以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施の形態に係る油圧モータが適用される産業用車両の概略図であり、図2は、油圧ポンプを示す概略図であり、図3は、本実施の形態に係る油圧モータを示す概略図であり、図4は、油圧モータの通常時における動力部の動作図である。
図1に示す産業用車両は、走行および走行以外の別の動作を行うもので、一例としてフォークリフト1を示す。産業用車両としては、フォークリフト1以外に、走行および走行以外の別の動作を行うものであれば限定はない。
フォークリフト1は、走行用として左右の前輪2と左右の後輪3とを有する4輪車両として構成されている。前輪2は、駆動輪であって走行駆動に用いられ、後輪3は操舵に用いられる。また、フォークリフト1は、その前側に、荷役を行うために昇降可能に設けられたリフト4を有して構成されている。そして、本実施の形態のフォークリフト1は、走行や走行以外の別の動作を行うため、油圧ポンプ5が適用されている。
油圧ポンプ5は、様々な形態のものがあり、その一例を図2に示す。図2に示す油圧ポンプ5は、ケーシング51内に、カム52が回転可能に支持されている。カム52は、円盤状に形成され、その周囲に凹部52aおよび凸部52bが交互に形成されている。また、油圧ポンプ5は、ケーシング51内であって、カム52の周囲に、凹部52aおよび凸部52bに対応するように圧縮部53が複数設けられている。圧縮部53は、ケーシング51に固定された筒状のシリンダ53aと、シリンダ53a内で摺動可能に設けられたピストン53bとを有している。ピストン53bは、カムフォロア53cを有し、このカムフォロア53cが、カム52の凹部52aおよび凸部52bに対して常に接触するように構成されている。また、図には明示しないが、油圧ポンプ5は、ケーシング51に、作動油を吸い込む吸込口と、作動油を吐出する吐出口とを有している。
この油圧ポンプ5は、回転動力を発生するエンジンや電動モータなどの駆動部6(図1に示す)によりカム52が回転することによって、カム52の周囲の凹部52aによりピストン53bが下死点に向けて摺動する過程で、吸込口から作動油をシリンダ53a内に吸い込む。一方、油圧ポンプ5は、カム52の周囲の凸部52bによりピストン53bが上死点に摺動する過程で、シリンダ53a内が圧縮され、これにより加圧された作動油を吐出口から吐出する。
上述した油圧ポンプ5は、図1に示すように、フォークリフト1の走行のため、油圧モータ7に加圧した作動油を供給する。また、油圧ポンプ5は、走行とは別の動作のため、油圧アクチュエータ8に加圧した作動油を供給する。走行とは別の動作とは、本実施の形態では、リフト4の昇降や後輪3の操舵を含む。すなわち、リフト4の昇降や後輪3の操舵に油圧アクチュエータ8が用いられる。
油圧モータ7は、図3に示すように、ケーシング71内に、前輪2の駆動軸2aに連結されるクランクシャフト72が回転可能に支持されている。クランクシャフト72は、クランク72aの周方向に動力部73が複数(本実施の形態では8つ)設けられている。動力部73は、膨張行程と収縮行程とに往復作動することでクランク72aを回転移動させてクランクシャフト72を回転させるものである。動力部73は、ケーシング71に固定された筒状のシリンダ73aと、シリンダ73a内で摺動可能に設けられたピストン73bとを有している。ピストン73bは、ピストンロッド73cが、クランク72aに支承されている。また、図4に示すように、動力部73は、シリンダ73aのヘッド部に、第一作動油供給口73dと作動油排出口73eとが設けられている。第一作動油供給口73dは、当該供給口73dを開閉する第一供給口開閉弁73fが設けられ、作動油排出口73eは、当該排出口73eを開閉する排出口開閉弁73gが設けられている。第一供給口開閉弁73fは、ソレノイド(図示せず)のON時に第一作動油供給口73dを開放するように作動し、ソレノイドのOFF時にバネ(図示せず)により第一作動油供給口73dを閉塞するように作動する。本実施の形態において、第一供給口開閉弁73fは、シリンダ73a内の圧力により第一作動油供給口73dを開放するように作動する。また、排出口開閉弁73gは、ソレノイド(図示せず)のON時に作動油排出口73eを開放し、ソレノイドのOFF時にバネ(図示せず)により作動され作動油排出口73eを閉塞する。これら、第一作動油供給口73dや排出口開閉弁73gのソレノイドは、後述の制御部20により制御される。また、複数の動力部73において、各第一作動油供給口73dは、図1に示すように油圧ポンプ5の吐出口に対して走行系作動油供給管9を介して接続され、各作動油排出口73eは、油圧ポンプ5の吸込口に対して走行系作動油排出管10を介して接続されている。
この油圧モータ7は、図4(a)に示すように、ピストン73bが上死点に至る動力部73において、第一作動油供給口73dが第一供給口開閉弁73fにより開放され、作動油排出口73eが排出口開閉弁73gにより閉塞された状態で、走行系作動油供給管9を介して油圧ポンプ5で加圧された作動油がシリンダ73a内に供給される。すると、図4(b)に示すように、作動油によりピストン73bが下死点に向けて押し出されることで(膨張行程)、ピストンロッド73cがクランク72aをクランクシャフト72の回転方向に押してクランクシャフト72が回転する。一方、クランクシャフト72が回転する過程で、図4(c)に示すように、クランク72aによりピストンロッド73cが押されることで、ピストン73bが上死点に向けて摺動する(収縮行程)。この過程で作動油排出口73eが排出口開閉弁73gにより開放され、第一作動油供給口73dが第一供給口開閉弁73fにより閉塞された状態で、シリンダ73a内で動力発生に用いられた作動油が走行系作動油排出管10を介して油圧ポンプ5に戻される。さらに、図4(d)に示すように、クランク72aによりピストンロッド73cが押されることで、ピストン73bがさらに上死点に向けて摺動する。この過程で作動油排出口73eが排出口開閉弁73gにより閉塞され、第一作動油供給口73dが第一供給口開閉弁73fにより閉塞された状態で、シリンダ73a内の作動油が圧縮され、第一作動油供給口73dの外側の圧力Piとシリンダ73a内の圧力Pとの関係がPi<Pとなるため、この圧力差によりバネの付勢力に抗して第一供給口開閉弁73fが開方向に押されるとともにソレノイドのONにより第一供給口開閉弁73fが開放作動して第一作動油供給口73dを開放する。このため、図4(a)に戻り、油圧ポンプ5で加圧された作動油がシリンダ73a内に供給されることになる。これを、クランク72aの周方向に設けられた各動力部73において周方向に順次行うことで、クランクシャフト72が連続して回転し、前輪2の駆動軸を回転させる。なお、各動力部73において周方向に逆の順で作動油の供給および排出を行えば、油圧モータ7は、逆の回転を前輪2の駆動軸2aに伝達するため、フォークリフト1を前進または後退させることができる。この油圧モータ7は、クランクシャフト72からケーシング71の外部に延出される出力軸75が、前輪2の駆動軸2aに連結されるが、この出力軸75と駆動軸2aとの間にクラッチ14が設けられている。クラッチ14は、出力軸75と駆動軸2aとを接続または切断させる。すなわち、クラッチ14は、駆動軸2aに対する油圧モータ7の出力の伝達を接続または切断させるものである。このクラッチ14は、制御部20により制御される。
