JP5894798B2 - 検出器システム及び方法 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2009年3月4日に出願され、内容全体が引用によって本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/202,493号に対する優先権を主張するものである。
本発明は、コンダクタンス検出を使用して関心対象の化学及び/又は生物学的標的分析物の存在を検出する方法及び装置に関する。
コンダクタンス検出システム及び方法は様々な用途で使用することができ、用途の重要な一例として分離方法及び装置が挙げられる。分離方法及び装置は、化学、生物学、環境科学などの基本科学や、薬剤、保健、化学物質、石油、食品などに関する工業を含む多くの場合に重要である。分離方法及び装置を使用することによって、複数の種を備える試料混合物が二つ又は三つ以上の異なる生成物に転換される。
分離方法及び関連する装置の多くの変形例が当技術分野で公知である。一例として、これらの変形例では、クロマトグラフィのように液体又は気体であってよい移動相を使用して試料混合物が移送される。様々な種を、実質的にカラム状、毛細管状、又は平面状に配置することのできる固定相との相互作用に基づいて分離することができる。他の例として、試料混合物中の種を荷電する場合、これらの種を電界によって移送することもでき、様々な種を電気泳動法のようにそのそれぞれの移動度に基づいて分離することができる。様々な電気泳動分離方法及び装置には、ゲル、毛細管、マイクロチャネル、二次元分離などに基づく方法及び装置が含まれる。さらに他の例として、液相の試料混合物中の種は、基質上に固定化し、次に試料混合物から取り除くことによって分離することができる。この手法は多くのバイオセンサにおいて中心的役割を果たしている。
様々な種を分離するとき、たとえば、分離の程度(又は分離しないこと)を評価したり、種をその量及びその他の特性に関して分析したり、場合によってはさらに処理するか或いは使用するための隔離を助けたりすることのような様々な理由でそれらの種を検出する必要がある。これに関して様々な種類の検出器が使用されている。種の試料混合物が液体移動相によって保持される分離方法及び装置に関して、最も広範囲に使用されている検出器は光学に基づく検出器である。電磁スペクトルの紫外線から可視光線(UV-Vis)の範囲で顕著な吸光度を有する種には、UV-Vis吸収分光法を使用することができる。
しかし、炭水化物、アルコール、ある重要なポリマー(たとえばポリエチレングリコール)のような多くの重要な種が顕著なUV-Vis吸光度を有さないことに留意されたい。さらに、UV-Vis分光法を毛細管電気泳動法に適用する場合、特に、UV-Vis吸光度は光と試料混合物が相互作用する経路長に比例するが、分離を向上させるには毛細管直径を小さくすることが望ましいため問題がある。
2番目に広く使用されている種類の検出器は、屈折率、すなわち、真空中の光速に対するある物質中の光速の比に基づく検出器である。屈折率は物質の普遍的な特性であるため、UVを吸収しない種でも検出可能である。しかし、良好なUV吸収体である種を検出する際、UV-Vis検出器は屈折率検出器よりもずっと優れた感度を有する。また、屈折率検出器は、温度の影響を受けやすく、適切に調節された温度環境を必要とする。
様々な液体移動相のうちの一つを選択し、(高速液体クロマトグラフィ又はHPLCにおける勾配溶離のように)カラムから種を溶離させるように液体移動相の組成を変更した場合、溶媒の屈折率が著しく変化し、カラムから溶離する種による屈折率の追加的で場合によっては小さな変化を検出するのが困難になる。すなわち、溶媒の組成が変化することによって背景が著しく変化するため、検出器は(粗な分解能によって実現される)大きいダイナミックレンジを有する必要がある。その結果、背景のこのように大きな変化がデータから減算された後、種によるより小さい変化は不十分な信号対雑音比を有する。屈折率検出器が勾配溶離に適していないことは、屈折率検出器の用途を拡大するのを阻む重大な制限である。光学系の他の手法では、種を(たとえばレーザによって)励起することができ、種によって放出される蛍光を検出することができる。
種が顕著なUV-Vis吸光度を有することも顕著な蛍光を生成することもない場合、種をそのUV-Vis吸光度を高めるか或いは蛍光を強めるように化学的に修飾することができる。この場合、追加的な化学的処理ステップが必要になり、したがって、資源を追加的に投入することが必要になるために望ましくない場合がある。このような追加的な化学処理は、たとえば、薄層クロマトグラフィ又はゲル電気泳動法を使用するときには一般的に行われており、分離自体を実施するのに必要な時間程度の追加的なかなりの処理時間が必要になることがある。また、一般に、光学系の検出方法及び装置は、コストがかかり、いくらか扱いにくく、可搬性に欠ける。
したがって、これらの理由及びその他の理由で、UV-Vis吸光度、屈折率、又は蛍光以外のものに基づく他の検出装置及び方法が開発されている。液体移動相を使用する分離方法及び装置に関しては、電気化学電流、蒸発光散乱、及び質量分析に基づく検出装置及び方法が含まれる。ある種を電解液に溶解させて酸化又は還元させることができる場合、電気化学検出器を使用して、酸化又は還元によって生成された電流を介して種を検出することができる。
種が、それが溶解した溶媒よりもずっと揮発性が低い場合、蒸発光散乱検出器を使用することができる。種を検出するこの手法では、種が霧化され、気体によって移送される。溶媒が蒸発すると、種は、気体中に微粒子を形成し、光散乱によって検出される。液体クロマトグラフィ質量分析では、通常、溶媒は種よりもずっと揮発性が高い。多くの場合、試料混合物には揮発性の高い酸、塩基、又は緩衝液が含まれ、種は試料混合物中にイオンとして存在する。試料混合物の荷電された液滴を生成するためにエレクトロスプレーイオン化が使用される。液滴が蒸発すると、結果的に荷電された種が残り、質量分析計によって検出される。
これらの様々な方法には有用な用途があるが、顕著な制限もある。伝導率検出器を使用できる溶媒は、実際に測定可能な伝導率を有する溶媒に限定される。HPLCに広く使用されている重要な有機溶媒、たとえばヘキサンは、伝導率が低過ぎてほとんど測定不能である。また、伝導率を調べる電極が試料混合物に接触している場合、電極-試料混合物界面での伝導率の変化が、測定される伝導率全体に悪影響を与える可能性があるため望ましくない。電気化学検出器は、酸化又は還元できる種及び電解液に限定される。蒸発光散乱では、試料混合物中の種よりもずっと揮発性の高い溶媒を使用する必要がある。重要な揮発性分子、たとえばポリエチレングリコールなどの低分子量ポリマーを検出することはできない。質量分析検出器の場合にも同様の制限が生じる。
質量分析検出器では種を首尾よくイオン化する必要もあり、通常非常にコストがかかる。また、上記の検出器のいくつかは、大形であり、慎重に位置合わせする必要があり、したがって、検出器の可搬性を著しく制限する光学機器、真空構成部材、磁石、気体供給系、ダイオードアレイ検出器のような多数の構成部材を備える。これらの構成部材もコストがかかる傾向がある。したがって、広範囲の種を検出することができ、広範囲の溶媒(勾配溶離中に使用される、様々な組成を有する溶媒を含む)を使用して働くことができ、容易に搬送することができ、且つ費用有効性が高い、試料混合物中の種を検出する装置及び方法が望ましい。
種が液体中で頻繁に合成されると仮定すると液体移動相を使用する分離方法及び装置が望ましいが、ガスクロマトグラフィ及び関連する検出器を使用して種を分離することもできる。この場合、種を検出する最も一般的な装置及び方法は、炎イオン化検出及び熱伝導率検出に基づく装置及び方法である。どちらの場合も広範囲の成分を感知し、且つ広範囲の濃度にわたって作用する。炎イオン化検出器は、主として炭化水素の影響を受け、熱伝導率検出器よりも炭化水素の影響を受けやすい。しかし、炎イオン化検出器は、水を検出するのが困難である。他の検出器は、特定の種類の物質しか検知せず、より狭い濃度範囲でしかうまく働かず、可搬性が制限されることがあり、非常にコストがかかる場合がある。ガスクロマトグラフィを使用して種を検出する他の方法及び装置には、放電イオン化、電子捕獲、炎光光度法、ホール電界コンダクタンス、ヘリウムイオン化、窒素リンの存在、光電離、パルス放電イオン化、熱エネルギー分析、及び質量分析が含まれる。
コンダクタンス測定(又は同等のインピーダンス測定)に基づく種を検出する方法及び装置は、それぞれ上述の方法及び装置の代わりとなることができる。コンダクタンス検出器は、安価に製造することができ、且つ小形で可搬性であってよい電子機器を利用することができる。また、コンダクタンスを測定するのに使用される電極は、すべてナノメートル長さスケールからミクロン長さスケール、ミリメートル長さスケール、場合によってはそれより大きい長さスケールまでの、広範囲の長さスケールにわたって調節可能な、電極のサイズ、形状、相対的な位置、及び相対的な向きを含む幾何学的因子によって決定される領域のコンダクタンスを調べる。電極は、化学的方法、電子ビームリソグラフィ、光学リソグラフィ、シャドーマスク法、及び当業者に公知の他の方法を利用して製造することができる。このため、コンダクタンス検出に基づく方法及び装置は従来、それぞれ、試料及び溶媒の体積を極めて少なくし、検出ピークを鋭くし、効率的な分離を実現し、且つコストを著しく節約するのを可能にするマイクロ流体工学向けの方法及び装置に適合している。また、コンダクタンス検出は、ロックイン検出などを含む、当技術分野で公知であり信号対雑音比を向上させる方法に適している。
コンダクタンス測定では、駆動要素(電流や電圧など)が一つ又は複数の電極に印加され、応答(それぞれ電圧や電流など)を誘起する。駆動要素は、経時的に変化してよく、或いは時間とは実質的に無関係であってよい。試料混合物は、少なくとも一方の電極の近くを横切るように配置される。電極及び試料混合物は、互いに直接接触してもしなくてもよい。たとえば、駆動要素が電圧である場合、一つ又は複数の電極は、可動電荷を一つ又は複数の電極の表面を横切って流動させることによっていわゆる外部電流iextを該表面を横切って流動させることができ、且つ/或いは一つ又は複数の電極は、時間の関数として充電又は放電することによって変位電流idispを流動させることができる。
線形近似では、一対の電極間に電圧差△Vが印加され、且つ一対の電極間に変位電流が流れない場合、電極間に流れる外部電流は、△Vに比例し、
iext = △VGσ (1)
によって与えられる。フリンジング効果を無視する場合、次式が成立する。
Gσ = σ∫dA/L (2)
上式で、Gσはσコンダクタンスであり、σは伝導率であり、存在する種の種類及び濃度によって決まり、dAは、外部電流が流れる断面積の要素であり、Lは、外部電流が該要素内を流れる距離である。より一般的には、次式が成立する。
Gσ = σLσ (3)
上式で、Lσは、長さ寸法であり、電流が流れる断面積が大きくなり且つ距離が短くなるにつれて大きくなる。数式(3)から、Lσがコンダクタンスの幾何学的増幅係数であることは明らかである。
やはり線形近似では、一対の電極間に電圧差△Vが印加され、且つ一対の電極間に変位電流が流れない場合、電極間に流れる外部電流は、△Vに比例し、
idisp = △VGε (4)
によって与えられる。フリンジング効果を無視する場合、次式が成立する。
Gε = jωε∫dA/L (5)
上式で、Gεはεコンダクタンスであり、jはj2 = -1であるような複素数であり、ωは、経時的に正弦的に変化すると仮定される電圧差の角周波数であり、εは誘電率であり、dAは、変位電流が流れる断面積の要素であり、Lは、変位電流が該要素内を流れる距離である。より一般的には、次式が成立する。
Gε = jωεLε (6)
上式で、Lεは、長さ寸法であり、電流が流れる断面積が大きくなり且つ距離が短くなるにつれて大きくなる。数式(6)から、Lεが誘電率の幾何学的増幅係数であることは明らかである。
