JP5905348B2 - 防錆処理液の管理方法、金属部材の処理方法、及び複合部材の製造方法 - Google Patents
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Description
金属部材に対する接着剤としては、白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、金属部材の錆を防止する防錆処理液としては、アミン化合物を含む防錆処理液(水溶性洗浄剤組成物)が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤を付与する前の金属部材を、アミン化合物及び水を含む防錆処理液によって処理する場合には、アミン化合物の濃度をより厳密に管理する必要があることが判明した。
即ち、防錆処理液中のアミン化合物濃度が低すぎると、アミン化合物による防錆性が低下し、金属部材の錆が発生する。一方、防錆処理液中のアミン化合物の濃度が高すぎると、付加型シリコーン接着剤の接着剤成分である白金触媒が、アミン化合物によって硬化阻害を起こし、その結果、接着不良を起こす恐れがある。
これらの問題に対し、電導度の測定により防錆処理液を管理する方法では、上述の防錆性及び硬化阻害に直接的に作用するアミン化合物の濃度を厳密に管理できない場合があり、また、温度や混入物の影響で電導度の測定値が変動し易く、その結果、アミン化合物の濃度を厳密に管理できない場合がある。
また、本発明の課題は、防錆性に優れ、かつ、付加型シリコーン接着剤の接着性の低下を抑制できる金属部材の処理方法、及び、複合部材の製造方法を提供することである。
即ち、前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
また、本発明によれば、防錆性に優れ、かつ、付加型シリコーン接着剤の接着性の低下を抑制できる金属部材の処理方法、及び、複合部材の製造方法を提供することができる。
本発明の防錆処理液の管理方法(以下、「本発明の管理方法」ともいう)は、白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤が付与される前の金属部材の防錆処理に用いられ、アミン化合物及び水を含む防錆処理液中のアミン化合物の濃度を中和滴定によって測定し、測定された値が予め定めた濃度範囲に含まれるように管理する管理工程を有し、必要に応じその他の工程を有して構成される。
具体的には、アミン化合物の濃度が低すぎると、金属部材に対する防錆性が低下し、金属部材の錆が発生する。一方、アミン化合物の濃度が高すぎると、アミン化合物が白金触媒の硬化阻害を引き起こし、その結果、付加型シリコーン接着剤の接着性が低下する。
従って、本発明の管理方法によれば、防錆処理液を、金属部材に対する防錆性に優れ、かつ、金属部材に付与される付加型シリコーン接着剤の接着性を低下させにくい状態に管理することができる。
本発明では、防錆処理液中のアミン化合物(以下、単に「アミン」ともいう)の濃度を中和滴定によって測定する。
前記中和滴定は、例えば、塩酸、硝酸等の酸の水溶液(酸性液)を用いて行なうことができる。
例えば、塩酸水溶液(以下、単に「塩酸」ともいう)を用いて中和滴定を行なう場合、下記反応式(A)によってアミン塩酸塩が生成する。
即ち、上記反応式(A)においてR−NH2は1級アミンを表すが、1級アミン以外(例えば2級アミン又は3級アミン)を用いた場合にも、同様の反応式が成立する。
中でも、指示薬を用いた検出方法は、中和点を目視判定できるので、リトマス紙による方法や電気滴定法と比較して、操作が簡便となり、測定装置や該測定装置の校正が不要となる点で好ましい。
前記指示薬としては公知の指示薬を用いることができ、例えば、メチルバイオレット、チモールブルー、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、メチルオレンジ、メチルレッド、リトマス、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、アリザリンイエロー等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
