以下、図面を参照して、本発明の各実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るイオン源の構成を示す。イオン源は、例えばレーザ光を用いてターゲット元素を蒸発(アブレーション)・イオン化してプラズマを生成し、当該プラズマ中に含まれるイオンをプラズマのまま輸送し、引き出しの際に加速することでイオンビームを作り出すことができる装置である。
図1に示すように、本実施形態に係るイオン源は、真空容器10を備える。真空容器10は、例えば当該真空容器10を真空排気するための真空ポンプと接続される。真空容器10を真空排気するための真空ポンプとしては、例えばターボ分子ポンプ11及びロータリーポンプ12(補助ポンプ)が用いられる。
真空容器10内には、レーザ光の照射によりイオンを発生するターゲット13が配置される。このターゲット13に対して集光レンズ(図示せず)を用いて集光されたレーザ光が照射されることによってプラズマ14が生成される。このプラズマ14には、イオン源において目的とするターゲット物質の多価イオンが含まれる。なお、プラズマ14の生成には、高周波やアーク放電、電子ビームを用いてもよい。
なお、レーザ光は常にターゲット13の新しい面(照射点)に照射されるため、当該ターゲット13に接続されたステッピングモータ15で当該ターゲット13を2軸駆動させる。なお、ステッピングモータ15の制御は、例えば導入端子付きフランジ等を用いて真空外に引き出されたケーブル16を介して行うことができる。
ターゲット13に対してレーザ光が照射されることによって生成されたプラズマ14に含まれるイオンは、輸送管17、アパーチャ18、中間電極19及び加速電極20を介して、イオン源の下流側の機器、例えば線形加速器(以下、RFQと表記)50に輸送される。つまり、輸送管17、アパーチャ18、中間電極19及び加速電極20は、ターゲット13において発生されたイオン(プラズマ14に含まれるイオン)をイオン源の下流側の機器に輸送する輸送部を構成する。
また、輸送管17、アパーチャ18、中間電極19及び加速電極20は、イオン源から出射されるイオンビームの引き出しを制御する。
図1に示すように、輸送管17は、真空容器10内のターゲット13に対するレーザ光の照射により生成されたプラズマ14に含まれるイオンを輸送可能な位置に設置されており、アパーチャ18は、例えば真空容器10側に設けられている。
中間電極19は、輸送管17及びアパーチャ18を介して輸送されたプラズマ14から例えばイオン源において目的とするターゲット物質の多価イオンを引き出すような電圧が印加される。中間電極19は、例えば加速電極20またはフランジ21に絶縁を介して設置される。中間電極19に電圧を印加するための配線22は、例えばフランジ21を介して接続される。なお、真空容器10とフランジ21との間は、加速電圧(加速電極20に対して印加される電圧)を印加できるように例えばセラミックダクト23等の絶縁を介して接続される。
加速電極20は、中間電極19を通過したイオンを加速するために電圧が印加される。加速電極20は、RFQ50と取り合うフランジ21に保持される。
また、本実施形態に係るイオン源は、真空封止用ディスク(真空封止板)24を備える。真空封止用ディスク24は、アクチュエータ25と接続される。アクチュエータ25は、図1に示すように、例えば輸送管17のRFQ50側の端部とアパーチャ18との間において真空封止用ディスク24を直線的に駆動させる。これにより、真空封止用ディスク24は、例えばアパーチャ18(RFQ50側の真空容器10の側壁)を境界として真空容器10側及びRFQ50側の真空(状態)を分離するように当該アパーチャ18(つまり、輸送部)を封止する。換言すれば、真空封止用ディスク24は、アパーチャ18からRFQ50側の真空を封止する。なお、アクチュエータ25は、導入端子付きフランジ等を用いて真空外に引き出されたケーブル26を介して制御可能である。
真空封止用ディスク24は、ガイド27及び押し付け用の弾性体(例えば、ばね等)28により固定される。
ここで、上記したようにイオン源においては、レーザ光は常にターゲット13の新しい面に照射されるため、例えば当該ターゲット13の全ての面にレーザ光が照射された場合には、真空容器10内に配置されているターゲット13を新たなターゲット13に交換する必要がある。
以下、本実施形態に係るイオン源においてターゲット13を交換する際の動作について説明する。
