JP5936372B2 - 植物育成方法および植物育成材料 - Google Patents
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例えば、特開平5−227849号公報では光合成に適した波長域に応じた発光極大が605nmである蛍光色素を含有した農業フィルムによる栽培が検討されており、特開平6−46685号公報では、光源中の青色光(吸収極大が380〜500nm)を吸収する色素と緑色光(吸収極大が480〜550nm)を吸収し、発光する蛍光色素とを含有するフィルムを用いた栽培法が検討されている。また、特開2007−135583号公報では太陽光を光源とし紫外線波長域の光を吸収して波長域450〜700nmの蛍光を発する色素を含有する織編布により、光合成を促進して植物の育成を行っている。
光源としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光を植物に照射して植物を育成する育成方法で使用する植物育成材料であって、
前記ナイルレッドを透明フィルム内に分散して含有し、
前記透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられている点にある。
蛍光灯から発光した波長530〜570nmの光を含む光源光を、ナイルレッドを含有する透明フィルムで受光することで、植物の光合成に適した波長である波長620〜660nmの範囲内の照射光とすることができる。従って、蛍光灯およびナイルレッドを含有する透明フィルムのみを使用して、低コストで植物の光合成に適した波長を有する照射光に変換して、その照射光を植物に照射して栽培効率を向上させることができる。
また、ナイルレッドを透明フィルム内に分散して含有されるので、蛍光灯から発光する波長530〜570nmの光を含む光源光を照射する事で、その光源光を透明フィルム内に分散したナイルレッドが受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光として植物に照射することができるとともに、光源光をこの透明フィルムを通過させて植物に照射することができる。これにより、蛍光灯から発光する光源光およびナイルレッドから照射される照射光によって植物(特に葉物野菜)の栽培効率を向上させることができる。
さらに、ナイルレッドを含有する透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられているので、透明フィルムに含まれるナイルレッドが空気中の酸素に暴露されることを防止して、透明フィルムに含まれるナイルレッドの退色、透明フィルムの白濁劣化を防止して、照射光を発光するナイルレッドを含有する透明フィルムの長寿命化を図ることができる。
光源としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光を植物に照射して植物を育成する育成方法で使用する植物育成材料であって、
前記ナイルレッドを透明フィルム内に分散して含有するフィルム材が透明板上に形成されてなり、
前記透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられている点にある。
蛍光灯から発光した波長530〜570nmの光を含む光源光を、ナイルレッドを含有する透明フィルムで受光することで、植物の光合成に適した波長である波長620〜660nmの範囲内の照射光とすることができる。従って、蛍光灯およびナイルレッドを含有する透明フィルムのみを使用して、低コストで植物の光合成に適した波長を有する照射光に変換して、その照射光を植物に照射して栽培効率を向上させることができる。
また、フィルム材が透明板上に形成されるので、フィルム材の形状を固定することができ、フィルム材を透明板上に固定した良好な支持状態で植物の育成を図ることができる。また、透明板を使用することで、蛍光灯からの光源光およびナイルレッドを分散して含有するフィルム材からの照射光を遮ることなく植物に照射することができる。
さらに、ナイルレッドを含有する透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられているので、透明フィルムに含まれるナイルレッドが空気中の酸素に暴露されることを防止して、透明フィルムに含まれるナイルレッドの退色、透明フィルムの白濁劣化を防止して、照射光を発光するナイルレッドを含有する透明フィルムの長寿命化を図ることができる。
前記透明フィルムが、ポリスチレンフィルム或いはポリメタクリル酸メチルフィルムである点にある。
透明フィルムが、ポリスチレンフィルム或いはポリメタクリル酸メチルフィルムで構成されているので、そのような高分子材料によって変形可能な透明フィルムとして、透明フィルムを平面状に限らず、曲面状にも変形させることができる。例えば、透明フィルムに光源光を照射する蛍光灯の形状および透明フィルムからの照射光を受ける植物の形状に適応させて透明フィルムの形状を変形させることができる。
また、本発明に係る植物育成材料の更なる特徴構成は、前記植物が、葉物野菜である点にある。
この特徴構成によれば、植物が、光合成を行なう葉物野菜とされるので、ナイルレッドを含有する透明フィルムから照射される植物の光合成に適した波長である波長620〜660nmの範囲内の光によって葉物野菜の栽培効率を向上させることができる。このような葉物野菜としては、後に説明するリーフレタス、小松菜に加え、レタス、グリーンリーフ、サンチュ、ほうれん草、春菜、サラダ菜等が含まれる。
