JP5911363B2 - 電子写真用シームレスベルトの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は電子写真装置に用いる電子写真用シームレスベルトの製造方法に関する。
電子写真用シームレスベルトは、紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を表面に有することにより耐摩耗性の観点から転写部材の耐久性を向上させることが可能である。このような電子写真用シームレスベルトの製造方法として以下の方法が知られている。
すなわち、特許文献1には、プリフォームをブロー成形して得た電子写真用シームレスベルト基材に紫外線硬化性アクリル樹脂をディップコートし、その後に該紫外線硬化性アクリル樹脂を硬化することでハードコート層を形成する方法が開示されている。
また特許文献2には、ポリイミド樹脂とカーボンブラックからなる遠心成形により得られた電子写真用ベルト基材に対して紫外線硬化性アクリルウレタン樹脂をスプレーコートし、該紫外線硬化性アクリルウレタン樹脂を硬化してハードコート層を形成する方法が開示されている。
特開2010−113128号公報 特開2010−79245号公報
本発明者は、上記特許文献1および特許文献2に記載の方法について検討を重ねた。その結果、ディッピング工程を有する特許文献1に記載の方法は、電子写真用シームレスベルトを浸漬するための装置を用意する必要がある。また、電子写真用シームレスベルトの内周面への紫外線硬化性アクリル樹脂の付着を防ぐための工夫を施す必要があった。
そこで、本発明者は、均一な膜厚の表面層を備えた電子写真用シームレスベルトをより効率よく製造する方法について検討した。
すなわち、本発明者は、プリフォームの表面に、特許文献1に用いられているような、モノマーあるいはオリゴマーからなる溶液からなる液状のエネルギー硬化性樹脂を塗布した後にブロー成型を行うことを検討した。しかしながら、特許文献1に用いられているような、モノマーあるいはオリゴマーからなる溶液からなる液状のエネルギー硬化性樹脂は、溶剤が揮発した後においても、プリフォームの表面において液体の状態を維持しているため、ブロー成型の際にモールドに当該液状のエネルギー硬化性樹脂が付着することがあり、その場合には、ブロー成型用のモールドを洗浄する必要があった。
そこで、本発明の目的は、ハードコート層を有する電子写真用シームレスベルトを効率よく製造することができる方法を提供することにある。
本発明は、熱可塑性樹脂組成物を含む基層と表面層とを有している電子写真用シームレスベルトの製造方法であって、
(1)熱可塑性樹脂を含む、試験管形状のプリフォームの外表面にガラス転移温度を有するエネルギー硬化性の被膜を形成し、次いで、該プリフォームをブロー成型してブローボトルを得る工程と、
(2)該ブローボトルにエネルギー線を照射して該被膜を硬化させて表面層を形成する工程と、
(3)工程(2)によって得た表面層を有するブローボトルからシームレスベルトを切り出す工程とを有することを特徴とするものである。
本発明によれば、ハードコート層を表面層として有する電子写真用シームレスベルトを効率良く製造することが出来る。
本発明に係る電子写真装置の説明図である。 本発明に係る電子写真用シームレスベルトの製造に用いる延伸ブロー成形機の概略図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<熱可塑性樹脂組成物>
基層に用いられる熱可塑性樹脂組成物としては、試験管形状のプリフォームからブロー成形が可能なものであれば、どのような材料の組合せでも好適に使用することができる。主成分である熱可塑性樹脂としては、特に、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素樹脂(PVdF等)等の全ての熱可塑性樹脂、およびそのブレンド樹脂も使用に好適である。熱可塑性樹脂組成物を構成する他の成分としては、イオン導電剤(例えば、高分子イオン系導電剤、界面活性剤)、導電性高分子、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系、リン、硫黄系)、紫外線吸収剤、有機顔料、無機顔料、pH調整剤、架橋剤、相溶化剤、離型剤(例えば、シリコーン系、フッ素系)、カップリング剤、滑剤、絶縁性フィラー(例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、クレー、カオリン、ハイドロタルサイト、シリカ、アルミナ、フェライト、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ニッケル、ガラス粉、石英粉末、ガラス繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、熱硬化性樹脂の微粒子)、導電性フィラー(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、導電性酸化チタン、導電性酸化錫、導電性マイカ)、イオン性液体を例示することができる。これらを単独で、あるいは2種類以上組合せて用いることも可能である。
