JP5925946B1 - 複合和紙糸及びその製造方法、和紙糸織物、和紙糸編物 - Google Patents

複合和紙糸及びその製造方法、和紙糸織物、和紙糸編物 Download PDF

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Abstract

【課題】吸湿性と耐久性と良好な触感を併立させた、和紙を素材とする用品に用いる編織物とその編織物に用いる複合和紙糸を提供しようとする。【課題を解決するための手段】テープ状にスリットされた和紙を主成分としてなる和紙糸と、補強糸とが撚り合わされた状態の複合糸からなり、この複合糸中の和紙糸と補強糸との糸長差率Eが1.5〜12%である複合和紙糸である。さらに、引張り力−伸長率曲線における、伸長率E〜E+3.5%の伸長域の引張り力−伸長率曲線の平均勾配が、伸長率0%〜Eの伸長域の平均勾配の1〜2.5倍である複合和紙糸である。また、この複合和紙糸から得られた編織物である。【選択図】 図3

Description

本発明は、和紙を素材とする用品に用いる和紙糸織物、和紙糸編物に関する。とくには、耐久性に優れかつ長時間の使用時において足のムレが少なくまた足のダメージが少ないランニングシューズ等に好適に用いることのできる和紙糸織物に関する。またそれらの編織物に好適に用いられる複合和紙糸とその製造方法に関する。
ランニングシューズは、とくに長距離レースなどに使用される場合、足のムレが少ないことが重要な特性の一つである。このため、目開きの大きいラッセル編地などがアッパーの素材として用いられている(例えば特許文献1)。このような目開きの大きい編地は目開きのサイズが約1ないし数mmもあり、選手の走行時の足の発汗による水分を放出あるいは蒸発させるのには適している。しかし、走行中に汚水や砂などの微粒の異物がシューズの内側に侵入しやすいといえる。また、編地の組織によっては凹凸が大きくなるので、その場合は足に違和感がないとはいえない。
このため、目開きが少なくかつ吸湿性に優れて足の発汗による水分を外部に効率よく発散させ、これにより足のムレが少なくまた足のダメージが少ないアッパーの素材が求められている。
さらに、長距離レースでは、原始的な走りに立ち戻ってランニングシューズを裸足でじかに着用して使用するケースが少なからずある。裸足の走行は人間の走りにとって最も自然で足や全身に無理な負担がかからず疲労が少ないからであるといわれている。そのような使用態様にあっては、マメができたり、そのマメが走行中に破れたりするようなことがよくある。そのような足のダメージが発生しにくいランニングシューズが求められている。
また、ランニングシューズ用の織物に限らず、和紙からなる糸を素材とする、表面が平滑な高密度織物が求められている。
また、和紙からなる糸は製織や編成といった布帛製造における糸切れが多いという問題があった。
特開2005−160697号公報
本発明は、目開きが殆んどなくかつ吸湿性に優れて足の発汗による水分を外部に効率よく発散させ、これにより足のムレが少なくまた足のダメージが少ない、アッパーの素材に適した和紙糸織物を提供することを目的とする。
また、本発明は、目開きが殆んどなく表面が平滑な、和紙を素材とする高密度の和紙糸織物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、和紙糸の製織や編成における糸切れが多いという問題を改善することのできる複合和紙糸を提供することを目的とする。
本発明の要旨とするところは、テープ状にスリットされた和紙を主成分としてなる和紙糸と、補強糸とが分離可能撚係数70〜250で撚り合わされた状態の、複合糸からなり、前記補強糸は最大応力点伸度が8%以上であり、3%伸長時の引張り力が前記和紙糸の引張り強さの1/20以上であり、前記和紙糸の繊度と前記補強糸の繊度との比が1:1〜15:1であり、前記複合糸中の前記和紙糸と前記補強糸との糸長差率が1.5〜12%である複合和紙糸であるところにある。
前記複合和紙糸においては、Eを糸長差率と同じ値の率としたとき、引張り力−伸長率曲線における、伸長率E〜E+3%の伸長域の引張り力−伸長率曲線の平均勾配が、伸長率0%〜Eの伸長域の平均勾配の1〜2.5倍であり得る。
前記複合和紙糸においては、前記補強糸が熱融着性繊維を含んで成り得る。
前記複合和紙糸においては、前記補強糸がポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートとのサイドバイサイド型複合繊維からなるフィラメント糸であり得る。
また、本発明の要旨とするところは、前記複合和紙糸がさらに熱収縮されてなる複合和紙糸であるところにある。
さらに、本発明の要旨とするところは、前記複合和紙糸を準備し、該複合和紙糸を熱収縮させることを特徴とする複合和紙糸の製造方法であるところにある。
また、本発明の要旨とするところは、前記複合和紙糸の製造方法であって、撚係数が50〜200の前記和紙糸を準備する工程、前記和紙糸と前記補強糸とを引き揃えて該加撚和紙糸の加撚方向と逆方向に、該和紙糸の撚数の1.5〜3倍の撚数で加撚する工程を含む複合和紙糸の製造方法であるところにある。
また、本発明の要旨とするところは、前記複合和紙糸の製造方法であって、
前記テープ状にスリットされた和紙からなる実質的に無撚の前記和紙糸を準備する工程、
該和紙糸に水を付与して湿った和紙糸を得る工程、
該湿った和紙糸と前記補強糸とを引き揃え状態で撚係数が70〜250の撚数で加撚する工程
を含む複合和紙糸の製造方法であるところにある。
また、本発明の要旨とするところは、前記複合和紙糸の製造方法であって、
前記テープ状にスリットされた和紙からなる実質的に無撚の前記和紙糸を準備する工程、
該和紙糸に水を付与して湿った和紙糸を得る工程、
該湿った和紙糸を前記補強糸に対してオーバーフィードして両者を加撚機の加撚域に供給し、撚係数が70〜250の撚数で加撚する工程
を含む複合和紙糸の製造方法であるところにある。
また、本発明の要旨とするところは、前記複合和紙糸を経糸の少なくとも一部に用い、経糸における複合和紙糸の本数割合が30%以上である和紙糸織物であるところにある。
さらに、本発明の要旨とするところは、平織組織構造または綾織組織構造の織物であって、前記複合和紙糸を経糸とし、前記複合和紙糸を緯糸とし、緯糸織密度係数が35〜55である前記和紙糸織物であるところにある。
また、本発明の要旨とするところは、平織組織構造または綾織組織構造の織物であって、テープ状にスリットされた和紙を主成分としてなる和紙糸を緯糸とし、前記複合和紙糸を経糸とし、前記織物の緯糸織密度係数が35〜50である前記和紙糸織物であるところにある。
さらに、本発明の要旨とするところは、前記和紙糸織物がさらに熱収縮されてなる織物であり、該織物に用いられた複合和紙糸が前記複合和紙糸である和紙糸織物であるところにある。
また、本発明の要旨とするところは、前記和紙糸織物をアッパーに用いたランニングシューズであるところにある。
さらに、本発明の要旨とするところは、前記複合和紙糸を編成してなる和紙糸編物であるところにある。
前記和紙糸織物においては、前記補強糸が熱融着性繊維を含んで成り、該補強糸中で該熱融着性繊維同士が融着され得る。
前記和紙糸編物においては、前記補強糸が熱融着性繊維を含んで成り、該補強糸中で該熱融着性繊維同士が融着され得る。
本発明により、目開きが殆んどなく表面が平滑な、和紙を素材とする高密度織物が提供される。
本発明により、目開きが殆んどなくかつ吸湿性に優れて足の発汗による水分を外部に効率よく発散させ、これにより足のムレが少なくまた足のダメージが少ない、アッパーの素材に適した和紙糸織物が提供される。
さらに加えて、本発明により、和紙糸の製織や編成における糸切れが多いという問題を改善することのできる複合和紙糸が提供される。
またさらに加えて、本発明により、和紙糸の被覆性が良好な複合和紙糸が提供される。
筬打ち時の経糸の張力の変化を説明するための模式図。 本発明において用いられる和紙糸の代表的な引張り力−伸長率曲線。 本発明の複合和紙糸の代表的な引張り力−伸長率曲線。 本発明の複合和紙糸の引張り力−伸長率曲線の他の一例。 本発明の和紙糸織物の組織図の一例。 本発明の和紙糸織物の組織図の他の一例。 本発明の和紙糸織物の組織図のさらに他の一例。
本発明は和紙糸を用いた高織密度の和紙糸織物およびその織物に好適に用いることのできる複合和紙糸およびその製造方法に関する。また複合和紙糸を用いた編物に関する。
本発明の和紙糸織物は、和紙を主素材とする糸を少なくとも経糸の一部または全部に用い、かつ、和紙を主素材とする糸を少なくとも緯糸の一部または全部に用いた、織物である。この織物としては、平織または綾織の織物であることが好ましい。なお、この織物のこれら組織はマット織、うね織などの誘導組織、変化組織を含む。平織または綾織は糸の浮きが少ないので堅固な構造の織物が得られ、シューズなどのはげしい力が作用する用途に用いる織物の組織として適している。本発明の和紙糸織物はランニングシューズのアッパーなどに好適に用いられる。
本発明に用いられる和紙はこうぞ、みつまた、雁皮、麻類、針葉樹、広葉樹、笹等の和紙に適した原料植物を叩解して得られる繊維からなる和紙原料を漉いて作られる紙である。和紙の目付けは略10〜30g/m程度が製造技術上好ましいが、この範囲を超えて目付けが大きいものやこの範囲を超えて目付けが小さいものの使用も可能である。
本発明に用いられる和紙には20重量%以下であれば上記の和紙原料以外の原料繊維が含まれていてもよい。この和紙原料以外の繊維の含有率が20重量%を越えると、和紙特有の吸湿性、強度が劣って、本発明におけるランニングシューズ等の製品の特性に影響することがある。本発明に用いられる和紙においては、上記の和紙原料の含有率が90重量%以上であることが製品の性能上最も好ましい。
