以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本発明の実施例1である電池モジュール(蓄電モジュールに相当する)について説明する。図1は、本実施例である電池モジュールの分解図であり、図2は、電池モジュールの外観図である。図1および図2において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸である。本実施例では、鉛直方向に相当する軸をZ軸としている。なお、X軸、Y軸およびZ軸の関係は、他の図面においても図1と同様である。
電池モジュール1は、複数の単電池(蓄電素子に相当する)10を有する。単電池10は、いわゆる円筒型電池であり、円筒状に形成された電池ケースの内部に発電要素が収容されている。単電池10としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタを用いることができる。
発電要素は、充放電を行う要素であり、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に配置されたセパレータとを有する。セパレータには、電解液がしみ込んでいる。正極板は、集電板と、集電板の表面に形成された正極活物質層とを有する。正極活物質層は、正極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。負極板は、集電板と、集電板の表面に形成された負極活物質層とを有する。負極活物質層は、負極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。正極活物質層や負極活物質層にも、電解液がしみこんでいる。
単電池10は、Z方向に延びており、単電池10の長手方向(Z方向)における両端には、正極端子11および負極端子12が設けられている。単電池10の外装である電池ケースは、ケース本体および蓋によって構成されている。ケース本体は、円筒状に形成されており、上述した発電要素を収容する。ケース本体には、発電要素を組み込むための開口部が形成されており、ケース本体の開口部は、蓋によって塞がれる。
蓋およびケース本体の間には、絶縁材料で形成されたガスケットが配置されている。このため、電池ケースの内部は、密閉状態となる。また、蓋およびケース本体は、絶縁状態となる。蓋は、凸状に形成されており、蓋には、発電要素の正極板が電気的に接続されている。このため、蓋は、単電池10の正極端子11として用いられる。また、ケース本体には、発電要素の負極板が電気的に接続されており、ケース本体は、単電池10の負極端子12として用いられる。本実施例では、Z方向において蓋(正極端子11)と対向するケース本体の端面を、負極端子12として用いている。
電池モジュール1を構成する、すべての単電池10は、図1に示すように、正極端子11が上方に位置するように配置されている。すなわち、すべての単電池10の正極端子11は、同一平面内(X−Y平面内)において、並んで配置されている。言い換えれば、すべての単電池10の負極端子12は、同一平面内(X−Y平面内)において、並んで配置されている。
各単電池10は、ホルダ20(保持部材に相当する)によって保持される。ホルダ20は、各単電池10が挿入される開口部21を有している。開口部21は、単電池10の外周面に沿った形状(具体的には、円形状)に形成されており、単電池10の数だけ設けられている。ホルダ20は、例えば、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属材や熱伝導性に優れた樹脂材で形成することができ、充放電などによって単電池10で発生した熱がホルダ20に伝達しやすくなる。単電池10の熱をホルダ20に逃がすことにより、単電池10の放熱性を向上させることができる。
なお、ホルダ20における開口部21の数は、適宜設定することができる。例えば、1つの開口部に対して、複数の単電池10を挿入することができ、この場合には、開口部21の数は、単電池10の数よりも少なくなる。また、開口部21を用いて、電池モジュール1で用いられる他の部材を配置することもできる。この場合には、開口部21の数は、単電池10の数よりも多くなる。さらに、複数の単電池10を電気的に直列に接続した1つのユニットを、開口部21によって保持することもできる。この場合には、1つの開口部21を用いて、複数の単電池10を保持することができる。
ホルダ20の開口部21および単電池10の間には、絶縁体30が配置されている。絶縁体30は、例えば、樹脂などの絶縁材料によって形成されており、単電池10およびホルダ20を絶縁状態とする。絶縁体30には、単電池10が挿入される開口部31が形成されている。開口部31は、単電池10の数だけ設けられている。なお、上述したホルダ20の開口部21と同様に、開口部31の数は、適宜設定することができる。
