JP5890169B2 - 吸熱性部材 - Google Patents

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Description

本発明は、防寒衣料やスポーツ、レジャー用衣料あるいはカーテンなどのインテリア用品、テントなどのレジャー用品として有用な吸熱性部材に関する。
保温を目的とした防寒衣料やインテリア、レジャー用品が様々に考案され、実用化されてきた。その方法として、衣料の織り編みの構造を工夫したり、繊維を中空構造や多孔質構造にすることにより、物理的に空気層を多くして体から出る熱の放散性を減少させて保温性を維持する方法、あるいは、衣料や繊維に化学的・物理的に加工をして、体内から出る熱を輻射したり太陽光の一部を熱に変換するなどの方法で積極的に吸熱させる方法がある。
しかしながら、従来品はかさばったり、保温効果も充分に得られる物ではなかった。これらを解消するために、近年では積極的に外部内部の熱を有効利用する方法が開発されている。
その方法の一つとして、アルミニウムやチタンなど金属を裏地などの衣料に蒸着し、体内から出る放射熱を金属蒸着面で反射し積極的に熱の発散を防ぐ方法などがとられている。
しかし、これらの方法は金属を蒸着加工する為コストアップにつながり、製品自体の価格アップにつながっていた。
他の方法として、アルミナ系、ジルコニア系、マグネシア系などのセラミック粒子を繊維そのものに混練して、これらの無機微粒子が持つ遠赤外線放射効果や、光を熱に変える効果を利用する方法、即ち積極的に外部のエネルギーを取り入れる方法が知られている。
しかし、これらの無機微粒子を繊維内部に配してその吸熱・保温効果を発揮させるためには、多量の微粒子の添加を必要とし、紡糸の生産効率を低下させるだけではなく、紡口などへの機械的な損傷を生じさせる原因ともなる。
かかる保温蓄熱効果を有する繊維としては、遠赤外線を放射するセラミックスの微粒子を合成繊維に含有させる多くの方法が提案されている。
例えば、合成繊維に遠赤外線を放射する微粒子を吸着もしくは吸尽させる方法(例えば、特許文献1を参照)、遠赤外線を放射する微粒子を合成繊維の内部に含有せしめる方法(例えば、特許文献2を参照)、繊維を芯・鞘構造となし、芯部に遠赤外線を放射する微粒子含有ポリマーを配置した複合繊維(例えば、特許文献3や特許文献4を参照)などが挙げられる。
特開昭61−12908号公報 特開昭63−196710号公報 特開昭63−92720号公報 特開平03−51301号公報
しかしながら、上記遠赤外線を放射する繊維やそれを用いた繊維構造体では、以下のような様々な問題がある。
例えば、特許文献1に記載の技術では、赤外線を放射する微粒子の吸着、吸尽させる量に限界があり、赤外線放射効果が殆ど無いのが実情である。また、特許文献2に記載の技術では、充分な赤外線放射効率を得るために赤外線を放射する微粒子を高濃度で充填する必要があり、紡糸性が著しく悪化する問題がある。さらに、特許文献3や特許文献4に記載の技術においては、鞘部において放射された赤外線が吸収されてしまい、効果が充分に発揮されない問題もある。
さらに、各種のバインダー樹脂に赤外線を放射する材料の微粒子を充填し、上記赤外線微粒子含有バインダー樹脂を、繊維表面や繊維で構成された構造物表面に塗布する方法も提案されているが、樹脂の材質や赤外線を放射する微粒子の充填量によっては、剥離や繊維の風合いが損なわれるなどの多くの課題があった。
そこで本発明は、上述した従来技術の問題を解決し、繊維やフィルム、布などからなる基材の風合いを損なわずに、充分な赤外線吸収効果による吸熱性と耐久性に優れた吸熱性部材を提供するものである。
すなわち、第1の発明は、基体と、前記基体表面に形成され、赤外線吸収特性を有する有機化合物と、表面にシランモノマーが結合した無機微粒子の群と、を有する吸熱層と、を備え、
前記無機微粒子の群は、前記無機微粒子同士が表面の前記シランモノマー間の化学結合を介して結合しており、且つ、前記無機微粒子の群が前記シランモノマーとの化学結合によって基体と結合することにより、前記無機微粒子に保持された前記有機化合物が凝集せず、基体表面に均一に分散していることを特徴とする吸熱性部材。
また、第2の発明は、前記吸熱層は、バインダー成分としてのモノマー、オリゴマー、またはこれらの混合物をさらに有し、
前記バインダー成分は、前記赤外線吸収特性を有する有機化合物と前記無機微粒子とを結合することを特徴とする第1の発明に記載の吸熱性部材。
第3の発明は、前記赤外線吸収特性を有する有機化合物が、フタロシアニン化合物であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の吸熱性部材。
第4の発明は、前記赤外線吸収特性を有する有機化合物の粒子径が、300nm以下である粒状物であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれか一つに記載の吸熱性部材。
第5の発明は、前記無機微粒子の熱伝導率が10W/(m・K)以上であることを特徴とする第1から第4の発明のいずれか一つに記載の吸熱性部材。
第6の発明は、前記基体が、樹脂を含むことを特徴とする第1から第5の発明のいずれか一つに記載の吸熱性部材。
第7の発明は、前記基体が、繊維構造体であることを特徴とする第1から第6の発明のいずれか一つに記載の吸熱性部材。
本発明によれば、基体の表面に対して、赤外線吸収特性を有する有機化合物とこれを保持する為の無機微粒子が、シラン化合物を介した化学結合によって、強固に結合された状態となっている。このため、赤外線吸収特性を有する有機化合物とこれを保持する為の無機微粒子が、基体に対して充分な耐久性をもって保持されている。また、赤外線吸収特性を有する有機化合物を無機微粒子に固定することで、赤外線吸収特性も向上し、吸熱性に優れている。
したがって、本発明によれば、赤外線吸収特性を有する有機化合物とこれを保持する為の無機微粒子が各種の基材の表面に強固に結合された耐久性に優れた吸熱性部材を提供することが可能となる。また、赤外線吸収特性を有する有機化合物とこれを保持する為の無機微粒子が基材の表面に配置され、微量にて効率良く赤外線を吸収するので、繊維やフィルム、布などからなる基材の風合いを損なわずに、吸熱性部材を提供することが可能となる。
