本明細書で説明されるデバイス、システム、および方法は、限定するものではないが、血管造影法、IVUS、光干渉断層法(OCT)、近赤外分光法(NIR)、およびFFR(「血流予備量比」)等の他の標準的な診断法と比較して、少ない占有面積および低いコストで、撮像、精密な物理的測定、および組織性状診断を組み合わせる。本明細書で説明される技法は、さらに、いくつかの他の診断手法より多くの解剖学的な詳細を明らかにし、種々の使用法においていくつかの利点を提供することができる。
本明細書の開示は、脈管身体内腔または断面積等の血管寸法を決定するためのデバイス、システム、および方法を提供する。本明細書で説明される脈管身体内腔は、内腔を流れる流体として血液を有する動脈または静脈のような循環系の内腔を意味し、一般に血管と呼ぶ。本明細書で使用される「寸法」は、限定するものではないが、断面積、直径、半径、長軸/短軸、およびそれらの任意の派生物を含む。本開示の側面は、独立型システムまたは方法として、またはより大きな診断用または治療用のデバイスまたは手技の一部として適用されることができる。本開示の側面は、個別に、まとめて、または互いと組み合わせて理解できることを理解されたい。1つ以上の実施形態で説明される特徴は、本開示で別段の指定がない限り、他の実施形態に組み込まれることができる。
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、内腔のどこで断面積が最小になるかを決定する、したがって、どこに閉塞が存在するかを識別するために、断面積を決定することができる。いくつかの実施形態では、本開示は、血管系のブロックされた領域内でのステントの正確な留置および膨張を提供し、ステント寸法の選択、留置、適用範囲、および血管壁への適切な圧着付加を決定および確認するために追加の診断用具を使用する必要性は、最小であるかまたは全くない。本明細書の実施形態は、動脈、他の血管、または他の内腔内でのステントの地理的な誤配置に対応することができる。これは、血管造影図から、不正確かつ主観的な視覚的推定を行うことがあるからである。地理的な誤配置には、長手方向のミスおよび/または軸方向のミスを含み得る。長手方向の誤配置の際に、ステントは、遠位方向のあまりに遠くにまたは近位方向のあまりに遠くに置かれ、いくつかの例では、発見されていないプラークを残す。他の例では、ステント長が、病変長を対象とするのに不十分なことがあり、同様に、発見されていないプラークを残す。さらに、バルーンが、近位方向のあまりに遠くで、または遠位方向のあまりに遠くで膨らまされた場合、バルーンによる膨張後に、血管の損傷がステントの縁に生じることがある。軸方向のミスでは、ステント対動脈比は、0.9未満であり得る。すなわち、ステントは、所望の動脈直径の少なくとも90%まで膨らまされない。別の形の軸方向のミスでは、ステント対動脈比は1.3より大きくあり得、これは、ステントが所望の動脈直径の130%を超えて膨らまされることを意味する。
いくつかの実施形態では、断面積等の内腔パラメータを決定するステップは、血管系内の閉塞の場所の、また膨らまされたバルーンまたはステントの寸法を示すために、正確なリアルタイムの決定を可能にする。しかしながら、本明細書のシステムおよび方法は、以下で説明されるTAVI手技等の、身体の他の任意の適切な部分における他の任意の適切な手技に使用されることができる。
いくつかの実施形態では、閉塞の場所、または他の解剖学的対象領域が特定でき、この解剖学的対象領域に関連して他の診断デバイスの移動が追跡されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、閉塞の場所に関連してステントカテーテルの移動が追跡できるように、閉塞が識別され、基準点を参照して登録される。他の公知の方法は、解剖学的対象領域を識別するために使用されることができる。
本開示の第1の側面では、脈管身体内腔情報を決定する。これらの実施形態は、脈管身体内腔または臓器(「内腔または臓器」は、本明細書では一般に、単に「内腔」と呼ばれる)内に設置された励起要素の間に電流を通過させるステップを含み、内腔の1つ以上の断面積等の1つ以上の内腔パラメータを決定するために脈管身体内腔内の複数のセンサ、すなわち、感知要素を使用して1つ以上の応答電気信号(応答信号とも呼ばれる)を測定する。例示的な方法では、励起信号は、複数の周波数信号であり、応答信号は、複数の周波数で同時に測定された応答電圧である(これは、本明細書では一般に「周波数ダイバーシティ」と呼ばれる)。複数の周波数にわたって測定された応答信号は、次いで、1つ以上の断面積等の1つ以上の内腔パラメータを決定するために使用される。いくつかの実施形態では、細長い医療用デバイス上に配置された励起要素は、デバイスに沿って互いから等距離に離隔されず、この概念は、本明細書では一般に「空間ダイバーシティ」と呼ばれる。
本明細書で使用されるとき、以下の用語「細長い医療用デバイス」、「診断デバイス」、「送達デバイス」、「誘導ワイヤ」、「カテーテル」は、限定するものではないが、同じまたは類似のデバイスを指すために互換的に使用されることができる。
本明細書の方法では、内腔パラメータを決定するために、血液、血管壁、脂肪組織、石灰化組織等の種々の身体要素の周波数に依存した特徴的な電気的性質を利用する。図2は、周波数範囲108にわたる種々の組織タイプのインピーダンスの大きさ106を示すグラフである。インピーダンスの大きさ(dB単位で測定されたVin/Iinの絶対値)対周波数(Hz)が、大動脈110、血液112、および脂肪(平均浸潤)114に対して提供されている。Vinは電圧を表し、Iinは電流を表す。図示されている血液、組織(大動脈血管)、および脂肪に対するインピーダンスの大きさのプロット(dB単位で測定されたVin/Iinの絶対値)は、異なる周波数における励起(例えば、正弦波電流(AC)または他の任意の波形)が対象体積(例えば、1立方ミリメートル)全体に連続して適用されるとき、インピーダンスの大きさは、その体積を占有する身体物質のタイプに応じて変化することを示す。
図3は、周波数範囲126にわたる種々の組織タイプのインピーダンスフェイズ124(度単位)の一例のグラフである。線128は、100Hz〜100MHzの周波数範囲にわたる組織(例えば、大動脈血管)のインピーダンスフェイズ(度単位で測定されたVin/Iinの角度)を表し、線130は、周波数範囲にわたる血液のインピーダンスフェイズ(度単位で測定されたVin/Iinの角度)を表し、線132は、周波数範囲にわたる脂肪のインピーダンスフェイズ(度単位で測定されたVin/Iinの角度)を表す。Vinは電圧を表し、Iinは電流を表す。図示されている血液、組織、および脂肪に対するインピーダンスフェイズのプロット(度単位で測定されたVin/Iinの角度)は、異なる周波数における励起(例えば、正弦波電流(AC)または別の場所に記載される他の任意の波形)が対象体積(例えば、1立方ミリメートル)全体に連続して適用されるとき、インピーダンスフェイズは、その体積を占有する身体物質のタイプに依存することを示す。
励起要素を励起させるために使用される電気励起系列は、適切な周波数範囲に及ぶ複数の周波数により内腔を同時に励起させるように設計される。好ましくは、種々の身体要素(例えば、血液、脂肪、プラーク、組織)が図2および図3に示される範囲等で周波数に依存したはっきり異なる電気特性を示す周波数範囲が選定される。これらの差異は、周波数に依存した測定された信号における一意の特性につながり、これは、内腔寸法の正確な評価で役に立つ。
図1は、脈管身体内腔内にT1〜T4電極を有する例示的な細長い医療用デバイスの表現を図示する。電流フィラメント54に沿って励起電極T1とT2の間を通過する電流が、示されている。図示のように、フィラメントのうちのいくつかは、内腔内の血液のみを通過し、いくつかは、血液と血管壁の両方を通過する。脂肪組織または石灰化した脂肪組織等の追加の組織が内腔壁に堆積されることがあり、したがって、いくつかのフィラメントは、血液、内腔組織、脂肪組織、石灰化した脂肪組織等のうちの1つまたは複数を通過することを理解されたい。端子T1とT2の間の全電気電流は、個々の電流フィラメント全ての合計である。端子T1、T2、T3、およびT4は、この実施形態では電極であるが、電圧を測定するように適合される。これにより、3つの一意の電圧V1、V2、およびV3(例えば、T1とT3の間、T3とT4の間、およびT4とT2の間の電圧)が提供される。3つの一意の電圧を測定する代替手段がある。例えば、端子T2は、共通基準として使用でき、3つの一意の電圧は、T1とT2の間、T3とT2の間、およびT4とT2の間で測定されることができる。この代替測定は、本質的には、すでに述べたV1、V2、およびV3を測定するステップの例の線形結合であり、これらは同じ情報を伝える。選定された電圧を測定する特定の方法は、実装形態の利便性および各タイプの測定に存在する雑音の度合いによって決まる。
図1から、電流線は、電極近傍で混雑し、電極から離れて扇形に広がることは明白である。これにより、励起電極間で測定されるインピーダンス(2ポートインピーダンスとも呼ばれる)が効果的に増加する。測定された2ポートインピーダンスは、導電性媒体の円筒形部の抵抗またはインピーダンスを計算するのに使用される式によって決定されるインピーダンスよりかなり大きいであろう。後者のインピーダンスは、ρ*L/Aである(式中、ρは媒体の抵抗率、Lは円筒形部の長さ、Aは断面積である)。いくつかの例では、式によるインピーダンスより数倍大きな値が観測された。接触インピーダンスまたは電極の端部効果と呼ばれることもある余分なインピーダンスは、電極の幾何学的形状およびその中にある媒体の導電率に応じて決まる。内腔の断面積が、非常に大きな値まで増加する場合でも、2ポートインピーダンスは、ある一定の値を下回ることはない。接触インピーダンスの影響を軽減するため、励起電極から離れてより近くに離隔された電極を使用する4点インピーダンス測定が使用される。図1を参照すると、電気電流フィラメントは、電極T3とT4との間で軸とほとんど平行であることが分かる。4点測定は、電極T3とT4との間で行われる測定であり、励起が外側の電極T1とT2との間で生じる。これにより、電極の幾何学的形状の影響は低下するが、励起電極が非常に遠く離れて置かれない限り、完全には低下しない。さらに、血液の外側(壁および周囲組織)を通過する電流の量も、電極の幾何学的形状の影響を受け、これを4点測定により補償することはできない。したがって、本明細書の方法で説明される手法は、計算における電極の幾何学的形状の影響を含む。この方法では、インピーダンスを決定しようとしないが、代わりに、断面積を決定するために対象領域内の種々の場所における電気電圧分布を使用する。これらの電圧分布は、電極の幾何学的形状と内腔寸法の両方の影響を受ける。以下で説明するように、電極の幾何学的形状を含む等価な電気モデルを構成することによって、これらの要因の両方が、内腔の断面積の計算において自動的に考慮される。
励起電極の空間ダイバーシティによって、より正確でロバストな推定された内腔パラメータが得られる。図1を参照すると、いくらかの電流は内腔を通過するが、いくらかの電流は内腔壁を通過する。電極が互いに近接して離隔される場合、電流の大部分は内腔を通過するが、電流の非常に少ない部分は壁を通過する。このような状況で、観測される電圧は、壁の境界、したがって内腔寸法の影響を受けにくくなる。一方、電極があまりに遠くに離れて離隔された場合、電流の大部分は壁を流れる。この状況では、電圧は、内腔のサイズの小さな変化の影響を受けにくくなる。いくつかの実施形態では、電流の約半分が内腔を流れ、残りが壁を流れる、最適な間隔が存在する。これにより、一般に、内腔寸法の変化に対する所望の感度が得られる。最適な間隔は、内腔寸法および組織の電気特性によって決まる。経験則として、組織の一般的な電気特性では、T1とT2の最適な間隔は内腔の直径にほぼ等しいことが経験的に分かっているが、間隔はこれに限定されるものではない。固定された電極間隔については、この間隔は、潜在的な内腔サイズの動作範囲全体に対して最適化されるべきである。この場合、この間隔は、感度が動作範囲全体にわたって妥当であるように、動作範囲の中央の値に対して最適化される。代替方法では、その間に異なる間隔を有する多数のセットの電極が設けられる。1つのセットは、予期される内腔寸法に応じて手技のために選定される。代替として、第1の測定は、デフォルトの電極のセットを使用して行われる。この測定に基づいて、第2のセットの電極は、内腔寸法のより正確な推定値を取得するために選定される。
図1の例示的な実施形態では、電極T3およびT4は、測定のためにのみ使用される。しかしながら、より多数の電極が、使用可能である。図1に示される2つは、例にすぎない。これらの電極の位置は、励起電極T1とT2との間に均一に離隔されて概略的に示されている。代替実施形態では、測定用電極は、T1とT2との間で厳密に均一に離隔されないようにジグザグに配置されることができる。この非対称性は、追加の内腔情報を提供することが分かっている。例えば、たった1つの測定用電極(例えば、T3)が、T1とT2との間で使用され、T1とT2とのちょうど中間に置かれる場合、T3とT2との間において測定される電圧は、T1とT2との間の電圧のちょうど半分となるであろう。この電圧測定は、内腔寸法とは無関係であり、したがって、余分な情報を提供しない。一方、単一の測定用電極(例えば、T3)が、T1とT2との間の中央からやや外れて置かれる場合、T3とT2との間の電圧値は内腔寸法によって決まる。一般に、励起電極の間で均一に離隔された多数の測定用電極がある場合、測定値の約半分は追加情報を提供しないが、ほぼ半分は追加情報を提供する。したがって、電極のやや歪んだ間隔が、最小数の測定用電極を使用しながら取得される情報を最大にするために選定されることができる。
T1およびT2に対応する励起電極のサイズは、接触インピーダンスならびに機械的および解剖学的な制約を考慮して選定されなければならない。機械的な制約および解剖学的構造の巻き付き性により、血管は、サイズができる限り小さく保たれることを要求する。しかしながら、このサイズを小さくしすぎると、電極の接触インピーダンスは、電圧測定値に影響を及ぼす主要因となるであろう。接触インピーダンスは、ほとんど内腔寸法と無関係であるので、これにより、内腔寸法に対する電圧測定値の感度が低下する。実験に基づいて、適切な電極サイズは、約1〜2平方ミリメートルの外表面積を有するサイズであることが分かった。しかしながら、これは、この範囲に一致しないサイズが不適当であることを意味するものではない。内腔寸法推定の精度および機械的性質とのトレードオフがあるであろう。
図4は、ある周波数範囲にわたって心臓に提供され得る例示的な電流値に対するグラフを示す。例えば、心臓を通る最大許容電流(ミリアンペア単位)は、周波数範囲にわたって変化することができる。心臓を通る最大許容電流は、図示のように電流が異常で非連続的に、異常で連続的に、または正常で連続的に適用されるか否かによっても変化し得る。動作中の本明細書で説明する実施形態は、許容可能な安全性限界内で励起電流を使用するように設計される。いくつかの実施形態では、励起は、特定の周波数で、または特定のセットの周波数で適用されることができる。いくつかの他の実施形態では、励起は、周波数範囲にわたって適用されることができる。いくつかの実施形態では、範囲は、40KHz〜10MHzとすることができる。一般に、周波数範囲は、対象領域の電気回路網の構成要素の電気的性質の最大の差異をもたらすように選定される。
血液、血管壁、脂肪組織、および石灰化組織は各々、周波数に依存した特徴的な電気的性質を有するので、適用される全電気電流ならびに3つの測定された電圧は、大きさ、フェイズ、および周波数依存性が、血液および血管壁を流れる電流の相対的な部分によって決まる値を有する。全体的に、周波数に依存した測定値は、血液の周波数に依存した電気特性、血管の直径(DBLOOD)、壁の周波数に依存した電気特性、壁の厚さ(TWALL)、ならびに電極の幾何学的形状および間隔を含むいくつかの要因によって決まる。図1の例を参照すると、周波数範囲にわたるVI、V2、およびV3の値が、決定される(または、測定される他の任意の数の電圧は電極の数に応じる)と、以下で説明する方法により高い精度を有するDBLOODを推定することが可能である。随意に、このプロセスでは、血液の電気特性も推定されることができる。これにより、ヘマトクリット等の血液の物理的性質に関する追加の臨床上での価値が提供され得る。
内腔のサイズを決定するためのいくつかの従来技術による手法は、重大な欠陥を有する。例えば、ある従来技術による手法では、2つの端子のみからなるデバイスを使用して内腔の直径を推定しようとする。この方法は、血液および壁の単純化した電気表現を使用し、測定のために第2の流体の注入を必要とする。単一周波数は、励起電流を端子に通過させるときに使用され、したがって、周波数範囲を励起しない。血液を通る電気経路は、単一の電気インピーダンスによって表される。壁を通る電気経路は、並列インピーダンスによって表される。方法は、最低でも2つの測定を行うことを必要とする。第1の測定は、従来の条件によるものであり、第2の測定は、電気伝導率が血液の導電率と明らかに異なる食塩水で血液を置換した後に行われる。この手法では、2つの仮定がなされる。すなわち、壁を通る並列電気経路のインピーダンスは、2つの測定にわたって変化しないということと、2つの測定値における「血液」経路のインピーダンスは媒体の導電率に反比例するということである。言い換えれば、インピーダンスZ=K/sigmaであり、式中、sigmaは、血液または食塩水の導電率、Kは、値が血管の直径および電極の幾何学的形状によって決まる定数である。Zの値は、血管の壁の電気特性によって決まらない。
上記で説明した従来技術による手法には、基本的問題がある。第1に、壁を通る並列経路は、単一タイプの組織から構成されない。図1で分かるように、血管壁を必要とする電気経路は、種々の度合いの血液および血管壁を通過する多数の電気電流フィラメントを有する。さらに、動脈の罹患部では、異なる形態(石灰化、石灰化してない、繊維状等)の種々の度合いのプラークがあるであろう。したがって、「並列経路」の全体インピーダンスは、健康な動脈では血液、罹患した動脈では他のプラーク組織の電気特性によっても決まるであろう。したがって、第2の測定中に、血液が生理食塩水で置換されるので、並列経路では、インピーダンスが変化するであろう。第2の問題は、把握し難いが、おそらく、より重要である。血液経路が壁の特性と無関係であるという仮定は、不正確である。この問題の一例として、図5および図6は、2つの極端な例の電気電流フィラメントを示す。図5に示される第1の例は、血管の壁が絶縁性である(すなわち、壁の導電率が血液よりはるかに低い)ときに発生する。図6に示される第2のケースは、壁の導電性が高いときに発生する。この2つの図を比較すると、図6の第2の例では、電気電流フィラメントは、明確に異なる形状を有することが分かる。フィラメントは、電流伝導の大部分が生じる壁に向かって描かれている。その結果、電気電流を伝導する血液の量が減少し、「血液経路」のインピーダンスの効果的な増加をもたらす。
以前のこの手法では、壁のコンダクタンスは同じままであるが、内腔内の媒体のコンダクタンスは変化する。しかしながら、その影響は、壁の導電率が変化しても同じである(すなわち、相対コンダクタンスは重要な要因である)。非常に高い導電率が、ある点を示すために使用されてきたが、その効果は、ほとんどの場合、あまり目立たないが、それにもかかわらず、相対導電率の中程度の変化によっても存在する。これらの所見を、電磁(EM)シミュレーションを使用して客観的に検証することは簡単である。
上記で記載した従来技術による手法の欠陥に加えて、以前のこの手法は、励起の周波(すなわち周波数ダイバーシティ)を変化させず、空間ダイバーシティも利用しない。周波数ダイバーシティの欠如により、一般に、種々のタイプの組織の区別は不十分であるか、全くない。空間ダイバーシティの欠如により、ロバストさが損なわれる。同様に、電極の幾何学的形状の影響に対する感度が、低下する。電流フィラメントは、電極近傍で混雑し、電極から離れて徐々に広がる。この影響は、ワイヤの軸に沿って複数の点に沿って電圧を測定することによって、本質的に記録される。
上記に記載したように、励起の周波数が変化するので、異なるタイプの組織(または、体内で見られる非組織)は、電圧および電流との関係において異なる特色を有する。例えば、図2および図3に示されるように、血管、血液、および脂肪組織は各々、電圧および電流において異なる特色を有する。いくつかの例示的な実施形態では、本明細書の方法およびシステムは、励起信号を複数の周波数で同時に提供し、励起信号の結果として電気応答を測定する(すなわち、周波数ダイバーシティ)。これらの方法およびシステムにより、測定を同時に行うことができ、それによって、収縮期相または拡張期相の間等、心拍動の同じフェイズ中に測定を行うことができる。これによって、心拍動のフェイズを考慮するために異なる時間に行った複数の測定値を重ね合わせることに関連する困難が、克服される。本明細書で説明する方法を使用して行われるいくつかの例示的な測定としては、例えば、内腔寸法、脂肪のような内腔の特定領域の性質、狭窄、ブロック、動脈、血圧、血流量、組織等、およびそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、測定される信号は、電極等の複数のセンサ間で測定される電圧である。例えば、図1を参照すると、複数の周波数を有する電気信号が端子T1およびT2を流れた後、電圧V1、V2、およびV3を周波数の各々で測定するが、センサの数に基づいて任意の数の電圧を測定することができる。さらに、空間ダイバーシティに関して上記で説明したように、端子T1、T2、T3、およびT4は、内腔寸法の変化に対する測定の感度が最大になるように離隔される。次いで、V1、V2、およびV3の周波数応答が、内腔直径等の内腔寸法を推定するために使用される。
1つ以上の内腔断面積が決定されている一実施形態では、内腔の面積の電気経路は、メッシュ回路網を使用してモデル化される。このような一例が、図7に示されている。2タイプの電気要素、すなわち、血液要素および内腔壁要素は各々、組織の単位要素を表す。このようなメッシュ回路網は、電気を伝導する連続媒体に近いものである。近似誤差を減少させるため、より細かいメッシュを選定することができる。必要とされる精度と計算の複雑度とのトレードオフが、存在する。近似が正確になるにつれて、必要とされる計算の複雑さが高くなる。その最も粗い(最も低い精度を有する)形では、メッシュは、血液に関して1つの要素および壁に関して1つの要素に減少する。これは、すでに試行された手法である。言うまでもなく、これは、あまりにも粗い近似である。
メッシュ回路網では、各血液要素のインピーダンスは、内腔断面積の線形関数であり、血液の導電率に反比例する。代替の式では、血液要素のインピーダンスは、内腔寸法と無関係に保つことができるが、要素の数は、内腔寸法に基づいて変化する。後者は、実際には不便である。なぜなら、電気回路網のトポロジが一定でなく、内腔寸法で許容される変化は、恣意的ではなく、個別のステップであるからである。同様に、内腔壁要素は、壁の肉厚ならびに電気伝導率によって決まるインピーダンスを有する。解剖学的には、内腔壁は、複数の層を有してもよい。より正確なモデルを確立するために、追加のタイプの要素をメッシュ回路網に追加することができる。例えば、脂肪組織または石灰化組織に関連する要素が、モデルに含まれる。さらに、モデル化の精度を向上させるために、3次元メッシュも構成されることができる。
このメッシュ回路網、ならびにある周波数範囲にわたって測定された電圧V1、V2、およびV3を仮定すると、内腔寸法は、以下のように、さらに図7Aに示されるように、反復的に解明される。電気電圧測定値VM1、VM2、およびVM3を取得した後、血液、組織、内腔寸法、および壁寸法の、特定の周波数に依存した電気モデルパラメータを仮定する。次いで、仮定されたパラメータを使用して、等価な電気回路網を解明し、電圧V1、V2、およびV3を取得する。次いで、モデル電圧を実際の観測された電圧と比較する。差が最小でない場合、差に基づいてパラメータの全てに補正を加え、解答ステップを繰り返す。差が最小であるとき、内腔寸法は、収束した幾何学的パラメータに基づいて宣言することができる。これらのステップは、例えば、限定するものではないが、ガウスニュートン法、最急降下法、およびレーベンバーグ−マルカート法等の最小二乗フィッティング法等の標準的なフィッティング法を使用して実施されることができる。
内腔寸法が決定されている第2の実施形態では、血液および内腔壁を含む内腔領域が、電磁(EM)シミュレーションツールを使用してモデル化される。EMツールは、有限要素法(「FEM」)を使用して、内腔領域をより小さな要素(例えば、四面体形状を有する)に分解する。有限要素に分解する一例が、図8に示されている。内腔領域内の身体物質の電気的性質および磁気的性質を仮定して、ツールは、電磁気学の基本的なマクスウェルの方程式を適用して、内腔領域全体の全ての電圧および電流を解明する。メッシュ回路網について説明した方法に類似した反復的手法は、内腔寸法を決定するために使用されることができる。図7Aと図8Aの差異は、等価なEM FEMモデルを解明し、所与のパラメータの電圧V1、V2、およびV3を得るステップである。
上記で説明した両方の反復的な方法では、内腔寸法は、電極の近くでほぼ一定であると合理的に仮定されている。一般的な電極の離隔距離は、数ミリメートル程度である。これは、内腔寸法が内腔の軸に沿って数ミリメートルにわたってほぼ一定であると仮定されていることを意味する。最も実際的な場合では、内腔寸法は、軸横断の数ミリメートル以内で大きく変化しない。これら数ミリメートル以内の変動の場合、推定される内腔寸法は、軸に沿った内腔寸法の局所平均となるであろう。局所平均は、2つの励起電極の中点値を表すであろう。一般的な手技では、測定用電極は血管の長さを横断し、測定値は複数の箇所で得られるであろう。したがって、内腔寸法は、血管の異なる領域について推定されるであろう。
上記で説明し、図7A、8A、および8Bに図示されている反復的な方法では、内腔寸法に加えて、身体要素の電気的性質も決定されることに留意されたい。これらの性質としては、血液および壁の導電率がある。これらの電気的性質は、ヘマトクリット等の臨床パラメータおよび閉塞(例えば、石灰化閉塞)がある場合はその特性を推測するために、出力としても使用可能である。
EM手法は、図7に示されるようなメッシュ電気回路網よりはるかに正確な内腔領域のためのモデルである。しかしながら、EM手法も、計算が非常に複雑である。EMモデルにおけるステップを解明するには、一般に、大量の時間が必要となるであろう。計算速度を向上させるため、修正された手法を採用することができる。この修正された手法では、EMツールは、幾何学的パラメータおよび周波数に依存した電気モデルパラメータの多数の可能なセットの電圧分布を計算するために、患者の体内で使用する前に、オフラインで使用される。EMシミュレーションが実行されるパラメータの値は、パラメータの動作範囲全体を対象とする。EMシミュレーションは、個別の(かつ思慮深く選定された)パラメータ値に対して行われ、ルックアップテーブルが作成される。明示的にシミュレートされないパラメータ値については、内挿が実行される。まれに、EMシミュレーションが実行された範囲外にパラメータ値がある場合がある。このような場合、内挿ではなく、外挿が行われる。外挿は、一般に、内挿より大きな誤差を有するが、このような場合には、内腔寸法推定の精度に影響を及ぼさないことが分かっている。したがって、測定が実際に行われる前でさえ、パラメータの任意の可能なセットに対応するEMシミュレーションの結果が入手可能となる。ルックアップテーブルの作成は、時間がかかる作業であるが、任意に大量のコンピューティングリソースを使用してオフラインで実行できる作業である。ルックアップテーブルが作成されたら、EMモデルの解答ステップは、計算がより簡単になる。所与のパラメータ値、すなわち、内腔壁の幾何学的寸法、および周波数に依存した電気モデルパラメータに対して、対応する電圧V1、V2、およびV3がルックアップテーブルから読み出される。所与のパラメータ値のセットに対する電圧値を得るために、内挿または外挿が必要とされることはあり得る。このようにして得られた値V1、V2、およびV3は、仮に完全なEMシミュレーションが、所与のパラメータ値のセットに対して実行した場合に得られるであろう値に等しい。図8Bは、電圧応答のルックアップテーブルを作成するための流れ図(図の左側の流れ図)およびルックアップ値を使用して内腔寸法を決定する方法(図の右側の流れ図)を図示する。
さらに別の実施形態では、内腔内の特定の場所に対応する測定が、ある持続時間にわたって収集され、持続時間は、所与の時間枠内において、電極の有意な長手方向移動がないように維持される。この時間枠の間、電極は、心臓のポンプ作用、呼吸、患者の移動、および医療施術者によるワイヤの押動等、外部要因のために血管内で側方に移動し得る。そのような状況では、いくつかの測定は、電極を搬送するワイヤの軸が内腔の中心に近接した状態で行われるであろう一方、いくつかの他の測定は、ワイヤが中心から外れるとき、すなわち、ワイヤが血管の内腔の内側壁により接近するときに行われるであろう。電極が内腔の中心軸により近接する例に対応する測定を選択することが有利である。本発明の本側面では、中心に置かれる例に対応する測定が、特定および選択される。
