近年の光アクセス等の普及に伴った様々な大容量サービスに対応するため、無線通信の伝送速度の向上が要求されている。占有する周波数帯域と伝送速度とは比例するため、周波数帯域を拡大することでこれを実現することができる。しかし、実際の周波数資源は有限であるため、周波数帯域の拡大には限界がある。また、WiFi(登録商標)をはじめ、WiMAX(登録商標)やLTE(登録商標)のような様々な無線アクセスシステムが普及しており、特にこれらのシステムに割り当てられているマイクロ波帯の周波数資源は逼迫している状況にある。
そこで、限られた周波数資源環境下において伝送容量を向上するためには、送受信局に複数のアンテナを具備し、MIMOないしはマルチユーザMIMO(MU−MIMO)技術の適用による空間分割多重伝送が有効である。この手法を拡張し、複数の基地局間におけるチャネル情報や、送信信号、受信信号を共有、もしくはそれらを一括で扱う集中制御局を配置し、(MU−)MIMO技術を適用することで隣接する基地局間の干渉を除去可能とする基地局連携も検討されている。このように、同一システム間においては干渉信号に関する情報を事前に把握することで干渉に対処することが可能であった。
また、周波数帯域幅を拡大し、更に伝送容量を向上するためには、複数のシステム間における周波数資源を共用し、複数システム相互の共存を許容する必要がある。異なるシステム間における未知の同一チャネル干渉に対処するためには、非特許文献1に示されるようなアダプティブアレーアンテナ技術が有効である。アダプティブアレーアンテナ技術には様々なアルゴリズムがある。例えば、送受信局間にて互いに共有しているトレーニング信号のような既知情報を利用する最小平均二乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)法や、既知情報を必要としないブラインド型のアルゴリズムとしてはパワーインバージョン(Power Inversion;PI)や定包絡線アルゴリズム(Constant Modulus Algorithm;CMA)などがある。パケットベースの無線通信においてはタイミング検出等のためにトレーニング信号が付与されているためにMMSEは有効であるが、これはタイミング検出が正確に成されていることが前提として必要であり、所望信号よりもレベルの大きい干渉信号が到来する場合にはタイミングを検出できず、正確に動作しない恐れがある。したがって、未知の干渉を抑圧するという観点からは、トレーニング信号を必要としないPIやCMAが有効であると考えられる。
図14は、無線通信システムの構成例を示すブロック図である。同図には、無線通信装置120a及び無線通信装置120bを具備する無線通信システムが示されている。以下、無線通信装置120aと無線通信装置120bとのいずれか一方又は両方を総称して無線通信装置120という。無線通信装置120は、データ入出力部121と、MAC層処理部122と、通信制御部123と、受信信号処理部124と、送信信号処理部126と、スイッチ(SW)127と、アンテナ128とを備えている。なお、図14における構成は、無線通信装置120が複数本のアンテナ128を備える構成である。
データ入出力部121は、宛先局に送信するデータを入力する。また、データ入出力部121は、MAC層処理部122から入力されるデータをユーザに対して出力する。MAC層処理部122は、受信信号処理部124から入力されるデータに対してMAC層に関する処理を施してデータ入出力部121に出力する。また、MAC層処理部122は、データ入出力部121から入力されるデータに対してMAC層に関する処理を施して送信信号処理部126に出力する。
通信制御部123は、アンテナ128における送受信のタイミング、すなわちスイッチ127における送受信の切り替えに関わる制御や、それに伴う受信信号処理部124及び送信信号処理部126における動作タイミングの制御、また通信相手先となる他の無線通信装置120を選択する処理など、全体の通信に係る制御を行う。また、通信制御部123は、自装置の通信相手となる他の無線通信装置120の数に基づいて、帯域や送信電力の割り当てを行う。
受信信号処理部124は、アンテナ128にて受信した受信信号に対して受信信号処理を行う。送信信号処理部126は、MAC層処理部122から入力される送信データに対して送信信号処理を施して、アンテナ128から送信する。スイッチ127は、通信制御部123からの指示に従って、送信時にはアンテナ128と送信信号処理部126とを接続し、受信時にはアンテナ128と受信信号処理部124とを接続する。
無線通信装置120における送信の動作について説明する。
データ入出力部121に宛先局に送信すべきデータが外部から入力されると、MAC層処理部122は、データ入出力部121に入力されたデータに対して無線回線上で送受信されるデータに変換する。MAC層処理部122は、更にMAC層のヘッダ情報を付加する等の処理を行って得られた送信データを送信信号処理部126に出力する。
送信信号処理部126は、MAC層処理部122から出力される送信データに変調処理を施す。送信信号処理部126は、変調処理により得られた送信信号を、スイッチ127を経由してアンテナ128から送信する。
続いて、無線通信装置120における受信の動作について説明する。
宛先から送信された自装置宛ての信号を複数のアンテナ128にて受信すると、受信した信号(受信信号)は、スイッチ127を経由して受信信号処理部124に入力される。受信信号処理部124は、複数のアンテナ128それぞれが受信した受信信号に対してアレー処理を施し、受信信号から所望の信号を取得するための受信ウェイトを算出する。受信信号処理部124は、算出した受信ウェイトを用いて受信信号から所望の信号を取得し、取得した所望の信号に対して復調や復号などの各種信号処理を施してデータを取得する。受信信号処理部124は、取得したデータをMAC層処理部122に出力する。
MAC層処理部122は、受信信号処理部124から出力されるデータに対して、MAC層に関する処理(例えば、データ入出力部121に対して入出力データと無線回線上で送受信されるデータとの変換や、MAC層のヘッダ情報の終端など)を行う。MAC層処理部122は、MAC層に関する処理を施したデータを、データ入出力部121を介して外部ディスプレイないしは外部ネットワーク等の出力装置に出力させる。
なお、特に明記はしていないがアンテナ128においては、送信時には送信信号処理部126においてベースバンド変調処理が施された信号に対してD/A(Digital/Analog:デジタル/アナログ)変換、無線周波数信号へのアップコンバート、更に帯域外の周波数成分を除去するためのフィルタ処理等が行われたのち、送信される。また、受信時にはその逆の処理が施されたのち、ベースバンド受信信号が受信信号処理部124へ入力される。
図15は、無線通信装置120がシングルキャリア通信を行う場合の送信信号処理部126の構成例を示すブロック図である。送信信号処理部126は、変調部131を有している。変調部131は、MAC層処理部122から出力されるデータに対して、誤り訂正符号化処理を実施した後にシンボルマッピング処理を行う。例えば、各シンボルのI−Q平面上の情報に基づいて、所定の帯域幅の搬送波を変調する。また、変調部131は、DFT(Discrete Fourier Transform;離散フーリエ変換)処理のために送信信号に周期性を持たせることを目的として、必要に応じてガードインターバルを挿入する。
図16は、無線通信装置120がOFDM変調方式を用いて通信を行う場合の送信信号処理部126の構成例を示すブロック図である。送信信号処理部126は、変調部131と、直列/並列変換部132と、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform;逆離散フーリエ変換)部133とを有している。変調部131は、MAC層処理部122から出力されるデータに対して、誤り訂正符号化処理を実施した後にシンボルマッピング処理を行う。
