JP5919241B2 - レチノイドx受容体アゴニスト剤 - Google Patents

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Description

本発明は、レチノイドX受容体アゴニスト剤に関する。
細胞増殖、代謝、恒常性維持などに関与する因子として、レチノイドX受容体、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体、レチノイン酸受容体、肝臓X受容体、ビタミンD受容体、胆汁酸受容体といった核内受容体が知られている。これら核内受容体は、それぞれ対応するリガンドと結合することで細胞核内に移行し、それぞれ特定のDNA配列に作用してDNAの転写を調節する。
上記核内受容体は二量体の状態で機能することが知られている。例えば、レチノイドX受容体はホモ二量体の状態で機能する。また、レチノイドX受容体は、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体、レチノイン酸受容体、肝臓X受容体、ビタミンD受容体、胆汁酸受容体といった他の核内受容体とのヘテロ二量体の状態でも機能する。
このようにレチノイドX受容体は、ホモ二量体の状態で機能するだけではなく、他の様々な核内受容体のパートナーとなり得る。したがって、レチノイドX受容体は、細胞増殖、代謝及び恒常性維持に広く関与していると推測され、レチノイドX受容体に対する薬剤は、例えば糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患及び腫瘍などに対する治療薬としての適用が期待される。そして、レチノイドX受容体に対して結合するアゴニスト物質として、特許文献1に記載されているように、下記一般式(1)で示されるベキサロテンやそのアナログが報告されている。
特表2013−520433号公報
ベキサロテンは、レチノイドX受容体に対して比較的に強いアゴニスト活性を有しており、皮膚T細胞リンパ腫に対する治療薬として欧米20カ国以上で適用されている。しかし、高脂血症、高コレステロール血症、甲状腺機能低下、白血球減少といった副作用が報告されており、適用が限られているという事情がある。
また、上述したとおり、レチノイドX受容体は、糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患といった疾患にも関与していると考えられるが、ベキサロテンはこれら疾患に対しての適用はない。また、ベキサロテン以外にも、レチノイドX受容体を標的とし、糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患といった疾患を適用疾患とする薬剤も報告されていない。
本発明は、ドルパニンが新たにレチノイドX受容体アゴニストとしての作用を有することを見出したことに基づくものであり、本発明の目的は、新規のレチノイドX受容体アゴニスト剤を提供することである。
上記の目的を達成するため、請求項1に記載のレチノイドX受容体アゴニスト剤は、ドルパニンを有効成分として含有することを特徴とする。
前記レチノイドX受容体アゴニスト剤において、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を有することが好ましい。また、前記レチノイドX受容体アゴニスト剤において、アディポネクチンの発現誘導剤として用いられることが好ましい。
本発明によれば、優れたレチノイドX受容体アゴニスト剤としての作用を発揮することができる。
ベキサロテン及びブラジル産プロポリスエタノール抽出物のレチノイドX受容体アゴニスト活性の試験結果を示すグラフ。 プロポリスエタノール抽出物からのレチノイドX受容体アゴニスト活性成分の単離方法を示す図。 ドルパニンのレチノイドX受容体アゴニスト活性の試験結果を示すグラフ。 ドルパニンのペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性の試験結果を示すグラフ。 ドルパニンのペルオキシソーム増殖剤感受性受容体に対する結合活性の試験結果を示すグラフ。 上段は、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γ標的遺伝子の発現量を測定する方法の手順を示す概略図、下段はペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γ標的遺伝子の発現量を示すグラフ。 ドルパニンの細胞毒性試験結果を示すグラフ。
以下、本発明のレチノイドX受容体アゴニスト剤を具体化した実施形態を説明する。
本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤は、有効成分としてドルパニンを含有する。ドルパニンは、下記一般式(2)に示される構造を有する。
ドルパニンの配合形態としては、特に限定されず、例えば天然素材からの精製品を適用してもよいし、生化学的、有機化学的に合成したものを適用してもよい。
天然素材からの精製品を適用する場合、その天然素材原料としてはプロポリスを挙げることができる。ドルパニンが含まれているのであればプロポリスの産地は限定されないが、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ等の南米諸国を産地とするプロポリスが好ましい。これらの中でも、特にブラジルを産地とするプロポリスには、比較的に多くのドルパニンが含まれている。プロポリス原塊は、そのままの形態で抽出原料として使用できる。
