[ラダー型シルセスキオキサン]
本発明のラダー型シルセスキオキサンは、分子内(1分子中)に下記式(1)で表される構造(構造単位)を少なくとも有することを特徴とするラダー型シルセスキオキサン(ラダー型ポリシルセスキオキサン)である。
上記式(1)中、SiLはラダー型シルセスキオキサンのシルセスキオキサン骨格を構成するケイ素原子を示す。なお、本明細書では、上記式(1)で表される構造中、SiLに結合している原子団(基)を「SiH含有基」と称する場合がある。即ち、本発明のラダー型シルセスキオキサンは、シルセスキオキサン骨格を構成するケイ素原子の少なくとも1つに上記SiH含有基が結合した構造を有する。
上記式(1)におけるXは単結合又は二価の連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記二価の連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、これらが複数個連結した基等が挙げられる。
なお、上記式(1)におけるXが単結合の場合とは、式(1)に示されたSiLと、2つの炭素原子のうち左側の炭素原子とが、直接単結合により結合している場合を意味する。
上記二価の炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などが挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
上記式(1)における複数個のRaは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示す。即ち、複数個のRaは、同一でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。上記一価の有機基としては、例えば、置換又は無置換の炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基などが挙げられる。
上記Raにおける炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基などのC1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基)などが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基)などが挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などのC2-20アルキニル基(好ましくはC2-10アルキニル基、さらに好ましくはC2-4アルキニル基)などが挙げられる。
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基などのC3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基などのC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基などのC4-15の架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)などが挙げられる。
また、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基として、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基として、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール−C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基などが挙げられる。
上記Raにおける炭化水素基は置換基を有していてもよい。上記炭化水素基における置換基の炭素数は0〜20、好ましくは0〜10である。該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メルカプト基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;アリルチオ基等のアルケニルチオ基;フェニルチオ基等のアリールチオ基;ベンジルチオ基等のアラルキルチオ基;カルボキシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基;アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。
上記Raにおけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のC1-6アルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基)などが挙げられる。アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基(好ましくはC2-4アルケニルオキシ基)などが挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシ基などが挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基などが挙げられる。アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のC1-12アシルオキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基(好ましくはC1-4アルキルチオ基)などが挙げられる。アルケニルチオ基としては、アリルチオ基等のC2-6アルケニルチオ基(好ましくはC2-4アルケニルチオ基)などが挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールチオ基などが挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のC7-18アラルキルチオ基などが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基などが挙げられる。アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ−カルボニル基などが挙げられる。アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基などのC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基などが挙げられる。モノ又はジアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基などが挙げられる。アシルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のC1-11アシルアミノ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記Raにおける上記一価の酸素原子含有基としては、例えば、ヒドロキシル基、ヒドロパーオキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、イソシアナート基、スルホ基、カルバモイル基などが挙げられる。上記一価の窒素原子含有基としては、例えば、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、シアノ基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、カルバモイル基などが挙げられる。また、上記一価の硫黄原子を有する化合物としては、例えば、メルカプト基(チオール基)、スルホ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、イソチオシアナート基などが挙げられる。なお、上述の一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、一価の硫黄原子含有基は、相互に重複し得る。
さらに、上記R
aとしては、下記式(3)で表される基が挙げられる。
上記式(3)中の複数個のR
