JP5913094B2 - 複数区画を有する機能性両親媒性分子又は巨大分子製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも一つの治療薬、特に抗新生物剤を送達又は標的化するための、複数区画を有する新規の機能性両親媒性分子又は巨大分子製剤、並びにそのような製剤を調製するための方法、及びその使用に関する。
抗新生物剤の間で、シスプラチンは、特に固形腫瘍の治療のために、広く用いられる抗新生物剤である。しかしながら、その使用は、その毒性及び獲得耐性の出現により、限られている。
これらの欠点を改善するために、異なる製剤は先行技術において提案されている:例えば、米国特許5,178,876は、リポソームでのカプセル化を目的とした疎水性複合体の形態での白金誘導体を記載している。
米国特許6,001,817は、シスプラチン、及び少なくとも一つのヌクレオシド又はデオキシヌクレオシドを含む担体を含む組成物を記載している。
米国特許7,908,160は、リガンドと結合するシスプラチン誘導体に関し、その活性はリガンドとの結合によって可逆的である。
特許出願WO01/32139は、負に荷電した天然の脂質、特にジオレオイルホスファチジルセリン(dioleylphosphatidylserine)に基づいて、凍結及び解凍のサイクルを繰り返すことにより得られる脂質ナノ粒子にカプセル化されたシスプラチン組成物を記載している。この適用では、これは、シスプラチンが、水中で、非荷電の種よりも高い溶解性を有する正に荷電した凝集体を形成することを示し、それは、負に荷電した脂質膜とのそれらの相互作用、及びシスプラチン凝集体の周りの脂質膜の再編成を許容する。
しかしながら、治療薬、特に抗新生物剤の標的化と関連する問題を解決するための要求も存在している。
特に、健康な細胞を保護しながら、すなわち神経の、腎臓の、聴覚の、消化の毒性などを減少させることにより、この治療薬に対する耐性の出現の現象を同時に制限することにより、高い医薬的活性を伴って、腫瘍細胞の内部に迅速に送達されるための治療薬(特にシスプラチン及び/又はその誘導体)を許容するための、手法が探索されている。
特に活性の損失及び毒性の観点から、治療薬の早期放出、及び生物学的媒体中での遊離の治療薬の存在に関連する欠点を避けるために、長期に亘り、十分な安定性を有する担体を提供することが試みられている。
さらに、同じ製剤中の異なる区画に、同じ製剤中の一つ又はそれ以上の治療薬をカプセル化する可能性は、これ(これら)の薬剤(複数)の、同じ標的への、同時の又は互い違いの送達を許容する利益を有し、それぞれの区画は、容器として働くことができる。
機能性両親媒性分子又は巨大分子から形成された、複数区画を有する製剤は、特に37℃で、改良された安定性の特性を示し、このことは長期に亘って前記治療薬を持続した標的化を可能とし、治療薬の効率的で迅速な細胞内送達を許容すること、が今回発見された。
それ故、本発明の対象は第一の態様によれば、機能性両親媒性分子又は巨大分子から形成された異なる極性の少なくとも二つの脂質層により取り囲まれた、治療薬を含む硬い核により構成されるナノ粒子の形態での、複数区画を有する製剤である。
(原文記載無し)
「ナノ粒子」は、約1〜200 nM、好ましくは25〜150 nMの平均直径を有する粒子を意味する。
本記述を換気すると、「本発明によるナノ粒子」又は「複数区画を有するナノ粒子」は、機能性両親媒性分子又は巨大分子から形成された異なる極性の少なくとも二つの脂質層によって取り囲まれた、治療薬を含む硬い核により構成されるナノ粒子の形態での複数区画を有する製剤を意味する。
有利なことに、それぞれの脂質層は、核に存在するそれと同一又は異なる治療薬を含む区画を構成する。
有利な態様によれば、本発明による複数区画を有する製剤は、前もって形成された粒子から形成されるのではなく、治療薬(複数)の存在下で、異なる極性の前記脂質層から形成され、これは、所望の活性に応じて、所望の区画(複数)の中で活性成分の「カスタマイズされた」カプセル化を許容する。
この特定の構造は、治療薬の送達に適合する本発明の安定性(存続期間)による複数区画を有するナノ粒子を与え、そして、この治療薬の放出後、それらの分解を許容する。
好ましくは、第一の脂質層は、一つ又はそれ以上の陰イオン性の脂質(複数)により構成され、第二の脂質層は、一つ又はそれ以上の陽イオン性の脂質(複数)により構成される。
「異なる極性の」は、核を取り囲んでいるそれぞれの連続する脂質層が、前のものと異なる脂質によって構成され、それぞれの層が負(陰イオン性脂質によって構成される)、又は正(陽イオン性脂質によって構成される)、又は中性(中性脂質によって構成される)の全体表面電荷を有することを意味する。例えば、第一の脂質層は、陰イオン性脂質によって形成され、負の表面電荷を帯びるのに対し、第二の脂質層は、陽イオン性脂質によって形成され、正の表面電荷を帯びる。
それぞれの層の表面電荷は、それらのゼータ電位により測定され、例えば、Andrea Mayer らによる Toxicology, 2009, 258, 139-147 、又は K. Furusawa 及び K. Uchiyama, 1988, 140, 217-226 に記述された技術による。
有利な態様によれば、本発明による複数区画を有するナノ粒子は、交互する陰イオン性及び陽イオン性脂質層、及び一つ又はそれ以上の中性脂質(複数)により構成されるさらなる層を含む。
好ましい態様によれば、それぞれの脂質層は、式(I):
Figure 0005913094
の少なくとも一つの機能性両親媒性化合物により構成され、ここで、
−Xは、酸素、又は硫黄原子、又はメチレン基を表し、
−Bは、プリン、又はピリミジン塩基、例えば、ウラシル、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ヒポキサンチン、又はそれらの誘導体、又は非天然の単-又は二環式の、それぞれのその環が、随意的に置換された4〜7のメンバーを含むヘテロ環式の塩基を表し;
−L1及びL2は、同一又は異なって、水素、オキシカルボニル -O-C(O)-基、チオカルバメート -O-C(S)-NH-基、カルボナート-O-C(O)-O-基、カルバメート -O-C(O)-NH-基、酸素原子、リン酸基、ホスホネート基、又は直鎖若しくは分枝鎖の、飽和若しくは不飽和のC2〜C30の炭化水素鎖によって、置換されていない若しくは置換されている1〜4の窒素原子を含むヘテロアリール基を表し、
又は、L1及びL2はまた、共に式のケタール基を形成し、
Figure 0005913094
又は、L1若しくはL2は水素を表し、他方はヒドロキシ基又は直鎖若しくは分枝鎖のC2〜C30のアルキル鎖により置換されていない若しくは置換された1〜4の窒素原子を含むヘテロアリール基を表し;
−R1及びR2は、同一又は異なって、
−フッ素原子により、又はベンジル又はナフチルエステル又はエーテルにより、鎖の末端で炭素が、置換されていない又は置換された、随意的に完全に又は部分的にフッ素化された、飽和又は部分的に不飽和の、直鎖又は分枝鎖のC2〜C30、好ましくは、C6〜C25、特にC8〜C25の炭化水素鎖を表し、又は
−それぞれのアシル鎖がC2〜C30であるジアシル鎖、又は
−ジアシルグリセロール、スフィンゴシン、又はセラミド基、又は
−L1又はL2が、水素を表し、他方がヒドロキシ基又は1〜4の窒素原子を含むヘテロアリール基を表すとき、R1及びR2は存在せず;
−R3は、以下:
−ヒドロキシ、アミノ、リン酸、ホスホネート、ホスファチジルコリン、O-アルキルホスファチジルコリン、チオホスフェート、ホスホニウム、NH2-R4、NHR4R5、又はNR4R5R6基、ここで、R4、R5、及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖若しくは分枝鎖のC1〜C5アルキル、又は直鎖若しくは分枝鎖のC1〜C5ヒドロキシルアルキル鎖、又は
−ヒドロキシル基により随意的に置換された直鎖又は分枝鎖のC2〜C30アルキル鎖又は
−シクロデキストリンラジカル、又は
Figure 0005913094
ここでVは、-O-、-S-、又は-NH-結合を表し、R7は、H又はCH3を、及びn=1〜500を表すラジカル、又は
−-(CH2)n-V-R8基、ここで、R8は、C2〜C30アルキル、及びn=1〜500を表す、又は、
−C2〜C30アルキルにより、又は-(CH2)m-O-(CH2)p-R9基により、置換されない、又は置換される、1〜4の窒素原子を含むヘテロアリール基、ここで、m=1〜6、及びp=0〜10、及びR9は、少なくとも一つの直鎖又は分枝鎖のC2〜C30アルキルにより、又はステロールラジカルにより、置換されていない、又は置換された、5〜7の炭素原子を含む、環状ケタール基を表す、
を表し、又は
−R3は、二量体の形態で式(I)の化合物を形成するために、同一の又は異なる式(I)の他の化合物の、同一又は異なる他の置換基R3との共有結合により、連結され、
それぞれの脂質層は、前のもののそれと異なる極性を有する。
式(I)の化合物の電荷は、当該化合物が含む極性基により決定され、それらは置換基L1、L2、及び/又はR3に本質的に存在するか、又はそれらにより構成される。
第一の脂質層を調製するために用いられる式(I)の陰イオン性化合物は、例えば、陰イオン性核脂質、例えば、L1、L2、及び/又はR3が、随意的に置換された、負の荷電基、例えば、リン酸、ホスホネート、カルボキシレート、硫酸基などを表す式(I)の化合物などから選択される。
第一の脂質層を調製するために用いられる式(I)の陽イオン性化合物は、例えば、陽イオン性核脂質、例えば、L1、L2、及び/又はR3が、随意的に置換された、正の荷電基、例えば、アンモニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム基などを表す式(I)の化合物など選択される。
これらの極性基の電荷はまた、これらの基、例えば、それがアミン、イミダゾール、リン酸基などである場合のpKaによって変化する。