本発明に用いられる和紙を主素材とする糸(以下「和紙糸」と称する)は、和紙を細幅(例えば0.8〜30mm幅)のテープ状にスリットした和紙テープ(実質的に無撚の和紙糸)、あるいはこの和紙テープを加撚して得られるもの(加撚された和紙糸)、あるいは和紙テープと他の糸との合撚糸(加撚された和紙糸)である。すなわち、本発明に用いられる和紙糸は、テープ状にスリットされた和紙を主成分としてなる和紙糸である。和紙糸が和紙テープと他の糸との合撚糸であってもよいが、和紙糸には60重量%以上の和紙が含まれていることが和紙糸の良好な吸湿性やムレ感のなさという本来の性能を損なわないうえで必要である。和紙糸における和紙以外の糸の比率が40重量%以下であれば、良好な吸湿性や独特のサラッとした触感という和紙糸特有の性能が維持される。和紙糸は和紙のみからなることがさらに好ましい。和紙糸は単糸であってもよいが、双糸であってもよい。和紙糸の線密度(単位長さ当たりの重量)は1/60(g/m)〜1/8(g/m)であることが好ましい。すなわち、単糸の場合は60〜8番手であることが好ましい。和紙糸は加撚されていることが、糸の強度を得るうえでは好ましい。和紙糸の撚数については、撚係数Kが50〜150であることが好ましい。KはT/√Nで定義される値である(Tは糸の撚数(回/m)、Nは糸の番手(糸の線密度(g/m)の逆数)。
本明細書における糸の番手はメートル番手をいう。
なお、本明細書において「撚数」は、ことわりのない限りは単位長さ当たりの撚回数をいう。
和紙糸を用いた織物は、吸湿性に優れるので、ランニングシューズのアッパー等に適しているが、平織、または綾織構造の織物は、織物の織密度が高いと表面が緻密で平滑になり、かつ、繰り返し外力を受けた場合の形態安定性に優れる。この点で、本発明の和紙糸織物は平織構造の織物であることがさらに好ましい。
しかし、経糸の一部または全部に和紙糸を用いて織物を製造するとき、高織密度の織物を得るために筬打ち力を大きくすると、製織時に筬打ちにより発生する経糸張力(筬打ち力)で経糸の和紙糸が切断するというトラブルが起こりやすい。これは、和紙糸がたかだか4%前後あるいはそれ以下と極めて最大応力点伸度が小さい低伸度の糸であり、和紙糸にかかる糸の長手方向の衝撃力により切断されやすいことによる。また、和紙糸の初期引張り弾性率が50〜80cN/dtexほどと高くて、静的な織組織構造においても経糸がまがりにくくかつ伸びにくいという理由で高緯糸織密度の織物組織が得られにくいので無理に高密度の織物を得ようとするとその衝撃力がさらに大きくなることによる。とくに、平織、または綾織構造の織物は、糸の浮きが少ないので、この傾向が強い。
なお、経糸張力は経糸の1本1本に独立して発生するので、経糸に和紙糸以外の糸も配した(経糸の総本数Nが、和紙糸N本と和紙糸以外の糸N本の和)場合であっても、この和紙糸が筬打ち力で切断するというトラブルを避けることはできない。
本発明における初期引張り弾性率(G)は、繊度x(dtex)の糸を引張り試験機によりスパン間隔20cmで把持して引張り速度1mm/secで伸長し引張り応力が0.05cN/dtexがかかったときの糸の長さ(スパン)をL0とし、さらにその状態から糸を基準長の1%伸長したときの引張り荷重をW(cN)としたときG=(W−(0.05×x))×100/xで定義される値G(cN/dtex)である。
糸の引っ張り強度を向上のために主糸と補強糸とを単純に合撚して組み合わせることは常套手段であるが、単に補強糸として高強力の糸を用いるだけでは、本発明において耐筬打ち衝撃張力の向上という効果を得ることが難しい。
例えば、補強糸の初期引張り弾性率が低い場合は、そのような単純な合撚糸を経糸として織物を製造するとき、筬打ちにより発生する経糸張力で補強糸が主糸である和紙糸の切断伸度(最大応力点伸度)まで伸びたときに和紙糸が切断される傾向があるので、筬打ち衝撃張力の向上という効果を得ることが難しい。
また、補強糸の初期引張り弾性率が和紙糸と同程度以上と高い場合は、そのような単純な合撚糸は和紙糸と同程度あるいはそれ以上の高弾性率を有するので、織組織のなかで経糸がまがりにくく従って高緯糸織密度の織物が得られにくい。
本発明者は和紙糸を用いて高織密度の織物を得ることを検討し、本発明に至った。
本発明の和紙糸織物においては、織物の経糸の耐筬打ち衝撃張力の向上を目的として和紙糸の他に補強糸が用いられる。補強糸と和紙糸とが複合されて本発明の複合和紙糸が得られる。この複合和紙糸は織物の経糸に用いられる。複合和紙糸は緯糸にも用いてよい。この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされた状態の複合糸である。
本発明においては、和紙糸と補強糸との「撚り合わされた状態」とは、和紙糸と補強糸とが複合された複合糸条について、まっすぐな状態の複合糸条の一端を固定し、他端を複合糸条の長手方向を軸として一方向に所定の回数回転させることにより和紙糸と補強糸とを分離した状態にすることが出来るように、和紙糸と補強糸とが複合され、和紙糸と補強糸とが互いに複合糸条の糸軸を軸とする螺旋状(二重螺旋状)に絡み合った状態をいう。本明細書においては、このような態様における単位長さの複合和紙糸の分離に要する回転の数を分離可能撚数(T/m)と定義する。
和紙糸と補強糸との「撚り合わされた状態」により、本発明の複合和紙糸は糸軸方向にしごき力を受けた場合に形態がくずれにくい。このようなしごき力は糸がガイドによりこすられながら走行する場合や、編成中に糸が編針にかかった状態などに発生する。
補強糸としてはポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨンなどの人造繊維からなるフィラメント糸(マルチフィラメント糸)、加工糸、あるいはスパン糸が挙げられる。綿、麻、絹などの紡織用天然繊維からなるスパン糸あるいは混紡糸、あるいはフィラメント糸であってもよい。
複合和紙糸における和紙糸の繊度と補強糸の繊度との比は、1:1〜15:1であることが好ましい。複合和紙糸における和紙糸の比率がこの範囲を下回ると、本発明におけるランニングシューズ等の製品の特性に影響する。すなわち、製品の吸湿性や足の発汗による水分を外部に効率よく発散させこれにより足のムレが少なくまた足のダメージが少ないという性能が劣ることになる。複合和紙糸における和紙糸の比率がこの範囲を上回ると、補強糸を用いることによる可織性の効果が発揮されにくくなる。
さらに、この複合和紙糸に用いられる補強糸の初期引張り弾性率は20〜150cN/dtexであることが好ましい。補強糸の初期引張り弾性率が20cN/dtexを下回ると、筬打ちにより発生する経糸張力で補強糸が和紙糸の切断伸度近くまで伸びたときに補強糸にかかる力が小さく、筬打ちにより和紙糸が切断される要因となりかねないので、筬打ち衝撃張力の向上という効果を得るうえでは、補強糸の初期引張り弾性率が20cN/dtexであることが好ましい。補強糸の初期引張り弾性率が20cN/dtex以上であると、筬打ちにより発生する経糸張力で補強糸が和紙糸の切断伸度まで伸びたときに和紙糸が切断される傾向がきわめて小さくなり、筬打ち衝撃張力の向上という効果を得るうえで好ましい。補強糸の初期引張り弾性率が150cN/dtexを超えると、複合和紙糸の初期引張り弾性率が大きくなり、静的な織組織構造において経糸がまがりにくくかつ伸びにくい傾向があるので高緯糸織密度の織物組織を得るうえで最適とはいえない。
本発明において用いられる複合和紙糸においては、複合和紙糸中に存在する和紙糸の長さと、この複合和紙糸中に存在する補強糸の長さが異なる。くわしくは、所定の長さLcに切断された複合和紙糸(切断複合和紙糸)を和紙糸と補強糸とに分離して取り出されたその和紙糸の長さをLa、その補強糸の長さをLbとしたとき、((La−Lb)/Lb)×100%の値Rが1.5〜12%である。Rが4〜9%であることが高緯糸織密度の織物組織を得るうえでさらに好ましい。Rは、切断複合和紙糸を解撚などにより和紙糸と補強糸とに分離してそれぞれの長さを計測して求めることができる。Lcの値は特に限定されるものではないが、20〜30cmであることが測定の容易さから好ましい。
Rのこのような範囲でLaがLbより大きいことと、複合和紙糸における上述の撚り合わされた状態により、和紙糸は複合和紙糸中で複合和紙糸の糸軸を軸とする略螺旋状の形状をなすような捲縮状態となって存在している。本発明においては、このRを(複合和紙糸中の和紙糸と補強糸との)糸長差率と定義する。なお、所定の長さLcに切断された複合和紙糸から分離された和紙糸および補強糸の長さは、その分離操作により生じた撚を必要に応じて戻して、和紙糸および補強糸の撚数が複合される前の和紙糸および補強糸の撚数となるようにして測定された長さである。
本発明における糸の長さは、糸に荷重0.05cN/dtexの伸長荷重がかかっているときの長さである。
製織時に経糸張力が作用すると、上述のように複合和紙糸中に存在する和紙糸の長さと、この複合和紙糸中に存在する補強糸の長さが異なるため、まず複合和紙糸中の補強糸に張力が発生して補強糸が伸長する(Aステージ)。和紙糸はそのAステージにおいては、複合和紙糸の長手方向に、略螺旋状捲縮状態からほぼ直線状になるまで引き伸ばされるが、和紙糸にかかる主な張力は略螺旋状捲縮状態の和紙糸をほぼ直線状になるまで引き伸ばすに要する力であり、この張力で和紙糸が切断することはない。
複合和紙糸がさらに伸長すると和紙糸はほぼ直線状の状態となり和紙糸に大きな張力が発生する。Aステージに次いで経糸張力が増加すると、和紙糸と補強糸の両者の長手方向に糸を伸長する経糸張力が作用する(Bステージ)。このBステージにおいて筬打ちにより経糸張力が最大に達する。Bステージでは高い緯糸織密度を得るのに必要な高い経糸張力を和紙糸を主体として補強糸との両者で受け持つ。このとき、Aステージの存在により、筬打ちにより経糸が伸びて経糸張力が最大に達するまでに和紙糸が和紙糸の切断伸度以上に伸びて切断するトラブルを避けることができる。
Rが1.5%未満であると、Aステージがないか、極めて短いので、Bステージの初期で和紙糸に過重の張力がかかり、和紙糸の切断が生じやすい。Rが12%を超えて大きいと、和紙糸の螺旋構造が伸び切らないで織り込まれAステージで1回の筬打ちが終了する場合があり、和紙糸織物の表面の平滑性が悪くなるおそれがある。