<エネルギー硬化性の被膜>
本発明に係る、プリフォームの表面に形成するエネルギー硬化性の被膜は、ガラス転移温度を有することが必要である。すなわち、カラス転移温度を有するエネルギー硬化性の被膜は、架橋前の状態であっても樹脂化が進んでいるため、ブロー成型用のモールドと接触した場合にも、モールドに付着しにくい。
このような被膜をプリフォーム表面に形成する方法としては、ガラス転移温度を有する樹脂を溶媒等に溶解させた塗料の膜をプリフォームの表面に塗布し、当該膜から溶媒を除去する方法が挙げられる。
被膜がガラス転移温度を有することは、例えば、被膜の粘弾性(レオロジー)特性によるピークの観測や、被膜のDSC(示差熱量走査)測定により得られるDSCカーブの変曲点の存在によって確認することができる。
エネルギー硬化性樹脂を硬化させるエネルギーとしては、例えば、光や放射線、熱が挙げられる。前記エネルギー硬化性樹脂において重合開始種を発生させうるエネルギーを付与することができる活性放射線であれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線などを包含するものである。なかでも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。
使用するエネルギー硬化性樹脂はガラス転移温度を有する被膜を形成できる物性を有していることが必要である。ガラス転移温度を有するかどうかは一般的には上記樹脂の分子量によってある程度決定できる。樹脂の分子量が小さすぎると、ガラス転移温度を有する被膜が形成できず、分子量が大きすぎると、ゲル化するなどして、溶媒に溶解しなくなる為、好ましくない。
使用するエネルギー硬化性樹脂は溶媒に溶解させることが必要であり、好適な溶媒は、揮発性の観点から有機溶媒が好ましく、例えば、メチルエチルケトンやトルエン、メチルイソブチルケトンが好ましい。これらを単独で、あるいは2種類以上組合せて用いることも可能である。エネルギー硬化性樹脂と有機溶媒の質量比はプリフォームに均一に被膜が形成されれば特に制限はないが、エネルギー硬化性樹脂と有機溶媒の質量比が3:97〜90:10となることが好ましい。
使用するエネルギー硬化性樹脂としては、アクリル基、ビニル基、エポキシ基等の重合性官能基を有していることが好適である。エネルギー硬化性樹脂の中でも、硬化装置の簡便さなどの観点から、紫外線硬化性アクリル樹脂が好ましい。またこれらを単独で、あるいは2種類以上組合せて用いることも可能である。
すなわち、本発明に係る被膜の形成に用いる樹脂としては、上記したように、アクリル基、ビニル基、エポキシ基等の重合性官能基を有し、プリフォームを溶解しない溶媒に対する可溶性を備えており、かつ、ガラス転移温度を有していることが必要である。
さらに、本発明にかかる、ガラス転移温度を有する被膜は、プリフォームをブロー成型することによって形成されるブローボトルの表面においても、クラックを生じることなく被膜として存在している必要がある。すなわち、当該被膜は、ブロー成型によるプリフォームの伸展に十分に追従できるだけの柔軟性を有している必要がある。
被膜にこのような柔軟性を与えるためには、被膜の形成に用いる、ガラス転移温度を有する樹脂の重量平均分子量を適宜選択することが好ましい。
例えば、プリフォームをブロー成型して、外径がプリフォーム外径の4.5倍のブローボトルを成形する場合においては、当該プリフォームの表面の被膜の形成に用いる樹脂としては、(ユニディックRC29−129(商品名、DIC株式会社製、重量平均分子量=30000)や、(アクリット (KX−012C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製、重量平均分子量=25000)などを用いることができる。
そして、プリフォームの外径に対するブローボトルの外径の比率を、より大きくする場合においては、アクリル基、ビニル基、エポキシ基等の重合性官能基を有し、プリフォームを溶解しない溶媒に対する可溶性を備えており、かつ、ガラス転移温度を有している、という制限の範囲内において、被膜にブロー成型の際のプリフォームの膨張に十分に追従性を与えるために、重量平均分子量を低めに調整することが好ましい。