なお、基体の形態としては、例えば、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状、ハニカム状など、使用目的に合った様々な形態(形状、大きさ等)とすることができるので、ベスト、ジャケットコート、スーツ、スポーツ衣料、肌着、インナーウェア、腹巻、サポーター、靴下、手袋、靴等の履物、該履物用の中敷、マット、シーツ、毛布、布団などの寝装材、絨毯、カーテンまたは防虫網などの用途に好適である。
本実施形態の吸熱性部材を部分拡大した模式図である。 吸熱性評価試験の概略図である。 温度測定結果のグラフである。 光の透過率の測定結果のグラフである。 洗濯前と洗濯後の温度測定結果のグラフである。 赤外線吸収特性を有する有機化合物のみのスラリーを塗布した基体の表面を示す電子顕微鏡写真である。 無機微粒子と、赤外線吸収特性を有する有機化合物を含むスラリーを塗布した基体の表面を示す電子顕微鏡写真である。
以下に、本実施形態の吸熱性部材について図を用いて詳述する。
図1は、本発明の実施形態の吸熱性部材100の断面の一部を模式的に表した図である。
図1に示すように、本実施形態による吸熱性部材100は、基体1と、基体1表面に形成される吸熱層10と、を備えている。吸熱層10は、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bの群と、無機微粒子2−aの群とを有する。
なお、図1では本発明の実施形態を判りやすく模式的に示すため、それぞれ1種類の有機化合物と無機化合物である場合を例示しているが、これに限定されない。すなわち、無機微粒子2−aを2種類以上の無機微粒子から構成してもよいし、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bを2種類以上の有機化合物から構成してもよい。
以下、本実施形態の吸熱性部材100の構成について、詳細に説明する。
本実施形態の吸熱性部材100に用いられる基体1は、少なくとも赤外線照射を受ける側(光源側)の表面が、シランモノマー3による共有結合が可能な材質となっている。具体的には、少なくとも基体1の表面が、例えば、各種樹脂や、合成繊維や、綿、麻、絹等の天然繊維や、天然繊維から得られた和紙などにより構成されている。
基体1の表面ないし全体を構成する樹脂としては、例えば、合成樹脂や天然樹脂を採用することができる。その一例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、PTFEなどの熱可塑性樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ケイ素樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
また、本実施形態では、基体1の形態は特に限定されず、使用目的・用途などに応じて変更可能であるが、例えば樹脂からなる繊維状材料から構成される織物・編物・不織布などを含む繊維構造体とすることができる。さらに、種々の形状及びサイズ等についても、使用目的に合ったものとすることができる。なお、本明細書において、基体上とは、基体1が不織布状の場合は不織布を形成する糸の表面を意味する。
本実施形態における赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bとしては、例えば、フタロシアニン化合物が好適に用いられる。
また、フタロシアニン環に配位する化合物も特に限定されるものではなく、金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属カルボニル等が配位された化合物を使用することができる。特に、金属が配位された化合物が好ましく、さらには、銅、鉄、コバルト、ニッケルが配位された化合物がより好ましい。これらのフタロシアニン化合物は塩の状態でも使用できる。また、本実施形態で使用するフタロシアニン化合物は、単独でも、複数の混合物でも使用可能である。
本実施形態で使用するフタロシアニン化合物は、700nm以上の近赤外域に吸収ピークを有する化合物が好ましい。太陽光は紫外線・可視光線・赤外線領域の間に全エネルギーの95%以上を含んでいる。このため、太陽光を選択的に吸収させる物質としては、この範囲内の光のエネルギーを吸収して熱のエネルギーに変換させる物質が、効率的である。より効率のよい吸収波長としては、700nm以上がよく、より好ましくは、780nm以上がよい。
本実施形態における赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bは、図示するように粒状物質であることが好ましい。有機化合物2−bが粒状物である場合にはその粒子径は特に限定されないが、300nm以下であることが望ましい。
更に平均粒子径が100nm以下であれば、基体1の色調の変化を少なく抑えて吸熱層10を形成できること、さらには基体1へのより強固な結合が達成されるため、耐久性の点より一層好適である。なお本明細書において、平均粒子径とは体積平均粒子径をいう。
有機化合物2−bの粒子径の測定は、従来のレーザー回折式や動的光散乱式、レーザードップラー式の粒度分布計を用いて分散液の状態で粒子径を計測する方法や、有機化合物の分散液を希釈し乾燥させ撮影したSEMやTEM像を用いて計測し、100〜200個の粒子径の平均値を算出する方法など、適宜採用することができる。
