JP2007528899A - 受容体特異的ナノ容器を使用するショートヘアピンrnaをコードする遺伝子の送達 - Google Patents

受容体特異的ナノ容器を使用するショートヘアピンrnaをコードする遺伝子の送達 Download PDF

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Abstract

所定受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するために受容体特異的ナノ容器を使用する。細胞の内側に入ると、前記遺伝子はヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)mRNA等の癌遺伝子や他の疾患原因ヌクレオチド配列の少なくとも一部に対してアンチセンスのヌクレオチド配列を含むショートヘアピンRNAを発現する。ショートヘアピンRNAは細胞質において発癌遺伝子又は疾患原因遺伝子を不活性化(ノックダウン)するのに有効な短いRNAデュプレックスに変換される。

Description

本発明は一般には脳を含む体内臓器及び組織への遺伝子薬の送達に関する。より詳細には、本発明はリポソーム技術、受容体技術、ペグ化技術及び治療遺伝子技術を併用したアンチセンス遺伝子治療に関する。本発明は脳腫瘍及び他の固形癌の治療に有用な製剤を提供する。
本発明の背景を記載するため及びその実施に関する更に詳細を記載するために本明細書に言及する刊行物及び他の参考文献は参考資料として本明細書に組込む。便宜のために、参考文献に番号を付け、末尾に一覧にまとめる。
遺伝子治療は10年以上前から5000人を越える患者で使用されているが、脳腫瘍を含むヒトにおける癌の治療では成功していない(1)。ペトリ皿や基礎動物モデルで癌治療の成功例は多いが、癌をもつヒトではこの進歩が得られていない。ペトリ皿からヒトに発展できないのは細胞培養系には存在しない数種の遺伝子送達障害が人体に存在するためである。脳腫瘍の遺伝子治療では、治療遺伝子をウイルスベクターに組込み、開頭術後に脳に注入している(1)。しかし、このアプローチは2つの理由で問題がある。第1に、血管脳関門(BBB)を形成する腫瘍の血管関門を通って遺伝子を送達するのが脳内の全癌遺伝子に治療遺伝子を送達する唯一の方法である。患者の頭部に穴を開け、この穴を通して遺伝子を注入するので、遺伝子を送達する癌細胞の率が低い(1)。第2に、ウイルスベクターの使用は問題がある。
アデノウイルスやヘルペスウイルス等のウイルスベクターは脳に炎症を生じ、脱髄をもたらす(2,3)。レトロウイルスやアデノ随伴ウイルス(AAV)等のウイルスベクターは患者の染色体にランダム及び永久的組込みを生じ(4,5)、挿入突然変異誘発による二次癌を誘発する恐れがある。従って、遺伝子治療の制限因子は非ウイルス送達システムの必要性と、静脈内注射後にBBBを通過する遺伝子送達システムの必要性の両面に関する送達である。このような遺伝子送達システムは脳を含む組織及び臓器に遺伝子を送達するためにペグ化イムノリポソーム(PIL)を使用する米国特許第6,372,250号に教示されている。
疾患遺伝子の発現をノックダウンすることを目的とする特殊な型の遺伝子治療をアンチセンス遺伝子治療と言う。治療遺伝子は細胞内で標的mRNAに対してアンチセンスの長鎖RNAをコードする。アンチセンスRNAは標的mRNAとデュプレックスを形成し、標的mRNAの分解を誘導するか又はmRNA翻訳を阻止し、ある種の転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を生じる。過去数年以内に、約20ヌクレオチド長の短いRNAデュプレックスを細胞に注入することによりPTGSを誘発できることが発見された(6)。
RNAデュプレックスは標的mRNAに対してアンチセンスの規定配列をもち、RNAデュプレックスと標的mRNAの複合体が形成されると、標的mRNAの分解又はmRNA翻訳阻止とPTGSを生じる。この形態のPTGSは短いRNAデュプレックスにより媒介されることからRNA干渉(RNAi)と呼ばれる(7)。RNAはin vivoでは非常に不安定であるので、発現プラスミドがステム−ループ構造からなるショートヘアピンRNA(shRNA)をコードするDNA形態のRNAiが開発された(6)。shRNAは細胞で発現されると、細胞質に輸送され、短いRNAデュプレックスにプロセシングされた後、標的mRNAのPTGSを生じることができる(6)。shRNAは標的mRNAに100%相補的であり、サイレンシングRNA(siRNA)として機能し、標的mRNA分解を誘導することができる。あるいは、shRNAは標的mRNA配列に対して不完全な相補性をもち、マイクロRNA(miRNA)として機能し、標的mRNA翻訳阻止を生じることもできる。RNAiは癌、ウイルス感染症及び他の疾患の治療に大いに期待されるが、ヒトにおけるRNAiの適用はまだ別形態の遺伝子治療であるため、他の形態の遺伝子治療と同一の送達の問題により制限されている(8)。ヒトでは如何なる形態の遺伝子治療も臨床的に成功していないので、過去に使用されている標準アプローチによりRNAi遺伝子治療が成功するとは殆ど考えられない。
上皮増殖因子受容体(EGFR)は多形性膠芽腫(GBM)と呼ばれる原発性極悪性脳腫瘍の90%で過剰発現され(9)、固形癌一般の70%で過剰発現される(10)。EGFRはこれらの癌で腫瘍形成の役割を果たし、新癌治療の開発で現在最も集中的に研究されているターゲットである。癌におけるEGFRをノックダウンするために小分子(11)や、EGFR特異的モノクローナル抗体(12)を含む各種のアプローチが試みられている。ペトリ皿での研究ではアンチセンス遺伝子治療によるEGFRのターゲティングを実施できることが示されている(13)が、送達の問題を解決できないため、脳腫瘍を含む癌をもつ動物生体でこのアプローチを実施するには至っていない。
nt2300−3000のヒトEGFR mRNAに対してアンチセンスの700ヌクレオチド(nt)RNAをコードする非ウイルス発現プラスミドが作製されている(14)。PIL遺伝子ターゲティングアプローチを使用して脳腫瘍をもつマウスにこの発現プラスミドを送達し、マウスの生存時間の100%増加が達成された(15)。しかし、この発現プラスミドの効力を増加するためには、エプスタインバール核抗原(EBNA)−1をコードする遺伝子をプラスミドに加える必要があった(15)。EBNA−1は分割細胞で遺伝子発現を増加し、PIL遺伝子ターゲティング技術による細胞送達後にヒト脳腫瘍における外来遺伝子発現を10倍に増加した(16)。しかし、EBNA−1は腫瘍形成性であり(17)、ヒトで使用する遺伝子に組込むと癌を発生する恐れがある。従って、EGFRに特異的であり、所望治療効果を達成するためにEBNA−1を使用する必要のない新規でより強力な形態のアンチセンス遺伝子治療が必要である。
ある報告はカチオン脂質と共に送達した合成RNAデュプレックスにより細胞培養でヒトEGFRのPTGSを達成できることを示している(18)。しかし、shRNAを発現するプラスミドDNAから細胞内で生産されたshRNAでヒトEGFRのPTGSを生ずること即ちDNAによるRNAiが可能であるということは従来の研究では立証されていない。DNAによるRNAiによりEGFRをノックダウンできるか否かに関する不確実性を増すのは、一般に完全なRNAi効果を生じる標的配列をmRNA内で見いだすことは困難であり、一般に全試験配列の20%しか有効でないという事実である(6)。
PIL遺伝子ターゲティングアプローチを使用して脳腫瘍をもつ成体ラットにルシフェラーゼ遺伝子に対するshRNAをコードするプラスミドDNAを送達できることは従来の研究に示されている(19)。しかし、この形態の脳腫瘍で発現されるルシフェラーゼ遺伝子は単にレポーター遺伝子であったので、PIL遺伝子ターゲティング技術によるRNAiをコードする遺伝子の脳腫瘍送達が生存に有効であるか否かを評価することはできなかった。
米国特許第6,372,250号 米国特許出願第10/025,732号 米国特許出願第10/647,197号 米国特許第4,801,575号 米国特許第5,154,924号 米国特許第5,182,107号 米国特許第5,527,527号 米国特許第5,672,683号 米国特許第5,833,988号 米国特許第5,977,307号 米国特許出願第10/307,276号