直列/並列変換部132は、変調部131によりマッピングされたシンボルに対して直列/並列変換を行い、得られた複数のシンボル列をIDFT部133に出力する。IDFT部133は、直列/並列変換部132から出力される複数のシンボル列に対してIDFTを施して、周波数領域の信号から時間領域に信号に変換してアンテナ128に出力する。また、送信信号処理部126では、必要に応じて、ガードインターバルの挿入や、OFDMシンボル間の波形整形処理などが行われ、送信する電気的な信号をアンテナ128に出力する。
図17は、無線通信装置120がシングルキャリア通信を行う場合の受信信号処理部124の構成例を示すブロック図である。同図には、無線通信装置120に2つのアンテナ128が備えられている場合の構成が示されている。受信信号処理部124は、アダプティブアレー処理部152と、アンテナ128に対応して設けられている乗算器153と、加算器154と、復調部156とを有している。アンテナ128から受信信号処理部124に入力される2つの受信信号(受信信号1、受信信号2)は、アダプティブアレー処理部152と、各受信信号に対して設けられている乗算器153とに入力される。
アダプティブアレー処理部152は、入力される受信信号1及び受信信号2に基づいて、受信信号1及び受信信号2に含まれる干渉信号を抑圧するためのウェイトを所定のアルゴリズム(PI又はCMAなど)により算出する。アダプティブアレー処理部152は、算出したウェイトを乗算器153に入力する。乗算器153は、入力される受信信号1とウェイトとを乗算し、乗算結果を加算器154に出力する。加算器154は、2つの乗算器153から出力される乗算結果を加算し、加算結果を復調部156に入力する。このように、ウェイトの乗算及び合成を含むアレー処理により干渉信号の抑圧された1系統の信号が得られる。
復調部156は、アレー処理が施された受信信号に対して直交復調処理によりデマッピングされたシンボルを取り出し、取り出したシンボルに対して誤り訂正復号処理を施すことで最終的なデータ系列を取得する。復調部156は、取得したデータ系列をMAC層処理部122に出力する。
次に、無線通信装置120がマルチキャリア伝送方式を用いて通信を行う場合の動作を示す。その一例として、OFDM又はOFDMA変調方式を用いて説明する。図18は、無線通信装置120がOFDM変調方式を用いて通信を行う場合の受信信号処理部124の構成を示すブロック図である。同図には、図17に示した構成例と同様に、無線通信装置120に2つのアンテナ128が備えられている場合の構成が示されている。受信信号処理部124は、DFT部151と、複数のアダプティブアレー処理部152と、複数の乗算器153と、複数の加算器154と、並列/直列変換部155と、復調部156とを有している。DFT部151はアンテナ128に対応して設けられている。アダプティブアレー処理部152及び加算器154はサブキャリアごとに設けられている。乗算器153はDFT部151から出力されるサブキャリアの信号ごとに設けられている。
DFT部151は、対応するアンテナ128により受信された受信信号(受信信号1又は受信信号2)を入力し、入力した受信信号に対してDFTを施して、時間領域の信号から周波数領域の信号に変換して各サブキャリアの信号を取得する。DFT部151は、取得した各サブキャリアの信号を、アダプティブアレー処理部152と乗算器153とに出力する。
アダプティブアレー処理部152は、対応するサブキャリアの信号を各DFT部151から入力する。アダプティブアレー処理部152は、受信信号1における対応するサブキャリアの信号と受信信号2における対応するサブキャリアの信号とに基づいて、それぞれの信号に含まれル干渉信号を抑圧するためのウェイトを所定のアルゴリズム(PI又はCMAなど)により算出する。
乗算器153それぞれは、各DFT部151から出力されるサブキャリアの信号ごとに設けられており、対応するサブキャリアの信号と、対応するサブキャリアのアダプティブアレー処理部152により算出されたウェイトとが入力される。乗算器153は、入力されたサブキャリアの信号とウェイトとを乗算し、乗算結果を対応するサブキャリアの加算器154に出力する。加算器154それぞれは、対応するサブキャリアの乗算器153から出力される乗算結果を加算し、加算結果を並列/直列変換部155に入力する。このように、ウェイトの乗算及び合成を含むアレー処理により干渉信号の抑圧された各サブキャリアの信号が得られる。
並列/直列変換部155は、アレー処理が施された各サブキャリアの信号を各加算器154から入力し、入力される各サブキャリアの信号に対して並列/直列変換を施して、1系統の信号を取得し、取得した1系統の信号を復調部156に出力する。復調部156は、並列/直列変換部155から出力される1系統の信号に対して直交復調処理によりデマッピングされたシンボルを取り出し、取り出したシンボルに対して誤り訂正復号処理を施すことで最終的なデータ系列を取得する。復調部156は、取得したデータ系列をMAC層処理部122に出力する。
ここでは、サブキャリアごとのアレー処理を実施する構成として、サブキャリアごとにアダプティブアレー処理部152、乗算器153、加算器154を備える場合を用いて説明したが、この例に限らず本処理は実施可能である。例えば、受信信号処理部124はアダプティブアレー処理部152、乗算器153、加算器154を一つずつ、ないしはサブキャリア数よりも少ない数だけ備え、サブキャリアごとのアレー処理を時分割にて実施する構成としても構わない。また、複数のサブキャリアをまとめて一つのサブチャネルとし、サブチャネル単位で上記アレー処理を実施しても構わない。このように、いかなる方法を用いてもOFDM(マルチキャリア伝送)におけるアレー処理は実現可能である。
なお、図17及び図18の例では受信アンテナが2本の場合を例にとり説明したが、アンテナ数は3本以上であっても構わない。一般に、アンテナ数をN本とすると、アダプティブアレーの適用によりN−1の干渉波を抑圧することが可能となる。
以上のように構成された無線通信装置120では、MMSEやPI、CMAなどのアダプティブアレーアルゴリズムを用いることにより、到来する干渉信号を抑圧して通信を行うことができる。
<本発明に係る実施形態の概要>
以下に説明する各実施形態における無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法では、アダプティブアレーアンテナ技術を適用した無線通信において利用する周波数帯域を複数の帯域に分割して利用する。無線通信システムは、集中制御局装置と、複数の組の無線通信装置とを備える。複数の組の無線通信装置が通信を行う際に、送信側の無線通信装置に接続されている集中制御局装置は、各帯域における送信電力(又は送信電力密度)の割り当てを予め定められている組み合わせから選択し、送信側の無線通信装置それぞれに通知する。送信側の無線通信装置それぞれは、集中制御局装置の選択結果に基づいた各帯域における送信電力(又は送信電力密度)の割り当てにより信号を送信する。
受信側の無線通信装置は、送信側において各帯域に割り当てられた送信電力に応じたアダプティブアレーアルゴリズムでウェイトを帯域ごとに算出する。例えば、所望の信号の送信電力が受信側の無線通信装置において干渉信号より受信電力が低くなるように選択されている場合(SIR<0)にはPI規範を適用し、所望の信号の送信電力が受信側の無線通信装置において干渉信号より受信電力が高くなるように選択されている場合(SIR>0)にはCMA規範を適用してウェイトを算出する。受信側の無線通信装置は、算出した各帯域のウェイトを用いたアレー処理を帯域ごとに行うことにより干渉信号を抑圧し、アレー処理を受信した信号に対して施して得られる信号に復調及び復号等の信号処理を行う。