油圧アクチュエータ8は、図1に示すように油圧ポンプ5の吐出口に対して動作系作動油供給管11を介して接続され、油圧ポンプ5で加圧された作動油が供給される。油圧アクチュエータ8は、供給された作動油により伸縮または収縮することで、リフト4の昇降や後輪3の操舵を行う。なお、図には明示しないが、油圧アクチュエータ8で動作に用いられて減圧した作動油は、油圧ポンプ5に戻される。
なお、走行系作動油供給管9や動作系作動油供給管11は、油圧ポンプ5の吐出口に接続された吐出管12からそれぞれ分岐して設けられている。
また、本実施の形態のフォークリフト1は、図1に示すように、動作系作動油供給管11に、当該動作系作動油供給管11の開閉および開度を制御する動作系制御弁13が設けられている。
動作系制御弁13は、動作系作動油供給管11に対して油圧ポンプ5から吐出される作動油を流通させ、かつ作動油の流量を調整するものである。動作系制御弁13は、制御部20により制御される。
制御部20は、フォークリフト1の走行や動作の入力信号に応じ、動作系制御弁13の開閉や駆動部6の駆動を制御するものである。制御部20は、図1に示すように前進時におけるアクセルの操作開始の入力信号Aにより、クラッチ14を接続するとともに、油圧モータ7に供給する作動油の供給量を可変するため、駆動部6の駆動を制御する。これにより、油圧モータ7が作動してフォークリフト1が前進走行する。また、制御部20は、図1に示すように後退時におけるアクセルの操作開始の入力信号A’により、クラッチ14を接続するとともに、油圧モータ7に供給する作動油の供給量を可変するため、駆動部6の駆動を制御する。これにより、油圧モータ7が作動してフォークリフト1が後退走行する。
また、制御部20は、後輪3の操舵時において、図1に示すようにステアリングの操作開始の入力信号Bにより、動作系制御弁13を開放して動作系作動油供給管11を通じて作動油を油圧アクチュエータ8に供給させることで油圧アクチュエータ8を作動させて後輪3を操舵させる。さらに、制御部20は、荷役レバーの操作量に応じた入力信号Bにより、動作系制御弁13の開放度を変化させて作動油の流量を増減させることで油圧アクチュエータ8の伸縮量を増減させて後輪3の操舵角を増減させる。
また、制御部20は、リフト4の昇降時において、図1に示すように荷役レバーの操作開始の入力信号Cにより、動作系制御弁13を開放することで油圧アクチュエータ8を作動させてリフト4を昇降させる。さらに、制御部20は、荷役レバーの操作量に応じた入力信号Cにより、動作系制御弁13の開放度を変化させて作動油の流量を増減させることで油圧アクチュエータ8の伸縮量を増減させてリフト4の昇降速度を増減させる。
上述した産業用車両としてのフォークリフト1に適用される油圧モータ7は、第一供給口開閉弁73fが、シリンダ73a内の圧力により第一作動油供給口73dを開放するように作動する構成である。このため、走行停止時や前進走行と後退走行との切り換え時など、クランクシャフト72の回転が停止し、シリンダ73a内の圧力が低下した場合、第一供給口開閉弁73fの開放作動を行うことができない。そこで、図1に示すように、本実施の形態の油圧モータ7は、第一供給口開閉弁73fを開放作動させるため、シリンダ73a内の圧力を高める起動手段15を備えている。
[実施の形態1]
図5は、本実施の形態に係る油圧モータにおける起動手段の概略図であり、図6は、本実施の形態に係る油圧モータにおける起動時のフローチャートであり、図7は、油圧モータの起動時における動力部の動作図である。
図5に示すように、起動手段15は、油圧ポンプ5から各動力部73のシリンダ73aに接続される起動用作動油供給管15aを有している。起動用作動油供給管15aは、図1に示すように、油圧ポンプ5の吐出口に接続された吐出管12から、走行系作動油供給管9や動作系作動油供給管11とは別に分岐して設けられ、油圧モータ7における各動力部73のシリンダ73aに至る。また、起動手段15は、起動用作動油供給管15aが各動力部73のシリンダ73aに開口する各第二作動油供給口15bを開閉するようにそれぞれ設けられた第二供給口開閉弁15cを有している。すなわち、各第二作動油供給口15bは、第一作動油供給口73dとは別に各動力部73のシリンダ73aに対して加圧された作動油を供給する態様で設けられている。また、各第二供給口開閉弁15cは、例えば、電磁弁からなり制御部20により制御される。
また、起動手段15は、図3に示すように、クランク72aの回転位置を検出するクランク回転位置検出部15dを有している。クランク回転位置検出部15dは、例えば、クランクシャフト72の回転角度からクランク72aの回転位置を検出する。クランク回転位置検出部15dにより検出されるクランク72aの回転位置の情報は、制御部20に出力される。
制御部20は、停止状態から油圧モータ7を起動させるモータ起動指令に基づいて、クランク72aを回転移動させ得る動力部73について第二供給口開閉弁15cを開放作動させ当該動力部73に作動油を供給する。ここで、モータ起動指令とは、停止した油圧モータ7を起動させる指令であり、本実施の形態では、前進走行や後退走行において、クラッチ14を切断した状態で停止した油圧モータ7を起動させるアクセルの操作開始の入力信号A,A’を意味する。また、クランク72aを回転移動させ得る動力部73とは、図3に示すように複数(8つ)の動力部73のうち、クランク72aがクランクシャフト72の下方に位置している場合に、膨張行程でクランク72aを回転移動させる動力を生じる動力部73であり、図3においては、P4位置にある動力部73、およびP6位置にある動力部73となる。P4位置にある動力部73は、膨張行程となることでクランク72aを矢印F方向に回転移動させる。また、P6位置にある動力部73は、膨張行程となることでクランク72aを矢印R方向に回転移動させる。本実施の形態では、矢印F方向がフォークリフト1を前進走行させる方向とし、矢印R方向がフォークリフト1を後退走行させる方向とする。
