JP5935342B2 - インクジェット用インクセット - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット用インクセットに関する。
従来から、記録媒体上に画像や文字を記録する様々な方法が知られている。例えば、インクジェット記録方法では、インクジェット記録装置に搭載されたヘッドのノズルから微小なインク滴を吐出させ、これを記録媒体に付着させることで、記録媒体上に画像や文字を記録する。
このようなインクジェット記録方法には、所望の画像や文字を得るために、複数種のインク(例えば、ブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク等)を組み合わせてなるインクセットが用いられる。
インクセットを構成する各インクは、色毎に異なる特性を備えることが求められる。例えば、ブラックインクは、主に文字等のテキスト印刷に使用されることが多いため、着色剤として、文字の滲みが少ない顔料を使用する場合がある。これに対して、ブラックインク以外のカラーインク(シアンインク、イエローインク、マゼンタインク等)は、文字等の印刷に用いられることもあるが、画像の印刷に使用されることが多いため、着色剤として、色彩が鮮明である染料を使用する場合がある。
また、インクセットを構成する各インクに共通して求められる特性としては、ノズルから吐出される際に、インク滴の飛行曲がり等に起因する着弾位置ずれが生じにくいことが挙げられる。このように、インクの着弾位置ずれが生じると、画像や文字等が乱れて、所望の画像が得られない場合がある。このような不具合を解消するために、例えば、インクに含まれる成分の凝集を抑制したり(例えば、特許文献1および特許文献2)、インクに保湿剤を含有させたりすることで、ノズルの目詰まり等に伴うインクの着弾位置ずれを低減させることが行われている。
さらに、インクセットを構成する各インクは、これを用いて記録された画像が多様な環境下に置かれることがあることから、良好な耐光性を備えていることが求められる。
特開2007−177249号公報 特開2010−84136号公報
上記のようなインクセットを用いて画像を記録する場合に、各インク間で水分の授受が行われることがある。この現象は、一方のインクに含まれる保湿剤が、他方のインクに含まれる水分を吸収することで生じることが多い。そうすると、各インクの中でも保湿剤量の少ないインクは、他のインクから水分が奪われやすくなるので、インクの増粘に伴いインクの着弾位置ずれ生じやすくなる場合があった。
特に、顔料を含有するブラックインクと、染料を含有するカラーインクとを用いたインクセットでは、ブラックインクとカラーインクに含まれる成分の組成が異なるため、水分の授受が顕著になることがあり、インクの着弾位置ずれが生じやすい傾向にあった。
着弾位置ずれが生じた場合、カラーインクはブラックインクよりも明度が高いため、着弾位置ずれが起こっても、僅かな位置ずれであれば目立ちにくい傾向にある。他方、明度が低いブラックインクは視認しやすいため、僅かな着弾ずれでも目立ちやすい傾向にある。
一方、上記インクセットに用いられるインクのうち、染料を用いたインクは、用いた染料の性質に起因して耐光性が不十分な場合があった。特にイエローインクの耐光性は、これ以外の色のインクと比較して、低い傾向にあった。
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、インクの着弾位置ずれを目立ちにくくでき、かつ耐光性に優れたインクセットを提供することにある。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット用インクセットの一態様は、
少なくとも着色剤、水及び保湿剤を含有するインクを組み合わせてなるインクジェット用インクセットであって、
前記保湿剤は、水酸基を3つ以上有する有機化合物およびN,N,N−トリアルキルアミノ酸の少なくとも一種であり、
前記インクとして、少なくともイエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクを備え、
前記イエローインクは、着色剤として一般式(y−1)で表される化合物を含有し、
前記マゼンタインクは、着色剤として一般式(m−1)で表される化合物を含有し、
前記シアンインクは、着色剤として一般式(c−1)で表される化合物を含有し、
前記ブラックインクは、着色剤として顔料を含み、
前記イエローインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[YELLOWhume.(質量%)]、前記マゼンタインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[MAGENTAhume.(質量%)]、前記シアンインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[CYANhume.(質量%)]、前記ブラックインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[BLACKhume.(質量%)]とした場合に、下記条件1、条件2および条件3を全て満たす。
条件1: 3≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦7
条件2: 3≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦7
条件3: 3≦BLACKhume.−CYANhume.≦7
Figure 0005935342
(式(y−1)中、QY1はハロゲン原子を表し;xは、2〜4の整数を表し;yは、1〜3の整数を表す。)
Figure 0005935342
(上記式(m−1)中、AM1は、5員複素環基を表し、
M11およびBM12は、各々−CRM11=、−CRM12=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CRM11=または−CRM12=を表し、
M13,RM14は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表わし、RM13,RM14は、更に置換基を有していてもよく、
M1、RM11、RM12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルおよびアリールチオ基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表し、GM1、RM11、RM12は、更に置換されていてもよく、
M11とRM13、あるいはRM13とRM14が結合して5〜6員環を形成してもよい。)
Figure 0005935342
(式(c−1)中、
破線で表される環AC1乃至DC1は、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、
C1はC2−C12アルキレンを表し、
C1は、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、モノC6−C10アリールアミノ基、ジC6−C10アリールアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、C1−C6アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基よりなる群から選択される1種類又は2種類以上の置換基を有しても良い、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基であり、
C1は水素原子;スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ基;モノC1−C6アルキルアミノ基;ジC1−C6アルキルアミノ基;モノアリールアミノ基;ジアリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;又はアルキルチオ基;を表し、
基FC1はフェニル基;又は、6員含窒素複素芳香環基;を表し、
aは1以上6以下の整数を表し、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。)
適用例1のインクセットによれば、インクの着弾位置ずれを目立ちにくくでき、かつ耐光性に優れた画像を記録することができる。
[適用例2]
適用例1において、
さらに、下記条件1−1、条件2−1及び条件3−1、または、下記条件1−2、条件2−2、及び条件3−2の少なくとも一方を満たす。
条件1−1: 3≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦6
条件1−2: 5≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦7
条件2−1: 3≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦6
条件2−2: 5≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦7
条件3−1: 3≦BLACKhume.−CYANhume.≦6
条件3−2: 5≦BLACKhume.−CYANhume.≦7
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記一般式(y−1)で表される化合物が、下記式(y−11)で表される化合物であることができる。
Figure 0005935342
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記一般式(m−1)で表される化合物が、下記一般式(m−12)で表される化合物であることができる。
Figure 0005935342
(上記式(m−12)中、RM15、RM16、RM17、RM18、RM19、RM110、RM111、RM112、RM113、RM114は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、スルホ基又はその塩を表し、MM1は、水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記一般式(c−1)において、
環AC1乃至DC1における含窒素複素芳香環がそれぞれ独立に、2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環;若しくは、2位及び3位で縮環したピラジン環であり、
C1が、直鎖C2−C4アルキレンであり、
C1が、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基及びアルキルチオ基より成る群から選択される1種類又は2種類の置換基を、0乃至2つ有しても良い、スルホアニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びスルファモイル基よりなる群から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いカルボキシアニリノ基;ホスホノアニリノ基;若しくは、置換基として、スルホ基及びヒドロキシ基から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いスルホナフチルアミノ基;であり、
C1が、水素原子;スルホ基;カルボキシ基;C1−C6アルコキシ基;C1−C6アルキル基;又はハロゲン原子;であり、
基FC1が、フェニル基;又は、RC1が水素原子であるピリジル基;であり、
aが1又は2の整数であることができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
前記水酸基を3つ以上有する有機化合物は、グリセリン、トリメチロールプロパン、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトースおよびソルビトールから選択される少なくとも1種であることができる。
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか1例において、
前記N,N,N−トリアルキルアミノ酸は、グリシンベタイン、γ−ブチロベタイン、ホマリン、トリゴネリン、カルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリンおよびグルタミン酸ベタインから選択される少なくとも1種であることができる。
本発明の一実施形態に係るプリンター1の構成を示す斜視図。 本発明の一実施形態に係るヘッド2のノズル面21を示す概略図。 本発明の一実施形態に係るヘッド2のノズル面121を示す概略図。