また、有機化合物2−bを、300nm以下のナノオーダーサイズの粒状物質とした場合、有機化合物2−bの比表面積を増大させることができ、有機化合物2−bの添加量が少量でも高い吸熱効率を得ることができる。つまり、同じ吸熱量を得る場合、粒子径が小さければ、粒子径の大きなものよりも添加量を少量に抑えられる。フタロシアニン化合物は色素であるため、吸熱層10にフタロシアニン化合物が含まれることで、基体1の吸熱層10側の色調がもともとの色調とは異なる色調に変化して見えてしまう。しかし、有機化合物2−bの粒径をナノオーダーに小さくすることで、色調の変化を抑制することができる。また、有機化合物2−bの粒径が小さければ、吸熱効率が向上するため、その分添加量を抑えることができ、有機化合物2−bの添加量を抑えることが出来れば、基体1の色調の変化もさらに抑えることができる。ただし、有機化合物2―bの粒径が小さくなると、製造時間、製造コストがかかり、取り扱いも難しくなるので、無機微粒子の平均粒子径は1nm以上であることが好ましい。
したがって、有機化合物2−bの粒子の平均粒子径は1nm以上300nm以下が好ましい。
本実施形態の吸熱性部材100における基体1上には、吸熱層10が形成されている。吸熱層10に含まれる無機微粒子2−aは、表面に脱水縮合反応による化学結合5によりシランモノマー3が結合しており、また、無機微粒子2−a同士は、表面のシランモノマー3間で形成されたラジカル重合による化学結合5(図1にて黒丸で示した部分)により結合している。
さらに、吸熱層10に含まれる無機微粒子2−aの群は、シランモノマー3と基体1との間に形成される化学結合5により、基体1に結合している。そして、無機微粒子2−a同士の結合、および無機微粒子2−aの群と基体1との結合により、基体1上には、無機微粒子2−aに保持された赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bが均一に分散し、固定されている。
すなわち、本実施形態では、不飽和結合部又は反応性官能基を有する反応性に優れたシランモノマー3を用いている。これにより、シランモノマー3が有するシラノール基の化学結合5により基体1上の複数の無機微粒子2−a同士を結合するとともに、基体1と、基体1に対向する無機微粒子2−a表面のシランモノマー3と、の間で化学結合5を形成することで、無機微粒子2−aの群を基体1上に固定することができる。そして、無機微粒子2−a同士の結合および無機微粒子2−aの群と基体1との結合により、無機微粒子2−aに保持された赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bが基体1の表面に均一に分散し、固定されている。
脱水縮合により無機微粒子2−aと化学結合するシランモノマー3が有する不飽和結合部としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基などが挙げられる。
本実施形態の吸熱性部材100で用いられるシランモノマー3としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを採用することができる。
本実施形態の吸熱性部材100に係る無機微粒子2−aとしては、例えば、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物などが挙げられる。吸熱性の観点からは熱伝導率(W/(m・K))が高い無機微粒子が望ましく、熱伝導率が10(W/(m・K))以上、好ましくは20(W/(m・K))以上の無機微粒子が望ましい。
また、無機微粒子2−aの結晶性は、非晶性あるいは結晶性のどちらでも良い。金属酸化物としては、γ、δ、θなどの結晶性を有する酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化珪素(熱伝導率0.1〜1.3)、酸化鉄、酸化銅、酸化タングステン、酸化マグネシウムなどが挙げられる。また、金属炭化物としては、炭化ジルコニウム、炭化珪素などが挙げられる。また、金属窒化物としては窒化アルミニウムなどが挙げられる。
吸熱性の観点から、無機微粒子2−aは、熱伝導率10(W/(m・K))以上の物質が好ましく、具体的には、酸化アルミニウム(熱伝導率23〜36)、酸化スズ(同83〜137)、酸化亜鉛(同48〜57)、酸化マグネシウム(同45〜60)、炭化ジルコニウム(同27〜40)、炭化珪素(同180〜320)、窒化アルミニウム(同150〜250)が挙げられる。これらの無機微粒子は単体で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。さらに、分散媒中への混合、分散の観点からは、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等が、特に好適に用いられる。
本実施形態において、含有される無機微粒子2−aの粒子径としては、平均粒子径が500nm以下であることが好ましい。平均粒子径が500nmよりも大きい場合では、基体1に対する無機微粒子の密着性が低下し、平均粒子径が500nm以下である場合よりも無機微粒子が基体1から剥がれやすくなってしまう。また、その使用環境や使用経時などにより、無機微粒子の剥離が発生する場合があることから、無機微粒子同士の密着強度を考慮すると、無機微粒子の平均粒子径は300nm以下であることが特に好ましい。
平均粒子径は小さければ剥離しにくくなるが、平均粒子径を小さくするには、製造時間、製造コストがかかるため、無機微粒子の平均粒子径は10nm以上であることが好ましい。
したがって、無機微粒子の平均粒子径は10nm以上300nm以下が好ましい。
さらに、本実施形態の吸熱性部材100においては、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bは、モノマー、オリゴマー、またはこれらの混合物からなるバインダー成分4を介して無機微粒子2−aに結合するようにしてもよい。言い換えれば、本実施形態の吸熱性部材の吸熱層10は、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bと無機微粒子2−aとを結合する、モノマー、オリゴマー、またはこれらの混合物からなるバインダー成分4を備えるようにしてもよい。これにより、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bの基体1上からの脱落をより防止することができる。