電圧が十分に小さい場合、上述の線形近似は非常にうまく働く。コンダクタンス検出器の応答は、基本回路理論によって適切なGσとGεの直列/並列組合せとして与えられる正味コンダクタンスGによって適切にモデル化できることが多い。電流は、当技術分野で公知の方法及び装置によって測定することができ、△Vが与えられたと仮定すると、それによってGを求めることができる。
Gε及び/又はGσは、一つ又は複数の電極と相互作用する種の種類及び濃度に応じて異なってよい。種を検出するうえで実質的にGσに依存する検出器では、種が存在することによって、実際に測定可能なコンダクタンス変化が得られる必要がある。クロマトグラフィに関して、このようなGσ検出器が市販されている。しかし、(たとえば液体クロマトグラフィでは)低過ぎてほとんど測定不能な伝導率を有する溶媒(たとえばヘキサン)を使用することが多く、そのため、このような溶媒中の種を検出することはできない。
電気泳動分離に適した種が必然的に荷電され、試料混合物が通常、実際に測定可能なコンダクタンス変化を誘起することに留意されたい。Kuban (2004)、Matysik (2008)、Kuban (2008)、及びPumera (2007)は近年、ある種が試料中に存在することを、該種がGσに誘起する変化を介した毛細管電気泳動法及びマイクロチップ電気泳動法を介して分離することによって検出するコンダクタンス検出器を再検討している。本明細書では、このような検出器をGσ検出器と呼ぶ。毛細管電気泳動法向けのGσ検出器は一般に、電極が試料混合物と直接電気的に接触するか否かに応じて分類される。電極が試料混合物に接触する場合、電極が試料混合物中で種を駆動する力に悪影響を与えないように細心の注意を払わなければならない。マイクロチップ電気泳動法向けのGσ検出器も同様に分類することができる。このような検出器も、電極がオンカラムである(すなわち、種が分離される分離流路上に配置される)か、オフカラムである(すなわち、分離流路から分岐した流路上に配置される)か、或いはエンドカラムである(すなわち、分離流路の端部に配置される)かに応じて分類することができる。後者の分類の例外として、Wang (2003)は、分離流路に沿って移動可能であり、したがって、分離流路に沿った様々な点で種の分離を監視するのを可能にする電極を開示した。Clarkeらは、米国特許第5,194,133号で、試料混合物と接触する電極のアレイを含むマイクロチップ電気泳動装置を開示している。しかし、これらの電極は、Gσの変化ではなく電気化学電流を検出する。Tanyanyiwaら(2002)は、互いにおよそ1mmだけ分離して配置された電極を含むGσ検出器が、分離流路が電極よりもおよそ1mmではなくおよそ0.2mm下に配置されたときにより優れた信号を生成することを開示している。
Roof及びBenningfieldによる米国特許第4,301,401号は、試料セル及び基準セルを有し、誘電定数検出器自体を通過した成分の濃度に比例する電気信号を生成する誘電定数検出器を教示している。試料セル及び基準セルは、両方のセルに同じ流体があるときに各セルのキャパシタンスが実質的に等しくなるように調整される。
各セルに関連する電気回路は、それぞれ、ある周波数を有し、且つ各セルのキャパシタンスの関数である出力信号を生成する。二つの出力信号が混合されて差分周波数が生成され、差分周波数が電圧に変換され、試料セルを通過する試料混合物の特定の種の濃度を表す電気信号が生成される。しかし、Benningfieldら(1981年)は、溶質/溶媒の等価並列抵抗が0.27MΩ-cmより小さくなったときに検出器の振動が消えることを教示している。
その結果、水のような一般的な溶媒は不純物を含むためめったに使用できない。この検出器は、一般的な緩衝液や、塩や、その他の電解液には使用できない。また、この検出器は勾配溶離を使用する場合には適していない。また、コンダクタンス検出器の構造は堅牢ではない。移動相及び試料混合物は、圧力及び担体流量が変化するとLεの望ましくない顕著な変動が生じるようにキャパシタプレート間を流れる。圧力によってLεが変動すると、関心対象の種によるεの変動を検出するのが困難になる。また、従来技術によって開示されているLεは小さい。
M. Yiら(2005)は、面積が1.5μm x 4mmであり、かつ、電極距離間隔が20nmである、すなわち、幾何学的増幅係数が1.5μm x 4mm / 20nm又は30cmであるナノギャップ誘電バイオセンサを開示している。S. Royら(2009)は、DNAを超高感度に検出する大量生産されるナノギャップセンサアレイを開示している。センサは面積が5μm x 5μmであり、電極の距離間隔は5nmである。これらのセンサでは、検知に利用できるのはフリンジ電界だけである。電界が、電極の距離間隔の数倍程度である長さスケールでセンサの縁部を越えて延びると仮定すると、幾何学的増幅係数は、4縁部x 5μm x 5nm/5nmの数倍又は20μmの数倍である。Metrohm社から販売されている819高度IC検出器(伝導率検出器)は、次式によって定められる、13cm-1〜21cm-1の範囲であるセル定数を有する。
セル定数 = L/A (7)
対応する幾何学的増幅係数は0.5mm〜0.8mmの範囲である。Metrohm社から販売されている他の伝導率検出器は、0.1cm-1〜10cm-1の範囲のセル定数と、0.1cmから10cmの範囲の、対応する幾何学的増幅係数とを有する。Hollisらは、米国特許第5,846,708号で、分子検出用の光学及び電気装置を開示している。この特許の図4では、重なり合わないフットプリントを有する電極を含む伝導率検出器が開示されている。したがって、図4に示されているように。フリンジ電界によって検知が行われる。したがって、幾何学的増幅係数は、50ラインx ライン当たり2縁部x 100μm x 400nm / 400 nm又は1cmの数倍である。このように幾何学的増幅係数が小さいと、それに応じて、種が存在することによって生じるコンダクタンス変化が小さくなり、それに応じて、増幅を増大させる必要がある。コンダクタンス変化が小さい場合、検出するのが困難であることがあり、入念な後信号処理が必要になることがあり、一般にノイズの影響を受けやすくなる。
したがって、一般に、現在利用可能なものよりもずっと高い感度でコンダクタンスの変化を測定する改良された方法及び検出器が必要である。数式(3)及び(6)は、幾何学的増幅係数を大きくすると、それに応じて、コンダクタンスの変化を測定する方法及び検出器を改善できることを示している。原則的に、これは、多数の面積要素を組み合わせて断面積を大きくすることと、電極によって問い合わせられる領域の長さを短くすることによって実現することができる。
コンダクタンスの変化を検出するこのような方法及び装置は多数の用途を有する。たとえば平面ゲル電気泳動法では、タンパク質やDNAなどの種が、較正種と一緒に複数の軌跡に分離され、その後染色によって検出される。種が分離する際に該種によって誘起されるコンダクタンス変化を検出する方法及び装置は、染色を必要とせず、それによって資源を節約し、種が分離する際にリアルタイムで種に関する情報を与えることができるため望ましい。クロマトグラフィでは、大きな幾何学的増幅係数を有するコンダクタンス検出器は、すべての種が誘電定数を有するため「汎用」検出器として働くことができる。また、このようなコンダクタンス検出器は、伝導率測定を介して荷電された種をよりうまく検知することができる。当業者には、多くのこのような用途が容易に明らかになろう。
したがって、試料混合物中にある種が存在することによって生じるコンダクタンスの変化を検出する検出器及び方法であって、該変化が、雑音除去手段によって向上した信号対雑音比で検出され、圧力などの影響によって生じる望ましくない変動の影響を適切に回避し、適度に大きい幾何学的増幅係数によって増幅され、毛細管や、平面電気泳動法などの平面システムのような制約された形状を有する流体システムに適した検出器及び方法を有することが望ましい。さらに、検出器は、勾配溶離、及び不純物、緩衝液、塩、又は他の電解液を含んでよい移動相や水を含む様々な移動相に適したものであることが望ましい。
当業者には、本明細書に記述される発明が、クロマトグラフィ(ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、カラムクロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィを含む平面クロマトグラフィなどを含む)及び電気泳動法(マイクロチャネル電気泳動法、毛細管電気泳動法、ゲル電気泳動法などを含む)に関する様々な分離方法及び装置を含むがそれらに制限されない多数の用途を有することが理解されよう。本発明の様々な実施態様は、例示であり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明は、ある相中の一つ又は複数の化学及び/又は生物種の伝導率及び/又は誘電定数を検出するコンダクタンス検出器において、
セル構造であって、
一部が導電性を有し、第1の導電構成部材を形成する頂面を有する剛性の構造、
第1の導電構成部材に実質的に重なり、絶縁構成部材によって第1の導電構成部材から間隔を置いて配置された第2の導電構成部材、
化学及び/又は生物種が流れることができる、第1の導電構成部材と第2の導電構成部材との間の一つ又は複数の流路を含み、
第1の導電構成部材、第2の導電構成部材、及び絶縁構成部材が、1メートルを超える幾何学的増幅係数をもたらすように選択された構造を有し、幾何学的増幅係数が、電流が流れることのできる距離に対する、電流が流れることのできる表面積の比に関する係数であるセル構造と、
第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方に結合され、時間依存応答を誘起する時間依存電気信号を生成する電源と、
第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方に結合され、時間依存応答を測定する信号検出器と、
信号検出器に接続され、該相中に化学及び/又は生物種が存在することによって生じるコンダクタンスの変化を判定するマイクロプロセッサとを備えるコンダクタンス検出器を提供する。
本発明は、ある相中の一つ又は複数の化学及び/又は生物種の伝導率及び/又は誘電定数を検出する方法において、
一つ又は複数の化学及び/又は生物種について試験されている相を、セル構造内を流動させることと(セル構造が、絶縁構成部材によって第2の導電構成部材から分離された第1の導電構成部材を有する剛性の構造と、化学及び/又は生物種が流れることができる、第1の導電構成部材と第2の導電構成部材との間の一つ又は複数の流路とを含み、第1の導電構成部材、第2の導電構成部材、及び絶縁構成部材が、1メートルを超える幾何学的増幅係数をもたらす構造として選択された構造を有し、幾何学的増幅係数が、電流が流れることのできる距離に対する、電流が流れることのできる表面積の比に関する係数であるセル構造である)、
第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方に時間依存電気信号を印加して時間依存応答を誘起することと、
時間依存応答を測定し、該相中における化学及び/又は生物種の存在によって生じるコンダクタンスの変化を時間依存応答から判定することとを含む方法も提供する。
本発明の他の実施態様は、ある相中に分散され、一体化された実質的に平面状のゲル電気泳動装置によって分離された一つ又は複数の化学及び/又は生物種の伝導率及び/又は誘電定数を検出するコンダクタンス検出器であって、
一部が導電性を有し、該相から絶縁された第1の導電構成部材を形成する頂面を有する第1の剛性構造と、
該相から絶縁された第2の導電構成部材と、
第1又は第2の導電構成部材によって生成される変位電流が内部を流れるゲル構成部材と、
化学及び/又は生物種が流れることのできるゲル構成部材内の流路と、
第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方に結合され、時間依存応答を誘起する時間依存電気信号を生成する電源と、