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
本発明において、特に断りがない限り、記録媒体上に記録される画像、文字および罫線等を含めて「画像」という。
本発明において、「Cv−Cw」(vおよびwは、それぞれ整数である。)とは、v〜w個の炭素原子を意味する。例えば、C1−C4アルキルは、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基のことをいう。また、「Cv−Cw」は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
1.インクジェット用インクセット
本発明に係るインクジェット用インクセットは、少なくとも着色剤、水及び保湿剤を含有するインクを組み合わせてなるインクジェット用インクセットであって、
前記保湿剤は、水酸基を3つ以上有する有機化合物およびN,N,N−トリアルキルアミノ酸の少なくとも一種であり、
前記インクとして、少なくともイエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクを備え、
前記イエローインクは、着色剤として一般式(y−1)で表される化合物を含有し、前記マゼンタインクは、着色剤として一般式(m−1)で表される化合物を含有し、前記シアンインクは、着色剤として一般式(c−1)で表される化合物を含有し、前記ブラックインクは、着色剤として顔料を含み、
前記イエローインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[YELLOWhume.(質量%)]、前記マゼンタインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[MAGENTAhume.(質量%)]、前記シアンインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[CYANhume.(質量%)]、前記ブラックインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[BLACKhume.(質量%)]とした場合に、下記条件1、条件2および条件3を全て満たす。
条件1: 3≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦7
条件2: 3≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦7
条件3: 3≦BLACKhume.−CYANhume.≦7
本実施形態に係るインクセットは、各インク間の保湿剤量を条件1、条件2および条件3の関係の全て満たすように規定することで、インクの着弾位置ずれを目立ちにくくすることができる。
ここで、インクの着弾位置ずれは、次の理由により生じると考えられる。インクに含まれる水分量が減少すると、インクの増粘やインクジェット記録装置のノズル詰まり等が生じて、インクの吐出不良が生じやすくなる。そうすると、インク滴の吐出時に飛行曲がり等が生じて、インク滴を着弾させるはずの領域に着弾させることができず、インクの着弾位置のずれが生じる。
このような着弾位置ずれの原因となるインク中の水分量の低下は、一定期間インクジェット記録装置を放置した際に、インク中に含まれる水分が大気中に蒸発することで生じるため、保湿剤の水分吸収機能を利用することでインク中の水分量の低下を抑制する。したがって、水分吸収能が同じインクを用いる場合は、インクジェット記録が行われる環境(温度、湿度)を考慮して、インクの水分吸収能を決定すればよいと考えられる。
しかしながら、水分吸収能が異なる複数のインクをインクセットとして用いる場合には、上記環境に加え、各インク間の水分の授受を考慮する必要があると考えられる。なお、「各インク間の水分の授受」とは、本発明を容易に理解できるようにするための表現であり、直接的な授受のみを意味する訳ではない。水分吸収能が高いインクAと、水分吸収能が低いインクBの2種類を用いた場合を例に挙げて説明する。インクBが吸収できる水分量は、インクB単独で用いた場合よりも、インクA及びインクBを併用した場合のほうが少なくなると考えられる(インクAがより多くの大気中の水分を吸収するため)。また、インクBに含まれる水分の蒸発速度は、インクB単独で用いる場合よりも、インクAとインクBを併用した場合のほうが速くなるとも考えられる(インクAが大気中の水分を吸収することで大気の湿度が低下するため)。
各インク間の水分の授受は、特に、キャッピング装置(後述)等でヘッドのノズル面を覆い、ノズル面を密閉状態とした際に生じやすい。
また、各インク間における水分の授受は、インク中に含まれる保湿剤の水分吸収機能に起因して生じることが多い。具体的には、保湿剤の含有量の多いインクは、保湿剤の含有量の少ないインクから水分を奪いやすくなる。
以下、本実施形態の各インク間での保湿剤量の関係を規定した条件1、条件2および条件3について、詳細に説明する。
本実施形態に係るインクセットは、条件1(3≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦7)、条件2(3≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦7)および条件3(3≦BLACKhume.−CYANhume.≦7)を全て満たすものである。条件1〜条件3の関係を満たすことで、ブラックインクとカラーインク(イエローインク、マゼンタインク、シアンインク)との間で水分の授受がほとんど生じない(BLACKhume.−YELLOWhume.=3、BLACKhume.−MAGENTAhume.=3、および、BLACKhume.−CYANhume.=3を全て満たす場合)、あるいは、ブラックインクがカラーインクの水分を奪いやすくなる(3<BLACKhume.−YELLOWhume.≦7、3<BLACKhume.−MAGENTAhume.≦7、および、3<BLACKhume.−CYANhume.≦7)。
ここで、インクセットを構成する各インク(イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク)のうち、カラーインク(イエローインク、マゼンタインク、シアンインク)は、ブラックインクよりも明度(L)が高いため、カラーインク中の水分濃度がある程度低下しても、着弾位置ずれが目立ちにくい。したがって、条件1〜条件3の関係を満たすことで、着弾位置のずれが目立ちにくい、良好な画像が得られる。
これに対して、上記範囲を超えると(7<BLACKhume.−YELLOWhume.、7<BLACKhume.−MAGENTAhume.、および、7<BLACKhume.−CYANhume.の少なくとも一つを満たす)、カラーインクとブラックインクとの粘度差が大きくなることがある。インク間の粘度差が大きくなると、インク滴の最適な吐出量や着弾位置をインク毎に制御する必要が生じる。そのため、各インクに同一波形を与えてインク滴を吐出するピエゾ方式のインクジェット記録装置には、適用しにくくなる場合がある。
また、上記範囲を未満であると(BLACKhume.−YELLOWhume.<3、BLACKhume.−MAGENTAhume.<3、および、BLACKhume.−CYANhume.<3の少なくとも一つを満たす)、カラーインクがブラックインクの水分を奪いやすくなる。特に、ブラックインクは、インクセットを構成する各インクのうち明度(L)が最も低いため、着弾位置ずれが目立ちやすい。そのため、上記範囲未満であると、ブラックインクの着弾位置ずれが生じやすくなり、良好な画像等が得られない場合がある。
(その他の条件)
本実施形態に係るインクセットは、さらに、下記条件1−1、条件2−1及び条件3−1、または、下記条件1−2、条件2−2及び条件3−2の少なくとも一方を満たすことが好ましい。また、より好ましくは、下記条件1−1、条件2−1、条件3−1、条件1−2、条件2−2及び条件3−2の全てを満たすことである。
条件1−1: 3≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦6
条件1−2: 5≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦7
条件2−1: 3≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦6
条件2−2: 5≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦7
条件3−1: 3≦BLACKhume.−CYANhume.≦6
条件3−2: 5≦BLACKhume.−CYANhume.≦7
下記条件1−1、条件2−1及び条件3−1の全てを満たす場合には、カラーインクとブラックインクとの粘度差をより小さくできる。そのため、ピエゾ方式のインクジェット記録装置に用いても、インクの着弾位置のずれが生じにくくなる場合がある。
下記条件1−2、条件2−2及び条件3−2を満たす場合には、ブラックインクがカラーインクの水分を吸収しやすくなるので、ブラックインクの着弾位置ずれの発生を一層抑制できる場合がある。
次に、本実施形態に係るインクセットを構成する各インクに含まれる成分について、詳細に説明する。
1.1.保湿剤
本実施形態に係る各インクは、保湿剤として、水酸基を3つ以上有する有機化合物およびN,N,N−トリアルキルアミノ酸の少なくとも一種を含有する。
水酸基を3つ以上有する有機化合物は、吸湿性に優れた物質である。具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン等の水酸基を3つ以上有するアルコール類、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、ソルビトール等の糖類が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
N,N,N−トリアルキルアミノ酸は、吸湿性に優れた物質である。具体的には、グリシンベタイン、γ−ブチロベタイン、ホマリン、トリゴネリン、カルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリン、グルタミン酸ベタイン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
保湿剤の含有量は、インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。保湿剤の含有量が上記範囲内にあると、インクの着弾位置ずれを低減することが容易になる場合がある。
1.2.水
本実施形態に係る各インクは、水を含有する。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。
1.3.着色剤
次に、各インクに含まれる着色剤について説明する。
1.3.1.イエローインク用の着色剤
本実施形態に係るイエローインクは、着色剤として、下記一般式(y−1)で表される化合物またはその塩(以下、単に「染料(y−1)」ともいう。)を含有する。
染料(y−1)は、遊離酸として表した場合に下記式(y−1)で表される。染料(y−1)は、イエローインク中で電離していてもよく、その場合は、式(y−1)で表される染料の−SOH基の少なくとも1つが電離して−SO となっていてもよく、さらに、この場合の対イオンは特に限定されない。したがって、本実施形態の染料(y−1)は、酸、イオンおよび塩のいずれの形態であってもよいが、遊離酸として表現した場合に、下記式(y−1)の表記で表されるものである。
Figure 0005935342
(式(y−1)中、QY1はハロゲン原子を表し;xは、2〜4の整数を表し;yは、1〜3の整数を表す。)
染料(y−1)は、水溶性のイエロー色素に属する。染料(y−1)は、水を含む溶媒に添加された場合には、5つ存在する−SOH基の少なくとも1つが電離して−SO となって、イオンとして該溶媒中に存在できる。また、染料(y−1)は、水を含む溶媒に添加された場合には、5つ存在する−SOH基の全部が電離して−SO となって該溶媒中に存在していてもよい。
上記式(y−1)において、QY1はハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が挙げられ、これらのうちでもQY1は、FまたはClが好ましく、Clが特に好ましい。また、式(y−1)には、QY1が2つ存在するが、2つのQY1は、それぞれ独立に互いに異なるハロゲン原子であってもよい。
