JP5929222B2 - 認証用微細構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、認証用微細構造体およびその製造方法に関する。特に、インクや塗料等に混合して印刷可能な認証用微細構造体およびその製造方法に関する。
古来より様々な分野で模倣品や偽造品が製造され、消費者や真正品の製造、販売者に多大な損害を与えてきた。模倣品や偽造品を製造する技術水準が年々高くなり、それに対抗するように、偽造防止技術や真正品を認証するための方法も高度なものとなっている。例えば、紙幣をはじめとする印刷物の場合、複雑な印刷パターンやインクの配合のみならず、特定の波長の光により励起されて蛍光を発する特殊なインクを用いた印刷技術も利用されている。さらに、ホログラムを用いた偽造防止も広く行われ、複屈折パターンを用いてセキュリティを向上させる方法も提案されている(特許文献1)。
また、表面に任意の模様を有する微小なフレークをインクと混合して印刷する技術が特許文献2に開示されている。このような表面に任意の模様を有する微小なフレークはタガント(taggant)と呼ばれ、肉眼では観察されない大きさであるため、偽造しにくい利点がある。同様に、特許文献3には、セグメント化された粒子を用いたナノバーコードによる識別方法が開示されている。
特開2011−203636号公報 特開2008−230228号公報 特表2003−529128号公報
特許文献2や3に開示された方法は微小な構造体を用いるため、その微小な構造体までを偽造するのは困難である。しかし、このような微小な構造体であっても一定の構造を有するため、究極的には偽造することが可能である。また、これらの微小な構造体は製造工程が複雑であり、特許文献3のナノバーコードは、バーコード状の構造を形成するために複数種類の材料を組合せる必要がある。このように、従来の方法では、究極的には偽造することが可能であり、セキュリティを向上させるためには、複雑な製造工程を要するため、その製造コストが高かった。
本発明は、これらの問題を解決するものであって、製造コストを抑制し、偽造することができない認証用微細構造体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態によると、第1の方向に拡張した幅を有する拡張部が、前記第1の方向と異なる第2の方向に複数配置され、第1の拡張部と前記第1の拡張部に隣接する第2の拡張部との第1の距離と、前記第2の拡張部と前記第2の拡張部に隣接する第3の拡張部との第2の距離とが異なる認証用微細構造体が提供される。
本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体は、複数配置された拡張部が、第1の拡張部と隣接する第2の拡張部との間の距離と、第2の拡張部と隣接する第3の拡張部との間の距離とが異なるため、その三次元形状の特徴から、他の認証用微細構造体と区別することができる。
前記認証用微細構造体は、前記第3の拡張部と前記第3の拡張部に隣接する第4の拡張部との第3の距離を有し、前記第1の距離、前記第2の距離、前記第3の距離の順に距離が短くてもよい。
本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体は、隣接する拡張部の間の3つ以上の距離を有する場合に、第1の距離、第2の距離、第3の距離の順に短くなり、その三次元形状の特徴から、他の認証用微細構造体と区別することができる。
また、本発明の一実施形態によると、基板を準備し、前記基板の第1の面に第1の膜を形成し、前記基板の第1の面とは反対側に位置する第2の面に、所定形状のパターンを有する第2の膜を形成し、前記第2の膜を介して前記基板を厚み方向にエッチングして、前記基板に凹部を形成し、前記凹部の側面に第3の膜を形成し、前記基板を厚み方向にエッチングして、前記凹部を前記基板の厚み方向に拡張し、前記凹部が前記第1の面まで拡張された後に、前記第1の膜を除去する認証用微細構造体の製造方法が提供される。
本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体の製造方法によると、基板の深堀りエッチングにより、認証用微細構造体を形成することができる。また、エッチングストッパである第1の膜を除去するだけで、基板のダイシングを行うことなく、基板から認証用微細構造体を分離することができる。また、従来のタガントのような複雑なパターンを形成するマスクを使用する必要はなく、製造コストを抑制することができる。
