(第1実施形態)
以下、図1〜図10を参照して、この発明を指針式の腕時計に適用した第1実施形態について説明する。
この指針式の腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1は、その内部に時計モジュール2が設けられていると共に、3時側に位置する側面に時刻を修正するためのスイッチ部3が設けられた構成になっている。時計モジュール2は、文字板4の上方を運針する指針5、およびこの指針5を駆動する時計ムーブメント6を備えている。
時計ムーブメント6は、図1および図2に示すように、ステッピングモータ7の回転を輪列機構8によって指針軸(図示せず)に伝達して指針5を運針するように構成されている。この場合、指針5は、秒針5a、分針5b、および時針5cを備えている。輪列機構8は、複数の歯車を有し、これら複数の歯車によってステッピングモータ7の回転を順次伝達して指針軸を回転させるように構成されている。
また、この輪列機構8には、指針5の針位置を検出するための針位置検出部(図示せず)が設けられている。この針位置検出部は、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔と、この検出孔を検出する検出素子とを備えている。これにより、針位置検出部は、歯車の検出孔を検出素子で検出して歯車の回転位置を検出することにより、指針5の針位置を検出し、この検出結果に基づいて指針5が指示する時刻を修正するように構成されている。
一方、ステッピングモータ7は、図2に示すように、コイル部10と、ステータ部11と、ロータ12とを備えている。コイル部10は、コイルの両端部がステータ部11に設けられた配線基板13の各電極13aにそれぞれ接続され、この配線基板13を介して電流が供給されると、磁界を発生するように構成されている。
ステータ部11は、図2に示すように、その中間部にロータ12が配置するロータ孔11aが設けられ、このロータ孔11aに向けてコイル部10で発生した磁界を導くように構成されている。この場合、ステータ部11のロータ孔11aの内周面には、一対のノッチ11bが互いに対向して設けられている。これら一対のノッチ11bは、ロータ12の回転位置を規制するものであり、ステータ部11に導かれた磁界の磁束に対して所定角度、傾いた位置に設けられている。
ロータ12は、図2および図3に示すように、磁石14と歯車部15とを有し、ステータ部11のロータ孔11a内に回転可能に配置され、ステータ部11で導かれた磁界に応じて180度ずつステップ回転するように構成されている。この場合、磁石14は、ほぼ円形状に形成され、N極とS極との磁極が互いに対向して設けられている。
この磁石14は、図3および図4に示すように、その回転中心部に軸孔14aが貫通して設けられていると共に、磁極を2分する分極ラインRが位置する外周部に一対の位置規制部14bが互いに対向して設けられている。これら一対の位置規制部14bは、それぞれ磁石14の外周部が分極ラインRに対して直交する方向に切断された状態で切欠かれた切欠き部であり、各切断面が互いに平行に形成されている。
歯車部15は、図3(a)〜図3(c)に示すように、軸部16と歯車17とを有し、これが合成樹脂によって一体に形成された構成になっている。この場合、軸部16は、磁石14の軸孔14a内に位置すると共に歯車17が形成される軸本体16aと、この軸本体16aの両端部に設けられた回転支持部16bと、歯車17が位置する磁石14の反対側の一面(図3(c)では左面)に当接するフランジ部16cとを有している。
歯車17は、図3(a)〜図3(c)に示すように、小歯車であり、軸部16の軸本体部16aに一体に形成されて、軸部16のフランジ部16cと反対側に位置する磁石14の他面(図3(c)では右面)に当接し、この状態で磁石14と共に一体的に回転するように構成されている。
この場合、歯車17は、図3(a)に示すように、その歯数が偶数枚に形成され、磁石14の磁極(NS)に対して一定の位置関係で形成されている。すなわち、この歯車17は、例えば互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aが、磁石14の磁極を2分する分極ラインR上に位置する位置関係で形成されている。
これにより、ロータ12は、図2に示すように、ステータ部11のロータ孔11a内に磁石14が配置されると、この磁石14の磁極を2分する分極ラインRの延長線が、ロータ孔11aの内周面に設けられた一対のノッチ11bに一致した状態で、歯車部15の軸部16を中心に磁石14および歯車部15が一体的に回転するように構成されている。
また、このロータ12は、図1に示すように、その歯車部15の歯車17が輪列機構8の複数の歯車のうちの1つの歯車に噛み合って回転し、その回転が輪列機構8の複数の歯車によって指針軸(図示せず)に伝達されて、指針軸を回転させることにより、指針5を運針させるように構成されている。
これにより、ステッピングモータ7は、図1および図2に示すように、コイル部10に交番電流が供給されて交番磁界が発生され、この交番磁界がステータ部11によってロータ12に導かれると、この導かれた交番磁界に応じてロータ12の磁石14がステータ部11のロータ孔11a内で180度ずつステップ回転することにより、このステップ回転が歯車部15の歯車17によって輪列機構8を介して指針軸(図示せず)に伝達され、この指針軸の回転に伴って指針5を運針させるように構成されている。
次に、このようなステッピングモータ7のロータ12を製造する製造方法について説明する。
まず、第1の工程で、図5および図6に示すように、磁界をかけながら磁性材を焼結させて、磁極方向が判別可能な磁石素材14cを形成し、この磁石素材14cを脱磁処理し、この磁石素材14cに軸孔14aを形成すると共に、位置規制部14bを磁極(NS)に対して対称に形成する。
すなわち、この第1の工程では、図5に示すように、磁石素材14cの原料である磁性材の粉体を焼結用金型20内に充填させ、この状態で磁界をかけると共に圧力を加えながら焼結させて、磁極方向が判別可能な外形形状に磁石素材14cを形成する。この場合、磁石素材14cの原料である磁性材の粉体は、ネオジウムを主成分とする粉体、あるいはサマリウムとコバルトとを混合した粉体などである。
この磁性材の粉体を焼結用金型20内で焼結させる際には、図5に示すように、焼結用金型20の外周に設けられた電磁石21によって磁界をかけながら、焼結用金型20内の磁性材の粉体を圧縮させて焼結する。これにより、図6に示すように、磁極方向が判別可能な長方形状の磁石素材14cが形成される。この磁石素材14cは、その長手方向の両端部に磁極(NS)が形成されている。
そして、この磁石素材14cを焼結用金型20内から取り出し、図6に示すように、脱磁装置(図示せず)によって脱磁処理する。この状態では、磁石素材14cに磁極が脱磁後の磁極として残る。この脱磁された磁石素材14cを切削加工して、磁石素材14cの回転中心部に軸孔14aを形成すると共に、この軸孔14aを中心として磁石素材14cをほぼ円形状に切削する。
このときには、図6に示すように、磁石素材14cの長手方向と直交する方向の長さよりも長い直径の円形状に切削する。これにより、磁石14がほぼ円形状に形成される。この磁石14には、図3(a)に示すように、磁極を2分する分極ラインR上に一対の位置規制部14bが形成される。すなわち、一対の位置規制部14bは、長方形状の磁石素材14cの各長辺の一部が切削されずに残った部分であり、互いに平行に形成されている。
次に、第2の工程で、図7および図8に示すように、磁石14を搬送しながら一対の位置規制部14bによって脱磁後の磁石14の磁極の向きを一方向に揃えて、磁石14を順次整列させる。すなわち、この第2の工程では、脱磁された状態の磁石14を搬送装置22によって搬送しながら、この搬送装置22によって磁石14の一対の位置規制部14bを位置規制することにより、脱磁後の磁石14の磁極の向きを一方向に揃えて、磁石14を順次整列させる。
この場合、第2の工程で用いられる搬送装置22は、図7および図8に示すように、パーツフィーダであり、振動発生部23でホッパ部24を振動させ、このホッパ部24に投入された磁石14を整列部25に送り出し、この整列部25で磁石14の向きを揃えて一列に整列させるように構成されている。この場合、磁石14は、脱磁されているので、磁力によって互いに吸着することがなく、搬送装置22によって個別に搬送される。