電極の極端に中心から外れた位置に対応する測定を識別および除外する方法の1つは、複数の電極にわたって測定された電圧の統計的分布を作成し、電極のあまり中心から外れていない位置に対応するサブセットの測定を識別することである。金属ステントが埋め込まれた内腔内の場所に対しては、中心から外れた電極に対応する電圧測定が、より小さい値をもたらすであろう。この場合、電圧測定の最大値近傍のサブセットの測定が、内腔測定のために選択される。本サブセットの測定は、電極があまり中心から外れていない例に対応する。一方、金属ステントを伴わない領域における測定の間は、より大きな電圧が、電極が中心から外れているときに取得されるであろう。最小電圧近傍のサブセットの測定が、電極のあまり中心から外れていない位置に対応するであろう。
パルスが周波数範囲内で同時に送達される実施形態では、測定が任意の周波数範囲にわたって行われることができる。測定は、任意の周波数範囲で行われることができ、種々の組織タイプに対して生じるプロットの形状は様々である。例えば、図3の影付き領域134に示されるように、インピーダンスの大きさならびに/または大動脈、血液、および脂肪に対するフェイズ曲線の形状が、周波数範囲にわたって変化する。測定は、任意の度合いの周波数ステップサイズを有する周波数範囲内で行われてもよい。ステップサイズは、同じままであってもよく、周波数範囲にわたって変化してもよい。いくつかの実施形態では、測定は、血液、脂肪、および他の組織タイプのインピーダンスの周波数特性がはっきりした差異を示す約40KHz〜約10MHzで行われる。
図2および図3に図示されるインピーダンスの大きさおよび/またはインピーダンスフェイズは、スケーラブルであり得る。例えば、測定が1立方ミリメートルのある組織タイプに対して行われる場合、および測定が2立方ミリメートルの同じ組織タイプに対して行われる場合、周波数スペクトルにわたる同じ組織タイプに対する測定値は、何らかの係数を第1の測定の値に乗じたものになるであろう。別の例では、第1の量のある組織タイプに対する第1のセットの測定により、ある周波数範囲にわたって特定の曲線が得られる場合、同じ周波数範囲にわたる第2の量の同じ組織タイプに対する第2のセットの測定により、第1の曲線をスケーリングしたものである曲線が得られてもよい。組織の1つ以上の寸法の差から、第1のセットの測定値を乗じられる係数が導き出されることがある。
インピーダンスの大きさおよび/またはインピーダンスフェイズは、加算であってもよい。例えば、第1の量の第1のタイプの組織に対して測定が行われ、第2の量の第2のタイプの組織に対して測定が行われ、第1のタイプの組織と第2のタイプの組織の組み合わせに対して測定が行われる場合、この組み合わせに対する測定値は、ともに加えられた第1のセットの測定値と第2のセットの測定値を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1のセットの測定値および第2のセットの測定値は、1つ以上の係数によって重み付けされてもよい。別の例では、第1の組織タイプに対する第1のセットの測定により、ある周波数範囲にわたって特定の曲線が得られ、第2の組織タイプに対する第2のセットの測定により、同じ周波数範囲にわたって第2の曲線が得られる場合、第1の組織タイプおよび第2の組織タイプの組み合わせに対する第3のセットの測定により、同じ周波数範囲にわたって、第1の曲線を第1の係数倍したものに第2の曲線を第2の係数倍したものを足したものになり得る第3の曲線が得られることができる。この係数は、1であってもよく、1より小さくてもよく、1より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、スケーリングは、大きさでのみ行われ、フェイズでは行われない。
いくつかの実施形態では、ある周波数範囲にわたって複数の組織タイプの組み合わせに対して行われたインピーダンスの大きさの測定とインピーダンスフェイズの測定の組み合わせに対して、そのインピーダンスの大きさの測定とインピーダンスフェイズの測定の組み合わせが得られる、特定の寸法の一組の組織タイプがあり得る。したがって、周波数範囲にわたって行われるインピーダンス測定は、種々の組織タイプの寸法を得ることができる。これらの寸法は、血管断面積等の内腔寸法を決定するために使用されることができる。したがって、単位電気的性質は、組み合わせの一意性を利用して環境の体積測定データに変換されてもよい。
ある周波数範囲にわたって刺激が実行されるいくつかの実施形態では、擬似ランダム2進系列(「PRBS」)が使用され、いくつかの実施形態では、直交周波数分割多重(「OFDM」)系列が使用され、これらの両方について、以下でより詳細に説明する。
いくつかの実施形態では、励起信号は、血管系の標的領域内の複数の電極を介して送達される。図9は、例示的な方法10を示す。方法は、ステップ12において、単位元(すなわち1)に近い所定のピーク対二乗平均の平方根(rms)比(「PAR」)を有する複数の周波数のシーケンスパルスを生成するステップを含む。
励起のレベル(すなわち励起のエネルギー)は、対象面積へのピーク容認電流の制約によって制限される。体内に与えることができる最大電流が、Imaxである状況を考慮する。安全に与えることができる電流のrms値は、Imax/PARであり、これは、PARが高い場合には低くなる。これにより、次は、電気励起に対応する内腔からの電気応答の信号対雑音比(「SNR」)が、比例して低くなる。SNRが低いほど、最終的な推定値の精度が不十分になる。
いくつかの実施形態では、電気ハードウェアは、制限された動的範囲を有する。受信チェーン設計は、ピーク信号のインスタンスをその動的範囲より低く保つようにその利得を調整しなければならない。高いPARを有する信号の場合、それは、受信チェーン設計における全体的な信号エネルギーの低下につながるであろう。一例として、2というPARは、受信チェーンが、機能できたであろう信号強度より2倍低い信号強度で機能しており、最大6dBのSNR劣化を生じ得ることを意味する。
比較的高いPAR値を有する設計は、必ずしもシステムが機能することを防止しない。この設計は、潜在的には、SNRの低下によって、より不正確になり得る。低いPARを有することが、好ましい。しかしながら、低いSNRで動作可能な、または非常に高い動的範囲(設計の複雑さおよびコストの上昇)を有することができるシステムは、PAR値が比較的高くても、依然として機能することができる。
いくつかの実施形態では、複数の周波数および所望のPAR、すなわち、単位元に近いPARによる励起は、擬似ランダム系列を生成することによって構成される。いかなる理論にも拘束されるものではないが、fsのサンプリング時に生成される長さLの擬似ランダム系列が、fs/L刻みで0(DC周波数に対応する)〜fs/2のエイリアスされていない離散周波数音を含有することは公知である。個別の音のフェイズが、−□〜+□にわたって均一に分散される間、各周波数(DCを除く)における電力は、等分布される。
励起を達成する1つの例示的な方法では、低雑音を有するデジタルアナログ変換器(「D/A」または「DAC」)を使用する。上記で述べた要件を有するD/Aは、当技術分野で公知であり、本明細書の開示により効果的に使用されることができる。D/Aサンプリングレートは、必要とされる励起の最大周波数の少なくとも2倍である必要がある。D/A変換器出力の基本形状は、2つの連続するサンプル間の時間差に等しい幅の方形パルスである。擬似ランダム系列を出力するD/A変換器は、所望の最大周波数(fH)の2倍でサンプリングされる場合、D/A変換器は、基本的な擬似ランダム系列の周波数形状と方形パルスの周波数形状の積(すなわちfsで第1のヌルを有する正弦関数)である周波数形状であることは、当業者には理解されよう。
基本的な方形形状を有する擬似ランダム系列に基づく励起の大きな利点は、そのPARが単位元であることである。これにより、信号の所与のピーク振幅に対するrms信号電力が最大になる。電気ハードウェアの性能に関するさらなる利点がある。この実装形態におけるD/A変換器の出力は、2つのレベル(−AおよびA)のみを有し、ここでAは励起の振幅である。非線形性のみにより、信号に対する利得誤差およびオフセット誤差が生成されるので、送信チェーンの線形性は重要ではない。動的範囲および線形性の要件はあまり厳しくないので、受信チェーン設計も、より低いPARによって簡略化される。長方形パルス形状(持続時間ts=1/fs)に基づくこのような励起の別の大きな利点は、D/Aが単一ビット励起により励起され、複数のビットの同時切り換えに関連するデジタル雑音を最小にできることである。長方形パルス形状に基づく手法の軽微なフォールバックは、正弦応答のロールオフ(fH=fs/2で最大約4dB)によって、より高い対象周波数でわずかに低下することであり、これに比例して、チャネル推定に関する情報のSNRが低下する。しかしながら、このチャネル推定に関するSNRの低下は、システム性能に影響を与えない。代替実装形態では、基本的なパルス形状をデルタ関数に近づけることが可能な場合があり、その場合、周波数特性は、周波数にわたって平坦となるであろう。しかしながら、これは、PARの増加に関連する。D/A変換器出力は、対象帯域の外側での帯域外放射を防ぐために効果的にフィルタリングされる必要がある。このフィルタリングは、対象領域に通過帯域を有する受動または能動のアナログフィルタを使用して達成されてもよい。PARおよびPARの小さいが有意でない増加におけるフィルタリング結果は、依然として単位元にかなり近いままであろう。
他の実施形態では、励起系列は、繰り返し直交周波数分割多重(OFDM)系列として構成される。OFDM系列は、対象の低い周波数から始まり対象の高周波数までの全周波数の等しい振幅からなる。励起される周波数の数は、高周波数(fH)対低周波数(fL)比に比例するが、周波数間の間隔は、選定された対象の最低周波数(fL)と同じである。基本的なOFDM系列の持続時間は、その最低周波数と逆関係にある。OFDM系列のPARは、各周波数に対するフェイズの適切な選定によって単位元に近い低値になされることができる。いくつかの実施形態では、OFDM系列のPARは、1.4より低く保たれる。OFDMに基づいた系列は、数は2の累乗であるいくつかの離散音の合計であり、高速フーリエ変換(FFT)に基づいて効果的に処理回路を実施する明白な利点を提供する。
さらに他の実施形態では、励起系列は、系列の全体的なPARを最小にする方法による複数のコヒーレント正弦波の追加として構成されることができる。PARの最小化は、各正弦波のフェイズを適切に調整することによって達成されることができる。そのような系列は、OFDM系列から1つ以上の音を適切に落とすことによって構成されることもできる。これらの系列は、電気ハードウェアがその容量制限により、または非線形性があまりにも高いために、周波数情報の大規模なセットを扱わないことがあり、互いとの非乗法的関係を有する音の使用を要求する、完全なOFDM系列で特に有用であり、したがって、1つ以上の音の非線形的影響は、別の音に影響を与えない。
体内への容認できるrms電流が単一周波数励起に対する周波数の関数であることは理解されるであろう。この容認できる電流レベルは、最低でも10μAであり、周波数が1KHzを超えると直線的に増加する。この点に対する手法では、複数周波数励起に対する容認できる電流レベルについて説明していない。図4は、ある周波数範囲20にわたって心臓に提供され得る例示的な電流値18のためのグラフ16を示す。例えば、心臓を通る最大許容電流(ミリA単位)は、周波数範囲にわたって変化し得る。心臓を通る最大許容電流は、電流が異常で非連続的に、異常で連続的に、または正常で連続的に適用されるか否かによっても変化し得る。複数周波数励起系列に基づいて励起のためのrms電流の値を決定する1つの可能な方法は、複合信号のrms電流を最低周波数に対応する容認できるrms電流に一致させることによるものとすることができる。
図9の例示的な方法10は、インビボで置かれた電極のセットにわたって複数の周波数のシーケンスパルスを送達するステップ14も含む。次いで、電極の励起されたセットは、対象領域にわたって電流のパルスを送信する。対象領域の性質に応じて、電圧は、電極が設置された内腔にわたって生じる。複数の周波数パルスからの各励起周波数に対応する1つの電圧がある。したがって、本明細書で説明する方法を使用して莫大な量の情報を同時に得ることができる。
励起時に、内腔にわたって生じた複数の電圧は、次いで、複数の信号を同時に扱うことが可能な適切な測定用デバイスを使用して検出されてもよい。上記で説明したように、励起の周波数が変化するので、異なるタイプの身体物質は、電圧および電流との関係において異なる特色を有する。例えば、限定するものではないが、血管、血液、および脂肪組織は、電圧および電流において異なる特色を有する。測定用デバイスは、複数セットの情報を、順次、並列に、またはグループで処理して結果を提供するように構成されることができる。
本明細書のシステムおよび方法は、同時に内腔の複数の測定を行う機能を提供する。測定は同時に行われるので、全ての測定は、収縮期相または拡張期相中等、心拍動の同じフェイズ中に行われる。これによって、心臓のフェイズを考慮するために異なる時間に行った複数の測定値を重ね合わせることに関連する困難が克服される。
本明細書で説明する使用方法は、ソフトウェアプログラムまたはアルゴリズムの形で効果的に行われることができる。したがって、別の側面では、本開示は、本明細書の方法を実行するアルゴリズムを提供する。いくつかの実施形態では、ソフトウェアは、本明細書に説明する複数の周波数パルスを生成するように適合されたアルゴリズムステップを含む。ソフトウェアは、その場合、複数の周波数パルスによって一組の電極を励起するように構成されてもよい。ソフトウェアは、その後で内腔からの処理されるべき複数の信号を受け取るように構成されてもよい。さらに、アルゴリズムとともに使用され得る他の構成要素としては、例えば、限定するものではないが、適切な解像度を有するモニタ等のディスプレイモジュール、キーボード、マウス等の入力モジュール等がある。
さらに別の側面では、本開示は、本明細書で説明する方法を実行するように適合されたシステムを、アルゴリズムを含めて提供する。図10は、インビボで内腔内に置かれるように構成された少なくとも一組の電極32を備える例示的なシステム30を示す。この一組の電極は、複数の励起パルスによって励起されることが可能である。この複数の励起パルスは、適切な数のフリップフロップ34を使用することを必要とする擬似ランダムジェネレータを使用して利用可能となる。所望のフリップフロップの数は、いくつかある要因の中でも特に、生成されるべきパルスの複雑さによって決まる。擬似ランダムジェネレータによって実行されるべき完全系列は、入力モジュール36を使用して入力されてもよい。この入力モジュールは、手動入力を受け付けるように構成されてもよく、擬似ランダムジェネレータが実行する系列を自動的に生成するように構成されてもよい。本明細書において上記で言及したように、擬似ランダム系列の代わりに、当業者に公知であるようなOFDM系列の生成を目的とした関連する電子機器によりOFDM系列を使用してもよい。
システム30では、次いで、生成された複数の励起パルスが、D/A変換器38によって送信される。システムは、フィルタ40をさらに備え、フィルタ40は、必要性、状況の要件、コンピューティング能力、コスト等、およびそれらの組み合わせ等の種々の要因に応じて、受動フィルタであってもよく、能動フィルタであってもよい。1つの特定の実施形態では、フィルタは、受動多段LCはしご型回路網を備える。用途に応じて、いくつかの実施形態は、このようなフィルタを必要とすることなく機能することができる。
システムは、擬似ランダムジェネレータのための入力を処理するように適合された処理デバイス42をさらに備える。この処理デバイスはまた、複数の励起パルスを電極のセットに送信するように構成されてもよい。システムは、電極のセットを有する擬似ランダムジェネレータを通信するための通信デバイス(図3に示されず)も含めてもよい。異なる構成要素およびモジュール間の通信は、当業者に公知の任意の有線手段または無線手段によって達成され得、必要以上に実験を行わなくても正確な要件に到達し得る。
システム30は、内腔にわたって生じた電圧を検出するための検出器モジュール44も備え、これらの電圧については上記で説明した。次いで、検出された信号は、さらなる処理を行うために処理デバイス42に供給されてもよい。この信号は、内腔に関連する大量の情報を生じさせることができ、この情報は、信号、アルゴリズム、内腔特性等であるがこれらに限定されない入力に基づいて処理デバイスが決定するように構成される。したがって、本発明のシステムは、最終的な測定値に誤差を導入し得る異なる時点で得られるデータのまとめに頼ることなく、内腔の複数の同時測定を行うために使用されてもよい。
(実施例1)
例示的な実装形態では、励起周波数帯域は、血液、組織、および脂肪の電気特性に基づいて、40KHz(fL)から10MHz(fH)までの間で選定された。16ビットD/A変換器は、fs(=20MHz)のサンプリングレートで動作するように選定された。選定されたD/A変換器は、オフセット2進系列(最低値は0x0000、最大値は0xFFFF)を受け入れる。変換器の最上位バイトは、単一のビット擬似ランダムパターンに従って切り換えられるが、次のビットは論理1に永久的に保持された。他の全てのビットは、論理0に保持された。したがって、D/A入力は、擬似ランダムジェネレータからの0または1に応じて0x4000と0xC000で切り換えられる。擬似ランダムジェネレータは、バックエンドエンティティにあり、9タップの擬似ランダム系列を表す、フロップと呼ばれる9個のDフリップフロップのチェーンからなる。得られる系列は、L=511(29−1)の長さを有する最大長の擬似ランダム系列である。この系列を生成するために使用される生成多項式は、
X9+X4+1=0 (1)
であり、これは、図11に示されるように、最後のタップの入力は第1のフロップと第5のフロップの排他的論理和をとった出力であることを示す。フロップ出力は全て1に初期化され、(リセット条件)で開始される。励起系列に存在する音は、flの倍数である。
fl=fs/L=20/511MHz=39.14KHz (2)
D/A変換器は、39.14KHzで分離された周波数を有する出力を生成した。出力は、帯域全体にわたってかなりの平坦度を保証する、通過帯域が39.14KHzより低い値で始まり10MHzより上で終わるバンドパスフィルタを通過した。特定の実装形態では、フィルタは、受動多段LCはしご型回路網を使用して設計される。最終的な複合信号の最小周波数は39.14KHzであるので、信号rms値は、391□Aより低く維持される。サンプリング周波数およびタップ長の選定は、最小動作周波数および最大動作周波数によって決まる。以前に説明したように、サンプリング周波数は、励起において所望の最大周波数の少なくとも2倍であるが、タップ長(L)は、この関係を満たす最も近い整数である。
L=[log2(fs/fmin)] (3)
図12aは、本明細書で説明するように生成された9タップの擬似ランダム2進系列の時間領域波形を示す。波形は、391□aの振幅を有する。図12bは、時間領域の例示的な擬似ランダム2進系列の強調された一部分を示す。
図13は、生成された同じ9タップの擬似ランダム2進系列のパワースペクトル密度を示す。図14は、9タップの擬似ランダム2進系列のためのフェイズ角と周波数との間のプロットを示す。
(実施例2)
さらに別の実装形態では、図15に示されるように、OFDM系列は、等しい振幅のNfreq(=256)の離散音を使用して構成され、各々、ランダムフェイズにある。各音のフェイズ角は、1.4より低いPARを得るように調整される。OFDM系列の構成は、全ての離散音をまとめて加算するだけで、または2Nfreq(=512)個の複素数の対称系列のIFFT(逆高速フーリエ変換)を実行することによって行われることができ、ここで、第1の256個の複素数は、個別の音の振幅およびフェイズに関連し、次のセットの256個の複素数は、逆の順序で配列された第1の256個の複素共役にすぎない(図15)。対象の最大周波数(fH)の2倍であるfs(=20MHz)でサンプリングされる、得られる時間領域信号が図16に示されている。この系列の最低周波数は、fL(=fs/2Nfreq=39.0625KHz)である。時間領域OFDM系列は、最低周波数を同じに保つ適切なサイズのIFFT入力を使用して、これより高いサンプリングレートで生成されることもできる。サンプリングレートを向上させることにより、送信側のハードウェアの複雑さを増しながら、アンチエイリアスされたフィルタリングに関する要件が緩和される。図17は、図15の実装形態に対する例示的なOFDM周波数応答を示す。
図18に示されるさらに別の実施形態では、カスタマイズされた系列が、PARを最小にするように適切なフェイズ角で追加された複数のコヒーレント正弦波を使用して作成される。得られる系列は、任意の所与の周波数が他の任意の周波数と調和関係にない性質を持つことができる。同じものは、上記で説明したOFDMフレームワークでも構成でき、元の系列から音のセットを取り除くために1つ以上のIFFT入力がヌル化される。
上記で参照したように、いくつかの実施形態では、空間ダイバーシティも利用しているが、これは一般に、電極間の離隔距離の差を指す。例えば、電圧測定は、互いからある一定の距離にある第1の電極と第2の電極との間で行われ得、測定は、互いから第2の距離にある第1の電極と第2の電極との間で行われてもよい。空間ダイバーシティの場合、第1の距離と第2の距離は、異なる。他の実施形態では、任意の数の電極を使用されてもよく、上記で説明したように、任意の2つの電極の間の距離は、任意の2つの他の電極の間の距離と異なることができる。電極間の異なる間隔を使用することにより、同じ内腔寸法に対する異なる電圧測定値が提供される。共通の内腔寸法を解明するために全てのこれらのセットの測定値を使用することにより、ロバストさが増加する。これには、2つの理由がある。第1に、最適な電極間隔は、測定される内腔の寸法によって決まる。種々の場合において寸法が同じではないので、このような空間ダイバーシティを使用することによって、少なくとも一組の電極を最適またはほぼ最適に離隔することができる。第2に、測定値のいくつかが、その信頼性を低下させた他の要因の影響を受けることがある。このような要因のいくつかは、(1)特定の電極が壁と接触することによる異常な測定値、(2)測定用回路のグリッチによる、いくつかの電極に対する不正確な電圧測定値である。これらの場合、測定値のいくつかは、異常値と識別されて除かれ、内腔寸法をより正確に推定することができる。
上記のいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも2つの電極にわたる励起パルスを提供すると説明されている。次いで、システム全体に組み込み可能な例示的な送達デバイスについて説明する。ただし、この送達デバイスは、独立型デバイスとみなすことができる。図19は、診断要素の例示的な実施形態の図である。診断デバイス15は、離隔された少なくとも2セットの電極16および17が、遠位端18近傍に配置された細長い医療用デバイスを含む。診断デバイス15は、インビボで血管系、例えば、血管内の対象体積19の近位に置かれるように構成され、第1のセットの電極は、励起および測定デバイス20から入力励起を受け取るように構成され、第2のセット(または第1のセット)の電極は、対象体積19から本明細書では「応答」と呼ばれる電圧信号または「応答」電圧信号を受け取るように構成される。第2のセットの電極は、細長い医療用デバイスの近位端22にある励起および測定用デバイス20に応答電圧信号を送るように構成される。励起および測定用デバイス20は、応答電圧信号の関数である出力信号を受け取って測定し、この出力信号は、離隔された電極の間の電圧差を計算するために処理される。この電圧差は内腔寸法を示し、1つ以上の内腔寸法を計算するために使用される。対象体積からの信号を測定するための一組の電極について言及してきたが、デバイスは、任意の数の電極を有してもよい。図1および本明細書の他の実施形態の例示的な実施形態の例示的な利点は、測定値を得るために流体が体腔に注入されることをシステムが必要としないことである。さらに、例示的な実施形態は、内腔パラメータを得るための直接的な方法を提供し、手技の簡単さおよび患者の快適さを増加させる。
図20は、図19の励起および測定用デバイス20の例示的な非限定的実施形態を示す。励起源24は、基準抵抗26を介して診断要素15の一組の電極を励起させるために使用され、励起後に、電圧測定値VM1 28、VM2 29、VM3 23、およびVM4 25(特定の実施形態の説明では出力電圧とも呼ばれる)が、受け取られて測定される。これらの測定を行うための他のトポロジが可能であり、本明細書に含まれることは、当業者には理解されよう。図示のような電気測定等の測定は、2つ以上の電極の間で行うことができる。血管を通して診断要素を進めるので、2つの電極間の電圧分布は、周波数ダイバーシティによる所与の励起に対して、連続的に測定されてもよい。以前に言及したように、電極間の電圧分布は、内腔または内腔を有する対象体積の断面積を示し、これらの内腔寸法を決定するために使用される。
診断要素の離隔された電極は、図21に示される参照番号35〜48によって示される、細長い要素上の所定の位置に配列されてもよい。電極のサイズおよび間隔は、最適な性能を達成するように設計される。電極は、インビボで体腔内に置くためにカテーテル上または誘導ワイヤ上に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、電極は導電材料から形成されてもよい。例えば、電極は、銅、銀、アルミニウム、金、または任意の合金等の金属、めっき、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。電極は、ワイヤの露出された一部分を含んでもよい。電極は、電気信号および/または電流を提供および/または受け取るための電子機器と電気通信する任意の電気伝導性材料を含んでもよい。
電極は、複数の電極を使用可能な図22に示される分散電極50として配列されてもよい。この分散電極は、一般に、分散電極構成を指し、この構成では、単一の電極が多数の電極に分割されていくつかの場所に置かれ、全ての電極が同じ端子に接続される。分散電極構成を達成するためのいくつかの方法があり、図22は1つの非限定的な例である。この場合、いくつかの電極は、内部ワイヤにより短絡させることによって同じ励起源に接続され、したがって分散電極構成を達成する。
電極の追加の異なる構成が、異なる側面で可能であり、いくつかの非限定的な例が、本明細書で説明されている。1つの特定の例では、診断要素は、3つの離隔された電極を備え、別の例では、診断要素は、4つの離隔された電極を備える。代替実施形態では、任意の数の電極が使用されてもよい。
さらに、電極間の間隔は、電極が取り付けられた誘導ワイヤに関して非対称であってもよい。さらに別の例では、電極は、ワイヤを完全には取り囲まない。ワイヤの1区画のみが、電極によって覆われる。複数のこのような電極が、ワイヤの異なる区画を覆って置かれる。特定の電極が、最も好ましいように選定される。例えば、ワイヤが壁またはステントに接触している場合、壁またはステントから離れたワイヤの区画を覆う電極を使用するほうが好ましい。いくつかの構成では、入力励起を送信するように適合された電極および応答信号を送るように適合された電極は、あらかじめ決められていてもよいことに留意されたい。さらに、入力励起を送信するために複数対の電極を選択することが可能であり、同様に、複数対の電極が、応答電圧信号を送るために選択されてもよい。
さらに別の例では、1対の電極の各々の間の距離は、あらかじめ決められていなくてもよいが、各電極の場所は、任意の公知の技法によって確定的である。いくつかの他の実施形態では、電極の各々の間の距離は、固定されてもよい。他の実施形態では、電極間の距離は変化し得る。具体的な使用方法では、電極は、解剖学的特徴の近傍に設置されてもよい。例えば、電極は、血管等の体腔の近傍に設置されてもよく、そこで、電極は、体腔の外面および/または内面と接触してもよい。いくつかの実施形態では、電極は、体腔に接触しながら、または接触しないで、体腔内に設置されてもよい。電極の各々は、体腔に関して同様に設置されてもよく(例えば、全ての電極が体腔の外面と接触する)、または、種々の電極は、体腔に関して異なる位置を有してもよい(例えば、いくつかの電極は体腔内にあり、いくつかの電極は体腔の内表面と接触する)。
さらに、いくつかの実施形態では、誘導ワイヤは、診断要素と一体化してもよい。誘導ワイヤは、離隔された複数の端子も備えてもよい。特定の例では、その間にあるセパレータによって離隔された第1の端子および第2の端子が使用される。このセパレータは、ポリマーから成ってもよい。セパレータは、いくつかの実施形態では、第1の端子および第2の端子の周りの非導電性コーティングであってもよい。セパレータは、第1の端子を第2の端子から電気的に分離するおよび/または絶縁してもよい。セパレータは、限定ではないが、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ペバックス、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル(PES)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン(PC/ABS)、他の任意のポリマー、ゴム、薄肉の熱収縮性材料、または他の任意の電気的絶縁材料から成ってもよい。電気伝導性ワイヤは、特定の用途に対する電気的性質および機械的性質に基づいて選定された、銅、引き抜き充填管(例えば、Fort Wayne Metals等)ステンレス鋼、銀合金、タングステン、または他の任意の無毒性の電気的伝導性材料で作製されてもよい。電気ワイヤは、押し出し、エナメルコーティング、スプレー、または浸漬コーティング加工を使用して、機械的性質がその用途に適している生体適合性絶縁性材料を用いてさらに絶縁され得る。