なお、図1に示すように、バインダー成分4は、無機微粒子2−aと赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bとを結合させるだけでなく、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bと基体1とを結合したり、無機微粒子2−a同士を結合したり、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−b同士を結合したりするようにしてもよい。また、バインダー成分4によって、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bを、無機微粒子2−aの表面に固定するような構成とすることもできる。
さらに、本実施形態では、以下に例を示すバインダー成分4について、脱水縮合反応による共有結合を形成して、無機微粒子2−a、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−b、および基体1に結合しているが、これに限定されるものではなく、他の態様によって結合または吸着するようにしてもよい。
モノマー及びオリゴマーとしては、不飽和結合部を有する単官能、2官能、多官能のビニル系モノマー、例えば、アクリル酸、メチルエチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、イタコン酸、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを採用することができる。
また、バインダー成分4として、不飽和結合を有するシランモノマーである、例えば、ビニルトリメトキシシランや、ビニルトリエトキシシランや、ビニルトリアセトキシシランや、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどを採用することができる。
さらに、バインダー成分4としては、Si(OR14(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、例えば、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランなどや、R2nSi(OR34n(式中、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、例えば、メチルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシランや、ジメチルジエトキシシランや、フェニルトリエトキシシランや、ヘキサメチルジシラザンや、ヘキシルトリメトキシシランなどが用いられるようにしてもよい。当該アルコキシシランを結合させることにより、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bがより強く保持されるようになる。
バインダー成分4の量は、バインダーとしての機能を発揮する範囲で適宜設定することができるが、例えば、シランモノマー3が結合した無機微粒子2−aおよび赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bの合計100質量%に対して、0.1質量%以上の含有量となるように、バインダー成分4を添加すればよい。
また、バインダー成分4だけではなく、さらに何らかの性能を付与するための機能性材料を用いる事もできる。例えば、後述する製造工程において、親水性のモノマーやオリゴマーを添加すると、親水性能を付与させることが可能となるし、撥水性のモノマーやオリゴマーを添加すると、撥水性能を付与させることが可能となる。また、バインダー成分4や他の機能性材料は1種類だけでなく、複数種類を組み合わせて用いることも可能であり、それぞれの添加濃度については使用環境にあわせて適宜選択できる。これら機能性材料の結合または吸着方法も特に限定されず、吸熱性部材100の使用目的・用途等に応じて適宜変更可能である。
次に、本実施形態の吸熱性部材100の製造方法について説明する。まず、脱水縮合により化学結合したシランモノマー3により被覆された無機微粒子2−a、をメタノールやエタノール、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)、アセトン、キシレン、トルエンなどの分散媒に混合し、分散させる。ここで、分散を促進させる為に、必要に応じて界面活性剤や、塩酸、硫酸などの鉱酸や、酢酸、クエン酸などのカルボン酸などを加えるようにしてもよい。続いて、ビーズミルやボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、ホモジナイザーなどの装置を用いて無機微粒子2−aを分散媒中で解砕・分散させ、無機微粒子を含むスラリーを作製する。
なお、無機微粒子2−aと不飽和結合部または反応性官能基を有するシランモノマー3との化学結合5は、通常の方法により形成させることができる。
上記化学結合5の形成方法としては、例えば、(1)無機微粒子2−aの分散液に、シランモノマー3を加え、その後、還流下で加熱させながら、無機微粒子2−aの表面にシランモノマー3を脱水縮合反応により化学結合5させてシランモノマー3からなる薄膜を形成する方法や、(2)粉砕により微粒子化して得られた分散液にシランモノマー3を加えた後、或いは、シランモノマー3を加えて粉砕により微粒子化した後、固液分離して100℃から180℃で加熱してシランモノマー3を無機微粒子2−aの表面に脱水縮合反応により化学結合させ、次いで、粉砕・解砕して再分散する方法、が挙げられる。
ここで、還流下、または、粉砕により微粒子化して得られた分散液にシランモノマー3を加えた後、或いは、シランモノマー3を加えて粉砕により微粒子化した後、固液分離して100℃から180℃で加熱して、シランモノマー3を無機微粒子2−aの表面に脱水縮合反応による化学結合5を形成させる場合、シランモノマー3の量は、無機微粒子2−aの平均粒子径にもよるが、無機微粒子2−aの質量に対して0.01質量%〜40.0質量%であれば、無機微粒子2−a同士の結合強度、および無機微粒子2−aの群と基体1との結合強度は実用上問題ない。また、結合しない余剰のシランモノマー3があっても良い。