更に、指示薬として、中性付近(例えばpH6〜8)を境に、相互に補色の関係にある、赤色から緑色に変化する指示薬を用いると、視認性がより向上し、中和点の目視による検出が更に容易となる。
このような指示薬としては、例えば、紫キャベツの色素抽出液等が挙げられる。
本発明における防錆処理液は、白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤が付与される前(即ち、付加型シリコーン接着剤によって接着される前)の金属部材の防錆処理に用いられる液である。
前記防錆処理液は、洗浄液としての機能を兼ね備えた液(防錆洗浄液)であることが好ましい。かかる防錆洗浄液を用いることにより、前記金属部材の接着面(付加型シリコーン接着剤が付与される面)の防錆処理を行なうとともに、当該面を清浄にするための洗浄を行なうことができる。かかる防錆洗浄液は、例えば、公知の洗浄装置の洗浄槽内で用いられる。この形態では、洗浄槽内において、前記防錆洗浄液を用いて金属部材の防錆処理及び洗浄が行なわれる。
前記防錆処理液による防錆処理では、前記アミン化合物が金属部材の表面をコーティングすることにより、錆の発生が抑制される。
前記防錆処理液の具体的な形態としては、例えば、水及びアミン化合物(防錆剤)を含む防錆剤組成物を、所望のアミン濃度となるように水で希釈した希釈液の形態が挙げられる。
前記防錆剤組成物としては市販品を用いることもできる。市販品としては、豊田化学工業(株)製の「トヨノック」シリーズ、豊田化学工業(株)製の「トヨゾール」シリーズ、スギムラ化学工業(株)製の「プレトン」シリーズ、等が挙げられる。
前記1級アミン化合物としては、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、等が挙げられる。
前記2級アミン化合物としては、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、等が挙げられる。
前記3級アミン化合物としては、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、等が挙げられる。
前記防錆処理液は、アミン化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
中和滴定によって測定された値が前記管理範囲から外れた場合には、防錆処理液を廃棄してもよいが、アミン化合物(又は前記防錆剤組成物)の使用量削減の観点からは、防錆処理液への水及びアミン化合物の少なくとも一方の添加(例えば、前記防錆剤組成物の添加)により、アミン化合物の濃度が前記管理範囲に含まれるように調整することが好ましい。
中和滴定によって測定された値が前記管理範囲に含まれている場合には、防錆処理液を、アミン化合物の濃度の調整を行なわずにそのまま用いてもよいし、アミン化合物の濃度を前記管理範囲の中心値に近づけるように調整した後に用いてもよい。
なお、本発明では、アミン化合物の濃度を管理するとともに、前記防錆剤組成物を含む防錆処理液中における該防錆剤組成物の濃度(以下、「防錆剤濃度」ともいう)を管理することもできる。
濃度が0.02質量%以上であると、防錆性により優れる。
濃度が0.50質量%以下であると、白金触媒の硬化阻害がより低減され、付加型シリコーン接着剤の接着性がより向上する。
その他の成分としては、例えば洗浄剤が挙げられる。
前記洗浄剤としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、界面活性剤、等が挙げられる。
前記混入物としては、例えば、金属部材の処理により混入した油(例えば、鉱油を主成分とする切削油等)、金属切削屑、金属微粉、等が挙げられる。
前記混入物の含有量は、アミン化合物の濃度をより正確に測定する観点より、該混入物も含めた防錆処理液全量に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
