以下、添付図面を参照して、本願の開示する直列多重マトリクスコンバータおよび電動機駆動装置の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態では、交流電源からの三相交流電力を変換して負荷へ供給する直列多重マトリクスコンバータおよび電動機駆動装置を例に挙げて説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[1.第1の実施形態]
[1.1.マトリクスコンバータの構成]
図1は、第1の実施形態に係る電動機駆動装置の構成例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る電動機駆動装置100は、直列多重マトリクスコンバータ1と、三相交流電源2(以下、交流電源2と記載する)と、回転電機3とを有する。
直列多重マトリクスコンバータ1は、交流電源2と回転電機3との間に設けられ、交流電源2と回転電機3との間の電力変換を行う。交流電源2は、例えば、電力系統(Grid)であるが、交流電源2は電力系統に限られない。
回転電機3は、例えば、同期発電/電動機、誘導発電/電動機等であり、直列多重マトリクスコンバータ1からの三相交流電力の出力と停止により交流電源2と等しい周波数での運転と停止を繰り返す。なお、負荷の一例として回転電機3を説明するが、負荷は、回転電機3に限られない。
直列多重マトリクスコンバータ1は、入力端子TR、TS、TTと、出力端子TU、TV、TWと、変圧器10と、電圧検出部20と、電力変換部30と、制御部40とを備える。
入力端子TR、TS、TTには、交流電源2のR相、S相およびT相がそれぞれ接続され、かかる入力端子TR、TS、TTを介して交流電源2の三相交流電力が直列多重マトリクスコンバータ1の変圧器10へ入力される。出力端子TU、TV、TWには、回転電機3のU相、V相およびW相がそれぞれ接続され、かかる出力端子TU、TV、TWを介して三相交流電力が電力変換部30から回転電機3へ出力される。以下、U相、V相およびW相を出力相と記載する場合がある。
直列多重マトリクスコンバータ1は、第1の制御モードと第2の制御モードを有する。直列多重マトリクスコンバータ1は、第1の制御モードにおいて、交流電源2から供給される三相交流電力を電力変換部30により任意の周波数および電圧の三相交流電力へ変換して回転電機3へ供給する。また、直列多重マトリクスコンバータ1は、第2の制御モードにおいて、電力変換部30による電力変換を行わずに電力変換部30から電圧を出力させる。かかる制御モードについては、後で詳述する。
変圧器10は、一次巻線11と、9つの二次巻線12a〜12i(以下、二次巻線12と総称する場合がある)とを備える。交流電源2から一次巻線11に供給される三相交流電力は変圧器10により9つの二次巻線12a〜12iに分配される。
ここでは、一次巻線11と二次巻線12a〜12iとの電圧位相差は、ゼロであり、二次巻線12a〜12iの変圧比(例えば、1)は同じであるものとする。また、R相、S相およびT相にそれぞれ対応する二次巻線12の相をr相、s相およびt相とし、r相、s相およびt相の電圧を入力相電圧Vr、Vs、Vtとする。
電圧検出部20は、交流電源2と変圧器10との間に設けられ、交流電源2のR相、S相、T相の各相の瞬時電圧値VR、VS、VT(以下、入力相電圧VR、VS、VTと記載する)を検出する。なお、以下、交流電源2の各相の電圧を総称して入力電圧Viと記載する場合がある。また、電力変換部30から回転電機3の各相へ出力される電圧VU、VV、VWを総称して出力電圧Voと記載する場合がある。
電力変換部30は、回転電機3のU相、V相およびW相に対応する単相電力変換セル部31a〜31c(以下、単相電力変換セル部31と総称する場合がある)を備え、回転電機3へ三相交流電力を出力する。単相電力変換セル部31a〜31cは、一端が互いに中性点Nに接続され、他端が回転電機3のU相、V相およびW相に接続される。
単相電力変換セル部31は、三相交流電力を単相交流電力に変換する3つの単相電力変換セルを有する。具体的には、単相電力変換セル部31aは、単相電力変換セル32a、32d、32gを有し、単相電力変換セル部31bは、単相電力変換セル32b、32e、32hを有し、単相電力変換セル部31cは、単相電力変換セル32c、32f、32iを有する。なお、以下において、単相電力変換セル32a〜32iを単相電力変換セル32と総称する場合がある。
各単相電力変換セル32は、入力端子T3(後述する入力端子Tr、Ts、Tt)と出力端子T1、T2とを有し、二次巻線12を介して入力端子T3に入力される三相交流電力を単相交流電力に変換して出力端子T1、T2から出力する。
具体的には、単相電力変換セル部31aにおいて、単相電力変換セル32a、32d、32gの出力が直列に接続され、単相電力変換セル32a、32d、32gの出力電圧が加算されて回転電機3のU相へ出力される。単相電力変換セル部31bにおいて、単相電力変換セル32b、32e、32hの出力が直列へ接続され、単相電力変換セル32b、32e、32hの出力電圧が加算されて回転電機3のV相に出力される。単相電力変換セル部31cにおいて、単相電力変換セル32c、32f、32iの出力が直列へ接続され、単相電力変換セル32c、32f、32iの出力電圧が加算されて回転電機3のW相に出力される。
図2は、単相電力変換セル32の具体的構成の一例を示す図である。図2に示すように、単相電力変換セル32は、スイッチ回路33と、フィルタ34とを備える。かかる単相電力変換セル32は、単相マトリクスコンバータとも呼ばれる。なお、単相電力変換セル32には、例えば、不図示のスナバ回路が設けられる。
スイッチ回路33は、双方向スイッチSw1〜Sw6(以下、双方向スイッチSwと記載する場合がある)を備える。かかる双方向スイッチSw1〜Sw6は、各端子Tr、Ts、Ttと各端子T1、T2との間にそれぞれ接続される。
双方向スイッチSw1は、片方向スイッチング素子15とダイオード18とを逆並列接続した回路と片方向スイッチング素子16とダイオード17とを逆並列接続した回路とを逆方向に直列に接続されて構成される。双方向スイッチSw2〜Sw6も、双方向スイッチSw1と同様の構成である。
片方向スイッチング素子15、16は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子である。また、片方向スイッチング素子15、16は、次世代半導体スイッチング素子のSiC、GaNであってもよい。双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子15、16を個別にオン/オフすることで、通電方向を制御することができる。
なお、双方向スイッチSw1〜Sw6は、図2に示す構成に限られない。例えば、図3に示すように、各双方向スイッチSw1〜Sw6は、片方向スイッチング素子15とダイオード17とによる直列接続体と、片方向スイッチング素子16とダイオード18とによる直列接続体とが、逆方向に並列に接続された構成であってもよい。図3は、双方向スイッチSw1〜Sw6の他の構成例を示す図である。
また、双方向スイッチSw1〜Sw6は、片方向スイッチング素子15、16をそれぞれ逆阻止型のスイッチング素子とし、これらのスイッチング素子を互いに逆方向に並列接続した構成でもよい。