ドルパニンは、これらの抽出原料からの公知の方法、例えば、溶媒抽出法やクロマトグラフィーを用いて精製することができる。溶媒抽出法に用いられる溶媒は、例えば、水、親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶液が使用できる。なお、本実施形態における親水性有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコールが好ましい。
クロマトグラフィーとしては、例えば、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び薄層クロマトグラフィー等が挙げられる。クロマトグラフィーに用いられる担体としては、例えば、シリカ系樹脂や合成吸着剤が挙げられる。また、シリカ系樹脂としては、例えば、オクタデシルシリル化シリカゲル、フェニルシリル化シリカゲル、及びオクチルシリル化シリカゲル等が挙げられる。合成吸着剤としては、例えば芳香族系合成吸着剤及び脂肪族エステル系合成吸着剤が挙げられる。抽出原料に含まれるドルパニン以外の不純物の種類や量などに応じて、上記精製方法を適宜組合せて行うことにより、ドルパニンを含む抽出物を得ることができる。
上記方法により得られたドルパニンは、比較的に高いレチノイドX受容体アゴニスト活性を有する。具体的には、ドルパニンによるレチノイドX受容体アゴニスト活性の最大値は、ベキサロテンによるレチノイドX受容体アゴニスト活性の最大値のおよそ50%である。また、レチノイドX受容体は、細胞増殖、代謝及び恒常性維持に関与している。したがって、ドルパニンを有効成分として含むレチノイドX受容体アゴニスト剤は、細胞増殖、代謝及び恒常性維持に関する疾患に対する治療剤や症状の緩和剤としての適用が期待できる。
また、ドルパニンは、レチノイドX受容体アゴニスト活性だけではなく、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γに対するアゴニスト活性を有するデュアルアゴニストである。また、レチノイドX受容体とペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γとのヘテロ二量体は、アディポネクチンの発現を誘導する。したがって、ドルパニンを有効成分として含むレチノイドX受容体アゴニスト剤は、他のペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト物質を含有していなくとも、アディポネクチン発現誘導剤として利用できる。
なお、アディポネクチンは、インスリン受容体を介さない糖の取り込み作用、脂肪酸の燃焼作用、細胞内の脂肪酸を減少してインスリン受容体の感受性を上げる作用などを有している。したがって、ドルパニンを有効成分として含むレチノイドX受容体アゴニスト剤(アディポネクチン発現誘導剤)は、様々な疾患の中でも、特に糖尿病や肥満症に対する治療剤としての適用が期待できる。
本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤においては、ドルパニンのレチノイドX受容体アゴニストとしての作用が確保されるのであれば、ドルパニン以外の物質が含まれていてもよい。このような添加剤としては、賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定化剤等が挙げられる。なお、ドルパニンのレチノイドX受容体アゴニスト活性を阻害するものとしては、既知のレチノイドX受容体アンタゴニスト剤が挙げられる。
また、レチノイドX受容体アゴニスト剤に、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を阻害する物質が含まれていないことが好ましい。この場合、レチノイドX受容体アゴニスト剤は、ドルパニンの作用であるペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性も有する。
本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤を、医薬品として使用する場合は、服用(経口摂取)、血管内投与、経皮投与、腹腔内投与の他、患部への塗布(外用)などあらゆる投与方法が採用できる。剤形としては、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等が挙げられる。
本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤を飲食品やサプリメントとして使用する場合は、ドルパニンを含む抽出物を各種原素材に添加することによって使用できる。飲食できるものであれば飲食品としての形態は問わず、例えば、パン、コメ、食肉、水産品、野菜、これらの加工品、菓子(キャンディやガムなど)、清涼飲料水などが挙げられる。サプリメントとしての形態は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤などが挙げられる。
次に、上記レチノイドX受容体アゴニスト剤の作用を説明する。