本発明の複合和紙糸においては、Rが4〜9%であることが和紙糸織物の表面の平滑性のうえでさらに好ましい。和紙糸が切断するトラブルを避けることと和紙糸織物の表面の平滑性のうえで、Rが5〜7%であることがさらに好ましい。
また、Bステージの初期における経糸張力は、筬打ちによる経糸張力のピークの値に比べれば小さいので、補強糸の3%伸長時の引張り力は和紙糸の引張り強さの1/20以上であることが好ましい。
複合和紙糸は、和紙糸と、補強糸とが撚り合わされた状態であるので、複合和紙糸の伸長に伴い補強糸が和紙糸をその径方向に圧縮して拘束する力が生じ、このため前記のAステージにおいても、すなわち、複合和紙糸のAステージに相当する初期の伸長域においても和紙糸が補強糸とともに伸ばされる力が生ずると思われる。その結果、複合和紙糸の初期の伸長域における引張り力−伸長率曲線の勾配がBステージに相当する伸長域における引張り力−伸長率曲線の勾配に近いものになり、引張り力−伸長率曲線がなめらかになって、複合和紙糸が和紙糸の切断伸度を越えた急激な筬打ち力に耐えることができるようになると思われる。
このためには、複合和紙糸は、分離可能撚係数Ksが70〜250であることが好ましい。分離可能撚係数KsはTs/√Nで定義される値である(Tsは糸の分離可能撚数(回/m)、Nは複合和紙糸の番手)。分離可能撚係数Ksが100〜250であることが、急激な筬打ち力に耐えることができるうえでさらに好ましい。Ksが150〜250であることが、急激な筬打ち力に耐えることができるうえで最も好ましい。
Ksが70を下回ると複合和紙糸のAステージに相当する初期の伸長域において補強糸が和紙糸を拘束する力が少なく、Bステージにおいて和紙糸に筬打ちにより過重の衝撃力が生じて複合和紙糸が切断するおそれがある。Ksが250を越えると、和紙糸織物の表面の平滑性が悪くなる。また、撚ビリが生ずる領域に近づくので複合和紙糸の強力も低下して好ましくない。
本発明における糸の5%伸長時の引張り力は、糸を引張り試験機によりスパン間隔(つかみ具間隔)200mmで両端把持して引張り速度200mm/minで伸長し引張り応力が0.05cN/dtexがかかったときの糸の長さ(スパン)を基準長とし、さらにその状態から糸を基準長の5%伸長したときの引張り荷重で定義される値である。
本発明における糸の最大応力点伸度は、糸を引張り試験機によりスパン間隔20cmで両端把持して引張り速度200mm/minで伸長し引張り応力が0.05cN/dtexがかかったときの糸の長さ(スパン長)を基準長L0とし、さらにその状態から糸を伸長し最大応力に達したときの糸の長さ(スパン長)をL1としたとき、((L1−L0)/L0)×100(%)で定義される値である。
本発明における糸の引張り強さは、糸が最大応力点伸度に達したときの力をいう。
なお、本明細書における糸の物性、形態に関する値は20℃、65%RHの環境下で測定されるものである。また、この値は、ランダムにサンプリングされた10個の試料について得られた測定値の平均である。
また、前述のように補強糸の初期引張り弾性率は20〜300cN/dtexであることが好ましいが、補強糸の初期引張り弾性率が20cN/dtex未満であるとBステージにおいて経糸張力が和紙糸に過重にかかるのでBステージにおいて和紙糸が切断するおそれがある。
(製造方法1)
複合和紙糸の製造方法としては、加撚された和紙糸と補強糸とを引き揃えて、加撚された和紙糸の加撚方向と逆方向に加撚する逆撚工程、を含む製造方法が挙げられる。すなわち、この場合、逆撚工程に供する和紙糸は撚られた状態の和紙糸である。この加撚された状態の和紙糸は、和紙テープを加撚して得られたものである。あるいは、和紙テープと他の糸との引きそろえ糸を加撚して得られたものである。和紙糸が撚られた状態の単糸である場合は、逆撚工程に供する和紙糸はその撚方向にさらに追撚したものであってもよい。この場合は、逆撚工程に供する和紙糸の撚数は、追撚前の撚数と追撚の撚数との和である。和紙糸は双糸であってもよい。この場合、逆撚工程の撚方向は和紙糸の撚方向と逆方向(逆撚)である。和紙糸が双糸の場合、逆撚工程に供する和紙糸は上撚方向にさらに追撚したものであってもよい。また、和紙糸が双糸である場合は、逆撚工程に供する和紙糸の撚数は和紙糸の上撚数である。双糸の和紙糸が追撚された場合は、逆撚工程に供する和紙糸の撚数は追撚前の上撚数と追撚数との和が複合和紙糸の撚数である。また、この場合、逆撚工程の撚方向は逆撚工程に供する和紙糸の上撚方向と逆方向である。
この製造方法においては、和紙糸本来の撚り縮み及び/または順撚工程での和紙糸(または和紙テープ)の撚り縮みが逆撚工程で戻されるので、逆撚工程で、補強糸の撚り縮みが和紙糸の撚り縮みより大きくなり、ある一定の長さの複合和紙糸中で和紙糸または和紙テープと補強糸との糸長差が生ずるとともに、和紙糸と補強糸とが互いに複合和紙糸の糸軸を軸とする螺旋状に絡み合う糸構造が生ずる。すなわち、順撚工程及び逆撚工程での撚り数を調整することにより、本発明の複合和紙糸が得られる。逆撚工程に供する補強糸は、無撚の、または糸収束のために撚係数が20以下に加撚されたマルチフィラメント糸、あるいは双糸のスパン糸が好ましい。
逆撚工程に供する和紙糸の撚係数(双糸の場合は上撚の撚係数)は50〜200であることが好ましい。逆撚工程における引き揃え糸の撚数は、逆撚工程に供する和紙糸の撚数の1.5〜3倍であることが好ましい。このような逆撚りにより、和紙糸自体の撚を有するとともに、その和紙糸と補強糸とが互いに複合和紙糸の糸軸を軸とする螺旋状に絡み合って適度に撚り合わされた状態が得られる。
(製造方法2)
複合和紙糸の他の製造方法としては、加撚された和紙糸(糸A)と補強糸(糸B)とを併行して連続的にリング撚糸機のような加撚機の加撚域に供給して加撚して前記複合和紙糸を得る合撚工程、を含む製造方法が挙げられる。この場合、合撚工程において加撚域に和紙糸をオーバーフィードする。この合撚工程の撚方向は、加撚された和紙糸の撚方向は、和紙糸の撚方向と逆方向である。
これにより、ある一定の長さの複合和紙糸中で和紙糸と補強糸との糸長差が生ずるとともにその和紙糸と補強糸とが互いに複合和紙糸の糸軸を軸とする螺旋状に絡み合う糸構造が生ずる。オーバーフィードとは、糸Aと糸Bを加撚域に連続して同時供給する際に、ある一定時間中に加撚域に供給される糸Aの長さaが糸Bの長さbより大きいように供給することをいう。a/b(オーバーフィード率)の値は、1.015〜1.12であることが好ましい。a/bの値がこの範囲をはずれると、((La−Lb)/Lb)×100%の値Rが1.5〜12%である複合和紙糸を得ることが難しい。
加撚域に和紙糸をオーバーフィードする方法としては、例えば、加撚された和紙糸と補強糸とを異なる速度(和紙糸の供給速度>補強糸の供給速度)でリング撚糸機の加撚域に同時供給する方法が挙げられる。この速度差(単位時間に加撚域に供給される補強糸の長さとその単位時間に加撚域に供給される和紙糸の長さの差)で加撚域に和紙糸がオーバーフィードされることになる。
(製造方法3)
製造方法2と同様の目的で加撚域に加撚された和紙糸をオーバーフィードする他の方法としては、例えば、加撚された和紙糸と補強糸とを引き揃えてリング撚糸機の1のフィードロールに同時供給し、このとき、供給される補強糸に加撚域における補強糸の張力より大きい所定の張力をかけておく方法が挙げられる。この場合、加撚域で補強糸の張力の大部分が開放されることにより、補強糸が長手方向に弾性回復し、結果的に加撚域に和紙糸がオーバーフィードされることになる。
(製造方法4)
複合和紙糸のさらに他の製造方法としては、和紙糸を補強糸にカバリングしたのち補強糸の巻付け方向と同方向に追撚する方法が挙げられる。カバリングは、例えば、和紙糸を巻いた中空ボビンを回転させ、補強糸をその中空ボビンの中空部を通過させることにより補強糸のまわりに和紙糸を連続的に巻きつけることにより行うことができる。
(製造方法5)
また、本発明の複合和紙糸は、実質的に無撚でかつ湿った和紙テープと補強糸とを引き揃えた状態(引き揃え状態)で加撚することによって得ることができる。実質的に無撚とは、製造工程中に発生する解舒撚りなどの不可避の撚りを除いては可撚されていない状態をいう。解舒撚りは、巻糸体から糸(和紙テープ)を縦に引き出すことにより生ずる撚りであり、巻糸体の径によるが、その撚数は例えば2〜30T/mである。また、その他の要因で和紙テープに付加された撚りであっても撚数が100T/m以下であれば被覆性に影響する度合いは少なく、本発明の効果を得ることができる。すなわち、本明細書においては実質的に無撚の和紙テープは100T/m以下の撚数の和紙テープをいう。
加撚は加撚機構を有する加撚機により行うことが出来る。この加撚機としては、リングツイスタ、アップツイスタ、ダブルツイスタなどが例示される。加撚の撚係数は70〜250であることが好ましい。撚係数がこの範囲を下回ると良好な被覆が得られないことがある。撚係数がこの範囲を上回ると、糸が硬くなる傾向があり、製品の良好な風合いや触感が損なわれることがある。撚係数が80〜150であることが、良好な被覆と程度の触感を得るうえでさらに好ましい。
加撚機としてリングツイスタを用いる場合は、実質的に無撚でかつ湿った和紙テープと補強糸とを加撚機の加撚域にフィードロールなどを用いて併行して等速で同時供給することによって得ることができる。
湿った和紙テープを得る方法としては、和紙テープの巻き体、あるいは和紙テープと補強糸との引き揃え糸の巻き体を水に浸漬して和紙テープに吸水させたのちその水から取り出す方法、加撚域に向けて走行する和紙テープに水を、噴霧あるいは滴下、あるいは流下する方法などが挙げられる。あるいは、加撚域に向けて走行する和紙テープを、表面に水を付着させたいわゆるキスロールに接触させる方法、あるいは、加撚域に向けて走行する和紙テープを、水分を含むフェルト等の含水体に接触させる方法などが例示されるがこれらに限定されない。
加撚機としてダブルツイスタやアップツイスタを用いる場合は、和紙テープを湿った状態にする方法としては、和紙テープと補強糸とを引き揃えて巻き取って巻き糸体となし、その巻き糸体を加撚機に仕掛ける前に水に浸漬して和紙テープに吸水させたのちその水から取り出すことにより和紙テープを構成する和紙糸に水を付与するという方法や、和紙テープと補強糸とを引き揃えて巻き取って巻き糸体となす前に和紙テープに水分を付与することによって和紙テープを湿った状態にするという方法が例示される。