次に、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bをメタノールやエタノール、MEK、アセトン、キシレン、トルエンなどの溶媒に混合し溶解させ、これを上述した無機微粒子が分散したスラリーに、添加し充分に混合する。本実施形態に用いられる赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bは、ビーズミル等の装置を用いて、溶媒中に微粒子状に分散した状態や、溶媒に溶解混合した状態で無機微粒子2−aが分散したスラリーに添加する方法や、ナノ粒子として赤外線吸収特性を有する微粒子を化学的に合成することにより得られるスラリーを添加する方法が適宜採用可能である。なお、ナノオーダーの有機化合物2−bを形成する場合には、粒径にもよるが、非常に小さい粒径(1〜数10nm程度)の有機化合物2−bを作製する場合には、物理的な粉砕方法では難しいため、析出処理など化学的手法により作製する方法が好ましい。
必要に応じてバインダー成分4を添加し充分に混合した後、当該スラリーを固定する基体1の表面に塗布する。具体的なスラリーの塗布方法としては、一般に行われているスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、キャストコート法、バーコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法を用いればよく、目的に合った塗布ができれば塗布方法は特に限定されない。
次に、必要に応じて、加熱乾燥などで分散媒を除去した後、基体1と、無機微粒子2−aと、バインダー成分4とを化学結合させる。具体的には、無機微粒子2−aの表面のシランモノマー3間で化学結合5を形成させることにより無機微粒子2−a同士を結合させるとともに、結合した無機微粒子2−aの群を、シランモノマー3と基体1表面との間の化学結合5を形成させることにより、基体1上に固定させる。このとき、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bは、無機微粒子2−aに保持されることで、基体1表面に均一に分散し、固定されている。また、併せて、バインダー成分4を無機微粒子2−aおよび赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bに結合させることにより、無機微粒子2−aと赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bとを結合させる。本実施形態においては、基体1とシランモノマー3とを化学結合させる方法として、グラフト重合による結合方法を用いるのが好ましい。
本実施形態の吸熱性部材100におけるグラフト重合としては、例えば、パーオキサイド触媒を用いるグラフト重合、熱や光エネルギーを用いるグラフト重合、放射線によるグラフト重合(放射線グラフト重合)などが挙げられ、形状や形態に応じて適宜選択して用いることができる。なお、パーオキサイド触媒による処理、熱や光エネルギーによる処理、および放射線による処理によって、無機微粒子2−a表面のシランモノマー間のラジカル重合による化学結合5、およびバインダー成分4と無機微粒子2−aとの脱水縮合反応により化学結合が形成されたことによる無機微粒子2−aの結合についても、併せて形成させることができる。
ここで、シランモノマー3のグラフト重合を効率良く、且つ、均一に行わせるために、予め、基体1の表面に対して、(1)コロナ放電処理、(2)プラズマ放電処理、(3)火炎処理、(4)クロム酸や過塩素酸などの酸化性酸水溶液や水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ性水溶液による化学的な処理、などの親水化処理を施してもよい。
本実施形態の吸熱部材の吸熱機構については現在のところ必ずしも明確ではないが、溶解した赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bが、極性の高い溶媒と接触する事で析出し、これが無機微粒子2−aに吸着する事により僅かにマイクロカプセルを形成する。
このマイクロカプセル化した粒子と、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bと無機微粒子2−aを基体1の表面に固定化することによって、基体1上の無機微粒子が表面で光の乱反射を起こしやすくなり、結果、乱反射を起こした光が基体1上の赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bに吸収される割合が多くなる。その為、有機化合物2−bをバインダーなどで基体1の表面に固定化するよりも、無機微粒子2−aとの吸着によりマイクロカプセルを形成して基体1の表面に固定化する方が、より多くの赤外線を吸収するものと考えられる。
以上、本実施形態の吸熱性部材100によれば、基体1に結合した無機微粒子2−aの群において、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−b、あるいは無機微粒子2−aに吸着する事によりマイクロカプセル状になった有機化合物2−bが、凝集せず均一に分散し、固定される。このため、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bは強固に基体1上で保持されるので、基体1からの剥がれなどを抑制することができる。
また、本実施形態に係る基体1上に固定された吸熱層10は、赤外線吸収特性を有する有機化合物2−bと、不飽和結合部や反応性官能基を有するシランモノマー3が脱水縮合反応により表面に化学結合した無機微粒子2−aとから構成されているため、これらの微粒子の混合比率を変えることで、目的に合わせた自由な構造設計が可能となる。
