以下に、本発明に係る水栓装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
[第一実施形態]
図1,2を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
まず図1を参照して本実施形態に係る水栓装置1の構成について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る水栓装置の概略構成を示す回路図である。
本実施形態の水栓装置1は、吐止水スイッチ3の切替に応じて、電磁弁2の開閉動作を行うものである。このような水栓装置1としては、例えば、水栓の吐水口付近に差し出された手を、吐水口の近傍に設けられている検出センサによって検知し、吐水口から自動吐水する自動水栓や、小便器洗浄水の吐止水を電磁弁で行う自動洗浄式小便器などが挙げられる。
図1に示すように、水栓装置1は、電磁弁2(吐止水弁)と、吐止水スイッチ3と、電磁弁2に供給する直流電圧を商用電源15から生成する電源回路4と、電磁弁2を駆動させる電磁弁駆動回路5(駆動回路)と、吐止水スイッチ3に基づいて電磁弁駆動回路5を制御する制御回路6と、電源回路4からの出力を蓄電するリチウムイオンキャパシタ7(蓄電素子)と、を備える。
電磁弁2は、開閉動作時のみ電力を必要とするラッチ式電磁弁である。つまり、電磁弁2に電力が供給され、電磁弁2を開方向または閉方向に駆動させた場合、その後に電磁弁2への電力供給を遮断しても、電磁弁2は開状態または閉状態に維持される。
吐止水スイッチ3は、水栓装置1による吐水動作及び止水動作を切り替えるスイッチである。水栓装置1では、吐止水スイッチ3のON/OFF状態に応じて、電磁弁2の開弁(吐水)と閉弁(止水)とが切り替えられる。吐止水スイッチ3は、例えば水栓装置1の利用者の手や体を検出するセンサ、タイマ、手動の操作スイッチ等に連動してON/OFF状態を切り替える。
電源回路4は、商用電源15から入力された交流電圧を整流する整流ダイオード8と、整流ダイオード8により整流された電圧を平滑化する電解コンデンサ9と、一次巻線10a及び二次巻線10bを有し、一次側から二次側へエネルギを伝達するスイッチングトランス10と、スイッチングトランス10の二次巻線10bの両端間に接続され、二次巻線10bに伝達された電圧を整流・平滑化する整流ダイオード11及びコンデンサ12と、一次側回路に配置され回路をON/OFFするスイッチング素子13と、スイッチング素子13によるスイッチング動作(回路のON/OFFを繰り返すこと)を制御するスイッチング制御回路14と、を備える。
スイッチング制御回路14は、制御回路6から送信される電源制御信号がONに設定されている場合には、スイッチング素子13を制御してスイッチング動作を実行する。このとき、電源回路4は、商用電源15から入力された交流電圧を直流電圧に変換して出力する。一方、制御回路6から送信される電源制御信号がOFFに設定されている場合には、スイッチング制御回路14はスイッチング動作を完全停止する。このとき電源回路4は直流電圧を出力せず、無負荷時消費電力も0となる。また、スイッチング制御回路14は、例えばスイッチング動作のパルス幅(スイッチングのON/OFFサイクルのONの時間)等を調整することで、電源回路4の出力電圧を制御することができる。
リチウムイオンキャパシタ7は、電源回路4の出力側に並列接続されており、電源回路4からの出力を蓄電する蓄電素子として機能する。リチウムイオンキャパシタ7は、電源回路4の動作時は電源回路4からの出力を蓄電し、電源回路4の停止時には蓄電されている電力を放電して電磁弁駆動回路5に電力供給できるよう配置されている。
リチウムイオンキャパシタ7は、一般に使用電圧範囲を2.3〜3.8(V)に設定されている。このため本実施形態では、後述するように、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧が2.8〜3.8(V)の範囲となるよう制御回路6により制御されている。また、リチウムイオンキャパシタ7の容量は、例えば100(F)である。
電磁弁駆動回路5は、電源回路4の出力端及びリチウムイオンキャパシタ7に接続されており、電源回路4から出力された直流電圧またはリチウムイオンキャパシタ7から放電された電力により、電磁弁2を開弁または閉弁駆動する。電磁弁駆動回路5は、制御回路6が電磁弁2を開弁または閉弁させるときに制御回路6から送信される制御指令に応じて作動する。
