JP5918160B2 - ゲッタリング半導体ウエハおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
EG技術の中にはレーザー照射法があり、レーザー誘起欠陥をゲッタリング源として利用するものである。例えば、超短パルスレーザー(特許文献1参照)や近赤外レーザー(特許文献2参照)やKrFエキシマレーザー(非特許文献1参照)やQスイッチNd:YAGレーザー(非特許文献2,3参照)を光源として破砕層(結晶欠陥)をSiウエハの表層付近に誘起させ、金属不純物の捕捉(ゲッタリング)、除去することが試みられている。
具体的には、特許文献1では、超短パルスレーザー(パルス幅:1.0E−15〜1.0E−8sec;波長300〜1200nm)を照射して、数十μm程度の深さにゲッタリング層(アモルファス層を含む)を作るレーザーゲッタリング技術が提案されている。
特許文献2では、近赤外レーザーを照射して、厚さ100μm未満のシリコンウエハのある深さに厚さ1μm未満の破砕層を作るレーザーゲッタリング技術が提案されている。
エクストリンシック・ゲッタリング(EG)技術について、非特許文献1ではKrFエキシマレーザーによるゲッタリング技術が紹介されており、非特許文献2と非特許文献3ではQスイッチNd:YAGレーザーによるゲッタリング技術が紹介されている。
本願発明では、連続レーザー光によるアシスト加熱を受けつつパルスレーザー光が半導体ウエハに照射されることで、半導体ウエハに損傷を与えることなく半導体ウエハを十分な深さまで溶融させて酸化物層にある酸素を高速拡散させることができる。そして、パルスレーザー光特有の急速冷却により半導体ウエハ中に固溶限界(例えば2.7E+18個/cm3)を超える酸素を固溶させることができ、しかも液相/固相界面付近に酸素濃度が急減して酸素濃度が固溶限界以下である低濃度領域に至る酸素濃度勾配を作ることができる。過飽和の酸素固溶によって酸素析出物が生成され、酸素析出物に起因する結晶欠陥によって歪み場が生成される。なお、溶融領域に固溶する全酸素量は、例えば1.0E+15個/cm2より低く抑えることで、歪みによって半導体ウエハでクラックが発生するのを防止することができる。溶融領域に固溶する全酸素量は酸素濃度プロファイルをSiウエハ表面から溶融深さまで積分した量で示すことができる。表層の酸化物層の酸素は除いてある。
上記歪み場によって半導体ウエハ中に含まれる不純物金属が捕捉されてゲッタリング層が効果的に形成される。
本発明としては半導体ウエハの種別が特に限定されるものではないが、好適には半導体ウエハとしてシリコンウエハを示すことができる。半導体ウエハの厚さは特に限定されるものではないが、本発明としては、特に30μm以下の厚さの半導体ウエハにおいて顕著な効果が得られる。
半導体ウエハ表面のうち、少なくともレーザー光を照射する側には酸化物層を有している。酸化物層は意図的に形成したものでも、自然生成されたもののいずれであってもよく、また、これらは複合したものであってもよい。酸化物層は、半導体ウエハと同材料の成分を主成分とするのが望ましい。例えば、半導体ウエハがシリコンウエハである場合、酸化物層としては例えばSi系酸化物層を挙げることができ、好適にはSiO2膜またはSiON膜を示すことができる。
また、酸化物層厚d×屈折率nで定義される酸化物層の光学的厚みは、前記パルスレーザー光の波長の1/4以下であるのが望ましい。これは反射強度を最小にして吸収を高めて効果的に溶融するためである。例えば、SiO2膜の屈折率は1.46で示すことができ、パルスレーザー光の波長が例えば515nmであれば、SiO2膜の厚さは、88nm以下が望ましい。
1.波長
本発明としては、パルスレーザー光の波長が特定のものに限定されるものではないが、例えば510〜540nmのグリーン域の波長を用いることができる。
これにより、スループットを考慮して高出力が得られる。
パルスレーザー光のパルス幅(半値幅)は、本発明としては特に限定されるものではないが、高速加熱・高速冷却の現象が確実に得られるように、パルス幅は500ns以下とするのが望ましく、さらに、同様の理由で300ns以下とするのが一層望ましい。
パルス幅が大きいと、冷却速度が小さくなり、半導体ウエハ中に酸素を過飽和に固溶させることが難しくなる。
パルス光のレーザー光の繰り返し周波数としては、特に限定されるものではないが、例えば10〜30kHzを示すことができる。