本発明では、前述したように、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状、ハニカム状など、使用目的に合った様々な形態(形状、大きさ等)とすることができるので、ベスト、ジャケットコート、スーツ、スポーツ衣料、肌着、インナーウェア、腹巻、サポーター、靴下、手袋、靴、サンダル、スリッパ等の各種履物、これら履物用の中敷、マット、シーツ、毛布、布団などの寝装材、絨毯、カーテンまたは防虫網などの用途に好適であり、これら各種製品を提供することができる。
また、本発明では、赤外線吸収特性を有する有機化合物の化学結合による固着については、紡糸の段階で固着している必要がなく、紡糸後に製品形状とした後で結合させてもよいし、製品化の過程で結合させることも可能である。このため、有機化合物2−bの微粒子の存在が紡糸性に影響しない、というメリットがある。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<吸熱性部材の作製>
(実施例1)
不飽和結合を有するシランモノマーである3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を、無機微粒子γ―アルミナ(大明化学工業株式会社製、TM−300)の表面に、通常の方法(化学結合5の形成方法として上述した(1)や(2)の方法など)により脱水縮合により共有結合させた後、メタノールにプレ分散後、ビーズミルにて平均粒子径が50nmとなるように解砕・分散し、それぞれの粒子が分散したスラリーを得た。なお、ここでいう平均粒子径とは、体積平均粒子径(Mean Volume Diameter)のことをいう。
次に、γ―アルミナの充填量が10質量%になるように、メタノールを加えて調整した。このスラリーに、バインダーとしてテトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−04)を固形分(無機微粒子+バインダー+赤外線吸収特性を有する有機化合物)の30質量%になるように加えて分散した。
次に、赤外線吸収特性を有する有機化合物としてフタロシアニン化合物(富士フイルム株式会社製、PRO−JET925NP)をスラリー中の固形分の10%(質量比)がフタロシアニン化合物になるように添加し、充分に分散した。なお、「固形分の10%」との記載は、布帛に塗布される直前のスラリー中における固形分の、質量比で10%がフタロシアニン化合物であるということを意味する(スラリー中の固形分における各物質の質量比は、そのまま最終的に得られる吸熱性部材の吸熱層における各物質の質量比となる)。以下の実施例の説明における「固形分のXX(質量)%」との記載も同様の意味とする。
布帛(綿97%・ポリウレタン3%)に対して、メタノールを加えスラリーに含まれる固形分を10質量%に調整したスラリーを3g塗布後、110℃で1分間乾燥した。その後、エレクトロカーテン型電子線照射装置(岩崎電気株式会社製、CB250/15/180L)を用い、80kVの加速電圧で電子線を3Mrad照射し、吸熱性部材(無機微粒子と赤外線吸収特性を有する有機化合物を含む)のサンプルを得た。得られたサンプルの表面SEM観察から、赤外線吸収特性を有するフタロシアニン化合物は約60nm程度の粒子径であることを確認した。
(実施例2)
実施例2は、赤外線吸収特性を有する有機化合物として、フタロシアニンのナノ粒子を作製し、作製したフタロシアニンナノ粒子を用いて吸熱性部材を作製した。
フタロシアニンナノ粒子は、まず、原料の銅フタロシアニン(PV FAST BLUE BG、クラリアントジャパン株式会社製)を濃硫酸(キシダ化学株式会社製、98%)に溶解させた。そして、マイクロリアクターを用いて、純水中に調製した銅フタロシアニン濃硫酸溶液を滴下させることで、銅フタロシアニンを再析出させ、銅フタロシアニンナノ粒子を得た。
得られた銅フタロシアニンナノ粒子の希硫酸分散液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを中性に調整し、銅フタロシアニンナノ粒子を凝集させた後、静置・沈降させた。
沈降した銅フタロシアニンナノ粒子は、真空アスピレーターを使用し、目開き10μmのろ布を用いて凝集し、水で洗浄することにより銅フタロシアニンナノ粒子のペーストを得た。
得られた銅フタロシアニンナノ粒子ペーストを、純水中に固形分濃度1質量%、界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製)を濃度0.1質量%となるように水溶液中に混合した。得られた銅フタロシアニンナノ粒子は平均粒子径14.3nmであった。
実施例1で用いたフタロシアニン化合物の代わりに、上記で得られた合成銅フタロシアニンナノ粒子を用いた以外は、実施例1と同様に、スラリー中における固形分濃度を10質量%に調整したスラリー(スラリー中のフタロシアニン化合物および無機微粒子の含有量は、実施例1と同じ)を用いて、布帛に3g塗布し、サンプルを作成した。
(実施例3)
実施例1で用いたフタロシアニン化合物の代わりに、実施例2で用いた合成銅フタロシアニンナノ粒子を用い、バインダーを固形分の30質量%、合成銅フタロシアニンを固形分の3質量%(残りの固形分はγ―アルミナ)となるように添加した。それ以外は、実施例1と同様に固形分を10質量%に調整したスラリーを布帛に3g塗布しサンプルを作成した。
(実施例4)
実施例1において、無機微粒子2−aとしてγ―アルミナの代わりに、酸化マグネシウム(タテホ化学工業株式会社製、FNM-G)を用いた以外は、実施例1と同様に作成した。
(実施例5)
実施例1で、シランモノマーで表面処理したγ−アルミナの充填量が10質量%になるようメタノールを加えて調整した後、さらに無機微粒子成分として炭化珪素(大平洋ランダム株式会社製、15S)を固形分の30質量%(固形分の30%(質量比)が炭化珪素)となるように添加し、分散した。
