本発明は、極端紫外光源装置用レーザ光源装置、及びレーザ光源装置に関する。
例えば、レジストを塗布したウェハ上に、回路パターンの描かれたマスクを縮小投影し、エッチングや薄膜形成等の処理を繰り返すことにより、半導体チップが生成される。半導体プロセスの微細化に伴い、より短い波長の光が求められている。
そこで、13.5nmという極端に波長の短い光と縮小光学系とを使用する、半導体露光技術が研究されている。この技術は、EUVL(Extreme Ultra Violet Lithography:極端紫外線露光)と呼ばれる。以下、極端紫外光をEUV光と呼ぶ。
EUV光源としては、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)式の光源と、DPP(Discharge Produced Plasma)式の光源と、SR(Synchrotron Radiation)式の光源との三種類が知られている。
LPP式光源とは、ターゲット物質にレーザ光(レーザビーム)を照射してプラズマを生成し、このプラズマから放射されるEUV光を利用する光源である。DPP式光源とは、放電によって生成されるプラズマを利用する光源である。SR式光源とは、軌道放射光を使用する光源である。以上三種類の光源のうち、LPP式光源は、他の方式に比べてプラズマ密度を高くすることができ、かつ、捕集立体角を大きくできるため、高出力のEUV光を得られる可能性が高い。
そこで、高出力のドライバレーザ光を高い繰り返し周波数で得るために、MOPA(master oscillator power amplifier)方式に従って構成されるレーザ光源装置が提案されている(特許文献1)。
なお、表面形状をある程度自由に可変制御可能なディフォーマブルミラーを用いて、レーザ光の波面を整える技術は、知られている(特許文献2)。
特開2006−128157号公報
特開2003−270551号公報
概要
例えば、100W〜200W程度のEUV光を得るためには、ドライバレーザ光としての炭酸ガスレーザの出力を10〜20kW程度にする必要がある。そのような高出力のレーザ光を用いると、光路中の各種光学素子が光を吸収して高温となり、レーザ光の波面の形状や方向が変化する。なお、本明細書では、レーザ光の波面には、レーザ光の波面の形状と方向とが含まれるものとして述べる。
レンズやウインドウを高出力のレーザ光が通過すると、レンズやウインドウの形状や屈折率が発熱による温度上昇よって変化するため、レーザ光の波面が変化する。例えば、レーザ光の波面が変化すると、レーザ増幅器内の増幅領域にレーザ光を効率的に入射させることができないため、期待通りのレーザ出力を得ることができない。さらに、レーザ光の波面変化に応じて、チャンバ内に入射するレーザ光の焦点位置が変化するため、レーザ光をターゲット物質に効率的に照射することができず、これにより、EUV光の出力が低下する。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、レーザ光の方向及び波面の形状を所定の方向及び所定の波面の形状に補正することができるようにした、極端紫外光源装置用レーザ光源装置、及びレーザ光源装置を提供することにある。本発明の他の目的は、光路上に設定される複数箇所でレーザ光の方向及び波面の形状をそれぞれ補正することができ、かつ、各箇所での補正が互いに競合しないように制御することのできる、極端紫外光源装置用レーザ光源装置、及びレーザ光源装置を提供することにある。本発明の更なる目的は、後述する実施形態の記載から明らかになるであろう。
上記課題を解決するために、本発明に係る極端紫外光源装置用レーザ光源装置は、極端紫外光源装置に使用されるレーザ光源装置であって、レーザ光を出力するためのレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出力される前記レーザ光を、少なくとも一つ以上の増幅器によって増幅させるための増幅システムと、前記増幅システムにより増幅される前記レーザ光を、前記極端紫外光源装置のチャンバ内に入射させるための集光システムと、を備え、少なくとも前記増幅システムには、前記レーザ光の方向及び波面の形状を所定の方向及び所定の波面の形状に補正するための少なくとも一つ以上の第1補正部と、前記第1補正部による補正動作を制御するための少なくとも一つ以上の補正制御部とが設けられている。また、前記集光システムは、前記レーザ光に含まれる第1の偏光成分を吸収し、前記第1の偏光成分とは異なる第2の偏光成分を反射する第1のミラーを含むアイソレータ、を備える。
また、本発明に係るレーザ光源装置は、レーザ光を出力するためのレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出力される前記レーザ光を、少なくとも一つ以上の増幅器によって増幅させるための増幅システムと、前記増幅システムにより増幅される前記レーザ光を、極端紫外光源装置のチャンバ内に入射させるための集光システムと、を備え、少なくとも前記増幅システムには、前記増幅システム内のレーザ光の方向及び波面の形状を所定の方向及び所定の波面の形状に補正するための少なくとも一つ以上の第1補正部と、前記第1補正部による補正動作を制御するための少なくとも一つ以上の補正制御部とが設けられている。また、前記集光システムは、前記レーザ光に含まれる第1の偏光成分を吸収し、前記第1の偏光成分とは異なる第2の偏光成分を反射する第1のミラーを含むアイソレータ、を備える。
本発明によれば、少なくとも増幅システムにおいて、レーザ光の方向及び波面の形状を補正することができる。従って、熱によって増幅システム内の光学素子の屈折率分布が発生したり、形状が変形等した場合でも、レーザ光の方向及び波面の形状を整えることができ、増幅システムの増幅性能が低下するのを抑制できる。
集光システム内に第2補正部及び第2検出部を設けることにより、集光システムでもレーザ光の方向及び波面の形状を補正することができる。従って、所定の方向及び所定の波面の形状を有するレーザ光をチャンバ内のターゲット物質に照射させることができる。
第1補正部が前記増幅システム内に複数設けられている場合、補正制御部は、レーザ光の進行方向の上流側に位置するものから順番に、各第1補正部の補正動作をそれぞれ制御する。従って、レーザ光の上流側から順番に、その方向及び波面の形状を補正していくことができ、各補正動作同士が競合したりするのを防止できる。
また、増幅システム内の第1補正部による補正動作を先に制御し、次に、集光システム内の第2補正部の補正動作を制御することにより、レーザ光の増幅特性を安定化させた後で、そのレーザ光の集光特性を安定化することができる。
本発明の第1実施例に係るEUV光源装置の構成図。
可飽和吸収体の説明図。
可飽和吸収体の温度変化を示すグラフ。
波面補正器の構成図。
センサの模式図。
センサの別の模式図。
波面補正処理のフローチャート。
レーザコントローラがEUV光源コントローラに調整完了を通知する処理のフローチャート。
第2実施例に係るEUV光源装置の構成図。
波面補正処理のフローチャート。
第3実施例に係るEUV光源装置の構成図。
EUVチャンバの構成図。
アイソレータの構成図。
波面補正処理のフローチャート。
第4実施例に係るEUV光源装置の構成図。
第5実施例に係り、波面補正器の配置方法を示す説明図。
図16に続く説明図。
第6実施例に係り、波面曲率補正器の構成図。
第7実施例に係り、波面曲率補正器の構成図。
第8実施例に係り、波面曲率補正器の構成図。
第9実施例に係り、波面曲率補正器の構成図。
図21に続く構成図。
第10実施例に係り、波面曲率補正器の構成図。
図23に続く構成図。
第11実施例に係り、波面曲率補正器の構成図。
図25に続く構成図。
EUV光源装置の全体構成図。
第12実施例に係り、波面曲率補正器の構成図。
第13実施例に係り、角度補正器の構成図。
第14実施例に係り、波面補正器の構成図。
第15実施例に係り、波面補正器の構成図。
第16実施例に係り、波面補正器の構成図。
第17実施例に係り、波面補正器の構成図。
第18実施例に係り、波面補正器の構成図。
第19実施例に係り、センサの構成図。
第20実施例に係り、センサの構成図。
第21実施例に係り、センサの構成図。
第22実施例に係り、センサの構成図。
第23実施例に係り、センサの構成図。
第24実施例に係り、波面補正コントローラのブロック図。
第25実施例に係り、チャンバの要部を示す説明図。
第26実施例に係り、光学的センサ部の構成図。
第27実施例に係り、光学的センサ部の構成図。
干渉縞を示す説明図。
第28実施例に係り、光学的センサ部の構成図。
第29実施例に係り、光学的センサ部の構成図。
受光素子の構成図。
レーザ光のビーム形状と受光素子の出力との関係を示す説明図。
第30実施例に係り、光学的センサ部の説明図。
図49に続く説明図。
図50に続く説明図。
第31実施例に係り、アイソレータの構成図。
実施例の好ましい組合せの例を示す説明図。
第32実施例に係るEUV光源装置の構成図。
第33実施例に係るEUV光源装置の構成図。
第34実施例に係る蒸着装置の構成図。
第35実施例に係り、ミラーと波面曲率補正器の関係を示す説明図。
ミラーの背面図。
ミラーの断面図。
第36実施例に係るミラーの背面図。
ミラーの断面図。
第37実施例に係るミラーの断面図。
第38実施例に係るミラーの断面図。
実施形態
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態では、以下に述べるように、レーザ光の通過する光路上に、レーザ光の波面を補正するための補正手段(34,44)を少なくとも一つ以上設ける。補正手段により、レーザ光の進行方向及び波面の形状を整えることができる。なお、極端紫外光源装置に用いられるレーザ光源装置について説明するが、本発明は、極端紫外光源装置用レーザ光源装置以外のレーザ光源装置にも適用可能である。
図1〜図8に基づいて本発明の第1実施例を説明する。図1は、EUV光源装置1の全体構成を示す説明図である。なお、以下の各実施例に示す本発明の特徴的構成は、明示された組合せに限らず、種々の組合せが可能であり、そのような組合せも本発明の範囲に属する。
EUV光源装置1は、例えば、EUV光を発生させるチャンバ10と、チャンバ10にレーザ光を供給するためのレーザ光源装置2と、EUV光源コントローラ70とを備えて構成される。レーザ光源装置2は、例えば、レーザパルスの時間波形や繰り返し周波数を決定するレーザ発振器(Master Oscillator)20と、増幅システム30と、集光システム40と、波面補正コントローラ50と、レーザコントローラ60とを含んで構成される。EUV光源装置1は、EUV露光装置5にEUV光を供給する。
先にチャンバ10の概要を説明する。チャンバ10は、例えば、チャンバ本体11と、接続部12と、ウインドウ13と、EUV集光ミラー14と、ターゲット物質供給部15と、を備えている。
チャンバ本体11は、図外の真空ポンプにより真空状態に保たれる。チャンバ本体11には、例えば、デブリを回収するための機構等を設けることができる。
接続部12は、チャンバ10とEUV露光装置5との間を接続して設けられている。チャンバ本体11内で生成されたEUV光は、接続部12を介して、EUV露光装置5に供給される。
ウインドウ13は、チャンバ本体11に設けられている。レーザ光源装置2からのドライバレーザ光は、ウインドウ13を介して、チャンバ本体11に入射する。
EUV集光ミラー14は、EUV光を反射させて中間焦点(Intermediate Focus:IF)に集めるためのミラーである。中間焦点IFは、接続部12内に設定される。EUV集光ミラー14は、例えば、プラズマ発光点の像をIFに転写結像させるために、理想的に収差を発生させない回転楕円体のような凹面として構成される。EUV集光ミラー14の表面には、例えば、モリブデン膜とシリコン膜とから構成される多層膜が設けられており、これにより、波長13nm程度のEUV光を反射するようになっている。
ターゲット物質供給部15は、例えば、錫のようなターゲット物質を液体や固体あるいは気体として供給する。錫は、スタナン(SnH4)などの錫化合物として供給することも可能である。錫を液体として供給する場合は、純粋な錫を融点まで加熱して液化する方法の他に、錫を含む溶液または錫や錫化合物を含むコロイド溶液として供給する方法も可能である。本実施例では、ターゲット物質として、錫のドロップレットDPを例に挙げて説明するが、本発明は錫ドロップレットに限定されない。例えば、リチウム(Li)やキセノン(Xe)等の他の物質を用いてもよい。
チャンバ10内の動きを先に簡単に説明する。ドライバレーザ光は、入射用のウインドウ13を介して、チャンバ本体11内の所定位置で焦点を結ぶようになっている。その所定位置に向けて、ターゲット物質供給部15は、錫ドロップレットDPを投下する。錫ドロップレットDPが所定位置に到達する時期にタイミングを合わせて、レーザ光源装置2から、所定出力のドライバレーザ光L1が出力される。錫ドロップレットDPは、ドライバレーザ光L1によって照射されて、プラズマPLZとなる。プラズマPLZは、EUV光L2を放射させる。EUV光L2は、EUV集光ミラー14によって、接続部12内の中間焦点IFに集められ、EUV露光装置5に供給される。
次に、レーザ光源装置2の構成を説明する。レーザ光源装置2は、炭酸ガスパルスレーザ光源装置として構成されており、例えば、波長10.6μm、シングル横モード、繰り返し周波数100kHz、100〜200mJ、10kW〜20kWの、ドライバレーザ光L1をパルス出力する。
レーザ発振器20から出力されるレーザ光は、増幅システム30によって増幅され、集光システム40に送られる。集光システム40は、ドライバレーザ光L1をチャンバ10内に供給する。集光システム40は、例えば、反射ミラー41と、軸外放物凹面ミラー42と、リレー光学系43と、を備える。なお、以下の説明では、レーザ光の進行方向を基準として、発振器20側を上流側と呼び、チャンバ10側を下流側と呼ぶ。
