JP5934813B1 - 共振器及びフィルタ - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の目的は、耐震性が高くかつQu値の低減が抑制される共振器及びその共振器を用いたフィルタを提供することにある。
ここで、前記不連続部は、前記周方向において一定の長さで前記内導体の根元側から前記先端側に向かって延びることを特徴とすることができる。この場合、不連続部を形成する作業が容易になる。
また、前記不連続部は、前記周方向における互いに異なる位置に、複数設けられることを特徴とすることができる。この場合、内導体の位置ずれが抑制される。
また、前記内導体は、前記空洞内にて前記突出する方向に進退可能であるとともに、自身の外周面に前記ねじ溝を有する本体と、前記空洞内にて前記外導体に対して固定されるとともに、前記本体が貫通した状態で当該本体を支持する支持体とを有し、前記支持体は、当該支持体を貫通する前記本体と対峙する内周面に、前記ねじ溝と噛み合う他のねじ溝を有することを特徴とすることができる。この場合、本体に形成されたねじ溝が空洞内に露出する面積が抑制される。
また、前記内導体は、前記本体が前記支持体に対して回転することを抑制する回転抑制部材を備えることを特徴とすることができる。この場合、共振器の共振周波数が意図せず変化することが抑制される。
また、前記内導体は、前記ねじ溝不形成部によって支持されるとともに、当該内導体における前記ねじ溝よりも前記先端側を覆う覆い部材を有することを特徴とすることができる。この場合、内導体の先端側における空洞内に露出する面積が抑制される。
また、他の観点から捉えると、本発明が適用されるフィルタは、信号が入力される入力部と、信号が出力される出力部と、前記入力部と前記出力部とに接続され、内部に空洞を形成する外導体と、当該外導体の当該空洞内に突出して設けられるとともに、当該空洞内における位置が調整可能である内導体とを有する共振器とを備え、前記内導体は、当該内導体の外周面において当該内導体の周方向に沿って形成され、前記位置の調整を可能にするねじ溝を有し、前記ねじ溝が形成される領域は、前記周方向において当該ねじ溝が連続しない不連続部を有し、かつ前記内導体は、前記外導体の前記空洞内に突出する先端側から予め定めた長さにわたって前記ねじ溝が形成されていないねじ溝不形成部を有することを特徴とするフィルタである。
ここでは、放送局における放送用信号を例として、フィルタ及び共振器を説明するが、放送用信号に限らず、他の高周波信号において、予め定められた周波数帯域の信号を通過させるために用いられるフィルタ及び共振器であってもよい。
図1は、放送用信号の送信におけるフィルタ100を説明する図である。
放送用信号は、送信機200から、フィルタ100を介して、アンテナ300に送信され、アンテナ300から電波として放射される。
フィルタ100は、送信機200から入力された放送用信号のうち、予め定められた周波数帯域の信号を通過させ、それ以外の周波数成分の通過を抑制するバンドパスフィルタ(BPF)である。
なお、本実施の形態におけるフィルタ及び共振器は、上記のように放送用信号に限定されないため、以下では、信号と表記する。
また、以下では、通過させる周波数帯域を、通過周波数帯域と表記する。
図2に示すように、本実施の形態におけるフィルタ100は、複数の共振器10によって構成されている。
さらに説明をすると、フィルタ100は、一例として、6個の共振器10(それぞれを区別する場合は、共振器10−1〜10−6と表記する。)を連結して構成されている。そして、フィルタ100は、信号が入力する入力部の一例としての入力端子20と、信号を出力する出力部の一例としての出力端子30とを備えている。また、フィルタ100は、各々の共振器10に設けられ各々の共振器10の共振周波数を微調整可能とする微調ねじ40を備える。
なお、図示の例においては、共振器10−1に入力端子20が接続され、共振器10−6に出力端子30が接続されている。また、共振器10−1〜10−6のそれぞれの間には、結合機構(不図示)が設けられ、信号が伝搬するように構成されている。さらに説明をすると、結合機構は、共振器10−1と共振器10−2との間、共振器10−2と共振器10−3との間、共振器10−3と共振器10−4との間、共振器10−4と共振器10−5との間、共振器10−5と共振器10−6との間に設けられている。