集中制御局装置は、送信側の無線通信装置における各帯域の送信電力の選択を、送信側の無線通信装置が送信する信号を受信する無線通信装置(受信側の無線通信装置)における干渉信号の数及びアンテナの自由度に基づいて行う。すなわち、受信側の無線通信装置において、干渉信号が存在したとしても、アレー処理により当該干渉信号を抑圧できるように、送信側の無線通信装置それぞれの送信電力を選択する。
このように、受信側の無線通信装置における所望の信号の受信電力と干渉信号の受信電力とに差が生じ、かつアレー処理により干渉信号を抑圧できるように、送信側の無線通信装置における各帯域の送信電力の割り当てを集中制御局装置が選択することにより、アダプティブアレーアルゴリズムの動作領域を拡張させて干渉抑圧効果を向上させる。
図1は、本発明に係る無線通信システムにおける送信電力の割り当ての一例を示す概略図である。同図において、横軸は周波数を示し、縦軸は送信電力を示している。同図には、2組の無線通信装置(送信局Aと受信局Aとの組、送信局Bと受信局Bとの組)が存在し、無線通信において利用する周波数帯域を2つの帯域に分け、各帯域における送信電力に差を設けて信号を送信する例が示されている。
図1(A)には、送信局Aにおける送信電力の割り当てと、送信局Bにおける送信電力の割り当てとが示されている。送信局Aでは、周波数f1を境に分けられた低周波数側の帯域に割り当てる送信電力を、周波数f1を境に分けられた高周波数側の帯域に割り当てる送信電力より低くしている。送信局Bでは、送信局Bの送信信号とは逆に、低周波数側の帯域に割り当てる送信電力を高周波数側の帯域に割り当てる送信電力より高くしている。
図1(B)には、受信局A及び受信局Bにおける受信信号の電力分布が示されている。受信局A及び受信局Bでは、図1(B)に示すように、送信局Aから送信された送信信号と、送信局Bから送信された送信信号とが重畳された信号が受信される。このとき、受信局Aでは、送信局Aにおける各帯域への送信電力の割り当てに応じて、ウェイトの算出に用いるブラインド型アルゴリズムを選択する。
具体的には、低周波数側の帯域では送信局Aからの送信信号における送信電力が低くなっているので受信信号において干渉信号の受信電力より低くなる(SIR<0)可能性が高いため、PI規範を選択する。高周波数側の帯域では送信局Aからの送信信号における送信電力が高くなっているので受信信号において干渉信号の受信電力より高くなる(SIR>0)可能性が高いため、CMA規範を選択する。また、受信局Bでも、同様に、送信局Bにおける各帯域への送信電力の割り当てに応じて、ウェイトの算出に用いるアダプティブアレーアルゴリズムを選択する。受信局Bでは、低周波数側の帯域においてCMA規範を選択し、高周波数側の帯域においてPI規範を選択する。
ここで、アダプティブアレーアルゴリズムの例としてブラインド型アルゴリズムであるCMA及びPIを挙げたが、これに限定されることなく、いかなるアダプティブアレーアルゴリズムも適用可能である。例えば、PIと同様の特徴を持つアルゴリズムとして、固有ベクトルビームスペース法(Eigenvector Beamspace Adaptive Array;EBAA)も適用可能である。また、CMAに代えてMMSEを用いてもよい。また、ある帯域の受信信号に複数のアダプティブアレーアルゴリズムを適用してもよい。以下の各実施形態においては、一例としてCMA規範及びPI規範に基づくアルゴリズムを用いて説明を行う。
<第1の実施形態>
図2は、第1の実施形態における無線通信システムの構成例を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態における無線通信システムは、集中制御局装置110、複数の無線通信装置130、及び、複数の無線通信装置120を備えている。以下、無線通信装置120及び無線通信装置130が1本ないしは2本のアンテナを備えた場合を例として説明するが、無線通信装置130においては2本以上、また無線通信装置120においては3本以上のアンテナを備えていてもよい。
集中制御局装置110は、無線通信装置130それぞれと通信可能に接続されている。集中制御局装置110は、各無線通信装置130が通信している無線通信装置120におけるアンテナの自由度を無線通信装置130それぞれから取得する。集中制御局装置110は、取得した各無線通信装置120におけるアンテナの自由度に基づいて、無線通信装置130それぞれにおける各帯域の送信電力を定める。集中制御局装置110は、無線通信装置130ごとに定めた各帯域の送信電力の割り当てを示す情報を各無線通信装置130に送信する。
無線通信装置130は、データ入出力部121と、MAC層処理部122と、通信制御部129と、受信信号処理部124と、送信信号処理部126と、スイッチ(SW)127と、アンテナ128とを備えている。無線通信装置130は、通信制御部123に代えて通信制御部129を備えている点が図14に示した無線通信装置120の構成と異なっている。通信制御部129は、集中制御局装置110から通知される各帯域に対する送信電力の割り当てを示す情報を受信し、当該送信電力の割り当てによる送信を送信信号処理部126に行わせる制御をする。また、通信制御部129は、当該送信電力の割り当てに応じたアダプティブアレーアルゴリズムによる信号処理を受信信号処理部124に行わせる制御をする。本実施形態における無線通信装置120は、図14に示した無線通信装置120と同じ機能部を有している。
なお、本実施形態の無線通信装置120及び無線通信装置130における、送信信号処理部126と受信信号処理部124との構成は、以下に説明するように図15から図18に説明した構成と異なっている。
図3は、本実施形態における送信信号処理部126の構成例を示すブロック図である。同図に示す送信信号処理部126の構成は、シングルキャリア通信を行う場合の構成である。送信信号処理部126は、変調部131と、フィルタ部141−1〜141−kと、電力割当部142−1〜142−kと、信号合成部143とを有している。フィルタ部141−1〜141−k及び電力割当部142−1〜142−kは、本実施形態における無線通信装置120が通信において利用する周波数帯域をk(k≧2)分割した帯域(サブチャネル)それぞれに対応して設けられている。
変調部131は、MAC層処理部122から出力される送信データに対して、誤り訂正符号化処理を実施した後にシンボルマッピング処理を行い、所定の帯域幅の搬送波を変調する。変調部131は、変調により得られた送信信号を各フィルタ部141−1〜141−kに出力する。また、変調部131は、集中制御局装置110により送信電力が割り当てられた帯域を用いて変調をする。
フィルタ部141−1〜141−kそれぞれは、自身に対応付けられているサブチャネルの信号成分を通過させるバンドパスフィルタを用いて構成される。フィルタ部141−1〜141−kは、変調部131から出力される送信信号のうち、自身に対応付けられているサブチャネルにおける成分の信号を、当該サブチャネルに対応付けられている電力割当部142−1〜142−kに入力する。
電力割当部142−1〜142−kは、フィルタ部141−1〜141−kから入力される各サブチャネルの信号に対して、集中制御局装置110により割り当てられた送信電力をサブチャネルごとに割り当てる。具体的には、具体的には、電力割当部142−1〜142−kは、入力される各サブチャネルの信号を、割り当てられた送信電力になるように増幅又は減衰させる。電力割当部142−1〜142−kは、各サブチャネルの信号を割り当てた電力にして信号合成部143に出力する。
なお、k個のサブチャネルそれぞれに割り当てる送信電力は、通信を行う無線通信装置130と無線通信装置120とで共有しておく。なお、集中制御局装置110は、k個のサブチャネルそれぞれに割り当てる送信電力の総和が一定となるように各サブチャネルに送信電力を割り当てるようにしてもよい。