フィルタ34は、スイッチ回路33と端子Tr、Ts、Ttとの間に設けられ、スイッチ回路33によって発生する高周波成分(PWM成分)の交流電源2への影響を抑制する。かかるフィルタ34は、3つのリアクトルL1r、L1s、L1tと、3つのコンデンサC1rs、C1st、C1rtによって構成される。
リアクトルL1r、L1s、L1tは、端子Tr、Ts、Ttに一端がそれぞれ接続され、スイッチ回路33側に他端が接続される。また、コンデンサC1rs、C1st、C1rtは、リアクトルL1r、L1s、L1tのうち異なるリアクトルの他端間に接続される。なお、フィルタ34は、図2に示す構成に限られず、例えば、リアクトルL1r、L1s、L1tを設けない構成でもよい。
[1.2.制御部40]
図1に示す制御部40は、各単相電力変換セル32を駆動する駆動信号を制御モードに応じて生成するスイッチ駆動器47(スイッチ駆動部の一例)を有する。
スイッチ駆動器47は、単相電力変換セル32毎に、駆動信号Gr1、Gs1、Gt1、Gr2、Gs2、Gt2、G1r、G1s、G1t、G2r、G2s、G2t(以下、駆動信号Gと総称する場合がある)を出力する。かかる駆動信号Gにより、双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子15、16のオン/オフ制御が行われる。
駆動信号Gr1、Gs1、Gt1、Gr2、Gs2、Gt2は、図2に示すように、双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子15のゲートに入力される。駆動信号G1r、G1s、G1t、G2r、G2s、G2tは、図2に示すように、双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子16のゲートに入力される。
スイッチ駆動器47は、第1の制御モードと第2の制御モードを有する。第1の制御モードは、電力変換部30による電力変換を行う制御モードであり、第1のスイッチ駆動器61により実行される。第2の制御モードは、電力変換部30による電力変換を行わない制御モードであり、第2のスイッチ駆動器62により実行される。
直列多重マトリクスコンバータ1は、第1の制御モードと第2の制御モードとを切り換えて実行する。これにより、交流電源2の電力により回転電機3を直接駆動する装置と交流電源2の電力を変換して回転電機3を駆動する装置とを切り換える装置が不要になるため、ハードウェアの小型化を図ることができる。以下、それぞれの制御モードについて具体的に説明する。
[1.2.1.第1の制御モード]
第1のスイッチ駆動器61は、入力相電圧VR、VS、VTおよび出力周波数指令ω*に基づいて、各単相電力変換セル32を駆動する駆動信号Gを生成する。
具体的には、第1のスイッチ駆動器61は、出力周波数指令ω*に基づき、U相、V相およびW相のそれぞれに対応する出力相電圧指令VU *、VV *、VW *を生成する。出力相電圧指令VU *、VV *、VW *は、それぞれ基本周波数ωbをもつ電圧指令と3倍周波数ωt(=3×ωb)をもつ電圧指令との和である。これにより、基本周波数ωbと3倍周波数ωtとを有する電圧VU、VV、VWを電力変換部30から回転電機3の各相へ出力させることができる。なお、基本周波数ωbは、出力周波数指令ω*で指定される周波数である。
第1のスイッチ駆動器61は、例えば、入力相電圧VR、VS、VTの大小関係および出力相電圧指令VU *、VV *、VW *に基づき空間ベクトル法や三角波比較等の手法によりPWM(Pulse Width Modulation)信号である駆動信号Gを単相電力変換セル32毎に生成する。第1のスイッチ駆動器61は、生成した駆動信号Gを対応する単相電力変換セル32へそれぞれ出力する。
図4は、出力相に出力されるパルス電圧の模式説明図である。図4に示すように、第1のスイッチ駆動器61から出力される駆動信号Gに基づき、出力相に出力する入力相電圧Vr、Vs、Vtが切り替えられてパルス電圧が回転電機3へ出力される。第1のスイッチ駆動器61は、例えば、回転電機3のU相、V相およびW相にパルス電圧を出力させる駆動信号Gを生成して電力変換部30へ出力し、電力変換部30をPWM制御する。
第1のスイッチ駆動器61から出力される駆動信号Gにより、基本周波数ωbをもつ相電圧指令と3倍周波数ωtをもつ相電圧指令との和に応じた相電圧がU相、V相およびW相のそれぞれに出力される。
基本周波数ωbをもつ相電圧指令と3倍周波数ωtをもつ相電圧指令との和に応じた相電圧をU相、V相およびW相のすべてに出力すると、これら2つの相電圧指令のうち3倍周波数ωtをもつ相電圧指令に応じた相電圧はU相、V相、W相で常に同じ値となる。したがって、出力線間電圧(U相とV相の間の電圧、V相とW相の間の電圧、および、W相とU相の間の電圧)には、3倍の周波数ωtをもつ相電圧指令に応じた相電圧は相殺されて現れない。すなわち、出力相電圧は、基本周波数ωbと3倍周波数ωtとをもつ相電圧指令に応じた電圧成分を含みつつ、出力線間電圧は、基本周波数ωbをもつ相電圧指令によってのみ定まる電圧になる。
基本周波数ωbをもつ相電圧指令に3倍周波数ωtをもつ相電圧指令を加えることにより、加える前より出力相電圧指令VU *、VV *、VW *のピーク値が小さくなる。したがって、出力相電圧指令VU *、VV *、VW *のピーク値の√3倍よりも出力線間電圧のピーク値を大きくすることができる。出力相電圧指令VU *、VV *、VW *の最大ピーク値は入力線間電圧の0.866倍に制限されるが、このようなとき、3倍周波数ωtをもつ相電圧指令を加えることにより、3倍周波数ωtをもつ相電圧指令を加えない場合に比べ、出力線間電圧を大きくすることができる。
[1.2.2.第2の制御モード]
第2のスイッチ駆動器62は、各単相電力変換セル32に対して、電力変換動作を行わずに二次巻線12から入力される三相電圧のうち線間電圧を出力させる駆動信号Gを生成する。具体的には、第2のスイッチ駆動器62は、U相、V相およびW相のそれぞれの相間(U相とV相の間、V相とW相の間、および、W相とU相の間)に、異なる線間電圧が出力されるように駆動信号Gを生成する。
図5は、第2の制御モードでの各単相電力変換セル32に対する駆動信号Gの状態を示す図である。なお、図5に示すU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3は、図1に示す位置U1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の単相電力変換セル32に対応する。ここでは、駆動信号GがHighアクティブの信号である場合の例であるが、駆動信号GがLowアクティブの信号であってもよい。
図5に示すように、第2のスイッチ駆動器62は、複数の双方向スイッチSwのうちの一部の双方向スイッチSwを継続してオン制御する駆動信号Gを単相電力変換セル32毎に生成し、各単相電力変換セル32へ出力する。これにより、二次巻線12から出力される三相交流電圧の三つの線間電圧のうち一つの線間電圧が各単相電力変換セル32から継続して出力される。