「治療薬」は、特に、ヒトを含む動物において、又は核酸又はそれらの断片の例外を含む、単離された細胞において、例えば、インビトロ、又はインビボで、病理学又は生物学的機能の回復の予防又は治療のために用いられる、例えば、天然の、又は合成の分子を意味する。
そのような分子は、例えば、医薬の活性成分から、特に抗新生物剤、例えば:
-白金錯体、その中でも特に、言及されたシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、ロバプラチンなど、又は、
−白金錯体と結合するルテニウム、又は、
−ルテニウムII及び/又はIII、チタニウム、例えば、二塩化チタノセン、又はグリウム、例えば、ガリウム塩、例えば硝酸ガリウム、塩化ガリウム、KP46、に基づく、白金を含まない無機錯体、又は、
−鉄誘導体、例えば、フェロセニウム塩、鉄を含むヌクレオシドアナログ、ピリジル-五座配位子を含む鉄(II)錯体、又は、
−コバルト誘導体、例えば、ヘキサカルボニルジコバルト錯体、アルキンコバルト錯体、ナイトロジェンマスタードリガンドを含むCo(III)錯体、又は、
−金誘導体、例えば、アウラノフィン、金(I)、(III)、及び(III)錯体、アウロチオグルコースなど、
から選択される。
有利なことに、本発明による複数区画を有する製剤は、それらの分子をカプセル化すること、及びそれらの細胞内送達を確かにすることを可能にし、同時にこれらの化合物に対する獲得耐性の現象を制限する。
白金錯体、特にシスプラチンは、本発明の目的のために好適な治療薬である。
ルテニウムII及び/又はIIIに基づく無機錯体は、例えば、NAMI-A、RAPTA-C、KP1019と呼ばれる錯体である。そのような非-白金錯体は、Ott I. 及び Gust R., Arch. Pharm. Chem. Life Sci. 2007, 340, 117-126 ; Reedijk J., Curr Opin Chem Biol., 1999, 3, 236-40 ; Haimei Chen らによる J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 173-186に記載されている。
鉄を含むヌクレオシドアナログは、 Schlawe D. らによる Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 1731-1734に記載されている。
有利なことに、置換基Bで表される少なくとも一つの治療薬のリガンド (核酸塩基、ヌクレオシド、修飾されたヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヘテロ環など)を含み、少なくとも一つの親水性部分(リン酸、カルボキシレートなど)、及び少なくとも一つの疎水性部分(一本鎖、二本鎖である疎水性部分、及び生物学的起源のシントン由来の極性部分など)の存在により両親媒特性を有する、式(I)の化合物を構成する分子及び/又は巨大分子構造は、治療薬を含む安定的なナノ粒子を形成することを可能にすることが発見された。
式(I)の化合物の両親媒性特性、これらの化合物の中の治療薬(活性成分)のリガンドの存在、及び治療薬とこれらの化合物の間の何らかの静電気的相互作用を組み合わせることにより、得られたナノ粒子は、それ故、カプセル化された活性成分、特に抗新生物剤、の効果的で迅速な細胞内送達を許容する構造を有する。
本発明を一つの説に限定するものではないが、式(I)の化合物の分子内相互作用は、使用の条件下で長期に亘る一層の安定性をもたらす、ナノ粒子の表面に及ぼす凝集力の増加を導くと仮定される。
調節可能な極性を有する多重脂質層に基づく、本発明のナノ粒子の複数区画を有する構造は、それらに多数の利点、特に:
-特に生物学的媒体における、増大した安定性、
-想定される使用におけるそれらの有効性に応じた表面電荷(ゼータ電位)の調節、
−それらの機能化(機能性、標的化薬剤などの導入)、
−異なる治療薬の組み込み、
を与える。
有利なことに、前記ナノ粒子はまた、治療薬のための担体としてのそれらの使用と適合した存続期間を有する。
上述の式(I)では、nは、有利に、1〜500の間に含まれ、好ましくは1〜100の間に含まれ、特に1〜50の間に含まれ、なお特に1〜10の間に含まれる。
「直線又は分枝のC1〜C5アルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、3級-ブチルラジカル、好ましくはメチル又はエチルを意味する。
また、上述の式(I)では、プリン又はピリミジン塩基、又は非天然へテロ環塩基は、例えば、ハロゲン、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、カルボニルアミノ基、ヒドロキシ、アジド、シアノ、アルキル、シクロアルキル、ペルフルオロアルキル、アルキルオキシ(例えば、メトキシ)、オキシカルボニル、ビニル、エチニル、プロピニル、アシル基などから選択される、少なくとも一つの置換基により置換される。
「非天然ヘテロ環塩基」は、ウラシル、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、又はヒポキサンチン以外の天然では存在しない塩基を意味する。
「1〜4の窒素原子を含むヘテロアリール基」は、単環の、又は二環の、芳香族の、又は部分的に不飽和の、5〜12の原子を含み、1〜4の窒素原子により遮られた、炭素環の基、特にピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、またはイミダゾール基を意味する。
式(I)の化合物の調製のために、この種類の化合物(特にpp.8〜17 及び実施例参照)への異なる到達経路を記述する、出願WO 2005/116043を参照することができる。
後続の態様によれば、本発明はまた、それぞれの脂質層が、核の中に存在するそれと同一又は異なる治療薬を含む区画を構成する、機能性両親媒性分子又は巨大分子から形成される異なる極性の少なくとも二つの脂質層により取り囲まれる、治療剤を含む核により構成される固体ナノ粒子の形態で、複数区画を有する製剤を調製するための方法であって、以下のステップ:
a)少なくとも一つの機能性両親媒性分子又は巨大分子、特に上述の定義された式(I)の機能性両親媒性化合物、及び治療薬を調製し、
b)前記治療薬を含むナノ粒子を得るために、繰り返して加熱する及び凍結するサイクルに前記混合物を供し、及び
c)このようにして得られた前記治療薬を含むナノ粒子を再被覆し、
d)前記ナノ粒子を、ステップa)で用いられたそれと異なる極性を有する、少なくとも一つの機能性両親媒性分子又は巨体分子、特に、上記で定義された式(I)の機能性両親媒性化合物の存在の中に移し、
e) このようにして得られた複数区画ナノ粒子を再被覆すること、
を含む、方法に関する。
好ましくは、治療薬は、抗新生物剤、特に、白金錯体、特にシスプラチンである。
有利なことに、本方法のステップは、所望の脂質層の数を得るために必要な回数繰り返される。
随意的に、少なくとも一つの機能性両親媒性分子、又は巨大分子、特に上記で定義された式(I)の機能性両親媒性化合物、により構成される中性の脂質層の形成から成り、前記の式(I)の前記分子又は化合物は中性である、追加のステップは、ステップd)及びステップe)の間で行われる。
好ましい態様によれば、ステップa)及び/又はステップd)では、少なくとも一つの共脂質は、機能性両親媒性化合物に加えて用いられる。
「共脂質」は、ナノ粒子の脂質層(複数)の構造の製造に寄与する、式(I)の化合物と組み合わせて用いられる化合物を意味する。
好ましくは、両性イオン性共脂質が用いられる。
前記共脂質は、例えば、ジオレイルホスホファチジルコリン(DOPC)、ジオレイルホスファチジルウリジンホスファチジルコリン(DOUPC)、又はジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から選択される。
これらの化合物は、それらが式(I)の化合物との混合に用いられたときに、共脂質の役割を果たす。代わりに、それらは、式(I)、例えば、ジオレイルホスファチジルウリジンホスファチジルコリン(DOUPC)などに含まれる。この場合、それらは、式(I)の化合物の役割を果たす、又は式(I)の他の化合物と組み合わせで、共脂質の役割を果たす。
他の有利な態様によれば、ステップa)に用いられるそれと同一又は異なる治療薬は、ステップd)に導入される。
好ましくは、ステップa)に用いられる式(I)の機能性両親媒性化合物(複数)は、陰イオン性であり、ステップd)に用いられる式(I)の機能性両親媒性化合物(複数)は、陽イオン性である。
有利なことに、式(I)の中性機能性両親媒性化合物は、ステップd)及びステップe)の間で製造される最外部の脂質層を構成するために用いられる。
より具体的には、複数区画を有する製剤を調製するための方法は、例えば、式(I)の化合物により形成された異なる極性の二つの脂質層により取り囲まれた、治療薬を含む硬い核により構成されるナノ粒子の形態の複数区画を有する製剤の製造、を説明する下記の一般的な条件の下で実施されるステップを含む。
1) 治療薬を多く含む核、及び第一の脂質層を含む、本発明によるナノ粒子の形成
−式(I)の化合物は、脂質混合物を形成するために、有機溶媒に溶解され、その後、溶媒を、第一の脂質被膜を形成するために蒸発させた;
−平行して、治療薬、好ましくは抗新生物剤の所望の量は、蒸留水に溶解された;
−脂質被膜は、治療薬、好ましくは、抗新生物剤の溶液中で再水和された。透明な溶液が超音波処理及び加熱により得られた;
−溶液は、急速に、例えば、液体窒素への浸漬により、冷却された。この加熱/冷却のサイクルは、好ましくは、1〜10回、好ましくは5〜10回、好ましくは10回、行われた;
−得られた懸濁液の超音波処理、及び遠心分離後、上清は取り除かれ、ペレットは再懸濁された;
−遠心分離後、ペレットは取り除かれ、上清は回収された。
2) 治療薬を多く含む核、異なる極性の二つの脂質層を含む、本発明によるナノ粒子の形成
−第二の脂質被膜は、本方法の第一の部分で用いられる式(I)の化合物のそれと異なる極性の式(I)の化合物から調製された;