信号合成部143は、電力割当部142−1〜142−kから出力される各サブチャネルの信号を一つの信号に合成し、合成した信号を送信信号としてアンテナ128に出力し、宛先局の無線通信装置120に向けて送信する。
図4は、本実施形態における受信信号処理部124の構成例を示すブロック図である。同図に示す受信信号処理部124の構成は、2つのアンテナ128にて受信した信号が受信信号1及び受信信号2として入力される構成であってシングルキャリア通信を行う場合の構成である。受信信号処理部124は、フィルタ部161−1−1〜161−1−kと、フィルタ部161−2−1〜161−2−kと、アダプティブアレー処理部152−1〜152−kと、乗算器153−1−1〜153−1−kと、乗算器153−2−1〜153−2−kと、加算器154−1〜154−kと、信号合成部164と、復調部156と、アレー処理制御部163とを有している。
フィルタ部161−1−1〜161−1−kと、フィルタ部161−2−1〜161−2−kと、アダプティブアレー処理部152−1〜152−kと、乗算器153−1−1〜153−1−kと、乗算器153−2−1〜153−2−kと、加算器154−1〜154−kとは、通信において利用する周波数帯域をk個に分割したサブチャネルに対応して設けられている。
フィルタ部161−1−1〜161−1−kと、フィルタ部161−2−1〜161−2−kとは、自装置に備えられている2つのアンテナ128に対応して設けられている。2つのアンテナ128のいずれか一方のアンテナ128で受信された受信信号1がフィルタ部161−1−1〜161−1−kそれぞれに入力され、他方のアンテナ128で受信された受信信号2がフィルタ部161−2−1〜161−2−kに入力される。
フィルタ部161−1−1〜161−1−kは、送信信号処理部126が有するフィルタ部141−1〜141−kと同様に、予め対応付けられているサブチャネルの信号成分を通過させるバンドパスフィルタを用いて構成される。フィルタ部161−1−1〜161−1−kは、入力される受信信号1のうち、自身に対応付けられているサブチャネルにおける成分の信号を、当該サブチャネルに対応付けられている乗算器153−1−1〜153−1−kに出力する。
フィルタ部161−2−1〜161−2−kは、フィルタ部161−1−1〜161−1−kと同様に、入力される受信信号2のうち、自身に対応付けられているサブチャネルの成分を、当該サブチャネルに対応付けられている乗算器153−2−1〜153−2−kに出力する。
アダプティブアレー処理部152−1〜152−kそれぞれは、自身に対応付けられているサブチャネルの信号を、フィルタ部161−1−1〜161−1−kとフィルタ部161−2−1〜161−2−kとから入力する。アダプティブアレー処理部152−1〜152−kは、アレー処理制御部163に指示されるブラインド型アルゴリズムを、受信信号1及び受信信号2のサブチャネルの信号に対して適用し、受信信号1及び受信信号2に対するウェイトを算出する。
アダプティブアレー処理部152−1〜152−kは、算出したウェイトであって受信信号1のサブチャネルに対するウェイトを、対応するサブチャネルの信号を入力とする乗算器153−1−1〜153−1−kに出力する。また、アダプティブアレー処理部152−1〜152−kは、算出したウェイトであって受信信号2のサブチャネルに対するウェイトを、対応するサブチャネルの信号を入力とする乗算器153−2−1〜153−2−kに出力する。
アレー処理制御部163は、通信相手(送信側)において各サブチャネルに割り当てられる送信電力に基づいて、ウェイトの算出に用いるブラインド型アルゴリズムをアダプティブアレー処理部152−1〜152−kごとに選択する。アレー処理制御部163は、アダプティブアレー処理部152−1〜152−kごとに選択したブラインド型アルゴリズムを用いてウェイトを算出することを指示する制御信号をアダプティブアレー処理部152−1〜152−kに出力する。
アレー処理制御部163におけるブラインド型アルゴリズムの選択では、割り当てられる送信電力が最も高い帯域にはCMA規範が選択され、割り当てられる送信電力が「0」以外で最も低い帯域にはPI規範が選択される。他の帯域においては、予め定められた閾値以上の送信電力が割り当てられる帯域にはCMA規範が選択され、閾値未満の送信電力が割り当てられる帯域にはPI規範が選択される。
なお、通信相手が送信する送信信号において各サブチャネルに割り当てる送信電力のパターン(組み合わせ)は共有されている。無線通信装置130においては、割り当てパターン(送信電力のパターン)は通信制御部129を経由して集中制御局装置110において定められた割り当てパターンが用いられる。また、無線通信装置120においては、例えば、通信相手の無線通信装置130との間における不図示の制御回線を通じて予め通知される。
乗算器153−1−1〜153−1−kは、自身に対応するサブチャネルの信号をフィルタ部161−1−1〜161−1−kから入力し、自身に対応するサブチャネルの信号に対するウェイトをアダプティブアレー処理部152−1〜152−kから入力する。乗算器153−1−1〜153−1−kは、入力したサブチャネルの信号とウェイトとを乗算し、対応するサブチャネルの加算器154−1〜154−kに乗算結果を出力する。
乗算器153−2−1〜153−2−kは、自身に対応するサブチャネルの信号をフィルタ部161−2−1〜161−2−kから入力し、自身に対応するサブチャネルの信号に対するウェイトをアダプティブアレー処理部152−1〜152−kから入力する。乗算器153−2−1〜153−2−kは、入力したサブチャネルの信号とウェイトとを乗算し、対応するサブチャネルの加算器154−1〜154−kに乗算結果を出力する。
加算器154−1〜154−kそれぞれは、自身に対応するサブチャネルの信号を乗算器153−1−1〜153−1−kと、乗算器153−2−1〜153−2−kとから入力する。加算器154−1〜154−kは、受信信号1のサブチャネルの信号と、受信信号2のサブチャネルの信号とを加算し、加算結果を信号合成部164に出力する。信号合成部164は、加算器154−1〜154−kから入力される加算された各サブチャネルの信号を一つの信号に合成し、合成した信号を復調部156に出力する。
復調部156は、信号合成部164において合成された信号に対して直交復調処理によりデマッピングされたシンボルを取り出し、取り出したシンボルに対して誤り訂正復号処理を施すことで最終的なデータ系列を取得する。復調部156は、取得したデータ系列をMAC層処理部122に出力する。
なお、特に明記はしていないが、受信信号処理部124の前段、もしくはフィルタ部161の前段においては対域外の周波数成分を除去するためのフィルタ処理や、受信した無線周波数(RF)信号を中心周波数(IF)帯の信号に変換する処理、アナログ/デジタル(A/D)変換処理などが実施され、続いてフィルタ部161から信号合成部164までのアダプティブアレー処理が実施される。復調部156においては、干渉が抑圧された信号に対してタイミング検出処理等が実施され、ベースバンド信号への変換処理の後に復調処理が実施される。CMAやPIのようなブラインド型のアダプティブアレーアルゴリズムを用いる場合には、当該アレー処理により事前に干渉信号を抑圧することで、より精度の高い所望信号が得られるため、タイミング検出処理を正確に行い、続く復調処理を実施することが可能となる。
もしくは、前記のタイミング検出処理やベースバンド信号への変換処理を、A/D変換処理の後段、フィルタ部161の前段に実施し、アダプティブアレー処理をベースバンド信号に対して実施する構成としてもよい。アダプティブアレーアルゴリズムとしてMMSEのような、送受において既知であるトレーニング信号を必要とするものを用いる場合には、アレー処理の前に受信信号におけるトレーニング信号部分が必要となるため、事前にタイミング検出及びトレーニング信号の抽出処理が必要となる。
