JP5917274B2 - ヒドロゲル化剤 - Google Patents
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Description
従来より提案され採用されてきたヒドロゲル化剤は高分子化合物が中心であった(非特許文献2参照)が、近年、分子構造ならびに分子量が明確である点、分子設計ならびに物性改善、生産後の品質管理の面において利点が期待される点などから、低分子化合物を使用した新規ヒドロゲル化剤の検討が行われている(非特許文献3、4参照)
しかしながら、低分子化合物からなるヒドロゲル化剤は上述のように様々な利点が有力視されるものの、有機溶媒などの非水性媒体向けの低分子化合物からなるオイルゲル化剤に比べると、現在のところ限られた提案に留まっており、またスクアリン酸誘導体をヒドロゲル化剤として検討した例は報告されていない。
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、水を温和な温度条件でゲル化でき、かつ広いpH領域で安定なゲルを形成する、新規なヒドロゲル化剤を提供することにある。
[1]一般式[I]で表されるスクアリン酸誘導体を含む、ヒドロゲル化剤。
[2]一般式[II]で表されるスクアリン酸誘導体を含む、ヒドロゲル化剤。
[3]一般式[III]で表されるスクアリン酸誘導体を含む、ヒドロゲル化剤。
、又は置換基を有していてもよい複素環基を表し、Xは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。]
以下、本発明を詳細に説明するが、以降、「一般式[I]で表される化合物」を「化合物[I]」とも称する。他の式番号を付した化合物についても同様に表記する。
ブチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、炭素原子数7〜15のアラルキル基が挙げられる。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
アリール基、及びアリールオキシ基のアリール部分としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
複素環アルキル基のアルキレン部分は、前記アルキル基から水素原子を一つ除いたものと同義である。
芳香族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員又は6員の単環性芳香族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環又は三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環基等が挙げられる。具体的にはピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、プリニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
脂環式複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員又は6員の単環性脂環式複素環基、3〜8員の環が縮合した二環又は三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂環式複素環基等が挙げられる。具体的にはピロリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ホモピペリジル基、ホモピペラジニル基、テトラヒドロピリジル基、テトラヒドロキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、テトラヒドロカルバゾリル基、フタルイミド基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン環からなる置換基、インドリン環からなる置換基、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン環からなる置換基等が挙げられる。
キル基は同一でも異なっていてもよい。
化合物(Ia)と化合物(Ib)とを、溶媒中、ルイス酸存在下、Friedel−Crafts型の反応を行うことにより反応させ、その後、反応生成物を酸性条件にて水和し、難水溶性物質を取り除くことにより、スクアリン酸誘導体である化合物(Ic)を得ることができる。その後、アルカリ金属の水酸化物で中和することにより、(Id)を得ることができる。
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤が挙げられ、低分子化合物又は高分子化合物、あるいはこれらの混合物であってもよい。
水溶性高分子としては、合成高分子としては、例えば、ポリオキシアルキレン系高分子、ポリビニルピロリドン系高分子等の中性水溶性高分子;ポリアクリル酸系高分子、ポリメタクリル酸系高分子、ポリ(2−メチル−アクリルアミドプロパンスルホン)酸系高分子等の高分子側鎖に酸性基を有する水溶性高分子;窒素カチオンを高分子主鎖骨格に有する直鎖状高分子である各種アイオネン系高分子等が挙げられる。また天然高分子としては、例えば、アガー、κ−カラギーナン等の多糖類が挙げられる。