−第二の脂質被膜は、前に回収された上清で再水和され、
−得られた懸濁液の超音波処理、及び遠心分離後、上清は分離され、ペレットは再懸濁された;
−遠心分離後、ペレットは取り除かれ、異なる極性の二つの脂質層を含む複数区画を有するナノ粒子を含む、上清は回収された。
有利なことに、上記の方法のステップは、所望の脂質層の数を得るために必要な回数繰り返される。
好ましくは、脂質層の数は、2〜6の間で含まれる。
随意的に、上記で定義されたような、少なくとも一つの式(I)の機能性両親媒性化合物、前記の中性である式(I)の化合物、により構成される脂質層の形成から成る追加のステップ、は、本発明による複数区画を有するナノ粒子の回収を許容する最終ステップの前に、本方法の第二の部分の間に行われる。
好ましい態様によれば、上述の調製の最初の部分において、又はその2番目の部分において、液体混合物の形成の間、少なくとも一つの上述のような共脂質は、式(I)の化合物に加えて用いられる。
本発明による好ましい製剤は、第一の脂質層が陰イオン性で、第二の脂質層が、陽イオン性であるそれらである。
有機溶媒は、例えば、当該分野における通常の有機溶媒、例えば、クロロホルム、又はジクロロメタン、アルコール、例えば、メタノール又はエタノールなどから選択される。
加熱は、好ましくは、20℃〜80℃の範囲の温度まで、冷却は-190℃(液体窒素)〜0℃(氷)の範囲の温度まで行われた。適切な加熱する/冷却するサイクルは、例えば、過熱について45℃、冷却について-78℃である。
好ましくは、治療薬は、白金錯体(シスプラチン、カルボプラチンなど)、特に好ましいシスプラチン、又は白金錯体と結合するルテニウム、又は上述の、ルテニウムII、又はIII、チタン、ガリウム、コバルト、鉄、又は金に基づく白金を含まない無機錯体から選択される。
式(I)の化合物/治療薬のモル比Rは、例えば、0.01〜50の間で、特にR=0.2で含まれる。
得られたナノ粒子は、随意的に、例えば、100又は200 nmの範囲の細孔直径を有するポリカーボネートを通して押し出される。
複数区画を有するナノ粒子は、それ故得られる、それは、
共脂質を含む、または含まない上述のような式(I)の機能性両親媒性化合物により構成された異なる極性の少なくとも二つの脂質層により取り囲まれた治療薬(活性成分)を多く含む硬い核により構成される。
本発明の態様によれば、前記脂質混合物は、少なくとも一つの式(I)の化合物だけを含み、共脂質を含まない。
活性成分の細胞内送達が有意であるように、治療薬は、好ましくは、水相で0.1 ng/mL〜 10 mg/mLの範囲の濃度で用いられる。
脂質層を形成するために用いられる式(I)の好適な化合物は、Xが酸素を表すそれらである。
Bがチミン又はアデニンを表す式(I)の化合物はまた、好適な化合物である。
L1、L2、及び/又はR3が、負に荷電した基、例えば、随意的に置換されている、リン酸、ホスホナート、カルボキシレート、硫酸基などは、陰イオン性脂質層を得るために好適な化合物である。
L1、L2、及び/又はR3が、正に荷電した基、例えば、随意的に置換されている、アンモニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム基など、は、陽イオン性脂質層を得るために好適な化合物である。
好ましい態様によれば、本発明は、式(I)のこれらの化合物、及び治療薬、特に抗新生物剤、特に白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、ロバプラチンなど)、又は白金錯体と結合することのできるルテニウム、又はルテニウム、チタン、ガリウム、コバルト、鉄、又は金に基づく白金を含まない上述の無機錯体、を含む、上記で定義したような複数区画を有するナノ粒子に関する。シスプラチンは、本発明の目的のための好ましい抗新生物剤である。
式(I)の化合物はまた、抗新生物活性を有するプリン‐又はピリミジン−に基づく誘導体、例えば、アラシトシン(AraC)、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロドデオキシウリジン(IdU)、2'-デオキシ-2'-メチリデンシチジン(DMDC)、又は 5-クロロ-6-アジド-5,6-ジヒドロ-2'-デオキシウリジンなどを含む。
本発明の対象はまた、治療薬、特に抗新生物剤の送達又は標的化のための薬剤としての、上述の複数区画を有するナノ粒子の使用である。
特に、本発明の対象はまた、治療薬、特に抗新生物剤の細胞内送達のための薬剤としての、上述の複数区画を有するナノ粒子の使用である。
本発明はまた、抗新生物医薬の調製のための、上述の複数区画を有するナノ粒子の使用に関する。
本発明はまた、腫瘍疾患、特に癌、例えば、卵巣、睾丸、結腸、頸部、肺の癌、又は腺肉腫など、の治療のための、上述の複数区画を有するナノ粒子に関する。
前記の複数区画を有するナノ粒子は、上述の方法により、得られる。
本発明はまた、上述のように、機能性両親媒性分子又は巨大分子(又は複数区画を有するナノ粒子)から形成される異なる極性の少なくとも二つの脂質層により取り囲まれた、治療薬を含む硬い核により構成されるナノ粒子の形態で、複数区画を有する製剤を含む医薬組成物、及び医薬的に許容される媒体に関する。
本発明は、下記の実施例により非限定的に説明される。
全ての出発化合物は、化学製品の供給者(Aldrich、Alfa Aeser、及びAventi Polar Lipid)から入手し、続いて精製することなく用いられた。溶媒は、さらに蒸留することなく用いられた。合成された化合物は、例えば、NMR(300.13 MHzでの 1H、75.46 MHzでの13C、及び121.49 MHzでの31P)及び質量分析(特性)などの、標準的な分光分析方法を用いて特徴付けられた。NMRにおける化学シフト(δ)は、ppmで、及びTMSとの比較で表された。NMR 1Hにおけるカップリング定数 JはHzで表される。Merck RP-18 F254sプレートは、薄層クロマトグラフィー(TLC)に、用いられた。SEPHADEX LH-20(25〜100μm)シリカは、定量クロマトグラフィーによる精製に用いられた。
「調製物」と題された以下の実施例は、式(I)の化合物を調製するために用いられる合成中間体の調製を記載する。式(I)の化合物の調製、及び本発明によるナノ粒子の試験は、下記の合成例及び「実施例」と題された試験に記載される。
調製物1
5'-パラトルエンスルホニルチミジン
Figure 0005913094
0.1 M溶液中の2 gのチミジン(8.26 mmol)は、無水窒素雰囲気下で、二つ口フラスコ中の無水ピリジンに加えられた。溶液は、その後、0℃に冷却され、3.935 gのパラトルエンスルホン酸クロリド(2.5当量、20.6 mmol)が少量ずつ加えられた。反応溶媒は、周囲温度に戻すために放置され、その後10時間撹拌された。反応は、その後、10 mLのメタノールの添加により停止され、30 分間撹拌が続けられた。50 mLのCH2Cl2は、混合物に加えられ、その後、それは、20 mLのNaHCO3の5%溶液、20 mLのNaClの飽和溶液、及び20 mLのNaHCO3の5%溶液で連続的に洗浄された。溶媒は、減圧下で、除去された。予想された化合物は、メタノールからの再結晶化により、純粋な状態で得られた。
RF:0.47(酢酸エチル/メタノール 9/1)
収率:75%
NMR 1H (300.13 MHz, DMSO d6) : δ 1.77 (s, 3H, CH3), δ 2.11 (m, 2H, CH2), δ 2.42 (s, 3H, CH3), δ 3.52 (t, j = 6 Hz, 4H, CH2), δ 4.18 (m, 1H, CH), δ 4.25 (m, 3H, CH, CH2), δ 5.42 (s, 1H, OH), δ 6,15 (t, j = 6 Hz, H, CH), δ 7.38 (s, 1H, CH), δ 7.46 (s, 1H, CH), δ 7.49 (s, 1H, CH), δ 7.78 (s, 1H, CH), δ 7.81 (s, 1H, CH), δ 11.28 (s, 1H, NH)。
NMR 13C (75.47 MHz, DMSO d6) : δ 12.5 (CH3), δ 21.6 (CH3), δ 38.9 (CH2), δ 70.4 (CH2), δ 70.6 (CH), δ 83.7 (CH), δ 84.5 (CH), δ 110.3 (C), δ 128.1 (ar CH), δ 130.6 (ar 2 CH), δ 132.6 (ar C), δ 136.4 (ar C), δ 145.6 (C), δ 150.8 (C=O), δ 164.1 (C=0)。
高分解能MS[M+H]+:397.1
調製物2
2'-デオキシ-5'-トルエンスルホニルアデノシン
Figure 0005913094
0.1 M溶液中の2 gの2'-デオキシアデノシン(8 mmol)は、無水窒素雰囲気下で、二つ口フラスコ中の無水ピリジンに加えられた。溶液は、その後、0℃に冷却され、3.793 gのパラトルエンスルホン酸クロリド(2.5当量、20 mmol)が少量ずつ加えられた。反応溶媒は、周囲温度に戻すために放置され、その後10時間撹拌された。反応は、その後、10 mLのメタノールの添加により停止され、30 分間撹拌が続けられた。50 mLのCH2Cl2は、混合物に加えられ、その後、それは、20 mLのNaHCO3の5%溶液、20 mLのNaClの飽和溶液、及び20 mLのNaHCO3の5%溶液で連続的に洗浄された。溶媒は、減圧下で、除去された。予想された化合物は、メタノールからの再結晶化により、純粋な状態で得られた。2.1 gの白色生成物がこの方法で単離された。
RF:0.37(酢酸エチル/メタノール 9/1)
収率:63%
調製物3
5'-アジド‐5'‐デオキシチミジン
Figure 0005913094