具体的には、第2のスイッチ駆動器62は、U相の単相電力変換セル32a、32d、32gに対し、駆動信号Gr1、G1r、G2s、Gs2がHighレベルであり、その他がLowレベルである駆動信号Gを出力する。これにより、双方向スイッチSw1と双方向スイッチSw5とがオン、それ以外の双方向スイッチSwはオフになる。そのため、U相の単相電力変換セル32a、32d、32gからr相とs相の間の線間電圧が出力される。
また、第2のスイッチ駆動器62は、V相の単相電力変換セル32b、32e、32hに対し、駆動信号Gs1、G1s、G2t、Gt2がHighレベルであり、その他がLowレベルである駆動信号Gを出力する。これにより、双方向スイッチSw2と双方向スイッチSw6とがオン、それ以外の双方向スイッチSwはオフになり、V相の単相電力変換セル32b、32e、32hからs相とt相の間の線間電圧が出力される。
また、第2のスイッチ駆動器62は、W相の単相電力変換セル32c、32f、32iに対し、駆動信号Gr2、G2r、G1t、Gt1がHighレベルであり、その他がLowレベルである駆動信号Gを出力する。これにより、双方向スイッチSw3と双方向スイッチSw4とがオン、それ以外の双方向スイッチSwはオフになり、W相の単相電力変換セル32c、32f、32iからt相とr相の間の線間電圧が出力される。
このように、第2のスイッチ駆動器62は、第2の制御モードにおいて、各単相電力変換セル32から出力される線間電圧が出力相毎に異なるように双方向スイッチSw1〜Sw6を制御する。これにより、電力変換部30のスイッチング動作が行われずに、各単相電力変換セル部31から各出力相の電圧が出力されることから、スイッチング動作による電力損失を抑制できる。
[1.2.3.制御モードの切り替え]
図6は、第1の制御モードと第2の制御モードとの切り替えについての説明図である。図6に示す例では、出力周波数指令ω*がゼロから入力周波数ωiまで緩やかに上昇後、出力周波数指令ω*が入力周波数ωiからゼロまで緩やかに下降する場合の制御モードとの切り替えを示す。入力周波数ωiは、入力電圧Viの周波数である。
制御部40は、例えば、上位装置(図示せず)から入力される設定周波数ωTG(出力電圧Voの周波数の目標値)に基づき、出力周波数指令ω*を生成する。なお、ここでは、ωTG=ωiであるものとして説明する。また、制御部40は、通常運転モードから各単相電力変換セル32の駆動を開始する。
通常運転モードにおいて、第1のスイッチ駆動器61は、出力周波数指令ω*に応じた駆動信号Gを出力し、スイッチ回路33をPWM制御する。これにより、出力電圧Voの周波数ωo(以下、出力周波数ωoと記載する)が上昇する(タイミングt0〜t1)。出力周波数指令ω*が入力周波数ωiに近づいて、出力周波数ωoと入力周波数ωiとの差が所定範囲内となると(タイミングt1)、制御部40は、出力周波数ωoが入力周波数ωiと一致すると判定し、通常運転モードから第1移行モードに移行する。
この第1移行モードにおいて、制御部40は、通常運転モードと同様に、第1のスイッチ駆動器61により双方向スイッチSwをPWM制御して交流電源2と回転電機3との間の電力変換を行う。なお、入力周波数ωiは、例えば、商用周波数で50Hzまたは60Hzである。また、所定範囲は、例えば、1Hzまたは2Hzである。
第1移行モードに移行すると、制御部40は、出力電圧Voの位相θo(以下、出力位相θoと記載する)を入力電圧Viの位相θi(以下、入力位相θiと記載する)に追従させる位相追従制御を実行する。制御部40は、かかる位相追従制御により出力位相θoと入力位相θiとの差が所定範囲内になった場合に、出力位相θoと入力位相θiとが一致すると判定し、位相追従制御を終了する。
制御部40は、出力位相θoと入力位相θiとが一致すると判定した後、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードへ移行し、第2のスイッチ駆動器62から出力される駆動信号Gに基づいてスイッチ回路33を制御する(タイミングt2)。
以上のように、制御部40は、回転電機3を第1の制御モードで起動後、出力周波数ωoを入力周波数ωiと等しい周波数まで上昇させて第2の制御モードに移行する際に、位相追従制御を行う。これは、周波数が一致しても、入力電圧Viと出力電圧Voの位相に差があれば、第1の制御モードから第2の制御モードへ移行する場合、出力電流Ioにショックが発生し、過電流状態を引き起こす場合もあるからである。
また、制御部40は、周波数が一致すると判定した場合に位相追従を行うことから、加速度の変化幅を抑制することができ、第1移行モードにおける出力電流Ioの変動を抑制することができる。
制御部40は、第2の制御モードで双方向スイッチSwを制御している状態で設定周波数ωTGの値が変更されたときに、周波数が不一致と判定した場合、第2の制御モードから第1の制御モードにおける第2の移行モードへ移行する(タイミングt4)。制御部40は、例えば、設定周波数ωTGと入力周波数ωiとの差が所定範囲外となった場合、周波数が不一致と判定する。
制御部40は、第2の移行モードへ移行すると、出力位相θoの入力位相θiへの追従を徐々に解除する位相追従停止制御を実行する。位相追従停止制御が終了すると(タイミングt5)、制御部40は、出力周波数指令ω*が設定周波数ωTGに近づくように、出力周波数指令ω*を変化させることで出力周波数ωoを変化させる。もし設定周波数がωTGゼロであり停止を指令されている場合は、出力周波数指令ω*が所定周波数になると(タイミングt6)、制御部40は、通常運転モードを停止する。
このように、直列多重マトリクスコンバータ1は、周波数が不一致と判定した場合、位相追従停止制御を実行して、第2の制御モードから第1の制御モードへ移行する。そのため、出力電流Ioにショックが発生することを抑制することができる。
なお、第1のスイッチ駆動器61は、基本周波数ωbの3倍の周波数ωtの成分が含まれないように出力相電圧指令VU *、VV *、VW *を生成できるが、この場合、各単相電力変換セル32は入力される電圧の0.866倍程度までしか歪みのない正弦波電圧を出力できない。
そこで、この場合、制御部40は、出力位相θoと入力位相θiとが一致すると判定した後、出力位相θoの基準をU相電圧が正の最大値となる位相とした場合、出力位相θoがπ/6+nπ/3(nは、1〜5のうち1つ以上の整数)−θZE_Bandndからπ/6+nπ/3+θZE_Bandの範囲内にあるか否かを判定する。
制御部40は、出力位相θoがπ/6+nπ/3−θZE_Bandndからπ/6+nπ/3+θZE_Bandの範囲内にある場合、双方向スイッチSwを駆動するモードを第1の制御モードから第2の制御モードへ移行する。これにより、モード切り替え時の出力位相θoを最適化し、出力電流Ioの変動を低減することができる。なお、制御部40は、入力位相θiがπ/6+nπ/3−θZE_Bandからπ/6+nπ/3+θZE_Bandの範囲内にある場合に、第1の制御モードから第2の制御モードへ移行することもできる。
[1.3.制御部40の具体例]
図7は、制御部40の構成例を示す図である。図7に示すように、制御部40は、周波数指令生成器41と、V/f制御器42と、d軸電圧指令生成器43と、指令振幅演算器44と、指令位相演算器45と、出力位相演算器46(位相演算部の一例)と、スイッチ駆動器47とを備える。