光源としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光を植物に照射して植物を育成する育成方法で使用する植物育成材料を製造するための植物育成材料の製造方法であって、
前記ナイルレッドをトリクロロエチレンに溶解させ、フィルム化用高分子材料を混合させて原料液を得て、透明板を前記原料液に含浸させた後、前記トリクロロエチレンを揮発させて、前記透明板表面に、フィルム化用高分子材料の前記透明フィルムを形成して、前記ナイルレッドを前記透明フィルム内に分散して含有するフィルム材が前記透明板上に形成された前記植物育成材料を製造する点にある。
ナイルレッドをトリクロロエチレンに溶解させるとともに、フィルム化用高分子材料を混合させて原料液を得て、透明板を原料液に含浸させた後、前記トリクロロエチレンを揮発させるので、フィルム化用高分子材料によって構成される透明フィルム中にナイルレッドが一様に分散したフィルム材を、透明板表面に容易に形成することができる。
ここで、光源光4は蛍光灯3により照射される波長530〜570nmの範囲内の光で、ナイルレッドに吸収される光であって、波長620〜660nmの範囲内の光に変換される光である。一方、照射光6は、上記波長530〜570nmの範囲内の光をナイルレッドが吸収して発する光である。従って、光源光4が波長530〜570nmの全範囲の光を含んでいる必要は必ずしもなく、照射光6に関しても波長620〜660nmの全範囲内の光を含んでいる必要は必ずしもない。
一方、その光源光4を受光するフィルム材5に含有されるナイルレッドは、波長550nm付近の光を吸収して波長640nm付近の光に変換して発することを可能にする蛍光色素であり、例えば、励起光として波長553nmの光を受光した場合、蛍光として波長637nmの光を発するものである。また、光源光4は550nm付近にピーク波長を有するため、より多くの光が波長640nm付近の光に変換される。
〔植物育成材料〕
また、酸素非透過膜層8の材質については、光源光4の透過性を有するものであって、例えば、酸素透過性の低いポリビニルアルコール、ナイロンなどとされる。また、この酸素非透過膜層8の材質を、透明フィルムの材質と同じポリメタクリル酸メチルとすることで、フィルム材5の上面に酸素非透過膜層8を接着させて加工することが容易となる。
〔植物育成材料の製造方法〕
植物育成材料Mは、ナイルレッドをトリクロロエチレンに溶解させ、フィルム化用高分子材料としてのポリスチレンまたはポリメタクリル酸メチルを混合させてフィルム材形成用原料液(原料液に相当)を得る。そして、このフィルム材形成用原料液をさらにトリクロロエチレンで希釈して、希釈したフィルム材形成用原料液とし、アクリル板7をこの希釈したフィルム材形成用原料液に含浸させた後、トリクロロエチレンを揮発させて、アクリル板7の表面に、フィルム化用高分子材料による透明フィルム内にナイルレッドが分散して含有したフィルム材5が形成される。そして、酸素非透過膜層8としての高分子材料膜をフィルム材5の表面に加工する。このような製造方法にて植物育成材料Mを形成する。
〔植物育成方法〕
〔植物育成実験〕
実験で用いた実験装置30は、図3に示すように、アクリル板7の上面にフィルム材5を形成した植物育成装置1と、その植物育成装置1に併設したアクリル板7にフィルム材5が形成されておらず、照射光6が発光されない比較用育成装置20とによって構成されている。そして、植物育成装置1および比較用育成装置20の実験結果を比較して植物育成装置1の植物育成効果を確認した。
なお、植物育成装置1および比較用育成装置20において、光源光4の光量を等しい条件として実験を行なうために蛍光灯3は共通として、植物育成装置1および比較用育成装置20に光源光4を照射するように構成されるとともに、さらに、培養液12が共通となるように、それぞれの培養ケース11の側面下部に連通口13を設けて構成した。なお、蛍光灯3から植物2を支持する支持体10までの距離を10cmとし、培養ケース内の培養液12の深さを4、5cmとした。
実験で使用したフィルム材5は、図4に示す、条件1〜3のフィルム材形成用原料液(図4において原料液と表示)を用いて製造した。
いずれの条件においてもナイルレッド(東京化成工業製)を10mLのトリクロロエチレン(ナカライテスク社製)に溶解させ、同時にフィルム化用高分子材料であるポリスチレン(ナカライテスク社製)またはポリメタクリル酸メチル(ナカライテスク社製)を混合した。条件1は、ナイルレッド10mgおよびポリスチレン300mgを混合したものである。条件2は、ナイルレッド10mgおよびポリメタクリル酸メチル300mgを混合したものである。条件3は、ナイルレッド100mgおよびポリメタクリル酸メチル300mgを混合したものである。
そして、それぞれのフィルム材形成用原料液について、ホーロー製バット内にてフィルム材形成用原料液1mLに対して100mLのトリクロロエチレンで希釈して、その希釈したフィルム材形成用原料液中にアクリル板7を含浸して、その後、トリクロロエチレンを揮発させることで、アクリル板7の表面に、ナイルレッドが含有したフィルム化用高分子材料のフィルム材5を形成した。
