JP5906983B2 - 圧縮自己着火式エンジンおよびその制御方法 - Google Patents

圧縮自己着火式エンジンおよびその制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、幾何学的圧縮比が14以上に設定された気筒を有するとともに、気筒内に噴射される燃料を空気と混合した後に自着火させるHCCI燃焼が可能な圧縮自己着火式エンジン、およびその制御方法に関する。
エンジンの燃焼形式として、一般に、予混合燃焼と拡散燃焼の2種類がよく知られている。予混合燃焼とは、燃料と空気とを予め混合して得た混合気(予混合気)を火花点火により燃焼させる燃焼形式であり、ガソリンを燃料として用いるガソリンエンジンに代表的に採用されている。拡散燃焼とは、圧縮された高温・高圧の空気に燃料を供給することで燃料と空気とを拡散、混合しながら燃焼させる燃焼形式であり、軽油を燃料として用いるディーゼルエンジンに代表的に採用されている。
これに対し、近年、予混合燃焼でも拡散燃焼でもない新しい燃焼形式として、予混合圧縮着火燃焼を実用化する研究が進められている。予混合圧縮着火燃焼とは、燃料と空気とを予め混合して得た混合気(予混合気)を、火花点火ではなく圧縮によって自着火させる燃焼形式である。以下では、このような予混合圧縮着火燃焼のことを、HCCI燃焼(Homogeneous-Charge Compression Ignition Combustion)と称する。
HCCI燃焼は、エンジンの気筒内で混合気が同時多発的に燃焼する形態であるため、火花点火を用いた従来の予混合燃焼と比べて、空燃比リーンな条件でも燃焼期間を短くでき、熱効率に優れた安定した燃焼が得られるといった利点がある。その反面、ノッキングも失火も起こさない適正な燃焼を成立させるための条件の範囲が狭く、このことが、HCCI燃焼を車載用エンジンに適用することを困難にしていた。
このような問題に取り組んだ従来技術として、例えば下記特許文献1が知られている。この特許文献1に開示されたエンジンは、気筒内にプラズマを放出可能な放電部を備えており、この放電部への印加電圧および印加時間が制御されることで、プラズマによる投入エネルギーがエンジンの運転状態に応じて制御されるようになっている。
特開2007−309160号公報
上記特許文献1の技術によれば、プラズマによる投入エネルギーに基づいて、ラジカル(活性種)を含む活性化された混合気の分布が制御されるので、従来よりも幅広い運転領域で適正なHCCI燃焼を行わせることができると考えられる。具体的に、同文献では、エンジン回転速度が高いかまたはエンジン負荷が低い場合に、プラズマによる投入エネルギーを相対的に増やすようにしている。すなわち、エンジン回転速度が高いかまたはエンジン負荷が低いと、混合気の着火性が悪化することから、それを混合気の活性化によって補うことにより、HCCI燃焼が可能な運転領域を拡大しようというものである。
HCCI燃焼は、混合気を火花点火によって強制的に燃焼させるのではなく、混合気を高温・高圧の環境下で自着火させて燃焼させる形態であるため、着火時期を正確に制御することが燃費等の観点から重要である。また、HCCI燃焼は、混合気が気筒内で同時多発的に燃焼する形態であるため、燃焼速度(すなわち燃焼期間)を正確に制御することが騒音やエミッション等の観点から重要である。具体的に、着火時期は、燃費の良いTDC近傍に制御し、燃焼速度は、急激な圧力上昇(dP/dθ)が起こらないように制御することが望ましい。
しかしながら、負荷が高くなると、自着火後の燃焼速度が過度に速くなって筒内圧力が急激に上昇し、大きな振動や騒音がエンジンで発生するおそれがある。このような燃焼騒音の発生は、NVH(noise, vibration, harshness)の低下につながり、特にエンジンが車載用エンジンである場合、車両の商品性が損なわれてしまう。また、筒内圧力の急激な上昇はエンジンの耐久性を損なう一因にもなる。一方、このような事態を防ごうとすると、HCCI燃焼の運転領域を狭い範囲に絞らざるを得ず、エンジンの熱効率を充分に高めることができなくなってしまう。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、燃料を空気と混合した後に自着火させる圧縮自己着火式エンジンにおいて、振動や騒音の少ないHCCI燃焼をより幅広い運転領域で実現することにより、高い熱効率と優れたNVH性能とを両立させて、適正なHCCI燃焼が可能なエンジンの運転領域を広げることを目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、幾何学的圧縮比が14以上に設定された気筒を有するとともに、気筒内に噴射される燃料を空気と混合した後に自着火させるHCCI燃焼が可能な圧縮自己着火式エンジンであって、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、気筒内にオゾンを供給するオゾン供給手段と、上記燃料噴射手段および上記オゾン供給手段を駆動して上記気筒内への燃料の噴射およびオゾンの供給を制御する制御手段とを備え、上記制御手段は、気筒内に供給されたオゾンが圧縮行程の進行により分解されるのに伴い生成される活性種が気筒内に残存しているときに燃料が噴射される前段噴射と、その後の燃料の低温酸化反応に伴い消費される上記活性種の気筒内の濃度が当該活性種が実質的に消失したといえる所定値未満になったときに燃料が噴射される後段噴射とが行われるように、上記燃料噴射手段および上記オゾン供給手段を駆動するものであることを特徴とする(請求項1)。