cは、同一でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。式(3)中のR
cは、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示し、これらの基としては、上記R
aとして例示したものと同様の基が挙げられる。
上記式(3)で表される基において、各Rcとしては、それぞれ、水素原子、C1-10アルキル基(特に、C1-4アルキル基)、C2-10アルケニル基(特に、C2-4アルキル基)、C3-12シクロアルキル基、C3-12シクロアルケニル基、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、C7-18アラルキル基、C6-10アリール−C2-6アルケニル基、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。
上記の中でも、Raとしては、それぞれ、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
上記式(1)における複数個のRbは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示す。即ち、複数個のRbは、同一でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。上記ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、一価の硫黄原子含有基としては、上記Raとして例示したものと同様の基が挙げられる。なお、式(1)中のnが2以上の整数の場合、nが付された各括弧内におけるRbは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記の中でも、Rbとしては、それぞれ、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換又は無置換の炭化水素基、さらに好ましくはメチル基、フェニル基である。
上記式(1)におけるnは、1〜100の整数(好ましくは1〜30、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5)を示す。nが大きすぎる場合、硬化物のバリア性が低下する傾向があるため、例えば、光半導体用の封止剤としては適さない場合がある。
本発明のラダー型シルセスキオキサンにおける、分子内(一分子中)の上記式(1)で表される構造単位の数(即ち、上記SiH含有基の数)は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。上述の範囲で上記SiH含有基を有することにより、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。
なお、シルセスキオキサンとは、ポリシロキサンの一種である。ポリシロキサンとは、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖(骨格)を有する化合物をいい、その基本構成単位は、下記式(M)、(D)、(T)、(Q)(以下、それぞれM単位、D単位、T単位、Q単位という)に分類される。
上記式中、Rはケイ素原子に結合している原子又は原子団を示す。M単位は、ケイ素原子が1個の酸素原子と結合した一価の基からなる単位であり、D単位は、ケイ素原子が2個の酸素原子と結合した二価の基からなる単位であり、T単位は、ケイ素原子が3個の酸素原子と結合した三価の基からなる単位であり、Q単位は、ケイ素原子が4個の酸素原子と結合した四価の基からなる単位である。
シルセスキオキサンは、上記T単位を基本構成単位とするポリシロキサンであり、その実験式(基本構造式)は、RSiO3/2で表される。シルセスキオキサンのSi−O−Si骨格の構造としては、ランダム構造やラダー構造、カゴ構造などが知られている。本発明のラダー型シルセスキオキサンは、シルセスキオキサン骨格として、ラダー構造のSi−O−Si骨格を有するシルセスキオキサン骨格(「ラダー型シルセスキオキサン骨格」と称する場合がある)を少なくとも含む化合物である。本発明のラダー型シルセスキオキサンは、シルセスキオキサン骨格として、上記ラダー型シルセスキオキサン骨格以外のシルセスキオキサン骨格を含んでいてもよく、例えば、ラダー構造とランダム構造とを共に含むシルセスキオキサン骨格を有していてもよい。
本発明のラダー型シルセスキオキサンは、例えば、下記式(L)で表すことができる。
なお、上記式(L)中に示されたケイ素原子(Si)が、上記式(1)中のSi
L(シルセスキオキサン骨格を構成するケイ素原子)にあたる。
上記式(L)において、pは1以上の整数(例えば、1〜5000)であり、好ましくは1〜2000、さらに好ましくは1〜1000である。式(L)中のRとしては、上記Raとして例示したものと同様の基が例示される。但し、式(L)中のRのうち少なくとも1つ(好ましくは2つ以上)が、上記式(1)で表されるSiH含有基である。なお、上記SiH含有基が結合する位置は、特に限定されず、ラダー型シルセスキオキサンにおけるM単位を構成するケイ素原子に結合していてもよいし、T単位を構成するケイ素原子に結合していてもよい。
本発明のラダー型シルセスキオキサンは、特に限定されないが、式(L)において、Rのうち、置換又は無置換の炭化水素基が50モル%以上(より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上)占めることが好ましい。特に、置換又は無置換の、炭素数1〜10のアルキル基(特に、メチル基、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基(特に、フェニル基)、炭素数7〜10のアラルキル基(特に、ベンジル基)が合計で50モル%以上(より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上)占めることが好ましい。
本発明のラダー型シルセスキオキサン中のヒドロシリル基(SiH基)の含有量は、特に限定されないが、0.01〜0.5mmol/gが好ましく、より好ましくは0.08〜0.28mmol/gである。また、本発明のラダー型シルセスキオキサン中のヒドロシリル基(SiH基)の重量基準の含有量は、特に限定されないが、SiH基におけるH(ヒドリド)の重量換算(H換算)で、0.01〜0.50重量%が好ましく、より好ましくは0.08〜0.28重量%である。ヒドロシリル基の含有量が少なすぎると(例えば、0.01mmol/g未満、H換算で0.01重量%未満の場合)、硬化性樹脂組成物の硬化が進行しない場合がある。一方、ヒドロシリル基の含有量が多すぎると(例えば、0.50mmol/gを超える、H換算で0.50重量%を超える場合)、硬化物の硬度が硬くなり、割れやすくなる場合がある。なお、本発明のラダー型シルセスキオキサンにおけるヒドロシリル基の含有量は、例えば、1H−NMRなどによって測定することができる。
なお、本発明のラダー型シルセスキオキサン中のヒドロシリル基の全量(100モル%)に対するSiH含有基の含有量は、特に限定されないが、硬化度の観点で、50〜100モル%が好ましく、より好ましくは80〜100モル%である。
本発明のラダー型シルセスキオキサンの分子量は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、より好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜3万、特に好ましくは1000〜20000である。分子量が100未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、分子量が80万を超えると、液状では無くなり、他の化合物との相溶性が下がる場合がある。なお、本発明のラダー型シルセスキオキサンは、上記範囲の種々の分子量を有するものの混合物であってもよい。なお、上記分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量として算出することができる。