前記アミン化合物以外のアルカリ性成分及び酸性成分の含有量は、アミン化合物の含有量に対し、90質量%以下が好ましく、70質量%以下が更に好ましく、50質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。前記含有量は、最も好ましくは0質量%である。
本発明の金属部材の処理方法は、既述の本発明の防錆処理液の管理方法によって管理された防錆処理液を用い、白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤が付与される前の金属部材を防錆処理する防錆処理工程を有する。
本発明の金属部材の処理方法によれば、金属部材に対する優れた防錆性が維持され、かつ、金属部材に付与される付加型シリコーン接着剤の接着性の低下が抑制される。
本発明の金属部材の処理方法において、防錆処理液の詳細や、アミン化合物の好ましい濃度範囲(管理範囲)については前述のとおりである。
また、既述のとおり、前記防錆処理工程は、金属部材の洗浄を兼ねた工程であってもよい。
処理槽を用いた形態では、経時により、また、金属部材の処理が行なわれることにより、アミン化合物の濃度が変化し易いため、防錆処理液中のアミン化合物の濃度を管理する必要性が高い。
前記金属部材としては、金属を含む部材であれば特に制限はない。
前記金属部材は、金属を主成分として含む部材を用いることが好ましい。ここで、主成分とは、含有量が最も多い成分を指し、具体的には、含有量が80質量%以上(好ましくは90質量%以上)である成分を指す。前記金属部材として、金属含有量が100質量%(但し、不可避的不純物が含まれていてもよい)の部材を用いてもよいことはいうまでもない。
前記金属は、単一成分であっても、2種以上の成分であってもよい。2種以上の成分からなる金属としては、炭素鋼、ステンレス鋼等が挙げられ、中でも、炭素鋼が好ましい。
前記金属としては、防錆処理液による防錆効果がより顕著に得られる点で、鉄を含むことが好ましく、鉄を70質量%以上含むことがより好ましく、鉄を80質量%以上含むことが更に好ましく、鉄を90質量%以上含むことが更に好ましく、鉄を95質量%以上含むことが特に好ましい。
白金触媒の量も公知の範囲とすることができ、例えば、シリコーン化合物の全量に対し、0.1〜500ppm(白金換算)とすることができ、0.1〜100ppm(白金換算)が好ましく、20〜100ppm(白金換算)がより好ましい。
白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤としては、市販品を用いることもできる。
本発明の複合部材の製造方法は、既述の金属部材の処理方法によって処理された金属部材と他の部材とを、前記金属部材の前記付加型シリコーン接着剤付与面と他の部材の表面とが対向するように接着させる接着工程を有する。
金属部材と接着される他の部材は、金属部材であってもよいし、非金属部材であってもよい。
他の部材としての金属部材の具体例は、前述した金属部材の具体例と同様である。
前記非金属部材としては、樹脂部材、ゴム部材、セラミック部材等が挙げられる。
加熱処理の温度は通常の範囲とすることができるが、130℃〜200℃が好ましく、150℃〜170℃がより好ましい。
加熱処理の時間は通常の範囲とすることができるが、0.2時間〜3時間が好ましく、0.3時間〜1.5時間がより好ましい。
この防錆剤組成物は、アミン化合物以外のアルカリ性成分及び酸性成分の含有量が、アミン化合物の含有量に対し、64wt%である。
〜防錆剤(防錆剤組成物)の組成〜
・水 … 73wt%
・イソプロパノールアミン(アミン化合物) … 14wt%
・脂肪酸(炭素数4〜30の脂肪族酸及びその酸無水物) … 9wt%
・添加剤(EDTA、トリアジン類、その他) … 4wt%
また、以下の実験例において、防錆剤濃度とアミン濃度との間には、「アミン濃度(wt%)=防錆剤濃度(wt%)×0.14」の関係が成り立っている。
≪アミン濃度の推定に関する実験1≫
実験例1として、中和滴定によるアミン濃度の推定に関する実験、及び、電導度測定によるアミン濃度の推定に関する実験(比較実験)を行なった。詳細を以下に示す。