図6に示すように、第一供給口開閉弁73fおよび排出口開閉弁73gを閉塞状態とした状態で、モータ起動指令の入力により、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、クランク72aの回転位置を検出する(ステップS1)。次に、制御部20は、クランク72aの回転位置により、当該クランク72aを回転移動させ得る動力部73を特定する(ステップS2)。特定される動力部73は、フォークリフト1の前進走行の場合は、図3に示すP4位置にある動力部73であり、フォークリフト1の後退走行の場合は、図3に示すP6位置にある動力部73である。次に、制御部20は、図7(a)に示すように、特定した動力部73について第二供給口開閉弁15cを開放作動させる(ステップS3)。これにより、特定した動力部73のシリンダ73a内に作動油が供給される。この際、制御部20は、第一供給口開閉弁73fおよび排出口開閉弁73gを閉塞状態とする。
次に、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、シリンダ73a内に供給された作動油によりクランク72aが回転移動を開始したかを判断する(ステップS4)。このステップS4において、図7(b)に示すように、シリンダ73a内に供給された作動油によりピストン73bが下死点に向けて摺動することでクランク72aが回転移動していれば(ステップS4:Yes)、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、図7(c)に示すように、ピストン73bが下死点から上死点に向けて摺動する収縮行程の開始のタイミングで第二供給口開閉弁15cを閉塞作動させるとともに、排出口開閉弁73gを開放作動させる(ステップS5,S6)。なお、ステップS4において、クランク72aが回転移動していなければ(ステップS4:No)、制御部20は、ステップS3に戻り、ステップS2で特定した動力部73について第二供給口開閉弁15cを開放作動させる。
次に、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、図7(d)に示すように、ピストン73bが上死点に向けて摺動する収縮行程の過程で、排出口開閉弁73gを閉塞作動させる(ステップS7)。これにより、図4(d)に示すように、シリンダ73a内の作動油が圧縮され、第一作動油供給口73dの外側の圧力Piとシリンダ73a内の圧力Pとの関係がPi<Pとなるため、この圧力差によりバネの付勢力に抗して第一供給口開閉弁73fが開方向に押され、同時に制御部20は、ソレノイドをONして第一供給口開閉弁73fを開放作動させ、第一作動油供給口73dを開放する(ステップS8)。これにより、ステップS2で特定された動力部73は、図4(a)に示すように、第一作動油供給口73dから作動油が供給されることになる。第一作動油供給口73dから作動油が供給されれば、ステップS2で特定された動力部73は、図4(a)〜図4(d)に示すように、通常時における動作となる。そして、ステップS2で特定された動力部73が通常時における動作となれば、他の動力部73も通常時における動作となる。
次に、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、クランク72aが回転移動していることで、油圧モータ7が起動して通常時における動作となったことを判断し(ステップS9:Yes)、本制御を終了する。一方、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、クランク72aが回転移動していないことで、油圧モータ7が起動していないことを判断した場合(ステップS9:No)、ステップS1に戻り、本制御を最初からやり直す。
なお、本実施の形態においては、油圧モータ7におけるクランクシャフト72の回転方向(正逆方向)によりフォークリフト1を前進走行または後退走行させる構成であるが、油圧モータ7の出力軸75と駆動軸2aとの間に出力軸75の回転方向を切り換える回転切換機構(図示せず)を設ければ、油圧モータ7におけるクランクシャフト72の回転方向を切り換えなくてもよくなる。したがって、この場合、起動手段15は、油圧モータ7におけるクランクシャフト72を一方向にのみ回転させるものであってもよい。
このように、本実施の形態の油圧モータ7は、クランクシャフト72のクランク72aの回転位置に対応して複数設けられており作動油の供給により膨張行程と収縮行程とに往復作動することでクランク72aを回転移動させてクランクシャフト72を回転させる動力部73と、各動力部73に対して加圧された作動油を供給する態様で設けられた第一作動油供給口73dを開閉する第一供給口開閉弁73fと、各動力部73から作動油を排出する態様で設けられた作動油排出口73eを開閉する排出口開閉弁73gと、を備えて、収縮過程の動力部73の内圧により第一供給口開閉弁73fが開放作動される油圧モータ7において、第一作動油供給口73dとは別に各動力部73に対して加圧された作動油を供給する態様で設けられた第二作動油供給口15bを開閉する第二供給口開閉弁15cを有し、停止状態からのモータ起動指令に基づいて、クランク72aを回転移動させ得る動力部73について第二供給口開閉弁15cを開放作動させて当該動力部73に作動油を供給する起動手段15を備える。
この油圧モータ7によれば、第二供給口開閉弁15cを開放作動させることで、クランク72aを回転移動させ得る動力部73に加圧された作動油が供給されるため、当該動力部73の内圧が高まる。この結果、収縮過程の動力部73の内圧により第一供給口開閉弁73fが開放作動される油圧モータ7において、当該油圧モータ7の停止時からの起動を行うことが可能になる。
また、本実施の形態の油圧モータ7では、起動手段15は、クランク72aの回転位置を検出するクランク回転位置検出部15dを備え、モータ起動指令に基づいて、クランク回転位置検出部15dにより検出されたクランク72aの回転位置から、当該クランク72aを回転移動させ得る動力部73を特定し、特定した動力部73の第二供給口開閉弁15cを開放作動させる。
この油圧モータ7によれば、クランク回転位置検出部15dにより検出されたクランク72aの回転位置から、当該クランク72aを回転移動させ得る動力部73を特定しており、特定した動力部73の第二供給口開閉弁15cを開放作動させることで、油圧モータ7の停止時からの起動を行うことが可能になる。