前記認証用微細構造体の製造方法において、前記エッチングと前記第3の膜を形成とを繰り返して、前記凹部の側面に、前記凹部の中心方向に対して凸部を形成してもよい。
本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体の製造方法によると、エッチングと保護膜である第3の膜の形成とを繰り返して凹部の中心方向の凸部を形成するため、製造された認証用微細構造体には複数の拡張部が形成されるとともに、隣接する拡張部の間の3つ以上の距離を有する場合に、第1の距離、第2の距離、第3の距離の順に短くなり、その三次元形状の特徴から、他の認証用微細構造体と区別可能な認証用微細構造体を製造することができる。
また、本発明の一実施形態によると、少なくとも一つの面に波状の3次元構造を有し、前記波状の3次元構造が示す波の周期が不均一である認証用微細構造体が提供される。
本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体は、少なくとも一つの面に波状の3次元構造を有し、波状の3次元構造が示す波の周期が不均一であるため、その三次元形状の特徴から、他の認証用微細構造体と区別することができる。
また、本発明の一実施形態によると、基体と、前記基体上に設けられ、第1の方向に拡張した幅を有する拡張部が、前記第1の方向と異なる第2の方向に複数配置され、第1の拡張部と前記第1の拡張部に隣接する第2の拡張部との第1の距離と、前記第2の拡張部と前記第2の拡張部に隣接する第3の拡張部との第2の距離とが異なる認証用微細構造体と、を有する物品が提供される。
本発明の一実施形態に係る物品は、第1の方向に拡張した幅を有する拡張部が、前記第1の方向と異なる第2の方向に複数配置され、第1の拡張部と前記第1の拡張部に隣接する第2の拡張部との第1の距離と、前記第2の拡張部と前記第2の拡張部に隣接する第3の拡張部との第2の距離とが異なる認証用微細構造体と、インクまたは塗料と、を一部に塗布することにより、認証用微細構造体の三次元形状の特徴から、他の物品と区別したり、真正品であることを確認したりすることができる。
本発明によれば、製造コストを抑制し、偽造することができない認証用微細構造体およびその製造方法を提供することできる。
本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体100の模式図である。 本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体200および300の模式図である。 本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体100の製造プロセスを示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体100の製造プロセスを示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体100の製造プロセスを示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る認証デバイス1000の模式図である。 本発明の一実施例に係る基板の断面図の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
以下、図面を参照して本発明に係る認証用微細構造体およびその製造方法について説明する。但し、本発明の認証用微細構造体およびその製造方法は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
上述したタガントは、表面に任意の模様を有する微小なフレークであり、模様を複雑化することにより偽造を防止している。しかし、模様を複雑化しても、一般に広く用いられるリソグラフィ技術を利用する以上は、マスクパターンを合わせ込むことで、究極的には偽造することが可能である。そこで、本発明者らは、技術的に制御可能な方法を用いる以上は、偽造することのできない認証用微細構造体を製造するのは困難であると考えた。