DMFの0.1 M溶液中の2 gの調製物1に記載の通りの5'-パラトルエンスルホニルチミジン(5 mmol)は、無水窒素雰囲気下で、凝縮装置が備えられた二つ口フラスコ中に、加えられた。1.3 gのアジ化ナトリウム(4当量、20 mmol)が加えられた。溶液は、その後、撹拌され、110℃で10時間加熱された。混合物は周囲温度に冷却された。50 mLのCH2Cl2は、混合物に加えられ、その後、それは、15 mLの水で2回、その後15 mLのNaClの飽和水溶液で連続的に洗浄された。有機相は、硫酸ナトリウム上で乾燥され、その後溶媒は、減圧下で除去された。予想された化合物は、メタノールからの再結晶化により、純粋な状態で得られた。0.8 gの白色固形物がこの方法で得られた。
RF:0.47(酢酸エチル/メタノール 9/1)
収率:60%
MS[M+H]+:268.1
調製物4
5'-アジド-2'-ジデオキシアデノシン
Figure 0005913094
DMFの0.1 M溶液中の2 gの調製物2に記載の通りの2'-デオキシ-5'-パラトルエンスルホニルアデノシン(5 mmol)は、無水窒素雰囲気下で、凝縮装置が備えられた二つ口フラスコ中に、加えられた。1.3 gのアジ化ナトリウム(4当量、20 mmol)が加えられた。溶液は、その後、撹拌され、110℃で10時間加熱された。混合物は周囲温度に冷却された。50 mLのCH2Cl2は、混合物に加えられ、その後、それは、15 mLの水で2回、その後15 mLのNaClの飽和水溶液で連続的に洗浄された。有機相は、硫酸ナトリウム上で乾燥され、その後溶媒は、減圧下で除去された。予想された化合物は、メタノールからの再結晶化により、純粋な状態で得られた。0.8 gの白色固形物がこの方法で得られた。
RF:0.37(酢酸エチル/メタノール 9/1)
収率:60%
高分解能MS[M+H]+:計算質量:277.1161、測定質量:277.1157
調製物5
1-プロパルギルオキシオクタデカン
Figure 0005913094
DMFの0.5 M溶液中の673 mgのプロパルギルアルコール(12 mmol)は、無水窒素雰囲気下で、清潔で乾燥したフラスコ中に、加えられた。溶液は、その後0℃に冷却され、180 mgの水素化ナトリウム(0.625当量、7.5 mmol)が少量ずつ加えられた。反応溶媒は、周囲温度に戻すために放置された。2 gの1-ブロモ-オクタデカン(0.5当量、6 mmol)が加えられた。撹拌は5時間続けられた。反応は、その後、10 mLのメタノールの添加により停止され、撹拌は30分続けられた。50 mLのCH2Cl2は、混合物に加えられ、その後、それは、20 mLの水で2回、及び20 mLのNaClの飽和水溶液で連続的に洗浄された。有機相は、その後、Na2SO4上で乾燥され、その後、溶媒は、減圧下で除去された。予想された化合物は、クロマトグラフィーカラム(ヘキサン)で分離後、純粋な状態で得られた。1.2 gの白色生成物がこの方法で得られた。
RF:0.82(ヘキサン)
収率:65%
NMR 1H (300.13 MHz, CDCl3) : δ0.90 (t, j = 6 Hz, 3H, CH3), δ1.28 (s, 30H, CH2), δ1.61 (m, 2H, CH2), δ2.43 (t, j = 3 Hz, 1H, CH), δ3.53 (t, j = 6 Hz, 2H, CH2), δ4.15 (d, j = 3 Hz, 2H, CH2)。
NMN 13C (75.47 MHz, CDCl3): δ 14.2 (CH2), δ22.7 (CH2), δ26.1 (CH2), δ29.4 (CH2), δ29.5 (CH2), δ29.6 (CH2), δ32.0 (CH2), δ58.0 (CH2), δ70,4 (CH2), δ74,1 (CH), δ80.1 (C)。
調製物6
1,12-プロパルギルオキシドデカン
12-プロパルギルオキシドデカン-1-オール
DMFの0.5 M溶液中の1 gのドデカン-1,12-ジオール(5 mmol)は、無水窒素雰囲気下で、清潔で乾燥したフラスコに、加えられた。溶液は、その後0℃に冷却され、360 mgの水素化水素(hydrogen hydride)(3当量、15 mmol)が少量ずつ加えられた。反応溶媒は、周囲温度に戻すために放置された。1.49 gのプロパルギルブロミド(2.5当量、12.5 mmol)が加えられた。撹拌は5時間続けられた。反応は、その後、10 mLのメタノールの添加により停止され、撹拌は30分続けられた。50 mLのCH2Cl2は、混合物に加えられ、その後、それは、20 mLの水で2回、及び20 mLのNaClの飽和水溶液で連続的に洗浄された。有機相は、その後、Na2SO4上で乾燥され、その後、溶媒は、減圧下で除去された。得られた生成物は、その後クロマトグラフィーカラム(ヘキサン/酢酸エチル 9/1)で分離された。二つの生成物、即ち、1,12-プロパルギルオキシドデカンに相当する370 mgの茶色オイル、及び12-プロパルギルオキシドデカン-1-オールに相当する430 mgの茶色固形物は単離された。
1,12-プロパルギルオキシドデカン
Figure 0005913094
RF:0.53(ヘキサン/酢酸エチル 9/1)
収率:27%
NMR 1H (300.13 MHz, CDCl3) : δ1.31 (m, 16H, CH2), δ1.61 (m, 4H, CH2), δ2.43 (t, j = 3 Hz, 1H, CH), δ3.52 (t, j = 6 Hz, 4H, CH2), δ4.15 (d, j = 3 Hz, 4H, CH2)。
NMR 13C (75.47 MHz, CDCl3) : δ26.1 (CH2), δ29.4 (CH2), δ29.5 (CH2), δ29.6 (CH2), δ58.0 (CH2), δ70.3 (CH2), δ74.1 (CH), δ80.1 (C)。
12-プロパルギルオキシドデカン-1-オール
Figure 0005913094
RF:0.10(ヘキサン/酢酸エチル 9/1)
収率:36%
NMR 1H (300.13 MHz, CDCl3) : δ1.32 (m, 16H, CH2), δ1.59 (m, 4H, CH2), δ2.43 (t, j = 3 Hz, 2H, CH), δ3.52 (t, j = 6 Hz, 2H, CH2), δ3.65 (t, j = 15 6 Hz, 2H, CH2), δ4.15 (d, j = 3 Hz, 2H, CH2)。
NMR 13C (75.47 MHz, CDCl3) : δ25.8 (CH2), δ26.0 (CH2), δ29.4 (2 CH2), δ29.5 (2 CH2), δ29.6 (CH2), δ32.7 (CH2), δ57.9 (CH2), δ62.7 (CH2), δ70.2 (CH2), δ74.2 (CH), δ79.9 (C)。
調製物7
o-プロパルギルコレステロール
Figure 0005913094
DMFの0.5 M溶液中の500 mgのコレステロール(1.3 mmol)は、無水窒素雰囲気下で、清潔で乾燥したフラスコ中に、加えられた。溶液は、その後0℃に冷却され、47 mgの水素化ナトリウム(1.5当量、2 mmol)が少量ずつ加えられた。反応溶媒は、周囲温度に戻すために放置された。238 mgのプロパルギルブロミド(1.5当量、2 mmol)が加えられた。撹拌は5時間続けられた。反応は、その後、10 mLのメタノールの添加により停止され、撹拌は30分続けられた。50 mLのCH2Cl2は、混合物に加えられ、その後、20 mLの水で2回、及び20 mLのNaClの飽和溶液で連続的に洗浄された。有機相は、その後、Na2SO4上で乾燥され、その後、溶媒は、減圧下で除去された。予想された化合物は、クロマトグラフィーカラム(ヘキサン/酢酸エチル 8/2)で精製後、得られた。215 mgの白色生成物がこの方法で単離された。
RF:0.83(ヘキサン/酢酸エチル8/2)
収率:39%
実施例1
チミジン 3'-(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-リン酸)(di c14dT)
Figure 0005913094
5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-デオキシチミジン,3'[(2-シアノ-エチル)-N,N-ジイソプロピル]ホスホラミダイト(0.500 g、1当量、0.67 mmol)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール(0.447 g、1.3当量、0.87 mmol)、及びアセトニトリル中のテトラゾールの0.45M溶液(2 mL、1.3当量、0.87 mmol)は、窒素雰囲気下で、4 mLの無水アセトニトリルに溶解された。反応溶媒は、24時間、周囲温度で磁気的に撹拌された。混合物は、その後、43 mLのTHF/Pyr/水中の0.02 M溶液のジヨードを添加することにより、酸化された。周囲温度で12時間後、溶媒は真空下で蒸発させた。残余物は、8 mLのジクロロメタンに溶解させた。その後、0.2 mLの1,5‐ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデク7-エン(DBU)(1.3当量、0.87 mmol)が5時間に亘り、反応溶媒に添加された。反応溶媒は、0.1 N溶液の塩酸で、その後Na2S2O7の飽和溶液で洗浄された。有機相は、真空下で濃縮された。化合物は、溶出勾配(メタノール/DCM 9:1から1:1)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによる精製後、得られた(381 mg)。
収率:69%
Rf:0.34(DCM/メタノール 9:1)