また、本実施の形態の油圧モータ7では、起動手段15は、モータ起動指令に基づいて、クランク回転位置検出部15dにより検出されたクランク72aの回転位置から、当該クランク72aを正逆方向(図3に示す矢印F方向または矢印R方向)のいずれか一方に回転移動させ得る動力部73を特定し、特定した動力部73の第二供給口開閉弁15cを開放作動させる。
この油圧モータ7によれば、クランクシャフト72を正逆方向に回転させる構成の場合、モータ起動指令に基づいて、クランク72aを正逆方向のいずれか一方に回転移動させ得る動力部73を特定しており、特定した動力部73の第二供給口開閉弁15cを開放作動させることで、油圧モータ7の停止時からの正逆方向のいずれか一方への起動を行うことが可能になる。
なお、上述した油圧モータ7の制御においては、1つの動力部73について通常時における動作とすることで、他の動力部73も通常時における動作としているが、この限りではない。具体的には、ステップS4でクランク72aが回転移動した場合(ステップS4:Yes)、制御部20は、ステップS1に戻ってクランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、クランク72aの回転移動に伴って当該クランク72aを回転移動させ得る次の動力部73を特定する(ステップS2)。これを全ての動力部73に対して順次行う。なお、上記制御は、全ての動力部73に対して行わずに、例えば、周方向に配置された各動力部73について1つおきに行ってもよい。
すなわち、本実施の形態の油圧モータ7では、起動手段15は、クランク回転位置検出部15dにより検出されたクランク72aの回転位置から、クランク72aの回転移動に伴って当該クランク72aを回転移動させ得る動力部73を順次特定し、特定した各動力部73の第二供給口開閉弁15cをクランク72aの回転移動に応じて順次開放作動させる。
この油圧モータ7によれば、各動力部73の第二供給口開閉弁15cをクランク72aの回転移動に応じて順次開放作動させることで、各動力部73を通常時における動作とすることができることから、油圧モータ7の停止時からの起動を確実かつ円滑に行うことが可能になる。
[実施の形態2]
図8および図9は、本実施の形態に係る油圧モータにおける起動手段の概略図である。なお、図9は、図8に示す起動手段を展開した形態を示す。本実施の形態の油圧モータ7は、上述した実施の形態1に対し、起動手段の構成が異なる。したがって、本実施の形態の説明において、上述した実施の形態1と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
図1に示すように、起動手段15は、油圧ポンプ5から各動力部73のシリンダ73aに接続される起動用作動油供給管15aを有している。起動用作動油供給管15aは、油圧ポンプ5の吐出口に接続された吐出管12から、走行系作動油供給管9や動作系作動油供給管11とは別に分岐して設けられている。
また、起動手段15は、図8に示すように、供給口配列部15fと、作動油貯留部15gと、開閉弁15hと、回転部15iとを備えている。
供給口配列部15fは、図9に示すように、第一作動油供給口73dとは別に各動力部73のシリンダ73aに対して加圧された作動油を供給するように各第二作動油供給口15bが設けられている。供給口配列部15fは、円盤状に形成され、各第二作動油供給口15bは、供給口配列部15fを貫通して動力部73の配置P1〜P8(図3参照)と対応して周方向に配列されている。また、各第二作動油供給口15bは、周方向に二系統配列して設けられている。すなわち、1つの動力部73に対して2系統(2つの)第二作動油供給口15bが設けられている。1系統目の各第二作動油供給口15bは、円C1の軌跡上に配置され、2系統目の各第二作動油供給口15bは、円C1とは同心の円C2の軌跡上に配置されている。
作動油貯留部15gは、供給口配列部15fにおいて各第二作動油供給口15bが配列された周方向に沿って作動油を貯留するものである。図9に示すように、作動油貯留部15gは、円盤状に形成され、その盤面に、各第二作動油供給口15bが配列された周方向に沿って作動油を貯留する貯留溝15jを有している。上述したように、各第二作動油供給口15bは、周方向に二系統配列して設けられている。このため、作動油貯留部15gは、各系統の各第二作動油供給口15bが配列された周方向(円C1,C2)に沿って作動油を二系統で貯留する態様で二系統の貯留溝15jを有している。各貯留溝15jは、起動用作動油供給管15aから二系統に分岐された起動用作動油分岐供給管15kが接続されている。
そして、各起動用作動油分岐供給管15kが起動用作動油供給管15aから分岐する分岐部分に、開閉弁15hが設けられている。開閉弁15hは、作動油貯留部15gの各系統の貯留溝15jへの作動油の供給を停止または切り換えて開閉する。この開閉弁15hは、制御部20により制御される。
回転部15iは、第二作動油供給口15bを開閉する第二供給口開閉弁をなすものである。回転部15iは、図8および図9に示すように、円盤状に形成され、供給口配列部15fと作動油貯留部15gとの間に配置されている。また、回転部15iは、供給口配列部15fにおいて周方向に配列された第二作動油供給口15bのうちの1つを、作動油貯留部15gにおける貯留溝15jに接続するポート15mが設けられている。上述したように、各第二作動油供給口15bは、周方向に二系統配列して設けられている。このため、回転部15iは、各系統の各第二作動油供給口15bが配列された周方向(円C1,C2上)に対応して二系統(2つ)のポート15mが設けられている。
また、回転部15iは、各第二作動油供給口15bの周方向の配置に沿ってクランクシャフト72の回転に同期して回転可能に設けられている。具体的に、回転部15iは、円C1,C2の中心に設けられた回転軸15nが、クランクシャフト72に対してギヤなどを介して接続されていることで、クランクシャフト72の回転に同期して回転可能に設けられている。そして、回転部15iのポート15mは、クランク72aを回転移動させ得る動力部73に対応した第二作動油供給口15bのみを作動油貯留部15gの貯留溝15jに接続するように配置される。上述したように、各第二作動油供給口15bは、周方向に二系統配列して設けられている。このため、回転部15iの各ポート15mは、各系統において、クランク72aを正逆方向(図8に示す矢印F方向または矢印R方向)に回転移動させ得る2つの動力部73に対応した2つの第二作動油供給口15bのみを作動油貯留部15gの各貯留溝15jに接続するように配置されている。
