JP5922383B2 - 壁厚検査方法、校正用具および渦電流検出システム - Google Patents
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Description
ここで、製造誤差により冷却孔の位置が設計位置よりも翼表面側に位置すると、充分な冷却を行えないなどの不都合が生じるおそれがあるため、冷却孔が適正な位置に設けられているか確認する検査が行われている。冷却孔位置の確認方法としては、例えば、放射線透過試験によって冷却孔の位置を確認する方法が用いられている(特許文献1参照)。
図1は、本発明の第1の実施形態における壁厚検査システム1の概略構成を示す構成図である。同図において、壁厚検査システム1は、渦電流検出装置100と、棒状磁性体200と、校正用具300とを具備して、タービン翼900の検査を行う。渦電流検出装置100は、渦電流検出装置本体110と、渦電流プローブ120とを具備する。渦電流検出装置本体110は、励磁部111と、渦電流検出部112とを具備する。渦電流プローブ120は、励磁用コイル121と、渦電流検出用コイル122とを具備する。校正用具300は、台310と、板材320とを具備する。
なお、以下では、タービン翼900の表面と冷却孔910との距離を「壁厚」称する。
なお、壁厚検査システム1を用いて行う壁厚の検査は、壁厚値の測定であってもよいし、壁厚が基準厚以上か否かの判定であってもよい。
なお、後述するように、壁厚をより正確に検出するため、棒状磁性体200を冷却孔910に隙間無く挿入することが望ましい。そこで、壁厚検査システム1は複数の径の棒状磁性体200を具備する。これら複数の棒状磁性体200の中から冷却孔910の口径に応じた棒状磁性体200を選んで挿入することで、隙間を無くす、あるいは検査に支障のない小さな隙間とし得る。
渦電流プローブ120は、壁厚検査に際してタービン翼900に表面に配置される。渦電流プローブ120において、励磁用コイル121は、励磁部111から供給される電圧により棒状磁性体200を貫く磁界を変化させる。渦電流検出用コイル122は、励磁用コイル121が磁界を変化させたことによって棒状磁性体200に渦電流が発生すると、当該渦電流による電磁誘導を受けて渦電流に応じた電圧を発生させる(すなわち、渦電流検出用コイル122の導線の両端に、電圧が生じる)。
なお、渦電流プローブ120が具備するコイルは1つであってもよい。この場合、当該コイルが励磁用コイル121と励磁部111を兼ねる。具体的には、当該コイルは、励磁部111から供給される電圧により棒状磁性体200を貫く磁界を変化させ、また、棒状磁性体200に渦電流が発生すると、当該渦電流による電磁誘導を受けて渦電流に応じた電圧(励磁部111から供給される電圧を打ち消す電圧)を発生させる。
なお、渦電流検出部112が測定する値は、棒状磁性体200に生じる渦電流の大きさを示す値であればよい。例えば、渦電流検出部112が、渦電流検出用コイル122における電圧値に代えて、電流値または電力値を測定するようにしてもよい。
校正用具300を用いて行う渦電流プローブ120の校正については後述する。
図2は、渦電流検出装置100を用いて行う渦電流検出工程にて、タービン翼900に渦電流プローブ120を近づけた状態の例を示す斜視図である。同図に示すように、渦電流検出工程では、タービン翼900の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して、タービン翼900の表面から渦電流プローブ120の走査を施す。これにより、渦電流検出装置100は、棒状磁性体200に対する渦電流検出を行う。なお、ここでいう走査(Scan)は、タービン翼900の表面を渦電流プローブ120でなぞる、すなわち、タービン翼900の表面に渦電流プローブ120が接した状態のまま渦電流プローブ120の位置を変化させる操作である。
これにより、渦電流検出用コイル122には、棒状磁性体200の径およびリフトオフ(渦電流プローブ120と棒状磁性体200との距離)に応じた大きさの電圧が生じる。そして、棒状磁性体200を冷却孔910に隙間無く挿入しておくことで、このリフトオフは壁厚と等しくなる。
なお、壁厚が壁厚判定基準厚み以上か否かの判定は、検査者が渦電流検出装置100の検出する電圧値を読み取って行うようにしてもよいし、あるいは、渦電流検出装置100が、検出した電圧値と所定の電圧値と比較することにより自動で行うようにしてもよい。
同図において、評価曲線L101は、比較的大きい径の棒状磁性体200を用いる場合の評価曲線を示す。また、評価曲線L103は、比較的小さい径の棒状磁性体200を用いる場合の評価曲線を示す。また、評価曲線L102は、両者の中間の径の棒状磁性体200を用いる場合の評価曲線を示す。
図5は、渦電流検出における測定値と壁厚値との関係を示すマトリックスの例を示す説明図である。同図に示すマトリックスの各行は壁厚値と対応付けられており、各列は棒状磁性体200の径と対応付けられている。そして、マトリックスの各欄には、当該列に対応付けられた径の棒状磁性体200を用いて、当該行に対応付けられた壁厚値について渦電流検出を行った場合に、渦電流検出装置100が検出する電圧値が格納されている。
なお、この電圧値から壁厚値への換算は、検査者がマトリックスを参照して行うようにしてもよいし、あるいは、渦電流検出装置100が予めマトリックスを記憶しておいて自動で行うようにしてもよい。