なお、通過周波数帯域の急峻性とは、通過させる周波数と通過させない周波数との境界の周波数帯の幅が狭いことをいう。
また、上記の結合機構としては、公知の技術を適用すればよく、ここでは説明を省略する。
図3(a)および(b)は、共振器10の構成を説明する平面図及び断面図である。さらに説明をすると、図3(a)は共振器10の平面図であり、図3(b)は図3(a)のIIIB−IIIB線での断面図である。
なお、図3(a)では、対向面部121の表記を省略している。また、図3(b)では、便宜上先端部131および移動体133を、断面図ではなく側面図として表記している。また、図3(a)および(b)では、入力端子20、出力端子30、微調ねじ40、あるいは結合機構の表記を省略している。
なお、共振器10は、図3(a)および(b)に示す向きの配置に限定されるものではなく、例えば図3(b)に示す共振器10とは上下を逆に配置してもよく、あるいは鉛直方向に対して傾けて配置してもよい。
次に、図3(a)および(b)を参照しながら、外導体12について説明をする。
図3(a)および(b)に示すように、外導体12は、対向面部121、側面部122、および支持面部123を備えている。
ここで、図3(b)に示すように、外導体12の対向面部121及び支持面部123の外形は、正方形である。すなわち、外導体12が囲む空洞11は、直方体である。なお、外導体12は、他の形状であってもよい。例えば、底面が長方形の直方体であってもよく、立方体であってもよい。さらに、外導体12は、円筒形、楕円筒形であってもよい。
なお、図示は省略するが、入力端子20、出力端子30あるいは結合機構を設ける場合には、例えば、外導体12の側面部122に開口を設けて、入力端子20、出力端子30又は結合機構を設ければよい。また、微調ねじ40を設ける場合には、例えば支持面部123に開口を設けて、微調ねじ40を設ければよい。
図4は、内導体13の構成を説明する分解斜視図である。
次に、図3および図4を参照しながら、内導体13について説明をする。
図3(a)および(b)に示すように、内導体13は、外形が略円柱状の部材である。この内導体13は、外導体12の開口部124に設けられる。さらに説明すると、内導体13は、空洞11内側から外導体12の開口部124を覆うように設けられ、外導体12が形成する空洞11内に突出して配置される。この内導体13は、使用する周波数帯域を設定する調整ねじの機能と、環境や発熱による共振器10の温度変化により生じる周波数の変化(温度ドリフト)を抑制、すなわち温度補償する機能とを兼ね備えている(詳細は後述)。
以下、図4乃至図6を参照しながら、内導体13を構成するこれらの構成部材について、各々説明をする。
ここで、図5(a)乃至(e)は内導体13の構成を構成する部材を説明する断面図である。さらに説明をすると、図5(a)は先端部131の断面図であり、図5(b)は支持棒132の断面図であり、図5(c)は移動体133の断面図であり、図5(d)は支持体134の断面図であり、図5(e)は固定板135の断面図である。
図6(a)および(b)は、移動体133の構成を説明する底面図および上面図である。さらに説明をすると、図6(a)は移動体133の上面図であり、図6(b)は移動体133の底面図である。
図4に示すように、覆い部材の一例である先端部131は、円盤状の部材である。図示の例における先端部131は、軸方向における先端側の縁131aと根元側の縁131bとがそれぞれアール(R)状に加工されている。
また、図5(a)に示すように、先端部131は、先端側の面の中央に形成された第1凹部131cと、根元側の面の中央に形成された第2凹部131dと、第1凹部131cおよび第2凹部131dを軸方向で連続させる貫通孔131eとを備える。
図4および図5(b)に示すように、支持棒132は、円柱状であり、所謂棒状の部材である。この支持棒132は、本体132aと、先端側および根元側の両端面にそれぞれ形成された第1ねじ孔132bおよび第2ねじ孔132cを備える。
なお、ここでは支持棒132を円柱状の棒としたが、角柱状の棒など他の形状であってもよい。さらに説明をすると、支持棒132の断面形状は、円形に限らず、例えば楕円形や多角形など、いかなる形状であってもよい。