図5は、本実施形態において各サブチャネルに割り当てる電力密度を示すパターン・テーブルの一例を示す図である。同図に示すパターン・テーブルは、割り当てパターンを識別する識別番号の項目と、通信において利用する周波数帯域を分割した際の1番目の帯域からN番目の帯域それぞれに対応する項目との列を有している。パターン・テーブルにおいて各行は電力の割り当てパターンごとに存在する。同図に示す例では、M通りの電力割り当てパターンが示されている。なお、総送信電力が一定となるように割り当てパターンが定められている。Bnは通信において利用する周波数帯域を分ける際の各帯域の当該周波数帯域に占める割合を示し、Pnは分けた各帯域の送信電力(電力密度)の比を示している。
同図に示すパターン・テーブルでは、周波数帯域を2分割し各帯域に送信電力を割り当てるパターン(No.1〜No.3)、周波数帯域を3分割し各帯域に送信電力を割り当てるパターン(No.4〜No.7)、…、周波数帯域をM分割し各帯域に送信電力を割り当てるパターン(No.M)というように段階的に周波数帯域の分割数が段階的に定義されている。また、送信電力の割り当てを段階的に変化させている。なお、割り当てる送信電力が「0」であるとは、当該帯域を用いないことを示している。
また、パターン・テーブルに記憶されている割り当てパターンでは、各帯域に割り当てる送信電力に差を設けて、受信側においてPI規範又はCMA規範によるウェイトの算出が機能するようにしている。すなわち、他の無線通信装置120や無線通信装置130から送信される送信信号(干渉信号)が受信側の無線通信装置120又は無線通信装置130において受信された際に、干渉信号の受信電力と所望信号の受信電力とに差が生じやすいように(SIR>0又はSIR<0となるように)している。また、パターン・テーブルは、集中制御局装置110に接続される無線通信装置130の数と、無線通信装置130と通信をする無線通信装置120が有するアンテナの数との組み合わせに応じて予め定められる。
集中制御局装置110は、このようなパターン・テーブルを予め有している。集中制御局装置110は、自装置に接続されている無線通信装置130の数と、各無線通信装置130と通信を行う無線通信装置120におけるアンテナの自由度とに基づいて、無線通信装置130それぞれにおいて適用する割り当てパターンを選択する。集中制御局装置110は、各帯域の送信電力の割り当てを示す情報として、選択した割り当てパターンを示す情報を無線通信装置130に送信する。
図6は、本実施形態の集中制御局装置110における割り当て処理を示すフローチャートである。集中制御局装置110は、無線通信装置130と無線通信装置120との間で通信が開始される前に、自装置に接続されている無線通信装置130の数を検出する(ステップS11)。通信相手となる無線通信装置130以外の無線通信装置130は、各無線通信装置120において干渉信号の発信源となる可能性がある。そのため、無線通信装置130の数を検出することにより、各無線通信装置120における干渉信号の数の最大値を予め把握することができる。なお、ステップS11では、集中制御局装置110は、単に自装置に接続されている無線通信装置130を検出するのではなく、無線通信装置120と通信する可能性がある無線通信装置130を検出するようにしてもよい。
集中制御局装置110は、ステップS11において検出した無線通信装置130ごとに、当該無線通信装置130と通信を行う無線通信装置120が備えるアンテナ128の本数(アンテナの自由度)を取得する(ステップS12)。無線通信装置120のアンテナの自由度の取得は、ステップS11において検出した無線通信装置130を介して行う。なお、アンテナの自由度を取得できない無線通信装置120に関しては、1本のアンテナ128を備えるものとして扱うようにしてもよい。
集中制御局装置110は、取得した無線通信装置130の数と、各無線通信装置130と通信する無線通信装置120のアンテナの自由度とに基づいて、パターン・テーブルに記憶されている割り当てパターンから、各無線通信装置130に対する割り当てパターンを選択する(ステップS13)。割り当てパターンの選択においては、各無線通信装置120が受信すべき信号が割り当てられる帯域において、無線通信装置120と通信をする無線通信装置130以外の他の無線通信装置130が送信する信号の数が無線通信装置120のアンテナの自由度を超えないように、割り当てパターンを選択する。この場合には、例えば、図5に示したパターン・テーブルにおける割り当てパターンNo.5や、割り当てパターンNo.7などのように、一部の帯域において送信電力を「0」すなわち当該帯域を通信帯域として用いない割り当てパターンが選択される。
集中制御局装置110は、ステップS13において選択した割り当てパターンを、各帯域の送信電力の割り当てを示す情報として各無線通信装置130に送信して通知する(ステップS14)。ななお、集中制御局装置110は、選択した割り当てパターンにおける各帯域及び送信電力を示す情報を無線通信装置130に送信してもよいし、あるいは各無線通信装置130に集中制御局装置110が記憶しているパターン・テーブルと同じパターン・テーブルを予め設けておき、集中制御局装置110が割り当てパターンNoを各無線通信装置130に送信するようにしてもよい。
集中制御局装置110は、各無線通信装置130に対して、ステップS14において通知した割り当てパターンによる無線通信装置120との通信を開始することを指示する(ステップS15)。以降、集中制御局装置110が各無線通信装置130に割り当てパターンの変更を通知するまで、無線通信装置130はステップS14において通知された割り当てパターンで無線通信装置120との通信を行う。
図7は、本実施形態における無線通信システムの適用例を示す図である。ここでは、集中制御局装置110に3つの無線通信装置130が通信可能に接続され、各無線通信装置130それぞれが異なる1つの無線通信装置120と通信する場合について説明する。3つの無線通信装置120それぞれは2つのアンテナ128を備えている。以下、3つの無線通信装置130と3つの無線通信装置120とのそれぞれを区別するために、無線通信装置130a、130b、130cと無線通信装置120a、120b、120cとして説明する。
同図において実線矢印を用いて示しているように、無線通信装置130aと無線通信装置120aとが通信をし、無線通信装置130bと無線通信装置120bとが通信をし、無線通信装置130cと無線通信装置120cとが通信をする。また、同図において破線矢印を用いて示しているように、無線通信装置130aから送信される信号は無線通信装置120bと無線通信装置120cとにおいて干渉信号として受信される。無線通信装置130bから送信される信号は無線通信装置120cと無線通信装置120aとにおいて干渉信号として受信される。無線通信装置130cから送信される信号は無線通信装置120aと無線通信装置120bとにおいて干渉信号として受信される。
このような構成の無線通信システムにおいて、集中制御局装置110は、前述の割り当て処理(図6)を行うことにより、自装置に3つの無線通信装置130a、130b及び130cが接続されていること、及び、各無線通信装置130が通信する無線通信装置120a、120b及び120cのアンテナ数が2つであることを取得する。集中制御局装置110は、取得した無線通信装置130の数、及び、無線通信装置120のアンテナ数に基づいて、パターン・テーブルから無線通信装置130a、130b及び130cに対する割り当てパターンを選択する。