本発明のラダー型シルセスキオキサンの重量平均分子量は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、より好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜3万、特に好ましくは1000〜8000である。なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定した分子量(ポリスチレン換算)に基づいて算出できる。
本発明のラダー型シルセスキオキサンは、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、本発明のラダー型シルセスキオキサンは、23℃における粘度として、100〜100000mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜10000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が100mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、粘度が100000mPa・sを超えると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが困難となる場合がある。なお、23℃における粘度は、例えば、レオーメーター(商品名「Physica UDS−200」、Anton Paar社製)とコーンプレート(円錐直径:16mm、テーパ角度=0°)を用いて、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で測定することができる。
本発明のラダー型シルセスキオキサンの製造方法は、特に限定されないが、生産性や原料入手性の観点から、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサン(「ビニル型ラダーシルセスキオキサン」と称する場合がある)と、下記式(2)で表される化合物
[式(2)中、R
b、nは、前記に同じ。]
とを、ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させる工程(「反応工程」と称する場合がある)を少なくとも含む方法が好ましい。
上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンとしては、末端又は側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサンであればよく、特に限定されないが、例えば、上記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンにおいて、Rのうち少なくとも1つ(好ましくは2つ以上)が脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である化合物などが挙げられる。なお、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、ラダー型シルセスキオキサン骨格以外のシルセスキオキサン骨格を含んでいてもよく、例えば、ラダー構造とランダム構造とを共に含むシルセスキオキサン骨格を有していてもよい。
上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基);シクロヘキセニル基などのC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプテニル基などのC4-15架橋環式不飽和炭化水素基;スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基;シンナミル基などが挙げられる。なお、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基には、上記式(3)で表される基において、3つのRcのうち少なくとも1つが上記のC2-20アルケニル基、C3-12のシクロアルケニル基、C4-15の架橋環式不飽和炭化水素基、C2-4アルケニル置換アリール基、シンナミル基等である基も含まれる。
具体的には、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンとしては、例えば、下記式(4)で表される構造(構造単位)を少なくとも有するラダー型シルセスキオキサンなどが挙げられる。
[式(4)中、Si
L、X、R
aは、前記に同じ。]
上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンにおける、分子内(一分子中)の脂肪族炭素−炭素二重結合の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。上述の範囲で脂肪族炭素−炭素二重結合を有することにより、本発明のラダー型シルセスキオキサンが有するSiH基の量を適切な範囲に制御することが容易となる場合がある。
上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンの分子量は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、より好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜1万、特に好ましくは500〜6000である。上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンの分子量がこの範囲にあると、室温で液体であり、なおかつその粘度が比較的低いため、取り扱いが容易となる場合がある。なお、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、上記範囲の種々の分子量を有するものの混合物であってもよい。
上記ビニル型ラダーシルセスキオキサン中の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、特に限定されないが、0.7〜5.5mmol/gが好ましく、より好ましくは1.1〜4.4mmol/gである。また、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンに含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合の割合(重量基準)は、特に限定されないが、例えば、ビニル基換算で、2.0〜15.0重量%、好ましくは3.0〜12.0重量%である。
上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、公知の方法により製造できる。上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、例えば、[1]脂肪族炭素−炭素二重結合を有する加水分解性シランの加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)、[2]加水分解性基を有するラダー型シルセスキオキサンと脂肪族炭素−炭素二重結合を有するシラン化合物との反応などにより得ることができる。
上述の[1]脂肪族炭素−炭素二重結合を有する加水分解性シランの加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)によるビニル型ラダーシルセスキオキサンの製造方法としては、例えば、下記式(5a)
[式(5a)中、R
1は脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を示し、3つのYは、同一又は異なって、加水分解性基又はヒドロキシル基を示す。]
で表される加水分解性シラン化合物の1種若しくは2種以上を、又は、上記式(5a)で表される加水分解性シラン化合物の1種若しくは2種以上と下記式(6a)若しくは(6a’)
[式(6a)及び(6a’)中、R
2は前記Rに同じ。複数個のR
2は同一でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。Yは前記に同じ。]
で表されるシラン化合物の1種若しくは2種以上とを、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)に付す方法が挙げられる。