絶縁体30は、弾性変形することができる材料や、熱硬化性を有する樹脂材料などの接着剤で形成されている。絶縁体30を弾性変形させたり、単電池10及びホルダ20(開口部21a)の間を樹脂などで埋めたりすることにより、単電池10の外周面と、ホルダ20の開口部21とに絶縁体30を密接させることができる。このように、絶縁体30を弾性変形させたり、単電池10及びホルダ20を接着させたりすることにより、各単電池10をホルダ20に挿入して固定することができる。例えば、各単電池10をホルダ20の開口部21に挿入しておき、絶縁体30を構成する材料を、単電池10および開口部21の間に充填することにより、弾性体30を形成することができる。
ホルダ20は、モジュールケース40に固定される。モジュールケース40の上面には、複数の単電池10を組み込むための開口部が形成されており、モジュールケース40の上面は、ホルダ20によって塞がれる。ホルダ20の外縁には、複数のフランジ22が設けられている。ここで、フランジ22の数は、適宜設定することができる。モジュールケース40には、フランジ22を支持する複数のフランジ41が設けられている。各フランジ41は、ホルダ20の各フランジ22に対応した位置に設けられている。
フランジ22をフランジ41に取り付けることにより、モジュールケース40に対してホルダ20を位置決めすることができる。具体的には、フランジ22の一部が、モジュールケース40の外壁面と接触することにより、ホルダ20は、モジュールケース40に対して、X−Y平面内で位置決めされる。
各フランジ41には、穴部41aが形成されており、穴部41aには、ボルト(図示せず)が挿入される。また、フランジ22には、ボルトが挿入されるネジ溝(図示せず)が形成されている。穴部41aおよびフランジ22のネジ溝に対してボルトを挿入することにより、ホルダ20をモジュールケース40に固定することができる。すなわち、ホルダ20がモジュールケース40に対してZ方向に移動することを阻止できる。
モジュールケース40は、X−Y平面内において、複数の単電池10を囲んでおり、モジュールケース40の内側に複数の単電池10が収容される。モジュールケース40の底面42には、複数の開口部42aが形成されている。開口部42aは、単電池10の数だけ設けられている。なお、上述したホルダ20の開口部21と同様に、開口部42aの数は、適宜設定することができる。単電池10を開口部42aに挿入することにより、モジュールケース40に対して、各単電池10を位置決めすることができる。
すなわち、単電池10の負極端子12側の領域は、モジュールケース40の開口部42aによって、X−Y平面内で位置決めされる。一方、単電池10の正極端子11側の領域は、ホルダ20の開口部21によって、X−Y平面で位置決めされる。このように、本実施例では、単電池10の長手方向(Z方向)における両端が、モジュールケース40およびホルダ20によってそれぞれ位置決めされており、X−Y平面内で隣り合う2つの単電池10が互いに接触してしまうことを防止している。
モジュールケース40は、樹脂などの絶縁材料で形成することができる。これにより、X−Y平面内で隣り合う2つの単電池10を絶縁状態とすることができる。なお、単電池10の外面を、絶縁材料で形成された層で覆っておけば、X−Y平面内で隣り合う2つの単電池10を絶縁状態とすることもできる。一方、モジュールケース40を導電性材料で形成することもできる。この場合には、モジュールケース40のうち、単電池10と対向する面に対して、絶縁材料で形成された層を形成しておくことができる。これにより、モジュールケース40および単電池10を絶縁状態とすることができる。
モジュールケース40は、Y方向で対向する側壁43a,43bを有する。側壁43aには、X方向に並んで配置された複数の開口44aが形成されている。各開口44aは、Z方向に延びている。
開口44aは、後述するように、モジュールケース40の内部に、単電池10の温度調節に用いられる熱交換媒体を取り込むための吸気口である。具体的には、X方向に延びるチャンバ(図示せず)を側壁43aに取り付け、チャンバに熱交換媒体を供給すれば、チャンバに供給された熱交換媒体が、開口44aを通過して、モジュールケース40の内部に移動することができる。
モジュールケース40の側壁43bには、X方向に並んで配置された複数の開口44bが形成されている。各開口44bは、Z方向に延びている。開口44bは、後述するように、モジュールケース40の内部に存在する(吸気口から内部に流入した)熱交換媒体をモジュールケース40の外部に排出させるための排気口である。具体的には、X方向に延びるチャンバ(図示せず)を側壁43bに取り付ければ、開口44bを通過した熱交換媒体をチャンバに移動させて、このチャンバから熱交換媒体を排出させることができる。