また、制御部40は、入力周波数検出器48と、積分器49と、出力周波数判定器50(周波数判定部の一例)と、出力位相判定器51(位相判定部の一例)と、モード切替判定器52(モード切替判定部の一例)と、モード判定器53とを備える。
かかる制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、各部位41〜53として機能する。なお、各部位41〜53は、プログラムを用いずにハードウェアのみで構成してもよい。
周波数指令生成器41は、設定周波数ωTGに応じた出力周波数指令ω*を生成し、V/f制御器42へ出力する。例えば、周波数指令生成器41は、設定変更により、設定周波数ωTGの値が現在の値よりも大きい値に変更された場合、出力周波数ωoを所定期間で設定周波数ωTGへ到達させる出力周波数指令ω*を生成する。
周波数指令生成器41は、例えば、図6に示すタイミングt0で現在値より大きい設定周波数ωTGが入力されると、時間の経過に伴い一定の増加率で直線的に増加し、タイミングt1で設定周波数ωTGと一致する出力周波数指令ω*を生成する。
また、周波数指令生成器41は、例えば、ωTG=ω*の状態において、設定変更により、設定周波数ωTG Gの値が現在の値よりも小さい値に変更された場合、出力周波数指令ω*を所定期間で設定周波数ωTGへ到達させる出力周波数指令ω*を生成する。
V/f制御器42は、出力周波数指令ω*に応じたq軸出力電圧指令Vq*を指令振幅演算器44および指令位相演算器45へ出力する。また、dq座標系は出力周波数指令ω*により回転する2軸直交座標系であり、d軸の回転角度は出力位相θoに一致するものとする。
d軸電圧指令生成器43は、d軸出力電圧指令Vd*を指令振幅演算器44および指令位相演算器45へ出力する。d軸出力電圧指令Vd*は、d軸の成分に対応する電圧指令であり、例えば、ゼロが設定される。なお、d軸電圧指令生成器43は、第1の制御モードにおいて、出力周波数ωoに応じた値のd軸出力電圧指令Vd*を指令振幅演算器44および指令位相演算器45へ出力することも可能である。
指令振幅演算器44は、d軸出力電圧指令Vd
*とq軸出力電圧指令Vq
*とに基づき、出力電圧指令振幅v1を演算する。指令振幅演算器44は、例えば、以下の式(1)から出力電圧指令振幅v1を演算する。指令振幅演算器44は、出力電圧指令振幅v1をスイッチ駆動器47へ出力する。
指令位相演算器45は、d軸出力電圧指令Vd
*とq軸出力電圧指令Vq
*とに基づき、出力電圧指令位相θvを求める。例えば、指令位相演算器45は、以下の式(2)から出力電圧指令位相θvを求める。かかる出力電圧指令位相θvは、指令位相演算器45から出力位相演算器46へ出力される。なお、Vd=0の場合は式(2)においてVq
*/Vd
*の演算は行わず、q軸出力電圧指令Vq
*が正であればθv=π/2とし、q軸出力電圧指令Vq
*が負であればθv=3π/2とする。
出力位相演算器46は、モード判定器53から出力されるモード選択信号Sm1〜Sm4に応じた制御位相θPWMを出力する。出力位相演算器46は、通常運転モード、第1移行モード、第2の制御モードおよび第2移行モードのそれぞれに応じた位相をモード選択信号Sm1〜Sm4に基づいて選択し、制御位相θPWMとして出力する。
出力位相演算器46は、通常運転モードにおいて、例えば、出力周波数指令ω*に応じた位相θに出力電圧指令位相θvを加算して制御位相θPWMを算出し、第2の制御モードにおいて、入力位相θiを制御位相θPWMとして出力する。
また、出力位相演算器46は、第1移行モードにおいて位相追従制御を行い、入力位相θiに対して出力位相θoが徐々に追従するように制御位相θPWMを算出する。出力位相演算器46は、入力位相θiと出力位相θoとの差が低減するように移行出力位相θ1を生成する。出力位相演算器46は、時間の経過に伴って入力周波数ωiの比率が増加するように、入力周波数ωiと周波数指令ω*にそれぞれ乗算する比率を変えながらこれらを加算して移行周波数指令ωtransを算出し、移行周波数指令ωtransを時間積分することにより移行出力位相θ1を演算する。例えば、出力周波数指令ω*にはある時間で1から0に減少する比率が乗算され、入力周波数ωiには同じ時間で0から1に増加する比率が乗算され、これら二つの比率の和が常に1となるようにする。また、例えば出力位相演算器46は、入力位相θiと制御位相θPWMとの差をPI増幅することにより、位相補償値θajを生成する。そして、出力位相演算器46は、移行出力位相θ1に位相補償値θajを加算して制御位相θPWMを算出する。
また、出力位相演算器46は、第2移行モードにおいて位相追従停止制御を行い、入力位相θiに対する出力位相θoの追従を徐々に解除させる制御位相θPWMを算出する。出力位相演算器46は、時間の経過に伴って入力周波数ωiの比率が低減するように入力周波数ωiと出力周波数指令ω*を比率を変えながら互いを加算して移行周波数指令ωtransを算出し、移行周波数指令ωtransを時間積分することにより移行出力位相θ1を演算する。また、出力位相演算器46は、PI増幅器を使用して位相補償値θaiを生成している場合、その比例係数をゼロに変更し、さらに積分のリセットを行うことで位相補償値θaiをゼロにすることも合わせて行う。このとき、制御位相θPWMがステップ状に変化することを防ぐため、比例係数のゼロへの変更、積分のリセットを時間とともに傾斜をもたせて徐々に行ってもよい。そして出力位相演算器46は、移行出力位相θ1に位相補償値θajを加算して制御位相θPWMを算出する。出力位相演算器46は、位相追従停止制御が終了すると、位相追従停止終了情報をモード判定器53へ通知する。
スイッチ駆動器47は、上述したように、第1の制御モードを実行する第1のスイッチ駆動器61と、第2の制御モードを実行する第2のスイッチ駆動器62とを有する。スイッチ駆動器47は、モード判定器53から出力されるモード選択信号Sm1〜Sm4に基づいて、制御モードを選択する。
具体的には、スイッチ駆動器47は、モード選択信号Sm1、Sm2、Sm4のいずれかがHighレベルの場合に第1制御モードを選択し、モード選択信号Sm3がHighレベルの場合に第2の制御モードを選択する。
第1のスイッチ駆動器61は、出力電圧指令振幅v1および制御位相θPWMに応じた振幅および位相の出力相電圧指令VU *、VV *、VW *を生成する。第1のスイッチ駆動器61は、例えば、VU *=v1×{cos(θPWM)+Acos(3θPWM)}、VV *=v1×{cos(θPWM−2/3π)+Acos(3θPWM−2/3π)}、VW *=v1×{cos(θPWM+2/3π)+Acos(3θPWM+2/3π)}などの演算式を用いて、出力相電圧指令VU *、VV *、VW *を生成する。なお、Aは係数であり、通常は1/3とする。
入力周波数検出器48は、電圧検出部20により検出された入力相電圧VR、VS、VTから入力周波数ωiを演算する。入力周波数検出器48は、出力位相演算器46、積分器49および出力周波数判定器50へ入力周波数ωiを出力する。入力周波数検出器48は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)などにより構成される。