いくつかの実施形態では、誘導ワイヤは、第3の端子と、第4の端子と、ワイヤも備てもよい。離隔距離および/またはセパレータが、第1の端子、第2の端子、第3の端子、および/または第4の端子の間に設けられてもよい。本発明の種々の実施形態では、個別の端子に接続された任意の数のワイヤが設けられてもよい。当業者に理解されるように、複数のワイヤの間に電気絶縁を設けてもよい。
別個の電気的伝導性ワイヤまたは導線は、追加として使用されてもよく、誘導ワイヤと一体化されてもよく、遠位電極を近位端に接続するために使用される。これらの導線はまた、誘導ワイヤの内部または外部のいずれかに埋め込まれてもよい。場合によっては、誘導ワイヤはそれ自体を支持し、前述の導線のうちの1つとして用いられることができる。特定の非限定的な実施形態では、誘導ワイヤは、当業者にはよく理解されるであろうハイポチューブ構造を有してもよい。1つの特定の非限定的な例では、1つの導線または複数の導線は、心線の外面上に巻き付けられ、外側のハイポチューブの内部またはポリマー材料(例えば、熱収縮性ポリマーまたは押し出し加工されたポリマー)の内部に入れられてもよい。
別の実施形態では、誘導ワイヤの表面は、誘導ワイヤの長さに沿って可変の剛性を提供するために、限定ではないが、レーザ切断されたパターン等のパターンを有してもよい。異なる長さでは、インビボで患者の体内に置かれている誘導ワイヤの移動を簡単にするために異なる剛性レベルが必要とされる場合があり、これらの剛性要件は、誘導ワイヤの表面上で異なるパターンを提供することによって満たされ得ることは、当業者には理解されよう。剛性は、誘導ワイヤの周りに異なる厚さのポリマー外被を設けることによって変化されてもよい。誘導ワイヤは、所望の用途に応じて、円形のワイヤ、または平坦なワイヤにされ得る。
電極のワイヤとの付着は、限定ではないが、導線を配線するために電極内にスリットを設けること、電極を導線に圧着し、次いで、レーザ溶接を行うこと、電極をワイヤにはんだ付けまたはろう付けすることを含む、種々の技法を使用することにより達成され得る。別の例では、電極に穴を設けて導線を付着させてもよい。電極は、溶接または接着等の手段によりハイポチューブに保持可能なコイルとして提供されてもよい。電極はまた、導線に取り付けられたリングまたはバンドとして提供されてもよい。誘導ワイヤを使用する別の実施形態では、誘導ワイヤのコイル状セクション内の複数の電極は、必要な箇所にある非導電性コーティングを避けてコイルを血液に触れさせることによって実施されることができる。複数の電極を作製するため、多線巻を使用することができ、相互に絶縁された異なるワイヤを必要な箇所で露出させることができる。
さらに、いくつかの実施形態では、電極端子は、別個のワイヤに設けられてもよく、このワイヤは、共通の支持ワイヤまたは能動誘導ワイヤを共有してもよく、共有しなくてもよい。端子は、一直線に配列されてもよい。他の実施形態では、端子は、ジグザグ形の構成で設けられもよく、平面配置内部に設けられてもよく、空間配置内に設けられてもよく、互いと関連する他の任意の場所を有してもよい。端子の全ての組み合わせに関して、同じ電流値および電圧値に応答して、測定を行われてもよい。
いくつかの実施形態では、電極はリードと呼ばれ、当技術分野で公知の他の心臓用リードと非常によく似た構成であるが、能動誘導ワイヤの一部であるように構成される。いくつかの実施形態は、3つ以上の電極を備える。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は、能動誘導ワイヤ上のその遠位端において能動誘導ワイヤの円周の一部分に設置される。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は、能動誘導ワイヤ上のその遠位端において能動誘導ワイヤの円周全体を包囲する。
他の実施形態では、区画が離隔された電極が、設けられてもよい。区画が離隔された電極は、能動誘導ワイヤを完全に周回するわけではない。これにより、閉塞の方位の図示が可能になり、すなわち、断面積のみではなく、所与の断面内のプラークの空間的向きを決定することが実行可能になることができる。電極は、能動誘導ワイヤの一部分のみを周回するので、測定される寸法の方向は、能動誘導ワイヤの区画が離隔された電極がある側にあるであろう。いくつかの実施形態では、区画が離隔された電極は全て、能動誘導ワイヤの同じ側に設置されてもよい。あるいは、電極は、能動誘導ワイヤを囲む軸の種々の場所に設けられてもよい。以前に言及したように、本発明の他の実施形態は、ワイヤの他の巻回または編組技法を提供してもよい。
能動誘導ワイヤは、1つ以上のワイヤが巻き付けられた支持体を含んでもよい。ワイヤは、任意の構成を有してもよく、この構成には、以前に説明した巻回または編組のタイプを含んでもよい。能動誘導ワイヤのコアは、任意の直径を有してもよい。いくつかの実施形態では、コアの直径は、コアの長さと同じままとしてもよい。他の実施形態では、コアの直径は、コアの長さに沿って変化し得る。コアの直径がコアのセクションと同じままとすることができるセクションがある場合があり、コアの他のセクションによって異なり得る。いくつかの実施形態では、コアの直径は、能動誘導ワイヤの近位端に向かって大きくなってもよく、能動誘導ワイヤの遠位端に向かって小さくなってもよい。いくつかの実施形態では、標準的な直径が通常セクションで与えられてもよく、より大きな直径がx支持セクションで与えられてもよい。同様に、コアの断面形状およびサイズは、同じままであってもよく、能動誘導ワイヤの長さに沿って変化してもよい。
いくつかの実施形態では、1つ以上のワイヤが能動誘導ワイヤのコアに巻き付けられてもよい。いくつかの実施形態では、以前に説明したように、ワイヤは、コーティングが除去されて金属が露出されるセクションを有し得る。このような除去されたセクションは、能動誘導ワイヤの長さに沿って任意の場所に生じてもよい。いくつかの実施形態では、能動誘導ワイヤは、可撓性ゾーンとステントゾーンとを有してもよい。いくつかの例では、除去されたセクションは、ステントゾーンに設けられてもよい。他の実施形態では、除去されたセクションは、可撓性ゾーンに設けられてもよく、能動誘導ワイヤに沿って他の任意の場所に設けられてよい。
いくつかの実施形態では、ワイヤは、変化する可撓度を有するように包まれてもよい。例えば、標準的な構成は、ワイヤを剛性にする、すなわち、可撓性でなくもよい。中間の構成では、ワイヤは、わずかに可撓性であってもよい。他の構成では、ワイヤは、可撓性または特別可撓性であるように巻かれてもよい。ワイヤの巻回または編組のタイプ、または緊張またはワイヤあるいはコーティングの材料は、所望の可撓度を提供するように選択されてもよい。
いくつかの実施形態では、能動誘導ワイヤの近位端は、PTFE等のプラスチック、または本明細書の別の場所で説明する他の任意のタイプのポリマーから形成されてもよい。
いくつかの他の実施形態では、能動誘導ワイヤのセクションは、スプリングコイルを含んでもよい。いくつかの実装形態では、スプリングコイルは、ワイヤの残りの部分と異なる材料から形成されてもよい。一例では、スプリングコイルは、白金合金から形成されてもよい。そのうえ、いくつかの実施形態では、能動誘導ワイヤは、親水性コーティングおよび/または疎水性コーティングを含み得る。
図26〜34は、能動誘導ワイヤの例示的な実施形態を示す。図26は、絶縁された電極ワイヤ204(本明細書では、導体または導線とも呼ばれる)が、その上で並列に走行するコアシャフト202を有する能動誘導ワイヤ200を示す。外被206は、コアワイヤおよび導体アセンブリの上に配置され、所望の直径にリフローされる。図27に示される別の実施形態では、誘導ワイヤ208は、コア202の中空210から引き出された導線204を含み、コア202は、外被または熱収縮206によって覆われ、外被206は、コアシャフトの表面にスリーブを付けたり、収縮させたり、押し出し加工したりすることができる。図28に示される誘導ワイヤ212の別の実施形態では、導線204は、コアシャフト202に巻き付けられる。外側の外被206は、導線上で押し出し加工し、スリーブを付け、リフローされてもよい。導線の遠位端は、電極端子に引き込まれて柔軟な移行を先端で行う、より可撓性の高い材料で作製されてもよい。
図29に示される誘導ワイヤ214の別の実施形態には、中央コアシャフト202上で編まれた導線204がある。導線の近位端は、より硬くなり得、遠位端は可撓性となり得る。さらに、能動誘導ワイヤ全体は、近位端で硬く、遠位端で可撓性となり得る。外被206は、編まれた導線を他の実施形態を参照して説明した技法のいずれかによって覆うように設けられてもよい。図30に示される誘導ワイヤ216のさらに別の実施形態では、押し出しワイヤは、メインシャフトを作製する走行する導線204を内部に収納してもよく、近位端および遠位端は、電極を取り付け得る異なる構成を有してもよい。図31に示される誘導ワイヤ218のさらに別の実施形態では、内側の押し出しシャフト220は、導線204を収容するのに適した溝222を有してもよい。外側のスリーブ206は、内側シャフト上で熱収縮され得る。図32に示されるさらに別の実施形態では、外側シャフト226は、剛性を得るために編まれてもよく、ポリマーは、外側シャフトの上にリフローされて外被206を形成してもよい。導線204は、中央コア228から引き出されてもよい。さらに別の実施形態230では、コイル232は、図33に示されるように、外側シャフト234にスリーブを付けられてもよい一方、導線204は外側シャフトのコア236から引き出される。
いくつかの実施形態では、デバイスは、能動誘導ワイヤを含んでも、含まなくてもよく、バルーンカテーテル内に設けられてもよい。バルーンカテーテルを組み込んだ実施形態は、本明細書の別の場所で説明する側面のいくつかまたは全てを有してもよく、同じ測定を実行してもよい。いくつかの実施形態では、電極は、バルーンの前、バルーンの後ろ、および/またはバルーンの上に設けられてもよい。
図34は、本明細書で説明する診断要素を含む例示的なバルーンカテーテル238を図示する。カテーテルの遠位端240は、その上に配置された4つの離隔された電極242と、バルーン内部の別のセットの電極244とを有する。カテーテルは、バルーンの内部のマーカ246も有する。バルーンの内側には2つの電極のみが示されているが、複数の電極が存在し得る。この例示的な非限定的構成では、遠位端電極は、内腔寸法を測定するのを支援し、バルーン内部の電極は、膨張プロセス中にバルーン直径を決定するのに役立つ。図面に示される距離x、y、zおよびa、b、c、dは、バルーンカテーテルの設計中にあらかじめ決定されてもよい。別の実施形態では、電極は、バルーンの内部にのみ存在してもよい。別の実施形態では、電極は、バルーンの外部にのみ存在してもよい。
バルーンカテーテルは、寸法を増大させるために、バルーンの内部または外部でバルーン材料に配置されたリング電極も有してもよい。いくつかの実施形態では、リングは、導電材料から形成されてもよい。導電性リングが伸張されると、その固有抵抗が増加することがある。これは、バルーンの増大した直径を測定するために使用されることができる。
カテーテルまたは誘導ワイヤの遠位先端に置かれた電極およびこれらの電極を電気ハードウェアに接続する電気導体は、アンテナとして働き、励起の完全性および測定された電圧の完全性に影響を及ぼす環境からの望ましくない電磁妨害を検出してもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルまたは誘導ワイヤの外側外被は、電磁妨害に対するシールドとして使用されてもよく、電気ハードウェアのGNDまたは任意の固定電圧源に接続される。金属の外被のみが、電磁シールドとして使用されることができる。いくつかの実施形態では、金属の外被は、カテーテルまたは誘導ワイヤの長さ全体に沿って延びることができる。いくつかの他の実施形態では、金属の外被は、部分的なセクションのみを覆い、セクションの残りは、ポリマー外被等の非金属の外被によって覆われてもよい。導電性構造は、導電性インクを使用することによって、または他の任意の手段によって、非金属の外被上でエッチングされてもよい。導電性構造は、外被の金属の部分と非金属の部分を分離する境界端部において金属の外被に電気的に接続されてもよい。
本明細書で説明するデバイス、システム、および方法の実施形態により、施術者は、これらのカテーテルまたは能動誘導ワイヤまたはバルーンカテーテルを、類似の標準的なデバイスの感じおよび可操作度と比較して、感じが変化せず(または、無視できる程度の変化である)、さらに、これらのデバイスを操作できなくなることなく(または、操作能力の喪失は無視できる程度である)、使用することができる。
プロトタイプの4電極デバイス(電気生理学的カテーテル)を作製し、電気ハードウェアに結合(嵌合)させた。この電気ハードウェアをコンピュータ(標準)に結合した。電子基板は、データ収集電子機器と、パワー電子機器と、心電図(ECG)とを備えていた。3mmから80mmまで変化する直径(ノギスを使用して測定された)を有する複数のガラスチューブおよびプラスチックチューブには、チューブに挿入された種々の材料により作成された、シミュレートした病変(狭窄)を設けられた。病変を有するチューブを、種々の濃度を有する生理食塩水中に置いた。各シミュレートした病変を通して各チューブにデバイスを挿入し、デバイスは、手技中に、電子基板に伝えられる電極信号を生成した。電子基板は、この信号を、シミュレートした血管/病変に着座したデバイスの電極として生成された電極から受け取り、および/またはシミュレートした血管/病変内で移動し、これらの信号を電子基板のデータ収集モジュールに伝えた。この実施形態でのアルゴリズムを、デバイス電極からの信号を種々の血管測定値に変換するためにコンピュータ上で実施した。コンピュータ(そのアルゴリズム)は、直径および他の測定値をリアルタイムで決定し、同じプロットを作成した。実験の結果から、測定値(血管/病変の直径)の精度は、最大約50ミクロン(マイクロメートル)であることが示された。
次いで第1のワイヤと第2のワイヤとを備える実施形態を参照すると、いくつかの実施形態では、信号および/または電流を受け取る、発する、または対象体積に送るために、第1のワイヤの第1の端子(すなわち放出端子)は、第1の電極として適合され得、信号および/または電流は、第2のワイヤの第2の電極(すなわち受信端子)として適合された第2の端子によって捕捉されてもよい(すなわち検出される、および/または受け取られる)。
一実施形態では、ワイヤの近位端は、図23に示される測定用デバイスに接続される(すなわち結合される)。コネクタは、各ワイヤの近位端を測定用デバイスに接続するために使用されてもよい。
図23は、診断デバイスの例示的な実施形態を図示する。診断デバイス60は、診断要素10の少なくとも1つのセットの電極からの信号を受け取り、処理ユニット64を使用してその信号を測定値および/または他の解剖学的情報に変換する(および/または変える)ように適合された励起および測定用デバイス62を備える。いくつかの実施形態では、励起および測定用デバイス62は、一組の電極から信号を受け取り、その信号を、ディスプレイデバイス66に表示される被験体の解剖学的特徴(対象の解剖学的特徴)の寸法の視覚的表現に変換してもよい。ディスプレイデバイス66は、種々の形、寸法値、グラフ、または血管造影図に重ね合わされた視覚的表現で結果を示す。ディスプレイデバイスおよびプロセッサまたはプロセッサの一部は、ホストコンピュータに組み込まれてもよい。
信号は、データ収集モジュール(例示的な非限定的実施形態では処理ユニットと一体化される)を使用して分析されてもよく、データ収集モジュールは、標準コンピュータの外部に、または標準コンピュータの内部に組み込まれることもできる。処理ユニット64は、測定された出力電圧および電流の信号からのデータの、本明細書で説明する所望の解剖学的測定値または内腔寸法への変換を可能にするために、1つ以上の信号処理アルゴリズムも組み込む。
処理ユニット64は、さらなる処理のためにECGキャプチャーユニット68および血管造影図キャプチャーユニット70にも結合されてもよい。処理ユニット64からの結果は、血管造影図キャプチャーユニットから得られた血管造影像上に重ね合わされることができる。ECGキャプチャーユニットからのECGデータは、血管造影像により内腔測定値を同期させるために例示的な実施形態で使用され、その例については以下で説明する。したがって、本明細書で説明するデバイス、システム、および方法は、寸法のみだけでなく撮像の出力を提供することができ、非限定的な例として、血管造影図または別のX線出力画像に画像を重畳することができる。
図24は、X線画像上に重畳された例示的な画像を示す。オーバレイ250は、血管256の血管造影写真254上に重ね合わされた(または重畳された)内腔プロファイルの2次元(2D)表現252を含む。以下で説明するように、測定法および処理法により、撮像されたときに位置情報を得ることができる1つまたは複数の放射線不透過性マーカを有するカテーテルまたは誘導ワイヤ等の腔内器具の位置情報と内腔寸法情報(例えば、断面積)を共に記載することができる。これらの技法は、医学的手技中の診断誘導に非常に有用である。いくつかの実施形態では、これらの測定は、3D体積における
内腔軌跡を決定するために使用される。カラーコーディングは、例えば、健康な領域を緑色で、疑わしい領域を黄色で、警告領域を赤色で示すために提供されてもよく、このような情報追加を提供するための他の方法も使用されてもよい。これらの技法については、以下で、より十分に説明する。
いくつかの実施形態では、表現および血管造影写真が、ビデオディスプレイ上に提供されてもよい。ビデオディスプレイは、例えば、コンピュータモニタ、陰極線管、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、タッチパッドまたはタッチスクリーンディスプレイ、および/または視覚的に認識される出力を出すための当技術分野で公知の他の手段等、ユーザに認識される方法で情報が表示され得るデバイスを含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態では、視覚的表現は、白黒であってもよく、色を含んでもよい。いくつかの実施形態では、色または陰影は、血管寸法を示してもよい。
いくつかの実施形態では、ディスプレイデバイスに表示される表現は、血管または内腔の長さに沿った血管寸法を含んでもよい。いくつかの実施形態では、寸法には、血管直径、血管半径、血管円周、または血管断面積が含まれ得る。寸法は、処理ユニットによってディスプレイユニット上に自動的に表示されてもよい。あるいは、寸法は、ユーザ入力に応答して表示されてもよい。ユーザ入力の例としては、限定ではないが、ディスプレイの一部分の上のカーソル(マウス、トラックボール、ジョイスティック、タッチスクリーン、矢印キー、遠隔制御装置等のポインティングデバイスによって制御され得る)またはキーボード入力が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、寸法は、カーソルまたは他のユーザ入力の近傍に提供される。例えば、ユーザが視覚的表現の一部分の上にマウスカーソルを設置するとき、その部分の寸法が示されてもよい。他の実施形態では、全ての寸法は表示されてもよい。
図25に示される1つの例示的な実施形態では、図23の測定および励起デバイス62が、ドングル74およびパーソナルコンピュータ(PC)76のようなホストコンピュータに組み込まれている。ドングル74は、信号を1つ以上の電極に送り、かつ1つまたは複数の電極から信号を受け取るように適合された信号調節モジュール78を備える、電気ハードウェアを含む。各信号調節器は、80によって全体的に示される高精度回路(非限定的な例の場合:16ビットデータ収集[DAQ]回路、または18ビットDAQ)に結合されてもよく、この回路は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、レベル1の信号処理ユニット82に結合される。信号は、当技術分野で公知の任意の波形を含んでもよい。例えば、信号は、正弦波波形、矩形波形、三角波形、のこぎり形波形、パルス波形、またはこれらの他の任意の複合物を含んでもよい。これらのデータ収集回路は、さらに、測定用デバイスによって測定された出力電圧をデジタル化し、このデジタル化された信号は、最初にレベル1の信号処理ユニット82によって処理されてもよい。ここで、コンピュータまたはホストコンピュータの任意の説明、または任意の特定のタイプの回路網デバイスとしては、限定ではないが、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、またはラップトップコンピュータ、携帯情報端末(PDA)が含まれ得ることに着目されたい。いくつかの実施形態では、複数のデバイスまたはプロセッサを使用してもよい。いくつかの実施形態では、種々のコンピュータまたはプロセッサは、本明細書で説明するように、1つ以上のステップまたは計算を実行するか、または任意のアルゴリズムを実行するために特別にプログラムされてもよい。
信号処理ユニット82は、複数のセクションに分割することができ、いくつかは、ドングルとしてハードウェア上に常駐し、残りは、レベル2の信号処理ユニット84によって図25で示されているホストコンピュータ上に常駐する。この分割は必須ではなく、いくつかの実施形態では、信号処理ユニット82および84は、ホストコンピュータに完全に組み込まれてもよく、信号処理ユニット82および84は、ドングルに完全に備えられてもよい。1つの例示的な実施形態では、信号プロセッサの第1のレベル(レベル1の信号処理ユニット)は、莫大な量のデータを削減し得、処理の残りが行われるPCへの転送を可能にする。レベル1、すなわち、第1のレベルの信号処理ユニットは、出力信号を圧縮してもよく、その結果、必須の情報は失われないが、データ内のノイズは減少され、したがって、レベル2、すなわち、第2のレベルの信号処理ユニットに渡されるデータパケット(または処理されたデジタル信号)のサイズが減少する。1つの例示的な実施形態では、レベル1の信号処理ユニットは、デバイスの抵抗および結合の影響を取り除いてもよい。
レベル2の信号プロセッサは、コンピュータの一部または電子基板自体の一部であってもよい。このレベル2のプロセッサは、対象の寸法的な側面(非限定的例の同じものの測定、組織性状診断、表示)を決定するアルゴリズムまたは技法または方法を実行してもよい。レベル1およびレベル2のプロセッサは、説明した別個のレベル1およびレベル2のプロセッサの両方の機能を実行する単一のプロセッサに含まれてもよい。また、少なくともプロセッサおよび/または調節器のうちの1つは、デバイス抵抗および結合の影響を(完全にとはいかないまでも、少なくとも部分的に)取り除くように構成および/またはプログラムされる。
1つの特定の例では、診断要素は、本明細書ではスマート誘導ワイヤとも呼ばれる能動誘導ワイヤに組み込まれる。一例では、能動誘導ワイヤは、一定かつ不変の距離だけ離隔された遠位端に1対の電極リングを有してもよい。別の例では、より多数の対の電極リングを設けられてもよい。本発明の方法は、軸外の能動誘導ワイヤ、血液および組織の性質の変化、患者間のばらつき(流量、温度、血液化学等)、および壁の非等方性組織(すなわち、局所的な脂質プール、血栓、石灰化等)に対応してもよい。
図35は、本発明の一実施形態による血管系からのグラフ出力258の形をしたデータの一例を示す。血管系からのデータは、有限要素モデリング(FEM)法を使用して作成した。FEMは、任意の所与のモデルに対して非常に正確であり、モデルは、障害のモードおよび制限を評価するために任意に変更することができる。FEMでは、注意深く計算した組織の電気的性質を使用する。データは、モデルFEMによって作成され、本明細書で説明するデバイス、システム、および方法の実施形態で提供されたアルゴリズムによって分析される(誤差の定量化を可能とする)。拍動流も作成され、内腔寸法は、時間が経つにつれて変化する。デバイスを使用する内腔寸法は、心拍動あたり約150回で計算した。この例では、デバイス、システム、および方法への課題として実際のインビボ状況より4倍多いノイズを生成した。その結果は、最大2%の誤差(解決策対推定値)を示し、したがって、安定した内腔の追跡を意味する。上側のプロットでは、上の線260は、内腔の長さ(時間の関数として測定した)にわたる血管の実際の既知の寸法(半径)とした。上側のプロットの下の線262は、内腔の長さ(x軸上の時間の関数として測定した)にわたる血管の計算された(または推定された)寸法(半径)であった。既知の寸法対システムにより計算された寸法の誤差は、下側のプロット264に示され、このプロットは、テストした実施形態に対して最大2%の誤差を示す。
本開示の最初の側面は、心臓血管の寸法を決定することに焦点を当てられ得るが、方法は、身体の他の部分において、他のタイプの他の脈管または臓器で使用可能であり、被験体の種々の解剖学的特徴に対する他の任意のタイプの治療または診断用途に適用されてもよい。例えば、方法およびシステムは、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)で使用することができる。TAVIは、生体弁がカテーテルを通して挿入され、罹患した自己大動脈弁内に植え込む手技である。TAVIを成功させるために、2つの重要なステップとしては、大動脈起始部直径のサイズを決定し、それにより適切なステントサイズを選ぶステップと、配備前に大動脈起始部に対する生体弁の正確な場所および向きを決定するステップとがある。サイズの決定は、典型的には、手技前の心エコー画像診断(TEEまたは3Dエコーのいずれか)によって達成される。エコーは、エコー室で行われる別個の手技であり、熟練した操作者を必要とする。直径決定の精度は、画質ならびにエコー技師の技術および経験によって制限される。現在、人工弁の位置は、血管造影により目測され、訓練を積み熟練した操作者のみが正しい位置を判断することができる。位置の妥当性は、操作者とカテラボの経験豊かな看護師の合意によって決まる。弁が配備されると、誤って留置した場合に訂正する選択肢がほとんどまたは全くなく、そのうえ、臨床上の影響は有害である。本明細書で説明する本技法の側面は、有利には、人工弁のサイズ決定、位置決め、および配備を支援できる現在の技法に組み込まれる誘導システムを提供する。
一般的なTAVI手技は、大腿動脈アクセスによる標準的な直径0.035インチまたは0.038インチのJチップ誘導ワイヤによって大動脈弁を越えるステップから始まる。バルーン弁形成術は、一般的には、人工弁の配備の準備で狭窄大動脈弁を拡げるためにバルーンカテーテルによって実行される。次いで、このステップに続いて、対象ゾーンで人工弁配備送達カテーテルを摺動させ、人工弁を配備する。弁を配備したら、漏洩(逆流)および機能を確認する。
一実施形態では、本明細書の誘導ワイヤおよび方法は、大動脈弁を越えて挿入され、それによって人工弁のサイズの決定に役立つので、大動脈システムの断面積を決定する。正確なサイズを決定するための別の実施形態では、バルーンカテーテルの内部に電極を置くステップを含む。バルーンが弁形成のために拡張されるので、バルーンの直径、したがって、大動脈起始部のサイズを決定してもよい。さらに別の実施形態では、電極は、弁形成術バルーンカテーテルの先端に置かれてもよい。先端が弁を通過するので、電極は、断面積を測定することができる。さらに、電極は、留置の精度を向上させるために人工弁配備カテーテルの先端で(先端で)一体化されることもできる。
図36は、脈管身体内腔寸法を測定する1つの方法の概要を提供する。この方法は、インビボで血管内の対象体積の近位に置かれるように構成された少なくとも2つの組の離隔された電極を提供するためのステップ268と、対象体積に置かれた少なくとも1対の離隔された電極にわたって電気励起源から入力励起を受け取るためのステップ270と、少なくとも一組の離隔された電極からの対象体積から応答電圧信号を受け取るためのステップ272とを含む。方法は、測定用デバイスで出力信号を受け取るためのステップであって、出力信号が応答電圧信号の関数であるステップ276と、少なくとも一組の離隔された電極の間の電圧差の関数として出力信号を測定するためのステップ278と、電圧差を本明細書で説明してきた種々の技法によって1つ以上の内腔寸法測定値に変換するためのステップ280とをさらに含む。
したがって、本開示の一側面は、脈管身体内腔寸法を提供する。これらの方法およびシステムは、独立型であってもよく、大規模な医学的手技の一部であってよく、そのいくつかの例について以下で説明する。