式(y−1)中、xは2〜4の整数を表す。xは、染料(y−1)の水への溶解性等を考慮して、適宜選択されうるが、このような観点から、整数3であることが好ましい。また、式(y−1)には、xが2箇所に現れているが、これらのxは、互いに異なる整数であってもよい。
式(y−1)中、yは1〜3の整数を表す。yは、染料(y−1)の水への溶解性等を考慮して、適宜選択されうるが、このような観点から、整数2であることが好ましい。
上記のQY1、x、およびyは、例えば、水への溶解性の要求に応じて適宜設計されうる。
染料(y−1)の具体例を下記表に示す。なお、下記表中、QY1、xおよびyは、上記式(y−1)について説明したものと同義である。
Figure 0005935342
Figure 0005935342
インクに染料(y−1)を含有させる方法としては、染料(y−1)そのもの(遊離酸の状態)を添加することでイエローインクとしてもよいし、式(y−1)で表される化合物の塩として添加することでイエローインクとしてもよい。このようにすれば、インク中に染料(y−1)を含有させることができる。また、染料(y−1)を塩として添加する場合、染料(y−1)を遊離酸として表した場合に5つ存在する−SOH基は、それぞれ独立に、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびアンモニウム塩のいずれか一種であることができる。
本実施形態の遊離酸として表した場合に式(y−1)で表される化合物やその塩は、以下の方法等により得ることができる。例えば、染料(y−1)の合成反応における、最終工程終了後の反応液に、アセトンやC1−C4アルコールなどの有機溶剤を加えることや、塩化ナトリウムを加えることなどにより析出した固体を濾過分離することにより、染料(y−1)のナトリウム塩等をウェットケーキとして得ることができる。また、得られたナトリウム塩のウェットケーキを水に溶解後、塩酸等の酸を加えてそのpHを適宜調整し、析出した固体を濾過分離することにより、遊離酸の状態の染料(y−1)を、あるいは染料(y−1)の一部がナトリウム塩である化合物を得ることができる。
また、得られたナトリウム塩のウェットケーキ又はその乾燥固体を水に溶解後、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩を添加し、塩酸等の酸を加えてそのpHを、例えば1〜3に調整し、析出した固体を濾過分離することにより、染料(y−1)のアンモニウム塩を得ることができる。
また、反応終了後の反応液に、鉱酸(例えば塩酸、硫酸等)を加えて直接染料(y−1)の固体を得ることもできる。この場合には、染料(y−1)のウェットケーキを水に加えて撹絆し、例えば、水酸化カリウム;水酸化リチウム;アンモニア水;または有機4級アンモニウムの水酸化物;等を添加して造塩することにより、各々添加した化合物に応じたカリウム塩;リチウム塩;アンモニウム塩;または4級アンモニウム塩;等を得ることもできる。
また上記例示した方法では、染料(y−1)のモル数に対して、加える水酸化物等のモル数を制限することにより、例えばリチウム塩とナトリウム塩の混塩等;さらにはリチウム塩、ナトリウム塩、およびアンモニウム塩の混塩等;も調製することが可能である。染料(y−1)の塩は、その塩の種類により溶解性等の物理的な性質、あるいはインクに配合した場合のインクの性能を変化させることができる。染料(y−1)の、水への溶解性の観点からは、染料(y−1)は、塩として添加されることが好ましい。
染料(y−1)の合成において、最終工程終了後の反応液は、インクの製造に直接使用することもできる。しかし合成後に、スプレー乾燥等の方法により反応液等を乾燥して染料(y−1)またはその塩を単離した後、これをインクに添加してもよい。なおこのようにしてインクに配合する場合には、反応液や単離物には、金属の塩化物、例えば塩化ナトリウム;硫酸塩、例えば硫酸ナトリウム;等の無機塩が、より少ない量で含まれることが好ましい。例えば塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムの総含有量は、染料の総質量に対して1質量%以下程度が好ましく、下限値は0質量%、すなわち検出機器の検出限界以下であることが好ましい。無機塩の含有量の少ない反応液や単離物を得る方法としては、例えば公知の逆浸透膜によって塩を分離する方法;アセトンやC1−C4アルコール等の水溶性有機溶剤または含水水溶性有機溶剤によって精製または晶析する方法;が挙げられ、これらのいずれの方法によっても脱塩処理を行うことができる。
イエローインクにおける染料(y−1)の含有量は、染料の種類、溶媒成分の種類等を考慮して、適宜選択されうる。しかし、本実施形態のイエローインクは、イエローインクの総質量中に、染料の5つ存在する−SOH基の少なくとも1つが電離して−SO となったイオンを、質量換算で、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%含有することが好ましい。上記の範囲とすることで、記録媒体上での発色性又は画像濃度に優れるとともに、目詰まりを生じにくくすることができる。
式(y−1)において5つ存在する−SOH基の少なくとも1つが電離して−SO となったイオンは、水に対する溶解性が十分に大きく、これによりイエローインクにおいて染料(y−1)の析出等を生じさせにくい性質を有する。そのため、イエローインクにおける染料(y−1)の機能の一つとしては、ノズルやペン先の目詰まりを低減させることが挙げられる。また、染料(y−1)は、イエローインクが画像等とされて乾燥された際に、酸または塩の状態で画像を構成する塗膜中に存在することになる。すなわちこのような画像には、染料(y−1)またはその塩が含有されることとなる。染料(y−1)またはその塩は、耐光性が良好であるため、イエローインクにおける染料(y−1)の機能の一つとして、イエローインクによって形成された画像の耐光性を高めることを挙げることができる。
イエローインクは、色調などの調整のため、耐光性をはじめとする各特性を大きく損ねない範囲で、上記以外のイエロー系染料を含有してもよい。
1.3.2.マゼンタインク用の着色剤
本実施形態に係るマゼンタインクは、着色剤として、下記一般式(m−1)で表される化合物またはその塩(以下、単に「染料(m−1)」ともいう。)からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。染料(m−1)を用いることにより、耐光性に優れたマゼンタインクが得られる。
Figure 0005935342
式(m−1)中、AM1は、5員複素環基を表す。BM11およびBM12は、各々−CRM11=、−CRM12=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CRM11=または−CRM12=を表す。
前記5員複素環基としては、例えば、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げることができ、各複素環基は更に置換基を有していてもよい。また、複素環のなかでも、ピラゾール環が好ましい。
上記のRM11において、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。上記のRM12において、脂肪族基が好ましく、メチル基、エチル基、分岐していてもよいプロピル基、または分岐していてもよいブチル基がより好ましい。
M13,RM14は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表わす。RM13,RM14は、更に置換基を有していてもよい。
上記のRM13において、芳香族基が好ましく、具体的には、ベンゼン環基またはナフタレン環基が挙げられる。上記のRM14において、複素環基が好ましく、具体的には、ベンゾチアゾール環基が挙げられる。
M1、RM11、RM12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルおよびアリールチオ基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表す。RM13,RM14は、更に置換されていてもよい。また、RM11とRM13、あるいはRM13とRM14が結合して5〜6員環を形成してもよい。
前記式(m−1)で表される化合物の中でも、下記式(m−11)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005935342
式(m−11)において、RM15、RM16、RM17、RM18、RM19は、水素原子、アルキル基、スルホ基又はその塩を表す。式(m−11)において、RM15,RM19は共にアルキル基であるときは、該アルキル基を構成する炭素数の合計が3以上であってそれらに置換基を有していてもよい。XM1は水素原子、脂肪族基、芳香族基、または複素環基を表し、YM1及びZM1は各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。また、RM15〜RM19にスルホ基が含まれる場合には−SOMの形となっている。その場合、Mとしては、アルカリ金属原子が好ましく、より好ましくはLi及びNaの少なくとも1種である。
上記のXM1において、特に芳香族基、脂環式基、複素環基が好ましく、具体例としては、例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環,ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサン環、スルホラン環およびチアン環等が挙げられる。これらの中でも、複素環基がより好ましい。
上記のYM1及びZM1の好ましい具体例は、染料(m−1)におけるRM13及びRM14の好ましい具体例と同様である。
前記式(m−11)で表される化合物の中でも、優れた耐光性と耐オゾン性を有していることから、下記式(m−12)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 0005935342
式(m−12)中、RM15、RM16、RM17、RM18、RM19、RM110、RM111、RM112、RM113、RM114は、水素原子、アルキル基、スルホ基又はその塩を表し、MM1は、水素原子又はアルカリ金属原子を表す。また、RM15およびRM19が共にアルキル基である場合には、そのアルキル基を構成する炭素数の合計が3以上であって、それらはさらに置換基を有してもよく、RM110およびRM114が共にアルキル基である場合には、そのアルキル基を構成する炭素数の合計が3以上であって、それらはさらに置換基を有してもよい。
染料(m−2)の含有量は、マゼンタインクの全重量に対して、0.1〜15質量%であることが好ましく、1質量%〜10.0質量%であることがより好ましい。上記範囲とすることで、画像の発色性が良好となる。
マゼンタインクは、色調などの調整のため、耐光性をはじめとする各特性を大きく損ねない範囲で、上記以外のマゼンタ系染料を含有してもよい。
1.3.3.シアンインク用の着色剤
本実施形態に係るシアンインクは、着色剤として、下記一般式(c−1)で表される化合物またはその塩(以下、単に「染料(c−1)」ともいう。)からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。これにより耐光性に優れたシアンインクが得られる。
染料(c−1)は、下記一般式(c−1)で表されるポルフィラジン系化合物である。すなわち、すなわち、テトラベンゾポルフィラジン(通常、フタロシアニンと呼ばれているもの)の4つのベンゾ(ベンゼン)環0個を超えて3個以下を含窒素複素芳香環に置き換えたものである。
Figure 0005935342
式(c−1)中、
破線で表される環AC1乃至DC1は、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、
C1はC2−C12アルキレンを表し、
C1は、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、モノC6−C10アリールアミノ基、ジC6−C10アリールアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、C1−C6アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基よりなる群から選択される1種類又は2種類以上の置換基を有しても良い、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基であり、