本発明では、オゾンから生成した活性種の気筒内濃度が所定値以上のときに噴射された燃料(前段噴射の燃料)は、上記活性種との反応により活性化され、着火限界温度が低下する結果、筒内温度がまだ相対的に低い段階で自着火して燃焼する一方で、上記活性種の気筒内濃度が所定値未満のときに噴射された燃料(後段噴射の燃料)は、上記活性種との反応が起こらず、着火限界温度が低下しない結果、筒内温度が相対的に高くなった段階で自着火して燃焼する。そのため、例えばガソリンと軽油のように複数種類の異なる性状の燃料を混合したマルチフューエルを用いた場合のように、気筒内に噴射された燃料が二段階に分かれて自着火して燃焼することになり、一度に燃料の全量が自着火して燃焼する場合に比べて、全体の燃焼が緩慢になって、急激な圧力上昇が抑制される。そのため、大きな燃焼エネルギーが短期間で発生することを回避でき、燃焼に伴う振動や騒音のレベルを効果的に低減することができる。これにより、大きな振動や騒音を伴わない適正なHCCI燃焼が可能な運転領域を大幅に拡大することができ、エンジンの熱効率を効果的に向上させることができる。
なお、上記活性種は、上記前段噴射の燃料の低温酸化反応により消費されるので、これにより、上記活性種の気筒内濃度が所定値以上の状態から所定値未満の状態に自然に移行する。
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記前段噴射と上記後段噴射とが連続して行われるように、上記燃料噴射手段を駆動するものである(請求項2)。
この構成によれば、前段噴射と後段噴射とが連続して行われるので、気筒内への燃料の噴射動作が1回で済む。
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記前段噴射と上記後段噴射とが所定の時間的間隔を空けて行われるように、上記燃料噴射手段を駆動するものである(請求項3)。
この構成によれば、前段噴射と後段噴射とが所定の時間的間隔を空けて行われるので、確実に、燃料の一部を上記活性種と反応して相対的に早い段階で自着火燃焼する着火性の良い燃料とし、残りの部分を上記活性種と反応せずに相対的に遅い段階で自着火燃焼する着火性の悪い燃料とすることができる。
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、エンジン負荷が高いほど燃料噴射量の総量に占める上記後段噴射の燃料噴射量の比率が増大するように、上記オゾン供給手段を駆動するものである(請求項4)。
この構成によれば、高負荷域で燃料噴射量が増加するときは、上記活性種と反応せずに着火性に劣る燃料の比率が増大するから、燃焼がより緩慢となり、たとえ燃料噴射量が増加しても、過度な圧力上昇が抑制される。
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、エンジンの運転状態に基づいて、上記燃料噴射手段から噴射すべき燃料の量および噴射時期と、混合気の着火時期および燃焼期間を規定する目標熱発生パターンとを決定し、その結果を用いた演算処理により、上記オゾン供給手段から供給すべきオゾンの量を決定するものである(請求項5)。
このように、目標とする熱発生パターン(着火時期、燃焼期間)を予め定めておき、そのパターンに沿った燃焼が起きるようにオゾンの供給量を演算により決定した場合には、運転状態に応じて常に適正な量のオゾンを供給することができる。そのため、前段噴射と後段噴射とが確実に行われ、失火を伴わず大きな振動や騒音も伴わない適正なHCCI燃焼を広範な運転領域で確実に実行させることができる。
また、本発明は、幾何学的圧縮比が14以上に設定された気筒と、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、気筒内にオゾンを供給するオゾン供給手段とを有するとともに、気筒内に供給される燃料を空気と混合した後に自着火させるHCCI燃焼が可能な圧縮自己着火式エンジンを制御する方法であって、エンジンの運転状態に基づいて、上記燃料噴射手段から噴射すべき燃料の量および噴射時期を決定する第1のステップと、エンジンの運転状態に基づいて、混合気の着火時期および燃焼期間を規定する目標熱発生パターンを決定する第2のステップと、上記第1のステップで決定された燃料の量および噴射時期と、上記第2のステップで決定された目標熱発生パターンとを用いた演算処理により、気筒内に供給されたオゾンが圧縮行程の進行により分解されるのに伴い生成される活性種が気筒内に残存しているときに燃料が噴射される前段噴射と、その後の燃料の低温酸化反応に伴い消費される上記活性種の気筒内の濃度が当該活性種が実質的に消失したといえる所定値未満になったときに燃料が噴射される後段噴射とが行われるように、上記オゾン供給手段から供給すべきオゾンの量を決定する第3のステップとを含むことを特徴とする(請求項6)。
本発明によれば、上述した圧縮自己着火式エンジンの発明と同様の作用効果を奏することができる。
以上説明したように、本発明によれば、燃料を空気と混合した後に自着火させる圧縮自己着火式エンジンにおいて、燃焼の緩慢化により、振動や騒音の少ないHCCI燃焼をより幅広い運転領域で実現することができ、高い熱効率と優れたNVH性能とを両立させることができる。
本発明の一実施形態にかかるエンジンの全体構成を示す図である。 オゾンを供給した場合の混合気の着火遅れ時間の温度変化と、オゾンを供給しなかった場合の混合気の着火遅れ時間の温度変化とを比較して示す図である。 HCCI燃焼の進行と活性種の消費との関係を模式的に示す図である。 燃料噴射を活性種の存在下で行う前段噴射と活性種の消失後に行う後段噴射とを分割して行った場合のHCCI燃焼の進行を示す図である。 図4に示したHCCI燃焼の進行に伴う筒内温度の変化を示す図である。 上記エンジンのECUが行う処理の手順を示すフローチャートである。 燃料噴射を活性種の存在下で行う前段噴射と活性種の消失後に行う後段噴射とを連続して行った場合のHCCI燃焼の進行を示す図である。 燃料噴射を活性種の存在下のみで行った場合のHCCI燃焼の進行を示す図7と類似の図である。 図7に示したHCCI燃焼よりも燃料噴射量を増加した場合のHCCI燃焼の進行を示す図7と類似の図である。