その後、バインダーとしてテトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-04)を固形分の30質量%(固形分の30%(質量比)がテトラメトキシシラン)となるように加え、更に分散した。続いて、実施例1と同様にフタロシアニン化合物を固形分の10質量%(固形分の10%(質量比)がフタロシアニン化合物になるように)添加し、充分に分散した。その後、実施例1と同様に吸熱性部材のサンプルを得た。
(実施例6)
実施例6は、無機微粒子として酸化亜鉛の微粒子を用いたものである。具体的には、不飽和結合を有するシランモノマーである3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を、無機微粒子酸化亜鉛(住友大阪セメント株式会社製、ZnO-310)の表面に、通常の方法により脱水縮合させ共有結合させ、メタノールにプレ分散後、ビーズミルにて平均粒子径が60nmとなるように解砕・分散し、酸化亜鉛微粒子が分散したスラリーを得た。
次に、酸化亜鉛の充填量が10質量%になるように、メタノールを加えて調整した。このスラリーに対し、バインダーとしてテトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−04)を固形分(無機微粒子+バインダー+赤外線吸収特性を有する有機化合物)の30質量%になるように加えて分散した。
その後、実施例3と同様に合成銅フタロシアニン化合物を固形分の3質量%(固形分の3%(質量比)がフタロシアニン化合物)となるように加え、布帛に塗布し吸熱性部材を得た。
(比較例1)
実施例1で用いた布帛に何も塗布せず、サンプルとして用いた。
(比較例2)
実施例1で用いたγ―アルミナの充填量が10質量%になるようにメタノールを加えてスラリーを調整した。その後、テトラメトキシシランを、固形分中の30質量%になるように加えて分散した。このスラリーを、実施例1で用いた布帛に、3g塗布後、110℃で1分間乾燥した。その後、80kVの加速電圧で電子線を3Mrad照射し、吸熱性部材(無機微粒子のみを含む)のサンプルを得た。
(比較例3)
実施例1で用いたフタロシアニン化合物とテトラメトキシシランを、実施例1と等量溶媒へ分散した。このスラリーを、実施例1で用いた布帛に、3g塗布後、110℃で1分間乾燥した。その後、80kVの加速電圧で電子線を3Mrad照射し、吸熱性部材(赤外線吸収特性を有する有機化合物のみを含む)のサンプルを得た。
(実施例7)
不飽和結合を有するシランモノマーである3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を、無機微粒子である酸化ケイ素(日産化学工業株式会社製、スノーテックス)の表面に通常の方法により脱水縮合させ、メタノールにプレ分散後、平均粒子径が20nmとなるように解砕・分散し、酸化ケイ素微粒子が分散したスラリーを得た。
次に、酸化ケイ素が固形分濃度の10質量%になるように、メタノールを加えて調整し、バインダーとしてテトラメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−04)を固形分(無機微粒子+バインダー+赤外線吸収特性を有する有機化合物)の30質量%(固形分の30%(質量比)がテトラメトキシシラン)になるように加えて分散した。
その後、実施例1と同様にフタロシアニン化合物を固形分の10質量%(固形分の10%(質量比)がフタロシアニン化合物)となるように加え、布帛に塗布し吸熱性部材を得た。
(実施例8)
実施例1で用いたスラリーに、赤外線吸収特性を有する有機化合物として平均粒子径が308nmのフタロシアニン化合物を固形分の10質量%(固形分の10%(質量比)がフタロシアニン化合物)となるようにそのまま添加、攪拌した以外は実施例1と同様に作成した。
(実施例9)
実施例1で用いたスラリーに、赤外線吸収特性を有する有機化合物として平均粒子径が106nmのフタロシアニン化合物を固形分の10質量%(固形分の10%(質量比)がフタロシアニン化合物)となるようにそのまま添加、攪拌した以外は実施例1と同様に作成した。
<サンプルの評価方法>
以下、実施例1の吸熱性部材、比較例1の布帛、比較例2および比較例3の吸熱性部材に対して行った「吸熱性の評価」、「光の吸収特性の評価」および「耐久性の評価」の評価方法の詳細について説明する。
(吸熱性の評価)
吸熱性の評価は、図2に示した装置によって温度を測定した。
図2において、6は光源ランプ(岩崎電気社製、赤外線ランプ300Wフラッド)であり、7は測定した布帛であり、大きさは15cm×15cm、ランプ照射面は赤外線吸収特性を有する有機化合物を塗布した面である。8は温度センサーである。光源から測定布帛までの距離は30cmとし、照射時間は10分とした。測定は、照射開始から1分毎に行い、温度変化を記録した。
(光の吸収特性の評価)
光の吸収特性の評価においては、光の反射率を直接測定できないので、透過率を測定した。紫外可視光赤外線分光光度計装置(株式会社島津製作所製、UV-3100PC)を用いて500nmから2500 nmまでの波長の透過率を測定した。
(温度上昇の評価)
温度上昇の評価は、図2に示した装置を用いて、光源ランプを10分間照射した後のサンプル温度を測定した。測定したサンプルは、実施例1〜9と比較例3を用い、それぞれ比較例1との温度差を算出した。これにより吸熱性能を比較評価した。
(耐久性の評価)
耐久性の評価は、実施例1の吸熱性部材と比較例3の吸熱性部材を用い、「洗濯する前の吸熱性」と、「3回洗濯した後の吸熱性」とを比較することで、吸熱性部材としての耐久性を評価した。
また、実施例3と実施例8においては耐久性試験を実施し、その後、耐久性試験前後の温度上昇の評価を実施した。
(塗布面の評価)
塗布面の評価は、実施例1で得たスラリーを基体に塗布した状態と、比較例3で得たスラリーを基体に塗布した状態を評価した。
以上、説明した評価方法による実施例1、比較例1、比較例2および比較例3についての吸熱性、光の吸収特性、耐久性の評価結果を、図3、図4および図5にまとめた。
また、塗布面を評価するための電子顕微鏡写真を、比較例3については図6に、実施例1については図7に示した。また、温度上昇の評価結果を表1に、耐久性試験後の温度上昇を表2にまとめた。
