JP5943829B2 - 補強を施した高温経年管の寿命予測システム及び寿命予測方法 - Google Patents
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しかし、配管の交換には、減肉個所や膨出個所の切断、開先加工、溶接作業、熱処理等、複数の工程を踏む必要があるため、時間と手間を要してしまう、また、交換用の配管を在庫していない場合には、設備の稼働が行えず、経済的な損失も増大する。
すなわち、本発明は、配管の外周にワイヤを巻き付けることでクリープ破壊に対する補強を施した高温経年管の寿命予測システムであって、前記ワイヤのクリープ定数K ワイヤ 及びべき数n ワイヤ と、補強を施す前の前記配管のクリープ定数K 管 及びべき数n 管 とを取得する定数取得部と、取得した前記クリープ定数K ワイヤ ,K 管、 前記べき数K ワイヤ, n 管、 前記配管の肉厚s、前記配管の外径D、前記ワイヤの直径dに基づいて、下記(1)式により補強を施したことにより内圧Pが作用した前記配管のクリープ応力σ 管 を求める応力演算部と、補強直前の前記配管におけるクリープ破断寿命相関式t R (σ,T)と、補強直前の配管の寿命消費率Dcと、前記応力演算部で求められた前記クリープ応力σ 管 と、前記配管の使用環境温度Tとに基づき、下記(2)式により、補強を施した前記配管の残寿命tを算定する寿命算定部とを備えることを特徴とする。
図1に示すように、火力発電用のボイラ等に用いられる配管1を補強するには、配管1を形成する材料(例えば低クロム鋼)よりもクリープ特性に優れた材料(例えば高クロム鋼、ステンレス鋼、インコネル、セラミックス、炭素繊維等)からなるワイヤ2を配管1の外周面1aに螺旋状に巻き付ける。この際、ワイヤ2は、配管1の外周面1a上で、配管1の中心軸線方向に間隔をあけながら螺旋状に巻き付けてもよいし、配管1の中心軸線方向に間隔をあけずに密に巻き付けてもよい。
この図2に示すように、寿命予測システム10は、いわゆるコンピュータ装置からなり、キーボードやマウス等の入力部11と、入力部11から入力された指令に基づいて所定の処理を実行する処理部12と、処理部12によってなされた処理結果等の情報を出力するモニタ等からなる情報出力部13と、を備えている。
図3は、配管1の寿命を予測するために寿命予測システム10がコンピュータプログラムに基づいて自動的に実行する寿命予測処理の流れを示す図である。
これには、寿命予測処理を実行するに先立ち、予め、入力部11によって、情報記憶部14に対し、以下の情報を記憶させておく。
ワイヤ2についての情報:Norton則によるクリープ定数Kワイヤ、べき数nワイヤ
また、入力部11において、ワイヤ2により補強した配管1を使用する環境条件として、想定される使用環境温度Tを入力し、情報記憶部14に記憶させておく(ステップS102)。
例えば、非破壊検査によって寿命消費率Dcを求める場合、まず非破壊検査によって、補強を施す直前の配管1の損傷の状態を評価する。具体的には、非破壊検査としては、MT(磁粉探傷)、PT(浸透探傷検査)、TOFD(Time Of Flight Diffraction)法、PA(フェイズドアレイ)、硬さ法等が挙げられ、これらの手法によって配管1の損傷の状態を評価可能な評価値を取得する。一方で、配管1の材料データとして、温度及びクリープ応力を様々な条件として様々なクリープ寿命を有する供試体を作成し、当該供試体について非破壊検査を行って評価値を得て、当該配管1の材料における非破壊検査の評価値とクリープ寿命との関係を取得しておく。そして、実際の補強を施す直前の段階において非破壊検査を実施することで得られた評価値を、予め取得した非破壊検査の評価値とクリープ寿命との関係に当て嵌めることでクリープ寿命を求め、これにより寿命消費率Dcを算定する。
一方で、配管1の材料データとして、上記同様に当該配管1の材料における破壊検査の評価値とクリープ寿命との関係を取得しておく。そして、実際の補強を施す直前の段階において破壊検査を実施することで得られた評価値を、予め取得した破壊検査の評価値とクリープ寿命との関係に当て嵌めることでクリープ寿命を求め、これにより寿命消費率Dcを算定する。