以下、本発明の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるエンジンの全体構成を示す図である。本図に示されるエンジンは、燃料を空気と混合した後に自着火させるHCCI燃焼が可能な圧縮自己着火式エンジンであり、走行用の動力源として車両に搭載されている。このエンジンは、内部に気筒1が形成されたシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上面に設けられたシリンダヘッド3と、シリンダブロック2の気筒1に往復摺動可能に挿入されたピストン4とを有している。
上記ピストン4は、エンジンの出力軸であるクランク軸7とコネクティングロッド6を介して連結されている。ピストン4の上方には燃焼室が区画形成されており、この燃焼室で行われる燃焼(後述するインジェクタ10から噴射される燃料のHCCI燃焼)のエネルギーにより、上記ピストン4が気筒1内で往復運動(上下運動)するとともに、これに伴い上記クランク軸7が中心軸回りに回転するようになっている。
上記シリンダブロック2には、上記クランク軸7の回転速度をエンジンの回転速度として検出するエンジン速度センサSW1と、シリンダブロック2内に設けられた図略のウォータージャケット内を流通する冷却水の温度(エンジン水温)を検出するエンジン水温センサSW3とが設けられている。
上記シリンダヘッド3には、気筒1内に燃料を噴射するためのインジェクタ10が設けられている。インジェクタ10は、その先端部がピストン4の上面を臨むように設けられており、図外の燃料供給管から供給される燃料を先端部から噴射することにより、気筒1内に燃料を噴射する。すなわち、インジェクタ10は、本発明にかかる燃料噴射手段として機能するものである。なお、インジェクタ10から噴射される燃料は、HCCI燃焼が可能な燃料であればその種類を問わないが、当実施形態では、ガソリンもしくはガソリンを主成分とする燃料(例えばガソリンにエタノールを添加したもの)や軽油等が好ましく用いられる。
上記エンジンの出力トルクは、車両に設けられたアクセルペダル25によって制御される。すなわち、このアクセルペダル25の開度(踏み込み量)に応じて、上記インジェクタ10からの燃料の噴射量が調節され、それによってエンジンの出力トルクが制御される。また、アクセルペダル25には、その開度(アクセル開度)を検出するためのアクセル開度センサSW2が設けられている。
上記シリンダヘッド3には、吸気ポート12および排気ポート13と、各ポート12,13を開閉する吸気弁14および排気弁15とが設けられている。吸気弁14および排気弁15は、シリンダヘッド3に配設された一対のカムシャフト等を含む動弁機構(図示省略)により、クランク軸7の回転に連動して開閉駆動される。
上記吸気ポート12には、気筒1内に吸入空気(新気)を導入するための吸気通路18が接続されており、上記排気ポート13には、気筒1で生成された排気ガス(燃焼ガス)を外部に排出するための排気通路19が接続されている。
上記吸気通路18には、吸気通路18を通過する空気の流量、つまり吸入空気量を検出するためのエアフローセンサSW4が設けられている。また、吸気通路18の入口部付近のエンジンルーム内には、外気温を検出するための外気温センサSW5が設けられている。
ここで、当実施形態のエンジンでは、HCCI燃焼を実現するために、気筒1の幾何学的圧縮比が14以上30以下という高い値に設定されている。なお、幾何学的圧縮比とは、ピストン4が下死点にあるときの燃焼室容積と、ピストン4が上死点にあるときの燃焼室容積との比である。
また、HCCI燃焼が行われる当実施形態のエンジンは、次のような燃焼サイクルによって運転される。まず、吸気行程において、吸気弁14が開かれて、上記吸気通路18からの吸入空気が吸気ポート12を通じて気筒1の内部(燃焼室)に導入される。次いで、圧縮行程において、インジェクタ10から燃料が噴射されて、噴射された燃料が気筒1内の空気と混合されて混合気が形成されるとともに、この混合気がピストン4の上昇によって圧縮され、高温・高圧化する。すると、高温・高圧化した混合気が自着火により燃焼し始め(HCCI燃焼)、続く膨張行程において、その燃焼による膨張エネルギーがピストン4に作用してピストン4が押し下げられる。次いで、排気行程において、ピストン4が上昇に転じるとともに、排気弁15が開かれて、上記燃焼により生成された排気ガスが排気ポート13および排気通路19を通じて外部に排出される。排気行程の後は、再び吸気行程に戻ることにより、吸気、圧縮、膨張、排気の各行程が繰り返される。
上記シリンダヘッド3には、気筒1内にプラズマを放出するプラズマリアクタ11が設けられている。具体的に、このプラズマリアクタ11は、気筒1内にプラズマを放出することにより、気筒1内の分子やイオンを化学的に反応し易いラジカル(活性種)に変化させるとともに、オゾン(O)を発生させる。すなわち、プラズマリアクタ11は、本発明にかかるオゾン供給手段として機能するものである。なお、プラズマリアクタ11は、オゾン生成のためのプラズマを放出できるものであればその種類を問わないが、例えば、針状の中心電極と、これを包囲する周囲電極とを有し、両電極の間に極短パルス状または高周波の高電界を印加することが可能なものがプラズマリアクタ11として用いられる。