本実施形態においては、上記したようにアクチュエータ25を用いて真空封止用ディスク24を駆動させることによって、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離した状態(つまり、RFQ50側の真空を封止した状態)と、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離してない状態(つまり、RFQ50側の真空を封止していない状態)とを切り替えることができる。具体的には、アクチュエータ25を用いて真空封止用ディスク24が真空容器10及びRFQ50の間の流路を塞ぐ位置(つまり、アパーチャ18を塞ぐ位置)に設置された場合には、真空容器10側及びRFQ側の真空を分離した状態とすることができる。一方、アクチュエータ25を用いて真空封止用ディスク24が真空容器10及びRFQ50の間の流路を開放する位置(つまり、アパーチャ18を開放する位置)に設置された場合には、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離していない状態とすることができる。
以下、真空封止用ディスク24が真空容器10及びRFQ50の間の流路を塞ぐ位置に設置されている状態を封止状態、真空封止用ディスク24が真空容器10及びRFQ50の間の流路を開放する位置に設置されている状態を開放状態と称する。
上記したようにイオン源においてターゲット13に対してレーザ光を集光照射することによって発生させたイオンをRFQ50に輸送する場合には、アクチュエータ25を用いて真空封止用ディスク24を駆動させることによって、当該真空封止用ディスク24が開放状態にされている。
一方、ターゲット13の全ての面にレーザ光が照射され、当該ターゲット13を交換する必要がある場合、当該ターゲット13の交換の前に、上記したようにアクチュエータ25を用いて真空封止用ディスク24を駆動させることによって当該真空封止用ディスク24を封止状態にする(開放状態から封止状態に切り替える)。
このように真空封止用ディスク24が封止状態にされると、真空容器10を大気解放し、当該真空容器10内に配置されているターゲット(全ての面にレーザ光が照射されたターゲット)13が新たなターゲット13に交換される。この場合、上記したように真空封止用ディスク24は封止状態であるため、RFQ50側の真空は維持される。
新たなターゲット13が真空容器10内に配置されると、上記した真空容器10に接続されている真空ポンプ(ターボ分子ポンプ11及びロータリーポンプ12)により、当該真空容器10が真空排気される。
このように新たなターゲット13が配置された真空容器10が真空排気されると、アクチュエータ25を用いて真空封止用ディスク24を駆動させることによって、当該真空封止用ディスク24を開放状態にする(封止状態から開放状態に切り替える)。
真空封止用ディスク24が開放状態にされた後は、真空容器10に配置された新たなターゲット13に対してレーザ光を集光照射することによってイオンを発生させ、当該イオンをRFQ50に輸送することができる。
上記したように本実施形態においては、真空排気された真空容器10と、当該真空容器10内に配置され、レーザ光の照射によりイオンを発生するターゲット13と、当該ターゲット13から発生したイオンをRFQ50等の下流側の機器に輸送する輸送部(例えば、輸送管17、アパーチャ18、中間電極19及び加速電極20)と、真空容器10内に配置されたターゲット13を交換する際に、真空容器10側及びRFQ50側の真空状態を分離するように輸送部(例えば、アパーチャ18)を封止する真空封止用ディスク24とを備える構成により、イオン源におけるイオンビームの引き出しに影響を与えることなく、必要な時にのみRFQ50側の真空を封止することができるため、下流側の機器の真空を解放することなくターゲット13を交換することが可能となる。
なお、本実施形態においては、アパーチャ18が真空封止用ディスク24の下流側(RFQ50側)に配置されるものとして説明したが、当該アパーチャ18が輸送管17の端部やガイド27を兼用することも可能である。
(第2の実施形態)
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係るイオン源の構成を示す。なお、前述した図1と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図1と異なる部分について主に述べる。
本実施形態においては、図2に示すように、真空封止用ディスク24が真空容器10の外部に設けられた直線導入機29に接続される。
直線導入機29は、輸送管17のRFQ50側の端部とアパーチャ18との間において真空封止用ディスク24を直線的に駆動させる。これにより、真空封止用ディスク24は、例えばアパーチャ18(RFQ50側の真空容器10の側壁)を境界として真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離するようにアパーチャ18(つまり、輸送部)を封止する。
なお、真空封止用ディスク24は、前述した第1の実施形態と同様に、ガイド27及び押し付け用の弾性体28により固定される。
このように本実施形態においては、直線導入機29を用いて真空封止用ディスク24を駆動させることによって、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離した状態(封止状態)と、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離していない状態(開放状態)とを切り替えることができる。