積分器49は、入力周波数検出器48から出力される入力周波数ωiを積分することにより入力位相θiを演算する。積分器49は、入力位相θiを出力位相演算器46へ出力する。入力周波数検出器48をPLLで構成した場合、入力位相θiをPLLから出力し、積分器49を省略することも可能である。
出力周波数判定器50は、出力周波数指令ω*と入力周波数ωiとの差が所定範囲内であり、かつ、入力周波数ωiと設定周波数ωTGとの差が所定範囲内である場合に、周波数一致を示すHighレベルの周波数判定信号Sf(周波数一致信号の一例)をモード判定器53へ出力する。
なお、図6に示す例では、入力周波数ωiと比較する出力周波数として出力周波数ωoに対応する出力周波数指令ω*を用いているが、制御部40において、出力周波数ωoを直接検出する出力周波数検出部を設けてもよい。この場合、出力周波数判定器50は、出力周波数指令ω*に代えて、出力周波数ωoと入力周波数ωiとの差が所定範囲内である場合に、周波数一致を示す周波数判定信号Sfを出力する。
出力位相判定器51は、第1移行モードにおいて、入力位相θiと制御位相θPWMとの差が位相閾値ΔθZE_cmp以下の場合に、位相一致を示すHighレベルの位相判定信号Spをモード切替判定器52およびモード判定器53へ出力する。
モード切替判定器52は、出力位相判定器51から位相一致を示す位相判定信号Spが出力され、かつ、制御位相θPWMがπ/6+nπ/3−θZE_Bandからπ/6+nπ/3+θZE_Bandの範囲内にある場合に、切替指示を示すHighレベルのモード切替信号Sswをモード判定器53へ出力する。
モード判定器53は、周波数判定信号Sfおよび位相判定信号Spに基づいて、制御モードを判定する。モード判定器53は、判定した制御モードに応じたモード選択信号Sm1〜Sm4を出力する。
モード判定器53は、通常運転モードの場合、モード選択信号Sm1をHighレベルにし、その他のモード選択信号Sm2〜Sm4をLowレベルにする。モード判定器53は、通常運転モードにおいて、周波数判定信号SfがLowレベルからHighレベルとなった場合、制御モードを第1移行モードへ移行させるための状態信号Sm1〜Sm4の切り替えを行う。
第1移行モードへの移行は、モード選択信号Sm1をHighレベルからLowレベルにし、モード選択信号Sm2をLowレベルからHighレベルにすることによって行われる。これにより、出力周波数ωoと入力周波数ωiとの差が所定範囲内となった場合に、制御モードが通常運転モードから第1移行モードへ切り替わる。
モード判定器53は、第1移行モードの状態において、位相判定信号SpがHighレベルになった場合、制御モードを第2の制御モードへ移行させるための状態信号Sm1〜Sm4の切り替えを行う。第2の制御モードへの移行は、モード選択信号Sm2をHighレベルからLowレベルにし、モード選択信号Sm3をLowレベルからHighレベルにすることによって行われる。
モード判定器53は、第2の制御モードにおいて、周波数判定信号SfがHighレベルからLowレベルになった場合、制御モードを第2移行モードへ移行させるための状態信号Sm1〜Sm4の切り替えを行う。第2移行モードへの移行は、モード選択信号Sm3をHighレベルからLowレベルにし、モード選択信号Sm4をLowレベルからHighレベルにすることによって行われる。これにより、設定周波数ωTGと入力周波数ωiとの差が所定範囲外になった場合に、第2の制御モードから第2移行モードへ切り替わる。
モード判定器53は、第2移行モードにおいて、出力位相演算器46から位相追従停止終了情報が通知された場合に、制御モードを通常運転モードへ移行させるための状態信号Sm1〜Sm4の切り替えを行う。通常運転モードへの移行は、モード選択信号Sm4をHighレベルからLowレベルにし、モード選択信号Sm1をLowレベルからHighレベルにすることによって行われる。これにより位相追従停止処理が終了した場合に、第2移行モードから通常運転モードへ切り替わる。
なお、基本周波数ωbの3倍の周波数ωtの成分が含まれないように出力相電圧指令VU *、VV *、VW *が第1のスイッチ駆動器61により生成される場合、モード判定器53は、モード切替信号Sswの状態に基づき、制御モードを移行することができる。
例えば、モード判定器53は、第1移行モードの状態において、位相判定信号Spおよびモード切替信号SswがHighレベルになった場合、制御モードを第2の制御モードへ移行する。これにより、位相追従制御が終了し、出力位相θoまたは入力位相θiがπ/6+nπ/3−θZE_Bandからπ/6+nπ/3+θZE_Bandの範囲内にある場合に、第1移行モードから第2の制御モードへ切り替わる。
また、モード判定器53は、第2の制御モードにおいて、周波数判定信号SfがHighレベルからLowレベルになり、かつ、モード切替信号SswがHighレベルになった場合、制御モードを第2移行モードへ移行することができる。
[2.第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る電動機駆動装置の直列多重マトリクスコンバータについて説明する。第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータは、変圧器の二次巻線に電圧位相差を有する。なお、以下においては、第1の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1と同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図8は、第2の実施形態に係る電動機駆動装置の構成例を示す図である。図8に示すように、第2の実施形態に係る電動機駆動装置100Aは、直列多重マトリクスコンバータ1Aと、交流電源2と、回転電機3とを備える。
直列多重マトリクスコンバータ1Aは、入力端子TR、TS、TTと、出力端子TU、TV、TWと、変圧器10Aと、電圧検出部20と、電力変換部30と、制御部40Aとを備える。
変圧器10Aは、一次巻線11と、9つの二次巻線13a〜13i(以下、二次巻線13と総称する場合がある)とを備える。交流電源2から一次巻線11に供給される三相交流電力は変圧器10Aにより9つの二次巻線13a〜13iに分配される。かかる変圧器10Aは、同一出力相に対応する二次巻線13間で電圧位相差を発生させる移相変圧器である。
図9は、図8に示す変圧器10Aの一次巻線11と二次巻線13との間の電圧位相差の一例を示す図である。変圧器10Aでは、図9に示すように、各単相電力変換セル部31に接続される3つの二次巻線13の電圧位相が20度ずつずれている。
具体的には、U相では、位置U1に対応する二次巻線13aに対して、位置U2に対応する二次巻線13dは20度の電圧位相差を有し、位置U3に対応する二次巻線13gは40度の電圧位相差を有する。同様に、V相では、位置V1に対応する二次巻線13bに対して、位置V2に対応する二次巻線13eは20度の電圧位相差を有し、位置V3に対応する二次巻線13hは40度の電圧位相差を有する。
また、W相では、位置W1に対応する二次巻線13cに対して、位置W2に対応する二次巻線13fは20度の電圧位相差を有し、位置W3に対応する二次巻線13iは40度の電圧位相差を有する。なお、ここでは一例として、二次巻線13a〜13cの一次巻線11に対する電圧位相差をゼロとする。