このような方法で得られた複合和紙糸は、和紙テープが補強糸をきわめて良好に被覆している。この良好な被覆性は、製造方法5において無染色の和紙テープと濃色に染色された補強糸を用いて得られた複合和紙糸により確認することができる。すなわち、そのようにして得られた複合和紙糸により、和紙テープが補強糸をきわめて良好に被覆しているので補強糸が殆んど糸表面に露出せず、外観上は補強糸を目認することがきわめて難しいことが確認できる。
従って、製造方法5により得られた複合和紙糸は、製織性が良好であるばかりではなく、その複合和紙糸を用いた編織物は、表面に補強糸が露出することが殆んどない。これにより、極めて良好な和紙調の触感が得られる。
(製造方法6)
また、本発明の複合和紙糸は、実質的に無撚でかつ湿った和紙テープと補強糸とのあいだに速度差を与えて、両者を製造方法2で用いると同様な加撚機の加撚域にフィードロールなどを用いて供給し撚係数70〜250で加撚することによって得ることができる。すなわち、実質的に無撚でかつ湿った和紙テープを補強糸に対してオーバーフィードして両者を撚糸機の加撚域に供給することによって得ることができる。この場合のオーバーフィード率の値は、1.015〜1.12であることが好ましい。加撚機としてはリングツイスタを用いることができる。
製造方法6により、和紙テープが、補強糸を製造方法5で得られる複合和紙糸よりもさらに良好に補強糸を被覆している複合和紙糸が得られる。また、製造方法6により得られる複合和紙糸は、製造方法5で得られる複合和紙糸よりも高伸度であり、製編性にまさる。
製造方法5においては、和紙テープは湿った状態であることにより、その長手方向に引き延ばされやすくなっており、加撚時に生ずる和紙テープをその長手方向に延ばす力で容易に引き延ばされて補強糸とのあいだに糸長差が生じ、このため、供給される和紙テープが実質的に無撚であることと相俟って和紙テープの被覆性が向上することが良好なカバリング性が得られる主要因であると推定される。製造方法6においては、この引き延ばされ効果に加えてオーバーフィードの効果により、和紙テープの被覆性がさらに向上すると思われる。
製造方法5,6においては、加撚域に供される和紙テープは湿った和紙テープである。湿った和紙テープとは、和紙テープを構成する和紙が、30重量%以上の水分率で水分を保持している状態の和紙テープをいう。この水分率が50重量%以上であることが製造方法5,6において和紙テープの被覆性のよい複合和紙を得るうえでさらに好ましい。水分率は、湿った和紙テープの重量をW、この湿った和紙テープを105℃20分で乾燥して得られた乾燥和紙テープの重量をWとしたときの、((W−W)/W)×100(%)の値として得られる。この水分は和紙構成するセルロース繊維の吸湿によりセルロース繊維に保持された水分や、和紙構成するセルロース繊維の表面に吸着された水分や、和紙構成するセルロース繊維間に毛細管現象により保持されている水分などにより構成されている。好ましい水分率の上限は特に限定されるものではないが、過剰の水分は例えば加撚時などの工程中に生ずる、糸の回転による遠心力や慣性力や自然落下などにより加撚などの工程中に意識的な余分の操作をともなうことなく除去される。
(製造方法7)
またさらには、本発明において用いられる複合和紙糸は、熱収縮しにくいという和紙糸の性質を利用して、和紙糸と補強糸とを引き揃えたのち加撚して得られた合撚糸あるいは製造方法1〜6のいずれかの方法で得られた複合和紙糸、を加熱して補強糸を熱収縮させることによって得ることができる。
製造方法1〜6のいずれかの方法に対応する製造方法7により得られる複合和紙糸は、その対応の製造方法1〜6のいずれかの方法で得られる複合和紙糸よりも高伸度であり、製編性にまさる。
製造方法1〜7で得られる複合和紙糸は、和紙糸と、補強糸とが互いに複合和紙糸の糸軸を軸とする螺旋状に絡み合って撚り合わされた状態である。この絡み合いが充分であると、複合和紙糸の伸長に伴い補強糸が和紙糸をその径方向に圧縮して拘束する力が生じ、このため前記のAステージにおいても、すなわち、図1に示す複合和紙糸の「引張り力−伸長率」曲線のモデルにおいて、複合和紙糸のAステージに相当する初期の伸長域AAにおいても和紙糸が補強糸とともに伸ばされる力が生ずると思われる。その結果、複合和紙糸の伸長域AAにおけるこの曲線の勾配がBステージに相当する伸長域BBにおけるこの曲線の勾配に近いものになる。
本発明の複合和紙糸は、複合和紙糸中での和紙糸に注目すると、和紙糸自身が和紙糸の糸軸に沿った方向を軸として撚られている構造を有しているので、複合和紙糸の伸長域AAにおける引張り力−伸長率曲線の勾配Pが伸長域BBにおける引張り力−伸長率曲線の勾配Pに近いものになるという傾向があり、PがPと近い値になる。製造方法1において逆撚の撚数が逆撚前の和紙糸の撚数より多い場合はその傾向が顕著に顕われることとなる。
このように、本発明の複合和紙糸は、伸長域AAにおける引張り力−伸長率曲線の勾配が伸長域BBにおける引張り力−伸長率曲線の勾配に近いものになっており、伸長域BBにおいても和紙糸が補強糸を充分に拘束するので筬打ちにより和紙糸にかかる衝撃力を吸収する能力が大きい。このため筬打ちによる経糸の切断がきわめて生じにくく、強い力で緯糸を打ち込むことができ、緯糸織密度がきわめて大きく目開きが殆んどない和紙糸織物を得ることができる。
本発明の複合和紙糸は、引張り力−伸長率曲線の勾配Pに相当する伸長域が勾配Pに相当する伸長域に変化する点の伸度Eが糸長差率Rにより影響される。E1が対象の複合和紙糸の糸長差率Rと同じ値である(E1=R)として、複合和紙糸の伸長率0〜E1(%)の伸長域Qを伸長域AAとし、伸長域Qの引張り力−伸長率曲線の平均勾配をPとし、伸長率E1(=R)〜(E1+E2)の伸長域Qを伸長域BBとしQの引張り力−伸長率曲線の平均勾配をPとする。PがPの1〜2.5倍であることが、筬打ちによる経糸の切断が生じにくく、緯糸織密度の大きい和紙糸織物を得るうえで好ましい。E2は,和紙糸の最大応力点伸度をEmax(%)としたときにE2=Emax(%)で表わされる値である。ここで、PはE2=3%としたときのQの引張り力−伸長率曲線の平均勾配と略同等とみなすことができる。従って、E2=3%としたときのPがPの1〜2.5倍であることが、筬打ちによる経糸の切断が生じにくく、緯糸織密度の大きい和紙糸織物を得るうえで好ましい。1〜2.5倍であることが最も好ましい。
伸長率は糸を引張り試験機によりスパン間隔(つかみ具間隔)200mmで両端把持して引張り速度200mm/minで伸長し引張り応力が0.05cN/dtexがかかったときの糸の長さ(スパン)を基準長とし、さらにその状態から糸を基準長のE(%)伸長したときのEの値で定義される。
がPの1〜2.5倍であるという特性の複合和紙糸は、例えば、補強糸の3%伸長時の引張り力が和紙糸の引張り強さの1/15以上であり、初期引張り弾性率が40〜120cN/dtexであり、和紙糸の繊度と補強糸の繊度との比が3:1〜8:1であり、糸長差率Rが4〜9%であり、複合和紙糸中で和紙糸と補強糸とが互いに複合和紙糸の糸軸を軸とする螺旋状に絡み合って撚り合わされた状態の複合和紙糸により得ることができることがわかった。
このような特性を有する本発明の複合和紙糸を得る製造方法としては、なかでも製造方法1を採用することが工程が簡易であるという点で好ましい。また、この製造方法1において、逆撚工程に供する和紙糸の撚係数(双糸の場合は上撚の撚係数)が50〜200であり、逆撚工程における引き揃え糸の撚数が、逆撚工程に供する和紙糸の撚数の1.5〜3倍であることが好ましい。
また、被覆性の良好な複合和紙糸を得るうえでは、製造方法5,6、あるいは製造方法5または6をベースとした製造方法7、を採用することが好ましい。製造方法6、あるいは製造方法6をベースとした製造方法7、を採用することがさらに好ましい。
前述のように、和紙糸は極めて低伸度の糸であり、糸の長手方向の衝撃により切断されやすいので、筬打ち時の糸の長手方向の衝撃により切断されやすい。このため、織機の停台が頻発して生産効率を損なわれるので、和紙糸からは高緯糸織密度の織物が得られにくい。しかし、複合和紙糸を経糸にして、和紙糸Aを緯糸として打ち込むと、その複合和紙糸と同じ番手の和紙糸を経糸にして、緯糸として和紙糸Aを用いる場合に比べて、3割ほど緯糸織密度の大きい織物が通常の生産効率を損なわずに得られることがわかった。
すなわち、複合和紙糸を経糸にして、例えばその複合和紙糸と同番手の和紙糸を緯糸として打ち込んだ場合、緯糸織密度係数が50に達する和紙糸織物が通常の生産効率を損なわずに得られる。緯糸織密度係数KはK=W×√Gで定義される。ここで、Wは緯糸の織密度(本/10cm)、Gは緯糸の線密度(g/m(番手の逆数))である。この緯糸織密度係数の(最大)値をK=50とする。これに対して、同じ番手の和紙糸を経糸にした場合は、通常の製織が可能な和紙糸織物の緯糸織密度係数は0.65K未満である。緯糸の織密度Wは、織物の経糸方向の単位幅当たりの、緯糸の本数である。
緯糸に番手の異なる複数種の糸が用いられた場合は、Gは各糸の線密度の算術平均値である。例えば、緯糸が緯糸と緯糸からなる場合、経糸方向を幅方向として、単位幅内に存在する緯糸の本数がY1、線密度がG1、緯糸の本数がY2、線密度がG2、であるとき、Gは、G=(G1×Y1+G2×Y2)/(Y1+Y2)で与えられる。なお、単位幅は織組織の経糸方向の繰り返しの整数倍に相当するように設定する。また、Gの算出において、線密度の平均値として算術平均を用いることにより、幾何平均や調和平均(番手の算術平均)にくらべて実態にかなっているとわかった。
また、和紙糸と補強糸を引き揃えたのち加撚して得られた合撚糸を経糸にした場合、糸長差率Rが1.5%未満であると、通常の製織が可能な和紙糸織物の緯糸織密度係数Kは0.7K未満である。