本発明によると、所定受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNA遺伝子を送達するために受容体特異的ナノ容器を使用する。細胞の内側に入ると、前記遺伝子はヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)mRNA等の発癌遺伝子又は他の疾患原因遺伝子の少なくとも一部に対してアンチセンスのヌクレオチド配列を含むショートヘアピンRNAを発現する。ショートヘアピンRNAは細胞質において発癌遺伝子又は疾患原因遺伝子を不活性化(ノックダウン)するのに有効な短いRNAデュプレックスに変換される。
EGFR mRNA等の発癌遺伝子の所定領域は本発明の受容体特異的ナノ容器を使用して攻撃し易いことが発見された。例えば、ヌクレオチド2300〜3800に位置するEGFR mRNAの部分に対してアンチセンスのショートヘアピンRNAを発現する遺伝子は癌の治療に有効であることが判明した。更に、ヌクレオチド2500〜3000に位置するEGFR mRNAの部分に対してアンチセンスのショートヘアピンRNAを発現する遺伝子は癌の治療に特に有効であることが判明した。ヌクレオチド2500〜2600に位置するEGFR mRNAの部分は本発明のショートヘアピンRNAにより特に攻撃し易いことが判明した。
本発明は受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAを送達するための方法にも関する。前記方法は本発明のshRNAをコードするプラスミドDNAを含む受容体特異的ナノ容器と受容体特異的ナノ容器の医薬的に許容可能なキャリヤーを含む有効量の製剤を動物に投与する段階を含む。製剤は静脈内注射等の非侵襲的方法により投与される。本発明による週1回静脈内RNAi遺伝子治療を使用して実施した生存試験では、頭蓋内ヒト脳腫瘍をもつ成体マウスで生存時間の有意増加が観察された。
本発明の上記及び他の多くの特徴とそれに伴う利点は添付図面と共に詳細な説明を参照することにより更によく理解されよう。
本発明は遺伝子治療と、ショートヘアピンアンチセンスRNAを使用するRNA干渉(RNAi)と、遺伝子ターゲティング技術を併用して動物における疾患遺伝子を不活性化(「ノックダウン」)するために有効な組成物と方法を提供する。本発明は治療遺伝子の非侵襲的な非ウイルス送達方法及び組成物を教示する米国特許第6,372,250号に記載されている遺伝子ターゲティング技術に基づく。この技術は遺伝子薬の非ウイルス製剤の単純な静脈内注射後に治療遺伝子を遠位部位にターゲティングすることができる。この遺伝子ターゲティング技術とアンチセンス遺伝子治療の1形態であるRNAiを併用することにより、動物における疾患原因遺伝子をノックダウンすることができる。
本発明の受容体特異的ナノ容器は受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAを送達するように設計される。組成物は外部表面と内部コンパートメントをもつナノ容器を含む。複数の受容体ターゲティング剤が結合剤によりナノ容器の表面に結合されている。ターゲティング剤はナノ容器にその受容体特異的ターゲティング能を付与する。ナノ容器の内部コンパートメント内に遺伝子を配置する。遺伝子はショートヘアピンRNAをコードするために十分な量の遺伝情報を含む。ショートヘアピンRNAのヌクレオチド配列はmRNA又は受容体標的細胞が機能するために必要な他のヌクレオチド配列の少なくとも一部に対してアンチセンスなヌクレオチドを含む。
ナノ容器はリポソームであることが好ましいが、外部表面とショートヘアピンRNAを収容するための内部コンパートメントを含む適切な他の任意ナノ容器でもよい。リポソームは直径200ナノメートル未満であることが好ましい。直径50〜150ナノメートルのリポソームが好ましい。外径約80〜100ナノメートルのリポソーム又は他のナノ容器が特に好ましい。適切な型のリポソームは1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロール−3−ホスホコリン(POPC)、ジホスファチジルホスホコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、又はコレステロール等の中性リン脂質と、リポソーム内のアニオン性DNAを安定化するために少量(1−5%)のジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)等のカチオン性脂質から構成される。非侵襲的遺伝子ターゲティング用ナノ容器としてのリポソームの作製及び使用方法は米国特許第6,372,250号や係属中の米国特許出願第10/025,732号及び10/647,197号に教示されているように周知である。
リポソーム又は他のナノ容器に内包される遺伝子は標的mRNA又は他のヌクレオチド配列を不活性化又は少なくとも減弱させるために十分な量のアンチセンス配列を含むショートヘアピンRNA(shRNA)をコードする任意遺伝子とすることができる。本明細書の目的で「ショートヘアピンRNA」とは19〜29ヌクレオチドのステム長と、5〜10ヌクレオチドのループ長と、図1Bに示すようなヘアピン形状をもつRNAである。ショートヘアピンRNAはショートヘアピンRNAのアンチセンス部分を含み、19〜29ヌクレオチド長が好ましいが、標的mRNA内の接近可能な部位の寸法により異なる場合もある。使用可能な代表的ショートヘアピンRNAとしてはEGFRやras等の発癌遺伝子受容体、血管内皮増殖因子(VEGF)又はVEGF受容体(VEGFR)等の血管形成因子又は受容体に対してアンチセンスのものが挙げられる。ショートヘアピンRNAをコードする遺伝子はリポソーム又はナノ容器の内部コンパートメント内に内包されたプラスミドDNAにより発現されることが好ましい。
ショートヘアピン遺伝子は周知薬剤内包法の任意のものに従ってリポソーム内に内包することができる。例えば、内包は音波処理、凍結/解凍、蒸発、洗浄剤透析、及びメンブレンフィルターによる押出により実施することができる。
リポソーム混合物内に内包される遺伝子数は治療する疾患に応じて1から多数までとすることができるが、各ナノ容器はプラスミドDNAの有効半径に応じて1又は2個以下のプラスミドDNA分子を含むことができる。制限因子は内包される遺伝子の寸法とリポソームの内部コンパートメントの寸法である。ヒストン、プロタミン、又はポリリジン等のポリカチオン性蛋白質を使用すると、数千ヌクレオチドを含むプラスミドDNAの寸法を直径10〜30nmの構造まで圧縮することができる。ショートヘアピンRNAを発現させるために使用される遺伝子は比較的小さいため、多数の遺伝子を単一のタンデム発現プラスミドDNAに組込むことができる。必要に応じて、リポソームの内側にDNAを内包する前に、同一遺伝子の多数のコピー又は多重遺伝子の多重コピーを発現プラスミドDNAの内側に内包することができる。一般に、任意所定ナノ容器に存在する遺伝子数をできるだけ多くすることが望ましい。
内包した遺伝子を所望標的細胞に(必要に応じて血液脳関門を通って)輸送するためには、多数のターゲティング剤をナノ容器に結合する。適切なターゲティング剤としては細胞表面に位置する所望受容体にナノ容器をターゲティングできる任意物質が挙げられる。任意数のターゲティング剤を使用することができるが、好ましい物質としてはインスリン、トランスフェリン、インスリン様成長因子、レプチン、線維芽細胞増殖因子等の内在受容体リガンド、又は内在リガンドと同様に受容体に結合するペプチドミメティックモノクローナル抗体(MAb)が挙げられる。内在リガンド又はペプチドミメティックMAbはいずれも細胞の外部表面への受容体結合後に細胞の内部に受容体によるエンドサイトーシスが行われるようにエンドサイトーシス性リガンドでなければならない。一般に、ターゲティングリガンドは血管関門の背後の血管内皮細胞と標的腫瘍細胞の両者の細胞膜を通ってリポソームのエンドサイトーシスを開始しなければならない。血管内皮細胞膜関門と標的細胞膜関門の両者を通ってリポソームをターゲティングすることができるターゲティング剤が好ましい。このためには、標的受容体が血管内皮細胞関門と標的細胞膜の両者で発現されなければならない。脳の場合には、血管内皮細胞膜はBBBである。このようなターゲティング剤ないし「輸送型ペプチド」としてはBBBと脳細胞膜(BCM)の両者で発現される全標的コグネイト受容体としてのインスリン、トランスフェリン、インスリン様成長因子、もしくはレプチン、又はその対応するペプチドミメティックMAbが挙げられる。あるいは、内在BBB受容体をターゲティングするペプチドと内在BCMをターゲティングするペプチドの2種の異なる「輸送型ペプチド」をリポソームの表面に結合することができる。後者ペプチドはニューロン、グリア細胞、ペリサイト、平滑筋細胞、又は小グリア細胞等の脳内の特定細胞に対して特異的であると考えられる。ターゲティングペプチドは受容体の内在ペプチドリガンドでもよいし、内在リガンドの類似体でもよいし、内在リガンドの同一受容体と結合するペプチドミメティックMAbでもよい。輸送型ペプチド一般の使用と、ターゲティングリガンドとしてのトランスフェリン又はインスリンの使用は米国特許第4,801,575号に詳細に記載されている。BBB「輸送型ペプチド」としての受容体(TfR)特異的ペプチドミメティックモノクローナル抗体は米国特許第5,154,924号;5,182,107号;5,527,527号;5,672,683号;5,833,988号;及び5,977,307号に詳細に記載されている。ヒトインスリン受容体(HIR)に対するMAbをBBB「輸送型ペプチド」として使用することが好ましい。ヒトインスリン受容体に対する代表的な好ましいMAbは米国特許出願第10/307,276号に開示されている。