この搬送装置22のホッパ部24は、図7に示すように、複数の磁石14が投入される受け容器であり、その内周面に螺旋状のガイド部(図示せず)が底部から上縁部に亘って設けられている。このホッパ部24は、振動発生部23によって振動すると、磁石14が螺旋状のガイド部に沿って底部から上縁部に向けて移動し、この移動した磁石14を整列部25に1個ずつ送り込むように構成されている。
整列部25は、図7および図8に示すように、両側にガイド部25aが設けられた溝状に形成されている。すなわち、この整列部25は、焼結用金型20で形成された磁石14の長手方向と直交する方向の長さ、つまり磁石14の一対の位置規制部14b間の長さとほぼ同じ長さの幅で、ホッパ部24の上縁部から細長く突出して設けられている。これにより、ガイド部25aは、その間を磁石14が移動する際に、磁石14の一対の位置規制部14bが接触しながら移動するように構成されている。
また、ホッパ部24の上縁部に位置する整列部25の個所には、図8に示すように、ホッパ部24から整列部25に向けて徐々に狭くなる揃え部25bに設けられている。この揃え部25bは、磁石14の長手方向つまり磁極方向が進行方向を向き、長手方向と直交する短辺つまり一対の位置規制部14bがガイド部25aに対面する方向を向くように、磁石14の向きを揃えるように構成されている。
また、この整列部25は、図7に示すように、振動発生部23の振動によってホッパ部24と共に振動し、この振動によって磁石14を搬送するように構成されている。これにより、整列部25は、図8に示すように、磁石14がホッパ部24から整列部25に送り込まれる際に、揃え部25bによって磁石14の向きを揃え、この向きが揃った磁石14をガイド部25aによって整列させながら搬送するように構成されている。
次に、第3の工程で、図9および図10に示すように、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石14に歯車部15を脱磁後の磁石14の磁極に対して一定の位置関係で形成し、この状態で磁石14を着磁処理する。すなわち、この第3の工程では、図9(a)〜図9(c)に示すように、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石14を樹脂成型用金型26内に位置規制部14bによって位置規制して配置し、この状態で樹脂成型用金型26内に樹脂を注入して歯車部15を形成する。
この場合、樹脂成型用金型26は、図9(a)〜図9(c)に示すように、下金型27と上金型28とを有し、これらがパーティングラインPで上下に分割され、下金型27と上金型28とをパーティングラインPで重ね合わせた際に、その内部に歯車部15を形成するための空洞部(キャビティ)29が形成されるように構成されている。
すなわち、樹脂成型用金型26における下金型27の空洞部29には、図9(a)〜図9(c)に示すように、磁石14が配置される磁石配置部29aと、歯車部15の一方(図9(a)では下方)の回転支持部16bを形成する軸形成部29bと、フランジ部16cを形成するフランジ形成部29cとが設けられている。
この場合、磁石配置部29aは、その内周面が磁石14の外周面と同じ形状、つまり磁極方向に位置する円弧面が位置する円弧状の周面と、分極ラインR方向に位置する位置規制部14bの平坦面が位置する位置規制面とを有している。これにより、磁石配置部29aは、磁石14が下金型27の空洞部29内に投入されると、位置規制部14bを位置規制して磁石14の向きを揃えた状態で、磁石14を位置決めするように構成されている。
また、上金型28の空洞部29には、図9(a)〜図9(c)に示すように、歯車部15の歯車17を形成するための歯車形成部29dと、歯車部15の他方(図9(a)では上方)の回転支持部16bを形成する軸形成部29eと、が設けられている。また、この上金型28には、空洞部29内に樹脂を注入するゲート部30が軸形成部29eの上端面に設けられている。
これにより、この樹脂成型用金型26は、図9(a)〜図9(c)に示すように、下金型27と上金型28とを開いた状態で、磁石14が下金型27の空洞部29に投入されると、磁石配置部29aに磁石14が位置規制されて配置され、この状態で下金型27と上金型28とを閉じて重ね合わせ、上金型28のゲート部30から空洞部29内に樹脂が注入されると、歯車部15が磁石14と一体に形成される。
このときには、図9(c)に示すように、歯車部15における軸部16の軸本体16aが磁石14の軸孔14a内に形成されると共に、軸部16の両端部の各回転支持部16bが磁石14から突出し、フランジ部16cが磁石14の一面(図9(c)では下面)に当接し、かつ歯車部15の歯車17が磁石14の他面(図9(c)では上面)に当接し、この状態で磁石14と歯車部15とが一体に形成される。
また、このときには、図3(a)に示すように、歯車部15が脱磁後の磁石14の磁極に対して一定の位置関係で成型される。すなわち、歯車部15の歯車17は、互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aが、磁石14の磁極を2分する分極ラインR上に位置する位置関係で形成される。
そして、図9(c)に示す下金型27と上金型28とを開いて樹脂成型用金型26内から、一体化された磁石14と歯車部15とを取り出し、この取り出した磁石14を着磁装置31によって着磁処理する。このときには、図10(a)および図10(b)に示すように、着磁装置31の一対の電磁石31a間に磁石14を回転可能な状態で配置する。
また、このときには、脱磁後の磁石14の磁極のN極を電磁石31aで発生するS極に対応させ、かつ脱磁後の磁石14の磁極のS極を電磁石31aで発生するN極に対応させ、この状態で磁石14を着磁する。この場合、図10(b)に示すように、脱磁後の磁石14の磁極のN極が電磁石31aのS極に対して少し位置ずれし、かつ脱磁後の磁石14の磁極のS極が電磁石31aのN極に対して少し位置ずれしていても、電磁石31aが発生する磁極に脱磁後の磁石14の各磁極が引き寄せられて、磁石14が回転する。
すなわち、図10(b)に示すように、電磁石31aの磁極に脱磁後の磁石14の各磁極が引き寄せられて磁石14が回転することにより、脱磁後の磁石14の磁極のN極と電磁石31aのS極とが対応すると共に、脱磁後の磁石14の磁極のS極と電磁石31aのN極とが対応する。これにより、図3(a)に示すように、磁石14の磁極が歯車部15に対して一定の位置関係で着磁されたロータ12が得られる。
次に、このようなロータ12を有するステッピングモータ7の作用について説明する。
このステッピングモータ7は、図2に示すように、ロータ12がステータ部11のロータ孔11a内に回転可能に配置されている。このときには、ロータ12の磁石14の磁極を2分する分極ラインRが、ステータ部11のロータ孔11aの内周面に設けられた一対のノッチ11bに対応した状態で、ロータ12がステータ部11のロータ孔11a内に配置される。
この状態で、コイル部10に交番電流が供給されると、コイル部10に交番磁界が発生し、この交番磁界がステータ部11によってロータ12に向けて導かれる。すると、この導かれた交番磁界に応じてロータ12の磁石14がステータ部11のロータ孔11a内で180度ずつステップ回転し、これによりロータ12の歯車部15が磁石14と共に一体的に回転する。
次に、このようなステッピングモータ7を備えた腕時計の作用について説明する。
この腕時計では、ステッピングモータ7のロータ12が回転すると、このロータ12の歯車部15に設けられた歯車17が回転する。この歯車17の回転は、輪列機構8の複数の歯車によって順次伝達されて、指針軸(図示せず)が回転する。これにより、指針軸の回転に伴って指針5が文字板4上を運針して時刻を指示する。
このとき、指針5の指示する時刻が標準時刻と異なっている場合には、指針5の指示する時刻を修正する。この場合には、輪列機構8の針位置検出部(図示せず)によって現在の指針5の針位置が検出され、これに基づいて時刻が修正される。すなわち、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を検出素子が検出し、指針5の指示する時刻と標準時刻との差を算出し、この算出結果に基づいてステッピングモータ7を駆動させて指針5を運針させることにより、時刻を修正する。