緯糸、経糸とも複合和紙糸の場合は、複合和紙糸を経糸にして和紙糸を緯糸として打ち込んだ場合よりさらに高緯糸織密度の和紙糸織物が通常の生産効率を損なわずに得られる。すなわち、織組織が平織または綾織の場合でも、緯糸織密度係数が35〜55である和紙糸織物が通常の生産効率を損なわずに得られる。
本発明の和紙糸織物に用いられる経糸と緯糸は同番手の糸であることが織物の力学的性質のバランスのうえで好ましいが、用途によっては経糸と緯糸が必ずしも同番手でなくともよい。
また、本発明の和紙糸織物は、複合和紙糸のほかに複合和紙糸以外の糸を経糸の一部に用いた交織織物であってもよい。経糸と緯糸の一部に複合和紙糸以外の糸を用いた交織織物であってもよい。緯糸のすくなくとも一部に本発明の和紙糸以外の糸を用いた交織織物であってもよい。この交織織物としては、経糸および緯糸に複合和紙糸と通常の糸とを1本交互に配した綾織組織の織物などが例示される。経糸に用いられる複合和紙糸以外の糸としては、紡織用の既存の繊維からなるフィラメント糸、加工糸、紡績糸などの、衣料用、日用品用布資材、家具、インテリア用品用布資材、産業資材、に用いられている、織物に一般的に用いられている糸が例示される。緯糸に用いられる複合和紙糸以外の糸としては、紡織用の既存の繊維からなるフィラメント糸、加工糸、紡績糸などの、衣料用、日用品用布資材、家具、インテリア用品用布資材、産業資材、に用いられている織物に一般的に用いられる糸が例示される。紡織用の既存の繊維としては、麻,綿、絹などの天然繊維、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系などの合成繊維、レーヨンなどのセルロース系人造繊維などが例示されるがこれらに限定されない。
複合和紙糸と複合和紙糸以外の糸との交織により、両者の特性を併せ持つ織物が得られる。
本発明において、経糸の一部に用いことのできる、複合和紙糸以外の糸は、単独で製織した場合、緯糸織密度係数が35〜55である織物が、通常の生産効率を損なわずに得られる糸である。
経糸に用いる複合和紙糸以外の糸は一般には初期引張り弾性率が複合和紙糸なみ、あるいはそれ以下であるので、そのようなケースでは、本発明の和紙糸織物がこのような交織織物である場合、緯糸織密度係数が35〜55である和紙糸織物が得られる。
本発明の和紙糸織物が交織織物である場合、織物に和紙の特性を活かすうえで、また、従来の和紙糸使いの織物特有のごわごわした感触を緩和するうえで、経糸における複合和紙糸の本数割合は30%以上であることが好ましい。緯糸における複合和紙糸の本数割合も30%以上であることがさらに好ましい。
本発明の複合和紙糸を用いた和紙糸織物は、高密度で表面が緻密で平滑であり、また、とくにせん断変形に対して型崩れが少なく、外力に対する寸法安定性と、耐久性に優れる。また、本発明の複合和紙糸の初期引張り弾性率が従来の和紙糸の初期引張り弾性率にくらべて小さいので、織物の引っ張り硬さ(KESシステムにおけるLT値)が従来の和紙糸使いの織物にくらべて小さい。このため、従来の和紙糸使いの織物のごわごわした感触が緩和される。また、本発明の複合和紙糸を用いた和紙糸織物は、吸水性に優れ、ランニングシューズのアッパーに用いた場合の耐久性に優れ、かつ、従来の和紙糸使いの織物を用いたアッパーの場合にくらべて履き心地もよい。また、本発明の複合和紙糸を用いた和紙糸織物をアッパーに用いたランニングシューズは、裸足で着用した場合の長時間の連続走行時の足のダメージが小さい。また、本発明の和紙糸織物は、靴の中敷としても好適に用いることができる。
また、本発明の複合和紙糸に用いる補強糸は熱融着性繊維を含む糸であってもよい。熱融着性繊維は加熱により溶融するポリマーからなる繊維、あるいは、加熱により溶融するポリマーが繊維の表面の少なくとも一部分に露出するように配された繊維である。
熱融着性繊維を構成する熱溶融性ポリマーとしては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維などの熱可塑性樹脂が挙げられる。副糸として、融点の異なる2種類の繊維を含む糸条が用いられてもよい。この場合、両者の融点の間の温度で織物を加熱することにより、融点の低い繊維を熱融着性繊維として機能させることができる。この態様にあっては、融点の高い繊維はこの加熱により溶融せず強力がほぼ維持されるので、織物の強力がこの加熱により大きく損なわれることがない。
熱融着性繊維が融点がT℃の1種類のポリマーからなる場合は、織物の加熱温度Hが、T≦H≦T+3℃であることが織物の強力がこの加熱により大きく損なわれることを避けるうえでは好ましい。
さらに、熱融着性繊維としては、融点の異なる2種類の樹脂が芯鞘状に複合されてなる繊維、あるいはバイメタル状に複合されてなる繊維(バイコンポーネントファイバー)であってもよい。この態様においても、両者の融点の間の温度で織物を加熱することにより、融点の高い樹脂がこの加熱により溶融せず、強力がほぼ維持されるので、織物の強力がこの加熱により大きく損なわれることがない。
熱融着性繊維は、フィラメントであってもよい。ステープルであってもよい。フィラメントである場合は、他のフィラメントと混繊して用いられてもよい。あるいは、他の糸条と合糸や交撚して用いられてもよい。ステープルである場合は他の繊維と混紡されて用いられてもよい。
このような態様の複合和紙糸を用いた本発明の和紙糸織物を加熱加工して熱融着性繊維を溶融(した後冷却)することにより、複合和紙糸中で熱融着性繊維同士が融着する。さらに熱融着性繊維と和紙とがアンカー効果により結合する場合もある。また、補強糸が熱融着性繊維以外の繊維を含む場合は、その繊維に熱融着性繊維が融着したり熱融着性繊維以外の繊維同士が熱融着性繊維を介して接着する。これにより、複合和紙糸が剛くなる。これらの結果和紙糸織物が剛くなるとともに寸法安定性が向上する。これにより、和紙糸織物のさらなる加工時における搬送や移動操作、加工操作などにおける取扱いが容易となる。
このような態様の複合和紙糸を用いた和紙糸編物においても、同様の効果が得られる。
加熱加工手段としては熱ロールを用いてもよい。この熱ロールにより表面にエンボスによる凹凸の賦型が行われてもよい。
この剛くなった複合和紙糸を含む本発明の和紙糸織物、あるいは編物は、和紙の感触や吸湿性や分子吸着性や、天然物の触感や外観を活かして、フィルター材等の産業資材、ランプシェードや間仕切り用遮蔽材、などのインテリア用材、小物収納用のケース用材などに好適に用いることができる。
本発明の和紙糸織物は、インソール、サンダル、スリッパなどを含む履物の履物用材、カーテン地、壁紙、家具や自動車などの移動体の内装具の張地などのインテリア用の用品材や移動体の内装用材、ハンドバッグ、ポシェットなどのバッグ類の袋部に袋材や表面材として用いる素材、財布やカードケースどの物入れ用品類の収納部の用材や表面材などの素材、さらには、衣料の生地として好適に用いることができる。これらは、吸湿性に優れ、寸法安定性や耐久性にきわめて優れ、皮革類や合成繊維からなる布帛や綿布では得られないナチュラルで平滑なサラッとした良好な触感を有する。また、これらは脱臭性を有し、室内、車内や庫内の臭気を軽減する効果がある。また、これらは、プレス加工などによりきわめて平滑な表面、あるいは特殊な凹凸が賦与された表面を得ることができる。
本発明の和紙糸織物は、補強や装飾や保護などの付加的な機能付与を目的として、布地や膜状物のようなシート地が張り合わされたものであってもよい。このシート地としては、編地、織地、皮革、人造皮革、フィルムなどが用いられてもよい。
また、複合和紙糸の補強糸として熱収縮によりストレッチ性が付与される性質の糸を用いることにより、和紙糸織物にストレッチ性を付与できる。すなわち、このような性質の糸を補強糸として用いた複合和紙糸を経糸および/または緯糸に用いて製織して得た織物を例えば5〜15%熱収縮させることにより、和紙糸を用いた高密度の織物にストレッチ性が付与される。熱収縮によりストレッチ性が付与される性質の糸としては、ポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートとのサイドバイサイド型複合繊維からなるフィラメント糸(例えば、東レ・オペロンテックス株式会社製の商品名ライクラT400ファイバー)が例示される。
熱収縮させることによりストレッチ性が付与される性質の糸とは、0.05cN/dtexの荷重のもとで130℃の乾熱または98℃の熱水で処理されることにより、伸縮伸長率(JIS L 1090に準拠して測定される値)が40%以上の糸となる糸である。
また、複合和紙糸を熱収縮させたのち、この複合和紙糸を経糸および/または緯糸に用いて製織することにより、和紙糸を用いた織物にストレッチ性が付与される。この熱収縮における熱収縮率は5〜25%であることが好ましい。熱処理は例えば糸の染色によるものであってもよい。枷に取って熱水で処理する態様であってもよい。
複合和紙糸を製織後に熱収縮させても、和紙糸を用いた織物にストレッチ性が付与される。熱収縮させた複合和紙糸を製織後にさらに熱収縮させてもよい。
さらに、本発明の複合和紙糸は、編物に適用した場合も、編成工程における編針の運動に伴う糸張力に起因する糸切れの防止に対して、上述の筬打ち時の糸張力に起因する糸切れ防止のメカニズムと類似の効果により、有効に作用する。すなわち、和紙糸は編物の製造に適用すると編成時に糸切れが多発し編成性が不良であり、編み機の回転数を落とさないと編成できなかったりするが、本発明の複合和紙糸を編物の製造に適用すると編成時の糸切れが減少し編み機の操業効率が向上する。編成としては、丸編、横編、トリコット編、ラッセル編などが例示される。
補強糸として熱収縮によりストレッチ性が付与される性質の糸を用いた複合和紙糸を編物の製造に適用すると、和紙糸を用いた場合に比べてさらに大幅に編成性が向上し、綿糸などの通常の糸と同等の編密度の編物を同等の機械条件で編成することが可能である。このような編成用の複合和紙糸は、テープ状にスリットされた和紙を主成分としてなる和紙糸と、補強糸とが撚り合わされた状態の複合糸(熱収縮前の複合和紙糸)を熱収縮させて得ることができる。熱処理は例えば糸の染色によるものであってもよい。枷に取って熱水で処理する態様であってもよい。