なお、本実施形態に係るイオン源においてターゲット13を交換する際の動作は、直線導入機29を用いて真空封止用ディスク24を駆動させることによって封止状態と開放状態とを切り替える点以外は前述した第1の実施形態と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
上記したように本実施形態においては、直線導入機29に接続された真空封止用ディスク24によって真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離するように輸送部(例えば、アパーチャ18)を封止する構成により、イオン源におけるイオンビームの引き出しに影響を与えることなく、必要な時にのみRFQ50側の真空を封止することができるため、下流側の機器の真空を解放することなくターゲット13を交換することが可能となる。
(第3の実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。図3は、本実施形態に係るイオン源の構成を示す。なお、前述した図1と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図1と異なる部分について主に述べる。
本実施形態においては、図3に示すように、真空封止用ディスク30が真空容器10の外部に設けられた回転導入機31に接続される。
回転導入機31は、輸送管17のRFQ50側の端部とアパーチャ18との間において真空封止用ディスク30を回転駆動させる。なお、真空封止用ディスク30には、イオンを輸送するために当該イオンが通過可能な孔部32が形成されている。
本実施形態において、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離する際には、回転導入機31を用いて真空封止用ディスク30を回転させることによって、孔部32以外の面が輸送管17のRFQ50側の端部とアパーチャ18との間に配置される。一方、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離しない場合には、回転導入機31を用いて真空封止用ディスク30を回転させることによって、輸送管17及びアパーチャ18の間でイオンを輸送可能な位置に真空封止用ディスク30に設けられている孔部32が配置される。なお、真空封止用ディスク30は、前述した第1の実施形態と同様に、ガイド27及び押し付け用の弾性体28により固定される。
これにより、本実施形態においては、回転導入機31を用いて真空封止用ディスク30を回転駆動させることによって、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離した状態(封止状態)と、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離していない状態(開放状態)とを切り替えることができる。
なお、本実施形態に係るイオン源においてターゲット13を交換する際の動作は、回転導入機31を用いて真空封止用ディスク30を駆動させることによって封止状態と開放状態とを切り替える点以外は前述した第1の実施形態と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
上記したように本実施形態においては、回転導入機31に接続された真空封止用ディスク30によって真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離するように輸送部(例えば、アパーチャ18)を封止する構成により、イオン源におけるイオンビームの引き出しに影響を与えることなく、必要な時にのみRFQ50側の真空を封止することができるため、下流側の機器の真空を解放することなくターゲット13を交換することが可能となる。
(第4の実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。図4は、本実施形態に係るイオン源の構成を示す。なお、前述した図1と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図1と異なる部分について主に述べる。なお、図4においては、アパーチャ18が輸送管17の端部を兼用しているものとする。
本実施形態においては、図4に示すように、真空容器10の外部に設けられた回転導入機33の先端にキャップ34が取り付けられている。
回転導入機33は、当該回転導入機33の回転駆動によりシャフトが伸縮する機能を有する。
本実施形態において、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離する際には、回転導入機33の回転駆動によりシャフトを伸ばし、当該回転導入機33の先端に取り付けられたキャップ34を輸送管17の真空容器10側の端部に密着させる。一方、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離しない場合には、回転導入機33の回転駆動によりシャフトを縮ませ、当該回転導入機33の先端に取り付けられたキャップ34を輸送管17の真空容器10側の端部から離す。