また、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、例えば、下記式(5b)
[式(5b)中、R
3は前記Rに同じ。3つのYは、同一又は異なって、加水分解性基又はヒドロキシル基を示す。]
で表される加水分解性シラン化合物の1種若しくは2種以上と、下記式(6b)若しくは(6b’)
[式(6b)及び(6b’)中、R
4は、前記Rに同じ。複数個のR
4は同一でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。但し、式(6b)、(6b’)のそれぞれにおいて、R
4のうち少なくとも1つは脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である。]
で表されるシラン化合物の1種若しくは2種以上とを、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)に付すことにより得ることができる。
また、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、例えば、上記式(5a)で表される加水分解性シラン化合物の1種若しくは2種以上と、上記式(6b)若しくは(6b’)で表されるシラン化合物の1種若しくは2種以上とを、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)に付すことによっても得ることができる。
なお、式(5a)、(5b)で表される加水分解性シラン化合物は、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンのT単位の形成に用いられ、式(6a)、(6a’)、(6b)、(6b’)で表されるシラン化合物は、末端封止剤として機能し、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンのM単位の形成に用いられる。
Yにおける加水分解性基としては、加水分解及びシラノール縮合によりシロキサン結合を形成しうる基であればよく、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のC1-10アルコキシ基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のC1-10アシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、塩素原子、C1-4アルコキシ基が好ましい。
上述の加水分解・縮合反応は、例えば、シラノール縮合触媒の存在下、水又は水と有機溶媒との混合溶媒中で、上記シラン化合物をシラノール縮合させ、反応中又は反応後に、溶媒及び/又は副生物(アルコールなど)を留去することにより行うことができる。反応温度は、−78〜150℃、好ましくは−20〜100℃である。水の使用量は、シラン化合物の合計1モルに対して、1モル以上(例えば、1〜20モル、好ましくは1〜10モル)である。
上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール;これらの混合溶媒などが挙げられる。有機溶媒の使用量は、シラン化合物の合計1容量部に対して、例えば、0.5〜30容量部である。
上記シラノール縮合触媒としては、例えば、酸触媒、塩基触媒を用いることができる。酸触媒として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸などが挙げられる。塩基触媒として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;バリウムメトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドなどの第4級アンモニウムヒドロキシド;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド等のテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドなどの第4級ホスホニウムヒドロキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等の第3級アミンなどのアミン;ピリジン等の含窒素芳香族複素環化合物などが挙げられる。また、シラノール縮合触媒として、テトラブチルアンモニウムフルオライド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムなどのフッ素化合物を用いることもできる。
反応生成物は、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
また、上述の[2]加水分解性基を有するラダー型シルセスキオキサンと脂肪族炭素−炭素二重結合を有するシラン化合物との反応によるビニル型ラダーシルセスキオキサンの製造方法としては、例えば、加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサンと、下記式(7)で表されるシラン化合物
[式(7)中、R
5は前記Rに同じ。3つのR
5は同一でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。但し、R
5のうち少なくとも1つは脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である。Yは前記に同じ。]
の1種又は2種以上とを反応させる方法などが挙げられる。
上記加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサンにおける加水分解性基、上記式(7)で表されるシラン化合物のYにおける加水分解性基、R5における脂肪族炭素−炭素二有結合を有する基は、前述の加水分解性基、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基と同様のものが挙げられる。上記加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサンにおける加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基等のC1-4アルコキシ基が特に好ましい。
上記式(7)で表されるシラン化合物において、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を除く残りのR5としては、同一又は異なって、置換又は無置換の、炭素数1〜10のアルキル基(特に、メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基(特に、フェニル基)、又は炭素数7〜10のアラルキル基(特に、ベンジル基)であるのが好ましい。
上記式(7)で表されるシラン化合物として、より具体的には、モノハロゲン化ビニルシラン、モノハロゲン化アリルシラン、モノハロゲン化3−ブテニルシラン、モノアルコキシビニルシラン、モノアルコキシアリルシラン、モノアルコキシ3−ブテニルシランなどが挙げられる。
上記モノハロゲン化ビニルシランの代表例としては、クロロジメチルビニルシラン、クロロエチルメチルビニルシラン、クロロメチルフェニルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、クロロエチルフェニルビニルシラン、クロロジフェニルビニルシランなどが挙げられる。
上記モノハロゲン化アリルシランの代表例としては、アリルクロロジメチルシラン、アリルクロロエチルメチルシラン、アリルクロロメチルフェニルシラン、アリルクロロジエチルシラン、アリルクロロエチルフェニルシラン、アリルクロロジフェニルシランなどが挙げられる。
上記モノハロゲン化3−ブテニルシランの代表例としては、3−ブテニルクロロジメチルシラン、3−ブテニルクロロエチルメチルシラン、3−ブテニルクロロメチルフェニルシラン、3−ブテニルクロロジエチルシラン、3−ブテニルクロロエチルフェニルシラン、3−ブテニルクロロジフェニルシランなどが挙げられる。