また薬効成分としては、水溶性の化合物であれば特に制限はない。
以下の実施例及び試験例で記述する試薬、溶媒は和光純薬工業(株)より入手し、そのまま使用した。純水はElix UV3 Milli−Q純水製造装置(日本ミリポア(株)製)により精製した。また以下に各種測定及び分析に用いた装置及び条件を示す。
(1)1H−NMRスペクトル
・装置:AVANCE500(500MHz) ブルカー・バイオスピン(株)製
(2)13C−NMRスペクトル
・装置:ECP−500(500MHz) 日本電子(株)製
(3)質量分析
・装置:LTQ Orbitrap(ESI FTMS) サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製
(4)元素分析
・装置:JM10 (株)ジェイ・サイエンス・ラボ製
(5)示差走査熱量測定
・装置:EXSTAR6000 DSC セイコーインスツル(株)製
・サンプル測定にはSUS製の密封型試料容器を使用
(6)走査型電子顕微鏡写真
・装置:JSM−7400 日本電子(株)製
・加速電圧:1.0kV (導電性の物質によるサンプル処理せず)
(7)透過型電子顕微鏡写真
・装置:H−8000 (株)日立ハイテク製
・操作電圧:200kV (サンプル未処理)
(8)単結晶X線回折
・装置:SMART APEXII ULTRA ブルーカー・エイエックスエス(株)・測定条件:CuKα線を使用、−100℃にて測定
・シンクロトロン粉末X線回折:0.3mm径のサンプル管にサンプルを入れ、大型デバイ−シェラーカメラを使用し、SPring8のBL19B2ビームライン(波長1.00Å)により測定した(リートヴェルト法により精密化を行った)。
なお、ソフトウェア、“Mercury” (Cambridge Crystall
ographic Data Center製)及びDiamond 3.2(Demonstration version,Crystal Impact GbR,bonn,Germany製)により、X線回折データの可視化を行った。
窒素雰囲気下、氷浴中、攪拌中のスクアリン酸4.00gとベンゼン2.07gを5mlのジクロロメタンに加えて溶液とし、これに、塩化アルミニウム5.31gを徐々に加え、35℃で2時間加熱攪拌した。水を加えて反応を終了させた後、混合液を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を留去した。残渣に酢酸/水(1/1)を加え、70℃で1時間攪拌した。溶媒を留去後、残渣を熱水に溶解し、不溶物を離別し、水を留去した(この操作を3回繰り返した)。この水溶液から水を留去することで、化合物Aを2.82g(薄黄色結晶、収率60.6%)得た。
・1H−NMR(500MHz,DMSO−d6,TMS,δ,ppm):7.99−7.98(m,2H),7.49−7.38(m,3H).
・13H−NMR(125MHz,DMSO−d6,δ,ppm)205.37,196.
76,173.65,130.74,130.69,129.47,129.47,125.72.
・ESI MS:calcd for C10HO3(MW=174.03):m/z=
173.02[M+−H].
・元素分析 計算値C10H6O3:C 68.97%、H 3.47%、
実測値 :C 69.08%、H 3.33%
窒素雰囲気下、化合物A 1.00gと20mol dm-3 NaOH水溶液 0.2
86mlを含む5ml水溶液を室温で10分攪拌した。水を留去後、残渣をメタノール3mlで洗浄することで、化合物Bを775mg(薄黄色結晶、収率68.6%)得た。
・1H−NMR(500MHz,DMSO−d6,TMS,δ,ppm):8.01−8.02(m,2H),7.42−7.28(m,3H).
化合物Aのナトリウム塩である化合物Bでは、1H−NMRスペクトルにおいて水のピ
ークが3.36ppmであり、化合物Aの水のピーク(5.30ppm)と比較して高磁場シフトした。これは、酸性基の水和水がナトリウム塩となったことでなくなったためであると考えられ、確かにナトリウム塩が生成していることが考えられる結果となった。
2ccサンプル管に化合物Aと、化合物Aの添加量が20wt%となるように純水もしくは後述する各種水溶液を入れ、蓋をして、60℃の水浴につけて化合物Aの水溶液を作製した(60℃で溶解しない場合は、95℃にして溶解させた)。その後、この水溶液を
室温(およそ20℃)で放冷し、ゲル化を確認した。なお、放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を「ゲル化」と判断した。
得られた結果を表1に示す。また、放冷後の各サンプルの写真を図1[(a)純水、(b)HCl 1mol/dm3水溶液、(c)NaOH 1mol/dm3水溶液、(d)NaCl 1mol/dm3水溶液]及び図2[(a)シュウ酸緩衝液、(b)フタル酸
緩衝液、(c)リン酸緩衝液、(d)炭酸緩衝液]に示す。
すなわち、化合物Aは温和な温度条件で且つ広いpH領域でヒドロゲル形成能を有するとともに、温和な温度条件で且つ幅広い塩濃度にてゲル形成能を有するという結果が得られた。
なお、化合物Bは純水に対して30wt%の濃度にてヒドロゲル形成能を有するという結果が得られた。