ドルパニンによるレチノイドX受容体アゴニスト活性の最大値は、ベキサロテンによるレチノイドX受容体アゴニスト活性の最大値のおよそ50%である。この活性であれば、相応量のドルパニンを含む医薬品、食品、サプリメント等は、レチノイドX受容体アゴニスト剤として機能できる。また、ドルパニンは、レチノイドX受容体アゴニスト活性だけでなく、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性をも有する。このドルパニンのデュアルアゴニストとしての特性は、既知のレチノイドX受容体アゴニスト物質であるベキサロテンでは発揮できない特性である。
レチノイドX受容体に対するドルパニン及びベキサロテンドッキングポーズを、Discovery Studio 3.1(Accelrys社)を使用して解析した。この解析では、プロテインデータバンクより入手したPDB ID:3DZYのリガンド結合部位を利用し、予めCHARMmプログラムを使い構造最適化を行ったドッキングポーズについて検討した。この解析の結果、ドルパニンのレチノイドX受容体に対するドッキングポーズは、ベキサロテンのレチノイドX受容体に対するドッキングポーズとは異なっていることが確認された。特に、レチノイドX受容体のアミノ酸残基に対する水素結合の態様が異なっていることが確認された。また、ドルパニンのレチノイドX受容体に対するCDocker Scoreが−47.0であるのに対して、ベキサロテンのレチノイドX受容体に対するCDocker Scoreが−52.2であることが確認された。なお、CDocker Scoreは、分子間エネルギーとリガンド分子内部エネルギーとの和で表現される値であり、低い値であるほど親和性が高いことを示すものである。
一般式(1)及び(2)で示されるように、ドルパニンとベキサロテンとでは、基本骨格が異なっている。また、ドルパニンとベキサロテンとでは、ドッキングポーズやCDocker Scoreに差異がある。これらの相違により、ドルパニンは、ベキサロテンとは異なる特性を発揮すると考えられる。
本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤は、有効成分としてドルパニンを含有する。そして、ドルパニンは、既知のレチノイドX受容体アゴニストであるベキサロテンとは基本骨格が異なっており、その特性も異なっている。したがって、本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤は、ベキサロテンとは異なった症状への適用が期待できる。
(2)本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤に含まれるドルパニンは、レチノイドX受容体アゴニスト活性だけでなく、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を有するデュアルアゴニストである。したがって、他のペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト物質を添加することなく、ドルパニン単独でペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を得られる。
(3)レチノイドX受容体とペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γとはヘテロ二量体を形成して、アディポネクチンの発現を誘導する。したがって、ドルパニンを有効成分として含有する本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤は、アディポネクチンの発現誘導剤として用いることができる。なお、アディポネクチンは、糖尿病や肥満症に関わるタンパク質であるため、アディポネクチンの発現誘導剤は、これらの疾患の治療や症状低減剤としての適用が期待できる。
(4)本実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤に含まれるドルパニンは、プロポリスという天然素材から単離されたものである。また、プロポリスは、古くから人類に利用されてきた素材であり、ある程度の安全性が確保されているといえる。したがって、ドルパニンに関しても、極端に強い副作用が生じる可能性は低いといえる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更しても良い。
・ 上記実施形態のレチノイドX受容体アゴニスト剤は、ヒトが摂取する医薬品、飲食品及びサプリメントとして実施することができるのみならず、家畜等の人以外の動物に投与する飼料や薬剤として実施してもよい。
・ さらに、個体を対象とするものでなく、例えば、培養組織や培養細胞に投与するための試験用の薬剤として実施してもよい。この場合、例えば、ドルパニンを含む培養液として実施したり、培養液に添加するための試薬として実施したりすることが考えられる。
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
(ルシフェラーゼレポーターアッセイ法)
各受容体に対するアゴニスト活性を測定するにあたっては、公知のルシフェラーゼレポーターアッセイ法を利用した。以下に、簡単にその内容を説明する。
HEK293細胞(ヒト胎児腎臓細胞株)に対し、リン酸カルシウム共沈法により、受容体の発現ベクター(例えば、レチノイドX受容体発現ベクター)、その受容体に対応するルシフェラーゼレポータープラスミド、及びβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドを形質導入した。その後、細胞を培地で洗浄し、アゴニスト活性を測定したいサンプルの存在下で24時間培養した。培養した細胞の溶解液について、ルミネッセンスリーダーでルシフェラーゼ活性を測定するとともに、分光光度計でβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性はβ−ガラクトシダーゼ活性と比較することにより標準化した。
