JP5927995B2 - 亜鉛系めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プレス成形時の摺動抵抗が小さく優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法に関するものである。
亜鉛系めっき鋼板は自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用され、そのような用途では、プレス成形を施されて使用に供される。しかし、亜鉛系めっき鋼板は冷延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。これはプレス金型での亜鉛系めっき鋼板の摺動抵抗が冷延鋼板に比べて大きいことが原因である。すなわち、金型とビードでの摺動抵抗が大きい部分で表面処理鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすい。特に、亜鉛系めっき鋼板では、金型にめっきが付着することにより、更に摺動抵抗が増加する型カジリが起こる。このため、連続プレス成形の途中から割れが発生するなど、自動車の生産性に深刻な悪影響を及ぼす。
一方で、亜鉛系めっき鋼板使用時のプレス成形性を向上させる方法としては、高粘度の潤滑油を塗布する方法が広く用いられる。しかし、この方法では、潤滑油が高粘性であるため、塗装工程で脱脂不良による塗装欠陥が発生する。また、プレス時の油切れにより、プレス性能が不安定になる等の問題がある。このため、亜鉛系めっき鋼板自身のプレス成形性の改善が要求されている。
上記の問題を解決する方法として、特許文献1および特許文献2には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことにより、亜鉛を主体とする酸化膜を形成させて溶接性および加工性を向上させる技術が開示されている。
特許文献3には、リン酸ナトリウム5〜60g/Lを含みpH2〜6の水溶液にめっき鋼板を浸漬する、上記水溶液中で電解処理を行う、または上記水溶液を塗布することにより、亜鉛系めっき鋼板表面に、P酸化物を主体とした酸化膜を形成して、プレス成形性および化成処理性を向上させる技術が開示されている。
特許文献4には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理、または加熱処理を行い、Ni酸化物を生成させることにより、プレス成形性および化成処理性を向上させる技術が開示されている。
特許文献5には、溶融亜鉛めっき鋼板を、pH緩衝作用を有する酸性溶液に接触させ、接触終了後に数秒〜数十秒放置した後水洗乾燥することにより、溶融亜鉛めっき鋼板の表面に亜鉛系酸化物層を形成し、プレス成形性を向上させる技術が開示されている。
特開昭53−60332号公報 特開平2−190483号公報 特開平4−88196号公報 特開平3−191093号公報 特開2004−3004号公報
自動車外板に多く使用される比較的強度の低い亜鉛系めっき鋼板に対して、上記の先行技術は有効である。しかしながら、プレス成形時の面圧が上昇する高強度亜鉛系めっき鋼板の場合には、皮膜の磨耗量が増加するため、摺動距離が一定量を超えると型カジリが発生する。このため、十分な効果を得ることができない。近年、二酸化炭素排出規制強化の観点から、車体軽量化の目的で高強度亜鉛系めっき鋼板の使用比率が増加する傾向にある。このため、型カジリの抑制は更に深刻な問題である。
本発明は上記の問題点を改善し、プレス成形時の面圧が上昇する高強度亜鉛系めっき鋼板などの難成形材料においても、型カジリを抑制して、優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決すべく、種々の検討を行った。その結果、鋼板に亜鉛系めっきを施した後、酸性溶液に接触させて亜鉛系めっき鋼板表面に亜鉛系酸化物層を形成させる亜鉛系めっき鋼板の製造方法において、pH緩衝作用を有する酸性溶液中にInを含有させることが、耐かじり性に対して非常に有効であることを見出した。
本発明は、この知見に基づくものである。その要旨は以下の通りである。