上記防錆剤(防錆剤組成物。以下同じ。)を工業用水で希釈し上記指示薬を添加して得られた防錆剤希釈液(防錆処理液)について、酸性液(0.1N塩酸水溶液)を用いた中和滴定を行い、アミン濃度(イソプロパノールアミンの濃度;既知の濃度)と酸性液の滴数との関係を求めた。この中和滴定は、室温の防錆剤希釈液に対して行なった。
次に、イソプロパノールアミン(アミン化合物)を工業用水で希釈し上記指示薬を添加して得られたアミン水溶液について、上記防錆剤希釈液の中和滴定と同様の条件によって中和滴定を行い、アミン濃度(イソプロパノールアミンの濃度;既知の濃度)と酸性液の滴数との関係を求めた。
図1は、防錆剤希釈液及びアミン水溶液における、アミン濃度と酸性液の滴数との関係を示すグラフである。
図1に示すように、防錆剤希釈液の測定結果とアミン水溶液の測定結果とは同一直線上に位置した。
この結果から、防錆剤希釈液中の未知のアミン濃度を、中和滴定により推定できることがわかった。
上記防錆剤を工業用水で希釈して得られた防錆剤希釈液(防錆処理液)について電導度を測定し、アミン濃度(イソプロパノールアミンの濃度;既知の濃度)と電導度との関係を求めた。この電導度の測定は、40℃の防錆剤希釈液に対して行なった。
次に、イソプロパノールアミン(アミン化合物)を工業用水で希釈して得られたアミン水溶液について電導度を測定し、アミン濃度(イソプロパノールアミンの濃度;既知の濃度)と電導度との関係を求めた。この電導度の測定は、40℃のアミン水溶液に対して行なった。
図2は、防錆剤希釈液及びアミン水溶液における、アミン濃度と電導度との関係を示すグラフである。
図2に示すように、防錆剤希釈液の測定結果とアミン水溶液の測定結果とは同一直線上には位置しなかった。即ち、同じ電導度であっても、防錆剤希釈液とアミン水溶液とでは、アミン濃度が異なっていた。
この結果から、防錆剤希釈液中の未知のアミン濃度を、電導度により推定することは困難であることがわかった。
≪混入物の影響に関する実験≫
実験例2として、中和滴定の測定値に対する混入物の影響に関する実験、及び、電導度の測定値に対する混入物の影響に関する実験(比較実験)を行なった。詳細を以下に示す。
上記防錆剤を工業用水で希釈し上記指示薬を添加して得られた防錆剤希釈液、及び、この防錆剤希釈液に更に切削油(日興キャスティ(株)製ハングスターファー;主成分は鉱油)を混入させた切削油含有防錆剤希釈液について、実験例1と同様の条件の中和滴定を行い、切削油の濃度と酸性液の滴数との関係を求めた。防錆剤濃度及び切削油濃度は図3に示すとおりである。
図3に示すように、切削油の濃度が変わっても、酸性液の滴数はほとんど変化しなかった。この結果から、中和滴定による管理方法では、防錆剤希釈液に切削油が混入した場合でも、切削油の濃度の影響を受けにくいことがわかった。
上記防錆剤を工業用水で希釈して得られた防錆剤希釈液、及び、この防錆剤希釈液に更に切削油(日興キャスティ(株)製ハングスターファー;主成分は鉱油)を混合した切削油含有防錆剤希釈液について、実験例1と同様にして電導度を測定し、切削油の濃度と電導度との関係を求めた。防錆剤濃度及び切削油濃度は図4に示すとおりである。
図4に示すように、切削油の濃度が変化すると、電導度の値が変動することがわかった。この結果から、電導度による管理方法では、防錆剤希釈液に切削油が混入した場合に、切削油の濃度の影響を受け易いことがわかった。
≪温度の影響に関する実験≫
実験例3として、中和滴定の測定値に対する温度の影響に関する実験、及び、電導度の測定値に対する温度の影響に関する実験(比較実験)を行なった。詳細を以下に示す。
上記防錆剤を工業用水で希釈し上記指示薬を添加して得られた防錆剤希釈液について、温度(液温)を変化させたこと以外は実験例1と同様にして中和滴定を行い、温度(液温)と酸性液の滴数との関係を求めた。防錆剤濃度及び温度は図5に示すとおりである。
図5に示すように、温度(液温)が変わっても、酸性液の滴数はほとんど変化しなかった。この結果から、中和滴定による管理方法では、温度(液温)の影響を受けにくいことがわかった。
上記防錆剤を工業用水で希釈して得られた防錆剤希釈液について、温度(液温)を変化させたこと以外は実験例1と同様にして電導度の測定を行い、温度(液温)と電導度との関係を求めた。防錆剤濃度及び温度は図6に示すとおりである。