添加したサンプルが受容体に対するアゴニスト活性を有していれば、その受容体がルシフェラーゼの発現を誘導する。その一方で、β―ガラクトシダーゼの発現量は変化しない。したがって、細胞溶解液のβ−ガラクトシダーゼ活性に比してルシフェラーゼ活性が高いほど、添加したサンプルは受容体に対するアゴニスト活性が高いといえる。
(プロポリスエタノール抽出物のレチノイドX受容体アゴニスト活性の測定)
ブラジル産プロポリスに対してエタノールを溶媒とする溶媒抽出法を行うことにより、プロポリスのエタノール抽出物を得た。このようにして得られたエタノール抽出物をサンプルとし、レチノイドX受容体を対象受容体として、上で説明したルシフェラーゼレポーターアッセイ法によりアゴニスト活性を測定した。加えて、レチノイドX受容体アンタゴニストとして知られているPA452(10μM)の存在下においても、同様にアゴニスト活性を測定した。また、レチノイドX受容体アゴニスト物質として既に知られているベキサロテンについても、PA452非存在下、存在下の両条件で、レチノイドX受容体アゴニスト活性を測定した。
図1に示すように、レチノイドX受容体アンタゴニストであるPA452の存在下においてはレチノイドX受容体アゴニスト活性が検出されず、PA452の非存在下においてレチノイドX受容体アゴニスト活性が検出された。このことから、ブラジル産プロポリスのエタノール抽出物には、レチノイドX受容体アゴニスト物質が含まれていることが確認された。また、そのレチノイドX受容体アゴニスト物質のアゴニスト活性の最大値は、ベキサロテンのアゴニスト活性の最大値のおよそ50%であり、相応に高いアゴニスト活性を有していることが確認された。なお、プロポリスの抽出物がレチノイドX受容体アゴニスト活性を有するという知見は、本研究により初めて明らかにされた知見である。
(レチノイドX受容体アゴニスト物質の単離)
図2に示すように、ブラジル産プロポリスのエタノール抽出物を、シリカ系ゲルを担体とし、ヘキサン/アセトン混合液を溶媒としたカラムクロマトグラフィーに供し、フラクション1〜28を得た。これら複数のフラクションのうち最もレチノイドX受容体アゴニスト活性が高いフラクション13についてエバポレーターで溶媒を蒸発させ、その残渣をエタノールに溶解した。そのエタノール溶解液にろ過を行って不純物を除去した。不純物を除去したろ液を、シリカ系ゲルを担体とし、アセトニトリル/水混合液を溶媒とした逆相のオープンカラムクロマトグラフィーに供した。これにより得られたフラクション1〜39のうち最もレチノイドX受容体アゴニスト活性が高いフラクション7に含まれる化学物質を同定したところドルパニンであった。
ドルパニン及びベキサロテンに対し、上述したルシフェラーゼレポーターアッセイ法により、レチノイドX受容体アゴニスト活性を測定した。また、ブラジル産プロポリスに含まれる生理活性物質であり、細胞増殖抑制作用を示す物質として知られているアルテピリンCについても、レチノイドX受容体アゴニスト活性を測定した。なお、アルテピリンCは下記一般式(3)で示される。
図3に示すように、ドルパニンはレチノイドX受容体アゴニスト活性を有しており、ブラジル産プロポリスのエタノール抽出物中に含まれるレチノイドX受容体アゴニスト物質がドルパニンであることが確認された。また、ドルパニンのレチノイドX受容体アゴニスト活性の最大値の50%を発揮できる濃度が約3.36μMであることが確認された。
なお、アルテピリンCは、ドルパニンと同様にブラジル産プロポリスに含まれている物質であり、かつ化学構造としても類似しているが、有意なレチノイドX受容体アゴニスト活性は認められなかった。
(ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性の測定)
ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γを対象受容体として、上で説明したルシフェラーゼレポーターアッセイ法により、ドルパニンのペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を測定した。また、同様にして、アルテピリンC、及び既にペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト物質としてしられているロシグリタゾンについても、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法により、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を測定した。
図4に示すように、ドルパニンは、終濃度が数μM以上でペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を有することが確認された。また、ドルパニンのペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性の最大値の50%を発揮できる濃度が約10.3μMであることが確認された。アルテピリンCも、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を有していることが確認された。しかし、アルテピリンCのペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性は、終濃度1μM〜100μMの範囲内において濃度依存性が確認されず、また、その活性も低いものであった。