本発明としては、連続レーザー光の波長が特定のものに限定されるものではないが、例えば780〜830nmの波長を用いることができる。上記波長域では、一般的な半導体材料であるシリコンに対する光吸収がよく、上記パルスレーザー光よりも深い光侵入長が得られる。この結果、半導体表層部は、深い領域にまで加熱されてアシスト作用が効果的に得られる。また、上記波長域で高出力を容易に得ることができる。さらに、連続レーザー光は、通常、パルスレーザー光よりも長い波長とすることで、深いところまで予備過熱されるので深い溶融が可能となる。
なお、上記したアシスト加熱による温度の調整は、連続レーザー光のパワー密度と走査速度などを制御することによって行うことができる。アシスト温度としては、200℃以下が望ましい。アシスト温度が高いとパルスレーザー光の照射による急速冷却の作用が十分に得られなくなり、半導体ウエハ中に酸素を過飽和に固溶させることが難しくなる。
したがって、連続レーザー光の照射領域とパルスレーザー光の照射領域とが、同一の時点では、半導体ウエハ表面上で、一部または全部で重なるように、もしくは前記各レーザー光がそれぞれ重なることなく位置がずれて照射されるものであってもよい。ただし、それらの照射が全く個別に行われると、複合照射による作用が得られないため、それぞれの照射による作用が影響し合うように照射されることは必要である。
なお、照射領域は、半導体表面においてパルスレーザー光のエネルギー密度や連続レーザー光のパワー密度が、例えばピーク値に対し50%(FWHM)となるエリアとして示すことができる。
なお、上記したビームのサイズや照射位置の関係は、光学系によって調整することができる。光学系は、ホモジナイザー、レンズ、ミラーなどの光学材料などを備え、レーザー光の整形や偏向などを行うものである。
また、ゲッタリング層の厚さと効果を考慮すれば、溶融深さは1μm以上が望ましい。
また、半導体ウエハの厚さに対し、溶融深さが相対的に厚くなると半導体ウエハの機械的強度(抗折強度)を損なうので、溶融深さは半導体ウエハの厚さの10%以下であるのが望ましい。溶融深さは、連続レーザー光のパワー密度とパルスレーザー光のパルスエネルギー密度とレーザー光の走査速度とを設定することで決定することができる。連続レーザー光のパワー密度、パルスレーザー光のパルスエネルギー密度は、レーザー光源の出力調整及び/又は減衰器の減衰率の調整によって行うことができる。
レーザー処理装置1は、図1に示すように、処理室2を備えており、該処理室2内にX−Y方向に移動可能な走査装置3を備え、その上部に基台4を備えている。基台4上には、被処理体配置台5が設けられている。レーザー光照射時には、該被処理体配置台5上に処理対象である半導体ウエハ30が設置される。なお、走査装置3は、図示しないモータなどによって駆動される。
パルスレーザー光源10から出力されるパルスレーザー光15は、半値幅が500ns以下で波長515nm、繰り返し周波数10kHzのパルス波形を有している。該パルスレーザー光15は、半導体ウエハ30に照射された際に、半導体ウエハ30表層が溶融するエネルギー密度に調整されている。該パルスレーザー光15は、光学系12により例えばスポット状、円形状、角形状、長尺状などの適宜形状に整形される。なお、好適には、スループットを考慮すれば長尺形状が望ましい。
なお、半導体ウエハ30としては、厚さ30μm以下のものを好適に用いることができ、レーザー光照射面の反対の表面側にはデバイス構造が設けられている。
パルスレーザー光15の短軸方向および長軸方向の重複率(オーバーラップ率)は、必要に応じて適宜選定(例えば短軸方向50〜90%、例えば長軸方向10%〜50%)することができ、本発明としては特に限定されるものではない。この際に、走査装置3による被処理体配置台5の移動速度を制御することにより、半導体ウエハ30に対し、パルスレーザー光15および連続レーザー光25を所定速度で走査することができる。レーザービームの短軸方向の移動速度としては、例えば30〜150mm/秒を示すことができるが、本発明としては特に限定されるものではない。
なお、連続レーザー光は、常時、一定のパワー密度を有する他、一部に不連続部を有していてもよい。これによって、連続レーザー光25におけるアシスト加熱を調整して、半導体ウエハ30表層での溶融深さの調整や熱負荷の調整を行うことができる。
ただし、本発明としては、各レーザー光の照射領域の位置が上記に限定されるものではない。