C1は水素原子;スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ基;モノC1−C6アルキルアミノ基;ジC1−C6アルキルアミノ基;モノアリールアミノ基;ジアリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;又はアルキルチオ基;を表し、
基FC1はフェニル基;又は、6員含窒素複素芳香環基;を表し、
aは1以上6以下の整数を表し、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。
式(c−1)中、破線で表される環AC1乃至DC1(環AC1、BC1、CC1及びDC1の4つの環)における含窒素複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環及びピリダジン環等の窒素原子を1又は2個含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではピリジン環又はピラジン環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。含窒素複素芳香環の個数が増えるにしたがって、耐オゾン性は向上するが、ブロンズ性は生じやすくなる傾向にあり、含窒素複素芳香環の個数は耐オゾン性とブロンズ性を考慮しながら適宜調節し、バランスの良い比率を選択すれば良い。含窒素複素芳香環の個数は複素環の種類にもよるので一概には言えないが、通常平均値で、0.00を超えて3.00以下、好ましくは0.20以上2.00以下、より好ましくは0.50以上1.75以下,更に好ましくは0.75以上1.50以下の範囲である。
残りの環AC1乃至DC1はベンゼン環であり、環AC1乃至DC1におけるベンゼン環は、同様に、通常平均値で、1.00以上4.00未満、好ましくは2.00以上3.80以下、より好ましくは2.25以上3.50以下、更に好ましくは2.50以上3.25以下である。なお、本発明のポルフィラジン系化合物は、環AC1乃至DC1の含窒素複素芳香環の個数を平均値で表していることから明らかなように、複数の化合物の混合物である。
また、本明細書においては特に断りの無い限り、該含窒素複素芳香環の個数は、小数点以下3桁目を四捨五入して2桁目までを記載する。但し、例えば含窒素複素芳香環の個数が1.375、ベンゼン環の個数が2.625のとき、両者を四捨五入すると前者が1.38、後者が2.63となり、両者の合計が環AC1乃至DC1の合計の4.00を超えてしまう。
このような場合には、便宜上、含窒素複素芳香環側の小数点以下3桁目は切り捨て、ベンゼン環側のみ四捨五入することにより、前者を1.37、後者を2.63として記載する。また、式(c−1)におけるb及びcについても、後述する通り、原則として小数点以下3桁目を四捨五入して2桁目までを記載するが、同様の場合においては、b側の小数点以下3桁目を切り捨て、c側のみ四捨五入して記載する。
前記式(c−1)中、EC1におけるアルキレンとしては、直鎖、分岐鎖又は環状アルキレンが挙げられ、直鎖又は環状が好ましく、直鎖がより好ましい。炭素数の範囲は通常C2−C12、好ましくはC2−C6、より好ましくはC2−C4、さらに好ましくはC2−C3が挙げられる。好ましい具体例としては、エチレン、プロピレン、又はブチレンであり、さらに好ましくはエチレン又はプロピレンであり、特に好ましくはエチレンである。
前記式(c−1)中、XC1は、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基を表す。これらのアニリノ基及びナフチルアミノ基におけるスルホ、カルボキシ及びホスホノの置換数は、いずれも1つであり、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基,ホスホノアニリノ基、又はスルホナフチルアミノ基が好ましく、スルホアニリノ基が特に好ましい。
C1における前記スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ−基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基は、置換基として、スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ−基;モノC1−C4アルキルアミノ基;ジC1−C4アルキルアミノ基;モノアリールアミノ基;ジアリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;及びC1−C6アルキルチオ基;よりなる群から選択される1種類又は2種類以上の基をさらに有する。ここで挙げた、スルホ基からC1−C6アルキルチオ基までの20基の群を、以下、本明細書においては「20基の置換基の群」と簡略して記載する。前記20基の置換基の群から選択される基のXC1における置換数は、通常0〜4つ、好ましくは0〜3つ、より好ましくは0〜2つ、さらに好ましくは0又は1つである。前記20基の置換基の群から選択される基の置換位置は、特に制限されないが、該アニリノ基及びナフチルアミノ基における炭素原子、すなわち前者であればベンゼン環上、後者であればナフタレン環上に置換するのが好ましい。
C1がスルホアニリノ基のとき、前記20基の置換基の群のうち、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、C1−C6アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基が好ましく、スルホ基が特に好ましい。
C1がカルボキシアニリノ基のとき、前記20基の置換基の群のうち、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びスルファモイル基が好ましい。
C1がホスホノアニリノ基のとき、前記20基の置換基の群から選択される基は、有しないものが好ましい。
C1がスルホナフチルアミノ−基のとき、前記20基の置換基の群のうち、スルホ基、及びヒドロキシ基が好ましい。
Xがカルボキシナフチルアミノ−基、又はホスホノナフチルアミノ−基のとき、前記20基の置換基の群から選択される基は、有しないものが好ましい。
前記式(c−1)におけるXC1の具体例としては、2−スルホアニリノ、3−スルホアニリノ、4−スルホアニリノ、2,4−ジスルホアニリノ、2,5−ジスルホアニリノ、3,6−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、5,7−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、6,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノが好ましく、4−スルホアニリノ、2,5−ジスルホアニリノ、又は3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノがより好ましく、2,5−ジスルホアニリノがさらに好ましい。
前記式(c−1)中、RC1は、水素原子、スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ基;モノC1−C6アルキルアミノ基;ジC1−C6アルキルアミノ基;モノC6−C10アリールアミノ基;ジC6−C10アリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;又は、アルキルチオ基;を表す。
前記式(c−1)中、基FC1は、フェニル基;又は、6員含窒素複素芳香環基;を表す。6員含窒素複素芳香環基としては、窒素原子を1つ含む含窒素複素芳香環基が挙げられる。具体例としては、ピリジルが挙げられる。
該6員含窒素複素芳香環における、「a」でその数を表されるアルキレンとの結合位置は特に制限されないが、窒素原子に隣接する炭素原子で結合するのが好ましい。すなわち、基Fがピリジルのとき、窒素原子の置換位置を1位として、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルが挙げられ、窒素原子に隣接する炭素原子で結合するもの、すなわち2−ピリジルが好ましい。
前記式(c−1)中、基FC1がフェニル基のとき、前記Rのうち、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルキル基、ハロゲン原子が好ましく、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、メトキシ基、メチル基、フッ素原子、塩素原子がより好ましく、水素原子、スルホ基、カルボキシ基がさらに好ましい。
前記式(c−1)中、基FC1が6員含窒素複素芳香環基のとき、前記RC1のうち、水素原子、又はハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。
前記式(c−1)中、基FC1におけるRC1の置換位置は特に制限されない。基FC1がフェニル基のとき、「(CH)a」との結合位置を1位として、RC1の置換位置は2位、3位、又は4位が挙げられ、4位が好ましい。
また、基FC1が6員含窒素複素芳香環基、好ましくはピリジルのとき、「(CH)a」及びRの結合位置は、ピリジン環の窒素原子を1位として、前者が2位、後者が3位、4位、5位、又は6位の組み合わせが挙げられ、前者が2位、後者が4位の組み合わせが好ましい。
前記式(c−1)中、aは、「(CH)」の繰返し数、すなわちアルキレンの長さを表し、通常1−6の整数、好ましくは1−4、より好ましくは1−3、さらに好ましくは1−2、特に好ましくは1の整数である。
前記式(c−1)におけるb、c及び、b及びcの和は、いずれも平均値である。bは0.00以上3.90未満であり、cは0.10以上4.00未満であり、b及びcの和は平均値で1.00以上4.00未満である。このとき、環AC1乃至DC1における含窒素複素芳香環は、平均値で0.00を超えて3.00以下、同様にベンゼン環は1.00以上4.00未満である。
好ましくは環AC1乃至DC1における含窒素複素芳香環が0.20以上2.00以下、ベンゼン環が2.00以上3.80以下のとき、bが0.00以上3.40以下であり、cが0.40以上2.00以下、b及びcの和は、2.00以上3.80以下である。
より好ましくは、環AC1乃至DC1における含窒素複素芳香環が0.50以上1.75以下、ベンゼン環が2.25以上3.50以下のとき、bが0.35以上3.05以下であり、cが0.45以上1.90以下、b及びcの和は、2.25以上3.50以下である。
更に好ましくは、環AC1乃至DC1における含窒素複素芳香環が0.75以上1.50以下、ベンゼン環が2.50以上3.25以下のとき、bが0.70以上2.75以下であり、cが0.50以上1.80以下、b及びcの和は、2.50以上3.25以下であるcbが大きくなるにつれて、耐オゾン性は向上する傾向にあるが、ブロンズが生じやすくなる傾向にあり、耐オゾン性とブロンズ性を考慮しながら、b、cの数を適宜調節し、バランスの良い比率を選択すれば良い。
なお、b及びcでそれぞれの置換数を表される非置換スルファモイル基及び置換スルファモイル基はいずれも、環AC1乃至DC1がベンゼン環である場合に、該ベンゼン環上に置換する基であり、環AC1乃至DC1が6員環の含窒素複素芳香環である場合には置換しない。
なお、本明細書においては、b、c及び、b及びcの和は、いずれも小数点以下3桁日を四捨五入して、2桁目までを記載する。
上記環AC1乃至DC1、EC1、XC1、RC1、基FC1、a、b及びcにおいて、好ましいもの同士を組合せたポルフィラジン系化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組合せたポルフィラジン系化合物はさらに好ましい。さらに好ましいもの同士、好ましいものとより好ましいものの組合せ等についても同様である。
前記式(c−1)で表される本発明のポルフィラジン系化合物は、分子内に有するスルホ、カルボキシ及びホスホノ等を利用して塩を形成することも可能である。塩を形成するとき、そのカウンターカチオンは、無機金属、アンモニア(NH)又は有機塩基の各カチオンと塩を形成するのが好ましい。
無機金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
有機塩基としては、特に有機アミンが挙げられ、例えばメチルアミン、エチルアミン等のC1−C3アルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノノールアミン等のモノ−、ジ−又はトリ−C1−C4アルカノールアミン類が挙げられる。
