成形材料の表面品位が悪くなってしまう。cos2θzが上記範囲内であれば、スプリングバックの発生頻度が抑えられる。
両方の条件を満たすことが必要であり、その結果、物性の等方性と成形材料の表面品位を両立することが可能となる。
なお、成形材料中の炭素繊維の配向パラメーター(cos2θx、cos2θz、cos2θy)からなる、cos2θz、cos2θy/cos2θxは、実施例の項に記載の「炭素繊維の配向パラメーターの評価」に基づいて得られる値である。
cos2θz<0.01
0.67<cos2θy/cos2θx<1.5
cos2θx、cos2θy、cos2θzは、図1に示すように、材料の面内方向にX−Yの直交座標を、板厚方向にZ軸座標をそれぞれ取ったときの、材料内部の平均的な繊維配向と、X、Y、Z軸、それぞれとのなす角度の余弦の2乗の平均を示している。cos2θz=0の場合、炭素繊維は完全に面内方向に配向していることを意味し、cos2θz=1の場合、炭素繊維は完全に板厚方向に配向していることを意味する。また、cos2θy/cos2θx=1の場合、炭素繊維は面内方向に完全にランダムに配向していることを意味する。
cos2θy/cos2θxが上記の範囲を外れると、材料の面内方向における繊維配向のランダム性が損なわれ、その結果、材料の面内方向における、任意の方向とそれに直交する方向の強度、弾性率の差が大きくなり、物性の等方性が損なわれてしまう。cos2θy/cos2θxは、0.75〜1.33の範囲であることがより好ましい。
一方、本材料を構成する炭素繊維の長さは10mm以上であるのに対して、本材料の厚みは、通常、10mm以下である。従って、cos2θzが大きくなる、すなわち、炭素繊維が板厚方向に配向している頻度が高くなると、繊維が屈曲している頻度も高くなる。炭素繊維が屈曲して面外方向に向いていると、材料を加熱溶融させたときに、剛直な炭素繊維が真っ直ぐに戻ろうとして、材料表面に飛び出してくる現象(スプリングバック)が発生し、材料を加熱溶融させる際、材料表面に飛び出してきた炭素繊維に付着した樹脂の熱劣化が顕著になるため、得られる成形材料の表面品位が悪くなってしまう。cos2θzが上記範囲内であれば、スプリングバックの発生頻度が抑えられる。
両方の条件を満たすことが必要であり、その結果、物性の等方性と成形材料の表面品位を両立することが可能となる。
なお、成形材料中の炭素繊維の配向パラメーター(cos2θx、cos2θz、cos2θy)からなる、cos2θz、cos2θy/cos2θxは、実施例の項に記載の「炭素繊維の配向パラメーターの評価」に基づいて得られる値である。
本発明で得られた繊維強化熱可塑性樹脂成形材料は、自動車のフレーム、バンパーフェースバーサポート材、シャシーシェル、座席フレーム、サスペンジョン支持部、サンルーフフレーム、バンパービーム、2輪車のフレーム、農機具のフレーム、OA機器のフレーム、機械部品など高い強度と剛性の必要な部品に利用される。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(測定方法)
(1)繊維強化熱可塑性樹脂成形材料からの炭素繊維の取り出し
成形材料を100m角程度に切り出し、空気雰囲気下、温度500℃で1時間程度熱処理して樹脂を熱分解させ、残った炭素繊維束から単繊維を取り出し、炭素繊維の単繊維を得た。
(2)炭素繊維の平均繊維長
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から取り出した炭素繊維から無作為に100〜200本抽出し、マイクロスコープ(キーセンス製)を用いて各繊維の長さを測定し、その平均値を求めた。
(3)炭素繊維の繊維直径、断面積
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から取り出した炭素繊維の単繊維に対して、JIS R7607のC法に準拠して、繊維直径と断面積を測定した。
(測定方法)
(1)繊維強化熱可塑性樹脂成形材料からの炭素繊維の取り出し
成形材料を100m角程度に切り出し、空気雰囲気下、温度500℃で1時間程度熱処理して樹脂を熱分解させ、残った炭素繊維束から単繊維を取り出し、炭素繊維の単繊維を得た。
(2)炭素繊維の平均繊維長
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から取り出した炭素繊維から無作為に100〜200本抽出し、マイクロスコープ(キーセンス製)を用いて各繊維の長さを測定し、その平均値を求めた。
(3)炭素繊維の繊維直径、断面積
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から取り出した炭素繊維の単繊維に対して、JIS R7607のC法に準拠して、繊維直径と断面積を測定した。
(4)融点
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料、もしくは、熱可塑性樹脂から、約10mg試験片をアルミパンに採取した。示差走査熱量計(DSC)として、TA instruments社製Q100型DSCを使用し、ISO11357−3に準じて、窒素流動中で20℃/分にて昇温し、ヒートフローのピーク温度を融点とした。
(5)熱重量分析