これにより、本実施形態においては、回転導入機33の先端に取り付けられたキャップ34で輸送管17の真空容器10側の端部を封止及び開放することによって、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離した状態(封止状態)と、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離していない状態(開放状態)とを切り替えることができる。
なお、回転導入機33の先端に取り付けられたキャップ34は、輸送管17の真空容器10側の端部に密着でき、真空状態を維持することが可能な、例えばテフロン(登録商標)、テフロンや金属にOリングを埋め込んだ構成とする。
次に、本実施形態に係るイオン源においてターゲット13を交換する際の動作について説明する。
本実施形態に係るイオン源においてターゲット13に対してレーザ光を集光照射することによって発生させたイオンをRFQ50に輸送する場合には、回転導入機33の回転駆動によりシャフトを縮ませることによって開放状態とされている。この場合、ターゲット13は、当該ターゲット13にレーザ光が集光照射されることによって発生したプラズマ(に含まれるイオン)が輸送管17によって下流側に輸送可能な位置に配置されている。また、回転導入機33のシャフト(及び当該回転導入機33の先端に取り付けられているキャップ34)は、ターゲット13と干渉しない位置まで縮められている。
一方、ターゲット13の全ての面にレーザ光が照射され、当該ターゲット13を交換する必要がある場合、ターゲット13は、ステッピングモータ15を用いて回転導入機33のシャフト(及び当該回転導入機33の先端に取り付けられているキャップ34)と干渉しない位置に退避される。ターゲット13が退避された後、回転導入機33の回転によりシャフトを伸ばし、当該回転導入機33の先端に取り付けられたキャップ34によって封止状態とされる(開放状態から封止状態に切り替えられる)。
このように回転導入機33の先端に取り付けられたキャップ34により封止状態にされると、真空容器10を大気解放し、当該真空容器10内のターゲット(全ての面にレーザ光が照射されたターゲット)13が新たなターゲット13に交換される。
新たなターゲット13が真空容器10内に配置されると、前述した真空容器10に接続されている真空ポンプ(ターボ分子ポンプ11及びロータリーポンプ12)により、当該真空容器10が真空排気される。
このように新たなターゲット13が配置された真空容器10が真空排気されると、回転導入機33の回転駆動によりシャフトを縮ませることによって開放状態とされる(封止状態から開放状態に切り替えられる)。
開放状態にされた後は、ステッピングモータ15を用いて輸送管17によってイオンを輸送可能な位置に新たなターゲット13が配置されることによって、当該新たなターゲット13に対してレーザ光を集光照射することによってイオンを発生させ、当該イオンをRFQ50に輸送することができる。
上記したように本実施形態においては、回転によりシャフトを伸縮可能な回転導入機33及び当該回転導入機33の先端に取り付けられたキャップ34によって真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離するように輸送部(輸送管17の真空容器10側の端部)を封止する構成により、イオン源におけるイオンビームの引き出しに影響を与えることなく、必要な時にのみRFQ50側の真空を封止することができるため、下流側の機器の真空を解放することなくターゲット13を交換することが可能となる。
なお、本実施形態においては、回転導入機33の先端にキャップ34が取り付けられているものとして説明したが、例えばウィルソンシールを用いて回転導入機33のシャフトを直接、輸送管17に挿入することによって、RFQ50側の真空を封止する構成であっても構わない。
(第5の実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係るイオン源の構成を示す。なお、前述した図1と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図1と異なる部分について主に述べる。
本実施形態においては、図5に示すように、輸送管17のRFQ50側の端部とアパーチャ18との間にゲートバルブ35が設けられる。なお、本実施形態においては、図5に示すように、真空容器10内に設けられた当該輸送管17のRFQ50側の端部とゲートバルブ35を介してイオンを輸送可能な位置にアパーチャ18が設けられている。
ゲートバルブ35は、真空容器10とイオン源の下流側の機器、例えばRFQ50との間の流路を開閉する機能を有する。