このように構成された起動手段15は、制御部20により制御される。制御部20は、停止状態から油圧モータ7を起動させるモータ起動指令に基づいて、クランク72aを回転移動させ得る動力部73について第二作動油供給口15bを開放させ当該動力部73に作動油を供給する。ここで、モータ起動指令とは、停止した油圧モータ7を起動させる指令であり、本実施の形態では、前進走行や後退走行において、クラッチ14を切断した状態で停止した油圧モータ7を起動させるアクセルの操作開始の入力信号A,A’を意味する。また、クランク72aを回転移動させ得る動力部73とは、図8に示すように複数(8つ)の動力部73のうち、クランク72aがクランクシャフト72の下方に位置している場合に、膨張行程でクランク72aを回転移動させる動力を生じる動力部73であり、図8においては、P4位置にある動力部73、およびP6位置にある動力部73となる。P4位置にある動力部73は、膨張行程となることでクランク72aを矢印F方向に回転移動させる。また、P6位置にある動力部73は、膨張行程となることでクランク72aを矢印R方向に回転移動させる。本実施の形態では、矢印F方向がフォークリフト1を前進走行させる方向とし、矢印R方向がフォークリフト1を後退走行させる方向とする。
第一供給口開閉弁73fおよび排出口開閉弁73gを閉塞状態とした状態で、モータ起動指令の入力により、制御部20は、作動油貯留部15gの各系統の貯留溝15jへの作動油の供給を停止された状態の開閉弁15hを制御し、作動油貯留部15gのいずれか一方の系統の貯留溝15jに作動油の供給を切り換えるように、いずれか一方の起動用作動油分岐供給管15kを選択的に開放させる。具体的に、開閉弁15hの切り換えは、フォークリフト1を前進走行させる場合は、クランク72aを矢印F方向に回転移動させるP4位置にある動力部73に作動油を供給させるため、P4位置の動力部73の第二作動油供給口15bの位置にある円C1上のポート15mから作動油が供給されるように、内側の貯留溝15jに接続された起動用作動油分岐供給管15kを開放させる。また、フォークリフト1を後退走行させる場合は、クランク72aを矢印R方向に回転移動させるP6位置にある動力部73に作動油を供給させるため、P6位置の動力部73の第二作動油供給口15bの位置にある円C2上のポート15mから作動油が供給されるように、外側の貯留溝15jに接続された起動用作動油分岐供給管15kを開放させる。このようにして、フォークリフト1を前進走行または後退走行させるためにクランク72aを回転移動させ得る動力部73のシリンダ73a内に作動油が供給される(図7(a)参照)。
このため、図7(b)に示すように、シリンダ73a内に供給された作動油によりピストン73bが下死点に向けて摺動することでクランク72aが回転移動する。その後は、図4(c)に示すように、ピストン73bが下死点から上死点に向けて摺動する収縮行程の開始のタイミングで排出口開閉弁73gを開放作動させ、続いて図4(d)に示すように、ピストン73bが上死点に向けて摺動する収縮行程の過程で、排出口開閉弁73gを閉塞作動させる。これにより、シリンダ73a内の作動油が圧縮され、第一作動油供給口73dの外側の圧力Piとシリンダ73a内の圧力Pとの関係がPi<Pとなるため、この圧力差によりバネの付勢力に抗して第一供給口開閉弁73fが開方向に押され、同時に制御部20は、ソレノイドをONして第一供給口開閉弁73fを開放作動させ、第一作動油供給口73dを開放する。これにより、作動油が供給された動力部73は、図4(a)に示すように、第一作動油供給口73dから作動油が供給されることになる。第一作動油供給口73dから作動油が供給されれば、作動油が供給された動力部73は、図4(a)〜図4(d)に示すように、通常時における動作となる。
また、回転部15iは、クランクシャフト72と同期回転するように構成されている。すなわち、クランク72aの回転移動によりクランクシャフト72が回転するため、回転部15iもともに回転する。このため、例えば、フォークリフト1を前進走行させるため、P4位置の動力部73に作動油を供給した場合、図8および図9に示すように、クランク72aの矢印F方向への回転移動に伴い、クランクシャフト72および回転部15iは、同方向である矢印F方向に回転する。すると、回転部15iのポート15mは、P5の位置にある動力部73に作動油を供給する位置に移動する。このP5位置の動力部73は、クランク72aの回転移動によりクランク72aを回転移動させ得る動力部73となっており、この動力部73に作動油が供給されることで、P5位置の動力部73も通常時における動作となる。そして、さらにクランク72aの回転移動によりクランクシャフト72および回転部15iが同期回転することで、P6→P8→P1→P2→P3の位置にある動力部73が順次通常時における動作となる。なお、フォークリフト1を後退走行させる場合でも、クランク72aが逆方向(図8および図9に示す矢印R方向)に回転移動することによりクランクシャフト72および回転部15iが逆方向に同期回転することで、同様に動力部73が順次通常時における動作となる。
なお、本実施の形態においては、油圧モータ7におけるクランクシャフト72の回転方向(正逆方向)によりフォークリフト1を前進走行または後退走行させる構成であるが、油圧モータ7の出力軸75と駆動軸2aとの間に出力軸75の回転方向を切り換える回転切換機構(図示せず)を設ければ、油圧モータ7におけるクランクシャフト72の回転方向を切り換えなくてもよくなる。したがって、本実施の形態の起動手段15において、供給口配列部15f、作動油貯留部15g、および回転部15iは、一系統の構成でよく、開閉弁15hは、系統の切り換えを行わず、単なる開閉を行うものでよい。
このように、本実施の形態の油圧モータ7は、クランクシャフト72のクランク72aの回転位置に対応して複数設けられており作動油の供給により膨張行程と収縮行程とに往復作動することでクランク72aを回転移動させてクランクシャフト72を回転させる動力部73と、各動力部73に対して加圧された作動油を供給する態様で設けられた第一作動油供給口73dを開閉する第一供給口開閉弁73fと、各動力部73から作動油を排出する態様で設けられた作動油排出口73eを開閉する排出口開閉弁73gと、を備えて、収縮過程の動力部73の内圧により第一供給口開閉弁73fが開放作動される油圧モータ7において、第一作動油供給口73dとは別に各動力部73に対して加圧された作動油を供給する態様で設けられた第二作動油供給口15bを開閉する第二供給口開閉弁としてのポート15mを有し、停止状態からのモータ起動指令に基づいて、クランク72aを回転移動させ得る動力部73について第二供給口開閉弁15cを開放作動させて当該動力部73に作動油を供給する起動手段15を備える。