さらに、本実施形態においては、フィルム材5が形成されるアクリル板7との接着を考慮し、アクリル板7と同じアクリル樹脂である、ポリメタクリル酸メチルを用いた条件2のフィルム材形成用原料液にてフィルム材5を形成した。
照度は、蛍光灯3下端から、10cm下方に位置する発泡スチロールで形成した支持体10の中央部において、植物2の育成に必要な照度である5000ルクスを確保できているかどうかの確認を、照度計(LX−1000,カスタム社製)によって計測を行った。その結果、植物育成装置1においては6310ルクスが確認され、比較用育成装置20においては7015ルクスが確認され、いずれも植物2の育成に必要な照度を確保できていることを確認した。
この植物育成実験は、播種から3週間にわたって行われ、植物2としてのリーフレタスの発芽期およびその発芽期に引き続く成長期に、照射光6を植物2に照射する実験である。
この植物育成実験の期間中に、カメラにて育成状況を撮影するとともに、試験終了直後に、リーフレタスを回収し、電子天秤にて秤量し、リーフレタスの重量等を評価した。リーフレタスの実験開始後(播種後)の1週間経過時点および3週間経過時点(試験終了時点)における生育状態を示す観察写真を図5に示す。3週間経過時点の植物育成装置1における植物2としてのリーフレタスの葉の数が、3週間経過時点の比較用育成装置20におけるリーフレタスの葉の数より多いことを観察することができる。
以上の結果より、少なくとも植物2としてのリーフレタスの栽培の初期段階(播種〜3週間程度)において、植物育成装置1によってリーフレタスの栽培が促進、健全化されることがわかった。
この植物育成実験は、播種から10日間にわたって行われたものであり、上述のリーフレタスの植物育成実験と同様に植物2としての小松菜の発芽期およびその発芽期に引き続く成長期に、照射光6を植物2に照射する実験である。
この植物育成実験についても、リーフレタスの実験と同様に、実験期間中にカメラにて育成状況の撮影を行い、10日間の試験終了直後に、小松菜を回収し、電子天秤にて秤量し、重量等を評価した。
図9に示す観察写真および図11に示す生育率については植物育成装置1と比較用育成装置20との実験結果において差が明確に認められないが、図10に示す平均重量および図12に示す総重量については、植物育成装置1の実験結果を比較用育成装置20の実験結果と比較すると、植物育成装置1の実験結果は約20%増加することが確認できた。これらの結果から、小松菜に対しても収穫量を増加できることがわかった。
〔別実施形態〕
また、開花後における植物2が最も成長する所定の期間において照射光6を植物2に照射してもかまわない。これにより、その照射時期において光合成を促進することができるとともに、植物2が果菜である場合は、果実を大きく成長させることができる。また、このように照射時期が限定されることで、照射時間が短くなるので、フィルム材5において照射光6を発光するナイルレッドの退色の進行を防止して、照射光6を発光するフィルム材5の長寿命化を図ることができる。
2 :植物
3 :蛍光灯
4 :光源光
5 :フィルム材
6 :照射光
7 :アクリル板
8 :酸素非透過膜層
10 :支持体
11 :培養ケース
12 :培養液
13 :連通口
20 :比較用育成装置
30 :実験装置
M :植物育成材料
Claims (5)
- 光源としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光を植物に照射して植物を育成する育成方法で使用する植物育成材料であって、
前記ナイルレッドを透明フィルム内に分散して含有し、
前記透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられている植物育成材料。 - 光源としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光を植物に照射して植物を育成する育成方法で使用する植物育成材料であって、
前記ナイルレッドを透明フィルム内に分散して含有するフィルム材が透明板上に形成されてなり、
前記透明フィルムの外気接触面側に、酸素の透過を防止する酸素非透過膜層が設けられている植物育成材料。 - 前記透明フィルムが、ポリスチレンフィルム或いはポリメタクリル酸メチルフィルムである請求項1又は2に記載の植物育成材料。
- 前記植物が、葉物野菜である請求項1〜3の何れか一項に記載の植物育成材料。
- 光源としての蛍光灯から波長530〜570nmの光を含む光源光を発光し、前記光源光をナイルレッドを含有する透明フィルムで受光して、波長620〜660nmの範囲内の照射光とし、当該照射光を植物に照射して植物を育成する育成方法で使用する植物育成材料を製造するための植物育成材料の製造方法であって、
前記ナイルレッドをトリクロロエチレンに溶解させ、フィルム化用高分子材料を混合させて原料液を得て、透明板を前記原料液に含浸させた後、前記トリクロロエチレンを揮発させて、前記透明板表面に、フィルム化用高分子材料の前記透明フィルムを形成して、前記ナイルレッドを前記透明フィルム内に分散して含有するフィルム材が前記透明板上に形成された前記植物育成材料を製造する植物育成材料の製造方法。
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