上記モノアルコキシビニルシランの代表例としては、メトキシジメチルビニルシラン、エチルメトキシメチルビニルシラン、メトキシメチルフェニルビニルシラン、ジエチルメトキシビニルシラン、エチルメトキシフェニルビニルシラン、メトキシジフェニルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、エトキシエチルメチルビニルシラン、エトキシメチルフェニルビニルシラン、エトキシジエチルビニルシラン、エトキシエチルフェニルビニルシランなどが挙げられる。
上記モノアルコキシアリルシランの代表例としては、アリルメトキシジメチルシラン、アリルエチルメトキシメチルシラン、アリルメトキシメチルフェニルシラン、アリルジエチルメトキシシラン、アリルエチルメトキシフェニルシラン、アリルメトキシジフェニルシラン、アリルエトキシジメチルシラン、アリルエトキシエチルメチルシラン、アリルエトキシメチルフェニルシラン、アリルエトキシジエチルシラン、アリルエトキシエチルフェニルシランなどが挙げられる。
上記モノアルコキシ3−ブテニルシランの代表例としては、3−ブテニルメトキシジメチルシラン、3−ブテニルエチルメトキシメチルシラン、3−ブテニルメトキシメチルフェニルシラン、3−ブテニルジエチルメトキシシラン、3−ブテニルエチルメトキシフェニルシラン、3−ブテニルメトキシジフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジメチルシラン、3−ブテニルエトキシエチルメチルシラン、3−ブテニルエトキシメチルフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジエチルシラン、3−ブテニルエトキシエチルフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジフェニルシランなどが挙げられる。
加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサンと式(7)で表されるシラン化合物との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いられる。
式(7)で表されるシラン化合物の使用量は、特に限定されないが、加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサン中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、1〜20モルが好ましく、より好ましくは2〜10モル、さらに好ましくは5〜9モルである。
加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサンと式(7)で表されるシラン化合物との反応は、シラノール縮合触媒の存在下で行われる。シラノール縮合触媒としては、上記で例示したものを使用できる。中でも、シラノール縮合触媒として、塩基触媒を用いるのが好ましい。
上記シラノール縮合触媒の使用量は、特に限定されないが、加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサン中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、0.1〜10モルが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0モルである。シラノール縮合触媒の使用量は触媒量であってもよい。
上記反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択できるが、通常、0〜200℃が好ましく、より好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは30〜60℃である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
上記方法では、加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサン中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)と式(7)で表されるシラン化合物中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)が、加水分解・縮合(又は縮合)して、対応する分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサンが生成する。
反応終了後、反応生成物は、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
本発明のラダー型シルセスキオキサンの製造に用いる、上記式(2)で表される化合物におけるRbとしては、上記式(1)におけるRbと同様のものが例示される。また、上記式(2)におけるnは、上記式(1)のnと同様に、1〜100の整数を示す。
具体的には、上記式(2)で表される化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサンなどの両末端にSiH基を有する(Si−O)単位を1〜10個(好ましくは2〜5個)有する直鎖状ポリジメチルシロキサン、両末端にSiH基を有する直鎖状ポリジアルキルシロキサン(好ましくは直鎖状ポリジC1-10アルキルシロキサン)などが挙げられる。
上記式(2)で表される化合物の使用量は、特に限定されないが、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンが有する脂肪族炭素−炭素二重結合の全量1モルに対して、上記(2)で表される化合物が有するヒドロシリル基(Si−H)が、3モル以上(例えば、3〜500モル)となるような使用量とすることが好ましく、より好ましくは5〜300モル、さらに好ましくは8〜100モル、特に好ましくは8〜20モルである。ヒドロシリル基の量が3モル未満であると、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンと式(2)で表される化合物の硬化反応が進行し、ゲル化する場合がある。一方、使用量が500モルを超えると、コスト面で不利となる場合がある。
上記ヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が例示され、具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体などの白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体などの白金ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、ならびに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒が挙げられる。上記ヒドロシリル化触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、白金ビニルメチルシロキサン錯体や白金−カルボニルビニルメチル錯体や塩化白金酸とアルコール、アルデヒドとの錯体は反応速度が良好であるため好ましい。
上記ヒドロシリル化触媒の使用量は、特に限定されないが、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンの脂肪族炭素−炭素二重結合の全量1モルに対して、1×10-8〜1×10-2モルが好ましく、より好ましくは1.0×10-6〜1.0×10-3モルである。使用量が1×10-8モル未満であると、反応が十分に進行しない場合がある。一方、使用量が1×10-2モルを超えると、硬化物の着色につながる場合がある。
本発明のラダー型シルセスキオキサンの製造方法において、上記ビニル型ラダーシルセスキオキサンと上記式(2)で表される化合物とを、ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させる際には、必要に応じて、その他の添加剤を反応系中に添加してもよい。また、上記反応は、必要に応じて、溶媒(例えば、上記例示した有機溶媒など)中で実施してもよい。また、上記反応を実施する雰囲気は、反応を阻害しないものであればよく、特に限定されないが、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などのいずれであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などいずれの方法で行うこともできる。