NMR 1H (300 MHz, CDCl3) : δ(ppmで) 0.84 (t, 6H, J=6.92 Hz, 2*CH3), 1.21 (m, 40H, 20*CH2), 1.42 (dd, 4H, J1=8.45 Hz, J2=15.68 Hz, 2*CH2), 1.89 (s, 3H, Me), 2.30 (dd, 4H, J1=7.43 Hz, J2=15.92 Hz, 2*CH2), 2.83 (t, 2H1, J=5.84, H2'), 3.84 (m, 1H, H3'), 4.09-4.35 (m, 7H, 2*CH2(グリセロール), H4', H5'), 5.27 (s, 1H, CHグリセロール), 6.22 (t, 1H, J=6.81 Hz, H1'), 7.61 (s, 1H, H塩基)。
NMR 13C (75 MHz, CDCl3) : δ(ppmで) 19.29 (CH3), 23.71 (CH2), 26.57 (CH2), 28.73 (CH2), 32.76 (CH2), 37.85 (CH2), 48.90 (CH2), 166.15 (C=O)。
NMR 31P (121 MHz, CDCl3) : δ(ppmで) 0.61。
高分解能質量FAB − 理論値 m/z = 815.4823 観測値 m/z = 815.4794。
実施例2
チミジン 3'-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-リン酸)(di c16dT)
Figure 0005913094
5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-デオキシチミジン,3'[(2-シアノ-エチル)-N,N-ジイソプロピル]ホスホラミダイト(0.500 g、1当量、0.67 mmol)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール(0.496 g、1.3当量、0.87 mmol/3 mLのTHFに可溶化)、及びアセトニトリル中のテトラゾールの0.45 M溶液(2 mL、1.3当量、0.87 mmol)は、窒素雰囲気下で、3 mLの無水アセトニトリルに溶解された。反応溶媒は、窒素雰囲気下で、周囲温度で、24時間磁気的に撹拌された。混合物は、その後43 mLのTHF/Pyr/水中の0.02 M溶液のジヨードを添加することにより、酸化された。周囲温度で12時間後、溶媒は、真空下で蒸発させ、ポンプを用いて、P2O5上で乾燥させた。残余物は、8mLのジクロロメタンに溶解させた。その後、0.2 mLの1,5-ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)(1.3当量、0.87 mmol)が5時間に亘り、反応溶媒に添加された。反応溶媒は、0.1 N溶液の塩酸で、その後Na2S2O3の飽和溶液で洗浄された。有機相は、真空下で濃縮された。化合物は、溶出勾配(メタノール/DCM 98:2から1:1)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによる精製後、得られた(180 mg)。
収率:24%
Rf:0.3(DCM/メタノール 8:2)
NMR 1H (300 MHz, CDCl3) : δ(ppmで) 0.88 (t, 6H, J=6.9 Hz, 2*CH3), 1.25 (m, 48H, 24*CH2), 1.42 (dd, 4H, J1=8.4 Hz, J2=15.6 Hz, 2*CH2), 1.90 (s, 3H, Me), 2.33 (m, 4H, 2*CH2), 2.83 (t, 2H, J=5.6 Hz, H2'), 3.84 (m, 1H, H3'), 4.09-4.35 (m, 7H, 2*CH2(グリセロール), H4', H5'), 5.27 (s, 1H, CH グリセロール), 6.21 (t, 1H, J=6.7 Hz, HT), 7.54 (s, 1H, H 塩基)。
NMR 13C (75 MHz, CDCl3) : δ(ppmで) 12.4 (CH3 塩基), 14.1 (CH3 鎖), 19.6 (CH2), 19.7 (CH2), 22.6 (CH2), 24.8 (CH2), 29.1-29.6 (CH2), 31.9 (CH2), 33.9 (CH2), 34.1 (CH2), 61.5 (CH2), 61.7 (CH2), 62.5 (CH2), 62.6 (CH2), 66.1 (CH2), 66.2 (CH2), 69.1 (CH), 78.8 (CH), 85.5 (CH), 86.1 (CH), 111.3 (C 塩基), 136.8 (CH 塩基), 150.5 (C=0 塩基), 164.1 (C=0 塩基), 173.0 (C=0 鎖), 173.5 (C=0 鎖)。
NMR 31P (121 MHz, CDCl3) : δ(ppmで) 2.1。
質量 ESI- : 理論値 m/z = 872.5 観測値 m/z = 871.3。
実施例3
5'-(4-ヘキサデシルオキシメチル- [1,2,3]トリアゾール-1-イル)-5',2'ジデオキシチミジン
Figure 0005913094
調製物3に記載した通りの200 mgの5'-アジド-5'-デオキシチミジン(0.75 mmol)、及び調製物5に記載した通りのTHFと水の混合物(1/1)中の0.1 M溶液中の231 mgの1-プロパルギルオキシオクタデカン(1当量)はフラスコに加えられた。その後、以下:30 mgのアスコルビン酸ナトリウム(0.2当量、0.15 mmol)、及び12 mgの硫酸銅(0.1当量、0.075 mmol)は、連続的に添加された。反応溶媒は、撹拌され、60℃で5時間加熱された。混合物は、その後周囲温度に冷却された。反応溶媒は、直ちにシリカに吸収され、溶媒は蒸発させた。180 mgの白色固形物が、シリカカラムでのクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール 8/2)後、得られた。
RF:0.72(酢酸エチル/メタノール 8/2)
収率:42%
高分解能MS[M+H]+:計算質量:576.4125、測定質量:576.4120
実施例4
5'-(4-ヘキサデシルオキシメチル-[1,2,3]トリアゾール-1-イル)-5',2'-ジデオキシアデノシン
Figure 0005913094
調製物4に記載した通りの200 mgの5'-アジド-5',2'-ジデオキシアデノシン(0.72 mmol)、及び調製物5に記載した通りのTHFと水の混合物(1/1)中の0.1 M溶液中の223 mgの1-プロパルギルオキシオクタデカン(1当量)はフラスコに加えられた。その後、以下:30 mgのアスコルビン酸ナトリウム(0.2当量、0.15 mmol)、及び12 mgの硫酸銅(0.1当量、0.075 mmol)は、連続的に添加された。反応溶媒は、撹拌され、60℃で5時間加熱され、その後混合物は、周囲温度に冷却された。反応溶媒は、直ちにシリカに吸収され、溶媒は蒸発させた。150 mgの白色固形物が、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール 8/2)後、得られた。
RF:0.65(酢酸エチル/メタノール 8/2)
収率:35%
NMR 1H (300.13 MHz, CDCl3) : δ0.89 (t, j = 6 Hz, 3H, CH3), δ1.26 (m, 3OH, CH2), δ 1.55 (m, 2H, CH2), δ2.54 (m, 1H, CH2), δ3.06 (m, 1H, CH2), δ3.45 (t, j = 6 Hz, 2H, CH2), δ4.50 (m, 4H, CH2, CH), δ4.89 (m, ???), δ5.88 (s, 2H, NH2), δ6.40 (t, j = 6 Hz, 1H, CH), δ7.42 (s, 1H, CH), δ7.81 (s, 1H, CH), δ8.35 (s, 1H, CH)。
高分解能 MS [M+H]+ : 計算質量: 585.4241、測定質量:585.4254
実施例5
5'-(4-((O−コレステリル)-メチル)-[1,2,3]トリアゾール-1-イル)-5',2'ジデオキシチミジン
Figure 0005913094
調製物3に記載した通りの170 mgの5'-アジド-5'-デオキシチミジン(0.63 mmol)、及び調製物7に記載した通りのTHFと水の混合物(1/1)中の0.1 M溶液中の270 mgのo-プロパルギルコレステロール(1当量)はフラスコに加えられた。以下:20 mgのアスコルビン酸ナトリウム(0.2当量、0.13 mmol)、及び10 mgの硫酸銅(0.1当量、0.063 mmol)は、連続的に添加された。反応溶媒は、撹拌され、60℃で5時間加熱された。混合物は、周囲温度に冷却された。反応溶媒は、直ちにシリカに吸収され、溶媒は蒸発させた。化合物は、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール 8/2)により、純粋な状態で得られた。260 mgの白色固形物が得られた。
RF:0.57(酢酸エチル/メタノール 8/2)
収率:59%
MS [M+H]+ : 692.3
実施例6
1,12-ビス-[5'-(4-(メチル)-[1,2,3]トリアゾール-1-イル)-5',2'ジデオキシチミジン]-オキシドデカン
Figure 0005913094
調製物3に記載した通りの100 mgの5'-アジド-5'-デオキシチミジン(0.375 mmol)、及びTHF/水混合物(1/1)中の0.1 M溶液中の、調製物6に記載した通りの化合物から調製された52 mgの1,12-ジプロパルギルオキシドデカンはフラスコに加えられた。以下:15 mgのアスコルビン酸ナトリウム(0.2当量、0.075 mmol)、及び6 mgの硫酸銅(0.1当量、0.0375 mmol)は、連続的に添加された。反応溶媒は、撹拌され、60℃で5時間加熱された。混合物は、その後、周囲温度に冷却された。反応溶媒は、直ちにシリカに吸収され、溶媒は蒸発させた。化合物は、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール 8/2)により、純粋な状態で得られた。90 mgの白色固形物が得られた。
収率:59%