本開示の別の側面は、対象の断面積等の内腔情報を決定し、対象エリアに対する診断デバイスの移動を追跡するためのシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態は、特定の既知の基準点を参照して3次元で内腔軌跡情報を取得するステップと、同じ既知の基準点を参照して、種々の診断および治療用送達デバイス(ステント送達システム、IVUSカテーテル、OCTシステム、または上記で説明した他の診断デバイス等)の位置を追跡するステップも含む。したがって、方法は、精密な誘導を解剖学的対象領域に提供するために使用されることができる。内腔の断面積を、したがって、閉塞の領域等についてのパラメータを測定する診断デバイス(IVUSカテーテル等)の3D位置を知ることによって、内腔を示す視覚的デバイス上でデバイスの3D軌道に沿ってパラメータ(例えば、閉塞)をマークすることを可能にすることができる。次いで、いったんマークされたステント送達システムは、マークされた領域に精密に誘導され、ステント送達システムを対象の場所、この例では、閉塞の場所に正確に置くことができる。
この側面は、血管系を通過する診断デバイスの3Dにおいて内腔軌跡を取得するための方法も含み、こうしたデバイスを追跡して誘導システムにより取得された位置情報を有する診断デバイスによって測定されたパラメータ情報をまとめる方法をさらに含む。そのうえ、血管系内の対象点にあらゆる腔内治療デバイスを誘導するために記載の誘導システムを使用する方法が開示されている。
一実施形態では、ある方法は、3D体積内の内腔軌跡を決定する。例示的な方法が、図37に示されている。方法1は、インビボの内腔内に複数のマーカを設置するステップ2を含む。この複数のマーカは、有利には、インビボで挿入されるように構成された適切な腔内器具上に存在してもよい。本明細書で使用される「腔内器具」は、内腔の測定または観察を行うか、または、このような測定器具または観察器具、例えば、限定ではないが、ワイヤ、誘導ワイヤ、カテーテル等に誘導を提供するように適合された任意の器具を含む。この目的のための例示的なワイヤは、ステントを送達するために使用される誘導ワイヤである。他のこのような例示的なワイヤは、当業者には明らかであり、本開示の範囲内に含まれることが企図されている。その上に電極が配置された、上記で説明した誘導ワイヤは、ステップ2において内腔内に配置できるマーカの例にすぎない。
各マーカは、オリジナルな識別情報によって特徴付けられる。各マーカの「識別情報」としては、特定のマーカの通し番号、マーカの位置、デバイスの少なくとも一端(例えば、遠位端または近位端)からの距離、最も近い隣接マーカからの距離、マーカの幅、基準フレームに関するマーカの動作の方向等、およびそれらの組み合わせ等のマーカを識別するために使用されるパラメータが含まれる。本開示で有用なマーカとしては、撮像法または画像処理法により識別可能となり得るマーカが含まれる。当技術分野で公知の画像診断法はかなり多様性に富んでおり、マーカは、1つ以上の画像診断法により識別可能なマーカを含むように設計されてもよい。例えば、ある有用なマーカは、X線を使用して撮像可能な放射線不透過性材料であってもよい。別の例示的な実施形態では、複数のマーカは、パルスによって励起されたときに信号を生じるように構成された少なくとも2つの離隔された電極を含んでもよい。さらに別の例示的な実施形態では、複数のマーカは、適切に励起されると波長スペクトルの近赤外領域で蛍光を発する染料を含んでもよく、したがって、赤外分光光度計を使用して観察されることができる。各マーカは、複数の撮像法によって観察されることを可能にする材料の組み合わせを含んでもよい。したがって、1つのマーカは、放射線不透過性材料と、2つの離隔された電極とを含んでもよい。さらに、複数のマーカは、このような材料の組み合わせを含んでもよい。したがって、例示的な実施形態では、あるマーカは、放射線不透過性材料から構成され得るが、別のマーカは、2つの離隔された電極であってもよい。
方法1は、複数のマーカの画像を取得するステップ3も含む。画像を取得する方法は、関係するマーカの性質に依存するであろう。その後、方法1は、画像を処理するステップ4を含む。この処理ステップは、複数のマーカの各々の少なくとも1つの観察された識別情報を決定するために行われる。この観察された識別情報は、インビボの位置にあるマーカの現在の情報を提供する。画像の処理は、複数のマーカからの少なくとも2つのマーカの間に観察された間隔も提供する。画像の処理4は、細胞または閉塞、動脈の分岐部等を識別する、マーカ近傍の内腔の識別情報等、他の解剖学的ランドマークを識別するために行われることもある。
方法1は、3D空間における各マーカの位置を決定するステップ15も含む。各マーカの位置は、観察された識別情報、観察された間隔、および複数のマーカの各々のオリジナルな識別情報に基づいて内腔の領域を画定する。例えば、1つの例示的な実施形態では、ある一定の距離d1だけ互いから離隔された2つのマーカのオリジナルな識別情報が、通し番号M1およびM2によって定義されており、両方のマーカが同じ方向を向き、観察された識別情報がその間の距離がd2に減少していることを示し、マーカの一方が他のマーカに対してある一定の角度だけ捩れている場合、3D空間において2つのマーカの間の軌道は、内挿等の数学的手法を使用して決定されてもよい。元の相対的距離と比較して同じ相対的距離を維持することは、ほとんどまたは全く捩れのない線形経路を示すが、相対的距離の減少がワイヤによる蛇行した経路を示す等、数学的手法が適用されてもよい。
別の例示的実施形態では、3Dにおける各マーカの位置は、[x1、y1、z1]、[x2、y2、z2]、[x3、y3、z3]等としてデカルト座標において示される。一般性を失うことなく、座標系の軸は、x1=0、y1=0、z1=0(すなわち、第1のマーカが、原点である)であるように選定されることができる。すなわち、Z軸は、可視面に垂直であって、原点を通る線として選択されることができ、XおよびY軸は、両方とも、原点を通過するような画像平面内の任意の2つの垂直線として選定されることができる。この座標系において、全ての他のマーカのxおよびy座標は、xおよびy軸方向における原点からの距離を決定することによって、画像平面内で識別されるマーカ位置から、直接、取得されることができる。z軸座標を取得するために、隣接するマーカの間の距離が、ピクセルによって決定され、それらの間の見かけの物理的距離にマップされる。ここで、2つのマーカを繋ぐ線が、X−Y平面に平行ではない(すなわち、X−Y平面に入り込む、またはそこから出る)場合、2つのマーカの間の見かけの物理的距離は、実際の物理的距離よりも小さくなるであろう(倍率は、cos(θ)である)。見かけの距離および実際の距離の値を使用して、第2のマーカのz−座標が、D*sin(θ)または−D*sin(θ)のいずれかとして決定されることができ、ここで、θは、2つのマーカを繋ぐ線が画像平面となす角度である。θの値は、2つのマーカの間の見かけおよび実際の距離を使用して計算される。図39に示されるように、その関係は、cos(θ)=(見かけの距離)/(実際の距離)となる。故に、θ=cos−1((見かけの距離)/(実際の距離))となる。ワイヤが、平面に入り込んでいるか、または平面から出ているか否かに関する特有の曖昧性が存在する。したがって、第2の点は、[x2、y2、z2]または[x2、y2、−z2]となり得る。同様に、第3のマーカの3D位置は、第2のマーカに対して見つけられ得る等となり得る。全ての場合において、位置のZ座標に曖昧性が存在するであろう。曖昧性は、限定された値集合に限定されることに留意されたい。これらは、点集合に平滑性および分析基準を適用し、以前の画像フレームからの位置を追跡することによって、解決されることができる。
方法1は、各マーカの位置に基づいて3D体積内の内腔軌跡を決定するステップ6をさらに含む。ステップ16からの処理された画像およびステップ5からの3D空間内の各マーカの位置を使用することにより、3D体積内の内腔軌道全体を、内挿等の当技術分野で公知の技法を使用して再構成してもよい。このような内挿法は、内腔軌跡デバイスの物理的性質ならびにマーカの各々の向きを利用してもよい。再構成は、プロセッサを有する適切なコンピューティングデバイスを使用して行われてもよい。このコンピューティングデバイスは、パーソナルコンピュータであってもよく、オンラインで、またはオフラインで、3D体積内の内腔軌跡を提供することが可能であってよい。
図38は、本開示のいくつかの例示的な方法のさらなる例示的なステップ7を示す。ステップ8は、内腔内の対象体積を通って複数のマーカを横断するステップを含む。内腔内の対象体積は、以前のいくつかの情報から識別されてもよく、外科医または経験豊富な技師のようなエキスパート等による即時の観察に基づいて識別されてもよい。例示的な対象体積は、罹患した動脈であってもよい。別の例示的な対象体積は、大動脈の動脈瘤であってもよい。横断するステップは、複数のマーカを備えるデバイスを手動で作動させること、または、例えば、ステッパモータ等の制御装置機構を使用してデバイスを作動させること等の当技術分野で公知の方法によって達成されてもよい。
方法7は、随意に、ステップ9に示されるように、複数のマーカを横断しながら、観察された識別情報および観察された間隔を追跡するステップを含む。これは、次いで、観察された識別情報および観察された間隔として記録されてもよい。観察された識別情報および観察された間隔を追跡するステップは、本明細書で説明するように、関連する撮像法を使用して行われてもよい。追跡するステップは、定期的な間隔で一連の画像を取得すること、および各画像に関連する時間に着目することによって達成されてもよい。あるいは、画像診断法がそれ(透視検査等)を可能にする場合、動画のスライス等の連続像が取得され得、次いで、追跡するステップが、動画のスライスの異なるフレームを使用して行われ得る。したがって、抽出または取得された各データ点は、観察された識別情報および観察された間隔を生じさせる。画像を取得するステップの周期性およびサンプリングレートは、種々の要因に依存してもよく、例えば、画像診断法の性質、プロセッサの計算能力、必要とされる情報の性質、観察されている内腔の状態等、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。
いくつかのマーカM(4つのみが標示されている)を有する誘導カテーテルCを通して挿入された誘導ワイヤGの例示的なX線画像が、図38Aの左側に示されている。ピクセルグレードを識別し、マーカに属するピクセルを識別して、そのマーカに対応しないピクセルを拒否するために、各フレーム(ピクチャ)内の個々のピクセルをスキャンする画像解明アルゴリズムを実行した。アルゴリズムが対象マーカに焦点を合わせ、視野に存在し得るマーカの残りを拒絶することを助ける弁別器をアルゴリズムに組み込むことができる。弁別器の一例は、マーカのサイズであることができ、別の例は、特定の画角を成すマーカの距離であることができ、さらに別の弁別器は、全てのマーカが滑らかな曲線上にあるという制約である。図38Aの右側では、識別されたマーカに円を置いた。誘導ワイヤがカテーテルCの内径を通って長手方向に横断したので、一連のピクチャフレームが生成され、画像識別アルゴリズムにより、各ピクチャフレームの中のマーカが識別される。図38Bの画像の系列は、カテーテルCを通して誘導ワイヤを進めるときに取得された異なるフレームを示す。異なるマーカを、フレームの各々において、画像処理アルゴリズムによって識別した。したがって、各フレームの中のマーカの位置が配置されている。図38Cは、マーカを有する同じワイヤの2つのビューを示す。第2のビューにおいて、マーカの間の見かけの相対的間隔が変化していることが分かる。例えば、2および3の番号が付されているマーカは、3Dでの物理的な離隔距離が同じであっても、第1のビュー(左側)のほうが近く見える。マーカの間の実際の物理的な距離は、演繹的に分かる。さらに、ピクセルの物理的距離へのマッピングは、この例では1ピクセルあたり約0.25mmであることが分かっている。この情報を使用して、腔内デバイスの軌跡は、最初に、各マーカの間の区画の軌跡を推定し、フレーム内で、次いで、フレームの間で、全ての区画を統合することによって追跡されることができる。
その後、図38の方法7は、観察された識別情報、観察された間隔、および複数のマーカの各々のオリジナルな識別情報に基づいて対象体積を画定する、3D空間11内の各マーカの複数の位置を決定するステップを含む。すでに本明細書で説明したように、観察された識別情報および観察された間隔およびオリジナルな識別情報および間隔は、腔内デバイスが横断した内腔軌跡を再構成するために効果的に使用されてもよい。したがって、方法7は、各マーカの複数の位置に基づいて、3D体積内の内腔軌道を決定するステップ13をさらに含む。3D体積内のこのような内腔軌道は、利用可能な計算能力に応じて、撮像からオフラインで、または実質的にリアルタイムで、決定されてもよい。
マーカの位置は、各画像の原点に関して決定される。ただし、特定の内腔トラジェクトリが分かった後で他の腔内デバイスを誘導するために、固定基準に対して軌道の位置をマークすることが不可欠である。さらに、基準要素の既知のサイズにより、観察されたマーカおよび距離の較正を、正確な物理的寸法とすることが可能である。本明細書の方法は、基準(原点)および全ての観察の較正として使用される被験体の皮膚上に配置されたパッチ等の基準構成要素を使用するステップをさらに含む。基準構成要素は、少なくとも1つの基準マーカを備える。いくつかの実施形態では、その精密な2次元構造により、基準パッチを使用すると、物理的寸法に画像内のピクセルの数のマッピングが可能になる。さらに、基準パッチは、測定中の被験体による移動を説明することもでき、そうでない場合は、測定の解釈が困難になる場合がある。基準パッチにより、測定値のオフセットおよび偏差が説明され、したがって、3D体積内のより正確な内腔軌道を生じることができる。パッチ等の基準構成要素は、エクスビボで存在してもよい。一般的な使用状況では、基準パッチの正確な位置、向きの方向、幅、深さ、および他の寸法は、常に既知であり、この測定値は、内腔軌跡デバイスの少なくとも2つのマーカの各々の位置を正確に決定するためにそのようなマーカの測定値とともに得られる。いくつかの例では、基準パッチは、被験体の上に置かれてもよい。他の実施形態では、基準パッチは、手術台に付着されてもよい。基準パッチは、その構成内の以前に言及した少なくとも2つのマーカと類似してよく、放射線不透過性材料、少なくとも2つの離隔された電極、蛍光染料等、およびそれらの組み合わせであってよい。1つの特定の実施形態では、基準パッチは、X線診断を使用して撮像可能な放射線不透過性材料である。別の実施形態では、基準パッチは、少なくとも2つの離隔された電極である。パッチマーカの形状は、パッチ、したがって、被験体に関する2D画像の配向のより簡単な決定を可能にするように変化してもよい。
本明細書の方法は、さらに、現在使用されている他の技法とともに使用されてもよい。例えば、本明細書の方法から得られる3D体積内の内腔軌跡は、別個に取得された血管造影図上に重ね合わされてもよい。別の例示的な実施形態では、図37のステップ4の方法1における画像の処理は、別個におよび/または同時に取得された血管造影図を使用して行われる。
図39は、例示的な使用方法58を図示し、この方法は、特定の実施形態で内腔軌道を決定するために実寸法を決定する際に適用される。図39は、2つのマーカ63を有する腔内器具61を示す。しかしながら、この原理は、任意の腔内器具上の任意の数のマーカに、さらには、各々複数のマーカを有する複数の腔内器具にさえ拡張できることは、当業者には理解されよう。マーカ63は、適切な画像診断法によって、数字65で表される特定の角度で確認される。本明細書で述べるように、適切な画像診断法としては、例えば、X線法が含まれ得る。図39の数字67で表される、マーカ63間の実際の距離は、例えば、製造業者によって提供される腔内器具の仕様からすでに分かっており、または適切な独立した測定法によって利用可能になる場合さえある。画像診断法によって測定される実際の距離69は、画像診断法による視軸と腔内器具63の2D平面の軸の間の角度71により、実際の距離67と異なるであろう。2Dの2つのマーカの間の見かけの距離が平面レイアウトで予想距離より短いとき、腔内器具がその面に入っているかまたはその面から出ようとしていることが推論されることができる。2D平面についての角度シータ(θ)71は、次の式
によって与えられる。
線形レイアウト内の2つのマーカの間の実際の距離67は、演繹的に絶対値として分かる。しかしながら、2D画像から行われる全ての測定は、典型的には、スクリーン等の適切な表示媒体上のピクセルの数に関して確認される。ピクセルに関して測定された距離を実世界の寸法(ミリメートル等)に変換することが必要とされている。ピクセルのミリメートルへのマッピングは、3Dマッピングを計算するのに必要とされる。このマッピングは、X線スキャナによって使用されるピクチャの解像度、使用されるX線のズーム倍率等、使用される画像診断法に固有の種々のパラメータに依存する。1つの例示的な実施形態では、ピクセルからミリメートルへのマッピングは、(i)ズームおよびピクチャ解像度(行および列)の撮像デバイスから取得されたX線画像、(ii)マーカ間隔が演繹的に分かる任意の平面上に置かれた「基準パッチ」の2Dピクチャの分析、のうちの少なくとも1つによって得られることができる。行および列に沿ったパッチマーカ距離および行と列との間の角度を測定することによって、実際の長さ(例えば、1mm)あたりのピクセルの数を導出することが可能である。
いくつかの側面では、腔内デバイスは、非弾性の誘導ワイヤまたは他の医療用デバイスであり、方法は、誘導ワイヤの非弾性の性質を利用する。ワイヤの一部分を追跡し、内腔軌跡に沿ってある特定の距離だけ前進または後退することが分かった場合、誘導ワイヤ全体は、同じ距離だけ前進または後退すると仮定することができる。したがって、ある特定の領域内のマーカが、閉塞、他の物体からの干渉、およびX線画像の明瞭度の欠如等の理由により正確に追跡できない場合でさえ、マーカのサブセットの追跡は、全てのマーカの移動を推定することに十分であろう。ワイヤが進められている場合、および遠位マーカが閉塞している場合、ワイヤの遠位部分が侵入中である新たに訪れた領域における内腔の正確な軌跡3D軌跡を決定することはできない。しかしながら、遠位マーカを内腔へ進める距離は依然として取得可能であり、したがって、臨床的に有用である。新たに訪れられた領域におけるマーカが最終的に見えると、内腔の3D軌跡は、再構成されることができる。
アルゴリズムの別の側面は、内腔の3D経路を必ずしも再構成することなく、ワイヤまたはカテーテルを内腔に進めるか、または内腔から後退させる量を決定する。これは、ワイヤに沿った任意の場所でマーカのサブセットを追跡することによって行われる。カテーテルのワイヤの全長が変化しないので(ワイヤが非弾性であるという理由から)、内腔部位に適度に近いワイヤの任意のセクションの前進または後退の量は、ワイヤまたはカテーテルの遠位端の前進または後退の量として適度に近似されることができる。アルゴリズムのこの側面のこの結果は、前進または後退の量を決定するためにモータ駆動されたプッシュおよびプルバックを使用するIVUS等の他の従来技術による技法に類似している。弾性および適合の性質により、これらの従来技術による技法は、それほど正確でない。この理由は、移動測定が近位端で行われるが、測定するために必要とされる移動は遠位端であるからである。ワイヤが押されると、ワイヤが挿入された血管が少し伸張することがある。患者姿勢、患者の心拍動、および患者の呼吸の少しの変化は、これらの方法の不正確さを増加し得る他の要因である。一方、この実施形態では、追跡されているマーカは、対象となる解剖学的構造に非常に近く、これにより、不正確さは著しく減少する。さらに、本明細書の方法の追加の側面では、不正確さをさらに改善するために心拍動の影響を補正する。
本発明の別の側面では、血管の軸に沿ったワイヤ300の線形平行移動であるワイヤ300の軸方向平行移動は、ワイヤ300上のマーカ304を追跡することによって測定される。この側面のある方法では、マーカ304は、誘導カテーテル(図60)の放射線不透過性先端等の固定基準マーカ308を越えて移動するにつれて、画像系列内で追跡される。マーカの間の実際の物理的間隔310(LAB、LBC、…)は、演繹的に分かる(図61)。固定基準308を越えたマーカ306と、固定基準308を越えようとしているそれらの304を追跡することによって、固定基準308に関連するワイヤ300の物理的平行移動の量が、計算される。あるマーカ306が、固定基準308をちょうど越え、次のマーカ304は、固定基準308を未だ越えていない、すなわち、固定マーカ308が、ワイヤ300上の2つのマーカ304、306間にある場合、固定基準308を越えたマーカの間の区画の程度を決定するために、補間が使用さる。マーカの間の区画は、直線として、または近隣マーカ点を考慮することによって適合された曲線としてモデル化されることができる。いくつかの状況では、マーカ304、306の間のワイヤ区画もまた、可視である。例えば、誘導ワイヤのステンレス鋼コアは、X線画像では、かすかに可視である。そのような場合、区画は、公知の画像処理技法を使用して、直接、識別されることができる。直線モデルが使用される場合、固定基準とその近傍のマーカとの間の物理的距離を測定するために、線形補間が使用される。例えば、図62を参照すると、マーカと固定マーカとの間の見かけの距離は、D1、D2、D3、D4等によって示される。これらの見かけの距離は、マーカ間距離の比例部分を算出することによって、実際の物理的距離に変換することができる。D1、D2、D3、D4等に対応する実際の物理的距離が、L1、L2、L3、L4等である場合、それらの間の関係は、以下となる:
L1=D1/(D1+D2)*L23
L2=D2/(D1+D2)*L23
L3=D3/(D3+D4)*L34
L4=D4/(D3+D4)*L34
L5=D5/(D5+D6)*L56
L6=D6/(D5+D6)*L56
ここで、フレームの間の線形物理的平行移動は、以下のように書くことができる。
フレーム1と2との間の線形平行移動:L12=LBC+L4−L2
フレーム2と3との間の線形平行移動:L23=LCD+LDE+L6−L4
フレームの間のこれらの線形平行移動は、各フレームにわたって累積され、図66に示されるように、プロットされることができる。
本方法は、視野角および/またはカメラズーム倍率が、追跡の間に変更される場合においても、適用可能であるであろうことに留意されたい。また、視野角が変更される場合の時間の間、何らかのマーカの移動が存在するときも、機能するであろう。固定基準マーカは、マーカが移動する場合でも不動であるので、固定マーカに対するマーカの移動は、常時、決定することができる。実際に、図62を参照すると、示される3画像フレームが全て、異なる視野角からの場合でも、線形平行移動は、依然として決定されることができる。
本側面の別の方法では、カメラの視野角およびズーム倍率が不変である場合、固定基準マーカを使用せずに、マーカの線形平行移動が計算される。マーカのうちの1つ等の任意の点は、フレーム内の基準点として選定されることができる。マーカがこの基準点を越えて移動するにつれて、マーカの間の物理的距離が演繹的に分かるので、ワイヤの軸方向平行移動が計算されることができる。例として、2D画像において測定されるように、2つのマーカAおよびBを有する、物理的距離Lおよび見かけの距離Dだけ分離されたマーカを検討する(図63)。2D画像内の距離は、ズーム倍率の知識および物理的距離へのピクセル数のマッピング(例えば、10ピクセル=1cm)によって測定される。マーカが、視野角に垂直な平面(すなわち、画像平面)にある場合、Dは、Lに等しいであろう。マーカを保持するワイヤが、画像平面に対してある角度にある(すなわち、ワイヤが、平面内に入り込んでいるか、または平面から出ているかのいずれかの)場合、Dは、Lより小さいであろう。比L/Dは、距離較正係数(DCF)と呼ばれ、見かけの2D距離を物理的長さに変換するために使用される。ここで、2つのマーカを有するこのワイヤが、内腔を通って移動している図64を検討する。3つの連続フレームが図示されている。マーカが内腔を通って移動するにつれて、これらは、3フレームに対して、(A1、B1)、(A2、B2)、および(A3、B3)によって示される。ここで、画像を重畳することによって、2つの連続フレームを同時に検討すると、マーカの見かけの移動を決定することができる。図65を参照すると、連続フレームの間のマーカの見かけの移動は、フレーム1と2との間のD12およびフレーム2と3との間のD23である。DCFを適用することによって、移動された実際の物理的距離(L12およびL23)は、以下のように計算される。
L12=DCF*D12
L23=DCF*D23
これらの物理的距離は、図66に描写されるように、内腔を通したカテーテルの軸方向平行移動を求めるために、経時的に累積されることができる。DCFは、マーカの軌跡が方向を変化させる場合、フレーム毎に変化し得ることに留意されたい。故に、再計算される必要がある。2つのフレームの間の物理的線形平行移動を決定するために、2つのフレームに対応する平均DCF値を使用することができる。
説明される方法は、マーカAを追跡することによって、物理的平行移動を推定する。これはまた、マーカBを使用しても行われ得る。または両方とも、平行移動のよりロバストな推定を提供するために、平均化することによって組み合わされ得る。さらに、この方法は、3つ以上のマーカに容易に拡張されることができる。同一の方法は、2つの近隣電極に同時に適用されることができ、全ての個々の推定に基づく単一のロバストな推定が取得されることができる。3つ以上のマーカの使用はまた、いくつかのマーカが、閉塞されるか、または明確に可視ではない実践的状況においても役立つことができる。
本方法では、視野角が変更されないと仮定される。視野角が、実際に変更される場合、新しい角度に対する移動は、依然として決定されることができる。しかしながら、角度の変化の間の間隔の間に生じるいかなる移動も、考慮されないであろう。医療施術者が、視野角を変更する間にカテーテルを移動させることはあり得ず、したがって、これは、大きな問題になる可能性は低い。いずれの場合も、視野角の変化の間の移動を考慮することができる他の方法が開示されている。前述の2つの方法のうち固定基準マーカを通過するマーカを追跡し、カウントするステップを伴う1つ目は、誤差原因を受けにくいことに留意されたい。しかしながら、生体構造内の固定基準マーカが画像内で可視であるシナリオのみに適用することができる。第2の方法は、生体構造内の固定基準マーカの可視性に依拠しない。しかしながら、心拍にわたる複数のマーカの正確な追跡に依拠し、フェイズ毎のわずかな不正確性も、誤差の蓄積につながり得る。さらに別の方法では、前述の2つの方法の組み合わせを使用して、解剖学的固定基準マーカが可視であるときの精度を改善し、可視ではないとき、継続性を維持してもよい。マーカ追跡ソフトウェアは、解剖学的固定マーカの使用の可視性に応じて、2つの動作モードの間で切り替えるように設計されてもよい。
本発明の本側面のさらに別の方法では、軸方向平行移動は、本書で前述された方法によって決定された3D内腔軌跡を使用することによって、固定基準マーカによらずに追跡される。本方法は、視野角の変化の間にワイヤのマーカの軸方向移動が存在する場合でも、作用する。この場合、3D内腔軌跡は、視野角の変化の前および後に決定される。軸方向平行移動が、内腔軌跡が計算される区画より小さい場合、内腔軌跡の実質的部分は、2つの視野角に対応する軌跡に共通のままであろう。軌跡のこの共通区分を重ね合わせ、2つの重ね合わされた軌跡の各々の上のマーカの相対的変位を観察することによって、軌跡の共通部分は、同一であるであろうが、マーカは、軌跡に沿って移動しているであろう。
アルゴリズムのさらに別の側面は、心臓の鼓動による内腔軌跡の変化を推定および補正することである。心臓の鼓動によって、内腔軌跡のほぼ周期的な変化が起こる。心拍動の同じフェイズで推定される内腔軌跡のみが完全に一致する。したがって、内腔軌跡の追跡は、心拍動の異なるフェイズで別々に行われる。別のフェイズにおいて、内腔軌跡はわずかに異なるが、相関している。内腔軌道の変化における心拍動の影響は、実際は、より大規模である。軌跡の局所的な変化はほとんどなく、軌跡全体が、より一層全体的にシフトする。軌道をシフトするこの性質は、測定値から再度モデル化および推定されることができる。この手法は、心拍動のフェイズ毎に別個に内腔軌跡を決定するステップと比較して、精度の全体的な向上をもたらす。
腔内デバイスを血管内に進めると、心拍動の所与のフェイズに対して、内腔軌跡が固定され、マーカは軌跡に沿って移動する。したがって、内腔軌道の同じセクションには、複数のマーカが訪れる。言い換えれば、単一の内腔軌道に沿って以前のマーカに追従するように、マーカに対して制約がある。これは、より多くの情報がセクションに対して入手可能であるので、複数のマーカが訪れる内腔軌跡のセクションに対するよりロバストな推定を得るために利用されることができる。
方法1は、有利には、使用時に画像診断法とともに機能する適切なアルゴリズムを使用して実施されることができる。位置をより正確に決定するための画像の微調整は、3D体積内の非常に明瞭で正確な内腔軌跡を取得するためにアルゴリズムを使用して行われてもよい。
