JP5904483B2 - 研磨剤を含有する核酸導入剤 - Google Patents
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[1]研磨剤として炭酸カルシウムを含有する、細胞への核酸導入を行なうための核酸導入剤。
[2]細胞が生体内に存在する細胞である、[1]に記載の核酸導入剤。
[3]細胞が漿膜に存在する細胞である、[2]に記載の核酸導入剤。
[4]炭酸カルシウムの粒子径が、1〜80μmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の核酸導入剤。
[5]炭酸カルシウムが、中空の円錐形、すなわち先端が尖っており傘のような形状である、[1]〜[4]のいずれかに記載の核酸導入剤。
[6]炭酸カルシウムが、以下の工程(i)及び(ii)を含む方法によって製造されるものである、[1]〜[5]のいずれかに記載の核酸導入剤:
(i)乳化剤を溶解した有機溶媒の存在下で、炭酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とから固形状の炭酸カルシウムを生成させる工程、
(ii)水相と有機相との間に生じる中間相に存在する炭酸カルシウムを回収する工程。
[7]乳化剤が卵黄レシチンである、[6]に記載の核酸導入剤。
[8]核酸と共に腹腔内投与又は胸腔内投与される、[1]〜[7]のいずれかに記載の核酸導入剤。
[9]腹膜播種又は胸膜播種の予防及び/又は治療用である、[8]に記載の核酸導入剤。
[10]腹膜癒着又は胸膜癒着の予防用である、[8]に記載の核酸導入剤。
[11]形状が底面の開いた中空の円錐形であり、且つ見掛け密度が0.2g/cm3未満である炭酸カルシウムの製造方法であって、以下の工程(i)及び(ii)を含む方法:
(i)乳化剤を溶解した有機溶媒の存在下で、炭酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とから固形状の炭酸カルシウムを生成させる工程、
(ii)水相と有機相との境界に存在する炭酸カルシウムを回収する工程。
[12]乳化剤が卵黄レシチンである、[11]に記載の方法。
[13]炭酸カルシウムが、[11]又は[12]に記載の方法により製造されたものである、[1]〜[10]のいずれかに記載の核酸導入剤。
炭酸カルシウムは、従来のウイルス性ベクターやカチオン性キャリアと比較して、安価であること、特殊な施設や機器を使用することなく容易に調製することができることなどから、製剤学的に望ましい特徴を持つ。特にアサガオ形の構造を有する炭酸カルシウム結晶は、沈降速度が従来の炭酸カルシウムよりも遅く、沈殿しても再懸濁可能であるため、臨床応用において、より安全且つ簡便な臓器表面への核酸導入が可能となる。
見掛け密度は、当該分野において公知の方法(例えば、JIS K 5101−12−1、JIS K 6220等)によって測定することもでき、その場合にも、炭酸カルシウムマイクロフラワーは、前記球形又は立方体の炭酸カルシウムよりも低い見掛け密度を示す。
(i)乳化剤を溶解した有機溶媒の存在下で、炭酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とから固形状の炭酸カルシウムを生成させる工程、
(ii)水相と有機相との間に生じる中間相に存在する炭酸カルシウムを回収する工程。
本製造方法は、油水抽出によって水相中の炭酸カルシウムが有機相中に移行することに着目することで、開発に成功したものである。
有機溶媒としては、医薬品や食品、食品添加物などの製造、加工に使用が許可されたものが好ましく、アルコール類、エーテル類、脂肪酸エステル類、ケトン類、炭化水素類、油脂類等を挙げることができ、具体的にはジエチルエーテル等が挙げられる。乳化剤としては、医薬品用、食品用、化粧品用に通常使用されている界面活性剤の中から、生体に対して安全性の高いものを適宜選択して用いることができる。乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、レシチン(例、大豆レシチン、卵黄レシチン)等が挙げられるが、卵黄レシチンを使用することが好ましい。乳化剤の濃度は、特に限定されないが、通常5〜20重量%である。
工程(i)において、有機溶媒と水溶液を混合することにより、有機相と水相の二相に分離する。有機相(有機溶媒に由来する部分)と水相(水溶液に由来する部分)との割合は特に限定されないが、通常、重量比で1:1〜3程度、好ましくは1:2程度となるよう調整する。
炭酸カルシウムが生成した後、有機相と水相の分離をよくするため、適宜エタノール−ジエチルエーテル(1:1)混液等を加えてもよい。エタノール−ジエチルエーテル混液は、有機溶媒に対して、通常、1〜3倍(重量)、好ましくは約2倍(重量)で添加される。
当該工程は、通常15〜35℃、好ましくは20〜25℃で、2〜10時間、好ましくは3〜4時間実施される。
所望に応じて種々の化学修飾を施したものであってもよい。