NMR 1H (300.13 MHz, メタノール d4) : δ 1.28 (m, 16H, CH2), δ0.83 (m, 4H, CH2), δ1.89 (s, 6H, CH3), δ2.17 (s, 2H, CH2), δ2.25 (m, 4H, CH2), δ3.51 (t, j = 6 Hz, 4H, CH2), δ4.18 (m, 2H, CH) δ4.42 (m, 2H, OH) δ4.58 (s, 4H, CH2), δ4.76 (qd, j = 6 Hz, 4H, CH2), δ6.21 (t, j = 6 Hz, 2H, CH), δ7.23 (s, 2H, CH), δ7,99 (s, 2H, CH)。
実施例7
5'-(4-(1(R;-ヒドロキシ-ヘキシル)-[1,2,3]トリアゾール-1-イル)-5',2'ジデオキシチミジン
Figure 0005913094
調製物3に記載した通りの215 mgの5'-アジド-5'-デオキシチミジン(0.8 mmol)、及びTHF/水混合物(1/1)中の0.1 M溶液中の、101.5 mgの(R)オクト-1-イン-3-オール(1当量)はフラスコに加えられた。以下:31.5 mgのアスコルビン酸ナトリウム(0.2当量、0.15 mmol)、及び13 mgの硫酸銅(0.1当量、0.075 mmol)は、連続的に添加された。反応溶媒は、撹拌され、60℃で5時間加熱された。混合物は、その後、周囲温度に冷却された。反応溶媒は、その後、直ちにシリカに吸収され、溶媒は蒸発させた。化合物は、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール 9/1)により、純粋な状態で得られた。240 mgの白色固形物が得られた。
RF:0.48(酢酸エチル/メタノール 9/1)
収率:76%
高分解能 MS [M+H]+ : 計算質量: 576.4125、測定質量:576.4120
実施例8
5'-(4-(1-(S)-ヒドロキシ-ヘキシル)-[1,2,3]トリアゾール-1-イル)-5',2'ジデオキシチミジン
Figure 0005913094
調製物3に記載した通りの215 mgの5'-アジド-5'-デオキシチミジン(0.8 mmol)、及びTHF/水混合物(1/1)中の0.1 M溶液中の、101.5 mgの(S)オクト-1-イン-3-オール(1当量)はフラスコに加えられた。以下:31.5 mgのアスコルビン酸ナトリウム(0.2当量、0.15 mmol)、及び13 mgの硫酸銅(0.1当量、0.075 mmol)は、連続的に添加された。反応溶媒は、撹拌され、60℃で5時間加熱された。混合物は、その後、周囲温度に冷却された。反応溶媒は、その後直ちにシリカに吸収され、溶媒は蒸発させた。化合物は、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール 85/15)により、純粋な状態で得られた。255 mgの白色固形物が得られた。
RF:0.48(酢酸エチル/メタノール 85/15)
収率:78%
高分解能 MS [M+H]+ : 計算質量: 576.4125、測定質量:576.4120
実施例9
5'-(4-(1-(S)-ヒドロキシ-ヘキシル)-[1,2,3]トリアゾール-1-イル)-5',2'ジデオキシアデノシン
Figure 0005913094
調製物3に記載した通りの200 mgの5'-アジド-5'-デオキシチミジン(0.75 mmol)、及びTHF/水混合物(1/1)中の0.1 M溶液中の、95 mgのオクト-1-イン-3-オールのラセミ混合物(1当量)はフラスコに加えられた。以下:30 mgのアスコルビン酸ナトリウム(0.2当量、0.15 mmol)、及び12 mgの硫酸銅(0.1当量、0.075 mmol)は、連続的に添加された。反応溶媒は、撹拌され、60℃で5時間加熱された。混合物は、その後、周囲温度に冷却された。反応溶媒は、直ちにシリカに吸収され、溶媒は蒸発させた。化合物は、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール 8/2)により、純粋な状態で得られた。240 mgの白色固形物が得られた。
RF:0.47(酢酸エチル/メタノール 8/2)
収率:80%
高分解能 MS [M+H]+ : 計算質量: 576.4125、測定質量:576.4120
実施例10:複数区画を有するナノ粒子の調製
実施例2で調製された化合物、チミジン 3'-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-リン酸)(di C16 dT)は、式(I)の陰イオン性化合物として、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)は、共脂質として、Pauline Chabaud らによる Bioconjugate Chem., 2006, 17, 466-472に記載のように調製された化合物(N−[5'-(2',3'-ジオレオイル)ウリジン]-N', N', N'-トリメチルアンモニウムトシラート)(DOTAU)は、式(I)の陽イオン性化合物として用いられる。
1)ストック溶液の調製
−a)シスプラチン溶液の調製:
15 mgのシスプラチンは、10 mLのミリ-Q水に溶解された(終濃度:5 mM)。この懸濁液は、1分間撹拌され(ボルテックス)、その後、37℃で24時間インキュベートされた。
−b)脂質溶液の調製:
溶液A:20 mgのdiC16dTは、2 mLのジクロロメタンに可溶化された(10 mg/mL)。このサンプルは-20℃で保管された。
溶液B:DOPC:-20℃で保管されたジクロロメタン中の20 mg/mLの溶液
溶液C:DOTAU:-20℃で保管されたジクロロメタン中の20 mg/mLの溶液
2)第一層のための脂質製剤の調製
52.3μLの溶液Aは、47.2μLの溶液Bと、2 mLのエッペンドルフ(登録商標)チューブ中で、混合された。これらの容積は、1/1の二つの脂質のモル比に相当する。ジクロロメタンは、均質的な脂質被膜を得るために、窒素雰囲気下で、蒸発させた。
3)ナノ粒子の調製(第一の陰イオン性脂質層)
37℃で事前にインキュベートされた1.2 mLのシスプラチン溶液は、事前に調製された脂質被膜を再水和するために用いられた。この混合物は、周囲温度で、一晩インキュベートされた。連続する10回の加熱する(55℃の水槽)及び凍結(ドライアイス/メタノール-72℃)するサイクルは行われた。
4)第一の陰イオン性脂質を含むナノ粒子の洗浄及び回収
連続した10回のサイクルが終了後すぐに、懸濁液は撹拌され、ガラスの溶血チューブに入れられた、その後、7分間の超音波処理を受けた。超音波処理後、懸濁液は、10,000 rpm/5分/20℃で遠心分離された。上清は、廃棄され、ナノ粒子ペレットは、1 mLのミリ-Q水に再懸濁された。このステップは2回繰り返された。
懸濁液は、1000 rpm/2.5分/20℃で遠心分離された。ペレットは、廃棄され、上清は陰イオン性ナノ粒子を含んだ。
Andrea Mayer らによるToxicology, 2009, 258, 139-147 又は K. Furusawa及び K. Uchiyama, 1988, 140, 217-226に記載の技術に従って測定されたゼータ電位は、-43.3±6 mVであった。
5)第一の陰イオン性脂質及び第二の陽イオン性脂質を含むナノ粒子の調製
180μLの溶液Cは、2 mLのエッペンドルフ(登録商標)チューブに入れられた。ジクロロメタンは均質な脂質被膜を得るために、圧縮窒素下で、蒸発させられた。
6)複数区画を有するナノ粒子(陽イオン性表面層)の洗浄及び回収
陽イオン性脂質被膜は、ステップ4)で調製された陰イオン性ナノ粒子の懸濁液で再水和された。
ボルテックス撹拌は、5分間行われ、続いて1分間の超音波処理がされた。
懸濁液は、ナノ粒子と結合していない脂質を取り除くため、10,000 rpmで、5分間、20℃で遠心分離された。上清は取り除かれ、その後ペレットは、1 mLのミリ-Q水で再水和された。
懸濁液は、1000 rpm/2.5分/20℃で遠心分離された。ペレットは廃棄され、上清は、陽イオン性表面層を有する複数区画ナノ粒子を含んだ。
前述の通りに測定されたゼータ電位は、-42.3±8 mVであった。
実施例11:安定性試験(放出されるシスプラチンの%)
実施例10の手順により調製されたナノ粒子は、ICP光学分光分析により分析された(測定値は、全濃度に相当する)。ナノ粒子の懸濁液は、5つのエッペンドルフ(登録商標)チューブ(150μL)に等分された。後者は、撹拌(300 rpm)下、37℃で、異なる期間(0、2.5、5、10及び24時間)、インキュベートされた。
一定の時間(x)で、チューブは14,000 rpm/10分/20℃で遠心分離され、50μLの上清(ペレットを再懸濁しないように、注意深く回収された)が分析された。
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン](DOPS)に基づく、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホクロリン(DOPC)を共脂質として含む、ナノ粒子は、比較として同様の手順に従って調製された。これらのナノ粒子は、単一の陰イオン性脂質層を含む。
シスプラチンの放出百分率は、下記の方程式に従って計算される:
放出されたシスプラチンの%=Cx-C0/Ct-C0
Cx:一定の時間(x)での濃度
C0:インキュベーション前の上清での濃度
Ct:インキュベーション、及び遠心分離をしない場合の全濃度
インキュベーション時間に応じたシスプラチンの放出の曲線は、図1に示される。
実施例10のステップ4の終わりで得られる単一の陰イオン性脂質層を含むナノ粒子(NP-で示される)は、記号-◆-で表され、実施例10のステップ6の終わりで得られる、第一の陰イオン性脂質層及び第二の陽イオン性脂質層を含む本発明によるナノ粒子(NP+で示される)は、記号-■-で表され、DOPC/DOPS(PSで示される)に基づくナノ粒子は、記号-▲-で表される。