図40は、例示的な内腔軌跡デバイス32の概略図を示す。この内腔軌道デバイスは、ワイヤ36上のあらかじめ規定された場所に配置され、かつインビボの内腔内に置かれるように構成された複数のマーカ34を備える。各マーカ38の間の間隔は、全てのマーカが線形構成で置かれているときに分かる。本明細書の方法およびシステムとともに使用できる他の例示的な内腔デバイスおよび使用方法については、上記で説明した。
内腔軌跡デバイスは、典型的には、マーカが配置されている腔内器具である。1つの特定の実施形態では、腔内器具は、放射線不透過性マーカを有する誘導ワイヤである。別の実施形態では、腔内器具は、バルーンの端部を画定する2つの放射線不透過性マーカをすでに有するステント送達カテーテルである。さらに別の実施形態では、腔内デバイスは、X線画像上で追跡できる放射線不透過性マーカをも有する、当技術分野で公知のIVUSカテーテルである。
いくつかの実施形態では、マーカは、図40に示されるように、単一の帯形状の形であってもよい。マーカの別の幾何学的形状も本発明の範囲内に含まれるように企図される。1つの特定の実施形態では、マーカは、グリッドパターンの形をとり、複数のより小さな形状を備え、その形状の全てが組み合わさってマーカを形成する。
図41は、シミュレートされた使用方法における内腔軌跡デバイス40を示し、このデバイスは、動脈を表す蛇行した経路(図示せず)を取ることができる。この場合、線形部分42の2つのマーカの間の距離が、図40の間隔38に類似しているが、蛇行領域44のマーカ34の間の間隔は、図41の間隔34の間隔と異なることが分かる。
基準パッチについては、図42は、1つの基準マーカの1つの例示的な配置を示し、このマーカは、グリッドパターンの形をとる。
例示的な使用方法では、画像診断法による視野面が、マーカの平面と直角をなす場合、画像は、図42に示されるように見える。しかしながら、内腔軌跡デバイスが蛇行経路を取る場合、したがって、湾曲している場合、または画像診断法の視野角が変化する場合、画像は、図43に示されるように見え、数字47によって表される。グリッドが2次元を対象とする場合、内腔軌跡デバイスの傾斜の3D角度を決定することは可能である。傾斜角度が分かると、グリッドは、距離の基準として補正および使用されることができる。同じパッチは、画像診断法の角度および領域が変化するときはいつでも、向きおよび方位を取得するための位置基準として使用されることもできる。
本明細書で着目されるように、画像診断法からの画像は、スクリーン等の適切な表示媒体上に表示され、ピクセルの形で見える。測定された距離「d1」74および「d2」88がピクセルを単位として分かる場合、角度92および90が測定される場合、およびマーカの間の実際の間隔が「a」(ミリメートル等の物理的寸法単位で)である場合、単位距離あたりのピクセル(mmあたりのピクセル)を決定することができる。これに続いて、光学的表示様式のピッチ、ロール、およびヨーに関連する数学的変換を使用して、d1、d2、角度92および90の測定値が高精度に得られてもよい。他の実施形態では、1つのマーカのみが基準パッチ上で使用されてもよい。この場合、マーカの見かけの形状は、表示される角度によって決まる。形状自体の見かけの寸法および角度方向を測定することによって、その視野角ならびに単位距離あたりのピクセルを決定してもよい。より多くのマーカを使用することによって、この決定のロバストさが向上する。したがって、1つ以上のマーカは、基準パッチに使用できることを理解されたい。
2Dの2つのマーカの間の見かけの距離が平面レイアウトで予想距離より短いとき、腔内器具がその面に入っているかまたはその面から出ようとしているかということの間に曖昧さがある。このような場合、解剖学的情報等の対象体積に特有のパラメータならびに腔内器具の滑らかな連続性の制約等の内腔軌跡デバイスパラメータは、この曖昧さを解決するために使用されることができる。
本発明の内腔軌跡デバイス23は、基準パッチをさらに備える。この基準パッチは、内腔軌跡デバイスの撮像に使用される撮像デバイスの視野内にエクスビボで置かれた所定の位置に存在してもよい。いくつかの実施形態では、基準パッチは、所定のパターンに配列された1つ以上の較正電極から構成され、1つの例示的な実施形態では、この所定のパターンはグリッドパターンである。図44は、本発明の内腔軌跡デバイス上の基準パッチ81の別の例示的な配置を示し、マーカは、グリッドパターンの形をとり、このパターンは、グリッド上の特定の位置にある形状の残りと異なる1つの形状83を備え、その結果、適切な撮像手段を使用してそれを見ることによって、視野面に対するマーカの向きを容易に決定し得る。
本発明の内腔軌跡デバイスのさらなる用途では、内腔の3D軌跡は、内腔軌跡デバイスを使用して生成され、その場合、画像診断法を使用して識別できるマーカ(X線撮影法等)を有する任意のデバイスの正確な位置を記載および決定することは実現可能である。このようなデバイスの一意の位置の決定は、視野内に内腔軌跡デバイスがある場合に、内腔追跡デバイスの固定および既知の位置に対する相対的位置を追跡することによって実現可能である。あるいは、内腔軌跡追跡デバイスがない場合、デバイスの一意の位置は、基準パッチを共通基準として利用することによって決定されてもよい。共に記載については、以下でより詳細に説明する。
さらに別の実施形態では、内腔軌跡デバイスは、内腔対象体積の3D軌跡のより正確な描出を得るために使用されてもよい。これは、内腔を通して腔内器具を(押すことまたは引くことのいずれかによって)挿入することによって達成されてもよく、その間、種々のセットのマーカは内腔内の同じ領域を占める。これは、同じ領域に対する3D軌跡についての複数の測定値をもたらす。これらの複数の測定値は、内腔3Dをさらに改良してより正確にするために使用されることができる。これらの複数の測定値は、心拍動の複数のフェイズに対応する内腔区画の3D軌道を決定するために使用されることもできる。
さらに別の側面では、本発明は、内腔軌跡システムを提供する。図面を参照すると、図45は、内腔軌跡システム53のブロック図を示す。このシステムは、ワイヤまたは他の腔内デバイス上のあらかじめ規定された場所に配置された複数のマーカ55を備える。すでに述べたように、このデバイスは、インビボで対象体積内に置かれるように構成される。システムは、内腔を横断するときに内腔の対象体積内の腔内デバイスを撮像するための撮像構成要素57を備える。撮像としては、例えば、限定ではないが、X線、赤外線、超音波等、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。撮像構成要素57は、観察された識別情報および観察された間隔を提供するために、追跡モジュールが対象体積を横断するときに異なる時間間隔でワイヤの画像を取得するように構成される。撮像構成要素57は、観察された識別情報を心臓の異なるフェイズにマップする目的で、フェイズを同期させた画像を取得するために同期フェイズ撮像デバイスとして挙動するようにさらに構成される。
内腔軌跡システム53は、処理構成要素56をも備える。この処理構成要素は、複数のマーカの各々の少なくとも1つの観察された識別情報および複数のマーカからの少なくとも2つのマーカの間の観察された間隔を決定するように撮像構成要素から取得された画像を処理するために使用される。内腔軌跡システム53は、本明細書で説明する方法を使用して、複数のマーカの各々の少なくとも1つの観察された識別情報および複数のマーカからの少なくとも2つのマーカの間で観察された間隔を決定する。内腔軌跡システム53は、本明細書で説明する本発明の方法ステップを使用して、各マーカの位置に基づいて3D体積内の内腔軌跡を決定する目的で、複数のマーカの各々の観察された識別情報、観察された間隔、およびオリジナルな識別情報に基づいて対象体積を画定する3D空間の各マーカの位置を決定するためにさらに使用される。
内腔軌跡システムは、撮像手段および処理手段からの観察されたデータを較正するための基準パッチも備える。この基準パッチは、本明細書ですでに説明したように構成されてもよい。
内腔軌跡システム53は、結果および画像を適切な出力として提供するために出力モジュールも備えてもよい。一般的な出力としては、3D静止画像、内腔軌道のアニメーション化された描出等が含まれる。内腔軌跡システムは、エキスパート、医師、スペシャリスト等の適切な受信者に結果および画像を通信するために通信モジュールをさらに備える。無線通信および有線通信は、計算能力、帯域幅、ファイルサイズ等によっては可能な場合がある。本発明の内腔軌跡システム53に関連する他の構成要素および特徴は、当業者には明らかであり、本開示の範囲内に含まれることが企図されている。
いくつかの実施形態は、インビボ医学的手技のために診断誘導のための取得基準情報を提供する。図46は、例示的な方法140に関与する例示的なステップを示す。この方法は、内腔に対応する内腔軌跡情報を提供するステップをステップ142に含む。内腔軌跡情報は、上記の本明細書の方法のいずれかで説明したように取得されることができる。内腔軌跡情報は、当技術分野で公知の種々の技法から取得されるてもよく、例えば、MRI、X線、ECG、透視検査、顕微鏡検査、超音波画像化、およびそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。内腔軌跡情報を取得するために使用される技法およびすぐに利用できる計算能力に応じて、内腔軌跡情報は、2D画像であってもよく、3D画像であってもよく、表形式であってもよく、任意の他の好適な表現形式であってもよい。1つの特定の実施形態では、内腔軌跡情報が表形式で提供されるとき、この表は、通し番号、基準点(カテーテルの挿入点等からの距離)等の列を含んでもよい。表形式で利用可能なデータ点は、必要に応じて、±0.01mm等の適切なレベルの実験精度を有してもよい。
方法は、内腔に対応するパラメータ情報を提供するステップをステップ144に含む。パラメータ情報は、例えば、限定ではないが、圧力、血流量、断面積、およびそれらの組み合わせ等の、内腔の性質を知らせる任意の情報を含む。このタイプの情報は、ブロック、動脈瘤、狭窄等、およびそれらの組み合わせを評価するために必要なことがある。このような情報は、いくつかの技法のいずれかから取得され、例えば、顕微鏡検査、超音波、脈管内超音波法(IVUS)、近赤外分光法(NIR)、光干渉断層法(OCT)、血管光学カメラタイプのデバイス、上記で説明した他の内腔測定デバイス、および他の腔内診断デバイス、およびそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。例示的な技法は、本明細書で説明する腔内器具の使用をさらに必要とすることがある。
内腔軌跡情報とパラメータ情報は、同時に取得されてもよく、別個に取得されてもよい。内腔軌跡およびパラメータ情報をいつどのように取得したかに応じて、この2種類の情報の結合は、いくつかの技法を使用して行われる。1つのこのような技法は、画像にタイムスタンプを与え、同じクロックを使用して、腔内器具からのパラメータ測定値にタイムスタンプを与えることである。本願で説明する画像処理技法により取得される腔内デバイスの位置情報は、診断パラメータ値(例えば、断面積、圧力等)のタイムスタンプと同じタイムスタンプを有するので、この2つをまとめて基準情報を形成することができる。位置情報を有するパラメータ測定値をまとめる別の方法は、ECGゲーティングを使用することである。ECGは、あらゆる介入の日常的な処置として行われる。腔内器具の3D位置情報は、画像診断法(例えば、X線)から取得され、腔内診断法からのパラメータ情報は、ECGゲーティングとすることができ、したがって、時間領域において一緒にまとめて基準情報を提供することができる。
方法は、診断誘導の基準情報を取得するために、内腔軌跡情報をパラメータ情報と組み合わせることをステップ146にさらに含む。内腔軌跡情報とパラメータ情報との結合は、画像形式、表の表現、または他の任意の視覚的表現、およびそれらの組み合わせで利用可能であってもよい。したがって、1つの例示的な実施形態では、基準情報は、パラメータ情報のテキストがその上に重ね合わされる内腔軌道の画像情報として利用可能である。1つの特定の実施形態では、基準情報は、フルカラー画像であり、色の選定は、ある特定のパラメータ情報の表れである。別の実施形態では、パラメータ情報は、内腔軌跡に沿ったパラメータの変動の度合いを示す同じ色の異なる濃淡として表示されてもよい。さらに別の実施形態では、基準情報はアニメーションである。画像および/またはアニメーションとして利用可能な基準情報は、容易な診断および/または治療あるいは達成が予想されるいかなる医学的手技も可能にする適切な解像度とすることができる。解像度は、内腔内において識別できることに必要な最小距離によって測定され得る。
別の例示的な実施形態では、基準情報は表形式で利用できるようにされ、列は、位置ID、基準からの距離、特定の距離における断面積等のヘッダを含むが、これらに限定されない。例えば、表の表現では、基準からの全ての距離が、断面積のような関連するパラメータ情報を有するとは限らないが、ある特定の位置のみが関連するパラメータ情報を有することは、当業者には明らかであろう。基準情報の正確な性質は、医学的手技の要件、利用可能な計算能力、操作者の快適さおよび好み等であるが、これらに限定されない種々の要因に依存するであろう。
このような基準情報が、適切な形で利用できるようになると、この情報は、次いで、ある特定の適切な最小解像度(例えば、ピクセル単位で測定される)を有して表示され、医療関係者によって使用されるグラフィカルユーザインターフェースに表示されることができる。このような基準情報は、対象領域のより良い識別を提供し、標的領域により正確に治療用デバイスを誘導するために使用されることができる。基準情報がグラフィカルユーザインタフェースで利用可能なとき、画像の拡大および縮小等の対話的機能は、医療関係者が内腔内の対象領域を拡大し、内腔全体をまとめて縮小できること、または効果的な診断および/または治療を可能にするために関連する他の適切なアクションを実行することを可能にするために、利用可能にされることもできる。
いくつかの実施形態では、内腔軌跡情報およびパラメータ情報を取得しながら、視野の固定基準を含むことが有用な場合がある。このような視野の固定基準は、様々なときに行われる測定中および観察中の変動、または被験体による移動、または外部の状況により生じるこのような差を説明する。これにより、全ての変動および差を説明しながら、内腔軌跡情報とパラメータ情報とを結合することが可能になり、依然として正確な基準情報を提供する。このような視野の固定基準がない場合、外部の状況の変化による誤り訂正は、操作者または技師または医療関係者の技術および経験のみに基づいて訂正されることができる。視野の固定基準は、種々の技法によって取得され、例えば、既知の寸法を有する放射線不透過性マーカパッチを被験体の特定の位置に付着すること、被験体の外部にあり得る物体に放射線不透過性マーカパッチを付着すること、ユーザによる内腔軌跡情報に含まれる少なくとも1つの解剖学的場所(解剖学的場所の特性は他の技法から事前に分かる)の初期マーキング、X線機器のCNC座標等の撮像システムの一組の座標を使用することを含むことができる。ユーザが内腔軌道に沿ってある特定の解剖学的ランドマーク(例えば、病変の起始部および末端部、弁基部、分岐部等)を柔軟に識別できることが有用なのは、当業者には理解されよう。
さらなる実施形態では、基準情報は、マークされた診断対象のエリアを含む。例えば、医療関係者は、その後、例えば、分岐等の治療デバイスを送達するときに追跡を望む、軌道に沿った特定の対象点を識別することができる。これらの診断対象のエリアは、ブロック、狭窄、動脈瘤等、およびそれらの組み合わせ等の内腔の任意の特定の状態を表してもよい。1つ以上のマーキングは、特定の状況において必要とされる場合に、医療施術者または技師またはスペシャリスト等の関係要員によって行われてもよい。このようなマーキングによって、被験体の診断および治療がさらに容易になる。マーキングは、例えば、タッチスクリーンまたはマウスを使用してスクリーン上で対象領域を物理的に識別することによって行われることができる。
いくつかの実施形態では、内腔軌跡情報とパラメータ情報とはフェイズ同期される。心臓は、収縮期および拡張期とも呼ばれる、ポンピングと充填を含むフェイズを有する。各フェイズ中に、内腔の性質は、別のフェイズの内腔の性質と比較して変化する。したがって、いくつかの例では、内腔軌跡情報およびパラメータ情報を取得しながら心臓のフェイズを知ることが重要である。心臓のフェイズを識別する方法は、心電図(ECG)等、当技術分野で公知である。例えば、内腔軌跡情報およびパラメータ情報の取得は、フェイズ同期を確実にするためにECGゲーティングとともに達成されてもよい。ECGゲーティングによる複数の測定は、さらなる使用のために実行可能である良好な平均測定を取得するために必要なことがある。
このような正確な基準情報を手元に有することによって、医療関係者が高い成功率で診断を実施し、被験体を治療し、手術を施行し、任意の医学的手技を行う明白な利点が得られる。したがって、医療関係者は、医学的手技を施行するために、分野全体での技術、専門知識、知識、および経験に頼る必要はない。本発明の方法によって利用可能な基準情報は、医療関係者の技術、知識、経験、および専門知識を大きく利用するであろう。
別の側面は、基準情報を使用して内腔内の腔内器具を誘導するための方法である。この方法の例示的なステップは、流れ図148の形で図47に示されている。基準情報は、本明細書において上記で説明したように、取得される。腔内器具を誘導するための方法は、数字150によって示される、腔内器具の画像を提供するために内腔に挿入された後で腔内器具を撮像するステップを含む。撮像するための技法は公知であり、X線、MRI等を含んでもよい。画像は、2D画像として利用可能となり、または表示に適した任意の好都合な形で表されてもよい。好都合な形は、計算要件、表示および分かりやすさの簡素化、医療関係者の快適度等、およびそれらの組み合わせ等の種々の要因によって決まり得る。
さらに、腔内器具の画像は、撮像技法を心同期と同期させることによって、ECG同期されてもよい。腔内器具を誘導するための方法は、次いで、数字150によって示される基準情報を有する対応する腔内器具の画像を含む。本明細書で着目されるように、基準情報は、任意の適切な形であってもよく、腔内器具の画像も、腔内器具の画像と基準情報が適切に相関し得るように適切な形に変換されるであろう。一実施形態では、基準情報は、2D静止画像として利用可能であり、腔内器具の画像も、腔内器具が経路を横断するとき、内腔軌跡に沿ってリアルタイムで重ね合わされた2D画像、したがって、内腔の基準情報に対する腔内器具の瞬時位置として利用可能である。一連のこのような相関は、基準情報に対する腔内器具の画像のほぼリアルタイムのシーケンスを取得するために、したがって、腔内器具を内腔内の所望の対象位置に誘導するために実行され得ることが、当業者にはすぐに理解されよう。
その後、ステップ154に示されるように、任意の腔内器具が対象領域に誘導される。誘導は、本明細書で説明する方法を使用して容易に達成されてもよい。したがって、1つの例示的な実施形態では、基準情報は、2D基準画像として利用可能であり、腔内器具の画像は基準画像に対して追跡される。これは、次いで、1024×800ピクセル等の適切な解像度を有するスクリーン等のグラフィカルユーザインターフェースに表示される。次いで、医療関係者は、腔内器具が内腔を横断するときにそれを見て、次いで、(最初に生成された内腔軌跡に沿って)基準画像上に明確に表示される対象領域に到達することができる。本明細書で着目されるように、軌跡に沿った内腔内の1つ以上の対象領域(病変、分岐部、血管奇形等)も、医学的手技を容易に施行できるように内腔軌跡の固定基準と「同じ」固定基準(原点)に対してマークおよび記載されてもよい。医療関係者は、任意の医学的手技を施行するために腔内器具を正確な位置に正確に誘導できるように対象領域を拡大する能力を与えられてもよい。このような医学的手技としては、例えば、ステントの送達、ステントと一緒のバルーンカテーテルの送達等が含まれ得る。
本明細書の方法は、有利には、適切なソフトウェアプログラムまたはアルゴリズムを使用して行われることができる。したがって、さらに別の側面では、本開示は、基準情報を取得するためのアルゴリズムと、腔内器具を誘導するための方法を提供する。このアルゴリズムは、一般に、特定の最低コンピューティング要件と、器具から来る画像を処理する撮像器具にも適切に接続される処理能力を必要とする。ある特定の解像度を有するスクリーン、マウスおよびキーボード等の入出力インターフェース等の適切なグラフィカルユーザインターフェースは、アルゴリズムとともに使用することができる。アルゴリズムは、CD、フラッシュドライブ、外付けハードドライブ、EPROM等の適切な媒体上に存在することができる。アルゴリズムは、インターネット上のウェブサイト等の適切なソースから実行可能で自己解凍可能なファイルの形でダウンロード可能なプログラムとして提供されることができる。
さらなる側面では、システムは、腔内器具を内腔内の対象領域に誘導するように適合される。図48は、例示的なシステム156のブロック図である。システム26は、本明細書で説明する技法のいずれかを含み得る、内腔軌跡情報を提供するための第1の手段158と、パラメータ情報を提供するための第2の手段160と、腔内器具の画像を取得するために内腔内の腔内器具を撮像する撮像手段162と、内腔軌跡情報とパラメータ情報を結合して基準情報を提供するための第1のプロセッサ164と、腔内器具を内腔内の対象領域に誘導するために腔内器具の画像を基準情報と相関させるための第2のプロセッサ166とを備える。システムは、基準情報、腔内器具の画像、および基準情報と腔内器具の画像を組み合わせたものを表示するために表示モジュールも備えてもよい。システムは、入出力モジュールも備え、入力モジュールは、第1の手段および第2の手段のための入力を受け取り、出力モジュールは、その結果を第1のプロセッサおよび第2のプロセッサに提供する。システムは、種々のモジュールの間の通信を可能にするために通信モジュールも備える。通信方法は、IEEE488ケーブル、RS−232ケーブル、イーサネット(登録商標)ケーブル、電話線、VGAアダプタケーブル等、およびそれらの組み合わせを使用する等の有線接続によることであってもよい。あるいは、種々のモジュールの間の通信は、ブルートゥース、赤外線接続、無線LANを使用する等、無線で達成され得る。システムに組み込まれ得るさらなるモジュールは、当業者には明らかであり、本発明の範囲内に含まれることが企図されている。個別のモジュールは、互いと遠隔に位置し、適切な手段を介して互いに接続されてもよい。したがって、表示モジュールは、医学的手技を施行しながらエキスパートの意見および誘導を得るために、例えば、エキスパートがいる、建物の別の部分または都市の異なる場所等の遠隔地で利用可能であってもよい。
次いで、脈管身体内腔情報を取得し、それを使用して内腔内の治療デバイスを対象領域に誘導する例示的な方法を示す仮説例を提供する。高血圧、異脂肪血症、カテーテル治療の施行歴を有し、軽度の冠動脈疾患、著しく異常な負荷心筋シンチ検査、および大きな壁欠損を示す65歳の被験体である。無症候性ではあるが、この患者は、大きな血流欠損を考慮して、心カテーテル法を施行するために照会された。血管造影法では、95%の狭窄が明らかになった。従来のステント留置法を使用して、ステント留置後の血管造影法を行ったところ、血管がステントの近位で狭くなっているように見えるので、ステントが最適に配備されているか否かという問題が浮上した。ステント留置後のIVUSにより、ステントが著しく小さくなり、拡張されていないことが明らかになった。反復的な介入が必要であり、第1のステントの近位に第2のステントを配備した。
この反復的な介入は、例示的な方法を使用して回避されることができる。IVUSによって支援される標準的な血管造影法により、介入のステップは、血管造影法を施行するステップと、血管造影の視覚的評価(短縮(および視覚的アーチファクトにより主観的)に基づいたステント選択を実行するステップと、介入(ステント留置および配備)後の血管造影法により、配備が最適以下である地理的ミスの可能性を明らかにするステップとを含む。これを確認するために、IVUSは、ステントが小さい、および/または拡張されていない、および/または長手方向に誤配置されていることを明らかにするために使用される。IVUSカテーテルを別の膨張カテーテルで置き換え、小さくなっていることを補正するために、ステントは後膨張させられる。膨張カテーテルをステントカテーテルで置き換え、第2のステントを第1のステントの近位に置く(および/または重複)。最終的な血管造影法を施行して、結果を確認する。時間により、ステントの第2のIVUSの検討は実行されてもされなくてもよく、手技の成否に関してプロセスにいくらか不確定性を残す。したがって、概説したように、結果を達成するためにデバイスの数回の交換を行わなければならない。そのうえ、病変の正確な位置はリアルタイムでは分からず、したがって、ステント送達カテーテルを適正な場所に誘導することはできず、ステントを長手方向に地理的に誤配置する可能性を残す。
対照的に、上記で説明したような電極を有する誘導ワイヤがカテーテル留置手技に使用される場合、そのプロセスは簡略化される。最初に、血管造影法を施行する。上記で説明した誘導ワイヤを、血管の中に病変にわたって配置する。システムは、本明細書で説明する技法を使用して病変を横断するときに、病変長の測定値および/または基準血管直径および/または断面積を取得する。同時に、誘導ワイヤが内腔を横断するとき、誘導ワイヤの位置情報ならびに病変および分岐部等の他の解剖学的対象点が、上記で説明した固定基準に対して共に記載される。断面積情報を位置情報とまとめ、上記で説明した誘導システムを作り出す。病変の断面積、病変の最小内腔面積(「MLA」)、および病変の長さに基づいて、医師は、配備することに適切なステントを選択する。病変の場所は、ステント送達カテーテルを正しい場所に誘導するために医師によって使用される静的な基準血管造影像上に重ね合わされることができる。そのうえ、ステント送達カテーテルは放射線不透過性マーカを有するので、ステント送達カテーテルは、上記で説明した画像処理アルゴリズムを使用して能動誘導ワイヤの基準と同じ基準に対して追跡することができる。システムインターフェースの実施形態の1つでは、ステント送達カテーテルの移動のレンダリングは、病変場所のオーバレイを有する同じ静的な血管造影像に表示されることができる。したがって、これにより、医師には、リアルタイムで病変に関するステントの場所の精密な視覚的表示が与えられる。ステントを対象場所に配備すると、ステント留置ゾーンの後ろにステント送達カテーテルを抜去することができる。次いで、ステント留置領域と電極が交差するように、誘導ワイヤを後退させることができる。ステント留置領域と電極が交差するので、電極は、ステント留置ゾーンの断面積の測定値、すなわち、完全なステントプロファイルを提供する。これを基準内腔(すなわち、ブロックされていない)断面積と比較することによって、ステントの配備が不十分か否かを決定することができる。ステントの配備が不十分な場合、ユーザは、まさにその場所に同じステント送達システムを進め、再び拡張させることができ、または、測定された情報を使用して膨張後の方策を立てることができる。医師が膨張後を選定する場合、膨張後のバルーンカテーテルのサイズは、ステント留置された断面積プロファイルおよび基準内腔断面積に関する情報を使用して精密に決定され、したがって、膨張後の損傷を軽減する。最終的なステントプロファイルおよび膨張後の断面積も、誘導ワイヤを後退することによって測定されることができる。したがって、誘導ワイヤは、断面積を測定し、ステントの選定を誘導し、ステントを精密に置いて配備し、配備後の戦略および治療の検証を誘導するために使用されることができる。これは全て、IVUSにより誘導される手技または血管造影により誘導される手技で必要とされるように、種々の用具を交換することなく達成されることができる。これにより、手技全体を簡単にし、所要時間を短縮し、コスト効率良く患者に有益なものにする。
次いで、追加の例は、上記で説明した誘導システムをどのようにしてステント留置のための既存の画像診断法とともに使用できるかを図示する。医師は、IVUS誘導もしくはOCT誘導、従来の血管造影法誘導、または上記で説明した腔内誘導システムの使用による誘導を使用して、ステントを留置する選択肢を有するであろう。
IVUS/OCTにより誘導されたシステムでは、IVUS/OCTデバイスは、血管造影法によって示される閉塞の点を越えて血管系に導入されるであろう。次いで、モータ駆動されたプルバックを使用して、IVUS/OCTカテーテルは、内腔断面積等のパラメータを記録しながら、既知の固定された速度でプルバックされる。情報に基づいて、適切なステントサイズを選択する。次いで、IVUS/OCTシステムを血管系から後退させ、次いでステント送達カテーテルと交換する。IVUS/OCTシステムが病変に関する情報を提供するが、IVUS/OCTシステムは、測定の位置情報を提供しない。すなわち、測定は、測定の場所を示さず、したがって、適切なステントサイズを選択するための情報のみを提示するが、ステントをどこに配置するべきかに関するさらなる誘導は提示しない。これは、重大な欠点である。次いで、ステント送達カテーテルを対象点に進め、すでに取得した静止血管造影像上の狭窄領域を視覚的に推定することによって所定の位置に配置する。血管造影像は、2Dであり、短縮の影響を受けて、蛇行血管の場合に大誤差が生じやすい。これは多いに周知の現象であり、医師が頼れるのは、自分自身の経験と技術のみである。この技法では、ステントが長手方向に地理的に誤配置されることがある(すなわち、拡張されたステントは閉塞全体を覆わない)。これは、ステント送達カテーテルを被験体から後退させ、IVUS/OCT撮像を繰り返すことによってのみ検証されることができる。誤配置が判明した場合、可能な対応策は、別のステントを所定の位置に拡張させ、したがって、手技にかかるコスト、時間、および患者のリスクを著しく増大させ、あるいは、深刻な結果を生むステント縁の解離等の合併症を引き起こすことが公知であり、膨張後のバルーンを使用して、覆われていないセクションで拡張する等の他の介入を施行することである。