以上のように構成されたエンジンは、その各部がECU(エンジン制御ユニット)30により統括的に制御される。ECU30は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサであり、本発明にかかる制御手段として機能するものである。
上記ECU30は、上記エンジン速度センサSW1、アクセル開度センサSW2、エンジン水温センサSW3、エアフローセンサSW4、および外気温センサSW5と電気的に接続されており、これら各センサからの入力信号に基づいて、エンジンの回転速度、アクセル開度(要求トルク)、エンジン水温、吸入空気量、および外気温といった種々の情報を取得する。
また、上記ECU30は、上記インジェクタ10、およびプラズマリアクタ11と電気的に接続されており、上記各センサから取得した種々の情報に基づく演算等を実行しながら、上記インジェクタ10、およびプラズマリアクタ11にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。これにより、ECU30は、インジェクタ10からの燃料の噴射量および噴射時期と、プラズマリアクタ11からのオゾンの供給量および供給時期とを、各時点でのエンジンの運転状態に応じた適切な値になるようにそれぞれ制御する。
(2)オゾン供給の意義
次に、上記プラズマリアクタ11を用いてオゾンを供給する意義について説明する。プラズマリアクタ11によるオゾンの供給は、主に、HCCI燃焼の開始時期、つまり、ピストン4により圧縮された混合気が自着火するタイミング(着火時期)を調節するために行われる。オゾンの供給によって混合気の着火時期を調節できる理由は、次のとおりである。
HCCI燃焼は、冷炎反応、青炎反応、熱炎反応、COの酸化反応という4段階の燃焼を経て完結することが知られている。ただし、青炎反応からCOの酸化反応へと至る3段階は、一連のまとまった燃焼として観察されるのが一般的である。このため、当明細書では、青炎反応からCOの酸化反応へと至る主燃焼の部分を「高温酸化反応」といい、その前の冷炎反応の部分を「低温酸化反応」という。なお、混合気の着火時期とは、「高温酸化反応」の開始時期を指している。
吸気行程や圧縮行程の途中等にオゾンを気筒1内に供給すると、供給されたオゾンは、圧縮行程が進行して気筒1内が所定温度(例えば500〜600K程度)まで上昇した時点で分解され、活性種の1種である酸素ラジカル(Oラジカル)を生成する。酸素ラジカルは強力な酸化力を有するので、この酸素ラジカルが存在することにより、通常であれば低温酸化反応が起きないような温度条件でも、燃料成分が酸化されて、低温酸化反応が生じる。低温酸化反応が一旦起きると、それによって気筒1内が高温化するので、その後の高温酸化反応も促進される。
このように、オゾンの供給は、低温酸化反応を活発にするので、結果として、高温酸化反応を早める作用をもたらす。したがって、オゾンの供給量を調節することで、混合気の着火時期(高温酸化反応の開始時期)を制御することが可能になる。
図2は、オゾンを供給した場合と供給しなかった場合とで混合気の着火遅れ時間がどのように異なるかを、燃料はガソリン、当量比は0.3、圧力は6.4MPa、オゾン濃度は6ppmの条件で調べた結果を示す図である。図2から明らかなように、オゾン供給の有無に拘りなく、温度が高くなるほど混合気の着火遅れ時間は短くなるが、オゾンの存在下で燃料を噴射した場合は、オゾンがない状態で燃料を噴射した場合よりも、常に着火遅れ時間が短くなっている。つまり、オゾンを供給した場合は、オゾンを供給しなかった場合に比べて、燃料の着火性が良くなり、混合気の着火時期が早まることになる。
図3は、HCCI燃焼の進行と活性種(気筒1内に供給されたオゾンから生成した酸素ラジカル)の消費との関係を模式的に示す図である。横軸はクランク角(deg)であり、縦軸は熱発生率(J/deg)および気筒1内の酸素ラジカル濃度(ppm)である。図3に示す燃焼波形には、熱発生率が大きく立ち上がる主燃焼部分である高温酸化反応が生じるよりも手前の時期に、熱発生率がわずかに立ち上がる冷炎反応部分である低温酸化反応が生じている。ここで、オゾンを供給した場合は、オゾンを供給しなかった場合に比べて、より早い時期で低温酸化反応が起きる。このことが、その後の高温酸化反応を促進し、高温酸化反応の開始時期、つまり混合気の着火時期を早める役割を果たす。
上述のように、オゾンの供給が混合気の着火時期に影響することが分かったが、混合気の燃焼期間、つまり高温酸化反応の開始から終了までの期間については、オゾンを供給する場合と供給しない場合とで、それほど大きく変化しない。オゾンから生成した酸素ラジカルは、低温酸化反応を促進してその開始タイミングを早めるが、図3に示すように、低温酸化反応の開始後は、低温酸化反応により消費され、短期間で消失してしまうので、高温酸化反応が始まる時点では、酸素ラジカルはほとんど存在していない。このため、高温酸化反応の進行速度に酸素ラジカルが影響することはなく、高温酸化反応の期間はさほど変化しないと考えられる。すなわち、オゾンは、低温酸化反応を促進し、そのことが高温酸化反応の開始時期(着火時期)を早めるものの、高温酸化反応の期間(燃焼期間)には直接影響しない。
(3)具体的制御
次に、インジェクタ10による気筒1内への燃料の噴射量および噴射時期と、プラズマリアクタ11による気筒1内へのオゾンの供給量および供給時期とを、エンジンの運転状態に応じてどのように制御するかを具体的に説明する。以下に説明する制御は、上述したECU30の処理に基づき行われる。ECU30は、エンジンの運転状態に応じて予め設定された多数の目標熱発生パターンのデータを記憶しており、HCCI燃焼がこの目標熱発生パターンに沿った燃焼となるように、インジェクタ10およびプラズマリアクタ11を制御する。