半導体ウエハ30には、上記パルスレーザー光よりも光侵入長が大きい連続レーザー光の照射によって、半導体ウエハ30の深い位置にまで温度アシスト領域が形成される。例えば波長808nmのレーザー光では、深さ方向に10μm程度の光侵入長が得られる。この状態でパルスレーザー光を照射すると、主に深さ方向(Z軸方向)に熱が拡散する。この際の深い温度アシスト領域がパルスレーザー光の浅い加熱領域の温度勾配を小さくし、その結果、熱の逃げが小さくなって半導体表面の深い位置まで効果的に加熱される。この際には、パルスレーザー光のエネルギー密度と連続レーザー光のパワー密度、走査速度の調整によって最適化を図り、半導体表層の加熱を効果的に行う。
なお、パルスレーザー光のみを半導体ウエハ30に照射した場合、面方向および深さ方向における温度勾配が大きく、熱の逃げが大きい。このため、深さ方向の加熱効果が抑制され、特に熱容量の大きな厚い半導体ウエハに対し、表層部を選択的に深く溶融することが困難になる。
図4(a)は、前記図3の照射位置において、パルスの断面形状を矩形状にしたものを示しており、照射領域25aが照射領域15aを完全に覆っている。図4(b)は長軸方向(Y軸方向)および走査方向(X軸方向)において連続レーザー光の照射領域25aは、パルスレーザー光の照射領域15aを超える大きさを有し、走査方向と逆の方向では、照射領域15a、25aが重なってエリア端が一致している。図4(c)は、同照射領域25aが同照射領域15aを覆うことなく、両者の重なりがないものであり、照射領域15aの走査方向側に照射領域25aが位置して、隣接する照射領域の端縁が互いに接している。図4(d)は、同照射領域25aが同照射領域15aを覆うことなく、かつ両者が重なることなく離反しているものである。ただし、両者は基板上で互いに近傍に照射される。また、図4(e)は、本発明外の照射状態を示すものであり、半導体30に、パルスレーザー光15のみが照射されて、照射領域15aによって半導体30が処理される状態を示している。
先ず、最終厚さよりも厚い半導体ウエハ30を用意し、半導体ウエハ30の一面にデバイス層300を設け、該デバイス層に電極埋め込みとバンプ301の形成を行う(図5(a))。次いで、半導体ウエハ30の裏面側を研削して、例えば、10μm厚程度に薄型化する(図5(b))。その後、研削した面側に酸化物を塗布して酸化物層310を形成する。なお、酸化物層310は、自然酸化により生成されたものであってもよく、また、意図的に形成したものであってもよい。意図的な形成としては、酸化物層は塗布法やスパッタリング法などにより行うことができる。酸化物層310の光学的厚さ(屈折率n×膜厚d)はパルスレーザー波長の4分の1以下とするのが望ましい。
次いで、TSV(Through Silicon Via)成形工程に移行し、先ずTSV成形として裏面側にオーバーコート320を形成するとともに裏面側にビアを開口し(図5(d))、次いで、該ビアにCuを埋め込んで電極302を形成し(図5(e))、さらに裏面側のオーバーコート320を研削した後、電極302に接続された裏バンブ303を形成し(図5(f))、チップを切り出す。これによりゲッタリング層30bを裏面側に有するゲッタリング半導体ウエハ(例えば30μm厚以下)が得られる。
(1)短パルス主体のレーザーアニール装置を使用することで、Si系酸化物層を塗布したSiウエハを空気中で溶融し高速冷却することで酸素濃度を固溶限界以上に高めることができ、しかも深さ方向に急峻な酸素濃度勾配ができ、その周辺に重金属を捕捉、除外できる結晶欠陥による歪み場を生じさせることができる。
(2)レーザー照射条件(パルスエネルギー密度や照射回数)をコントロールすることで、酸素拡散領域を溶融エリアの極表層に限定でき、しかも溶融領域の全酸素量を割れが発生する閾値1.0E+15個/cm2より低く抑えることで極薄Siウエハの曲げ強度(抗折強度)を確保できる。
(3)短パルスレーザーを主体とするレーザーアニール装置を使用することで、極薄Siウエハのレーザー照射と反対側に熱ダメージを与えない低温(低熱負荷:Low Thermal Budget)でのゲッタリングプロセスが可能となる。
(4)レーザー照射面に特定の厚さの酸化物層を塗布することで、酸素の供給と溶融による表面荒れ抑制を実現でき、しかも反射ロスを減らすことでパルスレーザーのエネルギー密度も低く抑えることができる。
なおシリコンウエハは、レーザーの照射面側に厚さ4〜5nmの酸化膜が形成されていた。この酸化膜は、本発明の酸化物層に相当する。酸化膜は、シリコンの自然酸化によって形成されたSiO2層であった。なお、酸化物層は、前述したように意図的に形成するものであってもよい。
近赤外LDのパワーを一定(40w)にしてパルスグリーンレーザーのエネルギー密度を、14J/cm2(A)、18J/cm2(B)、20J/cm2(C)に変えたときのシリコンウエハにおける深さ方向の拡散酸素濃度分布を図6に示した。拡散酸素濃度分布は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析によって測定された。