同図に示す一例では、無線通信において利用する周波数帯域を周波数f2及び周波数f3を境に3つの帯域(低帯域≦f2<中帯域≦f3<高帯域)に分け、無線通信装置130a、130b及び130cに対して異なる割り当てパターンが選択されている。無線通信装置130aは、周波数f3より高い周波数の高帯域において高い送信電力で、周波数f3より低く周波数f2より高い中帯域において低い送信電力で、周波数f2より低い低帯域を用いずに信号を送信する。無線通信装置130bは、高帯域を用いず、中帯域において高い送信電力で、低帯域において低い送信電力で信号を送信する。無線通信装置130cは、高帯域において低い送信電力で、中帯域を用いず、低帯域において高い送信電力で信号を送信する。
このように、集中制御局装置110が各無線通信装置130に対して割り当てパターンを選択することにより、各無線通信装置120において、通信相手の無線通信装置130から送信される信号(所望信号)と他の無線通信装置130から送信される信号(干渉信号)との受信電力に差を生じさせることができる。また、各無線通信装置120において抑圧の対象となる干渉信号の数がアンテナの自由度を超えないように割り当てパターンが選択されることにより、アレー処理を行うことにより干渉信号を抑圧することができる。このとき、無線通信装置120は、通信相手の無線通信装置130における送信電力の割り当てに応じて、各帯域において用いるアダプティブアレーアルゴリズムを選択し、選択したアルゴリズムにてアレー処理で用いるウェイトを算出する。
前述の割り当てパターンの選択により、無線通信装置120aが受信する所望信号の受信電力は、高帯域において干渉信号の受信電力より高く(SIR>0)、中帯域において干渉信号の受信電力より低く(SIR<0)なっている。無線通信装置120aでは、高帯域においてCMA規範を用いてウェイトを算出し、中帯域においてPI規範を用いてウェイトを算出することになる。
また、無線通信装置120bが受信する所望信号の受信電力は、中帯域において干渉信号の受信電力より高く(SIR>0)、低帯域において干渉信号の受信電力より低く(SIR<0)なっている。無線通信装置120bでは、中帯域においてCMA規範を用いてウェイトを算出し、低帯域においてPI規範を用いてウェイトを算出することになる。
また、無線通信装置120cが受信する所望信号の受信電力は、高帯域において干渉信号の受信電力より低く(SIR<0)、低帯域において干渉信号の受信電力より高く(SIR>0)なっている。無線通信装置120cでは、高帯域においてPI規範を用いてウェイトを算出し、低帯域においてCMA規範を用いてウェイトを算出することになる。
以上のように、周波数帯域を利用して通信を行う無線通信装置130と無線通信装置120との組の数と、無線通信装置120のアンテナの自由度とに基づいて、周波数帯域を分割した複数の帯域の割り当て及び各帯域における送信電力(又は送信電力密度)を示す割り当てパターンを集中制御局装置110が選択して無線通信装置130に通知する。集中制御局装置110によって選択された割り当てパターンに従って各無線通信装置130が無線通信装置120宛てに信号を送信する。これにより、各無線通信装置120では、所望信号の送信電力に応じて選択したアダプティブアレーアルゴリズムでウェイトを帯域ごとに算出して、当該ウェイトを用いたアレー処理により、適切に干渉信号を抑圧して所望信号に対する復調及び復号等の信号処理を行うことができる。その結果、無線通信システムでは、アダプティブアレーアルゴリズムの動作領域を拡張し、干渉抑圧効果を向上させることができる。
<第2の実施形態>
第1の実施形態の無線通信システムではシングルキャリア通信を行う場合の無線通信装置120及び無線通信装置130の構成を示した。第2の実施形態の無線通信システムではマルチキャリア伝送方式により通信を行う場合を説明する。その一例として、OFDM、もしくはOFDMA変調方式により通信を行う場合の無線通信装置120及び無線通信装置130の構成を説明する。
図8は、第2の実施形態における送信信号処理部126の構成を示すブロック図である。送信信号処理部126は、変調部131と、直列/並列変換部132と、電力割当部142−1〜142−kと、IDFT部133とを有している。電力割当部142−1〜142−kは、本実施形態におけるOFDM又はOFDMA変調方式で用いられるk個のサブキャリアに対応して設けられている。
変調部131は、第1の実施形態と同様に、MAC層処理部122から出力される送信データに対して、誤り訂正符号化及び変調などの信号処理を行う。変調部131は、信号処理を施して得られた送信信号を直列/並列変換部132に出力する。直列/並列変換部132は、入力された送信信号を各サブキャリアに対応するk個の信号列に変換し、それぞれの信号列を電力割当部142−1〜142−kに入力する。
電力割当部142−1〜142−kは、直列/並列変換部132から入力される信号列に対してサブキャリアごとに割り当てられた所定の電力となるように信号レベルの調整(増幅又は減衰)を行い、IDFT部133に出力する。電力割当部142−1〜142−kによる信号レベルの調整は、集中制御局装置110において定められた割り当てパターンに応じて行われる。IDFT部133は、電力割当部142−1〜142−kから出力される信号列を周波数領域の信号から時間領域の信号に変換してアンテナ128に出力する。
図9は、本実施形態における受信信号処理部124の構成を示すブロック図である。同図に示す受信信号処理部124の構成は、第1の実施形態と同様に、2つのアンテナ128にて受信した信号が受信信号1及び受信信号2として入力される構成である。受信信号処理部124は、DFT部151−1及び151−2と、アダプティブアレー処理部152−1〜152−kと、乗算器153−1−1〜153−1−kと、乗算器153−2−1〜153−2−kと、加算器154−1〜154−kと、並列/直列変換部155と、復調部156と、アレー処理制御部163とを有している。
アダプティブアレー処理部152−1〜152−kと、乗算器153−1−1〜153−1−kと、乗算器153−2−1〜153−2−kと、加算器154−1〜154−kとは、サブキャリアに対応して設けられている。なお、アダプティブアレー処理部152−1〜152−kと、乗算器153−1−1〜153−1−kと、乗算器153−2−1〜153−2−kと、加算器154−1〜154−kと、復調部156とは第1の実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
DFT部151−1には、無線通信装置120に備えられている2つのアンテナ128のいずれか一方のアンテナ128で受信された受信信号1が入力される。DFT部151−2には、他方のアンテナ128で受信された受信信号2が入力される。DFT部151−1は、入力された受信信号1を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換し、当該変換により得られたk個のサブキャリアの信号をアダプティブアレー処理部152−1〜152−kと乗算器153−1−1〜153−1−kとに出力する。DFT部151−2は、入力された受信信号2を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換し、当該変換により得られたk個のサブキャリアの信号をアダプティブアレー処理部152−1〜152−kと乗算器153−2−1〜153−2−kとに出力する。
アレー処理制御部163は、通信相手(送信側)において各サブキャリアに割り当てられる送信電力に基づいて、ウェイトの算出に用いるブラインド型アルゴリズムをアダプティブアレー処理部152−1〜152−kごとに選択する。アレー処理制御部163は、アダプティブアレー処理部152−1〜152−kごとに選択したブラインド型アルゴリズムを用いてウェイトを算出することを指示する制御信号をアダプティブアレー処理部152−1〜152−kに出力する。ブラインド型アルゴリズムの選択は、第1の実施形態と同様であり、集中制御局装置110において定められた割り当てパターンに応じた選択が行われる。