単電池10が充放電などによって発熱しているときには、冷却用の熱交換媒体を開口44a(吸気口)からモジュールケース40の内部に供給することにより、単電池10の温度上昇を抑制することができる。すなわち、熱交換媒体および単電池10の間で熱交換を行わせることにより、単電池10の熱を熱交換媒体に伝達させて、単電池10の温度上昇を抑制することができる。熱交換媒体としては、空気などを用いることができる。単電池10を冷却するときには、単電池10の温度よりも低い温度となるように、予め冷却された熱交換媒体を用いることができる。
一方、外部環境などの影響を受けて、単電池10が過度に冷えているときには、加温用の熱交換媒体を開口44aからモジュールケース40の内部に供給することにより、単電池10の温度低下を抑制することができる。すなわち、熱交換媒体および単電池10の間で熱交換を行わせることにより、熱交換媒体の熱を単電池10に伝達させて、単電池10の温度低下を抑制することができる。熱交換媒体としては、空気などを用いることができる。単電池10を温めるときには、単電池10の温度よりも高い温度となるように、ヒータなどを用いて予め温められた熱交換媒体を用いることができる。
モジュールケース40の下部には、複数のブラケット45が設けられている。ブラケット45は、開口部45aを有しており、開口部45aには、ボルト(図示せず)が挿入される。本実施例の電池モジュール1を、特定の機器に搭載するときには、ブラケット45が用いられる。すなわち、ブラケット45に挿入されるボルトを用いれば、電池モジュール1を特定の機器に搭載することができる。電池モジュール1は、例えば、車両に搭載することができる。この場合には、ブラケット45を用いて、電池モジュール1を車両ボディに固定することができる。
電池モジュール1を車両に搭載するときには、モータ・ジェネレータを用いて、電池モジュール1から出力された電気エネルギを運動エネルギに変換することができる。この運動エネルギを車輪に伝達させれば、車両を走行させることができる。また、モータ・ジェネレータを用いることにより、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギに変換することができる。この電気エネルギは、回生電力として、電池モジュール1に蓄えることができる。
ホルダ20の上面には、第1カバー51が配置されている。なお、図2の例では、第1カバー51を省略している。第1カバー51は、Z方向に延びる腕部51aを有しており、腕部51aの先端には、開口部が形成されている。ホルダ20の外縁には、ピン23が設けられており、ピン23は、腕部51aの開口部に挿入される。これにより、第1カバー51をホルダ20に固定することができる。
第1カバー51およびホルダ20の間には、スペースが形成されている。このスペースは、後述するバスバー60,72を収容したり、単電池10から排出されたガスを移動させたりするためのスペースとなる。バスバー60,72を第1カバー51によって覆うことにより、バスバー60,72を保護することができる。
モジュールケース40の底面42は、第2カバー52によって塞がれる。第2カバー52は、モジュールケース40の底面42に沿った形状に形成されている。第2カバー52および底面42の間には、後述するバスバー60,71が配置される。このため、第2カバー52は、バスバー60,71を保護するために用いられる。
ホルダ20(絶縁体30)から突出した単電池10の正極端子11には、バスバー60の正極タブ61が接続される。正極タブ61は、Z方向において正極端子11と対向する位置に設けられており、正極端子11および正極タブ61は、溶接などによって接続することができる。本実施例では、5つの正極タブ61が、バスバー60の第1領域60aに形成されており、第1領域60aは、X−Y平面に沿った平板状に形成されている。バスバー60の第1領域60aは、上述したように、ホルダ20および第1カバー51の間に配置される。
第1領域60aに形成される正極タブ61の数(1つ以上)は、適宜設定することができる。後述するように、複数の単電池10を電気的に並列に接続するときには、電気的に並列に接続される単電池10の数に応じて、第1領域60aに形成される正極タブ61の数が設定される。言い換えれば、第1領域60aに形成される正極タブ61の数は、電気的に並列に接続される単電池10の数となる。本実施例において、複数のバスバー60における第1領域60aは、正極タブ61の位置に応じて、互いに異なった形状を有している。
モジュールケース40の開口部42aから突出した単電池10の負極端子12には、バスバー60の負極タブ62が接続される。負極タブ62は、Z方向において負極端子12と対向する位置に設けられており、負極端子12および負極タブ62は、溶接などによって接続することができる。本実施例では、5つの負極タブ62が、バスバー60の第2領域60bに形成されており、第2領域60bは、X−Y平面に沿った平板状に形成されている。バスバー60の第2領域60bは、上述したように、モジュールケース40および第2カバー52の間に配置される。
