JP2009196925A - 有機塩 - Google Patents

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JP2009196925A JP2008039691A JP2008039691A JP2009196925A JP 2009196925 A JP2009196925 A JP 2009196925A JP 2008039691 A JP2008039691 A JP 2008039691A JP 2008039691 A JP2008039691 A JP 2008039691A JP 2009196925 A JP2009196925 A JP 2009196925A
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Abstract

【課題】イオン液体として有用である新規な有機塩、及び当該有機塩の簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】下記いずれかの有機塩、及び有機塩の製造方法の提供。
<1>2π芳香族性を有する有機アニオンと、該有機アニオンと静電的に等価の有機カチオンとからなることを特徴とする有機塩。
<2>前記有機アニオンが下記式(1)又は式(2)で表される、<1>の有機塩。
Figure 2009196925

<3>イオン解離し得るカチオンを取り去ることによって2π芳香族性を有する有機アニオンを生成する芳香族化合物と、イオン解離し得るアニオンを取り去ることによって有機カチオンを生成する化合物とを、溶媒中で混合することを特徴とする有機塩の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は新規な有機塩、特にイオン液体として好適な新規な有機塩に関する。
近年、100℃未満の温度領域で、イオン結晶が融解した状態の液体が、イオン液体と呼称され、電池やコンデンサなどの電気化学デバイス用電解質、二酸化炭素吸着分離材、潤滑油、有機合成分野で使用される反応溶媒等への応用が広く検討されている。このようなイオン液体は、汎用的に使用されているような有機溶媒とは異なる特性(難揮発性、難燃性等)を有するものであり、古くは1、3−ジアルキルイミダゾリウムクロリドとAlCl3を混合することにより得られる、AlCl4 -アニオンを有する有機塩等が知られている。しかしながら、このようなAlCl4 -アニオンを有する有機塩は、耐水性が低い等の問題点があり、より取扱い性の優れたイオン液体が求められている。取扱い性を改良したイオン液体としては、AlCl4 -アニオンの代わりに含フッ素アニオン(例えば、N(CF3SO2-、CF3SO3 -、BF4 -、PF6 -)を用いたものが提案されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
ところで、イオン液体は難揮発性という特性により、例えば有機合成分野の反応溶媒として使用した場合、該反応溶媒の環境への拡散を最小限に止めることができるため、環境低負荷型の、いわゆるグリーン溶媒としての期待が大きい。かかるグリーン溶媒としては、ハロゲンを含まないイオンを用いてなるハロゲンフリーのイオン液体が求められるようになってきた。
しかしながら、従来のイオン液体を構成するアニオンは、上記のAlCl4 -アニオンや含フッ素アニオンのような含ハロゲンアニオンが用いられているため、グリーン溶媒に対する社会の要求に応えることができないという問題点があった。
Bonhote,P.et al.,Inorg.Chem.,35,1168〜1178(1996) イオン液体II、大野弘幸編集、シーエムシー出版(2006)
本発明の目的は、イオン液体として有用である新規な有機塩、さらにはグリーン溶媒として有用なハロゲン原子を含まない有機塩、及び当該有機塩の簡便な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、新規な有機塩、特にイオン液体として有用な有機塩を見出すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は下記<1>を提供するものである。
<1>2π芳香族性を有する有機アニオンと、該有機アニオンと静電的に等価の有機カチオンとからなる有機塩。
さらに、本発明は前記<1>に係る好適な実施態様として、下記の<2>〜<7>を提供する。
<2>前記2π芳香族性を有する有機アニオンが、オキソカーボン分子から解離し得る陽イオンを1個又は2個取り去って得られる有機アニオンである、<1>の有機塩。
<3>前記2π芳香族性を有する有機アニオンが、下記式(1)
Figure 2009196925
(式中、X1、X2は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又はN−R11を表し、Zは、カルボニル基、チオカルボニル基、−C(NR12)−、置換基を有していてもよいアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。mは繰り返しの数であり、0〜10の整数を表わす。mが2以上である場合、複数あるZは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。Dは1価の基を表す。)
で表される1価の有機アニオン、又は下記式(2)
Figure 2009196925
(式中、X3は酸素原子、硫黄原子又はN−R11を表す。ただし、R11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。X1、X2、Z、mは前記と同義である。)
で表される2価の有機アニオンである、<1>又は<2>の有機塩。
<4>前記2π芳香族性を有する有機アニオンが、
前記式(1)で表される1価の有機アニオンにおいてmが1以上であり、1個以上あるZが、カルボニル基、チオカルボニル基及び−C(NR12)−(ただし、R12は、水素原子又は1価の有機基を表す。)からなる群から選ばれる基の有機アニオンであるか、