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から、約10mg試験片をアルミパンに採取した。熱重量分析装置TA instruments社製Q50を使用し、TGAの炉内にセットした。窒素布雰囲気中で20℃/分にて室温から600℃まで昇温し,600℃にて5分保持して重量変化を測定した。100℃から600℃5分保持の間の重量減少率を測定し、これを樹脂分率と見なし、樹脂の質量%とした。さらに、100から樹脂の質量%を差し引いて、炭素繊維の質量%とした。
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料、もしくは、熱可塑性樹脂から、約10mg試験片をアルミパンに採取した。示差走査熱量計(DSC)として、TA instruments社製Q100型DSCを使用し、ISO11357−3に準じて、窒素流動中で20℃/分にて昇温し、ヒートフローのピーク温度を融点とした。
(5)熱重量分析
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から、約10mg試験片をアルミパンに採取した。熱重量分析装置TA instruments社製Q50を使用し、TGAの炉内にセットした。窒素布雰囲気中で20℃/分にて室温から600℃まで昇温し,600℃にて5分保持して重量変化を測定した。100℃から600℃5分保持の間の重量減少率を測定し、これを樹脂分率と見なし、樹脂の質量%とした。さらに、100から樹脂の質量%を差し引いて、炭素繊維の質量%とした。
(6)曲げ特性
JIS K7074に準拠して試験を実施した。試験は、島津製作所製の万能試験機(オートグラフAG−X100kN)を使用し、5kNの容量のロードセルを用いて行った。
成形材料の面内方向(板厚方向に対して90°の方向)の任意の方向およびその直交する方向を試験片幅方向として、各5枚、計10枚の試験片を切り出し、3点曲げ試験を行った。試験片幅は60mmとし、23℃50%RHに調節された試験室で2時間放置した後、支点間距離80mm、クロスヘッド速度5mm/minの条件で3点曲げ試験を行った。計10枚における曲げ強度の平均(σa)と、成形材料の面内方向(板厚方向に対して90°の方向)の任意の方向およびその直交する方向を試験片幅方向としてそれぞれ切り出した各5枚の試験片に対して求めた曲げ強度の平均の差の絶対値(σb)を求め、以下の式を用いてσδを求めた。同様に、計10枚における曲げ弾性率の平均(Ea)と、成形材料の面内方向(板厚方向に対して90°の方向)の任意の方向およびその直交する方向を試験片幅方向としてそれぞれ切り出した各5枚の試験片に対して求めた曲げ弾性率の平均の差の絶対値(Eb)を求め、以下の式を用いてEδを求めた。σδ、Eδが小さいほど、成形材料の面内方向の曲げ物性の異方性が小さい、すなわち、等方性といえる。
σδ=σb/σa×100(%)
Eδ=Eb/Ea×100(%)
JIS K7074に準拠して試験を実施した。試験は、島津製作所製の万能試験機(オートグラフAG−X100kN)を使用し、5kNの容量のロードセルを用いて行った。
成形材料の面内方向(板厚方向に対して90°の方向)の任意の方向およびその直交する方向を試験片幅方向として、各5枚、計10枚の試験片を切り出し、3点曲げ試験を行った。試験片幅は60mmとし、23℃50%RHに調節された試験室で2時間放置した後、支点間距離80mm、クロスヘッド速度5mm/minの条件で3点曲げ試験を行った。計10枚における曲げ強度の平均(σa)と、成形材料の面内方向(板厚方向に対して90°の方向)の任意の方向およびその直交する方向を試験片幅方向としてそれぞれ切り出した各5枚の試験片に対して求めた曲げ強度の平均の差の絶対値(σb)を求め、以下の式を用いてσδを求めた。同様に、計10枚における曲げ弾性率の平均(Ea)と、成形材料の面内方向(板厚方向に対して90°の方向)の任意の方向およびその直交する方向を試験片幅方向としてそれぞれ切り出した各5枚の試験片に対して求めた曲げ弾性率の平均の差の絶対値(Eb)を求め、以下の式を用いてEδを求めた。σδ、Eδが小さいほど、成形材料の面内方向の曲げ物性の異方性が小さい、すなわち、等方性といえる。
σδ=σb/σa×100(%)
Eδ=Eb/Ea×100(%)
(7)炭素繊維の単繊維のラマン散乱測定
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から取り出した炭素繊維のラマン散乱測定を行った。ラマン散乱測定装置として、堀場製作所製LabRAM HR−800を使用し、光源はアルゴンイオンレーザー(波長514nm)を用いた。
炭素繊維の単繊維を、図2に示すように、矩形の穴が空いた紙に貼り、両端をエポキシ系接着剤(アラルダイトAR−S30、12時間ゆっくり硬化タイプ)で接着させた。その後、単繊維の両端を、リンカム社製の顕微鏡用延伸ステージ(型番:10073B)のつかみ具の間に取りつけ、単繊維を保持する紙(単繊維の両側の部分)を切り取った後、顕微鏡用延伸ステージをラマン散乱測定装置の顕微鏡ステージに載せ、常温で、単繊維に引張歪みを与えて、応力を測定しながら、単繊維にレーザー光を照射して、ラマンスペクトルを測定した。歪みを変化させる際の歪み速度は0.02(min−1)とした。
歪み速度(min−1)=引張速度(mm/min)/初期つかみ具間距離(mm)
なお、単繊維に歪みを与えて、応力を測定できる装置であれば、リンカム社製の顕微鏡用延伸ステージ(型番:10073B)以外の装置を代用してもかまわない。