増幅システム30は、例えば、リレー光学系31と、プリアンプ(前増幅器)32と、可飽和吸収体33と、波面補正器34と、メインアンプ(主増幅器)35と、センサ36と、を備える。以下、可飽和吸収体33をSA(Saturable Absorber)33と呼ぶ。以下の説明及び図面において、前増幅器をプリアンプ、主増幅器をメインアンプと記述する。なお、MOPA (Master Oscillator and Power Amprifier)を用いてレーザ光の出力を高めてもよい。
リレー光学系31は、レーザ発振器20から出力されるレーザ光でプリアンプ32内の増幅領域を効率よく満たすべく、レーザ発振器20から出力されるレーザ光のビームの広がり角度とビームの大きさを調整するための光学系である。リレー光学系31は、レーザ発振器20から出力されるレーザ光のビーム径を拡大させて、所定のビーム光束に変換させる。
プリアンプ32は、入射されたレーザ光を増幅して出射させる。プリアンプ32で増幅されたレーザ光は、SA33に入射する。SA33は、所定の閾値以上の光強度を有するレーザ光は通過させ、その所定の閾値未満のレーザ光は通過させないという機能を発揮する素子である。これにより、SA33は、チャンバ10から戻ってくるレーザ光(戻り光)やメインアンプからの寄生発振光や自励発振光を吸収して、プリアンプ32やレーザ発振器20の破損を防止する。さらに、SA33は、ペデスタルを抑制し、レーザ光のパルス波形の品質を高める役割も果たす。ペデスタルとは、メインパルスに時間的に近接して発生する、小さなパルスである。
図2は、SA33の構成例を示す。SA33は、例えば、図示しない水冷ジャケット付きのホルダ330と、ホルダ330に取り付けられている2枚のウインドウ332,333と、六フッ化硫黄ガス(SF6ガス)が流入する流入口334と、SF6ガスを流出させるための流出口335とを備える。
プリアンプ32で増幅されたレーザ光L1は、左側の入射用ウインドウ332を介して入射し、左側の出射用ウインドウ333を通過する。各332,333間の隙間に供給されるSF6ガスは、炭酸ガスレーザ光を吸収する働きがある。
図3は、SA33に生じる温度分布を示すグラフである。SF6ガスは、流入口334から各ウインドウ332,333間の隙間に流入し、閾値以下のレーザ光を吸収して、流出口335から流出する。これにより、SA33には、SF6ガスの流れ方向にシフトする温度分布が発生する。SA33のウインドウの温度分布が原因で、ウインドウの屈折率の分布が変化する。
その結果、SA33を通過するレーザ光L1は、図2中の破線L1eに示すように、基準の光軸AX1からずれた方向AX1eにシフトする。SA33を通過するレーザ光L1の波面(Wave Front)は、基準光軸AX1を保持したまま同心円状に変化するのではなく、軸AX1eに沿って曲がる。つまり、レーザ光L1は、SA33を通過することにより、そのレーザビームの方向がずれてしまい、さらに波面の形状も変化する。
進行方向や波面の形状のずれたレーザ光L1eを、そのままメインアンプ35に入射させても、期待通りの増幅作用は得られない。メインアンプ35の増幅領域を、レーザ光で効率よく満たすことができないためである。
その問題を解決するために、本実施例では、SA33とメインアンプ35との間に、「第1補正部」としての波面補正器34を設ける。以下の説明及び図面では、波面補正器をWFC(Wave Front Compensator)と表示する場合がある。
図4は、波面補正器34の原理を模式的に示す説明図である。図4の上側は、増幅システム30に加わる熱負荷が少ない場合を示す。図4の下側は、増幅システム30に加わる熱負荷が多い場合を示す。
波面補正器34は、角度補正器100と、波面曲率補正器200とを備える。角度補正器100は、レーザ光の角度(進行方向)を調節するための光学系である。波面曲率補正器200は、レーザ光の波面の曲率(ビームの広がり)を調節するための光学系である。具体的な構造例については、別の実施例として後述する。
角度補正器100は、例えば、平行に向かい合って配置される2枚の反射ミラー101,102を含んで構成される。各反射ミラー101,102は、図4の下側に示すように、反射ミラーのX軸(図4に垂直な軸)及びY軸(X軸と同一平面で直交する軸)をそれぞれ回動中心として、回動可能に設けられている。つまり、各反射ミラー101,102は、チルト及びローリングができるように取り付けられている。
熱負荷の少ない場合、レーザ光L1は、基準光軸に合致して進むため、各反射ミラー101,102の姿勢を変化させる必要はない。熱負荷の多い場合、レーザ光L1eは、基準光軸から外れて入射する。そこで、各反射ミラー101,102の姿勢を適宜変化させて、レーザ光の出射方向を基準光軸に合致させる。
波面曲率補正器200は、例えば、凸レンズ201と、凹レンズ202とによって形成される。各レンズ201,202の相対的位置関係を調整することにより、凹面波や凸面波を平面波に修正することができる。
「補正制御部」としての波面補正コントローラ50は、センサ36による計測結果に基づいて、目標値との偏差が解消するように、角度補正器100及び波面曲率補正器200を適宜駆動する。これにより、波面補正器34は、入射するレーザ光の角度及び波面の曲率を所定の角度及び所定の曲率に修正して、出射させる。波面補正器34は、メインアンプにより高効率で増幅するのに必要なビームの角度と波面の曲率となるようにレーザ光のビーム径を拡大させて出力し、所定のレーザビーム光束に変換させる。変換されたレーザ光は、メインアンプ35によって増幅される。
「第1検出部」としてのセンサ36は、メインアンプ35の下流側に設けられており、入射するレーザ光の角度や波面の曲率を検出する。センサ36は、レーザ光の角度や波面の曲率を直接的または間接的に計測できる構成であればよい。
センサ36の概要を図5,図6に基づいて説明する。センサ36の他の構成例は、別の実施例として後述する。図5の原理図に示すように、センサ36は、例えば、レーザ光L1を反射する反射ミラー300と、反射ミラー300を僅かに透過するレーザ光L1Lを計測する光学的センサ部360とを含んで構成される。
図6は、センサ36の一例を示す。レーザ光L1を高い反射率で反射する膜をコートした反射ミラー300は、ビームスプリッタ基板300Aと、ビームスプリッタ基板300Aを保持するための、図示しない水冷ジャケット付きホルダ300Bとを備える。
ビームスプリッタ基板300Aは、例えば、シリコン(Si)、セレン化亜鉛(ZnSe)、ガリウム砒素(GaAs)、ダイヤモンドのような物質から形成される。レーザ光L1の殆どは、ビームスプリッタ基板300Aの高反射膜により反射されるが、ごく僅かにビームスプリッタ基板300Aを透過するレーザ光L1Lがある。
ビームスプリッタ基板300Aを僅かに透過したレーザ光L1Lは、サンプル光として、光学的センサ部360に入射する。光学的センサ部360としては、例えば、レーザ光の強度分布を計測するためのビームプロファイラ、レーザデューティ及び光学素子の負荷を計測するためのパワーセンサ(カロリーメータやパイロセンサ等)、レーザ光の波面状態と方向とを同時に計測できる波面センサ等を使用できる。
さらに、後述するように、レーザ光の状態に関連するパラメータ(温度や運転指令値等)と、シミュレーションや実験結果等から得られるデータベースとを用いて、レーザ光の波面状態及び角度(方向)を予測してもよい。
次に、制御系について説明する。図1に示すように、EUV光源装置1は、波面補正コントローラ50と、レーザコントローラ60と、EUV光源コントローラ70とを備えている。
図7は、波面補正コントローラ50により実行される、波面補正処理を示すフローチャートである。本処理は、レーザ光源装置2が運転を開始する前の起動時に行われる。即ち、レーザ光源装置2の運転開始前の調整段階において、まず、ターゲットに照射する前に、例えば、図示しないシャッタ等を閉じて、EUVチャンバ10にレーザ光が入射しない状態にしてから、レーザを調整発振させる。そして、レーザ発振器20からシード光が出力されると、レーザ発振器20から下流のレーザビームラインについて、メインアンプ35の増幅効率が高く維持されるように波面や角度(方向)が調整される。なお、以下に述べる各フローチャートは、各処理の概要を示しており、実際のコンピュータプログラムと相違する場合がある。なお、いわゆる当業者であれば、図示されたステップの変更や削除、新たなステップの追加を行うことができるであろう。以下、レーザ光の方向を「角度」と呼ぶ場合がある。
波面補正コントローラ50は、センサ36から計測値を取得し(S10)、目標値と計測値との差分である偏差ΔDを算出する(S11)。波面補正コントローラ50は、ΔDの絶対値が所定の許容値DTh以下であるか否かを判定する(S12)。許容値DThは、例えば、レーザ光の増幅特性に影響を与えない程度の値として設定される。
目標値と計測値との差ΔDが許容値DTh以下の場合(S12:YES)、波面補正コントローラ50は、レーザコントローラ60にOK信号を出力する(S13)。OK信号とは、レーザ光の波面が所定の波面(曲率及び方向)に調整されたことを意味する、調整完了信号である。
これに対し、ΔDの絶対値が許容値DThを超えている場合(S12:NO)、波面補正コントローラ50は、レーザコントローラ60にNG信号を出力する(S14)。NG信号とは、レーザ光の波面が所定の波面に調整されていないことを意味する、調整未完了信号である。
波面補正コントローラ50は、波面補正器34に駆動信号を出力し、波面補正器34に補正動作を行わせる(S15)。波面補正器34は、駆動信号に応じて、角度補正器100及び波面曲率補正器200を動作させる。補正動作を一回ないし複数回実行することにより、レーザ光の波面は所定の波面に一致する。
図8は、レーザコントローラ60の動作及びEUV光源コントローラ70の動作を示すフローチャートである。レーザコントローラ60は、波面補正コントローラ50からOK信号を受領すると(S20:YES)、EUV光源コントローラ70に、レーザ光源装置2の調整が完了した旨を通知する(S21)。
EUV光源コントローラ70は、レーザコントローラ60からの調整完了通知を受領すると、ターゲット物質供給部15からチャンバ本体11に、ドロップレットDPを供給させる(S22)。
レーザコントローラ60は、ドロップレットDPの供給タイミングに合わせて、レーザ発振器20からレーザ光L1を出力させる。レーザ光L1は、増幅システム30によって増幅された後、集光システム40を介してチャンバ10に入射する。ドロップレットDPは、レーザ光L1に照射されることにより、プラズマPLZとなる。プラズマPLZから放出されるEUV光L2は、EUV集光ミラー14により中間焦点IFに集められて、EUV露光装置5に送られる。
上述の通り、本実施例では、レーザ発振器20から出力されるレーザ光を増幅するための増幅システム30内に、レーザ光の波面の曲率及び方向を調整するための波面補正器34と、レーザ光の波面の曲率及び方向を検出するためのセンサ36とを設ける。従って、本実施例では、波面補正器34によって、レーザ光源装置2の運転開始前に、レーザ光の波面の曲率及び方向(角度)を調整することができる。これにより、熱的負荷が高い運転状態においても、レーザ光の出力特性を安定化させることができる。
本実施例では、増幅システム30内でレーザ光の角度(方向)と波面の曲率を補正するため、集光システム40を介してチャンバ10に送られるレーザ光の集光特性も、ある程度安定に維持することができる。
このように、本実施例では、出力の安定したレーザ光を、チャンバ10内の所定位置(EUV集光ミラーの焦点位置かつターゲット)に集光することができる。従って、本実施例のEUV光源装置1は、高出力のEUV光を安定的に発生させることができる。
図9,図10に基づいて第2実施例を説明する。以下に述べる各実施例は、第1実施例の変形例である。従って、第1実施例との相違点を中心に説明する。本実施例では、集光システム40にも、波面補正を行うための機構(波面補正器44,センサ45,波面補正コントローラ50(2))を設ける。
図9は、本実施例によるEUV光源装置1の全体構成を示す説明図である。本実施例では、集光システム40内に、「第2補正部」としての第2波面補正器44と、「第2検出部」としての第2センサ45とが設けられている。
さらに、本実施例は、増幅システム30内でレーザ光を補正するための第1波面補正コントローラ50(1)に加えて、集光システム40内でレーザ光を補正するための第2波面補正コントローラ50(2)を備えている。
図10は、本実施例の動作を示すフローチャートである。本実施例では、以下に述べるように、上流側から順番にレーザ光の波面の曲率及び方向(角度)を修正する。まず、増幅システム30内の波面補正器34を制御する波面補正コントローラ50(1)は、センサ36から計測値を取得し(S30)、偏差ΔD1を算出する(S31)。
波面補正コントローラ50(1)は、偏差ΔD1の絶対値が許容値DTh1以下であるか否かを判定する(S32)。ΔD1の絶対値が許容値DTh1以下である場合(S32:YES)、波面補正コントローラ50(1)は、レーザコントローラ60にOK信号を出力する(S33)。
ΔD1の絶対値が許容値DTh1を上回っている場合(S32:NO)、波面補正コントローラ50(1)は、レーザコントローラ60にNG信号を出力する(S34)。波面補正コントローラ50(1)は、目標値と計測値との差を少なくさせるための補正動作の実行を、波面補正器34に指示する(S35)。
レーザコントローラ60は、波面補正コントローラ50(1)からOK信号を受領すると(S40:YES)、波面補正器44を管理する波面補正コントローラ50(2)に、前段の波面補正が完了した旨を通知する(S41)。この通知を、図10では「OK信号1」として示している。