図6は、棒状磁性体200の径と当該棒状磁性体200からコイルまでの距離(リフトオフ)との関係の例を示す説明図である。同図(a)は、棒状磁性体200の径が冷却孔910の口径よりも大きい場合の例を示している。この場合、棒状磁性体200を冷却孔910に挿入することができず、渦電流検出工程を適切に実施することができない。
一方、図6(b)は、冷却孔910の口径に応じた(ほぼ等しい)径を有する棒状磁性体200を挿入した場合の例を示している。この場合、リフトオフD301は、壁厚と等しくなり、渦電流検出工程を実施することで、壁厚を適切に検査し得る。
一方、図6(c)は、冷却孔910の口径よりも小さい径を有する棒状磁性体200を挿入した場合の例を示している。この場合、棒状磁性体200とタービン翼900との間に隙間が有り、この隙間によりリフトオフD302は、壁厚よりも大きく(長く)なっている。この状態で渦電流検出工程を実施すると、実際の壁厚よりも厚く判定してしまい、壁厚不足の検出漏れが生じるおそれがある。
図7は、渦電流プローブ120の位置と渦電流プローブ120から棒状磁性体200までの距離との関係を示す説明図である。同図に示すように、渦電流プローブ120を棒状磁性体200の延在方向に直交する方向(図7のDIRの方向)に走査すると、渦電流プローブ120の位置に応じて棒状磁性体200までの距離が変化し、この距離に応じて渦電流検出装置100の検出する電圧値が変化する。そして、渦電流プローブ120から棒状磁性体200までの距離が極小(図7の距離D401)となったときに、渦電流検出装置100の検出する電圧値が最大となる。この距離D401が、壁厚の極小値(すなわち、検査対象の壁厚)である。
図8は、棒状磁性体200を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐ走査の例を示す説明図である。同図に示す線L501のように、渦電流プローブ120が、棒状磁性体200(冷却孔910)の延在方向(図8の例では、図の上から下)に向かうに従って、棒状磁性体200(冷却孔910)を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐように走査することで、棒状磁性体200(冷却孔910)の各部において壁厚が極小となる位置を検出することができる。
なお、渦電流プローブ120の走査方向が棒状磁性体200の延在方向と正確に直交する必要は無く、渦電流プローブ120の走査方向と棒状磁性体200の延在方向とがずれていれば壁厚が変化し、当該走査線上において壁厚が極小となる位置を検出することができる。
図9は、壁厚検査システム1を用いて壁厚検査を行う処理手順を示すフローチャートである。同図の処理において、検査者は、まず、検査対象となっているタービン翼900における壁厚判定基準厚みを取得し、また、径の大きい棒状磁性体200から順に冷却孔910への挿入を試みて挿入可能な径を取得するなど、渦電流検出工程を実施するに際しての条件を確認する(ステップS101)。
次に、検査者は、棒状磁性体200を冷却孔910に挿入するなど、渦電流検出を行うための準備を行う(ステップS103)。
一方、判定基準以上の電圧値となっている部分が無いと判定した場合(ステップS111:NO)、検査者は、壁厚検査の結果を合格とする(ステップS131)。その後、同図の処理を終了する。
図10は、複数の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して渦電流検出工程を実施する様子の例を示す斜視図である。同図に示すように、複数の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して渦電流検出工程を実施することで、複数の冷却孔910について纏めて壁厚の検査を行うことができ、検査に要する時間を削減することができる。
図11は、本発明の第2の実施形態における壁厚検査システム2の概略構成を示す構成図である。同図において、壁厚検査システム2は、渦電流検出装置100と、棒状磁性体200と、校正用具300と、位置情報取得装置400と、記録装置500と、超音波測定装置600とを具備して、タービン翼900の検査を行う。渦電流検出装置100は、渦電流検出装置本体110と、渦電流プローブ120とを具備する。渦電流検出装置本体110は、励磁部111と、渦電流検出部112とを具備する。渦電流プローブ120は、励磁用コイル121と、渦電流検出用コイル122とを具備する。校正用具300は、台310と、板材320とを具備する。位置情報取得装置400は、駆動部410と、位置情報取得部420とを具備する。
位置情報取得部420は、渦電流プローブ120の位置情報を取得する。例えば、位置情報取得部420は、駆動部410の具備する左右アームおよび上下アームの状態を検出することにより渦電流プローブ120の位置を検出する。
超音波測定装置600は、渦電流検出装置100を用いた壁厚の検査にて壁厚が薄い(要精密検査)と判定された部分の壁厚をさらに精密に検査するための装置である。
