JP5933709B2 - 高められた可溶性および安定性を有する封入された組成物を形成する方法 - Google Patents

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Description

[0001] この出願は2011年6月30日に出願された米国特許出願一連番号61/502,156に対する優先権を主張し、それをこの参照により本明細書にそのまま援用する。
[0002] 本発明は、概して食品グレードのマイクロエマルジョンに関し、より具体的には高められた可溶性および安定性を有する低減された大きさの食品グレードの粒子を作製する新規方法に関する。
[0003] 有効な機能性食品または食品栄養補助剤の動物への投与は、有効量の有効物質をその動物中の望まれる部位に完全な形態で至らせることができる適切なビヒクルの使用により最高に達成される。これらの有効物質のほとんどは、油または水のどちらかの中で非常に不十分に溶解し、投与および標的吸収の間の経路において問題を引き起こす。しかし、そのような有効物質のための適切な送達ビヒクルとして役立ち得る多くの化学物質は、安全性または毒性の懸念のため、動物での使用に関して認可されてこなかった。従って、これらの有効物質のための適切かつ有効な送達ビヒクルの構築は多くの研究者に難題を課している。
[0004] カロテノイド類は、黄色〜赤色の色合いを有し、天然に広く存在し、飼料原料に特徴的な色を与える有色色素の群である。このカテゴリーのいくつかの重要な例には、ルテイン、カプサンチン、ゼアキサンチンおよびカロテンが含まれる。それらは食品および動物飼料産業に合成着色料の代用品として需要のある天然色素の重要なクラスを構成する。さらに、これらは体内で合成されず、従って食事での摂取が補給のための唯一の源である。全てのカロテノイド類は水に不溶性であり、脂肪および油中でわずかに可溶性である。この限られた可溶性は、低い色収率(color yields)しか達成することができないため、着色のための合成から得られた比較的粗いカロテノイド類の直接の使用を妨げる。加えて、その粗いカロテノイドは不均一な粒径のため胃腸通過の間に不十分しか吸収されない。
[0005] そのようなビヒクルの構築の試みにおける一般的なアプローチは、マイクロエマルジョンの使用による。マイクロエマルジョンは、典型的には補助界面活性剤と共同した界面活性剤分子の界面薄膜により安定化された、油および水からなる熱力学的に安定、透明、低粘性かつ等方性の分散物である。マイクロエマルジョンにおける研究1−7は、一般に濃縮物(界面活性剤および油相)に有効物質が装填された(loaded)微小反応器としての油中水型(W/O)または水中油型(O/W)マイクロエマルジョンのどちらかを形成することに焦点を合わせている。しかし、それらは典型的には単純な水性希釈の際に反転して水中油型液滴になることができない‘逆ミセル’または‘油中界面活性剤相’からなる。そのような製品は、それが水性環境中で希釈および不安定化されるであろう場合には添加剤として適していないであろう。水性希釈は、それらが生物系に入り、動物の体内で吸収および分配の様々な段階を通って進む際にも直面する。従って、そのようなマイクロエマルジョン製品はほとんど実用的価値を有しないであろう。
[0006] 最近の研究8−11において、科学者は、水相で相分離することなく進行的(progressively)且つ連続的に希釈することができ、さらなる希釈の際に反転して水中油型ナノ液滴になることができる両連続(bicontinuous)構造に変換される食品グレードの油の独特の混合物を発見している。これらの独特の混合物は、自己集合して混合された逆ミセル(濃縮物)を形成する2種類以上の食品グレードの非イオン性親水性乳化剤からなる。
[0007] その両連続マイクロエマルジョン12(WinsorタイプIII)は、それらの独特の構造が制御放出適用に適しているため、活発な研究主題となってきた。両親媒性分子は両連続性の水および油のチャンネルを形成し、ここで“両連続性”は二重層により隔てられた2種類の別個の(連続性であるが交差しない)親水性領域を指す。これは水および油溶性の有効成分の同時組み込みを可能にし、その相構造は封入された(encapsulated)成分の制御放出のための蛇行した拡散経路を提供する。最近の活動にもかかわらず、その技法の実行可能かつ実用的な適用への転換には間隙が残っている。困難な点には、適度な貯蔵寿命を提供するための適度な製品安定性のレベルを達成すること、製造の規模設定性、および規制当局に認可された材料を用いたカスタマイズ化が含まれ、それが食品グレードの両連続マイクロエマルジョンの商業製品への開発における進歩を妨げている。
[0008] この本発明は、マリーゴールド抽出物からのカロテノイド類の封入のための食品グレードの両連続マイクロエマルジョン製品の最適化により作られた安定な製品の新規開発である。その両連続マイクロエマルジョンの物理化学的特性を特性付け、熱安定性および生物学的利用能を評価する。
[0009] 食品および飼料産業内で、機能性成分を封入するためのコロイド性送達系の利用において関心が高まっている。マイクロエマルジョンは、それらを比較的簡単な処理操作を用いて食品グレードの成分から容易に製作することができるため、コロイド性送達系として特に興味深い。
[00010] 本発明は、多種多様な水溶性/油溶性薬剤を両連続マイクロエマルジョンナノ構造(例えばナノ粒子または約500ナノメートル未満の大きさを有する粒子)中に封入するための新規の方法および組成物を提供する。その方法は、食品グレードの油、2種類以上の食品グレードの非イオン性親水性乳化剤、共溶媒、共乳化剤(co−emulsifiers)、および有効組成物または有効薬剤の独特の混合物からなる両連続マイクロエマルジョンを含有するカロテノイドに基づく顔料(pigmenter)を形成することを含む。好ましい態様において、その乳化剤はポリソルベート80であり、その共溶媒はグリセロールまたはリモネンのどちらかであり、その共乳化剤はエタノールであり、その有効組成物は鹸化反応により得られた遊離型カロテノイドである。