本実施形態において、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離する際には、ゲートバルブ35が閉じられる。一方、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離しない場合には、ゲートバルブ35が開かれる。
なお、図5に示すイオン源においては、アパーチャ18がゲートバルブ35の下流側に配置してあるが、当該アパーチャ18が輸送管17のRFQ50側の端部を兼用することも可能である。アパーチャ18が輸送管17のRFQ50側の端部を兼用する場合であっても、ゲートバルブ35は、適宜、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離可能な位置に設置されればよい。
これにより、本実施形態においては、ゲートバルブ35を開閉することによって、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離した状態(封止状態)と、真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離していない状態(開放状態)とを切り替えることができる。
なお、本実施形態に係るイオン源においてターゲット13を交換する際の動作は、ゲートバルブ35を用いて封止状態と開放状態とを切り替える点以外は前述した第1の実施形態と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
上記したように本実施形態においては、輸送部(例えば、輸送管17及びアパーチャ18の間)における流路を開閉するゲートバルブ35によって真空容器10側及びRFQ50側の真空を分離するように当該輸送部を封止する構成により、イオン源におけるイオンビームの引き出しに影響を与えることなく、必要な時にのみRFQ50側の真空を封止することができるため、下流側の機器の真空を解放することなくターゲット13を交換することが可能となる。
(第6の実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第6の実施形態について説明する。図6は、本実施形態に係るイオン源の構成を示す。なお、前述した図1と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図1と異なる部分について主に述べる。なお、図6においては、アパーチャ18が輸送管17の端部を兼用しているものとする。
本実施形態においては、図6に示すように、真空容器(第1の真空容器)10とは別室の真空チャンバ(第2の真空容器)36が当該真空容器10に取り付けられている。真空チャンバ36には、真空容器10内に配置されているターゲット(第1のターゲット)13と交換されるターゲット(第2のターゲット)13が格納される。
真空チャンバ36は、真空容器10とは独立して真空排気可能な真空ポンプ37が接続される。また、真空容器10と真空チャンバ36との間には、流路を開閉するバルブ(第1のバルブ)38が設けられている。このバルブ38が開閉することにより、真空容器10及び真空チャンバ36の真空が分離される。
また、真空チャンバ36においてターゲット13が格納される位置と真空容器10内のターゲット13が配置される位置との間には、当該ターゲット13を真空チャンバ36から真空容器10に輸送するためのガイド39が設けられている。
なお、真空チャンバ36は、真空容器10の上または下に取り付けられてもよいし、左または右に取り付けられてもよい。
また、真空容器10には、レーザ光が照射されるために当該真空容器10に配置されるターゲット13を保持するターゲットホルダ40が備えられている。このターゲットホルダ40には、当該ターゲットホルダ40から全ての面にレーザ光が照射されたターゲット13を除去するためのアクチュエータ41が備えられている。なお、ターゲットホルダ40には前述したステッピングモータ15が接続されており、当該ステッピングモータ15によって当該ターゲットホルダ40に保持されたターゲット13を2軸駆動することができる。
次に、本実施形態に係るイオン源においてターゲット13を交換する際の動作について説明する。以下、ターゲットホルダ40に保持されている例えば全ての面にレーザ光が照射されたターゲット13を使用済みターゲット13と称し、当該使用済みターゲットと交換されるターゲット13を予備ターゲット13と称する。ここでは、真空容器10内のターゲットホルダ40に使用済みターゲット13が保持され、真空チャンバ36に予備ターゲット13が既に格納されているものとする。
使用済みターゲット13を予備ターゲット13と交換する場合、バルブ38を閉じた状態で真空チャンバ36が真空ポンプ37により真空排気され、真空チャンバ36が真空容器10と同レベルの真空となった後に、当該バルブ38が開かれる。