エネルギー硬化性樹脂の被膜を構成する成分としてはエネルギー硬化性樹脂の他に種々の添加剤を含んでいてもよく、例えば、重合開始剤、イオン導電剤(例えば、高分子イオン系導電剤、界面活性剤)、導電性高分子、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系、リン、硫黄系)、紫外線吸収剤、有機顔料、無機顔料、pH調整剤、架橋剤、相溶化剤、離型剤(例えば、シリコーン系、フッ素系)、カップリング剤、滑剤、絶縁性フィラー(例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、クレー、カオリン、ハイドロタルサイト、シリカ、アルミナ、フェライト、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ニッケル、ガラス粉、石英粉末、ガラス繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、熱硬化性樹脂の微粒子)、導電性フィラー(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、導電性酸化チタン、導電性酸化錫、導電性マイカ)、イオン性液体を例示することができる。これらを単独で、あるいは2種類以上組合せて用いることも可能である。
<製造方法>
本発明に係る電子写真用シームレスベルトの製造方法は3つの工程を有することを特徴とする。すなわち、
(1)熱可塑性樹脂を含む、試験管形状のプリフォームの外表面にガラス転移温度を有するエネルギー硬化性の被膜を形成し、次いで、該プリフォームをブロー成型してブローボトルを得る工程と、
(2)該ブローボトルにエネルギー線を照射して該被膜を硬化させて表面層を形成する工程と、
(3)工程(2)によって得た表面層を有するブローボトルからシームレスベルトを切り出す工程とを有することを特徴としている製造方法である。
熱可塑性樹脂を含む、試験管形状のプリフォームを作成する方法としては、射出成形による方法が一般的であり、後述する二軸延伸が可能な程度に非晶質な状態を該プリフォームに与えることが必要である。かかるプリフォームは熱可塑性樹脂組成物をプリフォーム形状の金型内に入れて射出成形により製造する際の金型温度を調整することにより得ることができる。具体的には、金型温度を熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度よりも十分に低い温度に設定して金型内で熱可塑性樹脂組成物を急冷させる。二軸延伸可能な程度に非晶質な状態のプリフォームを得る観点から、射出成形のシリンダ温度は熱可塑性樹脂組成物の融点よりも20〜50℃程度高い温度に設定することが好ましく、金型温度としては熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度よりも20〜100℃程度低い温度に設定することが好ましい。
次にガラス転移温度を有するエネルギー硬化性の被膜の形成方法について説明する。有機溶媒などに溶解されたエネルギー硬化性樹脂溶液を公知の方法でプリフォームの外表面に塗布したのち、有機溶媒を揮発させる為に恒温槽などに放置させるのが一般的である。 プリフォーム外表面への塗布方法としては、例えば、スプレー塗布やディッピング塗布、リングコート塗布が挙げられるが、簡便さの観点からディッピング塗布が好ましい。
上記のエネルギー硬化性の被膜を外表面に形成したプリフォームのブロー成形方法について説明する。プリフォームに被膜を塗布する観点からコールドパリソン法によるブロー成型が好ましい。コールドパリソン法とは射出成形法によって得られたプリフォームの胴壁部を主に再加熱し、プリフォームを構成する熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度以上融点以下でブロー用金型内で延伸棒を用いてプリフォームを、その軸方向に延伸させると共に、該プリフォームの内部に気体を吹き込んで径方向に延伸させ、ブローボトルを得る方法である。本発明による方法ではエネルギー硬化性樹脂が被膜として形成されている為、ブロー成型してもブロー金型内面に該樹脂がはりついたりすることによる型汚染が生じない。
上記の方法により得られたブローボトルに追随する形でエネルギー硬化性の被膜を形成することができる。該ブローボトルにエネルギーを照射することでエネルギー硬化性被膜を硬化することができる。
更に公知の方法を用いて、形状を制御する為に、ブローボトルを電鋳に被せ、ブローボトルにエアーなどの圧力を印加しながら、ブローボトルを構成する熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度以上に加熱後、常温、常圧まで戻して、ブローボトルを取出すという工程などを加えてもよい。
上記の方法により得られた表面層を有するブローボトルから胴部分を所定の幅に切断して本発明に係る電子写真用シームレスベルトを得ることができる。
電子写真用シームレスベルトの厚さとしては、10μm以上500μm以下、特には、30μm以上150μm以下が一般的である。また電子写真用シームレスベルトの具体的な体積固有抵抗率の目安としては、電子写真用シームレスベルトを中間転写ベルトとして用いる場合には、1×10Ωcm以上1×1014Ωcm以下である。
<電子写真装置>