[00011] 特に、本発明には、エトキシ化(ethoxylated)ソリビタンエステル(TWEEN(登録商標)80)、水、R−(+)−リモネン、エタノールおよびグリセロールからなる水で希釈可能なWinsorタイプIII(両連続)食品グレードマイクロエマルジョンの、食品グレードの組成物、特にカロテノイド類の可溶化および急速な環境反応性に対する安定性を高めるための新規使用が含まれる。最大限の可溶化がその両連続マイクロエマルジョン相内で得られた。これは様々な含水率(aqueous content)での同じ化合物に関する油(リモネン)の溶解能力より6〜8倍大きい。擬似3相図における希釈線に沿ったカロテノイド類の可溶化能力は、その希釈線に沿った微小構造遷移に相関していた。この希釈線上で、リモネン/エタノール/ポリソルベート80の重量比は1:2:3で一定に保たれた。マイクロエマルジョン中でのカロテノイド類の安定性を調べた。25℃および65℃にそれぞれ1ヶ月間曝露した際に、総カロテノイド類含有量における13%および24%の低下が存在した。これはマイクロエマルジョンに関してかなり安定であると考えられる。加えて、その試作品の粒径分布は比較的均一であり、約500nmの平均直径を有していた。
[00012] この発明に従うマイクロエマルジョンには、水相または油相が着色剤、ビタミン類、抗酸化剤、天然構成要素(例えば植物の根、葉、種子、花等)の抽出物、薬物、眼の色素(eye dyes)、単純フェノール類、ポリフェノール類、バイオフラボノイド類、乳製品、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、塩類、糖類、甘味料、香味、香味前駆体、栄養素、鉱質、酸および調味料、ならびにそれらの混合物から選択される溶解した物質を同じマイクロエマルジョン中に含有することができるマイクロエマルジョンが含まれる。
[00013] 本発明は、多種多様な水溶性/油溶性薬剤を両連続マイクロエマルジョンナノ構造(例えばナノ粒子または約1ミクロン未満の大きさを有する粒子)中に封入するための新規の方法および組成物を提供する。
[00014] その両連続マイクロエマルジョンは、両親媒性または親油性油溶性または親水性水溶性物質の飼料および食品組成物中への封入および安定性を高めるために用いられ、それは以下:(a)前記の両親媒性または親油性油溶性物質を含む油相;(b)前記の両親媒性または親水性水溶性物質を含む水相;ならびに(c)以下(i)イオン性もしくは非イオン性もしくは双性イオン性乳化剤および(ii)共乳化剤を含有する食品グレードの乳化剤系を含み、ここで前記の油相は1μm未満の平均直径を有する粒子として前記の水相内に分散しており、またはここで前記の水相は1μm未満の平均直径を有する粒子もしくは連続相として前記の油相内に分散している。
[00015] この発明に従う両連続マイクロエマルジョンは全体の約10%から約90%までにおいて水相を含み、残りの部分は油相および食品グレードの乳化剤系であり、その油相は全体の約10%から約90%までを構成し、残りの部分は水相および食品グレードの乳化剤系である。
[00016] この発明に従う両連続マイクロエマルジョンは、着色剤、ビタミン類、果汁、抗酸化剤、天然構成要素(例えば植物の根、葉、種子、花等)の抽出物、薬物、単純フェノール類、ポリフェノール類、バイオフラボノイド類、乳製品、タンパク質(酵素が含まれる)、ペプチド、アミノ酸、塩類、糖類、甘味料、香味、香味前駆体、栄養素、鉱質、酸および調味料、またはそれらの混合物から選択される溶解した物質を含有する水相または油相を含む。
[00017] この発明に従う両連続マイクロエマルジョンは、脂肪酸のグリセロールエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、エトキシ化モノグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、レシチン、脂肪酸のグリセロールエステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のスクロースエステル、またはそれらの混合物から選択される乳化剤を含む。
[00018] この発明に従う両連続マイクロエマルジョンは、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、グリセロールまたはそれらの混合物からなる群から選択される水と混和性のアルコール性乳化剤である共乳化剤を含む。
[00019] この発明に従う両連続マイクロエマルジョンは、リモネン、植物油、動物油、ポリオールポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される油を含む。
[00020] 図1は、ポリソルベート80/エタノール/リモネン/グリセロール/HOからなる系の透明なマイクロエマルジョン領域の相挙動のチャートであり;リモネン対エタノールおよびグリセロール対水の重量比は1:2および1:3で固定され、一方で油対界面活性剤に関する重量比は含水率が増大するP線に沿って1:1であった。 [00021] 図2は含水率が増大するP線に沿ったマイクロエマルジョンの伝導度における変化のチャートである。 [00022] 図3は、カロテノイド類のポリソルベート80/エタノール/リモネン/グリセロール/水からなるマイクロエマルジョン中での最大可溶化のチャートであり;パラメーターはP線に沿った希釈に沿った含水率に対してプロットされた。 [00023] 図4は、カロテノイド類が封入されたマイクロエマルジョンの25℃で1ヶ月間の貯蔵後の紫外−可視吸収のチャートである。 [00024] 図5は、カロテノイド類が封入されたマイクロエマルジョンの25℃および65℃で1ヶ月間の貯蔵後の紫外−可視吸収のチャートである。 [00025] 図6Aは(カロテノイド類を含まない)マイクロエマルジョンのTEM顕微鏡写真であり;図6Bはカロテノイド−マイクロエマルジョンのTEM顕微鏡写真であり;そして図6Bは鹸化カロテノイド類の濃縮物のTEM顕微鏡写真である。 [00026] 図7はカロテノイド−マイクロエマルジョン試料の粒径分布のチャートである。 [00027] 図8(a)および(b)は、(a)Kem GLO 10液体前駆体および(b)ナノ分散したKem GLO 10液体前駆体の粒径分析のチャートである。 [00028] 図9は、室温(25℃)において0、7、14、21および28日目におけるナノ分散したKem GLO 10液体前駆体の粒径分布のチャートである。 [00029] 図10は、色素処理の血漿中のトランス−カプサンチン吸収への作用のチャートである。 [00030] 図11は、色素処理の卵黄中のトランス−カプサンチン沈着への作用のチャートである。 [00031] 図12は、色素処理の卵のYCFスコアへの作用のチャートである。