非IVUS/OCTで誘導される手技では、医師は、経験に基づいて、ステントサイズを選択する(主観的で誤差をもたらしやすい)。次いで、以前に説明したように、X線投影図下でステント送達カテーテルを進め、病変に対するステントの位置を視覚的に推定する。この方法も、上記で説明したIVUS/OCT誘導される技法と同じ短所を持ち、長手方向の地理的ミスおよびその関連する影響(追加のコスト、時間、複雑さ、および患者リスク)を受けやすい。
前述の誘導システムをIVUS/OCTまたは上記で説明した他の診断デバイス(本明細書では「測定用デバイス」と呼ばれる)とともに使用するとき、手技は大きく簡略化され、地理的ミスになりにくくなる。最初に、測定用デバイスを、内腔を通して対象の病変にわたって進め、デバイスとして使用されるべき適切なサイズのステントの決定をする内腔断面積等の重要な内腔パラメータを測定する。同時に、測定デバイスが内腔を横断しているとき、画像診断法および上記で説明した技法を使用してデバイスの3D位置軌跡情報を取得する。したがって、病変は、固定基準に対して共に記載され、内腔軌跡に沿ったその3D位置が記載される。さらに、ユーザは、分岐部または内腔軌跡に沿った他のランドマーク等の解剖学的対象点をマークするためのオプションを有し、解剖学的対象点は、同じ固定基準に対して共に記載される。測定用デバイスによって収集されるパラメータ情報(断面積等)は、位置情報とまとめられ、したがって、すでに説明した技法の1つにより取得される。利点のうちの1つは、これが全てリアルタイムで起こるということである。病変の場所は、ステント送達カテーテルを正しい場所に誘導するために医師によって使用される静的な基準血管造影像上に重ね合わせることができる。ユーザはここまでのところで、病変にわたって測定用デバイスを進める1つのステップのみを完了していることに留意されたい。ここで、測定器具がIVUSシステムまたはOCTシステムである場合は、測定器具を後退させ、または、測定器具が上記で説明した誘導ワイヤである場合は、測定器具を所定の位置に残す。次いで、ステント送達カテーテルを血管系の中で進める。ステント送達カテーテルは、放射線不透過性マーカを有するので、ステント送達カテーテルは、上記で説明した類似の画像処理アルゴリズムを使用して同じ固定基準に対して追跡することができる。システムインターフェースの実施形態の1つでは、ステント送達カテーテルの移動のレンダリングは、病変場所のオーバレイを有する同じ静的な血管造影像に表示されることができる。したがって、これにより、医師には、リアルタイムで病変に関するステントの場所の精密な視覚的表示が与えられる。したがって、この技法は、ステントを正確に配置するために必要な誘導を提供し、追加のステップを導入しないが、主観性および誤差の可能性を最小にする。誘導システムは、介入の繰り返し(ステント追加)の回避に役立ち、コストを削減し、手技時間を短縮し、患者のリスクを低下できるので、誘導システムの潜在的利点は、非常に大きい。
上記の実施形態では、測定装置と励起装置とは、センサまたは負荷から、ある一定の物理的距離にあり、これらを横断してこれらの測定が行われることが望ましい。上記で説明したような導体は、一般的には、電源、測定装置、および負荷を接続し、電気回路網を形成する。電気の取り出しは、誘導ワイヤまたはカテーテルの近位端で行われる実際の測定のみに基づいて、電極のある遠位端において電圧−電流分布を取得するために必要であることが、当業者には理解されよう。これは、デバイスまたはワイヤあるいは電極等のデバイス構成要素の材料性質を考慮することを含み得る。測定値は、このような変化を考慮に入れて、正確および精密な測定値を生ずるように較正してもよい。取り出しは、任意の数の端子、例えば2ポート、4ポート、または他の任意の数を有するシステムに対して行われてもよい。電気値(例えば電圧、電流)は、本明細書で説明する診断要素の遠位端と近位端との間で変換されてもよい。電源測定装置と負荷との間の相互接続から構成されるこの相互接続回路網は、相互接続回路網と称されるであろう。相互接続回路網は、一般に、複数の電気端子または同等に交互接続の数に応じた複数の電気ポートを有することができる。
電気回路網モデル化するための、当技術分野で公知の多数のタイプのパラメータがある。例えば、回路網のインピーダンスパラメータとも呼ばれるZパラメータは、マルチポート回路網の電圧および電流を表す。2ポート回路網の一例として、図49を参照すると、2つの電圧と2つの電流とはZパラメータにより以下のように表される:
nポート回路網の一般的な場合に対して、
であると表されることができる。
回路網のアドミタンスパラメータとも呼ばれるYパラメータも、マルチポート電気回路網の電圧および電流を表す。2ポート回路網の一例として、2つの電圧および2つの電流は、次のように、Yパラメータによって、
と関係付けられる。
回路網の散乱パラメータとも呼ばれるSパラメータは、入射電力波および反射電力波を表す。反射電力波と、入射電力波と、Sパラメータ行列との関係は、
によって与えられ、式中、anおよびbnはそれぞれ、入射電力波および反射電力波であり、ポート電圧およびポート電流に関連付けられる。
ハイブリッドパラメータとも呼ばれるHパラメータは、異なる方法でポート電圧とポート電流とを関連付ける。2ポート回路網に対して、
である。
回路網の逆ハイブリッドパラメータとも呼ばれるGパラメータは、電圧と電流とを
のように関連付ける。
上記の定式化は、全て関連しており、一組のパラメータを互いから導出することができる。これらの定式化は周知であり、当技術分野において確立されている。Zパラメータ行列とYパラメータ行列とは、互いの逆である。Hパラメータ行列とGパラメータ行列とは、互いの逆である。YパラメータとSパラメータとも関連しており、互いから導出することができる。言及したタイプのモデルは全て電気的に等価である。実装形態の選定は、利便性および課題の特定の必要性によって決まる。
これらの電気回路網のうちのいくつかでは、離れた負荷に対して行われる測定は、電源、測定装置、および導体で形成された電気回路網の寄生効果に対する電気的損失および結合および補償を考慮する必要がある。この課題は、遠隔に位置し、近位の場所に配置された励起および測定装置に接続する1対の導体の両端に接続される単一の負荷について広く対処されてきた。これは、高精度の測定において通常使用される技法であり、一般に「ポート延長」と呼ばれる。このような回路網は、一般に、2ポート回路網としてモデル化され、回路網パラメータは、既知の遠位負荷に対する近位パラメータを測定することによって解明される。線形電気回路網を解明するために、節点解析法、メッシュ解析法、重ね合わせ法が提唱されてきた。2ポート回路網に関しては、伝達関数も提唱されてきた。
しかしながら、負荷が単純な単一負荷ではなく、負荷回路網を形成する複数のポートを有する分散回路網である場合、解決策は、ほとんど存在しない。このようなシステムは、複数の導線と、複数の測定エンティティとを有する。したがって、遠隔のマルチポート負荷回路網にわたって電気的性質を正確に測定することが必要とされている。
取り出しは、デバイスまたはワイヤあるいは電極等のデバイス構成要素の材料性質を考慮することを含み得るプロセスである。例えば、電極は対象領域のワイヤの遠位端にあってもよく、信号を受け取って処理する電子機器はワイヤの近位端に設けられてよい。遠位電極によって得られる電気測定値は、この電子機器によって受け取られる。しかしながら、ワイヤの一端において提供される信号は、ワイヤの材料性質により、その信号がワイヤの他端に到着する時間によって変えられてもよい。この変形形態は、材料特性、ワイヤの長さ、およびこの状況に関係する他の変数に基づいて適切なモデルを使用すること、または遠位端における既知の電気負荷により測定を実行して中間の電気導体の影響を較正することによって考慮され得る。
全てのポートに対して、出力電圧は、次の行列式によって、Zパラメータ行列および入力電流に関して定義されてもよい:
式中、ZはN×N行列であり、その要素は、従来の行列表記を使用して添え字を付けることができる。一般に、Zパラメータ行列の要素は、複素数であり、周波数の関数である。1ポート回路網では、当業者に明らかなように、Z行列は単一要素に減らされ、この要素は、2つの端子の間で測定される通常のインピーダンスである。
Nポート回路網のポート電圧とポート電流との間の等価な関係は、次のように表すこともできる:
式中、YはN×N行列である。Yは、Zに関連しており、一般的には、Zの逆行列である。いくつかの特別な状況では、ZまたはYのどちらかが不可逆的である。
図50は、システム171の例示的な実施形態の図である。このシステムは、近位端近傍の電気刺激によって励起されると、遠隔のゾーンの電気回路網174(本明細書では負荷回路網と呼ばれる)を推定するために適合される。遠位端に位置する負荷回路網174は、合成された電気的性質が一定であるが、不明である複数の導体172によって近位端において複数の刺激および測定デバイス170に接続される。刺激は、近位端にある励起デバイスからの任意の電流または電圧のいずれかかとすることができ、一方、測定は、近位端での再度の電圧測定の形をとる。電圧測定は、一般に、理想的ではない(すなわち、電圧測定用デバイスは、ゼロでない有限の電流を回路網から引き込み、したがって、回路網に負荷をかける)。当業者によって理解されるように、本明細書で説明するシステムおよび方法は、推定されるべき電気回路網が、その場での励起および測定が実行不可能である遠隔の場所に位置する任意の動作領域に拡張および適用されることができる。
nポート負荷回路網の場合、励起エンティティに、および少なくとも対応する「n」個の測定エンティティに接続する近位端まで下方に延びる複数の導線(最大n対)が存在することが、当業者には理解されよう。追加の基準測定も、以前のn回の測定とは独立した情報を有するように、回路内の2つの任意のノードの両端において実行される。
図51からのシステム171を使用する例示的な方法が、図52に示されている。システム171は、インビボで体腔190に置かれた遠位端電極188(4つが示されている)に接続された4つの導体両端の遠位電圧に対応する近位端において電圧を測定する。これらの測定値は内腔寸法を推定することに有用であり、内腔寸法は、いくつかの医学的手技に有用である。図示のように、4つの電極188は、カテーテルまたは誘導ワイヤ等の細長い医療用デバイス194の遠位領域192に長手方向に配置される。細長い医療用デバイス194は、血管等の脈管身体内腔の内腔190内に配置されている。4つの電極は、細長い医療用デバイス194の長さに沿って延び、近位端196上のコネクタで終端する4つの導体198に電気的に結合される。例示的な実施形態のために4つの電極が示されているが、3つ以上の電極は、測定に必要な異なる構成で使用でき、これらは、本明細書で説明するシステムおよび方法の範囲に含まれる。コネクタは、電極に接続された2つの導体の両端に刺激を提供するように適合されたハードウェアに電気的に接続され、3対の導体の両端の3つの電圧をも測定する。ハードウェアは、電源と測定用デバイス170とを含み、測定用デバイス170は、励起エンティティ178と測定エンティティ182、184、186とを有する。測定エンティティ176による第4の測定は、この回路網と直列である基準抵抗180の両端において行われる。カテーテルと基準抵抗とを含む中間の回路網全体は、遠位端192における種々の負荷構成にわたって不変であるが、最初は不明であり、慎重に選定された負荷構成により推定される必要がある。本明細書で説明する較正方法は、この回路網を推定することにより、遠位場所においてこの回路網に接続される任意の負荷回路網の測定値を正しく決定して取り出す。
図53は、測定値を得るための異なる構成を有するシステム200の別の例示的な実施形態である。この実施形態では、第4の測定エンティティ176(VM1)は、励起エンティティの両端の基準電圧を得るために励起エンティティ178と並列であるが、他の3つの測定値は、図52に関して言及したように取得される。図53の他の構成要素は、図52の実施形態の構成要素と実質的に同じである。測定値を取得するための他の代替構成がある場合があり、図51、図52、および図53に関して説明する実施形態は非限定的な例であることが、当業者には理解されよう。一般に、任意の4つの独立した測定値は、遠位負荷回路網の推定にとって十分であろう。
図51、図52、および図53で176、182、184、および186として示される測定エンティティVM1、VM2、VM3、およびVM4は各々、典型的には、信号調節およびノイズフィルタリングのための一組のフロントエンドバッファおよび増幅器であるが、これに限定されず、その後にアナログデジタル変換器が続く。測定エンティティは、その両端の入射信号に対する、周波数に依存した利得を提供してもよい。理想的なシナリオでは、電圧測定ユニットは、接続された回路網から電流を引き込むべきではないが、実際には、同じことを実装することは不可能である。しかしながら、当業者によって理解されるように、電圧測定エンティティは、負荷、フィルタリング、および他の非理想特性を考慮した等価な寄生回路網、それに続く入力電流を引き出さず、入射電圧を固定量だけ増幅するのみである理想的なバッファおよび利得ユニットのカスケードとして同等にモデル化されることができる。さらに、以下でより詳細に本明細書で説明するように、寄生回路網は、中間カテーテル回路網の一部としてマージされ、一緒に推定されることができる。
図54は、図52に示される実施形態のための端子表現である。Tk(Vk、Ik)と一般に呼ばれる端子は端子kを表し、GND43と表される任意の接地に対する電圧はVkであり、その端子を通って回路網に入る電流がIkであることが、当業者には理解されよう。現在の実施形態では、端子は、次のように定義される。44とも呼ばれる端子0(T0)は、その両端に電圧源または電流源14が接続される端子である。任意のGNDに関して端子0で測定される電圧はV0と定義されるが、T0を通って回路網に入る電流はI0と定義される。46によって表される端子1A(T1A)は、その両端で第1の測定が行われる異なる端子のうちの1つである。この端子は、これらの端子が理想的な測定点としてモデル化されるとき、回路網に電流を供給したり低下させたりしない。48によって表される端子1Bは、端子1Aとペアを組み、端子1Aと同様に振る舞う。端子2A、端子2Bは、第2の測定値のための一組の差動端子である。端子3A、端子3Bは、第3の測定値のための端子であり、端子4A、端子4Bは、第4の測定値のための一組の差動端子である。端子2A、2B、3A、3B、4A、4Bは、参照番号50によって合わせて示されており、近位電圧のための端子を表す。これらの端子の各々は、電流を供給したり低下させたりしない。これらの端子にかかる電圧は全て、同じGND43を参照して測定される。
遠位側では、52としてまとめて示す端子5、端子6、端子7、および端子8は、本明細書において上記で説明したマルチポート相互接続回路網16を介して測定エンティティおよび励起源に接続されたマルチポート負荷回路網18を形成する4つの電極に対応する。これらの端子にかかる電圧は、V5、V6、V7、およびV8と呼ばれ、遠位電圧と呼ばれるが、これらの測定は、GND43に関して実行される。これらの端子を通って回路網に入る電流はそれぞれ、I5、I6、I7、およびI8と呼ばれる。
回路網は、以下で与えられるZパラメータ表現を使用して全体的に説明することができる:
Z1は、電流ベクトルI1を電圧ベクトルV1に関連付ける回路網のインピーダンス行列である。別の実施形態では、遠位端電極を表すノード1、ノード2、ノード3、およびノード4の電圧は、次のように差分的に表される:
V1=V1A _V1B
V2=V2A _V2B
V3=V3A _V3B
V4=V4A _V4B (11)
式(9)は、ここで、次のように書き換えることができる:
Z2は、電流ベクトルI2を電圧ベクトルV2に関連付ける回路網のインピーダンス行列である。
図55は、遠位側に回路網フローティングを有する例示的なシステム54を図示する。フローティング回路網は、その全てのポートを通って回路網に入る全ての電流の合計がゼロに等しい回路網として定義される。回路網とGNDとの間に別の電気経路は存在しない。図54に示される端子表現ではなく、遠位端上のポート表現が示されている。ポート電圧P1、P2、P3、P4、およびPL1、PL2、PL3は、2つの隣接する端子電圧の間の差と定義され、電圧差は各々、参照番号56、58、60、62、64、66、および68によって示されるが、ポート電流は、ポートの一方のアームを通って回路網に入り、ポートの別のアームを通って回路網を出る電流と定義される。
遠位側のフローティング回路網のための図54および図55の表現の等価性が当業者には理解されよう。式(14)によって表される新しいセットの式を得るために、式(12)によって表される式のシステムの行および列の少しの操作を要求する必要がある:
Zは、電流ベクトルIを電圧ベクトルVに関連付ける回路網のインピーダンス行列である。
式14によって説明されるフローティング回路網システムについては、以下で本明細書でより詳細に説明する。当業者であれば、遠位回路網がフローティングでない使用事例のための次のセットの派生を拡張することができよう。図54に示される回路網では、V0は回路網に適用された電圧であり、I0は回路網に入る電流である。励起が、完全な電圧源14である場合、V0は、電圧源の値に固定される。同様に、完全な電流源の励起では、I0は、電流源のための電流の値に固定される。しかしながら、実際には、理想的な電圧源または電流源は存在しない。回路網に明らかに影響を及ぼすことなく、電圧V0または電流I0を精密に測定することが可能な場合がある。しかしながら、このような測定は、特に励起の周波数が高く、したがって、ハードウェアの複雑さを増すときに、込み入った電子機器を必要とするであろう。本技法の側面は、有利には、本明細書において以下で説明する電圧V0または電流I0の知識を必要とすることなく、負荷回路網を識別するために方法を導き出すことによってこの課題を克服する。
電圧V0の値が必要でないので、この値は、式(14)で定義される式のシステムからの第1の行からを取り去っている。新しい式のシステムは、
V1=Z10I0+Z11IL1+Z12IL2+Z13IL3
V2=Z20I0+Z21IL1+Z22IL2+Z23IL3
V3=Z30I0+Z31IL1+Z32IL2+Z33IL3
V4=Z40I0+Z41IL1+Z42IL2+Z43IL3
VL1=Z50I0+Z51IL1+Z52IL2+Z53IL3
VL2=Z60I0+Z61IL1+Z62IL2+Z63IL3
VL3=Z70I0+Z71IL1+Z72IL2+Z73IL3 (16)
のように書かれる。
例示的な方法では、4つの測定された電圧はベクトルVMにグループ化され、同様に、負荷側の電圧はベクトルVLにグループ化される。負荷側の電流は、次の式に示すようなベクトルILと同様にグループ化される:
ここで、式(16)の書き直しでは、上記で定義した命名法を使用する:
式中、ZM0、ZML、ZL0およびZLLは、式(16)でZ項のグループ化によって形成されるインピーダンス行列(Z)のサブ行列である。
当業者によって理解されるように、遠位側(負荷側)は、負荷側電圧のベクトルVLおよび電流ベクトルILに関連する3×3アドミタンス行列Yとしてモデル化できる任意の回路網によっても終端される。受動回路網では、アドミタンス行列Yは6つの独立変数を有するが、一般的な能動回路網の変数の数は9であろう。いくつかの特別なシナリオ(1つの説明したシナリオのうちのシナリオを含む)では、負荷回路網は、他の制約を有することができ、自由度が6よりも小さいからである。図52の特定の例では、内腔寸法を測定する間の解剖学的制約により、Yパラメータの自由度は3以下になることがある。
カテーテル回路網に入る電流ベクトルILが示されているので、次の負荷方程式を表しながら負の符号を使用する:
式(18)で式(19)を使用すると、下記の式
が導出される。
I0は不明と仮定されるので、結果がスケール係数の不明瞭さを有する状況を解決するために、絶対値電圧ではなく、2つの電圧の比を使用する。一般性を損なうことなく、基準電圧V1として図52の基準抵抗の両端の電圧を使用し、他の全ての電圧は基準電圧に対する比として測定する:
式中、
および
は、Z10により正規化され、Z10が単位元に固定される。
したがって、これらの式は、近位端で行われる測定に対して遠位端で接続された任意の負荷回路網の影響を効果的にモデル化する。
上記の定式化では、電圧比VM/V1を使用する。この理由は、通常の実際的な状況では、V0の正確な値(電圧励起の場合)またはI0(電流励起の場合)が正確に分からないからである。しかしながら、これらが十分な精度で決定できる場合、較正方法は、電圧比ではなく絶対値電圧で定式化することができる。したがって、本開示は、絶対値、電圧差、電圧の線形結合または非線形結合等の比以外の形で電圧を使用できるこのような代替定式化を想定する。
本明細書で説明する例示的な方法では、近位測定値により遠位端に接続された任意の負荷回路網のための実電圧差測定値を決定するための上記のシステムモデルを使用する。方法の次のステップは、本明細書で較正ステップと呼ばれる測定寄生とともに接続回路網のZパラメータを識別することである。その後、接続回路網および測定寄生値のZパラメータの十分な考慮の後で近位測定値が遠位負荷回路網にマップされる(フィッティングされる)取り出すステップが行われる。
本明細書で説明する較正のプロセスでは、遠位端に接続されている明確に分かっている負荷回路網の種々の組み合わせに対して、第1の電圧に対する3つの電圧比を測定する。受動負荷回路網では、式(21)で、推定されるべき不明Zパラメータの数は、23と推定されることに着目することができる。Zパラメータは、測定されたデータのセットで実行される適切なフィッティングユーティリティを使用して取得する。あらゆる構成が3つの電圧を提供するので、全てのZパラメータを得るために、8つの独立した構成から少なくとも測定値を有することが必要である。より多数の構成は、フィッティングされた値により優れたノイズ耐性を提供する。フィッタルーチンは、任意の開始点から始まり、式(21)で異なる既知の負荷構成における推定される電圧の比を計算する。方法は、次いで、測定された比と推定された比との間のユークリッド距離である誤差メトリックを計算する。フィッタは、Zパラメータ値を調整することによってこの誤差を最小にしようとする。解が収束して解が変わることがあり得る。しかしながら、当業者であれば、これらの問題を認識し、それらを回避するのに適した技法を見つけるであろう。これは、適切な最適化法を用いることによって行われることができる。フィッティングされたZパラメータは、回路網の真のZパラメータではなく、1つの所定のZパラメータ(ZL0のいずれか1つ)の制約下で観察をフィッティングする数学的表現であることに着目することができる。さらに、すでに言及したように、少数のZパラメータはZ10に正規化され、Z10は単位元に固定化される。
較正のプロセス中の既知の負荷回路網の選択は、演繹的で公知の抵抗器、抵抗器、インダクタ等、個々の受動構成要素を使用して、選択されることができる。ある実施形態では、一組の受動構成要素が、選択される。一組のこれらの構成要素は、遠位電極に接続され、ともに各接続要素は、電気負荷回路網から一対の電極にわたって接続される。この構成によって、励起が提供され、測定が行われる。一組の異なるサブセットを選択し、それらを回路網の遠位の異なる端子に接続することによって、いくつかの一意の回路網が、作り出される。端子のサブセットもまた、接続されない(すなわち、開回路)。そのような場合、負荷のZパラメータは、演繹で公知である。負荷回路網のZパラメータの知識の組み合わせは、したがって、測定された近位電圧値を伴って作り出され、測定回路網のZパラメータは、以前の部分で説明された方法を使用して、推定される。図67は、異なる位置(Z1、Z2、....Z6)を示し、離散された負荷要素のいずれかは、3ポート負荷回路網に対する回路網に付着させることができる。
実際の状況では、選択された離散構成要素のインピーダンスは、要求される精度では、分からない場合があることが可能性として考えられる。例えば、容量性構成要素の静電容量を0.01%精度内で測定することは、容易ではない場合がある。そのような場合、サブセットの構成要素のみ、典型的には、精密に測定されたインピーダンス値を伴う抵抗が、既知であると仮定される。他の構成要素は、未知であると仮定される。これらの未知の構成要素のインピーダンス値は、較正プロセスの一部として推定される。これは、回路網のZパラメータのみ推定するために要求される最小値と比較して、付加的負荷構成および対応する測定を要求するであろう。これらの付加的測定は、導入される余剰未知変数を解明するために要求される。本手法は、非常に多数の負荷回路網が、比較的に小セットの負荷構成要素とともに作成され得るため、非常に実践的である。例えば、3ポート回路網および2つの個別の構成要素では、可能性として考えられる一意の負荷組み合わせの数は、13である。本方法の一側面では、1つのみの構成要素のインピーダンスが、既知であると仮定され、全他の構成要素のインピーダンスは、較正プロセスの一部として推定される。
別の実施形態では、負荷回路網は、既知の伝導性の伝導性流体で充填された既知の寸法(例えば、断面積)の内腔の形態で提示されることができる。異なる寸法の一組の内腔が選択される。異なる電気伝導性を有する一組の流体もまた、選択される。ある測定を得るために、ある選択された内腔が、ある選択された流体で充填される。細長い医療用デバイスが、次いで、内腔内に挿入され、測定が行われる。類似の測定が、異なる組み合わせの内腔および流体伝導性に対して行われる。セットの測定は、次いで、較正の目的のために使用される。流体較正装置は、図68に図示される。流体ベースの較正方法は、実際の内腔測定の状態を精密に模倣するので、処置として有利であり得る。また、負荷を回路網に付着するための機構を単純化する。離散構成要素に基づく前述の方法では、構成要素をポートに付着する物理的手段自体、わずかであるが、未知の接触インピーダンスを導入するであろう。これらのわずかな不確実性は、較正係数の推定の精度の低減につながり得る。流体ベースの負荷回路網では、負荷は、その最終使用例と非常に類似する様式において、直接、細長い医療用デバイスと接触する。
実際の状況では、全流体の伝導性を精密に知ることは困難であり得る。そのような場合、サブセットの流体のみ、既知の伝導性を有すると仮定される。残りの流体の伝導性は、未知であると仮定され、較正パラメータの決定とともに決定される。付加的未知性は、行われるべき付加的測定を伴うであろう。これらの付加的測定は、わずかなオーバーヘッドであって、有意ではない。
Zパラメータが、較正のプロセスを通して推定されると、接続回路網を使用して、遠位端におけるいかなる任意の負荷回路網も識別することができる。限定されないが、4つの遠位電極(接続回路網)を伴うカテーテルが、内腔内側に挿入され、遠位側に提示される負荷が、内腔内側の血液の有限伝導性または壁組織の有限伝導性によるものである、図52の実施例等の具体的用途では、回路網の自由度は、3である。3つの電極にわたる3つの電圧分布は、内腔内側の電極によって形成される等価電気回路網のZ−パラメータを完全に定義する。類似手段を電気的に通るパイプの断面の測定等の類似用途もまた、類似自由度を有するであろう。3つの比の測定が、任意の負荷回路網に対して行われると(3自由度を伴うアドミタンスYとともに)、類似フィッタルーチンを使用して、負荷回路網を見出すために使用することができる。一実施例では、フィッタルーチンは、ユーザによって与えられる最良の場合の推定値である、Yの開始値によって初期化される。比が、それに応じて、推定され(式21に従って)、誤差量が、測定された比と推定された比との間の差異として算出される。誤差量は、次いで、負荷回路網のYパラメータを調節することによって最小にされる。最低誤差を表すYパラメータが、負荷回路網の真のYパラメータを表す。
3つの比のみを測定するので、この方法は、3以下の自由度を有する回路網の識別に適用可能であることに着目することができる。説明したように、3つのポートを有する任意の回路網では、Yパラメータは、9の自由度を有することができる。受動回路網では、自由度は、一般的に6である。このような回路網の識別は、例示的な方法の拡張を使用して行われることもできる。受動的な任意の負荷回路網(6自由度を有する)を識別するには、較正プロセスおよび取り出しプロセスを、2つの独立した相互接続回路網のために行う必要がある。実際には、2つの測定を行うことによって達成されることもでき、一方は、実際の相互接続回路網により得ることができ、他方は、実際の相互接続回路網の変更版により得ることができる。較正段階中に、明確に分かっている負荷を接続回路網の遠位側に付着し、3つの比を測定し、同じ負荷を維持しながら、可逆的機構(図56の実施形態70の近位端において2つの中央ポート2および3を短絡させる継電器72等)を使用して接続回路網を変更して、新たな比を測定する。