ラマンの測定は、シングルショット測定モードにて、測定範囲600〜1800cm−1に対して1ピクセルあたりの分解能を1cm−1以下にしてデータを収集した。測定範囲におけるラマンスペクトルは、1580〜1600cm−1付近のグラファイト構造由来のGバンド、1340〜1360cm−1付近の欠陥由来のDバンドの主に2つのピークが見られる。解析では、Gバンドのピーク位置を用いるが、ここでは、バンドの位置を正確に求めるため、得られたラマンスペクトルの強度のピークの位置ではなく、装置に付属のソフトを使用して、カーブフィッティングを行い、Gバンドのピーク位置を正確に求めた。具体的には、はじめに、600cm−1の強度と1800cm−1の強度を結んだ直線をベースラインとしてスペクトルから差し引き、続いて、Dバンド、Gバンド、および、DバンドとGバンドの間の3箇所にピークを想定して、測定範囲全体をカーブフィッティングした。ここで、各ピークをガウス関数とローレンツ関数の合成関数とした。カーブフィッティングにより得られた3箇所のカーブのうち、1580〜1600cm−1付近にピーク位置を持つカーブのピーク位置をGバンドのピーク位置とした。
炭素繊維の単繊維の応力を横軸に、炭素繊維のラマンスペクトルから求めたGバンドのピーク位置を縦軸にとり、そのプロットから最小二乗法により回帰式(式3)を求めた。
(式3)単繊維の応力(GPa)=A×Gバンドのピーク位置(cm−1)+B
ここで、AとBはそれぞれ係数である。
ラマン散乱測定は少なくとも5本の炭素繊維の単繊維に対して行った。また、単繊維1本の測定において、加える応力を、0から単繊維の平均強度σまでの間で少なくとも5等分し、それぞれの応力に対してラマン散乱測定を行った。
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から取り出した炭素繊維のラマン散乱測定を行った。ラマン散乱測定装置として、堀場製作所製LabRAM HR−800を使用し、光源はアルゴンイオンレーザー(波長514nm)を用いた。
炭素繊維の単繊維を、図2に示すように、矩形の穴が空いた紙に貼り、両端をエポキシ系接着剤(アラルダイトAR−S30、12時間ゆっくり硬化タイプ)で接着させた。その後、単繊維の両端を、リンカム社製の顕微鏡用延伸ステージ(型番:10073B)のつかみ具の間に取りつけ、単繊維を保持する紙(単繊維の両側の部分)を切り取った後、顕微鏡用延伸ステージをラマン散乱測定装置の顕微鏡ステージに載せ、常温で、単繊維に引張歪みを与えて、応力を測定しながら、単繊維にレーザー光を照射して、ラマンスペクトルを測定した。歪みを変化させる際の歪み速度は0.02(min−1)とした。
歪み速度(min−1)=引張速度(mm/min)/初期つかみ具間距離(mm)
なお、単繊維に歪みを与えて、応力を測定できる装置であれば、リンカム社製の顕微鏡用延伸ステージ(型番:10073B)以外の装置を代用してもかまわない。
ラマンの測定は、シングルショット測定モードにて、測定範囲600〜1800cm−1に対して1ピクセルあたりの分解能を1cm−1以下にしてデータを収集した。測定範囲におけるラマンスペクトルは、1580〜1600cm−1付近のグラファイト構造由来のGバンド、1340〜1360cm−1付近の欠陥由来のDバンドの主に2つのピークが見られる。解析では、Gバンドのピーク位置を用いるが、ここでは、バンドの位置を正確に求めるため、得られたラマンスペクトルの強度のピークの位置ではなく、装置に付属のソフトを使用して、カーブフィッティングを行い、Gバンドのピーク位置を正確に求めた。具体的には、はじめに、600cm−1の強度と1800cm−1の強度を結んだ直線をベースラインとしてスペクトルから差し引き、続いて、Dバンド、Gバンド、および、DバンドとGバンドの間の3箇所にピークを想定して、測定範囲全体をカーブフィッティングした。ここで、各ピークをガウス関数とローレンツ関数の合成関数とした。カーブフィッティングにより得られた3箇所のカーブのうち、1580〜1600cm−1付近にピーク位置を持つカーブのピーク位置をGバンドのピーク位置とした。
炭素繊維の単繊維の応力を横軸に、炭素繊維のラマンスペクトルから求めたGバンドのピーク位置を縦軸にとり、そのプロットから最小二乗法により回帰式(式3)を求めた。
(式3)単繊維の応力(GPa)=A×Gバンドのピーク位置(cm−1)+B
ここで、AとBはそれぞれ係数である。
ラマン散乱測定は少なくとも5本の炭素繊維の単繊維に対して行った。また、単繊維1本の測定において、加える応力を、0から単繊維の平均強度σまでの間で少なくとも5等分し、それぞれの応力に対してラマン散乱測定を行った。
(8)成形材料中の強化繊維の残留応力σrの評価
成形材料中の炭素繊維の単繊維のラマン散乱測定を行った。ラマン散乱測定装置として、堀場製作所製LabRAM HR−800を使用し、光源はアルゴンイオンレーザー(波長514nm)を用いた。