第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方に結合され、時間依存応答を測定する信号検出器、及び信号検出器に接続され、該相中に化学及び/又は生物種が存在することによって生じるコンダクタンスの変化を判定するプロセッサと、
信号検出器に接続され、化学及び/又は生物種が存在することによって生じるコンダクタンスの変化を判定するように構成されたプロセッサとを備えるコンダクタンス検出器を提供する。
本発明は、ある相中に分散され、一体化された実質的に平面状のゲル電気泳動装置によって分離された一つ又は複数の化学及び/又は生物種の伝導率及び/又は誘電定数を検出する方法であって、
一つ又は複数の化学及び/又は生物種を含む該相を実質的に平面状の電気泳動ゲル構成部材内を流動させることと(実質的に平面状の電気泳動ゲル構成部材が、該相から絶縁された第1の導電構成部材と該相から絶縁された第2の導電構成部材との間に配置され、第1又は第2の導電構成部材によって生成される変位電流がゲル構成部材内を流れ、化学及び/又は生物種がゲル構成部材内の流路内を流れる)、
時間依存電気信号を印加して第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方の時間依存応答を誘起し、第1又は第2の導電構成部材によって変位電流が生成されることと、
時間依存応答を測定し、測定された時間依存応答を処理して、該相中に化学及び/又は生物種が存在することによって生じるコンダクタンスの変化を判定することとを含む方法も提供する。
本発明の他の特徴は、以下に記載されており、或いは以下の詳細な説明で明らかになろう。
次に、本発明を添付の図面を参照して一例としてのみ説明する。
図1a及び図1bは、二つの異なる電極間距離間隔における電極対間の電界線を示す図である。 図2aは、本発明の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器の概略図である。図2bは、図2aに示されているコンダクタンス検出器の一部の拡大図である。図2cは、図2aに示されているコンダクタンス検出器の断面図である。図2dは、図2bに示されているコンダクタンス検出器の断面図である。 図2eは、左の図から右の図へと、水にさらすことを含む処理を繰り返し受けたコンダクタンス検出器の走査電子顕微鏡写真である。図2fは、フッ化水素酸にさらすことを含む処理を受けたコンダクタンス検出器の走査電子顕微鏡写真である。図2gは、図2fに示されているコンダクタンス検出器の断面の走査電子顕微鏡写真である。 図2hは、本発明の実施形態による、電極間に孔の連結された網状構造を有するコンダクタンス検出器の図である。 本発明の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器と一緒に使用されるデータ処理システム及び回路の概略図である。 図4a〜4c及び図4d〜4fはそれぞれ、コンダクタンス検出器と一緒に使用されるハウジングの入口部及び出口部のそれぞれの異なる斜視図であり、図4a、4c、4d、及び4fはハウジングの円柱軸に垂直な端面図であり、図4b及びeは、ハウジングの円柱軸に平行な側面図である。 本発明の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器が組み込まれたHPLCシステムの概略図である。 図6a及び6bは、コンダクタンス検出器と一緒に使用されるハウジング用のフラッシュカラムアダプタの概略図であり、図6a及び6bはそれぞれ、フラッシュカラムアダプタの端面図及び側面図である。 図6c〜6fは、コンダクタンス検出器と一緒に使用されるハウジング用のフラッシュカラムアダプタの概略図であり、図6c及び6fはそれぞれ、フラッシュカラムアダプタの上面図及び底面図であり、図6d及び6eはフラッシュカラムアダプタの側面図である。 図6a及び6bに示されているフラッシュカラムアダプタを示し、組み立て構成のコンダクタンス検出器とハウジングを示す概略図である。 図8a及び8bはそれぞれ、UV-Vis検出器及びコンダクタンス検出器を同時に使用し、未知の汚染物質を含むアセチルサリチル酸(50μL、10μM)を試料混合物としてHPLCに注入した場合に得られたHPLCデータを示す図である。 HPLCカラムの条件を設定する前と後の両方にコンダクタンス検出器を使用して得られたHPLCデータであり、カラムの条件を設定した後にアセチルサリチル酸を含む試料をHPLCに注入し、すべての注入の体積を50μLとし、アセチルサリチル酸濃度を10μM、25μM、50μM、75μM、及び100μMとして得られたHPLCデータを示す図である。 図10a及び10bはそれぞれ、UV-Vis検出器及びコンダクタンス検出器を同時に使用して得られたHPLCデータであり、移動相をメタノールとアセトニトリルとで構成し、メタノールの画分を100%から0%へ0%から100%へと変化させ、組成を変化させる際、メタノールの画分が増大するときにも減少するときにも、アセチルサリチル酸(50μL、10μM)を注入して得られたHPLCデータを示す図である。 図11aは、本発明の他の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器の概略図である。 図11bは、本発明の他の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器の概略図である。 二つの種が分離される分離装置に沿った様々な位置に位置するコンダクタンス検出器からの信号を示す図である。 本発明の他の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器を含む分離装置の概略図である。 本発明の他の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器の概略図である。 本発明の他の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器のハウジングの概略図であり、ハウジングの様々な斜視図である。
概略的に言えば、本明細書で説明するシステムは、コンダクタンス検出を使用して関心対象の化学及び/又は生物学的標的分析物が存在することを検出する方法及び装置に関する。本明細書では、必要に応じて、本発明の実施形態を開示する。しかし、開示される実施形態は一例に過ぎず、本発明を多数の様々な代替的な形態で実現できることを理解されたい。各図は、原寸に比例しておらず、いくつかの部材は、特定の要素の細部を示すように誇張又は最小化されていることがあり、一方、新規な態様が曖昧になるのを防止するために関連する要素が削除されていることがある。したがって、本明細書に開示されている構造及び機能についての特定の内容は、制限的なものと解釈すべきではなく、特許請求の範囲の基礎及び当業者に本発明の様々な使用法を教示するための代表的な基礎事項として解釈すべきである。制限ではなく教示のために、例示される実施形態は、コンダクタンス検出を使用して関心対象の化学及び/又は生物学的標的分析物が存在することを検出する方法及び装置に関する実施形態である。
本明細書では、語「約(about)」が寸法、温度、又は他の物理的特性若しくは特質の範囲に関連して使用されるときは、寸法の範囲の上限及び下限に存在する可能性があるわずかな変動を対象とし、平均すれば大部分の寸法が満たされるが統計的にはこの範囲外の寸法が存在する場合がある実施形態を除外しないようにすることを意味する。
本発明は、いくつかの用途を有する。以下の用途は、一例としてのみ提示されており、本発明を制限又は定義するものと解釈すべきではない。
図1a及び1bは本発明のいくつかの態様を示している。図1aは、一対の電極10、及び一対の電極10の両端間に電圧を印加したときに発生するいくつかの関連する電界線12を示している。電界は、一対の電極10間の領域で最も強く、一対の電極から離れるにつれて弱くなる。図1bにおける一対の電極間の距離は図1aの場合より長く、これに応じて図1aにおける電極間の電界は図1bの場合より強い。したがって、図1a及び1bと数式2及び5は本発明の一局面、すなわち、電極間の距離間隔が短いほど、(上記の数式3及び6に定義されている)コンダクタンスの幾何学的係数が大きくなる望ましい効果を有することを示している。このように幾何学的係数が大きくなると、それに応じて、種によって誘起されるコンダクタンスの変化が大きくなり、実質的に高い信号対雑音比で測定することができる。これによって、望ましいことに、様々な種の区別が向上し、より低い濃度での種の検出が可能になる。
図1a及び1bは、フリンジング電界が著しく弱くなる特徴的な長さスケールが電極間の距離間隔の関数であることも示している。フリンジング電界は、図1aの場合よりも図1bの場合の方が、電極からより離れた位置でよりゆっくりと弱くなっている。本発明の他の態様は有利なことに、フリンジング電界に対するこのような電極間の距離間隔の効果を以下のように考慮している。ある種が電極10の近くを横切る場合、少なくとも部分的にフリンジング電界によって誘起されるコンダクタンスの変化が生じることがある。
電極10間の距離間隔が電極10に対する種の近さに対して十分に短い場合、フリンジング電界は種のわずかな部分しか検知できず、或いは種をまったく検知できず、したがって、望ましくない場合がある。同時に、電極間の距離間隔が十分に長くなると、種の空間分布を分解するフリンジング電界の能力が著しく低下する。たとえば、電極間の距離間隔が種の空間分布のサイズよりもずっと大きくなる限界部分では、フリンジング電界が種の空間分布を検知する長さスケールが、種の空間分布ではなく電極間の距離間隔によって実質的に決定される。空間分布のサイズを求めるのはより困難になる。
また、複数の種がある場合、その空間分布は、リーディングフロント(leading front)、トレーリングフロント(trailing front)、最高濃度、最大半値濃度などを含むフィーチャを有することがあり、これらの空間分布フィーチャの一つ又は複数を分解することが望ましい場合がある。たとえば、多くの場合、これらのフィーチャを分解し特徴付けして、存在する種の数、種の伝導率、種の濃度などを求めることが望ましい。これらのフィーチャの分解が増えると、分離の初期にそのような判定を行うことができ、したがって、かなりの時間、資源、コストなどを節約することができる場合がある。
したがって、電界が種を検出するのに十分な強度を有する電極の近くを種が横切るように電極間に適切な空間を設けることが望ましい。間隔としては、検出される種のフィーチャを分解するような間隔を選択し、分解されるフィーチャを十分に大きな信号対雑音比で特徴付けることがより好ましい。たとえば、種が分離の初期に混合物から分離される状況では、空間フィーチャは種の空間分布であってよい。
本発明のこれらの態様を、他の態様と一緒に、以下に説明する本発明の様々な実施形態で例示する。
図2a〜2dは、本発明の一実施形態におけるコンダクタンス検出器20の様々な図である。コンダクタンス検出器20は、環境の影響(たとえば圧力の変化)によって生じる変形に対してコンダクタンス検出器を抵抗させる剛性構造22上に形成された(一つ又は複数の化学及び/又は生物種について分析されている流体が内部を流れる)セル構造を含む。このような変形は、幾何学的増幅係数を変化させ、したがって、コンダクタンスを変化させることがあり、望ましくない。ガラス、シリコン、ドープシリコン、他の半導体、金属、ポリマー、石英、シリカ、アルミナ、複合材料、多層材料などを含む様々な材料を剛性構造として使用することができる。移動相とコンダクタンス検出器、たとえば移動相接点が対称的であり、好ましくはコンダクタンス検出器の動作中にコンダクタンス検出器が囲まれることによって勾配が小さいため、温度、圧力などの変化による環境の望ましくない影響はさら受けにくくなる。
剛性構造22は、第1の導電構成部材を備える。本発明の好ましい実施形態では、第1の導電構成部材23の抵抗は、調べている試料の抵抗ほど大きくない。第1の導電構成部材23の抵抗が調べている試料の抵抗より大きい場合、印加された電圧の大部分は、分圧器効果によって試料の両端間ではなく第1の導電構成部材23の両端間で低下し、すなわち、(試料のコンダクタンスに関する情報を含む)試料の両端間に生成される電流は、小さくて望ましくない。