この場合には、磁石14の磁極が歯車部15に対して一定の位置関係で着磁されていることにより、ロータ12の磁石14の回転位置と歯車部15の歯車17の回転位置とが一致した状態、つまり磁石14の分極ラインRと歯車17の互いに対向する2つの歯部17aとが一致し、これらがステータ部11の一対のノッチ11bに一致する。
このため、ステッピングモータ7のロータ12が回転して指針5が運針する際に、ロータ12の磁石14の回転位置と指針5が指示する指示位置とが一致する。これにより、針位置検出部による検出精度を高めるために、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を小さくして、検出孔が半分しか塞がらない半開き状態が生じるのを防ぎ、針位置検出部(図示せず)の検出素子によって輪列機構8のいずれかの歯車に設けられた検出孔を確実に検出することを可能にし、指針5の針位置を正確に修正することができる。
このように、この腕時計のステッピングモータ7に用いられるロータ12の製造方法によれば、磁界をかけながら磁性材を焼結させて、磁極方向が判別可能な磁石素材14cを形成し、この磁石素材14cを脱磁処理して位置規制部14bを磁極に対して対称に形成することにより、磁石14を形成する第1の工程と、この磁石14を搬送しながら位置規制部14bによって脱磁後の磁石14の磁極の向きを一方向に揃えて、磁石14を順次整列させる第2の工程と、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石14に歯車部15を脱磁後の磁石14の磁極に対して一定の位置関係で形成し、この磁石14を着磁処理する第3の工程と、を有しているので、磁石4の磁極に対して歯車部15を正確に位置決めすることができ、生産性の向上を図ることができる。
すなわち、このロータ12の製造方法では、第1の工程で磁極に対して一対の位置規制部14bが対称に形成された磁石14を脱磁処理することにより、第2の工程で磁石14が相互に吸着するのを防ぐことができる。このため、第2の工程で磁石14を個別に搬送することができるので、位置規制部14bによって脱磁後の磁石14の磁極の向きを一方向に揃えることができると共に、磁石14を順次整列させることができる。
これにより、第3の工程で脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石14に歯車部15を形成する際に、脱磁後の磁石14の磁極に対して歯車部15を一定の位置関係で正確に位置決めすることができ、このため磁石14の磁極に対して歯車部15を正確に形成することができると共に、生産性が良く、生産性の向上を図ることができる。
この場合、第1の工程では、磁性材の粉体を焼結用金型20内に充填させた状態で、磁界をかけながら焼結させることにより、磁極方向が判別可能な長方形の磁石素材14cを容易に形成することができる。そして、この磁石素材14cを焼結用金型20内から取り出して脱磁処理した後、切削加工によって磁石素材14cの回転中心部に軸孔14aを形成することができると共に、磁石素材14cの磁極を2分する分極ラインR上に一対の位置規制部14bを形成することができる。
すなわち、焼結用金型20で形成された磁石素材14cは、磁極方向が判別可能な長方形に形成されているので、この長方形の外形形状によって磁石素材14cの磁極方向を判別することができる。このため、磁石素材14cを脱磁処理して切削加工する際に、その長方形の磁石素材14cの中心に軸孔14aを正確にかつ容易に形成することができると共に、磁石素材14cの磁極を2分する分極ラインR上に一対の位置規制部14bを正確にかつ容易に形成することができる。
この場合、一対の位置規制部14bを形成する際には、軸孔14aを中心に磁石素材14cの長手方向に対して直交する方向の長さよりも長い直径の円形状に磁石素材14cを切削することにより、磁石14の磁極を2分する分極ラインRに対して直交させた状態で、一対の位置規制部14bを正確にかつ容易に形成することができ、これにより磁石14を精度良く形成することができる。
また、第2の工程では、脱磁された状態の磁石14を搬送する搬送装置22を有し、この搬送装置22で磁石14を搬送しながら、搬送装置22によって磁石14の一対の位置規制部14bを位置規制することにより、磁石14が互いに吸着せずに、搬送装置22で磁石14を搬送することができると共に、脱磁後の磁石22の磁極の向きを一方向に揃えることができ、これにより磁石14を順次整列させることができる。
この場合、搬送装置22は、パーツフィーダであり、振動発生部23でホッパ部24を振動させ、このホッパ部24に投入された磁石14を整列部25に送り出し、この整列部25で磁石14の向きを揃えて一列に整列させるように構成されているので、複数の磁石14をホッパ部24に投入して振動発生部23を振動させることにより、自動的に複数の磁石14をホッパ部24から順次1個ずつ整列部25に送り込むことができると共に、この整列部25で複数の磁石14を1個ずつ個別に向きを揃えて整列させることができる。
また、第3の工程では、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石14を樹脂成型用金型26内に配置する際に、磁石14の一対の位置規制部14bによって磁石14を位置規制して配置することができる。この状態で、樹脂成型用金型26に樹脂を注入して歯車部15を脱磁後の磁石14の磁極に対して一定の位置関係で形成することができる。この歯車部15が形成された磁石14をその脱磁後の磁極に対応させて着磁処理することにより、磁石14を正確に着磁することができる。
すなわち、樹脂成型用金型26は、下金型27と上金型28とを有し、これらがパーティングラインPで重ね合わせた際に、その内部に歯車部15を形成するための空洞部(キャビティ)29が形成されている。この場合、下金型27の空洞部29には、磁石14が配置される磁石配置部29aが設けられているので、磁石14が下金型27の空洞部29内に投入されると、磁石配置部29aによって磁石14の一対の位置規制部14bを位置規制して、磁石14の向きを揃えて磁石14を正確に配置することができる。
このため、下金型27と上金型28とを重ね合わせて、歯車部15を形成すると、歯車部15を脱磁後の磁石14の磁極に対して一定の位置関係で形成することができる。すなわち、磁石14の一対の位置規制部14bによって磁石14の向きが揃えられた状態で、磁石14が樹脂成型用金型26内に位置決めされて配置されているので、歯車部15の歯車17における互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aを、磁石14の分極ラインR上に位置させる位置関係で正確に形成することができる。
そして、一体化された磁石14と歯車部15とを樹脂成型用金型26内から取り出し、この取り出した磁石14を着磁装置31によって着磁する際には、着磁装置31の一対の電磁石31a間に磁石14を回転可能な状態で配置すると共に、脱磁後の磁石14の磁極のN極を電磁石31aで発生するS極に対応させ、かつ脱磁後の磁石14の磁極のS極を電磁石31aで発生するN極に対応させ、この状態で磁石14を着磁することにより、磁石14を正確にかつ確実に着磁することができる。
この場合には、脱磁後の磁石14の磁極のN極が電磁石31aのS極に対して少し位置ずれし、かつ脱磁後の磁石14の磁極のS極が電磁石31aのN極に対して少し位置ずれしていても、着磁装置31の電磁石31aが発生する磁極に脱磁後の磁石14の各磁極が引き寄せられて、磁石14が回転するので、脱磁後の磁石14の磁極と電磁石31aの磁極とを確実に一致させることができ、これにより磁石14の磁極を歯車部15に対して一定の位置関係に保った状態で、正確にかつ確実に磁石14を着磁することができる。
このように製作されたロータ12によれば、コイル部10に発生した磁界をステータ部11によって導き、この導かれた磁界に応じて回転するものであり、一対の位置規制部14bが磁極に対して対称に設けられ、かつ回転中心部に軸孔14aが設けられた磁石14と、この磁石14の軸孔14aに形成された軸部16に歯車17が磁石14の磁極に対して一定の位置関係で形成された歯車部15と、を備えているので、磁石14の磁極の回転位置と歯車部16の歯車17の回転位置とを一致させて正確に回転させることができる。