成形材料をラマン散乱測定装置の顕微鏡ステージに載せ、常温で、成形材料中の炭素繊維にレーザー光を照射して、ラマンスペクトルを測定した。ラマンの測定は、シングルショット測定モードにて、測定範囲600〜1800cm−1に対して1ピクセルあたりの分解能を1cm−1以下にしてデータを収集した。測定範囲におけるラマンスペクトルは、炭素繊維由来のGバンド、Dバンドの主に2つのピークに加えて、熱可塑性樹脂由来の無数のピークが観察される。解析では、炭素繊維由来のGバンドのピーク位置を用いるが、ここでは、バンドの位置を正確に求めるため、得られたラマンスペクトルの強度のピークの位置ではなく、装置に付属のソフトを使用して、カーブフィッティングを行い、Gバンドのピーク位置を正確に求めた。具体的な手順を次に示す。はじめに成形材料から熱可塑性樹脂部のみ少量削り取り、熱可塑性樹脂のラマンスペクトルを測定した。ラマンの測定は、シングルショット測定モードにて、測定範囲600〜1800cm−1に対して1ピクセルあたりの分解能を1cm−1以下にしてデータを収集した。次に、成形材料中の炭素繊維のラマンスペクトルから熱可塑性樹脂由来の無数のピークを差し引いた。具体的には、成形材料中の炭素繊維のラマンスペクトル中の熱可塑性樹脂由来の無数のピークがなくなるように、成形材料中の炭素繊維のラマンスペクトルから熱可塑性樹脂部のみのラマンスペクトルの強度に任意の倍率をかけた値を差し引いた。差し引いて得られたスペクトルに対して、600cm−1の強度と1800cm−1の強度を結んだ直線をベースラインとしてスペクトルから差し引き、続いて、Dバンド、Gバンド、および、DバンドとGバンドの間の3箇所にピークを想定して、測定範囲全体をカーブフィッティングした。ここで、3箇所の各ピークはガウス関数とローレンツ関数の合成関数とし、カーブフィッティングにより得られた3箇所のカーブのうち、1580〜1600cm−1付近にピーク位置を持つカーブのピーク位置をGバンドのピーク位置とした。得られたGバンドのピーク位置を回帰式(式3)に代入して、単繊維の応力(GPa)を求めた。
ラマン散乱測定は成形材料中の少なくとも20本の炭素繊維の単繊維に対して行い、その算術平均を残留応力σr(GPa)とした。
成形材料中の炭素繊維の単繊維のラマン散乱測定を行った。ラマン散乱測定装置として、堀場製作所製LabRAM HR−800を使用し、光源はアルゴンイオンレーザー(波長514nm)を用いた。
成形材料をラマン散乱測定装置の顕微鏡ステージに載せ、常温で、成形材料中の炭素繊維にレーザー光を照射して、ラマンスペクトルを測定した。ラマンの測定は、シングルショット測定モードにて、測定範囲600〜1800cm−1に対して1ピクセルあたりの分解能を1cm−1以下にしてデータを収集した。測定範囲におけるラマンスペクトルは、炭素繊維由来のGバンド、Dバンドの主に2つのピークに加えて、熱可塑性樹脂由来の無数のピークが観察される。解析では、炭素繊維由来のGバンドのピーク位置を用いるが、ここでは、バンドの位置を正確に求めるため、得られたラマンスペクトルの強度のピークの位置ではなく、装置に付属のソフトを使用して、カーブフィッティングを行い、Gバンドのピーク位置を正確に求めた。具体的な手順を次に示す。はじめに成形材料から熱可塑性樹脂部のみ少量削り取り、熱可塑性樹脂のラマンスペクトルを測定した。ラマンの測定は、シングルショット測定モードにて、測定範囲600〜1800cm−1に対して1ピクセルあたりの分解能を1cm−1以下にしてデータを収集した。次に、成形材料中の炭素繊維のラマンスペクトルから熱可塑性樹脂由来の無数のピークを差し引いた。具体的には、成形材料中の炭素繊維のラマンスペクトル中の熱可塑性樹脂由来の無数のピークがなくなるように、成形材料中の炭素繊維のラマンスペクトルから熱可塑性樹脂部のみのラマンスペクトルの強度に任意の倍率をかけた値を差し引いた。差し引いて得られたスペクトルに対して、600cm−1の強度と1800cm−1の強度を結んだ直線をベースラインとしてスペクトルから差し引き、続いて、Dバンド、Gバンド、および、DバンドとGバンドの間の3箇所にピークを想定して、測定範囲全体をカーブフィッティングした。ここで、3箇所の各ピークはガウス関数とローレンツ関数の合成関数とし、カーブフィッティングにより得られた3箇所のカーブのうち、1580〜1600cm−1付近にピーク位置を持つカーブのピーク位置をGバンドのピーク位置とした。得られたGバンドのピーク位置を回帰式(式3)に代入して、単繊維の応力(GPa)を求めた。
ラマン散乱測定は成形材料中の少なくとも20本の炭素繊維の単繊維に対して行い、その算術平均を残留応力σr(GPa)とした。
(9)炭素繊維の配向パラメーターの評価
図1に示すように、成形材料から15mm×25mm程度の試験片を10枚切り出し、各試験片に対して三次元X線CT測定を行った。成形材料の面内方向にX軸とY軸、板厚方向がZ軸となるように直交座標を決定し、X軸方向の長さを15mm、Y軸方向の長さを25mmとして試験片を切り出した。ヤマト科学製三次元計測X線CT装置(TDM1000−IS)を使用し、加速電圧40〜60kV、管電流10〜40μA、積算時間0.5〜1秒の条件で、0.5度ないしそれ以下の角度おきに360度回転させてデータ収集を行い、1画素のサイズが50μmないしそれ以下になるような条件で再構成した。
得られた再構成データから、15mm×15mm×成形材料の板厚の領域のデータのみ抽出して、ラトックシステムエンジニアリング製のソフト「Tri3D BON」の異方性計測機能を用いて繊維配向を評価した。
初めに「Tri3D BON」の自動2値化のアルゴリズムにより、炭素繊維、熱可塑性樹脂、空隙(ボイド)に分離した。自動2値化とは、256階調もしくは65526階調の明暗(明:密度が高い、暗:密度が低い)の情報を持つ各画素から構成される画像上に2つの成分がそれぞれ正規分布していると仮定して、最も良く分離する境界のLを自動的に計算し、明暗を分離するアルゴリズムである(図3参照)。炭素繊維、熱可塑性樹脂、空隙、の密度が異なる3成分から構成されていると仮定し(密度:炭素繊維>熱可塑性樹脂>空隙)、自動2値化により2成分に分離して、明るい(密度が高い)成分を炭素繊維とした後、暗い(密度が低い)成分に対してさらに再度自動2値化により2成分に分離して、そのうち、明るい(密度が高い)成分を熱可塑性樹脂、暗い(密度が低い)成分を空隙とすることにより、3成分に分割した。なお、自動2値化は、炭素繊維熱可塑性樹脂成形材料の面内方向に平行にスライスした断面画像毎に行うものとし、断面画像のスライス間隔は再構成における1画素とした。