この補強糸は最大応力点伸度が8%以上であり、3%伸長時の引張り力がこの和紙糸の引張り強さの1/20以上であり、和紙糸の繊度と補強糸の繊度との比は2:1〜15:1であり、複合糸中の和紙糸と補強糸との糸長差率が1.5〜12%である。また、この補強糸は熱収縮によりストレッチ性が付与される性質の糸であり、具体的には、ポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートとのサイドバイサイド型複合繊維からなるフィラメント糸(例えば、東レ・オペロン株式会社製の商品名ライクラT400ファイバー)が例示される。複合糸の熱収縮温度は110〜150℃であることが好ましい。熱収縮率は5〜20%であることが好ましい。
これらのような態様で得られる本発明の和紙糸編物は靴下や靴用素材、衣料、などに、吸湿性と独特のサラッとした触感を特徴として適用される。和紙糸編物の編地としては、丸編地、横編地、トリコット編地、ラッセル編地などが例示される。熱収縮させた複合和紙糸を編成後にさらに熱収縮させてもよい。
実施例における試料の引張り力−伸長率曲線、最大応力点伸度、引張り強さの測定は、島津製作所製 引張試験機 AG−IS10KNを用い、つかみ具間隔200mm、引張り速度200mm/minで行った。
実施例1
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付15g/m)をテープ状にスリットし加撚し30.5番手の和紙糸を得た。この和紙糸の撚数は430T/m(Z撚)であった。補強糸として56dtex、f24のポリエステル加工糸(撚数100T/m(S撚))を用いた。和紙糸の最大応力点伸度は3.7%、引張り強さは654cN、初期引張り弾性率は62cN/dtexであった。図2にこの和紙糸の代表的な引張り力−伸長率曲線を示す。補強糸の初期引張り弾性率は95cN/dtex、3%伸長時の引張り力は140N/dtex、最大応力点伸度は30%であった。
この和紙糸とこの補強糸とを合糸してアップツイスタで900T/m(S撚)で加撚後、スチームセッターで110℃20分の撚止めセットして24.4番手の複合和紙糸を得た。
この複合和紙糸の最大応力点伸度は10.2%、引張り強さは728cNであった。分離可能撚係数は182であり、糸長差率は6.3%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
図3にこの複合和紙糸の代表的な引張り力−伸長率曲線を示す。引張り力−伸長率曲線における、伸長率6.3%〜9.3%の伸長域の引張り力−伸長率曲線の平均勾配は、伸長率0%〜6.3%の伸長域の平均勾配の1.8倍であった。
実施例2
実施例1で用いたものと同様の和紙糸を巻いた中空ボビンをボビンの軸方向を回転軸として回転させ、実施例1で用いたものと同様の補強糸をその中空ボビンの中空部を通過させることにより補強糸のまわりに和紙糸を連続的に巻きつけてカバリング糸を得た。巻きつけ数は550T/m(S撚)であった。このカバリング糸を100T/m(S撚)で追撚し、スチームセッターで110℃20分の撚止めセットし、24.1番手の複合和紙糸を得た。この複合和紙糸の最大応力点伸度は10.4%、引張り強さは790cNであった。この複合和紙糸の分離可能撚係数は133であり、糸長差率は7%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
図4にこの複合和紙糸の代表的な引張り力−伸長率曲線を示す。引張り力−伸長率曲線における、伸長率7〜10%の伸長域の引張り力−伸長率曲線の平均勾配は、伸長率0%〜7%の伸長域の平均勾配の2.8倍であった。
実施例3
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付15g/m)をテープ状にスリットし加撚し30番手の和紙糸を得た。この和紙糸の撚数は200T/m(Z撚)であった。補強糸として実施例1で用いたものと同様の糸を用いた。和紙糸の最大応力点伸度は2.7%、引張り強さは450cN、初期引張り弾性率は60cN/dtexであった。
この和紙糸とこの補強糸とを、異なる速度で加撚域に供給できるリング撚糸機でS方向に550T/m加撚して、スチームセッターで110℃20分の撚止めセットし、24.8番手の複合和紙糸を得た。このとき、撚糸機の加撚域に供給する補強糸と和紙糸との速度比(単位時間に加撚域に供給される補強糸の長さとその単位時間に加撚域に供給される和紙糸の長さの比)を1:1.05とした。この複合和紙糸の分離可能撚係数は111であり、糸長差率は5%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
実施例4
経糸及び緯糸として実施例1で得られた複合和紙糸を用いて、平織り組織により経糸織密度240本/10cm、緯糸織密度223本/10cmの和紙糸織物を得た。緯糸織密度係数は45であった。製織は経糸切れがほとんどなく通常の生産効率を損なわずに正常に行われた。
実施例5
経糸及び緯糸として実施例2で得られた複合和紙糸を用いて、平織り組織により経糸織密度190/10cm、緯糸織密度172本/10cmの和紙糸織物を得た。得られた織物の緯糸織密度係数は35であった。製織は経糸切れがほとんどなく通常の生産効率を損なわずに正常に行われた。
実施例6
経糸として実施例1で得られた複合和紙糸を用い、緯糸としてこの複合和紙糸と同じ番手の和紙糸を用いて平織り組織の織物を製織した。この和紙糸は、和紙原料を抄紙して作られた和紙をテープ状にスリットし加撚し、撚数390/m(Z撚)に加撚したものである。得られた織物の緯糸織密度係数は40であった。製織は経糸切れがほとんどなく通常の生産効率を損なわずに正常に行われた。
実施例7
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付20g/m)をテープ状にスリットし加撚し22番手の和紙糸Aを得た。和紙糸Aの撚数は340T/m(Z撚)であった。補強糸として84dtexのポリエステル加工糸を用いた。和紙糸Aの最大応力点伸度は3.7%、引張り強さは930cN、初期引張り弾性率は65cN/dtexであった。この補強糸(A)の初期引張り弾性率は98cN/dtex、3%伸長時の引張り力は145N/dtexであった。最大応力点伸度は32%であった。
和紙糸Aと補強糸(A)とを合糸してアップツイスタで750T/m(S撚)で加撚後、スチームセッターで110℃20分の撚止めセットして16.8番手の複合和紙糸Aを得た。
複合和紙糸Aの最大応力点伸度は10.5%、引張り強さは1080cNであった。分離可能撚係数は182であり、糸長差率は6.8%であった。また、複合和紙糸Aでは、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。複合和紙糸Aの引張り力−伸長率曲線における、伸長率6.8%〜9.8%の伸長域の引張り力−伸長率曲線の平均勾配は、伸長率0%〜6.8%の伸長域の平均勾配の1.5倍であった。
また、和紙原料(目付15g/m)を抄紙して作られた和紙をテープ状にスリットし加撚し43番手の和紙糸Bを得た。和紙糸Bの撚数は500T/m(Z撚)であった。補強糸(B)として実施例1で用いたものと同様の56dtexのポリエステル加工糸を用いた。和紙糸Bの最大応力点伸度は3.6%、引張り強さは480cN、初期引張り弾性率は64cN/dtexであった。
和紙糸Bと補強糸(B)とを合糸してアップツイスタで800T/m(S撚)で加撚後、スチームセッターで110℃20分の撚止めセットして31.5番手の複合和紙糸Bを得た。
複合和紙糸Bの最大応力点伸度は10.7%、引張り強さは510cNであった。分離可能撚係数は150であり、糸長差率は7%であった。また、複合和紙糸Bでは、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。引張り力−伸長率曲線における、伸長率7%〜10%の伸長域の引張り力−伸長率曲線の平均勾配は、伸長率0%〜7%の伸長域の平均勾配の1.5倍であった。
経糸として複合和紙糸Aを用い、緯糸として複合和紙糸Bを用いて図5に示す組織の織物を製織した。得られた織物の緯糸織密度は260本/10cm(緯糸織密度係数46)、経糸の織密度は205本/10cmであった。製織は経糸切れがほとんどなく正常に行われた。なお、緯糸の織密度280本/10cmを越える高緯糸織密度の織物は、製織を試みたが筬打ち時の経糸切れのため織機の正常運転が困難であった。
実施例8
実施例7で得られた複合和紙糸Aと同様の複合和紙糸を経糸と緯糸に用いて平織りの織物を製織した。得られた織物の緯糸の織密度は180本/10cm(緯糸織密度係数43)、経糸の織密度は210本/10cmであった。製織は経糸切れがほとんどなく正常に行われた。なお、緯糸の織密度205本/10cmを越える高緯糸織密度の織物は、製織を試みたが筬打ち時の経糸切れのため織機の正常運転が困難であった。
実施例9
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付15g/m)をテープ状にスリットし加撚し31番手の和紙糸Cを得た。和紙糸Cの撚数は420T/m(Z撚)であった。補強糸として実施例7で用いたものと同様の84dtexのポリエステル加工糸を用いた。和紙糸Cの最大応力点伸度は3.7%、引張り強さは660cN、初期引張り弾性率は65cN/dtexであった。
和紙糸Cと補強糸とを合糸してアップツイスタで850T/m(S撚)で加撚後、スチームセッターで110℃20分の撚止めセットして23番手の複合和紙糸Cを得た。
複合和紙糸Cの最大応力点伸度は10.3%、引張り強さは770cNであった。分離可能撚係数は182であり、糸長差率は6.8%であった。また、複合和紙糸Cでは、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。複合和紙糸Aの引張り力−伸長率曲線における、伸長率6.8%〜9.8%の伸長域の引張り力−伸長率曲線の平均勾配は、伸長率0%〜6.8%の伸長域の平均勾配の1.5倍であった。