[00032] 適切な両連続マイクロエマルジョンは、その構成要素の割合がそれぞれ水相(例えばグリセロール/水、プロピレングリコール/水、または水)に関して約15から約50%まで、油相(例えばリモネン、エタノール、リモネン/エタノール、鉱油、大豆油)に関して約5%から約40%まで、そして界面活性剤(ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、レシチンおよびレシチン誘導体、モノおよびジグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル)に関して約10%から約50%まで(全ての百分率は重量による(以下重量%と表す))である場合に形成され得る。当業者は、結果として得られる配合物の様々な特性への望まれる作用を達成するために、例えば結果として得られる配合物の有効成分可溶化能力または安定性を向上させるために、どのように異なる油および界面活性剤を異なる比率で組み合わせるかを理解しているであろう。
実施例1
材料および方法
[00033] 材料。ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート;TWEEN(登録商標)80)、R−(+)−リモネン、エタノールおよびグリセロールは食品グレードのものであった。分析プロトコルにおいて用いられた全ての化学物質および試薬は分析試薬グレードのものであった。水は再蒸留された。用いられた対照カロテノイド源は、マリーゴールド抽出物からの鹸化黄色カロテノイド類の安定化された源(OroGLO(登録商標)24 Dry、Kemin Industries,Inc.)であった。
[00034] 相図および電気伝導度。ポリソルベート80/エタノール/リモネン/グリセロール/HOからなるマイクロエマルジョンの単相領域を、スクリューキャップを付けた試験管中で水をポリソルベート80、エタノール、リモネンおよびグリセロールの様々な組成物に対して滴定する(titrating)ことにより系統的に決定した。それぞれの試料をボルテックスで混合し、25℃で温度管理された環境中で平衡化させた。水およびグリセロールの3:1の一定重量比でのストック溶液を作った。エタノール/リモネンの重量比は1:2で一定に保たれた。界面活性剤/油相(エタノールおよびリモネン)の混合物または界面活性剤/水相(水およびグリセロール)の混合物を、培養チューブ中で予め決められた油相対界面活性剤または水相対界面活性剤の重量比で調製し、スクリューキャップで密封し、25℃(±0.3℃)の水浴に入れておいた。マイクロエマルジョン領域を相図中で油/界面活性剤相または水相/界面活性剤混合物のどちらかをそれぞれ水相または油相を用いて滴定することにより決定した。全ての試料を強く撹拌した。その試料を、それらを試験する前に少なくとも24時間平衡化させた。
[00035] そのマイクロエマルジョン領域を、水中油型(O/W)、両連続または油中水型(W/O)マイクロエマルジョンのいずれかとしてさらに分類した。その両連続領域の大まかな境界を、伝導度測定からさらに推定した。電気伝導度測定は、25±0.2℃において希釈線Pに沿った試料に対して伝導度計(Extech EC500、pH/伝導度計)を用いて実施された。そのマイクロエマルジョンは非イオン性であったため、少量の水性電解質(0.01M NaClの溶液)を添加した。その試料は澄んだままであり、相図における観察可能な変化は存在しなかった。
[00036] カロテノイド−マイクロエマルジョンの調製。試料を以下のように調製した。OroGLO(登録商標)24 Dry製品に関する配合に基づいて、38.0gの鹸化OroGLO(登録商標)濃縮物を混合容器に入れ、続いて15.0gの予め調製されたマイクロエマルジョンを添加した。そのマイクロエマルジョンは32.5%のポリソルベート80、32.5%のリモネン/エタノール(1:2)、35.0%のグリセロール/水(1:3)で構成されていた。全ての内容物を、カロテノイド−マイクロエマルジョンの均質な混合物が観察されるまで混合した。次いでその試料に47gの1種類以上の不活性なキャリヤーを添加し、ブレンドして自由に流動する粉末を得た。
[00037] 遠心応力試験。その配合物のマイクロエマルジョンの安定性を、それらに対して遠心応力試験を施すことにより試験した。約15gの試料を透明なポリマーチューブに入れ、それに対して24,000gの遠心応力を15分間かけた(B.Braun Biotech Centrifuge ER 15P)。その遠心分離された試料を蛍光灯の下で相分離の程度に関して観察した。Brookfield粘度計モデルDV−I+を用いてその配合物の粘性を試験した。
[00038] 粘性および屈折率の測定。その配合物の屈折率を、Abbe型デジタル屈折率計(Reichert−Jung,Abbe Mark II)を用いて、1滴のその配合物をスライド上に25℃において3通りで(in triplicate)置くことにより決定した。
[00039] 可溶化測定。まず鹸化カロテノイド類およびリモネンを混合した。次いで水、グリセロール、エタノールおよびポリソルベート80を滴加して、望まれる組成を有する単相の澄んだマイクロエマルジョンを得た。最後に、その試料を25℃で冷却して保管した。少なくとも5日間透明なままであった試料はマイクロエマルジョンであると考えられた。
[00040] 総カロテノイドの安定性試験および分光光度的決定(SOP−10−00072)。時間の経過にわたるマイクロエマルジョンの安定性を、紫外/可視吸収測定により監視した。不安定なマイクロエマルジョンに関して、その封入されたカロテノイド類は即座に放出されると考えられ、その試料の紫外/可視吸収は減少するであろう。その試料を、まず0.5g(+/−0.1mg)のカロテノイド−マイクロエマルジョンを100ml褐色メスフラスコに入れることにより調製した。そのフラスコを抽出溶媒としてのヘキサン:エタノール:アセトン:トルエンの10:6:7:7の比率での混合物(HEAT)で満たし、磁気撹拌棒で15分間撹拌した。5mlをピペットにより50ml褐色メスフラスコに移し、印までHEATで希釈し、振盪して内容物を混合した。キュベットをその溶液で満たし、吸光度を分光光度計(UV−2401PC,Shimadzu)を用いて460nmにおいて抽出溶媒に対して測定した。