3成分に分離した後、異方性計測を行った。異方性計測では、その領域における平均的な繊維配向に相当する3D方位構造異方性(Mean Intercept Length:MIL)のMIL値回転楕円体近似長軸aの極座標が得られる(図4参照)。15mm(X軸方向)×15mm(Y軸方向)×成形材料の板厚(Z方向)の領域のデータを細かく分割し、分割した各領域に対して異方性計測を行った。ここで、X軸方向およびY軸方向の長さが1〜4mm、Z軸方向の長さが30〜200μmとなるように等分割し、X軸方向とY軸方向の長さは同じとした。
分割した領域iにおける、MIL値回転楕円体近似長軸aとX軸、MIL値回転楕円体近似長軸aとY軸、MIL値回転楕円体近似長軸aとZ軸がなす角度をそれぞれθxi、θyi、θziとし、以下の式を用いて、Cy/CxおよびCzを計算した。
Cy/Cx=(Σ(cos2θyi)/i)/(Σ(cos2θxi)/i)
Cz=Σ(cos2θzi)/i
i=分割した領域の数
一例として、1画素のサイズが32μm、異方性計測における分割サイズとして、X軸方向の長さ1.88mm、Y軸方向の長さ1.88mm、Z軸方向の長さが32μmの条件で異方性計測を行ったときの、成形材料の面内方向(X−Y平面)に平行にスライスした任意の断面画像と異方性計測から得られたMIL値回転楕円体近似長軸aのベクトル(白矢印)をオーバーラップさせて図5に示すが、分割した各領域におけるMIL値回転楕円体近似長軸aのベクトルと繊維配向は良好な一致を示している。なお、上記と同様の内容の計測ができるのであれば他のソフトを使用してもかまわない。
成形材料から切り出した10枚の試験片に対して、それぞれ、Cy/Cx、Czを求め、その算術平均をcos2θy/cos2θx、cos2θzとした。
図1に示すように、成形材料から15mm×25mm程度の試験片を10枚切り出し、各試験片に対して三次元X線CT測定を行った。成形材料の面内方向にX軸とY軸、板厚方向がZ軸となるように直交座標を決定し、X軸方向の長さを15mm、Y軸方向の長さを25mmとして試験片を切り出した。ヤマト科学製三次元計測X線CT装置(TDM1000−IS)を使用し、加速電圧40〜60kV、管電流10〜40μA、積算時間0.5〜1秒の条件で、0.5度ないしそれ以下の角度おきに360度回転させてデータ収集を行い、1画素のサイズが50μmないしそれ以下になるような条件で再構成した。
得られた再構成データから、15mm×15mm×成形材料の板厚の領域のデータのみ抽出して、ラトックシステムエンジニアリング製のソフト「Tri3D BON」の異方性計測機能を用いて繊維配向を評価した。
初めに「Tri3D BON」の自動2値化のアルゴリズムにより、炭素繊維、熱可塑性樹脂、空隙(ボイド)に分離した。自動2値化とは、256階調もしくは65526階調の明暗(明:密度が高い、暗:密度が低い)の情報を持つ各画素から構成される画像上に2つの成分がそれぞれ正規分布していると仮定して、最も良く分離する境界のLを自動的に計算し、明暗を分離するアルゴリズムである(図3参照)。炭素繊維、熱可塑性樹脂、空隙、の密度が異なる3成分から構成されていると仮定し(密度:炭素繊維>熱可塑性樹脂>空隙)、自動2値化により2成分に分離して、明るい(密度が高い)成分を炭素繊維とした後、暗い(密度が低い)成分に対してさらに再度自動2値化により2成分に分離して、そのうち、明るい(密度が高い)成分を熱可塑性樹脂、暗い(密度が低い)成分を空隙とすることにより、3成分に分割した。なお、自動2値化は、炭素繊維熱可塑性樹脂成形材料の面内方向に平行にスライスした断面画像毎に行うものとし、断面画像のスライス間隔は再構成における1画素とした。
3成分に分離した後、異方性計測を行った。異方性計測では、その領域における平均的な繊維配向に相当する3D方位構造異方性(Mean Intercept Length:MIL)のMIL値回転楕円体近似長軸aの極座標が得られる(図4参照)。15mm(X軸方向)×15mm(Y軸方向)×成形材料の板厚(Z方向)の領域のデータを細かく分割し、分割した各領域に対して異方性計測を行った。ここで、X軸方向およびY軸方向の長さが1〜4mm、Z軸方向の長さが30〜200μmとなるように等分割し、X軸方向とY軸方向の長さは同じとした。
分割した領域iにおける、MIL値回転楕円体近似長軸aとX軸、MIL値回転楕円体近似長軸aとY軸、MIL値回転楕円体近似長軸aとZ軸がなす角度をそれぞれθxi、θyi、θziとし、以下の式を用いて、Cy/CxおよびCzを計算した。
Cy/Cx=(Σ(cos2θyi)/i)/(Σ(cos2θxi)/i)
Cz=Σ(cos2θzi)/i
i=分割した領域の数
一例として、1画素のサイズが32μm、異方性計測における分割サイズとして、X軸方向の長さ1.88mm、Y軸方向の長さ1.88mm、Z軸方向の長さが32μmの条件で異方性計測を行ったときの、成形材料の面内方向(X−Y平面)に平行にスライスした任意の断面画像と異方性計測から得られたMIL値回転楕円体近似長軸aのベクトル(白矢印)をオーバーラップさせて図5に示すが、分割した各領域におけるMIL値回転楕円体近似長軸aのベクトルと繊維配向は良好な一致を示している。なお、上記と同様の内容の計測ができるのであれば他のソフトを使用してもかまわない。