上記反応工程における反応温度は、特に限定されないが、0〜200℃が好ましく、より好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは30〜100℃である。反応温度が0℃未満であると、反応の進行が遅く、生産性が低下する場合がある。一方、反応温度が200℃を超えると、反応物の分解や副反応が併発し、収率が低下する場合がある。なお、反応温度は、反応の間一定に制御してもよいし、逐次的又は連続的に変化させてもよい。
また、上記反応工程における反応時間は、特に限定されないが、10〜1400分が好ましく、より好ましくは60〜720分である。反応時間が10分未満であると、十分に反応を進行させることができず、収率が低下する場合がある。一方、反応時間が1400分を超えると、反応物の分解や副反応が併発し、収率が低下したり、濃く着色する場合がある。
上記反応工程における圧力(反応圧力)は、特に限定されず、常圧下、加圧下、減圧下などいずれにおいても反応を実施することができる。
本発明のラダー型シルセスキオキサンの製造方法は、上記反応工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。上記その他の工程としては、例えば、原料を調製する工程、反応生成物を精製、単離する工程などが挙げられる。なお、反応生成物の精製や単離においては、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段などの、公知乃至慣用の方法を利用することができる。
本発明のラダー型シルセスキオキサンの製造方法は、上述の方法に限定されず、例えば、本発明のラダー型シルセスキオキサンは、SiH含有基を有する加水分解性シラン(例えば、下記式(8)で表される化合物など)を必須のモノマー成分として使用し、これを加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)させることによって製造することも可能である。
[式(8)中、X、Y、R
a、R
b、nは、前記に同じ。]
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のラダー型シルセスキオキサンと、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物と、ヒドロシリル化触媒とを必須成分として含む樹脂組成物である。
(本発明のラダー型シルセスキオキサン)
本発明の硬化性樹脂組成物中の本発明のラダー型シルセスキオキサンの含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、10重量%以上(例えば、10〜90重量%)が好ましく、より好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。含有量が10重量%未満であると、硬化反応が十分に進行せず、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。なお、本発明のラダー型シルセスキオキサンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物)
本発明の硬化性樹脂組成物における、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、脂肪族炭素−炭素二重結合を分子内に少なくとも有する化合物であれば、特に限定されず、公知乃至慣用の化合物を使用することができる。中でも、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を2以上(例えば、2〜20個)有する化合物が好ましい。なお、上記分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物は、本発明のラダー型シルセスキオキサンを除くものであってもよい。また、上記分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
具体的には、上記分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリシロキサン(オルガノポリシロキサン)が好ましく、中でも、特に、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサンが好ましい。上記分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサンとしては、例えば、上述のビニル型ラダーシルセスキオキサン、具体的には、上記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンにおいて、Rのうち少なくとも1つ(好ましくは2つ以上)が脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である化合物などが挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物をこのような構成とすることにより、特に、硬化物の耐熱性、透明性、柔軟性、及び耐黄変性をいっそう向上させることが可能となる。
本発明の硬化性樹脂組成物中における、上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、8〜88重量%以上が好ましく、より好ましくは18〜78重量%である。含有量が8重量%未満であると、硬化反応が進行しない場合がある。一方、含有量が88重量%を超えると、硬化反応が進行しない場合がある。
具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、樹脂組成物中に存在するヒドロシリル基1モルに対して、脂肪族炭素−炭素二重結合が0.2〜4モルとなるような組成(配合組成)であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モル、さらに好ましくは0.8〜1.2モルである。ヒドロシリル基と脂肪族炭素−炭素二重結合との割合を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱性、透明性、柔軟性、及び耐黄変性がより向上する傾向がある。
(ヒドロシリル化触媒)
本発明の硬化性樹脂組成物におけるヒドロシリル化触媒としては、例えば、本発明のラダー型シルセスキオキサンの製造方法において例示したものが使用できる。ヒドロシリル化触媒は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物中のヒドロシリル化触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル化触媒中の白金、パラジウム、又はロジウムが重量単位で、0.01〜1,000ppmの範囲内となる量が好ましく、0.1〜500ppmの範囲内となる量がさらに好ましい。ヒドロシリル化触媒の含有量がこのような範囲にあると、架橋速度が著しく遅くなることがなく、架橋物に着色等の問題を生じるおそれが少なく好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のラダー型シルセスキオキサン以外のSiH基を有する化合物(「SiH化合物」と称する場合がある)を含んでいてもよい。上記SiH化合物としては、例えば、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7?テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9?ペンタメチルシクロペンタシロキサン、シクロトリシロキサンなどのSiH基を有する環状シロキサン;メチル(トリスジメチルシロキシ)シラン、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7−ノナメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサンなどのSiH基を有する直鎖又は分岐鎖状シロキサンなどが挙げられる。