この油圧モータ7によれば、第二供給口開閉弁15cを開放作動させることで、クランク72aを回転移動させ得る動力部73に加圧された作動油が供給されるため、当該動力部73の内圧が高まる。この結果、収縮過程の動力部73の内圧により第一供給口開閉弁73fが開放作動される油圧モータ7において、当該油圧モータ7の停止時からの起動を行うことが可能になる。
また、本実施の形態の油圧モータ7では、起動手段15は、各第二作動油供給口15bを周方向に配列した供給口配列部15fと、各第二作動油供給口15bが配列された周方向に沿って作動油を貯留する作動油貯留部15gと、作動油貯留部15gへの作動油の供給を開閉する開閉弁15hと、供給口配列部15fと作動油貯留部15gとの間で第二作動油供給口15bの周方向の配置に沿ってクランクシャフト72の回転に同期して回転可能に設けられて、クランク72aを回転移動させ得る動力部73に対応した第二作動油供給口15bのみを作動油貯留部15gに接続する第二供給口開閉弁をなすポート15mを有する回転部15iと、を備え、モータ起動指令に基づいて、開閉弁15hを開放作動させる。
この油圧モータ7によれば、回転部15iがクランクシャフト72の回転に同期して回転することで、ポート15mが、クランク72aの回転移動に伴ってクランク72aを回転移動させ得る動力部73に対応した第二作動油供給口15bの位置に順次移動する。このため、実施の形態1のクランク回転位置検出部15dを要さなくても、クランク72aを回転移動させ得る動力部73を特定することができ、油圧モータ7の停止時からの起動を行うことが可能になる。しかも、この油圧モータ7によれば、各動力部73の第二供給口開閉弁15cをクランク72aの回転移動に応じて順次開放作動させることで、各動力部73を通常時における動作とすることができることから、油圧モータ7の停止時からの起動を確実かつ円滑に行うことが可能になる。
また、本実施の形態の油圧モータ7では、供給口配列部15fは、各第二作動油供給口15bを周方向に二系統配列して設けられ、作動油貯留部15gは、各系統の各第二作動油供給口15bが配列された周方向に沿って作動油を二系統で貯留する態様で設けられ、開閉弁15hは、作動油貯留部15gの各系統への作動油の供給を切り換えて開閉する態様で設けられ、回転部15iは、クランク72aを正逆方向に回転移動させ得る動力部73に対応した2つの第二作動油供給口15bのみを作動油貯留部15gに接続する二系統のポート15mをそれぞれ有して設けられており、モータ起動指令に基づいて、開閉弁15hを各系統のいずれか一方に選択的に切り換えて開放作動させる。
この油圧モータ7によれば、クランクシャフト72を正逆方向に回転させる構成の場合、モータ起動指令に基づいて、クランク72aを正逆方向のいずれか一方に回転移動させ得る動力部73に作動油を切り換えて供給することで、油圧モータ7の停止時からの正逆方向のいずれか一方への起動を行うことが可能になる。
[実施の形態3]
図10および図11は、本実施の形態に係る油圧モータにおける起動手段の概略図であり、図12は、本実施の形態に係る油圧モータにおける起動時のフローチャートである。なお、図11は、図10に示す起動手段を展開した形態を示す。本実施の形態の油圧モータ7は、上述した実施の形態1に対し、起動手段の構成が異なる。したがって、本実施の形態の説明において、上述した実施の形態1と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
図1に示すように、起動手段15は、油圧ポンプ5から各動力部73のシリンダ73aに接続される起動用作動油供給管15aを有している。起動用作動油供給管15aは、油圧ポンプ5の吐出口に接続された吐出管12から、走行系作動油供給管9や動作系作動油供給管11とは別に分岐して設けられている。
また、起動手段15は、図10および図11に示すように、供給口配列部15fと、作動油貯留部15gと、開閉弁15hと、回転部15iと、回転駆動部15pと、回転部回転位置検出部15rと、クランク回転位置検出部15dとを備えている。
供給口配列部15fは、図11に示すように、第一作動油供給口73dとは別に各動力部73のシリンダ73aに対して加圧された作動油を供給するように各第二作動油供給口15bが設けられている。供給口配列部15fは、円盤状に形成され、各第二作動油供給口15bは、供給口配列部15fを貫通して動力部73の配置P1〜P8(図3参照)と対応して円C3の軌跡上で周方向に配列されている。
作動油貯留部15gは、供給口配列部15fにおいて各第二作動油供給口15bが配列された周方向に沿って作動油を貯留するものである。図11に示すように、作動油貯留部15gは、円盤状に形成され、その盤面に、各第二作動油供給口15bが配列された周方向(円C3)に沿って作動油を貯留する貯留溝15jを有している。貯留溝15jは、起動用作動油供給管15aから二系統に分岐された起動用作動油分岐供給管15kが接続されている。
そして、各起動用作動油分岐供給管15kが起動用作動油供給管15aから分岐する分岐部分に、開閉弁15hが設けられている。開閉弁15hは、作動油貯留部15gの貯留溝15jへの作動油の供給を停止または開始するように開閉する。この開閉弁15hは、制御部20により制御される。
回転部15iは、第二作動油供給口15bを開閉する第二供給口開閉弁をなすものである。回転部15iは、図10および図11に示すように、円盤状に形成され、供給口配列部15fと作動油貯留部15gとの間に配置されている。また、回転部15iは、供給口配列部15fにおいて周方向(円C3)に配列された第二作動油供給口15bのうちの1つを、作動油貯留部15gにおける貯留溝15jに接続するポート15mが設けられている。
回転駆動部15pは、回転部15iを回転させるものである。具体的に、回転駆動部15pは、その出力軸が、回転部15iにおいて円C3の中心に設けられた回転軸15nに連結されている。また、回転駆動部15pは、回転部15iを正逆方向(図10および図11に示す矢印F方向または矢印R方向)に回転移動させる。この回転駆動部15pは、制御部20により制御される。
回転部回転位置検出部15rは、回転部15iの回転位置、すなわちポート15mの回転位置を検出するものである。本実施の形態の回転部回転位置検出部15rは、例えば、回転駆動部15pが検出器付きのサーボモータとして構成され、この検出器として設けられている。回転部回転位置検出部15rにより検出されるポート15mの回転位置の情報は、制御部20に出力される。