上記のもののカウンターカチオンを利用した塩のうち、好ましいものとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ−、ジ−又はトリ−C1−C4アルカノールアミンとの塩、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明のポルフィラジン系化合物の塩は、その塩の種類により溶解性等の物理的な性質、あるいはインクとして用いた場合のインクの性能、特に堅牢性に関する性能等が変化する場合もある。このため目的とするインクの性能等に応じて、塩の種類を選択することも好ましく行われる。
前記式(c−1)で表されるポルフィラジン系化合物又はその塩として、特に好ましい化合物は、下記(イ)〜(ヘ)の組み合わせを有する化合物である。
(イ)環AC1乃至DC1における含窒素複素芳香環としては、それぞれ独立に、2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環;若しくは、2位及び3位で縮環したピラジン環が好ましい。
(ロ)EC1としては、直鎖C2−C4アルキレンが好ましい。
(ハ)XC1としては、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基及びアルキルチオ基より成る群から選択される1種類又は2種類の置換基を、0乃至2つ有しても良い、スルホアニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びスルファモイル基よりなる群から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いカルボキシアニリノ基;ホスホノアニリノ基;若しくは、置換基として、スルホ基及びヒドロキシ基から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いスルホナフチルアミノ基;が好ましい。
(ニ)RC1としては、水素原子;スルホ基;カルボキシ基;C1−C6アルコキシ基;C1−C6アルキル基;又はハロゲン原子;がこのましい。
(ホ)基FC1としては、フェニル基;又は、RC1が水素原子であるピリジル基が好ましい。
(ヘ)aとしては、1又は2が好ましい。
前記式(c−1)における、環AC1乃至DC1、EC1、XC1、RC1、及び基FC1の具体例、a、b及びcの数を下記表に示す。下記の例は、染料(c−1)を具体的に説明するために代表例を示すものであり、本発明は下記の例に限定されるものではない。また、環AC1乃至DC1の含窒素複素芳香環がピリジン環のとき、後記するように窒素原子の位置異性体等が存在し、ポルフィラジン系化合物合成の際には異性体の混合物として得られる。これら異性体は単難が困難であり、また分析による異性体の特定も困難である。このため通常混合物のまま使用する。染料(c−1)は、このような混合物をも含むものである。本明細書においては、これらの異性体等を区別することなく、構造式で表示する場合は、便宜的に代表的な一つの構造式を記載する。なお、表中のb及びcの数については、煩雑さを避けるため、小数点以下2桁目を四捨五入して1桁日までを記載した。なお、表中、「2,3−ピリド」は2位及び3位でポルフィラジン環に縮環したピリジン環を、「ベンゾ」はポルフィラジン環に縮環したベンゼン環を、「2−ピリジル」は、ピリジン環の窒素原子を1位として、「(CH)a」との結合位置が2位であることを、それぞれ意味する。また、RC1における「4−クロロ」等については、基Fがフェニル基のときは「(CH)a」との結合位置を1位とした場合;基FC1がピリジルのときはピリジン環の窒素原子を1位とした場合;におけるRC1の置換位置をそれぞれ表す。
Figure 0005935342
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染料(c−1)は、通常、他の色素を配合することなく用いることができるが、場合により、本発明の効果を阻害しない範囲で公知のシアン系色素と配合して使用してもよい。
公知のシアン系色素と配合して使用する場合、配合する色素としてはC.I.ナンバーが付与されているトリフェニルメタン系色素やフタロシアニン系色素などを用いることができるが、フタロシアニン系色素が好ましい。
1.3.4.ブラックインク用の着色剤
ブラックインクは、着色剤として顔料を含有する。顔料としては、公知の顔料を用いることができるが、自己分散型の顔料であることが好ましい。自己分散型の顔料とは、分散剤なしに水性媒体中に分散することが可能な顔料である。ここで、「分散剤なしに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水基により、水性媒体中に安定に存在している状態をいう。自己分散型の顔料を用いると、顔料を分散させるための分散剤の使用量を低減できるので、分散剤に起因するインクの発泡を低減でき、吐出安定性の良好なインクが調製しやすい。
自己分散型の顔料は、その顔料表面に親水基を有することができる。顔料表面の親水基は、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、および−NR(式中のMは、水素原子、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、または有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一以上の親水基であることが好ましい。
自己分散型の顔料は、例えば、物理的処理または化学的処理を施すことで、前記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させることにより製造される。前記物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また前記化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
顔料は、次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、オゾンによる酸化処理、または過硫酸および/または過硫酸塩による酸化処理により表面処理されたものであることが、高発色という点で好ましい。
ブラックインクに用いられる顔料は、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの好ましい具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B(以上三菱化学(株)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、Printex 30、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上エボニックデグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(キャボット社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いても良い。
また、顔料として市販品を利用することも可能であり、例えば、マイクロジェットCW1(オリヱント化学工業株式会社製)、CAB−O−JET250C、CAB−O−JET260M、CAB−O−JET300(以上キャボット社製)等が挙げられる。
顔料の含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
また、顔料は、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点から、その平均粒径が50〜250nmの範囲であることが好ましい。
1.4.その他の成分
(樹脂)
本実施形態に係る各インクは、樹脂を含有してもよい。樹脂は、インクの乾燥に伴い、樹脂粒子同士及び樹脂粒子と着色成分とが互いに融着して着色剤を記録媒体に固着させるため、記録物の画像部分の定着性を向上させる作用を持つ。したがって、本実施形態に係る各インクにおいて、着色剤として顔料を含むインクに樹脂が含まれることが好ましい。
これらの樹脂としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂からなる群より選択される1種または2種以上であることが好ましい。これらの樹脂はホモポリマーとして使用されても良く、またコポリマーして使用されても良い。
本発明においては樹脂として単粒子構造のものを利用することができる。一方、本発明においてはコア部とそれを囲むシェル部とからなるコア・シェル構造を有する樹脂を利用することも可能である。本発明において「コア・シェル構造」とは、「組成の異なる2種以上のポリマーが粒子中に相分離して存在する形態」を意味する。従って、シェル部がコア部を完全に被覆している形態のみならず、コア部の一部を被覆しているものであっても良い。また、シェル部ポリマーの一部がコア粒子内にドメインなどを形成しているものであっても良い。さらに、コア部とシェル部の中間にさらにもう一層以上、組成の異なる層を含む3層以上の多層構造を持つものであっても良い。
本発明において用いられる樹脂は、公知の乳化重合によって得ることができる。すなわち、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルモノマー)を重合触媒および乳化剤を存在させた水中において乳化重合することによって得ることができる。
不飽和ビニル単量体としては、一般的に乳化重合で使用されるアクリル酸エステル単量体類、メタクリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類等が挙げられる。
さらに、具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;および酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン化単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、クロロプレン等のジエン類;ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニル単量体類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミドおよびN,N’−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、および2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体類が挙げられる。
また、乳化重合の際に使用される重合開始剤、乳化剤、分子量調整剤は常法に準じて使用することができる。
インクの長期保存安定性、吐出安定性の観点から、本発明に好ましい樹脂の粒径は5〜400nmの範囲であり、より好ましくは50〜200nmの範囲である。
また、これら樹脂の添加量は定着性等を考慮して適宜決定してよいが、各インク組成物中に固形分で2重量%以上を含むことが好ましい。
本実施形態に係る各インクには、溶媒中に樹脂が分散したエマルジョン状態となったものを添加してもよい。
(界面活性剤)
本実施形態に係る各インクは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
これらの中でも、ノニオン系界面活性剤は、インクの記録媒体に対する浸透性および定着性を向上できるとともに、インクジェット記録方法によって記録媒体上に付着させたインクの液滴の形状を真円に近いものとすることができるので、好ましく用いることができる。
また、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力および界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールおよび2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
(浸透促進剤)
本実施形態に係る各インクは、浸透促進剤を含有することができる。浸透促進剤は、記録媒体に対するインクの濡れ性をさらに向上させて均一に塗らす作用を備える。これにより、形成された画像等のインクの濃淡ムラや滲みをさらに低減させることができ、画像等の発色濃度を一層向上させることができる。浸透促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