前記式(2)で表される2価の有機アニオンにおいて、mが1以上であり、1個以上あるZが、カルボニル基、チオカルボニル基及び−C(NR12)−(ただし、R12は、水素原子又は1価の有機基を表す。)からなる群から選ばれる基の有機アニオンである、<3>の有機塩。
<5>前記2π芳香族性を有する有機アニオンが、
前記式(1)で表される1価の有機アニオンにおいて、mが1以上であり、1個以上あるZがカルボニル基であり、X1及びX2がともに酸素原子である有機アニオンであるか、
前記式(2)で表される2価の有機アニオンにおいて、mが1以上であり、1個以上あるZがカルボニル基であり、X1、X2及びX3が全て酸素原子である有機アニオンである、<3>の有機塩。
<6>前記2π芳香族性を有する有機アニオン及び前記有機カチオンがともに、ハロゲン原子を有さないイオンである、<1>〜<5>の何れかの有機塩。
<7>示差走査型熱量分析(DSC)で求められる融点又は示差走査型熱量分析(DSC)で求められるガラス転移温度が、100℃未満である、<1>〜<6>の何れかの有機塩。
また、本発明はこのような有機塩の製造方法に係る発明として、下記<8>、<9>を提供する。
<8>イオン解離し得るカチオンを、1個又は2個取り去ることによって2π芳香族性を有する有機アニオンを生成する芳香族化合物と、
イオン解離し得るアニオンを、1個又は2個取り去ることによって有機カチオンを生成する化合物とを、
前記2π芳香族性を有する有機アニオンと、前記有機カチオンとが静電的に等価になるように溶媒中で混合することを特徴とする有機塩の製造方法。
<9>前記有機カチオンを生成する化合物が、ハロゲンイオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンから選ばれるアニオンを解離して有機カチオンを生成する化合物である、<8>の製造方法。
本発明により、特にイオン液体として有用な新規な有機塩を提供できた。また、本発明に拠れば、社会的要求の高いハロゲンフリーのイオン液体を提供することもできるため、産業上極めて有用である。
本発明の有機塩は、2π芳香族性を有する有機アニオンと、該有機アニオンと静電的に等価な有機カチオンからなることを特徴とする。
ここで芳香族性を有する有機アニオンとは、ヒュッケル則として知られる(4n+2)π則を満たす安定な有機アニオンのことを示す。この法則を満たすことにより分子は安定に存在することができる。本発明でいう「2π芳香族性を有する有機アニオン」とは、π電子を2個有する2π芳香族化合物から1個あるいは複数個のイオン解離し得るカチオンを取り去って得られる有機アニオンを意味する。
このようなカチオンを取り去る前の2π芳香族化合物としては、芳香族性単環式化合物、芳香族性縮合環式化合物、芳香族性複素環式化合物の何れでもよい。
特に好適な2π芳香族性を有する有機アニオンとしては、オキソカーボン及びオキソカーボン誘導体から選ばれるオキソカーボン分子を2π芳香族化合物として、該オキソカーボン分子から、1個又は2個のカチオンがイオン解離して得られる有機アニオンが挙げられる。
ここで、オキソカーボンとは、文献[Oxocarbons、1頁〜13頁(Edited by Robert West)、Academic Press(1980),(ISBN:0−12−744580−3)]で定義されている化合物を指し、三角酸、四角酸、五角酸又は六角酸という用語で呼称されている化合物(多角酸)、又は同文献に該多角酸の誘導体(Pseudo−Oxocarbons:疑似オキソカーボン)として記載されているものが挙げられる。また、このようなオキソカーボン分子の芳香環上に任意の置換基を有していてもよく、同文献に例示されているようなオキソカーボン分子(オキソカーボン又はオキソカーボン誘導体)中の酸素原子が、硫黄原子(S)、アミノ基(例えば、−NH−)、セレン原子(Se)で置換されていてもよい。
好適な2π芳香族性を有する有機アニオンを具体的に例示すると、下記式(1)で表される1価の有機アニオン、下記式(2)で表される2価の有機アニオンを挙げることができる。

Figure 2009196925
式中、X1、X2は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又はN−R11を表し、Zはカルボニル基(−CO−)、チオカルボニル基(−CS−)、−C(NR12)−、置換基を有していてもよいアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。mは繰り返しの数であり、0〜10の整数を表わす。mが2以上である場合、複数あるZは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。Dは1価の基を表す。
式(1)では、1価の有機アニオンに関し、X1が負の電荷を帯びている形式で表わすが、この電荷は芳香環の非局在π電子を通して非局在化するものである。
Figure 2009196925
式中、X3は酸素原子、硫黄原子又はN−R11を表す。ただし、R11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。X1、X2、Z、mは前記式(1)と同じ意味である。
式(2)では、2価の有機アニオンに関し、X1及びX3が負の電荷を帯びている形式で表わすが、この電荷は芳香環の非局在π電子を通して非局在化するものである。
上記の式(1)又は式(2)において、X1、X2及びX3は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又はN−R11を表す。R11は、水素原子;メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基で代表される炭素数1〜6のアルキル基(ただし、このアルキル基は任意の置換基を有することもある。)又はフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ナフチル基で代表される炭素数6〜10のアリール基(ただし、このアリール基は任意の置換基を有することもある。)を表す。R11として好ましくは水素原子である。X1、X2として好ましくは酸素原子、硫黄原子であり、X1、X2がともに酸素原子であると特に好ましい。