図6に示すように、温度(液温)が上昇するに従い、電導度が上昇した。この結果から、電導度による管理方法では、温度(液温)の影響を受け易いことがわかった。
また、中和滴定は温度(液温)の影響を受けにくいため、測定にあたり温度管理を行なう必要はない。
また、中和滴定による管理方法は、測定値同士を比較することが可能であるため、電導度による管理方法と比較して、防錆剤希釈液(防錆処理液)の日常管理に適している。
≪中和滴定によるアミン濃度の推定に関する実験2≫
実験例4として、付加型シリコーン接着剤が付与される前の金属部材の洗浄を行なうための洗浄液中の未知のアミン濃度を、中和滴定により推定する実験を行なった。詳細を以下に示す。
上記防錆剤を工業用水で希釈し上記指示薬を添加して得られた防錆剤希釈液(防錆剤濃度は0.05wt%、0.2wt%、0.4wt%の3種類)について、実験例1と同様の中和滴定により、防錆剤濃度と酸性液の滴数との関係を求め、防錆剤検量線とした。
得られた防錆剤検量線を図7に示す。
付加型シリコーン接着剤が付与される前の金属部材の洗浄を行なうための洗浄槽中の洗浄液(後述する防錆剤濃度の調整前(濃度調整前)の洗浄液)を用い、この洗浄液に含まれる未知の防錆剤濃度を以下のようにして測定した。
即ち、上記洗浄槽(容量210L)中の洗浄液(液量190L)から採取した洗浄液サンプル(この洗浄液サンプルの体積は、防錆剤検量線の作成に用いた防錆剤希釈液と同体積とした)に、まず上記指示薬を添加し、次いで実験例1と同様の条件で酸性液を滴下し(中和滴定)、上記防錆剤検量線を用いて洗浄液中の防錆剤濃度を測定した。
下記表1に示すように、濃度調整前の洗浄液中の防錆剤濃度は、0.11wt%と求められた。
なお、この洗浄液は、上記防錆剤を工業用水で希釈した得られた防錆剤希釈液であって、下記の金属部材の防錆処理を繰り返し行なった後の液である。
・金属部材 … 接着面を切削加工したロータ(材質:炭素鋼S15C)
上記濃度調整前の洗浄液に、上記防錆剤を0.8L追加することにより、洗浄液中の防錆剤濃度の調整を行なった。
濃度調整後の防錆剤濃度を液容量から計算すると、下記式(1)及び式(2)により、0.53%と求められる。
なお、防錆剤及び洗浄液の比重はいずれも1.0であることから、以下の計算では、wt%=vol%であることを前提としている。
濃度調整後の防錆剤濃度β(%)=((0.209+0.8)/(190+0.8))×100=0.53(%) ・・・ 式(2)
上記濃度調整後の洗浄液中の防錆剤濃度を、濃度調整前の洗浄液中の防錆剤濃度と同様にして、中和滴定及び防錆剤検量線を用いて測定した。
その結果、下記表1に示すように、濃度調整後の洗浄液中の防錆剤濃度は、0.51wt%と求められた。
このことから、洗浄槽中の洗浄液に含まれる防錆剤濃度及びアミン濃度を、中和滴定によって測定できることが確認された。
<複合部材の作製>
上記防錆剤及び水を種々の比率で混合し、種々のアミン濃度の洗浄液1〜6(表2中の洗浄液No.1〜No.6;防錆処理液)をそれぞれ調製した。得られた各洗浄液について、実験例4と同様の中和滴定によってアミン濃度を測定した。測定されたアミン濃度を下記表2に示す。
・金属部材 … 接着面を切削加工し、その後、予め溶剤脱脂洗浄を施したロータ(材質:炭素鋼S15C)
・洗浄条件 … 常温、浸漬(いわゆる「どぶ漬け」)2分間、ブロー乾燥
上記保管後の金属部材の一方に、白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤(信越化学工業(株)製、商品名AS−2279)をディスペンサで塗布し、次いで、この接着剤塗布面に、上記保管後の他方の金属部材を圧着させることにより、2つの金属部材を接着させて複合部材を得た。
次に、得られた複合部材を加熱炉に入れ、160℃で0.5時間の加熱処理を行い、付加型シリコーン接着剤を硬化させた。
上記金属部材及び複合部材を用い、以下の評価を行なった。評価結果を下記表2に示す。
上記で洗浄された金属部材(85℃、85%RHの環境下での保管前の金属部材)を、35℃、70%RHの環境下で28日間保管し、この保管中に金属部材の表面を目視にて観察し、下記評価基準に従って防錆性を評価した。