波面補正コントローラ50(2)は、センサ45から計測値を取得し(S50)、目標値と計測値との差分であるΔD2を算出する(S51)。波面補正コントローラ50(2)は、前段の補正処理が完了した旨の通知をレーザコントローラ60から受領したか否かを判定する(S52)。
前段の波面補正コントローラ50(1)による波面補正が終了するまで(S52)、波面補正コントローラ50(2)は、S50及びS51を繰り返し実行する。前段の波面補正コントローラによる波面補正が終了すると(S52:YES)、波面補正コントローラ50(2)は、S51で算出されたΔD2の絶対値が許容値DTh2以下であるか否かを判定する(S53)。
ΔD2の絶対値が許容値DTh2以下の場合(S53:YES)、波面補正コントローラ50(2)は、レーザコントローラ60にOK信号を出力する(S54)。ΔD2の絶対値が許容値DTh2を上回っている場合(S53:NO)、波面補正コントローラ50(2)は、波面補正器44に駆動信号を出力して、レーザ光の波面の曲率及び方向(角度)を補正するための動作を行わせる(S56)。
レーザコントローラ60は、第2波面補正コントローラ50(2)からOK信号を受領すると(S42:YES)、レーザ光源装置2の調整が完了した旨を、EUV光源コントローラ70に通知する(S43)。
このように、本実施例では、上流側(増幅システム内)での波面補正処理の終了を確認した後に、下流側(集光システム内)での波面補正処理を行う。従って、波面補正コントローラ50(1)による波面補正と波面補正コントローラ50(2)による波面補正とが互いに競合して、十分な波面補正を行うことができなかったり、波面補正に失敗したりするのを防止できる。
本実施例は、第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、集光システム40においてもレーザ光の波面補正を行うため、集光性能をより一層安定化させることができる。
図11〜図14に基づいて第3実施例を説明する。本実施例では、増幅システム30内のアンプ32(1),32(2),35(1),35(2)に、波面補正器34(1),34(2),34(3),34(4)を対応付けて、レーザ光を増幅する度にレーザ光の波面補正を行う。
図11は、本実施例によるEUV光源装置1の全体構成図である。本実施例では、プリアンプとして、2台のスラブ型プリアンプ32(1),32(2)を用いる。レーザ光は、スラブ型プリアンプ32(1),32(2)の有するジグザク光路を進むことにより、増幅される。プリアンプが複数設けられるのと対応して、複数のメインアンプ35(1),35(2)が設けられている。つまり、MO20から出力されたパルス光は、複数のプリアンプによって増幅される。そして、増幅されたパルス光は、複数のメインアンプを透過することによって、さらに増幅される。パルス光が増幅されるように、各アンプは直列に配置されている。
レーザ発振器20の出力側には、空間横モードを改善するための空間フィルタ37が設けられている。さらに、プリアンプ32(1)の出口にはSA33(1)が設けられ、別のプリアンプ32(2)の出口にはSA33(2)が設けられている。
第1のSA33(1)の下流側(レーザ光出射側)には、波面補正器34(1)及びセンサ36(1)が設けられている。第2のSA33(2)の下流側には、波面補正器34(2)及びセンサ36(2)が設けられている。
センサ36(2)を通過したレーザ光は、反射ミラー38(1),38(2)でそれぞれ反射されて、波面補正器34(3)に入射される。波面補正器34(3)は、メインアンプ35(1)の上流側(レーザ光入射側)に設けられている。波面補正器34(3)に対応するセンサ36(3)は、メインアンプ35(1)の下流側に設けられている。
最後のメインアンプ35(2)の上流側には、波面補正器34(4)が設けられており、そのメインアンプ35(2)の下流側には、センサ36(4)が設けられている。
第2実施例で述べたと同様に、集光システム40内にも、波面補正器44及びセンサ45が設けられている。さらに、本実施例では、反射ミラー41(1)と反射ミラー41(2)との間に、偏光分離型アイソレータ46を設けている。
増幅システム30及び集光システム40における、レーザ光の様子を説明する。まず最初に、レーザ発振器20から出力されたレーザ光は、空間フィルタ37を透過することにより、空間横モードが改善される。空間横モードの改善されたレーザ光は、スラブ型プリアンプ32(1)の入射ウインドウに入射し、2つの凹面ミラーの間をジグザグに通過しながら増幅され、出射ウインドウから出射される。
プリアンプ32(1)により増幅されたレーザ光は、SA33(1)を通過する。これにより、そのレーザ光から、所定の閾値以下のレーザ光が取り除かれる。SA33(1)を通過すると、図2で説明したように、レーザ光の波面の曲率や方向(角度)が変化する。
そこで、SA33(1)の影響を受けたレーザ光を、波面補正器34(1)によって補正させる。波面補正コントローラ(WFC1-C)50(1)は、センサ36(1)からの計測値に基づいて波面補正後のレーザ光の状態を検出し、レーザ光の波面の曲率及び角度が所定値となるように、波面補正器34(1)を制御する。
波面補正器34(1)により補正されたレーザ光は、2つめのプリアンプ32(2)に入力されて増幅された後、SA33(2)を通過する。SA33(2)を通過したレーザ光は、上記同様に、波面補正器34(2)により波面補正される。波面補正コントローラ(WFC2-C)50(2)は、センサ36(2)の計測値に基づいて、レーザ光の波面の曲率及び角度が所定値となるように、波面補正器34(2)に駆動信号を出力する。
波面補正器34(2)により補正されたレーザ光は、2つの反射ミラー38(1),38(2)を介して、波面補正器34(3)に入射する。波面補正コントローラ50(3)は、メインアンプ35(1)の出口側に設けられているセンサ36(3)からの計測値に基づいて、波面補正器34(3)を制御する。波面補正コントローラ(WFC3-C)50(3)は、メインアンプ35(1)のレーザ増幅領域をレーザ光で効率よく満たすことのできる波面を得るべく、波面補正器34(3)を作動させる。
波面補正器34(3)により補正されたレーザ光は、メインアンプ35(1)及びセンサ36(3)を通過して、波面補正器34(4)に入射する。波面補正器34(3)について述べたと同様に、波面補正コントローラ(WFC4-C)50(4)は、メインアンプ35(2)の出口側に設けられているセンサ36(4)からの計測値に基づいて、メインアンプ35(2)に入射されるレーザ光の波面の曲率及び角度が所定値となるように、波面補正器34(4)を制御する。
このように、本実施例では、増幅システム30において、レーザ光を合計4回増幅させると共に、そのレーザ光の波面の曲率及び角度を補正する。これにより、最終段のメインアンプ35(2)から出射される高出力のレーザ光を、安定化させる。
増幅システム30から出力されるレーザ光は、集光システム40内の波面補正器44に入力される。波面補正コントローラ(WFC5-C)50(5)は、チャンバ10Aのウインドウ13の手前に設けられているセンサ45からの信号に基づいて、波面補正器44による波面補正を行わせる。これにより、所定の平面波を有するレーザ光が得られる。
波面補正器44により補正されたレーザ光は、偏光分離型のアイソレータ46を通過し、反射ミラー41(2)に入射する。なお、アイソレータ46については、図13で後述する。反射ミラー41(2)で反射されたレーザ光は、センサ45を介してチャンバ10Aのウインドウ13に入射する。
図12は、本実施例によるチャンバ10Aの構成を示す説明図である。チャンバ10Aは、2つの領域11(1),11(2)に大別される。一方の領域11(1)は、レーザ光源装置2から入射するレーザ光を整えるための集光領域である。他方の領域11(2)は、レーザ光をドロップレットDPに照射してEUV光を発生させるためのEUV発光領域である。
2つの領域11(1),11(2)の間は壁によって仕切られている。集光領域11(1)とEUV発光領域11(2)とは、各領域11(1),11(2)を仕切る隔壁に形成された小孔を介して連通する。集光領域11(1)内の圧力を、EUV発光領域11(2)内の圧力よりも僅かに高く設定することもできる。これにより、EUV発光領域11(2)内で発生したデブリが集光領域11(1)に侵入するのを防止できる。
ウインドウ13から集光領域11(1)に入射したレーザ光は、軸外放物凸面ミラー18で反射されて、軸外放物凹面ミラー16(1)に入射する。レーザ光は、ミラー18及びミラー16(1)で反射されることにより、所定のビーム径を備える。
所定のビーム径に設定されたレーザ光は、反射ミラー17に入射して反射され、他の軸外放物凹面ミラー16(2)に入射する。軸外放物凹面ミラー16(2)で反射されたレーザ光は、EUV発光領域11(2)内に入り、EUV集光ミラー14の穴部14Aを介して、ドロップレットDPを照射する。
なお、各アンプ32(1),32(2),35(1),35(2)の備えるウインドウや、各SA33(1),33(2)の備えるウインドウや、チャンバ10Aのウインドウ13等のように、レーザ光が通過するウインドウは、ダイヤモンドのような特性を備える材料から形成されるのが好ましい。
ダイヤモンドはCO2レーザの波長10.6μmの波長に対して透過性があり、かつ、熱伝導率が高い。そのため、大きな熱負荷が加わった場合でも、温度分布が発生しにくいので、形状や屈折率が変化しにくい。従って、ダイヤモンド製のウインドウを通過するレーザ光は、その波面の曲率や角度が変化しにくい。
しかし、ダイヤモンドは一般的に高価であるから、全てのウインドウをダイヤモンド製ウインドウとするのは、コストの点で難しいかも知れない。コスト面も考慮するのであれば、熱負荷の比較的大きい素子に使用されているウインドウにダイヤモンド製ウインドウを用いることができる。このレーザシステムではSA33を除いて、下流側になればなるほど熱負荷が大きくなるので、例えば、メインアンプ35の両ウインドウや、EUVチャンバ10Aのウインドウには、比較的大きな熱負荷が加わるため、ダイヤモンド製ウインドウを用いるとよい。さらに、SA33はCO2レーザ光を吸収するため、熱負荷が大きくなる。そこで、SA33には、ビームの上流側に設けられているか下流側に設けられているかに関係なく、ダイヤモンド製のウインドウを用いるのがよい。
図13は、アイソレータ46の構成例を示す説明図である。アイソレータ46は、例えば、ヒートシンク460を備える第1ミラー461と、第2ミラー462と、第3ミラー463とを備えている。第3ミラー463で反射されたレーザ光は、反射ミラー41(2)及びウインドウ13を介して(図12参照)、チャンバ10A内のレーザ光を集光するための集光光学系が設置された集光領域11(1)に入射する。
第1ミラー461は、その表面に設けられた誘電体多層膜により、P偏光を透過させ、S偏光のみを反射させる。第1ミラー461は、P偏光は基板に吸収されてヒートシンク460により冷却される。レーザ光はS偏光として、第1ミラー461に入射する。
第1ミラー461で反射されたS偏光のレーザ光は、第1ミラー461に斜め方向に対向して設けられている第2ミラー462に入射する。第2ミラー462の表面には、π/2の位相差を発生させるλ/4膜が形成されている。従って、レーザ光は、第2ミラー462で反射されることにより、円偏光に変換される。
円偏光のレーザ光は、第3ミラー463に入射する。第3ミラー463には、P偏光及びS偏光を高い反射率で反射させる膜がコートされている。第3ミラー463で反射されたレーザ光は、レーザ光を集光するための集光光学系が設置された集光領域11(1)を経由してドロップレットに集光照射してプラズマPLZを発生させる。
プラズマPLZで反射されたレーザ光は、逆回りの円偏光として、照射時と同一の光路を戻る。その円偏光の戻り光は、第3ミラー463で反射されて、第2ミラー462に入射する。第2ミラー462のλ/4膜で反射されることにより、レーザ光は、P偏光に変換される。
P偏光のレーザ光は、第1ミラー461に入射する。第1ミラー461に入射したP偏光のレーザ光は、第1ミラー461の膜を透過し、ミラーの基板に吸収されて熱に変わる。その熱は、ヒートシンク460により放熱される。従って、プラズマPLZで反射されて戻ってくるレーザ光が、アイソレータ46の入口側に戻るのを防止できる。これにより、ドライバレーザ光L1の戻り光による自励発振を防止することができる。
図13に示すような反射光学系のアイソレータ46を用いることにより、アイソレータ46を通過するレーザ光に生じる、波面の歪みを、透過光学系のアイソレータを用いる場合よりも少なくすることができる。
図14は、本実施例による動作の概要を示すフローチャートである。第2実施例で述べたように、複数の波面補正器が設けられている場合は、上流側の波面補正器から順番に、波面補正を行う。
まず最初に、波面補正コントローラ50(1)は、最も上流側に位置する波面補正器34(1)を用いて最初の波面補正を行い(S35)、補正が完了した旨をレーザコントローラ60に通知する(S32)。
次に、波面補正コントローラ50(2)は、前段の波面補正コントローラ50(1)から完了通知が出されたことを確認した後(S52)、波面補正器34(2)を用いて2番目の波面補正を実行させる(S56)。波面補正コントローラ50(2)は、レーザコントローラ60に波面補正が完了した旨を通知する(S54)。
同様に、さらに次の波面補正コントローラ50(3)は、前段の波面補正コントローラ50(2)から完了通知が出されたことを確認して(S62)、波面補正器34(3)を用いて3番目の波面補正を実行させる(S66)。波面補正コントローラ50(3)は、波面補正が完了した旨をレーザコントローラ60に通知する(S64)。