その後、真空チャンバ36に格納された予備ターゲット13は、例えば直線導入機またはアクチュエータ(図示せず)を用いて真空チャンバ36から真空容器10に輸送される。このとき、予備ターゲット13は、ガイド39に沿って輸送することにより、安定した輸送が可能となる。なお、ガイド39は、バルブ38の開閉の妨げとならないように、当該バルブ38の位置で分割されているものとする。予備ターゲット13が真空チャンバ36から真空容器10に輸送された後、バルブ38は閉じられる。
一方、真空容器10内のターゲットホルダ40に保持されている使用済みターゲット13は、予備ターゲット13が真空容器10に輸送される前に、当該真空容器10(のターゲットホルダ40)から除去される。具体的には、直線運動をするアクチュエータ41を用いてターゲットホルダ40の下面を開放することによって、使用済みターゲット13を下に落とす。これにより、使用済みターゲット13が真空容器10のターゲットホルダ41から除去される。
このように使用済みターゲット13を予備ターゲット13と交換することにより、真空容器10に配置された予備ターゲット13に対してレーザ光を集光照射することによってイオンを発生させ、当該イオンをRFQ50に輸送することができる。
上記したように本実施形態においては、バルブ38を閉じた状態で真空チャンバ36が真空排気された後、当該バルブ38を開いた状態で真空容器10内に配置されている使用済みターゲット13と当該真空チャンバ36に格納されている予備ターゲット13が交換される構成により、真空容器10及び下流側の機器の真空を解放することなくターゲット13を交換することが可能となる。
(第7の実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第7の実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係るイオン源の構成を示す。なお、前述した図6と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図6と異なる部分について主に述べる。
本実施形態においては、図7に示すように、真空容器(第1の真空容器)10の下方に真空チャンバ(第2の真空容器)36とは異なる真空チャンバ(第3の真空容器)42が取り付けられている。真空チャンバ42には、ターゲット13の交換時に真空容器10内のターゲットホルダ40から除去された使用済みターゲット13が格納される。なお、本実施形態においては、真空チャンバ36は、真空容器10の上方に取り付けられている。
真空チャンバ42には、真空容器10及び真空チャンバ36とは独立して真空排気可能な真空ポンプ43と接続される。また、真空容器10と真空チャンバ42との間には、流路を開閉するバルブ(第2のバルブ)44が設けられている。このバルブ44が開閉することにより、真空容器10及び真空チャンバ42の真空が分離される。
次に、本実施形態に係るイオン源においてターゲット13を交換する際の動作について説明する。この場合、真空チャンバ42は真空ポンプ43によって真空排気されており、バルブ44は開いている状態であるものとする。
前述した第6の実施形態において説明したように、真空容器10内のターゲットホルダ40に保持されている使用済みターゲット13を交換する際には、当該使用済みターゲット13を当該ターゲットホルダ40から除去する必要があるが、当該使用済みターゲット13は、例えばアクチュエータ41を用いてターゲットホルダ40の下面が開放されることによって真空容器10の下方に落下する。
このとき、真空容器10の下方に取り付けられている真空チャンバ42と当該真空容器10との間に設けられているバルブ44は開いた状態であるため、真空容器10の下方に落下した使用済みターゲット13は、真空チャンバ42に収容(格納)される。
使用済みターゲット13が真空チャンバ42に収容された場合、バルブ44を閉じた状態にし、当該真空チャンバ42を大気解放することで、真空容器10及びRFQ50等の下流側の機器の真空を解放することなく、当該真空チャンバ42に収容された使用済みターゲット13を取り出すことができる。
なお、真空容器10内のターゲットホルダ40から除去された使用済みターゲット13が真空チャンバ42に収容された後には、予備ターゲット13が真空容器10内(のターゲットホルダ40)に輸送されて配置されるが、当該予備ターゲット13が真空容器10内に輸送される動作については前述した第6の実施形態において説明した通りであるため、その詳しい説明を省略する。
上記したように本実施形態においては、バルブ44を閉じた状態で真空チャンバ42が真空排気された後、当該バルブ44を開いた状態で真空容器10から除去された使用済みターゲット13を真空チャンバ41に格納し、当該使用済みターゲット13が真空チャンバ41に格納された後に、予備ターゲット13が真空容器10内に輸送されて配置される構成により、下流側の機器の真空を解放することなくターゲット13を交換することが可能となる。