すなわち、二次巻線13a〜13cのr1相、s1相およびt1相の電圧位相は、交流電源2のR相、S相およびT相の電圧位相と同一である。また、二次巻線13d〜13fのr2相、s2相およびt2相の電圧位相は、交流電源2のR相、S相およびT相の電圧位相に対して20度ずれている。また、二次巻線13g〜13iのr3相、s3相およびt3相の電圧位相は、交流電源2のR相、S相およびT相の電圧位相に対して40度ずれている。このように、二次巻線13間で電圧位相差を設けることによって、一次巻線11側に流れる高調波電流を低減することができる。
単相電力変換セル部31を構成する3つの単相電力変換セル32に入力される電圧に位相差があると、第2の制御モードにおいて3つの単相電力変換セル32から出力される電圧にも位相差を生じることとなる。図10は、位置U1、U2、U3の単相電力変換セル32a、32d、32gからそれぞれ出力される電圧ベクトルの一例を示す図である。
図10に示すように、U相の単相電力変換セル部31から出力される電圧は、単相電力変換セル32a、32d、32gの合成電圧ベクトルにより定まるものとなる。したがって、U相の単相電力変換セル部31から出力される電圧の大きさは、単相電力変換セル32a、32d、32gのからそれぞれ出力される電圧の大きさを足し合わせた値より小さくなる。すなわち、変圧器10Aの変圧比が変圧器10の変圧比と同じであれば、直列多重マトリクスコンバータ1Aは、直列多重マトリクスコンバータ1に比べ、第2の制御モードにおいて、U相の単相電力変換セル部31から出力される電圧が小さくなる。また、U相の単相電力変換セル部31と同様に、V相およびW相の単相電力変換セル部31から出力される電圧も小さくなる。
そこで、本実施形態における変圧器10Aにおいては、複数の二次巻線13a〜13iの電圧位相とこれらの電圧位相の平均値とのずれ量に応じて一次巻線11と二次巻線13a〜13iとの間の変圧比Kが設定される。
例えば、R相、S相およびT相のそれぞれの線間(R相とS相の間、S相とT相の間、T相とR相の間)の電圧が3300Vであり、各単相電力変換セル部31から3300Vの電圧を出力させるとする。この場合、各単相電力変換セル32は、3300Vを3×√3で割った値である3300/3√3Vの電圧を出力し、変圧比Kは、1/3√3である。かかる変圧比K(=1/3√3)を基準変圧比Kaとする。
図9に示す例では、各単相電力変換セル部31に対応する複数の二次巻線13の一次巻線11に対する電圧位相差を平均した値(以下、平均値Δθavと記載する)は、(0度+20度+40度)/3=20度である。そして、平均値Δθavと二次巻線13a〜13cの電圧位相とのずれは、20度である。また、平均値Δθavと二次巻線13d〜13fの電圧位相とのずれは、0度である。また、平均値Δθavと二次巻線13g〜13iの電圧位相とのずれは、20度である。
したがって、一次巻線11に対する各二次巻線13の変圧比Kは、基準変圧比Kaに対して3/{1+2cos(20°)}倍に設定される。これにより、各単相電力変換セル部31から出力される電圧が二次巻線13間の電圧位相差に起因して低下することを抑制できる。
制御部40Aは、スイッチ駆動器47Aを備え、かかるスイッチ駆動器47Aは、第1のスイッチ駆動器61Aと、第2のスイッチ駆動器62Aとを備える。第2のスイッチ駆動器62Aは、図1に示す第2のスイッチ駆動器62と同様に動作する。
第1のスイッチ駆動器61Aは、入力相電圧VR、VS、VTと出力周波数指令ω*に基づいて、各相における単相電力変換セル32の位置に応じて各単相電力変換セル32を駆動する駆動信号Gを生成する。例えば、第1のスイッチ駆動器61Aは、位置U1、V1、W1の単相電力変換セル32に対して入力位相θiおよび対応する出力相に応じた駆動信号Gを生成する。
また、位置U2、V2、W2の単相電力変換セル32に対して入力位相θiに20度を加算した位相および対応する出力相に応じた駆動信号Gを生成する。また、第1のスイッチ駆動器61Aは、位置U3、V3、W3の単相電力変換セル32に対して入力位相θiに40度を加算した位相および対応する出力相に応じた駆動信号Gを生成する。
また、前述のとおり、第2の制御モードにてU相の単相電力変換セル部31から出力される電圧は、図10に示すように、単相電力変換セル32a、32d、32gの合成電圧ベクトルにより定まるものとなる。したがって、第2の制御モードにてU相の単相電力変換セル部31から出力される電圧は、一次巻線11に印加される入力相電圧VRに対して、平均値Δθavだけ位相のずれた電圧となる。
以上から、第1移行モードに移行すると、制御部40Aは、第1の実施形態と異なり、出力位相θoを入力位相θiから平均値Δθavだけずれた位相に追従させる位相追従制御を実行する。制御部40Aは、かかる位相追従制御により出力位相θoと入力位相θiから平均値Δθavだけずれた位相との差が所定範囲内になった場合に、出力位相θoの入力位相θiへの追従が完了したと判定し、位相追従制御を終了する。
このように、第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1Aは、同一出力相に対応する二次巻線13間に電圧位相差を設けており、これにより、一次巻線11側に流れる高調波電流を低減することができる。また、直列多重マトリクスコンバータ1Aは、変圧器10Aの変圧比Kが二次巻線13の電圧位相差に応じて設定されていることから、各単相電力変換セル部31から出力される電圧の合計値である出力相電圧が二次巻線13間の電圧位相差に起因して低下することを抑制できる。
なお、二次巻線13間の電圧位相差は、図9に示す例に限定されるものではない。図11は、図8に示す変圧器10Aの一次巻線11と二次巻線13との間の電圧位相差の他の例を示す図である。図11に示すように、一次巻線11を基準として、単相電力変換セル部31に接続される3つの二次巻線13の電圧位相が、0度、20度、160度である。
t相はr相に対して120度ずれているため、第1のスイッチ駆動器61Aは、160度の電圧位相を有する二次巻線13に接続される単相電力変換セル32において、T相を基準にすることで、電圧位相差を40度として扱う。
例えば、第2のスイッチ駆動器62Aは、二次巻線13c、13f、13iに接続された単相電力変換セル32に対する駆動信号Gを、R相をT相、S相をR相、および、T相をS相に置き換えて生成する。
図12は、第2の制御モードでの各単相電力変換セル32に対する駆動信号Gの状態を示す図である。図12に示すように、図5に示す状態に比べ、位置U3、V3、W3に対応する単相電力変換セル32g〜32iに対する駆動信号の状態が異なり、その他の単相電力変換セル32に対する駆動信号Gの状態は同じである。
第2のスイッチ駆動器62Aは、このように駆動信号Gを生成することで、単相電力変換セル部31毎に、3つの単相電力変換セル32にそれぞれ対応する二次巻線13が20度ずつずれている状態として扱うことができる。
また、図11に示す電圧位相差を有する変圧器10Aの変圧比Kは、図9に示す電圧位相差を有する変圧器10Aの変圧比Kと同様に設定することで、二次巻線13間の電圧位相差に応じて各単相電力変換セル部31から出力される電圧が低下することを抑制できる。