同様に、波面補正コントローラ50(4)は、前段の波面補正コントローラ50(3)から完了通知が出されたことを確認して(S72)、波面補正器34(4)を用いて4番目の波面補正を行わせる(S76)。波面補正コントローラ50(4)は、レーザコントローラ60に、波面補正が完了した旨を通知する(S74)。
最後の波面補正コントローラ50(5)は、前段の波面補正コントローラ50(4)から完了通知が出されていることを確認した後(S82)、波面補正器44を用いて最後の波面補正を行わせる(S86)。波面補正コントローラ50(5)は、波面補正が完了した旨をレーザコントローラ60に通知する(S84)。
レーザコントローラ60は、各波面補正コントローラ50(1)〜50(5)から、波面補正が完了した旨の完了通知を順番に受け取る。レーザコントローラ60は、全ての完了通知を受領すると、EUV光源コントローラ70に、レーザ光源装置2の調整が完了した旨を通知する。
このように構成される本実施例も、第1,第2実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、増幅システム30内の各アンプ32(1),32(2),35(1),35(2)に波面補正器34(1)〜34(5)を対応付け、レーザ光が適切な波面の曲率及び角度で各アンプに入射させる。従って、第1,第2実施例よりもさらに、レーザ光を安定して増幅させることができる。
図15に基づいて第4実施例を説明する。本実施例では、合計4台のプリアンプ32(1)〜32(4)と、合計2台のメインアンプ35(1),35(2)を備える。なお、本実施例では、第3実施例に比べて、SA33は1台だけ設けられている。
本実施例の増幅システムは、上流側から順番に、空間フィルタ37、リレー光学系31(1)、プリアンプ32(1)、リレー光学系31(2)、プリアンプ32(2)、SA33、波面補正器34(1)、センサ36(1)、波面補正器34(2)、プリアンプ32(3)、センサ36(2)、波面補正器34(3)、プリアンプ32(4)、センサ36(3)、反射ミラー38(1)、反射ミラー38(2)、波面補正器34(4)、メインアンプ35(1)、センサ36(4)、波面補正器34(5)、メインアンプ35(2)、センサ36(5)を備えている。
波面補正器34(1)は、2つのプリアンプ32(1),32(2)とSA33とを通過するレーザ光を補正する。波面補正器34(1)に対応するセンサ36(1)は、波面補正器34(1)の下流側に設けられている。波面補正器34とセンサ36と波面変化の生じる要素(SA、プリアンプ、メインアンプ)の、位置関係の変形例については、図16,図17で後述する。
波面補正器34(2)は、プリアンプ32(3)を通過するレーザ光を補正する。同様に、波面補正器34(3)は、プリアンプ32(4)を通過するレーザ光を補正する。波面補正器34(4)は、メインアンプ35(1)を通過するレーザ光を補正する。波面補正器34(5)は、メインアンプ35(2)を通過するレーザ光を補正する。
このように構成される本実施例は、第3実施例と同様に、上流側の波面補正器を順番に用いて、レーザ光の波面の曲率及び角度を補正する。本実施例も第3実施例と同様の効果を奏する。
さらに、本実施例では、上流側の2台のプリアンプ32(1),32(2)及びSA33によって波面の歪んだレーザ光を、1台の波面補正器34(1)で補正させる。上流側は、下流側に比べて熱負荷が少ないため、波面変化を発生させうる複数の要素(32(1),32(2),33)を、1つの波面補正器34(1)で担当させることも可能である。これにより、レーザ光源装置2の製造コストを低減できる。なお、以下の説明では、波面変化を発生させ得る要素を、波面変化発生部と呼ぶ場合がある。
図16,図17に基づいて第5実施例を説明する。本実施例では、波面補正器34とセンサ36と波面変化発生部(32,35,33等)の位置関係の変形例を説明する。波面補正器には、増幅システム内の波面補正器34と、集光システム40内の波面補正器44とがあるが、以下の説明では、波面補正器34に代表させて説明する。
熱負荷により、波面に変化を発生させ得る波面変化発生部として、プリアンプ32,メインアンプ35,SA33、リレー光学系31、反射ミラー、偏光素子、リターダ、その他各種光学素子を挙げることができる。ここでは、説明の便宜上、波面変化発生部として、主に、プリアンプ32,メインアンプ35,SA33を例に挙げて説明する。
図16(a)は、波面変化発生部32,35,33の上流側に波面補正器34を配置し、波面変化発生部32,35,33の下流側にセンサ36を配置する構成を示す。レーザ光は、波面補正器34により補正された後で、センサ36に入力される。波面補正コントローラ50は、センサ36により計測されるレーザ光の特性(波面の曲率や角度)が所定の特性となるように、波面補正器34を制御する。
図16(b)は、波面変化発生部32,35,33の下流側に、波面補正器34とセンサ36とを配置した場合を示す。波面補正器34は、波面変化発生部32,35,33とセンサ36との間に設けられる。
レーザ光は、リレー光学系31及び波面変化発生部32,35,33を通過した後で、波面補正器34に入射する。波面補正コントローラ50は、センサ36により検出されるレーザ光特性(ビーム特性とも呼ぶ)が所定の特性となるように、波面補正器34を制御する。
図16(c)は、波面補正器34の上流側に、波面補正器34及びセンサ36を配置する構成を示す。波面補正器34と波面変化発生部33,35,32との間に、センサ36が設けられる。波面補正コントローラ50は、センサ36により検出されるレーザ光特性が所定の特性となるように、波面補正器34を制御する。
図16(c)では、波面補正コントローラ50は、波面変化発生部32,33,35で生じうる波面の歪みを予測して、レーザ光が波面補正器34及び波面変化発生部32,33,35を透過したときに正常な波面に戻るように、波面補正器34を制御する。
図17に示すように、複数の波面補正器34、または、複数のセンサ36を設ける構成でもよい。図17(a)に示すように、波面変化発生部32,33,35の上流側及び下流側にセンサ36(1),センサ36(2)をそれぞれ配置し、最上流に波面補正器34を配置する。
波面補正コントローラ50は、センサ36(1)により検出されるレーザ光特性とセンサ36(2)により検出されるレーザ光特性とに基づいて、各センサ36(1),36(2)のそれぞれにおいて所定特性が計測されるように、波面補正器34を制御する。
図17(b)では、波面変化発生部32,33,35の上流側及び下流側に、波面補正器34及びセンサ36をそれぞれ配置する。波面補正器34(1)及びセンサ36(1)は、波面変化発生部32,33,35の上流側に設けられる。波面補正器34(2)及びセンサ36(2)は、波面変化発生部32,33,35の下流側に設けられる。
センサ36(1)を通過したレーザ光は、波面変化発生部32,33,35を透過した後に、波面補正器34(2)に入力され、さらに、波面補正器34(2)を透過して、センサ36(2)に入力される。波面補正コントローラ50は、センサ36(1)及び36(2)のそれぞれの位置で計測されるレーザ光特性が、それぞれの位置における所定特性となるように、波面補正器34(1),34(2)を制御する。
図18に基づいて第6実施例を説明する。本実施例では、波面曲率補正器200を透過光学系で構成する場合を説明する。図18に示すように、凸レンズ201と、凹レンズ202とを用いて、波面曲率補正器200を構成することができる。
図18(a)は、入力された平面波を平面波として出力する様子を示す。凸レンズ201の焦点位置と凹レンズ202の焦点位置とが共焦点cfで一致するのであれば、レーザ光が、平面波の状態で凸レンズ201を透過すると、凹波面に変換される。その凹波面のレーザ光が凹レンズ202を透過すると、平面波に変換される。
図18(b)は、凸面波を平面波に変換する様子を示す。凸レンズ201は、図18(a)に示す位置よりも上流側(図18中左側)に移動している。凸レンズ201の焦点位置F1と凹レンズの焦点位置F2とは、レーザ光の光軸上にそれぞれ位置し、凸レンズ201の焦点F1の方が上流側に位置する。
波面変化発生部32,33,35における熱の影響によって、レーザ光が凸面波に変化した場合、そのレーザ光は、発散光の状態で凸レンズ201に入射し、凸レンズ201により凹面波に変化される。凹面波に変換されたレーザ光は、凹レンズ202を透過することにより、平面波に変換される。
図18(c)は、凸面波を平面波に変換する様子を示す。凸レンズ201の焦点位置F1と凹レンズ202の焦点位置F2とは同一の光軸上にあり、焦点位置F2は焦点位置F1よりも上流側に配置される。凸面波のレーザ光が凸レンズ201に入射すると凹面波に変換される。その凹面波のレーザ光は、凹レンズ202を通過することにより、平面波に変換される。
図18(d)は、2つの凸レンズ201,203を用いて波面曲率補正器200Aを構成する例を示す。凸レンズ201は、1軸ステージ204によって、図18中の左右方向(光軸方向)に移動可能となっている。
平面波(平行光)で入力されるレーザ光を、平面波(平行光)で出力させる場合、凸レンズ201の焦点位置と凸レンズ203の焦点位置とが一致するように、凸レンズ201の位置が設定される。
熱負荷により、レーザ光が収束光(凹波面)となった場合、1軸ステージ204によって、凸レンズ201を光軸上の下流側位置20IRに移動させる。逆に、レーザ光が発散光(凸波面)となった場合、1軸ステージ204によって、凸レンズ201を光軸上の上流側位置201Lに移動させる。
図19に基づいて第7実施例を説明する。本実施例では、波面曲率補正器200Bを反射型光学系として構成する場合の一例を説明する。波面曲率補正器200Bは、2枚の反射ミラー205(1),205(2)と、2枚の軸外放物凹面ミラー206(1),206(2)とを備えている。図19中の上側に位置する反射ミラー205(1)及び軸外放物凹面ミラー206(1)は、プレート207に取り付けられている。プレート207は、図19中の上下方向に移動可能である。各ミラー205(1),206(1)は、プレート207と共に上下動する。
図19(a)は、平行光(平面波)として入力されたレーザ光を、平行光(平面波)のままで出力する場合の配置である。この場合、軸外放物面凹面ミラー206(1)の焦点位置と軸外放物面凹面ミラー206(2)の焦点位置とを一致させて、共焦点cfの状態とする。
レーザ光は、図19中左側(上流側)から反射ミラー205(2)に入射して反射され、もう一つの反射ミラー205(1)に入射する。その反射ミラー205(1)により反射されたレーザ光は、軸外放物凹面ミラー206(1)に入射する。そのレーザ光は、軸外放物凹面ミラー206(1)によって45度の反射角度で反射され、焦点位置cfに集まる。レーザ光は、焦点位置cfから広がって、軸外放物凹面ミラー206(2)に入射し、45度の反射角度で反射される。
図19(b)は、収束光(凹波面)として入力されるレーザ光を、平行光(平面波)に変換して出力する場合の配置である。この場合、プレート207を下側に移動させて、軸外放物面凹面ミラー206(1)の焦点位置fを光軸上の下流側に移動させる。これにより、軸外放物凹面ミラー206(1)の焦点位置と軸外放物面凹面ミラー206(2)の焦点位置とを光軸上で一致させる。
なお、レーザ光が発散光(凸波面)として入力される場合は、プレート207を図19中の上側に移動させる。
このように構成される波面曲率補正器200Bでは、プレート207に反射ミラー205(1)及び軸外放物凹面ミラー206(1)を固定して、両ミラー205(1),206(1)を光軸上に(図19中の上下方向に)同時に移動させる。これにより、本実施例では、入力光の光軸と出力光の光軸とを一致させて、波面の曲率を補正できる。
さらに、本実施例の波面曲率補正器200Bは、反射型光学系として構成されるため、レーザ光が波面曲率補正器200Bを通過した場合でも、熱による波面変化を少なくすることができる。これにより、高出力のレーザ光が使用された場合でも、高精度に波面の曲率を補正することができる。
図20に基づいて第8実施例を説明する。本実施例の波面曲率補正器200Cは、軸外放物凹面ミラー206と、軸外放物凸面ミラー208と、2枚の反射ミラー205(1),205(2)とを含む反射光学系から構成される。
軸外放物凹面ミラー206及び反射ミラー205(1)は、上下動可能なプレート207に取り付けられている。さらに、軸外放物凸面ミラー208の焦点位置と軸外放物凹面ミラー206の焦点位置は、cfで一致するように配置されている。
平行波面のレーザ光は、軸外放物凸面ミラー208により反射され、発散光として軸外放物凹面ミラー206に入射し、平面波に変換される。平面波のレーザ光は、各反射ミラー205(1),205(2)で反射されて出力される。第7実施例と同様に、プレート207を上下に移動させることにより、入力されたレーザ光の波面を平面波に補正して出力させることができる。
このように構成される本実施例も第7実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、軸外放物面の凹面206と軸外放物面の凸面208とを組み合わせることにより、両軸外放物面ミラー間の距離を短くできる。従って、第7実施例に比べて、全体寸法を小型化できる。
図21,図22に基づいて第9実施例を説明する。本実施例では、波面曲率補正器200D,200Eを、一つの凸面ミラー209と一つの凹面ミラー210とをZ型に配置することにより構成する。
図21は、上流側の球面凸面ミラー209と下流側の球面凹面ミラー210とをZ型に配置して構成される波面曲率補正器200Dを示す。例えば、発散光(凸波面)のレーザ光が凸面ミラー209に入射すると、凸面ミラー209は、3度以下程度の小さな入射角度αでレーザ光を反射する。反射されたレーザ光は、凹面ミラー210に入射角度αで入射し、平行光(平面波)に変換されて出力される。