浸透促進剤としては、例えば、グリコールエーテル類が挙げられる。グリコールエーテル類は、浸透促進剤としての効果に特に優れる。グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る各インクに含まれる成分との相溶性に優れている点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましく用いることができる。
(その他の有機化合物)
本実施形態に係る各インクは、その他の有機化合物を含有することができる。その他の有機化合物としては、例えば、アルカンジオール類、グリコール類、ピロリドン誘導体、尿素類等が挙げられる。その他の有機化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
アルカンジオール類は、記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、記録媒体上に優れた画像を形成することができる。アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
グリコール類は、インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
ピロリドン誘導体は、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
尿素類は、インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。尿素類としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等が挙げられる。
(pH調整剤)
本実施形態に係る各インクは、pH調整剤を含有することができる。pH調整剤は、インクのpH値の調整を容易にすることができる。pH調製剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
pH調整剤としては、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、2−ナフトエ酸等)等が挙げられる。
(その他の成分)
本実施形態に係る各インクは、さらに、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。本実施形態に係るインク各は、これらの化合物を含有していると、その特性がさらに向上する場合がある。
1.5.各インクの物性
本実施形態に係るインクセットをインクジェット記録装置に用いる場合において、各インクの20℃における粘度は、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。インクは、20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズルから適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。インクの粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定できる。
本実施形態に係る各インクの20℃におけるpHは、7以上10以下であることが好ましい。
2.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記インクセットを構成する各インクの液滴を吐出する工程を有する。本実施形態に係るインクジェット記録方法は、従来公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。
(1)装置構成
本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例としては、図1に示すようなインクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)が挙げられる。
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。図1に示すように、プリンター1は、ヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、ヘッド2の下方に配設され記録媒体6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録媒体6の媒体幅方向(主走査方向S)に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録媒体6を媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、ヘッド2を覆って保湿するキャップ部材9と、を有するものである。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御部CONTを有している。
図2は、本実施形態に係るヘッド2のノズル面21を示す概略図である。図2に示すように、ヘッド2は、ノズル面21を備える。インクの吐出面でもあるノズル面21には、複数のノズル列22が配列されている。複数のノズル列22は、ノズル列毎に、インクを吐出するためのノズル孔23を複数有する。
複数のノズル列22は、ノズル列毎に、異なる組成のインクを吐出可能になっている。図2の例では、ノズル列がインクの色毎に4列(ノズル列22A〜22D)設けられており、各ノズル列が主走査方向に沿って配列されている。
各ノズル列の配列順序は特に限定されるものではないが、図2のように、ブラックインクを吐出可能なノズル列と、イエローインクを吐出可能なノズル列とを隣接させると、ブラックインクがイエローインクの水分を奪いやすくなるので、インクの着弾位置ずれを一層目立ちにくくできる場合がある。
また、ノズル列は、図3に示すような配列であってもよい。図3は、本実施形態に係るヘッド2のノズル面121を示す概略図である。ノズル面121には、複数のノズル列122が配列されている。図3の例では、複数のノズル列122は、ブラックインクを吐出するためのノズル列122Aと、カラーインクを吐出するためのノズル列122Bと、からなる。なお、ノズル列は2列以上設けられていてもよい。
ノズル列122Bは、互いに異なる色相のカラーインクを吐出するために、ノズル孔123の配列された方向(以下、「B方向」ともいう。)に沿って、所定数のノズル孔123を含む複数の群に分割して用いられる。なお、B方向は、ノズル面121における主走査方向と直交する方向ともいえる。
図3の例では、ノズル列122Bは、6個のノズル孔123を一つの群として分割されており、第1群122a、第2群122bおよび第3群122cからなる。なお、1つの群を構成するノズル孔123の数は、特に限定されるものではない。また、群を構成するノズル孔123の数は、群毎に同一であっても、異なっていてもよい。
図3に示すように、ブラックインクを吐出可能なノズル列を、複数のカラーインクと隣接させると、ブラックインクが複数のカラーインクから水分を奪いやすくなるため、インクの着弾位置ずれの一層少ない画像を記録できる場合がある。
(2)インクジェット記録方法
インクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法は、例えば、次の様に行うことができる。具体的には、インクを液滴として記録媒体上に吐出して、インクの液滴を記録媒体に付着させることにより画像を形成することができる。インクジェット吐出方法としては、従来公知の方式はいずれも使用でき、特に圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するヘッドを用いた記録方法)においては優れた画像記録を行うことが可能である。
記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、紙、厚紙、繊維製品、皮革、シートまたはフィルム、プラスチック、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、上記のインクセットを用いるので、着弾位置ずれの目立ちにくい、良好な画像の記録された記録媒体(記録物)を得ることができる。
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
3.1.染料インク
3.1.1.染料
(1)染料(y−11)
染料(y−11)は、常法により合成が可能であり、本実施形態では以下のようにして合成した。なお、染料(y−11)は、上記の染料(y−1)の一例である。
まず、5−アミノ−2−クロロベンゼンスルホン酸20.8部を水酸化ナトリウムでpH6に調整しながら水200部に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を0〜10℃で、5%塩酸20部中に30分間かけて滴下した後、10℃以下で1時間攪拌してジアゾ化反応を行い、ジアゾ反応液を調製した。
一方、2−(スルホプロポキシ)−5−クロロアニリン26.6部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水130部に溶解し、10.4部の重亜硫酸ナトリウムおよび8.6部の35%ホルマリンを用いて、常法によりメチル−ω−スルホン酸誘導体とした。得られたメチル−ω−スルホン酸誘導体を、先に調製したジアゾ反応液中に加え、0〜15℃、pH2〜4で24時間攪拌した。反応液を水酸化ナトリウムでpH11とした後、同pHを維持しながら80〜95℃で5時間攪拌し、さらに100部の塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出固体を濾過分離することにより下記式(y−1−1)で表されるアゾ化合物100部をウェットケーキとして得た。
Figure 0005935342
250部の氷水中にライオン社製、商品名:レオコール(登録商標)TD90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく攪拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し0〜5℃で30分間攪拌し、懸濁液を得た。続いて上記式(y−1−1)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に前記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後pH6〜8、25〜45℃で6時間撹絆した。得られた液に、タウリン37.5部を加え、pH7〜9、75〜90℃で4時間攪拌した。得られた反応液を20〜25℃まで冷却後、この反応液にアセトン800部を加え、20〜25℃で1時間攪拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ50.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(y−11)で表される化合物のナトリウム塩(λmax:408nm)13.5部を得た。このように得られた式(y−11)で表される染料を、染料(y−11)と称する。
Figure 0005935342
(2) 染料(m−13)の合成
染料(m−13)は、常法により合成した。なお、染料(m−13)は、上記の染料(m−1)の一例である。
Figure 0005935342
(3) 染料(c−11)の合成
染料(c−11)は、常法により合成が可能であり、本実施形態では以下の工程1〜4にしたがって合成した。なお、染料(c−11)は、上記の染料(c−1)の一例である。
以下のようにして合成した染料(c−11)は、全て染料(c−1)で述べた通り異性体等を含む混合物である。また、特に断りの無い限り、染料(c−11)における非置換及び置換スルファモイル基の置換位置は、いずれもポルフィラジン環のα位及びβ位に置換したものの混合物である。
(工程1)
下記式(c−1−1)における環AC1乃至DC1のうち1.20が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.80がベンゼン環で表される化合物の合成。
Figure 0005935342