以上のように、第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1Aでは、一次巻線11と二次巻線13との間の電圧位相差により一次巻線11側に流れる高調波電流を低減し、電圧位相差に応じた変圧比Kを設定することで電力変換部30の出力電圧の低下を抑制することができる。
[3.第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る電動機駆動装置の直列多重マトリクスコンバータについて説明する。第3の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータは、各単相電力変換セル部において6つの単相電力変換セルを備える。なお、以下においては、第1および第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1、1Aと同一機能を有する構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図13は、第3の実施形態に係る電動機駆動装置の構成例を示す図である。図13に示すように、第3の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1Bは、入力端子TR、TS、TTと、出力端子TU、TV、TWと、変圧器10Bと、電力変換部30Bと、制御部40Bとを備える。
なお、直列多重マトリクスコンバータ1Bは、電圧検出部20を有しているが、図13では電圧検出部20を省略している。また、直列多重マトリクスコンバータ1Bは、直列多重マトリクスコンバータ1、1Aと同様に交流電源2および回転電機3に接続されるが、図13では交流電源2および回転電機3を省略している。
変圧器10Bは、一次巻線11と、18個の二次巻線14a〜14r(以下、二次巻線14と総称する場合がある)とを備える。交流電源2から一次巻線11に供給される三相交流電力は変圧器10Bにより18個の二次巻線14a〜14rに分配される。かかる変圧器10Bは、同一出力相に対応する二次巻線14間に電圧位相差を発生させる移相変圧器である。
電力変換部30Bは、回転電機3のU相、V相およびW相に対応する単相電力変換セル部31Ba〜31Bc(以下、単相電力変換セル部31Bと総称する場合がある)を備え、回転電機3へ三相交流電力を出力する。単相電力変換セル部31Ba〜31Bcは、一端が互いに中性点Nに接続され、他端が回転電機3のU相、V相およびW相に接続される。
単相電力変換セル部31Bは、三相交流電力を単相交流電力に変換する6つの単相電力変換セルを有し、これら6つの単相電力変換セルの出力が加算されて出力される。
具体的には、単相電力変換セル部31Baは、二次巻線14a、14d、14g、14j、14m、14pにそれぞれ接続される単相電力変換セル32a、32d、32g、32j、32m、32p(以下、単相電力変換セル32Aと記載する場合がある)を有する。これら6つの単相電力変換セル32Aの出力は直列に接続され、これら6つの単相電力変換セル32Aの出力電圧が加算されて回転電機3のU相へ出力される。
同様に、単相電力変換セル部31Bbは、二次巻線14b、14e、14h、14k、14n、14qにそれぞれ接続される単相電力変換セル32b、32e、32h、32k、32n、32q(以下、単相電力変換セル32Bと記載する場合がある)を有する。これら6つの単相電力変換セル32Bの出力は直列に接続され、これら6つの単相電力変換セル32Bの出力電圧が加算されて回転電機3のV相へ出力される。
単相電力変換セル部31Bcは、二次巻線14c、14f、14i、14l、14o、14rにそれぞれ接続される単相電力変換セル32c、32f、32i、32l、32o、32r(以下、単相電力変換セル32Cと記載する場合がある)を有する。これら6つの単相電力変換セル32Cの出力は直列に接続され、これら6つの単相電力変換セル32Cの出力電圧が加算されて回転電機3のW相へ出力される。
なお、以下において、単相電力変換セル32a〜32rを単相電力変換セル32と総称する場合がある。図13に示す単相電力変換セル32は、図1および図2に示す単相電力変換セル32と同様の構成である。
制御部40Bは、スイッチ駆動器47Bを備え、かかるスイッチ駆動器47Bは、第1のスイッチ駆動器61Bと、第2のスイッチ駆動器62Bとを備える。第1のスイッチ駆動器61Bは、図8に示す第1のスイッチ駆動器61Aと同様に動作する。具体的には、第1のスイッチ駆動器61Bは、入力相電圧VR、VS、VTと出力周波数指令ω*に基づき、各相における単相電力変換セル32の位置に応じて駆動信号Gを単相電力変換セル32毎に生成する。
図14は、図13に示す変圧器10Bの一次巻線11と二次巻線14との間の電圧位相差の一例を示す図である。図14に示すように、一次巻線11を基準とすると、U相では、位置U1〜U6に対応する二次巻線14a、14d、14g、14j、14m、14pは、一次巻線11に対してそれぞれ0度、10度、20度、30度、40度、50度の電圧位相差を有する。
同様に、V相では、位置V1〜V6に対応する二次巻線14b、14e、14h、14k、14n、14qは、一次巻線11に対して、それぞれ0度、10度、20度、30度、40度、50度の電圧位相差を有する。また、W相では、位置W1〜W6に対応する二次巻線14c、14f、14i、14l、14o、14rは、一次巻線11に対して、それぞれ0度、10度、20度、30度、40度、50度の電圧位相差を有する。
第1のスイッチ駆動器61Bは、各相における単相電力変換セル32の位置および入力位相θiに応じた駆動信号Gを単相電力変換セル32毎に生成する。例えば、位置U2、V2、W2の単相電力変換セル32に対して入力位相θiに10度を加算した位相と対応する出力相に応じた駆動信号Gを生成する。また、位置U4、V4、W4の単相電力変換セル32に対して入力位相θiに30度を加算した位相と対応する出力相に応じた駆動信号Gを生成する。
第2のスイッチ駆動器62Bは、図1に示す第2のスイッチ駆動器62と同様に、複数の双方向スイッチSwのうちの一部の双方向スイッチSwを継続してオン制御する駆動信号Gを単相電力変換セル32毎に生成し、各単相電力変換セル32へ出力する。
図15は、第2の制御モードでの各単相電力変換セル32に対する駆動信号Gの状態を示す図である。なお、図15に示すU1〜U6、V1〜V6、W1〜W6は、図13に示す位置U1〜U6、V1〜V6、W1〜W6の単相電力変換セル32に対応する。
図15に示すように、第2のスイッチ駆動器62Bは、U相の単相電力変換セル32Aに対し、駆動信号Gr1、G1r、G2s、Gs2がHighレベルであり、その他がLowレベルである駆動信号Gを出力する。これにより、U相の単相電力変換セル32Aからr相とs相の間の線間電圧が出力される。
また、第2のスイッチ駆動器62Bは、V相の単相電力変換セル32Bに対し、駆動信号Gs1、G1s、G2t、Gt2がHighレベルであり、その他がLowレベルである駆動信号Gを出力する。これにより、V相の単相電力変換セル32Bからs相とt相の間の線間電圧が出力される。また、第2のスイッチ駆動器62Bは、W相の単相電力変換セル32Cに対し、駆動信号Gr2、G2r、G1t、Gt1がHighレベルであり、その他がLowレベルである駆動信号Gを出力する。これにより、W相の単相電力変換セル32Cからt相とr相の間の線間電圧が出力される。