クランク回転位置検出部15dは、例えば、クランクシャフト72の回転角度からクランク72aの回転位置を検出する。クランク回転位置検出部15dにより検出されるクランク72aの回転位置の情報は、制御部20に出力される。
制御部20は、停止状態から油圧モータ7を起動させるモータ起動指令に基づいて、クランク72aを回転移動させ得る動力部73について第二作動油供給口15bを開放させ当該動力部73に作動油を供給する。ここで、モータ起動指令とは、停止した油圧モータ7を起動させる指令であり、本実施の形態では、前進走行や後退走行において、クラッチ14を切断した状態で停止した油圧モータ7を起動させるアクセルの操作開始の入力信号A,A’を意味する。また、クランク72aを回転移動させ得る動力部73とは、図10に示すように複数(8つ)の動力部73のうち、クランク72aがクランクシャフト72の下方に位置している場合に、膨張行程でクランク72aを回転移動させる動力を生じる動力部73であり、図10においては、P4位置にある動力部73、およびP6位置にある動力部73となる。P4位置にある動力部73は、膨張行程となることでクランク72aを矢印F方向に回転移動させる。また、P6位置にある動力部73は、膨張行程となることでクランク72aを矢印R方向に回転移動させる。本実施の形態では、矢印F方向がフォークリフト1を前進走行させる方向とし、矢印R方向がフォークリフト1を後退走行させる方向とする。
図12に示すように、第一供給口開閉弁73f、排出口開閉弁73gおよび開閉弁15hを閉塞状態とした状態で、モータ起動指令の入力により、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、クランク72aの回転位置を検出する(ステップS11)。次に、制御部20は、クランク72aの回転位置により、当該クランク72aを回転移動させ得る動力部73を特定する(ステップS12)。特定される動力部73は、フォークリフト1の前進走行の場合は、図10に示すP4位置にある動力部73であり、フォークリフト1の後退走行の場合は、図10に示すP6位置にある動力部73である。次に、制御部20は、特定した動力部73の第二作動油供給口15bを作動油貯留部15gに接続する位置にポート15mが配置されるように回転部回転位置検出部15rにより回転部15iの回転位置を検出しつつ回転駆動部15pにより回転部15iを回転させる(ステップS13)。次に、制御部20は、作動油貯留部15gの貯留溝15jへの作動油の供給を停止された状態の開閉弁15hを開放作動する(ステップS14)。これにより、特定した動力部73のシリンダ73a内に作動油が供給される。この際、制御部20は、第一供給口開閉弁73fおよび排出口開閉弁73gを閉塞状態とする。
次に、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、シリンダ73a内に供給された作動油によりクランク72aが回転移動を開始したかを判断する(ステップS15)。このステップS15において、図7(b)に示すように、シリンダ73a内に供給された作動油によりピストン73bが下死点に向けて摺動することでクランク72aが回転移動していれば(ステップS15:Yes)、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、図7(c)に示すように、ピストン73bが下死点から上死点に向けて摺動する収縮行程の開始のタイミングで開閉弁15hを閉塞作動させるとともに、排出口開閉弁73gを開放作動させる(ステップS16,S17)。なお、ステップS15において、クランク72aが回転移動していなければ(ステップS15:No)、制御部20は、ステップS14に戻り、ステップS12で特定した動力部73に作動油を供給するように開閉弁15hを開放作動させる。
次に、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、図7(d)に示すように、ピストン73bが上死点に向けて摺動する収縮行程の過程で、排出口開閉弁73gを閉塞作動させる(ステップS18)。これにより、図4(d)に示すように、シリンダ73a内の作動油が圧縮され、第一作動油供給口73dの外側の圧力Piとシリンダ73a内の圧力Pとの関係がPi<Pとなるため、この圧力差によりバネの付勢力に抗して第一供給口開閉弁73fが開方向に押され、同時に制御部20は、ソレノイドをONして第一供給口開閉弁73fを開放作動させ、第一作動油供給口73dを開放する(ステップS19)。これにより、ステップS2で特定された動力部73は、図4(a)に示すように、第一作動油供給口73dから作動油が供給されることになる。第一作動油供給口73dから作動油が供給されれば、ステップS2で特定された動力部73は、図4(a)〜図4(d)に示すように、通常時における動作となる。そして、ステップS2で特定された動力部73が通常時における動作となれば、他の動力部73も通常時における動作となる。
次に、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、クランク72aが回転移動していることで、油圧モータ7が起動して通常時における動作となったことを判断し(ステップS20:Yes)、本制御を終了する。一方、制御部20は、クランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、クランク72aが回転移動していないことで、油圧モータ7が起動していないことを判断した場合(ステップS20:No)、ステップS1に戻り、本制御を最初からやり直す。
なお、本実施の形態においては、油圧モータ7におけるクランクシャフト72の回転方向(正逆方向)によりフォークリフト1を前進走行または後退走行させる構成であるが、油圧モータ7の出力軸75と駆動軸2aとの間に出力軸75の回転方向を切り換える回転切換機構(図示せず)を設ければ、油圧モータ7におけるクランクシャフト72の回転方向を切り換えなくてもよくなる。したがって、本実施の形態の起動手段15は、油圧モータ7におけるクランクシャフト72を一方向にのみ回転させるものであってもよい。
このように、本実施の形態の油圧モータ7は、クランクシャフト72のクランク72aの回転位置に対応して複数設けられており作動油の供給により膨張行程と収縮行程とに往復作動することでクランク72aを回転移動させてクランクシャフト72を回転させる動力部73と、各動力部73に対して加圧された作動油を供給する態様で設けられた第一作動油供給口73dを開閉する第一供給口開閉弁73fと、各動力部73から作動油を排出する態様で設けられた作動油排出口73eを開閉する排出口開閉弁73gと、を備えて、収縮過程の動力部73の内圧により第一供給口開閉弁73fが開放作動される油圧モータ7において、第一作動油供給口73dとは別に各動力部73に対して加圧された作動油を供給する態様で設けられた第二作動油供給口15bを開閉する第二供給口開閉弁としてのポート15mを有し、停止状態からのモータ起動指令に基づいて、クランク72aを回転移動させ得る動力部73について第二供給口開閉弁15cを開放作動させて当該動力部73に作動油を供給する起動手段15を備える。