一方、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の分野において多用される深堀りエッチング(Deep RIE)では、基板に貫通孔を形成するときに、スキャロップと呼ばれる意図しない波状の構造が穴の側壁に形成される。これは、深堀りエッチングにおいては、エッチングと、保護膜形成とを繰り返すBoschプロセスを用いるためである。一般にMEMS分野では、このスキャロップの形成を抑制して、平坦な側壁を有する貫通孔を形成する努力をしている。本発明者らは、形成されたスキャロップの形状からその製造条件を解読することが困難であり、厳密な製造条件の管理を行なってもスキャロップの形状を制御するのが困難であることから、あえてスキャロップを形成することで、制御できない構造を有する認証用微細構造体を形成する可能性について検討した。
図1は、本発明の一実施形態に係る認証用微細構造体100の模式図である。認証用微細構造体100は、スキャロップを有する柱状の構造体である。認証用微細構造体100は、第1の方向である認証用微細構造体100の幅方向に拡張した拡張部が、第1の方向と異なる第2の方向、すなわち、認証用微細構造体100の長さ方向に複数配置され構造を有する。図1(a)に拡張部110を示す。
また、図1(b)に示すように、認証用微細構造体100は、少なくとも一つの面に波状の3次元構造を有し、波状の3次元構造が示す波の周期が不均一である。認証用微細構造体100は、第1の拡張部111と第1の拡張部111に隣接する第2の拡張部112との第1の距離121と、第2の拡張部112と第2の拡張部112に隣接する第3の拡張部113との第2の距離122とを比較すると、第1の距離121に対して第2の距離122は短くなる。また、同様に、第3の拡張部113と第3の拡張部113に隣接する第4の拡張部114との第3の距離123と、第4の拡張部114と第4の拡張部114に隣接する第5の拡張部115との第4の距離124とを見ると、順に距離が短くなっている。一端側(エッチング開始側)と他端側(エッチング停止側)における拡張部同士を比較するとその差は顕著である。これは、認証用微細構造体100の製造工程において、Boschプロセスを用いて基板を深堀りエッチングするためである。このプロセスでは、マスクのパターンが形成された基板の表面側よりも、エッチングストッパが形成された基板の裏面側の方が、エッチングレートが低下するためである。その詳細は後述する。なお、本実施形態に係る認証用微細構造体100は、拡張部間の距離が等しい場合を排除するものではない。
また、認証用微細構造体100においては、スキャロップの振幅130(側壁の波の深さ、以下、PV値という)が、基板の側壁の形成する保護膜の膜厚に依存した構造となる。このため、PV値も認証用微細構造体100を特徴付けるパラメータとなりうる。さらに、認証用微細構造体100の拡張部110の幅(直径)140は、それぞれ異なってもよく、例えば、拡張部111の幅141、拡張部112の幅142、拡張部113の幅143、拡張部114の幅144、拡張部115の幅145の順に徐々に狭くなっていてもよい。
本実施形態に係る認証用微細構造体100は、例えば、200μm以上750μm以下の長さを有し、5μm以上100μm以下の幅を有する。認証用微細構造体100は、インクや塗料などに混合して用いる場合には、長さ、幅ともに識別可能な範囲で小さいほうが好ましい。本実施形態に係る認証用微細構造体100は、長さに対する幅の比、幅/長さが100以下となることが好ましい。認証用微細構造体100は、長さを200μm以下とするためには200μm以下の膜厚の基板を使用することとなり、基板の反り返りから加工が困難となり、長さが750μm以上の場合には、加工時間が長くなり製造コストが上昇するとともに、インクや塗料と混合しにくく、沈殿して分離してしまう虞がある。また、認証用微細構造体100は、幅を5μm以下とするのは加工が困難であり、幅が100μm以上の場合には、インクや塗料と混合しにくく、沈殿して分離してしまう虞がある。