第2領域60bに形成される負極タブ62の数(1つ以上)は、適宜設定することができる。後述するように、複数の単電池10を電気的に並列に接続するときには、電気的に並列に接続される単電池10の数に応じて、第2領域60bに形成される負極タブ62の数が設定される。言い換えれば、第2領域60bに形成される負極タブ62の数は、電気的に並列に接続される単電池10の数となる。本実施例において、複数のバスバー60における第2領域60bは、負極タブ62の位置に応じて、互いに異なった形状を有している。
第1領域60aおよび第2領域60bは、Z方向に延びる第3領域60cを介して接続されている。言い換えれば、第3領域60cの上端は、第1領域60aと接続されており、第3領域60cの下端は、第2領域60bと接続されている。第3領域60cは、モジュールケース40の外側に配置されている。すべてのバスバー60における第3領域60cは、X方向に並んで配置されているとともに、モジュールケース40の側壁43bに沿って配置されている。
側壁43bの外面には、凹部46が形成されており、凹部46に対して第3領域60cが収容される。図3は、電池モジュール1をX−Y平面で切断した断面図であって、電池モジュール1の一部を示している。図3に示すように、凹部46は、X方向で隣り合う2つの開口44bの間に形成されている。そして、X方向で隣り合う2つの開口44bの間に、バスバー60の第3領域60cが位置している。
本実施例の電池モジュール1では、バスバー60の他に、バスバー71,72も用いている。バスバー71,72は、X方向における電池モジュール1の両端に設けられており、バスバー60とは異なる形状を有している。
バスバー71は、負極端子12と接続される負極タブ71aを備えている。ここで、バスバー71は、正極端子11と接続されていない。本実施例において、バスバー71は、5つの負極端子12と接続されるため、5つの負極タブ71aを備えている。また、バスバー72は、正極端子11と接続される正極タブ72aを備えている。ここで、バスバー72は、負極端子11と接続されていない。本実施例において、バスバー72は、5つの正極端子11と接続されるため、5つの正極タブ72aを備えている。
バスバー71に設けられたリード71bは、電池モジュール1の負極端子として用いられる。また、バスバー72に設けられたリード72bは、電池モジュール1の正極端子として用いられる。電池モジュール1を負荷と電気的に接続するときには、リード71b,72bが配線を介して負荷と接続される。
また、複数の電池モジュール1を電気的に直列に接続するときには、一方の電池モジュール1のリード71bが、他方の電池モジュール1のリード72bと電気的に接続される。ここで、図2に示す複数の電池モジュール1をX方向に並べるとき、一方の電池モジュール1におけるリード71bは、他方の電池モジュール1におけるリード72bと隣り合う位置に配置される。これにより、リード71b,72bを容易に接続することができる。
バスバー60,71,72を用いることにより、電池モジュール1を図4に示す回路構成とすることができる。本実施例では、バスバー60の第1領域60aに設けられた複数の正極タブ61を複数の正極端子11に接続したり、バスバー60の第2領域60bに設けられた複数の負極タブ62を複数の負極端子12に接続したりしている。これにより、複数の単電池10を電気的に並列に接続することができる。具体的には、図4に示すように、5つの単電池10を電気的に並列に接続することができる。ここで、電気的に並列に接続された5つの単電池10によって、1つの電池ブロック10Aが構成される。
また、本実施例では、1つのバスバー60に関して、第1領域60aの正極タブ61と、第2領域60bの負極タブ62とは、互いに異なる単電池10と接続されている。このため、バスバー60の第3領域60cを介して、複数の電池ブロック10Aを電気的に直列に接続することができる。言い換えれば、バスバー60の数を変更することにより、電気的に直列に接続される電池ブロック10Aの数を変更することができる。
一方、電池モジュール1の一端に位置する電池ブロック10Aでは、複数の単電池10における負極端子12がバスバー71によって電気的に並列に接続されている。また、電池モジュール1の他端に位置する電池ブロック10Aでは、複数の単電池10における正極端子11がバスバー72によって電気的に並列に接続されている。
なお、電池ブロック10Aを構成する単電池10の数、言い換えれば、電気的に並列に接続される単電池10の数は、適宜設定することができる。バスバー60の第1領域60aに設けられる正極タブ61の数や、バスバー60の第2領域60bに設けられる負極タブ62の数を変更すれば、電気的に並列に接続される単電池10の数を変更することができる。正極タブ61の数を変更すれば、第1領域60aの形状は、図1および図2に示す第1領域60aの形状とは異なる。同様に、負極タブ62の数を変更すれば、第2領域60bの形状は、図1に示す第2領域60bの形状とは異なる。