成形材料から切り出した10枚の試験片に対して、それぞれ、Cy/Cx、Czを求め、その算術平均をcos2θy/cos2θx、cos2θzとした。
(10)表面品位の評価
成形材料の表面を目視で観察し、CFの露出の程度から○×で判定した。
○:品位が良い
×:CFが露出していて品位が悪い
成形材料の表面を目視で観察し、CFの露出の程度から○×で判定した。
○:品位が良い
×:CFが露出していて品位が悪い
実施例1〜6、比較例2〜4
表1に示した熱可塑性樹脂を、融点+約30℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入した。押し出し機内で可塑化した後、ダイヘッドより幅10mm・高さ0.2mmの含浸ダイに溶融樹脂を供給した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを拡張開繊して含浸ダイに導き、引き取りローラーを駆動して、含浸ダイから引き抜いた。その後、引き取りローラーにて賦形して固化した後、枷に巻き取り、含浸被覆されたテープ状プリプレグを得た。表1に示した炭素繊維および樹脂の質量部になるように炭素繊維の引き抜き速度と熱可塑性樹脂の供給量を変化させ、サンプルを得た。テープ状プリプレグを表1に示した長さにカットし、短冊状プリリプレグを得た。コンソリ化プレート厚さ400mm×400mm×2mmに相当する短冊状プリプレグを400mm×400mm×5mmの枠内にばらまき、予め230℃に温度調節した金型をセットした圧縮成形機を使用して圧縮し、金型を100℃に冷却した後、型開きをして、プリプレグシートを得た。短冊状プリプレグをばらまく際、枠に微振動を与えながら、短冊状のプリプレグを分散させた状態で少量ずつ面内ランダムになるようにばらまいた。得られたプリプレグシートをIRヒータにより、230℃に予熱した後、表1に示した温度に調節された400mm×400mm×2mmの金型にセットして、3分間、5MPa圧縮保持した後、圧縮成形機から取り出し、厚さ約2mmの平板を得た。得られた平板を用いて、ラマン散乱測定、繊維配向パラメーター、曲げ特性を評価した。結果を表1にまとめる。
表1に示した熱可塑性樹脂を、融点+約30℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入した。押し出し機内で可塑化した後、ダイヘッドより幅10mm・高さ0.2mmの含浸ダイに溶融樹脂を供給した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを拡張開繊して含浸ダイに導き、引き取りローラーを駆動して、含浸ダイから引き抜いた。その後、引き取りローラーにて賦形して固化した後、枷に巻き取り、含浸被覆されたテープ状プリプレグを得た。表1に示した炭素繊維および樹脂の質量部になるように炭素繊維の引き抜き速度と熱可塑性樹脂の供給量を変化させ、サンプルを得た。テープ状プリプレグを表1に示した長さにカットし、短冊状プリリプレグを得た。コンソリ化プレート厚さ400mm×400mm×2mmに相当する短冊状プリプレグを400mm×400mm×5mmの枠内にばらまき、予め230℃に温度調節した金型をセットした圧縮成形機を使用して圧縮し、金型を100℃に冷却した後、型開きをして、プリプレグシートを得た。短冊状プリプレグをばらまく際、枠に微振動を与えながら、短冊状のプリプレグを分散させた状態で少量ずつ面内ランダムになるようにばらまいた。得られたプリプレグシートをIRヒータにより、230℃に予熱した後、表1に示した温度に調節された400mm×400mm×2mmの金型にセットして、3分間、5MPa圧縮保持した後、圧縮成形機から取り出し、厚さ約2mmの平板を得た。得られた平板を用いて、ラマン散乱測定、繊維配向パラメーター、曲げ特性を評価した。結果を表1にまとめる。
実施例 7〜8
表1に示した熱可塑性樹脂を、融点+約30℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入した。押し出し機内で可塑化した後、ダイヘッドより幅10mm・高さ0.2mmの含浸ダイに溶融樹脂を供給した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを拡張開繊して含浸ダイに導き、引き取りローラーを駆動して、含浸ダイから引き抜いた。その後、引き取りローラーにて賦形して固化した後、枷に巻き取り、含浸被覆されたテープ状プリプレグを得た。表1に示した炭素繊維および樹脂の質量部になるように炭素繊維の引き抜き速度と熱可塑性樹脂の供給量を変化させ、サンプルを得た。テープ状プリプレグを表1に示した長さにカットし、短冊状プリリプレグを得た。コンソリ化プレート厚さ400mm×400mm×2mmに相当する短冊状プリプレグを400mm×400mm×5mmの枠内にばらまき、予め300℃に温度調節した金型をセットした圧縮成形機を使用して圧縮し、金型を100℃に冷却した後、型開きをして、プリプレグシートを得た。短冊状プリプレグをばらまく際、枠に微振動を与えながら、短冊状のプリプレグを分散させた状態で少量ずつ面内ランダムになるようにばらまいた。得られたプリプレグシートをIRヒータにより、300℃に予熱した後、表1に示した温度に調節された400mm×400mm×2mmの金型にセットして、3分間、15MPa圧縮保持した後、圧縮成形機から取り出し、厚さ約2mmの平板を得た。得られた平板を用いて、ラマン散乱測定、繊維配向パラメーター、曲げ特性を評価した。なお、熱可塑性樹脂が吸湿性の比較的高いポリアミドであるため、曲げ特性は、切り出した試験片を、100℃、真空雰囲気下で24時間乾燥し、続いて、23℃50%RHに調節された試験室で2時間放置した後に3点曲げ試験を実施した。結果を表1にまとめる。