一実施形態では、剛性構造22自体は、導電材料(たとえばドープシリコン、金属、導電ポリマーなど)で形成され、図2aに示されているように第1の導電構成部材を形成する。他の実施形態では、剛性構造22は、電極を形成する一つ又は複数の導電構成部材を頂面上に有する。二つの接点23のうちの第1の接点が第1の導電構成部材に電気的に接触する。
本発明の一態様によれば、電気絶縁構成部材26が第1の導電構成部材22の少なくとも一部を覆う。絶縁構成部材26は、第2の導電構成部材30と第1の導電構成部材の間隔を空け、短絡するのを妨げる働きをする。絶縁構成部材の厚さ及び構造は、コンダクタンス検出器の幾何学的増幅係数を調節する手段も実現する。というのは、幾何学的増幅係数は、電流が流れることのできる距離に対する、電流が流れることのできる表面積の比に関する係数であるからである。
また、絶縁構成部材は、コンダクタンス検出器がセンサとして働く程度を調整する。絶縁構成部材が薄い場合、検出器の表面と相互作用する種の寄与がより顕著になり、検出器の検知機能が向上する。検出器の表面を化学及び/又は生物種で官能基化すると、検知中の種に関する情報を得ることができる。絶縁構成部材は、たとえば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素などの無機材料、又はポリマー、レジストなどの有機材料のような様々な材料を使用して形成することができる。絶縁構成部材の様々な材料が当技術分野で公知である。図2a〜2dに示されている本発明の一実施形態では、絶縁構成部材26は、剛性構造22の酸化物である。絶縁構成部材は、コンダクタンス検出器の様々な領域でそれぞれの異なる厚さを有してよい。
検知領域において様々な厚さを有する絶縁構成部材26を作製する方法は、電子機器技術分野で公知である。たとえば、絶縁構成部材26は、導電構成部材を有する剛性構造22を適切な試薬に直接さらすことによって成長させることができる。たとえば、厚さをオングストロームレベルで調節することによって、およそナノメートルから数百ミクロン、場合によってはそれ以上の範囲の厚さを有する高品質の酸化物をシリコン上に成長させることができる。したがって、多くの用途では40nmが好ましいが、用途に応じておよそナノメートルから数百ミクロン、場合によってはそれ以上の範囲の厚さを使用してもよい。
或いは、たとえば化学蒸着、熱蒸着、スピンコーティングなどを使用して絶縁構成部材26を付着させることができる。接触領域では、第2の接点24を第2の構成部材26上に配置し、第1の導電構成部材と電気的に短絡せずに回路に接触するのを可能にするように絶縁構成部材26を厚くすることができる。
本発明の他の態様によれば、検知領域では、絶縁構成部材26は薄く、それによって、場合によっては(数式5及び6によって示されるように)大きな幾何学的増幅係数が得られることが望ましい。たとえば、図2に示されている検出器構造に関しては、コンダクタンス検出器はおよそ1cm2 程度の面積を有し、絶縁構成部材は、検知領域における厚さがおよそ40nmであり、図示のパターンの周期は6μmであり、開口部は3μmであり、絶縁構成部材が第2の構成部材の下方で100nmだけ切り取られると仮定すると、コンダクタンス検出器は、(フリンジ電界が与えられると仮定すると)(1cm/6μm)2 x 4 x 100nm x 3μm/40nm又は80m程度の数値を超える幾何学的増幅係数を有する。
絶縁構成部材26上に第2の導電構成部材30が形成される。第2の導電電極30は、中間接点28によって第2の電極24に接触させることができる。図2b及び2dはそれぞれ、第2の導電構成部材の拡大平面図及び断面図である。図示の本発明の実施形態では、第2の導電構成部材は一つ又は複数の開口部を備える。第1の導電構成部材22と第2の導電構成部材30との間に電圧を印加すると、電界線は第1の導電構成部材22と第2の導電構成部材30との間を延びる。開口部は、媒体が少なくとも第2の導電構成部材に接触するときに媒体中の種が電界線に接近するのを可能にする。
図2bに示されている好ましい実施形態では、第2の導電構成部材30は、下層の絶縁構成部材26を露出させる二つ又は三つ以上の孔を備える。これらの孔は、媒体の誘電環境を検知するのを可能にし、それによって大きな幾何学的増幅係数が得られる。他の実施形態では、第2の導電構成部材30は互いに嵌め合わされた電極を備える。本発明の他の実施形態では、ずっと大きな幾何学的増大係数が得られるように、第2の導電構成部材は、検出すべき種が進入できる面積がごくわずかである一つ又は複数の孔を備えてよく、絶縁層は、種が内部を流れることができる少なくとも一つの流路を備えてよい。たとえば、実質的に重なり合い、互いに平行であり、面積が1cm2で距離間隔が100nmである第1及び第2の導電構成部材を含むコンダクタンス検出器では、幾何学的増大係数は1cm2/100nm又は1kmである。コンダクタンス検出器のこの好ましい実施形態では、検出体積は0.1μLであり、クロマトグラフィで使用されるUV-Vis検出器の検出体積よりもおよそ10倍小さい。検出体積が小さく且つ流路を使用するため、クロマトグラフにおいて望ましい幅の狭いフィーチャが得られる。当業者には、本発明のこの好ましい実施形態によれば、導電構成部材及び絶縁構成部材の様々な構造と種用の流路を利用できることが容易に理解されよう。
一実施形態では、導電構成部材22及び30を追加的な絶縁層(不図示)で保護する(たとえば化学的に保護する)ことができる。コンダクタンス検出器は、検出中の種と検出器の表面との相互作用を低下させ、クロマトグラフ内のフィーチャのテーリングを低減させるように官能基化することができる。コンダクタンス検出器は、検出中の種と検出器の表面との相互作用を増大させ、表面に吸着し且つ/或いは表面からの脱着する種の動力学的調査を可能にするように官能基化することができる。絶縁構成部材26は、電極22及び30間に印加された電位が、コンダクタンス検出器によって検知されている試料混合物中の種の分離に悪影響を及ぼすのを防止するように働くこともできる。これらの様々な特徴及びその他の特徴を本発明の態様によって実現し、第1及び第2の導電構成部材の密集し互いに重なり合う面積要素を組み合わせて大きな幾何学的増幅係数及びより高い信号対雑音比を得ることができる。
本発明の他の態様によれば、コンダクタンス検出器20の検知部を含め、絶縁構成部材26の厚さをうまく調節することができる。したがって、第2の接点24によって接触される第2の導電構成部材30と第1の接点23によって接触される第1の導電構成部材との分離と、電界によって検知される各領域間の分離もすべて、図1に関して論じたように調節できることが望ましい。コンダクタンス検出器20の検知機能を向上させるために、絶縁構成部材26は、図2d〜2fに示されているように流路を有してよく、それによって、試料混合物中の種が電界に接近し、その結果大きくなる幾何学的増幅係数によってよりうまく検知されるのが可能になる。流路は、絶縁構成部材26が形成されるときに形成するか、或いは後で(たとえば化学エッチング、イオンエッチング、機械的フライス加工、スパッタリングなどによって)材料を除去することによって形成することができる。
第1の例として、図2eは、当技術分野で公知の標準的なリソグラフィック法を使用して製造されたコンダクタンス検出器の一連の走査電子顕微鏡写真を示している。第1の導電構成部材及び第2の導電構成部材はそれぞれ、シリコン及びアルミニウムで形成され、絶縁構成部材は、厚さが40nmの厚い酸化ケイ素層で形成される。このコンダクタンス検出器では、試料混合物中の種に対する感度を向上させる流路が、コンダクタンス検出器を湯に浸漬させることによりアルミニウムをエッチングすることによって形成されている。図2eでは、左の図から右の図へと、エッチングが進行するにつれて、アルミニウム表面にピットが形成され、アルミニウムにおける円形の孔のサイズが大きくなっていく。ピットは、孔及びピットの側壁からのエッチングによってアルミニウムと酸化ケイ素との間にも形成されやすい。したがって、種の流路が形状され、コンダクタンス検出器の幾何学的増幅係数が向上する。
第2の例として、図2f及び2gはそれぞれ、この場合もアルミニウムから形成された第2の導電構成部材を有する他のコンダクタンス検出器の頂面及び断面の走査電子顕微鏡写真である。絶縁構成部材は、酸化ケイ素で形成され、第2の導電構成部材とシリコン導電層との間に配置され、シリコン導電層の下に第1の導電構成部材が形成される。このコンダクタンス検出器では、試料混合物中の種に対する感度を向上させる流路が、フッ化水素酸によるエッチングによって形成されている。図2gは、フッ化水素酸によって絶縁構成部材が下方(第1の導電構成部材の頂面の一部が露出されている)及び側方(第2の導電構成部材の下の絶縁構成部材が切り取られている)にエッチングされていることを示している。
第3の例として、図2hは、第2の導電構成部材の下の流路が、合流して第2の導電構成部材の下に多孔性網状構造を形成するまでエッチングされるコンダクタンス検出器の断面図である。最初、流路200が設けられ、その後エッチングされ、したがって、拡張して(210)、連結ビア230を有するより大きな連結された流路220を形成する。この実施形態は、種が内部を流れることができる網状構造を設け、したがって、種と電界との相互作用を著しく強化し、高感度の検出プラットフォームを形成するという異なる利点を有する。
第4の例として、図2iは、種が内部を流れることができる一つ又は複数の流路260をコンダクタンス検出器が有してよいことを示している。当業者には、本発明によって、種が、導電構成部材によって生成された電界線に接近するのを可能にする様々な検出器構造があることが明らかになろう。たとえば、コンダクタンス検出器が一つの流路又は互いに連結された複数の流路を有する場合、種が一つの流路又は連結された複数の流路に進入するのを可能にする一つ又は複数の開口部、及び種を排出するのを可能にする一つ又は複数の開口部を、第1の導電構成部材が有してよい。或いは、種は、第1の導電構成部材及び第2の導電構成部材の縁部の所の一つ又は複数の隙間を通して電界線に接近することができる。当業者には、流路(分離されるとともに相互に連結された流路)及び種が流路内で電界線に接近するのを可能にする手段を含めることによって幾何学的増幅係数を大きくするコンダクタンス検出器の多数のこのような例が容易に明らかになろう。
本発明の他の実施形態では、第2の導電構成部材は、相互に接続された複数の電極セルを備える。一般に、電極セルは、サイズ及び/又は形状が互いに類似している必要はなく、互いに対して周期的に配置する必要もない。図2に示されている本発明の実施形態では、電極セルはすべて、実質的に、流体環境内のある位置、たとえば分離プロセスの点を検知する。したがって、電極セルを相互に接続することによって組み合わせ、それによって、面積を広くし、幾何学的増幅係数を大きくし、応答を向上させることができる。本発明の他の実施形態では、相互に接続されない複数の電極セルが分離装置に沿って複数の点を検出し、複数の応答を生成するように、該電極セルを複数の既知の位置に配置することができる。この場合、応答を様々な方法で組み合わせ、大きな幾何学的増幅係数、したがって明確な応答を効果的に生成することができる。
たとえば、複数の電極を周期的に配置し、その応答を組み合わせる場合、一定の速度で移動し検出される種は、該組合せ応答に対する周期的な応答に寄与する。複数の速度で移動する複数の種は、該組合せ応答に対する、複数の周期性を有する複数の周期的応答に寄与する。種が存在することはフーリエ処理によって明らかにすることができる。本発明の他の実施形態では、複数の応答を、時間及び検出器の位置の関数として描画することにより、結合することができる。複数の一様な速度で移動する複数の種では、プロットにおいて背景雑音に対して複数の線形フィーチャが生じ、信号対雑音比を高くすることができる。当業者には、面積要素によって生成される応答を組み合わせる数式2及び5の基本的な教示に従って信号対雑音比を向上させるために、セルの応答を組み合わせることができる様々な方法があることが容易に明らかになろう。