上述したように、深堀りエッチングにおいて、スキャロップの形状は制御するのが困難である。したがって、認証用微細構造体100は、同一の基板に形成されたものでは、同様の三次元形状の特徴を備えるが、基板や製造ロットが異なる場合には、製造ロット毎に認証用微細構造体100の三次元形状の特徴が異なる。したがって、本実施形態に係る認証用微細構造体100は、製造ロット毎に異なる三次元形状の特徴を備えるため、他の認証用微細構造体と区別することができ、また、偽造することはできない。
本実施形態において、認証用微細構造体100は、無機材料により形成される。認証用微細構造体100に適用可能は無機材料としては、深堀りエッチング加工が可能な材料であれば、公知の無機材料を利用可能である。このような無機材料としては、例えば、シリコン(Si)、ガラス(SiO2)、サファイア(Al2O3)等が挙げられる。
認証用微細構造体100は、無機材料で製造することにより、インクや塗料などの有機溶媒を含有する溶液に混ぜても、溶けることなく塗布することができる。また、耐熱性にも優れ、光エネルギーに対しても長期に安定である。
なお、図1において、認証用微細構造体100は、円形の断面形状を有する構造体として示したが、本発明に係る認証用微細構造体100はこれに限定されるものではなく、断面形状は、図2に示す正方形や、矩形形状でもよく、また、図示しないが三角形、多角形、星型、楕円、不定形等、如何なる形状であってもよい。なお、本実施形態に係る認証用微細構造体は、拡張部間の距離がエッチング方向に向かって順に距離が短くなるものも、等しいものもあってもよい。
(認証用微細構造体の製造方法)
上述した認証用微細構造体100の製造方法について、以下に説明する。図3〜図5は、本実施形態に係る認証用微細構造体100の製造プロセスを示す模式図である。認証用微細構造体100を製造するための基板1を準備する。基板1は、上述した認証用微細構造体100に利用可能な無機材料の基板である。基板1は、必要に応じて研磨やエッチング等により厚みを薄くする前処理を行なってもよい。基板1の一方の面(第1の面)に第1の膜として、エッチングストッパ層3を形成する(図3(a))。エッチングストッパ層3は、基板1に対するエッチングガス(エッチャント)、例えば、SFやCF等によりエッチングされない金属、例えば、アルミニウム(Al)やクロム(Cr)等の公知の材料を用いることができる。また、エッチングストッパ層3の形成方法は、真空成膜や箔添付等、公知の方法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。なお、図示を省略しているが、エッチングストッパ層3上に支持基板を配して、基板1を取り扱ってもよい。
基板1のエッチングストッパ層3とは反対側に位置する第2の面に、レジスト材をスピンコートや吹付けにより塗布してプリベークし、レジスト層5を形成する(図3(b))。レジスト層5には、深堀りエッチングに用いる公知のレジスト材を用いることができ、基板1のエッチャントごとに任意に選択可能である。
レジスト層5に対して、所定形状のパターンを有するマスクを用いて露光する。露光されたレジスト層5に対して現像およびリンス処理を施し、ポストベークすることにより、基板1の第2の面にマスク7(第2の膜)を形成する(図3(c))。ここで形成するマスク7は、上述したように、認証用微細構造体100が所望の断面形状を形成可能な任意のパターンである。
本実施形態に係る認証用微細構造体100のスキャロップは、以下の工程により形成される。マスク7を介して基板1を厚み方向にエッチングして、基板1に凹部11を形成する(図4(a))。ここで、上述したように、深堀りエッチングに用いるエッチングガスは、基板1を構成する無機材料の種類により任意に選択可能である。基板1がシリコンである場合にはフッ素系ガスを用いることができ、例えば、SFなどを用いるとよい。このとき、基板1を厚み方向へのエッチングを促進するため、引き込み電圧を高くすることが好ましい。
拡張部110間のくびれ部の形成は、SFなどを用いて、引き込み電圧及び真空度を低くして(圧力を高くして)、基板1の面方向(横方向)ヘのエッチングを促進する(図4(b))。このときのエッチングの時間を調整することにより、拡張部110間のくびれ部の距離を任意に変更することが可能である。