[1]鋼板に亜鉛系めっきを施し、pH緩衝作用を有する酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜60秒放置した後に水洗することにより亜鉛系めっき鋼板表面に亜鉛系酸化物層を形成する亜鉛系めっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液中に、Inを含有させることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[2]前記酸性溶液中に、Inの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物のうちの少なくとも1種を、Inイオン濃度として0.1〜50g/Lの範囲で含有させることを特徴とする[1]に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[3]前記pH緩衝作用を有する酸性溶液として、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩のうちの少なくとも1種を含み、pHが1.0〜5.0の範囲にある酸性溶液を用いることを特徴とする[1]または[2]に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[4]前記酸性溶液に接触後、亜鉛系めっき鋼板表面に形成される液膜の付着量を1g/m以上15g/m以下にすることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
なお、本発明の亜鉛系めっき鋼板とは、鋼板上に亜鉛を主体とするめっき皮膜が形成された鋼板であり、電気亜鉛系めっき鋼板、溶融亜鉛系めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等をいう。
本発明によれば、プレス成形時の面圧が上昇する高強度亜鉛系めっき鋼板の場合においても、型カジリを抑制して、優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板を製造することができる。
平板摺動試験機を示す概略正面図 図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図(ビード形状1)
本発明の製造方法では、常法により得られる亜鉛系めっき鋼板をpH緩衝作用を有する酸性溶液に接触させ、その後、1〜60秒放置した後、水洗・乾燥することが有効である。
本発明において、この酸性溶液中にInを含有させることにより、耐型カジリ性が飛躍的に向上する。このメカニズムについては、以下のように考察することができる。
亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させると、鋼板側からは亜鉛の溶解が生じる。この亜鉛の溶解と同時に水素発生反応が生じる。このため、亜鉛の溶解が進行すると、溶液中の水素イオン濃度が減少することから、溶液のpHが上昇する。その結果、亜鉛系めっき鋼板表面に亜鉛を主体とする酸化物層が形成されると考えられる。この亜鉛系めっき鋼板表面に形成された亜鉛系酸化物層が、亜鉛系めっき鋼板表面と金型との接触を抑制し、耐型カジリ性が向上すると考えられる。さらに、前記酸性溶液中にInを含有させることにより、亜鉛系酸化物層とともに、Inが金属として析出する。その結果、軟質で変形しやすい金属Inが、摺動時のせん断抵抗を低減させると考えられる。これにより、亜鉛系酸化物層の摩耗量が減少し、耐型カジリ性が飛躍的に向上すると考えられる。
本発明におけるInとしては、Inの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物のうちの少なくとも1種を前記酸性溶液中に含有させることが好ましい。この中でも、コストや生産性の点から、硫酸塩を用いることが好ましい。
その含有量としては、Inイオン濃度が0.1〜50g/Lの範囲が好ましい。含有量が0.1g/L未満では、亜鉛系めっき鋼板表面に析出する金属Inの量が少ないため摺動時のせん断抵抗を低減させることができない。このため、高面圧条件において、優れた耐型カジリ性を得ることができない。一方、含有量が50g/Lを超えると、亜鉛系めっき鋼板表面に析出する金属Inが多くなるため、化成処理性や耐食性、溶接性が劣化する。
本発明における酸性溶液としては、pH緩衝作用を有する酸性溶液を用いる。pH緩衝作用を有する酸性溶液を使用すると、亜鉛が溶解して、水素発生反応が生じても、溶液のpH上昇が緩やかになる。その結果、さらに亜鉛の溶解が進行する。したがって、耐型カジリ性の向上に十分な亜鉛系酸化物層が生成する。一方で、pH緩衝作用を持たない酸性溶液を使用すると、溶液のpHが瞬時に上昇することから、亜鉛の溶解が進まない。その結果、耐型カジリ性の向上に十分な亜鉛系酸化物層を得ることができない。
pH緩衝作用を有する酸性溶液のpHとしては、1.0〜5.0であることが好ましい。酸性溶液のpHが1.0未満では、亜鉛の溶解は促進されるものの、酸化物が生成しにくくなる。一方、酸性溶液のpHが5.0を超えると、亜鉛の溶解速度が遅くなる。