なお、本実施形態では、電磁弁2は、開弁及び閉弁動作時の各20(ミリ秒)間に5(V)×1(A)=5(W)程度の電力を消費する。一方、上述のとおり、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧は2.8〜3.8(V)である。このため、電磁弁駆動回路5は、電源回路4またはリチウムイオンキャパシタ7から入力された電圧値を5Vまで昇圧した上で、電磁弁2の駆動に用いるよう構成されている。
制御回路6は、吐止水スイッチ3、電磁弁駆動回路5、及びスイッチング制御回路14に接続され、吐止水スイッチ3の情報に基づいて、電磁弁駆動回路5及びスイッチング制御回路14を制御する。制御回路6は、電源回路4の出力端及びリチウムイオンキャパシタ7に接続されており、常時動作可能に構成されている。すなわち、電源回路4またはリチウムイオンキャパシタ7から放電された電力が制御回路6に供給される。
制御回路6は、吐止水スイッチ3に基づき電磁弁2を開弁または閉弁させる。より詳細には、制御回路6は、吐止水スイッチ3がOFF状態からON状態に切り替わったときには、電磁弁駆動回路5に対して電磁弁2の開弁動作を行う制御指令を送信し、電磁弁2を開弁駆動させる。これにより水栓装置1は吐水状態となる。また、吐止水スイッチ3がON状態からOFF状態に切り替わったときには、電磁弁駆動回路5に対して電磁弁2の閉弁動作を行う制御指令を送信し、電磁弁2を開弁駆動させる。これにより水栓装置1は止水状態となる。
また、制御回路6は、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧の大きさに基づいて電源回路4の動作の実行/停止を決定する。具体的には、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧の上限値及び下限値が設定されており、制御回路6は、現在の蓄電電圧が上限値より大きいときに、電源制御信号をOFFに設定してスイッチング制御回路14に送信し、電源回路4の動作を停止させる。一方、現在の蓄電電圧が下限値より小さいときに、制御回路6は、電源制御信号をONに設定してスイッチング制御回路14に送信し、電源回路4の動作を実行させ、蓄電電圧が上限値となるまでリチウムイオンキャパシタ7を充電させる。蓄電電圧の上限値及び下限値は予め所定値を設定することができ、例えば上限値を3.8(V)、下限値を2.8(V)と設定できる。なお、制御回路6による電源制御信号の設定処理については、図2を参照して後述する。
次に図2を参照して本実施形態に係る水栓装置1の動作について説明する。図2は、本発明の第一実施形態に係る水栓装置において実施される電源制御信号の設定処理を示すフローチャートである。図2に示すフローチャートの処理は、制御回路6により、例えば所定時間ごとに実施される。
まず、リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が上限値以上であるか否かが確認される(S101)。制御回路6は、例えばリチウムイオンキャパシタ7の両端の電圧値を計測することで、現在の蓄電電圧を取得することができる。
リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が上限値以上である場合には(S101のYes)、電源制御信号がOFFに設定され(S102)、ステップS101に戻る。これにより、OFFに設定された電源制御信号が制御回路6からスイッチング制御回路14に送信され、スイッチング制御回路14が電源制御信号に応じてスイッチング素子13のスイッチング動作を停止させる。この結果、電源回路4の動作が停止され、電源回路4からリチウムイオンキャパシタ7への電力供給が無くなる。リチウムイオンキャパシタ7に蓄電されている電力は、電磁弁駆動回路5と制御回路6で消費(放電)されるので、蓄電電圧は徐々に低下する。
リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が上限値より小さい場合には(S101のNo)、次に蓄電電圧が下限値より小さいか否かが確認される(S103)。
リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が下限値より小さい場合には(S103のYes)、電源制御信号がONに設定され(S104)、ステップS101に戻る。これにより、ONに設定された電源制御信号が制御回路6からスイッチング制御回路14に送信され、スイッチング制御回路14が電源制御信号に応じてスイッチング素子13のスイッチング動作を実行する。この結果、電源回路4の動作が実行され、電源回路4からリチウムイオンキャパシタ7へ電力が供給されるので、蓄電電圧が増加する。
一方、リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が下限値以上である場合には(S103のNo)、現在の蓄電電圧が下限値と上限値との間にあるので、電源制御信号の設定を変更せずに現状を維持してステップS101に戻る。