すなわち、このロータ12を用いたステッピングモータ7によれば、ロータ12の磁石14の磁極を2分する分極ラインRを、ステータ部11のロータ孔11aの内周面に設けられた一対のノッチ11bに正確に対応させた状態で、ロータ12をステータ部11のロータ孔11a内に配置することができる。
このため、コイル部10に交番磁界が発生し、この交番磁界がステータ部11によってロータ12に向けて導かれると、この導かれた交番磁界に応じてロータ12の磁石14をステータ部11のロータ孔11a内で180度ずつステップ回転させることができ、これにより磁石14の磁極の回転位置と歯車部16の歯車17の回転位置とを一定の位置関係で正確に回転させることができる。
さらに、このようなステッピングモータ7を用いた腕時計によれば、ステッピングモータ7のロータ12が回転すると、このロータ12の歯車部15に設けられた歯車17が回転し、この歯車17の回転が輪列機構8の複数の歯車によって順次伝達され、この輪列機構8によって指針軸(図示せず)に伝達され、これにより指針軸が回転して指針5を文字板4上で運針させることができるので、正確にかつ良好に時刻を指示することができる。
また、この腕時計では、指針5の指示する時刻が標準時刻と異なっているときに、輪列機構8の針位置検出部(図示せず)によって指針5の針位置を検出することができるので、指針5の指示する時刻を修正することができる。すなわち、針位置検出部は、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を検出素子によって検出することにより、指針5の指示する時刻と標準時刻との差を算出することができ、この算出結果に基づいてステッピングモータ7を駆動させて指針5を運針させることができるので、正確にかつ良好に時刻を修正する。
この場合、磁石14の磁極が歯車部15に対して一定の位置関係で着磁されていることにより、ロータ12の磁石14の回転位置と歯車部15の歯車17の回転位置とを常に一定の位置関係に保つことができると共に、磁石14の分極ラインRと歯車17の互いに対向する2つの歯部17aとを一致させることができ、この状態で磁石14の分極ラインRと歯車17の互いに対向する2つの歯部17aとを、ステータ部11の一対のノッチ11bに対して正確に一致させることができる。
このため、ステッピングモータ7のロータ12が回転して指針5が運針する際には、ロータ12の磁石14の回転位置と指針5が指示する指示位置とを一致させることができるので、針位置検出部による検出精度を高めるために、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を小さくして、検出孔が半分しか塞がらない半開き状態が生じるのを防ぎ、針位置検出部(図示せず)の検出素子によって輪列機構8のいずれかの歯車に設けられた検出孔を確実に検出することを可能にし、指針5の針位置を正確に修正することができる。
これにより、この腕時計では、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を小さく形成することにより、検出孔が設けられる歯車を小さく形成することができ、このため輪列機構8の複数の歯車をそれぞれ小さく形成することができるので、輪列機構8の全体をコンパクトに構成することができると共に、時計ムーブメント6を小型化することができ、これにより時計全体の小型化を図ることができる。
(第2実施形態)
次に、図11〜図14を参照して、この発明を腕時計に適用した第2実施形態について説明する。なお、図1〜図10に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この腕時計は、図11および図12に示すように、ステッピングモータ7に用いられるロータ34の磁石35が第1実施形態と異なる構造であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、この磁石35は、図11および図12に示すように、その回転中心部に軸孔35aが貫通して設けられていると共に、磁石35の一面(図12では上面)に磁極を2分する分極ラインRに沿って一対の位置規制部35bが設けられている。これら一対の位置規制部35bは、断面半円形状の溝であり、軸孔35aの中心を通る径方向の直線上に位置した状態で、軸孔35aの両側に形成されている。
また、この磁石35には、第1実施形態と同様、歯車部15が一体に形成されている。この歯車部15は、軸部16と歯車17とを有し、歯車17が磁石35の磁極(NS)に対して一定の位置関係で形成されている。すなわち、この歯車17も、第1実施形態と同様、互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aが、磁石35の磁極を2分する分極ラインR上に位置する位置関係で形成されている。
これにより、ロータ34は、第1実施形態と同様、ステータ部11のロータ孔11a内に磁石35が配置されると、磁石35の磁極を2分する分極ラインRの延長線が、ロータ孔11aの内周面に設けられた一対のノッチ11bに一致した状態で、歯車部15の軸部16を中心に磁石35および歯車部15が一体に回転するように構成されている。
次に、このようなロータ34を製作する製造方法について説明する。
まず、第1の工程では、第1実施形態と同様、磁界をかけながら磁性材を焼結させて、磁極(NS)方向が判別可能な判別マーク部35dが形成された磁石素材35cを形成する。すなわち、この第1の工程では、磁石素材35cの原料である磁性材の粉体を焼結用金型20内に充填させ、この状態で磁界をかけると共に圧力を加えながら焼結させて、磁極方向が判別可能な判別マーク部35dが形成された磁石素材35cを形成する。
この場合、磁性材の粉体を焼結用金型20内で焼結させる際には、第1実施形態と同様、焼結用金型17の外周に設けられた電磁石21によって磁界をかけながら、焼結用金型20内の磁性材の粉体を圧縮させて焼結する。これにより、図13に示すように、円形状の磁石素材35cが形成される。この磁石素材35cは、その回転中心を通る径方向の直線の両端、つまり直径方向の両端部に磁極(NS)が形成されていると共に、この磁極を2分する分極ラインRに沿って判別マーク部35dが断面半円形の溝状に形成される。
そして、この磁石素材35cを焼結用金型20内から取り出し、第1実施形態と同様、脱磁装置(図示せず)によって脱磁処理する。この状態では、磁石素材35cに磁極が脱磁後の磁極として残る。そして、図13に示すように、脱磁された磁石35を切削加工して、磁石35の回転中心部に軸孔35aを形成すると共に、判別マーク部35dを一対の位置規制部35bとして形成する。
このときには、磁石35の磁極を2分する分極ラインRに沿って形成された判別マー部35dによって、磁石素材35cを位置規制した状態で、切削加工により軸孔35aを形成する。また、このときには、判別マーク部35dを仕上げ加工して軸孔35aの両側に一対の位置規制部35bとして形成するか、あるいは判別マーク部35dをそのまま一対の位置規制部35bとする。
次に、第2の工程では、第1実施形態と同様、磁石35を搬送しながら、一対の位置規制部35bによって脱磁後の磁石35の磁極の向きを一方向に揃えて、磁石35を順次整列させる。すなわち、この第2の工程では、図14に示すように、脱磁された状態の磁石35を搬送装置22によって搬送しながら、この搬送装置22によって磁石35の位置規制部35bを位置規制することにより、脱磁後の磁石35の磁極の向きを一方向に揃えて、磁石35を順次整列させる。
この場合には、図14に示すように、パーツフィーダである搬送装置22の整列部25に、磁石35の位置規制部35bを位置規制するためのガイドレール部36を設け、このガイドレール部36で磁石35の向きを一方向に揃えて、磁石35を順次整列させる。このとき、磁石35の位置規制部35bがガイドレール部36に位置規制されていない場合、あるいは磁石35が表裏反転している場合には、整列部25に設けられた高さ規制板37によって磁石35が整列部25からはじかれる。