次いで、同じ手順を種々の負荷構成に対して繰り返す。較正段階の類似の原理を使用して、親となる接続回路網ならびにその変更版の両方に対してZパラメータを推定する。最後に、任意の受動負荷回路網を同じ接続回路網の遠位に接続する。1回目は、元の接続回路網を用いて、2回目は、接続回路網が以前のように修正されているとき、3つの比を測定する。計6つの比を取得し、接続回路網のZパラメータおよび較正段階からのその変更版により、負荷回路網の6つの自由度全てを解明することが可能である。方法は、3つの異なる接続回路網を使用して測定値を実行することによって、9自由度を有する任意の能動3ポート回路網を解明するように拡張することもできる。
一代替実施形態では、nポート負荷回路網は、L個の独立した(L=n2)複素イピーダンスによって表される。当業者には理解されるように、複素インピーダンスは、同じ回路網のZパラメータとの等価性を持つ。受動負荷回路網では、回路網は対称性であるので、独立した複素インピーダンスの数はP(=n*(n−1))である。図57は、参照番号78によって全体的に示されている6つの複素インピーダンスを有する例示的な3ポート受動回路網76を有する一実施形態74を表す。他の任意の受動3ポート回路網トポロジは、図58の実施形態80に示されるトポロジも有する等価な回路網76に減少させることができる。励起および測定エンティティに関連する他の構成要素は、以前の図に記載したものと実質的に同じままである。
回路網理論によれば、当業者にはよく理解されるように、遠隔のインピーダンスの順序付きセットから成るあらゆる回路網の場合、回路網内の任意の2点(u、v)の両端の電圧は、励起電圧または励起電流(ξ0)と回路網に存在する全インピーダンスによって形成される多項式の合計の比の積として表すことができる。分母多項式は、回路網の全インピーダンスから成る回路網の特性多項式と呼ばれる。特性多項式は、測定点とは無関係である。さらに、回路網のいくつかの部分が分散要素から構成され、他の部分が離散インピーダンスから成る場合、電圧は、依然としてξ0と回路網に存在する全離散インピーダンスによって形成される多項式の合計の比の積と表すことができ、多項式の係数は、分散要素の影響を受けるであろう。
離散インピーダンスのうちのいくつかが対象となる場合、多項式は、まさに問題となる離散インピーダンスの多項式に再構成されることができる。この場合、再構成された多項式の係数は、回路網の他の離散インピーダンスならびに分散要素の影響を含むであろう。
測定回路網170および接続回路網172は固定されているが、マルチポート負荷回路網174がL個の負荷インピーダンス(Z1、Z2、...、ZL)の変動により変化できる、図50を参照すると、回路網内の任意の2点(u、v)間の電圧は、
と記述されることができる。
一般に、L個の負荷インピーダンスの各々は、回路網内の電圧分布に寄与する。回路網内の固定要素の寄与は、多項式係数に吸収される。分母は、合成回路網(170、172、および174)の特性多項式に等しく、その係数(aの)は、所与の回路網に対して固定され、回路網172および174によって決まる。
ポートの自己インピーダンスが重要な特定の例では、nポート負荷回路網全体は、n個の複素インピーダンスによって表すことができる。このシナリオでは、回路網のZパラメータは、n個の対角項を有する対角行列であろう。図57は、ポートの数(n)が3の例示的な実施形態を説明する。このような回路網では、遠位側の3つのインピーダンス(Z1、Z2、およびZ3)を利用する場合、近位側の電圧測定値(例えば、V1、V2、V3、V4)は、次の式
によって与えられる。
近位端での絶対値測定の代わりに、励起電圧または励起電流(ξ0)への依存を回避するために、電圧比を調べることもできる。一般性を損なうことなく、基準抵抗の両端の電圧(V1)を基準とし、3つの比は、V1に対して、
のように構成される。
測定および接続回路網の性質は、多項式係数によって表される。n個のインピーダンスと(n+1)個の測定エンティティとを有する回路網では、独立多項式係数の数は、(n+1)*2n−1である。式(24)の多項式係数は全て、分母の第1項によってスケーリングされ、それによって不明な係数を減らすことができることに着目できる。これらの回路網を較正する行為には、遠位ポートに接続される既知のインピーダンスを有する近位測定を行う行為を含む。必要とされるこのような独立した測定の数は、解明する必要がある未知数の数および1回の測定あたりの情報の数によって決まるであろう。次いで、フィッタルーチンを、既知のセットの負荷のこれらの測定比の全てに対して実行して、多項式係数を推定するであろう。
較正のプロセスが完了し、多項式係数が得られたら、類似構成の遠位ポートにわたって接続された任意の負荷を推定することができる。類似の構成で遠位ポートにわたって接続された任意の負荷の場合、近位の測定を行い、基準測定値を参照して比を計算する。次いで、所定の多項式係数および任意の負荷に対応する比を指定して、フィッタルーチンを起動する。フィッタルーチンは、最良の推測に基づいた負荷インピーダンスの開始値により、ユーザによって初期化することができる。フィッタは、測定の比を一致させるであろう真の値のインピーダンスを見つける際の最小剰余に収束するものとする。代替解への収束は可能であるが、当業者であれば、このような状況を回避することに熟練していよう。
6つの独立したインピーダンスによってモデル化できる一般化された3つのポート受動負荷回路網を推定するために、6つのインピーダンス全てが存在する式(22)で多項式を記述する必要がある。測定された比の数は3つのみなので、方法では、以前に説明した6つのインピーダンスの測定値を拡張する必要がある。較正の方法は、2つの独立相互接続回路網のための負荷回路網の種々の組み合わせ(6つのインピーダンス全てからなる)を有する測定を行うことを含むであろう。次いで、個別のセットの測定比および負荷インピーダンスの知識を使用して、両方のこれら回路網のための多項式係数を推定するであろう。次いで、この場合も同じ2つの独立互接続回路網を有する、任意の6つのインピーダンス負荷回路網による測定を行うであろう。両方の回路網のための多項式係数とともに合計6つの比は、6つのインピーダンスを推定するためのフィッタルーチンによって、まとめてフィッティングされるであろう。方法は、9つのインピーダンスモデルを推定する必要がある能動回路網に同様に拡張することができる。
4つの近位測定エンティティを有する3ポート回路網の例により説明した上記の方法は、式(22)に基づいてn+1個の近位測定エンティティを有する、一般的なnポート回路網に容易に拡張することができる。回路網内の負荷インピーダンス数が増加することにより、計算の複雑さは指数関数的に増加する。
したがって、本明細書で説明する方法は、同時に行われたn+1個の測定がある、一般化されたnポート負荷回路網を取り出しおよび評価するように拡張することができる。
負荷回路網の電気パラメータが、複数の周波数で推定される必要がある場合の使用では、相互接続回路網の較正および後続取り出しは、対象の全異なる周波数で行われる必要がある。
較正の一実施形態では、較正パラメータは、個々の周波数の各々において決定されることができる。
較正のいくつかの他の実施形態では、較正パラメータは、周波数の各々において、一組の較正パラメータをもたらす、対象の一組の近隣周波数にわたって、ともに推定されることができる。周波数にわたるパラメータの相関は、測定における非理想性(例えば、測定雑音)の存在下、よりロバストな推定を取得するために利用されることができる。
取り出しの一実施形態では、各周波数における負荷回路網の電気パラメータの推定は、対応する周波数における近位測定を使用して、同一の周波数に対して、相互接続回路網の較正パラメータを取り出すことによって行われる。
取り出しのいくつかの他の実施形態では、複数の周波数における負荷回路網の電気パラメータの推定は、全対応する周波数に対して、近位測定を使用して、全該周波数に対して、相互接続回路網の較正パラメータの同時取り出しを行うことによって行うことができる。周波数にわたる負荷回路網の電気パラメータの相関は、測定における非理想性(例えば、測定雑音)の存在下、よりロバストな推定を取得するために利用されることができる。
いかなる電気測定も、ノイズおよび測定システムの他の不正確さによって損なわれる。測定値の不正確さにより、較正のプロセスおよび取り出しから、内腔寸法等のシステムパラメータの不正確な推定が生じるであろう。所与の選定が測定ノードに対して行われる場合、測定値の不正確さは、介在する回路網によって引き起こされる変換に応じて、推定値への影響の広がりまたは軽減を示すことがある。したがって、測定ノードの選定は、推定されたパラメータの精度が所与の介在する回路網に対して最大となるように行われる必要がある。これは、解明的に、シミュレーションによって、または物理的実験によって、行われることができる。
本明細書において上記で説明した方法は、図59の流れ図82の形でも示されている。遠隔に位置するマルチポート回路網からの測定で使用するための較正法は、流れ図のステップ84〜92によって示されており、遠隔に位置するマルチポート回路網を励起させるための、および遠隔に位置するマルチポート回路網に対応する複数の近位電圧を測定するための励起および測定エンティティを提供するステップ84と、励起および測定エンティティと遠隔に位置するマルチポート回路網とを接続するための接続回路網を提供するステップ86と、この接続回路網に結合された複数の既知の負荷回路網を提供するステップ88を含む。較正法はさらに、既知の負荷回路網の各負荷に対応する一組の電圧比を測定するためのステップ90と、一組の電圧比にわたってフィッティングユーティリティを使用することによって、測定エンティティおよび接続回路網に対応する電気パラメータを推定するためのステップ92とを含み、電気パラメータは、較正に使用される。方法は、電気パラメータを使用して、遠隔に位置するマルチポート回路網からの測定値を取り出すためのステップ94をさらに含む。
本明細書で説明する実施形態については、電気回路網をモデル化するための電気パラメータとしてのZパラメータの使用によって図示されてきた。当業者には理解されるように、全てのモデルは電気回路網を表す等価な方法なので、同じ原理を使用すると、Yパラメータ、Sパラメータ、Hパラメータ、およびGパラメータを使用する類似の定式化を行うこともできる。したがって、本明細書で説明する実施形態は、このような定式化を全て対象とすることを理解されたい。
本明細書で説明する技法は、遠隔に位置するマルチポート回路網の測定電極もしくは端子の間の実電圧または電圧差を決定するために効果的に使用されることができる。
本明細書において上記で説明する方法は、おそらく遠隔に位置するマルチポート回路網からの電圧また他の任意の電気応答を決定するために使用される用具として組み込まれる。
特定の例では、インビボで体腔に置かれた少なくとも3つの電極に接続された導体の両端で測定された近位電圧を取り出すためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも3つの電極を励起するための、および少なくとも3つの電極に対応する複数の近位電圧を測定するための励起および測定エンティティを有する図50〜53の実施形態を含んでもよい。このシステムは、励起および測定エンティティと少なくとも3つの電極を接続するための2つ以上の導体の形をとる接続回路網も含み、この少なくとも3つの電極は、2つ以上の導体の遠位端にある。図50〜53の実施形態において、励起および測定エンティティならびに接続する回路網に対応する較正パラメータとして複数の電気パラメータを推定するための、ならびに測定された近位電圧を取り出すために電気パラメータを使用して少なくとも2対の少なくとも3つの電極にわたって実電圧を推定するための励起および測定エンティティならびに接続回路網に結合されたプロセッサが追加される。
本明細書で説明する実施形態、例えば、図50〜53の実施形態は、励起および測定エンティティ14とマルチポート相互接続回路網16の両方に対する影響の補償に関することが、当業者には理解されよう。しかしながら、いくつかの実際的な状況では、エンティティの各々の効果を別々に較正することが必要な場合があり、取り出しのプロセス中、両方のエンティティの効果を結合するであろう。さらに、マルチポート相互接続回路網16は、複数の部品または構成要素を含んでもよい。この場合、各部品は別々に較正され、パラメータは、取り出し時に結合することができる。較正および取り出しのためのこの分割された手法も、本明細書で説明する本発明の範囲内に含まれることを理解されたい。
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、複数参照を含む。
本明細書で使用されるように、内腔は、動脈または腸等の、ヒト等の被験体の任意の全体的に細長い、場合によっては管状の、構造の構成要素によって画定されたボリュームを含む。例えば、血液が流れる動脈または静脈の内側空間等の血管の内部は、内腔と考えられる。内腔は、例えば、心臓近辺の大動脈のセクション等の、被験体の全体的に管状の構造構成要素の特定の部分も含む。内腔の特定のセクションは、閉塞または狭窄等の、それに関連するいくつかの特徴を備え得るので、例えば、医師にとって関心を引くことがある。したがって、いくつかの例では、本明細書で使用される内腔は、本明細書では対象体積、対象領域、または対象内腔とも呼ばれることがある。
本明細書で呼ばれる電気回路網は、抵抗器、インダクタ、コンデンサ、一般化された周波数依存インピーダンス、導線、電圧源、電流源、およびスイッチ等の電気要素の相互接続である。
端子は、電気構成要素、デバイス、または回路網からの導体が終端し、外部回路への接続点を提供する点である。端子は、単に、ワイヤの端部であってもよく、コネクタまたはファスナと嵌合してもよい。回路網解明では、端子とは、回路網への接続が理論上なされる点を意味し、必ずしも任意の実際の物理的物体を指すわけではない。
電気コネクタは、機械的アセンブリを使用してインターフェースとして電気回路を接合するための電気機械的なデバイスである。この接続は、携帯型機器については一時的であってよく、または組み立ておよび取り外しのための用具を必要としてもよく、または2つのワイヤまたはデバイスの間の永続的な電気的接合であってもよい。
本明細書で使用されるように、電気測定値は、例えば、電圧計による電圧(または、パルス形式を含めて、オシロスコープを使用する)、電流計による電流、電気抵抗、コンダクタンス、サセプタンス、およびオーム計による電気伝導度、ホールセンサによる磁力線および磁場、電位計による電荷、電力量計による電力、スペクトラムアナライザによる電力スペクトルを含めた、測定可能で独立した、半分独立した、および依存した電気量を含む。
本明細書で参照される電気インピーダンスは、電気抵抗と電気リアクタンスのベクトル和と定義される。インダクタンスは、リアクタンスの周波数比例係数として定義され、キャパシタンスは、リアクタンスの周波数比例係数の逆数として定義される。
本明細書で言及される電気インピーダンスは、電気抵抗と電気リアクタンスのベクトル和として定義される。インダクタンスは、リアクタンスの周波数比例係数として定義され、キャパシタンスは、リアクタンスの周波数比例係数の逆数として定義される。
本明細書で一般に参照される任意の2点の間の電圧は、2点間の電位差であり、本明細書では電圧差または電圧降下とも呼ばれる。
介在するマルチポート回路網の電気的性質の効果を推定するプロセスは、較正と呼ばれる。回路網の推定された性質を使用して、回路網を補償し補償された測定値を得るプロセスは、取り出しと呼ばれる。
本明細書で言及されるZパラメータ(インピーダンス行列またはZ行列の要素)は、電気回路網のためのインピーダンスパラメータである。Zパラメータはまた、開回路パラメータとしても公知である。Z行列のk番目の列を決定するために、k番目以外のポートを開き、k番目のポートに電流を導入して、全てのポートで電圧を解明する。Z行列全体を得るために、この手順をN個のポート(k=1〜N)全てに対して実行する。例示的な実施形態では、Zパラメータを使用して説明してきたが、本明細書で説明する方法およびシステムは、Yパラメータ、Sパラメータ、Hパラメータ、およびGパラメータ等の他のパラメータに同様に適用可能である。
本明細書で言及される一般的なマルチポート回路網は、ポート1〜Nを含み、ここでNは、ポートの総数を示す整数である。ポートnの場合、ここでnは1からNの範囲にあるが、そのポートを通って回路網への関連する入力電流はInと定義され、そのポートの両端の電圧はVnと定義される。
本明細書で使用されるように、「ピーク対実効値比」(「PAR」)というフレーズは、波形のピーク振幅を波形の二乗平均値で除算することによって波形に対して得られる値を意味する。これは、一般に正の有理数対1の比として表される無次元の数である。これはまた、当技術分野では、「波高率」、ピーク対平均値比、または当業者に公知の他の類似の用語として公知である。種々の標準的な波形のPAR値は、一般に公知である。PAR値は、理論上の計算から得られてもよく、特別な状況に対して何らかのPARメータを使用して測定されてもよい。
本明細書で使用されるように、「信号対雑音比」(「SNR」または「S/N」と省略されることが多い)というフレーズは、信号電力対この信号と関連するノイズ電力の比を意味する。ノイズ電力は、信号電力を損なうと考えられる。したがって、SNRは、どのくらいの信号がノイズによって損なわれたかについて定量化する指標である。理想的には、良好なSNRは、1:1よりかなり高い比を有するべきである。
(圧力感知アセンブリ)
電気測定のための誘導ワイヤの利用に加え、そのような誘導ワイヤはまた、同様に、種々の他の生理学的パラメータを測定するために使用されてもよい。例えば、流体圧力測定が、単独で、または前述のような断面積等の内腔パラメータの測定と組み合わせてのいずれかにおいて、血管内で感知されてもよい。したがって、1つ以上の電極を有する誘導ワイヤは、随意に、以下にさらに詳細に説明されるように、内腔寸法だけではなく、また、手技の間、器具を交換する必要なく、圧力測定も取得するために、種々の構成で流体圧力センサと組み合わされてもよい。これらの測定は、次いで、組み合わせて使用され、以下にさらに説明されるように、治療選択肢を最適化してもよい。
血管内の流体圧力を感知するために構成される誘導ワイヤは、典型的には、直径0.014インチを有し得る、誘導ワイヤの遠位端またはその近傍に取り付けられる圧力センサとともに設計される。圧力センサは、誘導ワイヤに沿って陥凹され、それ自体が所定の抵抗率値を有するシリコーン構造から形成され得る、ダイヤフラムを有する、MEMSセンサ等の種々の異なるセンサから成ってもよい。センサおよびダイヤフラムは、例えば、ダイヤフラム自体が、圧力を測定するために、流体環境に露出されるように密閉され得る、陥凹筐体内に形成されてもよい。1つ以上の絶縁導線は、導線が誘導ワイヤを通して近位に延在し、患者の外部に設置され得る、プロセッサに結合されるように、ダイヤフラム圧力センサに機械的におよび電気的に結合されてもよい。
本明細書に説明されるデバイスおよび方法と併用され得る圧力センサの実施例は、米国特許第5,715,827号により詳細に図示および説明されており、参照することによって全体として本明細書に組み込まれる。
圧力センサアセンブリ500の実施例は、図69Aおよび69Bの上部および部分的断面端面図に示される。本変形例では、基板またはMEMSセンサウエハ基板502は、ウエハ基板502に沿って形成されたダイヤフラム504と通信する、MEMS圧力センサとともに形成されてもよい。圧力センサおよびダイヤフラム504は、例えば、電気絶縁体面積506の縁によって示されるように、ウエハ基板502に電気的に付着される、ワイヤ導線から絶縁されてもよい。
1つ以上の導線508は、各々、絶縁体512によって、その長さに沿って被覆される、伝導性ワイヤ510A、510B、510Cを備えてもよい。導線の端子端は各々、本変形例では、連続して整合されて示される、個別の終端パッド514A、514B、514Cにはんだ付けされてもよく、または別様にそこに電気的に接続されてもよい。例えば、示されるように、導線510Aの端子端は、終端パッド514Aに電気的に接続されてもよく、導線510Bは、終端パッド514Aの近位に設置される終端パッド514Bに電気的に接続されてもよく、導線510Cは、終端パッド514Aおよび514Bの近位に、かつそれと整合して設置される、終端パッド514Cに電気的に接続されてもよい。そのような配列は、複数の導線が、ジグザグ整合において、ウエハ502にはんだ付けされることを可能にし、これはさらに、比較的に狭いウエハ502に沿った接続を可能にする。例えば、導線514Aから514Cの中心間の距離は、約100μmであってもよい。
別の変形例は、別の変形例を図示する、図70Aおよび70Bの上部および断面端面図に示されており、ここでは、終端パッドは、ウエハ基板502の幅にわたって、ジグザグ形パターンにおいて、相互に隣接して形成されてもよい。本実施例では、溝、チャネル、またはトレンチが、基板502の近位縁から個別の終端パッドにつながるように、基板502に沿って形成され、基板502への接続のための動作縁を整合および誘導してもよい。例えば、導線510Aは、部分的に、基板502の近位縁から終端パッド520Aへと基板502内に延在する、チャネル内に整合されてもよい。同様に、導線510Bは、終端パッド520Bへのチャネル内に整合されてもよく、導線510Cは、終端パッド520Cへのチャネル内に整合されてもよく、終端パッドの各々の金属は、その個別のチャネルより比較的に広くパターン化されてもよい。
さらに別の変形例は、圧力センサ筐体530内に固着されるウエハ基板502および圧力センサアセンブリを図示する、図71Aおよび71Bの上部および部分的断面側面図に示される。図示されるように、基板502は、ダイヤフラム504が、流体圧力を感知するために、流体に露出されることを可能にする、スロットまたは開口部532を画定する円筒形形状に形成され得る、センサ筐体530内に固着されてもよい。導線アセンブリおよび終端パッドは、絶縁体534(例えば、熱収縮または同等材料等、はんだ付けされたアセンブリ上に固着される)によって被覆または封入されてもよい一方、基板502は、示されるように、例えば、注封材料536(例えば、RTVまたは同等材料等)によって、センサ筐体530内に固着されてもよい。注封材料536によってスロットまたは開口部532に隣接して設置される基板502を用いて、コアワイヤ内腔538もまた、注封材料536を通して画定され、血管内使用のために、誘導ワイヤに沿って、またはその中に固着されるとき、センサ筐体530を通したコアワイヤの通路をもたらしてもよい。
センサ筐体530の実施例は、図72Aおよび72Bの上部および端面図に示される。センサ筐体530は、長さ、例えば、約0.047インチ、幅、例えば、約0.014インチを有してもよいが、寸法は、圧力センサ、ダイヤフラム構成、誘導ワイヤ寸法等に応じて変動されてもよい。
他の変形例では、誘導ワイヤを通して圧力センサへのワイヤまたは導線の数を減少させるため、かつ誘導ワイヤ自体内の空間を節約するために、種々の措置が、講じられてもよい。一実施例は、直接、誘導ワイヤ内において、および圧力センサに近接または隣接して、特定の使用のためにカスタマイズされた集積回路である、ASIC(特定用途向け集積回路)等のプロセッサを留置することである。ASICを誘導ワイヤ内に留置することによって、圧力センサに接続された導線ワイヤは、直接、ASIC端子を圧力センサに電気的に接続することによって、全体的に排除され得る。
実施例は、両方とも、誘導ワイヤ内に固着されるように、基板502の近位に設置されるASIC540を図示する、図73の上面図に示される。ASIC540は、終端パッド544A、544B、544C、544Dを介して、圧力センサに電気的に結合する導線542A、542B、542C、542Dを有するように、図に示され得る。減少数のASIC導線546A、546Bはまた、誘導ワイヤを通る通路のために、ASIC540に電気的に結合されて示され得る。ASIC540は、圧力センサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するように設計され得るため、これらのデジタル信号は、次いで、ASIC導線546A、546B等のASIC540に給電する同一の導線ワイヤを経由して伝送されることができる。故に、本構成は、源ですぐに、アナログをデジタル信号に変換することによって、雑音を低減させるだけではなく、また、1つ以上の導線ワイヤの使用を排除し、したがって、誘導ワイヤを通る空間を節約する。
別の変形例は、圧力センサと同様に、直接、同一の基板502上に形成される、ASIC550を図示する、図74の上面図に示される。圧力センサおよびダイヤフラム504と直接近接するASIC550を用いて、電気接続は、複数の導線を使用するのではなく、直接、基板502上において、2つの間で行われてもよい。
ASICブロック562および圧力センサブロック564の概略560が、図75に示されており、圧力センサとASICとの間の接続の実施例を図示する。本実施例では、圧力センサは、計装用増幅器サブシステム後、同一の導線上で電力およびA/D出力を組み合わせる、アナログ/デジタル(A/D)変換器および変調器ブロックへの結合を示す、ASICブロック562に電気的に結合されるホイートストンブリッジとして図示される。ASICへの導線ワイヤの数を節約するために、A/D変換器の出力は、同一の電力線を経由して伝送されてもよい。これは、A/D出力からの電圧/電流信号のシリアルストリームを用いて、電力を変調させることによって達成されてもよい。
MEMS圧力センサは、直接、ASICに接続されるため、いかなる温度の影響も、圧力センサのホイートストンブリッジ回路網上の付加的アームの存在のため、較正され得るように、4つの導線が、圧力センサの感度および性能を増加させるために使用されてもよい。
部分的断面側面図は、誘導ワイヤ内またはそれに沿った圧力センサおよびASICの相対的設置の実施例を図示する、図76に示される。示されるように、圧力感知誘導ワイヤアセンブリ570は、基板502のダイヤフラム504が、周囲流体と接触するために、スロット532を通して露出されるように、誘導ワイヤの端子端576またはその近傍において、誘導ワイヤ本体に沿って固着される、圧力センサ筐体530を有してもよい。ASIC540は、誘導ワイヤ本体572(例えば、ハイポチューブ等)に沿ってまたはその中に、例えば、基板502の近位において、基板502に近接して固着され、それに電気的に接続されてもよい。誘導ワイヤアセンブリ570はさらに、誘導ワイヤおよびセンサ筐体530を通過する、コアワイヤ578を含んでもよい。誘導ワイヤアセンブリ570の遠位コイル状本体574は、センサ筐体530から遠位に延在してもよい一方、ASIC540に接続し、誘導ワイヤ本体572を近位に通過するASIC導線はまた、使用の際に、患者の身体外に位置する、別のモジュール、例えば、付加的プロセッサ、モニタ等に接続するために示されてもよい。
別の変形例は、前述のように、圧力センサ筐体530、基板502、およびASIC540を有する誘導ワイヤアセンブリ580を図示する、図77の部分的断面側面図に示される。しかしながら、本変形例では、誘導ワイヤアセンブリ580は、電極T1、T2、T3、T4等の1つ以上の付加的センサを組み込んでもよい。電極は、誘導ワイヤ本体に沿った任意の場所に設置されてもよいが、圧力センサ筐体530およびASIC540の近位に設置されるように図示される。電極T1、T2、T3、T4のうちの1つ以上は、同様に、処理のために、ASIC540に電気的に結合されてもよく、またはそれらは、例えば、誘導ワイヤアセンブリ580からある距離に位置する、別のプロセッサに電気的に結合されてもよい。そのような電極T1、T2、T3、T4は、内腔直径のような種々の内腔パラメータの感知等、付加的感知または検出能力を提供するために使用されてもよい。この実施例は、前述ならびに2011年11月28日出願の米国特許出願第13/305,630号および2011年6月13日出願の第13/159,298号(各々、参照することによって全体として本明細書に組み込まれる)にさらに詳細に説明されている。代替として、1つ以上の電極T1、T2、T3、T4は、種々の診断法(例えば、RF、マイクロ波等)を通して励起され、慢性完全閉塞、形成血管閉塞、慢性高血圧を治療するための腎動脈の除神経等の種々の病態を治療するために、焼灼治療を周囲組織に提供するために使用されてもよい。
別の変形例は、圧力センサ筐体530およびASIC540を有する誘導ワイヤアセンブリ590を図示する、図78の部分的断面側面図に示される。しかしながら、本実施形態は、RF電力伝送ニーズに応じて、例えば、遠位コイル574またはコア578または近位コイル602またはこれらの組み合わせを介して、感知された情報を無線で伝送するように構成される、無線送信機または送受信機を組み込む、あるいはそれを含む、ASIC540を有してもよい。そのような構成は、誘導ワイヤ本体572に通過するASIC540からの導線またはワイヤの必要性を排除し得る。ASIC540は、データを無線で伝送および/または受信するためのアンテナまたはワイヤを含んでもよいが、ASIC540は、アンテナとして使用するためのこれらの要素を利用するためのRF電力伝送ニーズに応じて、遠位コイル574またはコア578または近位コイル602またはこれらの組み合わせに電気的に結合されてもよい。