図4に示すように、本体および中空部材の一例である移動体133は、自身の内部に空間133aを形成するとともに、先端側が開放され、根元側が覆われた有底円筒状の部材である。この移動体133は、先端側に位置するスライド支持部133bと、スライド支持部133bよりも根元側に位置する被固定部133cとを備える。ここで、被固定部133cの外周面には周方向に沿ってねじ溝133tが形成されている一方で、スライド支持部133bの外周面にはねじ溝133tは形成されていない。なお、この被固定部133cは、ねじ溝133tが形成される領域の一例である。
ここで、図6(a)に示すように、複数の小片部133fの各々は、弾性変形することにともない、スライド支持部133bの径方向に移動可能である(図中矢印参照)。さら説明をすると、スライド支持部133bは、その外径が変化可能(収縮可能)に構成されている。
図6(b)を参照しながらさらに説明をすると、被固定部133cは、周方向において互いに隣接する位置にねじ部133gおよび平坦部133hを備える。ここで、ねじ部133gは、被固定部133cにおけるねじ溝133tが形成された領域であるのに対して、平坦部133hは、被固定部133cにおけるねじ溝133tが形成されていない領域である。この平坦部133hは、ねじ溝133tが連続しない不連続部の一例である。
なお、図示の例のように、移動体133において平坦部133hが周方向に複数(4つ)並べて構成されることにより、例えば周方向長さがこの4つの平坦部133hの総和と等しい1つの平坦部(不図示)を形成する構成と比較して、移動体133と支持体134との電気的な接続が安定して維持され得る。また、移動体133と支持体134との相対位置がずれることが抑制され得る。
図4および図5(d)に示すように、支持体134は、自身の内部に空間134aを形成するとともに、先端側の一部が覆われ、根元側が開放された円筒状の部材である。
この支持体134は、先端側の面の中央に移動体133の外径と対応する寸法で形成された貫通孔134bを備える。また、支持体134は、この貫通孔134bの内周面に周方向に沿って形成され、移動体133のねじ溝133tと噛み合うねじ溝134tを備える。なお、このねじ溝134tは、他のねじ溝の一例である。
さらに、支持体134は、先端側を覆う面に、ねじ孔134fを複数備える。このねじ孔134fは、空間134aに対峙する側の面にて周方向に沿って形成される。このねじ孔134fは、根元側から先端側に向けて延びるように形成される。
また、支持体134に形成された貫通孔134bの内周面には、ねじ溝134tが形成されている一方で、貫通孔134bよりも根元側に位置する支持体134の内周面には、ねじ溝134tは形成されていない。なお、図示の例における空間134aの内径は、貫通孔134bの内径よりも大きい。
さらに、貫通孔134bの内周面に形成されるねじ溝134tは、周方向において連続して形成される。さらに説明をすると、貫通孔134bの内周面は、上記移動体133の被固定部133cとは異なり、周方向におけるねじ溝133tの不連続部を有しない。
図4および図5(e)に示すように、固定板135は、円環状の板状部材である。この固定板135の内径は、移動体133の外径と対応する寸法で形成されている。
また、固定板135は、内周面135aにて周方向に沿って形成され、移動体133のねじ溝133tと噛み合うねじ溝135tを備える。なお、このねじ溝135tは、周方向において連続して形成される。
また、固定板135は、軸方向に貫通する貫通孔135bを周方向に沿って複数備える。なお、この貫通孔135bは、各々支持体134のねじ孔134fと対峙する位置に形成される。
次に、図3乃至図5を参照しながら、内導体13が組み立てられた状態における、内導体13を構成する各部材どうしの位置関係について説明をする。
まず、先端部131は、移動体133の開放された先端側を覆うように配置される。このとき、先端部131は、移動体133の先端において、軸方向の位置を変位可能に設けられる。
なお、上記では説明を省略したが、先端部131の第2凹部131dの内径およびスライド支持部133bの外径は、スライド支持部133bが第2凹部131d内に挿入(配置)された状態で、先端部131が径方向に移動することが制限され、かつ軸方向に移動可能となる寸法である。
また、上述のように小片部133fが径方向に弾性変形することにより、スライド支持部133bが軸方向にスライド移動する際の抵抗が低減される。