スルホラン375部に、無水フタル酸31.11部、キノリン酸15.04部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、及びモリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃まで昇温し、同温度で5時間反応させた。反応終了後65℃まで冷却し、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)50部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ75.1部を得た。得られたウェットケーキをDMF450部に加え、110℃に昇湿し、同温度で一時間反応させた。析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄しウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間撹拌した。析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄しウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを5%アンモニア水450部中に加え、60℃で1時間撹拌し、析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄し、ウェットケーキ78.6部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的化合物24.9部を青色固体として得た。
(工程2)
下記式(c−1−2)における環AC1乃至DC1のうち1.20が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.80がベンゼン環であり、nが2.80である化合物の合成。
Figure 0005935342
室温下、クロロスルホン酸46.2部中に、60℃を超えないように(工程1)で得た式(c−1−1)の化合物5.8部を徐々に加えた後、140℃で4時間反応させた。得られた反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間で滴下し、70℃でさらに3時間反応させた。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注ぎ、析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄することにより、目的化合物のウェットケーキ38.2部を得た。
(工程3)
下記式(c−1−3)で表される有機アミンの合成。
Figure 0005935342
氷水100部中に塩化シアヌル18.4部、商品名 レオコールTD−90(0.05部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に2,5−ジスルホアニリン(純度88.4%の市販品を使用)31.7部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.0〜3.0としながら0〜10℃で2時間、25〜30℃で1時間反応を行った。次に反応液にベンジルアミン10.9部加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0〜8.0としながら25〜30℃で1時間、30〜40度で1時間反応を行い、2次縮合物を含む反応液を得た。
氷120部にエチレンジアミン60.1部を加えた水溶液に上記のようにして得た2次縮合物を含む反応液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に氷150部、濃塩酸200部を加え、pH1.0に調整した。このとき液量は700部であった。この反応液に塩化ナトリウム140部を加え、一晩攪拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ70.0部を得た。得られたウェットケーキを水280部に加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は360部であった。この溶液を濃塩酸でpHl.0に調整し、塩化ナトリウム70部を加え、1晩撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ60.3部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部、水45部の混合溶媒中に加え、50℃で1時間撹拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ50.3部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(c−1−3)で表される有機アミン15.3部の白色粉末を得た。
(工程4)
下記式(c−11)で表される化合物[下記式(c−11)における環AC1乃至DC1のうち1.20が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.80がベンゼン環である染料(染料(c−11)]の合成。
Figure 0005935342
氷水200部中に(工程2)で得たウェットケーキ38.2部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、(工程3)で得た式(c−1−3)の有機アミン3.7部を28%アンモニア水1.5部及び水40部の混合液に溶解した溶液をこの懸濁液に加え、28%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応させた。同pHを保持したまま、20℃まで昇温し、同温度でさらに一晩反応させた。
この時の液量は300部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム60部を加え30分撹拝した後、濃塩酸にてpH5.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ24.2部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶硬でpH9.0に調整することにより溶液とした。このときの液量は250部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム50部を加え30分攪拌した後、濃塩酸にてpH4.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ22.3部を得た。得られたウェットケーキにイソプロピルアルコール160部及び水40部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ14.4部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、上記式(c−11)で表される本発明のポルフィラジン系化合物(染料(c−11))の遊離酸10.8部を青色粉末として得た。
(4)染料(y−2)
染料(y−2)は、下記式(y−2)で表されるイエロー系染料である。
Figure 0005935342
(5)染料(y−3)
染料(y−3)は、下記式(y−3)で表されるイエロー系染料である。
Figure 0005935342
(6)染料(m−2)
染料(m−2)は、下記式(m−2)で表されるマゼンタ系染料である。
Figure 0005935342
(7)染料(c−2)
染料(c−2)は、下記式(c−2)で表されるシアン系染料である。
Figure 0005935342
3.1.2.染料インクの調製
表7に示す配合量で、各成分を混合攪拌し、孔径1.0μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過を行って、イエローインク(Y−1、Y−2、Y−10)、マゼンタインク(M−1、M−2、M−3、M−10)、シアンインク(C−1、C−2、C−3、C−10)を得た。なお、表7に記載されている単位は、質量%である。また、表7中、商品名で記載した成分は、次の通りである。
・オルフィン PD002W(商品名、日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
Figure 0005935342
3.2.顔料インク(ブラックインク)
表8に示す配合量で、各成分を混合攪拌し、孔径1.0μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過を行って、ブラックインク(Bk−1〜Bk−11)を得た。なお、表8に記載されている単位は、質量%である。表8中、顔料1、顔料2、および商品名で記載した成分のうち表7で挙げていない成分は、次の通りである。
・顔料1(商品名「マイクロジェットCW1」、オリエント化学工業株式会社製、自己分散型のブラック顔料、平均粒子径110nm)
・顔料2(商品名「CAB−O−JET300」、キャボット社製、自己分散型のブラック顔料、平均粒子径130nm)
・オルフィン E1010(商品名、日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
・サーフィノール 104(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
なお、ブラックインク(顔料インク)に含まれる樹脂エマルジョンは、次のようにして製造したものを用いた。攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20g、スチレン365g、ブチルアクリレート545g、及びメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後3時間の熟成を行った。得られた樹脂エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整した。得られた水性エマルジョンにおける樹脂粒子のガラス転移温度は−6℃であった。
Figure 0005935342
3.3.評価試験
評価試験にあたって、上記の各インクを組み合わせて、実施例および比較例に係るインクセットとした。実施例および比較例に係るインクセットにおける各インクの組み合わせを、表9〜表13に示す。
Figure 0005935342
Figure 0005935342
Figure 0005935342
Figure 0005935342
3.3.1.連続印刷試験
得られた各インクセットをインクジェットプリンターPX−B300(商品名、セイコーエプソン株式会社製)に搭載して、常温(20℃)にて、全てのインクのベタ画像および罫線の含まれるパターンを、記録媒体(商品名「P紙」、富士ゼロックス株式会社製、A4サイズ)に対して50枚連続で印刷した。
そして、50枚目に印刷されたパターンについて、以下の基準にしたがって評価した。
A: 目視で各インク(カラー及びブラック)の着弾位置ズレが全く確認できない
B: 目視で各インク(カラー及びブラック)の着弾位置ズレがほとんど確認できない
C: 目視で各インク(カラー及びブラック)の着弾位置ズレがはっきりと確認できる
3.3.2.間欠印字試験
(1)ブラックインクのみを用いた間欠印刷試験
得られた各インクセットをインクジェットプリンターPX−B300(商品名、セイコーエプソン株式会社製)に搭載して、常温(20℃)にて7日間放置した後、インクセットにおけるブラックインクのみを吐出させて、ベタ画像および罫線の含まれるパターンを、記録媒体(商品名「P紙」、富士ゼロックス株式会社製、A4サイズ)に印刷した。
そして、印刷されたパターンについて、以下の基準にしたがって評価した。
A: 目視でブラックインクの着弾位置ずれが全く確認できない
B: 目視でブラックインクの着弾位置ずれがほとんど確認できない
C: 目視でブラックインクの着弾位置ずれがはっきりと確認でき、罫線のずれがみられる
D: 目視でブラックインクの着弾位置ずれがはっきりと確認でき、罫線のずれが著しく、不連続になる
(2)カラーインクを用いた間欠印字試験
カラーインク(イエローインク、シアンインクおよびマゼンタインク)を吐出させた以外は、上記「3.3.2.(1)ブラックインクのみを用いた間欠印刷試験」と同様にして、ベタ画像および罫線の含まれるパターンを、記録媒体(商品名「P紙」、富士ゼロックス株式会社製、A4サイズ)に印刷した。
そして、印刷されたパターンについて、以下の基準にしたがって評価した。
A: 目視で各カラーインクの着弾位置ずれが全く確認できない
B: 目視で各カラーインクの着弾位置ずれがほとんど確認できない
C: 目視で各カラーインクの着弾位置ずれがはっきりと確認できる
3.3.3.耐光性試験
得られた各インクセットをインクジェットプリンターPX−B300(商品名、セイコーエプソン株式会社製)に搭載した。そして、常温(20℃)下、記録媒体(商品名「P紙」、富士ゼロックス株式会社製、A4サイズ)に対して色毎にベタ画像を印刷した。