さらに、ASIC540および/または圧力センサ筐体530への電力は、患者の身体外に留置される外部源から、RFリンクを介して受信されてもよい。構成要素に無線で伝送される電力(例えば、患者の身体内に設置されるとき)は、誘導ワイヤアセンブリ590に近接して留置される外部源から、患者の身体を通して伝送されてもよい。電力は、無線電源を誘導ワイヤアセンブリ590内の1つ以上の構成要素の各々に提供するためのRF電力伝送ニーズに応じて、遠位コイル574またはコア578または近位コイル602またはこれらの組み合わせを介して、受信されてもよい。
図79は、同様に、感知された情報を無線で伝送するように構成される、ASIC540を含む、誘導ワイヤアセンブリ600の部分的断面側面図を示す。しかしながら、本実施形態では、ASIC540は、遠位コイル574、近位コイル602、または両方の組み合わせのいずれかに電気的に結合され、情報を無線で伝送および/または受信するためのコイル574、602の一方あるいは全部を使用してもよい。加えて、コイル574、602の一方または両方はまた、前述のように、患者の身体を通して無線で伝送される電力を受容するために使用されてもよい。
使用の際に、圧力センサおよびASICを有する誘導ワイヤアセンブリは、患者本体内に導入され、1つ以上の所望の場所における流体圧力を決定するために、血管を通して経脈管的に前進させられてもよい。図80は、誘導ワイヤアセンブリ570が、血管Vを通して、経脈管的に前進させられる実施例を示す。センサ筐体530内に設置される圧力センサのダイヤフラムは、特定の場所において、例えば、病変Lに近接して、血管Vを通って流れる血液に露出されてもよい。圧力は、前述のように、ASIC540を介して、誘導ワイヤアセンブリ570内で決定されてもよい。さらに、圧力センサおよび/またはASIC540は、同様に、前述のように、電磁エネルギー612を無線で伝送し、患者身体の外部に設置される外部電源610によって給電されてもよい。代替として、および/または加えて、ASIC540はまた、患者の外部で感知されたデータを無線で伝送するように構成されてもよい。
(圧力感知および電極アセンブリ)
次いで、両方とも前述のような電極アセンブリおよび圧力センサの両方を有する誘導ワイヤアセンブリを参照すると、図81は、圧力センサ筐体530の近位の誘導ワイヤ本体572に沿って設置される電極T1、T2、T3、T4を示す、一変形例の側面図を示す。電極は、センサ筐体530の近位(図示されるように)または遠位のいずれかにおいて、センサ筐体530に近接して位置してもよい。電極は、各個別の電極間を伝導する例示的電流フィラメント54とともに示される。本明細書に説明されるように、電極は、内腔内において、複数の周波数で多周波数電気信号を送達し、送達された信号に応答して、複数の周波数のうちの少なくとも2つの電気信号を測定し、少なくとも2つの周波数において測定された電気信号を使用して、解剖学的内腔パラメータを決定するように構成される。
図82は、電極アセンブリの詳細図を示しており、対応する電極T1およびT2は、相互から離間して示され、電極T3およびT4は、相互に隣接する。電極T1、T2、T3、T4は各々、絶縁スペーサ620、622、624、例えば、ポリマースペーサを介して、相互から分離されてもよく、電極は各々、同様に前述のように、いくつかの対応する伝導性ワイヤ626のうちの1つに電気的に結合されてもよい。絶縁外筒628は、ポリマースペーサおよび電極アセンブリが設置され得る、誘導ワイヤ本体572内に固着されてもよい。伝導性ワイヤ626および電極アセンブリは、ポリマースペーサに当接する、ベースポリマー628上を摺動されてもよい。第2のポリマースペーサは、伝導性ワイヤが、ベースポリマーと第2のスペーサとの間に挟着されるように、ワイヤ上を摺動される。同様に、他の電極/ワイヤアセンブリおよびポリマースペーサも、電極サブアセンブリを形成するように、直列に留置される。使用されるポリマースペーサのタイプに応じて、異なる組立技法が、電極アセンブリを作製するために使用されてもよい。一例示的実施形態では、Pebaxポリマーは、スペーサおよびベースポリマーとして使用されてもよい。説明されるような組立が完了後、熱の適用によって、Pebaxは、リフロー(溶融および溶解)され、1つの継目のない電極アセンブリをもたらす。さらに別の実施形態では、電極は、所望の場所において、ポリマー上に圧着および加締され、サブアセンブリを形成することができる。図83は、電極T1、T2、T3、T4が、どのように圧力センサ筐体530に近接して設置され得るかを図示する、部分的断面側面図を示す。
0.014インチは、電極ならびに圧力または流量センサに給電する必要がある、いくつかのワイヤを収容するには困難なサイズであるため、両方のセンサタイプに共通ケーブルを使用することが実行可能である。信号は、電気工学において一般に知られる技術によって、バックエンド回路内で多重化されることができる。加えて、また、外部IRデバイスによって給電および照会されることができる、無線圧力感知デバイスを組み込むことが実行可能である。
(治療最適化)
使用の際に、個々の狭窄の相対的有意性の固有の曖昧性のため、複数の狭窄の機能的有意性を推定するために、FFR単独を測定するだけでは十分ではない。この曖昧性は、FFR測定(圧力センサを介した圧力測定に基づく)を電極アセンブリによって取得される狭窄の解剖学的測定と組み合わせること等によって、多様式測定を使用することによって解決することができる。解剖学的測定(内腔断面面積またはCSA等)、病変長(LL)等は、動脈の狭窄した区分によって血流に対してもたらされる抵抗に関連する、独立測定をもたらし得る。さらに、この抵抗は、血流を決定する他の要因が、既知または推定される場合、より正確に推定することができる。血液のレイノルズ数の粘度等の流体特性は、血管内の血流の正確な推定に役立つ。代替として、合理的推定が、これらのパラメータに対する代表的値を使用することによって取得されてもよい。精度はさらに、罹患した動脈の壁の弾性コンプライアンスが、既知である場合、さらに向上することができ、これは、順に、動脈の壁の組織特性を決定することによって取得することができる。
本発明はまた、直接、圧力の代わりに、血流を測定する方法にも適用可能である。血流が既知である場合、電気的等価は、回路内の電流が、電圧の代わりに、既知であることになる。この情報もまた、回路網を解明するために十分である。(電圧が既知である場合、電気回路のオームおよびキルヒホッフの法則により、電流を決定することができ、逆も然りである)。
本実施例では、治療計画は、特定の狭窄血管樹の測定および/または推定された機能的および解剖学的パラメータを使用することによって決定されてもよい。最大流量状態における病変にわたる圧力測定は、機能的パラメータとして使用することができる。流速または流量もまた、機能的パラメータとして使用することができる。断面積CSAおよび病変長LL等のパラメータは、解剖学的パラメータとして使用されてもよい。
機能的有意性を決定し、治療計画に到達するステップは、等価電気回路網を用いて血管網をモデル化することによって説明することができ、圧力は、電圧としてモデル化され、血管抵抗は、電気抵抗としてモデル化され、血流は、電流としてモデル化される。図84Aに示されるように、狭窄した病変1を有する主冠血管、狭窄した病変2を有する左冠動脈(LCA)、および狭窄した病変3を有する左前下行枝(LAD)動脈等の血管の実施例が、図示される。
等価電気回路網は、図84Bにモデル化され、示されており、そこでは、RS1、RS2、およびRS3は、個別の狭窄の血管抵抗を表す。抵抗RV1およびRV2は、遠位血管および動脈の2つの分岐の狭窄の遠位の微小血管系の組み合わされた総抵抗を表す。電圧Vaは、大動脈血圧を表す電圧であって、典型的には、約100mmHgである。電圧Vd1、Vd2、およびVd3は、充血または最大血管拡張時の3つの狭窄のすぐ遠位の圧力を表す、電圧である。電流IS1、IS2、およびIS3は、3つの狭窄した区分を通る血流量を表し、血流は、mL/秒またはリットル/分(典型的値は、数mL/秒である)で測定される。
圧力センサを使用して、Va、Vd1、Vd2、およびVd3を血管拡張状態下で測定することができる。しかしながら、これらの測定単独では、狭窄のいずれかの治療の効果を予測することは不可能である。すなわち、個々の血管のFFRが、決定を左右するために使用される場合、病変1のFFRが流量の増加に伴って増加する傾向にあるため、機能的有意性を示す遠位狭窄(例えば、狭窄2)の治療が、より高い流量をもたらし、病変1を機能的に有意にし得ることが可能性として考えられる。手技計画のための介入に先立って、このことを理解することが有用である。しかしながら、必要とされる付加的情報は、対象血管の流量に対する抵抗である。血管の流体抵抗(R)は、オームの法則によって、血管を通る血流(I)および血管にわたる圧力降下(ΔV)に関連する:
R=ΔV/I (24)
(RS1、RS2、およびRS3)に対する流体抵抗値は、狭窄の解剖学的内腔査定から取得することができる。しかしながら、微小血管系は、膨大であって、心臓介入に使用される器具にアクセス不可能であるため、流体抵抗RV1およびRV2は、通常の心臓介入手技を使用して、解剖学的に取得することができない。
種々の程度の複雑性および精度を伴う、血管を通って流れる血液のためのいくつかの流体機械的モデルが存在する。層流を伴うニュートン流体のための比較的に単純モデルは、ポアズイユの法則に基づき、
Q=(πΔPr4)/8ηl (25)
式中、
Q=流速(体積/秒)
ΔP=血管の区画の端部にわたる圧力差
r=血管の半径
η=血液の粘度係数
l=血管の区画の長さ
である。
ΔPは、等価電圧であって、Qは、等価電流であるため、等価抵抗Rは、以下によって求められる:
R=ΔP/Q=8ηl/(πr4) (26)
前述の式は、血管の円筒形区分に対するものである。直径に変動が存在する場合、血管630は、図85の例示に示されるような種々の半径の一連の円筒形区画632によって近似されることができる。長各区画の長さは、所望に応じて、より高い精度を取得するために、比較的に小さくすることができる。全体的抵抗は、血管630の各円筒形区画632の積分抵抗である。この円筒形ベースのモデルでは、流体抵抗は、血管の直径および血液の粘度のみに依存し、流体速度に依存しないことに留意されたい。
概して、流体抵抗を決定するパラメータは、血管の生体構造を分析することによって決定することができる。前述の多周波数電気信号ベースの内腔測定方法は、撮像または制御された引き戻し等の位置測定方法と併用して、内腔プロファイル(断面および長さ)を決定するために使用することができる。多周波数電気信号ベースの内腔測定方法(本明細書に説明されるような)はまた、内腔寸法を決定するプロセスにおいて、血液の伝導性を計算してもよい。血液の伝導性は、そのヘマトクリットに関連し、ひいては、その粘度を決定する際の重要な要因である。同様に、血管の壁の電気特性もまた、取得されてもよい。本明細書に説明される多周波数励起ベースの内腔査定アルゴリズムを使用する際に、血液および動脈壁の周波数依存伝導性等の電気パラメータが、決定されてもよい。これらの特性は、血液の粘度および壁の性質の特色である。例えば、石灰化壁は、低レベルの血管弾性コンプライアンスを含意するであろう、比較的に低伝導性を示すであろう。脂肪病変は、中間伝導性を有するであろう。健康な壁は、比較的に高伝導性を有するであろう。血液および壁組織の測定された電気パラメータをその粘度にマップする、実験的データベースを作成することができる。したがって、狭窄した血管の流体抵抗を取得することができる。
全ての電圧(Va、Vd1、Vd2、およびVd3)および血管抵抗(RS1、RS2、およびRS3)を把握することによって、全ての残りの電気パラメータ(RV1、RV2、IS1、IS2、およびIS3)を解明することが可能となる。回路網が解明されると、種々の治療選択肢の有効性を推定することが可能となる。例えば、RS1に対応する狭窄が治療される場合、RS1の値は、減少するであろう(断面積が増加するであろうため)。これは、ひいては、電流/血流(IS1、IS2、およびIS3)の増加につながり、計算することができる(Vaは、同一のままであって、全ての抵抗が、既知であるため)。
故に、1つ以上の狭窄した病変を有する血管網から等価電気回路網を構成する際に、大動脈圧が、電気回路網の電圧源にマップされてもよい。これは、ゼロ電圧電位と小孔との間に接続される。全関連病変が、血管網内で識別されてもよく、各病変は、次いで、等価電気回路網内の個別の電気抵抗にマップされてもよい。関与動脈の各々の端部における微小血管系は、電気回路網内の個別の抵抗にマップされてもよい。動脈の健康な区画(比較的に低抵抗をもたらす)は、電気短絡に対応し得、抵抗間および電圧源と抵抗との間の電気接続にマップされてもよい。微小血管系における抵抗は、ゼロ圧力(電圧電位)で終了し、等価電気回路網内のゼロボルトにマップされてもよい。病変の治療によって影響を受けないであろう全ての健康な動脈は、電気回路網から省略されてもよい。例えば、LAD動脈が、罹患しておらず、左回旋枝が、主区分および/または分岐内に疾患を有する場合、LADは、電気回路網内に示されないであろう。加えて、大動脈内で測定された圧力は、大動脈から起始する任意の下流経路内で遭遇する第1の病変の近位で測定された圧力と同一となるであろう。
数値実施例を挙げるが、選定される単位および数は、例示的目的にすぎない。圧力単位は、mmHgと同様であって、流量単位は、mL/秒と同様であって、流体抵抗は、mmHgsec/mLと同様である。最大血管拡張時に測定される電圧(圧力)は、例えば、以下のように選択される:
Va=100単位
Vd1=58単位
Vd2=42単位
Vd3=22単位
解剖学的査定に基づいて計算された狭窄抵抗は、以下のようになる:
RS1=6単位
RS2=4単位
RS3=12単位
等価回路網を解明するために、我々は、電気回路網の原理(オームの法則、カーカフの電圧および電流法則)から得られた以下の式を適用する:
IS1=IS2+IS3 (27)
(Va−Vd1)=RS1 *IS1 (28)
(Vd1−Vd2)=RS2 *IS2 (29)
Vd2=RV1*IS2 (30)
(Vd1−Vd3)=RS3 *IS3 (31)
Vd3=RV2 *IS3 (32)
式(27)は、(28)に組み込まれ、以下をもたらすことができる:
(Va−Vd1)=RS1 *(IS2+IS3) (33)
公知のパラメータ値を式(33)および(29)から(32)に代入すると、以下の5つの式が得られる:
42=6*(IS2+IS3) (34)
16=4*IS2 (35)
42=RV1 *IS2 (36)
36=12*IS3 (37)
22=RV2 *IS3 (38)
5つの式が存在し、4つのみ未知であることに留意されたい。これは、過剰決定された式のセットであって、測定精度の程度に一貫性があるであろう。ロバストな推定は、パラメータの最小二乗適合を使用することによって取得されてもよい。このセットの式に対して、解は、以下となる:
IS2=4 (39)
IS3=3 (40)
RV1=10.5 (41)
RV2=7.33 (42)
この場合、総流量は、IS1=(IS2+IS3)=7単位である。
治療され得る3つの狭窄(RS1、RS2、およびRS3に対応する)が存在する。解剖学的査定によって、狭窄前および後の血管の各々の内腔直径が、既知である。臨床査定に基づいて、配備され得る好適なステントの寸法もまた、決定される。これを用いて、治療後の血管の長さに沿った内腔寸法を予測することができる。治療による狭窄した血管の平均直径の%増加の観点から、各狭窄に対する治療の以下の成果を仮定する:
ポアズイユの法則(R=8ηl/(πr
4))を適用すると、治療後の流体抵抗を計算することができる。血管直径の増加の結果、流体抵抗の変化は、以下のようであろう:
R
S1は、6単位から1単位まで減少する。
R
S2は、4単位から1.5単位まで減少する。
R
S3は、12単位から2単位まで減少する。
そのような状況では、3つの狭窄を治療する相対的利点は、明白ではない。2つの分岐に送給する主枝であるため、狭窄1に対応する狭窄を治療することが得策であると考えられる。2つの分岐間において、RS2またはRS3を治療する利点は、明白ではない。
治療後、Vaを除く、全ての電圧および電流が変化するであろう。しかしながら、現時点において、任意の治療計画における全ての抵抗の値が、既知となるであろう。これは、任意の治療計画に対する血流(電流)を決定するために十分である。同一の電気回路網原理に基づいて、以下の式を使用して、各治療計画に対する流量を事前に決定することができる:
Is1=Va/(Rs1+(Rs2+Rv1)*(Rs3+Rv2)/(Rs2+Rv1+Rs3+Rv2)) (43)
Is2=Is1 *(Rs3+Rv2)/(Rs2+Rv1+Rs3+Rv2) (44)
Is3=Is1−Is2 (45)
これらの式を使用して、種々の治療計画の結果が、以下の表に示され、
種々の治療選択肢による3つの血管内の血流の増加の割合は、
適切な治療計画は、手技の利点(血流の増加)とリスクとの間のトレードオフに基づいて選定することができる。例えば、Rs1およびRs3の治療は、全3つの病変を治療するのとほぼ同一の利点をもたらすと考えられる。別の観察として、Rs3単独が治療される場合(計画No.4)、血流の全体的増加につながるが、流量Is2の16%の降下につながる。これは、Is2を搬送する血管が影響されないという事実に反する。Is2に対応する血管が、より重要な面積を担う場合、流量を減少させることは、望ましくないであろう。
直列の2つの狭窄1および2を有する単一血管を図示する、図86Aに示されるような別の実施例を検討する。等価電気モデルは、図86Bに図示されており、そこでは、2つの狭窄は、Rs1およびRs2に対応する。遠位微小血管系の抵抗RV1は、既知ではない。組み合わせ誘導ワイヤを使用して、圧力が、2つの場所で測定される。例示的数値実施例は、以下のように求められる:
Va=100単位
Vd1=78単位
Vd2=45単位
2つの病変にわたるFFR比は、各々、78%および45%である。75%の基準比に基づいて、これらの数は、第2の病変(病変2)のみ、治療される必要があることを示すと考えられる。しかしながら、これは、他方の病変のうちの1つの治療の影響を考慮していない。これは、内腔解剖学的査定が役立つであろう場合である。この査定に基づいて、流体抵抗数を以下とする:
Rs1=5.5
Rs2=8.25
これらの数に基づいて、電気回路網を解明し、流量Isおよび微小血管系の未知の抵抗RV1を求めることができる。これらは、以下となる:
Is=4
RV1=11.25
内腔査定に基づいて、治療によって、Rs1およびRs2に対応する2つの狭窄の内腔直径が、各々、29%および35%増加し得ることが決定される。これは、
Rs1=2.0
Rs2=2.5
のような予測された内腔抵抗変化に対応する。
これらの予想数に基づいて、種々の治療選択肢を分析することができる。これは、以下の表に示される:
表から、R
s2に対応する狭窄のみ、治療されることが分かり(元のFFRによって示されるように)、治療後、他の狭窄が、現時点において、71.4%の圧力降下を有し、治療に適応されることが明らかとなる。この組み合わされた分析は、手技におけるステップの数を減少させることを可能にする。
組み合わされた査定が、治療最適性を向上させるであろう他の可能性として考えられる状況は、狭窄した血管に付随する別の血管を有する狭窄した血管を示す、図87Aに図示される。対応する等価電気回路網は、図87Bに示される。図88Aは、2つの狭窄病変を有する単一の狭窄した血管がまた、分岐血管を有するさらに別の実施例を示す。図88Bは、同様に、等価電気回路網モデルを示す。モデル化された電気回路網と、測定される感知された機能的(圧力)および内腔(CSA)パラメータを使用することによって、種々の治療計画が、前述のように作成されてもよい。
前述の実施例における血管に対して使用される流体モデルは、ポアズイユの法則に基づく、単純なものである。ここでは、流体抵抗は、血流に依存しない。しかしながら、これは、本発明の制限ではない。流量依存抵抗は、依存関数が分析的または実験的に既知である限り、容易に受け入れることができる。未知のパラメータの数は、変化せず、したがって、依然として、等価電気回路網を解明することが可能である。唯一の変化は、解明の方法の変化であろう。電気系は、もはや線形回路網ではないであろう(オームの法則は、有効ではないであろう。すなわち、圧力の2倍は、必ずしも、2倍の流量とはならないであろう)。ニュートン−ラフソン法、レーベンバーグ−マルカート法、最急降下法等の反復法が、回路網を解明するために採用することができる。
圧力の決定の代替として、および/または加えて、直接、流量を測定することが可能である(例えば、流量計を使用して)。この場合、等価電気回路網の電流値は、既知である。これは、同様に、解剖学的査定(抵抗)と組み合わせ、回路網を解明し、故に、種々の治療選択肢の成果を予測することができる。解剖学的および機能的パラメータの原位置測定を行うことができる任意のデバイスが、改善された診断および治療につながる可能性がある。解剖学的パラメータとして、個別の点におけるまたはプロファイルとしての内腔断面積、測定された区画の長さ、血液の特性、および組織の特性が挙げられ得る。機能的パラメータとして、圧力および流量が挙げられれ得る。
概して、圧力センサおよび電極アセンブリの両方を有する誘導ワイヤによって取得される機能的および解剖学的測定を利用する際に、これらのパラメータは、種々の治療計画を決定するために、血管網を等価電気回路網にモデル化するために使用されてもよい。最適治療計画が、次いで、医師によって決定される種々の要因に基づいて、選択されてもよい。図89は、一実施形態において伴われる種々のステップを示す、例示的流れ図を図示する。誘導ワイヤアセンブリを使用して、病変の機能的および解剖学的測定ならびに特定が、行われてもよい640。等価電気回路網が、次いで、モデル化され642、測定されたパラメータに基づいて解明され、電気回路網の未知のパラメータを取得してもよい644。可能性として考えられる治療計画選択肢のリストが、構成されてもよく、各計画は、サブセットの特定の病変の治療に対応してもよい646。治療計画の各々に対する解剖学的成果が、推定されてもよく、同等の修正された電気パラメータが、決定されてもよい648。次いで、各計画に対する電気回路網の各々が、解明され、各治療計画に対する機能的成果を決定してもよく650、全治療計画に対する成果が、医師に提示されてもよい652。治療計画の成果に基づいて、医師は、危険報酬トレードオフに基づいて、治療に対する決定を行い、どの治療計画を続行すべきかを選択してもよい。
感知された機能的および解剖学的測定が行われると、治療計画結果の計算および決定が、本明細書に説明される方法を用いてプログラムされたプロセッサによって、自動的に行われてもよい。代替として、および/または加えて、いくつかの種々の血管構成が、図90Aから90Dに示されるように、そこから医師が選択し得る、ライブラリを形成するように事前にプログラムされてもよい。例えば、図示される種々の構成660、662、664、666は、共通血管構成および病変形成を表してもよい。構成は、例示的目的のために示されており、種々の他の血管構成および/または病変形成が、任意のそのようなライブラリ内に含まれてもよい。選択された1つ以上の特定の構成を用いて、測定されたパラメータが、選択された構成に関して入力され、計算された成果および治療計画を提供してもよい。
本明細書に説明されるように、圧力センサおよび電極アセンブリを有する誘導ワイヤは、1つ以上の血管網内の機能的および解剖学的両方のパラメータを取得するために使用されてもよい。図91A〜91Lに図示されるように、圧力センサアセンブリ530および電極アセンブリ670を有する誘導ワイヤ572は、測定が行われるべき血管領域に近接して、経脈管的に前進させられてもよい。誘導ワイヤが、適所へと血管領域全体を通して移動されるにつれて、電極アセンブリ670による解剖学的測定が、所望に応じて、血管および狭窄した領域を通して横断される間、断続的にまたは継続的ベースで行われてもよい。
誘導ワイヤは、図91Aに示されるように、圧力センサ530が病変の近位に設置され、圧力測定P1pが、内腔寸法の測定同様に行われ得るように、病変1(例えば、病変1の上流)に向かって移動されてもよい。誘導ワイヤが移動されるにつれて、圧力測定および内腔寸法が、図91Bに示されるように、直接、狭窄した領域内およびそれを通して、同様に測定されてもよい。誘導ワイヤは、圧力センサが狭窄した病変1のすぐ遠位に来るまで、さらに前進させられてもよく、そこで、遠位圧力測定P1dが、図91Cに示されるように、次いで、内腔寸法同様に、行われてもよい。誘導ワイヤが、血管を通してさらに前進させられるにつれて、圧力測定および内腔寸法が、図91Dに示されるように、同様に測定されてもよい。
誘導ワイヤが、第2の病変2に近接して前進させられると、病変2の近位の圧力測定、P2pが、図91Eに示されるように、内腔寸法同様に、行われてもよい。誘導ワイヤは、病変2を通して、さらに前進させられてもよく、そこで、圧力測定および内腔寸法が、図91Fに示されるように、測定されてもよい。病変2のすぐ遠位に設置される誘導ワイヤセンサを用いて、遠位圧力P2dが、図91Gに示されるように、内腔寸法同様に測定されてもよく、誘導ワイヤは、図91Hに示されるように、病変2のさらに遠位に前進させられ、圧力および内腔寸法をさらに測定してもよい。
分岐する血管内に存在する第3の病変3に関して、誘導ワイヤは、病変2を通して、近位に引き出され、分岐された血管内に再指向されてもよく、そこで、圧力センサは、図91Iに示されるように、病変3のすぐ近位の圧力P3pおよび内腔測定を取得してもよい。誘導ワイヤは、図91Jに示されるように、再び、狭窄した領域を通して前進させられ、病変3を通して、圧力および内腔測定を取得してもよい。再び、誘導ワイヤは、病変3のすぐ遠位に前進させられてもよく、そこで、図91Kに示されるように、遠位圧力測定P3dおよび内腔寸法が、取得されてもよい。誘導ワイヤは、次いで、病変3の遠位に前進させられてもよく、そこで、最終圧力および内腔測定が、取得されてもよい。機能的および解剖学的測定が取得されると、誘導ワイヤは、患者から引き出されてもよく、または適所に残されてもよく、治療計画が、医師に提示するために、例えば、リアルタイムで、医師に患者を適宜治療するための機会を提供するために計算されてもよい。
可能性として考えられる治療計画の機能的成果の単なる提示に加え、また、臨床決定支援システム(CDSS)を使用して、可能性として考えられる治療計画の中から「最適」治療計画を自動的に決定することも可能である。そのような自動化された決定を行うために必要とされるデータ(知識)は、履歴データならびに実験的に取得された閾値、リスク、およびコストに基づくことができる。さらに、CDSSは、必ずしも、「最適」治療計画を識別するために使用されず、治療計画の各々に対する最適性指標を割り当てることができる。医師は、このデータに基づいて、追従すべき実際の治療計画に関して、より多くの情報に基づいた決定を行うことができる。
本明細書に説明される方法は、同様に、内腔寸法を測定する他の方法とも有効である。例えば、超音波または光が、内腔寸法を決定するために使用されてもよい。内腔生体構造の査定のためのこれらの代替方法は、電極アセンブリに基づく開示される方法と同様に機能する。同様に、圧力を測定する代わりに、流速が、測定されることができ、同一の電気回路網が、既知の電気電圧ではなく、既知の電流に基づいて、解明されることができる。これはまた、同一の予測される治療計画の成果をもたらすであろう(しかしながら、測定固有の不確実性を被る)。
加えて、内腔寸法はまた、X線、定量的冠動脈造影法(QCA)、MRI、CT、またはそれらの組み合わせ等の非侵襲的撮像診断法を用いて推定されることができることに留意されたい。これらの多くは、血管系の内側に測定デバイスを留置することを伴わない。そのような手段によって取得されたデータは、特定の狭窄によってもたらされる抵抗を推定し、前述の同一の方法を用いて、治療計画を取得するために使用することができる。これらの測定方法は全て、開示される発明の範囲下にある。
本発明は、等価電気回路網を使用して、未知の変数を解明し、治療成果を予測する。これは、問題を解決するための唯一の方法ではない。例えば、問題は、圧力、流量、および流体抵抗を使用して、流体動態自体の範疇内で解決することもできる。全てのそのような方法は、同等であって、同一の結果をもたらす。したがって、それらは、本発明の範囲内に完全に網羅される。
好ましい実施形態が、本明細書に図示および説明されたが、そのような実施形態は、一例として提供されるにすぎないことは、当業者に明白となるであろう。ここで、多数の変形例、変更、および代用が、本開示の側面から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。本明細書に説明される本開示の実施形態の種々の代替が、本開示を実践する際に採用され得ることを理解されたい。