次に化合物Aのゲル化挙動を検討するため、純水中での化合物Aの濃度を15wt%〜50wt%の範囲で種々変化させ、試験例1と同様の手順にて化合物のA溶液(60℃にて溶解)を作成し、その後室温で放冷し、ゲル化を確認した。放冷後の各サンプル菅の写真を図3に示す。
図3に示すように、化合物Aの配合量が20wt%未満(図3(a)、15wt%)の場合、放冷後に化合物Aが再結晶化してゲルを得ることはできなかったが、配合量が20〜40wt%(図3(b)20wt%及び(c)30wt%)ではヒドロゲルの形成が確認された。一方、化合物Aの配合量が50wt%(図3(d))では板状結晶化して固化することが確認された。すなわち、化合物Aはヒドロゲル形成能の濃度依存性を有するものであることが確認された。
さらに化合物Aのゲル形成能(最低ゲル化濃度)の塩濃度依存性及び酸依存性を検討するため、水溶液中のNaCl濃度を変化させたとき及びHCl水溶液のときの化合物Aの最低ゲル化濃度を、試験例1と同様の手順にて確認した。得られた結果を試験例2の結果と合わせて表2に示す。また放冷後の各サンプル菅の写真を図4に示す。
が5wt%で、10-1mol/dm3水溶液では同10wt%で、10-2mol/dm3水溶液及び10-3mol/dm3水溶液では同15wt%で、ゲル形成が確認された。
一方、HCl 1mol/dm3水溶液では、化合物Aの配合量がわずか2wt%にお
いてもゲル形成が確認された。
すなわち、水溶液の塩濃度および酸濃度を変化させることで、化合物Aの最低ゲル化濃度を調節できることが確認された。
前述の試験例と同様に、純水中での化合物Aの濃度を25wt%〜50wt%の範囲で種々変化させ、同様の手順にて化合物のA溶液(60℃にて溶解)を作成し、その後室温で放冷してヒドロゲルを形成した。
次に得られた各ヒドロゲルについて、ゾル−ゲル転移温度ならびにゲル−ゾル転移温度を示差走査熱量計により測定した。得られた結果を表3に示す。
前述の試験例と同様の手順にて、化合物Aの濃度を30wt%又は50wt%としてヒドロゲルを形成させ、これらを室温にて真空乾燥させることにより得た乾燥ゲルの状態を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。
得られた結果を図5に示す。ここで図5(a)〜(e)は、(a):30wt%、SEM像、(b)30wt%、SEM像、(c)30wt%、TEM像、(d)50wt%、SEM像、(e)50wt%、SEM像をそれぞれ示す。
図5に示すように、化合物Aの濃度が30wt%のヒドロゲル(図5(a)〜(c))では、ミリメートル長で数マイクロメートル径のファイバーが、従来の高分子化合物を用いたヒドロゲルの場合と同様にネットワークを形成していることが確認され、これによりゲル化の実現につながったことが示唆された。また、化合物Aの濃度が50wt%のヒドロゲル(図5(d)及び(e))では板状結晶の生成が確認され、これにより固化することが分かった。
すなわち、化合物Aの配合濃度の違いによって生じた、加熱溶解・放冷後の試料(溶液)の外観の違いは、結晶の形態の違いによることが確認された。
さらに詳細を検討するためにX線回折測定を行った。化合物Aの単結晶(一水和物、アセトニトリルより再結晶)と化合物Aの濃度を30wt%として形成した純水ヒドロゲルについて、X線回折測定を行った。得られた結果を図6に示す。図6(a)は化合物Aの一水和物の結晶構造を示し、図6(b)は化合物A30wt%の純水ヒドロゲル中の化合物Aが形成する構造(後述するファイバー構造)を示す。
また化合物Aの無水物の単結晶(水より再結晶したサンプルを減圧加熱乾燥した(40℃))についてもX線回折測定を行った(SMART APEXII ULTRAを使用)。得られた結果を図7に示す。図7(a)は化合物Aの単結晶(無水物)の結晶構造を示し、図7(b)は該単結晶をc軸から見た図を示し、ここで黄色の矢印は水素結合が存在する部分を示している。
なお粉末X線回折による詳細な測定結果を図8(各図中、最も上側のパターンは実測値(○)および計算値(実線)を示し、その下側のパターンは実測値と計算値との差を示し、横軸上に示すラインはパターンのピークの位置を示すものである。(1)化合物Aの単結晶(無水物)のパターン、(2)化合物A30wt%の純水ヒドロゲルのサンプルパターン)に示す。
以下、詳細な結晶構造データを表4乃至表6に示す。
また化合物Aの30wt%純水ヒドロゲル中において、化合物Aがチューブ状に集合し、これがファイバー様を形成していることが明らかとなった(図6(b))。また化合物Aの集合により形成されるチューブは、外径25Å、内径11Åであり、化合物Aの酸性基がチューブの内側を向いていることから、チューブ内部が親水性であることが示唆された。なお図6(b)中に示した円はチューブの模式図であり、外径は円の同一直径上に位置する二つの化合物Aのフェニル基の4位にある炭素原子間の距離、内径は円の同一直径上に位置する二つの化合物Aの最近接酸素原子間の距離としてそれぞれ算出した。
Claims (3)
- 一般式[I]で表されるスクアリン酸誘導体を含む、ヒドロゲル化剤。
- 一般式[II]で表されるスクアリン酸誘導体を含む、ヒドロゲル化剤。
- 一般式[III]で表されるスクアリン酸誘導体を含む、ヒドロゲル化剤。
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