例えば、図21中に矢印で示すように、凹面ミラー210の位置を、凸面ミラー209の反射光軸に沿って移動させることにより、レーザ光の波面を平面波に変換することができる。
図22は、上流側の凹面ミラー210と下流側の凸面ミラー209とをZ型に配置して構成される波面曲率補正器200Eを示す。例えば、発散光(凸波面)のレーザ光が凹面ミラー210に入射すると、凹面ミラー210は、小さな入射角度α(例えば3度以下)でレーザ光を反射する。反射されたレーザ光は、凸面ミラー209に入射角度αで入射し、平行光(平面波)に変換される。例えば、凸面ミラー209の位置を、凹面ミラー210の反射光軸に沿って移動させることにより、レーザ光の波面の曲率を平面波に変換することができる。
このように本実施例では、凸面ミラー209と凹面ミラー210とから波面曲率補正器を構成できるため、製造コストを低減できる。また、反射光学系のため、レーザ光が波面曲率補正器を通過する際に生じる波面変化を少なくできる。
本実施例では、出力されるレーザ光の光軸が、入力されるレーザ光の光軸から平行に移動する。従って、本実施例に、出力光の光軸を入力光の光軸に一致させるための光学系を追加してもよい。
図23,図24に基づいて第10実施例を説明する。本実施例では、レンズとミラーとから波面曲率補正器200F,200Gを構成する場合を説明する。
図23は、凹レンズ211Lと凹面ミラー211Mとから、波面曲率補正器200Fを構成する場合を示す。例えば、収束光(凹波面)のレーザ光が凹レンズ211Lに入射すると、発散光(凸波面)に変換される。その発散光のレーザ光は、凹面ミラー211Mに入射し、平行光として反射される。
ここで、凹面ミラー211Mが軸外放物凹面ミラーの場合、その軸外放物凹面ミラーの入射角度となるように設置される。凹面ミラー211Mが球面ミラーの場合は、波面収差を小さくするために、入射角度が小さい角度(5度以下)に設定される。凹レンズ211Lを光軸に沿って移動させることにより、入射されるレーザ光の波面を補正できる。
図24は、凸レンズ212Lと凸面ミラー212Mとから波面曲率補正器200Gを構成する場合を示す。発散光(凸波面)のレーザ光が凸レンズ212Lに入射すると、そのレーザ光は収束光(凹波面)となり、凸面ミラー212Mに入射する。レーザ光は、凸面ミラー212Mにより平行光として反射される。
凸面ミラー212Mが軸外放物凸面ミラーの場合、その軸外放物凸面ミラーの入射角度となるように設定される。凸面ミラー212Mが球面ミラーの場合、波面収差を小さくするために、入射角度は小さい角度(5度以下)に設定される。凸レンズ212Lを光軸に沿って移動させることにより、レーザ光の波面の曲率を補正できる。
このように構成される本実施例では、入力されるレーザ光の光軸と出力されるレーザ光の光軸とが一致しており、前記第9実施例に比べて有利である。さらに、本実施例では、透過光学素子であるレンズを1枚だけ使用するので、レンズを2枚使用する第6実施例(図18)に比べて、熱による波面変化を小さくできる。
図25〜図27に基づいて第11実施例を説明する。本実施例では、波面補正コントローラ50からの制御信号によって、その反射面の曲率を可変に制御できる、可変ミラーを用いる。そのような可変ミラーを、本実施例では、VRWM(Variable Radius Wave front Mirror)と呼ぶ。
本実施例の波面曲率補正器200Hは、VRWMから構成される。図25(a),図26(a)は、平面波(平行光)として入射するレーザ光を、平面波(平行光)として出射させる場合を示している。平面波を平面波に変換する場合、VRWMの表面はフラットになるように制御される。
図25(b)は、凸面(発散光)のレーザ光を、平面波(平行光)のレーザ光に変換する場合を示す。この場合、VRWMが凹面となるように、その形状を制御する。
図25(c)は、凹面(収束光)のレーザ光を、平面波(平行光)のレーザ光に変換する場合を示す。この場合、VRWMが凸面となるように、その形状を制御する。
図26(b)は、平面波を凹面の球面波に変換する場合を示す。平面波を凹面の球面波に変換すべく、VRWMの表面は、凹面のトロイダル形状となるように制御される(入射角度が45度程度の場合)。これにより、VRWMで反射されたレーザ光は、焦点距離Fに集まる。トロイダル形状のVRWM表面で反射された直後の球面波は、曲率半径Rを有する凹面の球面波となる。焦点距離Fは、球面波の曲率半径Rと等しい。
図26(c)は、平面波を凸面の球面波に変換する場合を示す。平面波を凸面の球面波に変換すべく、VRWMの表面は、凸面のトロイダル形状となるように制御される(入射角度が45度程度の場合)。VRWMで反射された凸面波は、焦点距離−Fの位置の点光源から発光した波面となる。トロイダル形状のVRWM表面で反射された直後の球面波は、曲率半径−Rの球面波となる。焦点距離−Fは、波面の曲率半径−Rと等しい。
このように構成される本実施例では、VRWMだけで波面曲率補正器200Hを構成できるため、部品点数を少なくしてコンパクトに形成することができ、かつ、一回の反射で補正できるため効率も高い。
さらに、本実施例の波面曲率補正器200Hは、入射するレーザ光の光軸を45度に変化させて出射させることができる。従って、図27に示すように、レーザ光の光路を45度変化させる位置に、波面曲率補正器200Hを用いることもできる。その場合、反射ミラー41を省略できるため、構成を簡素化でき、かつ、製造コストを低減できる。
図28に基づいて第12実施例を説明する。本実施例では、VRWM213と反射ミラー214とをZ型に配置することにより、波面曲率補正器200Jを構成する。
図28(a)に示すように、平面波としてVRWMに入射するレーザ光を平面波として出射させる場合、VRWM213がフラットな形状になるように制御する。図28(b)に示すように、凸面波として入射するレーザ光を平面波に変換する場合は、VRWM213の形状を凹面の球面形状に設定する。図28(c)に示すように、凹面波として入射するレーザ光を平面波に変換する場合、VRWM213の形状を凸面の球面形状に設定する。
このように構成される本実施例も第11実施例と同様の効果を奏する。但し、本実施例では、レーザ光の入射光軸と出射光軸とが平行にずれており、一致しない。従って、光軸を元に戻すための、光学系を本実施例に追加してもよい。
図29に基づいて第13実施例を説明する。本実施例では、1つの反射ミラー102と1つの平行平面ウインドウ103とから角度補正器100Aを構成する。反射ミラー102及び平行平面ウインドウ103は、図29において、時計回り及び反時計回りの両方に回動可能となっている。
図中に実線矢印で示すように、反射ミラー102に入射するレーザ光は、反射ミラー102で反射されてウインドウ103に入射し、そのウインドウ103を透過して、出射される。この実線矢印で示す光軸を基準光軸とする。
これに対し、点線矢印で示すように、レーザ光が傾いて反射ミラー102に入射する場合、反射ミラー102の傾斜角度を調整する。これにより、反射ミラー102で反射されるレーザ光の光軸を、基準光軸と平行にさせる。
基準光軸と平行なレーザ光は、平行平面ウインドウ103に入射する。平行平面ウインドウ103の傾斜角度を調整することにより、平行平面ウインドウ103を透過するレーザ光の光軸を基準光軸に一致させることができる。
図30に基づいて第14実施例を説明する。本実施例では、角度補正器と波面曲率補正器とを兼用できるようにした波面補正器34Aを説明する。この波面補正器34Aは、VRWM110と反射ミラー111とから構成される。
図30(a)は、熱負荷の少ない場合を示す。平面波のレーザ光は、反射ミラー111に45度で入射して反射され、45度の入射角度でVRWM110に入射する。VRWM110は、フラットな形状となるように制御されている。レーザ光は、VRWM110のフラットなミラー面で反射して、平面波の状態で出力される。
なお、平面波の入射光を平面波の出射光に変換する場合に限らない。発散光(凸波面)として入力されるレーザ光が、所望曲率の波面を有するレーザ光として出力されるように、VRWMの焦点距離を一定値に制御することもできる。
図30(b)は、レーザ光の角度(方向)及び波面の曲率が変化した場合を示す。
熱負荷の影響によって、入射するレーザ光の方向が図30中の下側に傾き、その波面が発散光(凸波面)に変化したとする。その場合、反射ミラー111で反射されるレーザ光の光軸が基準光軸と一致するように、反射ミラー111の角度を制御する。
反射ミラー111で反射されたレーザ光は、45度の入射角度でVRWM110に入射する。VRWM110で反射されるレーザ光が平面波となるように、VRWM110の形状は凹面状に設定される。
なお、凸面波のレーザ光を平面波に変換する場合を述べたが、これに限らない。凹面波のレーザ光を平面波に変換することもできるし、あるいは、凸波面や凹面波の入射光を、所望の曲率の波面を有する出射光に変換することもできる。
また、許容収差以内の入射角度の場合、例えば、VRWM110の水平方向と垂直方向の2軸の角度を制御することにより(チルトとロールを制御することにより)、出射光の光軸を基準光軸に一致させてもよい。
図31に基づいて第15実施例を説明する。本実施例では、反射ミラー113とVRWM112とをZ型に配置することにより、角度補正器と波面曲率補正器を兼用する波面補正器34Bを構成する。入射角度は、3度以下程度の小さな角度である。すなわち、入射角度は、収差が発生しない角度に設定される。
図31(a)は、熱負荷の低い場合を示す。平面波のレーザ光は、反射ミラー113に入射角度3度以下で入射して反射される。反射されたレーザ光は、3度以下の角度でVRWM112に入射する。VRWM112の形状はフラットに制御されており、レーザ光を平面波の状態で反射する。なお、平面波の場合を述べたがこれに限らず、例えば、凸面波や凹面波が入力された場合でも、VRWM112の形状を変化させることにより、所定曲率の波面を有するレーザ光として出力させることもできる。
図31(b)は、熱負荷の高い場合を示す。入射するレーザ光の角度が図31中の下側に傾き、かつ、そのレーザ光の波面が凸面波になった場合を述べる。この場合、反射ミラー113の角度を変化させて、反射ミラー113で反射されるレーザ光の光軸を、基準光軸(図31(a)に示す光軸)に一致させる。
反射ミラー113により反射された光は、3度以下の入射角度でVRWM112に入射する。VRWM112は、VRWM112で反射されたレーザ光が平面波となるように、その形状が凸面状に変化され、かつ、その角度が調整される。なお、平面波に変換する場合に限らず、凹面波や凸面波を所望曲率の波面に変換して出力させることもできる。以下の各実施例でも同様である。
図32に基づいて第16実施例を説明する。本実施例では、2枚の凸レンズ114,115を用いることにより、角度補正器と波面曲率補正器とを兼用する波面補正器34Cを構成する。凸レンズ115は、光軸に直交する方向(図32の上下方向)に位置を調整するための移動ステージ117上に設けられている。さらに、その移動ステージ117は、光軸方向に位置を調整するための別の移動ステージ118上に設けられている。従って、凸レンズ115は、光軸方向及び光軸に直交する方向のいずれにも移動させることができる。符号119は、凸レンズ114を通過した光が集まる点(集光点)である。
図32(a)は、熱負荷の小さい場合を示す。平面波のレーザ光は、凸レンズ114を透過して、凸レンズ114の焦点位置に集まる。凸レンズ115は、凸レンズ115の焦点位置が凸レンズ114の焦点位置と同一光軸上で一致するように、配置される。その位置に集光した光は、発散光となって凸レンズ115に入射し、凸レンズ115により平面波に変換されて出力される。
図32(b)は、熱負荷の大きい場合を示す。熱負荷の影響により、レーザ光は、その入射方向が斜め上側に傾き、かつ、発散光(凸波面)となっている。そこで、発散光は凸レンズ114の焦点の位置よりも遠くに集光する。そして、この集光点と凸レンズ115の前側焦点とが一致するように、凸レンズ114の位置を光軸方向(図32の左右方向)で移動させる。さらに、凸レンズ115は、光軸に対して直交する方向(図32の上下方向)で移動させる。これにより、レーザ光の出射方向を基準光軸に一致させる。凸レンズ114を通過したレーザ光は、凸レンズ115に入射して平面波に変換され、基準光軸に沿って出力される。
なお、凸レンズ114と凸レンズ115の結合に限定されず、1枚の凸レンズと1枚の凹レンズとの結合によって、角度補正及び波面の曲率補正を行う波面補正器34を構成してもよい。
図33に基づいて第17実施例を説明する。本実施例では、ディフォーマブルミラー120と反射ミラー121とを用いて、角度補正器と波面曲率補正器とを兼用する波面補正器34Dを構成する。
図33に示すように、ディフォーマブルミラー120と反射ミラー121とは、Z型に配置される。ディフォーマブルミラー120の反射面の形状は、制御信号に応じて可変に制御される。ディフォーマブルミラー120は、プリアンプよりも手前に、または、プリアンプとメインアンプとの間に、配置される。これにより、ディフォーマブルミラー120には、高出力レーザ光になる前のレーザ光が入射する。
歪んだ波面のレーザ光がディフォーマブルミラー120に入射する場合、その入射する波面に合わせて、ディフォーマブルミラー120の反射面形状を調節する。ディフォーマブルミラー120は、入射するレーザ光の波面を平面波に補正して反射させる。平面波に補正されたレーザ光は、反射ミラー121により反射されて出力される。