目標熱発生パターンは、混合気の着火時期と燃焼期間とを規定するものであり、エンジンの回転速度および負荷に応じて細かく多数の目標熱発生パターンが予め定められている。ここでいう着火時期とは、高温酸化反応の開始時期のことであり、燃焼期間とは、高温酸化反応の期間のことである(図3参照)。
目標熱発生パターンにおいては、着火時期は、エンジン回転速度が高いほど早く(進角側に)、エンジン回転速度が低いほど遅く(遅角側に)設定されており、燃焼期間は、エンジン負荷が高いほど長く(燃焼が緩慢に)、エンジン負荷が低いほど短く(燃焼が迅速に)設定されている。着火時期が高回転側ほど早くされる理由は、回転速度が速いと、膨張行程時にピストン4が素早く下降することから、早めに燃焼を始めないと途中で失火するおそれがあるためである。また、燃焼期間が高負荷側ほど長くされる理由は、負荷が高いと、燃焼により生じるトータルのエネルギーが大きいことから、燃焼を緩慢化しないと急激な圧力上昇(dP/dθ)が起こって大きな振動や騒音が発生するおそれがあるためである。
図4は、オゾンから生成した酸素ラジカルが気筒1内に残存しているときに、気筒1内に供給すべき燃料の一部を前段噴射し、その後、前段噴射された燃料の低温酸化反応により酸素ラジカルが消費されて消失しているときに、残りの燃料を後段噴射した場合のHCCI燃焼の進行を示す図である。横軸はクランク角(deg)であり、縦軸は熱発生率(J/deg)および気筒1内の酸素ラジカル濃度(ppm)である。また、図5は、図4に示したHCCI燃焼の進行に伴う筒内温度(K)の変化を示す図である。
酸素ラジカルの存在下で気筒1内に前段噴射された燃料は、上述のように、酸素ラジカルとの反応により活性化され、通常であれば低温酸化反応が起きないような温度条件でも低温酸化反応が起き、その後の高温酸化反応が促進されて、着火限界温度が低下する。その結果、前段噴射された燃料は、筒内温度がまだ相対的に低い段階(例えば900K程度)で自着火して燃焼する(この前段噴射の燃料の燃焼波形を図4に破線で示す)。
一方、酸素ラジカルの消失後に気筒1内に後段噴射された燃料は、酸素ラジカルとの反応が起こらず、着火限界温度が低下しない。その結果、後段噴射された燃料は、筒内温度が相対的に高くなった段階(例えば1000K程度)で自着火して燃焼する(この後段噴射の燃料の燃焼波形を図4に鎖線で示す)。より詳しくは、前段噴射された燃料の燃焼により筒内温度が上昇したことによって、後段噴射された燃料が着火燃焼する。
以上の結果として、気筒1内に供給された燃料は二段階に分かれて着火燃焼することになり、一度に燃料の全量が自着火して燃焼する場合に比べて、燃焼期間が長くなり、全体の燃焼(前段噴射の燃料の燃焼と後段噴射の燃料の燃焼との合計:全体の燃焼波形を図4に実線で示す)が緩慢になる。そのため、急激な圧力上昇が抑制され、燃焼騒音の発生によるNVH(noise, vibration, harshness)の低下が抑制される。これは、複数種類の異なる性状の燃料の混合物であるマルチフューエルを気筒1内に噴射した場合に得られる作用と同様の作用である。
要すれば、酸素ラジカル雰囲気により低温酸化が活発になった低温着火可能燃料、すなわち着火性の良い燃料(前段噴射の燃料)と、酸素ラジカルの消失後に噴射された高温着火燃料、すなわち着火性の悪い燃料(後段噴射の燃料)とが混在する状態をつくり、両者の着火温度が異なること(例えば100K程度異なること)を利用して、燃焼期間の長い緩慢な燃焼の実現を図るのである。
なお、図4は、酸素ラジカルの消失時期を挟んで前段噴射と後段噴射との間に所定の時間的間隔を空ける場合(すなわち前段噴射と後段噴射とを分割して行う場合)を示したが、これに限らず、酸素ラジカルの消失時期の前後に亘って前段噴射と後段噴射とを連続して行うようにしてもよい。
図6は、エンジンの運転中に上記ECU30が行う処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートの処理がスタートすると、ECU30は、各種センサ値を読み込む処理を実行する(ステップS1)。具体的には、エンジン速度センサSW1、アクセル開度センサSW2、エンジン水温センサSW3、エアフローセンサSW4、および外気温センサSW5からそれぞれの検出信号を読み込み、これらの信号に基づいて、エンジンの回転速度、要求トルク(負荷)、エンジン水温、吸入空気量、および外気温といった各種情報を取得する。
次いで、ECU30は、上記ステップS1で取得した情報から特定される要求トルクと回転数とに基づいて、インジェクタ10から噴射すべき燃料の量、および燃料噴射を開始すべき時期を決定する処理を実行する(ステップS2)。具体的に、このステップS2では、エンジンの負荷が高いほど、インジェクタ10からの噴射目標値(より詳しくは、前段噴射と後段噴射との合計の噴射目標値)が大きな値に設定される(つまり全体の目標噴射量が増加される)。また、エンジンの回転速度が高いほど、インジェクタ10からの目標噴射時期(より詳しくは、前段噴射の目標噴射時期)が早く設定される。なお、目標噴射時期(前段噴射の目標噴射時期)は、酸素ラジカルの生成に合せて設定される。すなわち、気筒1内に供給されたオゾンが分解し、酸素ラジカルが生成している状態で、前段噴射が行われるように、前段噴射の目標噴射時期が設定される。なお、当実施形態では、酸素ラジカルの消失時期の前後に亘って前段噴射と後段噴射とを連続して行う場合を説明する(図7参照)。