ここで、図3を参照して、電池モジュール1における熱交換媒体の流れについて説明する。図3に示すように、電池モジュール1において、モジュールケース40の開口44aが設けられる側壁43a側が、熱交換媒体の上流側(吸気側)であり、開口44bが設けられる側壁43b側が、熱交換媒体の下流側(排気側)として説明する。図3の例では、電池モジュール1に対する熱交換媒体の流動方向は、Y方向上方から下方に向かう方向となっており、開口44a(吸気口)及び開口44b(排気口)は、複数の各単電池10に対応してX方向に複数並んで配置されている。
電池モジュール1に供給される熱交換媒体は、モジュールケース40の開口44aから内部に流入する。開口44aは、Y方向において、単電池10間のスペースに対向する位置ではなく、単電池10と対向する位置に設けられている。このため、開口44aから内部に流入した熱交換媒体は、単電池10の外周面に接触し、熱交換媒体および単電池10の間で熱交換が行われる。
X−Y平面内において、隣り合う2つの単電池10の間には、隙間が形成されているため、熱交換媒体は、2つの単電池10の間に形成された隙間を通過する。開口44aを通過した熱交換媒体は、開口44bに向かって進む。熱交換媒体が開口44bに到達する間に、熱交換媒体は、複数の単電池10との間で熱交換を行う。これにより、モジュールケース40に収容された、すべての単電池10の温度を調節することができる。
開口44bは、開口44aと同様に、Y方向において単電池10と対向する位置に設けられている。開口44bと隣り合う単電池10と熱交換された熱交換媒体は、開口44bを通過して、モジュールケース40の外部に排出される。
次に、図5から図7を参照して、本実施例の電池モジュール1の温度調節構造について説明する。図5は、電池モジュール1の温度調節構造の説明図であり、単電池10の長手方向において熱交換媒体の流量を一定にした場合のホルダ20に保持された各単電池10の電池温度を説明する図である。
本実施例の電池モジュール1は、複数の単電池10がホルダ20によって保持されており、長手方向における単電池10の一端側の端部がホルダ20の開口部21に挿入されている。このため、一端側の端部領域R1は、熱交換媒体と接触することができず、ホルダ20の開口部21に挿入されていない領域R2に熱交換媒体が接触することになる。
例えば、図5に示すように、単電池10の長手方向において同じ流量の熱交換媒体をモジュールケース40に吸気及び排気すると、熱交換媒体の流動方向上流側に配置された単電池10aは、下流側に配置された単電池10nよりも温度が低くなる。これは、上流側で単電池10a等と熱交換を行った熱交換媒体の温度が下流側に向かうにつれて高くなるためである。
なお、単電池10の長手方向において同じ流量の熱交換媒体をモジュールケース40に吸気及び排気させる構成としては、例えば、吸気口(開口44a)及び排気口(開口44b)の形状を、単電池10の長手方向において同じ大きさに形成することで、モジュールケース40内に流入する熱交換媒体の流量及びモジュールケース40外部に流れ出る熱交換媒体の流量を、単電池10の長手方向において同じ流量とすることができる。
単電池10aは、長手方向において領域R2が熱交換媒体の接触により温度が低くなる。ホルダ20によって保持されていない他端部側の温度をTbとする。一方、本実施例のホルダ20は、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属材等で形成することができ、開口部21に挿入されている単電池10の端部(端部領域R1)からホルダ20に熱を伝達させて単電池10を放熱する放熱部として機能することができる。
しかしながら、単電池10aの端部領域R1は、熱交換媒体と接触しないため、領域R2の温度Tbよりも高い温度Taとなる(Ta>Tb)。この場合において、端部領域R2がホルダ20と接触することにより、端部領域R1において単電池10からホルダ20に熱が伝達されて温度が低くなれば、長手方向における端部領域R1と領域R2との温度差を小さくすることができるが、単電池10aの端部領域R1が、ホルダ20よりも温度が低い場合、ホルダ20から受熱してしまい、長手方向における端部領域R1と領域R2との温度差が小さくならない。
すなわち、下流側に配置された単電池10nの温度は、上流側に配置された単電池10aの温度よりも高く、熱交換媒体と接触する単電池10a、10nの各領域R2の温度関係は、Tb>Tdとなる。したがって、単電池10a及び単電池10nの各端部領域R1における温度関係は、単電池10aの端部領域R1の温度Taが、単電池10nの端部領域R1の温度Tcよりも低くなる。このため、単電池10aの端部領域R1は、ホルダ20を通じて下流側に配置された単電池10nの端部領域R1から放熱される熱を受熱する。
このように長手方向一端部がホルダ20によって保持された複数の単電池10間において、熱交換媒体の上流側及び下流側の温度差が、ホルダ20を介して上流側の温度の低い単電池10の熱が逆方向に移動する。