例えば、現在の電源制御信号がOFFに設定されており、蓄電電圧が、上限値以上の状態(S101のYes)から、下限値と上限値との間まで低減してきた場合には、蓄電電圧が下限値より小さくなるまでは、電源制御信号がOFFのまま維持される。すなわち、電源回路4が停止状態に維持され、リチウムイオンキャパシタ7からの放電によって電磁弁駆動回路5に電力供給される。
また、現在の電源制御信号がONに設定されており、蓄電電圧が、下限値より小さい状態(S103のYes)から、下限値と上限値との間まで増加してきた場合には、蓄電電圧が上限値より大きくなるまでは、電源制御信号がONのまま維持される。すなわち、電源回路4が動作し続け、電源回路4から電磁弁駆動回路5に電力供給されると共に、リチウムイオンキャパシタ7が充電される。
つまり、本実施形態では、電源回路4は、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧が下限値まで低減したときに動作を開始し、蓄電電圧が下限値から上限値まで増加する間のみ動作を実行し、蓄電電圧が上限値に達すると動作を停止する。
次に、本実施形態に係る水栓装置1の効果について説明する。
本実施形態の水栓装置1は、商用電源15からの電力を低電圧に変換する電源回路4と、電源回路4からの出力を蓄電するリチウムイオンキャパシタ7と、水の吐止水を行う電磁弁2と、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電力または電源回路4からの出力により電磁弁2を駆動させる電磁弁駆動回路5と、電磁弁駆動回路5及び電源回路4の動作を制御する制御回路6と、を備える。この水栓装置1において、制御回路6は、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧が所定の上限値より大きいとき電源回路4の動作を停止させる。また、制御回路6は、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧が所定の下限値より小さいとき、電源回路4を動作させて、蓄電電圧が上限値となるまでリチウムイオンキャパシタ7を充電させる。
この構成により、電源回路4は、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧が下限値と上限値との間にあるときのみ動作する。それ以外の大部分の時間には、電磁弁駆動回路5及び電磁弁2並びに制御回路6は、リチウムイオンキャパシタ7からの電力供給により作動可能となる。このように、電源回路4の動作時間を制限することができるので、電源回路4の無負荷時消費電力を大幅に削減できる。
ここで、本実施形態により電源回路の動作時間を制限できることについてさらに詳細に説明する。本実施形態の水栓装置1において、1日に100回使用した(吐水させた)場合を考える。制御回路6の消費電力を150(μW)、電磁弁2の消費電力を開弁、閉弁時の各20(ミリ秒)間で5(W)、電磁弁駆動回路5内の昇圧効率を80(%)と仮定すると、1日の動作に必要な電力は次式で算出できる。
1日の動作に必要な電力
=(制御回路6の消費電力+電磁弁2の消費電力/昇圧効率)/電源効率
=(150(μW)×3600(秒/時間)×24(時間)
+5(W)×20(ミリ秒)×2×100(回)/0.8)/0.8
=47.5(W秒)=47.5(J)
本実施形態で電源回路4が動くのは、リチウムイオンキャパシタ7に充電するときだけである。リチウムイオンキャパシタ7の蓄電エネルギは、容量を100(F)、蓄電電圧の上限値及び下限値をそれぞれ3.8(V),2.8(V)とすると、0.5×100(F)×(3.8(V)^2−2.8(V)^2)=330(J)である。このエネルギで水栓装置1を動作可能な時間は、(蓄電エネルギ)/(1日の動作に必要な電力)=330(J)/47.5(J/日)=6.95(日)となる。1秒間に1Wの電力をリチウムイオンキャパシタ7に充電できる電源回路を使ったとして、一度の充電の所要時間は330(J)/1(W)=330(秒)であり、1日当たりの充電時間は330(秒)/6.95(日)=47.5(秒)である。すなわち、本実施形態の水栓装置1において、電源回路4が作動して無負荷時消費電力が発生する時間は、1日当たり47.5秒となり、電源回路4の動作時間を十分に制限できることがわかる。