(吸熱性の評価結果)
図3から、シランモノマーが結合した無機微粒子の群を基体上に固定することにより、無機微粒子に保持された赤外線吸収特性を有する有機化合物が、凝集せずに均一に分散し基体上に固定された実施例1の吸熱性部材の吸熱特性は、何も塗布していない比較例1の布帛、無機微粒子のみを塗布した比較例2の吸熱性部材、赤外線吸収特性を有する有機化合物のみを塗布した比較例3の吸熱性部材と比較して、著しく優れていることが確認できた。また、サンプルの設置場所による照射光量のばらつきを考慮し、サンプル設置場所を入れ換えて測定し、平均値で評価した。
(光の吸収特性の評価結果)
また、実施例1の吸熱性部材、比較例1の布帛、比較例2および比較例3の吸熱性部材、の吸熱特性の差の原因を調べるため、光の吸収特性を調べた。ここでは、光の吸収率は直接測定できなかったため、光の透過率を測定した。図4の光の透過率のグラフから、比較例1〜比較例3よりも実施例1の方が、光の透過率が低いことが確認できた。この結果と吸熱特性の結果から、実施例1の光の吸収率が高いことが推測される。
シランモノマーが結合した無機微粒子の群を基体上に固定することにより、無機微粒子に保持された赤外線吸収特性を有する有機化合物が、凝集せずに均一に分散し基体上に固定された実施例1の吸熱性部材の吸収特性は、何も塗布していない比較例1の布帛、無機微粒子のみを塗布した比較例2の吸熱性部材、赤外線吸収特性を有する有機化合物のみを塗布した比較例3の吸熱性部材と比較して、著しく優れていることが確認できた。
(温度上昇の評価結果)
表1から、フタロシアニン化合物として合成ナノ粒子を添加した実施例2(平均粒子径14.3nm)においては、実施例1と比較し添加量が同等でも著しく高い吸熱効果が確認され、また、実施例3においては実施例1や実施例2に比べてフタロシアニン化合物が少量の添加濃度であるにもかかわらず高い吸熱効果が確認された。
実施例4〜7の比較では、無機微粒子に熱伝導率の高い物質(実施例4〜6)を用いると、熱伝導率が低い物質(実施例7)よりも吸熱効果が高いことが確認された。粒径の大きい有機化合物を用いた実施例7および実施例8は、実施例1などと比較すると、吸熱効果が低かった。なお、比較例3は、実施例7や8と吸熱性については同程度であるが、後述するように有機化合物が基体上で凝集してしまうため、位置によって吸熱性にばらつきが生じる。
(耐久性の評価結果)
さらに図5から、テトラメトキシシランにより赤外線吸収特性を有する有機化合物を基体に固定した比較例3の吸熱性部材は、3回の洗濯により吸熱特性が劣化しているが、シランモノマーが結合した無機微粒子の群を基体上に固定することにより、無機微粒子に保持された赤外線吸収特性を有する有機化合物が、凝集せずに均一に分散し基体上に固定された実施例1の吸熱性部材は、3回の洗濯後も吸熱特性の劣化がほとんどみられず、耐久性にも優れていること確認できた。
また、表2からフタロシアニン化合物として合成ナノ粒子を添加した実施例2においては、耐久試験後も高い温度上昇効果を保つことができるのに対し、実施例8においては低下が確認された。
(塗布面の評価結果)
図6は、赤外線吸収特性を有する有機化合物が無機微粒子に保持されていない状態の基体(比較例3)の表面を示す電子顕微鏡写真である。図7は、赤外線吸収特性を有する有機化合物が無機微粒子に保持されている状態の基体(実施例1)の表面を示す電子顕微鏡写真である。
図6(比較例3)に示すように、無機微粒子が含まれていないと赤外線吸収特性を有する有機化合物は凝集している。従って、無機微粒子が含まれていない場合には、吸熱性部材において、位置によって吸熱効果にバラつきが生じてしまう。一方、図7(実施例1)に示すように、無機微粒子が含まれていると赤外線吸収特性を有する有機化合物は均一に(バラつきが少なく)分散していることが確認できた。従って、本発明に係る吸着性部材であれば、位置によって吸熱効果にバラつきが生じることが抑制される。
以上のとおり、本発明の吸熱性部材は、充分な赤外線効果による吸熱性に優れ、さらに耐久性にも優れた吸熱性部材であることが確認できた。
1: 基体
2−a: 無機微粒子
2−b: 赤外線吸収特性を有する有機化合物
3: シランモノマー
4: バインダー成分
5: 化学結合
6: 光源ランプ
7: 布帛
8: 温度センサー
10: 吸熱層
100: 吸熱製部材

Claims (5)

  1. 基体と、
    前記基体表面に形成され、赤外線吸収特性を有する有機化合物と、無機微粒子の群と、を有する吸熱層と、を備え、
    前記無機微粒子の熱伝導率が、10W/(m・K)以上であり、
    前記赤外線吸収特性を有する有機化合物の粒子径が、100nm以下であり、
    前記無機微粒子の群を構成する前記無機微粒子同士が表面に結合しているシランモノマー間の化学結合を介して結合しており、且つ、前記無機微粒子の群が前記シランモノマーとの化学結合によって基体と結合しており、
    前記有機化合物は、前記無機微粒子に保持されて凝集せず、基体表面に均一に分散していることを特徴とする吸熱性部材。
  2. 前記吸熱層は、前記赤外線吸収特性を有する有機化合物と前記無機微粒子とを結合するバインダー成分としてのモノマー、オリゴマー、またはこれらの混合物をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の吸熱性部材。
  3. 前記赤外線吸収特性を有する有機化合物が、フタロシアニン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の吸熱性部材。
  4. 前記基体が、樹脂を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の吸熱性部材。
  5. 前記基体が、繊維構造体であることを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の吸熱性部材。
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