つまり、下流側よりも温度の低い熱交換媒体が接触する領域R2を有する単電池10aは、ホルダ20によって保持される端部領域R1が下流側の単電池10nの端部領域R1から放熱された熱をホルダ20を介して受熱してしまい、上流側から下流側に向かって温度が高くなる熱交換媒体の温度上昇に対して、ホルダ20を介して逆向きに熱が移動して領域R2よりも端部領域R1の温度が高くなる。したがって、長手方向において単電池10aの温度バラツキ(温度差)が生じてしまう。
また、下流側の単電池10nも同様であり、熱交換媒体と接触しない単電池10nの端部領域R1の温度Tcは、領域R2の温度Tdよりも低くなる(Tc<Td)。これは、ホルダ20がY方向において上流側から下流側に向かって温度が高くなるものの、単電池10nに接触する熱交換媒体の温度が高いため、端部領域R1からホルダ20への放熱が促進され、単電池10nの長手方向において領域R2の温度が端部領域R1の温度よりも高くなる。このため、長手方向において単電池10nの温度バラツキ(温度差)が生じてしまう。単電池10の長手方向で温度バラツキが生じると、劣化が促進されてしまい、電池性能の低下を招く要因となる。
そこで、本実施例の温度調節構造は、一端側の端部がホルダ20によって保持される単電池10の長手方向において熱交換媒体の流量を変えて接触させ、単電池10の長手方向の温度バラツキを抑制する。
具体的には、図1及び図6に示すように、吸気口である開口44aの開口面積が、ホルダ20側に近付くにつれて大きく、かつホルダ20から離れるにつれて小さくなるように、開口44aの形状をZ方向において相違させて形成する。例えば、開口44aの形状は、Z方向においてホルダ20に近い部分の開口幅が大きく、ホルダ20から遠い部分の開口幅が小さい台形形状や三角形状などとすることができる。
一方、排気口である開口44bの開口面積が、ホルダ20側に近付くにつれて小さく、かつホルダ20から離れるにつれて大きくなるように、開口44bの形状をZ方向において相違させて形成する。つまり、排気側の開口44bは、熱交換媒体の吸気側の開口44aの形状をZ方向において上下逆にした形状(Z方向においてホルダ20に近い部分の開口幅が小さく、ホルダ20から遠い部分の開口幅が大きい台形形状や三角形状等の形状)に形成することができる。
このように開口44a及び開口44bを構成することで、電池モジュール1の導入される熱交換媒体は、吸気口から排気口に向かう流動方向の上流側において、Z方向における単電池10のホルダ20に近い領域に接触する流量が、ホルダ20から遠い領域に接触する流量よりも多く流れるように、吸気口(開口44a)からモジュールケース40内に流入させ、流動方向の下流側において、Z方向における単電池10のホルダ20から遠い領域に接触する流量が、ホルダ20に近い領域に接触する流量よりも多く流れるように、排気口(開口44b)からモジュールケース40外に流出させることができる。なお、開口44aと開口44bとは、全体の開口面積(大きさ)を相違させるようにしてもよい。
図7は、単電池10の長手方向において熱交換媒体の流量を相違させた場合のホルダ20に保持された各単電池10の電池温度と熱交換媒体の流量との関係を示す図である。
図7に示すように、開口44aの形状に対応して、単電池10aは、長手方向の領域R2において、単電池10aの他端部(負極端子側の端部)に接触する熱交換媒体の流量が少なく、ホルダ20によって保持されている一端部(正極端子側の端部)に向かうにつれて、接触する熱交換媒体の流量が多くなる。
このため、上流側において、熱交換媒体の接触による単電池10aの他端部の温度低下が抑制されるとともに、他端部よりも温度が高くなりやすい端部領域R1側の領域R2の熱交換効率が向上し、温度が低下しやすくなる。したがって、領域R2から端部領域R1にかけて、他端部側の温度低下を抑制しつつ、一端部の温度低下を促進させることができ、単電池10aの長手方向において、温度バラツキを抑制することができる。
一方、下流側においては、開口44bの形状に対応して、単電池10nは、長手方向の領域R2において、単電池10nの他端部(負極端子側の端部)に接触する熱交換媒体の流量が多く、ホルダ20によって保持されている一端部(正極端子側の端部)に向かうにつれて、接触する熱交換媒体の流量が少なくなる。
このため、下流側において、熱交換媒体の接触による単電池10nの他端部の温度低下が促進されるとともに、端部領域R1側の領域R2の熱交換効率が抑制され、温度が低下し難くなる。したがって、領域R2から端部領域R1にかけて、他端部側の温度低下を促進させつつ、一端部側の温度低下を抑制させることができ、単電池10nの長手方向において、温度バラツキを抑制することができる。
また、本実施例の温度調節構造は、電池モジュール1の各単電池10それぞれの長手方向における温度バラツキを抑制できるとともに、電池モジュール1に導入される熱交換媒体の流動方向の上流側に位置する単電池10aと下流側に位置する単電池10nとの間の温度バラツキも抑制することができる。