なお、ドルパニンに関して、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γに対するアゴニスト活性の他に、レチノイン酸受容体及び肝臓X受容体に対するアゴニスト活性の有無を、上述したルシフェラーゼレポーターアッセイ法により測定した。その結果、ドルパニンは、これらの受容体に対するアゴニスト活性をほとんど有していないか、活性を有していたとしても既知のアゴニスト剤と比較して非常に低いことが確認された。
(ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体の結合活性の測定)
ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体α、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体δ、及びペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γに対するドルパニンの結合活性を、EnBio RCASキット(藤倉化成社)を用いて測定した。このキットによる試験では、添加したサンプルが受容体に結合しない場合には発色が減衰せず、添加したサンプルが受容体に結合する場合には発色が減衰する。
ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体αを対象とする試験の場合には、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体αアゴニスト剤として知られているGW7647、及びドルパニンをサンプルとして添加した。GW7647を添加した場合において、最も発色の減衰が大きかったときの減衰量を「Bmax」とし、その減衰量に対する発色の減衰量の比率「B/Bmax」として、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体αに対するドルパニンの結合活性を測定した。
同様に、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体δを対象とする試験の場合には、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体δアゴニスト剤として知られているGW501516、及びドルパニンをサンプルとして添加した。また、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γを対象とする試験の場合には、ロシグリタゾン及びドルパニンをサンプルとして添加した。そして、アゴニスト剤を添加した場合おいて、最も発色の減衰が大きかったときの減衰量を「Bmax」とし、その減衰量に対する発色の減衰量の比率「B/Bmax」として、各受容体に対するドルパニンの結合活性を測定した。
図5に示すように、終濃度100μM以下の範囲内において、ドルパニンは、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体α及びペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γに対する有意な結合活性を示さなかった。一方、ドルパニンは、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γに対する結合活性を有することが確認された。これらのことから、ドルパニンは、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体の各サブタイプのうち、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γに対して特異的に結合することが確認された。
上述したペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性の測定においては、細胞内因性の受容体に起因する活性がルシフェラーゼレポーターアッセイ法により検出された可能性が完全には否定できない。これに対して、EnBio RCASキットによる結合活性の測定は無細胞系における試験であるため、ドルパニンがペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γに結合することが直接的に確認されたといえる。
(ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γ標的遺伝子発現への影響)
ドルパニンを培養細胞に投与した場合におけるペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γ標的遺伝子の発現量を評価するため、以下の試験を行った。