なお、通信相手が送信する送信信号において各サブキャリアに割り当てる送信電力のパターン(組み合わせ)は共有されている。無線通信装置130においては、割り当てパターン(送信電力のパターン)は通信制御部129を経由して集中制御局装置110において定められた割り当てパターンが用いられる。また、無線通信装置120においては、例えば、通信相手の無線通信装置130との間における不図示の制御回線を通じて予め通知される。
並列/直列変換部155には、乗算器153−1−1〜153−1−kと乗算器153−2−1〜153−2−kと加算器154−1〜154−kとにおいてアレーアンテナ処理が施された各サブキャリアの信号が入力される。並列/直列変換部155は、各サブキャリアの信号に対して並列/直列変換を施して一つの信号列に変換して復調部156に出力する。
なお、特に明記はしていないが、受信信号処理部124の前段、もしくはDFT部151の前段においては対域外の周波数成分を除去するためのフィルタ処理や、受信した無線周波数(RF)信号を中心周波数(IF)帯の信号に変換する処理、アナログ/デジタル(A/D)変換処理などが実施され、続いてDFT部151から並列/直列変換部155までのアダプティブアレー処理が実施される。復調部156においては、干渉が抑圧された信号に対してタイミング検出処理等が実施され、ベースバンド信号への変換処理の後に復調処理が実施される。CMAやPIのようなブラインド型のアダプティブアレーアルゴリズムを用いる場合には、当該アレー処理により事前に干渉信号を抑圧することで、より精度の高い所望信号が得られるため、タイミング検出処理を正確に行い、続く復調処理を実施することが可能となる。
もしくは、前記のタイミング検出処理やベースバンド信号への変換処理を、A/D変換処理の後段、DFT部151の前段に実施し、アダプティブアレー処理をベースバンド信号に対して実施する構成としてもよい。アダプティブアレーアルゴリズムとしてMMSEのような、送受において既知であるトレーニング信号を必要とするものを用いる場合には、アレー処理の前に受信信号におけるトレーニング信号部分が必要となるため、事前にタイミング検出及びトレーニング信号の抽出処理が必要となる。
本実施形態における集中制御局装置110は、第1の実施形態における集中制御局装置110と同様に、接続されている無線通信装置130の数と、各無線通信装置130と通信を行う無線通信装置120のアンテナの自由度とに基づいて、各無線通信装置130に対する割り当てパターンを選択する。このとき、無線通信装置120のアンテナの自由度を超える空間分割多重化を行わないように割り当てパターンを選択することにより、無線通信装置120におけるアダプティブアレーアルゴリズムを用いた干渉信号の抑圧(アレー処理)が行われるようにする。なお、第1の実施形態では通信に利用する周波数帯域を分割する複数のサブチャネルに対して送信電力を割り当てていたが、本実施形態では複数のサブキャリアに対して送信電力を割り当てることになる。
図10は、本実施形態における無線通信システムの適用例を示す図である。ここでは、第1の実施形態において示した適用例(図7)と同様に、集中制御局装置110に3つの無線通信装置130が通信可能に接続され、各無線通信装置130それぞれが異なる1つの無線通信装置120と通信する場合について説明する。3つの無線通信装置120それぞれは2つのアンテナ128を備えている。図7に示した場合と同様に、3つの無線通信装置130を3つの無線通信装置120とを区別するために、無線通信装置130a、130b、130cと無線通信装置120a、120b、120cとして説明する。
同図において実線を用いて示しているように、無線通信装置130aと無線通信装置120aとが通信をし、無線通信装置130bと無線通信装置120bとが通信をし、無線通信装置130cと無線通信装置120cとが通信をする。また、同図において破線を用いて示しているように、無線通信装置130aから送信される信号は無線通信装置120bと無線通信装置120cとにおいて干渉信号として受信される。無線通信装置130bから送信される信号は無線通信装置120cと無線通信装置120aとにおいて干渉信号として受信される。無線通信装置130cから送信される信号は無線通信装置120aと無線通信装置120bとにおいて干渉信号として受信される。
このような構成の無線通信システムにおいて、集中制御局装置110は、第1の実施形態において説明した割り当て処理(図6)を行うことにより、自装置に3つの無線通信装置130a、130b及び130cが接続されていること、及び、各無線通信装置130が通信する無線通信装置120a、120b及び120cのアンテナ数が2つであることを取得する。集中制御局装置110は、取得した無線通信装置130の数、及び、無線通信装置120のアンテナ数に基づいて、パターン・テーブルから無線通信装置130a、130b及び130cに対する割り当てパターンを図11に示すように選択する。
図11は、本実施形態において集中制御局装置110が無線通信装置130a、130b及び130cに対して割り当てる送信電力のパターンの一例を示す図である。同図に示すように、集中制御局装置110は、各無線通信装置120が有するアンテナ数が2つであるため干渉信号数を1つにするように、各サブキャリアにおいて2つの無線通信装置130に対して送信電力が割り当てられる割り当てパターンをパターン・テーブルから選択する。
以上のように、複数のサブキャリアを利用して通信を行う無線通信装置130と無線通信装置120との組の数と、無線通信装置120のアンテナの自由度とに基づいて、サブキャリアの割り当て及び各サブキャリアにおける送信電力(又は送信電力密度)を示す割り当てパターンを集中制御局装置110が選択して無線通信装置130に通知する。集中制御局装置110によって選択された割り当てパターンに従って各無線通信装置130が無線通信装置120宛てに信号を送信する。これにより、各無線通信装置120では、所望信号の送信電力に応じて選択したアダプティブアレーアルゴリズムでウェイトをサブキャリアごとに算出して、当該ウェイトを用いたアレー処理により、適切に干渉信号を抑圧して所望信号に対する復調及び復号等の信号処理を行うことができる。その結果、無線通信システムでは、アダプティブアレーアルゴリズムの動作領域を拡張し、干渉抑圧効果を向上させることができる。
<第3の実施形態>
第1の実施形態の無線通信システムでは、各無線通信装置120において通信相手の無線通信装置130以外の他の無線通信装置130から受信する信号(干渉信号)の数が無線通信装置120のアンテナ数(アンテナの自由度)を超えないように集中制御局装置110が各無線通信装置130に対する割り当てパターンを選択する構成を説明した。これに対して、第3の実施形態の無線通信システムでは、割り当てパターンの選択の後に、各無線通信装置120において通信相手の無線通信装置130以外の他の無線通信装置130から受信する信号の干渉量(例えば、受信電力)などに基づいた、追加の帯域割り当てを行う。すなわち、無線通信装置130に対する帯域及び送信電力を追加して割り当てることにより、共用帯域を増加させて周波数利用効率を向上させる。
第3の実施形態における無線通信システムの構成は、第1の実施形態における無線通信システムの構成と同じであり、集中制御局装置110が以下の割り当て処理(図12)を行う。図12は、第3の実施形態の集中制御局装置110における割り当て処理を示すフローチャートである。集中制御局装置110は、無線通信装置130と無線通信装置120との間で通信が開始される前に、自装置に接続されている無線通信装置130の数を検出する(ステップS21)。
集中制御局装置110は、ステップS21において検出した無線通信装置130ごとに、当該無線通信装置130と通信を行う無線通信装置120が備えるアンテナ128の本数(アンテナの自由度)を取得する(ステップS22)。無線通信装置120のアンテナの自由度の取得は、ステップS21において検出した無線通信装置130を介して行う。なお、アンテナの自由度を取得できない無線通信装置120に関しては、1本のアンテナ128を備えるものとして扱うようにしてもよい。