付言すると、先端部131の第2凹部131d内に、移動体133のスライド支持部133bが挿入されることにより、スライド支持部133bに対する先端部131の相対位置が安定する。
具体的には、ボルト(不図示)が、先端部131の先端側(第1凹部131c側)から貫通孔131eを通り第2凹部131d側まで貫通して配置される。そして、このボルトの先端を、支持棒132の先端側に形成された第1ねじ孔132b内に挿入することで、先端部131が支持棒132に対して固定される(接続される)。
また、他のボルト(不図示)が、移動体133の根元側(第3凹部133m側)から貫通孔133nを通り空間133a側まで貫通して配置される。そして、このボルト(不図示)の先端を、支持棒132の根元側に形成された第2ねじ孔132c内に挿入することで、移動体133が支持棒132に対して固定される。
具体的には、移動体133の根元側が、支持体134の貫通孔134b内に挿入される。ここで、移動体133の外周面に形成されたねじ溝133tが、支持体134の貫通孔134bの内周面に形成されたねじ溝134tと噛み合わせられる。そして、この状態において、移動体133を周方向に回転させることにより、移動体133および支持体134の軸方向における相対位置が変化する。
また、支持体134は、移動体133の根元側の外周(移動体133の一部)を覆う構成として捉えることができる。そして、上述のように、支持体134が移動体133の一部を覆うことにより、移動体133に形成されたねじ溝133tが、空洞11内に挿入される面積が抑制される。
さらに説明をすると、このように支持体134のねじ溝134tが連続しない構成においては、移動体133の周方向に回転させた結果の取付角度によっては、支持体134のねじ溝134tが形成されてない部分と、移動体133のねじ溝133tが形成されていない部分(平坦部133h)とが対峙した状態となり得る。この場合、ねじ溝133tとねじ溝134tとが噛み合わず、支持体134と移動体133との軸方向における相対位置がずれる可能性がある。本実施の形態においては、この軸方向における位置ずれを抑制するべく、支持体134のねじ溝134tが周方向に連続して形成されている。
なお、図3(b)に示すように、支持体134と固定板135とは、軸方向において離間した状態で固定される。よって、移動体133は、所謂ダブルナットで固定されたような状態となる。また、固定板135は、回転抑制部材の一例である。
具体的には、図3(b)に示すように、ボルト(不図示)を外導体12の支持面部123に形成されたねじ孔(不図示)へと挿入し、さらに内導体13の支持体134に形成されたねじ溝134dに挿入し固定する。このことにより、支持体134(内導体13)が外導体12に対して固定される。
次に、共振器10を構成する材料の一例について説明する。
外導体12は、導電性材料である金属、具体的には、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)などにより構成されている。
また、内導体13における支持棒132および固定板135以外の部材、すなわち、先端部131、移動体133、および支持体134は、導電性材料である金属、具体的には、アルミニウム、鉄、銅などにより構成されている。また、これらの金属に対して、銀(Ag)などによるメッキ処理を施して構成されてもよい。
なお、支持棒132は、外導体12などよりも、温度変化にともなう変形量が小さければよく、上記の材質を組み合わせた構成などにより構成されてもよい。
また、固定板135は、本実施の形態では金属(具体的には、アルミニウム、鉄、銅など)で構成されるが、確実な固定が出来ればよく、金属以外の他の材料(具体的には、樹脂など)であってもよい。
図7(a)および(b)は、通過周波数帯域が異なる場合の共振器10を示す図である。さらに説明をすると、図7(a)は周波数帯域が低い(低周波数帯域)場合、図7(b)は周波数帯域が高い(高周波数帯域)場合を示す。
なお、図7(a)に示すように、外導体12内の空洞11は一辺長が長さLr、高さHrとする。また、内導体13を構成する各部材の寸法は、先端部131の外径D1、移動体133の外径D2、支持体134本体の外径D3、固定板135の外径D4とする。