ターゲティング剤をリポソームの表面に結合するために使用される結合剤はスフィンゴミエリン、ポリエチレングリコール(PEG)又は他の有機ポリマー等の周知ポリマー結合剤の任意のものとすることができる。PEGが特に好ましい結合剤である。結合剤の分子量は1000〜50,000DAが好ましい。特に好ましい結合剤は一端に脂質を含み、他端にマレイミド基を含む二官能性2000DA PEGである。PEGの脂質端はリポソームの表面に挿入し、マレイミド基は受容体特異的モノクローナル抗体又は他の血液脳関門ターゲティングビヒクルと共有結合を形成する。各リポソームに5〜1000個のターゲティングビヒクルを結合することが好ましい。約25〜75個のターゲティングビヒクルを結合したリポソームが特に好ましい。
リポソームが好ましいナノ容器であるが、当業者に自明の通り、他のナノ容器も使用できる。例えば、リポソームの代わりにナノ粒子を使用してもよいし、遺伝子を内包することができ、製剤が血液中にあるか又は血液から標的細胞の細胞内コンパートメントに移動している間に核酸をヌクレアーゼから保護することができる直径<200nmの他の任意ナノ容器を使用してもよい。同様に、リポソーム又はナノ容器の表面に結合しており、「輸送型ペプチド」を結合するため及び製剤が血液から除去されるのを遅らせるための足場を提供すると共に血漿薬物動態を最適化するという二重の目的をもつ他の多重ポリマー物質(例えばスフィンゴミエリン)をPEG鎖の代わりに使用することができる。更に、本発明は脳、肝臓、肺及び脾臓を含む特異的標的受容体をもつ各種細胞又は臓器にショートヘアピンアンチセンスRNAを発現する遺伝子を送達することを意図する。更に、本発明は係属中の米国特許出願第10/025,732号に詳細に記載されているように、血液網膜関門を通って網膜及び他の眼構造にshRNAを発現する遺伝子を送達することを意図する。本発明の受容体特異的ナノ容器は静脈内投与に適した任意医薬キャリヤーと併用することができる。受容体特異的ナノ容器の静脈内投与は侵襲性が最低であるので好ましい経路である。必要に応じて他の投与経路も可能である。適切な医薬的に許容可能なキャリヤーとしては食塩水、Tris緩衝液、リン酸緩衝液、又は他の任意水溶液が挙げられる。
受容体特異的ナノ容器の治療有効量は治療する個体と投与する特定遺伝子により多様である。適切な投与量は当業者に周知の方法により設定される。
脳腫瘍及び大半の固形癌一般は上皮増殖因子受容体(EGFR)を過剰発現する。EGFRはこれらの癌において腫瘍形成の役割を果たす。多くの現在の癌治療はEGFRの阻害を目的としている。以下の本発明の好ましい代表的態様の記載はウイルスベクターを使用せずに単純な静脈内投与しか必要としない非侵襲的遺伝子治療でEGFRを脳腫瘍においてin vivoノックアウトする方法を立証する。
以下の詳細な記載の実施例に記載する代表的標的遺伝子は脳腫瘍(20,21)及び大半の固形癌一般(10)において腫瘍形成の役割を果たすヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)である。以下の記載では、本発明が癌患者を延命できることを立証するためにヒト頭蓋内脳腫瘍のマウスモデルを使用する。当業者に自明の通り、本発明は癌又は他の疾患に関与する可能性のある他の標的遺伝子をノックダウンするために使用することもできる。ショートヘアピンRNAアンチセンス治療を使用してターゲティングすることができる他の発癌原因遺伝子としては、発癌性キナーゼドメインが構成的に活性であり、野生型EGFRとは異なる配列をもつEGFRmRNAの突然変異体形により発現されるEGFRの突然変異体が挙げられる。多くの脳腫瘍及び他の固形癌はvIII EGFR突然変異体等の各種EGFR突然変異体を発現する。受容体である他の発癌遺伝子ターゲットとしてはGBM、乳癌、卵巣癌、肺癌、及び頭頸部癌におけるHER2、HER3、HER4、肺癌、卵巣癌及び乳癌における線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、GBMにおける血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、充実性腫瘍におけるインスリン様成長因子受容体−1(IGFR1)が挙げられる(39)。増殖因子である他の発癌遺伝子ターゲットとしてはEGFRを過剰発現する癌におけるトランスフォーミング増殖因子−α(TGF−α)、GBMにおけるPDGF、又は癌における血管形成を阻止するためのVEGFが挙げられる(39)。改変蛋白質キナーゼを含む他の発現遺伝子ターゲットとしては慢性骨髄性白血病(CML)におけるBcr−Abl、腎臓癌におけるc−Met、胃癌におけるc−Kit、多発癌におけるras、膀胱癌、結腸癌、肺癌、もしくは乳癌におけるraf、又は多発癌におけるCdKが挙げられる(39)。疾患原因遺伝子のアンチセンスノックダウンが有効であると思われる癌以外の慢性疾患としては、標的遺伝子がウイルス複製に不可欠のウイルス特異的遺伝子である慢性肝炎や後天性免疫不全症候群(AIDS)等のウイルス感染症が挙げられる。加齢性失明の最も一般的な原因はVEGFにより誘導される血管肥大に起因する加齢性黄斑変性ないしAMDであり、眼におけるVEGF遺伝子又はVEGF−R遺伝子のアンチセンスノックダウンはAMDの新規治療となると思われる(40)。
以下に示すように、予め形成した頭蓋内ヒト脳腫瘍をもつ成体マウスに本発明の代表的1態様(クローン967により発現されるshRNA)を使用してPIL遺伝子ターゲティング技術により脳腫瘍に送達することによりクローン967プラスミドDNAを週1回投与後に生存時間の88%増加が達成された。クローン967はヒトEGFRのnt2529−2557に対するshRNAをコードする代表的真核発現プラスミドである。脳腫瘍の治療と他の固形癌一般の治療にこの型のshRNAを使用することができる。生存時間の増加は開頭術又は他の侵襲的投与形態を用いずに達成され、単純な週1回静脈内注射しか必要としなかった。治療効果はウイルス又は腫瘍形成性DNAエレメント(例えばEBNA−1)を使用せずに達成された。本発明は原発性脳腫瘍又は脳に転移した脳以外の癌においてEGFR以外の癌原因遺伝子をノックダウンするために使用可能なDNAによるRNAi技術とPIL遺伝子ターゲティング技術の併用を提供する。更に、受容体特異的ナノ容器は癌以外の疾患の脳における疾患原因遺伝子をノックダウンするために使用することができる。
脳腫瘍の遺伝子治療はEGFR等の発癌遺伝子の発現を特異的にノックダウンすると期待される。しかし、遺伝子治療はBBBの存在により特に脳では困難な送達の問題により制限される。BBBを回避するために、開頭術アプローチにより治療薬を脳腫瘍に送達する試みが行われている(1)。しかし、腫瘍内注射後の腫瘍内の治療薬の分布は非常に制限されるので、このアプローチは有効ではない(1)。BBBを通る経血管経路により脳腫瘍内の全細胞に治療薬を送達することができる(22)。従来記載されているようにペグ化イムノリポソーム(PIL)を使用する新規非ウイルス遺伝子導入技術を使用して非ウイルス遺伝子を脳に経血管送達することは現在可能である(米国特許第6,372,250号参照)。このアプローチでは、非ウイルスプラスミドDNAを85nmアニオン性リポソームの内側に内包し、リポソームの表面を数千個のポリエチレングリコール(PEG)鎖と結合する。この「PEG化」法は網膜内皮系によるリポソームの取込みを制限し、血液滞留時間を延長することができる(23)。その後、図1Aに示すように生体関門を通って受容体特異的ペプチドミメティックモノクローナル抗体(MAb)と共にPEG化リポソームをin vivo送達する。