この油圧モータ7によれば、第二供給口開閉弁15cを開放作動させることで、クランク72aを回転移動させ得る動力部73に加圧された作動油が供給されるため、当該動力部73の内圧が高まる。この結果、収縮過程の動力部73の内圧により第一供給口開閉弁73fが開放作動される油圧モータ7において、当該油圧モータ7の停止時からの起動を行うことが可能になる。
また、本実施の形態の油圧モータ7では、起動手段15は、各第二作動油供給口15bを周方向に配列した供給口配列部15fと、各第二作動油供給口15bが配列された周方向に沿って作動油を貯留する作動油貯留部15gと、作動油貯留部15gへの作動油の供給を開閉する開閉弁15hと、供給口配列部15fと作動油貯留部15gとの間で第二作動油供給口15bの周方向の配置に沿って回転可能に設けられて、自身の回転移動に伴って1つの第二作動油供給口15bのみを作動油貯留部15gに接続する第二供給口開閉弁をなすポート15mを有する回転部15iと、回転部15iを回転させる回転駆動部15pと、回転部15iの回転位置を検出する回転部回転位置検出部15rと、クランク72aの回転位置を検出するクランク回転位置検出部15dと、を備え、モータ起動指令に基づいて、クランク回転位置検出部15dにより検出されたクランク72aの回転位置から、クランク72aを回転移動させ得る動力部73を特定し、特定した動力部73の第二作動油供給口15bを作動油貯留部15gに接続する位置にポート15mが配置されるように回転部回転位置検出部15rにより回転部15iの回転位置を検出しつつ回転駆動部15pにより回転部15iを回転させるとともに、開閉弁15hを開放作動させる。
この油圧モータ7によれば、クランク回転位置検出部15dにより検出されたクランク72aの回転位置から、当該クランク72aを回転移動させ得る動力部73を特定しており、特定した動力部73の第二作動油供給口15bを作動油貯留部15gに接続するように回転部15iを回転させるとともに開閉弁15hを開放作動させることで、油圧モータ7の停止時からの起動を行うことが可能になる。
また、本実施の形態の油圧モータ7では、起動手段15は、モータ起動指令に基づいて、クランク回転位置検出部15dにより検出されたクランク72aの回転位置から、クランク72aを正逆方向のいずれか一方に回転移動させ得る動力部73を特定し、特定した動力部73の第二作動油供給口15bを作動油貯留部15gに接続する位置にポート15mが配置されるように回転部回転位置検出部15rにより回転部15iの回転位置を検出しつつ回転駆動部15pにより回転部15iを回転させるとともに、開閉弁15hを開放作動させる。
この油圧モータ7によれば、クランクシャフト72を正逆方向に回転させる構成の場合、モータ起動指令に基づいて、クランク72aを正逆方向のいずれか一方に回転移動させ得る動力部73を特定しており、特定した動力部73の第二作動油供給口15bを作動油貯留部15gに接続するとともに開閉弁15hを開放作動させることで、油圧モータ7の停止時からの正逆方向のいずれか一方への起動を行うことが可能になる。
なお、上述した油圧モータ7の制御においては、1つの動力部73について通常時における動作とすることで、他の動力部73も通常時における動作としているが、この限りではない。具体的には、ステップS15でクランク72aが回転移動した場合(ステップS15:Yes)、制御部20は、開閉弁15hを閉塞状態としてステップS11に戻ってクランク回転位置検出部15dからの検出信号を取得し、クランク72aの回転移動に伴って当該クランク72aを回転移動させ得る次の動力部73を特定する(ステップS12)。そして、制御部20は、回転部15iを特定された次の動力部73の第二作動油供給口15bを作動油貯留部15gに接続する位置にポート15mが配置されるように回転部15iを回転させる(ステップS13)。次に、制御部20は、作動油貯留部15gの貯留溝15jへの作動油の供給を停止された状態の開閉弁15hを開放作動する(ステップS14)。これを全ての動力部73に対して順次行う。なお、上記制御は、全ての動力部73に対して行わずに、例えば、周方向に配置された各動力部73について1つおきに行ってもよい。
すなわち、本実施の形態の油圧モータ7では、起動手段15は、クランク回転位置検出部15dにより検出されたクランク72aの回転位置から、クランク72aの回転移動に伴って当該クランク72aを回転移動させ得る動力部73を順次特定し、特定した動力部73の第二作動油供給口15bを作動油貯留部15gに接続する位置にポート15mが配置されるように回転部回転位置検出部15rにより回転部15iの回転位置を検出しつつ回転駆動部15pにより回転部15iを回転させるとともに、開閉弁15hを開放作動させる。
この油圧モータ7によれば、各動力部73の第二供給口開閉弁15cをクランク72aの回転移動に応じて順次開放作動させることで、各動力部73を通常時における動作とすることができることから、油圧モータ7の停止時からの起動を確実かつ円滑に行うことが可能になる。
また、本実施の形態の産業用車両であるフォークリフト1は、駆動部6と、駆動部6により駆動される油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から吐出される作動油が供給されることで駆動輪(前輪2)を回転駆動する油圧モータ7と、を備えており、上述した実施の形態1〜3のいずれか一つに記載の油圧モータ7が適用される。
このフォークリフト1によれば、収縮過程の動力部73の内圧により第一供給口開閉弁73fが開放作動される油圧モータ7が適用された場合において、当該油圧モータ7を停止時から起動させて走行を行うことが可能になる。
なお、上述した全ての実施の形態においては、油圧モータ7として、クランクシャフト72のクランク72aの周方向に動力部73が複数設けられたものを説明したが、この限りではない。例えば、図には明示しないが、クランクシャフト72の軸方向に回転位置の異なる複数のクランク72aが設けられ、各クランク72aに動力部73がそれぞれ設けられている油圧モータであってもよく、この油圧モータに対しても上述した起動手段15を適用することが可能である。