ディフォーマブルミラー120を用いることにより、球面波ではない波面、例えばS字のような波面でも、平面波や所望の球面波に変換することができる。また、小さな角度であれば、レーザ光の方向も補正可能である。なお、反射ミラー121及びディフォーマブルミラー120のそれぞれについて、チルト及びロールを制御することにより、レーザ光の方向を調整することもできる。実施例18でも同様である。
本実施例では、ディフォーマブルミラー120をメインアンプよりも手前(上流側)に配置するため、比較的低出力のレーザ光の波面を補正できる。これに対し、上述した特開2003−270551号公報に記載の技術では、高出力レーザ光がディフォーマブルミラーに入射するため、ディフォーマブルミラーがレーザ光の熱によって破損する可能性が高く、信頼性が低い。ディフォーマブルミラーは、多数のマイクロアクチュエータの集合体として構成されており、ディフォーマブルミラーを効果的に冷却するのは難しい。従って、ディフォーマブルミラーに高出力レーザ光が入射すると、熱によって破損する可能性が高くなる。
図34に基づいて第18実施例を説明する。本実施例ではディフォーマブルミラー120と偏光制御とを結合させることで、波面補正器34Eを構成する。波面補正器34Eは、ディフォーマブルミラー120と、ビームスプリッタ122と、λ/4板123とを備える。ビームスプリッタ122とλ/4板123との間に、波面変化発生部32,35,33を配置させることができる。
例えば、P偏光とS偏光とを分離させるための膜が設けられた、ビームスプリッタ122に、P偏光(紙面を含む偏波面)のレーザ光が入射する。そのレーザ光の波面は、平面波の状態でビームスプリッタ122に入力されるものとする。しかし、そのレーザ光は、ビームスプリッタ122から波面変化発生部32,35,33を通過することにより、その波面がS字状に歪んだとする。
波面変化発生部32,33,35を通過したレーザ光は、λ/4板123を透過することにより、円偏光となる。S字状に歪んだ波面は、適切な形状に調節されたディフォーマブルミラー120により、所定の波面に補正される。
波面の補正されたレーザ光は、再びλ/4板123を透過し、S偏光に変換される。S偏光のレーザ光は、波面変化発生部32,33,35を透過することにより、所定の波面から平面波に変換される。平面波に変換されたレーザ光は、ビームスプリッタ122に入射する。S偏光のレーザ光は、ビームスプリッタ122で反射され、平面波として出力される。ディフォーマブルミラー122の表面形状を調節することにより、平面波以外の波面形状で出力させることもできる。
図35に基づいて第19実施例を説明する。本実施例では、回折型ミラー301を用いて、センサ36Aを構成する。回折型ミラー301の表面には、グレーティング301Aが形成されている。回折型ミラー301には、冷却水が流通するための冷却水流路301Bが設けられている。
回折型ミラー301は、入射するレーザ光を45度の角度で反射させる。この反射光は0次光であり、最も強度が高い。回折により得られる−1次光は、強度は低い。光学的センサ部360は、その−1次光を受光してレーザ光の特性を計測する。
図36に基づいて第20実施例を説明する。本実施例では、ウインドウ300Wを用いてセンサ36Bを構成する。ウインドウ300Wは、ウインドウ基板300AWと、ウインドウ基板300AWを保持するためのホルダ300BWとを備える。ホルダ300BWは、図示しない水冷ジャケットを備えている。
ウインドウ300Wは、ドライバレーザ光の光軸中に、傾いた状態で配置される。ウインドウ300Wの表面で反射された僅かなレーザ光は、サンプル光として光学的センサ部360に入射する。
ウインド300Wとしては、例えば、アンプ32,35のウインドウや、EUVチャンバ10のウインドウ13を利用することもできる。この場合、計測用のサンプル光を得るだけのためにウインドウを設ける必要がなく、製造コストを低減できる。ウインドウ基板300Aは、例えば、ダイヤモンドのようなCO2レーザ光を透過し、熱伝導性の高い材質から構成される。
平行平面ウインドウ300Wでは、表面と裏面の両方でレーザ光がそれぞれ僅かに反射されて、サンプル光として光学的センサ部360に入射する。従って、ビームプロファイルの計測には適さない。しかし、サンプル光を集光レンズで焦点の位置に集光して、焦点像の位置を計測し、レーザ光の方向を計測することはできる。また、レーザのビームラインのデューティ及びパワーも、不都合なく計測できる。
図37に基づいて第21実施例を説明する。本実施例では、ビームプロファイラ304A,304Bを用いて、センサ36Cを構成する。本実施例では、反射ミラー302Aの透過光をビームプロファイラ304Aで検出し、反射ミラー302Bの透過光をビームプロファイラ304Bで検出する。ビームプロファイラの計測結果に応じて、反射ミラー302Aの角度が調整される。
反射ミラー302Aの裏面側とビームプロファイラ304Aとの間には、レンズ303Aが設けられている。同様に、反射ミラー302Bの裏面側とビームプロファイラ304Bとの間には、レンズ303Bが設けられている。
平面波のレーザ光は、リレー光学系31を透過して、波面変化発生部32,35,33を透過することにより、レーザ光の方向と波面の曲率が変化する。その方向及び波面の曲率の変化したレーザ光は、波面補正器34に入射する。波面補正器34は、波面の曲率とレーザ光の方向とを補正して、レーザ光を出力する。
波面補正器34で補正されたレーザ光は、反射ミラー302Aにより反射されて、反射ミラー302Bに入射する。一方、反射ミラー302Aを僅かに透過するサンプル光は、転写レンズ303Aにより、ビームプロファイラ304Aの有する2次元センサ上に転写される。その2次元センサにより、レーザ光のビーム形状と位置とが計測される。
ビームプロファイラ304Aからの計測データは、波面補正コントローラ50に入力される。波面補正コントローラ50は、波面補正器34に、レーザ光の位置が基準位置となるように、制御信号を送信して制御する。
一方、反射ミラー302Bを僅かに透過した光は、転写レンズ303Bにより、ビームプロファイラ304Bの備える2次元センサ上に転写される。2次元センサは、レーザ光のビーム形状と位置とを計測する。
ビームプロファイラ304Bで計測されたデータは、波面補正コントローラ50に入力される。波面補正コントローラ50は、反射ミラー302Aの角度を調整するためのアクチュエータ305に制御信号を出力し、ビームプロファイラ304Bで計測されるレーザ光の位置が基準位置となるように反射ミラー302Aの角度を制御する。さらに、レーザ光の波面の曲率を制御するために、レーザのビーム形状が所定の値となるようにWFC34に制御信号を送る。
このように構成される本実施例では、反射ミラー302A,302Bをレーザ光が透過する側(反射ミラーの裏側)にビームプロファイラ304A,304Bを配置するため、コンパクトにセンサ36Cを構成することができる。さらに、図37に示す計測用光学系によって、ドライバレーザ光の波面が影響されるのを少なくすることができる。
図38に基づいて第22実施例を説明する。本実施例では、レーザ光の透過する光学素子の温度変化に基づいて、レーザ光の方向及び波面の曲率に生じる変化を予測する。
計測用光学素子310は、レーザ光の透過するウインドウやレンズ、あるいはミラーである。その光学素子310は、ホルダ311に取り付けられている。ホルダ311には、冷却水が流れるための流路311Aが設けられている。
冷却水の流入側には、例えば、白金測温抵抗体やサーミスタ等のような、温度センサ312(1)が設けられている。温度センサ312(1)は、冷却水の温度を検出して信号を出力する。冷却水の下流側にも、温度センサ312(2)が設けられている。
水温差算出部313は、上流側の冷却水温度と下流側の冷却水温度との差を算出し、レーザビーム特性判定部314に出力する。その水温差は、冷却水の流量が一定ならば、光学素子310を冷却するために使用された熱量Qと比例する。
レーザビーム特性判定部314は、水温差とレーザ光の方向との関係を示すテーブル315と、水温差と波面の曲率との関係を示すテーブル316とを用いて、光学素子310を透過するレーザ光の方向と波面の曲率とを予測する。その予測結果は、波面補正コントローラ50に入力される。
テーブル315は、例えば、実験やシミュレーションによって、水温差によるレーザ光の方向の変化を予め計測することにより、生成される。テーブル316も同様に、実験やシミュレーションによって、水温差による波面の曲率の変化を予め計測することにより、生成される。
本実施例によれば、光学素子310の温度変化を冷却水温の差として検出することにより、簡単にレーザ光の波面変化(角度(方向)及び波面の曲率)を推測できる。なお、放射温度計を用いて、光学素子310の温度変化を直接測定する構成でもよい。
図39に基づいて第23実施例を説明する。本実施例では、光学素子310の温度を温度センサ312Aによって直接的に検出する。温度センサ312Aは、レーザ光から保護するための遮光板317で覆われている。
レーザビーム特性判定部314Aは、温度センサ312Aで検出された温度に基づいて、テーブル315A,316Aを参照することにより、光学素子310を透過するレーザ光の方向及び波面の曲率の変化を予測する。
テーブル315Aには、例えば、実験やシミュレーションにより、光学素子310の温度とレーザ光の方向との関係が予め設定されている。テーブル316Aにも同様に、実験やシミュレーションにより、光学素子310の温度とレーザ光の波面の曲率との関係が予め設定されている。
図40に基づいて第24実施例を説明する。本実施例では、EUV光露光装置5からの運転指示に基づいて、ドライバレーザ光に生じる熱負荷による影響を予測し、その予測される熱負荷による影響を打ち消すように波面補正を行う。
EUV露光装置5は、EUV光源コントローラ70に、運転指示を与える。運転指示には、例えば、EUV光のパルスエネルギEeuvと、繰り返し周波数f(または外部トリガ信号)とが含まれる。EUV光源コントローラ70は、EUV露光装置5の要求するEUV光を供給すべく、レーザコントローラ60に制御信号を出力する。
例えば、EUVエネルギEeuvと、ドライバレーザのエネルギEco2との間に、Eco2=K・Eeuvの比例関係が成立すると仮定する(但し、実際には非線形の関係であるから、EeuvとEco2との関係を実験で求めて、テーブルに記憶させることが好ましい。)。前記仮定が成立するならば、ドライバレーザ光の熱負荷Wlaserは、Wlaser=duty・K・Eeuv・f として示すことができる。
波面補正コントローラ50Aは、予測部36Fと、波面制御部50A1とを備える。予測部36Fは、センサ36の代わりに、レーザ光に生じる波面変化を予測する。波面制御部50A1は、予測された波面変化に基づいて波面補正器34を制御する。
予測部36Fは、例えば、運転指示を取得する運転指示取得部320と、レーザビーム特性判定部321と、運転状態とレーザ光の方向との関係を示すテーブル322と、運転状態とレーザ光の波面の曲率との関係を示すテーブル323とを備える。
レーザビーム特性判定部321は、EUV露光装置5からの運転指示に基づいて各テーブル322,323を参照することにより、レーザ光に波面変化を予測する。波面制御部50A1は、予測された波面変化を打ち消すように、波面補正器34を制御する。
図41に基づいて第25実施例を説明する。本実施例では、EUVチャンバ10B内における、ドライバレーザ光の実際の集光像を計測して、波面補正器44を制御する。
チャンバ10BのEUV発光領域11(2)には、センサ45Aが設けられる。センサ45Aは、例えば、ビームスプリッタ330と、転写レンズ331,332と、撮像部333とから構成される。撮像部333は、例えば、赤外線用のCCD(Charge Coupled Device)のような素子から構成される。
ビームスプリッタ330は、所定位置に集光するドライバレーザ光の一部を、転写レンズ331,332に向けて反射させる。残りのドライバレーザ光は、ダンパ19に吸収されて熱に変わる。
波面補正コントローラ50Bは、チャンバ10B内に集光されたレーザ光の形状や位置が、所定の形状及び位置になるように、波面補正器44に制御信号を出力する。
なお、波面補正器44のみによってドライバレーザ光の波面を補正するのではなく、集光領域11(1)内の各ミラー16(1),16(2),17,18の位置や姿勢を調節することにより、ドライバレーザ光の波面を補正する構成としてもよい。
本実施例では、ドライバレーザ光の最終的な集光結果を計測して、ドライバレーザ光の波面を制御するため、集光特性を高精度に安定化させることができる。
図42に基づいて第26実施例を説明する。本実施例では、シャックハルトマン(Shack-Hartmann)センサを光学的センサ部360Aとして用いる。シャックハルトマンセンサ360Aは、例えば、多数のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイ361と、赤外線用のCCD等の撮像素子362とを備える。
レーザ光の大部分は、反射ミラー300で反射される。反射ミラー300を僅かに透過するレーザ光は、マイクロレンズアレイ361に入射する。各マイクロレンズの集光点の像は、撮像部362により計測される。各マイクロレンズの集光点の位置を解析することにより、レーザ光の波面を計測できる。
本実施例では、レーザ光の波面の歪みと角度(方向)とを同時に計測することができる。なお、マイクロレンズアレイに代えて、ピンホールアレイやフレネルレンズアレイ等を用いてもよい。
図43,図44に基づいて第27実施例を説明する。本実施例では、ウエッジ基板363により得られる干渉縞に基づいて、レーザ光の特性を計測する。光学的センサ部360Bは、ウエッジ基板363と、赤外線センサ364とを備える。ウエッジ基板363は、炭酸ガスレーザを透過させる。
レーザ光の大部分は、反射ミラー300によって反射される。反射ミラー300を僅かに透過するレーザ光は、ウエッジ基板363に入射し、ウエッジ基板363の表面及び裏面の両方でそれぞれ反射する。