従来のイントリンシック・ゲッタリング(IG)技術は高温プロセスでしか対応できなかったが、パルスタイプの固体グリーンレーザー(波長515nm)主体とするCWタイプの近赤外LD(波長808nm)との複合型レーザーアニール装置を使うレーザーアニール技術は、低温プロセスのゲッタリング技術を必要とする三次元積層SiPへの応用が期待できる。
2 処理室
3 走査装置
4 基台
5 被処理体配置台
6 制御部
8 XYステージ駆動回路
10 パルスレーザー光源
11 減衰器
12 光学系
15 パルスレーザー光
15a 照射領域
20 連続発振レーザー光源
21 減衰器
22 光学系
25 連続レーザー光
25a 照射領域
30 半導体ウエハ
30a 溶融層
30b ゲッタリング層
300 デバイス
301 表バンプ
302 銅電極
303 裏バンプ
310 酸化物層
320 オーバーコート
Claims (13)
- 一面側表面に酸化物層を有する半導体ウエハの前記表面に、パルスレーザー光と熱的アシストを行う連続レーザー光とを照射して前記半導体ウエハの1〜5μmの深さの内層まで溶融させ、前記半導体ウエハにおける高速昇温・冷却プロセスの中で、その溶融過程で溶融領域に前記酸化物層から酸素を拡散させ、固化過程で、1〜4μmの深さで前記内層に固溶限界濃度を越える酸素の高濃度領域を形成し、前記高濃度領域に起因する結晶欠陥によって前記半導体ウエハ中の金属を捕捉するゲッタリング層を形成することを特徴とするゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 前記パルスレーザー光が波長510〜540nmのグリーンパルスレーザー光であり、前記連続レーザー光が、波長780〜830nmのダイオードレーザー光であることを特徴とする請求項1記載のゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 前記パルスレーザー光のパルス幅が500ns以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 前記連続レーザー光のアシスト温度が200℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 前記パルスレーザー光は、パルスレーザ強度が10%〜90%に到達する立上がり時間が160ns以上であり、パルス強度が90%〜10%に到達する立下がり時間が100ns以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 前記半導体ウエハがシリコンウエハからなり、前記酸化物層がSiO2膜またはSiON膜の一方または両方からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 前記酸化物層の光学的厚みが、前記照射時において前記パルスレーザー光の波長の1/4以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 前記溶融の領域に拡散した全酸素量は、1.0E+15個/cm2より低く抑えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 他面側にデバイス構造を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のゲッタリング半導体ウエハの製造方法。
- 一面側に1〜4μmの深さで固溶限界濃度を越える酸素の高濃度領域を有すると共に、液相/固相界面付近で酸素が減少する濃度勾配領域を介して他面側に至る前記固溶限界濃度以下の酸素の低濃度領域を有し、前記高濃度領域から前記濃度勾配領域に至る領域に結晶欠陥が存在し、該結晶欠陥が存在する領域に半導体ウエハ中の金属が捕捉されるゲッタリング層が設けられていることを特徴とするゲッタリング半導体ウエハ。
- 前記溶融の領域に拡散した全酸素量が、1.0E+15個/cm2より低く抑えられていることを特徴とする請求項10記載のゲッタリング半導体ウエハ。
- 厚さが30μm以下であることを特徴とする請求項10または11に記載のゲッタリング半導体ウエハ。
- 他面側にデバイス構造を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載のゲッタリング半導体ウエハ。
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