また、外導体12の支持面部123から内導体13の先端部131の先端までを距離h1、内導体13の先端部131の先端から外導体12の対向面部121までを距離h2とする。また、支持体134の先端から支持棒132の先端までの軸方向における距離をh3、支持体134の先端から支持棒132の根元までの軸方向における距離をh4とする。また、支持体134の先端から先端部131の先端までの軸方向における距離をh5、支持面部123から支持体134の先端までの軸方向における距離をh6とする。
また、本実施の形態では、低周波数帯域をLF、高周波数帯域をHFと表記することがある。
まず、共振器10の寸法について説明をする。
本実施の形態における共振器10では、外導体12が囲む空洞11の長さLr、高さHr、先端部131の外径D1、移動体133の外径D2、支持体134の本体の外径D3、固定板135の外径D4は、使用する周波数帯域が異なっても、同じ(固定)である。
一方、距離h1乃至h6は使用する周波数帯域に基づいて変更される。さらに説明をすると、本実施の形態における共振器10においては、距離h1を設定することにより、使用する周波数帯域が変更できる。また、詳細は後述するが、本実施の形態における共振器10においては、距離h1を調整することにより、使用する周波数帯域において周波数の温度ドリフトが抑制される。
そして、本実施の形態では、外導体12の支持面部123から先端部131の先端までの距離h1を可変にすることにより、使用する周波数帯域を変化させることができる。
なお、距離h2乃至h6は、距離h1を設定することで決定される。このことから、距離h2乃至h6のいずれかをシミュレーションにより求め、その結果に基づいて距離h1を決定してもよい。
さて、ここで共振器10の調整方法を説明する。
まず、前提として、共振器10の調整する際には、移動体133および支持体134に対して、固定板135が取り付けられていない状態である。
そして、共振器10が使用される周波数帯域が決まると、移動体133の軸方向における位置調整を行いながら、予めシミュレーションにより求められた距離h1となるように内導体13を配置する。このとき、移動体133を周方向に回転させる(捩じる)ことにより、距離h1が調整される。
なお、距離h1は、距離h5および距離h6の和により定まる。また、距離h6は、支持体134の寸法により定まる固定値である。したがって、例えば、移動体133を捩じりながら距離h5を測定しながら、シミュレーションにより求められた位置に内導体13が配置される。
以上により、共振器10の設定が行われ、共振器10が使用される周波数帯域への対応が完了する。
また、共振器10が使用される周波数帯域を再調整する場合には、固定板135およびボルト(不図示)を外し、移動体133を周方向に回転させ所望の位置に配置した後、移動体133を再び固定板135およびボルトを介して固定する。このように、本実施の形態における共振器10は、周波数帯域を容易に変更可能である。
さて、上述のように、本実施の形態においては、移動体133の外周面と、支持体134の貫通孔134bの内周面とに、ねじ溝133tおよびねじ溝134tをそれぞれ形成し、互いに噛み合わせるとともに、固定板135でそれらを固定する。
このことにより、内導体13と外導体12との電気的接触が確保された状態で、共振器10が機械的な振動に耐えることが可能となる。すなわち、共振器10(フィルタ100)の耐震性が向上するとともに、内導体13と外導体12との接触抵抗が低減される。また、内導体13を回転させることにより、移動体133が軸方向に滑らかに移動し、かつその位置が固定されるものであることから、移動体133の突出量(距離h5参照)の調整および移動体133の固定が容易となる。
しかしながら、このフィンガーを用いた態様においては、フィンガーの弾性力により内導体13の外周面を押圧し、この外周面とフィンガーとの間の摩擦力で内導体13を固定するため、機械的な振動が加わった際に、内導体13の位置がずれ得る。したがって、他の固定部材等で、内導体13を固定する必要がある。
そこで、本実施形態においては、このフィンガーの態様と比較して、機械的な振動に耐え得るよう、移動体133の外周面と、支持体134の貫通孔134bの内周面とが対向する領域にねじ溝133t、134tを設けることとした。
さて、上述のように、移動体133の外周面には、ねじ溝133tが設けられる。すなわち、移動体133が雄ねじ状に形成される。このことにより、内導体13全体の表面抵抗が大きくなり、結果としてQu値の低下につながり得る。