ウエッジ基板363の表裏両面で反射されたレーザ光を所定の角度で重ねあわせることによって、干渉縞が発生する。図44(a)は、ウエッジ基板363に入射するレーザ光が平面波の場合の干渉縞を示す。図44(b)は、ウエッジ基板363に入射するレーザ光が凸面波の場合の干渉縞を示す。図44(c)は、ウエッジ基板363に入射するレーザ光が凹面面波の場合の干渉縞を示す。
ウエッジ基板363により得られる干渉縞を赤外線センサ364により検出する。干渉縞の曲がり具合に基づいて、レーザ光の波面の曲率の変化を検出できる。さらに、干渉縞の流れる方向に基づいて、レーザ光の方向を検出できる。
本実施例では、レーザ光の波面の歪みと方向とを同時に計測できる。但し、シャックハルトマンセンサほどの高い精度を期待するのは難しい。赤外線センサ364に代えて、ビームプロファイル、ビームポインティング、エネルギメータ等を用いてもよい。
図45に基づいて第28実施例を説明する。本実施例の光学的センサ部360Cは、ビームプロファイルとビームポインティングとを計測する。
反射ミラーの300を透過したレーザ光を、ビームスプリッタ363Aにより反射光と透過光とに分割する。透過光は、集光レンズ365(1)により、2次元の赤外線センサ366(1)上に集光させ、集光性能や方向(ポインティング状態)を計測する。一方、反射光は、転写レンズ365(2)により、2次元の赤外線センサ366(2)上に転写して結像させ、ビームプロファイルを計測する。
図46〜図48に基づいて第29実施例を説明する。本実施例では、円筒凸面のシリンドリカルレンズ367と、円筒凸面のシリンドリカルレンズ368と、4分割型受光素子369とを用いて、光学的センサ部360Dを構成する。ここで、両シリンドリカルレンズの母線は、互いに直行するように配置されている。母線の定義に関しては、後述する。
図47に示すように、受光素子369の受光面369Aは、菱形形状のDA1〜DA4の4つの領域に区切られている。上下の受光面DA1,DA3の出力と、DA1,DA3に直交して配置される左右の受光面DA2,DA4の出力とは、オペアンプ369Bにより比較されて出力される。
図48(a)に示すように、凸面波のレーザ光がレンズ367,368を透過すると、鉛直方向に長いレーザ光となって受光素子369に入射する。受光素子369は、プラスの電圧を出力する。
図48(c)に示すように、凹波面のレーザ光がレンズ367,368を透過すると、水平方向に長いレーザ光となって受光素子369に入射する。受光素子369は、マイナスの電圧を出力する。
これに対し、図48(b)に示すように、平面波のレーザ光がレンズ367,368を透過すると、略丸形状のレーザ光となって受光素子369に入射する。受光素子369の出力は0となる。なお、受光素子369に代えて、2次元センサを用いてもよい。
図49〜図51に基づいて第30実施例を説明する。本実施例の光学的センサ部360Eは、同一長さの焦点距離を有する2つのシリンドリカルレンズ368(1),368(2)を、シリンドリカルレンズの母線を直交させて、レーザ光の光軸上に配置する。シリンドリカルレンズの母線とは、凸面の頂上を結んだ線である。各シリンドリカルレンズ368(1),368(2)は、円筒凸面のシリンドリカルレンズとして構成される。
受光素子は、シリンドリカルレンズ368(1)の焦点距離F1と、シリンドリカルレンズ368(2)の焦点距離F2との中間位置Dに配置される。受光素子としては、図47に示す4分割型受光素子や、2次元撮像素子等を使用できる。以下、受光素子の配置される位置Dを、センサ位置Dと呼ぶ。
図49(a)には、平面波のレーザ光が2個のシリンドリカルレンズ368(1),368(2)を透過した場合の、水平方向(X)と垂直方向(Y)とから見たときの、レーザ光の集光状態が示されている。
図49(a)の上側には、第1番目のシリンドリカルレンズ368(1)の母線が水平方向(X方向)と垂直であり、第2のシリンドリカルレンズ368(2)の母線が水平方向(X)と平行である場合の、レーザ光の状態を示す。この場合、X方向に関して、第1のシリンドリカルレンズ368(1)は凸レンズとして機能し、第2のシリンドリカルレンズ368(2)はウインドウとして機能する。
従って、シリンドリカルレンズ368(1)の焦点位置F1において、レーザ光は、X方向に対して垂直に直交する方向と平行な、線状に集光した後、発散光となって広がる。点線で示すセンサ位置Dにおいて、レーザ光は、X軸に対して平行に、一定の長さL1まで広がる。
図49(a)の下側には、第1番目のシリンドリカルレンズ368(1)の母線が垂直方向(Y)と平行であり、第2のシリンドリカルレンズ368(2)の母線が垂直方向(Y)と垂直である場合において、レーザ光の状態が示されている。この場合、Y方向に関しては、第1のシリンドリカルレンズ368(1)はウインドウとして機能し、第2のシリンドリカルレンズ368(2)は凸レンズとして機能する。
従って、レーザ光は、シリンドリカルレンズ368(2)の焦点位置F2に、Y方向に直交する方向と平行に、線状に集光する。センサ位置Dは、焦点位置F2の手前であるため、Y軸に対して平行な一定長さL2を有するレーザ光が検出される。
図49(b)は、センサ位置Dで計測されるレーザ光の、XY平面における形状IM1が示されている。レーザ光のXY平面上の断面形状IM1は、X方向の幅L1、Y方向の幅L2を有する略矩形状となる。F1=F2に設定し、センサ位置Dを各シリンドリカル368(1),368(2)の中央に配置すれば、L1=L2の正方形状となる。
図50は、凸面波のレーザ光が2個のシリンドリカルレンズ368(1),368(2)を透過した場合の、レーザ光の集光状態を示している。図50(a)の上側には、図49(a)の上側に対応する。図50(a)の下側は、図49(a)の下側に対応する。図51についても同様に図49に対応する。
図50(a)上側に示すように、凸面波のレーザ光は、シリンドリカルレンズ368(1)の焦点位置F1よりも少し遠くで(図50中の右側で)、X方向に直交する方向と平行に、線状に集光する。レーザ光は、発散光となって広がる。センサ位置Dにおいて、レーザ光は、X軸に平行な一定の長さL1aまで広がる。
図50(a)下側に示すように、凸面波のレーザ光は、シリンドリカルレンズ368(2)の焦点位置F2よりも遠い位置において、Y方向に直交する方向と平行に、線状に集光する。センサ位置Dは、集光点の手前であるため、レーザ光は、Y軸に平行な一定の長さL2aを有する。
図50(b)は、凸面波のレーザ光の、XY平面おける形状IM2を示す。レーザ光の形状IM2は、X方向の幅L1aとY方向の幅L2aとを有する、Y方向に長い矩形状となる。
図51は、凹面波のレーザ光が各シリンドリカルレンズ368(1),368(2)を透過した場合の、レーザ光の状態を示す。図51(a)上側に示すように、レーザ光は、シリンドリカルレンズ368(1)の焦点位置F1よりも手前において、X方向に直交する方向と平行に、線状に集光する。集光した後、レーザ光は発散光となって広がる。センサ位置Dにおいては、レーザ光は、X軸に平行な一定の長さL1bを有する。
図51(a)下側に示すように、レーザ光は、シリンドリカルレンズ368(2)の焦点位置F2よりも手前の位置に集光して、Y方向に直交する方向と平行に、線状に集光する。センサ位置Dは集光点の手前であるため、レーザ光は、Y軸に平行な一定の長さL2bを有する。
図51(b)は、凹面波のレーザ光の、XY平面おける形状IM3を示す。レーザ光の形状IM3は、X方向の幅L1bと、Y方向の幅L2bとを有する、X方向に長い矩形状となる。
図52に基づいて第31実施例を説明する。本実施例では、偏光分離型アイソレータ46Aの別の例を示す。
レーザ光は、P偏光とS偏光とを分離するためのビームスプリッタ464に、P偏光で入射する。ビームスプリッタ464は、P偏光を透過させ、S偏光を反射させる。ビームスプリッタ464を透過したレーザ光は、λ/4板465を透過することにより、円偏光に変換される。
レーザ光は、レーザ光を集光するための光学システムを備えた集光領域11(1)内の光学系を介してドロップレットに集光照射される。そのレーザ光の一部は、同一光路を円偏光で戻り、λ/4板465に再び入射する。レーザ光は、λ/4板465を通過すると、S偏光に変換される。従って、S偏光のレーザ光は、ビームスプリッタ464により反射されて、ダンパ466に吸収される。
なお、本発明は上述した各実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。また、上述の各実施例を適宜組み合わせた構成も本発明の範囲に含まれる。
図53は、上記各実施例の好ましい組合せの例を示す。図53に示す組合せ例に本発明を限定する趣旨ではない。図53に明示されていない他の組合せも、本発明の範囲に含まれる。
EUV光源装置にレーザ光を供給するドライバーレーザシステムは、「ドライバレーザ光のライン」と、「ビームデリバリー+集光光学系」とを含む。「ドライバレーザ光のライン」は、ドライバレーザの発振器20から最終段のメインアンプ35までのビームラインの波面を補正する機構である。「ビームデリバリー+集光光学系」は、ドライバレーザ光をEUVチャンバのウインドウまでデリバリーし、集光光学系によりドロップレット等のターゲット物質にレーザビームを照射させる機構である。
「ドライバレーザ光のライン」において発生する波面変化は、アンプ32,35を透過することによる波面変化と、SA33を透過する際の波面変化とに大別される。なお、集光光学系では、反射ミラーやアイソレータ、EUVウインドウ等の各種光学素子が熱によって変化することにより、集光性能が変化する。
図53では、アンプ透過による波面変化と、可飽和吸収セルの透過による波面変化と、集光光学系の透過による波面変化とを補正するための例を示す。
第1のケースでは、アンプによる波面変化を補正すべく、反射平面ミラーと入射角45度のVRWMとから波面補正器を構成する(図30)。さらに、センサとして、配置位置の異なる2台のビームプロファイラを配置する(図37)。第1のケースでは、可飽和吸収体の波面変化を補正すべく、反射平面ミラー+入射角45度VRWMとから波面補正器を構成し(図30)、図37のセンサを使用する。
第1ケースの「ビームデリバリー+集光光学系」では、波面補正器として、図31に示す構成を採用し、かつ、センサとして、図45で述べたポインティングセンサとビームプロファイラの構成を採用する。アイソレータとしては、図13に示す構成を採用する。チャンバ内の集光光学系には、図15に示す構成を採用する。
第1のケースでは、ドライバレーザ光のライン上に位置する複数の波面補正器を反射光学系で構成し、集光光学系も反射光学系の簡単な構成としている。従って、透過光学系を採用する場合に比べて、熱による波面変化を少なくできる。さらに、センサとして、単純なビームプロファイラやポインティングセンサを用いるため、CO2レーザのような10.6μmの波長でも十分検出することができる。
第2のケースを説明する。アンプの波面変化を補正するための波面補正器及びセンサの構成は、第1のケースと同様である(図30,図37)。可飽和吸収体による波面変化を補正するための波面補正器には、ディフォーマブルミラーを使用する(図33,図34)。さらに、センサとして、図42に示す波面センサを採用する。これにより、熱負荷によって複雑な波面形状に変化した波面を、ディフォーマブルミラーにより精密な波面に補正することができる。また、波面センサは、レーザ光の波面を精密に計測できる。
第2のケースの「ビームデリバリー+集光光学系」では、波面補正器として、軸外放物面ミラーを組み合わせる構造(図19または図20)を採用する。センサには、図42の波面センサを採用する。アイソレータは、図13の構成を採用する。
第2のケースでは、可飽和吸収体による波面の歪みを高精度に補正できる。さらに、「ビームデリバリー+集光光学系」のセンサに、図42に示す波面センサを採用するため、ターゲット(ドロップレット)への集光性能を検出しながら、ターゲットにレーザ光を照射でき、EUV光の出力エネルギをより一層安定させることができる。
第3のケースを説明する。アンプの波面変化を補正するための波面補正器には、図31に示す構成を採用し、センサには図46に示す構成を採用する。可飽和吸収体の波面補正器及びセンサは、第2ケースと同様である。
第3ケースの「ビームデリバリー+集光光学系」では、波面補正器として図33,図34の構成を使用し、センサには、図42の波面センサを採用する。アイソレータ及び集光光学系については、第1ケース及び第2ケースと同様である。
第3ケースでは、可飽和吸収体による波面の歪みを高精度に補正できる。さらに、「ビームデリバリー+集光光学系」の波面補正器としてディフォーマブルミラーを採用し、かつ、センサとして波面センサを採用するため、ターゲットへの集光性能を検出しながら、高精度にターゲットにレーザ光を照射できる。従って、EUV光の出力エネルギの安定性を、第2ケースよりも高めることができる。
図54に基づいて第32実施例を説明する。本実施例では、図1に示す構成に、プリパルスレーザの構成と、プリパルスレーザの光学特性を補正するための構成とを、加える。プリパルスレーザ光L4は、ドロップレットDPが所定位置に到達すると、ドロップレットDPに照射される。これにより、ターゲット物質は膨張する。従って、ドライバレーザ光L1の照射される所定位置において、ターゲット物質の密度を適切な値まで低下させることができ、EUV光の発生効率を高めることができる。