凹部11が形成された基板1の凹部11の側面及び底面に第3の膜として保護膜9を形成する(図4(c))。保護膜9は、凹部11の側面ヘのエッチングの進行を抑制するための膜であり、任意に選択可能である。保護膜9を形成するガスとしては、例えば、Cなどを用いるとよい。このとき、凹部11の側面に保護膜9を成膜するために、引き込み電圧及び真空度を低くする。例えば、引き込み電圧は0Vにする。エッチャントは基板1の厚み方向に指向性をもつため、凹部11の側面に比べて底面の保護膜が選択的に除去されることで、基板1の厚み方向にエッチングが進行する。例えば、エッチング時間を長くすると、スキャロップの幅を大きくすることができる。
保護膜9を凹部11に形成した基板1を厚み方向にエッチングして、凹部11を基板1の厚み方向に拡張する(図5(a))。このとき、例えば、SFなどを用いて、基板1を厚み方向へのエッチングを促進するため、引き込み電圧を高くすることが好ましい。その後、上述のように、引き込み電圧及び真空度を低くして、基板1の面方向(横方向)ヘのエッチングを促進することにより、拡張部110間のくびれ部を形成する(図5(b))。このときのエッチングの時間を調整することにより、拡張部110間のくびれ部の距離を任意に変更することが可能である。
さらに、基板1の凹部11の側面に保護膜9を形成して、基板1を厚み方向にエッチングすることを繰り返し、凹部11がエッチングストッパ層3まで凹部11を拡張し、貫通孔を形成する。D−RIEの条件は、プロセスを通じて一定であってもよいし、より複雑なスキャロップ形状を作成する目的で加工部位ごとに変更してもよい。
貫通孔が形成された基板1のマスク7とエッチングストッパ層3を除去することにより、認証用微細構造体100を製造することができる。マスク7の除去は、エッチングストッパ層3の除去前後の何れのタイミングであってもよい。認証用微細構造体100は、ウェットの環境下で分離するとよい。ウェットエッチングにより認証用微細構造体100を分離すると、エッチングストッパ層3と保護膜9とのエッチング比が高いため、保護膜9へのエッチングによるダメージが少ない状態でエッチングストッパ層3を除去することが可能であり、また、その後の認証用微細構造体100の洗浄工程及び回収が容易である。
このように、基板1の凹部11の側面に保護膜9を形成して、基板1を厚み方向にエッチングすることを繰り返すことにより、凹部11の側面に、凹部11の中心方向に対して凸部を形成して、認証用微細構造体100の拡張部110を形成することができる。
本実施形態に係る製造プロセスにおいては、エッチャントの供給量などの要因によって、マスク7が形成された基板1の表面側よりも、エッチングストッパ3が形成された基板1の裏面側の方が、エッチングレートが低下する。このため、製造された認証用微細構造体100においては、形成されたスキャロップの間隔がエッチングストッパ3側ほど短くなっている。一方で、同じエッチングプロセスの条件を適用しても、エッチングチャンバーの状態や、マスクや基板といった種々の条件により認証用微細構造体100に形成されるスキャロップの形状はロット毎に異なるため、制御することはできない。また、スキャロップの形状からエッチングプロセスの条件を解読することは困難である。したがって、本実施形態に係る認証用微細構造体100は、偽造することができない認証用微細構造体となる。
また、認証用微細構造体100には、更なるエッチング加工を施してもよい。付加的なエッチングは、ウェットエッチングが好ましく、等方性エッチングまたは結晶異方性エッチングを行うことができる。付加的なエッチングは、認証用微細構造体100の形状の微調整を行うものであって、長時間のエッチングは、認証用微細構造体100のスキャロップの特徴を損なうため好ましくない。したがって、本実施形態において、付加的なエッチングを行う場合には、認証用微細構造体100のスキャロップの特徴を保持できる時間の範囲で行う。付加的なエッチングに用いるエッチャントは、認証用微細構造体100の材質に応じて、公知のものを用いることができる。
上述した製造方法は、基板を深堀りエッチングするだけで、偽造することができない認証用微細構造体100を製造可能であり、複雑な表面パターン形成を必要とする従来のタガントのような認証用微細構造体よりも低コストで製造することが可能であり、認証用微細構造体100を幅広い分野で利用することを可能とする。また、本実施形態に係る認証用微細構造体100の製造方法においては、エッチングとデポジションの時間比、エッチャントの組成、ガス流量等の製造プロセスパラメータを変更することにより、無数の組合せで実施可能であり、従って、無数の形状の特徴を有する認証用微細構造体100を製造することができる。