次に、第3の工程では、第1実施形態と同様、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石35に歯車部15を脱磁後の磁石35の磁極に対して一定の位置関係で形成し、この状態で磁石35を着磁処理する。すなわち、この第3の工程でも、第1実施形態と同様、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石35を樹脂成型用金型26内に位置規制部35bによって位置規制して配置する。
この場合にも、樹脂成型用金型26は、第1実施形態と同様、下金型27と上金型28とを有し、これらの内部に歯車部15を形成するための空洞部(キャビティ)29が形成されている。この下金型27の空洞部29には、磁石35が配置されて磁石35の位置規制部35bを位置規制する磁石配置部が設けられている。
これにより、この樹脂成型用金型26は、第1実施形態と同様、磁石35が下金型27の空洞部29に投入されると、磁石配置部に磁石35がその位置規制部35bによって位置規制されて配置され、この状態で下金型27と上金型28とを閉じて重ね合わせ、上金型28のゲート部30から空洞部29内に樹脂が注入されると、歯車部15が磁石35と一体に形成される。
このときには、歯車部15が脱磁後の磁石35の磁極に対して一定の位置関係で形成される。すなわち、歯車部15の歯車17は、互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aが、磁石35の磁極を2分する分極ラインR上に位置する位置関係で形成される。
そして、一体化された磁石35と歯車部15とを樹脂成型用金型26内から取り出し、この取り出した磁石35を着磁装置31によって着磁処理する。このときにも、第1実施形態と同様、着磁装置31の一対の電磁石31a間に磁石35を回転可能な状態で配置し、脱磁後の磁石35の磁極を電磁石31aで発生する磁極に対応させ、この状態で磁石35を着磁する。
この場合にも、脱磁後の磁石35の磁極のN極が電磁石31aのS極に対して少し位置ずれし、かつ脱磁後の磁石35の磁極のS極が電磁石31aのN極に対して少し位置ずれしていても、電磁石31aが発生する磁極に脱磁後の磁石35の各磁極が引き寄せられるので、磁石35が回転する。このため、脱磁後の磁石35の磁極と電磁石31aの磁極とが対応する。これにより、磁石35の磁極が歯車部15に対して一定の位置関係で着磁されたロータ34が得られる。
このように、このロータ34の製造方法によれば、第1実施形態と同様、第1の工程で磁極に対して一対の位置規制部35bが対称に形成された磁石35を脱磁処理することにより、第2の工程で磁石35が相互に吸着するのを防ぐことができる。このため、第2の工程で磁石35を個別に搬送することができるので、位置規制部35bによって脱磁後の磁石35の磁極の向きを一方向に揃えることができると共に、磁石35を順次整列させることができる。
これにより、第3の工程で脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石35に歯車部15を形成する際に、脱磁後の磁石35の磁極に対して歯車部15を一定の位置関係で正確に位置決めすることができるので、磁石35の磁極に対して歯車部15を正確に形成することができ、生産性の向上を図ることができる。
この場合、第1の工程では、磁性材の粉体を焼結用金型20内に充填させた状態で、磁界をかけながら焼結させることにより、磁極方向が判別可能な判別マーク部35dが形成された磁石素材35cを容易に形成することができる。そして、この磁石素材35cを焼結用金型20内から取り出して脱磁処理した後、切削加工によって磁石素材35cの回転中心部に軸孔35aを形成することができると共に、一対の位置規制部35bを形成することができる。
すなわち、焼結用金型20で形成された磁石素材35cは、磁極方向が判別可能な判別マーク部35dが形成されているので、この判別マーク部35dによって磁石素材35cの磁極方向を判別することができる。このため、磁石素材35cを脱磁処理して切削加工する際に、磁石素材35cの中心に軸孔35aを正確にかつ容易に形成することができると共に、磁石素材35cの磁極を2分する分極ラインR上に一対の位置規制部35bを正確にかつ容易に形成することができる。
このときには、磁石35の磁極を2分する分極ラインRに沿って形成された判別マー部35dによって、磁石素材35cを位置規制した状態で、切削加工により軸孔35aを正確に形成することができる。また、このときには、判別マーク部35dを仕上げ加工して軸孔35aの両側に一対の位置規制部35bとして容易にかつ正確に形成することができるほか、判別マーク部35dをそのまま一対の位置規制部35bとして用いることができる。これにより、磁極を2分する分極ラインRに沿って一対の位置規制部35bが形成された磁石35を精度良く形成することができる。
また、第2の工程では、脱磁された状態の磁石35を搬送する搬送装置22を有し、この搬送装置22で磁石35を搬送しながら、搬送装置22によって磁石35の位置規制部35bを位置規制することにより、磁石35が互いに吸着せずに、搬送装置22で磁石35を搬送することができると共に、脱磁後の磁石35の磁極の向きを一方向に揃えることができ、これにより磁石35を順次整列させることができる。
この場合にも、搬送装置22は、パーツフィーダであり、振動発生部23でホッパ部24を振動させ、このホッパ部24に投入された磁石35を整列部25に送り出し、この整列部25で磁石35の向きを揃えて一列に整列させるように構成されているので、第1実施形態と同様、ホッパ部24に投入された複数の磁石35を順次1個ずつ整列部25に送り込むことができると共に、この整列部25で複数の磁石35を1個ずつ個別に向きを揃えて整列させることができる。
また、第3の工程では、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石35を樹脂成型用金型26内に配置する際に、第1実施形態と同様、磁石35の位置規制部35bによって磁石35を位置規制して配置することができ、この状態で樹脂成型用金型26に樹脂を注入して歯車部15を脱磁後の磁石35の磁極に対して一定の位置関係で形成することができ、この歯車部15が形成された脱磁後の磁石35をその磁極に対応させて着磁処理することにより、磁石35を正確に着磁することができる。
すなわち、磁石35の位置規制部35bによって磁石35の向きが揃えられた状態で、磁石35が樹脂成型用金型26内に位置決めされて配置されているので、歯車部15の歯車17における互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aを、磁石35の分極ラインR上に位置させる位置関係で正確に形成することができる。
また、一体化された磁石35と歯車部15とを樹脂成型用金型26内から取り出し、この取り出した磁石35を着磁装置31によって着磁処理する際にも、第1実施形態と同様、着磁装置31の一対の電磁石31a間に磁石35を回転可能な状態で配置すると共に、脱磁後の磁石35の磁極を電磁石31aで発生する磁極に対応させ、この状態で磁石35を着磁することにより、磁石35を正確にかつ確実に着磁することができる。
この場合にも、脱磁後の磁石35の磁極が電磁石31aの磁極に対して少し位置ずれしていても、着磁装置31の電磁石31aが発生する磁極に脱磁後の磁石35の各磁極が引き寄せられて、磁石35が回転するので、磁石35の磁極を歯車部15に対して一定の位置関係で、正確にかつ確実に磁石35を着磁することができる。
このようなロータ34においても、コイル部10に発生した磁界をステータ部11によって導き、この導かれた磁界に応じて回転するものであり、磁極に対して一対の位置規制部35bが対称に設けられ、かつ回転中心部に軸孔35aが設けられた磁石35と、この磁石35の軸孔35aに形成された軸部16に歯車17が磁石35の磁極に対して一定の位置関係で形成された歯車部15と、を備えているので、第1実施形態と同様、磁石35の磁極の回転位置と歯車部16の歯車17の回転位置とを一定の位置関係で正確に回転させることができる。