電源回路4の1日当たりの無負荷時消費電力は、時間当たりの無負荷時消費電力を0.5(W)とすると、0.5(W)×47.5(秒)=23.8(J)である。以上の計算から、本実施形態の水栓装置1の1日当たりの消費電力は、(1日の動作に必要な電力)+(1日当たりの無負荷時消費電力)=47.5(J)+23.8(J)=71.3(J)となる。もし電源回路4を常時動作させると、無負荷消費電力は、0.5(W)×1(日)=43200(J)となるので、本発明は十分な省エネ効果があるといえる。
また、上記構成により、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧が下限値より小さいときには、制御回路6が電源回路4を動作させて、蓄電電圧が上限値となるまでリチウムイオンキャパシタ7を充電させ、かつ、電源回路4からの出力によって電磁弁駆動回路5へ電力が供給される。これにより、例えば、短時間の吐水を多回数繰り返すなど、仕様外の使われ方によって、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧が突発的に不足する状況が発生しても、蓄電電圧が下限値より小さくなれば電源回路4により電力供給されるので、電磁弁駆動回路5に対して常時安定した電力供給が可能となる。また、蓄電電圧が下限値を下回ると、直ちに電源回路4の電力供給によりリチウムイオンキャパシタ7への充電が始まるので、リチウムイオンキャパシタ7の電圧が下限値未満になることがない。
このように本実施形態の水栓装置1によれば、無負荷時消費電力を低減可能であり、かつ、安定した電力供給が可能である。
また、電磁弁駆動回路5はリチウムイオンキャパシタ7の蓄電電力または電源回路4からの出力により電磁弁2を駆動させることができるので、停電時に電源回路4が強制的に停止された場合でも、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電量に応じた期間は使用可能にできる。
停電後に使用できる期間は、停電後の経過時間や吐止水回数により変化する。仮に蓄電電圧が2.3(V)以上で水栓が使える設計とした場合において、リチウムイオンキャパシタ7が満充電の場合、使用可能な蓄電電力は、0.5×100(F)×(3.8(V)^2−2.3(V)^2)=457.5(J)であり、また、1回の吐止水に必要な電磁弁消費電力は、5(W)×20(ミリ秒)×2/0.8=0.25(J)であるので、停電後に可能な吐止水回数は、457.5(J)/0.25(J)=1830(回)である。また、リチウムイオンキャパシタ7の充電が下限の場合(蓄電電圧が下限値の場合)、使用可能な蓄電電力は、0.5×100(F)×(2.8(V)^2−2.3(V)^2)=127.5(J)であるので、停電後に可能な吐止水回数は、127.5(J)/0.25(J)=510(回)である。
ここで、停電後に吐止水をしないで制御回路6が動き続けられる時間は、リチウムイオンキャパシタ7の充電が下限の場合で、(使用可能な蓄電電力)/(制御回路6の消費電力)=127.5(J)/150(μW)=850000(秒)=9.8(日)である。したがって、例えば週末に元電源を切るような施設であっても、本実施形態の水栓装置1は動作を継続することが可能であり、少ない回数の使用なら吐止水も可能である。また、リチウムイオンキャパシタ7の容量を大きくしたり、外部からの操作や内蔵のプログラム制御で、元電源の遮断前にリチウムイオンキャパシタ7を満充電にする機構を設けることで、さらに長期、例えば学校施設の夏期休暇時の元電源遮断などに、対応することも可能となる。
また、本実施形態の水栓装置1では、電源回路4からの出力を蓄電する蓄電素子として、原理的に寿命の無い物理的素子の一つであるリチウムイオンキャパシタ7を用いる。これにより、蓄電素子の交換が不要となるので、水栓装置1のメンテナンスが容易となり、また、ランニングコストを低減できる。また、リチウムイオンキャパシタ7は、容量が大きく、自己放電が小さく、充放電時の損失(内部直列抵抗)が小さいという特性があるので、蓄電素子としてリチウムイオンキャパシタ7を用いることで蓄電効率を向上できる。
[第二実施形態]
次に、図3,4を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。図3は、本発明の第二実施形態に係る水栓装置の概略構成を示す回路図であり、図4は、本発明の第二実施形態に係る水栓装置において実施される電源制御信号の設定処理を示すフローチャートである。
図3,4に示すように、本実施形態の水栓装置1aは、(1)リチウムイオンキャパシタ7から電磁弁駆動回路5に電力供給が行われない点、及び(2)電磁弁2の駆動時に電源制御信号をONに設定して電源回路4を動作させる点で、第一実施形態の水栓装置1と異なるものである。