次いで、ECU30は、目標熱発生パターンのデータ、すなわち高温酸化反応の開始時期(着火時期)および反応期間(燃焼期間)の目標値のデータを参照することにより、現在のエンジンの運転状態(回転速度、負荷)に合った目標熱発生パターンを決定する処理を実行する(ステップS3)。具体的には、上記ステップS1で取得したエンジンの回転速度および負荷を、予めエンジンの回転速度および負荷に応じて細かく定められた多数の目標熱発生パターンのデータに当てはめて、現在のエンジンの運転状態に応じた適切な一つのパターンを、目標とすべき目標熱発生パターンとして決定する。
次いで、ECU30は、圧縮上死点近傍における気筒1内の温度・圧力(筒内PT)を推定する処理を実行する(ステップS4)。具体的に、このステップS4では、上記ステップS1で取得されたエンジン水温、吸入空気量、および外気温に基づいて、圧縮上死点近傍の筒内温度・圧力、つまり、ピストン4を圧縮上死点近傍の特定時点までモータリングによって上昇させた場合の気筒1内の温度・圧力を推定する演算が行われる。
次いで、ECU30は、プラズマリアクタ11からのプラズマ放出によってどの程度の量のオゾンを供給すべきかを決定する処理を実行する(ステップS5)。具体的に、このステップS5では、まず、上記ステップS2で決定した燃料の噴射量および噴射時期と、上記ステップS4で推定した筒内温度・圧力とに基づいて、仮にオゾンを全く供給しなかった場合に生じる熱発生パターンが推定される。そして、この熱発生パターン(オゾン供給量がゼロの場合の熱発生パターン)と、上記ステップS3で決定した目標熱発生パターンとを比較して、どの程度の量のオゾンを供給すれば上記目標熱発生パターンに最も近い燃焼が得られるかが演算により求められ、その量が目標のオゾン供給量として決定される。なお、このような演算処理を行うために、ECU30には、オゾン供給によるHCCI燃焼への影響(例えばオゾン供給量と着火時期の変化との関係等)がデータ化されて記憶されている。
上記ステップS5におけるオゾン供給量の決定動作をさらに詳しく説明する。当実施形態では、オゾン供給量は、燃料噴射量および噴射時期と関連して決定される。
まず、図6のフローチャートには示していないが、図7のクランク角チャートに示すように、オゾンの供給時期に関しては、燃料噴射時期よりも早い所定のクランク角範囲内、例えば吸気行程中や圧縮行程中の所定のクランク角範囲内において別途設定される。より詳しくは、前段噴射の燃料が噴射される時点で酸素ラジカルが気筒1内に存在するようにオゾンが相対的に早い時期に気筒1内に供給される。換言すれば、気筒1内に供給されたオゾンが分解し、酸素ラジカルが生成している状態で、前段噴射が行われるように、オゾンの供給時期が設定される。
オゾンが気筒1内に供給されると、上述のように、ピストン4の圧縮により気筒1内の温度が500〜600K程度に上昇した時点で分解し、オゾンが消失する代わりに活性種の酸素ラジカルが生成する。この酸素ラジカルが存在している状態で燃料が気筒1内に噴射されると、上述のように、噴射された燃料の低温酸化反応が起き、この低温酸化反応に酸素ラジカルが消費されて消失する。この酸素ラジカルの消失時期は、低温酸化反応の開始時の酸素ラジカル濃度が小さいほど早くなる(進角する)。
ここで、燃料噴射時期、より詳しくは、前段噴射の噴射時期は、上述のように、ステップS2で、エンジン回転速度に応じて設定される。また、燃料噴射量、より詳しくは、前段噴射と後段噴射との合計の燃料噴射量もまた、ステップS2で、エンジン負荷に応じて設定される。したがって、これらの燃料噴射時期(前段噴射の開始時期)および燃料噴射量が決まることにより燃料噴射の終了時期(より詳しくは、後段噴射の終了時期)が定まる。
そして、酸素ラジカルの消失時期が上記燃料噴射の開始時期(前段噴射の開始時期)と上記燃料噴射の終了時期(後段噴射の終了時期)との間に到来するように、低温酸化反応開始時における気筒1内の酸素ラジカル濃度を制御する。そのためには、プラズマリアクタ11によるオゾン供給時の気筒1内のオゾン濃度を制御することになる。
例えば、オゾンの供給量が少なく、気筒1内の酸素ラジカル濃度が不足すると、酸素ラジカルの消失時期が早くなりすぎて、燃料噴射量の総量に占める前段噴射量(前段噴射された燃料の量、つまり前段噴射の燃料噴射量)の比率が過度に小さくなる。その結果、着火性の悪い後段噴射の燃料の比率が過度に大きくなって、失火もしくは未燃損が多くなる。
逆に、オゾンの供給量が多く、気筒1内の酸素ラジカル濃度が過剰になると、酸素ラジカルの消失時期が遅くなりすぎて、燃料噴射量の総量に占める前段噴射量の比率が過度に大きくなる。その結果、着火性の良い低温着火可能燃料の比率が過度に大きくなって、燃焼が緩慢化せず、急激な圧力上昇が起こって、燃焼騒音が発生する。
したがって、上記ステップS5においては、上記ステップS3で決定した目標熱発生パターンに規定されている高温酸化反応の燃焼波形が実現することを目的として、酸素ラジカルが前段噴射の開始時期と後段噴射の終了時期との間の適正な時期に消失するように、オゾン供給量が決定される。
次いで、ECU30は、上記ステップS2で決定した噴射量および噴射時期に従って燃料が気筒1内に噴射されるようにインジェクタ10を駆動するとともに、上記ステップS5で決定した供給量に従ってオゾンが気筒1内に供給されるようにプラズマリアクタ11を駆動する処理を実行する(ステップS6)。オゾンの供給量は、プラズマリアクタ11からのプラズマ放出量によって決まるから、ECU30は、プラズマリアクタ11への印加電圧および印加時間の少なくとも一方を変化させることで、オゾンの供給量を調節する。
(4)作用等
以上説明したように、当実施形態では、燃料を空気と混合した後に自着火させるHCCI燃焼が可能な圧縮自己着火式エンジンにおいて、次のような特徴的な構成を採用した。