本発明の他の態様では、コンダクタンス検出器を少なくとも一つの化学又は生物学的認識要素で官能基化してコンダクタンス検出器と試料混合物中の種との相互作用を向上させることができる。たとえば、疎水性種の検出を向上させるために、コンダクタンス検出器をアルキルシランなどの疎水性分子で官能基化することができる。
抗原の検出を容易にするには、コンダクタンス検出器を抗体やアプタマーなどの受容体で官能基化することができる。多数のこのような組合せが分離及びアッセイ技術分野で公知である。このような官能基化された検出器をセンサと呼ぶことがある。
本発明のこの実施形態の有利な態様では、センサが電子機器に基づくものであるため、該センサを好都合に且つ費用有効的に多重化することができる。その結果、各センサが場合によっては異なるように官能基化された複数の異なるセンサによって試料混合物を検知することができる。したがって、好ましい実施形態では、試料混合物中の種及び試料混合物は、複数の異なるセンサを使用してそれらが生成する応答によって電子的に「指紋を採取」することができる。
一例として、複数のセンサをクロマトグラフィ装置内に直列又は並列に配置して指紋採取し、それによって混合物中の一つ又は複数の種或いは該混合物を特定又は他の方法で特徴付けることができる。本発明の他の有利な態様では、表面の官能基化だけでなく形状によっても、表面(センサ)効果の寄与を制御することができる。一例として、第2の導電構成部材30と第1の導電構成部材22との間の絶縁構成部材26の厚さが増大すると、体積効果が強くなり、表面効果が弱くなる。このことは検出器にとって望ましい場合がある。一方、厚さが薄くなると、表面効果が強くなり、体積効果が弱くなる。このことは検出器にとって望ましい場合がある。
図3は、本発明の好ましい実施形態による検出器システム32の概略図である。検出器システム32はデータ処理システム44を含む。本発明の好ましい実施形態のデータ処理システム44は、ラップトップ又はデスクトップコンピュータなどのマイクロプロセッサシステムのようなデータの入力、記憶、処理、表示、及び伝送を行う手段を含む。当業者には他のデータ処理システムが自明であり、そのようなデータ処理システムは、アナログ/デジタル変換器、デジタル/アナログ変換器と、データ記憶、表示、処理、伝送(無線伝送を含む)のような様々な種類の手段とを含んでよい。
電源34(電子供給源とも呼ばれる)は、電流や電圧などの電気駆動要素を生成するように構成されている。データ処理システム44(コンピュータプロセッサを含み、オペレータインタフェース、画面などを含んでよい)は、電源34の様々なパラメータを時間の関数として調節することができる。たとえば、電源34が正弦的に変化する電気信号(電流又は電圧)を生成する場合、データ処理システム44は、振幅、周波数、位相と、場合によってはこれらのパラメータのうちの任意の一つ又は複数の時間変化を調節することができる。方形波、三角波、擬似ランダム時間依存のような電源34の他の時間変化が当業者には自明であろう。
電気信号はコンダクタンス検出器36(図2では項目20として示されている)に印加される。好ましい実施形態では、コンダクタンス検出器に電圧が印加され、結果として得られる応答(電流)が検出される。検出器システム32は信号検出器を含んでよい。たとえば、検出器システム32は、コンダクタンス検出器36の応答を、データ処理システム44が入力するのに好都合な形態に変換することができる変換器手段38を有してよい。たとえば、コンダクタンス検出器36によって生成される応答が電流である場合、変換器手段38は、電流を好都合に検出することのできる電圧に変換する抵抗器、演算増幅器などの電気構成部材を含んでよい。
検出器システム32は、コンダクタンス検出器36の応答を処理する修正手段40及び畳み込み手段42を含むように構成することができる。コンダクタンス検出器の応答を修正手段40によって移相し、電気駆動要素によって乗算し畳み込み手段42によって積分してコンダクタンス検出器の応答の位相外れ成分を求め、次にデータ処理システム44によって入力することができる。キャパシタンスのコンダクタンスが低いためにコンダクタンス検出器の応答が制限される十分に低い周波数では、コンダクタンス検出器の位相外れ成分は、電流を制限し且つ検出される種の誘電定数に関係するコンダクタンス検出器のキャパシタンスによって支配される。同様に、コンダクタンス検出器36の応答を電気駆動要素によって乗算し、かつ畳み込み手段42によって積分してコンダクタンス検出器の応答の同相成分を求め、次にデータ処理システム44によって入力することができる。
キャパシタンスが顕著なコンダクタンスを生じさせる十分に高い周波数では、コンダクタンス検出器の同相成分は、電流を制限し且つ検出される種の伝導率に関係するコンダクタンス検出器の抵抗によって支配される。同相成分と位相外れ成分の両方を測定すると有利である。たとえば、ヘキサンでは、種の存在をそれが伝導率に誘起する変化を介して検出するのは困難である。これはヘキサンが絶縁性であるからである。しかし、幾何学的増幅係数が大きいと仮定すると、種は、それが誘電定数に誘起する変化を介して容易に検出することができる。たとえば、メタノールでは、ある種が存在すると、誘電定数と伝導率の両方を変化させ、同相成分と位相外れ成分の両方に影響を与えることができる。どちらの種類の変化の検出も、幾何学的増幅係数が大きいと非常にうまく実現できる。
本発明の他の実施形態では、位相敏感検波方式(たとえばロックイン増幅器を使用する)を使用して前述の機能を実現することができる。本発明の他の実施形態では、畳み込み手段42がコンダクタンス検出器36の出力を整流し、基本的にコンダクタンス検出器の出力にそれ自体を乗算し、積分することができる。本発明の他の実施形態では、コンダクタンス検出器36の出力をデジタル化した後で修正手段40と畳み込み手段42の一方又は両方をソフトウェアを介して実現することができる。
本発明の好ましい実施形態では、たとえば正弦波、方形波、擬似ランダム関数としての変化であっても、又は何らかの他の変化であってもよい電気駆動要素の既知の時間変化を使用して信号対雑音比を向上させる。最終的に、電気駆動要素は、電気駆動要素の時間変化に関連して経時的に変化する信号成分をコンダクタンス検出器の応答において誘起する。電気駆動要素が経時的に既知のように変化し、且つ出力及び電気駆動要素の信号成分が経時的に関連して変化しなければならないという知見を使用し、当技術分野で公知の方法及び手段を使用して信号対雑音比を向上させることができる。たとえば、電気駆動要素が角周波数ωで正弦的に変化する場合、所望の信号成分は角周波数ω、2ω、3ωなどで変化することができる。応答における他の周波数成分は、雑音によるものとみなすことができる。これは、相関方法及び装置を使用し、すなわち、コンダクタンス検出器の応答を電気駆動要素の既知の時間変化に相関付け、それにより雑音を除去することによって信号対雑音比を向上させることができる一般的な手法の一例である。このような相関方法及び装置は、雑音低減技術分野で一般的によく知られたフーリエ変換、ロックイン技術、ウェーブレット分析、アダマール変換、Shah畳み込みフーリエ変換分析(SCOFT)、畳み込み法などを使用することができる。
図4は、本発明の好ましい実施形態におけるコンダクタンス検出器用のハウジングのそれぞれの異なる概略斜視図である。ハウジングは、種、移動相、及び環境に対して化学的に不活性であり、ハウジングが受ける可能性がある温度に適切に耐えることができ、実質的に漏れが生じず、可搬であり、適切に電気的に絶縁され、好都合に機械加工又は成形することができる材料で形成することが好ましい。
使用できる材料の例には、ポリテトラフルオロエチレンやポリエーテルエーテルケトンなどのポリマーが含まれる。ハウジングは、移動相及び試料混合物が流入し、コンダクタンス検出器と相互作用し、流出するコンダクタンス検出器のエンクロージャを構成する。したがって、ハウジングは実質的に漏れが生じないことが好ましい。ハウジングは、コンダクタンス検出器を交換することができ且つハウジングを再使用することができるように形成することが好ましい。ハウジングは、実質的に漏れが生じないように、コンダクタンス検出器に電気駆動要素を送り、コンダクタンス検出器から応答を受ける手段も構成する。
本明細書ではセル構造のいくつかの異なる実施形態を説明し例示したが、本発明がこれらの特定の実施形態に限定されないことが理解されよう。正確に言えば、本発明の要点は、検出中の種を含む流体が内部を流れ、現在市販されているあらゆるセル構造をはるかに上回る約1mの幾何学的増幅係数をもたらすように構成されたセル構造を提供することである。このことを満たす多数の異なる種類の構成があるが、本発明が実現されることによって、幾何学的増幅係数が大きくなって感度が非常に例外的に且つ驚くほど高くなり、それにより、化学及び/又は生物種が存在することによって伝導率及び誘電定数の両方を変化させられることが理解されよう。生物種とは、生体分子、細胞、ミトコンドリアなどを意味する。
図4a〜4c及び4d〜4fはそれぞれ、ハウジング46aの入口部及びハウジング46bの出口部を示している。入口部と出口部をねじ手段を介して互いに固定し、コンダクタンス検出器に容易に接近できるようにするとともに漏れの生じない密封状態を実現することができる。コンダクタンス検出器への電気駆動要素及びコンダクタンス検出器からのコンダクタンス検出器応答を送るワイヤが、入口穴48a及び出口穴48bを通過している。出口穴48bは盲穴であり、ワイヤを固定し、ワイヤがハウジングから抜けるのを防止する働きをする。ワイヤは、一部が絶縁されておらず、コンダクタンス検出器の第1の接点23及び第2の接点24が位置する一対の導電レールを入口穴48aと出口穴48bとの間に形成する。ハウジング46bの出口部がハウジング46aの入口部にねじ込まれ、コンダクタンス検出器をワイヤに押し付け所定の位置に保持する。入口穴48a及び出口穴48bは、移動相及び試料混合物が漏れないようにする手段を備えてよい。たとえば、液体の試料混合物及び移動相の場合、入口穴48a及び出口穴48bを、実質的に漏れが低減するか或いは無くなるように十分小さく形成することができる。
必要に応じて、封止材を使用してよい。入口穴48aの長さを短くして入口穴48aを形成するのを容易にする長穴54を設けてよい。ハウジング46aの入口部は、移動相及び試料混合物が貫通孔50bを介してコンダクタンス検出器に流れるときに通過するチューブを保持する標準的なフレアレス管継手を受け入れることのできるネジが切られた孔50aを有する。同様に、ハウジング46bの出口部は、移動相及び試料混合物が貫通孔56aを介してコンダクタンス検出器から流れるときに通過するチューブを保持する標準的なフレアレス管継手を受け入れることのできるネジが切られた孔56bを有する。したがって、移動相及び試料混合物は、孔50bを通過し、コンダクタンス検出器上に流れて検出され、コンダクタンス検出器の周りを流れて、コンダクタンス検出器の後方の孔65aを通過してハウジングから出る。移動相がコンダクタンス検出器を囲んでいるため、検出器の幾何学的係数を変化させることがあるため望ましくない温度及び圧力の勾配を小さくすることができる。ハウジングは、ピークの広がりを最小限に抑えるように死体積が小さいことが好ましい。それにもかかわらず、ハウジングは、内圧が高くなり過ぎないように移動相及び試料混合物が容易に流れるのを可能にする流路59を備えてよい。
ハウジングは、ハウジングを固定するねじ穴52を備えてよい。たとえば、コネクタも固定することができる箱の中にハウジングを固定することができる。ハウジングへのワイヤ及びハウジングからのワイヤをコネクタに接続することができ、それによって、標準的なコネクタ及びプラグを使用して電気的接続を容易に確立することができる。スロット58を工具で把持して、ハウジング46aの入口部とハウジング46bの出口部の取り外し及びねじ込みを容易にすることもできるように、ハウジングにスロット58を設けてもよい。