[00041] カロテノイド−マイクロエマルジョンの形態。形態を観察するため、カロテノイド−マイクロエマルジョンおよび黄色カロテノイド類を銅の格子により支持される炭素薄膜上に直接沈着させ、四酸化オスミウム(OsO)の1%水溶液で染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)JEOL 1010を用いて調べた。
[00042] 粒径分析。そのカロテノイド−マイクロエマルジョン試料に対して粒径分析器(Horiba粒径分析器LA−950)を用いた粒径分析を行った。
結果
[00043] 相図および伝導度測定。図1は、ポリソルベート80/エタノール/リモネン/グリセロール/HOからなる系の透明なマイクロエマルジョン領域(点の模様がある領域)の相挙動を示す。暗くした(shaded)領域は、透明なマイクロエマルジョンを形成するために選択することができる組成物の広い範囲を表す。その図に基づいて、約20から100重量%までの範囲の含水率を用いてマイクロエマルジョンを形成することができる。
[00044] 含水率によるP線に沿ったマイクロエマルジョンの伝導度の変化を図2において示す。それは、より低い含水率(20重量%未満)におけるマイクロエマルジョンの低い伝導度、続いて含水率が20重量%より大きい場合の伝導度における急激な増大を示している。
[00045] 伝導度測定に基づいて、35重量%の水を含有する系は両連続マイクロエマルジョンであることが分かった。従ってこれを詳細な研究のために選択した。
[00046] その両連続カロテノイド−マイクロエマルジョン系は安定であり、エマルジョン破壊(遠心分離)試験において均質性を維持することができた。粘性は100cP未満(約72.4〜77.5cP)であり、マイクロエマルジョンの屈折率は1.4106であった。
[00047] 可溶化能力。図3は、20重量%および35重量%水におけるマイクロエマルジョン構成要素中のカロテノイド類の溶解度を示す。20重量%の水および35重量%の水を含むマイクロエマルジョン系中のカロテノイド類の溶解度は、(R)−(+)−リモネン中のカロテノイド類の溶解度(1200ppm)よりもそれぞれ約6倍(6630ppm)および約8.4倍(10,100ppm)高かった。
[00048] 安定性試験。図4は、カロテノイド類が封入されたマイクロエマルジョンの室温(25℃)で1ヶ月後の紫外−可視吸収を示す。1ヶ月の試験の間にそのマイクロエマルジョン間で紫外−可視スペクトルの吸収曲線において有意な違いは存在しなかった。そのマイクロエマルジョンからカロテノイド類は放出されず、1ヵ月後に凝集の徴候はなかった。
[00049] 図5は、時間の経過に伴うマイクロエマルジョン中のカロテノイド類の濃度における変化を示す。遅い分解があり、25℃および65℃に1ヶ月間曝露した際に結果としてそれぞれ総カロテノイド類含有量における13%および24%の低下がもたらされた。
[00050] カロテノイド−マイクロエマルジョンの形態。図6AおよびBは、それぞれカロテノイド類を含まない、および含む、35重量%含水率の両連続マイクロエマルジョンのTEM画像を示す。図6Aにおいて示されるように、分枝したミセルにより形成されたミセルの網状構造が見られた。それは相互接続された分枝したミセルの網状構造であり、大きな空間にわたって広がっており、両連続相に類似しており、ここで通常は無限の多重連結された流体二重層が親水性領域を疎水性領域から隔てている。図6Bにおいて見られるように、その粒子は直径が100nmよりわずかに大きかった。
[00051] その粒子のほとんどはその十分に分散されたマイクロエマルジョン系中で形状が球状に見える。これは鹸化カロテノイドの濃縮物の集塊したTEM画像を示す図6Cとは対照的であった。その集塊は、カロテノイド類の表面に付着したそれらを分散した状態で維持するための界面活性剤が存在しなかったため、予想されていた。
[00052] 粒径分析。そのカロテノイド−マイクロエマルジョン試料の粒径分布は、図7において示した通りであった。そのカロテノイド−マイクロエマルジョンの平均直径は比較的均一であり、約500nmの粒径を有していた。
論考
[00053] 食品グレードの両連続マイクロエマルジョンは、食品および飼料産業に特に興味深い独特の特性を提供する。その物質は、食品グレードの油および界面活性剤の独特の混合物の水との単純な組み合わせにより形成することができる。我々の研究において、カロテノイド類はその両連続マイクロエマルジョン中でR−(+)−リモネン自体の中でのそれらの溶解度よりも6〜8倍に至るまで多く可溶化されることが分かった。そのマイクロエマルジョン系は、それを水により希釈することができることを実証しており、これはそれが食品および飼料産業にわたって適用されることを可能にするであろう重要な特性である。加えて、この系は油相((R)−(+)−リモネンが含まれる)で希釈することができ、従って油連続相適用にも適している。従って、油相および水相の両方の中での希釈が可能であるマイクロエマルジョン濃縮物を構築することが必須である。この論文において記述されたマイクロエマルジョンは、これらの特性において無類である。
[00054] 図6Bにおいて見られるように、その粒子は直径が100nmよりわずかに大きかった。これは約500nmの均一な平均直径を示す図7における粒径測定の結果と一致している。加えて、この点においてその両連続性の形態は装填および放出特性に関して興味深い環境を提供することを特筆する。マイクロエマルジョンの構成要素を変動させることにより(図6Aの挿入図において示されるような)水性および油性チャンネルの領域の大きさを微調整して、有効成分の可溶化および制御放出に関する完全な可能性を可能にすることができる。さらに、その親水性および疎水性部分の特異的な特性をカスタマイズすることにより、それらの有効成分との相互作用を制御し、広い範囲の適用および条件にわたる調整された放出特性に関するより大きな可能性を提供することが可能である。