(認証用微細構造体を用いた認証方法)
以下に、上述した認証用微細構造体100を用いた認証方法について説明する。図5は、本実施形態に係る認証デバイス1000の模式図である。認証デバイス1000は、認証用微細構造体100をインクや塗料などの印刷用溶液1001と混合して印刷したデバイスである。すなわち、認証デバイス1000は、認証用微細構造体100と、インクまたは塗料と、を一部に塗布した物品である。
認証デバイス1000を適用可能な物品としては、例えば、カード、有価証券、紙幣、認証用部材等がある。カードとしては、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード等、認証を必要とするカードに適用できる。また、認証デバイス1000は、有価証券、紙幣、コンサートや試合観戦のチケット等の認証を必要とする紙媒体に適用できる。認証デバイス1000は、バックや装飾品等の高級ブランドの物品に塗布または印刷することにより、認証用部材として利用することができる。
図5に示したように、認証デバイス1000においては、認証用微細構造体100は任意の向きで配置される。認証デバイス1000中で、認証用微細構造体100は認証デバイス1000の奥行き方向にも任意の向きで配置される。したがって、本実施形態に係る認証デバイス1000を用いて認証を行うためには、特異点を用いて認証用微細構造体100を画像認識させることが好ましい。
本実施形態に係る認証方法は、製造された認証用微細構造体100について、事前に様々の向きでの配置パターンをデータベース化する。認証デバイス1000中に含まれる認証用微細構造体100のパターンと、データベースに格納されたパターンとを比較することにより、認証デバイス1000を認証することができる。上述したように、認証用微細構造体100は、製造ロット後に形状が異なる。したがって、認証用微細構造体100は、ロット毎にデータベース化する。
本実施形態に係る認証方法においては、図1に示した拡張部110の間の距離の関係、PV値や拡張部110の幅を特異点として用いて画像認識させることができる。本実施形態に係る認証方法は、これに限定されるものではなく、認証用微細構造体100の長さ、幅、チルト、テーパー、ノッチ等のパラメータを特異点として用いることもできる。また、複数のロットの認証用微細構造体100を混合して認証デバイス1000を製造してもよい。この場合には、単独ロットの場合よりもセキュリティが向上する。
以上説明したように、本実施形態に係る認証デバイス1000は印刷可能なものであれば、如何なる対象にも配設可能であり、製造コストを抑制し、偽造することができない認証用微細構造体を利用するため、幅広い分野での利用が可能である。
(実施例)
上述した認証用微細構造体100の製造方法の実施例について、以下に説明する。実施例には、厚さ725μmの6インチシリコン基板(100)を研磨して、厚さ300μmの6インチシリコン基板(100)にして用いた。エッチングストッパ層として、シリコン基板の片面にスパッタ成膜法を用いて、膜厚1μmのアルミニウム(Al)膜を形成した。
エッチングストッパ層を形成した面とは反対側のシリコン基板の面に膜厚6μmのレジスト層(クラリアントジャパン製、AZ4930)を形成した。マスクパターンには、直径80μmの円を120μmの間隔で複数配置したパターンと、1辺が50μmの正方形を50μmの間隔で複数配置したパターンの2つのパターンを用い、マスクを形成した。
基板の厚み方向への第1エッチング工程には、SFを700sccmで供給し、引き込み電圧を50W、圧力を4Paとして、1ステップあたり1.5秒エッチングを行った。次に、基板の厚み方向ヘの第2エッチング工程には、SFを700sccmで供給し、引き込み電圧を30W、圧力を5Paとして、1ステップあたり2秒エッチングを行った。第2エッチング工程は、第1エッチング工程よりも圧力を高くし、引き込み電圧を低くすることにより、基板の厚み方向だけではなく、基板の横方向のエッチングが促進される。このように圧力と引き込み電圧を調整して、エッチングの異方性の度合いを制御し、くびれ(PV値)を制御することができる。保護膜の形成工程には、Cを500sccmで供給し、引き込み電圧を0W、圧力を6Paとして、1ステップあたり1.5秒デポジションを行った。これらの工程では、ガスを電離させるコイル電圧を2kWとした。