そこで、本実施の形態の移動体133の外周面においては平坦部133hが設けられる。この平坦部133hが形成されていることにより、平坦部133hが形成されていない構成、すなわち移動体133の被固定部133c全周にわたってねじ部133gが形成されている構成と比較して、Qu値の低下が抑制される。
また、本実施の形態とは異なり移動体133の全周にねじ溝133tを形成する場合、すなわち移動体133の外周面にねじ溝133tを形成し、かつ平坦部133hを形成しない場合のQu値は、約7500となった。
一方で、本実施の形態の移動体133、すなわち移動体133の外周面にねじ溝133tを形成し、かつ平坦部133hを形成する場合、Qu値は、約8100となった。
このシミュレーション結果から、平坦部133hを形成することにより、平坦部133hを形成しない場合と比較して、Qu値の低下が抑制されることが確認された。
図8(a)乃至(c)は、共振器10における温度補償を説明する図である。図8(a)は、本実施の形態とは異なり内導体13が外導体12に固定されている共振器101を示す図、図8(b)は、本実施の形態であり内導体13が外導体12に対して移動できる構成として温度補償している共振器10を示す図、図8(c)は、周波数fの温度ドリフトをSパラメータS11により説明する図である。
なお、図8(a)および(b)において表記する白抜き矢印および黒塗り矢印は、共振器10が温度T0から温度(T0−ΔT)となった場合、すなわち、温度が低下した場合における外導体12及び内導体13の変化(収縮の方向)を示している。
まず、図8(a)に示す本実施の形態とは異なる共振器101について説明をする。この共振器101においては、外導体12の支持面部123に内導体13が固定されている。そして、この共振器101には、先端部131、支持棒132、移動体133、支持体134、および固定板135は設けられておらず、内導体13の位置は調整できない。
この場合、温度T0から温度(T0−ΔT)となると、外導体12及び内導体13が熱膨張率にしたがって収縮し、図中の白抜き矢印の方向に移動する。このとき、空洞11の大きさは小さくなり、距離h1も小さくなる。その結果、図8(c)に示すように、中心周波数f0は、中心周波数f0′にシフトする。これが、周波数の温度ドリフトである。
ここで、支持棒132も軸方向において収縮する。しかしながら、支持棒132の熱膨張率は小さいため、支持棒132は、移動体133と比較して、軸方向における収縮する長さ(変形量)が短くなる。この変形量の差により、支持棒132が、内導体13の先端部131を空洞11の内部に押し込める(入り込む)方向に移動させる(黒塗り矢印の方向に移動する)。言い替えると、熱膨張率が小さい支持棒132が、内導体13の内部でお押し出す状態となる。
その結果、中心周波数f0は中心周波数f0′にシフトせず、中心周波数f0を維持する。
なお、温度変化によって、内導体13が空洞11に対して移動する量は、例えば−10℃から45℃などの予め定められた温度範囲において、周波数の温度シフトが抑制されるように設定される。
図9(a)および(b)は、共振器10における通過周波数帯域と温度補償量との関係を説明する図である。さらに説明をすると、図9(a)は周波数帯域が低い(低周波数帯域)場合、図9(b)は周波数帯域が高い(高周波数帯域)場合を示す。
次に、図9を参照しながら、共振器10における周波数帯域と温度補償量との関係を説明する。言い替えると、共振器10における移動体133の軸方向における移動にともなう、温度補償量の変化について説明をする。
ここで、高周波数帯域の場合の距離h3(HF)は、低周波数帯域の場合における距離h3(LF)に比べ、小さい。したがって、同じ温度(ΔT)だけ低下したとしても、距離h3の変形量は、長さがより短い高周波数帯域の場合の方が小さくなる。その結果、高周波数帯域の場合の方が、低周波帯域の場合に比べて、距離h1の変化を抑制する。言い替えると、高周波数帯域であるほど、熱変形の影響を打ち消す向きの作用が大きくなり、結果として、温度補償の量が大きくなる。
まず、移動体133は、支持体134によって軸方向中程(軸方向における中間位置)が支持されている状態である。そのため、温度低下にともない移動体133が収縮すると、移動体133の根元側の端部は、先端側へ向かう向きに移動する(白抜き矢印の方向に移動する)。