経糸として複合和紙糸Cを用い、緯糸として複合和紙糸Bを用いて図5に示す組織の織物を製織した。得られた織物の緯糸織密度は260本/10cm(緯糸織密度係数46)、経糸の織密度は225本/10cmであった。製織は経糸切れがほとんどなく正常に行われた。なお、緯糸の織密度280本/10cmを越える高緯糸織密度の織物は、製織を試みたが筬打ち時の経糸切れのため織機の正常運転が困難であった。
実施例10
補強糸としてポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートとのサイドバイサイド型複合繊維からなるフィラメント糸(東レ・オペロンテックス株式会社製の商品名ライクラT400ファイバー)56dtexを用いたほかは、実施例4と同様にして和紙糸織物を得た。この織物を130℃で熱処理してたてよことも10%幅入れし、伸縮性を有する和紙糸織物を得た。緯糸方向の伸縮率(JIS L 1096 A法に準拠)は、9.5%であった。
実施例11
経糸A及び緯糸Aとして実施例1で得られた複合和紙糸を用い、経糸B及び緯糸Bとして167dtex、f72のポリエステルフィラメント糸(撚り数110T/m)を用い、図6に示す組織のセミ二重織組織の和紙糸織物を製織した。製織時の経糸切れはほとんどなく、正常な操業が行われた。得られた織物の緯糸織密度は290本/10cm(緯糸織密度係数48)、経糸の織密度は280本/10cmであった。製織は経糸切れがほとんどなく正常に行われた。
実施例12
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付15g/m)をテープ状にスリットし加撚し41番手の和紙糸を得た。この和紙糸の撚数は500T/m(Z)であった。補強糸として56dtex、f24のポリエステル加工糸(撚数100T/m(S))を用いた。和紙糸の最大応力点伸度は3.7%、引張り強さは480cN、初期引張り弾性率は61cN/dtexであった。補強糸の初期引張り弾性率は80cN/dtex、3%伸長時の引張り力は125N/dtex、最大応力点伸度は35%であった。
この和紙糸とこの補強糸とを合糸してアップツイスタで850T/m(S撚)で加撚後、スチームセッターで110℃20分の撚止めセットして31.5番手の複合和紙糸を得た。
この複合和紙糸の最大応力点伸度は10.2%、引張り強さは560cNであった。分離可能撚係数は180であり、糸長差率は6.1%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
経糸A及び緯糸Aとしてこの複合和紙糸を用い、経糸B及び緯糸Bとして56dtex、f24のポリエステルフィラメント糸(撚り数1000T/m(S))を用い、図7に示す組織の和紙糸織物を製織した。製織時の経糸切れはほとんどなく、正常な操業が行われた。得られた織物の緯糸織密度は320本/10cm(緯糸織密度係数44)、経糸の織密度は382本/10cmであった。製織は経糸切れがほとんどなく正常に行われた。
実施例13
実施例7で得られた複合和紙糸Aと同様の複合和紙糸を枷に取ってその枷を98℃の熱水で20分間処理して10%収縮させた。処理後の複合和紙糸を靴下編機で編成し紳士用靴下を製造した。編成は通常の同一番手の綿糸の編成機械条件と同様にして、糸切れなどのトラブルなく、編成が可能であった。得られた靴下は優れた吸水性と独特のサラッとした触感を有し、登山用など長時間の使用時に快適に使用することができた。
比較例1
経糸、緯糸として実施例1で得られた複合和紙糸と同じ番手の和紙糸を経糸及び緯糸に用いて平織り組織の和紙糸織物を製織した。この和紙糸は、和紙原料を抄紙して作られた和紙をテープ状にスリットし加撚し、撚数450T/m(Z撚)に加撚したものである。得られた織物の経糸織密度は165本/10cm、緯糸織密度は153本/10cm(緯糸織密度係数31)であった。これ以上の高緯糸織密度の織物の製織を試みたが筬打ち時の経糸切れのため織機の正常運転が困難であった。
比較例2
和紙原料を抄紙して作られた和紙をテープ状にスリットし、実施例1で用いたものと同様の補強糸と合糸し、撚数450T/m(Z撚)で加撚して、実施例1で得られた複合和紙糸と同じ番手の複合糸を得た。この複合糸の分離可能撚係数は92であり、糸長差率は0.5%であった。経糸及び緯糸としてこの複合糸を用いて、平織り組織により経糸織密度170本/10cm、緯糸織密度163本/10cmの和紙糸織物を得た。緯糸織密度係数は33であった。これ以上の高緯糸織密度の織物の製織を試みたが筬打ち時の経糸切れのため織機の正常運転が困難であった。
比較例3
実施例1で得られた複合和紙糸と同番手のポリエステルステープル65%、綿35%のスパン糸を用いて実施例1で得られたものと同組織、同織密度の織物を作成した。この織物を、実施例、他の比較例で得られた織物とともに表1に示す性能比較に供した。
比較例4
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付20g/m)をテープ状にスリットし加撚し25番手の和紙糸を得た。この和紙糸の撚数は540T/m(Z撚)であった。この和紙糸をスチームセッターで110℃20分の撚止めセットしたのち、靴下編機での編成を試みた。通常の同一番手の綿糸の編成機械条件と同様の編成では糸切れが多発したので回転数を通常の同一番手の綿糸の編成の場合の1/3にしてようやく編成可能であった。
比較例5
経糸A及び緯糸Aとして和紙糸を用いたほかは実施例11と同様にして実施例11と同様の組織、織密度の和紙糸織物の製織を実施例11と同様の機械条件で試行したが、経糸切れが多発した。この和紙糸は、和紙原料を抄紙して作られた和紙をテープ状にスリットし加撚(400T/m(Z))した24.4番手の和紙糸である。
比較例6
経糸A及び緯糸Aとして和紙糸を用いたほかは実施例12と同様にして実施例12と同様の組織、織密度の和紙糸織物の製織を実施例12と同様の機械条件で試行したが、経糸切れが多発した。この和紙糸は、和紙原料を抄紙して作られた和紙をテープ状にスリットし加撚(450T/m(Z))した31.5番手の和紙糸である。
実施例14
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付15g/m)をテープ状にスリットし、無撚の44番手の和紙糸を得た。補強糸として実施例7で用いたと同様の加工糸を用いた。この加工糸は黒色に染色して用いた。この和紙糸とこの補強糸とを、引き揃えて並走させてリング撚糸機でS方向に600T/m加撚し、複合和紙糸を得た。このとき、走行中の和紙糸が加撚域に入る前に湿った状態となるように、和紙糸が加撚域に入る直前に和紙糸に水を噴霧した。噴霧されかつ加撚前の状態を再現して採取した和紙糸の水分率は50%であった。
得られた複合和紙糸の最大応力点伸度は9.5%、分離可能撚係数は110であり、糸長差率は3%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
得られた複合和紙糸は、補強糸が和紙糸でほぼ完全に被覆されており、外観の目視で補強糸の存在が認められる箇所は5メートルで1箇所程度であった。またその箇所は10倍の拡大レンズを用いてはじめて点状に見える程度のものであった。これに対して、同様に染色した加工糸を補強糸として実施例1と同様にして得られた複合和紙糸は、外観の目視で補強糸の存在が認められる箇所が0.5メートルで1箇所程度であり、またその箇所は拡大レンズを用いずとも容易に見える程度の長さのものであった。
得られた複合和紙糸を経糸及び緯糸として用いて、平織り組織により和紙糸織物を得た。緯糸織密度係数は45であった。製織は経糸切れがほとんどなく通常の生産効率を損なわずに正常に行われた。
また得られた複合和紙糸を丸編機で編成した。編成時の糸切れなどのトラブルは殆んどなく、従来糸による編成並みの効率で編成できた。
比較例7
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付15g/m)をテープ状にスリットし、無撚の44番手の和紙糸を得た。補強糸として実施例7で用いたと同様の加工糸を用いた。この加工糸は黒色に染色して用いた。この和紙糸とこの補強糸とを、引き揃えて並走させてリング撚糸機でS方向に600T/m加撚し、複合糸を得た。
この複合糸の糸長差率は0.5%であった。また、この複合糸は黒色の補強糸が杢糸状に露出していた。
経糸及び緯糸としてこの複合糸を用いて、平織り組織により和紙糸織物を得た。緯糸織密度係数は33であった。これ以上の高緯糸織密度の織物の製織を試みたが筬打ち時の経糸切れのため織機の正常運転が困難であった。
実施例15
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付15g/m)をテープ状にスリットし、無撚の44番手の和紙糸を得た。補強糸として実施例14で用いたと同様の加工糸を用いた。この和紙糸とこの補強糸とを、異なる速度で加撚域に供給できるリング撚糸機でS方向に600T/m加撚し、複合和紙糸を得た。このとき、走行中の和紙糸が加撚域に入る前に湿った状態となるように、和紙糸が加撚域に入る直前に和紙糸に水を噴霧した。噴霧されかつ加撚前の状態を再現して採取した和紙糸の水分率は50%であった。撚糸機の加撚域に供給する補強糸と和紙糸との速度比(単位時間に加撚域に供給される補強糸の長さとその単位時間に加撚域に供給される和紙糸の長さの比)を1:1.05とした。この複合和紙糸の最大応力点伸度は10.5%、分離可能撚係数は115であり、糸長差率は6%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
得られた複合和紙糸は、補強糸が和紙糸でほぼ完全に被覆されており、外観の目視で補強糸の存在が認められず、10倍の拡大レンズを用いてはじめて点状に見える程度の補強糸の露出が20メートルで1箇所程度存在するのみであった。
得られた複合和紙糸を経糸及び緯糸として用いて、平織り組織により和紙糸織物を得た。緯糸織密度係数は45であった。製織は経糸切れがほとんどなく通常の生産効率を損なわずに正常に行われた。