結果は、半減期(シスプラチンの50%放出に必要なインキュベーション時間)は、本発明によるNP+ナノ粒子については、24時間超である一方で、DOPC/DOPSに基づくナノ粒子については、それは6.5時間程度であったことを示した。
さらに、同じインキュベーション時間(6.5時間)後、ナノ粒子NP-(単一層)は、それらのシスプラチン容量の30%超を放出していた一方、本発明によるNP+ナノ粒子は、それらのシスプラチンの20%未満を放出しており、それは、37℃におけるNP+ナノ粒子の顕著な安定特性を強調した。
実施例12:ウシ胎仔血清の存在下での安定性試験(放出されたシスプラチンの%)
実施例10の手順により調製されたナノ粒子は、ICP光学分光分析により分析された(測定値は、全濃度に相当する)。ナノ粒子の懸濁液は、5つのエッペンドルフ(登録商標)チューブ(150μL)に等分された。後者は、10,000 rpmで5分間、20℃で遠心分離された。50μLの上清はICP光学分光分析により分析され、残った100μLは、分離された。ナノ粒子を含むペレットは、150μLのウシ胎仔血清(FCS、Invitrogen 10270-106参照)で再水和された。サンプルは、撹拌(300 rpm)下、37℃で、異なる期間(0、2.5、5、10、及び24時間)、インキュベートされた。
一定の時間(x)で、チューブは14,000 rpm/10分/20℃で遠心分離され、50 μLの上清(ペレットを再懸濁しないように、注意深く回収された)が分析された。
1,2-ジオレオイル−sn−グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン](DOPS)に基づく、1,2-ジオレオイル−sn−グリセロ-3-ホスホクロリン(DOPC)を共脂質として含む、ナノ粒子は、比較として同様の手順に従って調製された。
シスプラチンの放出百分率は、下記の方程式に従って計算される。
放出されたシスプラチンの%=Cx-C0/Ct-C0
Cx:一定の時間(x)での濃度
C0:インキュベーション前、及びFCSとの接触前の上清での濃度
Ct:インキュベーション、及び遠心分離をしない場合の全濃度
インキュベーション時間に応じたシスプラチンの放出の曲線は、図2に示される。
実施例10で得られる、第一の陰イオン性脂質層及び第二の陽イオン性脂質層を含む本発明によるナノ粒子(NP+で示される)は、記号-■-で表され、DOPC/DOPS(PSで示される)に基づくナノ粒子は、記号-▲-で表される。
結果は、シスプラチンの90%放出に必要なインキュベーション時間は、本発明によるNP+ナノ粒子については、24時間超である一方で、PSナノ粒子については、それは2時間未満であることを示した。
実施例13:細胞内のシスプラチンの評価
手順
80%の集密(直径で10 cmの皿)のIGROV1細胞(シスプラチン-感受性卵巣腺癌株)は、100μmの遊離のシスプラチン、又は実施例10のナノ粒子中にカプセル化されたシスプラチンで、2、4、又は6時間処理を行った。この処理の終了後、PBSで2回の洗浄が行われた。細胞は、トリプシンで処理され、PBSに再懸濁された。PBSでの細胞懸濁液の2回の洗浄が行われた(遠心分離 1000 rpm/1分)。この細胞は、1 mLのPBSで懸濁され、数えられた。
同じ手順は、SKV03細胞(シスプラチン-耐性卵巣腺癌株)でも行われた。
IPC光学分析
106細胞は、500μLの細胞溶解溶液(SIGMA製の溶解バッファ)で溶解された。この容積は、1%のHNO3酸を含むミリ-Q水で、5 mLまで継ぎ足された。
結果
結果は、図3に表し、それは時間に応じた細胞溶解後に放出されたシスプラチンの濃度(ナノモル/106細胞/100μMの処理で表わされる)を示し、処理された細胞中に内在化するシスプラチンの濃度に対応する。
垂直の縞(左側)、水平の縞(中央)、及び格子縞(右側)の柱は、それぞれ2時間、4時間、及び6時間に亘る細胞の処理に対応する。
結果は、シスプラチンの内在化は、実施例10で得られる第一の陰イオン性脂質層及び第二の陽イオン性脂質層を含む本発明によるナノ粒子(NP+で示される)の存在下で、PSナノ粒子及び遊離のシスプラチンの場合においてよりも、オ明らかにより効果的であることを示した。
例えば、同一の条件下(106 IGROV1細胞、100μM、2時間)で、遊離のシスプラチンの場合、0.5ナノモルのシスプラチンが内在化する一方で、本発明によるNP+ナノ粒子の場合、内在化は、40倍超(20ナノモル)であった(図3A)。
シスプラチン耐性細胞株SKOV3に関しては、同一の条件下(106 細胞 SKOV3、100μM、2時間)で、本発明によるNP+ナノ粒子の場合、遊離のシスプラチンの場合(0.5ナノモル)よりも、内在化は、60倍超(30ナノモル)であった(図3B)。
実施例14:異なる腫瘍株における複数区画を有するナノ粒子の細胞毒性作用の試験
手順
a/ 細胞の調製及び処理:
試験は、腫瘍株のパネル、すなわち、
−シスプラチン-感受性A2780(ヒト卵巣癌上皮腫瘍)、及びシスプラチン-耐性A2780/CisPt(ヒト卵巣癌上皮腫瘍)、
−シスプラチン-感受性IGROV-1(ヒト卵巣癌)、及びシスプラチン-耐性IGROV-1/CisPt (ヒト卵巣癌)、
−シスプラチン-感受性L1210(マウスリンパ性白血病)、及びシスプラチン-耐性L1210/CisPt (マウスリンパ性白血病)、
−NIH:OVCAR3(卵巣癌)、及び
−P388(マウス白血病)、
に関して、細胞増殖の50%阻害濃度(IC50)を決定することから成る。
96ウェルプレートにおいて、ウェルあたり2500細胞(卵巣腺癌株など)が、血清を含む100μLの培地中でインキュベートされた。24時間後、培地は吸引され、細胞は、血清を含まない100μLの培地中で、異なる濃度(500、100、10、1、0.1、0.01、0.001μM)で、遊離のシスプラチン、又は実施例10のナノ粒子でカプセル化されたシスプラチンで処理された。24時間の処理後、培地は取り除かれ、細胞は、100μLのPBSで2回洗浄され、その後、血清を含む100μLの培地中で、インキュベートされた。
b/ 毒性の顕色:
2回の洗浄の48時間後、細胞生存率は、20μLのMTSを添加することにより、明らかにされた。490 nmでの吸収は、37℃で2〜4時間のインキュベーション後、測定された。吸光度は、細胞生存率に比例する。
c/ 結果:
結果は図4に示され、それは、遊離のシスプラチン(左側の薄灰色柱)、又はシスプラチンを含む実施例10のステップ6の終わりで得られる第一の陰イオン性脂質層、及び第二の陽イオン性脂質層を含む本発明によるナノ粒子(NP+で示される)(右側の濃灰色柱)を用いて、50%細胞死亡(IC50)を得るために必要な濃度を示す。
結果は、本発明によるナノ粒子は、試験された全てのシスプラチン-感受性又は-耐性細胞株において、遊離のシスプラチンより、より効果的であることえお示した。
例えば、シスプラチン-感受性細胞株A2780の場合、50%細胞死亡が、0.23μMの本発明によるナノ粒子で得られた一方で、4.68μMの遊離のシスプラチンは、同じ死亡率を得るために用いられるに違い。
シスプラチン-耐性株A2780に関して、50%細胞死亡は、遊離のシスプラチンの29.21μMに対して、0.21μMの本発明によるナノ粒子で得られた。この場合、本発明によるナノ粒子は、感受性株A2780及び耐性株A2780に関して、遊離のシスプラチンより、それぞれ18及び140倍より効果的であった。
実施例15:腫瘍株IGROV-1及びSKOV3に関する複数区画を有するナノ粒子の細胞毒性作用の試験
手順
a/ 細胞の調製及び処理:
96ウェルプレートにおいて、ウェルあたり2500細胞(IGROV1、SKOV3、卵巣腺癌株)が、血清を含む100μLの培地中でインキュベートされた。24時間後、培地は吸引され、細胞は、血清を含まない100μLの培地中で、異なる濃度(500、100、10、1、0.1、0.01、0.001μM)で、遊離のシスプラチン又は、実施例10のナノ粒子でカプセル化されたシスプラチンで処理された。24時間の処理後、培地は取り除かれ、細胞は、100μLのPBSで2回洗浄され、その後、血清を含む100μLの培地中で、インキュベートされた。
b/ 毒性の顕色:
2回の洗浄の48時間後、細胞生存率は、20μLのMTSを添加することにより、明らかにされた。490 nmでの吸光度は、37℃で2〜4時間のインキュベーション後、測定された。吸光度は、細胞生存率に比例する。
c/ 結果:
結果は図5に表され、それは、遊離のシスプラチン(柱1、左側)、DOPC/DOPSに基づく対照ナノ粒子(PSで示される) (柱2、中央の左側)、実施例10のステップ4の終わりで得られる単一の陰イオン性脂質層を含むナノ粒子(NP-で示される) (柱3、中央の右側)、及び実施例10のステップ6の終わりで得られる第一の陰イオン性脂質層及び第二の陽イオン性脂質層を含む本発明によるナノ粒子(NP+で示される)(右側の柱)を用いて、50%細胞死亡(IC50)を得るために必要な濃度を示す。
図5Aは、細胞株IGROV1に関し、図5Bは、細胞株SKOV3に関する。
結果は、本発明によるシスプラチンを含むNP+ナノ粒子が、二つの細胞株、IGROV1(シスプラチン-感受性)、及びSKOV3 (シスプラチン-耐性)において、遊離のシスプラチンより、より効果的であったことを示す。
株IGROV1に関して、50%細胞死亡が、0.18μMのNP+シスプラチンを含むナノ粒子で得られた一方で、2.41μMの遊離のシスプラチンが、この結果を得るために、用いられるに違いない。株SKOV3に関して、50%細胞死亡が、遊離のシスプラチンの4.3μMに対して、0.29μMのシスプラチンを含むNP+ナノ粒子で得られた。
本発明によるシスプラチンを含むナノ粒子 (NP+)は、株IGROV1及びSKOV3それぞれに関して、遊離のシスプラチンより、それぞれ13及び14倍、より効果的であった。
実施例16:本発明によるナノ粒子の複数区画構造の実証
一方で、脂質層における標識の位置、及び他方で、それらが細胞中に入った後のナノ粒子の状態を調べるために、ナノ粒子の製剤は、異なる標識を用いて調製された。