[00055] そのカロテノイド−マイクロエマルジョンは、貯蔵の間のカロテノイド類の分解が最小限であり、物理的および化学的に優れた安定性を示していた。65℃では25℃と比較してわずかに大きなカロテノイド類の喪失が起きた。カロテノイド類の分解に関するいくつかの可能性のある説明が存在する。それらの中で、表面積の影響は本研究に関係がある。バルク結晶性カロテノイド類と比較した際に、ナノメートル範囲でのカロテノイド類の表面積は著しく大きい。これはそのカロテノイド類および水性環境の間のより大きな接触面を提供することにより安定性を低減する可能性がある。1つの研究13において、多数のナノサイズのエマルジョン中のβ−カロテンの分解は急速であり、50℃で4週間の貯蔵後に32.3%のβ−カロテンしか残らなかったことが報告された。我々の両連続マイクロエマルジョン中のカロテノイド類の著しく遅い分解は利点を提供し、適切な長さの貯蔵寿命を有する商業製品を開発することを可能にするであろう。
[00056] 20重量%未満の水性内容物を含有する系に関する低い伝導度に関して、それは油性媒体中で分散したW/Oマイクロエマルジョン液滴の形成によるものでありそうに思われた。20重量%より多い水性内容物を含有する系に関する伝導度における急激な増大は多数の相互接続された伝導性チャンネルの存在を意味しており、それは両連続マイクロエマルジョンの特徴である。
[00057] 結論として、我々は我々の新規の系がカロテノイド類のそのマイクロエマルジョン中での高められた可溶化ならびにそのカロテノイド類の速い環境反応性(酸化)からの保護を提供することができることを示した。この新規のマイクロエマルジョン技術は、製品開発の試みに関する大きく高められた柔軟性、両連続相の異なる有効成分の装填を調整する能力、および両連続相の他の成分に関する制御された許容性も提供する。
実施例2
[00058] この実施例の目的は、生理活性カロテノイド類の送達のための液相として優秀な可溶化能力を有するポリエトキシ化ソルビタンエステル(Tween80)、水、リモネン、エタノールおよびグリセロールの両連続食品グレードマイクロエマルジョンを含有する固体ナノ分散自己乳化送達系を調製すること、ならびにその固体形態からのカロテノイド類の高められた生物学的利用能を評価することであった。産卵鶏試験において実施された生物学的利用能試験は、結果としてそのナノ分散配合物からのトリ血清におけるカプサンチン吸収における2.9倍(191%)の増大およびトリの卵におけるカプサンチン沈着における20%の増大をもたらした。さらに、現行の配合物と比較したそのナノ分散した配合物で処理されたトリからの卵のYCFスコアは、それぞれ11.25および8.75の平均スコアを示した。これらの結果は、内因性マイクロエマルジョンの使用およびサイズ低減作用による生体内でのトランス−カプサンチンの可溶化および吸収の促進におけるその新規固体配合物の優秀な能力を明確に実証した。
材料および方法
[00059] 材料。Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、リモネン、エタノール、グリセロール、小麦ポラード(pollard)およびシリカは食品グレードのものであった。分析プロトコルにおいて用いられた全ての化学物質および試薬は分析試薬グレードのものであった。水は再蒸留された。パプリカ抽出物からの鹸化赤色カロテノイド類の安定化された源およびKem GLO 10もKemin Animal Nutrition and Health(Asia−Pac)製造から得られた。血清および卵黄中のトランス−カプサンチンの決定は、標準的な方法を用いて行われた。
[00060] ナノ分散したKem GLO 10液体前駆体の調製。両連続カロテノイドマイクロエマルジョンの組成は実施例1において確立され、それはtween 80:エタノール/リモネン:グリセロール/H2Oからなる。リモネン対エタノールおよびグリセロール対水の重量比はそれぞれ1:2および1:3で固定された。用いられた油/界面活性剤/水の比率はそれぞれ32.5/32.5/35(重量%)であり、5.4g/kgのトランス−カプサンチンを用いた。その両連続カロテノイドマイクロエマルジョン配合物は実施例1の方法により調製された。簡潔には、カロテノイド(37.2重量%)を油、界面活性剤、および補助界面活性剤のマイクロエマルジョン混合物(15重量%)中に、可溶化を促進するために恒温水槽中で25℃で溶解させた。結果として得られた混合物を、澄んだ溶液が得られるまでボルテックスした。次いでそれを周囲温度で少なくとも2時間平衡化し、濁りまたは相分離の徴候に関して調べた後液滴の大きさおよび光学試験を行った。
[00061] ナノ分散したKem GLO 10 Dryの調製。カロテノイド類の固体形態を調製した。簡潔には、まずシリカおよび小麦ポラード(21.8重量%/26.0重量%)をミキサー中に入れた。次いで52.2重量%の鹸化カロテノイド(37.2重量%)を含有するナノ分散したカロテノイドマイクロエマルジョンをそのミキサー中に、均質な混合物が得られるまで室温で15分間絶えず撹拌しながら添加した。結果として得られた粉末をそのミキサーから集め、最終的なトランス−カプサンチン含有量に関して測定した。
[00062] ナノ分散したKem GLO 10液体前駆体の特性付け。試料の粒径分布をHORIBA粒径分析器(LA−950V2)を用いて測定した。その粗い鹸化赤色カロテノイド類の粒径も比較のために決定した。粒径測定を含む長期安定性試験も25℃において1ヶ月間の貯蔵にわたって所与の時間間隔で実施した。形態を観察するため、液体カロテノイド−マイクロエマルジョンを銅の格子により支持された炭素薄膜状に直接沈着させ、四酸化オスミウム(OsO)の1%水溶液で染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)JEOL 1010を100kVで用いて調べた。その粗い鹸化赤色カロテノイドの形態も比較のために決定した。