中でも、上記SiH化合物としては、分子内に2以上のSiH基を有するものが好ましい。なお、SiH化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記SiH化合物の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物100重量%に対して、5重量%以下(例えば、0〜5重量%)が好ましく、より好ましくは1.5重量%以下である。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、ヒドロシリル化反応の速度を調整するために、ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいてもよい。上記ヒドロシリル化反応抑制剤としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールなどが例示される。上記ヒドロシリル化反応抑制剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の架橋条件により異なるが、実用上、硬化性樹脂組成物中の含有量として、0.00001〜5重量%の範囲内が好ましい。
(溶媒)
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶媒を含んでいてもよい。上記溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の従来公知の溶媒などが挙げられる。溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(添加剤)
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、その他任意の成分として、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、溶剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、補強材(他の充填剤など)、核剤、カップリング剤、シランカップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤などの慣用の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、上記の各成分を室温で攪拌・混合することにより得られる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として用いてもよいし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として用いてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物は、23℃における粘度として、300〜20000mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜10000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が300mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、粘度が20000mPa・sを超えると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが困難となり、硬化物に気泡が残存しやすくなる場合がある。なお、23℃における粘度は、例えば、上述のラダー型シルセスキオキサンの粘度と同様の方法で測定できる。
本発明の硬化性樹脂組成物の必須成分である本発明のラダー型シルセスキオキサンは、比較的柔軟な式(1)で表される構造単位を分子内に有するため、上記硬化性樹脂組成物を硬化させることによって得られる硬化物に対して柔軟性を付与することが可能である。一般に、柔軟性に優れた硬化物を得るためには、硬化性樹脂組成物の構成成分として、柔軟な構造単位を分子内に有する多官能の低分子化合物(特に、低分子量のシロキサン化合物、例えば、上記式(2)で表される化合物など)を使用する手法が採用される。しかしながら、このような手法においては、硬化性樹脂組成物の硬化の際に上記低分子化合物が揮発しやすく、安全性や一定の物性を有する硬化物を得る観点で、問題が生じていた。これに対して、本発明のラダー型シルセスキオキサンは硬化物に柔軟性を付与するための構造単位を有しているため、本発明の硬化性樹脂組成物においては、上述の低分子化合物の使用を無くすことができ、硬化時に揮発する低分子化合物(特に、低分子量のシロキサン化合物)の量を無くす事ができる。
[硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物をヒドロシリル化反応により硬化させることにより、硬化物を得ることができる。硬化(ヒドロシリル化)の際の条件は、特に限定されず、従来公知の条件を採用できるが、例えば、反応速度の点から、温度(硬化温度)は室温〜180℃(好ましくは60℃〜150℃)が好ましく、時間(硬化時間)は5〜720分が好ましい。本発明の硬化物は、耐熱性、透明性、柔軟性、耐黄変性等の物性に優れている。また、本発明の硬化物を得るにあたり、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させる際には、揮発する低分子化合物(特に、低分子量のシロキサン化合物)の量が少ないため、安全性が高く、一定の物性を有する硬化物を効率的に得ることができる。
[封止剤]
本発明の封止剤は、本発明の硬化性樹脂組成物を必須成分として含む封止剤である。本発明の封止剤は、硬化して硬化材を形成する際に、揮発する低分子化合物(特に、低分子量のシロキサン化合物)の量が低減されており、安全性が高く、一定の物性を有する封止材を効率的に得ることができる点で有益である。また、本発明の封止剤を硬化させることにより得られる封止材は、耐熱性、透明性、柔軟性、耐黄変性等の物性に優れる。このため、本発明の封止剤は、特に、光半導体装置における光半導体素子などの封止剤として好ましく使用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。反応生成物の同定は1H−NMRにより行った。なお、1H−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。また、反応生成物の重量平均分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMHHR−M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column HHRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃により行った。
実施例1
[SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサン(プレポリマー)の合成]
50ml四つ口フラスコに、末端にトリメチルシリル基(TMS基)を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサン(重量平均分子量Mw2900、フェニル基/メチル基/ビニル基(側鎖モル比)=17/68/15)10gと、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(東京化成工業(株)製)20gと、1.7%白金−シクロビニルシロキサン錯体ビニルシクロシロキサン溶液(和光純薬工業(株)製)20μlとを仕込んだ。次いで、70℃で8時間加熱して、反応終了とした。続いて、エバポレータで濃縮した後、真空ポンプを用いて30分間減圧し、SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンを11.8g得た。上記SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は3800、1分子当たりのSiH基の含有量(平均含有量)は、SiH基におけるH(ヒドリド)の重量換算で0.11重量%であった。
(SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル)
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl3))δ:0.1ppm(br)、0.5ppm(br)、4.7ppm(s)、6.8−7.8ppm(br)
図1には、原料である末端にTMS基を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル(図1(a))と、生成物であるSiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル(図1(b))を示す。
なお、原料として用いた末端にTMS基を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサンは、トリエトキシフェニルシランとトリエトキシメチルシランとトリエトキシビニルシランとを(モル比:17/68/15)、常法により加水分解及び縮合することで調製した。
実施例2
[SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサン(プレポリマー)の合成]
50ml四つ口フラスコに、末端にTMS基を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサン(重量平均分子量Mw2900、フェニル基/メチル基/ビニル基(側鎖モル比)=17/68/15)5gと、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(Gelest製)10gと、1.7%白金−シクロビニルシロキサン錯体ビニルシクロシロキサン溶液(和光純薬工業(株)製)20μlとを仕込んだ。次いで、70℃で6時間加熱して、反応終了とした。続いて、エバポレータで濃縮した後、真空ポンプを用いて30分間減圧し、SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンを5.7g得た。上記SiH基を有するラダー型シルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は6400、1分子当たりのSiH基の含有量(平均含有量)は、SiH基におけるH(ヒドリド)の重量換算で0.11重量%であった。
(SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル)
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl3))δ:0.1ppm(br)、0.5ppm(br)、4.7ppm(s)、6.8−7.8ppm(br)
なお、原料として用いた末端にTMS基を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサンは、トリエトキシフェニルシランとトリエトキシメチルシランとトリエトキシビニルシランとを(モル比:17/68/15)、常法により加水分解及び縮合することで調製した。
実施例3
[SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンの合成]
50ml四つ口フラスコに、末端にTMS基を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサン(重量平均分子量Mw2400、フェニル基/メチル基/ビニル基(側鎖モル比)=42.5/42.5/15)10gと、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(東京化成工業(株)製)20gと、1.7%白金−シクロビニルシロキサン錯体ビニルシクロシロキサン溶液(和光純薬工業(株)製)20μlとを仕込んだ。次いで、70℃で6時間加熱して、反応終了とした。続いて、エバポレータで濃縮した後、真空ポンプを用いて30分間減圧し、SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンを11.2g得た。上記SiH基を有するラダー型シルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は5400、1分子当たりのSiH基の含有量(平均含有量)は、SiH基におけるH(ヒドリド)の重量換算で0.12重量%であった。
(SiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル)
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl3))δ:0.1ppm(br)、0.5ppm(br)、4.7ppm(s)、6.8−7.8ppm(br)
なお、原料として用いた末端にTMS基を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサンは、トリエトキシフェニルシランとトリエトキシメチルシランとトリエトキシビニルシランとを(モル比:42.5/42.5/15)、常法により加水分解及び縮合することで調製した。
実施例4
[硬化性樹脂組成物及びその硬化物の製造]
実施例1で合成したSiH含有基を有するラダー型シルセスキオキサン1.0gと、末端にTMS基を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサン(重量平均分子量Mw2900、フェニル基/メチル基/ビニル基(側鎖モル比)=17/68/15)1gとを、6mlのスクリュー間に秤量し、2時間室温で攪拌したところ、両者の相溶性は良好であり、透明で均一な混合液が得られた。得られた混合液に、白金ビニルメチルシロキサン錯体(アルドリッチ製、白金2.0重量%)0.8μlを仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物(耐熱硬化性組成物)を得た。
得られた硬化性樹脂組成物をガラスプレートに塗布し、オーブン中、90℃で1時間、150℃で5時間加熱すると、無色透明な硬化物が得られた。
比較例1
[硬化性樹脂組成物の製造]
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.11g(東京化成工業(株)製)と、末端にTMS基を有するラダー型フェニルメチルビニルシルセスキオキサン(重量平均分子量Mw2900、フェニル基/メチル基/ビニル基(側鎖モル比)=17/68/15)1gとを、6mlのスクリュー間に秤量し、30分間室温で攪拌したところ、両者の相溶性は良好であり、透明で均一な混合液が得られた。得られた混合液に、白金ビニルメチルシロキサン錯体(アルドリッチ製、白金2.0重量%)0.8μlを仕込み、再度攪拌した。
(評価)
[硬化性樹脂組成物の評価]
実施例4で得られた硬化性樹脂組成物の調製直後の粘度、調製してから2時間後の粘度、4時間後の粘度、6時間後の粘度、8時間後の粘度、及び24時間後の粘度を、レオーメーター(商品名「Physica UDS−200」、Anton Paar社製)とコーンプレート(円錐直径:16mm、テーパ角度=0°)を用いて、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で測定した。なお、硬化性樹脂組成物は、調製直後の粘度測定から、調製してから24時間後の粘度測定まで終始、23℃、50%RHの環境下に保管した。
粘度の測定結果を図2に示す。図2に示すように、本発明の硬化性樹脂組成物は、経時での粘度上昇の幅が小さく、長いポットライフを有していた。
一方、比較例1で得られた硬化性樹脂組成物は、白金ビニルメチルシロキサン錯体を仕込み、攪拌してから約10分後にゲル化したため、粘度を測定することができず、ポットライフが非常に短かった。
[硬化物の物性評価]
実施例4で得られた硬化物について、表1に記載の物性を、表1に示す試験方法により評価した。評価結果を表1に示す。
また、図3には、上記硬化物の波長300〜800nmの光に対する光線透過率の測定結果を示す。
[硬化物の耐熱性、耐黄変性試験]
実施例4で得られた硬化物を180℃で1000時間、オーブン中で加熱したところ、変色(黄変)は見られなかった。