miRNAとしては、任意の公知のものを用いることができるが、本発明の核酸導入剤を疾患の予防・治療用に用いる場合には、miRNAは、腹腔内の疾患若しくは状態又は胸腔内の疾患若しくは状態の発症及び/又は増悪に関与する遺伝子を標的とするものであることが好ましい。例えば、上記遺伝子を標的とすることが報告されているmiRNAとしては、miR−516a−3p等が挙げられるが、これらに限定されない。
アンチセンス核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸がDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNaseHに認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こすことができる。
リボザイムは、狭義には、核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。標的mRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる。
溶剤の好適な例としては、注射用水、生理的食塩水、リンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油などが挙げられる。
溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子、植物油、アルコール類、プロピレングリコールなどが挙げられる。
等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール、D-ソルビトール、ブドウ糖などが挙げられる。
緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩などが挙げられる。
着色剤の好適な例としては、水溶性食用タール色素(例、食用赤色2号および3号、食用黄色4号および5号、食用青色1号および2号などの食用色素)、水不溶性レーキ色素(例、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩など)、天然色素(例、β−カロチン、クロロフィル、ベンガラなど)などが挙げられる。
胃漿膜表面への核酸導入
導入用核酸として以下の手順により調製したプラスミドDNAを用いた:CMVプロモーターの下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードしたプラスミドDNA(pCMV−luciferase)を大腸菌(DH5α)に形質転換して増幅後、遠心分離により大腸菌を回収し、EndoFree(登録商標) Plasmid Giga Kit(QIAGEN GmbH, Hilden, Germany)を用いて精製した。
マウス胃漿膜へのプラスミドDNA導入は、以下の手順により行なった:ペントバルビタールナトリウム麻酔下、5週齢ddY系雄性マウスの胃近傍の皮膚および腹壁を切開し、速やかにプラスミドDNA溶液(1μg/μl)20μlを胃中央部に滴下した。あるいは、皮膚を切開後、腹壁を切開せず、26ゲージの針付シリンジを用いて腹壁越しにプラスミドDNA溶液を胃中央部に滴下した。滴下後、腹壁および皮膚を縫合糸で縫合した。
プラスミドDNA導入効率の評価は、以下の手順により行なった:プラスミドDNA投与6時間後、ペントバルビタールナトリウム麻酔下、胃を摘出した後、胃内容物を除去し、生理食塩水で胃を洗浄した。その後、4倍容のLysis Buffer(0.05% Triton X−100と2 mM EDTAを含む0.1 M Tris/HCl Buffer(pH7.8))を加え、ホモジナイズした。ホモジネートを遠心分離後、上清中のホタルルシフェラーゼ活性を測定した。
結果を図1に示す。開腹せずにプラスミドDNAを腹壁越しに胃近傍へ投与した場合の遺伝子導入効率は、開腹して胃を露出させてプラスミドDNAを滴下した場合と比較して、30分の1以下であった。このことから、腹腔内臓器表面への効率的な遺伝子導入には、開腹操作が有効であることが示された。
胃漿膜表面の摩擦の核酸導入効率への影響
参考例1の結果から、腹腔内臓器表面への物理的な刺激が核酸導入効率を向上させることが推測された。そこで以下の手順により、核酸導入時に胃漿膜表面を摩擦し、その核酸導入効率への影響を調べた。
参考例1と同様に、ラット胃漿膜表面へプラスミドDNA溶液(1μg/μl)5μlを滴下後、薬さじ(有効面積0.13cm2)を用いて胃漿膜表面を摩擦し(0.3N/cm2、30秒間)、以下参考例1と同様の操作を行った。
結果を図2に示す。開腹して胃漿膜表面にプラスミドDNA溶液を滴下する際に薬さじで滴下部位を摩擦した場合(instillation + rubbing)には、プラスミドDNA溶液を滴下したのみの場合(instillation)と比較して、59倍高い遺伝子導入効率が得られた(各群、n=10以上)。尚、instillation、instillation + rubbingのいずれの場合も、胃以外の臓器での遺伝子発現はごくわずかであり、投与部位特異的に遺伝子導入が可能であった(ルシフェラーゼ活性比(胃/脾臓):40.7(instillation)、421(instillation + rubbing))。