またZは、カルボニル基、チオカルボニル基、−C(NR12)−(ただし、R12は前記と同義である。)、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリーレン基を表す。R12は、水素原子;メチル基、トリフルオロメチル基;エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基で代表される置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ナフチル基で代表される置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。R12として好ましくは水素原子である。
式(1)又は式(2)において、Zがアルキレン基である場合、このアルキレン基は通常炭素数1〜6であって、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、i−プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基が例示できる。また、Zがアリーレン基である場合、このアリーレンは通常炭素数6〜10であって、フェニレン基、ナフチレン基が例示できる。このアルキレン基やアリーレン基は置換基を有していてもよく、この場合の置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子が挙げられ、なかでもフッ素が好ましい。
式(1)又は式(2)におけるZは、カルボニル基、チオカルボニル基、−C(NR12)−、メチレン基、ジフルオロメチレン基、フェニレン基、テトラフルオロフェニレン基が好ましく、より好ましくはカルボニル基、チオカルボニル基等であり、特に好ましくはカルボニル基である。
mは、Zの繰り返しの数を表わし、0〜10の整数を表わす。好ましくはmは1以上の整数であり、さらに好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
Dは、一価の基を表し、例えば、ハロゲン原子、または一価の有機基を表し、好ましくは一価の有機基である。一価の有機基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数7〜16のアラルキル基などの、モル重量で表して5000未満の有機基が挙げられる。
また、有機アニオンとしては、前記式(1)で表される有機アニオンを複数備えた形態の高分子であってもよい。具体的には、前記式(1)におけるDとして高分子量の基を備えた形態を意味し、この高分子量の基としては、ビニル重合体、ポリオキシアルキレン類、ポリシロキサン類、ポリエステル類、ポリイミド類、ポリアミド類、ポリベンズオキサゾール類、ポリベンズイミダゾール類、ポリアリーレンエーテル類、ポリアリーレン類、ポリアリーレンスルフィド類、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルスルホン類、ポリホスファゼン類等の高分子、及びこれらの高分子を構成する繰り返し単位が複数有してなる共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体から水素原子が引き抜かれた形の基が挙げられる。また、有機アニオンとして高分子の形態を用いる場合、該高分子には、オキソカーボン基、すなわち一般式(1)においてDを除いたようなイオン基が、1分子内に2つ以上存在している高分子を用いることができる。
ただし、本発明の有機塩をイオン液体として用いる場合、イオン液体は100℃以上で、該イオン液体を使用する用途による上限温度(例えば、有機合成分野で使用される反応溶媒では、200℃程度)以下の温度領域では、液状かつ分解せずに安定であることが必要であるので、Dで表される基はこのような特性を勘案して選択される。
Dがアルキル基である場合、該アルキル基は炭素数1〜18のアルキル基であって、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が例示される。
これらアルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基が挙げられ、アルキル基の総炭素数が18以下となるように選択される。
Dがアリール基である場合、該アリール基は炭素数6〜18のアリール基であって、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基が例示される。
これらアリール基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロメチル基等の炭素数1〜5のフルオロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、アリール基の総炭素数が18以下となるように選択される。
炭素数7〜16のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。炭素数7〜16のアラルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロメチル基等の炭素数1〜5のフルオロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、アラルキル基の総炭素数が16以下となるように選択される。
Dとして、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数7〜16のアラルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ベンジル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基であり、とりわけ好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基であり、特に好ましくはメチル基、n−ブチル基である。
式(1)で表される1価のアニオンの具体例としては、例えば下記のアニオンが挙げられる。
Figure 2009196925
Figure 2009196925
Figure 2009196925