表1に示した熱可塑性樹脂を、融点+約30℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入した。押し出し機内で可塑化した後、ダイヘッドより幅10mm・高さ0.2mmの含浸ダイに溶融樹脂を供給した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを拡張開繊して含浸ダイに導き、引き取りローラーを駆動して、含浸ダイから引き抜いた。その後、引き取りローラーにて賦形して固化した後、枷に巻き取り、含浸被覆されたテープ状プリプレグを得た。表1に示した炭素繊維および樹脂の質量部になるように炭素繊維の引き抜き速度と熱可塑性樹脂の供給量を変化させ、サンプルを得た。テープ状プリプレグを表1に示した長さにカットし、短冊状プリリプレグを得た。コンソリ化プレート厚さ400mm×400mm×2mmに相当する短冊状プリプレグを400mm×400mm×5mmの枠内にばらまき、予め300℃に温度調節した金型をセットした圧縮成形機を使用して圧縮し、金型を100℃に冷却した後、型開きをして、プリプレグシートを得た。短冊状プリプレグをばらまく際、枠に微振動を与えながら、短冊状のプリプレグを分散させた状態で少量ずつ面内ランダムになるようにばらまいた。得られたプリプレグシートをIRヒータにより、300℃に予熱した後、表1に示した温度に調節された400mm×400mm×2mmの金型にセットして、3分間、15MPa圧縮保持した後、圧縮成形機から取り出し、厚さ約2mmの平板を得た。得られた平板を用いて、ラマン散乱測定、繊維配向パラメーター、曲げ特性を評価した。なお、熱可塑性樹脂が吸湿性の比較的高いポリアミドであるため、曲げ特性は、切り出した試験片を、100℃、真空雰囲気下で24時間乾燥し、続いて、23℃50%RHに調節された試験室で2時間放置した後に3点曲げ試験を実施した。結果を表1にまとめる。
比較例1
表1に示した熱可塑性樹脂を、融点+約30℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入した。押し出し機内で可塑化した後、ダイヘッドより幅10mm・高さ0.2mmの含浸ダイに溶融樹脂を供給した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを拡張開繊して含浸ダイに導き、引き取りローラーを駆動して、含浸ダイから引き抜いた。その後、引き取りローラーにて賦形して固化した後、枷に巻き取り、含浸被覆されたテープ状プリプレグを得た。表1に示した炭素繊維および樹脂の質量部になるように炭素繊維の引き抜き速度と熱可塑性樹脂の供給量を変化させ、サンプルを得た。テープ状プリプレグを表1に示した長さにカットし、短冊状プリリプレグを得た。コンソリ化プレート厚さ400mm×400mm×2mmに相当する短冊状プリプレグを400mm×400mm×5mmの枠内にばらまき、予め230℃に温度調節した金型をセットした圧縮成形機を使用して圧縮し、金型を100℃に冷却した後、型開きをして、プリプレグシートを得た。短冊状プリプレグをばらまく際、5〜10g程度の量の短冊状のプリプレグを掴んで、枠内に均一に散布した。得られたプリプレグシートをIRヒータにより、230℃に予熱した後、表1に示した温度に調節された400mm×400mm×2mmの金型にセットして、3分間、5MPa圧縮保持した後、圧縮成形機から取り出し、厚さ約2mmの平板を得た。得られた平板を用いて、ラマン散乱測定、繊維配向パラメーター、曲げ特性を評価した。結果を表1にまとめる。
表1に示した熱可塑性樹脂を、融点+約30℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入した。押し出し機内で可塑化した後、ダイヘッドより幅10mm・高さ0.2mmの含浸ダイに溶融樹脂を供給した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを拡張開繊して含浸ダイに導き、引き取りローラーを駆動して、含浸ダイから引き抜いた。その後、引き取りローラーにて賦形して固化した後、枷に巻き取り、含浸被覆されたテープ状プリプレグを得た。表1に示した炭素繊維および樹脂の質量部になるように炭素繊維の引き抜き速度と熱可塑性樹脂の供給量を変化させ、サンプルを得た。テープ状プリプレグを表1に示した長さにカットし、短冊状プリリプレグを得た。コンソリ化プレート厚さ400mm×400mm×2mmに相当する短冊状プリプレグを400mm×400mm×5mmの枠内にばらまき、予め230℃に温度調節した金型をセットした圧縮成形機を使用して圧縮し、金型を100℃に冷却した後、型開きをして、プリプレグシートを得た。短冊状プリプレグをばらまく際、5〜10g程度の量の短冊状のプリプレグを掴んで、枠内に均一に散布した。得られたプリプレグシートをIRヒータにより、230℃に予熱した後、表1に示した温度に調節された400mm×400mm×2mmの金型にセットして、3分間、5MPa圧縮保持した後、圧縮成形機から取り出し、厚さ約2mmの平板を得た。得られた平板を用いて、ラマン散乱測定、繊維配向パラメーター、曲げ特性を評価した。結果を表1にまとめる。