エンジンは、気筒1内に燃料を噴射するインジェクタ10(燃料噴射手段)と、気筒1内にオゾンを供給するプラズマリアクタ11(オゾン供給手段)と、インジェクタ10およびプラズマリアクタ11を駆動して気筒1内への燃料の噴射量および噴射時期とオゾンの供給量および供給時期とを制御するECU30(制御手段)とを備える。ECU30は、図7に示すように、気筒1内に供給されたオゾンから生成した酸素ラジカル(活性種)の気筒1内の濃度がゼロでないとき(酸素ラジカルの消失前)に燃料が噴射される前段噴射とゼロのとき(酸素ラジカルの消失後)に燃料が噴射される後段噴射とが行われるように、上記燃料の噴射量および噴射時期と上記オゾンの供給量および供給時期とを制御する。
上記実施形態では、酸素ラジカルの気筒1内濃度がゼロでないときに噴射された燃料(前段噴射の燃料)は、酸素ラジカルとの反応により活性化され、着火限界温度が低下する結果、筒内温度がまだ相対的に低い段階で自着火して燃焼する。図7において、前段噴射の燃料(低温着火可能燃料)の燃焼波形を破線アで示す。
一方、酸素ラジカルの気筒1内濃度がゼロのときに噴射された燃料(後段噴射の燃料)は、酸素ラジカルとの反応が起こらず、着火限界温度が低下しない結果、筒内温度が相対的に高くなった段階で自着火して燃焼する。図7において、後段噴射の燃料(高温着火燃料)の燃焼波形を鎖線イで示す。
そのため、例えばガソリンと軽油のように複数種類の異なる性状の燃料を混合したマルチフューエルを噴射した場合のように、気筒1内に噴射された燃料が二段階に分かれて自着火して燃焼することになり、一度に燃料の全量が自着火して燃焼する場合に比べて、前段噴射の燃料の燃焼(図7の破線ア)と後段噴射の燃料の燃焼(図7の鎖線イ)との合計である全体の燃焼(図7の実線)が緩慢になって、急激な圧力上昇が抑制される。そのため、大きな燃焼エネルギーが短期間で発生することが回避でき、燃焼に伴う振動や騒音のレベルを効果的に低減することができる。これにより、大きな振動や騒音を伴わない適正なHCCI燃焼が可能な運転領域を大幅に拡大することができ、エンジンの熱効率を効果的に向上させることができる。
ここで、図8に、燃料の全量を酸素ラジカルの存在下で噴射し、燃料の全量が着火性の良い低温着火可能燃料となった場合のHCCI燃焼のクランク角チャートを示す。燃料の全量が一度に着火燃焼し、急激な圧力上昇が起こって、燃焼騒音が発生することがわかる。図8中、鎖線は、図7の実線で示した全体の燃焼波形である。
なお、図7は、酸素ラジカルの消失時期の前後に亘って前段噴射と後段噴射とを連続して行う場合を示したが、これに限らず、酸素ラジカルの消失時期を挟んで前段噴射と後段噴射とを所定の時間的間隔を空けて行う(すなわち前段噴射と後段噴射とを分割して行う)ようにしてもよい。その場合は、酸素ラジカルの消失時期を挟んで前段噴射と後段噴射との間に所定の時間的間隔を空けるようにすればよい。
図7に示したように、酸素ラジカルの気筒1内濃度がゼロでないときとゼロのときとに亘って燃料が連続して噴射されるように、インジェクタ10が駆動された場合は、気筒1内への燃料噴射回数が1回で済むという利点がある。
一方、図4に示したように、酸素ラジカルの気筒1内濃度がゼロでないときとゼロのときとに燃料が分割して噴射されるように、インジェクタ10が駆動された場合は、燃料の一部を酸素ラジカルと反応して相対的に早い段階で自着火燃焼する着火性の良い燃料(低温着火可能燃料)とし、残りの部分を酸素ラジカルと反応せずに相対的に遅い段階で自着火燃焼する着火性の悪い燃料(高温着火燃料)とすることが確実に行えるという利点がある。
上記実施形態では、エンジン負荷が高いほど燃料噴射量が増加するように(ステップS2参照)、ステップS6でインジェクタ10が駆動されている。その際、エンジン負荷が高いほど、酸素ラジカルの気筒1内濃度がゼロのときに噴射される燃料の比率、つまり燃料噴射量の総量に占める後段噴射量(後段噴射された燃料の量、つまり後段噴射の燃料噴射量)の比率が増大するように、ステップS6でプラズマリアクタ11を駆動することが好ましい。具体的には、例えば図9に示すように、酸素ラジカルの消失時期が前段噴射の開始時期と後段噴射の終了時期との間で相対的に早い時期に到来するように、低温酸化反応開始時における気筒1内の酸素ラジカル濃度、ひいてはプラズマリアクタ11によるオゾン供給時の気筒1内のオゾン濃度を制御する。これにより、高負荷域で燃料噴射量が増加するときは、酸素ラジカルと反応せずに着火性に劣る燃料(高温着火燃料)の比率が増大するから、燃焼がより緩慢となり、たとえ燃料噴射量が増加しても、過度な圧力上昇が抑制される。図9中、鎖線は、図7の実線で示した全体の燃焼波形である。
上記実施形態では、エンジンの運転状態に基づいて、インジェクタ10からの燃料噴射量および噴射時期(ステップS2参照)と、混合気の着火時期および燃焼期間を規定する目標熱発生パターン(ステップS3参照)とが決定され、その結果を用いた演算処理により、プラズマリアクタ11からのオゾン供給量が決定される(ステップS5)。このように、目標とする熱発生パターン(着火時期、燃焼期間)を予め定めておき、そのパターンに沿った燃焼が起きるようにオゾンの供給量を演算により決定した場合には、運転状態に応じて常に適正な量のオゾンを供給することができるので、オゾンから生成した酸素ラジカルの気筒1内濃度がゼロでないときとゼロのときとに燃料が確実に噴射され、失火を伴わず大きな振動や騒音も伴わない適正なHCCI燃焼を広範な運転領域で確実に実行させることができる。