PIL非ウイルス遺伝子導入技術を適用すると、ヒトEGFRに対するアンチセンス遺伝子治療の週1回静脈内注射により頭蓋内ヒト脳腫瘍をもつマウスの生存時間を100%増加することができた(15)。ヒトEGFRのヌクレオチド2317−3006に対してアンチセンスの700ヌクレオチドRNAをコードする真核発現プラスミド(クローン882と言う)をPILに内包し(14)、受容体特異性の異なる2種のMAbで脳腫瘍に二重にin vivoターゲティングした(15)。第1のMAbであるマウストランスフェリン受容体(TfR)に対するラット8D3 MAbは頭蓋内癌に血管形成したマウスBBBを通ってPILを輸送することができ、これらの癌血管はマウス脳に由来し、マウスTfRを発現した。第2のMAbはヒト脳腫瘍血漿膜で発現されたヒトインスリン受容体(HIR)にターゲティングした(図1A)。ターゲティングMAbは膜関門を通ってPILを輸送するための分子のトロイの木馬として機能し、これらのMAbは種特異的である(24)。マウスTfRに対する8D3は最初の関門を通ってマウスBBBを輸送することができたが、第2の関門であるヒト脳腫瘍細胞膜を通ってPILを輸送することはできなかった。これは同様にマウス血管内皮細胞インスリン受容体と反応しないHIRMAbで達成された。二重結合PILをHIRMAb/TfRMAb−PILと言う(図1A)。
クローン882発現プラスミドの効力を増加するために、癌細胞の分裂毎に発現プラスミドを1回複製させるoriP及びエプスタインバール核抗原(EBNA)−1エレメント(147)をこのベクターに加えた(25)。oriP/EBNA−1エレメントを発現プラスミド内に加えると、ヒトU87神経膠腫細胞における遺伝子発現レベルを10倍に増加することができる(16)。しかし、EBNA−1遺伝子は腫瘍形成性トランス作用因子をコードし(17)、この製剤はヒト遺伝子治療では望ましくないと思われる。DNAによるRNAi等のより強力な形態のアンチセンス遺伝子治療を使用したならばEBNA−1エレメントは必要ないと思われる。
DNAによるRNA干渉(RNAi)は発現プラスミドDNAがステムループ構造から構成されるショートヘアピンRNA(shRNA)をコードする強力な形態のアンチセンス遺伝子治療である(6)。このshRNAは細胞内でプロセシングされて3’−オーバーハングをもつRNAデュプレックスとなり、この短いRNAデュプレックスはRNAi又は転写後遺伝子サイレンシングを媒介する。従来記載されているように、RNAiによる遺伝子治療は癌治療に大いに期待される。しかし、重要な制限因子は細胞へのshRNAの送達である。
以下の実施例では、本発明による代表的な受容体特異的ナノ容器を作製及び試験し、脳腫瘍をもつマウスにおけるヒトEGFRに対する静脈内経路のRNAiによる遺伝子治療の治療効力を立証する。oriP/EBNA−1エレメントをもたず、ヒトEGFR mRNAにおける特定配列に対するshRNAをコードする代表的な発現プラスミドを提供する。これらの代表的なプラスミドをHIRMAb/TfRMAb−PILに組込んだ。頭蓋内ヒト脳腫瘍をもつマウスにこれらのPILを週1回スケジュールで静脈内投与した。
実施例は以下の通りである。実施例で使用した材料は以下の販売業者から入手した。
POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロール−3−ホスホコリン)、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)−PEG2000(ここで、PEG2000は2000 ダルトンポリエチレングリコールである)、DSPE−PEG2000−マレイミド(MAL)、[α−32P]dCTP(3000Ci/mmol)。N−スクシンイミジル[2,3−H]プロピオネート(H−NSP,101Ci/mmol)、プロテインG Sepharose CL−4B、2−イミノチオラン(トラウト試薬)、及びビシンコニン酸,(BCA)蛋白質アッセイ。本試験で使用した抗トランスフェリン受容体モノクローナル抗体(TfRMAb)はマウスTfRに対する8D3ラットMAbである[26]。8D3 MAbはマウスTfRに特異的であり、ヒト細胞では不活性である。ヒト細胞への遺伝子ターゲティングに使用した抗インスリン受容体MAbはヒトインスリン受容体(HIR)に対するマウス83−14 MAbである[27]。TfRMAbとHIRMAbはハイブリドーマから生成した腹水からプロテインGアフィニティークロマトグラフィーで個々に精製した。カスタムオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)はBiosource(Camarillo,CA)から入手した。
shRNAをコードするプラスミドの設計と細胞培養における生物活性の立証。各種EGFR shRNAに対応するオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)デュプレックスを文献(28)に記載されているように設計した(表1参照)。
クローニング中のDNAヘアピンの形成を減らすためにshRNA配列に故意にセンス鎖(図1B)のヌクレオチドミスマッチを加えた。アンチセンス鎖は変わらないので、これらのG−U置換はRNAi効果を妨げない(29)。フォワードODNはU6ポリメラーゼ停止シグナル(T)を含む(表1)。リバースODNは標準真核発現プラスミドの付着末端へのサブクローニングを誘導するために、夫々5’及び3’末端のEcoRI及びApaI制限部位に特異的な4ヌクレオチドオーバーハングを含む(表1)。空の発現プラスミドをクローン959と言う(表2)。相補的ODNを熱変性(94℃で4分間)し、10mMリン酸ナトリウム(pH=7.4),150mM塩化ナトリウム及び1mM EDTA中、65℃で16時間アニールした。二本鎖ODNをプラスミドのEcoRI及びApaI部位にライゲーションした。大腸菌DH5aコンピテント細胞を形質転換し、T3プライマーを使用するDNAシーケンシングとNaeIによる制限エンドヌクレアーゼマッピングにより正しいRNAiインサートをもつクローンを確認した。
合計6種の抗EGFR shRNAをコードする発現プラスミドDNAを作製し、962−964及び966−968と命名した(表1)。これらの6種のshRNAをコードする発現プラスミドのEGFRノックダウン効力を従来記載されている真核発現プラスミドであるクローン882のEGFRノックダウン効果と比較した(15)。クローン882はpCEP4に由来し、SV40プロモーターにより駆動され、EBNA−1/oriPエレメントを含み、ヒトEGFRのnt2317−3006に相補的な700ntアンチセンスRNAをコードする(15)。組織培養におけるヒトU87神経膠腫への[H]−チミジン取込み率を測定することによりヒトEGFRに対するRNAi効果をスクリーニングした。ヌクレオチド187−219(クローン962)、2087−2119(クローン963)、及び3683−3715(クローン964)のヒトEGFRmRNAの3種の広い間隔の領域に対するshRNAを作製するようにフォワード及びリバース合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を設計し、ODN配列を表1に示す。
U87ヒト神経膠腫細胞への[H]−チミジン取込みの阻害を測定することによりこれらのEGFR RNAiプラスミドの生物活性を試験した(表2)。クローン962−963はEGFR作用のノックダウンを生じず、クローン964の効果は中間であった(表2)。従って、ヒトEGFRmRNAのヌクレオチド2300−3000内の3種の異なる領域として表1に示すような2346−2374(クローン966)、2529−2557(クローン967)、及び2937−2965(クローン968)に対するshRNAを作製するように、第2組のODNを設計した。EGFR機能のノックダウンはクローン966及び968では中間であったが、クローン967はクローン882と同等レベルの[H]−チミジン取込みを生じた(表2)。クローン967により生産されたshRNAの配列と二次構造を図1Bに示す。