ここで、図9(a)および(b)に示すように、高周波数帯域の距離h4(HF)は、低周波帯域の距離h4(LF)よりも大きい。言い替えると、移動体133における根元側の長さ、すなわち移動体133における根元側の端部から支持体134の先端までの軸方向長さは、高周波数帯域の方が長い。そのため、同じ温度(ΔT)だけ低下したとしても、根元側の長さの変化量は、高周波数帯域の場合の方が大きくなる。その結果、移動体133の根元側の端部は、高周波数帯域の場合の方が、先端側へ向かう向きに大きく移動する。
図10(a)および(b)は、先端部131のスライド移動を説明するための図である。さらに説明をすると、図10(a)は本共振器10を調整したときの温度に比べて高温の場合、図10(b)は本共振器10を調整したときの温度に比べて低温の場合を示す。また、図10(a)および(b)における周波数帯域は同一であるものとする。
次に、図10を参照しながら、先端部131のスライド移動について説明をする。
具体的に説明をすると、図10(a)および(b)に示すように、温度に応じて、先端部131の移動体133側(根元側)の面131rと、移動体133の先端部131側(先端側)の面133rとの距離が変化する。なお、この距離は、低温の場合(図10(b)参照)の方がより大きくなる。
また、本実施の形態においては、スライド支持部133bの外周面にはねじ溝133tなどの凹凸が形成されていない。また、スライド支持部133bは、径方向に弾性変形する。その結果、先端部131のスライド移動を滑らかに行うことが可能となる。そして、スライド移動が滑らかに行われることにより、温度補償が確実に実行され、結果として共振周波数の調整が容易となる。また、スライド支持部133bの弾性変形により、先端部131と移動体133との電気的な接続が安定して維持される。
なお、支持棒132の軸方向長さは、所望の温度補償を実行するために、先端部131と移動体133との軸方向において必要とされる距離に基づいて定めることができる。
図11は、フィルタ100において、中心周波数f0を474MHzに設定した場合(低周波数帯域)の減衰量の温度変化を示す図である。
図12は、フィルタ100において、中心周波数f0を850MHzに設定した場合(高周波数帯域)の減衰量の温度変化を示す図である。
なお、図11および図12においては、図2に示すように、共振器10を6個連結させたフィルタ100を用いた。
ここで、図11および図12においては、フィルタ100として、図3に示した共振器10を6個連結させた構成が用いられている(図2参照)。また、ここでは、図11および図12においては、温度を23℃、−10℃、45℃、23℃と順に変化させている。
図13は、共振器10単体において、中心周波数f0を863MHzに設定した場合(高周波数帯域)の減衰量の温度変化を示す図である。
次に、図13を参照しながら、図3に示した共振器10単体における減衰量の温度変化の測定結果について説明をする。
なお、上記の図11および図12においては、共振器10を6個連結させたフィルタ100を用いたのに対して、図13においては共振器10が1個のみで構成されている。また、上記の図11および図12と同様に、温度を23℃、−10℃、45℃、23℃と順に変化させている。
そして、前述したように、この共振器10は、高電力の信号を扱えるとともに、小型化が達成されている。
図14(a)乃至(c)および図15(d)乃至(f)は、本実施の形態における変形例を説明する図である。
次に、図14および図15を参照しながら、本実施の形態における変形例について説明をする。なお、以下の説明においては、上記の構成と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
上記において、図1乃至図13を参照しながら本実施の形態のフィルタ100について説明をしたが、フィルタ100においては様々な変形例が考えられる。
例えば、図14(a)に示す移動体1330のように、ねじ部1330gと、軸方向において連続しない平坦部1330hとを備える構成であってもよい。
また、例えば、図14(b)に示す移動体1331のように、ねじ部1331gと、移動体1331の外周面を旋回するようにらせん状に形成された平坦部1331hとを備える構成であってもよい。