集中制御局装置110は、接続されている無線通信装置130それぞれと通信する無線通信装置120における受信品質を取得する(ステップS23)。無線通信装置120における受信品質は、例えば、当該無線通信装置120が通信相手とする無線通信装置130から送信される信号の受信電力及び伝搬特性や、通信相手以外の無線通信装置130から送信される信号(干渉信号)の受信電力及び伝搬特性などである。また、受信品質の取得において集中制御局装置110は、例えば、接続されている無線通信装置130に既知の信号(パイロット信号など)を時分割で順に送信させ、各無線通信装置120に既知の信号を受信させることにより行う。
集中制御局装置110は、第1の実施形態におけるステップS13と同様に、取得した無線通信装置130の数と、各無線通信装置130と通信する無線通信装置120のアンテナの自由度とに基づいて、パターン・テーブルに記憶されている割り当てパターンから、各無線通信装置130に対する割り当てパターンを選択する(ステップS24)。
集中制御局装置110は、ステップS24において選択した割り当てパターンにおいて、ある帯域における干渉信号の数が無線通信装置120のアンテナの自由度を超えてしまう場合であっても、当該帯域において干渉信号の受信電力が所望信号の受信電力に対して十分に低く、例えば雑音として処理できるようなときには当該帯域における送信電力の割り当てを行う(ステップS25)。例えば、送信電力が「0」となっている帯域があれば、当該帯域において所望信号を受信する無線通信装置120の受信品質に基づいて、追加の送信電力の割り当てが可能か否かを閾値などを用いて判定し、追加の割り当てによる干渉信号が閾値により定めた条件を満たせば許容範囲内と判断し、当該帯域に送信電力を追加して割り当てる。
具体的には、割り当てる送信電力が「0」となっている帯域が存在する場合、当該帯域に送信電力を割り当てた際に、割り当てられた無線通信装置130の通信相手以外の無線通信装置120における影響(干渉信号の受信電力など)が許容範囲内であれば、当該帯域に追加の送信電力を割り当てる。許容範囲内であるとは、例えば干渉信号に対してアレー処理を施さずに通信相手の無線通信装置130から送信される信号(所望信号)を取得できるときや、干渉信号の受信電力が所望信号に対して予め設けた閾値の条件を満たすときなどである。
なお、送信電力が「0」となっている帯域への追加の割り当ては、例えば図5の割り当てパターンNo.5が選択されている場合、帯域1に追加の割り当てを行うために割り当てパターンNo.4を新たに選択することにより行われる。これにより、各帯域における送信電力の和、すなわち総送信電力を一定にしつつ、送信電力の割り当てを変更することができる。また、ステップS24において選択した送信電力の割り当てからの変更の度合を低くするために、追加して割り当てる送信電力は既に割り当てられている送信電力を超えないように割り当てるようにしてもよい。また、追加して割り当てた帯域においては、アレー処理を行わない、又はCMA規範を適用するように指示する制御情報を無線通信装置130や無線通信装置120に通知するようにしてもよい。
集中制御局装置110は、ステップS24において選択した割り当てパターン、又はステップS25において追加の割り当てを行った場合には変更後の割り当てパターンを、各帯域の送信電力の割り当てを示す情報として各無線通信装置130に送信して通知する(ステップS26)。
集中制御局装置110は、各無線通信装置130に対して、ステップS26において通知した割り当てパターンによる無線通信装置120との通信を開始することを指示する(ステップS27)。以降、集中制御局装置110が各無線通信装置130に割り当てパターンの変更を通知するまで、無線通信装置130はステップS26において通知された割り当てパターンで無線通信装置120との通信を行う。
図13は、本実施形態における無線通信システムの適用例を示す図である。ここでは、第1の実施形態において示した適用例(図7)と同様に、集中制御局装置110に3つの無線通信装置130が通信可能に接続され、各無線通信装置130それぞれが異なる1つの無線通信装置120と通信する場合について説明する。3つの無線通信装置120それぞれは2つのアンテナ128を備えている。
第1の実施形態においてして示した適用例(図7)では、各無線通信装置120におけるアンテナの自由度を干渉信号の数が超えないように、送信電力「0」が割り当てられた帯域が存在していた。具体的には、無線通信装置130aにおいては低帯域が送信電力「0」であり、無線通信装置130bにおいては高帯域が送信電力「0」であり、無線通信装置130cにおいては中帯域が送信電力「0」であった。
これに対して、本実施形態の無線通信システムでは、送信電力「0」が割り当てられた帯域において、通信相手以外の無線通信装置130からの信号が受信されない場合や、受信されたとしてもその干渉となる受信電力が所望信号の受信電力に対してある条件を満たす(例えば、干渉信号の電力が十分に低く、所定値以上のSIRを満たす等)場合には、当該帯域に対して送信電力を割り当てる。図13に示す適用例では、図7に示した適用例に対して、無線通信装置130aにおいては低帯域に送信電力が割り当てられ、無線通信装置130bにおいては高帯域に送信電力が割り当てられ、無線通信装置130cにおいては中帯域に送信電力が割り当てられている。これにより、無線通信装置130と無線通信装置120との複数の組において利用される帯域、又は当該帯域における組数を増加させる。
このとき、電力密度が低い帯域に関しては、追加で割り当てた信号の受信レベルが所望信号の受信レベルよりも小さい場合、PIは最も小さい電力の信号、つまり所望信号ではない追加で割り当てられた信号を捕捉するように動作する恐れがある。そのため、このとき定める追加割り当ての条件としては、所望信号が常に最小の受信電力となるような設定とすることが好ましい。もしくは、条件としては十分に低い干渉レベルとなるよう設定しながら、PIとは異なる、MMSEのようなアダプティブアレーアルゴリズムの適用により、適切に所望信号を捕捉し、抽出する。
以上のように、集中制御局装置110は、周波数帯域を利用して通信を行う無線通信装置130と無線通信装置120との組の数と、無線通信装置120のアンテナの自由度とに基づいて、周波数帯域を分割した複数の帯域の割り当て及び各帯域における送信電力(又は送信電力密度)を示す割り当てパターンを選択した後に、無線通信装置120における受信品質に基づいて追加の送信電力の割り当てを行う。これにより、無線通信装置120では、所望信号の送信電力に応じて選択したアダプティブアレーアルゴリズムでウェイトを帯域ごとに算出して、当該ウェイトを用いたアレー処理により、適切に干渉信号を抑圧して所望信号に対する復調及び復号等の信号処理を行うことができる。その結果、無線通信システムでは、アダプティブアレーアルゴリズムの動作領域を拡張し、干渉抑圧効果を向上させることができる。更に、無線通信装置130に対して追加の帯域及び送信電力を割り当て共用帯域を増加させることができ、周波数利用効率を向上させることができる。
なお、本実施形態ではシングルキャリア通信を行う場合について説明したが、第2の実施形態において示した構成を適用することによりマルチキャリア伝送方式においても同様に、無線通信装置130に対して追加の帯域及び送信電力を割り当て、共用帯域を増加させることにより、周波数利用効率を向上させることができる。
上述した実施形態における集中制御局装置110や、無線通信装置120及び無線通信装置130をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。