ヒトEGFR mRNAのヌクレオチド配列は公知である(GENBANKアクセション番号X00588)。ヌクレオチド配列はヌクレオチド番号1から開始し、ヌクレオチド番号5532までである。上記結果によると、shRNAはヌクレオチド2346位〜3715位のEGFR mRNAの領域に位置するヌクレオチドに対してアンチセンスであると思われる。shRNAは2529位〜2965位のEGFR mRNAの領域に対してアンチセンスであることが好ましい。アンチセンスでターゲティングされるEGFR mRNAの領域は2529位〜2557位がより好ましい。
ウェスタンブロッティング。細胞培養でRNAiによる機能的EGFR発現の阻害を確認するために、クローン967プラスミドDNAに48時間暴露後に培養U87細胞でウェスタンブロッティング(図5)により免疫反応性EGFRを測定した。対照として、クローン882(EBNA−1による従来のアンチセンス遺伝子治療)、クローン962(無効な抗EGFR RNAiクローン(表2))、及びクローン952[EGFRに無効であると思われる抗ルシフェラーゼ遺伝子RNAiクローン(19参照)]に暴露後に免疫反応性EGFRのレベルを測定した。ウェスタンブロットの定量の結果、クローン967及び882はEGFRを夫々68%及び88%ノックダウンした(図5)。
ウェスタンブロットの詳細は以下の通りである。
ヒトU87神経膠腫細胞を35mm皿で80%コンフルエントまで培養した。各プラスミドDNA(クローン967,882,952,及び962)をDNA1.5mg/皿の用量でリポフェクタミンに4時間添加した。次に培地を捨て、10%胎仔ウシ血清を加えた新鮮な培地に交換し、細胞を37℃で48時間インキュベートした。細胞を溶解用緩衝液で回収した後、ドデシルナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた後にニトロセルロースフィルターにブロットした。EGFRをヒトEGFRに対する市販抗体で検出し、ウェスタンブロットシグナルを化学ルミネッセンス法で測定した。x線フィルムをAdobe Photoshopでスキャンし、積分密度をNIH画像ソフトウェアにより定量し、図5に示す平均及び標準誤差結果を得た。
クローン882(EBNA−1による従来のアンチセンス治療)及びクローン967(EBNA−1を使用しないDNAによるRNAi遺伝子治療)の等価性の実証。10%胎仔ウシ血清(FBS)を加えたMEM培地を入れた6ウェルクラスター皿でU87ヒト神経膠腫細胞を増殖させた。細胞が50−60%コンフルエントに達した後に各プラスミドDNA(クローン959,962−964,966−968,又は882)1μgとリポフェクタミン10μl(20μg)を加えた無血清MEM1.5mlに増殖培地を交換し、4時間37℃でインキュベートした。10%FBSを加えたMEM培地に培地を交換し、24時間インキュベートした。終濃度2μCi/mlの[H]−チミジンと10μMの未標識チミジンを各皿に加え、皿を37℃で48時間インキュベートした。従来記載されているように[H]−チミジン取込みを測定するために細胞を回収した(14)。U87細胞にリポフェクタミンをトランスフェクションした結果、クローン967がEGFR発現のRNA干渉を生じる最も強力なクローンであり、高用量ではクローン882とちょうど同程度に有効であることが立証された(表2)。
クローン882及び967の効力を更に試験するために、700nt EGFRアンチセンスRNAをコードするクローン882(14)の用量応答試験と平行してクローン967による用量応答試験を実施した。これらの用量応答試験では、クローン882又はクローン967DNAをHIRMAb標的PILにより細胞培養中のヒト神経膠腫細胞に送達した。U87細胞を35mmコラーゲン処理皿で増殖させた。細胞が50−60%コンフルエントに達した後に培地を吸引し、10%FBSを加えた新鮮なMEM培地2mlとDNA1.4、0.14、0.014又は0.0014μg/皿の用量のクローン967又はクローン882を内包したHIRMAb−PILを加えた。細胞を5日間37℃でインキュベートした。この期間に3日間インキュベーション後に新鮮な培地2mlを加えた。5日目に培地を吸引し、[H]−チミジン2μCi/mlと未標識チミジン10μMを加えた新鮮な増殖培地2mlを各皿に加えた後に48時間37℃でインキュベートした。インキュベーション後に[H]−チミジン取込みを測定し、従来記載されているように、細胞蛋白質1mg当たりに取り込まれたチミジンのnmolとして表した(14)。次にクローン967又は882プラスミドDNAをHIRMAb標的PILに内包し、リポフェクタミンの不在下で1.4−1400ng/皿の各種プラスミドDNA用量でU87細胞に加えた。どちらのプラスミドDNAも約100ng/皿のED50でチミジン取込みの抑制に同等に有効であった(図1C)。この組織培養実験の結果、EBNA−1遺伝子をもたないが、EBNA−1の影響下で長い700nt RNAをコードするプラスミド(クローン882)と同等に有効なヒトEGFRに対するRNAi発現プラスミド(クローン967)を作製できることが判明した。他方、この試験以前にクローン967のin vivo相対効力は不明であり、クローン967がヒト脳腫瘍をもつ動物における生存時間を延ばすか否かも不明であった。
ペグ化イムノリポソームの合成。クローン967又は882プラスミドDNAを従来記載されているようにPILに内包した(米国特許第6,372,250号(14))。リポソームは直径85−100nmであり、リポソームの表面に数千個の2000Daポリエチレングリコール(PEG)鎖を結合した。PEG鎖の約1−2%の先端を従来記載されているように83−14 HIRMAb及び8D3 TfRMAbと結合した(15)。リポソームの内部に内包されなかったプラスミドDNAを徹底的なヌクレアーゼ処理により定量的に除去した(23)。典型的な合成では、初期プラスミドDNA(200μg)の30−40%が脂質20μmolに内包され、各リポソームのPEG鎖に43−87MAb分子が結合した(14)。
頭蓋内脳腫瘍の静脈内RNAi遺伝子治療による延命。体重19−21gの雌重症複合免疫不全(scid)マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。正中線右2.5mm及びブレグマ前1mmにバーホールを開けた。1.2%メチルセルロースを加えた無血清MEMにU87神経膠腫細胞を懸濁した。固定針付き10μl Hamiltonシリンジを使用して細胞懸濁液5μl(5×10細胞)を右尾状核−被殻に深さ3.5mmに2分間かけて注入した。移植後5日目に開始して週1回動物に静脈内投与した。U87細胞500,000個の移植後5日まで腫瘍は大きく、脳の線条体の容積全体に充満している(32)。移植後5、12、19及び26日に週1回静脈内遺伝子治療を実施した。食塩水又はHIRMAb/mTfRMAb−PILに内包したクローン967DNA5μg/匹をマウスに投与した。大きな頭蓋内腫瘍の増殖後14−20日に死亡を生じるヒトU87神経膠腫細胞を成体マウスの尾状核−被殻に移植した。移植後5日に開始し、食塩水又はHIRに対する83−14マウスMAbとマウスTfRに対する8D3ラットMAbで二重ターゲティングしたPILに内包したクローン967プラスミドDNA5μg/匹をマウスに週1回静脈内注射した(図1A)。食塩水を投与したマウスは移植後14〜20日に死亡し、ED50は17日であった(図2)。静脈内RNAi遺伝子治療したマウスは移植後31〜34日に死亡し、ED50は32日であった(図2)。
RNAi遺伝子治療及びPIL遺伝子ターゲティングによる脳腫瘍におけるEGFRのin vivo減少。屠殺直後に脳を取出し、腫瘍の中心から冠状スラブに切断した。スラブをO.C.T.培地に埋込み、ドライアイス粉末で凍結した。マウス脳の凍結切片(20μm)をMikron HM505Eクリオスタットで切断した。切片を冷100%メタノールで20分間−20℃にて固定した。共焦点顕微鏡分析のために、蛋白質の非特異的結合を10%ロバ血清リン酸緩衝食塩水(PBS)で30分間ブロックした。切片を一次抗体中、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体はマウスTfRに対するラット8D3 MAb(10μg/ml)と、ヒトEGFRに対するマウス528 MAb(10μg/ml)であった。PBS洗浄後、ローダミンに結合したロバ抗ラットIgG二次抗体5μg/mlを30分間室温で加えた。次にスライドを洗浄し、フルオレセインと結合したヤギ抗マウスIgG5μg/mlの存在下に30分間室温でインキュベートした。切片をスライドに載置し、デュアルアルゴン及びヘリウム/ネオンレーザーを使用して40倍対物レンズとZeiss LSM 5 PASCAL共焦点顕微鏡で観察した。フルオレセインシグナルがローダミンチャネルに漏れるのを避けるためにサンプルをマルチトラックモードでスキャンした。切片を0.8μm間隔でスキャンし、Zeiss LSMソフトウェアで再構成した。対照実験は夫々ラット抗マウスTfR又はマウス抗ヒトEGFR抗体の代わりにラットIgG(Sigma)又はマウスIgG1(Sigma)を一次抗体として使用した。