そのため、本実施例では、プリパルスレーザ発振器90と、プリパルスレーザ光をウインドウ13(2)を介してチャンバ10内に送り込むための軸外放物凹面ミラー92とを設ける。プリパルスレーザ光としては、例えば、YAGレーザの基本波、2倍高調波、3倍高調波、4倍高調波を用いることができる。あるいは、パルス発振のチタン・サファイヤ・レーザの基本波または高調波光を、プリパルスレーザ光として用いてもよい。この実施例では、ドロプレットDPを供給するターゲット物質供給部は図示していないが、例えば、紙面に対して垂直な軸で、プリパルスレーザ集光点の位置にドロプレットDPを供給している。
錫ドロプレットDPは、その直径が100μm以下であるため、プリパルスレーザ光を命中させるためには、ビーム形状及び集光位置を高精度に管理する必要がある。そこで、本実施例では、前記各実施例で述べたように、プリパルスレーザ光L4の光学性能を自動的に補正するための機構を設けている。ここで、光学性能とは、例えば、光の集光形状または位置またはポインティングを意味する。
プリパルスレーザ発振器90と軸外放物凹面ミラー92との間には、「第3補正部」としての波面補正部95が設けられている。軸外放物凹面ミラー92とウインドウ13(2)との間には、「第3検出部」としてのセンサ96が設けられている。
プリパルスレーザ光L4は、波面補正部95を介して軸外放物凹面ミラー92に入射し、ウインドウ13(2)に向けて反射される。センサ96は、チャンバ10に進むプリパルスレーザ光L4の光学性能を検出して、波面補正コントローラ97に出力する。そして、波面補正コントローラ97は、プリパルスレーザ光L4の光学性能が所定値となるように、波面補正部95を制御する。
このように構成される本実施例では、ドライバレーザ光L1がターゲット物質に照射されるよりも前に、ターゲット物質にプリパルスレーザ光L4を照射するため、EUV光L2の発光効率を第1実施例よりも高めることができる。さらに、本実施例では、プリパルスレーザ光の波面の曲率及び方向を調整できるため、プリパルスレーザ光をより正確にターゲット物質に照射することができ、効率を高めることができる。
図55に基づいて第33実施例を説明する。本実施例では、プリパルスレーザ光を複数のアンプ98(1),98(2)で増幅させてから、チャンバ10に送り込む。
プリパルスレーザ発振器90から出力されるプリパルスレーザ光は、第1の波面補正部95(1)を介して第1のアンプ98(1)に入射し、増幅される。増幅されたプリパルスレーザ光は、第1のセンサ96(1)を通過して反射ミラー91(1)に入射し、反射される。第1の波面補正コントローラ97(1)は、アンプ98(1)の出口側に設けられているセンサ96(1)からの検出信号に基づいて波面補正部95(1)を作動させる。これにより、アンプ98(1)を通過するプリパルスレーザ光の波面形状及び方向が所望の値に調整される。
反射ミラー91(1)で反射されたプリパルスレーザ光は、第2の波面補正部95(2)を介して別の反射ミラー91(2)に入射し、その反射ミラー91(2)により反射される。反射ミラー91(2)で反射されたプリパルスレーザ光は、第2のアンプ98(2)を通過することにより、さらに増幅される。第2の波面補正コントローラ97(2)は、アンプ98(2)の出口側に設けられているセンサ96(2)からの検出信号に基づいて波面補正部95(2)を作動させる。これにより、アンプ98(2)を通過するプリパルスレーザ光の波面形状及び方向が所望の値に調整される。
アンプ98(2)で増幅されたプリパルスレーザ光は、第2のセンサ96(2)を通過して、第3の波面補正部95(3)に入射する。波面補正部95(3)を通過したプリパルスレーザ光は、軸外放物凹面ミラー92に入射して反射され、ウインドウ13(2)を通過してチャンバ10内のターゲット物質に照射される。第3の波面補正コントローラ97(3)は、ウインドウ13(2)の入射側に設けられるセンサ96(3)からの検出信号に基づいて波面補正部95(3)を作動させる。これにより、チャンバ10内に入射するプリパルスレーザ光の波面形状及び方向が所望の値に調整される。
プリパルスレーザコントローラ99は、レーザコントローラ70からの指示に基づいて、プリパルスレーザ発振器90を作動させる。さらに、プリパルスレーザコントローラ99は、各波面補正コントローラ97(1)〜97(3)を制御して、プリパルスレーザ光の波面及び角度を補正させる。プリパルスレーザ光の波面補正が完了した場合、プリパルスレーザコントローラ99は、その旨をレーザコントローラ70に通知する。
このように構成される本実施例も第32実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、複数のアンプ98(1),98(2)を用いてプリパルスレーザ光を多段増幅させるため、より高出力のプリパルスレーザ光を得ることができる。
複数のアンプ98(1),98(2)を用いると、熱による光学系の歪み等により、プリパルスレーザ光の波面及び位置又は方向に誤差が生じる。しかし、本実施例では、複数の波面補正部95(1)〜95(3)と、複数のセンサ96(1)〜96(3)とを用いることにより、プリパルスレーザ光を複数箇所で補正することができる。従って、本実施例では、比較的高出力のプリパルスレーザ光を、ターゲット物質に正確にかつ安定して照射でき、信頼性及び出力効率が改善される。
図56に基づいて第34実施例を説明する。本実施例では、本発明に特有のレーザ光源装置を、蒸着装置500に適用した場合を説明する。
図56は、真空蒸着装置500の全体構成図である。この蒸着装置500は、上述したレーザ光源装置2を備える。蒸着チャンバ510は、ウインドウ511を備える。蒸着チャンバ510内には、ターゲット材料520と、基板設置用プレート530と、蒸着対象の基板540とが設けられる。
レーザ光源装置2から出力されるドライブレーザ光は、ウインドウ511を通過してターゲット材料520に入射し、アブレーション521を引き起こす。アブレーションしたターゲット材料の一部は、プレート530上に置かれた基板540の表面に付着する。
このように本発明のレーザ光源装置は、極端紫外光源装置のみならず、真空蒸着装置500にも適用可能である。さらには、例えば、アブレーションを利用した穴明け加工またはガラス加工等にも適用することができる。
図57〜図59を参照して第35実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例では、波面曲率を補正するための光学素子(例えば、VRWM200H)にレーザ光を入射させるためのミラー600に、そのミラー表面を軸対称に冷却するための機能を設ける。なお、VRWMへレーザ光を入射させるミラーに限らず、他のミラーにも本実施例で述べる冷却機能を設けることができる。
図57は、VRWM200Hと冷却機能付きミラー(以下、ミラーと略記)600との関係を示す模式図である。ミラー600は、入射するレーザ光L1(1)を反射する。反射されたレーザ光L1(2)は、VRWM200Hに入射し、レーザ光L1(3)として反射される。
ミラー600には、レーザ光L1(1)からの熱が伝達される。従って、何の対策もとらなければ、熱膨張等によりミラー表面602が不規則に変形する。ミラー表面602が不規則に変形すると、ミラー表面602で反射されるレーザ光L1(2)の波面も不規則な形状となる。不規則な波面形状とは、平面波でもなく、凹面波または凸面波でもない形状、即ち、光軸に対して軸対称ではない形状である。
ミラー600で反射されるレーザ光L1(2)の波面が軸対称ではない形状になると、VRWM200Hは、そのレーザ光L1(2)の波面を平面波に整えることはできない。VRWM200Hは、種々の波面形状に対応可能なディフォーマブルミラーとは異なり、光軸に対して対称な凹面波または凸面波にのみ対応可能だからである。
そこで、本実施例では、ミラー表面602を軸対称に冷却する機能をミラー600に設け、ミラー表面が熱によって変形する場合でも、軸対称の形状に変形させるようにしている。これにより、平面波のレーザ光L1(1)がミラー600に入射すると、ミラー600により反射されるレーザ光L1(2)の波面は、例えば、凸面形状となる。VRWM200Hは、凸面波のレーザ光L1(2)が平面波となるように反射する。
図58のミラー背面図を参照して、ミラー600の冷却構造を説明する。ミラー本体601は、熱伝導率の高い金属材料から円板状に形成されている。ミラー本体601の一方の面には、レーザ光を反射するための反射面602が形成されている。
ミラー本体601内には、中心から外側に向かって広がる渦巻き状の冷却通路604が形成されている。冷却通路604の一端側は、ミラー600の背面603の中心部で開口する流入口605に連通する。冷却通路604の他端側は、背面603の外周側で開口する流出口606に連通する。
図59は、ミラー600の断面図である。流入口605には、冷却ポンプ610が接続されている。流出口606には、冷却器611が接続されている。冷却器611で冷却された水等の冷媒は、ポンプ610から流入口605に向けて吐出される。ミラー600の中心部に流れ込んだ冷媒は、中心から外側に向けて流れつつミラー表面602を冷却する。この結果、ミラー表面602の中心部が最も冷却される。冷媒は、螺旋状に流れることにより、ミラー表面602の温度が軸対称に分布するように冷却する。なお、冷媒として水を用いる場合を例に挙げるが、水以外の物質を用いても良い。冷媒タンク及びフィルタ等の補助的構成は、図示を省略する。
このように構成される本実施例では、波面を補正するための素子200Hにレーザ光を入射させるミラー600に冷却機能を備えさせ、ミラー表面602の温度分布が軸対称になるように冷却する。従って、たとえ熱によってミラー表面602が変形する場合でも、ミラー表面602を軸対称に変形させることができ、VRWM200Hで補正可能な波面にすることができる。
図60,図61を参照して第36実施例を説明する。図60は、本実施例に係るミラー600Aの背面図である。ミラー本体601には、複数の環状冷却通路604(1)〜604(5)が同心円状に配設されている。
図61はミラー600Aの断面図である。各環状の冷却通路604(1)〜604(5)には、それぞれ流入口及び流出口が、直径方向に離れて設けられている。各流入口は、共通の流入通路607を介してポンプ610の吐出口に接続されている。各流出口は、共通の流出通路608を介して冷却器611の流入口に接続されている。
ミラー600Aの表面602の温度は、例えば、放射温度計のように構成される温度センサ613によって検出される。温度コントローラ612は、温度センサ613により検出されるミラー表面温度に基づいて、ポンプ610の吐出流量や冷媒温度を制御する。
なお、例えば、各環状の冷却通路604(1)〜604(5)に冷媒を供給する管路の途中に、絞り部を設け、温度コントローラ612によって、絞り部の流路面積を可変に制御する構成としてもよい。例えば、ミラー中心部の環状冷却通路604(1)に設けられる絞り部の流路面積を大きくすれば、ミラー中心部をより強く冷却することができる。このように構成される本実施例も第35実施例と同様の効果を奏する。
図62を参照して第37実施例を説明する。本実施例では、第36実施例において、各環状の冷却通路604(1)〜604(5)のそれぞれに、ポンプ610及び冷却器611をそれぞれ設けている。図62では、都合上、一部のポンプ及び冷却器にのみ符号を付してある。
温度コントローラ612Bは、温度センサ613からの信号に基づいて、各環状冷却通路604(1)〜604(5)を流れる冷媒の流量及び温度をそれぞれ個別に制御する。このように構成される本実施例も第35実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、同心円状に配設された複数の環状冷却通路604(1)〜604(5)に供給する冷媒の流量及び温度を、それぞれ個別に制御することができるため、ミラー表面602の温度をより適切に冷却することができる。
図63を参照して第38実施例を説明する。図63は、本実施例に係る冷却機能付きミラー600Cの断面図である。ミラー本体601内には、例えば、複数の冷却素子620が配設されている。さらに、ミラー表面602の温度を検出するための温度センサ621が、ミラー本体601内に設けられている。冷却素子620は、例えば、ペルチェ効果を利用する素子として構成される。冷却素子620の両端のうち、ミラー表面602側の端部では熱が吸収され、ミラー背面603側の端部では熱が放出される。
温度コントローラ612Cは、各温度センサ621からの検出信号に基づいて、各冷却素子620の作動を個別に制御する。このように構成される本実施例も第37実施例と同様の効果を奏する。
1:EUV光源装置、2:レーザ光源装置、5:EUV露光装置、10,10A,10B:チャンバ、11:チャンバ本体、11(1):集光領域、11(2):発光領域、12:接続部、13:ウインドウ、14:EUV集光ミラー、14A:穴部、15:ターゲット物質供給部、16:軸外放物凹面ミラー、17:反射ミラー、18:軸外放物凸面ミラー、19:ダンパ、20:レーザ発振器、30:増幅システム、31:リレー光学系、32:プリアンプ、33:可飽和吸収体、34,34A〜34E:波面補正器、35:メインアンプ、36,36A〜36C:センサ、36F:予測部、37:空間フィルタ、38:反射ミラー、40:集光システム、41:反射ミラー、44:波面補正器、45,45A:センサ、46,46A:アイソレータ、50,50A,50B:波面補正コントローラ、60:レーザコントローラ、70:EUV光源コントローラ、90:プリパルスレーザ発振器、95,95(1)〜95(3):プリパルスレーザ光用波面補正部、96,96(1)〜96(3):プリパルスレーザ光用センサ、97,97(1)〜97(3):プリパルスレーザ光用波面補正コントローラ、98(1),98(2):プリパルスレーザ光用アンプ、99:プリパルスレーザコントローラ、100,100A:角度補正器、200,200A〜200J:波面曲率補正器、360,360A〜360E:光学的センサ部、600,600A,600B,600C:冷却機能付きミラー。