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Figure 2009196925
Figure 2009196925
Figure 2009196925
Figure 2009196925
Figure 2009196925
また、式(2)で表される2価の有機アニオンの具体例としては、例えば下記のアニオンが挙げられる。
Figure 2009196925
本発明においては、上記のような式(1)又は式(2)で表される有機アニオンの代表例が、好ましく用いられる。これらの中でも、(a1)〜(a63)が好ましい。より好ましくは(a1)〜(a3)、(a5)(a8)、(a11)、(a14)、(a17)、(a20)、(a23)、(a26)、(a29)、(a32)、(a35)、(a38)、(a41)、(a44)(a47)、(a50)、(a53)、(a56)、(a59)、(a61)〜(a63)であり、より好ましくは(a1)〜(a3)、(a5)、(a8)、(a11)、(a14)、(a17)、(a20)、(a23)、(a26)、(a29)、(a32)、(a35)、(a38)であり、さらに好ましくは(a2)、(a5)、(a8)、(a11)、(a14)、(a17)、(a20)、(a23)、である。
なお、本発明の有機塩を、グリーン溶媒として用いるためには、有機アニオンにはハロゲン原子を有していないものが好ましいので、(a2)、(a5)、(a8)、(a11)、(a14)が好ましく、特に、(a2)、(a5)、(a14)が好ましい。
オキソカーボン分子は市場から容易に入手できるものを用いることもできるが、ここでは、オキソカーボン分子の製造方法を簡単に説明することにする。この製造方法の典型的な例としては、まず下記式(3)で表されるオキソカーボン分子のエーテル体(以下、「エーテル体」と略称する。)を製造して、かかるエーテル体からオキソカーボン分子へと誘導する製造方法を挙げることができる。
Figure 2009196925
(式中、R41は上記式(1)におけるD又は上記式(2)におけるX3であり、R42は、アルキル基又はアリール基である。)
上記式(3)で表されるエーテル体の製造に関して、先行文献を提示することとする。

(I)リチウム試薬を用いて、式(3)で表されるエーテル体を製造する方法(Journal of Organic Chemistry,53,2482、2477(1988));
(II)グリニヤール試薬を用いて、式(3)で表されるエーテル体を製造する方法(Heterocycles,27(5),1191(1988));
(III)スズ試薬を用いて、式(3)で表されるエーテル体を製造する方法(Journal of Organic Chemistry,55,5359(1990)、Tetrahydron Letters,31(30),4293(1990));
(IV)Friedel Crafts反応を用いて式(3)で表されるエーテル体を製造する方法(Synthesis,46頁(1974))

これらの方法に準拠することにより様々なエーテル体を製造することができる。そして、このようにして得られたエーテル体を、酸又はアルカリなどで加水分解する等により、エーテル残基(式(3)における−O−R42)を、イオン解離して−O-になり得る基(好ましくは、水酸基(−OH))に変換することで、オキソカーボン分子が得られる。
エーテル体の加水分解に係る反応条件について説明する。
加水分解に用いる試薬としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シュウ酸、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素が挙げられ、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。反応温度としては通常、−150℃〜200℃であり、好ましくは−100℃〜150℃であり、さらに好ましくは−80℃〜120℃である。反応時間としては通常10分〜20時間であり、好ましくは30分〜15時間であり、特に好ましくは1時間〜10時間である。反応は無溶媒下又は溶媒の存在下で行われる。溶媒を使用する場合、この溶媒としては、ヘプタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、2−クロロエタノールなどのアルコール系溶媒を使用することができる。塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シュウ酸を用いる場合には水やジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒も使用可能である。これらの溶媒は混合して用いることも可能である。
前述したような2π芳香族性を有する有機アニオン、好ましくは上記式(1)又は上記式(2)で表される有機アニオンとともに、本発明の有機塩を形成する有機カチオンは、該有機アニオンと静電的に等価である範囲において、特に限定されるものではなく、任意の有機カチオンを用いることができる。
好ましくは脂肪族3級アミン、ピロール、3−ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルフォリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、1,3,5−トリアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、ペルヒドロキノリン、ペルヒドロイソキノリン、イソキサゾリジン、イミダゾリン、チアゾリン、フラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ピラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、シンノリン、キノキサリン、カルバゾール、アクリジン、フェノチアジン、アジリジン、アゼチジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5等の化合物において、その分子中のヘテロ原子をアルキル化又はジアルキル化して得られる有機カチオン、ホスファゼニウムカチオン、プロアザホスフォトラニウムカチオンから選ばれる有機カチオンである。上記の有機カチオンは任意の置換基を有していてもよい。また、これらの有機カチオンにおいて、含有するヘテロ原子が、ホウ素原子(B)、窒素原子(N)、酸素原子(O)、アルミニウム原子(Al)、ケイ素原子(Si)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、スズ原子(Sn)、ヒ素原子(As)、セレン原子(Se)に置き換わっていてもよい。