図6の上段に図示されているとおり、3T3−L1細胞(マウス繊維芽細胞株)をプレーティングし、4日間培養した。次いで、デキサメタゾン(DEX:終濃度1μM)、イソブチルメチルキサンチン(IBMX:終濃度500μM)、インスリン(終濃度50ng/ml)を投与し、脂肪細胞への分化誘導を開始した。分化誘導を開始してから、2日後及び4日後に、それぞれインスリンを終濃度で50ng/ml含む培地で培地交換を行った。さらに2日後(分化誘導から6日後)にサンプルを投与し、その1日後(分化誘導から7日後)に、細胞からRNAを抽出した。抽出したRNAは、公知の定量RT−PCRに供して、アディポネクチン、aP2(脂肪酸結合タンパク質の一種)、CD36(リポタンパク質受容体の一種)それぞれのmRNAの量を測定した。また、同様にβ−アクチンのmRNA量を測定した。なお、β−アクチンは、常にほぼ一定量のmRNAが発現しているタンパク質として知られているものである。
上記mRNA量の測定は、何も投与しないコントロール群、ドルパニン投与群(終濃度25μM)、ベキサロテン投与群(終濃度1μM)について行った。また、同様に、mRNAの測定は、上記3つの群それぞれに対して、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト剤であるロシグリタゾン(終濃度100nM)を投与した3つの群についても行った。なお、図6では、ロシグリタゾン非投与のコントロール群におけるβ−アクチンとアディポネクチンのmRNA量の比を「1」とし、これに対する相対量として各群におけるアディポネクチンのmRNA量を標準化している。この点、aP2及びCD36投与群についても同様である。
図6に示すように、ドルパニンを投与した群では、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト剤であるロシグリタゾンを投与していなくとも、単独でアディポネクチンのmRNAの発現を誘導することが確認された。これは、ドルパニンが、レチノイドX受容体アゴニスト活性及びペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性の両方を有しているからであると推測できる。一方、ベキサロテンは、単独ではアディポネクチンのmRNAの発現を誘導できず、ロシグリタゾンとの共投与によってアディポネクチンのmRNAの発現を誘導できることが確認された。
図6に示すように、ドルパニンを投与した群では、ロシグリタゾンを投与していなくとも、単独でaP2及びCD36のmRNAの発現を誘導することが確認された。同様に、ベキサロテンを投与した群でも、ロシグリタゾンを投与していなくとも、単独でaP2及びCD36のmRNAの発現を誘導することが確認された。ただし、単独投与の場合は、ドルパニンの方がmRNAの発現誘導効果が高い傾向があった。
(ドルパニンの細胞毒性試験)
接着細胞であるHeLa細胞(子宮頸がん由来細胞株)、A549細胞(肺がん由来細胞株)、MCF7細胞(乳がん由来細胞)に対してそれぞれ所定濃度のドルパニンを添加し、その48時間後にMTTアッセイによって細胞の生存率を測定した。なお、MTTアッセイとは、テトラゾリウム塩が生細胞の代謝活性によってフォルマザンに還元されて発色することを利用した方法であり、発色の程度(吸光度)が生細胞数に比例するものである。
また、Jurkat細胞(ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株)に対して所定濃度のドルパニンを投与した。その48時間後に細胞をトリパンブルー染色し、血球計数板を用いて生細胞数の計数を行い、投与前の生細胞数と比較することにより細胞の生存率を測定した。
図7に示すように、HeLa細胞及びA549細胞に対しては、ドルパニンの終濃度200μMまでの範囲において生存率に有意な変化がなく、細胞毒性が認められなかった。また、MCF7細胞に対しては、ドルパニンの終濃度100μMまでの範囲において生存率に有意な変化がなく、細胞毒性が認められなかった。さらに、Jurkat細胞に対しては、ドルパニンの終濃度25μMまでの範囲において生存率に有意な変化がなく、細胞毒性が認められなかった。
上述したとおり、ドルパニンは、レチノイドX受容体アゴニスト活性の最大値の50%を発揮できる濃度が約3.36μMであり、ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性の最大値の50%を発揮できる濃度が約10.3μMである。この濃度は、上記各種細胞に対して細胞毒性が認められる濃度に対して十分に低い。したがって、ドルパニンは、レチノイドX受容体アゴニスト剤として利用される範囲においては細胞毒性が低く、副作用の小さい薬剤としての利用が期待できる。
上記実施形態、変更例及び試験結果から把握できる技術思想について以下に追記する。
・ ドルパニンはプロポリス由来であることを特徴とする前記レチノイドX受容体アゴニスト剤。
・ ドルパニン以外のペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト物質を含有しないことを特徴とする前記レチノイドX受容体アゴニスト剤。

Claims (3)

  1. ドルパニンを有効成分として含有することを特徴とするレチノイドX受容体アゴニスト剤。
  2. ペルオキシソーム増殖剤感受性受容体γアゴニスト活性を有することを特徴とする請求項1に記載のレチノイドX受容体アゴニスト剤。
  3. アディポネクチンの発現誘導剤として用いられることを特徴とする請求項2に記載のレチノイドX受容体アゴニスト剤。
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