すなわち、図7に示すように、ホルダ20によって保持されていない他端部側に接触する熱交換媒体の流量は、上流側の単電池10aで少なく、下流側の単電池10nで多くなっている。このため、上流側の単電池10aとの間で熱交換を行う熱交換媒体の熱量が低く抑えられ、上流側から下流側の単電池10nに流れる熱交換媒体の温度上昇が抑制される。
このため、下流側に対して温度上昇が抑えられた熱交換媒体を流通させることができ、下流側の単電池10nの熱交換効率を向上させることができる。したがって、電池モジュール1に導入される熱交換媒体の流動方向の上流側に位置する単電池10aと下流側に位置する単電池10nとの間の温度バラツキが抑制され、電池モジュール1の各単電池10間の電池劣化のバラツキを抑制することができる。
このように本実施例の電池モジュール1の温度調節構造は、一端側の端部領域R1がホルダ20で保持された複数の単電池10において、上流側の吸気口及び下流側の排気口それぞれがホルダ20に対する位置関係に応じて開口面積がZ方向に異なるように形成されているので、熱交換媒体の流動方向に対して上流側の単電池10と下流側の単電池10の間で各単電池10の長手方向における熱交換媒体の流量が相違し、Z方向一端がホルダ20に保持された単電池10の長手方向における温度バラツキを抑制することができる。
さらには、上流側の単電池10との間の熱交換媒体の熱交換効率を抑制できるので、下流側の単電池10との間の熱交換媒体の熱交換効率を向上させることができる。このため、電池モジュール1に導入される熱交換媒体の流動方向において上流側に位置する単電池10と下流側に位置する単電池10との間の温度バラツキを抑制することができる。
本実施例の電池モジュール1の温度調節構造は、1つの単電池10の長手方向の温度バラツキを抑制して電池劣化が促進されることを抑制できるとともに、電池モジュール1を構成する単電池10の配列方向(熱交換媒体の流通方向)の上側と下側に位置する単電池間の温度バラツキを抑制することができる。
(実施例2)
図8から図10は、本発明の実施例2を示す図である。本実施例において、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。本実施例では、実施例1と異なる点について、主に説明する。
本実施例の電池パック100(蓄電装置に相当する)は、実施例1の電池モジュール1を複数配置して構成される。図8は、複数の電池モジュール1を配置した電池パック100の構成及び各電池モジュール1A,1Bの構成を示す図である。
図8に示すように、電池パック100は、例えば、2つの電池モジュール1A,1Bを直列又は並列に接続して構成することができる。例えば、2つの電池モジュール1Aのリード71bと電池モジュール1Bのリード72bとを接続することにより、両者が電気的に直列又は並列に接続された電池パックを形成することができる。なお、電池パック1の熱交換媒体の流動方向に対して2つの電池モジュールを配置しているが、例えば、熱交換媒体の流動方向に対して配置された2つの電池モジュールを、当該流動方向と直交するZ方向に複数並べて配置した電池パックを構成することもできる。
本実施例の電池パック100は、各電池モジュール1A,1Bが電池パック100における熱交換媒体の流通方向に並んで配置されており、かつ熱交換媒体の流動方向の上流側に配置される蓄電モジュール1Aの開口44a(吸気口)と流動方向の下流側に配置される蓄電モジュール1Bの開口44a(吸気口)が、互いに向き合うように配置されている。
例えば、電池パック100内を流動する熱交換媒体の流動方向に沿って開口44aが上流側に面する図2に示した電池モジュール1Bに対し、さらに上流側に電池モジュール1Bの配置向きを180度回転させた配置向きとなるように電池モジュール1Aを配置する。
電池パック100の熱交換媒体の流動方向の上流側に配置される蓄電モジュール1Aは、開口44b(排気口)が流動方向の上流側に面し、かつ開口44a(吸気口)が流動方向の下流側に面するように配置され、流動方向の下流側に配置される電池モジュール1Bは、開口44a(吸気口)が流動方向の上流側に面し、開口44b(排気口)が流動方向の下流側に位置するように配置され、電池モジュール1Aの開口44aと電池モジュールの開口44aが、流動方向において互いに向き合うように配置される
図9は、電池パック100の熱交換媒体の流動方向に並んで配置された各電池モジュール1A,1Bの吸気口及び排気口の配置構成及び単電池10の長手方向における熱交換媒体の流量を説明する図である。
図9に示すように、電池モジュール1Aにおいて、開口44bが吸気口となり、開口44bの開口面積は、ホルダ20側に近付くにつれて小さく、かつホルダ20から離れるにつれて大きくなっている。一方、開口44aが排気口となり、開口44aの開口面積は、ホルダ20側に近付くにつれて大きく、かつホルダ20から離れるにつれて小さくなっている。このため、電池モジュール1Aから下流側の電池モジュール1Bに排気される熱交換媒体は、Z方向においてホルダ20側で流量が多くなり、ホルダ20から離れる方向に流量が少なくなる。