さらに好ましくは含窒素複素環式化合物の窒素原子を、N−アルキル化又はN,N−ジアルキル化して得られる有機カチオンであり、このような例としてはピロール、3−ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルフォリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、1,3,5−トリアジン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、ペルヒドロキノリン、ペルヒドロイソキノリン、イソキサゾリジン、イミダゾリン、チアゾリン、シンノリン、キノキサリン、カルバゾール、アクリジン、フェノチアジン、アジリジン、アゼチジン、イソオキサゾール、イソチアゾールから選ばれる含窒素複素環式化合物に関し、その分子中の窒素原子を、N−アルキル化又はN、N−ジアルキル化して得られる有機カチオンが挙げられる。
このような有機カチオンとして、特に好ましくは下記式(4a)〜(4o)から選ばれる有機カチオンが挙げられる。
Figure 2009196925

Figure 2009196925
Figure 2009196925

Figure 2009196925
上記の式(4e)〜(4o)において、R21は任意の1価の基を表す。好ましくは、R21は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。該炭化水素基は水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はアルデヒド基を置換基として有していてもよく、該炭化水素基がアルキル基である場合、このアルキル基はエーテル結合やチオエーテル結合で中断されていてもよい。式(4e)〜(4o)において、複数あるR21は同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに好ましくは、R21は水素原子、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、又は又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、この炭化水素基に有していてもよい置換基は上記と同様である。特に好ましくは、R21は水素原子であるか、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、炭素数1〜6の炭化水素基である。
また、上記の式(4e)〜(4o)において、R22は、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。好ましくは、R22は、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。なお、R21、R22における炭化水素基においては、アルキル基が好ましい。
これら(4a)〜(4o)の中でも、(4a)、(4e)、(4i)、(4l)がさらに好ましく、(4a)、(4i)が特に好ましい。
ここで例示した好適な有機カチオンは何れも1価の有機カチオンであるので、前記一般式(2)で表される2価の有機アニオンを用いた場合には、静電的に中性になるように、有機カチオン2当量と有機アニオン1当量を用いることで有機塩を形成することもできる。この場合、2価の有機アニオン1当量の中和に用いられる2当量の有機カチオンは、同一であっても異なっていてもよい。
また、上記に例示したような、含窒素複素環式化合物の窒素原子をN−アルキル化又はN,N−ジアルキル化して得られる有機カチオンにおいて、複素環内に2つの窒素原子を有するものである場合、この2つの窒素原子がともに、N−アルキル化又はN,N−ジアルキル化してなるような2価の有機カチオン、具体的には下記の式(5d)、(5g)、(5h)、(5n)又は(5o)で表される2価の有機カチオンを用いることもできる。
Figure 2009196925
Figure 2009196925
(これらの式において、R21は前記と同じ意味を示す。)
このような2価の有機カチオンを1当量と、前記式(2)で表される2価の有機アニオンとを用いて有機塩を形成することもできる。
本発明の有機塩をイオン液体、特に社会的要求の高いグリーン溶媒として用いる場合、好適な組み合わせとしては、下記表1のようなものが好ましい。
Figure 2009196925

また、本発明の有機塩をイオン液体として使用する場合、複数種の有機塩を混合して使用することもできる。
本発明の有機塩の製造方法は、1個又は複数個のカチオンをイオン解離することで、2π芳香族性を有する有機アニオンを形成する化合物(以下、「有機アニオン前駆体」という。)と、1個又は複数個のアニオンをイオン解離することで有機カチオンを形成する化合物と(以下、「有機カチオン前駆体」という。)とを、該有機アニオンと該有機カチオンとが静電的に中和するようにして、反応させればよい。
好適な有機アニオンである、上記式(1)で表される有機アニオンを形成できる有機アニオン前駆体としては、例えば、下記式(1a)で表されるオキソカーボン分子が挙げられる。
Figure 2009196925
(ただし、式中、D、X1、X2、Z、mは前記と同じ意味を示す。)
また、上記式(2)で表される有機アニオンを形成できるものとしては、例えば、下記式(2a)で表されるオキソカーボン分子が挙げられる。
Figure 2009196925
(ただし、式中D、X1、X2、Z、mは前記と同じ意味を示す。X4は水酸基、メルカプト基、−NHR11から選ばれる基を示す。なお、R11は前記と同じ意味を示す。)