さらに、遺伝子導入時に胃漿膜表面を摩擦した場合と摩擦しない場合の遺伝子発現期間を比較した。
参考例1および参考例2と同様に、ラット胃漿膜表面へのプラスミドDNAの投与と摩擦を行い、一定時間経過後の胃におけるホタルルシフェラーゼ活性を測定した。
結果を図3に示す。滴下部位を摩擦した場合(instillation + rubbing)には、摩擦しない場合(instillation)と比較して、遺伝子導入効率が有意に高く、遺伝子導入から28日経過後でも十分な遺伝子発現が認められた(各群、n=10以上)。
炭酸カルシウムによる遺伝子導入効率の向上
参考例に示すように、腹腔内臓器表面への摩擦などの物理的な刺激が核酸導入効率を向上させることが明らかとなった。しかしながら、開腹して腹腔内臓器表面を露出させて物理的刺激を加えることは、生体への負担が大きく、またその機会は限られている。そこで核酸溶液と共に研磨剤などを腹腔内投与することで、開腹せずに同様な核酸導入効率向上効果が得られるか否かを検討したところ、以下に示すように、炭酸カルシウムが核酸導入効率を向上させることを見出した。
炭酸カルシウムとプラスミドDNAの胃漿膜近傍への投与は以下の手順で行なった:皮膚を切開後、腹壁を切開せず、26ゲージの針付シリンジを用いて腹壁越しに、炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社、販売元コード036−00382)(最終濃度100、50、25、12.5又は6.25μg/μl)をプラスミドDNA溶液(1μg/μl)に混合した懸濁液(10μl)を胃中央部に滴下した。滴下後、皮膚を縫合糸で縫合した。
結果を図4に示す。100μg/μlの炭酸カルシウムを使用した場合、炭酸カルシウムを使用しない場合と比較して、遺伝子導入効率は約70倍に上昇した。炭酸カルシウムの量を12.5μg/μl以下にまで下げると、遺伝子導入効率は炭酸カルシウム未使用時と同程度まで低下した。
以上の結果から、炭酸カルシウムが核酸導入効率を向上させることが示された。
炭酸カルシウムマイクロフラワーの製造
本発明の遺伝子導入剤として使用する場合、既存の炭酸カルシウムは、沈降しやすく、ケーキング(自由沈降した懸濁粒子を放置することにより固化する現象)を起こして再懸濁不良となる場合があるが、これは臨床応用の妨げとなる。そこで種々の形状及び大きさの炭酸カルシウムの特性について検討を行なった。球形の炭酸カルシウム(炭酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合し炭酸カルシウムを合成した後、遠心分離した上清)は、小さく(粒径3μm)沈降しにくいが、核酸導入効率を向上させる効果が低い傾向があった。一方、立方体の炭酸カルシウム(炭酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合し炭酸カルシウムを合成した後、遠心分離した沈殿)は、核酸導入効率を向上させる効果が高いが、大きい(粒径15μm)ため球形の炭酸カルシウムに比べて沈降しやすかった。
本発明者らは、核酸導入剤としてより優れた特性を有する炭酸カルシウム粒子を得るために、以下の手順で炭酸カルシウムを製造した。
ジエチルエーテル1mlにEggPC(卵黄レシチン)(和光純薬工業株式会社、販売元コード126−00812)200mgを溶解させ、有機相存在下、炭酸ナトリウム水溶液(1M、1ml)と塩化カルシウム水溶液(1M、1ml)をボルテックスしながら順に混合し、炭酸カルシウムを合成した。反応後、エタノール(1ml)及びジエチルエーテル(1ml)を更に加え、分離するまで放置した。中間相に浮遊している炭酸カルシウムを回収し、エタノール・ジエチルエーテル混液(1:1)5ml、エタノール・ジエチルエーテル混液(0.5:1)5ml、ジエチルエーテル5mlで沈殿を洗浄した後、乾燥させた。
得られた炭酸カルシウム結晶の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。アサガオ形のその形状から、得られた炭酸カルシウム結晶を炭酸カルシウムマイクロフラワーと命名した。
また炭酸カルシウムマイクロフラワーの見掛け密度を以下の手順により測定した。炭酸カルシウムマイクロフラワーの結晶をエッペンドルフ(登録商標)チューブに充填した。タッピングした後、試料の重量を測定した。試料の上端の位置に目印をつけた後、容器を空にし、目印まで加えた水の重量から試料の体積を算出した。試料の重量を当該体積で割ることにより見掛け密度を計算した。炭酸カルシウムマイクロフラワーの見掛け密度は0.143g/cm3であった。同様に測定した市販の炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社、販売元コード036−00382)の見掛け密度は0.454g/cm3であった。