すなわち、このロータ34を用いたステッピングモータ7においても、第1実施形態と同様、ロータ34の磁石35の磁極を2分する分極ラインRを、ステータ部11のロータ孔11aの内周面に設けられた一対のノッチ11bに正確に対応させた状態で、ロータ34をステータ部11のロータ孔11a内に配置することができる。
このため、コイル部10に交番磁界が発生し、この交番磁界がステータ部11によってロータ34に向けて導かれると、この導かれた交番磁界に応じてロータ34の磁石35をステータ部11のロータ孔11a内で180度ずつステップ回転させることができ、これにより磁石35の磁極の回転位置と歯車部16の歯車17の回転位置とを常に一定の位置関係で正確に回転させることができる。
さらに、このようなステッピングモータ7を用いた腕時計においても、第1実施形態と同様、ステッピングモータ7のロータ34が回転すると、このロータ34の歯車部15に設けられた歯車17が回転し、この歯車17の回転が輪列機構8の複数の歯車によって順次伝達されて、指針軸(図示せず)が回転するので、指針5を文字板4上で運針させることができ、これにより正確にかつ良好に時刻を指示することができる。
また、この腕時計でも、第1実施形態と同様、指針5の指示する時刻が標準時刻と異なっているときに、輪列機構8の針位置検出部(図示せず)によって指針5の針位置を検出することができるので、指針5の指示する時刻を修正することができる。すなわち、針位置検出部は、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を検出素子によって検出することにより、指針5の指示する時刻と標準時刻との差を算出することができ、この算出結果に基づいてステッピングモータ7を駆動させて指針5を運針させることができるので、正確にかつ良好に時刻を修正する。
この場合にも、第1実施形態と同様、磁石35の磁極が歯車部15に対して一定の位置関係で着磁されていることにより、ロータ34の磁石35の回転位置と歯車部15の歯車17の回転位置とを常に一定の位置関係に保つことができると共に、磁石35の分極ラインRと歯車17の互いに対向する2つの歯部17aとを一致させることができ、この状態で磁石35の分極ラインRと歯車17の互いに対向する2つの歯部17aとを、ステータ部11の一対のノッチ11bに対して正確に一致させることができる。
このため、ステッピングモータ7のロータ34が回転して指針5が運針する際に、ロータ34の磁石35の回転位置と指針5が指示する指示位置とを一致させることができるので、第1実施形態と同様、針位置検出部による検出精度を高めるために、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を小さく形成して、検出孔が半分しか塞がらない半開き状態が生じるのを防ぎ、針位置検出部(図示せず)の検出素子によって輪列機構8のいずれかの歯車に設けられた検出孔を確実に検出することを可能にし、指針5の針位置を正確に修正することができる。
これにより、この腕時計においても、第1実施形態と同様、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を小さく形成することにより、検出孔が設けられる歯車を小さく形成することができ、このため輪列機構8の複数の歯車をそれぞれ小さく形成することができるので、輪列機構8の全体をコンパクトに構成することができると共に、時計ムーブメント6を小型化することができ、これにより時計全体の小型化を図ることができる。
なお、上述した第2実施形態の磁石35では、磁極方向が判別可能な判別マーク部35dを一対の位置規制部35bとして用いた場合について述べたが、これに限らず、例えば分極ラインR上に設けられた判別マーク部35dの両端部に、第1実施形態と同じ形状の一対の位置規制部14bを設けた構成であっても良い。
(第3実施形態)
次に、図15〜図18を参照して、この発明を腕時計に適用した第3実施形態について説明する。この場合にも、図1〜図10に示された第1実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
この腕時計は、図15および図16に示すように、ステッピングモータ7に用いられるロータ40の磁石41が第1実施形態と異なる構造であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、この磁石41は、図15および図16に示すように、その回転中心部に軸孔41aが貫通して設けられていると共に、磁石41の磁極を2分する分極ラインR上に位置する磁石41の外周面に一対の位置規制部41bが設けられている。この一対の位置規制部41bは、半円形状の凹部であり、軸孔35aの中心を通る径方向の直線である分極ラインR上に形成されている。
また、この磁石41には、第1実施形態と同様、歯車部15が一体に形成されている。この歯車部15は、軸部16と歯車17とを有し、歯車17が磁石41の磁極(NS)に対して一定の位置関係で形成されている。すなわち、この歯車17も、第1実施形態と同様、互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aが、磁石41の磁極を2分する分極ラインR上に位置する位置関係で形成されている。
これにより、ロータ40は、第1実施形態と同様、ステータ部11のロータ孔11a内に磁石41が配置されると、磁石41の磁極を2分する分極ラインRの延長線が、ロータ孔11aの内周面に設けられた一対のノッチ11bに一致した状態で、歯車部15の軸部16を中心に磁石35および歯車部15が一体に回転するように構成されている。
次に、このようなロータ40を製造する製造方法について説明する。
まず、第1の工程で、磁界をかけながら磁性材を焼結させて、磁極(NS)方向が判別可能な判別マーク部41dが形成された磁石素材41cを形成する。すなわち、この第1の工程では、磁石素材41cの原料である磁性材の粉体を焼結用金型20内に充填させ、この状態で磁界をかける共に圧力を加えながら焼結させて、磁極方向が判別可能な一対の判別マーク部41dが形成された磁石素材41cを形成する。
この場合、磁性材の粉体を焼結用金型20内で焼結させる際には、第1実施形態と同様、焼結用金型17の外周に設けられた電磁石21によって磁界をかけながら、焼結用金型20内の磁性材の粉体を圧縮させて焼結する。これにより、図17に示すように、円形状の磁石素材41cが形成される。この磁石素材41cは、その回転中心を通る径方向の直線の両端、つまり直径方向の両端部に磁極(NS)が形成されると共に、この磁極を2分する分極ラインRの両端部に一対の判別マーク部41dが半円形の凹状に形成される。
そして、図17に示すように、磁石素材41cを焼結用金型20内から取り出し、第1実施形態と同様、脱磁装置(図示せず)によって脱磁処理する。この状態では、磁石素材41cに磁極が脱磁後の磁極として残る。この脱磁された磁石素材41を切削加工して、磁石素材41cの回転中心部に軸孔41aを形成すると共に、一対の位置規制部41bを形成する。
このときには、磁極を2分する分極ラインRの両端部に形成された一対の判別マーク部41dによって、磁石素材41を位置規制した状態で、切削加工により軸孔41aを形成する。また、このときには、一対の判別マーク部41dを仕上げ加工により一対の位置規制部41bとして形成するか、あるいは一対の判別マーク部41dをそのまま一対の位置規制部41bとする。これにより、磁石41が形成される。
次に、第2の工程では、第1実施形態と同様、磁石41を搬送しながら、一対の位置規制部41bによって脱磁後の磁石41の磁極の向きを一方向に揃えて、磁石41を順次整列させる。すなわち、この第2の工程では、図18に示すように、脱磁された状態の磁石41を搬送装置22によって搬送しながら、この搬送装置22によって磁石41の位置規制部41bを位置規制することにより、脱磁後の磁石41の磁極の向きを一方向に揃えて、磁石41を順次整列させる。
この場合には、図18に示すように、パーツフィーダである搬送装置22の整列部25が搬送方向に対して徐々に傾き、磁石41を搬送方向に向けて移動させながら徐々に傾けると共に、整列部25に所定間隔で設けられた複数の位置規制突起部42によって、傾いた磁石41の位置規制部41bを順次位置規制することにより、磁石41の向きを一方向に揃えて、磁石41を整列部25から順次送り出し、この送り出された磁石41を順次積み重ねた状態で整列させる。