[00063] 生物学的利用能。産卵鶏試験はGenetic Improvement & Farm Technologies Sdn. Bhd.(マレーシア)において実施された。その試験は、対照および2種類の異なる処理(ナノ分散したKem GLO 10および現行のKem GLO 10)を用いて実施された。表2において列挙された対照食餌組成がこの試験において用いられた。その2種類の配合物は、1kg/1トンの飼料の比率で含まれていた。その2種類の実験処理に関して、飼料中のトランス−カプサンチンの濃度はおおよそ5.4g/トンであった。29週齢のローマンブラウン(Lohamann Brown)雌鶏を用いた。そのトリにその実験食を与え、それらの新しい環境への適用のために1週間与えた。そのトリを、14L;10Dの照明計画の下で、壁のない小屋の内部の2個のタイヤ(tires)の中に配置された個別の針金で床を張った(wire−floored)鳥かごの中に入れた。4個の鳥かごのトリに単一の餌箱から餌を与え、それを1つの実験の複製(replicate)とみなした。それぞれの実験食餌が8つの複製に与えられた(処置あたり32羽のトリ)。飼料および水はその実験食餌全体を通して適宜提供された。毎週10個の卵および血液飼料をそれぞれの食餌群からトランス−カプサンチン分析のために採取した。血漿を血液から分離し、トランス−カプサンチン含有量を定量化した。8人の訓練された観察者のチームに商業的な(DSM)カラーファン(color fan)を利用してその卵を主観的に評価してもらった。データを一元配置ANOVA法により統計学的に分析した。
結果
[00064] ナノ分散したKem GLO 10液体前駆体の特性付け。最適化されたナノ分散したKem GLO 10マイクロエマルジョンの三元相を構成する脂質賦形剤の組成を表1において示す。噴霧乾燥された固体形態の粒子はシリカおよび小麦ふすまの存在のために優れた流動性特性を有しており、それは固体剤形に関する適切なキャリヤーとみなされている。調製された固体形態の最終的なトランス−カプサンチン含有量は、5.4g/kgのトランス−カプサンチンであった。
[00065] 図8は、ナノ分散したKem GLO 10液体前駆体および粗いカロテノイド(Kem GLO 10液体前駆体)に関する粒径分析の対応する結果を示す。マイクロエマルジョン中のカロテノイドの粒径は、粗いカロテノイドに関する約20μmの粒径とは対照的に、平均約0.5μmで維持されている。
[00066] 図9は、室温(25℃)において0、7、14、21および28日目におけるナノ分散したKem GLO 10液体前駆体の粒径分布を示す。1ヶ月の試験の間にその試料に関する粒径分布において有意な違いはなかった。長期安定性の結果は、マイクロエマルジョンで保護されたカロテノイドはより安定であり、(図8(b)において示されるように)凝集することなく均一に分散していることを実証した。この試験において用いられた界面活性剤および油相は集塊に対するコロイド的安定性を確立する原因となる保護的コロイドの形成に影響を及ぼすだけでなく、胃の中で形成されたマイクロエマルジョンが両連続性網状構造へと容易に再構成されるのも助けると仮定された。これは胆汁のリン脂質の非存在下においてさえも起こり、それにより胃腸通過の間のカロテノイド類の取り込みを促進していた可能性がある。
[00067] 生物学的利用能。生物学的利用能を、ナノ分散したNano Kem GLO 10の経口投与後に産卵鶏のトリの血漿および卵黄中のトランス−カプサンチンを分析して現行のKem GLO 10および対照処置と比較することにより試験した。その2種類の配合物からの血漿および卵黄中のトランス−カプサンチンの濃度−時間プロフィールを図10および11において示す。図10において示されるように、粒径は相対的生物学的利用能に対して著しい影響を及ぼした。ナノ分散したNano Kem GLO 10で処置されたトリから収集された血漿は0.125ppmのカプサンチンの平均値を示し、一方で対照の食餌および現行のKem GLO 10で処置されたトリから採取された試料はそれぞれ0.0028ppmおよび0.043ppmの平均値を示した。これらの結果から、ナノ分散したKem GLO 10からのカプサンチン吸収においてKem GLO 10と比較して2.9倍(191%)の増大があることを理解することができる。図11から、対照処置および現行のKem GLO 10から収集された卵は卵黄においてそれぞれ0.034ppmおよび0.54ppmのカプサンチンを示した。これらの結果から、ナノ分散したKem GLO 10からのカプサンチン沈着において、現行のKem GLO 10と比較して20%の増大があったことを理解することができる。ナノ分散したKem GLO 10からの卵におけるカプサンチン沈着において、対照の食餌で処置されたトリから収集された卵と比較して約19倍の増大があったことを特筆することも重要である。卵のYCFスコアに関して、図12において示されるように、ナノ分散したKem GLO 10で処置されたトリからの卵は11.25の平均スコアを示し、一方で現行のKem GLO 10で処置されたトリからの試料は8.75の平均スコアを示した。ナノ分散したKem GLO 10の色スコアにおいて、現行のKem GLO 10と比較して28.5%の向上があった。ナノ分散したKem GLO 10に起因する卵における卵黄の色において、対照の食餌で処置されたトリから収集された卵と比較して約1.5倍の増大があったことを特筆することも重要である。
論考
[00068] ナノ分散したKem GLO 10に関して得られた血漿および卵黄におけるトランス−カプサンチンの濃度−時間プロフィールから、現行のKem GLO 10および対照の食餌を用いた処置に関して得られた結果と比較して違いが見られる。これは、生体内におけるトランス−カプサンチンの可溶化および吸収の促進における内因性のマイクロエマルジョンおよびサイズ低減作用の関与を実証している。トランス−カプサンチンはルテイン同様に水溶性の乏しい親油性化合物であり、同じ脂質吸収の経路を辿ることが報告されている14,15。その吸収の厳密な機序はまだ完全に理解されていないが、トランス−カプサンチンは腸細胞を通して単純拡散または受容体に媒介される輸送により吸収されると考えられてきた。さらに、トランス−カプサンチンは胃において乳化されて小さい脂質滴になり、さらに胆汁酸塩および胆汁のリン脂質の作用により混合されたミセル中に組み込まれ、その後混合されたミセルが腸細胞により取り込まれる。従って、トリの血漿および卵黄において比較的低い濃度のトランス−カプサンチンが見られることは、前記の吸収機序の関与によるものである可能性があった。さらに、界面活性剤の使用は細胞膜の撹乱(経細胞浸透)および/または細胞間の密着結合の改変(傍細胞浸透)により有効成分の浸透性を助けることが知られている16−18