図12は、記録装置500が、渦電流検出工程にて渦電流プローブ120の位置と渦電流検出で得られた測定値とを対応付けて記録する様子の例を示す斜視図である。同図において、位置情報取得装置400(駆動部410)は、左右アーム411と上下アーム412とを動作させることにより渦電流プローブ120を動作させる。そして、位置情報取得装置400(位置情報取得部420)は、左右アーム411および上下アーム412の状態を検出することにより渦電流プローブ120の位置を検出し、検出した渦電流プローブ120の位置を記録装置500に出力する。また、渦電流検出装置100は、渦電流検出で得られた測定値、すなわち、棒状磁性体200における渦電流によって渦電流検出用コイル122に生じた電圧値を記録装置500に出力する。そして、記録装置500は、渦電流プローブ120の位置と渦電流検出装置100の検出した電圧値とを対応付けて記録する。
例えば、記録装置500が、渦電流プローブ120の位置に対応する二次元座標上において、渦電流検出装置100の検出した電圧値が所定の電圧値(例えば、壁厚判定基準厚みに対応する電圧値から壁厚不足検出漏れを防止するための余裕分を減算した電圧値)より高い部分を表示する。これにより、検査者は、タービン翼900において壁厚を再検査するべき部分を容易に把握し、超音波測定装置600を用いて該当部分の壁厚をより精密に検査することができる。
図13は、壁厚検査システム2を用いて壁厚検査を行う処理手順を示すフローチャートである。同図の処理において、ステップS201〜S202は、図9のステップS101〜S102と同様である。
そして、検査者は、該当部分について、超音波測定装置600を用いて壁厚についてさらに精密な検査を行う(ステップS222)。
そして、検査者は、ステップS222で行った、超音波測定装置600を用いた壁厚検査に基づいて、壁厚が壁厚判定基準厚みより薄くなっている部分があるか否かを判定する(ステップS223)。
壁厚が壁厚判定基準厚みより薄くなっている部分があると判定した場合(ステップS223:YES)、検査者は、壁厚検査の結果を不合格とする(ステップS231)。その後、同図の処理を終了する。
100 渦電流検出装置
110 渦電流検出装置本体
111 励磁部
112 渦電流検出部
120 渦電流プローブ
121 励磁用コイル
122 渦電流検出用コイル
200 棒状磁性体
300 校正用具
310 台
311 溝
320 板材
400 位置情報取得装置
410 駆動部
420 位置情報取得部
500 記録装置
600 超音波測定装置
900 タービン翼
910 冷却孔
Claims (10)
- タービン翼の冷却孔に棒状磁性体を挿入して、前記タービン翼の表面から渦電流プローブの走査を施して渦電流検出を行う渦電流検出工程を備えて、前記棒状磁性体と前記タービン翼の表面との距離である壁厚の検査を行う壁厚検査方法あって、
前記渦電流検出工程の前に、前記棒状磁性体を溝に挿入して前記タービン翼の壁厚判定基準厚みを有する板材を介して前記棒状磁性体に対して渦電流検出を行うことにより、前記渦電流プローブの校正を行う校正工程を備えることを特徴とする壁厚検査方法。 - 渦電流検出における測定値と壁厚値との関係を示すデータを予め取得して、前記渦電流検出工程にて得られた測定値から前記壁厚値を求める壁厚値取得工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の壁厚検査方法。
- 前記タービン翼の複数の冷却孔に前記棒状磁性体を挿入して前記渦電流検出工程を実施することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の壁厚検査方法。
- 前記渦電流検出工程の後に、前記壁厚についてさらに精密な検査を行う精密検査工程を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の壁厚検査方法。
- 渦電流プローブの位置情報を取得する位置情報取得装置を用いて、前記渦電流検出工程にて前記渦電流プローブの位置と前記渦電流検出で得られた測定値とを対応付けて記録することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の壁厚検査方法。
- 前記渦電流検出工程にて前記冷却孔に前記棒状磁性体を挿入する際に、径の大きい前記棒状磁性体から挿入を試みることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の壁厚検査方法。
- 前記渦電流検出工程にて、前記冷却孔の延在方向に向かうにしたがって該冷却孔を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐように前記渦電流プローブを走査することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の壁厚検査方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の壁厚検査方法に用いられる校正用具であって、前記棒状磁性体の径に応じた深さとなる前記溝を有する台と、前記板材とを具備することを特徴とする校正用具。
- 前記台は、径の異なる複数の棒状磁性体の径に応じた幅および深さの複数の溝を有することを特徴とする請求項8に記載の校正用具。
- 棒状磁性体と、
請求項8または9のいずれか一項に記載の校正用具と、
前記棒状磁性体に渦電流を誘導し、当該渦電流による信号を検出する渦電流検出装置とを具備することを特徴とする渦電流検出システム。
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