次に、第3の工程では、第1実施形態と同様、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石41に歯車部15を脱磁後の磁石41の磁極に対して一定の位置関係で形成し、この状態で磁石41を着磁処理する。すなわち、この第3の工程でも、第1実施形態と同様、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石41を樹脂成型用金型26内に位置規制部41bによって位置規制して配置する。
この場合にも、樹脂成型用金型26は、第1実施形態と同様、下金型27と上金型28とを有し、これらの内部に歯車部15を形成するための空洞部(キャビティ)29が形成されている。この下金型27の空洞部29には、磁石41が配置されて磁石41の位置規制部41bを位置規制する磁石配置部が設けられている。
これにより、この樹脂成型用金型26は、第1実施形態と同様、磁石41が下金型27の空洞部29に投入されると、磁石配置部に磁石41がその位置規制部41bによって位置規制されて配置され、この状態で下金型27と上金型28とを閉じて重ね合わせ、上金型28のゲート部30から空洞部29内に樹脂が注入されると、歯車部15が磁石41と一体に形成される。
このときには、歯車部15が脱磁後の磁石41の磁極に対して一定の位置関係で形成される。すなわち、歯車部15の歯車17は、互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aが、磁石41の磁極を2分する分極ラインR上に位置する位置関係で形成される。
そして、一体化された磁石41と歯車部15とを樹脂成型用金型26内から取り出し、この取り出した磁石41を着磁装置31によって着磁処理する。このときにも、第1実施形態と同様、着磁装置31の一対の電磁石31a間に磁石41を回転可能な状態で配置し、脱磁後の磁石41の磁極を電磁石31aで発生する磁極に対応させ、この状態で磁石41を着磁する。
この場合にも、脱磁後の磁石41の磁極のN極が電磁石31aのS極に対して少し位置ずれし、かつ脱磁後の磁石41の磁極のS極が電磁石31aのN極に対して少し位置ずれしていても、電磁石31aが発生する磁極に脱磁後の磁石41の各磁極が引き寄せられるので、磁石41が回転する。このため、脱磁後の磁石41の磁極と電磁石31aの磁極とが対応する。これにより、磁石41の磁極が歯車部15に対して一定の位置関係で着磁されたロータ40が得られる。
このように、このロータ40の製造方法によれば、第1実施形態と同様、第1の工程で磁極に対して一対の位置規制部41bが対称に形成された磁石41を脱磁処理することにより、第2の工程で磁石41が相互に吸着するのを防ぐことができる。このため、第2の工程で磁石41を個別に搬送することができるので、位置規制部41bによって脱磁後の磁石41の磁極の向きを一方向に揃えることができると共に、磁石41を順次整列させることができる。
これにより、第3の工程で脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石41に歯車部15を形成する際に、脱磁後の磁石41の磁極に対して歯車部15を一定の位置関係で正確に位置決めすることができるので、磁石41の磁極に対して歯車部15を正確に形成することができ、これにより生産性の向上を図ることができる。
この場合、第1の工程では、磁性材の粉体を焼結用金型20内に充填させた状態で、磁界をかけながら焼結させることにより、磁極方向が判別可能な一対の判別マーク部41dが形成された磁石素材41cを容易に形成することができる。そして、この磁石素材41cを脱磁処理した後、切削加工によって磁石素材41cの回転中心部に軸孔41aを形成することができると共に、一対の位置規制部41bを形成することができる。
すなわち、焼結用金型20で形成された磁石素材41cには、磁極方向が判別可能な判別マーク部41dが形成されているので、この判別マーク部41dによって磁石素材41cの磁極方向を判別することができる。このため、磁石素材41cを脱磁処理して切削加工する際に、磁石素材41cの中心に軸孔41aを正確にかつ容易に形成することができると共に、磁石素材41cの磁極を2分する分極ラインR上に一対の位置規制部41bを正確にかつ容易に形成することができる。
このときには、磁石41の磁極を2分する分極ラインRの両端部に形成された一対の判別マー部41dによって、磁石素材41cを位置規制した状態で、切削加工により軸孔41aを正確に形成することができる。また、このときには、一対の判別マーク部41dを仕上げ加工して一対の位置規制部41bとして容易にかつ正確に形成することができるほか、一対の判別マーク部41dをそのまま一対の位置規制部41bとして用いることができる。これにより、磁極を2分する分極ラインRに沿って一対の位置規制部41bが形成された磁石41を精度良く形成することができる。
また、第2の工程では、脱磁された状態の磁石41を搬送する搬送装置22を有し、この搬送装置22で磁石41を搬送しながら、搬送装置22によって磁石41の位置規制部41bを位置規制することにより、磁石41が互いに吸着せずに、搬送装置22で磁石41を搬送することができると共に、脱磁後の磁石41の磁極の向きを一方向に揃えることができ、これにより磁石41を順次整列させることができる。
この場合にも、搬送装置22は、パーツフィーダであり、振動発生部23でホッパ部24を振動させ、このホッパ部24に投入された磁石41を整列部25に送り出し、この整列部25で磁石41の向きを揃えて整列させるように構成されているので、第1実施形態と同様、ホッパ部24に投入された複数の磁石41を順次1個ずつ整列部25に送り込むことができると共に、この整列部25で複数の磁石41を1個ずつ個別に向きを揃えて整列させることができる。
また、第3の工程では、脱磁後の磁極の向きが一方向に揃えられた磁石41を樹脂成型用金型26内に配置する際に、第1実施形態と同様、磁石41の位置規制部41bによって磁石41を位置規制して配置することができ、この状態で樹脂成型用金型26に樹脂を注入して歯車部15を脱磁後の磁石41の磁極に対して一定の位置関係で形成することができ、この歯車部15が形成された磁石41をその脱磁後の磁極に対応させて着磁処理することにより、磁石41を正確に着磁することができる。
すなわち、磁石41の位置規制部41bによって磁石41の向きが揃えられた状態で、磁石41が樹脂成型用金型26内に位置決めされて配置されているので、歯車部15の歯車17における互いに対向する2つの歯部17a、つまり歯車17の中心を通る径方向の直線上に位置する2つの歯部17aを、磁石41の分極ラインR上に位置させる位置関係で正確に形成することができる。
また、一体化された磁石41と歯車部15とを樹脂成型用金型26内から取り出し、この取り出した磁石41を着磁装置31によって着磁する際にも、第1実施形態と同様、着磁装置31の一対の電磁石31a間に磁石41を回転可能な状態で配置すると共に、脱磁後の磁石41の磁極を電磁石31aで発生する磁極に対応させ、この状態で磁石41を着磁することにより、磁石41を正確にかつ確実に着磁することができる。
この場合にも、脱磁後の磁石41の磁極が電磁石31aの磁極に対して少し位置ずれしていても、着磁装置31の電磁石31aが発生する磁極に脱磁後の磁石41の各磁極が引き寄せられて、磁石41が回転するので、磁石41の磁極を歯車部15に対して一定の位置関係で正確にかつ確実に着磁することができる。
このようなロータ40においても、コイル部10に発生した磁界をステータ部11によって導き、この導かれた磁界に応じて回転するものであり、一対の位置規制部41bが磁極に対して対称に設けられ、かつ回転中心部に軸孔41aが設けられた磁石41と、この磁石41の軸孔41aに形成された軸部16に歯車17が磁石41の磁極に対して一定の位置関係で形成された歯車部15と、を備えていることにより、第1実施形態と同様、磁石41の磁極の回転位置と歯車部16の歯車17の回転位置とを一致させて正確に回転させることができる。
すなわち、このロータ40を用いたステッピングモータ7においても、第1実施形態と同様、ロータ40の磁石41の磁極を2分する分極ラインRを、ステータ部11のロータ孔11aの内周面に設けられた一対のノッチ11bに正確に対応させた状態で、ロータ40をステータ部11のロータ孔11a内に配置することができる。