下記評価基準において、A、B、及びCであれば実用上の許容範囲内である。
−防錆性の評価基準−
A … 保管開始から14日を超えても錆の発生は認められなかった。
B … 保管開始から7日を越えて14日以内に錆の発生が認められた。
C … 保管開始から1日を越えて7日以内に錆の発生が認められた。
D … 保管開始から1日以内に錆の発生が認められた。
上記加熱処理後の複合部材を用い、2つの金属部材の接着性を以下の方法によって確認し、下記評価基準に従って接着性を評価した。
上記複合部材の接着部位にせん断方向の応力を加え、2つの金属部材が剥離するまでの最大強度(剥離強度)を測定した。
また、対比用のデータとして、上記洗浄液による洗浄を行なう前の金属部材(予め溶剤脱脂洗浄が施された金属部材)2つを上記と同様の条件で接着して対比用複合部材とし、得られた対比用複合部材(以下、「溶剤脱脂洗浄品」とする)について、上記と同様にして、剥離強度を測定した。
−接着性の評価基準−
A … 複合部材の剥離強度が溶剤脱脂洗浄品の剥離強度と同等(100%)であり、非常に高い接着性を示した。
B … 複合部材の剥離強度が溶剤脱脂洗浄品の剥離強度に比べて90%以上100%未満であり、高い接着性を示した。
C … 複合部材の剥離強度が溶剤脱脂洗浄品の剥離強度に比べて70%以上90%未満であり、接着性が実用上の許容範囲内であった。
D … 複合部材の剥離強度が溶剤脱脂洗浄品の剥離強度に比べて50%以上70%未満であり、接着性が実用上の許容範囲内であった。
E … 複合部材の剥離強度が溶剤脱脂洗浄品の剥離強度に比べて50%未満であり、接着性が悪く、実用上の許容範囲を超えていた。
Claims (9)
- 白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤が付与される前の金属部材の防錆処理に用いられ、アミン化合物及び水を含む防錆処理液中のアミン化合物の濃度を中和滴定によって測定し、測定された値が予め定めた濃度範囲に含まれるように管理する管理工程を有する防錆処理液の管理方法。
- 前記予め定めた濃度範囲が、0.02質量%〜0.50質量%の範囲である請求項1に記載の防錆処理液の管理方法。
- 前記予め定めた濃度範囲が、0.02質量%〜0.20質量%の範囲である請求項1又は請求項2に記載の防錆処理液の管理方法。
- 前記管理工程は、前記測定された値が前記予め定めた濃度範囲から外れた場合には、水及びアミン化合物の少なくとも一方の添加より、防錆処理液中のアミン化合物の濃度が前記予め定めた濃度範囲に含まれるように調整する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の防錆処理液の管理方法。
- アミン化合物の濃度が測定される防錆処理液は、アミン化合物以外のアルカリ性成分及び酸性成分の含有量が、アミン化合物の含有量に対し、70質量%以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の防錆処理液の管理方法。
- 前記中和滴定は、pH6〜8を境に色が変化する指示薬を用いて行なう請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の防錆処理液の管理方法。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の防錆処理液の管理方法によって管理された防錆処理液を用い、白金触媒を含む付加型シリコーン接着剤が付与される前の金属部材を防錆処理する防錆処理工程を有する金属部材の処理方法。
- 更に、防錆処理された金属部材に、前記付加型シリコーン接着剤を付与する付与工程を有する請求項7に記載の金属部材の処理方法。
- 請求項8に記載の金属部材の処理方法によって前記付加型シリコーン接着剤が付与された金属部材と他の部材とを、前記金属部材の前記付加型シリコーン接着剤付与面と他の部材の表面とが対向するように接着させる接着工程を有する複合部材の製造方法。
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