図4に示されているハウジングの多数の変形実施形態が容易に明らかになろう。たとえば、好ましい一実施形態では、図2h及び2iに示されているように、入口孔を有する平面状基板をコンダクタンス検出器に固定し、試料混合物が流路内を流れて検知されるようにすることができる。これによって、望ましいことに、コンダクタンス検出器の死体積が少なくなり、検出器の検知部内に液体が閉じ込められることによってコンダクタンス検出器の感度が高くなる。この場合、試料混合物は、コンダクタンス検出器の側面から出るか或いは平面状基板の出口孔から出ることができる。
他の変形実施形態では、平面状基板が固定され、試料混合物が流路内を流れるコンダクタンス検出器を、ハウジングに収納してコンダクタンス検出器を熱的に安定させることができる。他の変形実施形態では、マイクロ流体プラットフォームがハウジングを形成するようにマイクロ流体プラットフォームの必須の部分となるようにコンダクタンス検出器を形成することができる。当業者には、ハウジングの多数のそのような実施形態が容易に明らかになろう。
図5は、本発明の好ましい実施形態によるコンダクタンス検出器74が組み込まれた分離装置60、たとえばHPLCシステムを概略的に示している。一例としてHPLCシステムが示されているが、当業者には、HPLCシステムだけでなく、気体移動相、電気泳動法、フラッシュクロマトグラフィに基づくシステムを含む他の液体クロマトグラフィシステムを含む様々な分離装置でもコンダクタンス検出器74を使用できることが明らかになろう。図示の分離装置60では、ポンプ64がカラム68を通して槽62から移動相を汲み出す。インジェクタ66を介して移動相に試料混合物が注入される。試料混合物の成分種への分離は、標準的な検出器70、たとえばUV-Vis検出器を使用して監視することができる。
HPLCシステムは通常、パーソナルコンピュータ72を使用してシステムの制御及びデータ処理を行う。移動相及び試料混合物から得られた様々な種は、標準的な検出器を通過した後、廃棄物容器76に吐出される。好都合なことに、コンダクタンス検出器74は、分離装置60において廃棄物容器の直前に組み込むことができる。したがって、コンダクタンス検出器74は、分離装置60にモジュール方式で容易に組み込むことができ、分離装置60の動作を変更することはない。コンダクタンス検出器74は電子機器78とインタフェース接続され、電子機器78はデータ処理システム80とインタフェース接続されている。データ処理システム80はパーソナルコンピュータ72を含んでも含まなくてもよい。
図6及び7は、コンダクタンス検出器をHPLCシステムに使用できるだけでなく、様々な分離装置に使用できることを示している。図6a及び6bはそれぞれ、フラッシュアダプタ90の概略端面図及び側面図である。フラッシュアダプタ90は、フラッシュカラムと嵌め合うことのできるネジが切られた開口部と、コンダクタンス検出器のハウジング46aの入口部のねじ穴にねじ込むことのできるねじ付き突起とを有する。
図6c〜6fは、フラッシュアダプタ91の様々な概略図である。フラッシュアダプタ91はフレアレス管継手のユニオンとして働く。フラッシュアダプタ91の第1の端部は、フラッシュカラムと嵌め合うフレアレス管継手を有する。フラッシュアダプタ91の第2の端部は、チューブ及びフレアレス管継手を介してハウジング46aの入口部に連結されたフレアレス管継手を有する。
図7は、たとえばフラッシュアダプタ90と、コンダクタンス検出器をフラッシュクロマトグラフィシステムでどのように使用できるかを概略的に示している。フラッシュアダプタ90の代わりに、一対の標準的なフレアレス管継手及びチューブを補助的に使用したうえでフラッシュアダプタ91を使用することができる。移動相及び試料混合物の成分は、フラッシュカラム106、フラッシュアダプタ90、ハウジング46aの入口部、ハウジング46bの出口部、フレアレス管継手104内を流れ、次いでチューブ102内に収集することができる。種は、ハウジングの入口部及び出口部(それぞれ46a及び46b)によって収納されたコンダクタンス検出器を越えて流れるときに検出される。
図8a及び8bはそれぞれ、UV-Vis検出器及びコンダクタンス検出器を含むHPLCを使用して得られたデータを示している。使用するコンダクタンス検出器は図2に示されているとおりであり、使用する検出器システムは図3に示されているとおりであり、使用するハウジングは図4に示されているとおりであり、使用する分離装置は図5に示されているとおりである。電子供給源34は、1kHz、90mVp-pで正弦的に発振する電圧源である。酸化還元電流の検出が望ましくない場合に備えて、時間依存電圧は酸化還元しきい値より小さい値に維持すべきである。図8bに示されているデータは、検出器システム32を使用し、修正手段40、特に移相器と、変換器手段38、特に電流-電圧変換器を使用して得られたデータである。したがって、図8bの電圧データは、コンダクタンス検出器の応答の位相外れ成分に比例し、Gεを幾何学的増幅係数で増幅した値によって決まる。アセチルサリチル酸(ASA、50μL、10μM)及び未知の汚染物質を試料混合物としてHPLCに注入した。
図8a及び8bのどちらのピークもASAによっておよそ2分後に出現する。後述のように、濃度が変化するとピーク高さも変化するため、このピークをASAによるものとみなすことができる。図8aのASAピークは図8bのASAピークより早く出現する。なぜなら、UV-Vis検出器がコンダクタンス検出器よりも前に配置されているからである。図8bのGεデータは、およそ5分後から12分後まで延びる幅の広いピークも示している。このピークは、おそらくおよそ6分後の小さな幅の狭いピークを除いて、図8aのUV-Visデータでは明白でない。この測定に使用された試料混合物が、高いUV-Vis吸光度を有さない少なくとも一つの種を含むことは明白である。HPLCを使用してそのような汚染を容易に検出できることが望ましく、これは本発明の用途を示すものである。
本発明の前述の実施形態によるコンダクタンス検出器は有利なことに、カラムの条件設定を監視するのに使用することができる。単にカラムの条件が設定されるまである期間待つことが、当技術分野では一般に行われているが、望ましくない。待ち時間が長過ぎる場合、資源が無駄になる。待ち時間が短過ぎる場合、得られたデータが損なわれる可能性がある。
UV-Visを使用してカラムの条件設定を監視するのはコンダクタンス検出器を使用するのよりも困難である。というのは、顕著なUV-Vis吸光度を有さない汚染物質が多いからである。また、カラムは、移動相がある期間にわたって移動した後よりも、最初にカラムを含む分離装置を始動するときの方が汚染される可能性が高いからである。通常、UV-Vis検出器は、UV-Visランプの寿命を延ばすためにオフにされた後、この初期期間の間オンにされる。UV-Visランプがオンにされた後平衡化する際、UV-Vis信号が著しく変動し、したがって、UV-Vis検出器を使用した監視カラム条件設定はより困難になる。
コンダクタンス検出器を使用した場合のカラム条件設定の監視が図9に示されている。図9に示されているデータは、HPLCシステム(図8に関して説明したコンダクタンス検出器を含む)を使用するとともに、移動相としてメタノールを使用して得られたデータである。このデータは、最初の15分の間、主としてカラムからの汚染である可能性が高い汚染による顕著な雑音を示している。15分後、データはかなり落ち着き、カラムが「条件設定済み」になったと言える。その後、濃度を高くしながらASA試料を何回か注入した。これに応じて高くなっていくピークを図9に見ることができる。図9に関しては、カラムが条件設定されていないときにASA試料を注入した場合、対応するピークがずっと低い信号対雑音比を示していたであろうことは明らかである。
図10は、本発明の他の用途を示し、すなわち、移動相の組成が変化する場合でも本発明を使用できることを示している。移動相の組成を変化させることは、試料混合物を分離するのを助けるために一般に使用される手順であり、勾配溶離と呼ばれる。勾配溶離を使用した場合、屈折率検出器が作用しないことに留意されたい。これは、移動相の屈折率が、その組成に応じて、場合によっては著しく変化し、試料混合物中の種による屈折率のわずかな変化を検出するのが困難になるからである。図10a及び10bは、UV-Vis検出器及びコンダクタンス検出器を同時に使用して得られたHPLCデータを示している。移動相をメタノール及びアセトニトリルで構成し、メタノールの画分を100%から0%まで変化させ(5分後から15分後まで)、さらに100%から0%まで変化させた(25分後から35分後まで)。移動相が変化することによって、二種類の検出器から得られるデータの背景が変化する。UV-Visデータでは、メタノールの画分が100%から0%まで線形に変化し、100%に戻る際に背景が線形に且つ対称的に変化している。コンダクタンスデータでは、背景が非対称的に変化している。メタノールの濃度が100%から低下していくとき、背景は最初、メタノールに対するコンダクタンス検出器の表面の親和性を反映して徐々に変化している。同様に、濃度が0%から上昇していくとき、背景は最初、メタノールがコンダクタンス検出器の表面上に蓄積するにつれて高速に変化している。これらのデータは、コンダクタンス検出器がセンサとして働くことができることを示している。組成を変化させる際、メタノールの画分が増大するときも減少するときにも(それぞれおよそ12分後及び32分後)、ASA(50μL、10μM)を注入した。
重要な点として、UV-Visデータでもコンダクタンスデータでも、背景の変化が両方の検出器の範囲内に収まっている。また、検出器の範囲がこのように十分に広いにもかかわらず、コンダクタンスデータは、分解能が高く且つ雑音が少なく、注入された種によるピークは、未処理のコンダクタンスデータでも分解可能である。注入された種によるピークの視覚化は、移動相による背景の変化の低減効果によって助けることができる。この低減は、当技術分野で公知の様々な手順を使用して行うことができる。たとえば、試料混合物ではなく移動相のみを検出する基準コンダクタンス検出器を使用して、低減を助けることができる。これは、基準コンダクタンス検出器が背景の変化を監視することができるからである。或いは、当技術分野で公知の技術を使用して背景の変化の影響を数値的に低減させることができる。たとえば、データを数値的に微分して、試料混合物から得られる種によって生じる高速の変化を強調することができる。背景の変化を多項式、多項式の比、指数関数のような様々な関数に当てはめることができ、次いで、背景の変化の影響を低減させることができる。ハイパスフィルタ、フーリエフィルタなどを使用して背景の変化をフィルタリングして、試料混合物から得られる種によって生じる高速の変化を強調することができる。
当業者には、本発明の実施形態を(液体及び/又は気体移動相、カラム、毛細管、マイクロチャネル、又は実質的に平面状の基質内に配置された様々な固定相を用いたクロマトグラフィ、例えばフラッシュクロマトグラフィ、イオンクロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、順相クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、超臨界流体クロマトグラフィ、キラルクロマトグラフィ、向流クロマトグラフィ、高速タンパク質液体クロマトグラフィ、多次元クロマトグラフィ、HPLC、超高速クロマトグラフィなどを含む)様々な形態のクロマトグラフィ、電気泳動法(ゲル、毛細管、又はマイクロチャネル)、2D電気泳動法、等速電気泳動法を含むがそれらに制限されない様々な分離方法及び装置と一緒に使用できることが理解されよう。
分離方法及び装置は本発明の実施形態の重要な用途であるが、本明細書で開示される実施形態を様々な用途に適合できることを理解されたい。一実施形態では、コンダクタンス検出器システム及び方法をセンサ(バイオセンサを含む)用途で使用できるように適切に官能基化することができる。他の非制限的な例では、本発明の実施形態を使用して液体又は気体試料、たとえば水、溶媒、化学物質などの汚染度を評価することができる。他の非制限的な例では、本発明の実施形態を使用し、容器に清浄な溶媒を添加し、コンダクタンス検出器を浸漬させ、容器中の溶媒のコンダクタンスを清浄な溶媒のコンダクタンスと比較することによって、容器の清浄度を評価することができる。