アビジン−ビオチン複合体(ABC)免疫ペルオキシダーゼ法(Vector Laboratories)により免疫細胞化学試験を実施した。ヒトEGFRを染色するために、マウス528 MAb 抗ヒトEGFRを一次抗体として使用し(33)、マウスTfRを染色するためにラット8D3 MAb抗マウスTfRを一次抗体として使用した(15)。内在ペルオキシダーゼを0.3%ウマ血清リン酸緩衝食塩水(PBS)中0.3%Hで30分間ブロックし、蛋白質の非特異的結合をPBS中3%ウマ又はウサギ血清で30分間ブロックした。ラット8D3 MAbを使用するマウスTfR染色には、ウサギ血清をブロッキング段階で使用した。次に切片を一次抗体10μg/ml中、4℃でインキュベートした。同一濃度のアイソタイプ対照も一次抗体として使用した。次にマウスIgG1を528MAbのアイソタイプ抗体として使用し、ラットIgGを8D3MAbのアイソタイプ対照抗体として使用した。インキュベーションとPBSで洗浄後、切片をビオチン化ウマ抗マウスIgG(528MAb)又はビオチン化ウサギ抗マウスIgG(8D3MAb)中で30分間インキュベートした後、AECで発色させた。スライドは対比染色しなかった。
マウスTfRに対するラット8D3MAbを使用して免疫細胞化学法により腫瘍を剖検で試験した(図3)。食塩水を投与した動物からの腫瘍は血管新生が多く、マウスTfRを発現した。(図3A,B,C)。図3Bは正常脳と腫瘍の血管内皮上の免疫反応性マウスTfRを示す。正常脳から腫瘍に伸びる血管が認められる(図3B)。腫瘍と正常脳の間の境界は図3Bに示すように血管密度が低いことが多かった。RNAiで治療したマウスの腫瘍における血管密度は図3Dに示すように一般に低かったが、EGFR RNAi遺伝子治療は図3Eに示すように正常脳に血管密度の低下を生じなかった。血管マウスTfRに対するラット8D3 MAb(赤線)と腫瘍HIRに対するマウス83−14 MAb(緑線)による二重免疫標識後の腫瘍切片の共焦点顕微鏡写真を図4に示す。RNAiで治療した腫瘍(図4A,B,及びC)では食塩水を投与した腫瘍(図4D,E,及びF)に比較して免疫反応性EGFRのダウンレギュレーションが認められる。
EGFRの癌特異的突然変異体のRNAi。脳腫瘍を含む多くの固形癌は突然変異体形のEGFRを特異的に発現する(34,35)。最も一般的な突然変異体はリガンド結合に独立してアップレギュレートされるEGFRvIII突然変異体である(34,35)。EGFRvIII突然変異体は野生型EGFR又は他の遺伝子に存在しない特異的ヌクレオチド配列をもつ。従って、ユニークなEGFRvIII突然変異体に対するshRNAを発現するプラスミドは癌に100%特異的であり、非癌細胞でEGFRを抑制しない。hEGFRvIIIのスプライス部位に対する各種shRNAに対応するODNデュプレックスを実施例1に記載したと同様に設計し、EGFRvIII特異的shRNAを表3に示す。
クローニング中のDNAヘアピンの形成を減らすためにshRNA配列に故意にセンス鎖のヌクレオチドミスマッチを加えた。アンチセンス鎖は変わらないので、これらのG−U置換はRNAi効果を妨げない。フォワードODNはU6ポリメラーゼ停止シグナル(T)を含む(表3)。リバースODNはU6発現ベクターの付着末端へのサブクローニングを誘導するために、夫々5’及び3’末端のEcoRI及びApaI制限部位に特異的な4ヌクレオチドオーバーハングを含む。本発明に教示する方法を使用し、当業者は表3に記載するODNを使用して脳又はEGFRvIII突然変異体のユニークな発現に起因する他の発癌組織における癌のDNAによるRNAi遺伝子治療を可能にする発現プラスミドを作製することができる。正常細胞中のEGFRはEGFRvIIImRNA内のユニーク配列を選択的にターゲティングするshRNAにより変化しないので、この形態の癌遺伝子治療は非常に望ましい。
上記実施例はヒトEGFR mRNAのヌクレオチド2529−2557に対するshRNAをコードする発現プラスミドを使用するRNAiによる遺伝子治療でEGFR遺伝子発現をノックダウンできることを立証するものである(表2)。更に、EGFR発現ノックダウンは組織培養でヒトU87神経膠腫細胞へのチミジン取込みの阻害(表2)と、in vivoで免疫反応性EGFRの脳腫瘍発現の低下(図4)により立証される。最後に、腫瘍サイズが大きい場合には移植後5日まで治療が遅れる(32)が、週1回静脈内EGFR RNAi遺伝子治療の結果、生存時間が88%増加した(図2)。
ヒトEGFR転写産物内のRNAi活性標的配列の発見には数種の相互作用が必要であった(表1及び表2)。これらの知見は標的配列の約5分の1がRNAiで治療効果を生じるというMcManusとSharp(6)の示唆に一致した。従来の研究によると、shRNAをコードするDNAベクターを使用せずにオリゴフェクタミンを使用して培養細胞に送達したRNAデュプレックスでEGFR遺伝子発現を抑制できることが示されている(18)。本実施例は細胞内shRNAを生産するRNAiによる発現プラスミドでEGFR遺伝子発現を阻害することができ、DNAによるRNAiが細胞培養とin vivoヒト細胞の両者で有効であることを立証する。チミジン取込みを評価する細胞培養に基づき、ヒトEGFR遺伝子発現をノックダウンするためのRNAiによる遺伝子治療を更に評価するためにクローン967を選択した。クローン967はヌクレオチド2529−2557に対するshRNAを生産し(図1B)、この標的配列はクローン882により発現されるアンチセンスRNAによりターゲティングされるヒトEGFRmRNAの700ヌクレオチド領域内にある(15)。クローン967とクローン882はヒトU87細胞へのチミジン取込みを同様に阻害し(図1C)、これはRNAiによるアンチセンス遺伝子治療形態の高い効力を証明するものである。クローン882プラスミドは培養U87細胞におけるトランスジーンの発現を10に増加することができる(16)EBNA−1/oriP遺伝子エレメントを含む(14)。従って、アンチセンス遺伝子治療のRNAiアプローチの高い効力により、発現プラスミドで潜在的に腫瘍形成性のEBNA−1エレメントが不要になった。
クローン967をHIRMAb標的PILで培養U87細胞に送達すると、クローン967はチミジン取込み阻害に関して用量依存メカニズムでEGFR機能をノックダウンし(図1C)、ED50はプラスミドDNA約100ng/皿であった。脳腫瘍における免疫反応性EGFRの発現はEGFR RNAi遺伝子治療の最後の静脈内投与後5−8日でもまだ顕著に低下している(図4)。
上記実施例はHIRMAb/TfRMAb−PILに内包したクローン967を使用する週1回静脈内遺伝子治療で生存時間の88%増加を示す(図2)。週1回静脈内遺伝子治療によるこの生存時間の延長はEGFR−チロシンキナーゼ阻害剤ZD1839(イレッサ)を高用量で毎日投与したマウスの生存時間の延長と同等である(11)。神経膠腫細胞100,000個の頭蓋内移植後3日目に顕微鏡で腫瘍が認められた場合にイレッサの毎日経口化学療法を開始した(11)。しかし、イレッサはEGFRの突然変異体形を発現する脳腫瘍の治療には無効であった(11)。多くの一次及び転移脳腫瘍はヒトEGFRの突然変異を発現し(34−35)、実施例5に記載したように野生型と突然変異体の両者のEGFRをノックダウンするRNAiによる遺伝子治療を設計することが可能である。
要約すると、本発明の実施例はヒトEGFRに対する週1回静脈内RNAi遺伝子治療により頭蓋内ヒト脳腫瘍をもつ成体マウスの生存時間が88%増加することを立証する。発癌遺伝子をノックダウンし、脳腫瘍における突然変異腫瘍サプレッサー遺伝子を置換するためにPIL非ウイルス遺伝子導入技術を使用することができる。PIL非ウイルス遺伝子導入技術の効果は霊長類で立証されており、霊長類脳における遺伝子発現レベルは齧歯類脳における同等遺伝子発現レベルの50倍である(36)。遺伝子組換えモノクローナル抗体を使用して治療遺伝子を内包したPILをヒト脳腫瘍に送達することができる。キメラHIRMAb(37)はこれらの実施例で使用した元のマウスHIRMAbと同様にin vitroでヒトBBBとの結合に関して同一活性をもつか、又はin vivoで霊長類BBBを通って輸送する。PIL遺伝子導入技術の高い治療効果はこのアプローチが経血管経路により治療遺伝子を脳及び他の臓器に送達することにより可能である(22)。