このようなpH緩衝作用を有する酸性溶液としては、酸性領域でpH緩衝性を有するものであれは特に制限されないが、例えば、酢酸ナトリウム(CHCOONa)などの酢酸塩、フタル酸水素カリウム((KOOC))などのフタル酸塩、クエン酸ナトリウム(Na)やクエン酸二水素カリウム(KH)などのクエン酸塩、コハク酸ナトリウム(Na)などのコハク酸塩、乳酸ナトリウム(NaCHCHOHCO)などの乳酸塩、酒石酸ナトリウム(Na)などの酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩のうちの少なくとも1種以上を含む酸性溶液を用いることができる。この中でも、コストや生産性の点から、酢酸塩、特に酢酸ナトリウムを含むことが好ましい。
また、その濃度としては、5〜50g/Lの範囲であることが好ましい。前記濃度が5g/L未満では、亜鉛の溶解とともに溶液のpHが瞬時に上昇し、耐型カジリ性の向上に十分な酸化物層を形成することができない。一方で、濃度が50g/Lを超えると、亜鉛の溶解が促進され、めっき層の損傷が激しくなる。その結果、本来の防錆鋼板としての役割が失われる。なお、pH緩衝作用を有する酸性溶液中に含まれるS、N、P、B、Cl、Na、Mn、Ca、Mg、Ba、Sr、Siなどの不純物が酸化物層に取り込まれていても、本発明の効果が損なわれることはない。
亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させる方法としては、特に制限はなく、例えば、亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に浸漬する方法、亜鉛系めっき鋼板に酸性溶液をスプレーする方法、塗布ロールを介して酸性溶液を亜鉛系めっき鋼板に塗布する方法等が挙げられる。
酸性溶液への接触後は、最終的に酸性溶液が薄い液膜状で亜鉛系めっき鋼板表面に存在することが好ましい。亜鉛系めっき鋼板表面に存在する液膜の付着量としては、1g/m以上15g/m以下であることが好ましい。亜鉛系めっき鋼板表面に存在する液膜の付着量が1g/m未満では、亜鉛系めっき鋼板表面に所望厚さの酸化物層を形成することができない。一方で、亜鉛系めっき鋼板表面に存在する液膜の付着量が15g/mを超えると、亜鉛の溶解が生じても溶液のpHが上昇せず、次々と亜鉛の溶解が生じるのみであり、亜鉛系酸化物層を形成するまでに長時間を有する。さらに、めっき層の損傷も激しく、本来の防錆鋼板としての役割も失われる。なお、液膜の付着量の調整は、絞りロール、エアワイピング等により行うことができる。
また、酸性溶液への接触後、水洗までの時間(水洗までの放置時間)は、1〜60秒必要である。水洗までの時間が1秒未満であると、溶液のpHが上昇し亜鉛を主体とする酸化物層が形成される前に、酸性溶液が洗い流される。このため、耐型カジリ性の向上効果が得られない。また、60秒を超える放置を行っても、亜鉛系酸化物層の量に変化が見られないためである。
酸性溶液に接触後、水洗時に酸性溶液を完全に除去できない場合、鋼板の長期間保存時に錆が発生しやすくなる。かかる錆発生を防止する観点から、水洗の前後でアルカリ性溶液と接触させて、鋼板表面に残存している酸性溶液を中和する処理を施すことが好ましい。接触方法としては、アルカリ性溶液に浸漬あるいはアルカリ性溶液をスプレーするなどの方法であればよい。また、表面に形成された亜鉛系酸化物層の溶解を防止するため、pHは12以下のアルカリ性溶液、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどを用いることが好ましい。なお、アルカリ性溶液接触後、さらに水洗を行うこともできる。
本発明では、酸性溶液に接触させる前に、亜鉛系めっき処理を行う必要がある。また、好ましくは調質圧延を施すことができる。例えば、溶融亜鉛めっきを行う場合は、めっき浴中にAlが添加されていることが必要である。Al以外の添加元素成分としては特に限定されない。すなわち、Alの他に、Pb、Sb、Si、Sn、Mg、Mn、Ni、Ti、Li、Cuなどが含有または添加されていても、本発明の効果が損なわれるものではない。調質圧延は、通常、材質調整が主目的であるが、本発明では、同時に鋼板表面に存在するAl系酸化物層の一部を破壊する効果もある。
調質圧延後、酸性溶液に接触させて亜鉛系酸化物層を形成する前に、アルカリ性溶液に接触させてもよい。調質圧延時に圧延ロールとの接触により表層のAl酸化物は破壊されているものの一部残存する場合もある。このため、アルカリ性溶液に接触させることで、表層に残存したAl酸化物層を除去して表面をより活性化することができる。アルカリ性溶液に接触させる方法としては、特に制限はなく、浸漬あるいはスプレーなどで処理することができる。pHが低いと反応が遅く処理に長時間を要するため、pHは10以上であることが望ましい。上記範囲内のpHであれば溶液の種類に制限はなく、水酸化ナトリウムなどを用いることができる。
本発明の製造方法により得られる亜鉛系酸化物層としては、金属成分として亜鉛を主体とする酸化物、水酸化物をいう。例えば、鉄、Al等の金属成分を合計量として亜鉛よりも少なく含有する亜鉛系酸化物層や、硫酸、硝酸、塩素等のアニオンを合計量として酸素と水酸基のモル数よりも少なく含有する亜鉛系酸化物層も含まれる。