(第8の実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第8の実施形態について説明する。図8は、本実施形態に係るイオン源の構成を示す。なお、前述した図1と同様の部分については同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図1と異なる部分について主に述べる。なお、図8においては、アパーチャ18が輸送管17の端部を兼用しているものとする。
本実施形態においては、図8に示すように、複数のターゲット13が積層されて真空容器10内に配置される。
真空容器10内には、ターゲットホルダ45が設けられている。このターゲットホルダ45は、積層されている複数のターゲット13を保持する。複数のターゲット13は、図8に示すように、当該ターゲット13とターゲットホルダ45との間に設けられた弾性体(例えば、ばね等)46によってイオン源においてイオンを発生させる方向(ターゲットホルダ45の前面)に密着させて固定される。なお、本実施形態に係るイオン源においては、複数のターゲット13のうちレーザ光の照射側(つまり、レーザ光が照射される位置)に配置されたターゲット13に対してレーザ光が照射されて、プラズマ14が生成される。以下、複数のターゲット13のうちレーザ光の照射側に配置されたターゲット13を照射対象ターゲット13と称する。
また、ターゲットホルダ45は、アクチュエータ47と接続されており、当該アクチュエータ47によって照射対象ターゲット13の下面に設けられた孔部48を開放可能である。
また、ターゲットホルダ45は、当該ターゲットホルダ45に保持されている複数のターゲット13のうち照射対象ターゲット13(が配置されている位置)の上部に設けられたアクチュエータ49と接続されている。このアクチュエータ49を用いることによって照射対象ターゲット13を下方に押し出すことができる。
なお、ターゲットホルダ45に接続されているアクチュエータ47及び49は、図示しないケーブル等を介して真空容器10の外部から制御可能であるものとする。
次に、本実施形態に係るイオン源においてターゲット13を交換する際の動作について説明する。
ターゲットホルダ45に保持されている複数のターゲット13のうちの照射対象ターゲット13の全ての面にレーザ光が集光照射された場合、当該ターゲットホルダ45に接続されたアクチュエータ47を用いて当該ターゲットホルダ45の下面に設けられている孔部48を開放する。この場合、ターゲットホルダ45に保持されている複数のターゲット13は弾性体46によってイオンの発生方向に密着させて固定されているため、照射対象ターゲット13は、孔部48が開放された場合であっても下方に落下しない。
ここで、ターゲットホルダ45に接続されているアクチュエータ(照射対象ターゲット13の上部に設けられたアクチュエータ)49を用いることによって照射対象ターゲット13を下方に押し出す。これにより、照射対象ターゲット13を上記したようにアクチュエータ47によって開放された孔部48を通じて下方に落下させることができる。
照射対象ターゲット13が孔部48を通じて下方に落下した場合、当該照射対象ターゲット13の後段のターゲット(照射対象ターゲット13の次にレーザ光の照射側に配置されたターゲット)13が弾性体46によってターゲットホルダ45の最前面に押し出される。これにより、照射対象ターゲット13が交換される。以降、交換されたターゲット(つまり、最前面に押し出されたターゲット)13に対してレーザ光が照射されることになる。
つまり、本実施形態においては、このようにターゲットホルダ45に積層されて保持されている複数のターゲット13のうち全ての面にレーザ光が照射された照射対象ターゲット13をターゲットホルダ45から除去し、当該照射対象ターゲット13の後段のターゲット13がターゲットホルダ45の前面に押し出されることによって、当該ターゲットホルダ45に保持されている全てのターゲット13を使用し終えるまで真空容器10及び下流側の機器の真空を解放することなくターゲット13を交換することができる。
なお、ターゲットホルダ45に保持されている全てのターゲット13が使用された場合、前述した第6の実施形態において説明した真空チャンバ(図6に示す真空チャンバ36)を用いて、真空容器10及び下流側の機器(例えばRFQ50)の真空を解放することなく、当該ターゲットホルダ45に複数のターゲット13を新たに保持させる構成としてもよい。
更に、上記したように孔部48を通じて落下したターゲット13は、前述した第7の実施形態において説明した真空チャンバ(図7に示す真空チャンバ42)に格納される構成であってもよい。
上記したように本実施形態においては、真空容器10内に積層されて配置された複数のターゲット(ターゲットホルダ45に保持された複数のターゲット)13のうち最もレーザ光の照射側に配置されたターゲット13を除去することによってレーザ光が照射されるターゲットを交換する構成により、真空容器10及び下流側の機器の真空を解放してターゲット13を補給することなくターゲット13を交換することが可能となる。
なお、本願発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合せてもよい。