また、有機アニオン前駆体として1個又は複数個のプロトンをイオン解離するものを使用する場合において、有機カチオン前駆体として、1個又は複数個のプロトンを受け取って有機カチオンを形成できる化合物を用いることもできる。このようなプロトンを受け取って有機カチオンを形成できる化合物としては、1−アルキルイミダゾール、1−アルキルトリアゾール、1−アルキルテトラゾール、三級アミンなどが挙げられる。
有機アニオン前駆体と、有機カチオン前駆体とを用いて、有機アニオンと有機カチオンとを中和させるといった中和反応に係る反応条件について説明する。中和反応は反応溶媒の存在下又は不在下で、反応温度としては、−50〜200℃、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは20℃〜100℃、反応時間としては、1分〜50時間、好ましくは5分〜10時間、さらに好ましくは10分〜5時間という反応条件によって実施することができる。なお、中和反応に溶媒を使用する場合、かかる溶媒としては、水、ヘプタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、2−クロロエタノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、又はこれらの混合物が好ましい。
本発明の有機塩は、上記式(1a)又は式(2a)で表される有機アニオン前駆体と、含窒素複素環式化合物の窒素原子をN−アルキル化して得られる有機カチオンの塩(以下、「有機カチオン前駆体2」と呼ぶ。)とを反応させ、発生する副生物を除去することで得ることも可能である。含窒素複素環式化合物の窒素原子をN−アルキル化して得られるカチオンの塩として具体的には、例えば1,3−ジアルキルイミダゾリジニウム塩、1−アルキルピリジニウム塩、1、1−ジアルキルピロリジニウム塩、1,1−ジアルキルピペリジニウム塩等が挙げられる。
有機アニオン前駆体と有機カチオン前駆体2を反応させる方法について説明する。この反応は、反応溶媒の存在下又は不在下で、反応温度としては、−50〜200℃、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは20℃〜100℃、反応時間としては、1分〜50時間、好ましくは5分〜10時間、さらに好ましくは10分〜5時間の条件で実施することができる。なお、この反応に溶媒を使用する場合、かかる溶媒としては、水、ヘプタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、又はこれらの混合物が好ましい。
有機カチオン前駆体2が、アニオンとして、ハロゲンイオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなどを有している場合、副生するハロゲン化水素、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などは沸点が比較的低いため、これらの副生物は加熱及び/又は減圧下にて容易に除去できる。副生物の沸点が高く、減圧下にて除去困難である場合には、イオン交換樹脂等を用いて副生物を除去することで精製が可能である。
また、本発明の有機塩は、上記式(3)で表したエーテル体を有機アニオン前駆体として用い、かかるエーテル体と、1−アルキルイミダゾール、1−アルキルピペリジン、1−アルキルピロリジン等の、分子中の窒素原子がN−アルキル化により四級化して有機カチオンを生成できる化合物とを反応させるという方法でも製造することができる。この場合、エーテル体のアルコキシ基(−O−R42)からアルキル基(−R42)が1−アルキルイミダゾール等の窒素原子に転移して、エーテル体の脱アルキル化物と1−アルキルイミダゾール等の窒素原子が四級化してなる有機カチオンとが中和反応を生じることにより、有機塩が生成する。この場合の製造条件は、溶媒の存在下又は不在下で、反応温度としては、0〜200℃、好ましくは50〜150℃、反応時間としては、1〜100時間、好ましくは5〜50時間という条件で実施することができる。なお、溶媒を使用する場合、かかる溶媒としては、水、ヘプタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、又はこれらの混合物が好ましい。
上述したような本発明の有機塩の製造方法は、何れも溶媒の存在下で実施することが好ましい。こうすることにより、中和反応で生じる中和熱の影響を小さくするという効果や、中和反応がより均一に生じるという効果もある。
このように本発明の有機塩を製造するうえで、好適な製造方法を説明したが、有機塩の製造方法として公知の方法を用いてもよい。かかる方法としては、具体的には「イオン性液体」(株式会社シー・エム・シー出版、大野弘幸監修p.4〜34、2003年2月1日発行)記載のアニオン交換法、酸エステル法、中和法、水酸化物法などから選んで、または組み合わせて製造することが可能である。
また、既述のように本発明の有機塩をイオン液体として使用する場合、該イオン液体は2種以上からなる混合物であってもよいので、かかる有機塩の製造において、複数種の有機アニオン前駆体を使用したり、複数種の有機カチオン先駆体を使用したりして、本発明の有機塩を2種以上同時に製造することも好適な態様である。そして、このようにして製造された本発明の有機塩を複数種含むような混合物も、イオン液体として好適に使用することができる。
かくして得られる本発明の有機塩は、イオン液体として好適に使用することができる。既述のように、本発明の有機塩をイオン液体として使用する場合、100℃以上、かつ該イオン液体を使用する用途による上限温度以下の温度領域において、該有機塩が液状であればよいが、好適には100℃未満の温度領域で液体の状態であることが好ましく、80℃以下の温度領域で液体の状態であることが好ましく、50℃以下の温度領域で液体の状態であることがさらに好ましい。このようにするためには、当該有機塩が、示差走査型熱量分析(DSC)で求められる融点又は示差走査型熱量分析(DSC)で求められる融点又はガラス転移温度が、100℃未満、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは50℃以下であることが望まれる。なお、かかる融点又はガラス転移点の測定に係るDSCは、通常、−100℃〜150℃の測定温度領域において、昇温速度5℃/minで、窒素等の不活性ガス雰囲気下で測定されるものである。本発明においては、DSCとしてセイコーインスツルメンツ(株)社製DSC220Cを用いる。