また得られた複合和紙糸を丸編機で編成した。編成時の糸切れなどのトラブルは殆んどなく、通常の綿糸と同等の効率で編成できた。
実施例16
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付12g/m)をテープ状にスリットし、無撚の68番手の和紙糸を得た。補強糸として実施例1で用いたと同様の加工糸を用いた。この和紙糸とこの補強糸とを、異なる速度で加撚域に供給できるリング撚糸機でS方向に820T/m加撚し、複合和紙糸を得た。このとき、走行中の和紙糸が加撚域に入る前に湿った状態となるように、和紙糸が加撚域に入る直前に和紙糸に水を噴霧した。噴霧されかつ加撚前の状態を再現して採取した和紙糸の水分率は50%であった。撚糸機の加撚域に供給する補強糸と和紙糸との速度比(単位時間に加撚域に供給される補強糸の長さとその単位時間に加撚域に供給される和紙糸の長さの比)を1:1.05とした。この複合和紙糸の最大応力点伸度は10.5%、分離可能撚係数は113であり、糸長差率は6%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
得られた複合和紙糸は、補強糸が和紙糸でほぼ完全に被覆されていた。
得られた複合和紙糸を丸編機で編成した。編成時の糸切れなどのトラブルは殆んどなく、通常の綿糸と同等の効率で編成できた。この編地を用いたTシャツは、サラッとした感触を有し、高温高湿時に着用するTシャツとして好適であった。
実施例17
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付15g/m)をテープ状にスリットし、無撚の32番手の和紙糸を得た。補強糸として実施例7で用いたと同様の加工糸を用いた。この和紙糸とこの補強糸とを、異なる速度で加撚域に供給できるリング撚糸機でS方向に420T/m加撚し、複合和紙糸を得た。このとき、走行中の和紙糸が加撚域に入る前に湿った状態となるように、和紙糸が加撚域に入る直前に和紙糸に水を噴霧した。噴霧されかつ加撚前の状態を再現して採取した和紙糸の水分率は50%であった。撚糸機の加撚域に供給する補強糸と和紙糸との速度比(単位時間に加撚域に供給される補強糸の長さとその単位時間に加撚域に供給される和紙糸の長さの比)を1:1.05とした。この複合和紙糸の最大応力点伸度は10.5%、分離可能撚係数は113であり、糸長差率は6%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
得られた複合和紙糸は、補強糸が和紙糸でほぼ完全に被覆されていた。
得られた複合和紙糸をマットウース組織により和紙糸織物を得た。緯糸織密度係数は45であった。製織は経糸切れがほとんどなく通常の生産効率を損なわずに正常に行われた。この和紙糸織物はシューズのアッパーの素材、インソールの素材、バッグの素材、として、サラッとした感触を有し、好適に用いることができた。
実施例18
和紙原料を抄紙して作られた和紙(目付12g/m)をテープ状にスリットし、無撚の89番手の和紙糸を得た。補強糸として33dtexのポリエステル加工糸を用いた。この和紙糸とこの補強糸とを、異なる速度で加撚域に供給できるリング撚糸機でS方向に750T/m加撚し、複合和紙糸を得た。このとき、走行中の和紙糸が加撚域に入る前に湿った状態となるように、和紙糸が加撚域に入る直前に和紙糸に水を噴霧した。噴霧されかつ加撚前の状態を再現して採取した和紙糸の水分率は50%であった。撚糸機の加撚域に供給する補強糸と和紙糸との速度比(単位時間に加撚域に供給される補強糸の長さとその単位時間に加撚域に供給される和紙糸の長さの比)を1:1.05とした。この複合和紙糸の最大応力点伸度は10.5%、分離可能撚係数は113であり、糸長差率は6%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。
得られた複合和紙糸は、補強糸が和紙糸でほぼ完全に被覆されていた。
得られた複合和紙糸を丸編機で編成した。編成時の糸切れなどのトラブルは殆んどなく、通常の綿糸と同等の効率で編成できた。この編地はサラッとした感触を有するインナーや、タイツ用の編地として好適であった。
実施例19
補強糸として54dtex、f24のポリエステル特殊フィラメント糸(ユニチカトレーディング株式会社製の商品名メルセット)からなる加工糸を用いたほかは、実施例16と同様にして複合和紙糸を得た。メルセットは、芯材としてレギュラーポリエステル、鞘材として低融点ポリエステルを用いた芯鞘構造の繊維からなるマルチフィラメント糸である。この複合和紙糸の最大応力点伸度は10.3%、分離可能撚係数は113であり、糸長差率は6%であった。また、この複合和紙糸は、和紙糸と補強糸とが撚り合わされている構造を有していた。得られた複合和紙糸は、補強糸が和紙糸でほぼ完全に被覆されていた。得られた複合和紙糸を経糸及び緯糸として用いて、平織り組織により和紙糸織物を得た。緯糸織密度係数は45であった。製織は経糸切れがほとんどなく通常の生産効率を損なわずに正常に行われた。
得られた織物を190℃、2分でテンターを用いて定長加熱セットして布帛を得た。この布帛は加熱セット前の織物に比べて剛直であり、和紙調の感触と外観を有し、寸歩安定性が良好であった。ランプセード用の素材として好適であった。
ランニングシューズ性能比較
実施例4〜6、比較例1〜3で得られた織物をアッパーとしてランニングシューズを作成し、各モニター(現役のランナー)が裸足で着用して100kmの走行テストを実施した。テスト結果を表1に示す。
Figure 0005925946
本発明の和紙糸織物、和紙糸編物は、耐久性と、皮革や合成繊維からなる布帛や綿布では得られないナチュラルで平滑な独特のサラッとした触感を活かして、靴用素材、日用雑貨類用材、家具類用材、インテリア用材、自動車用内装用材、衣料の分野に広く適用される。

Claims (17)

  1. テープ状にスリットされた和紙を主成分としてなる和紙糸と、補強糸とが分離可能撚係数70〜250で撚り合わされた状態の、複合糸からなり、
    前記補強糸は最大応力点伸度が8%以上であり、3%伸長時の引張り力が前記和紙糸の引張り強さの1/20以上であり、
    前記和紙糸の繊度と前記補強糸の繊度との比が1:1〜15:1であり、
    前記複合糸中の前記和紙糸と前記補強糸との糸長差率が1.5〜12%である
    複合和紙糸。
  2. Eを糸長差率と同じ値の率としたとき、引張り力−伸長率曲線における、伸長率E〜E+3%の伸長域の引張り力−伸長率曲線の平均勾配が、伸長率0%〜Eの伸長域の平均勾配の1〜2.5倍である請求項1に記載の複合和紙糸。
  3. 前記補強糸が熱融着性繊維を含んで成る請求項1または2に記載の複合和紙糸。
  4. 前記補強糸がポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートとのサイドバイサイド型複合繊維からなるフィラメント糸である請求項1または2に記載の複合和紙糸。
  5. 請求項4に記載の複合和紙糸がさらに熱収縮されてなる複合和紙糸。
  6. 請求項に記載の複合和紙糸を準備し、該複合和紙糸を熱収縮させることを特徴とする複合和紙糸の製造方法。
  7. 請求項1から4のいずれかに記載の複合和紙糸の製造方法であって、
    撚係数が50〜200の前記和紙糸を準備する工程、
    前記撚係数が50〜200の和紙糸と前記補強糸とを引き揃えて該和紙糸の加撚方向と逆方向に、該和紙糸の撚数の1.5〜3倍の撚数で加撚する工程
    を含む複合和紙糸の製造方法。
  8. 請求項1から4のいずれかに記載の複合和紙糸の製造方法であって、
    前記テープ状にスリットされた和紙からなる実質的に無撚の前記和紙糸を準備する工程、
    該和紙糸に水を付与して湿った和紙糸を得る工程、
    該湿った和紙糸と前記補強糸とを引き揃えて撚係数が70〜250の撚数で加撚する工程
    を含む複合和紙糸の製造方法。
  9. 請求項1から4のいずれかに記載の複合和紙糸の製造方法であって、
    前記テープ状にスリットされた和紙からなる実質的に無撚の前記和紙糸を準備する工程、
    該和紙糸に水を付与して湿った和紙糸を得る工程、
    該湿った和紙糸を前記補強糸に対してオーバーフィードして両者を加撚機の加撚域に供給し、撚係数が70〜250の撚数で加撚する工程
    を含む複合和紙糸の製造方法。
  10. 請求項1から5のいずれかに記載の複合和紙糸を経糸の少なくとも一部に用い、経糸における前記複合和紙糸の本数割合が30%以上である
    和紙糸織物。
  11. 平織組織構造または綾織組織構造の織物であって、
    請求項1から5のいずれかに記載の複合和紙糸を経糸とし、
    請求項1から5のいずれかに記載の複合和紙糸を緯糸とし、
    緯糸織密度係数が35〜55である
    請求項10に記載の和紙糸織物。
  12. 平織組織構造または綾織組織構造の織物であって、
    テープ状にスリットされた和紙を主成分としてなる和紙糸を緯糸とし、
    請求項1から5のいずれかに記載の複合和紙糸を経糸とし、
    前記織物の緯糸織密度係数が35〜50である
    請求項10に記載の和紙糸織物。
  13. 請求項10から12のいずれかに記載の和紙糸織物がさらに熱収縮されてなる織物であり、該織物に用いられた複合和紙糸が請求項4に記載の複合和紙糸である和紙糸織物。
  14. 請求項10から13のいずれかに記載の和紙糸織物をアッパーに用いたランニングシューズ。
  15. 請求項1から5のいずれかに記載の複合和紙糸を編成してなる和紙糸編物。
  16. 前記補強糸が熱融着性繊維を含んで成り、該補強糸中で該熱融着性繊維同士が融着された請求項10から12のいずれかに記載の和紙糸織物。
  17. 前記補強糸が熱融着性繊維を含んで成り、該補強糸中で該熱融着性繊維同士が融着された請求項15に記載の和紙糸編物。
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