以上のように、炭酸カルシウムマイクロフラワーは、球形の炭酸カルシウムよりも大きい粒子を含む(粒径2〜80μm)が、中空で密度が低く、かつ傘のような形状であるため、沈降中に溶媒から受ける抵抗が大きい。そのため、球形の炭酸カルシウムと同様に沈降速度が遅く、また沈殿しても再懸濁が容易であるという、製剤学的に優れた特性を有する。
炭酸カルシウムマイクロフラワーによる核酸導入効率の向上
実施例2において製造した炭酸カルシウムマイクロフラワーを使用して、実施例1と同様の方法により、核酸導入効率を調べた。なお、ここでは懸濁化剤として、33v/v%のプロピレングリコールを用いた。
結果を図6に示す。既存の炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社、販売元コード036−00382);図中、wako)を使用した場合とは異なり、炭酸カルシウムマイクロフラワー(図中、MF)の濃度を100μg/μlから6.25μg/μlまで下げても、遺伝子導入効率は低下しなかった(各群、n=5以上)。このことは、炭酸カルシウムマイクロフラワーが既存の炭酸カルシウムよりも低用量で核酸導入剤として有効に機能することを示す。また6.25μg/μlの炭酸カルシウムマイクロフラワーを使用した場合、投与前に超音波処理を施すと、遺伝子導入効率は1/10にまで低下した。このことは、超音波処理によって破壊される炭酸カルシウムマイクロフラワーの構造が、核酸導入剤としての機能に重要であることを示す。
炭酸カルシウムマイクロフラワーによる腹腔内臓器全体への遺伝子導入1:遺伝子発現細胞の分布
実施例2において製造した炭酸カルシウムマイクロフラワー(最終濃度6.25μg/μl)を使用して、緑色蛍光タンパク質ZsGreen1をコードしたプラスミドDNA溶液(タカラバイオ株式会社:pZsGreen1−N1)100μg/100μl(懸濁化剤として、33v/v%のプロピレングリコールを含む)の腹腔内投与により、マウス腹腔内臓器全体への遺伝子導入を試みた。遺伝子導入は、100μlの懸濁液を用いて実施例1と同様の方法で行なった。
結果の一部を図7に示す。プラスミドDNAの投与24時間後に実体蛍光顕微鏡により観察を行ったところ、炭酸カルシウムマイクロフラワーを用いない場合、緑色蛍光タンパク質ZsGreen1を発現している細胞はわずかであったが、炭酸カルシウムマイクロフラワーを使用した場合、肝臓、脾臓、胃、小腸、直腸、腎臓等の臓器表面並びに腹壁、腸間膜、大網の各部位で、極めて多数のZsGreen1発現細胞が認められ、腹腔内臓器全体へ核酸を導入可能であることが示された。
炭酸カルシウムマイクロフラワーによる腹腔内臓器全体への遺伝子導入2:分泌タンパク質をコードしたプラスミドDNAの導入
実施例4で用いたプラスミドDNAを、分泌型コペポーダルシフェラーゼをコードしたプラスミドDNAに置き換え検討を行った。24時間後、コペポーダルシフェラーゼの活性を測定することにより腹腔内液および血漿中のコペポーダルシフェラーゼの濃度を評価したところ、腹腔内液中の濃度は血漿中濃度より300倍高かった(データは示さない)。従って本発明の核酸導入剤を使用する核酸導入方法は、腹腔内への選択的なタンパク質の分泌に適した方法であることが示され、分泌型の治療遺伝子を用いる際の高い安全性を担保するものである。
Claims (9)
- 研磨剤として炭酸カルシウムを含有する、細胞への核酸導入を行なうための核酸導入剤であって、細胞への核酸の導入が、該核酸導入剤と核酸溶液とを細胞に接触させることによって行われるものである、核酸導入剤。
- 細胞が生体内に存在する細胞である、請求項1に記載の核酸導入剤。
- 細胞が漿膜に存在する細胞である、請求項2に記載の核酸導入剤。
- 炭酸カルシウムの粒子径が、1〜80μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸導入剤。
- 炭酸カルシウムが、中空の円錐形である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸導入剤。
- 核酸と共に腹腔内投与又は胸腔内投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸導入剤。
- 腹膜播種又は胸膜播種の予防及び/又は治療用である、請求項6に記載の核酸導入剤。
- 腹膜癒着又は胸膜癒着の予防用である、請求項6に記載の核酸導入剤。
- 形状が底面の開いた中空の円錐形であり、且つ見掛け密度が0.2g/cm3未満である炭酸カルシウムの製造方法であって、以下の工程(i)及び(ii)を含む方法:
(i)卵黄レシチンを溶解したジエチルエーテルの存在下で、炭酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とから固形状の炭酸カルシウムを生成させる工程、
(ii)水相と有機相との境界に存在する炭酸カルシウムを回収する工程。
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