親油性の蛍光プローブは、一方では標識として、他方では前駆薬剤を模倣する脂質化合物(例えば、抗癌ヌクレオシド、例えば5-FUなど、の脂質結合アナログ)として、製剤の中に挿入された。
以下:
製剤A:diC16dT/DOPC 50/50
製剤B:DOTAU/DOPC 50/50
製剤C:diC16dT/DOPC/DOPE/フルオレセイン 49.25/49.25/0.5(λem=483 nm、λex=518 nm)
製剤D:DOTAU/DOPC/DOPE/ローダミン 49.25/49.25/0.5(λem=550 nm、λex=590 nm)
の異なる製剤が製造された。
本発明によるNP1、NP2、及びNP3ナノ粒子は、従って、以下:
Figure 0005913094
に定義するように、異なる組成物で調製された。
NP1、NP2、及びNP3ナノ粒子は、図6に示される。それぞれのナノ粒子では、白色層は、標識されていない脂質層を表し、灰色層は、フルオレセインで標識された層(製剤C)を表し、黒い層は、ローダミンで標識された層(製剤D)を表し、点々の中央は、組み込まれたシスプラチンを表す。
FACS(フルオレセイン活性化細胞分類)測定は、以下:
−対照として、本発明によるナノ粒子の不在において(図7A)、
−第一の層が標識されたNP1ナノ粒子の存在において(図7B)、
−第二の層が標識されたNP2ナノ粒子の存在において(図7C)、及び
−二つの層が標識されたNP3ナノ粒子の存在において(図7D)、
インキュベートされたSKVO3細胞で行われた:
得られたFACSデータは、これらの標識を生じるNP3ナノ粒子の存在における、インキュベーション後のSKV03細胞における二つの蛍光標識(フルオレセイン、ローダミン)の存在を示す。これらの結果は、一方では、本発明によるナノ粒子が複数区画構造を有しており、及び他方では細胞に内在化後に無傷を維持していることを示す。
フルオレセイン顕微鏡法実験は、FACSにより得られた結果を裏付ける。このイメージは、標識されたNP1、NP2、及びNP3ナノ粒子が、SKVO3細胞において、無傷で内在化することを示す。

Claims (21)

  1. 機能性両親媒性化合物から形成される異なる極性の少なくとも二つの脂質層により取り囲まれた、治療薬を含む硬い核により構成されるナノ粒子の形態での複数区画を有する製剤であって、
    少なくとも1つの脂質層が陰イオン性であり、陰イオン性脂質層を得るために、式(I):
    Figure 0005913094
    〔式中、
    −Xは、酸素原子を表し、
    −Bは、随意的に置換されたプリン又はピリミジン塩基を表し;
    −L1は、リン酸基又はヒドロキシ基を表し;
    −L2は、水素を表し;
    −R1は、ジアシルグリセロールを表すか、あるいは存在せず;
    −R2は、存在せず;
    −R3は、ヒドロキシ、又はC2〜C30アルキルにより置換されていないあるいは置換された1〜4の窒素原子を含むヘテロアリール基を表し、あるいは
    −R3は、二量体の形態で式(I)の化合物を形成するために、同一の又は異なる式(I)の他の化合物の、同一又は異なる他の置換基R3との共有結合により、連結される〕
    の少なくとも一つの機能性両親媒性化合物により構成され、且つ
    少なくとも1つの脂質層が陽イオン性であり、陽イオン性脂質層を得るために、式(I’):
    Figure 0005913094
    〔式中、
    −Xは、酸素原子を表し、
    −Bは、随意的に置換されたプリン又はピリミジン塩基を表し;
    −L1及びL2は、同一又は異なって、オキシカルボニル -O-C(O)-基、チオカルバメート -O-C(S)-NH-基、カルボナート-O-C(O)-O-基、カルバメート -O-C(O)-NH-基又は酸素原子を表し;
    −R1及びR2は、同一又は異なって、水素、又は分岐のC2〜C30の炭化水素鎖を表し;
    −R3は、ホスホニウム基又はNR4R5R6基であり、ここで、R4、R5、及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖のC1〜C5アルキル鎖を表し]
    の少なくとも一つの機能性両親媒性化合物により構成され、
    それぞれの脂質層は、前の脂質層の極性と異なる極性を有することを特徴とする、製剤。
  2. それぞれの脂質層が、前記核に存在する治療薬と同一又は異なる治療薬を含む区画を構成することを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
  3. 共脂質が少なくとも一つの脂質層に存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の製剤。
  4. 前記治療薬が、抗新生物剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
  5. 前記治療薬が、白金錯体、又は白金錯体と結合することができるルテニウム、又は、ルテニウムII若しくはIII、チタン、ガリウム、コバルト、鉄、又は金に基づく、白金を含まない無機錯体から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の製剤。
  6. 前記治療薬が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、及びロバプラチンから選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤。
  7. 式(I)又は(I')において、Bがチミン又はアデニンを表すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製剤。
  8. 陰イオン性脂質層を得るために、L1、L2、及び/又はR3が、負の荷電基を表す、少なくとも一つの式(I)の化合物が用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製剤。
  9. 陽イオン性脂質層を得るために、L1、L2、及び/又はR3が、正の荷電基を表す、少なくとも一つの式(I')の化合物が用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製剤。
  10. 以下のステップ:
    a)請求項1に記載の式(I)又は(I’)の少なくとも一つの機能性両親媒性化合物、及び治療薬の混合物を調製し、
    b)前記治療薬を含むナノ粒子を得るために、繰り返して加熱する及び凍結するサイクルに前記混合物を供し、及び
    c)このようにして得られた前記治療薬を含むナノ粒子を回収し、
    d)前記ナノ粒子を、ステップa)で用いられた化合物の極性と異なる極性を有する、請求項1〜10のいずれか一項に定義された式(I)又は(I’)の少なくとも一つの機能性両親媒性分子の存在の中に移し、
    e)このようにして得られた複数区画ナノ粒子を回収すること、
    を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤の調製の方法。
  11. ステップa)及び/又はステップd)の間で、共脂質が用いられることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  12. 外側の脂質層を構成するために、請求項1で定義された少なくとも一つの式(I)又は(I’)の機能性両親媒性化合物により構成される、中性の脂質層の形成からなる追加のステップを含み、前記式(I)又は(I’)の化合物は中性であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
  13. ステップa)で用いられる治療薬と異なる治療薬がステップd)で導入されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤を含む、治療薬の送達又は標的化のための薬剤。
  15. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤を含む、治療薬の細胞内送達のための薬剤。
  16. 前記治療薬が抗新生物剤である、請求項14又は15に記載の薬剤。
  17. 抗新生物医薬の調製のための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤の使用。
  18. 腫瘍疾患の治療のための請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤。
  19. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤、及び医薬的に許容される媒体を含む医薬組成物。
  20. 式(I)又は(I’)において、Bが、ウラシル、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びヒポキサンチンからなる群から選択される、プリン又はピリミジン塩基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
  21. 式(I)又は(I’)において、Bが、ハロゲン、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、カルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、アジド基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アルキルオキシ基、オキシカルボニル基、ビニル基、エチニル基、プロピニル基、アシル基から選択される、少なくとも一つの置換基により置換される、プリン又はピリミジン塩基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
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