[00069] ナノ分散したKem GLO 10において、Tween80が乳化剤として用いられ、我々は胃腸管においてトランス−カプサンチンを可溶化されたマイクロエマルジョンの形態で与えることが腸細胞によるトランス−カプサンチンの取り込みを増進する可能性があると仮定した。経口投与後、そのようなトランス−カプサンチンは、その両連続マイクロエマルジョンの前濃縮物(pre−concentrate)が胃中の胃液と接触した際に自己乳化した後完全に可溶化された状態で維持されると考えられるため、さらなる溶解は必要とされない。トランス−カプサンチンを含有する既に小さく均一な両連続性アレイは腸液中の胆汁/レシチンミセルによりさらに乳化され、酵素により消化され、さらに小さい脂質粒子に変換される可能性がある。この消化のプロセスは、腸上皮への移行のためにトランス−カプサンチンの表面積を大きく増大させるであろう。これはナノ分散したKem GLO 10処置からの卵に関するYCFスコアの著しい向上を説明することができ、生物学的利用能における検出された違いが高度に有意であることを改めて示している。
結論
[00070] 結論として、両連続マイクロエマルジョンを含有するナノ分散したKem GLO 10 dryがトランス−カプサンチンの送達のためにうまく調製された。液滴の大きさの分析は、粗いカロテノイドの約20μmと比較した約0.5μmの液体前駆体の特徴的な大きさを明らかにした。産卵鶏試験において実施された生物学的利用能試験は、結果としてナノ分散した配合物からのトリ血漿におけるトランス−カプサンチンの吸収における2.9倍(191%)の増大およびトリの卵におけるトランス−カプサンチンの沈着における20%の増大をもたらした。さらに、ナノ分散した配合物により処置されたトリからの卵のYCFスコアは、現行の配合物と比較して、それぞれ11.25および8.75の平均スコアを示した。これらの結果は、生体内でのトランス−カプサンチンの可溶化および吸収の促進における内因性マイクロエマルジョンおよびサイズ低減作用の関与によるその新規の固体配合物の優秀な能力を明確に実証した。
実施例3
材料および方法
[00071] 材料。Tween80、リモネン、エタノール、グリセロール、小麦ふすまおよびシリカは食品グレードのものであった。分析プロトコルにおいて用いられた全ての化学物質および試薬は分析試薬グレードのものであり、再蒸留水が用いられた。パプリカ抽出物からの鹸化赤色カロテノイド類の安定化された源およびKem GLO 10は、Kemin Animal Health And Nutrition(Asia−Pac)製造から得られた。
[00072] ナノ分散したKem GLO 10 Dryの調製。カロテノイド類の固体形態を調製した。簡潔には、まずシリカおよび小麦ポラード(21.8重量%/26.0重量%)をミキサー中に入れた。次いで52.2重量%の鹸化カロテノイド(37.2重量%)を含有するナノ分散したカロテノイドマイクロエマルジョン(実施例2の通り)をそのミキサー中に、均質な混合物が得られるまで室温で15分間絶えず撹拌しながら添加した。分析された製造された試料は、12.47g/kgのカロテノイド類を含有していた。
[00073] 処理された飼料粉(feed meal)の調製。家禽産卵鶏マッシュ(mash)飼料(実施例2の通り)は17%のタンパク質、3%の脂肪および6.0%より多くない粗繊維を含有していた。処理された飼料は、産卵鶏試験施設(Genetic Improvement & Farm Technologies Sdn. Bhd.,マレーシア)により、0.5kg/トンまたは1.0kg/トンのナノ分散したKem GLO 10およびKem GLO 10のどちらかを低カロテノイド飼料に添加することにより調製された。
[00074] 飼料粉の貯蔵。処理された飼料粉は産卵鶏試験施設によりKemin Animal Health And Nutrition(Asia−Pac)に送られ、開いた袋の中で25℃において3ヶ月間保管された。色素含有量がAOAC法970.64に従って決定された。多数の分析がそれぞれの試料に対して実施され、結果として得られた値が平均された。
結果
[00075] Kem GLO 10の3ヶ月の貯蔵の間の総カロテノイド類の喪失は、ナノ分散したKem GLO 10により処理された飼料粉において観察されたより低い22.25%の喪失と比較して、平均して44.75%であった。表3において示されるように、Kem GLO 10は3ヶ月の貯蔵期間の間に最初のカロテノイド類の半分を失い、一方で(マイクロエマルジョン技術を用いて作られた)ナノ分散したKem GLO 10中でのカロテノイド類の安定性ははるかに向上しており、類似の用量において最初のカロテノイド類の3分の1しか失わなかった。また、そのカロテノイド類の相対的安定性も、より多い量のカロテノイド類をその飼料に(1.0kg/トンで)添加した際に累進的に(progressively)減少した。Kem GLO 10およびナノ分散したKem GLO 10に関するカロテノイド類の保持において、それぞれより低い0.5kg/トンの添加と比較して、さらに10%および20%の低下があった。我々は、ナノ分散したKem GLO 10により処理された飼料からのカロテノイド類の喪失の程度はKem GLO 10により処理された飼料からのカロテノイド類の喪失の程度と比較してより緩やかであることも観察し、これはそれが異なる調製の方法およびよりよい保護の有効性によるものである可能性があることを示唆している(表4)。
論考
[00076] 前に言及したように、いくつかの要因がカロテノイド類の飼料に添加された際の相対的安定性に影響を及ぼしている可能性がある。カロテノイド類が封入された形態である場合、それらは光、酸素および/または熱により誘発され得る早すぎる分解から十分に保護されることができることが知られている。ナノ分散したKem GLO 10は、おそらく可溶化されてマイクロエマルジョン系の内部に含有された際のカロテノイドがそのマイクロエマルジョンマトリックス内でのその色素の分子構造のためによりよく保護されているため、Kem GLO 10と比較して向上したカロテノイド保持を有していた。そのマイクロエマルジョンは、その色素および酸化触媒(例えば酸素)の間に物理的防壁を提供し、その光散乱特性もそれらの内部に捕えられた色素に達する光の強度を低減するのを助けることができると仮定されている。加えて、我々はマイクロエマルジョンを用いて達成されたそのカロテノイド色素のより小さい粒径はそれがキャリヤー顆粒の内部の多孔性流路の中に容易かつ均質に分布することを可能にし、それがさらに表面上の酸素により引き起こされる喪失を低減するのを助け、製品の安定性を高めるであろうことも予測している。