このため、コイル部10に交番磁界が発生し、この交番磁界がステータ部11によってロータ40に向けて導かれると、この導かれた交番磁界に応じてロータ40の磁石41をステータ部11のロータ孔11a内で180度ずつステップ回転させることができ、これにより磁石41の磁極の回転位置と歯車部16の歯車17の回転位置とを一定の位置関係で正確に回転させることができる。
さらに、このようなステッピングモータ7を用いた腕時計においても、第1実施形態と同様、ステッピングモータ7のロータ40が回転すると、このロータ40の歯車部15に設けられた歯車17が回転し、この歯車17の回転が輪列機構8の複数の歯車によって順次伝達され、この輪列機構8によって指針軸(図示せず)に伝達され、これにより指針軸が回転して指針5を文字板4上で運針させることができるので、正確にかつ良好に時刻を指示することができる。
また、この腕時計でも、第1実施形態と同様、指針5の指示する時刻が標準時刻と異なっているときに、輪列機構8の針位置検出部(図示せず)によって指針5の針位置を検出することができるので、指針5の指示する時刻を修正することができる。すなわち、針位置検出部は、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を検出素子によって検出することにより、指針5の指示する時刻と標準時刻との差を算出することができ、この算出結果に基づいてステッピングモータ7を駆動させて指針5を運針させることができるので、正確にかつ良好に時刻を修正する。
この場合にも、第1実施形態と同様、磁石41の磁極が歯車部15に対して一定の位置関係で着磁されていることにより、ロータ40の磁石41の回転位置と歯車部15の歯車17の回転位置とを一定の位置関係にすることができると共に、磁石41の分極ラインRと歯車17の互いに対向する2つの歯部17aとを常に一定の位置関係に保つことができ、この状態で磁石41の分極ラインRと歯車17の互いに対向する2つの歯部17aとを、ステータ部11の一対のノッチ11bに対して正確に一致させることができる。
このため、ステッピングモータ7のロータ40が回転して指針5が運針する際に、ロータ40の磁石41の回転位置と指針5が指示する指示位置とを一致させることができるので、第1実施形態と同様、針位置検出部による検出精度を高めるために、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を小さく形成して、検出孔が半分しか塞がらない半開き状態が生じるのを防ぎ、針位置検出部(図示せず)の検出素子によって輪列機構8のいずれかの歯車に設けられた検出孔を確実に検出することを可能にし、指針5の針位置を正確に修正することができる。
これにより、この腕時計においても、第1実施形態と同様、輪列機構8の複数の歯車のうち、いずれかの歯車に設けられた検出孔を小さく形成することにより、検出孔が設けられる歯車を小さく形成することができ、このため輪列機構8の複数の歯車をそれぞれ小さく形成することができるので、輪列機構8の全体をコンパクトに構成することができると共に、時計ムーブメント6を小型化することができ、これにより時計全体の小型化を図ることができる。
なお、上述した第1〜第3の各実施形態では、一対の位置規制部14b、35b、41bを磁石14、35、41の各分極ラインR上に設けた場合について述べたが、必ずしも分極ラインR上に設ける必要はなく、磁石14、35、41の各軸孔14a、35a、41aを中心に、点対称または線対称などの対称な位置に一対の位置規制部を設けた構成であっても良い。
また、上述した第1〜第3の各実施形態では、搬送装置22としてパーツフィーダを用いた場合について述べたが、必ずしもパーツフィーダである必要はなく、コンベアなどの搬送装置であっても良い。
さらに、上述した第1〜第3の各実施形態では、腕時計のステッピングモータ7に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計のステッピングモータ7である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の指針式の時計のステッピングモータに適用することができるほか、カメラ、携帯電話機などの電子機器の駆動部に用いられるステッピングモータなどの電磁駆動装置に広く適用することができる。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、磁界をかけながら磁性材を焼結させて、磁極方向が判別可能な磁石素材を形成し、この磁石素材を脱磁処理、および磁極に対して対称に位置規制部を形成することにより、磁石を形成する第1の工程と、前記磁石を搬送しながら前記位置規制部によって脱磁後の前記磁石の磁極の向きを一方向に揃えて、前記磁石を順次整列させる第2の工程と、脱磁後の前記磁石の磁極の向きが一方向に揃えられた前記磁石に歯車部を脱磁後の前記磁石の磁極に対して一定の位置関係で設け、この状態で前記磁石を着磁処理する第3の工程と、を有することを特徴とするロータの製造方法である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータの製造方法において、前記第1の工程では、前記磁性材の粉体を焼結用金型内に充填させた状態で、磁界をかけながら焼結させて、磁極方向が判別可能な外形形状の前記磁石素材を形成し、この磁石素材を脱磁処理および切削加工することにより、前記磁石素材の回転中心部に軸孔を形成すると共に、前記磁石素材の外形形状によって前記磁極方向を判別し、この磁極を2分する分極ライン上に前記位置規制部を形成し、前記磁石を形成することを特徴とするロータの製造方法である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のロータの製造方法において、前記第1の工程では、前記磁性材の粉体を焼結用金型内に充填させた状態で、磁界をかけながら焼結させて、磁極方向が判別可能な判別マーク部が形成された前記磁石素材を形成し、この磁石素材を脱磁処理および切削加工することにより、前記磁石素材の回転中心部に軸孔を形成すると共に、前記判別マーク部によって前記磁石素材の磁極方向を判別し、この磁極を2分する分極ライン上に前記位置規制部を形成し、前記磁石を形成することを特徴とするロータの製造方法である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のロータの製造方法において、前記第2の工程では、脱磁された状態の前記磁石を搬送する搬送装置を有し、この搬送装置で前記磁石を搬送しながら、前記搬送装置によって前記磁石の前記位置規制部を位置規制することにより、脱磁後の前記磁石の磁極の向きを一方向に揃えて、前記磁石を順次整列させることを特徴とするロータの製造方法である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のロータの製造方法において、前記第3の工程では、脱磁後の前記磁石の磁極の向きが一方向に揃えられた前記磁石を成型用金型内に前記位置規制部によって位置規制して配置し、この状態で前記成型用金型に樹脂を注入して前記歯車部を脱磁後の前記磁石の磁極に対して一定の位置関係で形成し、この歯車部が形成された前記磁石を脱磁後の前記磁石の磁極に対応させて着磁処理することを特徴とするロータの製造方法である。
請求項6に記載の発明は、コイル部に発生した磁界をステータ部によって導き、この導かれた磁界に応じて回転するロータにおいて、磁極に対して対称に位置規制部が設けられ、かつ回転中心部に軸孔が設けられた磁石と、この磁石の前記軸孔に形成された軸部に歯車が前記磁石の磁極に対して一定の位置関係で形成された歯車部と、を備えていることを特徴とするロータである。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のロータにおいて、前記磁石の前記位置規制部は、前記磁石の磁極を2分する分極ライン上に形成されていることを特徴とするロータである。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載されたロータを有するステッピングモータを備えていることを特徴とする時計である。