上記実施例は本発明の受容体によるナノ容器がマウスモデルでヒト脳腫瘍を治療するのに有効であることを示す。ヒト使用には、PIL製剤中にただ1個のターゲティングリガンドHIRMAbだけを使用すればよい(図1A)。これはHIRがヒト脳腫瘍の腫瘍細胞膜と腫瘍毛細血管の両者で発現されるためである(38)。クローン967はヒトEGFRに対するshRNAを生産する。これらの試験でPILを処方するために使用したマウスHIRMAbをヒトで使用することはできなかった。しかし、HIRMAbの遺伝子組換え形態は作製されており、ヒトでの使用に現在利用可能である((37)及び米国特許出願第10/307,276号)。
以上、本発明の代表的態様を記載したが、当業者に自明の通り、上記開示は例証に過ぎず、本発明の範囲内で他の種々の改変、応用及び変形が可能である。従って、本発明は上記好適態様及び実施例に制限されず、特許請求の範囲のみに制限される。
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図1Aは本発明の代表的ペグ化イムノリポソーム(PIL)の模式図である。リポソーム表面は表面から突出する鎖として示す2000ダルトンポリエチレングリコール(PEG)等の数千個の結合剤と結合している。PEG鎖の約1−2%の先端はマウストランスフェリン受容体(mTfR)に対する8D3ラットモノクローナル抗体(MAb1)又はヒトインスリン受容体(HIR)に対するマウス83−14モノクローナル抗体(MAb2)から構成されるターゲティングリガンドと結合している。PILの内側にはRNA干渉(RNAi)を生じるショートヘアピンRNA(shRNA)をコードするプラスミドDNAが内包されている。shRNAをコードする遺伝子はU6プロモーター(pro)により駆動され、U6 RNAポリメラーゼのT5終結配列を3’末端にもつ。(B)上段はヒトEGFRのGenbank登録配列(アクセション番号X00588)に由来するヌクレオチド2529−2557のヒト上皮増殖因子受容体(hEGFR)配列のヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。図1Bの下段にはクローン967により生産されるshRNAの配列と二次構造を示す(配列番号2)。アンチセンス鎖は8ヌクレオチドループの5’側であり、センス鎖はループの3’側である。センス鎖はステムループ構造のハイブリダイゼーションTmを低下させるために4G/Uミスマッチを含み、アンチセンス鎖の配列はターゲットmRNA配列に100%相補的である。図1Cは[H]−チミジンの存在下でヒトU87神経膠腫細胞を48時間インキュベートした後にクローン967又は882プラスミドDNAを内包したHIRMAb標的PILの存在下で細胞を5日間インキュベートした試験結果を示す。プラスミドDNA1.4、14、140、又は1400ng/皿の用量を各実験で使用した。データは平均±SEである(n=3皿)。 scidマウスの尾状核−被殻にU87細胞500,000個を移植後5日目に本発明によるヒトEGFRに対する静脈内RNAi遺伝子治療を開始した生存試験の結果を示す。12日、19日及び26日(矢印)に週1回静脈内遺伝子治療を繰返した。対照群は同一日に食塩水を投与した。2つの処理群の各々でマウス11匹とした。マウスの50%が死亡した時間(ED50)は食塩水群とRNAi群で夫々17日と32日である。本発明のショートヘアピンアンチセンスRNAを使用するRNAi遺伝子治療では生存時間が88%増加し、p<0.005レベルで有意であった(フィッシャーの正確確率検定)。 マウスTfRに対するラット8D3 MAb(パネルA−E)又はラットIgG(パネルF)でマウス脳剖検切片を染色した免疫細胞化学試験の結果を示す。切片に対比染色はしなかった。パネルA、B、D、E、及びFの倍率は同一であり、パネルAの倍率線は135μmである。パネルCの倍率線は34μmである。パネルA−Cは食塩水を投与したマウスの脳から採取した切片であり、パネルD−Fはクローン967遺伝子治療で治療したマウスから採取した切片である。パネルA−Cは食塩水を投与したマウスにおける腫瘍血管構造の密度を示す。パネルBはパネルの下部の正常脳とパネルの上部の腫瘍を含む切片を示し、腫瘍は正常脳からの血管により血管新生している。パネルDはパネルの左側に腫瘍を示し、パネルの右側に正常脳を示し、この切片はRNAi遺伝子治療で治療したマウスから採取し、RNAiを投与した動物における血管密度の低下を示す。パネルEに示すように正常脳の血管密度はRNAiを投与した動物で変化しない。 本発明のRNAi遺伝子治療によるin vivo EGFRダウンレギュレーションの結果を示す。RNAi治療したマウス(A−C)又は食塩水を投与したマウス(D−F)からの脳腫瘍について頭蓋内神経膠腫切片の共焦点顕微鏡写真を示す。HIRに対するマウス83−14 MAb(緑)とマウスTfRに対するラット8D3 MAb(赤)で切片を二重標識した。RNAi治療したマウス(A−C)では食塩水を投与したマウス(D−F)に比較して腫瘍細胞における免疫反応性EGFRが減少している。食塩水を投与した動物は移植後14−15日で死亡した(D、E、及びF)が、RNAi治療した動物は夫々静脈内RNAi遺伝子治療の最終投与後5、7、及び8日である移植後31日(A)、33日(B)、及び34日(C)に死亡した(図2)。 クローン952又はクローン962に暴露せずにクローン967又はクローン882に暴露したヒトU87細胞における免疫反応性EGFRの選択的ノックダウンをウェスタンブロットにより測定した結果を示す。細胞培養におけるこれらのウェスタンブロット試験は図4に示すin vivo脳腫瘍結果の共焦点顕微鏡写真を裏付けるものである。

Claims (32)

  1. 受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器であって、
    外部表面と内部コンパートメントをもつリポソームと;
    ショートヘアピンRNAをコードするために十分な量の遺伝情報を含み、前記リポソームの内部コンパートメント内に配置された遺伝子と;
    前記受容体にターゲティングすることが可能な複数の受容体ターゲティング剤と;
    その少なくとも1個を介して各ターゲティング剤が前記リポソームの外部表面に結合している複数の結合剤を含む前記受容体特異的ナノ容器。
  2. 前記ショートヘアピンRNAがヒト上皮増殖因子受容体、EGFRの突然変異体、HER2、HER3、HER4、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、インスリン様成長因子受容体−1(IGFR1)、トランスフォーミング増殖因子−α(TGF−α)、血管内皮増殖因子(VEGF)又はその受容体、VEGFR、Bcr−Abl、c−Met、c−Kit、ras、raf、又はCdKを含む改変蛋白質キナーゼをコードするmRNAから構成される群から選択されるmRNAの少なくとも一部に対してアンチセンスのヌクレオチド配列を含む請求項1に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  3. 前記ショートヘアピンRNAがヒト上皮増殖因子受容体mRNAの一部に対してアンチセンスのヌクレオチド配列を含み、前記ヒト上皮増殖因子受容体mRNAがヌクレオチド番号1〜5532のヌクレオチド配列を含む請求項2に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  4. 前記ショートヘアピンRNAがヌクレオチド番号2300〜3800に位置する前記ヒト上皮増殖因子受容体mRNAの部分に対してアンチセンスのヌクレオチド配列を含む請求項3に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  5. 前記ヒト上皮増殖因子受容体mRNAの前記部分がヌクレオチド番号2500〜3000に位置する請求項4に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  6. 