なお、上記実施形態では、エンジンの気筒1内に直接プラズマを放出し得る位置にプラズマリアクタ11を設けたが、プラズマリアクタ11は、プラズマの放出に伴い生じるオゾンを気筒1内に供給できるものであればよく、例えば、吸気ポート12に向けてプラズマを放出するものであってもよい。
また、上記実施形態では、プラズマの放出によってオゾンを供給するプラズマリアクタ11をオゾン供給手段として設けたが、オゾン供給手段は、オゾンを供給できるものであればよく、必ずしもプラズマを用いたものに限られない。
また、上記実施形態では、酸素ラジカルの気筒1内濃度がゼロでないとき(酸素ラジカルの消失前)に行う燃料噴射を前段噴射、酸素ラジカルの気筒1内濃度がゼロのとき(酸素ラジカルの消失後)に行う燃料噴射を後段噴射としたが、必ずしも酸素ラジカルの消失時期を前段噴射と後段噴射との区分の基準とする必要はなく、緩慢燃焼が生じるほどに前段噴射された燃料の着火可能温度と後段噴射された燃料の着火可能温度とが相違する限り、一般に、酸素ラジカルの気筒1内濃度が所定値以上のときに行う燃料噴射を前段噴射、酸素ラジカルの気筒1内濃度が所定値未満のときに行う燃料噴射を後段噴射とすることができる。ここでいう「所定値」とは、酸素ラジカルが実質的に消失したといえる酸素ラジカルの気筒1内濃度の所定値である。つまり、酸素ラジカルの気筒1内濃度が所定値のときは、着火限界温度が低下するほどには燃料を活性化させることができない量しか酸素ラジカルが気筒1内に存在していない状態である。
1 気筒
10 インジェクタ(燃料噴射手段)
11 プラズマリアクタ(オゾン供給手段)
18 吸気通路
19 排気通路
30 ECU(制御手段)
S2 第1のステップ
S3 第2のステップ
S5 第3のステップ

Claims (6)

  1. 幾何学的圧縮比が14以上に設定された気筒を有するとともに、気筒内に噴射される燃料を空気と混合した後に自着火させるHCCI燃焼が可能な圧縮自己着火式エンジンであって、
    気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、
    気筒内にオゾンを供給するオゾン供給手段と、
    上記燃料噴射手段および上記オゾン供給手段を駆動して上記気筒内への燃料の噴射およびオゾンの供給を制御する制御手段とを備え、
    上記制御手段は、
    気筒内に供給されたオゾンが圧縮行程の進行により分解されるのに伴い生成される活性種が気筒内に残存しているときに燃料が噴射される前段噴射と、その後の燃料の低温酸化反応に伴い消費される上記活性種の気筒内の濃度が当該活性種が実質的に消失したといえる所定値未満になったときに燃料が噴射される後段噴射とが行われるように、上記燃料噴射手段および上記オゾン供給手段を駆動するものである、
    ことを特徴とする圧縮自己着火式エンジン。
  2. 請求項1に記載の圧縮自己着火式エンジンにおいて、
    上記制御手段は、
    上記前段噴射と上記後段噴射とが連続して行われるように、上記燃料噴射手段を駆動するものである、
    ことを特徴とする圧縮自己着火式エンジン。
  3. 請求項1に記載の圧縮自己着火式エンジンにおいて、
    上記制御手段は、
    上記前段噴射と上記後段噴射とが所定の時間的間隔を空けて行われるように、上記燃料噴射手段を駆動するものである、
    ことを特徴とする圧縮自己着火式エンジン。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の圧縮自己着火式エンジンにおいて、
    上記制御手段は、
    エンジン負荷が高いほど燃料噴射量の総量に占める上記後段噴射の燃料噴射量の比率が増大するように、上記オゾン供給手段を駆動するものである、
    ことを特徴とする圧縮自己着火式エンジン。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮自己着火式エンジンにおいて、
    上記制御手段は、
    エンジンの運転状態に基づいて、上記燃料噴射手段から噴射すべき燃料の量および噴射時期と、混合気の着火時期および燃焼期間を規定する目標熱発生パターンとを決定し、その結果を用いた演算処理により、上記オゾン供給手段から供給すべきオゾンの量を決定するものである、
    ことを特徴とする圧縮自己着火式エンジン。
  6. 幾何学的圧縮比が14以上に設定された気筒と、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、気筒内にオゾンを供給するオゾン供給手段とを有するとともに、気筒内に供給される燃料を空気と混合した後に自着火させるHCCI燃焼が可能な圧縮自己着火式エンジンを制御する方法であって、
    エンジンの運転状態に基づいて、上記燃料噴射手段から噴射すべき燃料の量および噴射時期を決定する第1のステップと、
    エンジンの運転状態に基づいて、混合気の着火時期および燃焼期間を規定する目標熱発生パターンを決定する第2のステップと、
    上記第1のステップで決定された燃料の量および噴射時期と、上記第2のステップで決定された目標熱発生パターンとを用いた演算処理により、気筒内に供給されたオゾンが圧縮行程の進行により分解されるのに伴い生成される活性種が気筒内に残存しているときに燃料が噴射される前段噴射と、その後の燃料の低温酸化反応に伴い消費される上記活性種の気筒内の濃度が当該活性種が実質的に消失したといえる所定値未満になったときに燃料が噴射される後段噴射とが行われるように、上記オゾン供給手段から供給すべきオゾンの量を決定する第3のステップとを含む、
    ことを特徴とする圧縮自己着火式エンジンの制御方法。
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