これには、以下の式(5)に基づいてクリープ応力σ管を算出する。
図4(a)、(b)に示すように、ワイヤ2により補強した配管1を、その周方向の一部の一定長の範囲(図4(a)、(b)の点線の範囲)を切り出すことによって、図4(c)に示すような検討モデルを生成する。このモデルは、配管1に内圧Pが作用したときに、ワイヤ2と配管1とが、それぞれ、両端の二点で支持されて引張応力が作用することを示している。
このモデルにおいて、配管1に内圧Pが作用したときの配管1のクリープ速度εc管、ワイヤ2のクリープ速度εcワイヤは、以下の(6)式、(7)式で表わされる。
さらに、この周方向荷重Pθは、以下の(9)式で表わされる。
断面積Aワイヤ =πd2/4
断面積A管 =d×s
の関係がある。
このような(6)式〜(9)式に基づいて、上記の(5)式を導出することができる。
このような場合、図5(b)に示すように、ワイヤ2で補強した配管1をモデル化したときに、モデルにおける計算範囲内において、配管1の断面積に対して、ワイヤ2の断面積が小さくなるのみであり、上記実施形態と同様にして寿命予測を行うことができる。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、配管1の補強にワイヤ2を用いたが、図6に示すように、ワイヤ2に代えて、ワイヤメッシュ5を配管1に巻き付けることによって補強を図ることもできる。ワイヤメッシュ5を用いた場合、図4(a)に示したようなモデルにおいて、ワイヤ断面積が2倍になるので、その条件で上記と同様にして寿命予測を行えばよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
2 ワイヤ
5 ワイヤメッシュ
10 寿命予測システム
11 入力部
12 処理部
13 情報出力部
14 情報記憶部
15 情報取得部
16 応力演算部
17 寿命算定部
Claims (2)
- 配管の外周にワイヤを巻き付けることでクリープ破壊に対する補強を施した高温経年管の寿命予測システムであって、
前記ワイヤのクリープ定数K ワイヤ 及びべき数n ワイヤ と、補強を施す前の前記配管のクリープ定数K 管 及びべき数n 管 とを取得する定数取得部と、
取得した前記クリープ定数K ワイヤ ,K 管、 前記べき数K ワイヤ, n 管、 前記配管の肉厚s、前記配管の外径D、前記ワイヤの直径dに基づいて、下記(1)式により補強を施したことにより内圧Pが作用した前記配管のクリープ応力σ 管 を求める応力演算部と、
補強直前の前記配管におけるクリープ破断寿命相関式t R (σ,T)と、補強直前の配管の寿命消費率Dcと、前記応力演算部で求められた前記クリープ応力σ 管 と、前記配管の使用環境温度Tとに基づき、下記(2)式により、補強を施した前記配管の残寿命tを算定する寿命算定部とを備えることを特徴とする補強を施した高温経年管の寿命予測システム。
- 配管の外周にワイヤを巻き付けることでクリープ破壊に対する補強を施した高温経年管の寿命予測方法であって、
前記ワイヤのクリープ定数K ワイヤ 及びべき数n ワイヤ と、補強を施す前の前記配管のクリープ定数K 管 及びべき数n 管 とを取得するステップと、
取得した前記クリープ定数K ワイヤ ,K 管、 前記べき数K ワイヤ, n 管、 前記配管の肉厚s、前記配管の外径D、前記ワイヤの直径dに基づいて、下記(3)式により補強を施したことにより内圧Pが作用した前記配管のクリープ応力σ 管 を求めるステップと、
補強直前の前記配管におけるクリープ破断寿命相関式t R (σ,T)と、補強直前の配管の寿命消費率Dcと、前記クリープ応力σ 管 を求めるステップで求められた前記クリープ応力σ 管 と、前記配管の使用環境温度Tとに基づき、下記(4)式により、補強を施した前記配管の残寿命tを算定するステップと、
を備えることを特徴とする補強を施した高温経年管の寿命予測方法。
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