本発明の前述の実施形態は、変位電流及び/又は外部電流を検出することによってGε及び/又はGσコンダクタンスを測定するセンサの範囲内で開示したが、当業者には、本発明の実施形態を電気化学検出方法及び装置(基準電極を含める場合も含めない場合もある)で使用できるように構成できることが理解されよう。たとえば、データ取得カード又は電圧供給源を使用して電圧ランプを生成してコンダクタンス検出器に印加することができ、電流を測定することができる。或いは、加算増幅器を使用して、低速に変化する電気信号(たとえば電圧ランプ)に高速に変化する正弦電気信号を加算し、加算された信号をコンダクタンス検出器に印加することによって、様々な電圧でコンダクタンスを測定することができる。一般に、電源は、(互いに組み合わされるか或いはコンダクタンス検出器に直接印加されることによって)複数の時間依存応答を生成することのできる複数の時間依存性を有する複数の電気信号を生成する複数の生成装置を有してよい。また、このような生成装置を、化学及び/又は生物学的機能を使用した適切な官能基化によって、電気化学センサ方法及び装置の基礎として使用することができる。上記で指摘したように、電気化学検出方法及び装置又は電気化学センサ方法及び装置を分離方法及びその他の検知用途で使用することができる。
図11a及び11bは、本発明の他の実施形態によるコンダクタンス検出器130の概略図である。コンダクタンス検出器130は、一つ又は複数の電極対を備える電極のアレイを有する。図11a及び11bでは、136a及び136bは一つの電極対を構成し、138a及び138bは他の電極対を構成している。各電極対の電極は、図11aに示されている実施形態の剛性構造132によって互いに対してしっかりと保持されている。
図11bに示されている実施形態では、必要に応じて剛性構造132を互いに対してしっかりと固定することによって、各電極対の電極を互いに対してしっかりと保持することができる。剛性構造132は平面状であっても柱状であってもよく、必ずしも限定されるものではないが、ガラス、シリコン、シリカ、ポリマー、石英、アルミナ、プリント基板などの絶縁材料を備えてよい。コンダクタンス検出器130は、シリコンウェハ及びプリント基板上に回路要素を形成するのに使用されるリソグラフィなどのプロセスを含む、電子機器技術分野で公知の様々なプロセス及び材料を使用して形成することができる。
所与の電極対の一方又は両方の電極を絶縁部材134によって電気的に絶縁し、アレイ又は電極内を流れる外部電流を著しく少なくすることができる。これに加えて或いはこれとは別に、絶縁部材134は、電極のアレイを化学的に保護する働きをする。絶縁部材134はまた、いずれかの電極の電位が、コンダクタンス検出器によって検知されている試料混合物140中の種の分離に悪影響を与えるのを防止する働きをする。絶縁部材134は、電子分野で公知の材料及び方法を使用して形成することができ、たとえば、レジストをスピンコーティングしたり、熱蒸着、スパッタリング、CVDなどを介して絶縁部材を蒸着させたり、表面を自発的に酸化させたりすることなどによって形成することができる。
コンダクタンス検出器に印加される一つ又は複数の電気駆動要素は、時間依存性であり、コンダクタンス検出器が実質的に誘電率を調べるように徐々に変化するか、コンダクタンス検出器が実質的に伝導率を調べるように高速に変化するか、或いはコンダクタンス検出器がある並列/直列組合せ又は抵抗及びキャパシタンスを調べるようにある中間速度で変化してよい。本発明の好ましい実施形態では、幾何学的増幅係数が十分に大きく、したがって、コンダクタンス検出器によって検知されるコンダクタンスは、回路の残りの部分の背景コンダクタンスと比べて顕著である(すなわち、少なくとも100分の1)。
上述のように、本発明にとって重要な幾何学的増幅係数は、コンダクタンス検出器によって検知される面積を大きくすることによって著しく大きくすることができる。複数の電極対を有することによって幾何学的増幅係数を著しく大きくすることもできる。(たとえば図2のように)複数の電極対のすべてが分離プロセス内の実質的に同じ点で試料混合物を検知するように該電極対を分散させる場合、様々な電極対からの信号を加算し、それによって、効果的にコンダクタンス検出器の面積及び幾何学的増幅係数を大きくし、且つ信号対雑音比を高くすることができる。
用途によっては、分離プロセスに沿った様々な点に電極対を有することが好ましい。一般に、電極対は、サイズ及び/又は形状が互いに類似している必要はなく、互いに対して周期的に配置する必要もない。たとえば、一実施形態では、分離プロセスの開始部分の付近に、より高密度に電極対を配置し、終了部分に配置される電極対の密度をより少なくすることなどが可能である。電極対が分離プロセス内のそれぞれの異なる点で試料混合物を検知するように該電極対を様々な異なる位置に分散させる場合、以下に論じるように、様々な電極対からの信号を表示(たとえば、多次元プロットとしてのプロット)を介して組み合わせ、且つ/或いは処理してから組み合わせ、それによって、効果的にコンダクタンス検出器の面積及び幾何学的増幅係数を大きくし、且つ信号対雑音比を高くすることができる。
幾何学的増幅係数を大きくするこの手法は、ある分離装置において、たとえば毛細管電気泳動法やマイクロチャネル電気泳動法において、試料混合物の断面積を小さく維持する必要がある場合に適している。電極対内の電極間の距離を十分に短くすることによって幾何学的増幅係数を十分に大きくすることもできる。この考えは、電極間の距離が短くなるにつれて、コンダクタンス検出器が検知する領域が小さくなり、試料混合物の小さな部分しか検知できなくなるか或いはおそらく試料混合物をまったく検知できなくなるという図1の教示及び関連する考察との兼ね合いを取らなければならない。試料混合物140を電極対のできるだけ近くを通過させ、且つ絶縁部材134をその絶縁性を維持しつつできるだけ薄くすることが望ましい。さらに、電極対に試料混合物140を検知させるには、電極間の距離を試料混合物140と電極対との間の最短距離のスケールの10分の1以上にすることが望ましい。
本発明の一実施形態では、コンダクタンス検出器130上に化学及び/又は生物学的認識要素を配置して試料混合物中の種の分離又は検出を助けることができる。たとえば、試料混合物が疎水性種を含む場合、コンダクタンス検出器130を疎水性官能基(アルカンなど)で官能基化することによって疎水性種とコンダクタンス検出器130との相互作用を向上させることができる。試料混合物が抗体種を含む場合、コンダクタンス検出器130を補抗体種で官能基化することによって抗体種とコンダクタンス検出器130との相互作用を向上させることができる。多数のそのような官能基化及び官能基化と様々な官能基の組合せによって混合物中の種と表面との相互作用を修正することは、当技術分野で公知であり、本発明に使用することができる。
本発明の他の実施形態では、コンダクタンス検出器130上の少なくとも一つの電極対の近くに固定相を配置することができる。たとえば、コンダクタンス検出器130をゲル電気泳動法に使用する場合、固定相は、アガロース、デンプン、アルギン酸塩、カラゲニン、ポリアクリルポリマーゲルなどの材料を含んでよい。コンダクタンス検出器130を薄層クロマトグラフィに使用する場合、固定相はシリカ粒子を含んでよい。当業者には多数のそのような例が明らかであろう。
コンダクタンス検出器130は、図3に概略的に示されている検出器システム32と同様の検出器システムの一部として使用することができる。一つ又は複数の電極対に対処するために、一つ又は複数のマルチプレクサを使用して、電子供給源34によって生成された電気駆動要素を様々な電極対に印加することができる。漂遊磁界の影響を低減させるために、電気駆動要素を電極対に印加する際、コンダクタンス検出器130が複数の電極対を備える場合に、すべての残りの電極対を電気的に浮動の状態にしておくことが好ましく、それによって、漂遊結合の悪影響を低減させることができる。
図11に示されている電極対の構成では、たとえば電極間の距離を短くすることは、試料混合物中の種を実際に互いに完全に分離する前に、該種に関する情報を提供する望ましい効果も有する。図12は、二つの種を含む試料混合物を使用する分離プロセスの手順を示している。試料混合物は、それぞれ1,2,…N…と示された分離プロセス中の様々な点に示されており、分離装置に沿った様々な点に配置されたコンダクタンス検出器の電極対によって監視される。
分離プロセスが進行すると、二つの種の前縁部が互いに対して分離していく。電極対の信号の時間偏差は、試料混合物中の種の前縁部に相当するピークを表す。ピークは、図12に示されているように、種の空間分布が著しく重なり合う場合でも、種の前縁部が分離するときに分離する。
電極間の距離が短くなると、ピークの分解能が高くなり、種を完全に分離するのに必要な時間よりもずっと短い時間で種に関する情報を得ることが可能になる。このことはいくつかの理由で非常に望ましい。すなわち、分離を進行に応じて監視することができ、試料混合物中の種に関する情報を得ることができる。これは、分離が場合によってはかなりの時間にわたって進行し、種が光学的に検出可能になって初めて分離が観測される、一般に使用されている方法及び装置(たとえば、特にゲル電気泳動法)と対照的である。分離を早い時期に中止することができ(場合によっては、時間、コストなどの資源がかなり節約される)、また、さらに分離が必要である場合は、場合によっては分離を向上させるために調整された分離パラメータを用いて、分離を進行させることができる。
本発明のこの態様の他の利点は、点1,2,…N…に対応して得られたデータを多次元プロットとして表すことができることである。これらのデータは、分離プロセスに沿った様々な点で得られたことを考慮するように処理し、次いで信号対雑音比を向上させるように組み合わせることもできる。一例として、分離プロセスに沿った点1における時間の関数として得られたデータのピークを、点2における時間の関数として得られたデータの対応するピークと重なり合うように処理することができる。点1,2,…N…で得られたデータをそのような処理後に加算することができる。このような組合せ又は処理の後に組合せを実行することは、基本的にコンダクタンス検出器の幾何学的増幅係数を大きくする効果を有する。当業者には、図11に示されている本発明の実施形態が一次元分離プロセスに関する実施形態であるが、本発明がより高い次元の分離プロセスに容易に適合できることが明らかになろう。
図13は、実質的に平面状のコンダクタンス検出器154を含む分離装置150に適用された本発明の他の実施形態を示している。一例として、分離装置は、クロマトグラフィ(たとえば薄層クロマトグラフィ)、電気泳動法(たとえば平面ゲル電気泳動法)などによって機能することができる。容器152には移動相が入っており、容器152をカバー158で覆うことができる。コンダクタンス検出器154は、剛性構造(基板を含む)、絶縁体、及び一つ又は複数の電極対を備える。コンダクタンス検出器154は、シリコンウェハ、ガラス、シリカ、アルミナ、プリント基板、酢酸塩、カプトン、プラスチックのような、基板上の回路要素の製造に関するプロセス及び材料を含む、当技術分野で公知の様々なプロセス及び材料を使用して形成することができる。
一つ又は複数の電極対が接触パッド160のアレイに電気的に接続されており、これらの接触パッド160を、コネクタ162を介して回路基板164上の回路に接触させることができる。その結果、コンダクタンス検出器154を容易に取り外して交換することができる。回路は、インタフェース166を介して追加的な電子機器にインタフェース接続することができ、ボックス168で囲まれている。分離装置150は、図3に概略的に示されている検出器システム32と同様な検出器システムと一緒に使用することができる。一つ又は複数の電極対に対処するために、一つ又は複数のマルチプレクサを使用して、電子供給源34によって生成された電気駆動要素を様々な電極対に印加することができる。漂遊磁界の影響を低減させために、電気駆動要素を電極ユニットセルに印加する際、分離装置150が複数の電極対を備える場合に、すべての残りの電極対を浮動状態にしておくことが好ましい。