また、本発明の有機塩が室温(約25℃程度)で液状である場合、常温以上の温度での反応溶媒、機能性高分子ゲルに含浸させる不揮発又は低揮発性溶媒、潤滑油にも使用が可能である。
さらに、本発明の有機塩は、高分子電解質型燃料電池の電解質に混合して使用することもできる。こうすることにより、本発明の有機塩は、電解質中で水の代わりのプロトンキャリアとなりうるので、従来プロトン伝導のために水を必要としていた電解質に対し、水を不要とする電解質を実現することができる。そして、本発明の有機塩を用いてなる電解質は、水の沸点以上でも運転可能な燃料電池を可能とする。
本発明の有機塩が、式(2)で示すような2価の有機アニオンを有し、該有機アニオンが、1当量の有機カチオンと水素イオンとで中和されている形態の場合、水素イオンで中和されている基は、比較的酸性度が高く容易に解離しうるという特性を示す。このような有機塩は高いプロトン伝導性を示すので、燃料電池用の電解質として使用することもできる。この場合の燃料電池用の電解質としては、燃料電池の触媒層や隔膜が挙げられ、このような触媒層や隔膜を供えた燃料電池は、高い出力を示すものとなる。
さらに本発明の有機塩が、式(2)で示すような2価の有機アニオンを使用し、1つの有機カチオンと1つのリチウムイオンで中和されている場合、この有機塩はリチウムイオン伝導体となりうる。さらに、この有機塩が常温で液体であると、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートといった可燃性の溶媒に溶解することなく、単独でリチウムイオン一次電池やリチウムイオン二次電池用の電解液として使用することが可能となる。また、この有機塩はハロゲンを有していないため、腐食性が極めて低く安定性の高い電解液となる。すなわち、可燃性の溶媒を用いずに、耐腐食性の高い電池を製造することができるため、極めて安全性に優れた電池となりうる。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
(ガラス転移点測定)
セイコーインスツルメンツ(株)社製DSC220Cを用い、−100℃から150℃まで5℃/minで昇温した時の融点および/またはガラス転移点を求めた。測定雰囲気ガスは窒素である。
(参考例1)
50mLフラスコにJournal of Organic Chemistry,53,2482−2488(1988)に記載の方法に準じて合成した、4−n−ブチル−3−イソプロポキシ−シクロブタ−3−エン−1,2−ジオン2.00g(7.80mmol)とテトラヒドロフラン10mLを入れて均一溶液とした。ここに濃塩酸(36wt%)10mLを加えて65℃で24時間攪拌した。反応後、30mLの純水を加え、塩化メチレン10mLで水層を洗浄した。ついで酢酸エチル10mLで水層を洗浄し、さらにエーテル10mLで水層を洗浄した。洗浄後の水層の水をエバポレーターで留去し、60℃で真空ポンプを用いて48時間乾燥して、4−n−ブチル−3−ヒドロキシ−シクロブタ−3−en−1,2−ジオン(以下、ブチル四角酸と呼ぶ)を得た。構造は1H−NMRで確認した(ケミカルシフト(ppm、重水中):2.63、1.70、1.42、0.99)。
(参考例2)
4−メチル−3−イソプロポキシ−シクロブタ−3−エン−1,2−ジオンを出発原料としたほかは同様にして4−メチル−3−ヒドロキシ−シクロブタ−3−エン−1,2−ジオン(以下、メチル四角酸と呼ぶ)を得た。構造は1H−NMRで確認した(ケミカルシフト(ppm、重水中):2.08)。
(実施例1)
50mLフラスコにブチルイミダゾール100mg(0.805mmol),メチル四角酸90.22mg(0.805mmol)、純水1mL、クロロホルム2mLを入れ、60℃で4時間攪拌を行った。反応後、純水10mLを加え、分液ロートで水層を分離し、クロロホルム10mLで3回、酢酸エチル10mLで3回、エーテル10mLで3回洗浄を行った。洗浄後の水層の水をエバポレーターで留去し、さらに60℃で真空ポンプを用いて48時間乾燥して常温で液体の有機塩1を得た。1H−NMRで構造を確認した(ケミカルシフト(ppm、重ジメチルスルホキシド中):0.924、1.25、1.80、1.88、4.19、7.61、7.74、9.03)。DSCで分析を行ったところ、−55.9℃にガラス転移点のみが確認され、融点は観測されなかった。
(実施例2)
50mLフラスコにブチルイミダゾール100mg(0.805mmol),ブチル四角酸124.1mg(0.805mmol)、純水1mL、クロロホルム2mLを入れ、60℃で4時間攪拌を行った。反応後、クロロホルム10mlを加え、分液ロートで有機層を分離し、純水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、クロロホルムをエバポレーターで留去し、さらに60℃で真空ポンプを用いて48時間乾燥して常温で液体の有機塩2を得た。1H−NMRで構造を確認した(ケミカルシフト(ppm、重クロロホルム中):0.976−1.01、1.29−1.53、1.68、2.77、4.10、7.04、7.28、8.18)。DSCで分析を行ったところ、−68.1℃にガラス転移点のみが確認され、融点は観測されなかった。
(実施例3)
50mLフラスコに1−ブチル−3−メチルイミダゾリジウムブロミド100mg(0.456mmol)、メチル四角酸51.15mg(0.456mmol)、純水1mL、クロロホルム2mLを入れ、60℃で4時間攪拌を行った。反応後、純水10mLを加え、分液ロートで水層を分離し、クロロホルム10mLで3回、酢酸エチル10mLで3回、エーテル10mLで3回洗浄を行った。洗浄後の水層の水をエバポレーターで留去し、さらに60℃で真空ポンプを用いて48時間乾燥して常温で液体の有機塩3を得た。1H−NMRで構造を確認した(ケミカルシフト(ppm、重ジメチルスルホキシド中):0.932、1.28、1.79、1.93、3.88、4.20、7.74、7.81、9.18)。DSCで分析を行ったところ、6.6℃にガラス転移点のみが確認され、融点は観測されなかった。