図3に示すように、電源回路4と電磁弁駆動回路5との接続経路と、リチウムイオンキャパシタ7との間には、整流ダイオード16が接続されている。整流ダイオード16は、電源回路4からリチウムイオンキャパシタ7へ電流が流れることを可能とし、かつ、リチウムイオンキャパシタ7から電磁弁駆動回路5への電流を遮断する向きで接続されている。
制御回路6は、リチウムイオンキャパシタ7と整流ダイオード16との間の回路上の位置から電力が供給されて、常時動作可能に構成されている。すなわち、電源回路4の作動/停止に関わらず、常にリチウムイオンキャパシタ7から制御回路6に電力が供給される。
制御回路6は、第一実施形態と同様に、現在の蓄電電圧が所定の上限値より大きいときに、電源制御信号をOFFに設定してスイッチング制御回路14に送信し、また、現在の蓄電電圧が所定の下限値より小さいときに、電源制御信号をONに設定してスイッチング制御回路14に送信する。さらに、本実施形態では、制御回路6は、電磁弁2の駆動時にも電源制御信号をONに設定するよう構成されている。
リチウムイオンキャパシタ7は、上述のように本実施形態では電磁弁駆動回路5への電力供給を行わないので、第一実施形態と比べて容量を小さくすることができ、その容量は例えば1(F)である。
電源回路4には、出力電圧をスイッチング制御回路14にフィードバックするフィードバック経路17が設けられている。スイッチング制御回路14は、制御回路6から送信される電源制御信号がONに設定されている場合には、フィードバック経路17から取得した出力電圧の値に基づき、出力電圧が一定に保たれるよう、スイッチング素子13によるスイッチング動作をフィードバック制御する。本実施形態では、電源回路4の出力電圧が5Vに一定になるよう設定されている。
図4を参照して、本実施形態の水栓装置1aの動作について説明する。
まず、リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が上限値以上であるか否かが確認される(S201)。
リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が上限値以上である場合には(S201のYes)、電源制御信号がOFFに設定され(S202)、ステップS201に戻る。これにより、OFFに設定された電源制御信号が制御回路6からスイッチング制御回路14に送信され、スイッチング制御回路14が電源制御信号に応じてスイッチング素子13のスイッチング動作を停止させる。この結果、電源回路4の動作が停止され、電源回路4から電磁弁駆動回路5への電力供給が無くなる。
リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が上限値より小さい場合には(S201のNo)、次に蓄電電圧が下限値より小さいか否かが確認される(S203)。
リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が下限値より小さい場合には(S203のYes)、電源制御信号がONに設定され(S204)、ステップS201に戻る。これにより、ONに設定された電源制御信号が制御回路6からスイッチング制御回路14に送信され、スイッチング制御回路14が電源制御信号に応じてスイッチング素子13のスイッチング動作を実行する。この結果、電源回路4の動作が実行され、電源回路4からリチウムイオンキャパシタ7へ電力が供給されるので、蓄電電圧が増加する。
一方、リチウムイオンキャパシタ7の現在の蓄電電圧が下限値以上である場合には(S203のNo)、現在の蓄電電圧が下限値と上限値との間にあるものとして、次に、電磁弁2が駆動中であるか否かが確認される(S205)。
電磁弁2が駆動中でない場合には(S205のNo)、電源制御信号の設定を変更せずに現状を維持してステップS201に戻る。つまり、現在の蓄電電圧が上限値から減少している場合には、引き続き電源回路4の動作が停止され、電源回路4から電磁弁駆動回路5への電力供給が無い。また、現在の蓄電電圧が下限値から増加している場合には、引き続き電源回路4の動作が実行され、電源回路4から電磁弁駆動回路5に電力供給されると共に、リチウムイオンキャパシタ7が充電される。
電磁弁2が駆動中である場合には(S205のYes)、電源制御信号がONに設定され(S204)、ステップS201に戻る。これにより、電磁弁2の駆動時には電源回路4の動作が実行され、電源回路4から電磁弁駆動回路5に電力供給される。電磁弁駆動回路5は、電源回路4から供給される電力を利用して電磁弁2を駆動する。
つまり、本実施形態では、電源回路4は、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧が下限値から上限値まで増加する間に動作を実行し、さらに、電磁弁2の駆動時にも動作を実行する。