本発明において、亜鉛系めっき鋼板表面における亜鉛系酸化物層の厚さとしては、亜鉛系めっき鋼板の耐型カジリ性向上効果の点から、10nm以上が好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが最も好ましい。酸化物層の厚さを10nm以上にすることにより、金型と被加工物の接触面積が大きくなるプレス成形加工において、表層の酸化物層が摩耗した場合でも残存し、耐型カジリ性が低下しない。一方、酸化物層の厚さの上限は特に設けないが、500nm以下であることが好ましい。500nmを超えると、抵抗スポット溶接性や化成処理性を阻害する恐れがある。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
(発明例7)
表1に示す酸性溶液条件にて、以下の手順で亜鉛系めっき鋼板表面に亜鉛系酸化物層を形成した。まず、冷間圧延後焼鈍した980MPa級ハイテン板厚1.2mmの鋼板表面上に、常法により、溶融亜鉛めっき(GI)又は電気亜鉛めっき(EG)を施し、次に0.3%の伸長率で調質圧延を施した。調質圧延後、表面活性化処理として、pH10、温度50℃のアルカリ性溶液(0.5%水酸化ナトリウム水溶液)に浸漬した後水洗する処理を行った。表面活性化処理した後、酸性溶液槽で、酢酸ナトリウム30g/Lを含有し、35℃、pH1.5、硫酸インジウム1g/Lを含有させた酸性溶液に浸漬して引き上げた後、酸性溶液槽出側の絞りロールで鋼板表面上に付着させる液膜の付着量を調整した。液膜の付着量は、絞りロールの圧力を変化させることで、調整した。液膜の付着量調整後所定時間放置(保持)した後、pH10、温度50℃のアルカリ性溶液(0.5%水酸化ナトリウム水溶液)をスプレーして鋼板表面に残存している酸性溶液の中和処理を行い、その後50℃の温水を鋼板にスプレーして洗浄し、ドライヤーで乾燥し、亜鉛系めっき鋼板表面に亜鉛系酸化物層を形成した。
(発明例8〜21)
表1に示す酸性溶液および条件にて、発明例7と同様の手順で亜鉛系めっき鋼板表面に亜鉛系酸化物層を形成した。
(比較例1〜6)
表1に示す酸性溶液および条件にて、発明例7と同様の手順で亜鉛系めっき鋼板表面に亜鉛系酸化物層を形成した。なお、比較例1については、調質圧延のみを行い、調質圧延後に酸性溶液への接触による亜鉛系酸化物層形成処理を行わなかった。
次いで、上記方法で作成した溶融亜鉛めっき鋼板について、亜鉛系めっき鋼板表面の酸化物層膜厚、Inの定量及び同定、プレス成形時の耐型カジリ性をそれぞれ測定した。測定方法は以下のとおりである。
(1)酸化物層の厚さの測定
酸化物層の厚さの測定には蛍光X線分析装置を使用した。測定時の管球の電圧および電流は30kVおよび100mAとし、分光結晶はTAPに設定してO−Kα線を測定した。O−Kα線の測定に際しては、そのピーク位置に加えてバックグラウンド位置での強度も測定し、O−Kα線の正味の強度が算出できるようにした。なお、ピーク位置およびバックグラウンド位置での積分時間は、それぞれ20秒とした。また、適当な大きさに劈開した膜厚96nm、54nmおよび24nmの酸化シリコン皮膜を形成したシリコンウエハーも同時に測定し、測定したO−Kα線の強度と酸化シリコン膜厚とから、亜鉛系酸化物層の厚さを算出した。
(2)Inの同定
溶融亜鉛めっき鋼板上に析出したInの同定には、X線回折装置を使用した。Cu−Kα線を用い、入射角0.5°に設定して薄膜法によりX線回折図形を測定した。測定時の管球の電圧及び電流は、40kV及び50mAとした。得られたピークをICDDカード(05−0642)と照合して溶融亜鉛めっき鋼板上のInを同定した。
(3)耐型カジリ性の評価
プレス成形時の耐型カジリ性は、摺動試験で評価した。具体的には、酸化処理を施さない鋼板を用い、同一試験材で型カジリが発生するまで摺動試験を複数回行った。摺動試験の回数増加により摩擦係数が上昇し、型カジリが発生する。型カジリが発生した摺動試験での摩擦係数を基準値とした。該基準値は条件1、2、3別に決定した。酸化処理を施さない鋼板では摺動回数2〜5回で型カジリが発生した。次に、各試験材も同様に、同一試験材で摺動試験を複数回行い、摺動試験時の摩擦係数を各回について測定した。摩擦係数が各条件ごとの摩擦係数の基準値に上昇するまで摺動試験を繰り返し、該基準値に達する摺動試験回数を求めた。該基準値に達した摺動試験回数が11回以上であることが、型カジリが発生しにくく好ましい。なお、50回摺動試験を実施しても摩擦係数の上昇が認められない場合には、50回で試験を終了した。