得られた評価サンプルを室温下で暗所に1日静置した。その後、評価サンプルをXenon耐光性試験機XL−75s(商品名:(株)スガ試験機製)に設置して、23℃、50%RH、照度70000luxの条件で、7日間の曝露試験を行った。
そして、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を使用して、サンプルに記録された画像の光照射前後のOD値を測定した。OD値の測定は、光源がD50、光源フィルタなし、絶対白を白色標準として、視野角2°で行った。
なお、耐光性の評価は、得られた測定値(OD値)から、光照射後の各記録物の画像の光学濃度残存率(Relict Optical Density:ROD)求めることにより行った。RODの算出方法は、「ROD(%)=(Dn/Do)×100(式中、Dnは光照射試験終了後の画像のOD値、Doは光照射試験開始前の画像のOD値)」である。RODの値が高いほど、光照射による画像の劣化が少ないことを示す。
耐光性の評価基準は、以下の通りである。
A:RODが80%以上
B:RODが70%以上80%未満
C:RODが70%未満
3.4.評価結果
以上の評価試験の結果を上記の表9〜12に示す。
実施例に係るインクセットを用いると、いずれも、各インクの耐光性に優れ、かつ、各インクの着弾位置ずれが目立ちにくく、良好な画像が得られた。
一方、比較例1〜8、比較例10に係るインクセットおいて、インクセットを構成する各インク間の保湿剤量の関係が、条件1〜条件3のうち少なくとも1つの条件を満たしていない。そのため、表11および表12の評価試験に示すように、比較例に係るインクセットを用いると、着弾位置ずれ目立ちやすくなり、良好な画像が得られなかった。
また、比較例9に係るインクセットにおいて、イエローインクには、染料(y−1)の構造を備えたものを使用していない。そのため、記録される画像の耐光性が不十分であった。
比較例10に係るインクセットにおいて、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクには、それぞれ、染料(y−1)、染料(m−1)、染料(c−1)の構造を備えたものを使用していない。そのため、記録される画像の耐光性が不十分であった。また、比較例10に係るインクセットは、比較例2で用いた各色の染料(y−11、m−13及びc−11)よりも、分子量の低い染料(y−2、y−3、m−2及びc−2)を使用した為、比較例2の連続印字結果よりも優れた結果を示した。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…プリンター、2…ヘッド、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…記録媒体、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、9…キャップ部材、21,121…ノズル面、22,122…複数のノズル列、22A,22B,22C,22D,122A,122B…ノズル列、23,123…ノズル孔、CONT…制御装置

Claims (8)

  1. 少なくとも着色剤、水及び保湿剤を含有するインクを組み合わせてなるインクジェット用インクセットであって、
    前記保湿剤として、水酸基を3つ以上有する有機化合物を含み
    前記インクとして、少なくともイエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクを備え、
    前記イエローインクは、着色剤として一般式(y−1)で表される化合物を含有し、
    前記マゼンタインクは、着色剤として一般式(m−1)で表される化合物を含有し、
    前記シアンインクは、着色剤として一般式(c−1)で表される化合物を含有し、
    前記ブラックインクは、着色剤として顔料を含み、
    前記イエローインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[YELLOWhume.(質量%)]、前記マゼンタインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[MAGENTAhume.(質量%)]、前記シアンインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[CYANhume.(質量%)]、前記ブラックインクに含まれる前記保湿剤の含有量を[BLACKhume.(質量%)]とした場合に、下記条件1、条件2および条件3を全て満たす、インクジェット用インクセット。
    条件1: 3≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦7
    条件2: 3≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦7
    条件3: 3≦BLACKhume.−CYANhume.≦7
    Figure 0005935342
    (式(y−1)中、QY1はハロゲン原子を表し;xは、2〜4の整数を表し;yは、1〜3の整数を表す。)
    Figure 0005935342
    (上記式(m−1)中、AM1は、5員複素環基を表し、
    M11およびBM12は、各々−CRM11=、−CRM12=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CRM11=または−CRM12=を表し、
    M13,RM14は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表わし、RM13,RM14は、更に置換基を有していてもよく、
    M1、RM11、RM12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルおよびアリールチオ基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表し、GM1、RM11、RM12は、更に置換されていてもよく、
    M11とRM13、あるいはRM13とRM14が結合して5〜6員環を形成してもよい。)
    Figure 0005935342
    (式(c−1)中、
    破線で表される環AC1乃至DC1は、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、
    C1はC2−C12アルキレンを表し、
    C1は、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、モノC6−C10アリールアミノ基、ジC6−C10アリールアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、C1−C6アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基よりなる群から選択される1種類又は2種類以上の置換基を有しても良い、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基であり、
    C1は水素原子;スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ基;モノC1−C6アルキルアミノ基;ジC1−C6アルキルアミノ基;モノアリールアミノ基;ジアリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;又はアルキルチオ基;を表し、
    基FC1はフェニル基;又は、6員含窒素複素芳香環基;を表し、
    aは1以上6以下の整数を表し、
    bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
    cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
    且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。)
  2. 請求項1において、
    前記保湿剤として、水酸基を3つ以上有する前記有機化合物及びN,N,N−トリアルキルアミノ酸を含む、インクジェット用インクセット。
  3. 請求項1または請求項2において、
    さらに、下記条件1−1、条件2−1及び条件3−1、または、下記条件2−2、条件1−2及び条件3−2の少なくとも一方を満たす、インクジェット用インクセット。
    条件1−1: 3≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦6
    条件1−2: 5≦BLACKhume.−YELLOWhume.≦7
    条件2−1: 3≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦6
    条件2−2: 5≦BLACKhume.−MAGENTAhume.≦7
    条件3−1: 3≦BLACKhume.−CYANhume.≦6
    条件3−2: 5≦BLACKhume.−CYANhume.≦7
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
    前記一般式(y−1)で表される化合物が、下記式(y−11)で表される化合物である、インクジェット用インクセット。
    Figure 0005935342
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
    前記一般式(m−1)で表される化合物が、下記一般式(m−12)で表される化合物である、インクジェット用インクセット。
    Figure 0005935342
    (上記式(m−12)中、RM15、RM16、RM17、RM18、RM19、RM110、RM111、RM112、RM113、RM114は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、スルホ基又はその塩を表し、MM1は、水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
    前記一般式(c−1)において、
    環AC1乃至DC1における含窒素複素芳香環がそれぞれ独立に、2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環;若しくは、2位及び3位で縮環したピラジン環であり、
    C1が、直鎖C2−C4アルキレンであり、
    C1が、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基及びC1−C6アルキルチオ基より成る群から選択される1種類又は2種類の置換基を、0乃至2つ有しても良い、スルホアニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びスルファモイル基よりなる群から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いカルボキシアニリノ基;ホスホノアニリノ基;若しくは、置換基として、スルホ基及びヒドロキシ基から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いスルホナフチルアミノ基;であり、
    C1が、水素原子;スルホ基;カルボキシ基;C1−C6アルコキシ基;C1−C6アルキル基;又はハロゲン原子;であり、
    基FC1が、フェニル基;又は、RC1が水素原子であるピリジル基;であり、
    aが1又は2の整数である、インクジェット用インクセット。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
    前記水酸基を3つ以上有する有機化合物は、グリセリン、トリメチロールプロパン、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトースおよびソルビトールから選択される少なくとも1種である、インクジェット用インクセット。
  8. 請求項2ないし請求項7のいずれか1項において、
    前記N,N,N−トリアルキルアミノ酸は、グリシンベタイン、γ−ブチロベタイン、ホマリン、トリゴネリン、カルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリンおよびグルタミン酸ベタインから選択される少なくとも1種である、インクジェット用インクセット。
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