このように本実施形態の水栓装置1aによれば、制御回路6が電磁弁2の駆動時に電源回路4を動作させる構成であるので、大電力が必要な電磁弁駆動時には、必ず電源回路4から電磁弁駆動回路5への電力供給が行われ、電磁弁駆動回路5は、電源回路4から供給される電力を利用して電磁弁2を駆動することができる。このため、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電量を小さく(すなわち容量を小さく)することが可能となり、コストダウンできる。
[第三実施形態]
次に、図5を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。図5は、本発明の第三実施形態に係る水栓装置の概略構成を示す回路図である。
図5に示すように、本実施形態の水栓装置1bは、吐水により発電可能な発電機18を備える点で、第一実施形態の水栓装置1及び第二実施形態の水栓装置1aと異なるものである。なお、図5には、本実施形態の水栓装置1bの構成の一例として、第一実施形態の水栓装置1に発電機18を追加する構成を例示しているが、第二実施形態の水栓装置1aに発電機18を追加する構成としてもよい。
発電機18は、水栓装置1の通水路に設けられ、電磁弁2が開いたときの吐水時の水の運動エネルギを電気エネルギに変換することで発電することができる。発電機18は、例えばクローポール式の水力発電機である。発電機18は、図5の回路図上では、電源回路4及びリチウムイオンキャパシタ7の間にて、リチウムイオンキャパシタ7と並列接続されている。
電源回路4と電磁弁駆動回路5との接続経路と、発電機18との間には、整流ダイオード19が接続されている。整流ダイオード19は、発電機18からリチウムイオンキャパシタ7へ電流が流れることを可能とする向きで接続されている。
水栓装置1bが通常の使用状態である場合には、発電機18は、リチウムイオンキャパシタ7の蓄電電圧を下限値と上限値との間に維持するために十分な電力を供給可能に構成されている。すなわち、リチウムイオンキャパシタ7は、発電機18からの供給電力により蓄電され、電磁弁駆動回路5及び制御回路6は、リチウムイオンキャパシタ7から電力供給を受けて作動することができる。
このとき、リチウムイオンキャパシタ7の蓄圧電圧が下限値と上限値との間に保持されるため、制御回路6からスイッチング制御回路14に送信される電源制御信号は常にOFFである。このため、水栓装置1bが通常の使用状態である場合には、電源回路4は作動せず、商用電源15の電力は一切使用されない。
一方、水栓装置1bに万一想定外の異常状態(例えば、ごく短い吐水が多数回発生、吐水の水量が少なすぎる、発電機18が故障する、など)が発生する場合が考えられ、発電機18による発電量が不足する状況が起こり得る。このような状況でも、本実施形態の水栓装置1bでは、制御回路6により電源回路4が作動され、商用電源15による電力供給が行われるので、電磁弁駆動回路5に対して電磁弁2を駆動するのに十分な電力を供給することが可能であり、水栓装置1bが使用不能になるのを回避できる。
このように、本実施形態の水栓装置1bは、吐水により発電可能な発電機18を備え、リチウムイオンキャパシタ7が発電機18により発電された電力を蓄電する構成であるので、水栓装置1bが通常の使用状態である場合には、電源回路4を常時停止させることが可能となり、電源回路4の無負荷時消費電力をより一層に削減できる。また、水栓装置1bに万一想定外の異常状態が発生した場合にも、電源回路4による電力供給で電磁弁2を駆動させることができるので、利便性を向上できる。
なお、本実施形態の水栓装置1bにおいて、商用電源15からの電力供給が発生している場合には、その情報を表示する機能を設けて、使用者に使用状態や発電機の確認を促すように提示する構成としてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
上記実施形態では、水栓装置1が電磁弁2により水の吐止水を行う構成を例示したが、水栓装置1は水の吐止水を行う吐止水弁を備えていればよく、電磁弁2の代わりに例えば電動弁など他の弁構造を適用してもよいし、ラッチ式以外の電磁弁を適用してもよい。
また、上記実施形態では、電源回路4からの出力を蓄電する蓄電素子としてリチウムイオンキャパシタ7を例示したが、蓄電素子は原理的に寿命の無い物理的素子であればよく、例えばEDLC(Electric double−layer capacitor:電気二重層コンデンサ)などの他の物理的素子を適用してもよい。なお、物理的素子には、マンガン一次電池やリチウム二次電池など、化学的原理に基づく寿命を有する素子は含まれない。