図1は平板摺動試験機を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した耐型カジリ性評価用試料1を試料台2に固定した。試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押し上げることによりビード6による耐型カジリ性評価用試料1への押し付け荷重Nを測定するための第1ロードセル7がスライドテーブル支持台5に取り付けられている。上記押し付け力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するために第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取り付けられている。なお、潤滑油としてスギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを耐型カジリ性評価用試料1の表面に塗布して試験を行った。
図2は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である(以下ビード形状1)。ビード6の下面が耐型カジリ性評価用試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ12mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。
耐型カジリ性の評価に対しては、室温(25℃)において、高強度鋼板のプレス成形を想定した面圧になるよう押し付け荷重Nを400、1200、1600kgfで実施した。なお、試料の引抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度)は100cm/minで行った。これらの条件で、押し付け荷重Nと引抜き荷重Fを測定し、供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
ビード形状および押し付け荷重条件、引き抜き速度の組み合わせは以下の通りである。
条件1:ビード形状1 押し付け荷重400kgf 引き抜き速度100cm/min
条件2:ビード形状1 押し付け荷重1200kgf 引き抜き速度100cm/min
条件3:ビード形状1 押し付け荷重1600kgf 引き抜き速度100cm/min
使用した酸性溶液および得られた試験結果を表1に示す。
Figure 0005927995
表1の結果から、酸性溶液による処理を行っていない比較例1では、いずれの条件においても、繰返し摺動試験数回で摩擦係数が上昇するため型カジリが発生しており、耐型カジリ性に劣っている。Inを含有しない酸性溶液による処理を行った比較例2〜6では、条件1〜3において耐型カジリ性は若干向上しているものの、合格基準を下回った。
Inを含有する酸性溶液による処理を行った発明例7〜21では、いずれの条件においても、耐型カジリ性が飛躍的に向上している。また、溶融亜鉛めっき鋼板上のIn強度の増加も確認された。
また、いずれの発明例においても、溶融亜鉛めっき鋼板上のInは金属In(ICDDカード:05−0642)と同定した。
本発明の製造方法によって得られる亜鉛系めっき鋼板はプレス成形時の型カジリを抑制し、プレス成形性に優れることから、難成形材料を必要とする自動車車体用途を中心に広範な分野で適用することができる。
1 耐型カジリ性評価用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール
N 押付荷重
F 摺動抵抗力

Claims (3)

  1. 鋼板に亜鉛系めっきを施し、pH緩衝作用を有する酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜60秒放置した後に水洗することにより亜鉛系めっき鋼板表面に亜鉛系酸化物層を形成する亜鉛系めっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液中に、Inの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物のうちの少なくとも1種を、Inイオン濃度として0.1〜50g/Lの範囲で含有させることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記pH緩衝作用を有する酸性水溶液として、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩のうちの少なくとも1種を含み、pHが1.0〜5.0の範囲にある酸性溶液を用いることを特徴とする請求項に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記酸性溶液に接触後、亜鉛系めっき鋼板表面に形成される液膜の付着量を1g/m以上15g/m以下にすることを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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