本発明に係る電子写真装置について説明する。図1はフルカラー電子写真装置の断面図である。図1中、中間転写ベルト5として本発明に係る円筒状の電子写真用シームレスベルトを使用している。電子写真感光体1は第1の画像担持体として繰り返し使用される回転ドラム型の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と記す)であり、矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。感光ドラム1は回転過程で、一次帯電器2により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。次いで露光手段による画像露光3を受けることにより目的のカラー画像の第1色成分像(例えば、イエロー色成分像)に対応した静電潜像が形成される。なお、前記露光手段としては、カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系等が挙げられる。次いで、その静電潜像が第1の現像器(イエロー色現像器41)により第1色であるイエロートナーYにより現像される。この時第2〜第4の現像器(マゼンタ色現像器42、シアン色現像器43、ブラック色現像器44)の各現像器は作動がオフになっていて感光ドラム1には作用せず、上記第1色のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。電子写真用ベルト5は矢印方向に感光ドラム1と同じ周速度をもって回転駆動されている。感光ドラム1上のイエロートナー画像は、感光ドラム1と中間転写ベルト5とのニップ部を通過時に、対向ローラ6から電子写真用ベルト5に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写ベルト5の外周面に転写される(1次転写)。電子写真用ベルト5に第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光ドラム1の表面は、クリーニング装置13により清掃される。以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次電子写真用(中間転写)ベルト5上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。二次転写ローラ7は、駆動ローラ8に対応し平行に軸受させて電子写真用ベルト5の下面部に離間可能な状態に配設されている。
感光ドラム1から電子写真用ベルト5への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程の際に、二次転写ローラ7は電子写真用ベルト5から離間することも可能である。電子写真用ベルト5上に転写された合成カラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、次のように行われる。まず、二次転写ローラ7が電子写真用ベルト5に当接されると共に、給紙ローラ11から転写材ガイド10を通って、電子写真用ベルト5と二次転写ローラ7との当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。そして、2次転写バイアスが電源31から二次転写ローラ7に印加される。この2次転写バイアスにより電子写真用(中間転写)ベルト5から第2の画像担持体である転写材Pへ合成カラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着器15へ導入され加熱定着される。転写材Pへの画像転写終了後、電子写真用ベルト5にはクリーニング装置の中間転写ベルトクリーニングローラ9が当接され、感光ドラム1とは逆極性のバイアスを印加される。これにより、転写材Pに転写されずに電子写真用ベルト5上に残留しているトナー(転写残トナー)に感光ドラム1と逆極性の電荷が付与される。33はバイアス電源である。前記転写残トナーは、感光ドラム1とのニップ部およびその近傍において感光ドラム1に静電的に転写されることにより、電子写真用ベルト5がクリーニングされる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、実施例および比較例では電子写真用ベルトのうちの電子写真用シームレスベルトを作製し、実施例および比較例に用いた分析および物性の測定は以下のように行った。
(特性値の測定法、評価法)
実施例および比較例で作製した電子写真用シームレスベルトの特性値の測定方法および評価方法は次のとおりである。
<被膜のガラス転移温度の測定>
板ガラス上に、プリフォーム表面に被膜を形成するための塗料を塗布した後、70℃の乾燥炉で10分間乾燥させて被膜を形成した。次いで、板ガラス上から、被膜を剥離し、当該被膜から、10mgのサンプルを切り出した。このサンプルを用いて以下の条件に従ってDSC曲線を計測した。そして、得られたDSC曲線におけるガラス転移を示す変曲点の中心の温度をガラス転移温度とした。また、DSC曲線において、ガラス転移温度が観測されないものは「なし」と表5に明記した。
使用装置:示差走査熱量分析計(商品名:DSC823、メトラートレド(株)製)、
昇温速度:10℃/分