ところで、単相電力変換セル部31Bを構成する6つの単相電力変換セル32に入力される電圧に位相差があると、第2の制御モードにおいて6つの単相電力変換セル32から出力される電圧が一致しない。これは、単相電力変換セル部31Bから出力される電圧が、6つの単相電力変換セルの電圧ベクトルが合成されたものになるからである。
図16は、位置U1〜U6の単相電力変換セル32a、32d、32g、32i、32m、32pからそれぞれ出力される電圧ベクトルの一例を示す図である。図16に示すように、U相の単相電力変換セル部31Baから出力される電圧は、単相電力変換セル32a、32d、32g、32i、32m、32pの合成電圧ベクトルにより定まるものとなる。
したがって、U相の単相電力変換セル部31から出力される電圧の大きさは、単相電力変換セル32a、32d、32g、32i、32m、32pのからそれぞれ出力される電圧の大きさを足し合わせた値より小さくなる。
そこで、変圧器10Bは、複数の二次巻線14a〜14rの電圧位相とこれらの電圧位相の平均値とのずれ量に応じて一次巻線11と二次巻線14a〜14rとの間の変圧比K1が設定される。
例えば、R相、S相およびT相のそれぞれの線間の電圧が6600Vであり、各単相電力変換セル部31から6600Vの電圧を出力させるとする。この場合、各単相電力変換セル32は、6600Vを6×√3で割った値である6600/6√3Vの電圧を出力し、変圧比Kは、1/6√3である。かかる変圧比K(=1/6√3)を基準変圧比Kbとする。
図14に示す例では、各単相電力変換セル部31Bに対応する6つの二次巻線14の電圧位相を平均した値(以下、平均値Δθav1と記載する)は、(0度+10度+20度+30度+40度+50度)/6=25度である。また、二次巻線14a〜14rの電圧位相と平均値Δθav1とのずれは、5度、15度、または、25度である。
したがって、一次巻線11に対する各二次巻線14の変圧比Kは、基準変圧比Kbに対して6/{2cos(5°)+2cos(15°)+2cos(25°)}倍に設定される。これにより、各単相電力変換セル部31Bから出力される電圧が二次巻線14間の電圧位相差に起因して低下することを抑制できる。
なお、二次巻線14の電圧位相差は、図14に示す例に限定されるものではない。図17は、図13に示す変圧器10Bの一次巻線11と二次巻線14との間の電圧位相差の他の例を示す図である。図17に示すように、一次巻線11を基準として、単相電力変換セル部31Bに接続される6つの二次巻線14の電圧位相差、0度、10度、20度、150度、160度、170度である。
第1のスイッチ駆動器61Bは、150度、160度および170度の電圧位相差を有する二次巻線14に接続される単相電力変換セル32において、T相を基準にすることで、電圧位相差をそれぞれ30、40度および50度として扱う。例えば、第2のスイッチ駆動器62Bは、二次巻線14c、14f、14iに対応する単相電力変換セル32に対する駆動信号Gを、R相をT相、S相をR相、および、T相をS相に置き換えて生成する。
また、第2の実施形態と同様、第1移行モードに移行すると、制御部40Bは、出力位相θoを入力位相θiから平均値Δθav1だけずれた位相に追従させる位相追従制御を実行する。制御部40Bは、かかる位相追従制御により出力位相θoと入力位相θiから平均値Δθav1だけずれた位相との差が所定範囲内になった場合に、出力位相θoの入力位相θiへの追従が完了したと判定し、位相追従制御を終了する。
図18は、第2の制御モードでの各単相電力変換セル32に対する駆動信号Gの状態を示す図である。図18に示すように、図15に示す状態に比べ、位置U4、V4、W4、U5、V5、W5、U6、V6、W6に対応する単相電力変換セル32j〜32rに対する駆動信号Gの状態が異なり、その他の単相電力変換セル32に対する駆動信号Gの状態は同じである。
第2のスイッチ駆動器62Bは、このように駆動信号Gを生成することで、単相電力変換セル部31B毎に、3つの単相電力変換セル32にそれぞれ対応する二次巻線14が10度ずつずれている状態として扱うことができる。
また、図17に示す電圧位相差を有する変圧器10Bの変圧比Kは、図14に示す電圧位相差を有する変圧器10Bの変圧比Kと同様に設定することで、二次巻線14間の電圧位相差に応じて各単相電力変換セル部31Bから出力される電圧が低下することを抑制できる。
[4.変形例]
上述した実施形態では、一次巻線11に対する各二次巻線13、14の変圧比Kは出力相毎に同じであるが、変圧比Kは、同一出力相に対応する複数の二次巻線13、14の電圧位相差に応じて変更することもできる。
例えば、変圧比Kは、電圧位相の平均値Δθav、Δθav1とのずれ量に応じて二次巻線13、14毎に異なるようにしてもよい。例えば、図9に示す変圧器10Aの場合、位置U2、V2、W2に対応する二次巻線13d〜13fの変圧比Kは、基準変圧比Kaと同じ値に設定され、位置U1、V1、W1、U3、V3、W3に対応する二次巻線13a〜13c、13g〜13iの変圧比Kは、基準変圧比Kaに対して1/cos(20°)倍に設定される。これによっても、各単相電力変換セル部31から出力される電圧が二次巻線13間の電圧位相差に起因して低下することを抑制できる。
また、図13に示す変圧器10Bの場合、電圧位相の平均値Δθav1は、25度である。したがって、位置U1、V1、W1、U6、V6、W6に対応する二次巻線14a〜14c、14p〜14rの変圧比Kは、基準変圧比Kbに対して1/cos(25°)に設定される。また、位置U2、V2、W2、U5、V5、W5に対応する二次巻線14d〜14f、14m〜14oの変圧比Kは、基準変圧比Kbに対して1/cos(15°)に設定される。また、位置U3、V3、W3、U4、V4、W4に対応する二次巻線14g〜14lの変圧比Kは、基準変圧比Kbに対して1/cos(5°)に設定される。これによっても、各単相電力変換セル部31Bから出力される電圧が二次巻線14間の電圧位相差に起因して低下することを抑制できる。
また、変圧器10A、10Bは、出力相間で同一の位置関係にある単相電力変換セル32に対応する二次巻線13、14を同じ位相差としたが、同一の出力相に対応する単相電力変換セル32において互いに異なる電圧位相になるように二次巻線13、14に接続されてもよい。例えば、単相電力変換セル32に接続される二次巻線13の電圧位相を、位置U1、U2、U3に対してはそれぞれ0度、20度、40度とし、位置V1、V2、V3に対してはそれぞれ20度、40度、0度とし、位置W1、W2、W3に対しては20度、40度、0度としてもよい。
なお、第1の実施形態に係る変圧器10では、一次巻線11と二次巻線12との電圧位相差をゼロとしたが、二次巻線12間の電圧位相差がゼロであればよく、一次巻線11と二次巻線12との電圧位相差はゼロでなくてもよい。
また、第2および第3の実施形態に係る変圧器10A、10Bでは、一次巻線11と二次巻線12a〜12c、14a〜14cとの電圧位相差をゼロとしたが、かかる電圧位相差はゼロでなくてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。