これらの工程を1000回繰り返したシリコン基板の断面の一部の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図7に示す。シリコン基板の断面において、スキャロップが連続して規制されていることが観察される。このとき、拡張部間の間隔は300nm程度であり、PV値は100nm程度であった。
深堀エッチングが完了した後に、基板をAlエッチング溶液に、常温で1時間浸漬し、エッチングストッパ層を除去した。つづいて、純水に10分間浸漬を10回行い、Alエッチング溶液を除去した。その後、イソプロパノール(IPA)に3分間浸漬を10回行い、乾燥によりイソプロパノールを除去して、認証用微細構造体100を得た。得られた認証用微細構造体100を所望のインクと混合して、認証が必要な製品等にコーティングすることにより、偽造防止等の効果を得ることができる。
1:基板、3:エッチングストッパ層、5:レジスト層、7:マスク、9:保護膜、11:凹部、100:認証用微細構造体、110:拡張部、111:拡張部、112:拡張部、113:拡張部、114:拡張部、115:拡張部、121:第1の距離、122:第2の距離、123:第3の距離、124:第4の距離、130:スキャロップの振幅、1000:認証デバイス、1001:印刷用溶液

Claims (6)

  1. 第1の方向に拡張した幅を有する拡張部が、前記第1の方向と異なる第2の方向に複数配置されたスキャロップの形状を有し
    第1の拡張部と前記第1の拡張部に隣接する第2の拡張部との第1の距離と、前記第2の拡張部と前記第2の拡張部に隣接する第3の拡張部との第2の距離と、前記第3の拡張部と前記第3の拡張部に隣接する第4の拡張部との第3の距離を有し、
    前記第1の距離、前記第2の距離、前記第3の距離の順に距離が短いことを特徴とする認証用微細構造体。
  2. 前記第1の拡張部の幅、前記第2の拡張部の幅、前記第3の拡張部の幅の順に幅が狭いことを特徴とする請求項1に記載の認証用微細構造体。
  3. 基板を準備し、
    前記基板の第1の面に第1の膜を形成し、
    前記基板の第1の面とは反対側に位置する第2の面に、所定形状のパターンを有する第2の膜を形成し、
    前記第2の膜を介して前記基板を厚み方向にエッチングして、前記基板に凹部を形成し、
    前記凹部の側面に第3の膜を形成し、
    前記基板を厚み方向にエッチングして、前記凹部を前記基板の厚み方向に拡張し、
    前記凹部が前記第1の面まで拡張された後に、前記第1の膜を除去し、
    第1の拡張部と前記第1の拡張部に隣接する第2の拡張部との第1の距離と、前記第2の拡張部と前記第2の拡張部に隣接する第3の拡張部との第2の距離と、前記第3の拡張部と前記第3の拡張部に隣接する第4の拡張部との第3の距離を有し、前記第1の距離、前記第2の距離、前記第3の距離の順に距離が短いスキャロップの形状を形成することを特徴とする認証用微細構造体の製造方法。
  4. 前記エッチングと前記第3の膜を形成とを繰り返して、
    前記凹部の側面に、前記凹部の中心方向に対して凸部を形成することを特徴とする請求項3に記載の認証用微細構造体の製造方法。
  5. 少なくとも一つの面に波状のスキャロップの形状を有する3次元構造を有し、前記波状のスキャロップの形状を有する3次元構造が示す波の周期が不均一であることを特徴とする認証用微細構造体。
  6. 基体と、
    前記基体上に設けられ、第1の方向に拡張した幅を有する拡張部が、前記第1の方向と異なる第2の方向に複数配置されたスキャロップの形状を有し、第1の拡張部と前記第1の拡張部に隣接する第2の拡張部との第1の距離と、前記第2の拡張部と前記第2の拡張部に隣接する第3の拡張部との第2の距離と、前記第3の拡張部と前記第3の拡張部に隣接する第4の拡張部との第3の距離を有し、前記第1の距離、前記第2の距離、前記第3の距離の順に距離が短い認証用微細構造体と、を有することを特徴とする物品。
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