実験に使用した原料と記号
PP:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(東洋紡製試作品、ホモポリプロピレンに無水マレイン酸と178℃における半減期が1分である有機過酸化物を配合し、200℃で1分溶融加熱して得た。メルトフローレート85g/10分、無水マレイン酸分率0.3%、融点163℃)
CF:炭素繊維(三菱レイヨン社製 PYROFIL TR 50S15L)
PA:ポリアミド6 T802(東洋紡製、相対粘度2.5、融点221℃)
PP:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(東洋紡製試作品、ホモポリプロピレンに無水マレイン酸と178℃における半減期が1分である有機過酸化物を配合し、200℃で1分溶融加熱して得た。メルトフローレート85g/10分、無水マレイン酸分率0.3%、融点163℃)
CF:炭素繊維(三菱レイヨン社製 PYROFIL TR 50S15L)
PA:ポリアミド6 T802(東洋紡製、相対粘度2.5、融点221℃)
実施例1〜8は、比較例1〜4と比べて、曲げ強度、曲げ弾性率が高く、力学物性が等方性を示し、表面品位も良好である。
本発明により、高い強度、弾性率を有し、これらの力学物性が面内等方で、さらに表面品位が良好である成形材料を得ることが可能となり、さまざまな輸送機器の構造部材や部品への使用が可能となり、軽量化や省エネルギーの面から産業界に大きく寄与することが期待される。
1 炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料
2 炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から切り出した試験片
3 炭素繊維の配向パラメーター評価部分
4 炭素繊維の配向パラメーター評価における分割した領域i
11 矩形の穴が空いた紙
12 炭素繊維の単繊維
21 平均的な繊維配向に相当する3D方位構造異方性のMIL値回転楕円体近似長軸a
2 炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料から切り出した試験片
3 炭素繊維の配向パラメーター評価部分
4 炭素繊維の配向パラメーター評価における分割した領域i
11 矩形の穴が空いた紙
12 炭素繊維の単繊維
21 平均的な繊維配向に相当する3D方位構造異方性のMIL値回転楕円体近似長軸a
Claims (1)
- 平均繊維長10mm以上の炭素繊維40〜85質量%と熱可塑性樹脂15〜60質量%を含有する成形材料であって、下記の条件(A)、(B)を満たすことを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
(A)成形材料中の炭素繊維の残留応力σrが0未満である
(B)成形材料中の炭素繊維の配向パラメーター(cos2θx、cos2θz、cos2θy)が(式1)、(式2)を満たす
cos2θz<0.01 (式1)
0.67<cos2θy/cos2θx<1.5 (式2)
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---|---|---|---|
JP2013189355A JP2015054930A (ja) | 2013-09-12 | 2013-09-12 | 炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020060438A (ja) * | 2018-10-10 | 2020-04-16 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 | カーボンファイバー応力測定方法 |
Citations (3)
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---|---|---|---|---|
JP2012246428A (ja) * | 2011-05-30 | 2012-12-13 | Teijin Ltd | 熱可塑等方性プリプレグ |
JP2013053245A (ja) * | 2011-09-05 | 2013-03-21 | Teijin Ltd | 均一な厚みを有する薄肉成形体およびその製造方法 |
JP2013103481A (ja) * | 2011-11-16 | 2013-05-30 | Teijin Ltd | 複合材料成形品の製造方法 |
-
2013
- 2013-09-12 JP JP2013189355A patent/JP2015054930A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7097067B2 (ja) | 2018-10-10 | 2022-07-07 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 | カーボンファイバー応力測定方法 |
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