(実施例4)
50mLフラスコに1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミド100mg(0.450mmol)、メチル四角酸50.44mg(0.450mmol)、純水1mL、クロロホルム2mLを入れ、60℃で4時間攪拌を行った。反応後、純水10mLを加え、分液ロートで水層を分離し、クロロホルム10mLで3回、酢酸エチル10mLで3回、エーテル10mLで3回洗浄を行った。洗浄後の水層の水をエバポレーターで留去し、さらに60℃で真空ポンプを用いて48時間乾燥して常温で液体の有機塩4を得た。1H−NMRで構造を確認した(ケミカルシフト(ppm、重ジメチルスルホキシド中):0.964、1.34、1.70、1.98、2.11、3.01、3.34、3.45)。DSCで分析を行ったところ、−59.0℃に融点が確認された。
実施例1〜4で得られた有機塩1〜4は、分子内に高反応性の官能基を有していないため、安定性に優れる有機塩となる。これらは常温で液体であるため、有機溶媒、潤滑油等に好適に利用できる。
(実施例5)
200mLナス型フラスコに1−ブチル−1−メチルピロリジニウムクロライド8.60g(48.4mmol)、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン(四角酸)5.50g(48.4mmol)、純水100gを仕込み、攪拌し、均一溶液とした後、水をエバポレーターにて留去した。残渣を、さらに120℃のオイルバスで加熱下に減圧乾燥したのち、酢酸エチル100gを加え、溶解させた後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥後、硫酸マグネシウムをろ過、酢酸エチルをエバポレーターで留去し、さらに100℃で真空ポンプを用いて8時間乾燥して常温で液体の有機塩5を得た。1H−NMR(ケミカルシフトで構造を確認した(ppm、重ジメチルスルホキシド中):0.924、1.32、1.68、2.10、3.05、3.39、3.53)。DSCで分析を行ったところ、−27.8℃にガラス転移点のみが確認され、融点は観測されなかった。

Claims (9)

  1. 2π芳香族性を有する有機アニオンと、該有機アニオンと静電的に等価の有機カチオンとからなることを特徴とする有機塩。
  2. 前記2π芳香族性を有する有機アニオンが、オキソカーボン分子から解離し得るカチオンを1個又は2個取り去って得られる有機アニオンである請求項1記載の有機塩。
  3. 前記2π芳香族性を有する有機アニオンが、下記式(1)
    Figure 2009196925
    (式中、X1、X2は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又はN−R11を表し、Zは、カルボニル基、チオカルボニル基、−C(NR12)−、置換基を有していてもよいアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。mは繰り返しの数であり、0〜10の整数を表わす。mが2以上である場合、複数あるZは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。Dは1価の基を表す。)
    で表される1価の有機アニオン、又は下記式(2)
    Figure 2009196925
    (式中、X3は酸素原子、硫黄原子又はN−R11を表す。ただし、R11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。X1、X2、Z、mは前記と同義である。)
    で表される2価の有機アニオンである、請求項1又は2に記載の有機塩。
  4. 前記2π芳香族性を有する有機アニオンが、
    前記式(1)で表される1価の有機アニオンにおいてmが1以上であり、1個以上あるZが、カルボニル基、チオカルボニル基及び−C(NR12)−(ただし、R12は、水素原子又は1価の有機基を表す。)からなる群から選ばれる基の有機アニオンであるか、
    前記式(2)で表される2価の有機アニオンにおいて、mが1以上であり、1個以上あるZが、カルボニル基、チオカルボニル基及び−C(NR12)−(ただし、R12は、水素原子又は1価の有機基を表す。)からなる群から選ばれる基の有機アニオンである、請求項3記載の有機塩。
  5. 前記2π芳香族性を有する有機アニオンが、
    前記式(1)で表される1価の有機アニオンにおいて、mが1以上であり、1個以上あるZがカルボニル基であり、X1及びX2がともに酸素原子である有機アニオンであるか、
    前記式(2)で表される2価の有機アニオンにおいて、mが1以上であり、1個以上あるZがカルボニル基であり、X1、X2及びX3が全て酸素原子である有機アニオンである、請求項3記載の有機塩。
  6. 前記2π芳香族性を有する有機アニオン及び前記有機カチオンがともに、ハロゲン原子を有さないイオンである、請求項1〜5の何れかに記載の有機塩。
  7. 示差走査型熱量分析(DSC)で求められる融点又は示差走査型熱量分析(DSC)で求められるガラス転移温度が、100℃未満である、請求項1〜6の何れかに記載の有機塩。
  8. イオン解離し得るカチオンを、1個又は2個取り去ることによって2π芳香族性を有する有機アニオンを生成する芳香族化合物と、
    イオン解離し得るアニオンを、1個又は2個取り去ることによって有機カチオンを生成する化合物とを、
    前記2π芳香族性を有する有機アニオンと、前記有機カチオンとが静電的に等価になるように溶媒中で混合することを特徴とする有機塩の製造方法。
  9. 前記有機カチオンを生成する化合物が、ハロゲンイオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンから選ばれるアニオンを解離して有機カチオンを生成する化合物である、請求項8記載の製造方法。
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