そして、下流側の電池モジュール1Bの上流側の開口44aがそのまま吸気口となり、電池モジュール1Bの下流側の開口44bがそのまま排気口となる。したがって、Z方向においてホルダ20側で流量が多く、ホルダ20から離れる方向に流量が少ない電池モジュール1Aから排気された熱交換媒体は、電池モジュール1Bの開口44aからZ方向においてホルダ20側で流量が多く、ホルダ20から離れる方向に流量が少ない流量となるように熱交換媒体が取り込まれ、電池モジュール1Bの開口44bからZ方向においてホルダ20側で流量が少なく、ホルダ20から離れる方向に流量が多い流量となるように熱交換媒体が排気される。
このように構成することで、本実施例の電池パック100の温度調節構造は、上流側の電池モジュール1Aと下流側の電池モジュール1Bとの間で、温度バラツキを抑制することができる。図10は、熱交換媒体の流動方向に並んで配置された上流側の電池モジュール1Aと下流側の電池モジュール1Bの温度と熱交換媒体の流量との関係を示す図である。
図10に示すように、電池モジュール1Aに対して開口44bから、単電池10nのホルダ20によって保持されていない領域R2の他端部側に熱交換媒体が多く流入し、単電池10nの領域R2のホルダ20側に熱交換媒体が少なく流入する。このとき、単電池10nは、長手方向においてTa>Tbの温度関係を有するため、領域R2の他端部側に多く流入する熱交換媒体は、単電池10nとの間で熱交換効率が領域R2のホルダ20側よりも低く抑えられる。一方、領域R2のホルダ20側では、熱交換媒体の流量が少なく流入するので、熱交換媒体への伝熱量は低くなる。
同様に、電池モジュール1Aに対して開口44aから排気される熱交換媒体の流量は、単電池10aのホルダ20によって保持されていない領域R2の他端部側で少なくなり、単電池10aの領域R2のホルダ20側で多くなる。このとき、単電池10aは、長手方向においてTc<Tdの温度関係を有するため、領域R2のホルダ20側に多く流れる熱交換媒体は、単電池10aとの間で熱交換効率が領域R2の他端部側よりも低く抑えられる。一方、領域R2の他端部側では、熱交換媒体の流量が少なく流れるので、熱交換媒体への伝熱量は低くなる。
したがって、上流側の電池モジュール1Aから下流側の電池モジュール1Bに流入する熱交換媒体は、電池モジュール1Aでの熱交換効率、すなわち、熱交換による温度上昇が抑制されたものとなる。このため、上流側の電池モジュール1Aの熱交換効率を抑制して下流側の熱交換効率を向上させることができ、電池モジュール1A,1B間での温度バラツキを抑制することができる。
このとき、電池モジュール1A,1B間での温度バラツキが抑制されることから、電池モジュール1Aの上流側の単電池10と電池モジュール1Bの下流側の単電池10との間の温度バラツキも抑制される。また、電池モジュール1Bでは、実施例1同様に単電池10の長手方向における温度バラツキも抑制され、電池モジュール1A,1B間及び単電池10の長手方向双方の温度バラツキを抑制することができる。
なお、本実施例では、熱交換媒体の流動方向に対して2つの電池モジュールを配置した電池パック1を一例に説明したが、これに限らず、例えば、流動方向に3つ以上の電池モジュールを配置した電池パックにも適用することができる。
この場合、最上流に配置される電池モジュールを上述した電池モジュール1Aとし、最下流の電池モジュールを上述した電池モジュール1Bとして配置することができる。そして、最上流の電池モジュール1Aの開口44aと最下流の電池モジュール1Bの開口44aとが、熱交換媒体の流動方向において互いに向き合うように配置しつつ、最上流の電池モジュール1Aと最下流の電池モジュール1Bとの間に1つ以上の電池モジュールを配置することができる。
このとき、最上流の電池モジュール1Aと最下流の電池モジュール1Bとの間に配置される電池モジュールは、上述した電池モジュール1を適用することができるが、開口44a及び開口44bの各形状は、他の形状(例えば、Z方向に延びる矩形状)であってもよい。
電池パック1が熱交換媒体の流動方向に3つ以上の複数の電池モジュールが配置される構成であっても、最上流の電池モジュールと最下流の電池モジュールとをそれぞれ電池モジュール1A,1Bで構成し、かつ最上流の電池モジュール1Aと最下流の電池モジュール1Bとを、熱交換媒体の流動方向において互いに向き合うように配置すれば、電池パック1の最上流の電池モジュールを流通する熱交換媒体の温度上昇が抑制され、最下流の電池モジュールに流入する熱交換媒体の温度を低くすることができる。このため、熱交換媒体による上流側の電池モジュールの熱交換効率を抑制して下流側の電池モジュールの熱交換効率を向上させることができ、電池パック1を構成する電池モジュール間での温度バラツキを抑制することができる。