測定開始温度:−30℃
測定終了温度:300℃
モジュレーション温度振幅:±1℃、
モジュレーション周期:15秒。
<プリフォームの表面層の厚み測定方法>
プリフォームの表面層の厚みはプリフォームの厚み断面を超音波カッターで切削し、マイクロメータを用いて、プリフォームと表面層を合せた厚みからプリフォームの厚みを引き算することで求めた。
<電子写真用シームレスベルトの表面層の厚み測定方法>
電子写真用シームレスベルトの表面層の厚みはベルトの厚み断面をミクロトーム等で切削し、断面を電界放射走査型電子顕微鏡(FE−SEM)XL30(商品名:FEIテクノロジー(株)製)で観察することで算出した。周方向に3点、軸方向に2点の計6点(=3点×2点)の位置でのシームレスベルトの表面層の厚みを測定し、平均値と最大値と最小値を求めた。
<電子写真用シームレスベルトの耐久性確認方法>
電子写真用シームレスベルトを図1で示されるような装置構造を有するレーザビームプリンタ(商品名:LBP−5200、キヤノン(株)製)の中間転写ユニットに中間転写ベルトとして装着した。100000枚通紙した後に温度23℃、50%RHの環境下で、155g/mのA4サイズのグロス紙にシアンとマゼンタの2色を使用して紫のベタ画像をプリントした。この画像を目視で観察して、シームレスベルトの耐久性に起因するスジの有無を確認し、以下の基準で評価した。
A : 出力した画像にスジもしくはベタ状の濃度ムラがないもの
B : 出力した画像にスジもしくはベタ状の濃度ムラがあるもの
〔実施例1〕
・プリフォームの作製;
二軸押出し機(商品名:TEX30α、日本製鋼所(株)社製)を用いて、表1に記載の配合にて熱熔融混練して熱可塑性樹脂組成物を調製した。
Figure 0005911363
熱熔融混練温度は260℃以上、280℃以下の範囲内となるように調整し、熱熔融混練時間はおよそ3〜5分とした。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、温度140℃で6時間乾燥させた。次いで、射出成形装置(商品名:SE180D、住友重機械工業(株)製)に、乾燥させたペレット状の熱可塑性樹脂組成物を投入した。そして、シリンダ設定温度を295℃として、温度が30℃に温調された金型内に射出成形してプリフォームを作成した。得られたプリフォームは、外径が20mm、内径が18mm、長さが150mmの試験管形状を有しているものであった。
・被膜形成用の塗料の調製
表2に記載の材料を混合して被膜形成用の塗料を調製した。
Figure 0005911363
・被膜の形成;
上記で調製した塗料を満たした金属容器に、上記で作製したプリフォームを、その根元近傍まで浸漬させた。その後、ポータブルディップコーター(商品名:DT−0001、SDI株式会社製)を使って、5cm/秒の速度でプリフォームを引き上げた。溶媒を揮発させる為、温度70℃にした乾燥炉に10分間静置した。次いで、乾燥炉からプリフォームを取り出した。プリフォームの温度が常温になった後、当該プリフォームから断片を切り出し、紫外線硬化性樹脂からなる被膜の厚みを測定したところ2μmであった。
次に、プリフォーム104の外壁および内壁を加熱するための非接触型のヒータ(不図示)を備えた加熱装置107内にプリフォーム104を配置し、加熱ヒータで、プリフォームの外表面温度が120℃となるように加熱した。次いで、上記のプリフォームを図2に示した二軸延伸装置を用いて二軸延伸した。具体的には、加熱したプリフォーム104を、金型温度を30℃に保ったブロー金型108内に配置し、延伸棒109を用いて軸方向に延伸した。同時に、温度23℃に温調されたエアーをブローエアー注入部分110からプリフォーム内に導入してプリフォーム104を径方向に4.5倍に延伸した。こうして、二軸延伸されたボトル状成形物112を得た。
このボトル状成形物112にエアー圧を0.01MPa印加しながら、紫外線照射装置(商品名:UE06/81−3、アイグラフィック(株)製、積算光量:1000mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、該表面層を硬化させた。
次いで、硬化された表面層を有するボトル状成形物112の胴部を切断してシームレスな導電性ベルトを得た。この導電性ベルトの厚さは70μmであった。紫外線硬化性樹脂からなる被膜の厚みは6点の平均が500nm、最大値が560nm、最小値が450nmであった。またこのシームレスベルトの評価結果を表5に示す。
〔実施例2〕
エネルギー硬化性の被膜として表3に示す配合比のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真用のシームレスベルトを得た。このシームレスベルトを実施例1と同様にして評価した。評価結果を表5に示す。
Figure 0005911363
〔比較例1〕
プリフォームの外表面にエネルギー硬化性の被膜を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして電子写真用の基層のみのシームレスベルトを得た。このシームレスベルトを実施例1と同様にして評価した。評価結果を表5に示す。