図14は、実質的にカラム、毛細管、又はマイクロチャネルによる分離に基づく分離装置に関する本発明の他の実施形態を示している。コンダクタンス検出器180は、一つ又は複数の電極対を備える。図14では、電極182a及び182bが一つの電極対を構成し、電極184a及び184bが他の電極対を構成している。各電極対の電極は、ガラス、シリコン、シリカ、ポリマー、石英、アルミナなどを含んでよい剛性構造186によって互いに対してしっかりと保持されている。一つ又は複数の電極対は、電極ユニットセルがコンダクタンス検出器によって検知されている試料混合物中の種の分離に悪影響を及ぼすのを防止するように絶縁されることが好ましい。コンダクタンス検出器180は、図3に概略的に示されている検出器システム32と同様の検出器システムと一緒に使用することができる。一つ又は複数の電極対に対処するために、一つ又は複数のマルチプレクサを使用して、電子供給源34によって生成された電気駆動要素を様々な電極対に印加することができる。
当業者には、本明細書で開示されたコンダクタンス検出システム及び方法が多数の用途を有することが容易に明らかになろう。選択された実施形態は、種を流動状態で監視することを含み、その場合、前述のように入口及び出口を有するハウジングが好ましい。
他の実施形態は、たとえば、液体を含む槽にコンダクタンス検出器を浸漬させることによって、種を含むボリューム(volume)にコンダクタンス検出器をさらすことを含む。例示的であるが非制限的な実施形態は、複数の媒体(気体又は液体)の純度、容器の清浄度、生成物の品質を評価し、混合物中に生体分子が存在することを検知することを含む。このような用途では、有利なことにコンダクタンス検出器を種にさらすのを容易にするホルダを使用することができる。図15は、そのようなホルダの一例を示している。ホルダ190は、ばね、クリップなどを使用してコンダクタンス検出器を保持することができる、スロットなどの保持手段192を含む。信号をコンダクタンス検出器に送るか或いはコンダクタンス検出器から送るためのワイヤが穴194及びキャビティ196を通過することができる。ホルダ190は、ワイヤ用の電気接点を収容する収容手段198も有し、収容手段198は、BNCコネクタを収容するためのネジ穴、ピンを収容するためのネジ穴などを備えてよい。
本明細書では、語「備える(含む)」は、排他的ではなく開放的で包括的な語として解釈すべきである。具体的には、語「備える(含む)」及びその変化形を、特許請求の範囲を含む本明細書で使用するときは、指定された特徴、ステップ、又は構成部材が含まれることを意味する。この語は、他の特徴、ステップ、又は構成部材の存在を除外する語として解釈すべきではない。
上記の説明が、本発明に一例としてのみ関係していることが理解されよう。当業者には本発明の多数の変形実施形態が自明であり、そのような自明の変形実施形態は、明示的に記載されているか否かにかかわらず本明細書で説明するような本発明の範囲内である。
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Claims (24)

  1. ある相中の一つ又は複数の化学及び/又は生物種の伝導率及び/又は誘電定数を検出する検出器システムにおいて、
    a)セル構造を有するコンダクタンス検出器であって、
    前記セル構造は、
    一部が導電性を有し、第1の導電構成部材を形成する頂面を有する剛性層構造、
    ナノメートルから数百ミクロンの厚みを有する絶縁層構成部材によって前記第1の導電構成部材から間隔を置いて配置された第2の導電構成部材、
    前記化学及び/又は生物種が流れることができる、前記第1の導電構成部材と前記第2の導電構成部材との間の一つ又は複数の流路
    検出される前記化学及び/又は生物種が一つ又は複数の流路に進入するのを可能にする一つ又は複数の開口部、
    検出される前記化学及び/又は生物種が一つ又は複数の流路から排出するのを可能にする一つ又は複数の開口部、
    を含む、
    1cm 2 の面積を有する前記コンダクタンス検出器と、
    b)前記第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方に結合され、時間依存応答を誘起する時間依存電気信号を生成する電源と、
    c)前記第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方に結合され、前記時間依存応答を測定する信号検出器と、
    d)前記信号検出器に接続され、前記相中に前記化学及び/又は生物種が存在することによって生じるコンダクタンスの変化を判定するマイクロプロセッサと
    を備え検出器システム
  2. 前記信号検出器は、同相成分である前記時間依存応答の第1の成分及び位相外れ成分である第2の成分の一方又は両方を測定して、前記化学及び/又は生物種の存在を検出するように構成される、請求項1に記載検出器システム
  3. 前記電源は、複数の時間依存性を有する複数の時間依存信号を生成する生成装置を含み、前記電源は、前記複数の時間依存信号を組み合わせ、複数の時間依存性を有する時間依存応答を誘起するように構成される、請求項1又は2に記載検出器システム
  4. 前記剛性構造は、シリコン、ガラス、シリカ、アルミナ、プリント回路基板、酢酸塩、カプトン、プラスチック、半導体、金属、ポリマー、石英、複合材料及び多層材料のいずれかで形成された基板を備える、請求項1、2、又は3に記載検出器システム
  5. 前記コンダクタンス検出器の前記流路のうちの少なくとも一つの流路の流れ面は、前記相中の前記化学及び/又は生物種と相互作用する化学及び/又は生物官能基で官能基化される、請求項1から4のいずれか一項に記載検出器システム
  6. 前記セル構造は、ハウジング内に交換可能に収納されるか或いはマイクロ流体プラットフォームに収納される、請求項1から5のいずれか一項に記載検出器システム
  7. 前記化学及び/又は生物種の存在を検査中の前記相は、チューブ又はアダプタによって前記セル構造に送られる、請求項1から6のいずれか一項に記載検出器システム
  8. 前記信号検出器又は前記マイクロプロセッサは、少なくとも一つの相関方法を適用して前記コンダクタンス検出器の信号対雑音比を向上させるようにプログラムされる、請求項1から7のいずれか一項に記載検出器システム
  9. 前記相関方法は、フーリエ変換、ロックイン技術、ウェーブレット分析、アダマール変換、Shah畳み込みフーリエ変換分析、又は畳み込み法のうちの一つを含む、請求項8に記載検出器システム
  10. クロマトグラフィ装置のクロマトグラフィ試料出力に接続され、前記クロマトグラフィ装置からの前記クロマトグラフィ試料出力に存在する任意の化学及び/又は生物種を検出する、請求項1から9のいずれか一項に記載検出器システム
  11. 前記クロマトグラフィ装置は、ガスクロマトグラフィ装置、薄層クロマトグラフィ装置、高速液体クロマトグラフィ装置、超高速液体クロマトグラフィ装置、又はフラッシュクロマトグラフィ装置である、請求項10に記載検出器システム
  12. 電気泳動装置の電気泳動試料出力に接続され、前記電気泳動装置からの前記電気泳動試料出力に存在する前記化学及び/又は生物種を検出する、請求項1から9のいずれか一項に記載検出器システム
  13. 前記電気泳動装置は、ゲル装置、毛細管装置、又はマイクロチャネル電気泳動装置である、請求項12に記載検出器システム
  14. 前記セル構造は、絶縁構成部材内に配置され、前記化学及び/又は生物種の存在を検査中の前記相が前記セル構造内を流れるときに流入することのできる複数のキャビティを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載検出器システム
  15. 前記時間依存応答は、フーリエ変換、ウェーブレット分析、微分、及びハイパスフィルタリングのいずれか又は組合せを含む時間領域分析技術を使用して、前記相の組成が変化することによる前記時間依存応答への寄与に対する、前記化学及び/又は生物種による前記時間依存応答への寄与を強調するように処理される、請求項1から14のいずれか一項に記載検出器システム
  16. 前記絶縁層構成部材は、スピンコーティング、蒸着、又は自然酸化によって形成される、請求項1から15のいずれか一項に記載検出器システム
  17. 前記コンダクタンス検出器は、異なる前記化学及び/又は生物種が異なる相互作用を行う、又は、異なる前記化学及び/又は生物種が異なる速度で移動する固定相を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載検出器システム
  18. ある相中の一つ又は複数の化学及び/又は生物種の伝導率及び/又は誘電定数を検出する方法において、
    a)前記一つ又は複数の化学及び/又は生物種検査中の前記相をセル構造を有するコンダクタンス検出器内で流動させるステップであって、前記セル構造が、ナノメートルから数百ミクロンの厚みを有する絶縁層構成部材によって第2の導電構成部材から分離された第1の導電構成部材を有する剛性層構造と、前記化学及び/又は生物種が流れることができる、前記第1の導電構成部材と前記第2の導電構成部材との間の一つ又は複数の流路と、検出される前記化学及び/又は生物種が一つ又は複数の流路に進入するのを可能にする一つ又は複数の開口部と、検出される前記化学及び/又は生物種が一つ又は複数の流路から排出するのを可能にする一つ又は複数の開口部とを含み、前記コンダクタンス検出器が1cm 2 の面積を有する、ステップと、
    b)前記第1及び第2の導電構成部材の少なくとも一方に時間依存電気信号を印加して時間依存応答を誘起するステップと、
    c)前記時間依存応答を測定し、前記化学及び/又は生物種が存在することによって生じるコンダクタンスの変化を前記時間依存応答から判定するステップとを含方法。
  19. 前記セル構造中の前記剛性層構造は、一部が導電性を有し、前記第1の導電構成部材を形成する頂面を有し、前記第2の導電構成部材は、前記絶縁層構成部材によって前記第1の導電構成部材から間隔を置いて配置される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記時間依存応答は、同相成分である前記時間依存応答の第1の成分及び位相外れ成分である第2の成分の一方又は両方を測定して、前記化学及び/又は生物種の存在を検出するように構成された信号検出器によって測定される、請求項18又は19に記載の方法。
  21. 前記時間依存電気信号は、複数の時間依存性を有する複数の時間依存信号を生成して組み合わせる生成装置を含む電源を使用して印加され、前記電源は、前記複数の時間依存信号を組み合わせ、複数の時間依存性を有する時間依存応答を誘起するように構成される、請求項18、19、又は20に記載の方法。
  22. 前記剛性層構造は、シリコン、ガラス、シリカ、アルミナ、プリント回路基板、酢酸塩、カプトン、プラスチック、半導体、金属、ポリマー、石英、複合材料及び多層材料のいずれかで形成された基板を備える、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記コンダクタンス検出器の前記流路のうちの少なくとも一つの流路の流れ面は、前記相中の前記化学及び/又は生物種と相互作用する化学及び/又は生物官能基で官能基化される、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 異なる前記化学及び/又は生物種が異なる相互作用を行う、又は、異なる前記化学及び/又は生物種が異なる速度で移動する固定相を使用するステップを有する、請求項18から23のいずれか一項に記載の方法。
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