例えば、図14(c)に示す移動体1332のように、周方向において1つの平坦部1332hを備える構成であってもよい。この移動体1332においては、周方向において1つのねじ部1332gが形成される。なお、図示の例における周方向長さとしては、ねじ部1332gの方が平坦部1332hよりも長い。
ここで、図示は省略するが、ねじ部133gおよび平坦部133hの個数が、それぞれ2、3、あるいは5以上であってももちろんよい。また、ねじ部133gおよび平坦部133hの個数に関わらず、周方向長さは、全てのねじ部133gの総和、および全ての平坦部133hの総和が、等しくてもよいし、いずれか一方の方が長くてもよい。
あるいは、図15(d)に示す移動体1334のように、スリット133eを備えない構成であってもよい。この構成においては、例えばスライド支持部1334bを、例えば弾性率が高い部材により形成する構成や、厚みが薄い形状とすることにより、スライド支持部1334bの外径が変化可能となる。
例えば、図15(e)に示す内導体130のように、支持体134を備えない構成としてもよい。この支持体134を備えない共振器103においては、外導体1210の支持面部1230には、内導体130を挿入する開口部1240が形成される。また、この開口部1240の内周面1241にねじ溝1241tが形成される。
そして、開口部1240のねじ溝1241tと、移動体1335のねじ部1335gのねじ溝133tとが噛み合うことにより、移動体1335が、機械的な振動に耐えつつ、移動体1335の軸方向における位置を調整することが可能となる。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
Claims (7)
- 内部に空洞を形成する外導体と、
前記外導体の前記空洞内に突出して設けられるとともに、当該空洞内における位置が調整可能である内導体と
を備え、
前記内導体は、当該内導体の外周面において当該内導体の周方向に沿って形成され、前記位置の調整を可能にするねじ溝を有し、
前記ねじ溝が形成される領域は、前記周方向において当該ねじ溝が連続しない不連続部を有し、かつ
前記内導体は、前記外導体の前記空洞内に突出する先端側から予め定めた長さにわたって前記ねじ溝が形成されていないねじ溝不形成部を有する
ことを特徴とする共振器。 - 前記不連続部は、前記周方向において一定の長さで前記内導体の根元側から前記先端側に向かって延びることを特徴とする請求項1記載の共振器。
- 前記不連続部は、前記周方向における互いに異なる位置に、複数設けられることを特徴とする請求項1または2記載の共振器。
- 前記内導体は、
前記空洞内にて前記突出する方向に進退可能であるとともに、自身の外周面に前記ねじ溝を有する本体と、
前記空洞内にて前記外導体に対して固定されるとともに、前記本体が貫通した状態で当該本体を支持する支持体と
を有し、
前記支持体は、当該支持体を貫通する前記本体と対峙する内周面に、前記ねじ溝と噛み合う他のねじ溝を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の共振器。 - 前記内導体は、前記本体が前記支持体に対して回転することを抑制する回転抑制部材を備えることを特徴とする請求項4記載の共振器。
- 前記内導体は、前記ねじ溝不形成部によって支持されるとともに、当該内導体における前記ねじ溝よりも前記先端側を覆う覆い部材を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の共振器。
- 信号が入力される入力部と、
信号が出力される出力部と、
前記入力部と前記出力部とに接続され、内部に空洞を形成する外導体と、当該外導体の当該空洞内に突出して設けられるとともに、当該空洞内における位置が調整可能である内導体とを有する共振器と
を備え、
前記内導体は、当該内導体の外周面において当該内導体の周方向に沿って形成され、前記位置の調整を可能にするねじ溝を有し、
前記ねじ溝が形成される領域は、前記周方向において当該ねじ溝が連続しない不連続部を有し、かつ
前記内導体は、前記外導体の前記空洞内に突出する先端側から予め定めた長さにわたって前記ねじ溝が形成されていないねじ溝不形成部を有する
ことを特徴とするフィルタ。
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