〔比較例2〕
エネルギー硬化性の被膜として表4に示す配合比のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真用のシームレスベルトを得た。
但し、ガラス転移温度を持たないエネルギー硬化性樹脂を用いた為に、ブロー金型に一部の樹脂が付着した為、ブロー金型を汚染するとともに、ベルトの表面層の膜厚ムラが非常に大きなものになった。このシームレスベルトを実施例1と同様にして評価した。評価結果を表5に示す。
Figure 0005911363
〔比較例3〕
比較例1で得られたシームレスベルトを表2の通り配合した紫外線硬化性樹脂の塗布液を満たした金属容器中に浸漬させたあと、ポータブルディップコーター(商品名:DT−0001、SDI株式会社製)を使って、5cm/秒の速度でシームレスベルトを引き上げた。溶媒を揮発させる為、70℃にした乾燥炉に10分放置した後、乾燥炉からシームレスベルトを取出し、常温になるまで放置した。シームレスベルトに、紫外線照射装置(商品名:UE06/81−3、アイグラフィック(株)製、積算光量:1000mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、該表面層を硬化させた。このシームレスベルトを実施例1と同様にして評価した。評価結果を表5に示す。
〔比較例4〕
比較例1で得られたシームレスベルトをローラで2軸に張架し、片方のローラを15mm/secで駆動させながら、表2の通り配合した紫外線硬化性樹脂溶液を100mm/secでシームレスベルトの軸方向に往復運動するスプレーガンを用い、0.2cc/secでスプレー塗工することで、なるべく均一に塗布した。溶媒を揮発させる為、70℃にした乾燥炉に10分放置した後、乾燥炉からシームレスベルトを取出し、常温になるまで放置した。シームレスベルトに、紫外線照射装置(商品名:UE06/81−3、アイグラフィック(株)製、積算光量:1000mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、該表面層を硬化させた。このシームレスベルトを実施例1と同様にして評価した。評価結果を表5に示す。
Figure 0005911363
比較例3に係るシームレスベルトの場合、ベルト自身をディップコートする場合、大面積である為、特にベルトの両端部での膜厚ムラの制御が難しく、ベルトの上部より下部の方が厚くなる傾向があった。ベルトの下部の膜厚を薄くする方向で、膜厚を揃えようと引き上げ速度を速くしていくと、速くした影響で周方向の膜厚ムラの制御が難しくなり、ベルトの表面層の膜厚ムラのレベルは十分とはいえなかった。比較例4に係るシームレスベルトの場合、スプレー塗工しながらスプレーガンが往復する過程で、同じ場所に2度塗布するということが避けられない為、ベルトの表面層の膜厚ムラのレベルは十分とはいえなかった。
上記実施例1、2及び比較例1〜4に係るシームレスベルトの耐久性評価試験の前後のベルトの表面を光学顕微鏡で200倍にて観察した。実施例1および2に係るシームレスベルトは、比較例1から4に係るシームレスベルトと比較して、耐久後の傷つき性が大幅に改善されていた。表面層の局所的な膜厚ムラが傷つき性と深く関係しており、ひいては画像品位に影響を与えているものと考えられる。
1 感光ドラム
2 一次帯電器
3 画像露光
5 中間転写ベルト
6 一次転写対向ローラ
7 二次転写ローラ
8 駆動ローラ
9 中間転写ベルトクリーニングローラ
10 転写材ガイド
11 給紙ローラ
13 クリーニング装置
15 定着器
30、31、33 電源

Claims (3)

  1. 熱可塑性樹脂組成物を含む基層と表面層とを有している電子写真用シームレスベルトの製造方法であって、
    (1)熱可塑性樹脂を含む、試験管形状のプリフォームの外表面にガラス転移温度を有するエネルギー硬化性の被膜を形成し、次いで、該プリフォームをブロー成型してブローボトルを得る工程と、
    (2)該ブローボトルにエネルギー線を照射して該被膜を硬化させて表面層を形成する工程と、
    (3)工程(2)によって得た表面層を有するブローボトルからシームレスベルトを切り出す工程とを有することを特徴とする電子写真用シームレスベルトの製造方法。
  2. 前記工程(1)が、ガラス転移温度を有する、エネルギー硬化性の樹脂を溶媒に溶解させた塗料の膜を、該プリフォームの表面に形成し、該膜から該溶媒を除去することによって該被膜をプリフォームの表面に形成する工程を含む請求項1に記載の電子写真用シームレスベルトの製造方法。
  3. 前記ガラス転移温度を有する、エネルギー硬化性の樹脂が、紫外線硬化性アクリル樹脂である請求項2に記載の電子写真用シームレスベルトの製造方法。
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