実施例4
[00077] 様々な親水性および親油性物質のナノ分散物を、表5〜9において示した成分を用いて作った。
[00078] 親油性および親水性物質の両方を本発明の単一のマイクロエマルジョン中で組み合わせることができる特定の適用は、2012年3月29日に出願された米国特許出願一連番号13/433,526において記述されているような生物組織のための染料の調製においてであり、それをこの参照により本明細書にそのまま援用する。その主題出願(subject application)はルテインまたはゼアキサンチン(その両方が親油性である)をしばしば親水性である伝統的な染料、例えばトリパンブルーと共に含有する染料を記述している。
実施例5
[00079] 本発明のマイクロエマルジョンは、高められた流動性を有する粉末を形成するために用いることができる。これは、表10において示されるように、その物質の山(pile)の安息角への作用により示される。
[00080] 安息角は典型的には流動性の製品に関して40未満であり、安息角がより小さいほどその製品はより流動性である。そのデータは、本発明のマイクロエマルジョンが高められた流動性を有する粉末を形成することを示している。
[00081] 前記の記述および図面は、本発明の説明的な態様を含む。前記の態様および本明細書で記述された方法は、当業者の能力、経験、および好みに基づいて変動してよい。単にその方法の工程を特定の順序で列挙することは、その方法の工程の順序への限定を一切構成しない。前記の記述および図面は単に本発明を説明および図説するものであり、本発明は、特許請求の範囲がそのように限定されている場合を除き、それに限定されない。それらより前の開示を有する当業者は、本発明の範囲から逸脱することなくそれにおける改変および変更を行うことができるであろう。
参考文献

Claims (11)

  1. 動物に投与するための両連続マイクロエマルジョンのナノ構造中にカロテノイドを封入する方法であって、
    (a)乳化剤、溶媒、および共乳化剤を組み合わせ、該組み合わせを撹拌する、またはかき混ぜることにより、両連続またはWinsorタイプIIIマイクロエマルジョンを形成すること、
    (b)カロテノイドを該マイクロエマルジョンに添加し、得られた組成物を、少なくとも一カ月間、放出に対して安定である封入されたカロテノイドを調製するために、均質になるまで混合すること、及び
    (c)工程(b)のマイクロエマルジョンを乾燥キャリヤーとブレンドして自由に流動する粉末を得ること、
    を含む方法。
  2. 動物に投与するためのカロテノイドを封入する方法であって、
    (a)カロテノイドを共乳化剤と組み合わせることにより混合すること、
    (b)乳化剤、溶媒、および共乳化剤を添加して両連続またはWinsorタイプIIIマイクロエマルジョンを形成すること、及び
    (c)工程(b)のマイクロエマルジョンをキャリヤーとブレンドして自由に流動する粉末を得ること、
    を含む、方法。
  3. 乳化剤がポリソルベート80であり、溶媒がグリセロールおよびリモネンからなる群から選択され、共乳化剤がエタノールである、請求項1に記載の方法。
  4. さらに工程(a)または工程(b)のどちらかまたは両方において添加された水を含む、請求項1に記載の方法。
  5. カロテノイドがルテイン、カプサンチン、ゼアキサンチン及びカロテンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  6. カロテノイドの、自由に流動する粉末としての動物飼料及び食品組成物中への封入および安定性を高めるための両連続マイクロエマルジョンであって、以下:
    (a)カロテノイド、
    (b)両親媒性または親油性油溶性物質を含む油相、
    (c)両親媒性または親水性水溶性物質を含む水相、及び
    (d)以下を含む食品グレードの乳化剤系、
    (i)イオン性もしくは非イオン性もしくは双性イオン性乳化剤、及び
    (ii)共乳化剤;
    を含み、且つ
    (e)前記の油相が1μm未満の平均直径を有する粒子として前記の水相内に分散しており;または
    (f)前記の水相が1μm未満の平均直径を有する粒子もしくは連続相として前記の油相内に分散している、前記両連続マイクロエマルジョン。
  7. 請求項6に記載の両連続マイクロエマルジョンであって、水相が全体の10%から90%までを構成し、残りの部分が油相および食品グレードの乳化剤系であり、または油相が全体の10%から90%までを構成し、残りの部分が水相および食品グレードの乳化剤系である、前記両連続マイクロエマルジョン。
  8. 水相または油相が着色剤、ビタミン類、果汁、抗酸化剤、天然構成要素の抽出物、薬物、単純フェノール類、ポリフェノール類、バイオフラボノイド類、乳製品、タンパク質(酵素が含まれる)、ペプチド、アミノ酸、塩類、糖類、甘味料、香味、香味前駆体、栄養素、鉱質、酸および調味料、およびそれらの混合物から選択される溶解した物質を含有する、請求項6に記載の両連続マイクロエマルジョン。
  9. 乳化剤が脂肪酸のグリセロールエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、エトキシ化モノグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、レシチン、脂肪酸のグリセロールエステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のスクロースエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の両連続マイクロエマルジョン。
  10. 共乳化剤がエタノール、プロパノール、プロピレングリコール、グリセロールおよびそれらの混合物からなる群から選択される水と混和性のアルコール性乳化剤である、請求項6に記載の両連続マイクロエマルジョン。
  11. 油がリモネン、植物油、動物油、ポリオールポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の両連続マイクロエマルジョン。
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