前記ヒト上皮増殖因子受容体mRNAの前記部分がヌクレオチド番号2500〜2600に位置する請求項5に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  7. 前記リポソームの外部表面が200ナノメートル未満の直径をもつ球形を規定する請求項1に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  8. 5〜500個の受容体−ターゲティング剤が前記リポソームの外部表面に結合している請求項1に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  9. 前記結合剤がポリエチレングリコール、スフィンゴミエリン及び有機ポリマーから構成される群から選択される請求項1に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  10. 前記結合剤の分子量が1000〜50,000ダルトンである請求項9に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  11. 100〜10,000個の結合剤が前記リポソームの外部表面に結合している請求項1に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  12. 前記ターゲティング剤が充実性腫瘍に位置する受容体にターゲティングすることができる請求項1に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  13. 前記充実性腫瘍が脳腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、脾臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、眼腫瘍、胃腸腫瘍、骨腫瘍、血液腫瘍、内分泌腫瘍、皮膚腫瘍、又はリンパ節腫瘍から構成される群から選択される請求項12に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  14. 前記充実性腫瘍が脳腫瘍である請求項13に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  15. 前記ターゲティング剤がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、インスリン様成長因子受容体、レプチン受容体、低密度リポ蛋白質受容体、線維芽細胞増殖因子受容体から選択される受容体にターゲティングすることができる請求項1に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための受容体特異的ナノ容器。
  16. 請求項1に記載の受容体特異的ナノ容器と前記受容体特異的ナノ容器の医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する組成物。
  17. 前記ショートヘアピンRNAをコードする前記遺伝子を送達する前記細胞が動物の体内に位置する請求項16に記載の受容体特異的ナノ容器を含む組成物。
  18. a)外部表面と内部コンパートメントをもつリポソームと;
    ショートヘアピンRNAをコードするために十分な量の遺伝情報を含み、前記リポソームの内部コンパートメント内に配置された遺伝子と;
    前記受容体にターゲティングすることが可能な複数の受容体ターゲティング剤と;
    その少なくとも1個を介して各ターゲティング剤が前記リポソームの外部表面に結合している複数の結合剤を含む受容体特異的ナノ容器と;
    b)前記受容体特異的ナノ容器の医薬的に許容可能なキャリヤー
    を含む有効量の製剤を動物に投与する段階を含む、受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAを送達するための方法。
  19. 前記ショートヘアピンRNAがヒト上皮増殖因子受容体、EGFRの突然変異体、HER2、HER3、HER4、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、インスリン様成長因子受容体−1(IGFR1)、トランスフォーミング増殖因子−α(TGF−α)、血管内皮増殖因子(VEGF)又はその受容体、VEGFR、Bcr−Abl、c−Met、c−Kit、ras、raf、又はCdKを含む改変蛋白質キナーゼをコードするmRNAの少なくとも一部に対してアンチセンスのヌクレオチド配列を含む請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  20. 前記ショートヘアピンRNAがヒト上皮増殖因子受容体mRNAの一部に対してアンチセンスのヌクレオチド配列を含み、前記ヒト上皮増殖因子受容体mRNAがヌクレオチド番号1〜5532のヌクレオチド配列を含む請求項19に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  21. 前記ショートヘアピンRNAがヌクレオチド番号2300〜3800に位置する前記ヒト上皮増殖因子受容体mRNAの部分に対してアンチセンスのヌクレオチド配列を含む請求項20に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  22. 前記ヒト上皮増殖因子受容体mRNAの前記部分がヌクレオチド番号2500〜3000に位置する請求項21に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  23. 前記ヒト上皮増殖因子受容体mRNAの前記部分がヌクレオチド番号2500〜2600に位置する請求項22に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  24. 前記リポソームの外部表面が200ナノメートル未満の直径をもつ球形を規定する請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  25. 5〜500個の受容体−ターゲティング剤が前記リポソームの外部表面に結合している請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  26. 前記結合剤がポリエチレングリコール、スフィンゴミエリン及び有機ポリマーから構成される群から選択される請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  27. 前記結合剤の分子量が1000〜50,000ダルトンである請求項26に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  28. 100〜10,000個の結合剤が前記リポソームの外部表面に結合している請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  29. 前記ターゲティング剤が充実性腫瘍に位置する受容体にターゲティングすることができる請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  30. 前記充実性腫瘍が脳腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、脾臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、眼腫瘍、胃腸腫瘍、骨腫瘍、血液腫瘍、内分泌腫瘍、皮膚腫瘍、又はリンパ節腫瘍から構成される群から選択される請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  31. 前記充実性腫瘍が脳腫瘍である請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
  32. 前記ターゲティング剤がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、インスリン様成長因子受容体、レプチン受容体、低密度リポ蛋白質受容体、線維芽細胞増殖因子受容体から選択される受容体にターゲティングすることができる請求項18に記載の受容体をもつ細胞にショートヘアピンRNAをコードする遺伝子を送達するための方法。
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